第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針及び経営戦略等

当社グループは企業理念の中で、存在価値を「信頼の品質と真摯な対応による安心の提供」と定めております。その実現のために「ものづくりのプロセスを、お役立ちで支える」と使命を定め、使命を果たすための目指す姿として「「はじめて」に挑み「違い」をつくる」と定めています。当社はこれまで、専門性の高い独自の技術をもとに事業を展開し、お客様の課題解決に真摯に向き合うことで、ニッチトップ企業として成長してまいりました。今後もこの企業理念をひとり一人が拠り所として活動を行うことで、より良い企業風土と強い企業文化を磨いて強くし、グレートニッチトップ企業へと飛躍することを目指しています。

 

当社グループは、これらのことを具体化すべく、2025年度を最終年度とする中期経営計画GNT2025(Great Niche Top 2025)を策定し、以下の4つの経営方針の下事業活動を行っています。

①    海外(管材システム事業・樹脂事業)、半導体関連製品を中心に成長を追求する

②    「違い」をつくり付加価値を高め、利益率を向上させる

③    SDGs視点で事業展開を行い、経済価値と社会価値の両立を図る

④    新たな社会課題の解決に貢献する新事業を創出する

 

さらに事業ポートフォリオ戦略として、各事業を3つの基本方針、「強化拡大」、「深化・安定成長」、「再構築」に分類し、それぞれに応じた施策を実行することで、継続的な成長と収益力の向上を目指します。

 

(2) 経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは、GNT2025に従い、各事業部門が継続的な成長と収益力の向上を目指して課題解決に向けた施策を着実に実行します。2025年度の各事業部門の取り組みは次のとおりです。

管材システム事業は、米国および中国をはじめとする電子産業分野における販路の拡大および深耕に継続して取り組んでまいります。加えて、今後一層の拡大を目指す海外市場の中でも、とりわけ中東・アフリカ地域においては、海水淡水化施設向けに高耐久・長寿命の大口径バタフライバルブ等の戦略商品を投入することにより、事業の拡大を図ってまいります。加えて、設計・加工・施工の技術力を活かしたエンジニアリングサービスを拡充し、工期短縮や人手不足といった社会課題の解決に貢献してまいります。また、最適な耐食ソリューションを提供できる体制の構築にも注力します。

半導体分野では、Dymatrix製品の低パーティクル化による技術革新への貢献や商品ラインナップの拡充を通じて、世界的な需要に応える体制を強化しています。これに伴い、新工場の建設についても具体的に検討を進めています。製造現場では、デジタル化とデータの見える化を推進し、ボトルネックの解消と生産能力の向上を図っております。

樹脂事業は、電子材料分野において、合成・精製・低メタル化といった当社のコア技術を活かし、用途領域の拡大と高付加価値製品の安定供給を推進します。愛知県の第二工場の生産性向上と新製品展開により供給体制を強化するとともに、中国における第二工場の早期稼働を目指します。素形材事業は、薄肉・軽量化や形状の複雑化に対応した次世代鋳物製品の開発に注力し、顧客の生産性向上に貢献します。併せて、CO削減や作業環境の改善といった社会的要請に応える製品開発を推進し、日本で培った技術を活かして海外市場での拡大を図ります。現場発泡断熱材については、2025年度からの省エネ基準適合義務により、新築住宅での断熱工事が必須となることから、高断熱化へのニーズが急速に高まると見込まれています。この動きを受けて、当社ではBEXURの正式販売を開始し、原液システムや施工機械の開発、さらに断熱性能を確保するための施工および品質管理体制の整備に取り組んでまいります。

水処理・資源開発事業は、水処理事業において排水処理技術と施工力の強化により、最適なソリューション提供を実現し、収益力の向上を図ります。バイオガス発電など省エネ・創エネ分野への展開を進めるとともに、遠隔監視システムの改良による効率的な維持管理サービスの提供を推進します。環境薬剤分野では、水処理改質剤や高分子凝集剤、水質向上剤の開発・販売を展開します。資源開発事業においては、地熱発電の蒸気井案件への積極的な取り組みにより、再生可能エネルギーの普及に貢献します。掘削機材の導入を通じて、工期短縮・コスト削減・安全対策の強化を図ります。

新事業の探索は、タンパク質クライシスなどの社会課題の解決に資する「循環式閉鎖型陸上養殖」の事業化可能性を引き続き検討します。あわせて、スタートアップや大学との連携を通じて、低メタル化技術などの中核技術の深化も推進していきます。

投資戦略については成長を加速化させるべく2023年度中にGNT2025の修正を行い、2025年度までの中計期間に420億円の投資を見込んでおります。財務戦略は、設備投資・投融資の資金の源泉を資産の効率化を含む営業キャッシュ・フローとし、不足分はD/Eレシオ0.3を目安に借入による調達を実施してまいります。従来の方針を見直し、2025年度より、業績動向、財務体質、将来のための投資に必要な内部留保等を総合的に勘案し、2030年度までの期間において、1株当たりの年間配当金は前年以上を維持する累進配当とし、継続的な収益拡大の達成による増配を目指します。あわせて総還元性向は財務の健全性(D/Eレシオ0.5以下)を考慮しながら6年間累計として50%を目安とします。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

2025年度を最終年度とする中期経営計画GNT2025における連結数値目標を下表のとおり設定しています。

 

最終年度(2025年度)における連結数値目標

GNT2025

数値目標

連結売上高

870億円

連結営業利益

120億円

売上高営業利益率

14.0%

EBITDA

160億円

ROE

11%

ROIC

9%

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社は、サステナビリティを巡る課題に積極的・能動的に取り組むことを重要な経営課題と認識しており、これに対応するため、下図のように取締役会の直下に社長執行役員を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置しております。また、サステナビリティに関する考え方として、「旭有機材グループ サステナビリティ基本方針」を次のとおり定めております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。


 

<旭有機材グループ サステナビリティ基本方針>

旭有機材グループはものづくりを支える企業として、世界の人々に対しSDGs視点で取り組むお客様をお役立ちの精神で支え、経済価値と社会価値の両立を目指しています。当社グループは、企業理念の中で存在価値を「信頼の品質と真摯な対応による安心の提供」と定め、その実現のために「ものづくりのプロセスを、お役立ちで支える」という使命に基づいた事業活動を行っています。また、現状にとどまらず変化を先取りし成長を続けるために、目指す姿として「「はじめて」に挑み「違い」をつくる」と定め、企業理念に基づく事業活動を行うことで持続的な企業価値の向上を目指し、その事業活動とサステナビリティ推進活動を通じて持続可能な社会の実現へ貢献してまいります。

 

上記方針に基づいたサステナビリティ活動を推進する上で特に重要なテーマを以下のとおり定め、テーマごとに分科会等を設置し、グループ一体となって活動しております。なお、分科会の体制及び活動方針は当社コーポレートサイト(https://www.asahi-yukizai.co.jp/sustainability/)に掲載しております。

・人的資本経営の推進

・人権の尊重

・気候変動など地球環境に配慮した事業活動の推進

・知財、無形資産に対する投資及び活用促進

・取引先(お客様)との公正・適正な取引(品質マネジメントシステムの継続的な改善)

・取引先(購買先)との公正・適正な取引(持続可能なサプライチェーンの構築)

・事業を通じて社会課題の解決に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献する(SDGsへの取り組み)

・企業活動を行う地域社会へ貢献する

 

ガバナンス

当社は、サステナビリティを巡る様々な課題に積極的・能動的に取り組むことを重要な経営課題と認識しており、これに対応するため、「サステナビリティ推進委員会運営規程」を制定し、取締役会の直下に社長執行役員を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置しております。サステナビリティ推進委員会は、半期に1回以上開催することとなっており、当社の社長執行役員のほか、事業部・本部を所管する執行役員及び常勤監査等委員が参加し、活動状況のモニタリングをしております。

また、取締役会はサステナビリティ推進委員会から年に1回以上報告を受け、監視・監督を行っています。2024年度は、取締役会にてサステナビリティに関する情報開示について協議し、コーポレートサイトにおける分科会の体制及び活動方針等の開示の充実を決定し、実施しました。また、2024年度の分科会活動の概要やサステナビリティ推進活動の体制見直し・強化等に関する取締役会報告を行い、事業戦略とサステナビリティ推進活動の一体化の必要性及び専門部署の設置等について協議がなされました。

戦略のうち重要なもの

①気候変動など地球環境に配慮した事業活動の推進に関する戦略

分析の前提

シナリオ分析については、国際エネルギー機関(IEA: International Energy Agency)で公表されているNZE2050や、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC: International Panel on Climate Change)で公表されているSSP5-8.5等を参照し、「脱炭素シナリオ(1.5℃~2℃シナリオ)」と、「高排出シナリオ(4℃シナリオ)」の2つのシナリオを設定し、2030年における当社への影響を分析しております。

 

1.5℃~2℃シナリオ(脱炭素シナリオ)

気候変動の影響を抑制するためにカーボンニュートラル実現を目指した取り組みが活発化し、世界の平均気温を産業革命期以前と比較して1.5~2℃未満に抑えることを目指したシナリオ。1.5℃シナリオでは、移行リスクの中でも政策・法規制リスクの影響が2℃シナリオに比べて大きくなると想定されている。

<参考にしたシナリオ>

 ・ Net Zero Emissions by 2050 Scenario

 ・ IPCC SSP1-2.6

 ・ PRI Forecast Policy Scenario

 

4℃シナリオ(高排出シナリオ)

気候変動対策が現状から進展せず、世界の平均気温が産業革命期以前と比較して今世紀末頃に約4℃上昇するとされるシナリオ。物理リスクにおける異常気象の激甚化や海面上昇リスクによる影響が大きくなると想定されている。

<参考にしたシナリオ>

 ・ IPCC SSP5-8.5

 

 

気候関連のリスクおよび対応策の特定

分類

要因

財務への潜在的な影響

財務インパクト

対応策

リスク

機会

移行リスク

政策・規制

炭素税導入・炭素税率の上昇

・炭素税が導入され、CO2排出量に対して炭素税の負担が発生

・電気料金の上昇による製造費用の増額

・炭素設備機器への投資コストの増加

・原油価格の低下により樹脂製品の製造コストが下がり、競合優位性の構築が可能(管材システム、樹脂)

・脱炭素の機運が高まり、再生可能エネルギーとしての地熱発電所の開発増加(水処理・資源開発)

・再生可能エネルギーへの切り替え

・省エネルギー設備の導入

製品に関する規制強化

環境関連情報の計測・表示への対応コストの増加

積極的な環境関係情報の計測・表示による自社製品の競合優位性構築

早急な自社製品の環境関連情報の見える化対応

原材料に関する規制強化

使用する原材料や自社事業が規制対象となることによる製造コストの増加や売上の減少

早期規制が予想される原材料から、環境影響の少ない原材料に置き換えることによる競合優位性の構築

環境に配慮した原材料の使用

プラスチック製品規制

プラスチック由来の包材の価格上昇による調達コストの増加

バイオマスプラスチック包材の活用による価格上昇リスクの回避及び脱炭素貢献

バイオマスプラスチックの活用

循環型社会への移行加速、規制強化

環境汚染抑止の観点における廃棄にかかるコストの増加

循環型社会に向けたリサイクル可能容器などの導入をすることにより、環境意識の高いバイヤーの獲得が可能(管材システム、水処理・資源開発)

・生産工程における廃棄物の削減(管材システム、樹脂)

・請負工事における廃棄物の削減(水処理・資源開発)

・社内のリユース/リサイクル活動の促進

技術

低炭素設備の導入

低炭素技術や製品開発への投資コストの増加

低炭素技術や製品開発への早期対応による付加価値の創出

環境対応製品の研究・開発の早期化

エネルギーミックスの変化

再生可能エネルギーの増加により、短期的な電力価格の高騰

・省エネルギー設備の導入

・自家消費型再生可能エネルギー設備やPPAスキームの活用

低炭素原材料への切り替え

・生物由来の低炭素原料を使う必要の高まりによる原材料調達コストの増加

・原材料の切り替えにより、現在の製品性能の維持が困難になる(管材システム)

バイオマスプラスチックを活用した樹脂製品の製造・提供による顧客のカーボンニュートラルへの貢献(樹脂)

サプライヤーの脱炭素化へのインセンティブ付与

市場

消費者選好の変化

環境配慮要請の高まりによる石油由来製品の需要減少

・EV車両の増加に伴う需要増加(管材システム、樹脂:半導体の需要増加、軽量化部品の需要増加)

・省エネ志向の高まりによる断熱材製品の需要増加(樹脂)

・環境対応製品の研究開発

・顧客の製品要望の調査

原材料費の上昇

炭素税導入による製品原価の高騰

脱炭素原料を用いた製品開発による、競合優位性の確立

グリーン調達の促進

 

 

分類

要因

財務への潜在的な影響

財務インパクト

対応策

リスク

機会

物理リスク

慢性

平均気温上昇、降水パターンの変動

・労働環境の悪化、気候変動起因の病気による従業員の生産性低下

・原材料の供給途絶による、調達コストの増加、生産能力の低下

・干ばつなどによる水不足および水質悪化による製造の遅延または停止

・製品の製造、保管、物流におけるコストの増加

・大雨や洪水頻度の増加による請負工事需要の増加(水処理・資源開発)

・BCP対策の取り組み強化で安定した事業活動の継続、収益の確保

・感染症や熱中症への対処等の啓もうと対応フローの作成

・気温上昇に合わせた労働環境の整備

・サプライチェーンネットワークの強化

・輸送時の温度管理必要性検討

 

海面上昇

・沿岸地域の施設・設備被害による輸送の遅延または停止

・事務所移転コストの発生

・生産拠点のBCP策定と継続的な見直し

・生産拠点の分散化

急性

台風や洪水などの激甚化

洪水による生産拠点浸水に伴う生産能力の低下

・生産拠点の嵩上げや重要な設備の移設

・生産拠点のBCP策定と継続的な見直し

 

 

②人的資本経営の推進に関する戦略

人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社は、次のような「人事方針」を定め、人材の多様性の確保、人材の育成及び社内環境整備に努めております。

旭有機材は、人が重要な経営資本であるという認識の下、会社は3つのカテゴリーにおける各種施策を有機的に結びつけて展開、社員は企業理念の体現を通じて、会社・社員双方の永続的な発展を実現します。

1.事業を成長させる人材を継続的に確保し、自らが主役となって仕事に取り組める人創りを行います。

2.人事制度改革を行い、多様な社員を公正に評価し、成長する機会を提供します。

3.社員が活き活きと働ける環境整備を行い、働き甲斐と働きやすさを希求します。

 

(注)各連結子会社における従業員の規模や制度が大きく異なるため、目標及び実績とともに、人事方針も提出会社単体のものとしております。

(注)人材の多様性の確保を含む人的資本に関する戦略については、各連結子会社を含む弊社グループとしての開示を行う方向で検討を進めており、2026年3月期の有価証券報告書で開示を予定しております。

 

リスク管理

当社グループのサステナビリティに関するリスク及び機会については、サステナビリティ推進委員会及びその分科会の活動を通じて管理を行っています。

特に、リスクの識別・評価、全社リスクへの統合プロセス、管理のプロセスについては、以下のとおりです。

・リスクを選別・評価するプロセス

当社では、気候関連リスクを含む、当社グループの事業活動に係るリスクを未然に認知・評価し、これを可能な限り排除・軽減して、経営の一層の安定を図るため「リスク管理規程」を定め、取締役会の直下にリスク管理委員会を設置しております。気候関連リスクに関しては、サステナビリティ推進委員会の分科会にて当社グループの事業(管材システム事業、樹脂事業、水処理・資源開発事業)への影響を考慮し、新規リスクの抽出・評価を行った後にサステナビリティ推進委員会にて、管理すべき「重要リスク」を特定することとしています。

・全社のリスク管理への統合プロセス

サステナビリティ推進委員会で「重要リスク」と特定されたリスクについては、そのリスクの軽減のためにリスク管理委員会にて対応方針を検討・決定します。取締役会はリスク管理委員会の活動状況について少なくとも年に一回以上報告を受けて、必要に応じて指示を行い、リスク管理委員会を通して各本部・事業部に展開し、その対応状況をモニタリングします。

 

・リスクを管理するプロセス

全社リスクを管理するリスク管理委員会は定期的に開催され、各本部・事業部を管理するリスク管理責任者からの報告を評価し、全社リスクの把握と対応方針を審議し、取締役会に報告しております。また、リスク管理委員会はサステナビリティ推進委員会が特定、評価した気候変動リスクのうち、時間軸が短期かつ緊急性を要するリスクに関して対応策の実施、モニタリングを行います。

 

なお、2025年4月にサステナビリティ経営の推進を強化すべく「サステナビリティ経営推進室」を新設し、サステナビリティ関連のリスク及び機会の識別・評価・管理に係るプロセスの見直しを進めております。併せて、当社の持続的成長に向け取り組むべき重要課題(マテリアリティ)については、社長執行役員及び事業部・本部を所管する執行役員への個別ヒアリング及び対象者全員によるディスカッションを通じた評価を進めております。今後は、マテリアリティ特定の後に、サステナビリティ活動を推進するうえで特に重要なテーマの見直しを行うとともに、2026年度から2030年度を対象とする次期中期経営計画において、主要施策とマテリアリティとの関係性を適切に開示する予定です。

 

指標及び目標のうち重要なもの

①気候変動など地球環境に配慮した事業活動の推進に関する指標と目標

温室効果ガス(GHG)排出量削減目標

気候関連問題が自社事業に及ぼす影響を評価するため、GHGプロトコルの基準に基づき温室効果ガス排出量の算定(Scope1、2、3)を実施しております。自社温室効果ガスの削減目標については、基準年度を2021年とし、2030年にScope1、2において42%削減を目指しています。今後は、2050年に向けた長期目標についても策定を進めてまいります。

その目標及び実績については、当社Webサイトに記載し、適宜更新しておりますので、詳細は次のリンク先をご参照ください。

https://www.asahi-yukizai.co.jp/climatechange/

 

②人的資本経営の推進に関する指標及び目標

人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた指標及び目標

 

 

目標

実績

指標関連項目

管理職に占める女性割合

2031年3月期末

10

2025年3月期末

1.9

「人事方針」1

男性育休取得率

2025年度
(2025年4月~2026年3月)

80

2024年度
(2024年4月~2025年3月)

106.3

「人事方針」3

有給休暇取得率

2025年
(2025年1月~2025年12月)

70

2024年

(2024年1月~2024年12月)

89.3

「人事方針」3

 

(注)目標及び実績は、各連結子会社で従業員の規模や制度が大きく異なるため、各指標を連結ベースにまとめることが困難であることから提出会社単体の記載としております。なお、各連結子会社を含む弊社グループの指標及び目標については、人材の多様性の確保を含む人的資本に関する戦略の見直しを踏まえ、2026年3月期の有価証券報告書で開示を予定しております。

(注)指標の計算方法について

    「管理職に占める女性割合」と「男性育休取得率」については、「第5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」の注記を参照ください。「有給休暇取得率」の定義は、当該年の有給休暇付与日数に対して何日有給休暇を取得したかであり、付与日数には繰り越し分は含んでおりません。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(リスク管理方針、及び体制)

当社グループでは、「内部統制システム構築の基本方針」に基づき、社内規程として、「リスク管理規程」を設け、事業活動に係るリスクを「経営戦略リスク」と「業務リスク」の2つに分類し、それぞれ管理方法を定めリスク管理を行っています。

「経営戦略リスク」については、M&Aや新規事業等の利益または損失の両面を生じさせるリスクが該当しますが、最適なコーポレート・ガバナンス体制の構築及び当社の取締役会・経営会議等の主要会議での充分な審議、並びに当社の決裁権限規程・グループ会社運営規程等の諸規則に基づく適正な経営判断により、適切に管理しています。また、これら一連の意思決定の仕組みと運用状況の有効性を評価・検証の上、継続的改善を図っています。

「業務リスク」については、業務遂行を阻害し、損失や不利益のみを生じさせるリスクが該当しますが、より適切な業務リスクの管理を実行するために、本部・事業部担当執行役員を「リスク管理責任者」として定め、当社取締役会の直属機関として、社長執行役員を委員長とする「リスク管理委員会」を設置し、リスクの洗い出しや評価をもとに、重要リスクを決定しています。リスク管理委員会では、リスクの顕在化を未然に防止するための予防策や、顕在化した場合の対処方法等を報告・検討し、対策状況のモニタリングを定期的に実施しています。

 


 

(リスクとその対策について)

当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があると考えられる業務リスクについては、重要項目ごとに以下のようなものがあります。ただし、すべてのリスクを網羅したものではなく、現時点で予見できない事項または重要とみなされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性がありますが、リスク管理委員会で定期的に業務リスクを見直すことで、リスクの発生回避、及びリスクが顕在化した際の影響の極小化に最大限努めています。

 

 

(1) 政治情勢の変化

当社グループは、国内外に生産・営業拠点を有し、製品の製造・販売を行っています。投資した市場における予期しない法令改正・規制強化や、戦争・紛争等の政治的又は社会的混乱が顕在化することによって、海外での事業活動に支障が生じ、当社グループの生産活動及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当リスクに対しては、海外危機対応マニュアルを整備し、現地のコンサルタントや領事館の情報を適宜取得しつつ、リスクが顕在化した際の被害を最小限に食い止める措置を講じています。

 

(2) 重大事故の発生

当社グループは、国内においては、宮崎、愛知、栃木、広島に、海外においては、アメリカ、中国、インド、メキシコに生産工場を有し、製造・加工を行っております。設備の故障、メンテナンス不良等に起因して火災・爆発・漏洩等の事故が発生することで、従業員の労働災害はもちろんのこと、取引先への供給不能、地域被災者への賠償等、当社グループの信頼性や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

各工場では、製造設備の定期的な点検及び設備保守、安全活動の推進、災害・事故を想定した定期的な訓練の実施、及び損害保険加入等の対策を講じています。

 

(3) 人材不足・流出

当社グループでは、急速な既存事業の拡大により、人材不足は問題と認識しております。新卒採用及び中途採用の充実をはかり、(社員の紹介を通じて採用する)リファラル採用制度を導入することで人材の確保に努めています。人材の流出は、技能やノウハウの継承に支障をきたし、特に若手中堅社員が退職することで会社の成長力が低下するリスクが想定されます。当社グループでは、積極的なベースアップや福利厚生制度の充実に加え、先輩社員が新入社員の育成を支援するエルダー制度の導入、研修制度や自己啓発支援講座の充実、働きやすい労働環境の整備、及び外部機関による相談窓口を設置することにより人材の定着に取り組んでいます。

 

(4) ハラスメント

ハラスメントを原因とする損害賠償の発生や、それに伴う社会的信用の低下により、取引関係の維持・獲得や人材確保が困難となることで、当社グループの事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、社長自らが「強い企業文化と良好な職場風土の醸成が重要であり、そのためには、個人の尊厳を傷つけるだけでなく、職場全体の士気や生産性にも悪影響を及ぼすハラスメントを決して許してはならない」と動画にてグループ内に発信しています。また、「旭有機材グループ行動規範」において「ハラスメント行為の禁止」を掲げ、すべての役員・従業員に対してハラスメントを禁止するとともに、社員教育の実施、内部通報窓口の設置・運用などを通じて、上記リスクの低減に努めています。

 

(5) 資金調達

当社グループの経営資金の源泉は、主に営業活動によるキャッシュ・フローから得ております。当社は、十分な手元資金を有しており、また銀行からの借入枠もあり、資金調達のリスクは極小化されております。一方グループ会社では、急激な経済悪化などにより重要な取引先が倒産した際に、営業活動によるキャッシュ・フローが減少し、資金繰りが困難になるリスクが想定されます。

当社グループでは、緊急事態に備えて、各会社で手元資金を保有しており、それでも資金が不足する場合には、当社がグループ会社にファイナンスを実行し、または各グループ会社が銀行の借入枠を設定し、これを活用することで、資金繰りに関するリスクを回避するなど、資金面での安定化に取り組んでいます。

 

(6) 情報セキュリティ関連

サイバー攻撃や不正アクセス等の不測の事態により、万一、当社のシステムが正常に利用できない場合や個人情報が外部へ漏洩した場合、当社グループの営業活動や業務処理の遅延、信用の失墜及びそれに伴う売上高の減少や損害賠償費用の発生等により、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、情報のセキュリティレベルの維持向上を図ることを目的として、外部によるサイバーリスク評価の実施、及び「情報管理基本規程」に沿った定期的な社員教育や啓蒙を行うなど、情報システムの適切なセキュリティ対策を講じています。

また近年、生成AIサービスの活用が進んでおり、業務効率化やアイデア出しなどに役立つ一方で、情報漏洩や著作権侵害などのリスクがあります。

当社グループではこのリスクに対応するためにルール・注意事項などを記載した生成AIサービスガイドラインを定め、生成AIサービスを安全に利用できるよう、対策を講じております。

 

(7) 知的財産の侵害

当社製品の模倣品に対して有効な特許が登録できず、当社保有の知的財産権が認められないことにより巨額の損失に繋がる可能性があります。また一方で、当社製品が他社の知的財産権を侵害し、過去に遡って巨額のライセンス料や損害賠償の支払いが発生する可能性や、販売差し止めに繋がるリスクがあり、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社では、従業員向けに知的財産権に関する定期的な教育・研修を実施するとともに、当社従業員による知財侵害者発見奨励制度を導入し、知的財産権保護に努めています。また、他社の知的財産権の侵害を未然に防止するために、先行する知的財産権の調査を徹底するとともに、外部の特許事務所を活用するなどの対策を講じています。

 

(8) 債権回収・与信管理

当社グループは、お客様に製品・サービスを提供しており、その多くが掛売り又は手形取引となっています。重要なお客様が破綻し、その債権が回収できない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、定期的な信用調査や信用に応じた取引限度額の設定等を行い、債権回収リスクの回避に努めています。

 

(9) 製造物責任・リコール・品質不良等

当社は、ISO9001に基づいた厳格な品質基準の下、製品の品質確保に細心の注意を払っています。しかしながら製品に欠陥が生じた場合、欠陥に起因する直接的・間接的損害に対して、当社は賠償責任を負担する可能性や多大な対策費用の支出が生じる可能性があります。また当該問題に関する報道により、当社のブランドイメージの低下、顧客の流出等を招き、当社の事業、経営成績及び財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社は、不適合品を出さないよう製造品質手法の構築と定期的な見直しを実施するとともに、クレーム発生時の徹底した原因追求と再発防止対策の立案・実施等の措置を講じています。また、当該リスクが発生した場合の損失を補填するための保険に加入するとともに、適切な補償内容の見直しを継続的に行っています。

 

(10) 法令違反への対応

当社グループは、グローバルに事業活動を展開しており、各国・地域において法令等の適用を受けています。そのため、これらの法令等に違反し、罰金等の支払義務が生じる、制裁により事業活動の維持・発展が不可能又は著しく困難となる、社会的信用を失い事業に支障をきたす、などの事態が生じ、当社グループの事業活動に重要な影響を与える可能性があります。当社グループは、「旭有機材グループ行動規範」に「法令遵守」を掲げ、当社グループの全ての役員・従業員に法令の遵守を求めるとともに、事業活動に関連する法令等に関する社員教育の実施、法改正情報の収集、法改正対応その他の法令対応の実施、法令違反行為に対する厳格な対応、定期的な内部監査の実施等により、上記リスクの低減に努めています。

 

(11) 購買調達 

当社の製品は、塩ビ樹脂やフェノール樹脂等を用いており、石油化学系原料の占める比率が高く、これら素材を安定的且つタイムリーに調達することが重要です。なお、市況によっては価格が高騰するとともに、原材料の需給バランスが崩れ、供給不足になった場合、当社の生産活動及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、特定の取引先において、人権・労働・環境・不正行為などの問題が発覚した場合、当該取引先と取引停止となり調達が困難になり生産に著しく影響を及ぼす可能性があります。 

このようなリスクを回避すべく、当社では購買方針を策定し、取引先に対して品質・納期管理のほか、人権・労働・不正行為を含む事項について尊重及び法令遵守を求めています。さらに、日頃より原材料購入先の情報を幅広く収集し、特定の企業に偏ることなく調達を進めることで最適な価格で必要数量の原材料購入を行っています。なお、原材料が高騰した場合においては、適時適切に製品価格へ反映していきます。

需給バランスが崩れ供給不足が発生した場合に備えて、日頃より複数社から調達することでそのリスクを回避できるようにしております。 

 

(12) 大規模災害

当社グループでは、大規模な災害が発生した際に、従業員の安全被害、工場損壊、倉庫物流機能停止、原材料資材調達不能などにより事業継続に多大な影響が発生する事態を想定し、国内の事業所・製造拠点において緊急時対応計画の策定、災害訓練実施、BCPにおける初動・復旧対応マニュアル整備などを進めることで従業員等の人命の安全確保と事業への影響の極小化に努めます。

 

(13)気候変動に関するリスク

気候変動が経済・社会・環境に及ぼす影響は年々深刻さを増し、世界規模で脱炭素社会の実現に向けた動きが加速しており、企業にも確実な対応が求められております。当社グループにおいても、気候変動に関して生じる変化を重要なリスク要因として認識し、TCFDの提言の枠組みを参考に、適切に気候変動が事業に及ぼす影響の分析、対応策の検討を行っています。また、事業として水資源の有効利用、高性能現場発泡断熱材などによる省エネ活動として、気候変動に関するリスクに対し貢献しております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

業績等の概要

(1) 財政状態及び経営成績の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

① 経営成績
(売上高と営業利益)

当連結会計年度における国内経済は、米国の関税政策への警戒感が強まりましたが、緩やかな回復基調にありました。また、設備投資意欲は底堅いものの、コスト上昇による計画見直しや、人手不足による建設工事の遅れなどがありました。米国経済については、底堅く推移していたものの、大統領選挙後は関税政策を巡る不確実性の高まりにより停滞感があり、企業の設備投資についても慎重な姿勢が見られています。

このような環境の中、当社グループは中期経営計画GNT2025で掲げた海外及び半導体関連製品を中心に成長を追求するなどの経営方針に基づき、各種施策に取り組みました。

当社グループを取り巻く経営環境は、国内においては、伸び悩みが続いた設備投資に底入れの動きが見え、特に新設された半導体工場への装置搬入が押し上げる形となりました。一方で、米国においては、水処理やごみ処理場等の分野では堅調に推移したものの、半導体関連は資材価格高騰及び人手不足等による工場建設の見直しや延期が大きく影響しました。これらの要因により減収となり、さらに労務費や減価償却費等の固定費が増加したことなどで減益となりました。

この結果、当連結会計年度の売上高は85,162百万円(前年同期比△2.6%)、営業利益は11,121百万円(前年同期比△28.6%)となりました。

(営業外損益と経常利益)

受取配当金を計上したことなどにより、当連結会計年度の営業外損益の純額は129百万円の利益で、前連結会計年度比△371百万円(前年同期比△74.1%)となりました。

この結果、経常利益は11,250百万円(前年同期比△30.0%)となりました。

(特別損益)

固定資産売却損を計上したことなどにより、当連結会計年度の特別損益の純額は386百万円の損失で、前連結会計年度比△284百万円(前連結会計年度の特別損益の純額は101百万円の損失)となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

経常利益の11,250百万円に特別損益の386百万円を減算し、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は10,865百万円となりました。これから法人税、住民税及び事業税3,046百万円及び法人税等調整額8百万円を減算し、非支配株主に帰属する当期純利益186百万円を減算した親会社株主に帰属する当期純利益は7,624百万円(前年同期比△33.0%)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

(管材システム事業)

管材システム事業は、樹脂バルブを主力製品として樹脂管材市場を拡大することを基本戦略としています。耐食問題の解決と樹脂管材の機能性を追求した製品開発により、お客様へのお役立ちに貢献する営業活動を推進しています。

樹脂バルブ等をはじめとする基幹製品は、国内では継続して在庫水準の健全化が進行したことなどにより、緩やかに回復しました。海外では、米国において需要が非常に高水準であった前年度に対し、今年度に見込まれていた半導体工場建設の見直しや来年度以降に延期となったほか、中国において液晶案件の投資延期や流通における在庫過多の影響により需要が停滞したことなどの要因から、力強さに欠ける状況となり、前年同期比減収となりました。

樹脂配管材料等を用いたエンジニアリング事業は、新規の半導体関連プロジェクトを着実に取り込み、前年同期比増収となりました。

半導体製造装置向けダイマトリックス製品は、日本・中国における半導体製造装置の需要が回復し、堅調に推移したことで前年同期比増収となりました。

利益面では、売上高の減少に加え、修繕費や労務費、減価償却費等の固定費増加の影響により、減益となりました。

この結果、当セグメントの売上高は52,292百万円(前年同期比△9.0%)、営業利益は9,051百万円(前年同期比△33.9%)となりました。

 

(樹脂事業)

電子材料製品は、低メタル化技術を追求し、半導体の高度化に貢献しています。国内は、センサー、パワー半導体などのレガシー半導体向けフォトレジスト材料の需要回復に加え、生成AI関連の後工程向け材料の需要も拡大しておりました。また、中国でも液晶・有機ELなどのFPD(フラットパネルディスプレイ)分野の需要が旺盛であったことから、前年同期比で大幅な増収を達成しました。なお、2024年7月に竣工した愛知電材第二工場は、第4四半期より売上に寄与し始めています。

自動車や建設機械等に必要な鋳物製造に用いる素形材製品では、お客様の製造品質や生産性の向上、臭気低減による作業環境の改善など、国内外ともに多様な鋳造工程に最適な製品を提案することでお客様へのお役立ちに取組みました。国内では原料価格変動に対応するため価格改定を実施しつつ、高付加価値品への切り替えなどの提案営業を推進しましたが、国内自動車生産台数は前年を下回り、国内売上高は前年同期比減収となりました。一方、中国、インド、メキシコでは自動車生産台数が前年度を上回り、海外売上高は前年同期比増収となりました。

発泡材料製品は、現場で施工することで最終製品となるため、施工品質向上への取組みにより、お客様への安心・安全の提供に取り組んでいます。現場発泡断熱材においては住宅及び建築工事の着工の遅れによる物件減少、トンネル掘削用の土木材料においては受注済物件の一部工期遅れ等により出荷量が減少し、前年同期比減収となりました。

利益面では、断熱材の吹き付け施工を行う子会社のランドウィック社にて、前年度は大型物件を受注していた影響や、素形材事業における自動車生産台数の減少による減収に加え、減価償却費、労務費等の固定費の悪化が影響し、樹脂事業部全体では、前年同期比で減益となりました。

この結果、当セグメントの売上高は23,045百万円(前年同期比+3.5%)、営業利益は1,118百万円(前年同期比△26.8%)となりました。

 

(水処理・資源開発事業)

水処理事業では、水処理設備や水資源を有効に活用できる水再生システムの設計・施工を行っています。官庁、民間工事案件がともに順調に進捗し、工事完工件数も増加したことで、前年同期比増収となりました。
資源開発事業では、地熱発電の蒸気井などの掘削工事や温泉開発工事を通じて資源の有効活用に貢献しています。温泉掘削工事は工事進捗の遅れ等もありましたが、地熱掘削工事は大型案件が計画通りに完工し、前年同期比で大きく増収となりました。

メンテナンス事業及び環境薬剤事業では、施設や設備の安定稼働を支えるサービスや水処理薬剤を提供しています。メンテナンス事業は、複数の修繕工事が順調に進捗し、前年同期比増収となりました。環境薬剤事業は、製品出荷量の減少により、前年同期比減収となりました。

利益面では、設備工事や修繕工事が順調に進捗し、特に大型の地熱掘削案件が計画通りに完工したことにより前年同期比で増益となりました。

この結果、当セグメントの売上高は9,825百万円(前年同期比+27.7%)、営業利益は768百万円(前年同期比+56.2%)となりました。

 

 

② 財政状態

当連結会計年度末における総資産は、105,772百万円(前年同期比+4.3%)となりました。

流動資産は、主として現金及び預金が増加したことなどから、69,563百万円(前年同期比+4.4%)となりました。

固定資産は、主として建物及び構築物並びに機械装置及び運搬具が増加したことなどから、36,208百万円(前年同期比+4.3%)となりました。

流動負債は、主として支払手形及び買掛金が減少したことなどから、20,165百万円(前年同期比△17.3%)となりました。

固定負債は、主として長期借入金が増加したことなどから、7,344百万円(前年同期比+37.9%)となりました。

純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことなどから78,262百万円(前年同期比+9.2%)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況・資本の財源及び資金の流動性

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ5,298百万円増加し、24,059百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により獲得した資金は、仕入債務の減少2,284百万円、法人税等の支払額3,673百万円などの資金減よりも、税金等調整前当期純利益10,865百万円などの資金増が上回ったため、11,335百万円(前年同期は9,698百万円の資金獲得)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により使用した資金は、有形固定資産の取得による支出5,400百万円などの資金減により、5,157百万円(前年同期は4,649百万円の資金使用)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により使用した資金は、配当金の支払額2,014百万円、自己株式の取得966百万円などの資金減により、1,572百万円(前年同期は546百万円の資金使用)となりました。

 

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製造費のほか、原材料の仕入れ、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。

当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金や設備投資資金の調達につきましては、自己資金及び金融機関からの借入を基本としております。

なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は5,973百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、24,059百万円となっております。

 

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

管材システム事業

24,839

△1.3

樹脂事業

15,783

+14.2

合計

40,622

+4.2

 

(注)  金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

当連結会計年度における管材システム事業、樹脂事業及び水処理・資源開発事業の受注実績は、次のとおりであります。

なお、管材システム事業の一部、樹脂事業の一部及び水処理・資源開発事業を除くその他の事業については、見込み生産を行っております。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

管材システム事業(一部)

2,656

+107.5

390

△41.9

樹脂事業(一部)

3,085

△30.1

2,007

△10.8

水処理・資源開発事業

7,416

△25.6

2,917

△12.2

合計

13,157

△16.0

5,314

△14.9

 

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

管材システム事業

52,292

△9.0

樹脂事業

23,045

+3.5

水処理・資源開発事業

9,825

+27.7

合計

85,162

△2.6

 

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2. 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

Harrington Industrial Plastic LLC

15,519

17.8

-

-

 

※当連結会計年度のHarrington Industrial Plastic LLCについては、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。

 

 

⑤ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

⑦ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」、達成状況は、「① 経営成績」に記載のとおりであります。

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、各事業部門の顧客ニーズを的確に把握し、基盤事業の強化・拡大を図るとともに、各事業の周辺分野の探索を行い、新規事業確立に向けた研究開発を推進してまいりました。

当連結会計年度における当社グループの研究開発スタッフは123名であり、当連結会計年度の研究開発費の総額は1,753百万円であります。

当連結会計年度における各セグメント別の主要研究開発の概要と成果は、次のとおりであります。

 

(1) 管材システム事業

当セグメントにおきましては、「“流れる”を支える」のスローガンの下、商品のリニューアルと並行して、既存製品の一層の品質向上の取組みも継続的に推進しております。また、超純水製造ライン向けのバルブについてPFAS代替素材の検討を進めてきました。2025年春から、PFAS代替素材を使用したバルブの実用化に向けて実証実験を開始します。

半導体製造装置向けの精密バルブにおいては、半導体の微細化に対応するため、バルブからの発塵抑制に関する独自の設計手法・製造技術の検討を継続的に進めており、いくつかの特許が登録となりました。合わせて、製品リニューアルも進めております。

以上の結果、当セグメントに係る研究開発費は962百万円となりました。

 

(2) 樹脂事業

当セグメントにおきましては、近年、高まる環境対応要求に対して研究開発を推進し、引き続き製品のラインナップ拡充を図りました。

素形材分野においては、非石油系材料を用いたレジンコーテッドサンドの開発を進めております。また、これまで開発を進めてきた環境対応型コールドボックス用樹脂はその完成度が高まり、顧客へのサンプルワークを開始しました。

発泡材料分野においては、現場発泡ウレタンで世界最高クラスの断熱性能を開発し、新製品『BEXUR(ベクサー)』として販売を開始し、着実に実績を伸ばしています。また、土木用途では地下水による地盤沈下の予防を目的とした止水用ウレタン材の開発に着手し、現場検証を行っている最中です。

電子材料分野においては、低メタル化技術を追究するとともに、最先端の半導体に必要な低メタルの樹脂製品開発を推進しました。

以上の結果、当セグメントに係る研究開発費は703百万円となりました。

 

(3) 水処理・資源開発事業

当セグメントにおきましては、環境負荷の低減、お客様の省エネルギー化、創エネルギー化に貢献するため、地熱掘削資機材の改良、遠隔監視システムの改良、メタンガスを活用したバイオガス発電など新領域に向けた開発、水質を改善するミネラル剤の開発を推進しました。

以上の結果、当セグメントに係る研究開発費は89百万円となりました。