第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題

当社グループは、「地球環境との調和の中で、材料・物質の革新と創出を通して高品質の製品とサービスを顧客に提供し、もって広く社会に貢献する」ことを企業グループ理念として掲げ、経済軸、環境軸、社会軸が結びついた社会課題解決への取り組みにより、事業活動を通じた社会貢献を目指しております。

2025年度を見据えた長期経営計画では、「環境と調和した共生社会」、「健康・安心な長寿社会」及び「地域と調和した産業基盤」の実現を当社グループが貢献すべき社会課題と捉え、「モビリティ」、「ヘルスケア」、「フード&パッケージング」、「次世代事業/新事業開発」及び「基盤素材」の5つの事業領域において、より良い未来社会の実現に向けて取り組んでまいりました。

しかしながら、昨今、当社を取り巻く社会環境も大きく変化していることから、今般、2030年を見据えて長期経営計画を見直すこととしました。

今般の長期経営計画見直しにあたっては、15〜20年先に当社が目指すべき企業グループ像を改定し、「化学の力で社会課題を解決し、多様な価値の創造を通して持続的に成長し続ける企業グループ」と定義致しました。目指すべき企業グループ像に向けた通過点となる2030年においては、大きく変容して行く社会環境や課題に正面から対峙し、当社が取り組む変革を踏まえた新成長戦略を実現する姿を描き、以下を当社グループにおける2030年のありたい姿と定義致しました。

「未来が変わる。化学が変える。Chemistry for Sustainable World

 変化をリードし、サステナブルな未来に貢献する

グローバル・ソリューション・パートナー」

これに伴い、当社が追求する3軸経営、2025年長期経営計画経営目標の実現を通じて、2030年度に達成すべき長期経営計画経営目標を次のとおりとしました。今一度当社グループの存在意義である「社会課題の解決」に立ち返り、加速する環境変化の中で生まれる様々な社会課題に対し、多様な価値を創造できる「化学の力」で、その解決策を持続的に提供する企業体を目指し、全社一丸となって実現に取り組んでまいります。

 

 

2025年度長期経営目標

2030年度長期経営目標

コア営業利益

2,000億円

2,500億円

親会社の所有者に

帰属する当期利益

1,100億円

1,400億円

ROIC

8.0%以上

8.0%以上

Net D/E

0.8以下

0.8以下

ROE

10%以上

10%以上

Blue Value®売上比率

30%以上

40%以上

Rose Value®売上比率

30%以上

40%以上

GHG排出削減

25.4%減

(05年度比30年度)

40%減

(13年度比)

積極的な

経営資源の投入

成長投資

10年間で1兆円

うち戦略投資

4,000億円

成長投資

1.8兆円

うち戦略投資

9,000億円

自力成長投資

9,000億円

 (注)Blue Value®とRose Value®とは、三井化学グループが事業活動を通じて環境・社会に貢献する製品・サービスの価値を独自の指標を用いて見える化し、その価値をステークホルダーと共有できるようにしたもの。環境への貢献価値、QOL向上への貢献価値を有する場合、Blue Value®製品、Rose Value®製品として認定しています。

 

また、中期ベースの経営計画に関しては、毎年向こう3ヵ年の事業計画の見直しを行うというローリング方式を採用しています。社会環境の変化が急速かつ大きくなる中で、長期的な視野を持ちつつ、経営の環境適応性を高め、戦略推進を加速してまいります。

このような経営ビジョン及び経営計画のもと、2021年度において、当社は、次のように経営環境を認識し、重点課題に取り組んでまいります。

 

<経営環境>

2021年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響が続くとみられます。経済対策やワクチンの普及により景気の持ち直しの動きが継続することが期待されるものの、感染再拡大の恐れがあります。
 日本経済においては、世界的な景気の持ち直しの動きにより、製造業を中心とした回復基調が継続することが期待されるものの、国内の新型コロナウイルス感染症の流行状況によっては、活動制限が実施される恐れもあります。
 化学工業界においても、景気の持ち直しの動きに伴う需要拡大が見込まれるとともに、海外市況も堅調に推移することが見込まれますが、原料や化学製品の市況の変動に留意すべき状況が継続することが見込まれます。

 

<重点課題>

(経済軸)

・安全・安定運転及び成長3領域の利益拡大に向けた案件の拡充。特に、ICT、ヘルスケア領域での積極投資の実施

・既存事業・製品の維持・強化のための研究開発の継続及び新事業育成、新製品創出への必要な資源投入の拡充

・基盤素材事業のダウンフロー強化・拡大や再構築の推進等、ボラティリティ低減に向けた変革の推進

・IoT、AI等の先進技術活用によるデジタルトランスフォーメーションの推進、事業基盤の強化

・中長期での資本効率性向上のためのROICを意識した戦略策定や事業運営の推進

 

(社会・環境軸)

・「安全はすべてに優先する」を形骸化させず、企業文化として定着させるための安全活動の実行

・品質リスクの特定及び深層原因に踏み込んだ対策実行

・コンプライアンスリスクの徹底的な洗い出し及び対策実行によるグループ・グローバルにおけるコンプライアンス強化

・Blue Value®/Rose Value® 製品・サービスの創出・拡大

・気候変動・プラスチック問題等、SDGs等に示されるグローバルでのESG諸課題に対する、事業機会/リスクの両面を意識した事業活動の遂行

 

<新型コロナウイルス感染症の影響への対応>

当社は、昨年に引き続き新型コロナウイルス感染症による影響の長期化を見据えて、需要動向の見極めや、原料調達・製品出荷などのサプライチェーンの確保を行いつつ、在庫や売掛債権・買掛債務管理の徹底、不要・不急な支出の抑制、借入枠の増大や手元資金の確保など、キャッシュ・フローに注視した対応に、注力してまいります。
 また、当社は、社員及び関係者の感染リスク低減のための必要な措置(テレワーク勤務や時差出勤等)を講じ、会社の機能維持及び工場の安全・安定運転の確保に努めております。
 さらに、当社は、新型コロナウイルス感染症の流行による旺盛なマスク需要拡大に応えるため、子会社のサンレックス工業株式会社において、マスク用ノーズクランプ向けの形状保持プラスチック線材「テクノロート®」の生産設備増設を行いました。これにより、当社グループのマスク用ノーズクランプ生産能力はマスクに換算すると年産30億枚相当となります。今後も拡大するマスク需要に応えて、更なる生産設備の増設も検討致します。

これに先立ち当社では、医療従事者支援のため、医療用ガウンの原料である不織布について、月産1,000万枚分以上の生産体制を確立しておりますが、引き続き、事業継続及び社会貢献の両面から、新型コロナウイルス感染症への対応を継続してまいります。

 

このような情勢のもと、2021年度の当社グループの業績は、下表のとおりとなることを予想しております。

なお、新型コロナウイルスの流行については未だ終息の兆候が見えないものの、2021年度においては製造業を中心とした景気の持ち直しの動きに伴う需要拡大が見込まれると共に、海外市況も堅調に推移すると見込んでおります。ただし、新型コロナウイルス感染症の影響を完全に見通すことは困難であるため、流行の状況によっては2021年度の業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

2021年度連結業績予想

2020年度連結業績

売上収益

(億円)

14,000

12,117

コア営業利益

(億円)

1,150

851

営業利益

(億円)

1,130

781

親会社の所有者に帰属する当期利益

(億円)

790

579

※当社は2020年度より国際財務報告基準(IFRS)を適用しております。コア営業利益は、営業利益から非経常的な要因(事業撤退や縮小から生じる損失等)により発生した損益を除いて算出しております。

 

足下では、新型コロナウイルス感染症による影響を受けておりますが、感染拡大防止に向けて化学産業が果たすべき貢献、そして、その役割の重要性は益々広く認識されています。

今後はポスト・コロナ社会における「新しい生活様式」の定着、需要構造、サプライチェーンの変化など、世の中のあり方が大きく変わっていくことが考えられますが、このような変化の時にこそ、化学の総合力、既成概念に捉われない前向きな思考と実行力で、当社グループの新たなステージを築き上げてまいります。

 

(2) 事業領域ごとの環境分析及び戦略

 ① モビリティ

新型コロナウイルス感染症の世界的な流行拡大に伴い自動車生産台数は一時的に大きく減少しましたが、2021年度はコロナ以前の水準並に回復することが予想されております。また、世界的な環境保護意識の高まりや社会的責任への対応要請を背景に電動化を含む環境負荷低減の重要性が急激に高まっており、一層の軽量化やリサイクル材料・バイオ材料の活用などモビリティ分野の素材産業にも影響を及ぼし始めています。さらに、移動空間としてのクルマの使い方の変化なども相まって、快適性の向上や電装化といった多様化した新たなニーズも生み出されています。一方で足下では半導体の供給不足等も懸念されており、これらは期待される自動車需要・生産の回復に対する潜在的なリスクとなり得ます。当社では、自動車を中心としたあらゆる種類の人・モノの移動手段を「モビリティ」と定義しています。このモビリティ領域において世界経済の回復と変容の過程を機会として捉えながら、多様化するニーズに対応したソリューションの提供と個々の事業の競争力強化を通じて持続的な成長を実現していきます。

 

(主要製品)

エラストマー、機能性コンパウンド、機能性ポリマー(ICT関連用途中心)、ポリプロピレン・コンパウンド、ソリューション事業等において、モビリティにおける軽量化、燃費向上、電動化、自動化等のためのソリューションを提供しています。

自動車のバンパーに用いられるポリプロピレン・コンパウンドは、世界シェア2位、アジアシェア1位を誇っています。独自の配合レシピや原料に遡り樹脂そのものを設計する技術を強みとして保有しており、顧客の高い評価を得ています。

 

(強み)

・幅広い材料ラインアップ

・高い技術力と品質

・顧客基盤

・技術サービス

・バリューチェーンを通じたトータルソリューション提案力

 

(基本戦略)

・多様化するニーズに対応したソリューションの提供

・個々の事業環境に応じた競争力の強化

・モビリティ分野における環境負荷低減への取組みも織り込んだ事業成長の実現

②ヘルスケア

先進国の少子・高齢化や新興国の経済成長に加え、足下の新型コロナウイルス感染症拡大への対策など、「健康」への関心が増大しています。顧客価値も多様化し、個々人の志向やニーズが高まり、また、ライフスタイルに応じたケアが求められるようになってきています。当社は、生活の質(QOL)向上に資する製品・サービスをケミカルイノベーションにより創出・提供し、当社グループの新たな成長基盤を確立していきます。

 

(主要製品)

ビジョンケア材料、不織布、歯科材料、パーソナルケア材料を事業展開しています。

低屈折率から高屈折率まで、幅広く展開しているメガネレンズ用材料は、当社グループにて、世界シェア45%を占めています。また、当社グループの技術を駆使して開発した柔らかく伸縮性に優れた不織布は、「快適性・フィット性」といった高機能化が求められるプレミアム紙おむつのニーズを捉え高い評価を得ています。

 

(強み)

ビジョンケア材料

・幅広い製品ラインアップ

不織布

・原料樹脂から加工まで一貫した技術力

歯科材料

・グローバルでのブランド力

・素材から歯科材料までの研究開発力

 

(基本戦略)

・成長需要の着実な獲得による既存事業の拡大

・QOL向上に資する新製品・新事業の開発加速

・M&A・提携による事業基盤の拡大・強化

 

(個別戦略)

ビジョンケア材料

・新製品の上市・育成によるさらなる事業拡大

不織布

・顧客との戦略連携によるフル生産・フル販売

歯科材料

・デジタル化を支援・推進する製品投入による事業拡大

 

③フード&パッケージング

人口の増加や気候変動など地球規模の深刻な課題に対し、農産物の安定生産・収量向上やフードロス・廃棄削減が求められています。加えて、プラスチック問題など循環型社会への対応が今や喫緊の課題となっています。当社は、顧客起点型イノベーションを通じて、農業・食品・パッケージングに関わる製品とサービスを提供し、会社・組織の枠を超えた情報・技術・顧客関係の最大活用により、当社グループの持続的な成長を牽引します。

 

(主要製品)

 農業化学品、コーティング・機能材、機能性フィルム・シートを事業展開しています。半導体製造において、シリコンウェハ研削時の表面保護テープとして用いられるイクロステープ®は、世界シェア1位です。主要競合メーカーの中で唯一の樹脂製造・加工メーカーであり、樹脂設計・製膜加工技術に強みを有しています。

 

(強み)

・幅広い製品ラインアップ

・独自性の高い研究開発と生産技術

・アジアを中心とする海外展開

・迅速なレスポンスを通じて培ってきた顧客基盤

 

(基本戦略)

・高付加価値製品へのシフトによる事業ポートフォリオ強化

・海外成長市場の取り込みによる事業拡大

・社内外との連携を通じた新製品・新事業の創出と環境ニーズへの対応

 

(個別戦略)

     農業化学品

     ・アジア、南米市場の成長取り込み

     ・農薬周辺領域(防疫分野)の強化

     コーティング・機能材

     ・アジア市場の成長取り込み

     ・環境対応製品のグローバル展開

     ・高機能品の実需化加速

     機能性フィルム・シート

     ・製品ポートフォリオ転換による事業基盤強化

     ・ICT分野におけるシェア維持・拡大

 

④基盤素材

石化・基礎化学品を中心とする基盤素材事業は、自動車、住宅、家電、インフラ、食品包装をはじめ、様々な分野に素材提供を行っています。特徴のある技術と付加価値製品群の拡大、さらなるコスト競争力強化により、アジアで存在感を示し、安定した収益を確保し、当社グループの基盤事業を目指します。

事業再構築の着実な実行により、収益構造は改善しています。一方、基礎原料エチレンについては、さらなる競争力強化を図りつつ、エボリュー®に代表される高付加価値系ポリマーの拡販を通じ稼働の安定、採算性向上を進めています。事業を取り巻く環境は不透明で変化は大きいものの、徹底した合理化を推進し、差別化製品の拡充や地産地消化による高稼働率維持など、さらなる事業の深化を図り、市況・需給等の変動を受け難い、安定した収益基盤を築き上げていきます。

 

(主要製品)

エチレン、プロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、触媒、フェノール類、高純度テレフタル酸、ペット樹脂、ポリウレタン材料、工業薬品等において、事業展開しています。

当社のナフサクラッカーにおいて、ナフサを熱分解してエチレン、プロピレン等の基礎原料を生産し、さらに付加価値を高めた様々な製品を生産しています。海外の専門機関から、当社のナフサクラッカーは、アジアの新規大型クラッカーと比較して遜色なく、高いエネルギー効率を有しているとの評価を得ており、これが基盤素材以外の高付加価値製品群も含めた誘導品における競争力の源泉となっております。

 

(強み)

・世界トップクラスの競争力を有するナフサクラッカー

・メタロセンをはじめとするポリオレフィン触媒技術

・特長ある差別化製品や誘導品

・高機能ポリオールをベースとしたウレタンシステムハウス事業のグローバル展開

 

(基本戦略)

・当社グループの基盤となる事業の強化、収益の維持拡大

・特長ある付加価値誘導品の拡大、ニッチ製品の拡大と利益率向上

・事業再構築の完遂と更なるコスト競争力強化、ボラティリティ低減

     ・プラスチック循環、バイオ原料活用等の社会課題への積極的な対応

 

(個別戦略)

石化原料・ライセンス

・クラッカー競争力のさらなる強化と触媒・ライセンス事業拡大

・生産バランス、物流を含めたさらなる石化事業深化

基礎化学品

・徹底的な合理化・地産地消・誘導品の強化による安定収益の確保

・AI・IoT等の高度生産技術の積極的な適用

ポリオレフィン

・ポリオレフィン触媒技術を活用した付加価値分野の拡大

・国内顧客との長期的信頼関係の構築

・モビリティ事業領域との連携強化

ポリウレタン

・高機能材料を活用した高度な配合設計技術によるグローバル展開

     ・バイオマスウレタンなど環境対応製品の拡充

 

2【事業等のリスク】

当社グループでは、経営活動の脅威となる全ての事象(前兆、予兆)をリスクと認識し、そのリスク顕在化の未然防止及びリスク顕在化の最小化のための対策を講じるよう努めております。

当社グループの将来の経営成績、財政状態に影響を与えうるリスクには、以下のようなものがあります。ただし、これらは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではありません。

なお、これらの事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 外部事業環境について

当社グループの事業は、顧客、市場、提携先の動向、競合他社の事業展開や法制度の変更といった外部環境の影響を受けるおそれがあります。これらの外部環境の影響により、当社グループの事業戦略の前提となった事実が変化した場合には、事業戦略が予定通り進まず、期待したとおりの効果を奏せず、又はそれらの変更を余儀なくされるリスクが考えられます。製品に関しては、市場における需要減退及び顧客の流出、競合他社の生産能力増強や安価な製品の流入により供給過剰となることでの予想を大幅に上回る販売数量の減少や市況下落、また、代替製品の出現といった要因により、収益が減少するリスクが考えられます。一方、当社グループの製品の生産に必要な原材料に関しては、急激な価格変動による収益の減少や、原材料メーカーの事故、倒産による供給停止の影響で生産活動に支障が生じるリスクが考えられます。以上のような外部事業環境変化については、各事業部において常にウォッチしつつ、重要なものについては全社戦略会議で討議のうえ、毎年実施している各事業戦略の見直しに反映させております。これらの事象は、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼすおそれがありますが、顕在化の可能性や具体的な影響等に関しては、合理的に見積もることが困難であります。

新型コロナウイルス感染症の流行については依然として予断を許さず、今後も活動制限の実施によって販売需要の減少や減産が生じるおそれや、当社グループの生産設備が停止するなどの影響が出てくる可能性もあります。これに対して、当社は、需要動向の見極めや、サプライチェーンの確保を行いつつ、在庫等の管理の徹底、不要不急な支出の抑制、借入枠の増大や手元資金の確保等、キャッシュ・フローに注視した対応に注力しております。また、当社は、2020年3月4日付で、リスク・コンプライアンス委員会担当役員を本部長とする、新型コロナウイルス感染症対策本部を設置し、国内外の当社各拠点における影響等の情報収集を行うとともに、関係者の感染リスク低減のための必要な措置(テレワークや時差出勤等)を講じております。本対策本部において収集した当社各拠点情報や、講じた対策等については、適宜、取締役会でも報告を行っております。併せて、「感染予防」「業務効率化」「円滑なコミュニケーション」をキーワードとする、持続可能な「新しい働き方」に関する検討を進めております。

 

(2) 海外活動について(カントリーリスク)

当社グループでは、製品の輸出及び海外における現地生産等、幅広く海外活動を展開しております。この海外展開に関するリスクとして、海外における人材確保の困難さ、政治・経済情勢の悪化、輸入・外資の規制、治安の悪化、労働争議、テロ・戦争の発生等が考えられます。当社は、日ごろから海外の主要地域(アジアパシフィック、中国、米州、欧州)に設置した「地域統括会社」を中心に、関係会社より所在地域・国の情報収集を行い、かつ、関係会社の主たる所在国に地域安全統括者を配し、治安・衛生面の変化に対応した事業継続性の安定化を図っており、仮にリスクが顕在化した場合には、東京本社と連携し、対応にあたることとしております。これらの事象の発生可能性や影響等を合理的に予測することは、困難でありますが、海外における当社グループの事業活動に支障をきたし、経営成績に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

(3)各事業の経営成績における変動要因について

当社グループは、主にモビリティ製品、ヘルスケア製品、フード&パッケージング製品、基盤素材製品等様々な製品を製造・販売しています。当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響を、特にモビリティ製品において顕著に受けましたが、第1四半期を底に回復傾向にあります。一方で、ヘルスケア製品及びフード&パッケージング製品では、マスク向けの不織布や産業用フィルム分野における販売が堅調に推移しました。新型コロナウイルスの流行については未だ収束の兆候が見えないものの、翌連結会計年度においては製造業を中心とした景気持ち直しの動きに伴う需要拡大が見込まれると共に、海外市況も堅調に推移すると見込んでおります。その他、各主要事業において想定されるリスクとしては以下のようなものがあります。

なお、当社では、毎年、内外環境変化、事業リスクの変化等を踏まえ、全社戦略会議で討議のうえ、各事業戦略を見直しております。これにより、極力リスクが顕在化しないよう、仮に顕在化した場合でも影響を最小化できるよう取り組んでおります。

 

①モビリティ部門

モビリティ部門の製品は、エチレン、プロピレン等のナフサ誘導品を主原料としています。ナフサが中東地域の情勢やその他世界の経済情勢の影響により、供給価格が急激に上昇した場合、原料価格上昇分の製品価格への転嫁が一時的に遅れること等により業績が影響を受ける可能性があります。

当事業部門において認識している具体的なリスク及び機会は次のとおりです。

・新型コロナウイルス感染症の流行再拡大や半導体の供給不足に伴う自動車需要・生産の回復遅れ

・自動車関連製品の開発サイクルや重要なプレイヤーの変化

・自動車における軽量化・快適性向上・電装化などに伴う素材開発へのニーズ拡大

・環境負荷低減の取組み加速を背景としたリサイクル材料・バイオ材料の活用拡大

 

②ヘルスケア部門

ヘルスケア部門の製品は、競合他社の事業展開による価格競争で業績が影響を受ける可能性があります。

当事業部門において認識している具体的なリスク及び機会は次のとおりです。

ビジョンケア材料

・市場のグローバルな拡大

不織布

・子供用紙おむつ輸出鈍化、一方で、国内大人用紙おむつ安定成長

・東・東南アジアでの競争激化

歯科材料

・デジタル技工市場の急速なトレンド変化と拡大

 

③フード&パッケージング部門

コーティング・機能材及び機能性フィルム・シートについては、基盤素材部門が扱うポリエチレンやポリプロピレン等ナフサ誘導品を主原料としていますが、ナフサは中東地域の情勢やその他世界の経済情勢の影響により、供給価格が急激に変動する可能性があるため、原料価格上昇分の製品価格への転嫁が遅れること等により業績が影響を受ける可能性があります。

農薬については、世界各地域の天候、害虫の発生状況に加え、新製品開発にかかる開発・登録に必要な試験費用の変動等により業績が影響を受ける可能性があります。

当事業部門において認識している具体的なリスク及び機会は次のとおりです。

・環境関連の法規制等による既存事業への影響

・フードロスや廃棄プラスチック削減のニーズ昂進

・農薬のアジア・南米市場拡大、農薬周辺市場(防疫分野)の拡大

・包装材料のアジア市場拡大と国内市場の停滞

・5G、高機能ディスプレイ、CASE需要などのICT市場の拡大

・中国、新興国経済の不透明感

・新型コロナウイルス感染症流行継続による開発・調達への影響

 

④基盤素材部門

石化については、主原料であるナフサは、中東地域の情勢やその他世界の経済情勢の影響により、供給量や供給価格が急激に変動する可能性があります。ナフサ価格の急激な上昇・下落があった場合、製品価格への転嫁遅れや、在庫評価損が発生すること等により業績が影響を受ける可能性があります。

基礎化学品については、競合他社が多く市況変動の影響を受け易いため、供給過剰等により市況の急落が発生した場合、業績が影響を受ける可能性があります。

当事業部門において認識しているより具体的なリスク及び機会は次のとおりです。

・高機能包装へのシフト

・デジタル技術・バイオ技術の進化

・米シェール由来のポリオレフィン流入

・米中貿易摩擦・感染症などによる経済減速、変動

・原油・大型市況製品のアジア市況の変動

・円高による輸入品の攻勢、輸出交易条件悪化

・国内需要縮小、中国経済の伸長鈍化

・環境対応ニーズの拡大

 

(4) 財務について

当社グループの財務に関するリスクとして、経済情勢悪化に伴う取引先信用不安の増大、為替の急激な変動による為替差損の発生、資金調達に際しての金利上昇や金融機関の貸し渋り等が考えられます。これらの事象は、当社グループの財政状態に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

(5) 事故・災害について

当社グループでは、「安全は全てに優先する」との経営方針の下、工場における生産活動に関し、労働安全衛生マネジメントシステム(OHSAS18001)の認証取得を積極的に進める他、現場での地道な活動を通じて、安全確保に努めております。また、首都圏における大規模地震が発生し、本社機能が麻痺した場合には、大阪工場に全社対策本部を設置する等の、指揮命令系統を早期に確立するための事業継続計画を策定しております。しかしながら、不測の大規模地震や台風等の自然災害による生産設備への被害、工場における事故、製品輸送・外部倉庫保管中の事故等、不測の事態が発生するリスクが考えられます。これらの事象に関し顕在化の可能性や影響等を合理的に見積もることは困難ですが、工場の操業や顧客への供給に支障が生じることで当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼすおそれがあり、さらには社会的評価の低下を招く可能性があります。

 

(6) 品質について

当社グループでは、各工場で品質マネジメントシステム(ISO9001)の認証取得を積極的に進め、品質保証体制の確立に努めております。しかしながら、製品の予期せぬ品質欠陥発生や製造物責任訴訟の提起といったリスクが考えられます。当社グループの製品は最終消費財の原料として使用されるものが多く、品質欠陥により顧客における大規模なリコールに発展した場合は甚大な損害につながることが想定されます。顕在化の可能性や影響等を合理的に見積もることは困難ですが、これらの事象は、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼすおそれがあり、さらには社会的評価の低下を招く可能性があります。

 

(7) 知的財産権について

当社グループは、独自の技術・ノウハウを多く有しており、厳正なルール運営の下、情報管理を行っておりますが、予期せぬ事態により外部に流出する可能性があります。また、将来、知的財産に関する紛争が生じた際に当社グループに不利な判断がなされる可能性もあります。当社においては、これまで、重要な知的財産の外部への流出や重大な知的財産に関する紛争が発生したことはなく、また、発生可能性や影響等を合理的に予測することは困難ですが、これらの事象が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

(8) 気候変動について

気候変動については、これに起因するとされる世界各地での負の影響の増加に伴い、SDGsに代表される世界共通の解決すべき社会課題と認識され、早急な対応が求められています。化学品の製造では、気候変動の原因とされるGHG(温室効果ガス)を大量に排出します。その為、気候変動に伴う物理的リスク及び低炭素社会への移行によるリスクが、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があり、当社グループとして気候変動にどう対応していくかを重要な課題と捉えています。

物理的リスクとして、台風、洪水等の極端な気象現象が深刻化した場合、当社グループの生産拠点の生産能力低下、被害コスト増加を招く可能性があります。また、降雨量の変化により水リスクが高まる地域では渇水による水使用制限から生産拠点での生産活動低下を招く可能性があります。

低炭素社会への移行リスクとして、炭素税、排出権取引制度のようなGHG排出規制が導入された場合、原燃料の価格が上昇し、電力価格が上昇する可能性があります。これにより当社グループの製造コストが増加し、収益低下をもたらす可能性があります。また、低炭素社会への移行状況により、ステークホルダーからGHG削減に貢献する製品の要請が高まる場合、研究開発費や新規技術導入に伴う設備費が増加し、当社グループの収益低下をもたらす可能性があります。

当社グループは、気候変動への対応をリスクとしてだけでなく機会としても捉え、事業活動を通じて気候変動に関する社会課題の解決を目指します。また、気候変動に関連するリスク、機会及びその影響の評価に取り組む姿勢を明確にするため、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)に賛同し、気候変動の影響評価及びその情報開示に継続して取り組んでいます。当社グループは2050年カーボンニュートラルを宣言しました。化学企業として社会変革に大きく貢献すべく、自社のGHG排出量削減推進と、GHG削減に貢献する製品を顧客と共に社会実装することで削減貢献の最大化を目指し、気候変動への取り組みを強化加速してまいります。

(9) プラスチック問題について

プラスチックは利便性と恩恵をもたらす素材であり、機能の高度化を通じて食品ロスの削減やエネルギー効率の改善等、社会課題の解決に貢献しています。その一方で、近年の政策やESG諸課題への注目を背景に、年間数百万トンを超えるプラスチック廃棄物がその不適正な処理により陸上から海洋へ流出している問題が関心を集め、解決に向けた動きが世界中で活発化しています。

こうした状況を背景に世界では各種規制が検討され、国や企業によってはリサイクルプラスチックの利用促進や使い捨てプラスチック使用の自主規制、他素材への代替を推奨しています。特に欧州ではサーキュラーエコノミーの実現に向けた動きが加速しており、資源を最大限活用するという観点から、プラスチックの回収とリサイクルに関する取り組みがサプライチェーン全体で検討されています。これらの動きは、化石資源由来のプラスチックを製造販売する当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、プラスチックを巡る環境問題を化学産業が率先して取り組むべき重要な課題のひとつであると認識しています。当該リスクに対しては、プラスチックに携わる企業、業界団体等とともに「Alliance to End Plastic Waste(AEPW)」(グローバルなプラスチックバリューチェーン企業が資金を拠出し参加する活動)、「クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)」、「海洋プラスチック問題対応協議会(JaIME)」等に参画し、それらを通じた廃棄物管理のインフラ整備、イノベーションの促進、教育・啓発、清掃活動等に積極的に関与することにより、問題解決に取り組んでいます。

また当社グループは、こうしたプラスチック問題への対応を新たな事業機会とも捉えています。リサイクル原料の使用や、廃プラスチックから有用プラスチックへのケミカルリサイクル等のリサイクル高度化技術の開発、包装材料の単一素材化等のリサイクルを考慮した製品設計の提案、さらにはブロックチェーン技術によるプラスチック素材のトレーサビリティシステムの構築といった幅広い可能性を検討し、プラスチック問題解決への貢献を目指しています。

当社グループは、様々な社会課題を解決するプラスチック素材を提供してきたメーカーとして、今後も積極的にプラスチック問題に対応してまいります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。また、当社グループは、当連結会計年度から従来の日本基準に替えてIFRSを適用しており、前連結会計年度の数値もIFRSに組み替えて比較分析を行っております。なお、文中における将来に関する事項は、当社グループが当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績の概況、認識及び分析・検討内容

 

①全般的状況

当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行に伴う活動制限等の影響により厳しい状況が継続しました。活動制限の解除後は景気持ち直しの動きがみられたものの、感染が再拡大した国・地域では活動制限が繰り返し実施されました。

日本経済においても、製造業を中心に景気持ち直しの動きが見られるものの、新型コロナウイルス感染症が再度拡大し、政府による緊急事態宣言が数度に亘り発令されるなど、先行きへの不透明感が続いております。

一方、化学工業界においては、新型コロナウイルス感染症流行により一時的に厳しい状況にありましたが、景気持ち直しの動きとともに、国内のナフサクラッカーの稼働率は回復傾向にあります。

このような情勢のもとでも、当社グループは、成長3領域の「モビリティ」、「ヘルスケア」、「フード&パッケージング」の拡大・成長、「次世代事業」の創出・育成、「基盤素材」領域の更なる競争力強化に取り組みました。

モビリティ領域では、自動車業界において燃費向上ニーズや電動化へのシフトに加え、軽量化・快適性の向上といった多様化したニーズが生まれています。自動車の軽量化に貢献するポリプロピレン・コンパウンドでは、欧州初の自社ポリプロピレン・コンパウンド拠点が営業運転を開始すると共に、成長するアジア需要獲得に向け、タイ拠点の生産設備増強も行いました。自動車の省燃費や長寿命に貢献するギアオイル用の添加剤「ルーカント®」は、拡大する世界需要に対応するべく、市原工場に新プラントを完工しました。ICT(情報通信技術)産業においては、主にスマートフォンカメラレンズに用いられる「アペル®」は、需要の急拡大に対応すべく、大阪工場において新プラント建設に着手しました。

ヘルスケア領域では、先進国の少子高齢化や新興国の経済成長に加え、足下の新型コロナウイルス感染症への対策など、健康への関心が増大しています。不織布においては、新型コロナウイルス感染症の流行を受け、医療従事者支援や旺盛なマスク需要に応えるため、子会社であるサンレックス工業株式会社において、医療用ガウン用の不織布の生産体制を確立するとともに、マスク用ノーズクランプ「テクノロート®」の生産設備増強を行いました。世界トップシェアのメガネレンズ材料では、超撥水・反射防止コート材の製造・販売・研究を行うCOTEC GmbHを買収し、製品ラインナップの拡充を図りました。また、歯科材料では、市場における存在感を高め、企業価値の向上を図るべく、歯科材料・機器の総合メーカーである株式会社松風と資本業務提携契約を締結しました。

フード&パッケージング領域では、世界の人口増加や気候変動などに伴い食料の確保が社会課題となっています。また、アジアの生活水準向上によって、パッケージング分野での高機能化や環境負荷低減といったニーズが高まっています。機能性フィルム・シートにおいては、半導体製造工程用の保護テープとして世界トップシェアを有する「イクロステープ®」の設備増強を決定しました。農薬においては、新規原体「テネベナール®」を有効成分とする殺虫剤「ブロフレア®SC」が日本における農薬登録を取得しました。農作物生産で問題となる薬剤抵抗性害虫の対策に貢献してまいります。

石化・基礎化学品を中心とする基盤素材領域では、自動車、住宅、家電、インフラ、包装をはじめ、様々な分野に素材を提供しています。また、全社の戦略基盤として位置づけ、競争力強化のため、ダウンフロー強化・拡大及び最適化・再構築を進めております。当連結会計年度はクラッカーにおける原料多様化によるコスト低減やガスタービン新設によるエネルギー効率の向上等、一層の合理化を図ると共に、ダウンフロー強化のため、ICT、モビリティ、ヘルスケアに関連する高機能モノマー領域で様々な高い技術を有している本州化学工業株式会社の連結子会社化を目的とする株式公開買付けを行うことを決定しました。

 

また、当社においては新型コロナウイルス感染症拡大に対して、引き続きグループ全体に亘る在庫の圧縮及び固定費の一層の削減等を行い、業績への悪影響を最小限に留める努力を行っております。

 

これらの取組みにより、当連結会計年度の業績は以下のとおりとなりました。

 

 

売上収益

コア営業利益

営業利益

親会社の所有者に

帰属する当期利益

当連結会計年度(億円)

12,117

851

781

579

前連結会計年度(億円)

13,495

723

646

340

増減率(%)

△10.2

17.7

20.9

70.4

 

売上収益は、前連結会計年度に比べ1,378億円減10.2%減)の1兆2,117億円となりました。これは、ナフサなどの原燃料価格の下落に伴う販売価格下落の影響等があったことに加え、新型コロナウイルス感染症の影響等により販売数量が減少したことなどによるものです。

 海外売上収益は6,557億円となり、売上収益全体に占める割合は前連結会計年度に比べ3.5ポイント増の54.1%となりました。

 

0102010_001.png

 

コア営業利益は、前連結会計年度に比べ128億円増17.7%増)の851億円となりました。これは、新型コロナウイルス感染症の影響等による販売数量の減少があったものの、交易条件の改善や固定費の減少があったことなどによるものです。

なお、当連結会計年度の為替レートは106円/$、国産ナフサ価格は31,300円/KLとなりました。

 

営業利益は、前連結会計年度に比べ135億円増20.9%増)の781億円となりました。これは、主にコア営業利益の増加などによるものです。

 

金融収益・費用は、配当金の受取額が減少したことなどにより、1億円増の39億円の損失となりました。

 

以上により、税引前利益は、前連結会計年度に比べ134億円増22.1%増)の742億円となりました。

親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べ239億円増70.4%増)の579億円となり、基本的1株当たり当期利益は298.00円となりました。

 

 

 

②セグメント別の状況

セグメント別の業績は、次のとおりであります。

 

(モビリティ)

当セグメントの売上収益は、前連結会計年度に比べ524億円減3,155億円、売上収益全体に占める割合は26%となりました。また、コア営業利益は、主に自動車向けの需要鈍化等により、前連結会計年度に比べ129億円減302億円となりました。以上により、セグメント全体では、減収・減益となりました。

エラストマー、機能性コンパウンド、海外ポリプロピレン・コンパウンド及びソリューション事業は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、販売が減少しました。

機能性ポリマーは、ICT関連需要に的確に対応し、販売が堅調に推移しました。

 

(ヘルスケア)

当セグメントの売上収益は、前連結会計年度に比べ7億円増1,439億円、売上収益全体に占める割合は12%となりました。また、コア営業利益は、主に不織布の販売が堅調に推移したことにより、前連結会計年度に比べ67億円増199億円となりました。以上により、セグメント全体では、増収・増益となりました。

ビジョンケア材料のメガネレンズ用材料は、販売が堅調に推移しました。

不織布は、マスク、医療用ガウン及びおむつ向けの販売が堅調に推移しました。

歯科材料は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、販売が減少しました。

 

(フード&パッケージング)

当セグメントの売上収益は、連結会計年度に比べ36億円減1,977億円、売上収益全体に占める割合は16%となりました。一方、コア営業利益は、主に農薬及び産業用フィルム分野における販売が堅調に推移したことにより、連結会計年度に比べ50億円増220億円となりました。以上により、セグメント全体では、減収・増益となりました。

コーティング・機能材は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、販売が減少しました。

機能性フィルム・シートは、産業用フィルム分野における販売が堅調に推移しました。

農薬は、海外の販売が堅調に推移しました。

 

(基盤素材)

当セグメントの売上収益は、前連結会計年度に比べ781億円減5,414億円、売上収益全体に占める割合は45%となりました。一方、コア営業利益は、海外市況の影響等により、前連結会計年度に比べ102億円増196億円となりました。以上により、セグメント全体では、減収・増益となりました。

ナフサクラッカーの稼働率は、新型コロナウイルス感染症拡大に起因する川下製品の需要減少の影響を受け、前連結会計年度に比べ低下しました。また、ポリプロピレンは、主に自動車用途で需要鈍化の影響を受けました。

ビスフェノールA及びアセトンの海外市況は、前連結会計年度を上回る水準で推移しました。

 

(その他)

セグメントの売上収益は、連結会計年度に比べ44億円減132億円、売上収益全体に占める割合は1%となりました。一方、コア営業損失は、連結会計年度に比べ18億円減の11億円となりました。

 

売上収益とコア営業利益のセグメント別増減内訳はそれぞれ以下のとおりであります。

 

(売上収益)

(単位:億円)

 

 

 

第23期

 

 

第24期

 

増減

 

数量差

価格差

モビリティ

3,679

3,155

△524

△431

△93

ヘルスケア

1,432

1,439

7

2

5

フード&パッケージング

2,013

1,977

△36

53

△89

基盤素材

6,195

5,414

△781

△42

△739

その他

176

132

△44

△44

消去又は全社

合計

13,495

12,117

△1,378

△418

△960

 

(コア営業利益)

(単位:億円)

 

 

 

第23期

 

 

第24期

 

増減

 

数量差

交易条件

固定費差他

モビリティ

431

302

△129

△126

0

△3

ヘルスケア

132

199

67

5

3

59

フード&パッケージング

170

220

50

23

20

7

基盤素材

94

196

102

△41

175

△32

その他

△29

△11

18

18

消去又は全社

△75

△55

20

20

合計

723

851

128

△139

198

69

(注) 交易条件=価格差+変動費差(主として原燃料価格差)

 

③経営成績に重要な影響を与える要因

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因は、以下のとおりであります。なお、当社グループは、モビリティ、ヘルスケア、フード&パッケージング及び基盤素材の各セグメントにおいて、多種多様な製品を取り扱っており、それぞれの製品によって経営成績に影響を与える要因及びその程度は異なります。

 

a 売上収益について

 売上収益は、販売数量及び販売価格等により変動します。

 販売数量については、主に顧客の状況、市場環境及び競合他社の事業展開等の要因によって影響を受ける可能性があります。

 販売価格については、主にナフサ等の原燃料価格の変動の製品価格への転嫁状況、製品市況の変動及び為替変動等の要因によって影響を受ける可能性があります。

 

b コア営業利益について

 コア営業利益は、販売数量、交易条件及び固定費等により変動します。

 販売数量については、主に顧客の状況、市場環境及び競合他社の事業展開等の要因によって影響を受ける可能性があります。

 交易条件については、主にナフサ等の原燃料価格の変動、原燃料価格の製品価格への転嫁状況、製品市況の変動及び為替変動等の要因によって影響を受ける可能性があります。

 固定費については、主に生産設備の新増設、研究開発の状況等の要因によって影響を受ける可能性があります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a 生産実績及び受注実績

 当社グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多いため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

 このため生産実績及び受注実績については、「(1) 経営成績の概況、認識及び分析・検討内容 ②セグメント別の状況」におけるセグメント別の業績に関連付けて示しております。

 

b 販売実績

セグメントの名称

当連結会計年度

自 2020年4月1日

至 2021年3月31日

前年同期比(%)

モビリティ(百万円)

315,480

△14.3

ヘルスケア(百万円)

143,933

0.5

フード&パッケージング(百万円)

197,700

△1.8

基盤素材(百万円)

541,382

△12.6

報告セグメント計(百万円)

1,198,495

△10.0

その他(百万円)

13,230

△25.0

合計(百万円)

1,211,725

△10.2

 (注)1.主な相手先の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

自 2019年4月1日

至 2020年3月31日

当連結会計年度

自 2020年4月1日

至 2021年3月31日

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

三井物産㈱

225,225

16.8

229,470

18.9

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2) 財政状態の概況、認識及び分析・検討内容

 

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ276億円増1兆5,581億円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ448億円減8,760億円となりました。また、有利子負債は356億円減5,638億円となりました。この結果、資産合計に対する有利子負債の比率は前連結会計年度末に比べ3.0ポイント減36.2%となりました。

 

 

第20期

第21期

第22期

第23期

第24期

有利子負債残高(億円)

4,399

4,637

4,850

5,994

5,638

有利子負債比率(%)

33.2

32.4

32.3

39.2

36.2

※第22期以前の指標については日本基準の値を記載しております。

当連結会計年度末の資本合計は、前連結会計年度末に比べ724億円増6,821億円となり、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末に比べ4.4ポイント増39.0%となりました。

以上により、当連結会計年度末のネットD/Eレシオ(ネット有利子負債(有利子負債-現預金・長期性預金)/親会社の所有者に帰属する持分)は、前連結会計年度末に比べ0.21ポイント減0.60となりました。

ネットD/Eレシオの推移は以下のとおりであります。

 

0102010_002.png

 

(3) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性

 

①キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前結会計年度末に比べ314億円増加し、当結会計年度末には1,960億円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によって得られた資金は、前連結会計年度に比べ321億円増1,743億円となりました。これは主に、税引前利益の増加や法人所得税の支払が減少したことなどによるものです。

この結果、営業キャッシュ・フローに対する有利子負債の比率は前連結会計年度の4.2から3.2に減少し、インタレスト・カバレッジ・レシオは25.5倍から37.1倍に増加しました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によって使用された資金は、前連結会計年度に比べ316億円減775億円となりました。これは主に、設備投資による支出が減少したことなどによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によって使用された資金は、前連結会計年度に比べ626億円増690億円となりました。これは主に、有利子負債の返済額が増加したことなどによるものです。

なお、キャッシュ・フローに関する指標は以下のとおりであります。

 

第20期

第21期

第22期

第23期

第24期

親会社所有者帰属持分比率(%)

33.9

35.7

36.8

34.6

39.0

時価ベースの親会社所有者帰属持分比率(%)

41.5

46.6

34.7

25.6

44.0

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

4.4

5.6

4.4

4.2

3.2

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

17.3

14.8

19.9

25.5

37.1

(注)親会社所有者帰属持分比率:親会社の所有者に帰属する持分/資産合計

時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/資産合計

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

※各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

※キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。

※有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を支払っている負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

※第22期以前の指標については日本基準の値を記載しております。

 

キャッシュ・フローの推移は以下のとおりであります。

 

0102010_003.png

 

②資金の調達について

当社グループの資金調達については、

1)高い格付けを維持し、資金需要に応じて都度、社債、借入及びコマーシャル・ペーパーを主体に低コストの資金調達を行うこと。

2)一定割合の間接金融を導入し、資金調達の安定化を図ること。

3)売上債権流動化等の資産の流動化により、資金調達の多様化を図ること。

を基本的な考え方として実施しております。

 

 また、子会社(日米欧、中国、シンガポール)の資金調達については、原則として、当社及び地域統括会社を通じたグループファイナンスを行うことにより、グループ全体での有利子負債削減と資金効率の向上に努めております。

 

③資金の流動性について

 資金の流動性については、資産効率を考慮しながら、手元流動性を確保すると共に、コミットメント・ライン、当座貸越枠等の代替調達手段を備えております。

④資本政策のための基本方針

 当社は、資本コストを意識した経営が重要との認識の下、投資効率性の向上と資本コストの低減に向けた取り組みを通じて、企業価値の最大化を図っております。投資効率性向上の取り組みとして、当社は「ポートフォリオマネジメント」、「KPIマネジメント」、「投資評価適正化」を推進しています。一方資本コスト低減に向けては、「収益ボラティリティの低減」、「最適資本構成の実現」、「投資家とのコミュニケーション強化」に取り組んでおります。

 このうち、最適資本構成については、財務健全性と資本コスト最小化を両立できる資本構成を追及しております。足下のネットD/Eレシオの状況は財政状態に記載のとおり低下しており、営業キャッシュ・フローも高水準な状況が継続しております。

 今後につきましては、現状の財政状態の水準を維持しつつ、積極投資を継続して事業の成長・拡大による更なる企業価値の向上を推進してまいります。

 一方で、当社は株主の皆様への利益還元を経営上の重要課題と位置づけています。翌連結会計年度以降の株主還元方針としては、業績の動向を踏まえながら、安定的かつ継続的な配当の実現と、機動的かつ柔軟な自己株式の取得により、株主還元の充実を図ることといたします。

 

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(4) 目標とする経営指標の達成状況等

 

 2025年度長期経営目標に対する2020年度の達成・進捗状況は以下のとおりであります。

 

 

当連結会計年度(計画)

当連結会計年度

(実績)

当連結会計年度

(計画比)

2025年度長期経営目標

コア営業利益

350億円

851億円

501億円増

(143.3%増)

2,000億円

売上収益

11,450億円

12,117億円

667億円増

(5.8%増)

20,000億円

売上収益コア営業利益率

(ROS)

3.1%

7.0%

3.9ポイント増

10%

親会社所有者帰属持分当期利益率

(ROE)

3.7%

10.2%

6.5ポイント増

10%以上

Net D/E

0.80

0.60

0.20ポイント減

0.8以下

投下資本利益率

(ROIC)

2.0%

5.0%

3.0ポイント増

8%以上

総還元性向

30%以上

33.9%

3.9%増

30%以上

 

 

 なお、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題」に記載したとおり、当社は新たに2030年度に向けた長期経営計画を策定し、2021年6月2日に公表しております。

 主要な経営目標としては、「コア営業利益2,500億円」「ROIC8.0%以上」「ROE10.0%以上」を掲げており、株主還元方針として「DOE3.0%以上」を追加しております。

 

(5) 並行開示情報

 

 連結財務諸表規則(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した要約連結財務諸表は、以下のとおりであります。

 なお、日本基準により作成した当連結会計年度の要約連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けておりません。

 

①要約連結貸借対照表(日本基準)

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2020年3月31日)

当連結会計年度

(2021年3月31日)

資産の部

 

 

流動資産

781,347

778,825

固定資産

 

 

有形固定資産

485,531

492,068

無形固定資産

28,941

23,336

投資その他の資産

184,248

193,952

固定資産合計

698,720

709,356

資産合計

1,480,067

1,488,181

負債の部

 

 

流動負債

478,498

458,407

固定負債

393,548

375,708

負債合計

872,046

834,115

純資産の部

 

 

株主資本

541,888

588,484

その他の包括利益累計額

△14,299

△7,012

非支配株主持分

80,432

72,594

純資産合計

608,021

654,066

負債純資産合計

1,480,067

1,488,181

 

②要約連結損益計算書及び連結包括利益計算書(日本基準)

要約連結損益計算書

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

売上高

1,338,987

1,204,804

売上原価

1,041,840

916,435

売上総利益

297,147

288,369

販売費および一般管理費

225,511

210,530

営業利益

71,636

77,839

営業外収益

12,274

8,884

営業外費用

18,393

11,279

経常利益

65,517

75,444

特別利益

24,804

5,209

特別損失

21,861

11,801

税金等調整前当期純利益

68,460

68,852

法人税等

22,171

6,603

当期純利益

46,289

62,249

非支配株主に帰属する当期純利益

8,345

6,209

親会社株主に帰属する当期純利益

37,944

56,040

 

要約連結包括利益計算書

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当期純利益

46,289

62,249

その他の包括利益

△34,343

48,526

包括利益

11,946

110,775

(内訳)

 

 

親会社株主に帰属する包括利益

7,271

103,498

非支配株主に帰属する包括利益

4,675

7,277

 

③要約連結株主資本等変動計算書(日本基準)

前連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

株主資本

その他の包括利益

累計額

非支配株主持分

純資産合計

当期首残高

532,944

18,971

79,824

631,739

会計方針の変更による累積的影響額

△307

△307

会計方針の変更を反映した当期首残高

532,632

18,971

79,824

631,432

当期変動額

9,251

△33,270

608

△23,411

当期末残高

541,888

△14,299

80,432

608,021

 

当連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

株主資本

その他の包括利益

累計額

非支配株主持分

純資産合計

当期首残高

541,888

△14,299

80,432

608,021

当期変動額

46,596

7,287

△7,838

46,045

当期末残高

588,484

△7,012

72,594

654,066

 

④要約連結キャッシュ・フロー計算書(日本基準)

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

営業活動によるキャッシュ・フロー

114,974

165,233

投資活動によるキャッシュ・フロー

△85,168

△60,357

財務活動によるキャッシュ・フロー

9,050

△87,351

現金及び現金同等物に係る換算差額等

△1,423

3,604

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

37,433

21,129

現金及び現金同等物の期首残高

109,839

147,272

現金及び現金同等物の期末残高

147,272

168,401

 

⑤連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更(日本基準)

前連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)

(会計方針の変更)

収益認識に関する会計基準等の適用

 当社及び国内連結子会社は、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2018年3月30日。以下「収益認識会計基準」という。)及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第30号」 2018年3月30日)が2018年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用できることになったことに伴い、当連結会計年度の期首から収益認識会計基準等を適用し、約束した財又はサービスの支配が顧客に移転した時点で、当該財又はサービスと交換に受け取ると見込まれる金額で収益を認識することとしました。

 収益認識会計基準等の適用については、収益認識会計基準第84項ただし書きに定める経過的な取扱いに従っており、当連結会計年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を、当連結会計年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用しております。

 この変更が、利益剰余金の当期首残高、当連結会計年度の損益及び1株当たり情報に与える影響は軽微であります。

 

IFRS第16号「リース」及びASC Topic842「リース」の適用

 国際財務報告基準及び米国基準を適用している在外連結子会社は、当連結会計年度より、国際財務報告基準第16号「リース」(以下「IFRS第16号」という。)及びASC Topic842「リース」を適用しております。これにより、リースの借手は、原則としてすべてのリースを貸借対照表に資産及び負債として計上することとしました。IFRS第16号等の適用については、経過措置として認められている累積的影響を適用開始日に認識する方法を採用しました。

 この結果、当連結会計年度の有形固定資産の「その他(純額)」が20,793百万円増加し、流動負債の「その他」が2,796百万円及び固定負債の「リース債務」が17,712百万円増加しております。なお、従来「営業活動によるキャッシュ・フロー」に表示していたオペレーティング・リースに係るリース料の支払は、「財務活動によるキャッシュ・フロー」で表示しております。また、当連結会計年度の損益及び1株当たり情報に与える影響は軽微であり、利益剰余金の当期首残高に与える影響はありません。

 

当連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)

 該当事項はありません。

 

(6) 経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報

 

 IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりであります。

 

前連結会計年度(自 2019年4月1日 至 2020年3月31日)

 「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 42.初度適用」に記載のとおりであります。

 

当連結会計年度(自 2020年4月1日 至 2021年3月31日)

(連結の範囲)

 日本基準では重要性が乏しいため持分法を適用していた一部の子会社について、IFRSでは連結範囲に含めております。また、日本基準では持分法適用関連会社としていた一部の会社について、IFRSではジョイント・オペレーションとして認識しております。

 

(のれんの償却)

 日本基準では一定期間でのれんの償却を行っておりましたが、IFRSではのれんの償却を行っていないため、IFRSでは日本基準と比べて「販売費及び一般管理費」が605百万円減少し、「持分法による投資利益」が1,464百万円増加しております。

 

(リース

 日本基準ではオペレーティング・リースとして認識していたリース契約について、IFRSでは使用権資産として認識しているため、IFRSでは日本基準と比べて「使用権資産」が24,813百万円、「その他の金融負債」(流動負債)が5,393百万円、「その他の金融負債」(非流動負債)が22,201百万円増加しております。

 

 

(7) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 

 当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準審議会によって公表されたIFRSに準拠して作成しております。また、当社は連結財務諸表規則第1条の2に掲げる「指定国際会計基準特定会社」の要件を満たすことから、同第93条の規定を適用しております。連結財務諸表の作成に当たり、当連結会計年度における資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える将来に関する見積りを実施する必要があります。経営者は、これらの見積りについて、当連結会計年度末時点において過去の実績やその他の様々な要因を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、将来においてこれらの見積りとは異なる場合があります。

 当社グループの連結財務諸表作成において採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。

 

 

4【経営上の重要な契約等】

 

合弁会社契約等

契約会社名

設立年月日

及び契約締結先

商号及び資本金

主たる目的

出資比率、

設立条件等

三井化学株式会社

(当社)

1960年12月14日

イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー

(アメリカ)

三井・デュポン ポリケミカル株式会社(現 三井・ダウ ポリケミカル株式会社)

設立時資本金   2,800百万円

現資本金     6,480百万円

エチレン酢酸ビニルコポリマーその他のエチレンコポリマーの製造及び販売

設立時資本金のうち各半額を当社は現金出資し、イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニーは高圧ポリエチレンの製造技術を現物出資した。

三井化学株式会社

(当社)

1994年11月23日

東レ株式会社

三井物産株式会社

ピーティー・ユオノ・パンチャツンガル

(インドネシア)

ピーティー・インドネシア・トーレ・シンセティックス

(インドネシア)

ピーティー・ペットネシア・レジンド

設立時資本金  1,100万米ドル

現資本金    2,832万米ドル

ボトル用ポリエチレンテレフタレート樹脂の製造、販売

設立時資本金は、当社が37.5%、東レ株式会社が32.5%、三井物産株式会社が5%、ピーティー・ユオノ・パンチャツンガルが15%、ピーティー・インドネシア・トーレ・シンセティックスが10%の割合で現金により出資した。

三井化学株式会社

(当社)

2005年4月1日

出光興産株式会社

株式会社プライムポリマー

資本金      20,000百万円

ポリエチレン及びポリプロピレンの製造、加工及び販売

当社が65%、出光興産株式会社が35%の出資比率で運営していくこととした。

三井化学株式会社

(当社)

2006年4月10日

現契約締結先:中国石化上海高橋石油化工有限公司

(中国)

上海中石化三井化工有限公司

設立時資本金  947百万人民元

現資本金   2,347百万人民元

中国におけるビスフェノールAの製造・販売

当社が50%、中国石化上海高橋石油化工有限公司が50%の出資比率で運営していくこととした。

三井化学株式会社

(当社)

2012年5月28日

現契約締結先:中国石化上海高橋石油化工有限公司

(中国)

上海中石化三井弾性体有限公司

設立時資本金  637百万人民元

現資本金   1,637百万人民元

中国におけるエチレン・プロピレン・ジエン共重合ゴムの製造・販売

当社が50%、中国石化上海高橋石油化工有限公司が50%の出資比率で運営していくこととした。

 

 

契約会社名

設立年月日

及び契約締結先

商号及び資本金

主たる目的

出資比率、

設立条件等

株式会社プライムポリマー

(連結子会社)

2012年10月19日

三井物産株式会社

 

Prime Evolue Singapore Pte. Ltd.

資本金    115百万米ドル

 

メタロセンポリマーの製造・販売

資本金は、株式会社プライムポリマーが80%、三井物産株式会社が20%の割合で現金により出資した。

三井化学株式会社

(当社)

2015年7月1日

SKC Co., Ltd.

(韓国)

 

Mitsui Chemicals & SKC Polyurethanes Inc.

資本金    700億韓国ウォン

 

ポリウレタン材料の製造・販売・研究

資本金は、当社が50%、SKC Co., Ltd.が50%の割合で現物出資した。

三井化学株式会社

(当社)

 

2018年8月8日

(契約締結日)

PTT Global Chemical Public Company Limited

(タイ)

TOC Glycol Company Limited

(タイ)

Siam Mitsui PTA Co., Ltd.(現 GC-M PTA Company Limited)

資本金       48億バーツ

 

高純度テレフタル酸の製造及び販売

当社が26%、PTT Global Chemical Public Company Limitedが49%、TOC Glycol Company Limitedが25%の出資比率で運営していくこととした。

三井化学株式会社

(当社)

 

2020年5月14日

(契約締結日)

株式会社松風

 

 

株式会社松風

増資後資本金   5,969百万円

 

歯科材料及び歯科用機器の製造・販売

当社は、株式会社松風の第三者割当増資を引き受け、当社持分を11.17%から20.01%に引き上げ、業務提携をさらに強化することとした。

三井化学株式会社

(当社)

 

2020年11月11日

(契約締結日)

三井物産株式会社

 

 

本州化学工業株式会社

資本金      1,501百万円

 

高機能樹脂の原料、電子材料、医薬品、農薬などの原料となる各種化学品の製造及び販売

当社及び三井物産株式会社が共同して本州化学工業株式会社の普通株式を公開買付することにより、最終的には当社及び三井物産株式会社の持分比率をそれぞれ51%及び49%とするため、共同公開買付契約を締結した。

 

株式交換による完全子会社化

 当社は、2020年5月14日開催の取締役会において、当社の連結子会社である株式会社アークとの間で、当社を株式交換完全親会社、株式会社アークを株式交換完全子会社とする株式交換を行うことを決議し、当社とアークとの間で株式交換契約を締結しました。

 詳細は、「第5 経理の状況 2財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

5【研究開発活動】

当社及び連結子会社の研究開発は、当社研究開発本部の各研究所及び各連結子会社の研究開発部門によって推進されております。当連結会計年度の当社及び連結子会社の研究開発費は338億円であります。

当社グループの研究開発本部の組織は、次のとおりであります。

    ・研究開発企画管理部

    ・Mitsui Chemicals Singapore R&D Centre

    ・合成化学品研究所

    ・高分子材料研究所

    ・機能材料研究所

    ・生産技術研究所

    ・モビリティデベロップメントセンター

当連結会計年度における各事業セグメント、新事業創出のための研究開発及びコーポレート研究の主要研究課題、研究開発費は、次のとおりであります。

(1) モビリティ

主に当社において、「モビリティ」領域の製品群(エラストマー、機能性コンパウンド、機能性ポリマー等)の開発を行っております。当連結会計年度では、自動車用材料分野の新銘柄開発(エラストマー、機能性コンパウンド)やICT材料及び光学材料の新製品開発(機能性ポリマー)に重点を置いております。

  当セグメントに係る研究開発費は86億円であります。

(2) ヘルスケア

当社において、「ヘルスケア」領域の製品群(ビジョンケア材料、パーソナルケア材料、高機能不織布等)の開発を行っております。また、Kulzer GmbHとサンメディカル㈱は、当社との連携も含めて、オーラルケア分野の製品開発を行っております。当連結会計年度では、各事業領域における新製品開発(歯科材料、衛生材料用不織布、バイオ触媒等)に重点を置いております。

  当セグメントに係る研究開発費は37億円であります。

(3) フード&パッケージング

当社において、包装材やICT分野向けのコーティング剤や接着剤等の製品開発を行っております。包装用フィルムやシートの製品開発は三井化学東セロ㈱において、また、当社と三井化学東セロ㈱は共同でICT分野向けの機能製品開発を、それぞれ進めております。他方、三井化学アグロ㈱では、農業用及び防疫用薬剤に関する製品開発を行っております。当連結会計年度では、包装材料のリサイクル技術やICT分野での新製品、新規農薬原体の開発に重点を置いております。

  当セグメントに係る研究開発費は94億円であります。

(4) 基盤素材

当社において、「基盤素材」領域の製品群(フェノール及びフェノール誘導品、ハイドロキノン等工業薬品、高純度テレフタル酸、ペット樹脂等)の事業強化に資する合理化プロセスの開発を継続的に行っております。また、当社では、ポリオレフィン樹脂の競争力強化に資する高性能重合触媒の開発を、㈱プライムポリマーでは、当社との連携の下、ポリオレフィン樹脂やPPコンパウンドの新銘柄・新製品開発を、それぞれ進めております。他方、三井化学SKCポリウレタン㈱では、ウレタンフォーム関連の製品開発を行っております。

  当セグメントに係る研究開発費は49億円であります。

(5) 新事業創出に向けた研究開発

当社においては、「社会課題解決に資する当社独自材料をベースとした新事業」を創出するための研究開発を進めております。その中でも、ICT材料、ロボット材料、エネルギーソリューション事業に注力するとともに、それに資する施策として、オープンイノベーションの推進にも力を入れております。また、Mitsui Chemicals Singapore R&D Centreでは、アジア・パシフィック地域発の新事業創出を視野に入れた研究開発に取り組んでおります。加えて、当連結会計年度では、繊維強化複合材料や金属樹脂一体成型技術を用いた複合部材に加えて、軽量化された自動車部品の開発に重点を置いております。

  新事業創出に係る研究開発費は29億円であり、その他セグメント及び全社費用等に計上しております

(6) コーポレート研究

当社において、各セグメント領域における製品やサービスの維持・強化・拡充に必要な基盤技術開発並びに革新技術開発を行っております。特に、近年は、マテリアルズインフォマティクスや感性評価技術といった最先端の基盤技術の展開やオープンイノベーションによる新たな技術の獲得にも積極的に取り組んでおります。また、昨今の環境問題やカーボンニュートラルに資する取り組みとして、ケミカルリサイクル・マテリアルリサイクル・バイオマス原料転換・CCUに関する研究開発にも注力しております。

コーポレート研究に係る研究開発費は43億円であり、全報告セグメントに配賦しております。