第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「化学に立脚し、新たな価値を創造、提案する」、「企業経営を通じて、地域に貢献し、環境共生型社会形成に寄与する」の企業理念のもと、プラスチックを中心とする異形押出成形技術をコア技術として、常に新しい技術と製品の開発に専念し、企業価値の向上に努めてまいりました。

今後さらに、フクビの絶対主義、即ち「絶対品質、絶対スピード、絶対コスト」に裏付けられた製品とサービスの提供を通して、お客様の企業価値の増大に貢献し、開発型メーカーとしての事業基盤を一層強化してまいります。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループでは、2023年度より5ヶ年の第7次中期経営計画がスタートしています。中長期ビジョンのあるべき姿「新たな技術開発と市場創造に絶え間なく挑戦し、快適な社会の実現に貢献する」「一人一人の成長と企業の成長が一体となることで、喜びを実感できるフクビグループを目指す」に対し、現状とのギャップを埋めるための戦略と位置付けました。企業理念に立脚した事業活動を具現化することによって、企業としての存在価値を高めるとともに、VUCAの時代において安定的な経営を目指すため、3つの基本戦略を掲げました。

① 循環型ビジネス拡大

・プラスチックリサイクルへ事業領域を拡大し、循環型社会に貢献する。

・環境配慮型商品のブランド展開とフクビの5R(Reduce、Reuse、Recycle、Renewable、Revalue)実践によりグループの存在感を高める。

② 強靭な収益基盤構築

・当社の強みである、材料配合・成形加工技術に関するバリューポジションを更に拡大する。

・社会のニーズに沿った商品開発や採算性を意識した事業PFの再構築、生産性向上による更なる原価低減を通じて付加価値をさらに高める。

③ 成長を後押しする組織づくり

・人的資本への積極的取り組みにより、従業員エンゲージメントを高め、従業員の力を最大限発揮できる清新な組織への改革を加速させる。

・戦略を確実に実行するためのガバナンス体制を強化する。 

当社グループは、上記諸施策を推進することで100年企業へ向けた強固な基盤づくりを行い、更には、地域の皆様や社会に貢献する経営を継続することで、常にステークホルダーに信頼され、選ばれ続ける企業を目指します。

 

(3) 会社の対処すべき課題

コロナ禍からの社会経済活動が正常化する中、今後も緩やかな回復が続くことが期待される一方で、「令和6年能登半島地震」による下押しの影響、世界経済の減速、物価上昇、コスト高、人手不足など、社会環境において不確実性が更に高まっています。そのような変化の中で持続的成長を維持していくために革新的な企業改革を行いつつ、社会や環境に配慮したビジネス活動を推進し、社会貢献することで価値創造に努めてまいります。

しかしながら、長期的な成長と企業価値をさらに高めていくには、以下のような解決すべき課題があると認識しております。

①ガバナンス体制の整備

新たな経営体制に変わり、当社グループはガバナンス体制を強化することを課題として捉えております。取締役会の機能を強化し、意思決定の透明性と迅速性を高め、株主や関係者に対する信頼の向上と企業価値の最大化を図ります。

②人的資本経営の推進

当社グループは、中長期的な経営戦略の遂行および対処すべき課題への取り組みに際して、変化に対応し社会的な価値を創出することのできる優秀な人材の確保・育成が必須であると考えております。意欲のある経験値の高い人材を確保するとともに、持続的な成長を支える人材の育成、個々のパフォーマンスの最大化のため、環境の整備・改善に注力してまいります。

 

③サステナビリティ経営の推進

サステナビリティ経営をさらに推進・強化すべく、組織・体制を整備し持続可能な社会の実現に向けた役割を果たしていきます。

④新規事業の創造

新規事業の創造において、環境や社会の変化に合わせ、お客様の期待を満たすために、既存事業と協力しながら、新しい価値やソリューションを提供する事業領域を掘り起こしていきます。より長期的な視野で未来の市場や社会のニーズを見極め、最先端の技術やビジネスモデルのイノベーションに積極的に挑戦していきます。サステナビリティ経営の観点からも、新規事業の創造は、社会課題の解決と企業価値の向上の両立に寄与する重要な取り組みと考えております。

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

当社グループは、第7次中期経営計画(2023年度~2027年度)にて「ESGを中核に据えた事業運営」を方向性として取り組んでいます。サステナビリティを重要な経営課題として捉え、事業活動において環境、社会、ガバナンスの観点から持続可能な発展を目指しています。

このため、当グループでは2023年4月にサステナビリティ委員会を経営会議の下部組織として設置し、その事務局、運営機能を主とするサステナビリティ推進室を立ち上げました。サステナビリティ委員会は、ESGに関する情報の収集・分析を行い、持続可能な企業価値の向上に向けた方針、戦略の企画・立案・提言を行っています。当委員会は取締役会や社内取締役、常勤監査役、執行役員、内部監査室長等が出席する常務会にて適宜報告を行っています。この報告を通じ、監査役および内部監査室は情報の共有・確認および必要に応じて改善指示等を行っています。また、サステナビリティ推進室は、サステナビリティに関する情報の開示やステークホルダーとのコミュニケーションの強化など、当社のサステナビリティ活動の支援や資源循環の取り組みに関する企画検討・起案を行っています。

 


 

(2)重要なサステナビリティ項目

当社グループにおける重要なサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次の通りです。

①環境、社会、ガバナンスの観点から、持続可能な企業価値の向上を目指すためマテリアリティを掲げ、2030年度に向けたKPIを設定し取り組んでいます。


 


 


 

② ステークホルダーとの積極的なコミュニケーションを通じて、サステナビリティに関する課題を共有し、解決策を模索します。

③ 持続可能な社会の実現に向けたサステナビリティ活動を積極的に推進します。

 

当社は、サステナビリティに関する取り組みを強化することで、企業価値の向上に貢献し、持続可能な社会の実現に向けた役割を果たしていきます。詳細は、当社ウェブサイトを通じて公開しております。(https://www.fukuvi.co.jp/sustainability)

 

(3)人的資本に関する事項

当社グループは、「人がいてフクビがあり、人が成長してフクビが成長する」という考えのもと、会社との信頼関係に基づく従業員の成長と活躍を永続的発展の土台と捉え、個々のキャリア観に応じた多様性のある能力開発と、人材を最大発揮・最大活用できる仕組み並びに安全・安心で働きがいのある環境づくりを推進しています。

   人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針

全従業員が心身共に健康的で活き活きと業務を遂行できることがグループ発展に繋がり、新たなイノベーション

の創造に繋がると考えています。そのためには、安全・安心に関するあらゆる面において、リスクの顕在化と改善が重要であると考え、安全119番通報(不安全状態や行動に周囲の人が気づいたら教える活動)をはじめとする未然防止活動に取り組んでいます。2023年度は、継続的な活動の効果もあり、休業災害は発生しておりません。また、年間を通した健康経営の取り組みが評価され、『健康経営優良法人2024(大規模法人部門)』に認定されています。

 

(a)安全・安心で笑顔あふれる健康的な職場づくり

全従業員が心身共に健康的で活き活きと業務を遂行できることがグループ発展に繋がり、新たなイノベーションの創造に繋がると考えています。そのためには、安全・安心に関するあらゆる面において、リスクの顕在化と改善が重要であると考え、安全119番通報(不安全状態や行動に周囲の人が気づいたら教える活動)をはじめとする未然防止活動に取り組んでいます。2023年度は、継続的な活動の効果もあり、休業災害は発生しておりません。また、年間を通した健康経営の取り組みが評価され、『健康経営優良法人2024(大規模法人部門)』に認定されています。

 

(b)柔軟で働きがいのある環境づくり

組織成果の最大化ひいては持続的な企業価値創造を目指し、管理職を中心として、次世代幹部人材の開発・育成も全社的に実施しています。また、当社グループ固有の専門知識とスキル伝承に向けた取り組みとして、人を教えることができる人材の育成に力を入れています。

 (c)自律的なキャリア形成の促進と自己啓発支援による学ぶ風土づくり

従業員一人一人が能力を最大限に発揮するために、多様なキャリア観に応じた能力開発とキャリア自律を促進しています。希望者には、社内キャリアコンサルタントによる面談や自己申告によるキャリア支援も実施しています。

2023年度は、主に入社5年目までの若手層を対象に、定期的にキャリアを振り返る機会を創出するため、年度ごとに階層別研修とキャリア面談を交互に組み合わせたセルフキャリアドッグの仕組みを構築しています。また、通信教育や資格取得のための継続的な支援を通して自己啓発を推進している中で、多種多様なニーズに応えるべく約7000動画の視聴が可能なeラーニングを導入し、主体的に学ぶ風土づくりを醸成しています。

 (d)持続的な企業価値創造に向けた人材育成

組織成果の最大化、ひいては持続的な企業価値創造を目指し、管理職を中心として、次世代幹部人材の開発・育成も全社的に実施しています。また、当社グループ特有の専門知識とスキル伝承に向けた取り組みとして、人を教えることができる人材の育成に力を入れています。2023年度は、第7次中期経営計画にて掲げたDX戦略の具体的な取り組みとして、全従業員に対しデジタルリテラシーの向上と専門スキルを有する人材の育成を目的に、DX研修を実施しています。

  (e)成長機会と活躍の場の創出による多様な人材の最大発揮・最大活用

経営層をメンバーとする「全社人材開発会議」にて、重要な人材開発施策を審議・決定すると共に、経営戦略に連動した主要ポジションの任免、経営人材・女性管理職候補人材の登用に関する検討と決定を行っています。また、各部門には「部門別人材開発会議」を設置し、人事部門も一体となって人材の発掘や多様な人材が活躍できる環境整備を推進することで、女性の採用拡大や総合職への登用を進めています。2023年度は、女性活躍推進について、2030年度の目標達成に向け計画的に取り組みを進めるべく、第1回サステナビリティ委員会にてマイルストーンを設定しています。また、課題を抽出するために、年代・職種が異なる女性社員による座談会を開催しています。プレシニア層においては、キャリアデザイン研修を開催し、定年後の働き方を含めライフプラン全体について考える機会を提供することで、若い社員の育成や組織の安定力強化など、定年後の活躍を支援しています。

 

②   人的資本に係る「戦略」で記載した方針に関する指標の内容、当該指標を用いた目標及び実績


 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績及び財務状態などに重要な影響を及ぼす可能性のある主なリスクは次のとおりです。当社グループは、各種リスクの所在、発生の可能性並びにその影響度を適切に分析し、リスクの低減、移転並びに回避に努める一方、発現時には逸早く認識し、迅速かつ的確な対応ができるよう体制の整備に努めています。なお、下記事項には、将来に関する事項が含まれますが、当該事項は当連結会計年度末現在において当社グループ自ら判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限定されるものではありません。 

 

(1) 事業環境の変化による影響

当社グループは、住宅建築資材の生産・販売を中核事業としています。このため、個人消費動向、住宅関連税制・消費税の改定並びに長期金利の動向等は、戸建住宅やマンション等の集合住宅の新築・増改築需要に影響を及ぼし、その結果、帳簿価額を回収できないと判断された場合には、固定資産や棚卸資産の帳簿価額に対する減損損失の計上により、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 

 

(2) 原材料の市況変動による影響

当社グループの主要製品は、塩ビ・オレフィン等の汎用プラスチック樹脂を主原料としており、これらの原材料価格の変動を、適時に生産技術の向上により吸収できない場合、あるいは製品価格に転嫁できない場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 

 

(3) 販売先の信用悪化による影響

当社グループは、大手建材問屋あるいは大手商社を主たる販売先とし、取引信用保険の活用等により信用補完を実施する一方で、意図しない集中が発生しないように、信用リスクの分散にも努めていますが、販売先の予期せぬ信用悪化により貸倒リスクが顕在化した場合には、追加的な損失や引当金の計上が必要となり、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 製造物責任による影響

当社グループでは、開発製品等が、予期しない品質問題等により大規模な補償問題を引き起こす可能性があると認識しています。そのため、品質管理基準を明定し、また、開発工程で厳格な品質管理に努める一方、必要に応じて賠償責任保険を付保していますが、補償金額あるいは補償範囲が、想定の範囲を超えた場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 大規模災害等による影響

 当社グループの生産拠点並びに物流拠点の中核は福井県に所在しています。拠点の分散化には配慮していますが、福井県で地震、台風、豪雪等の大規模災害が発生した場合には、事業活動の中断、生産設備の壊滅、物流機能の麻痺等により、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、新型コロナウイルス感染拡大のようなパンデミックや大規模災害により当社グループの基幹事業(製品)に係るサプライチェーンが寸断あるいは大きく毀損した場合にも、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 法規制による影響

 当社グループの事業活動は、環境、製造物責任、知的財産権、建設業、労務等各種の法令、規則の適用を受けます。関連法規の制定、改変には、その適時把握と事前の対応準備に努めていますが、関連法規の改変等は、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 情報流出による影響

 当社グループは、様々な事業活動を通じ、多数の個人情報や機密情報を保有しています。これらの情報については社内規程のもと管理には万全を期しておりますが、万一情報が流出した場合には、社会的信用の失墜や損害賠償請求等により、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

当社グループでは、内部統制システムの再構築を進めておりますが、リスクの抽出、評価、対策の検討・実施並びに効果の検証のプロセスを重ねながら、引続きリスク管理態勢の強化を図っております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の概況

当社グループでは、 2023年度からスタートした第7次中期経営計画「技術を押出し、未来へワクワク(2023年度~2027年度)」に基づき、下記の3つの基本方針に則り具体的施策を実施しました。

 

・循環型ビジネス拡大

建材事業本部では、低炭素社会の実現に向けた商品開発を推進しており、環境配慮型乾式二重床『フリーフロアーE-CP』を新たに発売しました。また、積水ハウス株式会社、エスエスピー株式会社の2社と共同して「塩ビクロス」廃材をアップサイクルしたデザイン建材を開発するなど、「塩ビクロス」のリサイクル促進に向けた取り組みを進めています。

再生木製品事業では、2023年9月には、再生木では業界初となる「エコリーフ」を取得しました。『プラスッド』の環境価値を顧客へ明確にお伝えし、再生木製品事業の強みである「素材の質」と「デザイン性」を高めるとともに、「環境への配慮」を訴求することで競争力の向上と収益拡大を図りました。

 

・強靭な収益基盤構築

第7次中期経営計画において事業ポートフォリオの再構築を重要課題としています。各事業本部にて将来性の高い分野へのリソースシフトや収益力の低い分野の見直しを継続して実施しています。また、新規事業の創出や新市場の開拓に向けて、協業先やアライアンス先の探索に取り組みました。

収益改善においては、原材料の価格変動に対応するため適切な価格設定を行うとともに、高付加価値製品の販売強化を図りました。また、資本効率やキャッシュフローの観点から在庫の最適化にも取り組んでおり、生産計画や物流管理の見直しにより適正水準の維持に努めました。

原価低減では、生産性の向上を目指して押出成形の標準化モデルライン稼働による作業工程の簡素化やコスト削減を図りました。また、物流コストの最適化とお客様サービスの向上の両立を計るべく、拠点の見直しを実施しています。

 

・成長を後押しする組織づくり

全社エンゲージメント調査結果は経営層と共有し、浮かび上がった課題認識を改善に向けた施策に落とし込んでいます。また、将来のタレントマネジメントを見据えて人材情報のデータベース化を進めるとともに、従業員の適性やパフォーマンスに応じた配置を進めました。従業員の健康増進の観点からは、健康経営宣言を発表し「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」に認定されるなど、組織全体として従業員の健康管理に取り組んでいます。

コーポレートガバナンスの強化においては、新たな経営執行体制を見据えて決裁権限の委譲や、社内規程の整備などに着手しました。各事業本部の自主性と戦略性を高めるとともに、意思決定の迅速化を図るなど次期からスタートするCxO体制を機能させる体制を整えてまいります。

DX推進では、基幹システム(ERP)の導入が完了し、業務の効率化や情報の可視化による、ビジネスプロセスの変革や収益構造の改善に向けて取り組みました。また、併行して管理会計システムの導入を進めており、今後、財務戦略の策定や収益管理に生かしてまいります。

 

以上により、当連結会計年度の売上高は、397億35百万円と、前期に比べ0.4%の増収となりました。

利益面につきましては、収益性改善に向けた取り組みによる売上高総利益率改善と、経費抑制から、営業利益17億53百万円(前期比12.8%増)、経常利益21億17百万円(同11.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益17億4百万円(同15.0%増)となりました。

なお、特別利益として退職給付信託資産返還益2億64百万円(前期1億89百万円)を計上しています。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増 減

 

分 類

金 額

(百万円)

構成比

(%)

金 額

(百万円)

構成比

(%)

金 額

(百万円)

増減比

(%)

 

外装建材

5,593

14.1

5,029

12.7

△563

△10.1

 

内装建材

12,744

32.2

12,913

32.5

169

1.3

建築資材

床関連材

7,977

20.2

7,964

20.0

△13

△0.2

 

システム建材

4,066

10.3

3,765

9.5

△301

△7.4

 

30,379

76.8

29,671

74.7

△708

△2.3

産業資材

 

9,188

23.2

10,065

25.3

877

9.5

合 計

 

39,567

100.0

39,735

100.0

168

0.4

 

 

〔建築資材事業〕

建築資材事業では環境配慮型商品ブランド「Fukuvalue」の拡充に注力するとともに、新製品、既存製品問わず新市場に向けた販路の拡大に取り組みました。特に注力製品についてはデジタルマーケティング、ウェブセミナー、展示会を通じて、新たな顧客の開拓と関係強化に努めています。

製品別では、外装建材において樹脂製瓦桟『エコランバー』が堅調に推移した一方で、住宅用防水部材『ウェザータイト』や換気部材が伸び悩み、50億29百万円(同10.1%減)となりました。

内装建材においては、養生材や見切部材が低調に推移しましたが、樹脂開口枠や高性能断熱材『フェノバボード』が順調な伸びを示し、129億13百万円(同1.3%増)となりました。

床関連材においては、床支持具やフリーアクセスフロアが伸び悩みましたが、樹脂系床仕上材、乾式遮音二重床システム部材などが好調に推移し、79億64百万円(同0.2%減)となりました。

システム建材においては、リフォーム用システム建材が堅調に推移した一方で、防蟻関連材が伸び悩み、37億65百万円(同7.4%減)となりました。

こうした結果、建築資材事業の売上高は、296億71百万円(同2.3%減)となりました。

 

〔産業資材事業〕

産業資材事業の売上は、100億65百万円(同9.5%増)で、売上高全体の25.3%を占めました。

インバウンド回復のもと、バス関係の車両部材が堅調に推移しました。乗用車の車載向け精密化工品は、中国市場経済の停滞による影響から、受注は弱含みで推移しました。車載向け部材の落ち込みをカバーすべく、他の分野での受注活動に注力いたしました。

 

 

② キャッシュ・フローの概況

当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前期と比べ9億15百万円(前期末比7.6%)減少し、112億3百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況及びその主な要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益23億98百万円、減価償却費12億53百万円、および棚卸資産の減少額1億47百万円などの収入に対し、売上債権の増加額16億39百万円、仕入債務の減少額9億7百万円、法人税等の支払額6億37百万円などの支出により、合計7億95百万円のプラスとなり、前期比では9億88百万円減少しました。

なお、売上債権及び契約資産の増加額、仕入債務の減少額、その他には当連結会計年度末日が金融機関の休日であった影響によるものが含まれており、これらが当連結会計年度末日に決済されたものとして処理した場合、営業活動によるキャッシュ・フローは、前年同期に比べ10億13百万円増加し、27億96百万円のプラスとなります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、機械設備等の有形固定資産の取得による支出7億71百万円に対し、投資有価証券の売却による収入18百万円などにより、合計8億17百万円のマイナスとなり、前期比では91百万円改善しました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額5億67百万円、リース債務の返済による支出3億24百万円などの支出により、合計9億78百万円のマイナスとなり、前期比では2億14百万円改善しました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製商品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製商品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

このため生産、受注及び販売の状況については、「① 経営成績の概況」におけるセグメント業績に関連付けて示しております。

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

伊藤忠建材㈱

8,106

19.0

7,758

19.5

三井物産プラスチック㈱

3,706

8.7

3,869

9.7

 

 

 

④ 財政状態の概況

 

(資産)

総資産は前連結会計年度末に比べ33億16百万円(前期末比6.5%)増加し、540億76百万円となりました。主な増減要因としましては、流動資産では、現金及び預金が9億15百万円減少した一方で、受取手形、売掛金及び契約資産が8億8百万円増加したことや、電子記録債権が8億63百万円増加したことなどにより、5億25百万円(同1.5%)の増加となりました。これらは主として当連結会計年度末日が金融機関の休日であった影響によるものです。固定資産では、有形固定資産が1億53百万円減少した一方で、無形固定資産が3億68百万円増加、また投資その他の資産が25億76百万円増加したことなどにより、27億91百万円(同17.5%)の増加となりました。

 

(負債)

負債は前連結会計年度末に比べ4億9百万円(前期末比2.5%)増加し、169億14百万円となりました。主な増減要因としましては、流動負債では、未払費用が1億40百万円増加、また賞与引当金が83百万円増加した一方で、支払手形及び買掛金が8億87百万円減少したことなどにより、5億75百万円(同3.9%)の減少となりました。固定負債では、繰延税金負債が7億62百万円増加、またリース債務が2億53百万円増加したことなどにより、9億84百万円(同57.9%)の増加となりました。

 

(純資産)

純資産は前連結会計年度末に比べ29億7百万円(前期末比8.5%)増加し、371億62百万円となりました。主な増減要因は、その他有価証券評価差額金が12億6百万円増加、また利益剰余金が11億37百万円増加したことなどです。株主資本合計は328億26百万円となり、この結果、自己資本は363億30百万円、自己資本比率は67.2%となりました。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り及び予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ、合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り及び予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

なお、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性がある主な見積りとして、以下の会計処理があります。

 

(棚卸資産の評価)

当社グループは、棚卸資産を取得原価で測定しておりますが、正味売却価額が取得原価より下落している場合には、当該正味売却価額で測定し、取得原価との差額を原則として売上原価に認識しております。また、棚卸資産の種類ごとに期間を定め、当該期間に出荷や使用がない場合に営業循環過程から外れた滞留を識別し、収益性の低下の事実を反映して規則的に帳簿価額を切り下げています。そのため、市場環境が予測より悪化して棚卸資産の収益性が低下した場合には、簿価切下げが必要となる可能性があります。

 

(繰延税金資産)

当社グループは、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

(固定資産の減損)

当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績の分析

当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高は397億35百万円と、前期に比べ0.4%の増収となりました。

利益面につきましては、収益性改善に向けた取り組みによる売上高総利益率改善と、経費抑制から、営業利益17億53百万円(前期比12.8%増)、経常利益21億17百万円(同11.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益17億4百万円(同15.0%増)となりました。

なお、特別利益として退職給付信託資産返還益2億64百万円(前期1億89百万円)を計上しています。

当グループが主要マーケットとする国内住宅業界では、アフターコロナの消費行動の変化や建設コスト増の影響もあり住宅着工戸数は依然として厳しい状況が続くと予想されます。建設現場での人手不足や高齢化が深刻化し、職人の確保や技術継承なども懸念しています。

一方で、環境に配慮した住宅や非住宅、リフォーム分野の重点事業領域へ販売戦略を推し進め、新たな市場を創造する活動を継続してまいります。

 

③ 経営成績に重要な影響を与える要因について

当連結会計年度におけるわが国経済は 、コロナ禍からの社会経済活動正常化とともに緩やかな回復基調が続きましたが、「令和6年能登半島地震」による下押しの影響もみられました。今後も緩やかな回復が続くことが期待される一方で世界経済の減速、物価上昇、コスト高、人手不足などにより、依然として先行き不透明な状況が続いております。

住宅業界においては、材料高による建築費の上昇や建築資材の供給不足等の影響もあり、2023年度の新設住宅着工戸数は、戸数800千戸(前年比7.0%減)、床面積62,195千㎡(同9.4%減)となりました。

 

〔新設住宅着工の推移〕

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

前年比 増減数

前年比 

増減率

着工戸数(千戸)

884

812

866

861

800

△61

△7.0%

着工面積(千㎡)

73,107

66,299

71,161

68,651

62,195

△6,456

△9.4%

 

   (出典:国土交通省)

 

 

④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループは、円滑な営業活動のための流動的な資金確保と長期的かつ安定的な資金調達を基本とし、資本効率にも考慮したうえで、運転資金及び設備投資資金については、自己資金又は金融機関からの借入による調達を行っております。また、事業展開等に伴う資金需要に機動的に対応するため、十分な現金及び現金同等物を保有しております。

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

営業活動によるキャッシュ・フロー

1,783

795(2,796)

△988(1,013)

投資活動によるキャッシュ・フロー

△908

△817

91

財務活動によるキャッシュ・フロー

△1,191

△978

214

現金及び現金同等物に係る換算差額

101

85

△16

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

△216

△915(1,085)

△699(1,301)

現金及び現金同等物の期首残高

12,335

12,119

△216

現金及び現金同等物の期末残高

12,119

11,203(13,204)

△915(1,085)

 

(注)( )内は期末休日要因を除いた実質ベースの金額であります。

 

 営業活動によるキャッシュ・フローは、7億95百万円のプラスとなりました。前期比では9億88百万円減少しました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、機械設備等の有形固定資産の取得による支出7億71百万円などにより、8億17百万円のマイナスとなり、前期比では91百万円改善しました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額などにより9億78百万円のマイナスとなり、前期比では2億14百万円改善しました。

これらの結果、現金及び現金同等物の期末残高は、112億3百万円となり、前期比では9億15百万円(前期末比7.6%)減少しました。現金及び現金同等物の自己資本に対する比率は、30.8%(同5.3%減)となりました。

また、期末休日調整後のフリーキャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計)は、前期末比11億4百万円増加し、19億79百万円となりました。インタレスト・カバレッジ・レシオは200.1(同590.1減)となりました。

当連結会計年度末における財政状態は、次のとおりであります。

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度末

当連結会計年度末

増減額

 

流 動 資 産

34,777

35,303

525

 

固 定 資 産

15,982

18,773

2,791

資  産  合  計

50,760

54,076

3,316

 

流 動 負 債

14,804

14,229

△575

 

固 定 負 債

1,701

2,685

984

負  債  合  計

16,505

16,914

409

純 資 産 合  計

34,254

37,162

2,907

 

 

当連結会計年度において親会社株主に帰属する当期純利益17億4百万円を計上したことなどにより、株主資本合計は328億26百万円(前期末比3.7%増)となりました。この結果、自己資本は363億30百万円(同8.4%増)となり、自己資本比率は67.2%(前期比1.2%増)となりました。なお、時価ベースの自己資本比率は33.2%(同10.6%増)であります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループにおいて、研究開発活動は主に当社が行っております。

なお、当社グループの研究開発活動は、以下のとおりであります。

当社グループの研究開発は、既存事業分野で急務となっている研究課題はもとより、中期経営計画に基づく新規事業分野への進出、更には長期的成長の基盤となる基礎研究にも努めております。当社のコアビジネスである住宅・建材分野では、マーケティングを通じてSDGs宣言に則した商品群別ターゲットを設定し、顧客ニーズをつかみ共感を生む価値ある商品開発を目標に、保有技術・資源をベースとしつつ、さらに新技術を活用した研究開発活動を推進しております。

当連結会計年度の研究開発費用として1,133百万円投入しました。左記の額を事業のセグメントに区分することは困難でありますので、省略しております。

 当連結会計年度における主要課題及び研究成果は、次のとおりであります。

(1) 建築資材事業での取り組み

①環境関連製品として、国産間伐材を有効利用した木粉樹脂を原料として使用した再生木プラスッドの戸建て用デッキの表面エンボスを付け意匠性を高めた「ソライエデッキ彫PLUS」を開発しました。また「クリーンOAフロアTN-30、TN-100」、「プラスッド デッキND、ルーバーJF3050」、「フリーフロアーE-CP」について、製品の全ライフサイクルステージにわたる環境情報を定量的に開示する環境ラベルのエコリーフを新たに追加取得しました。

②既存住宅の浴室リフォーム「ヨクリーノ」の商品アイテム拡充として、コンパクトサイズの浴室収納棚「シェルファインS」、浴室用床シート「あんからプラス」に単色(クリーム、ピンク、ライトグレー)を追加しました。また新たに浴室カウンター「Pacott(パコット)」を開発しました。

③食品工場・医薬品工場・厨房等の施設向けに販売してきております不燃R巾木の新企画として、シーリングを十分量施工が可能な「ソリッドライン100ポケット」、台車等による強い衝撃にも耐えうる38㎜厚の「ソリッドラインDX250」を追加開発いたしました。

 

(2)産業資材事業での取り組み

①精密化工品では、反射防止パネル「ハーツラスAR」の更なる製品性能向上と新たな市場開拓に注力しました。「車載用途」では、市場が求める新たな付加価値を加えた新製品を開発しました。「非車載用途」でも、カスタマイズ対応や検査や加工といった後工程を自社内に取り込み、より顧客に寄り添った活動を実施し、精密ビジネス事業拡大において今後に繋がる成果が期待されます。

②物流施設向けの樹脂製フォークガードに、バリエーションの追加や配合見直し(物性向上とコストダウンを両立)等を実施し、大きく売上を伸ばせました。

③業界最高品質の樹脂製イルミネーション部材開発を目標として「光ガイディングバー」の発光性向上に取り組み、車載用途に採用が決まり量産を開始しました。

④顧客から要望された物性や意匠性を備えた機能性配合3つ「メタリック調配合であるフクメタル」「高摺動なPlaslip」「従来のPVCより耐熱性能が優れたハイヒート」を完成させ、顧客への採用が広がってきています。

⑤ビニル系床材において、客先で廃棄される現物見本やデッドストックなどを回収・再利用した床材の開発に取り組み、実現場での施工確認を行いました。今後、生産及び品質の安定化に向けた研究を行ってまいります。

⑥不燃性を付与した内装化粧シートの開発を進め、不燃認定を取得いたしました。今年度中の発売を予定しております。

 

 

(3)その他

①コロナ渦が終焉を迎え、まちに人が多く集まることを見据えて、公共空間向け屋外家具ブランド「ファンダライン」に2種類のベンチを追加し、ラインナップを拡充しました。また、次世代型のベンチを見据えて、照明、充電、情報提供の機能を付与させたスマートベンチを長瀬産業株式会社、キャプテックス株式会社と共同で開発し、実証実験を開始しました。再生木材「プラスッド」を使用したベンチに、蓄電池に車載用バッテリーをリユースするなど、リサイクル、リユースをコンセプトとしており、循環型社会と安心安全な社会の実現に貢献していきます。

②熱可塑性炭素繊維複合材(CFRTP)の生産性向上と製造コスト低減を目的に、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受けて、熱可塑性プリプレグシートのフィルム製膜からプレス成形までの一貫製造プロセスの量産化技術開発に引き続き取り組んでおります。モビリティなどの軽量高強度が求められる部材への展開を目指します。 

 

今後も顧客ニーズをつかみ共感を生む価値ある商品開発を念頭に、快適・安心・安全を提供できるような開発推進にチャレンジしてまいります。