第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

 

(1) 経営方針について

 当社グループは、「大地の永遠と人類の繁栄に貢献する」を企業理念とし、大地(ゼオ)と永遠(エオン)からなるゼオンの名にふさわしく、独創的な技術・製品・サービスの提供を通じ、「持続可能な地球」と「安心で快適な人々のくらしに貢献する」ことを目指しております。

 また、株主・顧客・地域社会に信頼される企業をつくるためには、役員ならびに従業員一人ひとりが常に社会の一員であることを認識し、法令・企業倫理を守ってフェアに行動することが必須であると考えております。当社グループでは、行動規範である「CSR基本方針」に基づき「CSR行動指針」を定め、国内外の法を遵守することはもとより、社会規範を尊重し、良識ある企業活動を行うべく努めております。

 

(2) 経営環境について

①全般

 2022年3月期の経営環境は、新型コロナウイルス感染症の再拡大や半導体不足の深刻化、ロシアのウクライナ侵攻による影響など、先行き不透明な状況で推移しました。こうしたなかゼオングループは2030年のビジョン「社会の期待と社員の意欲に応える会社」を見据えた中期経営計画のもと、コスト削減や生産革新に取り組むとともに、エラストマー素材事業においては採算性の向上とグローバル展開の強化、高機能材料事業においては付加価値の高い新製品の開発と事業の拡大に注力しました。この結果、当期の連結経営成績は、売上高、営業利益、経常利益、ならびに親会社株主に帰属する当期純利益ともに前期比で大幅増となり、いずれも過去最高となりました。

 

②2030年のビジョン

私たちゼオングループは、「大地の永遠と人類の繁栄に貢献する」、すなわち持続可能な地球と安全で快適な人々の暮らしに貢献することを社会的な使命と認識しています。この使命を果たすべく、「2030年のビジョン」を「社会の期待と社員の意欲に応える会社」と定めました。「2030年のビジョン」から導き出した「2030年に目指す姿」とそれを実現するための全社戦略としては、①カーボンニュートラル(二酸化炭素の吸収量と排出量の均衡)とサーキュラーエコノミー(循環型経済)を実現するものづくりへの転換を推進し、持続可能な社会に貢献し続ける ②既存事業の磨き上げと新規事業の探索によって、社会課題の解決に貢献する製品・サービスを提供する ③個々の強みを発揮できる「舞台」を全員でつくり、「まずやってみよう」「つながろう」「磨き上げよう」の行動があふれる企業を創造するの3つのテーマを設定しています。

この全社戦略に基づき、今後10年間に累計3,500億円の新規投資を実行し、既存事業でROIC(投下資本利益率)9%を達成するとともに、新規事業では2019年度比で600億円の増収を目指します。新規投資による事業拡大と資本効率向上の両立に取り組み、継続的かつ安定的な株主還元を行っていきたいと考えています。

 

③新中期経営計画(2021年度−2022年度)の基本方針と主要施策

新中期経営計画の対象期間2年目となる2022年度は、新型コロナウイルス感染症の終息時期が見通せないなど先行き不透明な事業環境が続くものと見ています。従来以上に慎重な舵取りが求められるなか、ゼオングループはSDGsへの全社的な取り組みを通じて、「2030年のビジョン」実現に向けた基盤づくりを着実に進めていきます。

具体的には、2050年のカーボンニュートラル達成に向けて独自のマスタープランを策定するとともに、高機能樹脂と電池材料の強化、自動車社会の将来に関する新たな考え方である「CASE」「MaaS」への対応や医療・ライフサイエンス、情報通信(5G/6G)など成長領域へのリソース集中といった戦略的な経営施策を実行し、SDGs貢献製品の売上高比率を順次高めていく計画です。また、グループ社員に対してキャリア形成や働き方など、より多くの「人生の選択肢」を提供することにより、従業員エンゲージメント(自社への信頼感)の更なる向上を目指していきます。

ゼオングループは「2030年のビジョン」とその最初のステージである新中期経営計画に役員・社員全員の力を結集して挑戦し、あらゆるステークホルダーから信頼され期待される企業グループを創り上げてまいります。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループでは、2030年のビジョン「社会の期待と社員の意欲に応える会社」の実現のため、2030年に以下を達成することを目標として掲げております。

 ①CO2排出量50%削減(単体、2019年度比、Scope1+2、GHGプロトコルに基づき算出)

 ②SDGs貢献製品の売上高比率50%

 ③既存事業のROIC9.0%

 ④新規事業の売上高600億円増加(2019年度比)

 ⑤従業員エンゲージメント75%

 ⑥外国人/女性役員比率30%(取締役および監査役。社内・社外を問わない)

 

なお、上記2030年度の目標値に対する2021年度の進捗状況は以下の通りです。

 ①CO2排出量:20年度実績81.5万トン(21年度実績集計中)

 ②SDGs貢献製品の売上高比率:SDGs貢献製品の社内認定制度を構築中

 ③既存事業のROIC:9.7%

 ④新規事業の売上高:金額僅少

 ⑤従業員エンゲージメント:52%(2021年5月調査時点)

 ⑥外国人/女性役員比率:0%

 

(4) 対処すべき課題について

 当社グループは、「社会の期待と社員の意欲に応える会社」という2030年のビジョンを達成するために以下3点を全社戦略とする2021年度と2022年度の2年間の新中期経営計画を策定し、取り組みを開始しました。

・カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーを実現する「ものづくり」への転換を推進する

・既存事業を「磨き上げる」、新規事業を「探索する」

・「舞台」を全員で創る

全社戦略の1点目に関しましては、中期経営計画期間中に2050年を見据えたカーボンニュートラルマスタープラン策定を目指しております。

全社戦略の2点目に関しましては、2030年の目標値である既存事業ROIC9.0%及び新規事業売上高600億円増を目指して、高機能樹脂と電池材料の強化、資源や設備の利用効率向上による既存SBUの勝ち残り、新規事業探索のための重点分野を定めたリソース集中投入に取り組んでまいります。

3点目に関しては2030年の目標値を従業員エンゲージメント75%、外国人/女性役員比率30%と置き、より多くの人生の選択肢を提供することに取り組んでまいります。

 

2【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。

 

1.外部事業環境に係るリスク

日本、北米、欧州、アジアの当社グループの主要市場の経済状況は、当社グループの製品販売に大きな影響を与えます。当社グループは、「ZΣ運動」による徹底したコスト削減を進めるとともに、エラストマー素材事業においては採算性の向上と生産・販売のグローバル展開、高機能材料事業においては付加価値の高い新製品の開発と事業拡大に努めておりますが、これらの市場における景気後退(金融・資本市場の混乱や大規模な自然災害、感染症の蔓延等に起因するものを含みます)、およびそれに伴う需要の縮小は、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

当社グループの事業には、主に日本、北米、欧州、アジアにおける生産と販売が含まれております。各地域における売上高、費用、資産及び負債を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のために円換算されております。換算時のレートにより、これらの項目は元の現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受けるおそれがあります。

当社グループが生産を行う地域の通貨価値の上昇は、それらの地域における生産と調達のコストを押し上げる可能性があります。コストの増加は、当社グループの利益率と価格競争力を低下させ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、為替予約等により短期的な変動による悪影響を最小限にとどめる努力はしておりますが、急激な短期変動もしくは中長期的な通貨変動により、計画された調達、生産、流通及び販売活動が確実に実行できない場合があるため、為替レートの変動は当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

当社グループは、事業活動上の関係の深化や原材料の安定調達等を目的に取引先の株式を保有しております。当社グループは毎年個別銘柄ごとに保有目的の適切性や保有に伴う便益およびリスクが資本コストに見合っているか等を精査し、保有の適否を検証しておりますが、大幅な市場価格の下落、又は株式保有先の財政状態の悪化によりその評価が著しく下落した場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

当社グループの事業、特にエラストマー素材事業では、原油価格、ナフサ価格及び主要原材料価格の動向が製造コストに大きな影響を与えます。当社グループは、当該価格の変動分を適時適切に製品価格に転嫁すること等による収益性の維持に努めておりますが、地政学的要因等による想定を超える市況の高騰や資源ナショナリズム等により需給が逼迫し、製造コストが急激に上昇する場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

当社グループは、研究開発・生産・販売・管理等のさまざまな分野にわたり、高度の専門性を有する人材の計画的な採用・育成に努めております。しかし、特に日本国内においては少子高齢化に伴う労働人口の減少等が見込まれるところ、必要な人材を継続的に獲得するための競争が激化し、人材確保や育成が計画通りに進まない場合には、将来の成長が阻害され、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

2.投資に係るリスク

当社グループの将来の成長は、継続して新製品を開発し販売することに依存すると予想しております。

特に高機能材料事業においては、その主要マーケットであるエレクトロニクス業界の技術革新のスピードが著しいため、顧客のニーズを的確に把握し、タイムリーかつスピーディに新製品を上市すべく研究開発投資を行っておりますが、予測を超えた市場の変化や技術の急速な進歩等によりこれらの投資が奏功せず、魅力ある新製品を開発できない場合は、将来の成長と収益性が低下し、業績と財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

当社グループは、将来の事業拡大を目的とした成長投資を行っております。その判断にあたっては社内基準に基づく厳格な審査を行い、案件の事後管理に係る手続も整備・運用しておりますが、外部環境の急激な変化等により期待通りの収益が上がらなかった場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

3.事業のグローバル化に伴うリスク

当社グループの生産および販売活動の一部は、米国、欧州、ならびにアジア各国市場等の日本国外で行われており、さらなる事業展開を計画しております。これらの海外市場への進出には以下に掲げるようないくつかのリスクが内在します。

① 予期しない法律または規制の変更

② 不利な政治または経済要因

③ 人材の採用と確保の難しさ

④ 未整備な技術、基盤インフラが、生産等の当社グループの活動に悪影響を及ぼす可能性、または当社グループの製

   品やサービスに対する顧客の支持を低下させる可能性

⑤ 潜在的に不利な税制

⑥ 戦争、テロ、その他の要因による社会的混乱

当社グループは現地駐在員の教育や本社-現地間のコミュニケーションの活性化等によるリスク低減に努めておりますが、これらのリスクが顕在化した場合、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

4.知的財産保護に係るリスク

当社グループは他社製品と差別化できる技術とノウハウを蓄積してまいりましたが、他社が類似する、もしくは当社より優れている技術を開発したり、当社グループの特許や企業秘密を模倣、または解析調査することを防止できない可能性があります。さらに、当社グループの将来の製品または技術は、将来的に他社の知的財産権を侵害しているとされるおそれがあります。これらのリスク低減のため、当社グループでは国内外における自社技術の権利化、ノウハウのブラックボックス化、新製品上市前の他社知的財産の調査・対応などに取り組んでおります。

 

5.製品の品質に係るリスク

当社グループは世界的に認められている品質管理基準に従って各種の製品を生産しております。しかし、すべての製品について欠陥が無く、将来にリコールが発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償については保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできる保証はありません。さらに、引き続き当社グループがこのような保険に許容できる条件で加入できるとは限りません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、それにより売り上げが減少し、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

6.公的規制・環境・気候変動に係るリスク

当社グループは事業展開する各国において、事業・投資の許可、国家安全保障またはその他の理由による輸出制限、公務員に対する不正な利益の供与・贈収賄規制、関税をはじめとするその他の輸出入規制等、様々な公的規制の適用を受けております。当社グループは「CSR基本方針」においてコンプライアンスの徹底を標榜し、法令及び社会的規範の遵守を図っておりますが、今後、当社グループに関連する法令の改正や規制の強化により事業活動が制限され、或いはコストの増加につながるなどの可能性は否定できません。また、様々な事業活動を行うなかで、訴訟、係争、その他の法的手続きの対象となるリスクも想定されます。これらのリスクが顕在化した場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

各種の化学物質を取り扱う当社グループは、環境に関する各種法令や規制を遵守するとともに、環境影響物質の排出抑制に継続的に取り組んでおりますが、今後環境に関する国内外の規制強化等により、事業活動の制限あるいは追加の設備投資を余儀なくされるなど、当社グループの業績に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

当社グループはカーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーを実現する「ものづくり」への転換を推進するために、省エネルギーや燃料転換等の施策を推進するとともに長期的な研究開発を実施しております。また、当社は「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」に賛同し、気候変動が事業に及ぼすリスク・機会を分析し経営戦略に反映することで経営基盤の強化を図り、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指しております。しかし気候変動に起因する、異常気象の激甚化による事業所やサプライチェーンの被災、原材料やユーティリティ価格の上昇、顧客の行動変化あるいは気候変動対応に係る社会的責任の発生などは当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

7.情報セキュリティに係わるリスク

当社グループは重要インフラ事業者としてプラント制御システムを有する他、各種の業務用システムを開発・運用し、また個人情報を含む営業秘密情報を保有しています。当社グループはシステムの保守更新や不正なアクセスからの防衛、ならびに情報管理の徹底を進めておりますが、サイバーテロなどによる悪意ある侵入や業務妨害行為を完全に防止できる保証はなく、当社グループの生産をはじめとする事業活動が中断するなどして業績及び財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

8.事業継続に係るリスク

現下における新型コロナウイルスの感染拡大に対しては、国内外の製造拠点をはじめとした感染防止策の徹底による「サプライチェーンの維持」、在宅勤務・時差出勤などの促進による「従業員やその家族等の健康・安全の確保」、およびCP発行枠の確保などによる「安定的な資金繰り」の3点を中心に対応策を実施しております。 しかし、これらの対策は新型コロナウイルスの感染拡大による影響を完全に防止または軽減できる保証はなく、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

当社グループは生産ラインの中断による潜在的なマイナスの影響を最小化するために、定期的な災害防止検査と設備点検を行っており、また、事業継続計画(BCP)の策定や非常時を想定した訓練などにも取り組んでおります。しかし、生産設備で発生する災害、停電または地震その他の中断事象による影響、あるいは感染症の流行による事業活動の制限に伴う影響などを完全に防止または軽減できる保証はなく、当社グループの生産及び業績に悪影響を及ぼすおそれがあります。

当社グループの主原料は、ナフサに大きく依存しております。また、その供給を外部に依存しております。生産国の政治情勢が不安定になるなど日本が原油及びナフサの輸入が困難になる、もしくは購入先が事故や災害により操業困難となりそれが長期にわたるなどの状況は、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 なお、当連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当期の経営環境を振り返りますと、新型コロナウイルス感染症の収束が見通せないことに加え、半導体不足の深刻化や原料及び物流費の高騰、また依然として緊張状態にある米中関係の影響やロシアのウクライナ侵攻による影響等、当社グループを取り巻く環境としては先行き不透明な状況で推移しました。

 当社グループはこのような環境のもとで、「ZΣ運動」による徹底したコスト削減や、生産革新活動に注力するとともに、エラストマー素材事業におきましては採算性の重視と生産・販売のグローバル展開、高機能材料事業におきましては付加価値の高い新製品の開発と事業拡大に取り組んでまいりました。

 この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

 当連結会計年度末のエラストマー素材事業の資産は、前連結会計年度末に比べ、275億19百万円増加し、2,233億75百万円となりました。当連結会計年度末の高機能材料事業の資産は、前連結会計年度末に比べ1億16百万円減少し、1,187億24百万円となりました。当連結会計年度末のその他及び全社資産等の資産は、前連結会計年度末に比べ、84億36百万円増加し、1,425億61百万円となりました。

 以上の結果、当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ、358億39百万円増加し、4,846億60百万円となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ、122億49百万円増加し、1,628億24百万円となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ、235億90百万円増加し、3,218億36百万円となりました。

 

b.経営成績

 当期の連結売上高は3,617億30百万円と前年同期間に比べて597億69百万円の増収、連結営業利益は444億32百万円と前年同期間に比べて110億24百万円の増益、連結経常利益は494億68百万円と前年同期間に比べて108億円の増益、親会社株主に帰属する当期純利益は334億13百万円と前年同期間に比べて56億96百万円の増益となり、いずれも過去最高となりました

 

 セグメントの業績は、次の通りであります。

 

(エラストマー素材事業部門)

 合成ゴム関連では、自動車減産の状況下でも依然として需要は底堅く、国内販売、輸出販売、海外子会社いずれも好調に推移しました。この結果、全体の売上高、営業利益ともに前年同期間を大幅に上回りました。

 合成ラテックス関連では、総じて需要が堅調だったことから全体の売上高は前年同期間を上回りましたが、医療・衛生用手袋向け市況の沈静化と原料及び物流費高騰の影響が重なり、営業利益は前年同期間を下回りました。

 化成品関連では、年間を通じて需要は堅調に推移したものの、水島工場及びタイ子会社の定期検査による出荷調整に加え、輸出コンテナの不足、船繰り難の影響等も重なり、販売数量は前年同期間を下回りました。一方で、原料及び物流費高騰分の価格転嫁が進んだことにより、全体の売上高、営業利益ともに前年同期間を上回りました。

 以上の結果、エラストマー素材事業部門全体の売上高は前年同期間に比べて389億40百万円増加し2,005億66百万円、営業利益は前年同期間に比べて63億40百万円増加し186億23百万円となりました。

 

(高機能材料事業部門)

 高機能樹脂関連では、半導体不足の影響によりスマートフォンやタブレット向けの出荷が伸び悩みましたが、大型テレビ、医療用途向けの需要は底堅く、光学樹脂、光学フィルムともに販売が堅調に推移しました。この結果、高機能樹脂関連全体の売上高、営業利益ともに前年同期間を上回りました。

 高機能ケミカル関連では、半導体不足による顧客の在庫調整、輸出コンテナ不足等の影響を一部受けましたが、総じて需要は堅調に推移しました。この結果、電池材料、化学品、トナー、電子材料の全てにおいて売上高、営業利益ともに前年同期間を上回りました。

 以上の結果、高機能材料事業部門全体の売上高は前年同期間に比べて113億26百万円増加し1,067億91百万円、営業利益は前年同期間に比べて43億99百万円増加し263億60百万円となりました。

(その他の事業部門)

 その他の事業においては、子会社の商事部門等の売上高が前年同期間を上回りました。

以上の結果、その他の事業部門全体の売上高は前年同期間に比べて108億44百万円増加し578億22百万円、営業利益は前年同期間に比べて1億62百万円増加し23億18百万円となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ36億31百万円(前年度比7.5%減)減少し、445億21百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動による資金の増加は331億40百万円となり、前連結会計年度末に比べ229億40百万円の減少(前年度比40.9%減)となりました。前連結会計年度との差の主な要因は、仕入債務の純増加額が増加したことにより資金が増加したものの、棚卸資産の増減額が純減から純増へと転じたことにより資金が減少したこと等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動による資金の減少は264億36百万円となり、前連結会計年度末に比べ38億3百万円の資金支出の減少(前年度比12.6%減)となりました。前連結会計年度との差の主な要因は、貸付けによる支出が減少したこと及び定期預金の純増減額が純増から純減へと転じたこと等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動による資金の減少は118億83百万円となり、前連結会計年度末に比べ36億24百万円の資金支出の増加(前年度比43.9%増)となりました。前連結会計年度との差の主な要因は、長期借入金の返済による支出が減少したものの、自己株式の取得による支出が増加したこと等によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

エラストマー素材事業

157,867

48.2

高機能材料事業

74,647

15.2

その他

5,713

△2.8

 (注)連結会社間およびセグメント間の取引が複雑で、セグメントごとの生産高を正確に把握することが困難なため、概算値で表示しております。

 

b.受注実績

 特記すべき事項はありません。

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

エラストマー素材事業

197,619

23.5

高機能材料事業

106,756

11.9

その他

57,355

23.2

合計

361,730

19.8

 (注)セグメント間の取引については、相殺消去しております。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

連結財務諸表の作成にあたっては、連結決算日における資産・負債および連結会計年度における収益・費用の報告金額および開示に影響を与える見積りを実施する必要があります。これらの見積りは、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しておりますが、以下の事項について連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。

なお、新型コロナウイルス感染症拡大の影響に関する会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載しております。

 

a.貸倒引当金

当社グループは、売上債権、貸付金等の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。従って、顧客の財務状態が悪化し、その支払能力が低下した場合など、追加引当が必要となる可能性があります。また、貸倒損失の発生により貸倒実績率が上昇し、一般債権に係る貸倒引当金の追加計上が発生する可能性があります。

b.棚卸資産

当社グループは、棚卸資産の、市場状況等に基づく正味売却価額の見積額と原価との差額について、評価減を計上しております。実際の市場状況等が見積りより悪化した場合、評価減の追加計上が必要となる可能性があります。

c.有価証券

当社グループは、価格変動性が高い上場会社の株式と、株価の決定が困難である非上場会社の有価証券を所有しております。当社グループは、社内ルールに従って、投資価値の下落が一時的でないと判断した場合、有価証券の減損損失を計上しております。このため、将来の市況悪化または投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失または簿価の回収不能が発生した場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。

d.繰延税金資産

当社グループは、税務上の繰越欠損金及び将来減算一時差異に対して、繰延税金資産を計上しております。ただし繰延税金資産の回収可能性に不確実性がある場合は、評価性引当額の計上を行い、将来実現する可能性が高いと考えられる金額を繰延税金資産として計上しております。繰延税金資産の回収可能性は、主に将来の課税所得の見積もりによるところが大きく、課税所得の予測は将来の市場動向や当社グループの事業活動の状況及びその他の要因により変化いたします。この為、繰延税金資産の回収可能性の変化により、評価性引当額が変動し損益に影響を及ぼす可能性があります。

e.固定資産

当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローを見積もり、見積もられた割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては、慎重に検討しておりますが、事業計画や経営環境等の諸前提の変化により、追加の減損処理又は新たな減損処理が必要となる可能性があります。

f.退職給付費用および債務

確定給付型の制度に関わる従業員退職給付費用および債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率および年金資産の長期収益率などが含まれます。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、退職給付費用および債務が変動する可能性があります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.売上高と営業利益

当連結会計年度の売上高は3,617億30百万円(前期比19.8%増)、営業利益は444億32百万円(前期比33.0%増)となりました。

詳細につきましては、(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 に記載しておりますセグメントの業績をご参照願います。

b.営業外損益と経常利益

雑収入の減少等により、営業外損益は前期比で2億24百万円悪化し50億36百万円の利益となりました。

以上の結果、経常利益は、前期比27.9%増の494億68百万円となりました。

c.特別損益

減損損失の発生等により、特別損益は前期比で27億33百万円悪化し32億42百万円の損失となりました。

d.親会社株主に帰属する当期純利益

法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の総額は125億20百万円となり、非支配株主に帰属する当期純利益は、前期比1億30百万円増加し2億93百万円となりました。

以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比20.6%増の334億13百万円となりました。

③資本の財源及び資金の流動性

a.財務戦略の基本的な考え方

当社グループは、企業価値の向上のために経営資源の配分を行うこととしております。当社グループの企業価値の源泉は、独創的技術であると考えており、財務健全性と資本コストを踏まえ、独創的技術の強化・創出に繋がる設備投資や研究開発等を推進しております。

b.経営資源の配分に関する考え方

当社グループは、必要な手元現預金を確保しつつ、設備投資や独創的技術の開発等への継続的な経営資源の配分に努めます。また、安定的、継続的な配当等を通じた株主還元への配分を行うこととしております。

c.資金需要の主な内容

当社グループの営業活動に係る資金需要は、原材料費、物流費、研究開発費、人件費などがあります。投資活動に係る資金需要は、独創的技術の維持・強化・創出に繋がる設備投資およびIT投資などがあります。

d.資金調達

当社グループの継続と発展のために必要となる資金を安定的に確保するため、内部資金と外部資金を活用しております。運転資金および設備投資資金は、営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入、コマーシャル・ペーパーおよび社債の発行などを活用しております。財務健全性および信用格付の維持により外部資金調達能力を確保するとともに、必要に応じてコミットメントラインの設定により流動性を確保しております。

 

④経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

 当社グループでは、2030年のビジョン「社会の期待と社員の意欲に応える会社」の実現のため、2030年に以下を達成することを目標として掲げております。

a.CO2排出量50%削減(単体、2019年度比、Scope1+2、GHGプロトコルに基づき算出)

b.SDGs貢献製品の売上高比率50%

c.既存事業のROIC9.0%

d.新規事業の売上高600億円増加(2019年度比)

e.従業員エンゲージメント75%

f.外国人/女性役員比率30%(取締役および監査役。社内・社外を問わない)

 

4【経営上の重要な契約等】

  該当事項はありません。

 

5【研究開発活動】

当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ)の研究開発部門として、当社が当社グループの研究開発の中枢組織として川崎地区に総合開発センター(9研究所および創発推進センターより構成)、高岡地区に精密光学研究所及びメディカル研究所、徳山地区にCNT研究所、水島地区に化成品研究室、米沢地区に化学品研究棟、加えて4工場(高岡、川崎、徳山、水島)に所属する製造課内に技術グループを有するほか、国外関係会社等の研究部門として、ゼオン・ケミカルズ・リミテッド・パートナーシップ研究所(米国)並びにゼオン・リサーチ・ベトナム(ベトナム)を有しております。

 

主な研究開発活動

エラストマー素材事業(ゴム、ラテックス、化成品等)

・H-NBR、NBR、ACMを中心とする特殊ゴムの世界のリーダーとして日・米の研究部門が緊密な協力体制を構築して新製品開発、新規用途開発、新規市場開拓を進めると共に、各種用途への最適な配合研究や技術サービスを推進いたしました。

・SBR、BR、IR等の汎用ゴムについては、圧倒的コスト優位の製造方法を確立すると共に、次世代をにらんだ低燃費タイヤ用新規ゴム開発を進めました。

・手袋用NBRラテックスやIRラテックスの新製品開発、および技術サービス、新製品による新規市場開拓に注力いたしました。

・ホットメルト接着剤用石油樹脂「クイントン®」や熱可塑性エラストマー「クインタック®」における新品種開発を推進すると共に、新規市場開拓や各種用途での技術サービスに注力いたしました。

 

高機能材料事業(化学品、高機能樹脂、高機能部材、電子材料、トナー、電池材料、健康、CNT等)

・特殊化学品では、工業薬品、新規医薬・農薬の原料、特殊溶剤・洗浄剤として、新規用途開発、新規市場開拓に注力いたしました。

・非晶質環状オレフィンポリマーの「ZEONEX®」シリーズでは、光学、医療、通信分野を中心に開発を推進しております。

・非晶質環状オレフィンポリマーの「ZEONOR®」シリーズでは、新規用途開発を進めています。

・液晶ディスプレイに使用される光学フィルムや、その他機能性部材の開発を進めております。

・絶縁材料、半導体製造用エッチングガス等の情報材料関係で製品開発が計画通り進んでおります。

・重合法トナーは、省エネルギー対応次世代カラートナーの開発を計画通り進めております。

・電池材料の研究では、リチウムイオンバッテリー用の材料の開発を推進しております。

・医療器材関連の研究において循環器系カテーテル分野では、より低侵襲なデバイスの開発を進めております。また、消化器内視鏡処置具の拡充を図り、市場ニーズを先取りした製品群の拡充を進めております。

・カーボンナノチューブ(CNT)の研究では、大容量のリチウム金属電極など特徴のある用途開発を進めております。

 

 なお、当連結会計年度における研究開発費をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

エラストマー素材事業

3,023

高機能材料事業

5,197

その他

826

全社(共通)

6,823

合計

15,869