第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

帝人グループは企業理念として、「人間への深い理解と豊かな想像力をもってクォリティ・オブ・ライフの向上に努める」とともに、「社会とともに成長する」「社員とともに成長する」ことを掲げています。また長期ビジョンとして、社員の多様性を活かし、社会が必要とする新たな価値を創造し続けることで、未来の社会を支える会社となることを目指しています。

(2) 中長期の経営戦略と対処すべき課題

足元の経営環境については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要」をご参照下さい。また、今後の世界経済は、地政学リスクの更なる高まりや米国の保護主義の強まりが懸念されるものの、米国、欧州、中国ともに景気は安定的に拡大する見通しです。国内経済についても、底堅い内外需を背景とした企業業績の改善もあり、安定的な成長が継続する見通しです。このような状況のもと、帝人グループでは平成29年2月に公表した中期経営計画に基づき、「成長戦略」による基礎収益力の更なる強化、「発展戦略」による新規コアビジネスの確立を推進するとともに、それを支える経営システム基盤の強化を図っていきます。

1)長期ビジョン実現に向けて

帝人グループは、「未来の社会を支える会社」として次のような姿を目指します。

◆社会の抱える問題の解決に貢献する企業

社会の抱える様々な問題と自社の持つ強みから、注力すべき重点領域を特定し、事業機会の取り込みを図り、また経営基盤の強化を図ります。

(当社の注力すべき重点領域)

環境価値ソリューション

モビリティの環境性能向上を促す「軽量化」素材による貢献

安心・安全・防災ソリューション

災害対策・社会インフラ整備に関わる安全性向上への貢献

少子高齢化・健康志向ソリューション

高齢化社会の進展、生活習慣病の増加に対応した健康維持向上支援

◆外部環境の変化を先取りして変革し続ける企業

外部環境の不確実性が増す中、持続的成長の実現に向けて、後追いではなく自ら変革を起こします。

◆常に新しい価値を創出し続ける企業

社会の進化を加速させる製品・サービスを創出します。

2)中期経営計画における事業戦略

マテリアル事業領域とヘルスケア事業領域を2本の柱とし、既存事業の延長線だけではなく、「今はまだ利益貢献していない新しい事業」が10年後の収益の柱となるよう、それぞれの事業で成長戦略、発展戦略を着実に実行することにより、新たな高収益事業を核とした事業ポートフォリオへと変革を進めます。

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3)経営指標

「投資効率」「稼ぐ力」の両面に重点を置き、収益性指標として「ROE」、成長性指標として「EBITDA」を最重要指標として位置づけています。更に投入資源に対する収益効率性の指標として「営業利益ROIC」を活用します。また、事業ポートフォリオの変革を可視化し、モニタリングするため、非財務情報を含む独自のKPI(重要業績評価指標)として「発展戦略プロジェクト売上高」「ダイバーシティ推進度」を設定し、進捗をフォローアップします。平成31年度までの経営目標は次のとおりです。

ROE

10%以上

営業利益ROIC

8%以上

EBITDA

1,200億円超

(注)ROE:親会社株主に帰属する当期純利益/期首・期末平均自己資本

営業利益ROIC:営業利益/期首・期末平均投下資本

※投下資本・・・自己資本+非支配株主持分+有利子負債-現金及び預金

EBITDA:営業利益+減価償却費

 

(3) 会社の支配に関する基本方針

① 当社の株主の在り方に関する基本方針

(会社法施行規則第118条第3号にいう、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針)

当社の株主の在り方について、当社は、株主は市場での自由な取引を通じて決まるものと考えています。したがって、株式会社の支配権の移転を伴う買付提案に応じるかどうかの判断も、最終的には株主全体の意思に基づき行われるべきものと考えています。

しかし、当社株式の大量取得行為や買付提案の中には、「企業価値ひいては株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすおそれのあるもの」「株主に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの」「買付の対価が当社の企業価値に鑑み不十分なもの」等も想定されます。このような大量取得行為や買付提案を行う者は、例外的に、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として適当でないと考えています。

② 基本方針の実現に資する取り組み

当社では、多数の投資家の皆様に長期的に当社に投資を継続して頂くために、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を向上させるための取り組みとして、次の施策を既に実施しています。これらの取り組みは、上記①の基本方針の実現にも資するものと考えています。

ア.中長期での取り組み

帝人グループでは、平成29年2月に、長期ビジョン実現に向けた次の3か年の実行計画として、中期経営計画2017-2019『ALWAYS EVOLVING』を策定し、公表しました。この中期経営計画に基づき、「成長戦略」による基礎収益力の更なる強化、「発展戦略」による新規コアビジネスの確立を推進するとともに、それを支える経営システム基盤の強化を図っていきます。中期経営計画の詳細につきましては、「(2) 中長期の経営戦略と対処すべき課題」をご参照下さい。

株主還元については、「連結業績に連動した配当」を基本とし、「財務体質の健全性や中長期の配当の継続性、将来の成長戦略投資に必要な内部留保の確保」を総合的に勘案し配当を実施します。

イ.「コーポレート・ガバナンス(企業統治)の強化」による企業価値向上への取り組み

当社は、企業価値ひいては株主共同の利益向上のために不可欠な仕組みとして、従来より、コーポレート・ガバナンスの強化を重要な課題に掲げ取り組んでいます。その具体的内容につきましては、「第4 提出会社の状況 6 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照下さい。

 

③ 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取り組み(買収防衛策)

当社は、平成27年6月24日に開催された第149回定時株主総会において株主の皆様の承認を受け、当社株式の大量取得行為に関する対応策(以下、「本プラン」という)を更新しました。本プランの概要は以下のとおりです。

 

なお、本プランは当事業年度末時点のものを記載しています。本プランの有効期間は、第152回定時株主総会の終結の時までとなっており、当社は平成30年5月9日開催の取締役会において、本プランを継続しないことを決議しています。

 

ア.対象となる買付

本プランの対象となる買付は、株式の保有割合が20%以上となる買付です。

イ.買付者との交渉手続き

買付者には、事前に買付説明書の提供を求め、当社が、情報収集や検討を行う期間を確保した上で、株主の皆様に当社経営陣の計画や代替案を提示したり、買付者との交渉を行っていくための手続きを定めています。

ウ.買付者が手続きを守らなかった場合の取得条項付新株予約権の無償割当て

買付者が前記手続きを守らなかった場合等には、独立委員会の勧告に従い、取締役会は、その時点の全ての株主に対し、保有株式1株につき1個の割合で「取得条項付新株予約権」を無償で割当てることを決議します。

エ.取得条項付新株予約権の取得と当社株式の交付

新株予約権に付された取得条項により、当社は買付者等以外の株主の皆様から新株予約権を取得しこれと引き換えに、新株予約権1個につき、当社株式1株を交付します。

オ.買付者等以外の株主の皆様への影響

買付者等以外の株主の皆様全員に平等に当社株式を交付しますので、株主の皆様の保有する株式の希釈化は生じません。買付者等には当社株式は交付されませんので、この交付により、買付者等の保有する当社株式の議決権割合を最大50%まで希釈化させる可能性があります。

カ.新株予約権の無償割当ての要件

新株予約権の無償割当ては以下いずれかに該当し、新株予約権の無償割当てをすることが相当と認められる場合に行われます。

1)本プランに定める手続きを遵守しない場合

2)買収の目的や買収後の経営方針等に鑑み、当社の企業価値ひいては株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすおそれがある買付であり、下記に掲げる行為のいずれかに該当する場合

a) 株式を買い占め、その株式につき当社に対して高値で買取りを要求する行為

b) 当社の経営を一時的に支配して、当社の重要な資産等を廉価に取得する等、当社の犠牲の下に買付者の利益を実現する経営を行うような行為

c) 当社の資産を買付者やそのグループ会社等の債務の担保や弁済原資として流用する行為

d) 当社の経営を一時的に支配して、当社の事業に当面関係していない高額資産等を処分させ、その処分利益をもって、一時的な高配当をさせるか、一時的高配当による株価の急上昇の機会を狙って高値で売り抜ける行為

3)株式の売却を事実上強要するおそれのある買付である場合

4)買付の対価が当社の企業価値に鑑み不十分な買付である場合

キ.発動までのプロセスの概要

買付者から買付説明書が提出された場合、社外取締役または社外監査役のうち5名で構成される独立委員会は、取締役会に対して、買付者の買付の内容に対する取締役会の意見等を一定の期間内(30日を上限とします)に提示するよう求めることがあります。その後、最長60日間、情報収集・検討等を行います。独立委員会は、30日を上限として検討期間を延長することができるものとします。

独立委員会はこれらの情報収集・検討等に基づき、取締役会に対し、新株予約権の無償割当ての実施または不実施の勧告を行います。取締役会は、独立委員会の勧告を尊重し、これに従い最終的に新株予約権の無償割当ての実施または不実施の決議を行います。ただし、独立委員会が当該実施に関し株主総会の承認を予め得るべき旨の留保を付した場合、取締役会は、実務上可能な限り速やかに株主総会を招集し、新株予約権の無償割当ての実施に関する議案を付議するものとします。

*「当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)」の詳細については、インターネット上の当社ウェブサイト(https://www.teijin.co.jp/ir/governance/defense/)に掲載しています。

 

④ 前記取り組みが、基本方針に沿い、当社の企業価値ひいては株主共同の利益に合致し、当社役員の地位の維持を目的とするものではないことについて

当社では、本プランの設計に際し、以下の諸点を考慮し織り込むことにより、本プランが、基本方針に沿い当社の企業価値ひいては株主共同の利益に合致するものであり、当社役員の地位の維持を目的とするものではないと考えています。

ア.買収防衛策に関する指針の要件の充足等

本プランは、経済産業省及び法務省が平成17年5月27日に公表した「企業価値・株主共同の利益の確保または向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則(①企業価値・株主共同の利益の確保・向上の原則、②事前開示・株主意思の原則、③必要性・相当性確保の原則)を充足しています。また、経済産業省の企業価値研究会が平成20年6月30日に公表した「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」を踏まえた内容となっています。

イ.株主意思の反映

本プランは、平成27年6月24日に開催された第149回定時株主総会において承認され発効し、その有効期限は、平成30年3月期の事業年度に関する定時株主総会の終結の時までとします。また、当社取締役の任期は1年となっていますので、取締役の選任を通じて株主の皆様の意思を反映させることが可能です。更に、本プランの有効期間の満了前であっても、株主総会において本プランを廃止する旨の決議が行われた場合には、本プランはその時点で廃止されることになります。

ウ.独立性の高い社外役員の判断の重視

当社は、本プランの導入に当たり、本プランの発動等の運用に際して、取締役会の恣意的判断を排除し、株主の皆様のために実質的な判断を客観的に行う機関として、独立委員会を設置しました。独立委員会は、社外取締役または社外監査役のいずれかに該当する者の中から取締役会が選任した者から構成します。

エ.本プラン発動のための合理的な客観的要件の設定

本プランは、予め定められた合理的かつ詳細な客観的要件が充足されなければ発動されないように設定されており、しかも、これらの客観的要件は当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として適当でないとされる場合と一致させています。これにより、取締役会による恣意的な発動を防止します。

オ.コーポレート・ガバナンスの強化と継続

当社では、定員10名以内の取締役のうち4名を独立社外取締役、監査役の過半数の3名を独立社外監査役とすること等により、意思決定、業務執行、監視・監査の3機能の分離と強化を図り、また、5~7名の社外アドバイザーと取締役会長(取締役会長が空席の場合は、相談役)、CEOで構成されるアドバイザリー・ボードを取締役会の諮問機関として設置して、CEOの交代及び後継者の推薦、帝人グループの役員報酬制度の審議等を行い、上記の取り組みを含むコーポレート・ガバナンスの指針を「コーポレート・ガバナンスガイド」として開示しています。

以上の施策は、我が国の上場会社において、コーポレート・ガバナンスの先駆的な取り組みと評価されています。この仕組みは、当社役員の保身的な行動を強く抑制するものであり、本プランの実施にあっても、その恣意的な行使を抑止する重要な機能を果たすことが期待されます。

 

2【事業等のリスク】

業績等に影響を与える可能性のある重要な要因には、以下の事項があります。なお、業績に影響を与える要因はこれらに限定されるものではありません。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において帝人グループが判断したものです。

(1) 競合・市況変動にかかるもの

帝人グループは、外部環境の変化に左右されない企業体への転換を図っていますが、一部で市況製品を展開しており、景気動向、他社との競合に伴う市場価格の変動が事業業績に影響を及ぼす可能性があります。

特に、景気や他社との競合という観点からは、ポリエステル繊維、ポリエステルフィルム、ポリカーボネート樹脂といった汎用素材の分野では、販売量、売値及び原燃料調達価格に関し変動を受ける構造となっています。また、これらの事業は、製造原価に占める原燃料コストのウェイトが高いため、原油価格の動向により、損益に影響を受ける可能性があります。

また、帝人グループの素材事業は中間材料が多く、末端需要の拡大・縮小が各段階での在庫調整により実体経済以上に増減する可能性があります。

加えて、ヘルスケア事業は、公定価格水準の変動といった価格変動要因以外にも他社との競争はますます激化しており、売値下落のリスクがあります。

また、為替や金利の変動が、帝人グループの経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 製品の品質にかかるもの

帝人グループでは、帝人㈱及び帝人ファーマ㈱等の主要な子会社に、他の部門から独立した専任の品質・信頼性保証部門を設置し、厳格な品質管理基準に基づき、事業活動全般における品質保証を確保する体制を敷いています。しかしながら、全ての製品・サービスにおいて、予期し得ない重大な品質問題が発生する可能性を排除することはできません。従って、そうした製品・サービスの欠陥が、業績、財務状況、社会的評価等に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 研究開発にかかるもの

帝人グループでは、技術を核とした持続的成長を実現するための研究開発に、積極的に経営資源を投入しています。しかしながら、そうした研究開発の成果が目標から大きく乖離した場合には、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

特に医療用医薬品の開発には、多額の費用と長い期間がかかるうえ、創薬研究において、有用な化合物を発見できる可能性は決して高くありません。また、臨床試験の結果、予測していた有効性が証明できない、あるいは予測していない副作用が発現した等の理由で承認申請を断念しなければならない可能性があります。また、承認申請した後でも審査の過程で承認されない、また、市販後調査の結果、承認が取り消される可能性があります。

(4) 海外活動にかかるもの

帝人グループは、中国、タイ等の東南アジア、ドイツ・オランダ等の欧州、米国等海外で事業展開しており、これら海外での活動について為替変動に係るリスクのほか、次のようなリスクがあります。そのため、これらの事象が発生した場合は、帝人グループの経営成績及び財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。

・予期しない法律・規制の施行、不利な影響を及ぼす租税制度の変更

・経済変動、政変・テロ・戦争等による社会的混乱

(5) 事故・災害にかかるもの

帝人グループは、グループ共通の防災に関するガイドラインや事業継続計画(BCP)を整備し、防災診断、地震対策、火災予防等の未然防止対策や防災教育、防災訓練、防火設備強化等の拡大防止対策を積極的に推進するとともに、被害を受けた場合の速やかな復旧計画を策定しています。しかしながら、万一、大規模な自然災害や不慮の事故等により生産設備が損害を受けた場合や原材料の供給等サプライチェーンに大きな障害が生じた場合は、帝人グループの経営成績及び財務状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。

(6) 情報セキュリティにかかるもの

帝人グループでは、各種製品の研究・開発から製造・販売に至る様々な重要情報を保持しています。また、医療関係では対象患者の個人情報等も扱っています。重要情報や個人情報等を取り扱うにあたり、帝人グループではハード・ソフト両面で様々な情報セキュリティ対策を実施していますが、災害、サイバー攻撃、不正アクセスその他不測の事態によりこれら情報等が外部へ流出し、ステークホルダーに対して予期しない被害や業績に対しても好ましくない影響を及ぼす可能性があります。

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

当期の世界経済は、北朝鮮を巡る地政学リスクの高まりがみられたものの、米国では好調な企業業績の牽引もあり株価が過去最高値を更新し、欧州も海外景気の持ち直しを受けて輸出が増加する等、全体として回復傾向が続きました。国内経済は、堅調な海外需要及び内需の高まりにも支えられ、企業業績が改善し設備投資が持ち直す等、緩やかな回復基調が継続しました。

このような状況のもと、帝人グループの当連結会計年度の経営成績及び財政状態は以下のとおりとなりました。

 

1)経営成績

帝人グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高8,350億円(前期比12.6%増)、営業利益698億円(同23.6%増)、経常利益678億円(同21.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益456億円(同9.1%減)となりました。1株当たり当期純利益は、231円26銭(同23円65銭減)となりました。

当連結会計年度における報告セグメントごとの経営成績の概況は次のとおりです。

なお、当連結会計年度より、報告セグメントを従来の「高機能繊維・複合材料」「電子材料・化成品」「ヘルスケア」「製品」の4区分から、「マテリアル」「ヘルスケア」の2区分に変更しています。これは、平成29年2月に公表した中期経営計画に基づき、成長戦略・発展戦略の加速を促す組織体へと体制を再編したことに伴うものです。なお、前期比較は、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。

マテリアル領域

:[売上高 6,248億円(前期比 15.7%増)、営業利益 336億円(同 7.7%増)]

売上高は6,248億円と前期比850億円の増収となり、営業利益も336億円と同24億円の増益となりました。

当セグメントの生産規模は、3,464億円(前期比 25.4%増、販売価格ベース)でした。

当連結会計年度において生産規模が著しく増加していますが、これは昨年1月に買収した米国Continental Structural Plastics Holdings Corporationが加わった影響等によるものです。

 

ヘルスケア領域

:[売上高 1,554億円(前期比 3.1%増)、営業利益 359億円(同 45.1%増)]

売上高は1,554億円と前期比47億円の増収となり、営業利益も359億円と同112億円の増益となりました。

当セグメントの生産規模は、694億円(前期比 5.9%増、販売価格ベース)でした。

 

その他

:[売上高 548億円(前期比 7.9%増)、営業利益 61億円(同 15.9%増)]

売上高は548億円と前期比40億円の増収となり、営業利益も61億円と同8億円の増益となりました。

 

2)財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ221億円増加し、9,862億円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ343億円減少し、5,779億円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ564億円増加し、4,082億円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益に、減価償却費や事業構造改善引当金といった非資金項目の増減を加え、合計で801億円の資金収入となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、成長戦略及び発展戦略向けを含む設備投資を行った結果、513億円の資金支出となりました。

この結果、営業活動に投資活動を加えたキャッシュ・フローは288億円の資金収入となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローについては、長期借入金の返済や配当の支払い等により315億円の資金支出となりました。

これらの結果、現金及び現金同等物に係る換算差額等も加え、最終的な現金及び現金同等物の減少額は14億円となりました。

③ 生産、受注及び販売の実績

帝人グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その形態、単位等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多いため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。

このため生産、受注及び販売の状況については、「① 財政状態及び経営成績の状況」における各報告セグメントの経営成績に関連付けて示しています。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容等

 経営者の視点による帝人グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

① 重要な会計方針及び見積り

帝人グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。その作成においては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性の存在により、これらの見積りと異なる場合があります。

帝人グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載していますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えています。

1) 貸倒引当金の計上基準

帝人グループでは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を繰入計上しています。将来、顧客の財務状況等が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があります。

2) たな卸資産の評価基準

帝人グループの販売する製品の価格は、市場相場変動の影響を強く受ける傾向にあるので、その評価基準として主に原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定しています。)を採用しています。

3) 投資有価証券の減損処理

帝人グループは、金融機関や、製造・販売等に係る取引会社及び関係会社の株式を保有しています。これらの株式は、株式市場の価格変動リスクや、経営状態・財務状況の悪化による価値下落リスクを負っているため、合理的な基準に基づき、投資有価証券の減損処理を行っています。

4) 繰延税金資産の回収可能性

帝人グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価に際し、将来の課税所得を合理的に見積っています。繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するので、課税所得の見積額が減少した場合は繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 

1) 経営成績等

a) 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

帝人グループの当連結会計年度の経営成績は、複合成形材料事業で昨年1月に買収した米国Continental Structural Plastics Holdings Corporationが加わった影響等もあり、売上高は前期比で12.6%増の8,350億円となりました。営業利益は、各事業における販売増に加え、アルツハイマー治療薬の候補化合物の導出対価計上の影響もあり、同23.6%増の698億円となり、経常利益は同21.3%増の678億円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に税金費用減少等の一時的要因もあったことから、前期比9.1%減の456億円となりました。1株当たり当期純利益は、231円26銭(同23円65銭減)となりました。

 

事業全体としては、営業利益が前期比23.6%増の698億円となりましたが、これは、平成26年からの約3年間にわたり実行してきた、素材分野における汎用品ビジネスの縮小と成長分野への投資、医薬医療分野における米国在宅医療からの撤退等を中心とした構造改革の成果が表れてきたものと捉えています。

当期は中期経営計画の初年度にあたりますが、マテリアル領域においては、航空機や自動車を中心としたモビリティの軽量化の流れの中で、アラミド繊維やポリカーボネート樹脂、炭素繊維の需要が堅調に推移しました。また、発展戦略と位置付けている米国Continental Structural Plastics Holdings Corporationの自動車向け複合材料において、米国自動車メーカーの新モデルへ採用が進む等、総じて事業環境は良好に推移しました。

ヘルスケア領域においては、医薬分野ではアルツハイマー治療薬の候補化合物を米国メルク社に導出したことにより30億円の対価を得たほか、主力の高尿酸血症・痛風治療剤「フェブリク」の販売が伸長しました。在宅医療分野においても、睡眠評価装置の活用等により、睡眠時無呼吸症候群の治療器のレンタル台数が増加しました。これらの既存領域に加え、埋め込み型医療機器などの新たな領域での製品・サービスの品揃えの拡充を図っています。

 

セグメントごとの経営成績等の詳細は、3) セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析に記載しています。

 

b) 財政状態及びキャッシュ・フローの状況

総資産は、各事業の成長・拡大や原燃料価格上昇等に伴う運転資本の増加、保有株式の時価上昇に伴う投資有価証券の含み益が増加したこと等により、前期末対比221億円増加の9,862億円となりました。

負債は、長期借入金を返済したことや、米国在宅医療事業の撤退に備えて計上していた事業構造改善引当金を取り崩したこと等により、前期末対比343億円減少の5,779億円となりました。

純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益456億円があったことに加え、為替換算調整勘定が円安に伴って増加したことや、保有株式の時価上昇に伴いその他有価証券評価差額金が増加したこと等により、前期末対比564億円増加の4,082億円となりました。この結果、自己資本比率は39.8%、D/Eレシオは0.9倍となりました。

 

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フ

ローの状況」に記載のとおりです。

 

(帝人グループの資本の財源及び資金の流動性について)

帝人グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、各事業の販売拡大や原燃料価格上昇等に伴う運転資本の増加、複合成形材料分野や医薬品分野を中心とした研究開発活動費等があります。また、設備投資資金需要の主なものとしては、航空機向けの需要増を見据えて、成長素材である炭素繊維の新たな生産拠点を米国サウスカロライナ州に建設中です。平成32年度の稼働を予定しており、総投資額は日本の三島事業所におけるプリカーサ*の生産能力の増強も合わせて350億円を予定しています。

 * 炭素繊維の原料として用いる特殊なアクリル繊維。

 

帝人グループの事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用、金融機関からの借入および社債の発行等により資金調達をおこなっており、自己資本比率やD/Eレシオ等の財務健全性指標やROEを注視しながら、最適な選択を実施していきます。また、日米欧中の各拠点においては、グループ内余剰資金を活用するためにキャッシュ・マネジメント・システムを導入し、資金効率の向上に努めています。

なお、当期末の有利子負債残高は3,442億円となりました。資金調達コストの低減に努める一方、設備投資に対応する借入の大部分については、長期調達するとともに過度に金利変動リスクに晒されないよう金利スワップなどの手段を活用しています。

 

また、金融機関には十分な借入枠を有しており、高水準で維持している現預金と併せ、中期経営計画で掲げた戦略投資を機動的に実施することが可能となっています。

 

2) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

平成29年2月に公表した中期経営計画において、投資効率を測るための指標としてROEと営業利益ROICを、効率だけでは無く稼ぐ力を測るための指標としてEBITDAも重視することとしており、社内での浸透も進んでいます。中期経営計画の期間においては、ROEは10%以上、営業利益ROICは8%以上、また平成31年度でのEBITDAは1,200億円超という目標を掲げていますが、中期経営計画の初年度にあたる当期はROEが12.5%、営業利益ROICが11.2%、EBITDAが1,155億円となり、順調に進捗しています。

また、各種指標の推移は以下のとおりです。

 

第148期

第149期

第150期

第151期

第152期

ROE(%)

3.0

△2.8

10.6

15.7

12.5

営業利益ROIC(%)

3.4

7.1

12.7

10.0

11.2

EBITDA

637

821

1,060

958

1,155

(注)各指標はいずれも当社連結ベースの財務数値を用いて算出しています。

・ROE:親会社株主に帰属する当期純利益/期首・期末平均自己資本

・営業利益ROIC:営業利益/期首・期末平均投下資本

  ※投下資本・・・自己資本+非支配株主持分+有利子負債-現金及び預金

・EBITDA:営業利益+減価償却費

 

 

3) セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析

マテリアル領域

:[売上高 6,248億円(前期比 15.7%増)、営業利益 336億円(同 7.7%増)]

売上高は6,248億円と前期比850億円の増収となり、営業利益も336億円と同24億円の増益となりました。

資産は6,171億円となり、各事業の成長・拡大や原燃料価格上昇等に伴う運転資本の増加等により、前期末対比312億円増加となりました。

 

◆マテリアル事業:アラミドが自動車向け中心に販売拡大、樹脂も高付加価値品の販売が好調

アラミド分野では、パラ系アラミド繊維「トワロン」が摩擦材、ゴム補強材等の自動車用途や光ファイバー用途の販売を中心に、総じて順調に拡大しました。パラ系アラミド繊維「テクノーラ」は、国内の自動車関連用途と海外のインフラ関連用途向け販売が堅調に推移しました。メタ系アラミド繊維「コーネックス」は、ターボチャージャーホース等の自動車関連、防護衣料及び産業資材用途の販売が堅調に推移しました。

炭素繊維分野では、炭素繊維「テナックス」の航空機用途向けの販売が堅調に推移しました。その他の用途では、コンパウンド用途や、アジアにおけるスポーツ・レジャー向け用途で販売量を伸ばしました。しかしながら、原燃料価格の上昇が収益の押し下げ要因となりました。

樹脂分野では、主力のポリカーボネート樹脂が、需給の引き締まりにより市況価格が上昇する中、国内外のポリカーボネートレジン及びコンパウンドの自社生産拠点は高稼働を継続しました。また、近年注力している自動車・半導体製造関連・光学レンズ分野等への高付加価値品の販売を大きく拡大しました。

フィルム分野では、国内生産拠点の集約の影響により全体の売上高は減少したものの、スマートフォン、自動車電子化の関連部品であるMLCC(積層セラミックコンデンサ)等の工程用離型フィルム「ピューレックス」の販売が拡大しました。

◆繊維・製品事業:欧米向けスポーツ・アウトドア用機能素材は堅調も土木資材向けが減退

衣料繊維分野では、機能性生地において、欧米のスポーツ・アウトドア向けの販売が引き続き好調であり、ユニフォーム向け販売も堅調に推移しました。衣料製品は、国内市場の低迷が続く中、主要顧客の在庫調整局面を受けて低調に推移しました。

産業資材分野では、伝動ベルト・自動車ホースをはじめとする自動車関連補強材や合皮カーシート地の販売が堅調に推移しました。繊維資材においては、復興需要及びインフラ新設工事の受注が一段落し、土木資材の販売が落ち込みました。

◆複合成形材料事業ほか:北米での自動車向け量産部品の販売堅調

複合成形材料分野では、昨年1月に買収し、昨年度第4四半期より連結子会社とした米国Continental Structural Plastics Holdings Corporationを中心とする自動車向け複合材料の販売が、北米で好調なピックアップトラックやSUV向け、及び市場が回復傾向にある大型トラック向けに堅調に推移しました。

電池部材分野では、リチウムイオンバッテリー用セパレータ「リエルソート」の民生用途において既存顧客向け販売が低調に推移し、新規顧客向けの販売拡大に遅れが出ました。

 

ヘルスケア領域

:[売上高 1,554億円(前期比 3.1%増)、営業利益 359億円(同 45.1%増)]

売上高は1,554億円と前期比47億円の増収となり、営業利益も359億円と同112億円の増益となりました。

資産は1,684億円となり、各事業の成長・拡大等に伴う運転資本の増加等により、前期末対比140億円増加となりました。

 

医薬品分野では、高尿酸血症・痛風治療剤「フェブリク」、経皮吸収型鎮痛消炎剤「ロコア」、昨年7月に新たな適応症として「膵・消化管神経内分泌腫瘍」を追加取得した「ソマチュリン*」において、順調に販売を拡大しました。海外市場においても同様に高尿酸血症・痛風治療剤の販売を拡大しました。また、昨年5月には米国メルク社と、新規アルツハイマー病治療薬候補化合物について、全世界における独占的開発・製造・販売権を供与するライセンス契約を締結し、導出対価の一時金を計上しました。

* ソマチュリン®/Somatuline®は、Ipsen Pharma(仏)の登録商標です。

在宅医療分野では、在宅酸素療法(HOT)市場において、患者さんの行動範囲拡大を目指した携帯型酸素濃縮器(「ハイサンソポータブルα」「ハイサンソポータブルαⅡ」)の品揃えを充実させ、積極的な展開を行うことで、高い水準のレンタル台数を維持しました。また、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療器である在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)市場においても、携帯電話網を活用して治療状況をモニタリングする「ネムリンク」の訴求、睡眠評価装置「SAS-2100」の活用等により、レンタル台数を順調に伸長させました。

新規ヘルスケア分野では、人工関節事業を展開している埋め込み型医療機器分野において、本年度新たに骨接合材及び脊椎領域の整形外科事業を加えました。

 

その他

:[売上高 548億円(前期比 7.9%増)、営業利益 61億円(同 15.9%増)]

売上高は548億円と前期比40億円の増収となり、営業利益も61億円と同8億円の増益となりました。

 

IT事業は、ネットビジネス分野において電子コミック配信サービス「めちゃコミック」の売上が順調に拡大する等、順調に推移しました。特に、大手出版社とのコラボ企画による独占先行配信等を行い、新規読者を獲得する等、売上増に貢献しました。ITサービス分野では、ヘルスケア事業における病院領域での業績回復が売上増に寄与しました。

 

 

4【経営上の重要な契約等】

(1) 当連結会計年度において締結している経営上の重要な契約は、以下のとおりです。

契約会社名

相手先

内容

期間

帝人㈱

(当社)

ベーリンガーインゲルハイム社

(独)

技術等導入に関する契約

・医薬品の供与

・「ラキソベロン」等医薬品4品目の製造に関する技術

2005.1.1

から

2021.12.31

 

(2) 当社は、平成29年4月27日(米国時間)付で、当社の連結子会社(Teijin Holdings USA, Inc.等)が保有するBraden Partners L.P.(以下、「BP社」)ならびにAssociated Healthcare Systems, Inc.(以下、「AHS社」)の全持分を米国の投資会社Quadrant Management, Inc.傘下のPPS HME LLCへ譲渡する契約を締結し、同日付で譲渡完了しています。これにより、当連結会計年度よりBP社及びAHS社は当社の連結子会社に該当しないこととなり、連結の範囲から除外しています。

 

(3) 当社は、平成29年11月30日開催の取締役会において、当社の連結子会社である東邦テナックス㈱を吸収合併することを決議し、同日に当該吸収合併の契約を締結しました。これに伴い、当社の連結子会社である東邦テナックス㈱について当社を存続会社とする吸収合併を平成30年4月1日に実施しました。詳細は、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりです。

 

 

5【研究開発活動】

 帝人グループでは、「社員の多様性を活かし、社会が必要とする新たな価値を創造し続け、未来の社会を支える会社になる」という長期ビジョンを掲げ、10年後の「目指す姿」を実現するための研究開発をグローバルな視野で推進しています。研究開発活動への積極的かつ効率的な投資を継続して実施しており、国内10ケ所、海外9ケ所のグローバル研究開発ネットワークにおいて、研究開発者が基礎研究を含めたグループ全体の研究開発戦略に基づく研究開発活動を推進しています。

 10年後には、マテリアル領域とヘルスケア領域を2本の柱とし、それぞれの領域で基礎収益力の更なる強化を目指す「成長戦略」と、既存事業の延長線だけでなく「今はまだ利益に貢献していない新しい事業」を収益の柱とすべく、新規コアビジネスの確立を目指す「発展戦略」を、着実に実行することにより、新たな高収益事業を核とした事業ポートフォリオへと変革を進めていきます。長期ビジョンの実現に向けた、次の3か年における実行計画を明確にするために、平成29年2月に中期経営計画2017-2019「ALWAYS EVOLVING」を定めました。この計画の実現に向け、必要な基盤技術を強化・活用するとともに、技術や機能の融合・複合によりイノベーションを実現する「発展戦略」と、既存事業の中でも“環境価値ソリューション”、“安心・安全・防災ソリューション”及び“少子高齢化・健康志向ソリューション”を重点領域として収益最大化を図る「成長戦略」の推進のため、研究開発を着実に進めていきます。

 組織体に関しては、成長戦略・発展戦略の加速を促すべく、研究開発体制の再編を継続中です。当期は、素材関連事業を一つのマテリアル事業に統合し、事業間融合を図るとともに、新事業推進をマテリアルとヘルスケアに分割・吸収し、連携を強化しました。

 また、産官学連携等のオープンイノベーションの推進、知財戦略や構造解析能力等、研究開発活動を支える機能・組織の見直しとインフラ機能の強化、技術系人財の育成を一層推進しています。

 人財育成に関しては、複合材料・ヘルスケア関連分野を中心とした大学教授や研究者が集まるフォーラムの開催、学界・学術研究機関等の有識者による技術アドバイザリー会議の開催、国内外の最先端研究機関への若手研究員派遣等を積極的に推進しています。平成22年度ノーベル化学賞を受賞され、帝人グループの名誉フェローにご就任頂いている根岸英一米国パデュー大学特別教授には、国内研究員のコンサルテーションを継続してお願いしています。

 なお、当連結会計年度の研究開発費は359億円(前期比5億円増)でした。

 また、報告セグメントごとの研究開発活動の概要は次のとおりです。

 

マテリアル領域

: ◆マテリアル事業

  アラミド分野では、昨年4月から、Teijin Aramid B.V.(オランダ)を中心とした開発一体運営を開始しました。同年5月には、Teijin Aramid B.V.が、高性能タイヤ向けの商品開発や原糸サプライヤーとしての活動が認められ、サプライチェーンのサスティナビリティの評価機関であるEcoVadisが実施した調査において、最高ランクであるゴールド評価を獲得しました。また、新規防護衣料ファブリックとして、熱防護性に優れながら吸汗速乾性にも優れた「Teijinconex」 Coolnex Super Wickingを開発しました。

  炭素繊維分野では、Toho Tenax Europe GmbH(ドイツ)において、炭素繊維の加工工程で発生する端材の有効活用として、リサイクル素材を使用した熱可塑性炭素繊維複合材料(CFRTP)「テナックス」Eコンパウンド rPEEK CF30を開発しました。また、東邦テナックス㈱においては、カーボンナノチューブを添加した樹脂を炭素繊維に含侵させた高弾性・高耐衝撃性プリプレグを開発し、ミズノ㈱のゴルフシャフトに採用が決定しました。航空機をはじめとする高収益・高成長分野での事業拡大を進めるため、引き続き、プリプレグ等の中間材料の開発を強化しています。

  樹脂分野では、高度な分子設計技術と重合制御技術を活かした特殊PC樹脂の開発を加速し、デュアルカメラ化・顏認証センサーへの採用により成長が続くスマートフォンカメラレンズ市場や、自動運転・ミラーレス化等で成長が見込まれる車載用カメラレンズ市場に向けて顧客のニーズを先取りした複数の新規光学樹脂を開発しました。また、自動車・エレクトロニクス分野における部品の軽量化や耐熱性の向上等の顧客ニーズに幅広いソリューションを提供するため、SK Chemicals Co., Ltd.との合弁会社で生産するPPS樹脂と、帝人グループの高機能素材群を組み合わせた特殊コンパウンドを開発し本格的な展開を開始しました。更に、ASEANにおける樹脂コンパウンド製品の技術サポート・開発拠点をタイに新設することを決定し、建設を開始しました。

  フィルム分野では、独自のポリマー改質技術と製膜技術を駆使することにより耐ガソリン性と成形性を両立した、植物由来のバイオポリカーボネート樹脂「PLANEXT」製のフィルムを開発しました。このフィルムは、クロムメッキに代わる意匠性の付与が可能であり、スマートエントリーシステム用のドアハンドルに採用されました。今後、特に自動車部材のマルチマテリアル化を見据えて、塗装代替フィルムの開発に取り組んでいきます。

  ◆繊維・製品事業

  タイにおけるポリエステルを中心とした繊維の研究開発拠点として、帝人フロンティア・タイ・イノベーション研究室(タイランド)(Teijin Frontier Thai Innovation Laboratory)を本年1月に開設しました。これにより、原料の研究開発から生産・加工まで一貫での対応が可能になります。今後は、同研究室での研究開発を通じ、グローバル需要への対応力を更に強化していきます。

  一方、産業資材用途には、超極細のポリエステルナノファイバー「ナノフロント」のショートカットファイバーと、高度な不織布製造技術から成る、粉塵・粉体の捕集効率に優れ、省エネルギーや長寿命化が期待できる「ナノフロント」バグフィルターを開発しました。今後の中国における排塵規制強化に対応可能な商品として販売活動を強化しています。また、関西大学と共同し、昨年開発した組紐状のウェアラブルセンサー「圧電組紐」を活用し、使用する生地や刺繍する位置によらず簡単にセンシングでき、ファッション性も表現可能な世界初のセンシング技術「圧電刺繍」の開発に成功しました。

  ◆複合成形材料事業ほか

  複合成形材料分野では、北米で自動車向け量産部品を製造販売するContinental Structural Plastics Holdings Corporationが、シボレー「コルベット」平成28年モデルに採用された自動車外板部材用の超軽量成形部材「TCA Ultra Lite」により、自動車産業における革新的な技術に贈られる「PACEアワード」を受賞しました。また、樹脂グレージングにおいて、京都大学発の電気自動車メーカーであるGLM㈱が製造・販売するスポーツEV「トミーカイラZZ」向けにポリカーボネート樹脂製のピラーレスフロントウィンドウを開発し、世界で初めて市販車に採用されました。更に、東邦テナックス㈱及び㈱ジーエイチクラフトにおいて、外観性が高く形状が複雑な大型一体部品であるルーフカバーの製造技術を確立し、量産バスとして世界で初めて販売予定のトヨタ自動車㈱の燃料電池バスに採用されました。

  また、その他の分野では、消防活動の安全性向上への取り組みの一環で、ウェアラブルデバイスを内蔵したスマート消防服を開発しました。

  新事業分野では、高機能メンブレン「MIRAIM」について、半導体液体フィルター用途向けの需要が拡大していることから、松山事業所内に量産設備を新設することとしました。

  当セグメントに係る研究開発費は156億円です。

 

 

ヘルスケア領域

 

:  医薬品分野では、昨年5月に新規アルツハイマー病治療薬の候補化合物について、Merck & Co., Inc.に全世界における独占的開発・製造・販売権を供与するライセンス契約を締結しました。同年7月には、厚生労働省から、「ソマチュリン」について効能・効果への「膵・消化管神経内分泌腫瘍」の追加承認を取得しました。同年10月には、Merz Pharma GmbH & Co.KGaAが創製したA型ボツリヌス毒素製剤「Xeomin」について、医療用医薬品として期待される全ての適応症につき、日本における共同開発・独占販売権を取得しました。

  新規ヘルスケア分野では、再生医療分野において、昨年7月にJCRファーマ㈱と日本国内における他家(同種)歯髄由来幹細胞を用いた急性期脳梗塞を適応症とする再生医療等製品の共同開発契約及び実施許諾契約を締結しました。

  セグメントに係る研究開発費は195億円です。

 

上記セグメントに属さない研究開発活動として、グループ共通の基礎研究やエンジニアリング分野に関する研究開発等を行っています。これに係る研究開発費は8億円です。