第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

帝人グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において帝人グループが判断したものです。

 

(1) 帝人グループが目指す姿

帝人グループは、企業理念に基づき、持続可能な社会の実現に向けて、「環境価値」「安心・安全・防災」「少子高齢化・健康志向」の3つのソリューションを中心に価値を社会に提供し、長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」になることを目指しています。

長期ビジョンを実現するために、帝人グループは、世界的な社会課題とSDGsが掲げるゴールを踏まえ、自社にとってのリスクと機会を整理し、優先的に取り組む5つのマテリアリティ(重要課題)を特定しています。すなわち、重要社会課題である「気候変動の緩和と適応」「サーキュラーエコノミーの実現」「人と地域社会の安心・安全の確保」「人々の健康で快適な暮らしの実現」と重要経営課題である「持続可能な経営基盤のさらなる強化」です。

帝人グループはこれらマテリアリティへの取り組みを通し、持続可能な社会の実現と企業価値のさらなる向上を目指します。

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環境価値ソリューション

気候変動に対する緩和や適応、サーキュラーエコノミーの実現など、世界的な地球環境目標の達成に貢献する製品・サービスを提供

安心・安全・防災ソリューション

災害、事故などの様々なリスクから生命と暮らしを守る製品・サービスを提供

少子高齢化・健康志向ソリューション

あらゆる年齢の人々の健康的で快適な生活を支える製品・サービスを提供

 

(2) 対処すべき課題

2020年2月に「中期経営計画 2020-2022 ALWAYS EVOLVING」(以下、「中期経営計画」)を公表し、中期経営計画期間を「成長基盤確立期」と位置付けました。中期経営計画では、将来の収益獲得のために育成が必要な事業を「Strategic Focus」、既に収益を上げており、さらなる成長を目指す事業を「Profitable Growth」として位置付け、積極的に投資を進める方針を掲げています。

COVID-19の拡大がグローバルレベルで経済、人々の生活、価値観に激的な変化をもたらす中、帝人グループが取り組むマテリアリティは変わらず、COVID-19によりもたらされた変化を機会と捉え、引き続き3つのソリューション領域への成長投資を加速する必要があると考えています。マテリアル事業領域では、「グリーンリカバリー」の潮流の中で、モビリティの軽量化や、社会インフラにおける高機能素材・軽量化素材への置き換えニーズを着実に捉え、事業が受けたCOVID-19の影響からの回復を加速し、成長軌道への早期回帰を図ります。カーボンニュートラルの実現においては、事業活動による環境負荷を最小限化し、目標達成に向けたロードマップの実行や、水素社会を実現するための技術革新を推進していきます。ヘルスケア事業領域では、COVID-19の感染リスクへの懸念から、受診控えや入院抑制がある中で、帝人グループが目指す地域包括ケアサービスや医療へのデジタルソリューションの提供は、一段とニーズが高まっています。IT事業とのシナジーの追求、マテリアル事業領域の各事業やエンジニアリングとの協創による新規事業なども、着実に取り組んでいきます。

a)中期経営計画における定量目標について

「投資効率」「稼ぐ力」の両面に力点を置き、収益性指標として「ROE」(全社)と「営業利益ROIC」(全社・事業別)、成長性指標として「EBITDA」(全社・事業別)を最重要指標とし、中期経営計画で掲げた2022年度定量目標であるROE 10%以上、営業利益ROIC 8%以上、EBITDA 1,500億円を引き続き目指していきます。ただし、事業環境の変化により2022年度EBITDAのセグメント別見通しを変更しました。マテリアル事業領域では、COVID-19の影響により、炭素繊維事業を含む各事業で計画遅延が生じたことを踏まえ、EBITDA 800億円は650億円の見通しに、ヘルスケア事業領域では、武田薬品工業㈱からの2型糖尿病治療剤4剤の日本における販売承継が大きく寄与することを踏まえ、EBITDA 450億円は600億円の見通しに変更しました。

2021年度の見通し値、2022年度(中期最終年度)の目標値及びセグメント別EBITDA見通し値は次のとおりです

 

 

2021年度

2022年度

ROE

8%

10%以上

営業利益ROIC

7%

8%以上

EBITDA

(内訳)

マテリアル

ヘルスケア

その他 *1

1,300億円

 

435億円

675億円

190億円

1,500億円

 

   650億円 *2

   600億円 *2

250億円

 

*1 開示セグメントにおける「繊維・製品」「IT」及び「その他」や「消去又は全社」の区分の合算値を表示しています。

*2 直近見通しに変更しています。

 

b)中期経営計画における資源投入規模について

成長基盤確立に向けた積極投資方針の下、マテリアル事業領域においては、自動車向け複合成形材料の米国テキサス州への工場新設、炭素繊維の米国サウスカロライナ州への工場新設や、パラアラミド繊維の設備増強を進めています。ヘルスケア事業領域においては、2021年2月に、武田薬品工業㈱との間で2型糖尿病治療剤4剤の日本における販売承継に係る契約を締結し、1,330億円を投入しました。また、マテリアル・ヘルスケア・エンジニアリングの融合領域の取組みとして、㈱ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(以下「J-TEC社」)を子会社化し、新たに再生医療等製品の事業拡大に取り組んでいきます。

中期経営計画における1,500億円のEBITDA目標の達成、さらには長期目標達成に向けた成長基盤の確立のためには、中期経営計画残り2年においても、引き続きマテリアル・ヘルスケア事業領域の「将来の収益源育成:Strategic Focus」分野への積極投資の継続が必要と考えています。そのため、中期期間(3年累計)における設備投資・M&A枠は、3,500億円から4,500億円に増額します。この投資枠の拡大は、負債調達を原資としますが、一定の財務規律を維持する前提です。安定性・継続性に配慮し配当性向30%を目安とする配当方針も変更しません。

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c)ソリューション領域への重点投入

「3つのソリューション」領域については、投入額を全体の85%から90%に増加させることで、社会課題への取り組みを加速し、2030年度までに当該領域の売上高比率を全体の75%まで拡大することを目指します。

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d)事業ポートフォリオ

事業分野を「将来の収益源育成:Strategic Focus」と「利益ある成長:Profitable Growth」に大別し、中・長期的視点でのポートフォリオ変革、キャッシュ創出力の拡大に向けた投入資源の配分を継続します。2022年度に「Strategic Focus」分野のEBITDAがグループ全体の15%に、2030年度までに当該分野のEBITDAをグループ全体の1/3以上とすることを引き続き目指します。なお、日本での再生医療のパイオニアであるJ-TEC社を子会社化し、再生医療等製品事業をStrategic Focusに位置づけ、展開・拡大を図っていきます。また、「ネシーナ」をはじめとする2型糖尿病治療剤4剤については、安定的に患者さんへお届けできるよう、円滑かつ効率的に武田薬品工業株式会社からの製造販売承認の承継を進めていきます。さらには、糖尿病領域での主要製品群での取り組みを通し事業基盤を維持・拡大し、薬剤提供のみならず、「Strategic Focus」として手掛ける、糖尿病重症化予防等の生活習慣病の予防に貢献するサービスの拡大も加速します。

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e)リスク低減(環境負荷低減)

帝人グループは、持続可能な社会の実現に向けて、人を中心に考え、「Quality of Life」の向上に資する革新的なソリューションを提供するとともに、事業活動に伴う環境、社会への負の影響を最小限とすることを目指しています。気候変動の緩和や適応、サーキュラーエコノミーの実現においては、欧州サステナブル先端技術開発センターを開設し、世界的な地球環境目標の達成に貢献する製品・サービスの研究開発に注力していきます。また、2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、環境負荷低減に関する長期目標に対してロードマップを作成し、達成に向けた削減活動を着実に進めていきます。2020年度には、資源循環の取り組みとして、埋立廃棄物量の削減を新たな目標として設定しました。さらに、当社の自動車向け複合成形材料やアラミド繊維等におけるLCA(ライフサイクルアセスメント)にも積極的に取り組んでいきます。

 

項  目

目標年度

目  標

CO2削減貢献量 *1

2030

「削減貢献>総排出」達成

気候変動

(CO2排出量)

2030

2018年度比 20%削減(総量目標)

2050

実質ゼロ実現

2030

2018年度比 30%改善(淡水取水量売上高原単位)

有害物質

2030

2018年度比 20%改善

(有害化学物質排出量売上高原単位)

資源循環(新設 *2)

2030

2018年度比 10%改善

(埋立廃棄物量売上高原単位)

*1 当社製品使用による、サプライチェーン川下でのCO2削減効果を貢献量として算出。CO2削減貢献量を、グループ全体及びサプライチェーン川上におけるCO2総排出量以上にすることを目指す。

*2 2020年3月期統合報告書にて開示済。

 

f)経営基盤強化

継続的かつ的確なソリューション提供、市場開拓を加速する仕組みとして、「組織」「シナジー」「技術」「人財」の観点でイノベーションの創出基盤を強化し、事業機会の創出を加速していきます。

「組織」については、2021年4月より「コーポレートビジネスインキュベーション部門」を設立しました。全社的・長期的な視点でのM&A・アライアンスの検討・実施を推進するとともに、次世代を担う新規領域の探索や育成、研究開発や新事業開発を推進し、イノベーション創出の基盤構築を進めていきます。また、当該部門では、新たに連結子会社化したJ-TEC社と、当社ヘルスケア・マテリアル事業領域での技術・事業基盤やエンジニアリング力の「シナジー」を最大限発揮し、再生医療等製品事業の拡大を目指します。

「技術」においては、デジタル技術の展開を加速していきます。当社IT事業の中核を担うインフォコムとの協業体制をさらに強化し、ニューノーマル環境に適したワークスタイルや業務プロセスの導入、研究開発や製造現場の生産性向上、さらにはビジネスモデル変革のために、デジタルトランスフォーメーション(DX)に積極的に取り組んでいきます。

 

「人財」については、柔軟な働き方を提供し、女性のみならず、多様化する人財が能力を発揮し、活躍できる仕組みを整えることが、イノベーションを創出する企業文化の醸成につながると考えており、国内のみならず、海外においても地域特性に応じた以下の目標を設定し、グループ全体でダイバーシティ&インクルージョンを推進していきます。

項  目

2019年度
実績

2022年度
目標

2030年度
目標

役員*1ダイバーシティ

 

女性役員数

3名

6名以上

10名以上

 

非日本人役員数

3名

6名以上

12名以上

女性活躍重点目標 *2

日本

管理職数

116名

174名

300名以上

米国

上級管理職数 *3

2名

4名

10名

欧州

グローバルコア人財数 *4

0名

3名

10名

中国

上級管理職数 *3

4名

9名

12名

ASEAN

上級管理職数 *3

5名

5名以上

8名以上

*1 取締役、監査役、グループ執行役員・理事

*2 地域別の課題に応じて設定

*3 グループ会社社長を含む上級管理職

*4 既に相当数存在する管理職からグループ執行役員候補として選抜・認定された人財

 

また、上記目標値以外でも、様々な人種・民族・宗教などの人を公平・平等に扱う「インクルージョン」の観点でも、米国においてシニアマネージャーポジションへのエスニック・マイノリティーの目標数を設定する等、取り組みを強化していきます。

g)主要事業戦略

全体方針

2020年度は特にマテリアル事業領域においてCOVID-19の影響を大きく受けましたが、炭素繊維を中心とした航空機向け需要の低迷は継続するものの、複合成形材料、アラミド繊維を中心とした自動車向け需要は順調な回復基調にあります。

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2021年度は早期にCOVID-19の影響を受ける前の水準への回帰を目指し、中期計画で掲げた「成長基盤確立」に向けた主要課題を具体的な行動計画に落とし込み実行に繋げていきます。

また、2型糖尿病治療剤4剤の販売承継、J-TEC子会社化といった大型投資の効果最大化に向けた取り組みを着実に推進します。

 

■マテリアル事業領域

「Strategic Focus」分野(将来の収益源育成)

自動車向け複合成形材料

・新規プログラム獲得と拡販による米国でのトップポジション維持および欧州・中国含むアジア市場への展開加速

・マルチマテリアル化・ライフサイクルアセスメント対応推進

・生産性向上への取り組み推進

航空機向け炭素繊維中間材料

・将来の航空機向け新規大型プログラム獲得に向けた開発の推進

 

「Profitable Growth」分野(利益ある成長)

アラミド

・生産能力増強・用途開拓の推進による業界トップポジションの維持・強化

樹  脂

・高付加価値品の拡大による安定収益の確立

炭素繊維

・生産稼働の向上と販売構成の改善による原糸売り事業の収益性改善

 

■ヘルスケア事業領域

「Strategic Focus」分野(将来の収益源育成)

地域包括ケア関連新事業

・重症化予防事業を皮切りに、地域包括ケア関連市場でのサービス事業の立上げ

機能性食品

・既存製品の拡販、新製品の着実な上市

新規ヘルスケア

(整形・新規医療機器など)

・埋込型医療機器の拡販、新規医療機器の事業立上げ

 

「Profitable Growth」分野(利益ある成長)

医薬品、在宅医療

・機能本部制への移行による地域密着型の多職種によるチーム営業体制の構築

・主力医薬品(「フェブリク」、2型糖尿病治療剤)、HOT(在宅酸素療法)用酸素濃縮装置、CPAP(持続陽圧)療法装置の売上維持・拡大

・新規医療機器、医薬品の開発推進

 

■繊維・製品/IT

「Profitable Growth」分野(利益ある成長)

繊維・製品

・基礎収益力強化施策の着実な実行

IT

・電子コミックブランドとしての確固たる地位の保持

・ヘルスケア事業での介護・健康領域での新規サービス展開

 

2【事業等のリスク】

企業の持続的成長を脅かすあらゆるリスクに対処するため、「経営戦略リスク」と「業務運営リスク」を対象とするTRM(トータル・リスクマネジメント)体制を構築し、リスクの統合管理を行っています。CEOを委員長とする「TRMコミティー」を取締役会の下に設置しており、取締役会は、TRMコミティーから提案されるTRM基本方針、TRM年次計画等の審議・決定を行うとともに、重要なリスクを管理し、事業継続のための態勢を整備します。また、監査役は、取締役会がTRMに関する適切な方針決定、監視・監督を行っているか否かについて監査します。当該TRMコミティーで管理している重大なリスクは以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において帝人グループが判断したものです。

 

<新型コロナウィルス感染症に関するリスク>

帝人グループは、マテリアル事業領域、ヘルスケア事業領域、繊維・製品事業領域及びIT事業領域を有しており、それぞれ異なる地域・顧客に対して事業を展開しています。そのような事業環境の下、新型コロナウィルス感染症の流行により、2020年度はマテリアル事業領域の業績への影響を大きく受けました。特に炭素繊維を中心とした航空機向け需要の低迷は継続すると見られ、当社の収益性低下影響が長期化する可能性があります。この対策として、炭素繊維糸売り事業の生産稼働の向上や販売構成の改善による収益性改善策や、中長期的な需要回復を見据えた、航空機向け炭素繊維中間材料の新規大型プログラム獲得に向けた開発を進めています。一方で、複合成形材料、アラミド繊維を中心とした自動車向け需要は順調な回復基調にあると考えています。

また、新型コロナウィルス感染拡大に伴う業務運営上のリスクに対処するため、帝人グループでは、2020年1月にCSR管掌を本部長とする新型コロナウィルス感染症緊急対策本部を立ち上げました。2021年4月からは帝人グループ新型コロナウィルス対策本部として、グループ従業員とその家族の安全確保と事業継続のための、グローバルな視点での帝人グループの方針決定と施策推進を進めています。各拠点は、帝人グループグローバル方針に定められた感染の予防と健康の確保、通勤と勤務、業務出張、会合とイベント、人権への配慮の各項目について、各国各地域の法令等に基づき、運用ガイドラインを制定しています。日本においては、このガイドラインに沿って日々の生活での感染防止策や職場における対応策を実施し、リモートワーク・分散出社の徹底を行いました。また、リモートワークの長期化に伴う従業員のケアとして、健康管理・メンタル管理の観点から従業員への情報提供と相談窓口での対応を継続しています。また、日本以外の各国各地域においてもそれぞれ定めた運用ガイドラインに沿って必要な対策を適切に実施しています。

なお、新型コロナウィルス感染症の世界的な流行の見通しについては、現時点で入手可能な情報に基づいて判断をしていますが、感染の更なる拡大、感染の長期化により経済環境への影響が生じた場合は、帝人グループの事業活動や業績に影響を与える可能性があります。

 

<経営戦略リスク>

(1) マクロ環境リスク

1) 景気・経済動向

マテリアル事業領域及び繊維・製品事業領域については、事業を展開している各国・地域の景気動向・経済状況や主要な供給先である自動車・航空機市場の動向の影響を受ける可能性があります。一方、ヘルスケア事業領域及びIT事業領域においては、これらの影響を受ける可能性は相対的に低く、世界経済の停滞環境下においても安定した事業展開が期待されます。

2) 為替レート

帝人グループが営む事業のうち、マテリアル事業領域及び繊維・製品事業領域においては、外貨建て取引の収入が多く、また、連結財務諸表作成に当たり、海外の連結子会社の財務諸表を円換算しており、為替レートの変動が帝人グループの経営成績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、為替レート変動による業績への影響は、対ドル1円の円高の場合、営業利益で約3億円/年の減益影響が見込まれます。

3) 金利

帝人グループは資金需要に対してその内容や財政状態及び金融環境を考慮し、調達の金額・期間・方法を判断しています。金利が上昇した場合には支払利息が増加し、帝人グループの経営成績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

4) 原燃料価格

マテリアル事業領域及び繊維・製品事業領域のうち、炭素繊維、アラミド繊維、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル繊維等の素材事業は、原燃料コストが製造原価の一定程度の割合を占めるため、原油価格や需給バランスの変化等に伴う原燃料価格の変動が、帝人グループの経営成績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 市場・競合環境変動リスク

1) 競合環境

ポリカーボネート樹脂等の素材のうち、汎用用途においては、市場の需給構造が売値に影響を与えるため、競合の動向が当社の収益性に影響を与える可能性があります。

2) サプライチェーンの需要影響

帝人グループは素材・中間材料・部品供給ビジネスを展開しており、末端需要の拡大・縮小が各段階での在庫調整に影響を及ぼすことにより、実体経済以上に業績が変動する可能性があります。

(3) 資源投入リスク

帝人グループでは「中期経営計画2020-2022 ALWAYS EVOLVING」において、中期期間(3年累計)における設備投資・M&A枠を3,500億円と設定しました。2021年2月には、武田薬品工業株式会社との間で2型糖尿病治療剤4剤の日本における販売承継に係る契約を締結し1,330億円を投入する等、成長基盤確立への積極投資を実行しました。中期経営計画における1,500億円のEBITDA目標の達成、さらには長期目標達成に向けた成長基盤の確立のために、中期期間(3年累計)における設備投資・M&A枠は4,500億円に拡大し、「将来の収益源育成:Strategic Focus」分野への積極投資方針を継続していきますが、当社の戦略に適合する案件が探索できない場合、その実施ができない又は遅延する可能性があります。

また、帝人グループでは、技術を核とした持続的成長を実現するための研究開発に、積極的に経営資源を投入する方針であり、2022年度までの3年間で1,100億円の研究開発費の投入を計画しています。しかしながら、研究開発の成果が目標から大きく乖離した場合には、業績等に影響を及ぼす可能性があります。特に医療用医薬品の開発には、多額の費用と長い期間がかかるうえ、創薬研究において、有用な化合物を発見できる可能性は決して高くありません。また、臨床試験の結果、予測していた有効性が証明できない、あるいは予測していない副作用が発現した等の理由で承認申請を断念しなければならない可能性があります。また、承認申請した後でも審査の過程で承認されない、また、市販後調査の結果、承認が取り消される可能性があります。

(4) 制度変化リスク

欧州を始めとする各国による気候変動緩和のための温室効果ガス排出規制やプラスチックごみ問題に対応するプラスチック製品規制などを想定に入れた事業計画を策定していますが、これら規制が想定以上に強化された場合、炭素繊維やポリエステル繊維製品をはじめとする各種製品の生産活動や収益性に影響を及ぼす可能性があります。

また、米中貿易摩擦の再燃等を始めとする、世界的な保護主義の台頭も懸念され、その場合は帝人グループにおける適地生産戦略の重要性がさらに増すことになると想定しています。

一方、国内においては、ヘルスケア事業は、薬価改定等の医療費抑制政策の加速の影響を受ける可能性があります。

(5) 財務健全性リスク

1) 固定資産の減損

帝人グループが保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化等による収益性の低下等により、減損損失が発生し、帝人グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

2) 繰延税金資産の取り崩し

帝人グループでは将来の課税所得に関する予測・仮定に基づき、繰延税金資産の回収可能性の判断を行っておりますが、将来の課税所得の予測・仮定が変更され、繰延税金資産の一部または全部が回収できないと判断される場合、繰延税金資産が減額され、帝人グループの経営成績並びに財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

<業務運営リスク>

(1) 自然災害等リスク

近年の気候変動に伴う台風・豪雨等による風水害・土砂災害は、製造業・サービス業上の大きなリスクとして帝人グループの事業運営への影響が懸念されます。さらには日本における首都直下型地震・南海トラフ地震など、今後一定の発生の可能性のある大型地震・その結果としての津波等も想定されることから、事業継続計画の随時見直しや各種防災訓練を通じて、災害発生時の被害の最小化や速やかな復旧を目指します。

また、2019年末から発生した新型コロナウィルス感染症にみられるような、予測しえない感染症の急速な拡大等が、帝人グループの生産・営業・研究開発活動への障害となる可能性があります。

(2) 製造リスク

帝人グループは、生産活動において、有害化学物質や産業廃棄物等、環境に負荷を与える物質を取り扱うことから、それらの不適切な取扱いにより、グローバルな環境に影響を及ぼし、また、事業運営に支障をきたすリスクがあります。また、化学プラントを多く保有しており、爆発・火災等の大事故により、事業運営に大きな支障をきたす可能性があります。

(3) 製品・品質リスク

帝人グループでは、帝人㈱及び帝人ファーマ㈱等の主要な子会社に、他の部門から独立した専任の品質・信頼性保証部門を設置し、厳格な品質管理基準に基づき、事業活動全般における品質保証を確保する体制を敷いています。しかしながら、全ての製品・サービスにおいて、予期し得ない重大な品質問題が発生する可能性や賠償責任を負う可能性を排除することはできません。従って、そうした製品・サービスの欠陥が、業績、財務状況、社会的評価等に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 法令・倫理リスク

帝人グループでは、M&A等により社員の国籍・文化・意識が多様化していることから、全世界の役職員に対し、当社の企業理念や行動規範をグローバルに浸透させる活動に取り組むほか、法令遵守はもとより社会的な規範の遵守を求めています。しかしながら、当社がグローバルに事業を展開する国や地域において、商取引、競争法、反贈収賄、個人情報保護、知的財産、製造物責任、環境、労務、税務、安全保障、適用される業法規制等、様々な規制に違反した場合、監督当局による行政処分、訴訟対応、事業活動の停止、企業ブランド価値の棄損、ないし、社会的信用の失墜のリスクがあります。

さらに、規制の新設・強化や想定外の適用等により、当社が抵触するようになった場合、事業活動の制約や、規制を遵守するための費用が増加するなど、帝人グループの業績に重大な影響が生じることがあります。

また、帝人グループは、社内関係者だけではなく取引先に対しても法令遵守や社会的規範の遵守を要請しています。サプライチェーンまたは社内における潜在的な人権侵害リスクについて、人権デューディリジェンスやCSR調達などの取組みを強化しています。しかしながら、こうした取組にも関わらず、サプライチェーン上または社内での人権侵害の発生により、事業運営への支障や社会的な信頼の棄損などの影響が生じる可能性があります。

(5) 情報セキュリティリスク

帝人グループでは、各種製品の研究・開発から製造・販売に至る様々な重要情報を保持しています。また、医療関係における患者情報などの個人情報等も扱っています。重要情報や個人情報等を取り扱うに当たり、帝人グループではハード・ソフト両面で様々な情報セキュリティ対策を実施していますが、災害、サイバー攻撃、不正アクセスその他不測の事態によりこれら情報等が外部へ流出し、第三者に不正に使用されることで、ステークホルダーに対する予期しない被害や業績に対する悪影響が発生する可能性があります。

 

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において帝人グループが判断したものです。

(1) 経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のグローバルレベルでの蔓延により、人々の活動が制限されたことで、当期の世界経済は低迷し、高い不確実性の中で推移しました。特に期前半での影響は大きく、その後一旦は持ち直したものの、期後半にかけては再度の拡大により回復ペースは鈍化しました。

帝人グループは、持続可能な社会の実現に貢献し、「未来の社会を支える会社」になるという長期ビジョンのもと、「成長基盤の確立期」と位置づける2020年度から3か年の中期経営計画を策定しました。その初年度である当期においては、将来の収益拡大に向けた投資として、マテリアル事業領域におけるパラアラミド繊維の生産能力増強の設備投資、北米での自動車向け複合成形材料のテキサス新工場の建設や炭素繊維新工場の立ち上げ準備を進めました。また、ヘルスケア事業領域では武田薬品工業㈱からの糖尿病治療薬販売承継を決定し、事業間の融合分野として再生医療等製品事業への参入を目的とした㈱ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(以下、「J-TEC」)のTOBによる子会社化を行うなど、大型投資を推し進めました。このような状況のもと、帝人グループの当連結会計年度の経営成績及び財政状態は以下のとおりとなりました。

 

1)経営成績

帝人グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高8,365億円(前期対比2.0%減)、営業利益549億円(同2.3%減)、経常利益537億円(同1.2%減)、親会社株主に帰属する当期純損失67億円(前期 親会社株主に帰属する当期純利益 253億円)となりました。

                                              (単位:億円)

 

154期

(2020年3月期)

155期

(2021年3月期)

増減額

増減率

売上高

8,537

8,365

△172

△2.0%

営業利益

562

549

△13

△2.3%

経常利益

543

537

△7

△1.2%

親会社株主に帰属する

当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失

253

△67

△319

 

当連結会計年度における報告セグメントごとの経営成績の概況は次のとおりです。

なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しています。

                                              (単位:億円)

 

154期

(2020年3月期)

155期

(2021年3月期)

増減額

増減率

マテリアル

3,275

2,970

△306

△9.3%

ヘルスケア

1,539

1,487

△53

△3.4%

繊維・製品

3,063

3,149

86

2.8%

IT

486

581

95

19.6%

その他

174

178

5

2.7%

合計

8,537

8,365

△172

△2.0%

マテリアル

158

10

△149

△94.0%

ヘルスケア

326

315

△10

△3.2%

繊維・製品

54

175

121

223.3%

IT

78

104

26

32.9%

その他

3

△2

△6

消去又は全社

△58

△52

5

合計

562

549

△13

△2.3%

 

 

マテリアル事業領域

:[売上高 2,970億円(前期比9.3%減)、営業利益 10億円(同94.0%減)]

売上高は2,970億円と前期比306億円の減収、営業利益は10億円と前期比149億円の減益となりました。

当セグメントの生産規模は、2,707億円(前期比7.2%減、販売価格ベース)でした。

 

ヘルスケア事業領域

:[売上高 1,487億円(前期比3.4%減)、営業利益 315億円(同3.2%減)]

売上高は1,487億円と前期比53億円の減収、営業利益は315億円と前期比10億円の減益となりました。

当セグメントの生産規模は、573億円(前期比12.4%減、販売価格ベース)でした。

 

繊維・製品事業

:[売上高 3,149億円(前期比2.8%増)、営業利益 175億円(同223.3%増)]

売上高は3,149億円と前期比86億円の増収、営業利益は175億円と前期比121億円の増益となりました。

当セグメントの生産規模は、485億円(前期比11.8%減、販売価格ベース)でした。

 

IT事業

:[売上高 581億円(前期比19.6%増)、営業利益 104億円(同32.9%増)]

売上高は581億円と前期比95億円の増収、営業利益は104億円と前期比26億円の増益となりました。

 

その他

:[売上高 178億円(前期比2.7%増)、営業損失 2億円(前期 営業利益 3億円)]

売上高は178億円と前期比5億円の増収、営業損失は2億円と前期比6億円の減益となりました。

2)財政状態

                                    (単位:億円)

 

154期

(2020年3月期)

155期

(2021年3月期)

増減額

総資産

10,042

10,364

+322

負債

5,928

6,082

+154

 (内 有利子負債)

3,819

3,800

△19

純資産

4,114

4,283

+168

D/Eレシオ(倍)

0.97

0.94

△0.03

自己資本比率(%)

39.3

39.2

△0.1

 

総資産は、炭素繊維事業における減損損失により固定資産が減少しましたが、再生医療等製品事業への進出を目的としたJ-TECの株式取得に伴うのれんの計上や保有株式時価の上昇等もあり、前期末対比322億円増加の10,364億円となりました。

負債は、主に仕入債務の増加等により、前期末対比154億円増加の6,082億円となりました。

純資産は、親会社株主に帰属する当期純損失の計上により減少しましたが、主要通貨に対する円安の進行による為替換算調整勘定の増加や保有株式の時価評価に関わる評価差額の増加等もあり、前期末対比168億円増加の4,283億円となりました。この結果、D/Eレシオは0.94倍、自己資本比率は39.2%となりました。

尚、当期末のBS換算レートは、111円/米ドル、130円/ユーロ、1.17米ドル/ユーロ(前期末109円/米ドル、120円/ユーロ、1.10米ドル/ユーロ)となっています。

 

② キャッシュ・フローの状況

                                      (単位:億円)

 

154期

(2020年3月期)

155期

(2021年3月期)

増減額

営業活動

942

1,077

+135

投資活動

△679

△796

△117

フリー・キャッシュ・フロー

263

281

+19

財務活動他

△104

△180

△75

現金及び現金同等物増減

159

102

△57

 

当期の営業活動によるキャッシュ・フローは、非資金性費用を除いた利益及び運転資本の減少による資金収入等があり、合計で1,077億円の資金収入となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、アラミド事業と複合成形材料事業の生産能力増強を目的とした設備投資の実施、再生医療等製品事業への進出を目的としたJ-TECの株式取得等により、796億円の資金支出となりました。

この結果、営業活動に投資活動を加えたフリー・キャッシュ・フローは281億円の資金収入となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローについては、配当の支払いと借入金返済により、209億円の資金支出となりました。

これらの結果、現金及び現金同等物に係る換算差額等も加え、最終的な現金及び現金同等物の増加額は102億円となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

帝人グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その形態、単位等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多いため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。

このため生産、受注及び販売の状況については、「① 財政状態及び経営成績の状況」における各報告セグメントの経営成績に関連付けて示しています。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容等

 経営者の視点による帝人グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

帝人グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。その作成においては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性の存在により、これらの見積りと異なる場合があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

また、帝人グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載していますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えています。

1) 貸倒引当金の計上基準

帝人グループでは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を繰入計上しています。将来、顧客の財務状況等が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があります。

2) たな卸資産の評価基準

帝人グループの販売する製品の価格は、市場相場変動の影響を強く受ける傾向にあるので、その評価基準として主に原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定しています。)を採用しています。

3) 投資有価証券の減損処理

帝人グループは、金融機関や、製造・販売等に係る取引会社及び関係会社の株式を保有しています。これらの株式は、株式市場の価格変動リスクや、経営状態・財務状況の悪化による価値下落リスクを負っているため、合理的な基準に基づき、投資有価証券の減損処理を行っています。

4) のれんを含む固定資産の評価

帝人グループは、のれんを含む固定資産について、「固定資産の減損に係る会計基準」、IFRS及び米国会計基準に基づき、減損処理の要否を検討しています。事業損益見込みの悪化や事業撤収の決定等があった場合には、将来キャッシュ・フローや回収可能価額を合理的に見積り、減損損失を計上しています。

5) 繰延税金資産の回収可能性

帝人グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価に際し、将来の課税所得を合理的に見積っています。繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するので、課税所得の見積額が減少した場合は繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 

1) 経営成績等

a) 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

帝人グループの当期の連結決算は、COVID-19影響で繊維・製品事業における医療用防護具(ガウン等)やIT事業が好調であったことに加えて、ヘルスケア事業領域も薬価改定影響を受ける中で底堅く推移しました。一方でマテリアル事業領域においては自動車用途や航空機用途を中心として需要低下の影響を受けました。これらの結果、売上高は前期対比2.0%減の8,365億円、営業利益は同2.3%減の549億円となり、経常利益は同1.2%減の537億円となりました。親会社株主に帰属する当期純損益は航空機需要が長期に亘り低迷するとの見通しに基づく炭素繊維事業の固定資産減損損失の計上等により、67億円の損失(前期は253億円の利益)となりました。

その結果、収益性を示すROEは△1.7%となり中期経営計画最終年度(2022年度)目標(10%以上)を大きく下回る一方、キャッシュ創出力を示すEBITDAはCOVID-19の影響を受ける中、前期と同水準の1,068億円を維持しました。また、営業利益ROICについては、中期経営計画最終年度目標(8%以上)水準を満たす8.6%となりました。

 

セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析は次のとおりです。

なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しています。

 

マテリアル事業領域

:[売上高 2,970億円(前期比 9.3%減)、営業利益 10億円(同 94.0%減)、EBITDA 315億円(同 29.7%減)]

COVID-19影響により自動車用途や航空機用途は需要減となるも、期後半における自動車市場の回復に伴い自動車向け販売は回復しました。各事業分野において活動抑制等により販管費が減少しました。

売上高は2,970億円と前期対比306億円の減収(9.3%減)、営業利益は10億円と前期対比149億円の減益(94.0%減)となり、EBITDAは前期対比133億円減の315億円となりました。

総資産は4,664億円となりました。炭素繊維事業における減損損失により固定資産が減少した影響もあり、前期末対比44億円の減少となりました。

 

アラミド事業分野では、主力のパラアラミド繊維「トワロン」において、タイヤ補強材、摩擦材などの自動車関連や光ファイバーを含む用途全般において販売量が減少しましたが、各市場の回復に伴い販売量が回復しました。

 

樹脂事業分野では、主力のポリカーボネート樹脂において、期後半から販売量が回復し通期では前期並みを維持しました。また、期後半から主原料であるBPA市況価格が高騰した影響を受けて、販売価格改定を進めています。

 

炭素繊維事業分野では、需要が減少した航空機用途において炭素繊維「テナックス」の販売量が大幅に減少したため、風力発電用途やレクレーション用途等の航空機用途以外への販売を強化しました。将来に向けた航空機向け中間材料開発や北米新工場稼働に向けた先行投資を継続実施しています。

 

複合成形材料事業分野では、期初に、OEM生産大幅減により米国Continental Structural Plastics社(CSP)の自動車部品の生産・販売が大きく影響を受けましたが、SUV・ピックアップトラックを始めとする米国自動車市場が回復し、大幅に改善しました。米国において比較的高水準の失業給付が継続している影響で、CSPにおいて工場稼働が回復する中で従業員の確保が課題となっており、定着率改善のための対策を推進しています。

 

 

マテリアル事業領域のEBITDAの増減分析(前年対比)は以下のとおりです。

 

    0102010_006.png

 

ヘルスケア事業領域

:[売上高 1,487億円(前期比 3.4%減)、営業利益 315億円(同 3.2%減)、EBITDA 437億円(同 2.0%減)]

「フェブリク」を中心に国内医薬品の薬価改定影響があったものの、「フェブリク」の販売や在宅医療の販売が拡大しました。COVID-19影響の中、オンラインによる非対面の営業活動等により、販管費が減少しました。

売上高は1,487億円と前期比53億円の減収(3.4%減)、営業利益は315億円と前期比10億円の減益(3.2%減)となりました。EBITDAは、437億円と前期比9億円の減益となりました。

総資産は1,256億円となり、ヘルスケア新事業での投資有価証券の売却等の影響もあり、前期末対比8億円の減少となりました。

 

医薬品分野では、国内市場において、高尿酸血症・痛風治療剤「フェブリク」を中心に2020年4月の薬価改定の影響を受けましたが、「フェブリク」や先端巨大症・下垂体性巨人症/神経内分泌腫瘍治療剤「ソマチュリン*」が順調に販売量を拡大しました。

* ソマチュリン®/Somatuline®は、Ipsen Pharma(仏)の登録商標です。

在宅医療分野では、在宅酸素療法(HOT)市場において、病院内における感染回避のため在宅医療導入が選択されるケースが増えたことと携帯型酸素濃縮器の展開等により、レンタル台数が伸長しました。在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)市場においては、COVID-19影響により入院検査数が減少し市場拡大は昨年より鈍化しましたが、開業医向け市場は拡大しており、レンタル台数の増加が継続しています。また、遠隔モニタリング算定要件が緩和され、診療支援ツール「ネムリンク」導入施設が増加しています。

ヘルスケア新事業分野では、人工関節・吸収性骨接合材等の埋め込み型医療機器事業において、期初はCOVID-19影響による手術延期により販売数量が減少しましたが、第2四半期以降の手術数の回復および新製品の販売拡大により、累計の売上高が前年比増となりました。

 

ヘルスケア事業領域のEBITDAの増減分析(前年対比)は以下のとおりです。

 

0102010_007.png

 

 

繊維・製品事業

:[売上高 3,149億円(前期比 2.8%増)、営業利益 175億円(同 223.3%増)、EBITDA 239億円(同 93.0%増)]

売上高は3,149億円と前期対比86億円の増収(2.8%増)、営業利益は175億円と前期対比121億円の増益(223.3%増)となり、EBITDAは前期対比115億円増の239億円となりました。

総資産は1,892億円となり、運転資本の減少及び投資有価証券の売却等の影響により、前期末対比88億円の減少となりました。

COVID-19影響により、テキスタイル、重衣料は苦戦しましたが、医療従事者向けの医療用防護具(ガウン等)の供給が業績に大きく貢献しました。在宅需要にマッチした衣料品販売が堅調で、感染予防に向けた機能性マスクや水処理向けポリエステル短繊維等が好調に推移しました。期初に苦戦した自動車関連部材は期後半にかけて回復が鮮明となり、活動抑制による販管費減も業績に寄与しました。

 

IT事業

:[売上高 581億円(前期比 19.6%増)、営業利益 104億円(同 32.9%増)、EBITDA 113億円(同 30.5%増)]

売上高は581億円と前期対比95億円の増収(19.6%増)、営業利益は104億円と前期対比26億円の増益(32.9%増)となり、EBITDAは前期対比26億円増の113億円となりました。

総資産は577億円となり、現金及び預金の増加等の影響により、前期末対比84億円の増加となりました。

ITサービス分野は病院向けを中心にCOVID-19の影響を受けましたが、ネットビジネス分野の電子コミックサービスは、読者層拡大を背景に好調に推移しました。

 

その他

:[売上高 178億円(前期比 2.7%増)、営業損失 2億円(前期 営業利益3億円)]

 

売上高は178億円と前期対比5億円の増収(2.7%増)、営業損失は2億円(前期は営業利益3億円)となりました。

東証JASDAQグロース市場に上場しているJ-TECをTOBにより子会社化し、期末より連結を開始しました。

 

b) 財政状態及びキャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の財政状態、キャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 2)財政状態、② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

(帝人グループの資本の財源及び資金の流動性について)

帝人グループは、持続可能な社会の実現に向けて、「環境価値」「安心・安全・防災」「少子高齢化・健康志向」の3つのソリューションを中心とした価値を提供することで「未来の社会を支える会社」になることを目指し、事業ポートフォリオ変革に取り組んでいます。そのため、獲得した資金は財務体質の健全性を維持しながら「将来の成長に向けての投資」に優先的に配分しますが、「安定的・継続的な配当」にも配慮し、中期的な配当性向は30%を目安とし、状況に応じて自己株式取得等も機動的に実施します。また、積極的な成長投資を実行しながら企業価値を向上させていくために、資本コストを意識した経営を行っており、ROEや営業利益ROICを最重要指標として位置付け、資本効率の向上に取り組んでいます。

帝人グループの資金需要の主なものは、製品製造のための原材料等の購入、製造費、販売費やサービス提供費用等の運転資金需要に加え、設備投資や研究開発活動費等の「将来の成長に向けての投資」としての資金需要があります。マテリアル事業領域では、パラアラミド繊維の生産能力増強の設備投資、北米での自動車向け複合成形材料のテキサス新工場の建設や炭素繊維新工場の立ち上げ準備を進めています。ヘルスケア事業領域では、武田薬品工業㈱からの糖尿病治療薬販売承継を決定し、2021年4月1日付で資産譲渡実行の条件が満たされ資産の譲受が完了、承継価額は1,330億円となりました。また、再生医療等製品事業への参入を目的としたJ-TECのTOBによる子会社化を行うなど、大型投資を推し進めました。中期経営計画2020-2022『ALWAYS EVOLVING』の3年累計では、設備投資及びM&A枠として当初3,500億円の資源投入規模を設定していましたが、上記大型投資を踏まえて4,500億円まで拡大し、今後も「将来の成長に向けての投資」を継続していきます。研究開発費については、マテリアル事業領域の複合成形材料分野やヘルスケア事業領域を中心に同中期経営計画の3年累計で1,100億円の資源投入を計画しています。

 

帝人グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用、金融機関からの借入及び社債の発行等により資金調達をおこなっており、財務体質の健全性を維持(D/Eレシオ0.9が目安)しながら資本効率の維持・向上を図るべく、最適な選択を実施していきます。また、日米欧中の各拠点においては、グループ内余剰資金を活用するためにキャッシュ・マネジメント・システムを導入し、資金効率の向上に努めています。帝人グループは、国内格付機関である格付投資情報センターから格付を取得しており、本有価証券報告書提出時点においてはAマイナス(安定的)となっております。金融機関には十分な借入枠を有しており、帝人グループの事業運営に必要な運転資金や将来の成長に向けた投資資金の調達に関しては問題なく実施可能と認識するとともに、高水準で維持している現預金も含め、緊急時の流動性を確保しております。

なお、当連結会計年度末の有利子負債残高は3,800億円となりました。資金調達コストの低減に努める一方、設備投資に対応する借入の大部分については、長期調達するとともに過度に金利変動リスクに晒されないよう金利スワップ等の手段を活用し、固定化しています。また、2021年4月1日付の糖尿病治療薬販売承継の当初資金は、手元現預金とブリッジローンにより充当しましたが、一定の財務規律を維持する前提の下、最適な資金調達手段を検討し、実行していきます。なお、新株発行を伴う調達(エクイティファイナンス)は実施しません。負債増加により一時的に財務体質は悪化しますが、「D/Eレシオ目安0.9」の水準までの早期改善を目指します。

 

2) 経営成績に重要な影響を与える要因

経営成績に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

3) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

2020年2月に公表した中期経営計画2020-2022『ALWAYS EVOLVING』では、前中期経営計画に引き続き、投資効率を測るための指標としてROEと営業利益ROICを重視するとともに、効率だけでは無く稼ぐ力を測るための指標としてEBITDAも重視しています。中期経営計画の期間においては、ROEは10%以上、営業利益ROICは8%以上、また2022年度でのEBITDAは1,500億円超という目標を掲げていますが、当期はROEが△1.7%、EBITDAが1,068億円となり、目標を下回っています。営業利益ROICについては8.6%となり、堅調に推移しています。

また、各種指標の推移は以下のとおりです。

 

第151期

(2017年3月期)

第152期

(2018年3月期)

第153期

(2019年3月期)

第154期

(2020年3月期)

第155期

(2021年3月期)

ROE(%)

15.7

12.5

11.2

6.3

△1.7

営業利益ROIC(%)

10.0

11.2

9.3

8.7

8.6

EBITDA(億円)

958

1,155

1,076

1,072

1,068

(注)各指標はいずれも当社連結ベースの財務数値を用いて算出しています。

・ROE:親会社株主に帰属する当期純利益/期首・期末平均自己資本

・営業利益ROIC:営業利益/期首・期末平均投下資本

  ※投下資本・・・純資産+有利子負債-現金及び預金

・EBITDA:営業利益+減価償却費(のれんを含む)

 

 

4【経営上の重要な契約等】

(1) 当連結会計年度において締結している経営上の重要な契約は、以下のとおりです。

契約会社名

相手先

内容

期間

帝人㈱

(当社)

ベーリンガーインゲルハイム社

(独)

技術等導入に関する契約

・医薬品の供与

・「ラキソベロン」等医薬品4品目の製造に関する技術

2005年1月1日

から

2021年12月31日

 

(2) 当社の連結子会社であるContinental Structural Plastics Holding Corporationが49%出資し持分法適用関連会社としていたCSP Victall (Tangshan) Structural Composites Co., Ltd.(以下、「CSP-Victall」)について、QINGDAO VICTALL RAILWAY CO., LTD. (以下、「Victall」)が持つCSP-Victallの出資持分を当社の連結子会社である帝人(中国)投資有限公司が取得することによりCSP-Victallを連結子会社化することを決定し、2020年12月14日付で帝人(中国)投資有限公司とVictallにおいて出資持分譲渡契約を締結しました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりです。

契約会社名

相手先

内容

期間

帝人(中国)投資有限公司

QINGDAO VICTALL RAILWAY CO., LTD.

Victallが持つCSP-Victallの出資持分を取得する出資持分譲渡契約

2020年12月14日

 

(3) 当社は、2021年1月29日に株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(以下「J-TEC社」)を連結子会社化することを主たる目的として、J-TEC社の普通株式を公開買付けにより取得することを決議し、J-TEC社との間で資本業務提携契約を締結しました。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりです。

契約会社名

相手先

内容

期間

帝人㈱

(当社)

㈱ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング

対象会社の連結子会社化、株式や運営、及び対象会社との業務提携に関する資本業務提携契約

2021年1月29日

 

(4) 当社及び当社の子会社である帝人ファーマ㈱(以下「帝人ファーマ」)は、2021年2月26日に武田薬品工業㈱と2型糖尿病治療剤「ネシーナ®錠」、「リオベル®配合錠」、「イニシンク®配合錠」、「ザファテック®錠」(以下、本件対象製品)の日本における販売を帝人ファーマに移管し、特許等の知的財産権実施許諾及び製造販売承認を承継する旨の資産譲渡契約を締結しました。また、2021年4月1日付で帝人ファーマへの販売移管を完了しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりです。

契約会社名

相手先

内容

期間

帝人㈱(当社)

及び

帝人ファーマ㈱

武田薬品工業㈱

本件対象製品の日本における販売権、特許等の知的財産権実施許諾及び製造販売承認を承継する資産譲渡契約

2021年2月26日

 

 

5【研究開発活動】

 帝人グループは、「たゆまぬ変革と挑戦」によって新しい価値を創造し、持続可能な社会の実現に向けてソリューションを提供することで「未来の社会を支える会社」になることを目指しています。研究開発活動においても、重要社会課題として取り組む「気候変動の緩和と適応」「サーキュラーエコノミーの実現」「人と地域社会の安心・安全の確保」「人々の健康で快適な暮らしの実現」に対して、人を中心に考え、Quality of Lifeを向上させる「環境価値」、「安全・安心・防災」、「少子高齢化・健康志向」の3つのソリューションを中心に価値を社会に提供することを目指しています。また、事業活動に伴う環境、社会への負の影響を最小限とする取り組みも続けています。

 中期経営計画2020‐2022「ALWAYS EVOLVING」では、イノベーションの創出基盤を強化し、事業機会の創出を加速することを経営基盤強化の基本方針の1つに掲げています。

 イノベーション創出に向け、研究開発においては、マテリアル、ヘルスケア、繊維・製品およびIT事業を併せ持つ帝人グループの特徴を生かしたグローバル視点での技術の連携・活用と融合・複合化により、グループとしての総合力・機動力を発揮することを推進しています。また、帝人グループ内の技術や人財だけではなく、外部技術の積極的な活用により開発のスピードアップを推進し、IoTモニタリング技術、機械学習やAI技術、またマテリアルズインフォマティックスの利活用による研究開発力の強化にも取り組んでいます。

 研究開発体制については、国内12カ所、海外12カ所の拠点からなるグローバルなネットワークを有しており、グループ各社の連携を強化して組織を活性化するとともに、コーポレート組織に新規事業の探索・立ち上げおよびイノベーション創出のための環境整備を実行する組織体制を作り、多様な人財が能力を発揮してイノベーション創出を加速する仕組みを取り入れています。

 帝人グループの知的財産活動においては、経営戦略、事業戦略に対応した適切な知財戦略の提案と実行支援を最重点項目として掲げています。また、経営・事業に資する知的財産の解析、評価と見える化を実施するために、IPランドスケープ等の手法も取り入れ、ICTツールを駆使し特許情報のみならず非特許情報を基に技術動向や競争優位性を解析しています。さらに、詳細な事業環境分析の結果に基づいて、事業のコンピテンシーとなり得るコア技術を中心に知的財産権を戦略的に確保し、競合他社の市場参入を阻止して競争優位性を確保するとともに、それを活用するための強固な知財ポートフォリオを構築しています。

 なお、当連結会計年度の研究開発費は327億円(前期比18億円減)でした。

 また、報告セグメントごとの研究開発活動の概要は次のとおりです。

 

 

<マテリアル事業領域>

  持続可能な社会の実現に向け、LCA(Life Cycle Assessment)による環境負荷の評価、Well to WheelでのEmission削減を目指します。具体的には航空機や自動車向けに高性能な軽量化素材や部材を開発し、燃費を向上させることで、CO2排出量削減に貢献する研究開発に取り組んでいます。次世代自動車に係る軽量化に対しては、環境先進地域である欧州において、自動車向け複合成形材料のデザイン、マルチマテリアル設計・プロトタイピングの機能を担う拠点として「TACE」(Teijin Automotive Center Europe GmbH)を立ち上げ、開発を推進しています。また、クリーンエネルギー化に向けて、水素ガス用軽量高圧容器や水素用パイプライン、次世代電池用部材の開発や、ケミカルリサイクル、複合材料のリサイクル技術に取り組んでおり、環境対応分野に注力した「European Sustainable Technology Innovation Center」(欧州サステナブル先端技術開発センター)を2021年1月に開設しました。これによりサーキュラーエコノミーに貢献する研究開発を推進しています。

  アラミド事業分野では、ライフプロテクション、プロテクティブアパレル、オートモーティブ、エアロスペース、インダストリーの5つを主力テーマとして、アラミド繊維製造技術および新商品の開発に取り組んでいます。高強度、かつ軽量で高い耐久性を有するパラ系アラミド繊維「トワロン」はグローバル市場における需要の拡大に対応するため、2022年度までに生産能力を25%以上増強する計画を進めています。また今回の増強において、CO2排出量削減技術の導入を予定しており、これにより社会と企業の持続的な発展を目指します。またアラミド繊維は、その高い機能性を活かして自動車、航空用コンテナ、消防服、ロープやケーブル補強など幅広い分野に使用されています。その中で海洋ロープ用途開発では、パラ系アラミド繊維である「トワロン」や「テクノーラ」を用い、安全性が高く、かつリサイクル可能なロープ開発を進め、また防護衣料用途でも製品寿命の延長による環境負荷低減技術の開発に着手するなど、環境に配慮した製品づくりに取り組んでいます。

  樹脂事業分野では、今後成長が見込まれる第5世代移動通信システム(5G)および自動車の先進化に対応する高機能材料の研究開発を行っています。高度な分子設計技術、組成品設計技術、加工技術を活かして、高屈折率化・低複屈折化が要求されているスマートフォンカメラレンズ向け樹脂、高耐薬・高耐熱・高硬度・摺動性・低臭・低VOC(揮発性有機化合物)などの機能を持つ組成品、車載ディスプレイ大型化に対応するシート・フィルムの開発を行っています。また、これらの樹脂材料開発においては、マテリアルズインフォマティックスを導入し研究の高速化、高度化を進めております。さらに、持続可能な社会の実現に向けてはリサイクル技術を活用した環境対応材料の開発を進めています。

  炭素繊維事業分野では、高収益・高成長分野での事業拡大を進めるとともに、環境規制の高まりに伴う低燃費化の要請に応え、環境ソリューションとして「軽くて強い」高機能素材の拡大を図っています。特に未来の最新鋭航空機に向けたソリューションとして、炭素繊維原糸から織物基材、熱可塑性及び熱硬化性樹脂を使用した中間材料や工法の開発に積極的に取り組んでおり、幅広い潜在ニーズに応える製品のグローバル展開をより一層強化しています。また、航空機や人工衛星などの用途に使用する技術を用いた炭素繊維中間材料を、スポーツ用途に向けて展開する新たなブランドを立ち上げました。パワーやスピードを求めるユーザーに向けたブランド「TENAX PW」(テナックス パワーシリーズ)、及び、コントロールを求めるユーザーに向けたブランド「TENAX BM」(テナックス ビームシリーズ)の両ブランドの展開を進めるとともに、炭素繊維製品の開発をさらに強化し、革新的な高性能材料とソリューションを提供していきます。

  複合成形材料事業分野では、顧客要求に沿ったコンポジット製造技術を他社に先駆けて構築することにより、自動車部品の軽量化、高強度化を中心とした社会に必要とされる環境、安全ソリューションの提供に向け、グループ内外の素材や技術を結集し、提案力の強化を推進しています。2020年に開発したバッテリーボックスは、これまで帝人が培ってきたマルチマテリアル技術を駆使し、複合材料と金属材料を最適条件で組み合わせて設計したもので、トレイやカバーを複合材料の一体成形とすることでシール性確保による安全性や製造コスト最適化を、フレームに金属を用いることにより剛性、耐衝撃性を実現します。今後、米欧中の各拠点及び国内の設備や人財を活用し、顧客ニーズに沿った最適な設計や改良を行うことにより2025年からの量産開始を目指します。

  また、新事業分野では、上海恩捷新材料科技股份有限公司との間で、リチウムイオン二次電池(LIB)に使用される溶剤系コーティングセパレータの製造に関し、昨年12月に包括的な技術ライセンス契約を締結しました。従来のフッ素系化合物に加え、耐熱性に優れるアラミドのコーティングセパレータを対象として追加し、またこれまで取り組んできた車載用に加えて、スマートフォンなどの電子機器用や、電力貯蔵システム用も含む幅広い用途への展開を企図しています。

  当セグメントに係る研究開発費は130億円です。

 

 

 

<ヘルスケア事業領域>

  骨・関節、呼吸器、代謝・循環器の3領域に特化し、医薬品と在宅医療のシナジーも生かしながら、患者さんのQuality of Life 向上、新たな治療選択肢の提供につながる医薬品、医療機器、そして付加価値サービスを生み出すために、積極的な研究開発を行っています。また、デジタルヘルスケア、機能性食品素材などの分野で、未病~疾病~介護の全てに対応するヘルスケア事業基盤の構築、情報プラットフォームを活用した新規事業の創出に注力していきます。

  医薬品分野では、「オスタバロ皮下注カートリッジ3mg」(一般名:アバロパラチド酢酸塩、開発コード:ITM-058)について、2020年5月に「骨折の危険性の高い骨粗鬆症」を効能・効果として製造販売承認を申請し、2021年3月に承認を取得しました。なお、本剤は、新医薬品の処方日数制限に対応する製剤を開発中であるため、上市時期は未定です。独メルツ社から導入し開発を進めている「ゼオマイン®筋注用50単位、100単位、200単位」(一般名:インコボツリヌストキシンA、開発コード:NT 201)について、2020年6月に「上肢痙縮」を効能・効果とした製造販売承認を取得し、同年12月に販売を開始しました。また、本剤は同年8月に「下肢痙縮」の適応追加に対する一部変更承認を申請しました。加えて、「ソマチュリン*」の適応拡大として、2020年12月に「甲状腺刺激ホルモン産生下垂体腫瘍」の効能・効果の追加承認を取得しました。また、2020年12月に、TransThera Biosciences社と新薬開発のための共同研究及びライセンスの契約を締結しました。

  * ソマチュリン®/Somatuline®は、Ipsen Pharma(仏)の登録商標です。

  在宅医療分野では、当社独自技術により40%酸素の制御を可能とした酸素濃縮装置「マイルドサンソ 40i」の開発を進め、薬事承認を申請しました。既に展開中の統合型濃縮器「ハイサンソi」と同様の見やすい液晶表示や通信機能の搭載によって、よりきめ細やかにアドヒアランスの確認をサポートできる製品であり、「マイルドサンソTO-40S」の後継機種として上市準備を進めています。引続き、周辺機器を含めた製品ラインナップの充実のため研究開発を進めます。また、2020年4月より米国ヘルスケアベンチャーキャピタルファンドであるMedtech Convergence Fundと本格的に活動を開始しました。投資活動及びインキュベーション活動とも順調に進んでおり、医療機器・サービスに関連した帝人グループの研究開発機能の活性化を目指します。また、オープンイノベーションの一環として、2020年度も帝人ファーマ×アドライト アクセラレータープログラムを開催しました。本プログラムにおいてHome Healthcare Awardを受賞したジョリーグッド社とは共同開発契約を締結しました。今後、VRを利用したうつ病の治療補助システムの共同開発を目指します。

  新事業分野では、医療機器分野において、大阪医科大学、福井経編興業との3社で共同開発を進めている心・血管修復パッチ「 OFT-G1(仮称)」について、その臨床試験で目標としていた症例数の被験者登録を完了しました。承認申請および上市を目指して開発を継続して進めます。

  当セグメントに係る研究開発費は172億円です。

 

 

 

 

<繊維・製品事業>

  衣料製品や産業資材をはじめとする様々な用途で付加価値の高い繊維製品を開発し、人々の暮らしを進化させていくとともに、環境問題をはじめとする様々な社会課題に対するソリューションを提供していきます。未来に向かって、豊かな暮らしと、サステナブルな社会を支えていくことが重要な課題です。

  ヘルスケア分野では、医療従事者の声を反映した医療用ガウンを大学と共同開発し、抗菌防臭機能や、清涼性、フィルター性能をあわせ持ち、洗濯して繰り返して使用できるマスクを開発しました。

  新事業分野では、電気の力で抗菌性能を発揮する圧電繊維「PIECLEX」を村田製作所と共同で開発し、ウエアラブルモーションセンシング技術を用いたデジタルゴルフレッスン「MATOUS GOLF」を上市するとともに、センシングデバイスで睡眠の質を評価・アドバイスする睡眠サービス「Sleep Concierge」をFiNC Technologiesと共同開発しました。

  また、新たに環境戦略「THINK ECO」を掲げ、植物由来ポリエステルとリサイクルポリエステルを使用した複合繊維「SOLOTEX ECO-Hybrid」や、マイクロプラスチックの発生を抑制する衣料用保温素材「Thermo Fly」、燃料電池自動車向けの立体成型吸音材など、環境価値向上に貢献する素材・部材を開発しました。

  当セグメントに係る研究開発費は16億円です。

 

 

 

 

<IT事業>

  ネットビジネス分野において、電子コミック配信サービス「めちゃコミック」へのAIの適用について、またITサービス分野において、ヘルスケア領域等でのデータ活用・AI活用について研究開発を行いました。さらに、AR/VRを活用した新規ビジネスの創出・事業化に向けた調査・研究を行いました。

  当セグメントに係る研究開発費は3億円です。

 

  上記セグメントに属さない研究開発活動として、グループ共通の基盤技術の向上やエンジニアリング分野に関する研究開発等を行っています。これに係る研究開発費6億円です。