文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは企業理念の中で、存在価値を「信頼の品質と真摯な対応による安心の提供」と定めております。その実現のために「ものづくりのプロセスを、お役立ちで支える」と使命を定め、使命を果たすための目指す姿として「「はじめて」に挑み「違い」をつくる」と定めています。当社はこれまで、専門性の高い独自の技術をもとに事業を展開し、お客様の課題解決に真摯に向き合うことで、ニッチトップ企業として成長してまいりました。今後もこの企業理念をひとり一人が拠り所として活動を行うことで、より良い企業風土と強い企業文化を磨いて強くし、グレートニッチトップ企業へと飛躍することを目指しています。
当社グループは、これらのことを具体化すべく、2025年度を最終年度とする中期経営計画GNT2025(Great Niche Top 2025)を策定し、以下の4つの経営方針のもと事業活動を行っています。
① 海外(管材システム事業・樹脂事業)、半導体関連製品を中心に成長を追求する
② 「違い」をつくり付加価値を高め、利益率を向上させる
③ SDGs視点で事業展開を行い、経済価値と社会価値の両立を図る
④ 新たな社会課題の解決に貢献する新事業を創出する
更に事業ポートフォリオ戦略として、各事業を3つの基本方針、「強化拡大」、「深化・安定成長」、「再構築」に分類し、それぞれに応じた施策を実行することで、継続的な成長と収益力の向上を目指します。
当社グループは、GNT2025に従い、各事業部門が継続的な成長と収益力の向上を目指して課題解決に向けた施策を着実に実行します。2024年度の各事業部門の取り組みは次のとおりです。
管材システム事業は、海外市場において、継続成長が期待される米中の電子産業分野(半導体・液晶等)での深耕と拡販を行い、さらに新興国向けには大口径バタフライバルブ等の戦略商品を投入し、事業拡大を図ります。また、これまでに培った施工技術を活用した樹脂配管のプレハブ化を推進しており、施工における工期短縮や人手不足の課題解決に貢献し、併せて、最適な耐食ソリューションを提案できる人材の育成も進めています。今後も成長が見込める半導体関連市場に対しては、Dymatrix製品の低パーティクル化技術をさらに追求し、商品ラインナップ拡充による事業拡大を推進しており、旺盛なグローバル需要に応えるために新工場建設の検討に着手しました。製造については、デジタル化推進に注力し、製造現場データの見える化によりボトルネックの解消を進め、需要拡大に対応する製造能力の増強を推進します。
樹脂事業は、薄肉軽量化や複雑化する鋳物部品に対応し、お客様における生産性向上にも寄与する次世代の戦略商品の開発を推進します。また、多様な鋳造工程に最適な製品を提案し、自動車のEV化に伴う新たな事業機会を追求します。海外市場においては、これらの日本で培った技術等の展開を加速させ、事業拡大を図ります。現場発泡断熱材においては、断熱材の高断熱化ニーズに対応した原液システムや、施工機械の開発に加え、現場施工のしやすさや、断熱性能を担保できる施工力の向上の実現を目指した体制を確立します。電子材料においては、当社の強みである合成技術・精製技術・低メタル化技術を活かして用途領域拡大を目指します。また将来の半導体市場の需要増に応えるべく、増設完了した南通工場(中国)および間もなく竣工する電材第二工場(愛知)のフル生産を早期に実現し、さらに中国第二工場と国内の第三工場の検討も進めます。
水処理・資源開発事業は、水処理事業において多種多様な排水処理技術と工事力を磨き、最適なソリューション提供で収益力を向上します。また、省エネ、創エネに繋がる排水処理技術の探求により、バイオガス発電分野など新領域の事業拡大を目指します。さらに水処理施設の維持管理分野においては、遠隔監視システムの改良により効率的サービスを新たに提供し、環境薬剤分野では消臭剤に加えて水処理改質剤、高分子凝集剤の販売を展開します。資源開発事業では、地熱発電分野における蒸気井案件も積極的に取込み、再生可能エネルギーの普及に貢献し、掘削の新機材導入で、工期短縮・コスト削減・安全対策の強化実現を目指します。
新事業の探索については、「循環式閉鎖型陸上養殖」等、社会課題(環境汚染・タンパク質クライシス)に貢献する事業化の可能性について引き続き検討します。
投資戦略については成長を加速化させるべく2023年度中にGNT2025の修正を行い、2025年度までの中計期間に420億円の投資を見込んでおります。財務戦略は、設備投資・投融資の資金の源泉を資産の効率化を含む営業キャッシュ・フローとし、不足分はD/Eレシオ0.3を目安に借入による調達を実施してまいります。また株主還元については、業績動向・財務体質・将来のための投資に必要な内部留保等を総合的に勘案しつつ安定配当を確保し、継続的な収益拡大の達成による増配を目指します。
2025年度を最終年度とする中期経営計画GNT2025における連結数値目標を下表のとおり設定しています。なお、昨今円安が大きく進行しており、数値目標の前提とした想定為替レート1ドル120円から、2024年度の同1ドル150円にて再計算すると下表右端列に示す数値となります。
最終年度(2025年度)における連結数値目標
当社は、サステナビリティを巡る課題に積極的・能動的に取り組むことを重要な経営課題と認識しており、これに対応するため、下図のように取締役会の直下に社長執行役員を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置しております。また、サステナビリティに関する考え方として、「旭有機材グループ サステナビリティ基本方針」を次のとおり定めております。

上記方針に基づいたサステナビリティ活動を推進するうえで特に重要なテーマを以下のとおり定め、テーマごとに分科会等を設置し、グループ一体となって活動しております。
・人的資本経営の推進
・人権の尊重
・気候変動など地球環境に配慮した事業活動の推進
・知財、無形資産に対する投資および活用促進
・取引先(お客様)との公正・適正な取引(品質マネジメントシステムの継続的な改善)
・取引先(購買先)との公正・適正な取引(持続可能なサプライチェーンの構築)
・事業を通じて社会課題の解決に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献する(SDGsへの取り組み)
・企業活動を行う地域社会へ貢献する
当社は、サステナビリティを巡る様々な課題に積極的・能動的に取り組むことを重要な経営課題と認識しており、これに対応するため、「サステナビリティ推進委員会運営規程」を制定し、取締役会の直下に社長執行役員を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置しております。サステナビリティ推進委員会は、半期に1回以上開催することとなっており、当社の社長執行役員のほか、事業部・本部を所管する執行役員および常勤監査等委員が参加し、活動状況のモニタリングをしております。
また、取締役会はサステナビリティ推進委員会から年に1回以上報告を受け、監視・監督を行っていきます。
人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
当社は、次のような「人事方針」を定め、人材の多様性の確保、人材の育成及び社内環境整備に努めております。
(注)各連結子会社における従業員の規模や制度が大きく異なるため、目標および実績とともに、人事方針も提出会社単体のものとしております。
当社グループのサステナビリティに関するリスク及び機会については、サステナビリティ推進委員会及びその分科会の活動を通じて管理を行っています。
特に、リスクの識別・評価、全社リスクへの統合プロセス、管理のプロセスについては、以下のとおりです。
・リスクを選別・評価するプロセス
当社では、気候関連リスクを含む、当社グループの事業活動にかかわるリスクを未然に認知・評価し、これを可能な限り排除・軽減して、経営の一層の安定を図るため「リスク管理規程」を定め、取締役会の直下にリスク管理委員会を設置しております。気候関連リスクに関しては、サステナビリティ推進委員会の分科会にて当社グループの事業(管材システム事業、樹脂事業、水処理・資源開発事業)への影響を考慮し、新規リスクの抽出・評価を行った後にサステナビリティ推進委員会にて、管理すべき「重要リスク」を特定することとしています。
・全社のリスク管理への統合プロセス
サステナビリティ推進委員会で「重要リスク」と特定されたリスクについては、そのリスクの軽減のためにリスク管理委員会にて対応方針を検討・決定します。取締役会はリスク管理委員会の活動状況について少なくとも年に一回以上報告を受けて、必要に応じて指示を行い、リスク管理委員会を通して各本部・事業部に展開し、その対応状況をモニタリングします。
・リスクを管理するプロセス
全社リスクを管理するリスク管理委員会は定期的に開催され、各本部・事業部を管理するリスク管理責任者からの報告を評価し、全社リスクの把握と対応方針を審議し、取締役会に報告しております。また、リスク管理委員会はサステナビリティ推進委員会が特定、評価した気候変動リスクのうち、時間軸が短期かつ緊急性を要するリスクに関して対応策の実施、モニタリングを行います。
人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた指標及び目標
(注)目標及び実績は、各連結子会社で従業員の規模や制度が大きく異なるため、各指標を連結ベースにまとめることが困難であることから提出会社単体の記載としております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、「内部統制システム構築の基本方針」に基づき、社内規程として、「リスク管理規程」を設け、事業活動にかかわるリスクを「経営戦略リスク」と「業務リスク」の2つに分類し、それぞれ管理方法を定めリスク管理を行っています。
「経営戦略リスク」については、M&Aや新規事業等の利益または損失の両面を生じさせるリスクが該当しますが、最適なコーポレート・ガバナンス体制の構築および当社の取締役会・経営会議等の主要会議での充分な審議、ならびに当社の決裁権限規程・グループ会社運営規程等の諸規則に基づく適正な経営判断により、適切に管理しています。また、これら一連の意思決定の仕組みと運用状況の有効性を評価・検証の上、継続的改善を図っています。
「業務リスク」については、業務遂行を阻害し、損失や不利益のみを生じさせるリスクが該当しますが、より適切な業務リスクの管理を実行するために、本部・事業部担当執行役員を「リスク管理責任者」として定め、当社取締役会の直属機関として、社長執行役員を委員長とする「リスク管理委員会」を設置し、リスクの洗い出しや評価をもとに、重要リスクを決定しています。リスク管理委員会では、リスクの顕在化を未然に防止するための予防策や、顕在化した場合の対処方法等を報告・検討し、対策状況のモニタリングを定期的に実施しています。

当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性があると考えられる業務リスクについては、重要項目ごとに以下のようなものがあります。ただし、すべてのリスクを網羅したものではなく、現時点で予見できない事項または重要とみなされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性がありますが、リスク管理委員会で定期的に業務リスクを見直すことで、リスクの発生回避、およびリスクが顕在化した際の影響の極小化に最大限努めています。
当社グループは、国内外に生産・営業拠点を有し、製品の製造・販売を行っています。投資した市場における予期しない法令改正・規制強化や、戦争・紛争等の政治的又は社会的混乱が顕在化することによって、海外での事業活動に支障が生じ、当社グループの生産活動および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当リスクに対しては、現地のコンサルタントや領事館の情報を適宜取得しており、リスクが顕在化した際の被害を最小限に食い止める措置を講じています。
当社グループは、国内においては、宮崎、愛知、栃木、広島に、海外においては、アメリカ、中国、インド、メキシコに生産工場を有し、製造・加工を行っております。設備の故障、メンテナンス不良等に起因して火災・爆発・漏洩等の事故が発生することで、従業員の労働災害はもちろんのこと、取引先への供給不能、地域被災者への賠償等、当社グループの信頼性や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
各工場では、製造設備の定期的な点検及び設備保守、安全活動の推進、災害・事故を想定した定期的な訓練の実施、および損害保険加入等の対策を講じています。
当社グループでは、急速な既存事業の拡大により、人材不足が深刻な問題と認識しております。新卒採用に加えて、中途採用を増やすとともに、(社員の紹介を通じて採用する)リファラル採用制度を導入することで人材の確保に努めています。
人材の流出は、技能やノウハウの継承に支障をきたし、特に若手中堅社員が退職することで会社の成長力が低下するリスクが想定されます。
当社グループでは、先輩社員が新入社員の育成を支援するエルダー制度の導入、研修制度や自己啓発支援講座の充実、働きやすい労働環境の整備、および外部機関による相談窓口を設置することにより人材の定着に取り組んでいます。
ハラスメントに起因した損害賠償義務の発生や、これによる社会的信用の低下によって取引関係の維持・獲得や人材の確保に支障が生じ、当社グループの事業活動に重要な影響を与えるリスクが想定されます。
当社グループでは、旭有機材グループ行動規範に「ハラスメント行為の禁止」を掲げ、当社グループの全ての役員・従業員にハラスメント行為を禁止するとともに、社員教育の実施、内部通報窓口の設置・運用等により、ハラスメントに関する上記リスクの低減に取り組んでいます。
当社グループの経営資金の源泉は、主に営業活動によるキャッシュ・フローから得ております。当社は、十分な手元資金を有しており、また銀行からの借入枠もあり、資金調達のリスクは極小化されております。一方グループ会社では、急激な経済悪化などにより重要な取引先が倒産した際に、営業活動によるキャッシュ・フローが減少し、資金繰りが困難になるリスクが想定されます。
当社グループでは、緊急事態に備えて、各会社で手元資金を保有しており、それでも資金が不足する場合には、当社がグループ会社にファイナンスを実行し、または各グループ会社が銀行の借入枠を設定し、これを活用することで、資金繰りに関するリスクを回避するなど、資金面での安定化に取り組んでいます。
サイバー攻撃や不正アクセス等の不測の事態により、万一、当社のシステムが正常に利用できない場合や個人情報が外部へ漏洩した場合、当社グループの営業活動や業務処理の遅延、信用の失墜およびそれに伴う売上高の減少や損害賠償費用の発生等により、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、情報のセキュリティレベルの維持向上を図ることを目的として、外部によるサイバーリスク評価の実施、および「情報管理基本規程」に沿った定期的な社員教育や啓蒙を行うなど、情報システムの適切なセキュリティ対策を講じています。
当社製品の模倣品に対して有効な特許が登録できず、当社保有の知的財産権が認められないことにより巨額の損失に繋がる可能性があります。また一方で、当社製品が他社の知的財産権を侵害し、過去に遡って巨額のライセンス料や損害賠償の支払いが発生する可能性や、販売差し止めに繋がるリスクがあり、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社では、従業員向けに知的財産権に関する定期的な教育・研修を実施するとともに、当社従業員による知財侵害者発見奨励制度を導入し、知的財産権保護に努めています。また、他社の知的財産権の侵害を未然に防止するために、先行する知的財産権の調査を徹底するとともに、外部の特許事務所を活用するなどの対策を講じています。
当社グループは、お客様に製品・サービスを提供しており、その多くが掛売り又は手形取引となっています。重要なお客様が破綻し、その債権が回収できない場合には、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、定期的な信用調査や信用に応じた取引限度額の設定等を行い、債権回収リスクの回避に努めています。
当社は、ISO9001に基づいた厳格な品質基準のもと、製品の品質確保に細心の注意を払っています。しかしながら製品に欠陥が生じた場合、欠陥に起因する直接的・間接的損害に対して、当社は賠償責任保険で十分補償しきれない賠償責任を負担する可能性や多大な対策費用の支出が生じる可能性があります。また当該問題に関する報道により、当社のブランドイメージの低下、顧客の流出等を招き、当社の事業、経営成績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、不適合品を出さないよう製造品質手法の構築と定期的な見直しを実施するとともに、クレーム発生時の徹底した原因追求と再発防止対策の立案・実施等の措置を講じています。
当社グループは、グローバルに事業活動を展開しており、各国・地域において法令等の適用を受けています。そのため、これらの法令等に違反し、罰金等の支払義務が生じる、制裁により事業活動の維持・発展が不可能又は著しく困難となる、社会的信用を失い事業に支障をきたす、などの事態が生じ、当社グループの事業活動に重要な影響を与えるリスクが想定されます。
当社グループは、旭有機材グループ行動規範に「法令遵守」を掲げ、当社グループの全ての役員・従業員に法令の遵守を求めるとともに、事業活動に関連する法令等に関する社員教育の実施、法改正情報の収集、法改正対応その他の法令対応の実施、法令違反行為に対する厳格な対応、定期的な内部監査の実施等により、上記リスクの低減に努めています。
当社の製品は、塩ビ樹脂やフェノール樹脂等を用いており、石油系原料の占める比率が高く、これら素材が高騰し、製品価格への反映が遅れる場合や、原材料の需給バランスが崩れ、供給不足になった場合、当社の生産活動および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクを回避すべく、日頃より原材料購入先の情報を幅広く収集し、特定の企業に偏ることなく調達を進めることで最適な価格で必要数量の原材料購入を行っています。なお、原材料が高騰した場合においては、適時適切に製品価格へ反映していきます。
需給バランスが崩れ供給不足が発生した場合に備えて、日頃より複数社から調達することでそのリスクを回避できるようにしております。
当社グループでは、大規模な災害が発生した際に、従業員の安全被害、工場損壊、倉庫物流機能停止、原材料資材調達不能などにより事業継続に多大な影響が発生する事態を想定し、国内の事業所・製造拠点において緊急時対応計画の策定、災害訓練実施、災害対応マニュアル整備などを進めることで従業員等の人命の安全確保と事業への影響の極小化に努めます。
業績等の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
管材システム事業においては、基幹製品に関連する国内の設備投資は全体的には穏やかな回復傾向で推移しました。海外においては、電子産業関連の工場建設需要が引き続き伸長した一方で、ダイマトリックス製品に関連する半導体製造装置市場においては、前年度後半からの需要低迷が継続しました。
樹脂事業においては、電子材料製品に関わる半導体デバイス市場にて、前年度下期後半からの市場の低迷が継続しました。素形材製品に関連する市場の自動車販売台数は、堅調に推移しました。また発泡材料製品に関連する国内のマンション住宅着工件数については前年度に比べ若干減少傾向にありました。
この結果、当連結会計年度の売上高、及び各利益は、主に海外販売及び電子産業関連工場建設向け販売が増加したことにより、過去最高となりました。売上高は87,426百万円(前年同期比+13.4%)、営業利益は15,576百万円(前年同期比+30.4%)となりました。
為替差益を計上したこと等により、当連結会計年度の営業外損益の純額は500百万円の利益で、前連結会計年度比+307百万円(前年同期比+159.1%)となりました。
この結果、経常利益は16,076百万円(前年同期比+32.4%)となりました。
事業構造改善費用を計上したこと等により、当連結会計年度の特別損益の純額は101百万円の損失で、前連結会計年度比+46百万円(前連結会計年度の特別損益の純額は147百万円の損失)となりました。
経常利益の16,076百万円に特別損益の101百万円を減算し、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は15,974百万円となりました。これから法人税、住民税及び事業税4,319百万円及び法人税等調整額133百万円を減算し、非支配株主に帰属する当期純利益141百万円を減算した親会社株主に帰属する当期純利益は11,382百万円(前年同期比+20.8%)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(管材システム事業)
管材システム事業は、樹脂バルブを主力製品として樹脂管材市場を拡大することを基本戦略としています。耐食問題の解決と樹脂管材の機能性を追求した製品開発により、お客様へのお役立ちに注力した営業活動を推進しています。
国内の樹脂バルブ等の基幹製品の販売は、旺盛だった設備投資が当下期からは全体的に落ち着きが見られ、市場の需給バランスが回復しました。一方、樹脂配管材料等を用いたエンジニアリング事業は半導体関連の大型案件の進捗に伴い堅調に推移しました。その結果、国内の売上は前年度を上回りました。
海外では、米国においては、半導体の工場建設に伴う需要は落ち着きつつも底堅く継続しており、中国においては、電子産業関連の工場建設に関わる設備投資に伴う需要が継続し、円安の影響もあり、売上は前年度を上回りました。
半導体製造装置向けのダイマトリックス製品は、国内売上は増加しましたが、韓国における需要停滞の継続、米中摩擦による中国での投資遅延の影響が大きく、売上は前年度を下回りました。
利益面においては、人件費の増加や原材料価格高騰の影響があったものの、主に海外で売上が増加したことに加え、利益率の高い半導体工場向け仕入製品の販売増や円安の影響もあり前年度を上回りました。
この結果、当セグメントの売上高は57,464百万円(前年同期比+18.4%)、営業利益は13,691百万円(前年同期比+28.3%)となりました。
(樹脂事業)
自動車や建設機械等に必要な鋳物製造に用いる素形材製品では、お客様の製造品質や生産性の向上、臭気低減による作業環境の改善など、国内外共に多様な鋳造工程に最適な製品を提案することでお客様へのお役立ちに取り組んでいます。前年度の原料価格高騰は今年度も高止まりの状況でしたが、それに対応した適正価格の販売を実施出来ました。また、自動車販売台数は堅調に推移するなか、お客様のニーズにマッチした提案営業を推進し、国内外共に売上は前年度を上回りました。
発泡材料製品は、現場施工により最終製品となることから、施工のしやすさに加え断熱材としての性能を担保できる技術向上を推進する等、お客様への安心・安全の提供に取り組んでいます。現場発泡断熱材においては、関東及び関西エリアの再開発に伴う大型物件の獲得が好調であったことに加え、トンネル掘削用の土木材料においては、施工現場に適した製品や工法の提案に積極的に取組み、売上は前年度を上回りました。
電子材料製品は、半導体デバイス用途に必須となる電子材料の低メタル化技術を追求し、半導体の高度化に貢献しています。国内では引き続き半導体デバイス需要の停滞と販売先における在庫調整の影響を受けましたが底が見えつつある状況であるのに対して、中国では液晶をはじめとしたFPD分野の需要が強く、結果として売上は前年度を上回りました。
利益面においては、当社単独及び関係会社の売上増により、全体では前年度を上回りました。
この結果、当セグメントの売上高は22,267百万円(前年同期比+8.4%)、営業利益は1,528百万円(前年同期比+90.9%)となりました。
(水処理・資源開発事業)
水処理事業は、お客様のニーズに基づいた水処理設備や、水資源を有効に活用できる水再生システムの設計・施工を行っています。官庁及び民間工事は共に、工事完工件数の増加や工事が順調に進捗したことにより売上は前年度を上回りました。
資源開発事業は、再生可能エネルギーである地熱発電の蒸気井などの掘削工事や温泉開発工事を行い資源の有効活用に貢献しています。温泉開発工事は、計画通りに案件が進捗しましたが、地熱掘削工事は案件の延期等により、売上は前年度を大きく下回りました。
メンテナンス事業及び環境薬剤事業は、施設や設備の安定稼働のためのサービスや水処理薬剤を提供することでお客様へのお役立ちに注力しています。メンテナンス事業は、緩やかな回復基調で推移し、売上は前年度を上回りました。環境薬剤事業は製品出荷量が増加したことにより売上は前年度を上回りました。
利益面においては、水処理事業における官庁・民間工事、温泉設備工事、メンテナンス事業及び環境薬剤事業の売上の増加、収益の改善により前年度を上回りました。
この結果、当セグメントの売上高は7,695百万円(前年同期比△4.0%)、営業利益は492百万円(前年同期比+4.2%)となりました。
当連結会計年度末における総資産は、101,371百万円(前年同期比+17.5%)となりました。
流動資産は、主として現金及び預金や棚卸資産が増加したことなどから、66,660百万円(前年同期比+19.6%)となりました。
固定資産は、主として建物及び構築物や建設仮勘定が増加したことなどから、34,711百万円(前年同期比+13.7%)となりました。
流動負債は、主として短期借入金が増加したことなどから、24,374百万円(前年同期比+17.4%)となりました。
固定負債は、主として長期前受金が増加したことなどから、5,324百万円(前年同期比+23.5%)となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことなどから71,673百万円(前年同期比+17.2%)となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ4,833百万円増加し、18,761百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により獲得した資金は、売上債権の増加2,846百万円、法人税等の支払額4,862百万円などの資金減よりも、税金等調整前当期純利益15,974百万円などの資金増が上回ったため、9,698百万円(前年同期は5,841百万円の資金獲得)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、有形固定資産の取得による支出4,098百万円などの資金減により、4,649百万円(前年同期は4,836百万円の資金使用)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は、配当金の支払額1,742百万円、自己株式の取得734百万円などの資金減により、546百万円(前年同期は1,871百万円の資金使用)となりました。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製造費のほか、原材料の仕入れ、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金や設備投資資金の調達につきましては、自己資金及び金融機関からの借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は4,288百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、18,761百万円となっております。
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当連結会計年度における管材システム事業、樹脂事業及び水処理・資源開発事業の受注実績は、次のとおりであります。
なお、管材システム事業の一部、樹脂事業の一部及び水処理・資源開発事業を除くその他の事業については、見込み生産を行っております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2. 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
※前連結会計年度のHarrington Industrial Plastic LLCについては、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」、達成状況は、「① 経営成績」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動は、各事業部門の顧客ニーズを的確に把握し、基盤事業の強化・拡大を図るとともに、各事業の周辺分野の探索を行い、新規事業確立に向けた研究開発を推進してまいりました。
当連結会計年度における当社グループの研究開発スタッフは114名であり、当連結会計年度の研究開発費の総額は
当連結会計年度における各セグメント別の主要研究開発の概要と成果は、次のとおりであります。
当セグメントにおきましては、「“流れる”を支える」のスローガンの下、 商品ラインナップ拡充を中心に大口径バタフライバルブの800,900mmのラインナップ、樹脂製アクチュエータを搭載したバタフライバルブおよびダイヤフラムバルブの開発が完了し、販売を開始しました。また、お客様におけるものづくりプロセス進化に対応するため、 既存製品の一層の品質向上の取組みも継続的に推進しております。また、半導体製造装置向けの精密バルブにおいては、半導体の微細化に対応するため、バルブからの発塵抑制に関する独自の設計手法・製造技術の検討を進めており、特許出願による知的財産権確保にも努めております。
以上の結果、当セグメントに係る研究開発費は
当セグメントにおきましては、近年、高まる環境対応要求に対して研究開発を推進し、引き続き製品のラインナップ拡充を図りました。
素形材分野においては、環境対応型レジンコーテッドサンドであるヘキサパスの更なる臭気低減、鋳造後の鋳型の離形性能を改善した新規レジンコーテッドサンドの開発、環境対応型コールドボックス用樹脂の開発を継続的に推進しました。
発泡材料分野においては、現場発泡ウレタンで世界最高クラスの断熱性能を開発し、新製品『BEXUR(ベクサー)』として販売を開始しました。また、土木用途ではトンネル掘削現場における排水の環境負荷低減を目標に地山固結材AGSRの開発改良を完了し、その販売を開始しました。
電子材料分野においては、低メタル化技術を追究するとともに、最先端の半導体に必要な低メタルの樹脂製品開発を推進しました。
以上の結果、当セグメントに係る研究開発費は
当セグメントにおきましては、環境負荷の低減、お客様のコスト削減、省力化に貢献するため、地熱掘削資機材の改良、中水施設における再生塩素システムの改良、メタンガスを活用したバイオガス発電など新領域に向けた開発、産業廃棄物削減薬剤の開発を推進しました。
以上の結果、当セグメントに係る研究開発費は