第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

(1) 帝人グループが目指す姿

帝人グループは、企業理念に基づき、持続可能な社会の実現に向けて、長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」になることを目指しています。世界的な社会課題とSDGsが掲げるゴールを踏まえ、優先的に取り組む5つのマテリアリティ(重要課題)を特定し、持続可能な社会の実現と企業価値のさらなる向上を目指します。

 

0102010_001.png

 

帝人グループは、創業からの約100年、社会のニーズを先取りし、新たなビジネスへの変革と挑戦により事業基盤を構築してきました。その中で、顧客や患者さんの困りごとに真摯に向き合い培ってきた、信頼の品質と顧客リレーション、患者さんや地域社会のサポート力といった強みを活かし、ポストパンデミック社会において、重要社会課題を解決する企業への変革を加速させていきます。また、長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」をより具体化し、「地球環境を守る会社」「より支えを必要とする患者、家族、地域社会の課題を解決する会社」として、環境貢献に資する自動車・航空機、エネルギー領域や、希少疾患・難病などの疾病領域を中心に社会に貢献していきます。

 

 

(2) 対処すべき課題

① 経営方針

マテリアル事業の大幅な収益性悪化を主要因として、中期経営計画2020-2022で掲げた財務目標値はいずれも未達となりました。具体的にはROE10%以上、営業利益ROIC8%以上の資本コストを意識した目標値を設定しましたが、いずれも未達となり、市場評価の一つであるPBR(Price Book-value Ratio:株価純資産倍率)が1倍割れの状況にあります。そのような状況に鑑み、中期経営計画2020-2022から、目指す姿に大きな変更はないものの、将来の収益源育成分野(Strategic Focus)と利益ある成長分野(Profitable Growth)に区分した投資戦略は一旦廃止した上で、2023年度は、将来の成長回帰に向けた、以下の収益性改善の改革を最優先します。

 

1) 複合成形材料事業、アラミド事業、ヘルスケア事業の3つの事業の収益性改善

2) 経営判断・実行の迅速化を促す経営体制への見直し

 

これらの成果として、2023年度までに300億円以上の収益改善を目指します。並行して事業ポートフォリオの再構築の検討を進め、2024年度に帝人グループ新中期経営計画を開示する予定です。

 

 

② 対処すべき課題

事業別の経営環境及び対処すべき課題は以下のとおりです。

 

経営環境

対処すべき課題

複合成形材料

・半導体不足、急激な原材料価格高騰、労働力不足に対し、価格転嫁、コストダウン、内製化、自動化の対応策を実施したが、カバーできず大幅赤字が継続

・北米事業の収益性改善余地を徹底的に再検討し、立案した約130個の改善策を実行
(営業利益改善目標+130億円)

・北米の改善策の成果が認められない場合は、事業売却等の可能性も含め、事業継続是非を判断

アラミド

・生産能力増強を実施も、天然ガス価格高騰によるコストアップ、労働力確保難や生産不調、停電や火災の発生による生産量未達により、収益性が大幅悪化

・生産性改善、天然ガス価格高騰対策、増産/増販の重要施策に資源配分し、2023年度で将来の収益性回復に目途を付ける(営業利益改善目標+70億円)

・サステナビリティでの差別化、販売数量増によりトップシェアの地位を強化

ヘルスケア

・医薬品は、将来の収益に資する製品パイプラインが不足

・在宅医療は、HOT・CPAPの国内トップシェアを維持する一方、新規製品・サービスの創出は未達

・国内トップシェアの在宅医療機器事業で培ってきた事業基盤を希少疾患・難病領域等の医薬品に活用

・必要な機能別リソースをゼロベースで見直し、2023年度に抜本的な固定費削減の実行に目途を付ける
(2025年度固定費削減目標 50億円)

樹脂

・主に中国市場における需要減退により販売量減

・高付加価値シフト、環境戦略推進により収益力向上を進める

炭素繊維

・COVID-19に起因し、採用に向け進捗していた次世代航空機用途開発が遅延

・航空機中間材料プログラム認定活動や環境戦略を推進するとともに、収益性改善を進める

繊維・製品

・原燃料価格高騰等の環境下でも安定的に収益計上する事業へ変革

・環境戦略推進とともに、成長分野(モビリティ、インフラ、グローバルアパレル)の成長を加速化

IT

・ネットビジネスの顧客獲得が伸長

・ITサービスはヘルスケア事業への重点化を推進、ネットビジネスでの更なる成長機会を探索

 

経営体制としては、外部環境変化にレジリエントに対応する為に、2023年度より以下の対応を行い、経営判断・実行を迅速化します。

項目

対応策

本社・事業の役割明確化

・執行役員体制の再編による責任・役割明確化(執行役員15名体制に半減)

・事業本部をCEO直轄に集約し、組織階層をフラット化

事業運営機能の強化

・本社による事業戦略・計画の立案やモニタリング力を強化

・事業本部長に決定権限の更なる委譲、実行の迅速化とリスク管理を両立

本社機能の
見直し

 

・新事業組織をコーポレートが管轄する新事業本部へ再編・集約

・将来に向けた協創によるイノベーション創出はコーポレートにて横断的に実施

・本社スタッフの配置・規模の最適化(2025年度固定費削減目標40億円)

 

以上により、成長ドライバーとなるべき事業を中心とし、収益性改善のための諸施策を着実に実行し、経営体制の変革を進めることで、投資家をはじめとするステークホルダーの期待に応えられる持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現に向けて取り組んでいきます。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

帝人グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において帝人グループが判断したものです。

 

(1)マテリアリティ(重要課題)に関する取組

帝人グループは、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティ(持続可能性)を巡る課題を経営課題と認識し、中期経営計画2020-2022の中でサステナビリティに関する方針を定め、自社にとっての機会とリスクを整理し、重要課題を特定しました。それぞれにKPIを設定して取り組みを推進することで長期ビジョンの実現につなげています。2023年に公表した「帝人グループ 収益性改善に向けた改革」においても、取り組むべき重要課題は変更せず、ポストパンデミック社会において、重要課題を解決する企業への変革を加速することを目指します。

 

①ガバナンス

サステナビリティを巡る課題への対応については、取締役会では年2回のTRM(トータル・リスクマネジメント)コミティー(*)報告のほかCEO、サステナビリティ管掌から適宜報告を受けて、状況を把握し指示を与えています。また経営陣は、サステナビリティに関する方針・計画及び進捗について、経営会議にて適宜報告を受け審議するほか、年2回のTRMコミティーを通じてサステナビリティに関する課題の対応状況を詳細に把握し対策を推進しています。

(*)TRMコミティー:CEOを委員長とし「経営戦略リスク」と「業務運営リスク」を統合管理する会議体

 

②戦略

重要社会課題を事業の成長機会と捉え、社会が必要とする新たな価値を創造・提供していくことで、事業と社会の持続的な発展を目指します。

1) 気候変動の緩和と適応

「気候変動の緩和」では、高機能・高付加価値材料によるモビリティの軽量化や高耐久化を中心としたソリューションを提供します。「気候変動への適応」では、高機能素材によるインフラ補強材や、ヘルスケアやIT等の技術やサービスを通し、自然災害発生時の被害低減と迅速な復旧に役立つソリューションの提供に取り組みます。また、事業活動に伴う地球環境への負荷低減として、脱石炭火力を図るとともに、省エネ・再エネ化の推進やプロセスイノベーションなどの技術革新にも取り組みます。

2) サーキュラーエコノミーの実現

製品の長寿命化とシェアリングにつながる「高耐久・高品質素材」を提供します。また、資源が排出されたところにリサイクル製品を還元する「地産地消型マテリアルリサイクル」など、「リサイクル技術の開発・提供を通じたパートナーシップ」によって、バリューチェーン全体での資源循環性の向上に貢献します。また、事業活動に伴う資源循環の取り組みとして、リユース、リサイクルなどによる廃棄物の削減や、水使用量の少ない製品の拡大と事業活動における水の効率的利用に努めます。

3) 人と地域社会の安心・安全の確保

火災の高熱にも耐えるアラミド繊維、地震災害時の天井落下リスクを軽減する超軽量天井材、あるいは安否確認システムなど、高機能素材やITを駆使したソリューションを提供します。また、ナノレベルの微細技術を活用したフィルターや環境エンジニアリングなどにより、地球環境汚染の防止・浄化に貢献します。また、事業活動における生態系の破壊や環境汚染につながる有害化学物質の把握と管理を徹底し、事業活動に伴う有害化学物質排出量を計画的に削減します。

4) 人々の健康で快適な暮らしの実現

医薬品・医療機器・医療材料・食品・ITサービスなどを総合的に活用し、人々の健康的で快適な生活を支えるソリューションを提供します。特に、希少疾病・難病などを中心に、より支えを必要とする患者、家族、地域社会の課題を解決するソリューションを提供していくことを目指します。また、安全と健康に配慮した職場環境を提供するため、労働災害の撲滅、長時間労働の是正、メンタルヘルスの向上に取り組みます。

 

③リスク管理

サステナビリティに関するリスクについては、TRMのグループ重大リスクと位置付けTRM体制のもとで管理しています。詳細は、「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

④指標と目標

環境負荷低減については、中期経営計画2020-2022で設定したKPIを継続(一部目標値を引き上げ)しています。自社グループ排出温室効果ガスの削減目標は「2℃を十分に下回る目標水準(Well-below2℃)」であるとして、パリ協定の定める目標に科学的に整合する温室効果ガスの排出削減目標「Science Based Targets(SBT)」の認定を受けており、長期目標達成のロードマップを設定して、ネット・ゼロの実現に向けて取り組んでいます。この他にも下表のようにサステナビリティに関するKPIの長期目標を設定しており、達成のロードマップを新中期経営計画(2024年度公表予定)にて明示する予定です。

項目

目標年度

目標

気候変動

(CO2排出量)

CO2*1削減貢献量*2

2030

「削減貢献>総排出」達成

自社グループ排出(Scope1+2)

2030

2018年度比 30%削減

2050

実質ゼロ実現

サプライチェーン*3(Scope3)

2030

2018年度比 15%削減

水(淡水取水量売上高原単位*4

2030

2018年度比 30%改善

有害物質(有害化学物質排出量売上高原単位*4

2030

2018年度比 20%改善

資源循環(埋立廃棄物量売上高原単位*4

2030

2018年度比 20%改善*5

*1 CO2以外に、メタン、一酸化二窒素を含んでいます。

*2 当社製品使用による、サプライチェーン川下でのCO2削減効果を貢献量として算出しています。

*3 スコープ3排出量のうち、カテゴリー1(購入した製品・サービス)の商社ビジネスを除く範囲を対象としています。

*4 各指標の売上高原単位は、連結売上高を分母に適用して算定しています。

*5 2022年度に、目標値を2018年度対比10%改善から20%改善に引き上げています。

 

 

(2)人的資本(人材の多様性を含む)に関する戦略並びに指標及び目標

 

① 戦略(人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針)

帝人グループは、企業理念の1つとして「社員と共に成長」することを謳っており、具体的には次の3項目の実現を目指しています。

■ 社員が能力と個性を発揮し、自己実現できる場を提供します。

■ 社員と共に、革新と創造に挑戦します。

■ 多様な個性に彩られた、魅力ある人間集団をめざします。

 

革新と創造への挑戦なくして企業の成長はありません。帝人グループは、上記3項目の実現により「社員と共に成長」することが企業価値の向上につながると考えています。そのために、1)人財多様性の推進 2)自律的キャリア形成 3)企業風土改革 4)生産性向上とデジタル人財育成に加え、全ての人事施策の基盤となる 5)社員エンゲージメント向上を重視し、諸施策を推進しています。

 

0102010_002.png

 

1)人財多様性の推進

帝人グループは、多様な人財を活用することが創造性を高め、イノベーションを促進すると考え、2000年より女性の活躍の推進、外国籍社員の採用などに積極的に取り組んできました。事業のグローバル化に伴い、日本を中心とした取り組みを世界に広げ、役員層の多様性推進のためのKPIを設定しているほか、日本だけでなくグローバルの各地域それぞれの課題状況に応じた地域戦略とKPIを設定し、その達成に向けて施策を実行しています。

また、事業ポートフォリオの変革に合わせた人財の獲得や、新鮮なアイディアや価値観を取り入れて、組織を活性化させるため等の理由から中途採用者を積極的に活用しており、2022年度のキャリア入社者の割合(総合職以上)は23.9%、キャリア入社のうち管理職の割合は7.2%でした。

 

2)自律的キャリア形成

社員が、自らキャリアを形成できる仕組みとして、4つの制度・施策を実施しています。「自己申告制度」により、毎年、上司と今後のキャリアについて話し合うほか、社内のキャリアコンサルタントによる相談窓口を設けています。また、希望する職種・ポストへの異動が可能な制度として、上司に断りなく応募できる「ジョブチャレンジ(社内公募)」と、公募枠がなくとも社員本人が希望する異動先に申請し、異動先が選考の上で異動を実現させる「FA(フリーエージェント)制度」があり、2022年度は29人がこれら制度を活用して社内で新たなキャリアに挑戦しました。また、2022年度から、現在の業務に直接関係ないスキルであっても、希望者はキャリア形成に必要な知識やスキルをいつでも習得できるようオンラインで自由に学べる「オンライン学習サービス」も導入しました。

 

3)企業風土変革

多様化していく人財を最大限活かすため、2020年度から3年間、革新と創造への挑戦を推奨する企業風土を醸成する「Power of Culture Project(企業風土変革プロジェクト)」を実施しました。2020年度より役員層を対象に開始し、リーダーシップにフォーカスした組織開発の手法を取り入れ、トップリーダーの行動変容による組織風土の改革を推進し、2021年度及び2022年度はグローバルの部長層に広げて展開しました。

 

社員が新しいアイディアを自由に提案し、社員同士で意見交換等の交流ができるプラットフォームとして「IdeaScale*」を活用しています。グローバルで社員2,300人以上が登録して交流を行っています。「IdeaScale」のプログラムの1つである「新規ビジネス提案」では、審査に通過したアイディアに予算をつけて事業化に向けた検討を行っています。2022年度は、183件の新規ビジネス提案のうち、1件が最終審査に通過し、事業化に向けた検討が進んでいます。

*IdeaScale:帝人グループ内の交流・提案の活性化、新規ビジネスのアイディア創出を目的としたシステム。社員であれば誰でも自由にIDを登録し、新規ビジネスのためのアイディアを提案し、関心のあるテーマについてシステム上で意見交換や情報交換ができる。

 

また、挑戦したこと自体を賞賛する仕組みとして、2021年度から2022年度にかけて、グループ・グローバル全社員を対象として、「ダイバーシティ&インクルージョン」「イノベーション」「サステナビリティ」の3つの領域においてイノベーションの促進を通じて帝人グループや未来の社会に大きなプラスの効果をもたらす取り組みを表彰する「Designing the Future Award」を実施しました。この取り組みの実績も踏まえ、多様な価値観に対応できる今後のあるべき表彰制度を検討していく予定です。

 

4)生産性向上とデジタル人財育成

業務効率化による生産性向上のため、2018年度からRPA(*1)開発の専門部署を立ち上げ、各部署の定型的な業務の自動化を実施しました。大型のRPA開発が一巡したことから、2022年度はこれまでの専門部署によるRPA推進の方針を変更し、各部署での自律的なRPA推進体制の構築により定型業務の自動化を実施し、2018年度末から2022年度末までに約170業務を自動化し、約8万時間相当の業務削減を実現させました。今後も各部署の社員自身がRPAを開発できるよう研修・教育を通じてリスキリングを行い、各部署における業務プロセス等の自動化を進めます。

また、帝人グループでは、デジタルトランスフォーメーション(DX)(*2)の自律的推進を課題と認識しており、2023年度にグループ全体のDX推進を強化・支援するDX推進部を新設しました。今後、DX推進部・人事部門が連携し、社員がデータやデジタル技術の活用で新たな価値を創出できるよう2023年度からグローバルで“帝人流”のビジネスアーキテクト(*3)育成を開始します。この取り組みを通じて、社員のDXリテラシーを向上させるとともに、業務・プロセスのDXを実際に提案・企画できる社員を育成していきます。

*1 RPA:Robotic Process Automationの略で、定型的な事務作業を自動化するツール。業務効率の向上と人為的ミスの予防に役立ち、生産性の向上の効果がある。

*2 帝人におけるDXとは、データやデジタル技術の活用で、新たな価値を創出すること。

*3 帝人流ビジネスアーキテクトとは、デジタルを活用した問題解決の企画・立案・推進を担う者をいう。

 

5)社員エンゲージメント向上

社員の働く環境、組織状態及び人事施策等は、社員のエンゲージメントに大きな影響を与えます。エンゲージメントが高い社員が多い組織は、困難を乗り越えようとするレジリエントさを持ち、目標の達成力が高いとされていることから、2021年度より全世界の社員(約19,500名)を対象にエンゲージメントサーベイを行い、会社や組織に対する意識や貢献意欲を把握しています。

エンゲージメントサーベイにより各階層の全ての組織の状態と課題を見える化したうえ、特に最小の組織(部・課)毎の改善施策を重点的に実施しています。2021年度の全社のエンゲージメントスコア64に対して、具体的な改善施策を実施した結果、スコア改善に繋がった組織があった半面、様々な要因がありスコアが低下した組織もあり、2022年度は全体では前年と同一スコアとなりました。今後は、全ての事業本部・機能組織で毎年スコアを1%改善することを目標として、ベストプラクティスを全社共有することによりスコア改善を図っていきます。

 

②指標及び目標

1) 2020年度-2022年度 中期経営計画における目標と実績

帝人グループは、中期経営計画期間において、役員層の多様性推進のためのKPIを設定したほか、日本だけでなく、グローバルの各地域それぞれの課題状況に応じた地域戦略とKPIを設定し、その達成に向けて施策を実行してきました。2020年度以降に設定したマイルストーンの達成状況は下表のとおりです。未達となったKPIについてレビューを行いつつ、実情に応じたキャッチアップ策を検討・実施していきます。

 

 

2019年

10月*6

2020年4月*6

2021年

4月*6

2022年

4月*6

2023年

4月*6

マイルストーン

2023年4月*6

役員 *1 ダイバーシティ

女性役員数

3

4

4

5

5 *8

6以上

非日本人役員数

3

5

5

4

3 *8

6以上

女性活躍 重点目標*2

日本 *3

管理職数

117

127

143

162

172

174

米国

上級管理職数*4

2

2

2

3

3

4

欧州

グローバルコア人財数*5

0

1

1

3

3

3

中国

上級管理職数*4

-

4 *7

4

7

7

9

ASEAN

上級管理職数*4

-

5 *7

5

7

10

5以上

*1 取締役、監査役、グループ執行役員・理事 *2 地域別の課題に応じて設定(中国・ASEANは2020年9月設定) *3 国内グループ主要4社:帝人(株)、帝人ファーマ(株)、帝人フロンティア(株)、インフォコム(株) *4 グループ会社社長を含む上級管理職

*5 すでに相当数存在する管理職からグループ執行役員候補として選抜・認定された人財 *6 各年10月1日、4月1日時点のデータ

*7 KPI設定時の2020年8月1日時点のデータ *8 2023年4月から役員制度変更のため同年3月末の人数を記載

 

2) 2023年度以降の目標

経営体制見直しにおける執行役員数低減に合わせ、長期目標値を再設定(人数の目標値から比率の目標値に変更)すると同時に、従業員満足度(エンゲージメント)のKPIも設定しました。多様な属性、バックグラウンド、価値観を持った人財が活躍でき、また、男女間賃金差異改善に繋がる女性管理職比率の向上を目指して各種取り組みをさらに推進し、より一層イノベーションを促進する活力ある組織づくりを進めます。また、役員報酬制度において、ダイバーシティ&インクルージョン、従業員満足度(エンゲージメント)を指標として設定し、目標達成に向けた実効性を高めています。

 

 

マイルストーン

2026年4月

目標

2030年度

女性役員

20%

30%

非日本人役員

10%

30%

従業員満足度

毎年1%改善 (参考:2022年度実績64%)

 

 

(3) 社会貢献活動

帝人グループ社会貢献基本方針に則り、自然との調和を大切にし、地域コミュニティとともに発展するため、よき企業市民として事業特性や地域性を尊重した適切な社会貢献活動を推進しています。

学術・教育、スポーツなどを通じた次世代の育成の支援としては、若き科学技術者の育成を目的に創設した公益財団法人帝人奨学会による帝人久村奨学金制度を通じ、70年にわたり約1,700人の理工系学生を支援しています。また、「全国高校サッカー選手権大会」への協賛や、公益財団法人日本ユニセフ協会「子どもの権利とスポーツの原則」への賛同等、青少年のスポーツ支援に取り組んでいます。その他、社員のボランティア活動を支援する様々な仕組みを継続的に運用しています。

 

3【事業等のリスク】

 

当社は、株主価値を高めるとともに、株主をはじめとするあらゆるステークホルダーの皆様に価値を提供し、持続可能な事業活動を行う使命のもと、その実現を脅かすあらゆるリスクを統合的かつ効率的に把握・評価・管理し、グループ経営に活かす組織的・体系的アプローチを行っています。当社の持続的成長にかかわるあらゆるリスクに対処するために、経営戦略・経営計画策定、戦略的なアクション、個別投資プロジェクトの決定等に伴う「経営戦略リスク」と、業務運営に悪影響をもたらす様々な有害事象である「業務運営リスク」を対象とするTRM(トータル・リスクマネジメント)体制を構築し、リスクの統合管理を行っています。

 

2003年度からCEOを委員長とする「TRMコミティー」を取締役会のもとに設置しています。取締役会は、TRMコミティーから提案されるTRM基本方針、TRM年次計画等の審議・決定を行うとともに、重要なリスクを管理し、事業継続のための体制を整備します。また、監査役は、取締役会がTRMに関する適切な方針決定、監視・監督を行っているか否かについて監査します。「経営戦略リスク」の評価についてはCEOが直接担当し、取締役会等における重要な経営判断材料として提供します。「業務運営リスク」についてはサステナビリティ管掌が担当し、海外を含むグループ全体の業務運営リスクの管理を行います。各事業本部、グループ会社等が行う個別のリスク管理状況を全社横断的に把握・確認すると共に、グループ全体で統一的な対応指針が必要なリスクへの対応を推進しています。また、マクロ環境動向については、帝人グループへの影響としてのリスクと機会の両面について、マテリアリティと関連づけて捉えています。

 

なお、以下の文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において帝人グループが判断したものです。また、本有価証券報告書は、リスクと不確実性を伴う将来見通しに基づく情報も含んでいます。当社グループは、下記リスクのほか、本有価証券報告書中の他の箇所に記載されているリスクに直面しておりますが、これらのリスクの影響により、実際の業績が、将来見通しに基づく記述が想定しているものとは異なってくる可能性があります。

 

<「帝人グループ 収益性改善に向けた改革」によるリスクと対応>

外部環境変化のスピードが加速し、同時多発的に発現するリスクに対し、レジリエントに対応する為に、2023年度より、経営判断・実行を迅速化するべく、経営体制の変革を図っています。具体的には、事業本部をCEO直轄に集約し、組織階層をフラット化し、本社による事業戦略・計画の立案やモニタリング力を強化するとともに、事業本部長に決定権限の更なる委譲を行い、実行の迅速化とリスク管理の両立を図ります。また、収益性改善に向けた改革におけるリスクについては、経営戦略リスクとして重点管理します。([(2)経営戦略リスクの抽出・分析と対応方針]参照)

 

<新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に関するリスクと対応>

自動車・航空機向け用途を重点市場とするマテリアル事業領域ではCOVID-19による世界経済の影響を受け、特に炭素繊維における航空機向け需要は影響を受けました。その対応策として、需要が旺盛な他用途への展開による生産稼働率の向上や販売構成の改善による収益性改善策の実行、中長期的な需要回復を見据えた航空機向け炭素繊維中間材料の新規大型プログラム獲得に向けた開発を進めるとともに、収益性のモニタリングを継続して実施した結果、航空機向け需要の回復とともに収益性が改善しています。また、2022年3月末より始まった中国のゼロコロナ政策によるロックダウンに起因したサプライチェーンの混乱、自社・顧客製造拠点の稼働停止などの影響やその後に続く低調な需要の状況を注視しました。

 

COVID-19拡大に伴う業務運営上のリスクに対処するため、2020年1月にCSR管掌(現 サステナビリティ管掌)を本部長とする「緊急対策本部」を設置(グローバルに感染が拡大した同年4月から6月までは緊急対応のみならず総合的なBCP対策・対応を取るためにCEOを本部長とする「新型コロナウィルス対策本部」も併せて設置)し、さらに2021年4月からは「帝人グループ新型コロナウィルス対策本部」として、従業員とその家族の安全確保と事業継続のための、グローバルな視点での方針決定と施策推進を行ってきました。日本国内においては2023年5月8日以降、感染症法上において新型コロナウィルス感染症が第5類に分類変更となったことから、同日をもって新型コロナウィルス感染拡大防止に関する各種の対応ガイドラインを廃止しました。また併せて帝人グループ新型コロナウィルス対策本部を解散し平時の体制に戻すとともに、基本的には各国ルールを遵守し、この3年間実施してきた感染症の拡大防止対策を踏まえ適切に行動するよう全従業員に求めています。

 

<地政学的リスクに関する対応>

ロシア軍によるウクライナ侵攻をはじめとし、北朝鮮情勢、台湾情勢等グローバルな地政学リスクの高まりを踏まえ、グループ緊急対応体制、緊急退避プログラム、人道支援等を整備するとともに、直接的及び間接的影響を整理し、事業に与える影響を評価したうえで対応を行っています。

 

(1)業務運営リスクの抽出・分析と対応方針

業務運営リスクは、①自然災害等 ②製造 ③製品・品質 ④法令・倫理 ⑤情報セキュリティ ⑥その他に分類したうえ、「影響度」と「頻度」の観点から最新のリスクを抽出・分析し、下記5項目のグループ横断的リスクを「グループ重大リスク」と位置づけ、対応方針を策定しています。

 ・ 気候変動リスク

 ・ 人権リスク

 ・ 情報セキュリティリスク

 ・ 地政学リスク

 ・ 安全リスク

 

0102010_003.png

 

 

[短期的な業務運営リスクへの対応方針]

①グループ重大リスク(気候変動リスク、人権リスク、情報セキュリティリスク、地政学リスク、安全リスク)に対し

て、グループ横断での対応に注力する。

②事業継続マネジメントの取り組みを強化する。

 

[中長期的な業務運営リスクへの対応方針]

①グループリスクマネジメント規程に則ったリスクマネジメントを遂行するとともに事業継続マネジメントの整

備を進める。

②「3つの防衛線」における第2の防衛線の「支援力」を強化し、管掌職務分掌に役割を明確化する。

 

[業務運営リスク:グループ重大リスクへの具体的取り組み]

リスク項目

リスク概要

関連するマテリアリティ*

対応策

頻度

影響度

気候変動

リスク

・気候変動に伴う制度変更等に対応できない場合、事業継続に支障をきたす可能性があります。

・気候変動に伴う自然災害の発生

例えば、マテリアル事業においては自然災害による物流の混乱、サプライチェーンへの影響、エネルギートランジションによる原燃料価格高騰等が想定されます。

A

気候変動を起因とする各事業における関連リスクを網羅的・体系的に把握し管理するものとし、各事業の気候変動リスク棚卸しとリスク管理PDCAの深化を図ります。

また、具体的な事業への影響が経営戦略リスクに相当するものについては、経営戦略リスクへの対応策として取り組みます。

中~高

人権

リスク

・従業員の人権を侵害する様々な事象に会社が適切に対応しない場合、従業員の維持・採用に支障をきたし事業継続が困難になる可能性があります。

・サプライチェーン上に存在する人権問題に適切に対応できない場合、事業継続に支障をきたす可能性があります。

E

人財流出に繋がりうる人権に係る

リスクを把握し、体系的に管理します。

また、取引先による法令遵守にとどまらずソフトロー対応状況までを、当社の一貫した方針・ガイドラインの下に把握し管理するものとし、取引先のコンプライアンス管理を強化します。

中~高

情報セキュリティリスク

・予期せぬ情報漏洩により競争力を損なう、あるいは、法に抵触し制裁金の対象となる可能性があります。

・サイバー攻撃により事業継続に支障をきたす、また、重大な情報漏洩、身代金請求につながる可能性があります。

E

情報資産・営業秘密の管理・移転、サイバー攻撃について、物理的脅威・脆弱性、技術的脅威・脆弱性、人的脅威・脆弱性の観点でリスク対応を図り、情報セキュリティガバナンス体制・プロセスの構築を進めるものとし、情報セキュリティ部会を通じて具体的取り組みを推進します。

中~高

地政学リスク

・紛争やテロにより当社グループ社員の人命・資産が脅かされる、あるいは、物流・調達・インフラの寸断により事業継続に支障をきたす可能性があります。

E

グローバルベースでいずれの事業拠点が巻き込まれても支援できるよう平時から緊急対応体制を整備するものとし、グローバル危機管理体制整備と訓練を実施します。

安全リスク

・職場の安全確保が十分でない場合、操業の中断、生産性の低下が起き、従業員の維持・新規確保が困難となることで、事業性が悪化したり、事業継続ができなくなる可能性があります。

E

帝人グループの安全基準を確実に各拠点に浸透し、事故が多発している拠点に対して全社的な支援を行います。

 

 

[業務運営リスク:グループ重大リスク以外の主なリスクへの具体的取り組み]

リスク項目

リスク概要

関連するマテリアリティ*

対応策

頻度

影響度

供給リスク

・当社グループとサプライチェーンを取り巻く様々な供給に関するリスクとしては、災害時の事業継続に係るもの、労働・人権に係るもの、環境影響に係るもの、不正・腐敗に係るものなどが想定されます。

E

経営レベルのBCP・緊急対応体制を見直すとともに、サプライチェーンを俯瞰した顧客起点のBCP整備を行います。またグリーバンスシステムを整備し、CSR調達対象の拡大と調達先の監査を進めます。

製品・品質

リスク

・当社の製品・サービスにおいて予期しない重大な品質問題が発生する可能性があります。

E

当社グループでは、帝人(株)及び帝人ファーマ(株)等の主要な子会社に、他の部門から独立した専任の品質・信頼性保証部門を設置し、厳格な品質管理基準に基づき、事業活動全般における品質保証を確保する体制を敷いています。

中~高

低~中

企業倫理・

コンプライアンスリスク

・当社グループの事業の多様化、グローバル化が進展する中、事業を展開する国や地域において様々な規制に違反した場合、また規制の新設・強化や想定外の適用等に事業活動が抵触するようになった場合、監督当局による行政処分、訴訟対応、事業活動の停止、企業ブランド価値の棄損、ないし、社会的信用失墜のリスクがあります。また、人権課題や腐敗防止への対応等、ソフトローに適切に対応できない事象が発生した場合、事業運営への支障や社会的な信頼の棄損などの影響が生じる可能性があります。

E

当社グループにおけるグローバルレベルでのコンプライアンス推進を管理監督するための、トップマネジメントへの報告体制、コンプライアンス関連規程の見直しを進めるとともに、グローバルな内部通報対応体制を整備し、不祥事予防のための啓発・教育活動を継続していきます。

知的財産

リスク

・第三者から知的財産権侵害の指摘を受け、製造販売の差止めや損害賠償等が生じた場合または当社が保有する知的財産権が第三者によって不法に侵害された場合に、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。

・当社が営業秘密として管理する未公開の技術ノウハウ等が第三者によって不正に取得された場合に、当社グループの競争優位性が損なわれる可能性があります。

E

当社グループに関連する事業分野において他社が保有する知的財産権を定常的に監視するとともに、当社知的財産権の侵害被疑品に対しては正当な権利主張を行っています。

営業秘密管理の当社グループ統一基準である「グループ営業秘密管理ガイドライン」等に基づく管理と、定期的な管理状況の監査により、厳格な営業秘密の管理を行っています。

*マテリアリティ A:気候変動の緩和と適応、B:サーキュラーエコノミーの実現、C:人と地域社会の安心・安全の確保、D:人々の健康で快適な暮らしの実現、E:持続可能な経営基盤のさらなる強化

 

(2)経営戦略リスクの抽出・分析と対応方針

経営戦略リスクは下記カテゴリーでリスクを分類し、基本的な対応策を設定しています。また、事業戦略における既発現のリスクを含む具体的かつ最新のリスクについて、経営戦略リスクマップを用いて、「影響度」と「発現時期」及び「リスクの増減傾向」の観点から分析し、緊急度や影響度に応じた対応方針を設定の上、速やかに対策に着手しています。

特に2023年度は、前年度の活動レビューを踏まえ、リスク管理体制の改善点を抽出し、また、「帝人グループ 収益性改善に向けた改革」の進捗を含み、重点管理対象と位置付けたリスクについては、より一層のモニタリングとリスク発現時の対応の強化を図ります。

 

<リスク分類>

① マクロ環境リスク(為替、金利、原燃料価格等)

② 市場・競合環境変化リスク

③ 制度変化リスク

④ 資金調達・財務健全性リスク

⑤ 個別戦略リスク(「収益性改善に向けた改革」を含む)

 

0102010_004.jpg

 

 

 

[経営戦略リスクの対応方針]

・「帝人グループ 収益性改善に向けた改革」の2023年度での取り組みについては、計画の実行段階における計画乖離リスクを管理することで、確実な計画達成を目指す。

・地政学的リスク、インフレーションの高進等が事業活動に影響を与えるリスクを網羅的に抽出することで、不測の事態に陥ることを回避する。

・抽出されたリスクについては、リスク発現時に備えたモニタリングを行い、計画との乖離が発生した際には、早急に対応策を実行する。

・対応策の実行において、発現リスクが完全に収束するまで確実なフォローを行う。

 

[経営戦略リスク:全般的リスクと基本的対応方針]

リスク項目

リスク概要

基本的対応方針

①マクロ環境リスク

・各国・地域の景気動向や経済状況、主要な供給先である自動車・航空機市場の動向による販売量の変動

・原燃料価格変動によるコスト変動

・外貨建て取引の財務諸表への反映及び海外連結子会社の財務諸表の円換算等で必要となる為替レートの変動(対米ドル1円の円高の場合、営業利益で約3億円/年の減益影響)

・金利の変動による支払利息の変動

業績や財政状態に大きく影響を及ぼす可能性のあるものを中心に抽出し、アセスメントを実施しています。

原燃料価格は適正在庫水準の確保、長期契約による購入価格安定化や適切な販売価格政策、為替レートは為替予約取引等の活用や海外投資に対する現地通貨建てでの資金調達、金利については負債の長期・金利固定化を通じ、リスク低減を図っています。

②市場・競合環境変化リスク

・競合環境の変化による需給構造の変動

・素材・中間材料・部品供給ビジネスにおける、末端の需要動向がもたらすサプライチェーン各段階での実体経済以上の在庫調整

・感染症や災害、地政学的リスクの発現等による生産活動への影響や物流の停滞等のサプライチェーンの混乱がもたらす需給構造の変動

各国・地域における環境規制や保護主義の台頭などの制度変化リスクや、それらの影響も含めた市場・競合環境の変動リスクに対しては、影響する個別事業において事前にコンティンジェンシープランを作成するとともに、予兆も含めモニタリングを継続し、戦略の変更等早めの対応ができるよう準備しています。また、経済安全保障に関しては関連する情報取得を進め、危機の早期把握に努めています。

③制度変化リスク

・温室効果ガス排出規制、プラスチック製品規制等の想定以上の強化

・米中貿易摩擦の再燃等をはじめとする世界的な保護主義の台頭や経済安全保障リスクの高まり

・国内における薬価改定等の医療費抑制

政策の加速

④資金調達・財務健全性リスク

・経営環境の著しい悪化等で生じる収益性の低下等による保有する固定資産についての減損損失の発生

・将来の課税所得の予測・仮定が変更されることで繰延税金資産の一部または全部が回収できないと判断された場合の繰延税金資産の減額

資金調達に際しては、短中期的な大規模資金需要や自己資本毀損リスクも踏まえ、財務健全性に配慮した最適資金調達を検討します。定期的に「ネット有利子負債/EBITDA」「自己資本比率」「D/Eレシオ」等をモニタリングするとともに、減損懸念資産や繰延税金資産の継続的なモニタリングを通じて自己資本毀損リスク規模を把握しています。また、運転資本管理、政策保有株式縮減等による資産圧縮を徹底しています。

⑤個別戦略リスク

(「収益性改善に向けた改革」を含む)

・収益性改善の計画に対し遅れや実施困難な状況により計画から乖離

・戦略に適合する案件が探索できず、設備投資・M&Aの実施が不可となる、もしくは遅延

・研究開発費の投入に対し、研究開発の成果が目標から大きく乖離

計画の進捗に対するKPIを設定しモニタリングを実施することで、計画からの乖離を管理しています。

(「収益性改善に向けた改革」における個別戦略リスクは[経営戦略リスク:事業戦略上の主要リスク(経営戦略リスクマップにおける影響度「大」)への対応]に各リスクへの対応策を記載)

事業創出・拡大のための大型戦略投資案件については、事業環境を考慮した見極めや個別課題へのアクションプランを重点的にフォローしています。

 

[経営戦略リスク:事業戦略上の主要リスク(経営戦略リスクマップにおける影響度「大」)への対応]

事業

リスク分類

リスク概要

関連するマテリアリティ*

対応策

時期

影響度

リスクレベル

増減傾向

マテリアル

アラミド

⑤個別戦略リスク

・アラミド生産量回復の遅れ

A~C

計画の進捗についてKPIを設定のうえ、生産量回復プログロムを着実に実施し、長期安定的な生産・供給を図ります。日本からエンジニアリングチームを派遣し支援を行います。

短期

複合成形材料

⑤個別戦略リスク

・複合成形材料事業の米国での収益性改善の遅れ

A~B

各改善施策の計画的推進及び定期的なKPIモニタリングを継続し、拠点統廃合を含む追加施策のアクションプランを実施します。生産の自動化を進めるとともに日本からエンジニアリングチームを派遣し支援を行います。

短期

ヘルスケア

医薬品・在宅医療

 

⑤個別戦略リスク

 

・事業変革の遅れ

D

進捗のモニタリングを継続し、計画前提に変化が生じる場合に、必要に応じた追加施策を実施していきます。

また、医療機器については、調達コストの適正化などにより一層のコスト削減対策を進めます。

短~中期

・ヘルスケア既存品・新製品の販売目標未達

C~D

計画の進捗についてKPIを設定のうえ、遅延が発生した場合、適切なキャッチアップ策を実施していきます。

 

短期

*マテリアリティ A:気候変動の緩和と適応、B:サーキュラーエコノミーの実現、C:人と地域社会の安心・安全の確保、D:人々の健康で

快適な暮らしの実現、E:持続可能な経営基盤のさらなる強化

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において帝人グループが判断したものです。

(1)経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

2022年度における世界経済は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)による社会・経済活動の制限による影響から正常化に向けて持ち直しの動きが見られたものの、ロシアのウクライナ侵攻による地政学リスクの長期化の懸念や原燃料価格の高騰、サプライチェーンの停滞、労働力不足、インフレの加速等によるグローバル経済の後退懸念など、厳しい外部環境が継続し、先行きの不透明感が増大しました。

 

帝人グループは、持続可能な社会の実現に貢献し、「未来の社会を支える会社」になるという長期ビジョンのもと、2020年度から3か年の中期経営計画期間を「成長基盤の確立期」と位置づけ、各施策を推進してまいりました。最終年度である当期においては、マテリアル事業領域ではオランダでパラアラミド繊維の生産能力増強の設備投資を進めたほか、2021年度に立ち上げた自動車向け複合成形材料の北米テキサス新工場や北米炭素繊維新工場の安定運転と稼働率向上を推進しました。また、ヘルスケア事業領域では2021年度に武田薬品工業(株)から販売権を取得した糖尿病治療剤の販売の維持拡大を図りました。しかしながら、外部環境激変の中、マテリアル事業領域での大幅な収益性悪化などにより、中期経営計画2020-2022で掲げた財務目標値はすべて未達となりました。このような状況を受け、帝人グループは2023年2月に「帝人グループ 収益性改善に向けた改革」を公表し、将来の成長回帰に向けて、収益性改善を最優先課題として注力することを宣言しました。このような状況のもと、帝人グループの当連結会計年度の経営成績及び財政状態は以下のとおりとなりました。

 

1)経営成績

帝人グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高1兆188億円(前期対比10.0%増)、営業利益129億円(同70.9%減)、経常利益91億円(同81.7%減)、親会社株主に帰属する当期純損失177億円(前期 親会社株主に帰属する当期純利益232億円)となりました。

                                           (単位:億円)

 

156期

(2022年3月期)

157期

(2023年3月期)

増減額

増減率

売上高

9,261

10,188

927

10.0%

営業利益

442

129

△313

△70.9%

経常利益

497

91

△406

△81.7%

親会社株主に帰属する

当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失(△)

232

△177

△409

-

 

 

 

報告セグメントごとの経営成績の概況は次のとおりです。                 (単位:億円)

 

156期

(2022年3月期)

157期

(2023年3月期)

増減額

増減率

マテリアル

3,851

4,560

709

18.4%

ヘルスケア

1,751

1,524

△227

△13.0%

繊維・製品

2,825

3,218

393

13.9%

IT

538

580

43

7.9%

その他

296

305

9

3.1%

合計

9,261

10,188

927

10.0%

マテリアル

△57

△204

△147

-

ヘルスケア

433

235

△198

△45.7%

繊維・製品

56

100

43

76.8%

IT

97

81

△16

△16.6%

その他

△23

△24

△1

-

消去又は全社

△64

△59

5

-

合計

442

129

△313

△70.9%

 

マテリアル事業領域

:[売上高 4,560億円(前期比18.4%増)、営業損失 204億円(前期 営業損失 57億円)]

売上高は4,560億円と前期比709億円の増収、営業損失は204億円と前期比147億円の減益となりました。

 

ヘルスケア事業領域

:[売上高 1,524億円(前期比13.0%減)、営業利益 235億円(同45.7%減)]

売上高は1,524億円と前期比227億円の減収、営業利益は235億円と前期比198億円の減益となりました。

 

繊維・製品事業

:[売上高 3,218億円(前期比13.9%増)、営業利益 100億円(同76.8%増)]

売上高は3,218億円と前期比393億円の増収、営業利益は100億円と前期比43億円の増益となりました。

 

IT事業

:[売上高 580億円(前期比7.9%増)、営業利益 81億円(同16.6%減)]

売上高は580億円と前期比43億円の増収、営業利益は81億円と前期比16億円の減益となりました。

 

その他

:[売上高 305億円(前期比3.1%増)、営業損失 24億円(前期 営業損失 23億円)]

売上高は305億円と前期比9億円の増収、営業損失は24億円と前期比1億円の減益となりました。

 

2)財政状態

 

         0102010_005.png

当期末の総資産は、前期末に比べて349億円増加し、12,424億円となりました。流動資産は、現金及び預金や売掛債権、棚卸資産、その他流動資産等の増減により、前期末に比べて413億円増加しました。固定資産は、償却を上回る設備投資により有形固定資産が323億円増加した一方で、主にTeijin Automotive Technologies NA Holdings Corp.への出資に伴い計上したのれんを全額減損したことによりのれんが159億円減少したことや、主に武田薬品工業(株)からの2型糖尿病治療剤の販売権の償却により販売権が149億円減少しており、前期末に比べて65億円減少しました。

負債は、前期末に比べて486億円増加し、7,913億円となりました。主に資金需要の増加により有利子負債が443億円増加しました。

純資産は、前期末に比べて137億円減少し、4,511億円となりました。主要通貨に対する円安の進行による為替換算調整勘定の増加がある一方、主に親会社株主に帰属する当期純損失177億円の計上により減少しました。

これらの結果、D/Eレシオは1.2倍、自己資本比率は34.2%となりました。(前期末 D/Eレシオ1.1倍、自己資本比率36.4%)

なお、当期末のBS換算レートは、134円/米ドル、146円/ユーロ、1.09米ドル/ユーロ(前期末122円/米ドル、137円/ユーロ、1.12米ドル/ユーロ)となっています。

 

② キャッシュ・フローの状況

0102010_006.png

 

当期の営業活動によるキャッシュ・フローは、運転資本の増加による支出等があった一方、非資金性費用を除いた利益により、合計で551億円の収入(前期は897億円の収入)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券及び有形固定資産の売却による収入があった一方、アラミド事業と複合成形材料事業の生産能力増強を目的とした設備投資の実施等により、524億円の支出(前期は1,984億円の支出)となりました。

この結果、営業活動に投資活動を加えたフリー・キャッシュ・フローは27億円の収入(前期は1,087億円の支出)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、配当の支払があった一方、主に短期・長期借入金の借入による収入により、72億円の収入(前期は711億円の収入)となりました。

これらの結果、現金及び現金同等物に係る換算差額等も加え、当期における最終的な現金及び現金同等物の増加額は96億円となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

帝人グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その形態、単位等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多いため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。

このため生産、受注及び販売の状況については、「① 財政状態及び経営成績の状況」における各報告セグメントの経営成績に関連付けて示しています。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容等

経営者の視点による帝人グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

帝人グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。その作成においては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性の存在により、これらの見積りと異なる場合があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

また、帝人グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載していますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えています。

1) 貸倒引当金の計上基準

帝人グループでは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を繰入計上しています。将来、顧客の財務状況等が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があります。

2) 棚卸資産の評価基準

帝人グループの販売する製品の価格は、市場相場変動の影響を強く受ける傾向にあるので、その評価基準として主に原価法(貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定しています。)を採用しています。

3) 投資有価証券の減損処理

帝人グループは、金融機関や、製造・販売等に係る取引会社及び関係会社の株式を保有しています。これらの株式は、株式市場の価格変動リスクや、経営状態・財務状況の悪化による価値下落リスクを負っているため、合理的な基準に基づき、投資有価証券の減損処理を行っています。

4) のれんを含む固定資産の評価

帝人グループは、のれんを含む固定資産について、「固定資産の減損に係る会計基準」、IFRS及び米国会計基準に基づき、減損処理の要否を検討しています。事業損益見込みの悪化や事業撤収の決定等があった場合には、将来キャッシュ・フローや回収可能価額を合理的に見積り、減損損失を計上しています。

5) 繰延税金資産の回収可能性

帝人グループは、繰延税金資産の回収可能性の評価に際し、将来の課税所得を合理的に見積っています。繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するので、課税所得の見積額が減少した場合は繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 

1) 経営成績等

a) 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

帝人グループの当期の経営成績は、売上高が前期対比で10.0%増の1兆188億円となり、営業利益は同70.9%減の129億円となりました。経常利益は前期対比81.7%減の91億円、減損損失の計上や税効果が認識できない海外子会社の赤字幅拡大等に伴う税負担率の上昇により、親会社株主に帰属する当期純損失は177億円(前期は232億円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。営業利益に関して、マテリアル事業領域では、原燃料価格高騰を販売価格改定でオフセットしたものの、米欧拠点での生産トラブルや労働力不足、中国の経済減速等の影響により減益となりました。ヘルスケア事業領域においても、痛風・高尿酸血症治療剤「フェブリク」の後発品参入による販売数量の減少や、薬価改定影響等により減益となりました。繊維・製品事業は、販売が堅調に推移し増益となりましたが、IT事業は、電子コミックサービスにおける広告費増等により減益となりました。

その結果、収益性を示すROEは中期経営計画最終年度(2022年度)目標(10%以上)を下回る△4.1%、営業利益ROICについても目標(8%以上)を下回る1.6%となり、キャッシュ創出力を示すEBITDAについても目標(1,500億円)を下回る878億円となりました。

 

なお、当連結会計年度より、帝人ナカシマメディカル(株)及び帝人メディカルテクノロジー(株)を中心に展開している埋込型医療機器事業については、全社的・長期的視点で育成・強化を図る新規事業と位置づけ、「ヘルスケア」セグメントから「その他」セグメントへ変更しています。前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で実施しています。

 

セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析は次のとおりです。

 

マテリアル事業領域

:[売上高 4,560億円(前期比 18.4%増)、営業損失 204億円(前期 営業損失57億円)、EBITDA 165億円(同 33.9%減)]

原燃料価格高騰を販売価格改定でオフセットし、また為替影響による収益押し上げ効果もあったものの、米国拠点での設備故障や欧州拠点での工場火災による一時的な生産への影響、米欧での慢性的な労働力不足による生産性悪化や、中国でのロックダウンとその後の経済減速による工場稼働率の低下等が利益に影響しました。

売上高は4,560億円と前期対比709億円の増収(18.4%増)、営業損失は204億円と前期対比147億円の損失の増加となりました。EBITDAは前期対比85億円減の165億円となり、営業利益ROICは△5%となりました。

 

アラミド事業分野では、主力のパラアラミド繊維「トワロン」において、旺盛な需要が継続しましたが、第3四半期に発生した原料工場の火災による生産ラインの休止及び労働力不足に伴う生産性悪化等により販売量が減少しました。また、欧州の天然ガス価格高騰を背景とした燃料コストの上昇を受けて、販売価格の改定を進めましたが、採算性は悪化しました。なお為替影響による収益押し上げ効果は一定程度ありました。結果、前期対比増収・減益となりました。

 

樹脂事業分野では、主力のポリカーボネート樹脂において、中国におけるCOVID-19の影響による顧客での稼働減少及び中国を含む世界経済減速の影響を受けて、販売量が減少しました。結果、前期対比減収・減益となりました。

 

炭素繊維事業分野では、用途全般において炭素繊維「テナックス」の需要が堅調に推移する中、航空機向けの販売量が増加したことにより、販売構成が改善しました。また、主原料の価格高騰を受けて、販売価格の改定を進めました。結果、前期対比増収・増益となりました。

 

電池部材事業分野では、前期に引き続き、リチウムイオンバッテリー用セパレータ「リエルソート」がスマートフォン向けの販売量を伸ばしました。結果、前期対比増収・増益となりました。

 

複合成形材料事業分野では、Teijin Automotive Technologies*(米)において、主要顧客であるOEMで半導体などの部品不足が改善したことに加え、新大型プログラムの販売が本格化したことで、販売量が増加しました。また、原材料価格の高騰に対応し、販売価格改定交渉を進め、複数のOEMとの価格改定を実現しました。一方で、米国の一部工場で発生した成形工程の設備故障により、一時的な生産性悪化や追加費用が発生したほか、米国の労働市場参加率は徐々に改善傾向にあるものの、正常化には至らず労働需給逼迫による労働力不足が継続しました。結果、前期対比増収・減益となりました。

   * 自動車向け複合成形材料事業のグローバル事業ブランド

 

マテリアル事業領域のEBITDAの増減分析(前年対比)は以下のとおりです。

0102010_007.png

 

ヘルスケア事業領域

: [売上高 1,524億円(前期比 13.0%減)、営業利益 235億円(同 45.7%減)、EBITDA 496億円(同 28.7%減)]

医薬品「ソマチュリン*1」や「ゼオマイン*2」は順調に販売量を拡大し、在宅医療機器のレンタルは堅調に推移しました。一方で、医薬品「フェブリク」は、後発品参入により販売量が減少し収益に影響しました。

売上高は1,524億円と前期対比227億円の減収(13.0%減)、営業利益は235億円と前期対比198億円の減益(45.7%減)となりました。EBITDAは前期対比200億円減の496億円となり、営業利益ROICは13%となりました。

 

医薬品分野では、「フェブリク」の後発品が2022年6月より参入したことにより、販売量が減少しました。さらに、長期収載品を中心とした2022年4月の薬価改定が収益に影響しました。一方で、先端巨大症・下垂体性巨人症/甲状腺刺激ホルモン産生下垂体腫瘍/膵・消化管神経内分泌腫瘍治療剤「ソマチュリン*1」や上下肢痙縮治療剤「ゼオマイン*2」が順調に販売量を拡大しました。また2023月1月には、骨粗鬆症治療剤「オスタバロ1.5mg」を上市しました。さらに2023年3月に腎疾患を対象とした自社創製低分子化合物について、Novartis AGと独占的ライセンス契約を締結し、契約一時金として30百万米ドルを取得しました。

*1 ソマチュリン®/Somatuline®は、Ipsen Pharma(仏)の登録商標です。

*2 ゼオマイン®/Xeomin®は、Merz Pharma GmbH & Co, KGaA(独)の登録商標です。

 

在宅医療分野では、在宅酸素療法(HOT)市場において、医療機関におけるCOVID-19向け病床確保のための入院抑制・在宅療養へのシフトが継続したものの、COVID-19による酸素濃縮器の導入は落ち着き、レンタル台数は前期並みの水準となりました。また、在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)市場では、COVID-19 第8波等の影響により検査数の回復はやや鈍化したものの、レンタル台数の増加が継続しました(前期末対比約5%増)。

 

ヘルスケア事業領域のEBITDAの増減分析(前年対比)は以下のとおりです。

0102010_008.png

 

繊維・製品事業

:[売上高 3,218億円(前期比 13.9%増)、営業利益 100億円(同 76.8%増)、EBITDA 169億円(同 39.4%増)]

売上高は3,218億円と前期対比393億円の増収(13.9%増)、営業利益は100億円と前期対比43億円の増益(76.8%増)となりました。EBITDAは前期対比48億円増の169億円となり、営業利益ROICは7%となりました。

衣料繊維は、欧米や中国向けのテキスタイル・衣料品の販売が好調に推移しました。また、行動制限の緩和により国内でも衣料品の販売が回復傾向となりました。産業資材では、自動車関連部材、人工皮革、水処理フィルター向けのポリエステル短繊維の販売が堅調に推移しました。原燃料価格や物流費の高騰、円安影響による仕入れコストの上昇が業績に影響しましたが、繊維原料・テキスタイルの販売価格改定を進めました。

 

IT事業

:[売上高 580億円(前期比 7.9%増)、営業利益 81億円(同 16.6%減)、EBITDA 88億円(同 18.6%減)]

売上高は580億円と前期対比43億円の増収(7.9%増)、営業利益は81億円と前期対比16億円の減益(16.6%減)となりました。EBITDAは前期対比20億円減の88億円となり、営業利益ROICは53%となりました。

ネットビジネス分野では、電子コミックサービスにおいて広告宣伝活動の強化を継続した結果、販売は好調に推移しました。ITサービス分野では、ヘルスケア事業にCOVID-19の影響が残りましたが、概ね堅調に推移しました。

 

その他

: [売上高 305億円(前期比 3.1%増)、営業損失 24億円(前期 営業損失23億円)]

売上高は305億円と前期対比9億円の増収(3.1%増)、営業損失は24億円と前期対比1億円の損失の増加となりました。

人工関節・吸収性骨接合材等の埋込型医療機器事業は、2022年2月のKiSCO(株)からの外傷・脊椎事業買収と人工関節の販売好調により、前期対比増収となりました。

再生医療事業の(株)ジャパン・ティッシュエンジニアリングにおいては、再生医療受託事業の売上が拡大した一方、再生医療製品事業と研究開発支援事業の売上が減少し、前期対比減収となりました。なお、2023年3月に、白斑の治療を目的とする新製品として、メラノサイト含有自家培養表皮「ジャスミン」の製造販売承認を取得しました。

 

b) 財政状態及びキャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の財政状態、キャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 2)財政状態、② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

(帝人グループの資本の財源及び資金の流動性について)

帝人グループの資金需要の主なものは、製品製造のための原材料等の購入、製造費、販売費やサービス提供費用等の運転資金需要に加え、設備投資や研究開発活動費等の投資があります。これらに必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用、金融機関からの借入及び社債発行等により資金調達を行っているほか、複数の金融機関とのコミットメントライン契約や当座貸越枠を含む十分な借入枠を有しています。このように、帝人グループの事業運営に必要な運転資金や投資資金の調達に関しては問題なく実施可能と認識しており、高水準で維持している現預金も含め、緊急時の流動性を確保しています。

また、帝人グループではグループ内余剰資金を活用するため、日米欧中の各拠点においてキャッシュ・マネジメント・システムを導入し、資金効率の向上に努めています。資金調達にあたっては、D/Eレシオ0.9を目安に財務体質の健全性を維持しながら、資金需要の見通しや金融情勢に応じて最適な手段を選択しています。なお、資金調達コストの低減に努める一方、設備投資に対応する借入の大部分については長期調達するとともに、過度に金利変動リスクに晒されないよう金利スワップ等の手段を活用し、固定化しています。

 

2) 経営成績に重要な影響を与える要因

経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

3) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

2020年2月に公表した中期経営計画2020-2022『ALWAYS EVOLVING』では、前中期経営計画に引き続き、投資効率を測るための指標としてROEと営業利益ROICを重視するとともに、効率だけでは無く稼ぐ力を測るための指標としてEBITDAも重視してまいりました。中期経営計画においては、最終年度である2022年度でROEは10%以上、営業利益ROICは8%以上、またEBITDAは1,500億円という目標を掲げていました。未来の社会において重要な製品・サービスとなる事業分野、未来のキャッシュの創出源となる事業に育成・拡大させていく事業分野を「将来の収益源育成:Strategic Focus」、既にキャッシュを創出しており、さらに拡大させていく事業分野を 「利益ある成長:Profitable Growth」とし、ポートフォリオの変革としてStrategic Focus分野への積極投資を進めました。

 

しかしながら最終年度となる当期においては、ROEは△4.1%、営業利益ROICは1.6%、EBITDAは878億円と中期経営計画で掲げていた目標を全て下回る水準となりました。EBITDAの中期経営計画目標未達の主な要因として、自動車・航空機向け用途を重点市場とするマテリアル事業領域ではCOVID-19による世界経済の混乱により、航空機向けの炭素繊維需要が影響を受けたことに加え、複合成形材料事業における労働需給逼迫による労働力不足に伴う収益性改善遅れや設備故障による一時的な生産性悪化等、またアラミド事業における欧州の天然ガス価格高騰によるコスト増、さらに工場停電や工場火災等による販売可能在庫不足等の影響を大きく受けました。またヘルスケア事業領域では、武田薬品工業(株)から販売承継した糖尿病治療薬の販売が大きく貢献する一方で、M&Aの実施を含む新事業の収益化遅れ等の影響がありました。このような状況を背景とし、当社経営に対する市場評価の一つであるPBR(Price Book-value Ratio: 株価純資産倍率)が1倍割れの状況にあります。

 

また、各種指標の推移は以下のとおりです。

 

第153期

(2019年3月期)

第154期

(2020年3月期)

第155期

(2021年3月期)

第156期

(2022年3月期)

第157期

(2023年3月期)

ROE(%)

11.2

6.3

△1.7

5.5

△4.1

営業利益ROIC(%)

9.3

8.7

8.6

5.5

1.6

EBITDA(億円)

1,076

1,072

1,068

1,130

878

(注)各指標はいずれも当社連結ベースの財務数値を用いて算出しています。

・ROE:親会社株主に帰属する当期純利益/期首・期末平均自己資本

・営業利益ROIC:営業利益/期首・期末平均投下資本

※投下資本・・・純資産+有利子負債-現金及び預金

・EBITDA:営業利益+減価償却費(のれんを含む)

 

2023年度は、2023年2月に公表した『帝人グループ 収益性改善に向けた改革』のとおり、将来の成長回帰に向けて、収益性改善を最優先課題として取り組んでまいります。経営判断・実行の迅速化を促すために変革した新経営体制のもと、課題3事業として掲げた複合成形材料、アラミド、ヘルスケアを中心に収益性改善に向けた取り組みを進め、2024年度に、資本効率も意識した事業ポートフォリオ再構築の検討を踏まえた新中期経営計画の公表を予定しています。2023年度の経営指標の見通しは、ROE3%、営業利益ROIC4%としており、いずれも2022年度を上回る見込みです。なお、2023年度は、全社として収益性改善に注力する方針のもと、より営業利益向上の意識を高めるために、償却費増加影響を受けないEBITDAから、営業利益の目標値を重視していきます。『帝人グループ 収益性改善に向けた改革』を着実に実行することで、PBRの改善も図っていきます。

 

 

セグメント別の営業利益ROICの見通しは以下のとおりです。

 

営業利益ROIC(2023年度見通し:2023年5月11日公表)

 

2022年度

2023年度

見通し

(対2022年度)

マテリアル

△5%

 3%

+8%

ヘルスケア

13%

10%

-3%

繊維・製品

7%

 7%

-0%

IT

53%

66%

+14%

その他

-

-

-

合計

1.6%

4%

+3%

 

 

また、中期経営計画2020-2022では、持続的な成長基盤の確立やESG観点を踏まえ、役員の業績連動報酬の評価指標の一部として、ポートフォリオ変革の達成度(Stragegic Focus分野でのEBITDA割合)及び女性役員と非日本人役員の人数目標といった非財務KPIを設定し、各種施策の積極的な推進を図ってまいりましたが、いずれも目標を下回る水準となりました。

ポートフォリオ変革の達成度については、2022年度時点でEBITDAに占めるStrategic Focus分野の割合を15%とする目標値を掲げましたが、マテリアル事業におけるStrategic Focus分野である航空機向けの炭素繊維需要が影響を受けたこと、複合成形材料事業における収益性の悪化、M&Aの実施を含むヘルスケア新事業における収益化遅れを背景として未達となりました。女性役員及び非日本人役員の人数目標については、2023年4月時点でいずれも6名という人数目標を掲げていましたが、「帝人グループ 収益性改善に向けた改革」における経営体制の変革により、役員数を半減したことも要因となり、人数目標が未達となりました。

2023年度は、自社グループCO2排出量、全労働災害度数率、Diversity & Inclusion、従業員満足度を役員の業績連動報酬の非財務KPIとして設定し、サステナビリティの推進を動機付けています。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において経営上の重要な契約等の決定または締結等はありません

6【研究開発活動】

(1) 研究開発活動

帝人グループは、人を中心に考え、Quality of Lifeを向上させる企業理念のもと、「たゆまぬ変革と挑戦」によって新しい価値を創造し、持続可能な社会の実現に向けてソリューションを提供することで「未来の社会を支える会社」になることを目指しています。「気候変動の緩和と適応」「サーキュラーエコノミーの実現」「人と地域社会の安心・安全の確保」「人々の健康で快適な暮らしの実現」を重要社会課題として設定し、環境貢献に資する自動車・航空機、エネルギー領域におけるソリューション提供を通して「地球環境を守る会社」を、また、希少疾患・難病などのケアが必要な未充足ニーズが高い疾病領域を中心としたソリューション提供を通して「より支えを必要とする患者、家族、地域社会の課題を解決する会社」を目指します。また、事業活動に伴う環境、社会への負の影響を最小限とする取り組みも続けています。

 

イノベーション創出に向け、研究開発においては、マテリアル、ヘルスケア、繊維・製品及びIT事業を併せ持つ帝人グループの特徴を生かした技術の連携・活用と融合・複合化により、グループとしての総合力・機動力を発揮することを推進しています。加えて、デジタルトランスフォーメーション(DX)についても  IoTモニタリング技術、機械学習やAI技術、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)による研究開発力の強化を図ると同時に、スマートプラントの推進などによる製造現場の生産性向上など、多様な事業、分野において積極的に取り組んでいます。さらに、専門領域でのビッグデータやデジタル技術利活用についてアカデミアとの共同研究や企業連携を進めることと並行して、それらの成果に基づくマテリアル領域・ヘルスケア領域・IT領域での新たなサービスやビジネスの創出を目指してDX推進部を設置し、AIやIT等の最先端技術の獲得と活用を進めています。

 

研究開発体制については、国内12カ所、海外13カ所の拠点からなるグローバルなネットワークを有しており、グループ各社の連携を強化して組織を活性化するとともに、本年4月からは、将来投資の領域となる新規事業関連、事業間の協創によるイノベーションの創出を全社横断的に実施するために、各事業統轄下で育成してきた新事業及びコーポレートビジネスインキュベーション部門をコーポレート新事業本部として統合し、多様な人財が能力を発揮してイノベーション創出を加速する仕組みを取り入れています。

 

なお、当連結会計年度の研究開発費は319億円(前期比14億円減)でした。

報告セグメントごとの研究開発活動の概要は次のとおりです。

<マテリアル事業領域>

カーボンニュートラルの社会実現に資する技術開発・研究開発並びに社会実装に向けた検討を行っています。マテリアリティとして取り組む「気候変動の緩和と適応」「サーキュラーエコノミーの実現」については、マルチマテリアル化による製品の軽量化や長寿命化を図るとともに、ケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルの技術課題に取り組んでいます。環境対応分野に注力した開発拠点である欧州サステナブル先端技術開発センター(ESTIC)では、サーキュラーエコノミーやバイオマテリアルの開発、水素燃料電池に関する研究などをグローバルに推進しています。「人と地域社会の安心・安全の確保」に向けた取り組みとして、震災対策の一環で構造物の耐震補強材に用いられる高強度と柔軟性を兼ね備えたアラミド繊維や炭素繊維の開発を進めています。「人々の健康で快適な暮らしの実現」に向けた取り組みでは、ヘルスケア事業との融合領域として骨や再生医療などの分野での研究開発を推進しています。さらに、新事業創出に向けて、マテリアルズ・インフォマティクス(Materials Informatics/MI)を積極的に活用し、研究開発力の強化を図るとともに、帝人グループ内の連携のみならず社外を含めた幅広いネットワークを形成し、共同研究や情報交換・人財交流などを進めてイノベーションのスピードアップを図っています。

 

アラミド事業分野では、その高い機能性を活かして自動車、航空用コンテナ、消防服、ロープやケーブル補強など幅広い分野に使用されており、ライフプロテクション、プロテクティブアパレル、オートモーティブ、エアロスペース、インダストリーの5つを主力テーマとして、アラミド繊維製造技術及び新商品の開発に取り組んでいます。パラ系アラミド繊維である「トワロン」「テクノーラ」の海洋ロープ用途開発では、浮体式洋上風力発電の実証機として、英Marine Power System(MPS)社向け緊張係留式プラットフォーム(Tension Leg Platform : TLP)方式基礎の緊張係留部に、「トワロン」を使用した蘭FibreMax B.V.社の繊維ケーブルが世界初導入されました。また、メタ系アラミド繊維である「コーネックス」においては、その耐久性、難燃性を生かし、帝人グループがMultiyear Partnershipを締結したEnvision Racing Formula EにTeijinconex® neoを用いた軽量レーシングスーツが採用されています。なお、「トワロン」はグローバル市場における需要の拡大に対応するため、生産能力を25%以上増強する工事を完了いたしました。また、社会と企業の持続的な発展を目指すため、リサイクル技術開発により、2030年までにトワロンリサイクル率25%を目指し、長期的な取り組みを継続しています。

 

樹脂事業分野では、今後成長が見込まれる次世代情報端末、自動車先進化、カーボンニュートラルに対応した高機能材料の研究開発を行っています。ポリカーボネート樹脂では、高度な分子設計技術と重合制御技術を活かして、多様な屈折率要求に対応するスマートフォンカメラレンズ向け樹脂の開発を進めました。コンパウンド製品では、持続可能な社会の実現に向けてリサイクル技術を活用した環境対応材料の開発を進めています。加工製品では多様な用途に適用可能な成形加工用加飾シート、車載ディスプレイ大型化に対応する高機能シート・フィルムの開発を行っています。また、これらの樹脂材料開発全般において、マテリアルズ・インフォマティクスを活用することで研究の加速に役立っています。

 

炭素繊維事業分野では、高収益・高成長分野での事業拡大を進めるとともに、環境規制の高まりに伴う低燃費化の要請に応え、「軽くて強い」高機能素材の拡大を図っています。特に未来の最新鋭航空機に向けたソリューションとして、炭素繊維原糸から織物基材、熱可塑性及び熱硬化性樹脂を使用した中間材料や工法の開発に積極的に取り組んでいます。また、CO₂排出量削減に向けて製品のライフサイクル全体でのCO₂排出量を可視化するため、炭素繊維フィラメントの製造工程に加え、ショートファイバー、プリプレグ製品におけるCO₂排出量の算出方法を確立し、当社が展開する製品のライフサイクルアセスメント(LCA)への対応を可能としました。また、炭素繊維リサイクル技術の開発、社外との業務提携によるリサイクル炭素繊維を使用した製品の生産・供給体制の構築に向けた取り組みを進めており、幅広い潜在ニーズに応える製品の開発をより一層強化し、革新的な高性能材料とソリューションを提供していきます。

 

複合成形材料事業分野では、自動車分野におけるカーボンニュートラルの実現に貢献すべく、特に次世代自動車向けに、環境配慮型の材料やソリューション技術の開発に注力しています。素材から加工、成形、リサイクルに至るバリューチェーン全体のライフサイクルにおけるCO₂排出量削減に向けた技術開発や様々な取り組みの強化を続けており、自動車業界が求める軽量化、安全性と耐久性を実現しながら、素材及び製品の開発・設計の段階から環境負荷低減を組み込んでいくことができる世界にも類をみないTier1サプライヤーとしてのポジションの確立を進めています。また、積極的に自動化及びICT技術の導入を進めることで、製品の性能安定性と品質を向上させると同時に、生産効率やコスト効率を高め、顧客が要求する、より軽く、より複雑な形状の高外観製品を、安定して量産供給することを可能にしています。今後は過酷な環境でも長く使えるパーツや、リユース・リサイクルが可能なパーツの供給を通して、地域ごとに異なるサステナブル要求に応え、自動車の製造段階から使用段階の脱炭素化に貢献していきます。

 

新事業分野では、リチウムイオン二次電池(LIB)に使用される溶剤系コーティングセパレータの製造に関して、エンドユーザーや基材メーカーとの連携による次世代新製品の開発を進めるとともに、ライセンスビジネスの極大化を図っています。また、メンブレン事業については、液体フィルターの最先端用途向けに小孔径かつ高流量を実現する膜の開発を継続しています。

 

当セグメントに係る研究開発費は132億円です。

 

 

 

<ヘルスケア事業領域>

骨・関節、リハビリ・脳神経、呼吸器、代謝・循環器の領域を中心に、医薬品と在宅医療のシナジーも生かしながら、患者さんのQuality of Life 向上、新たな治療選択肢の提供につながる医薬品、医療機器、そして付加価値サービスを生み出すために、積極的な研究開発を行っています。また、デジタルヘルスケア、機能性食品素材などの分野で、未病~疾病~介護の全てに対応するヘルスケア事業基盤の構築、情報プラットフォームを活用した新規事業の創出に注力しています。今後は、当社の在宅医療分野で培ってきた事業基盤を活用し、より支えを必要とする患者、家族、地域社会の課題を解決する製品やサービスのパイプラインを提供していきます。

 

医薬品分野では、骨折の危険性の高い骨粗鬆症を効能・効果とした「オスタバロ皮下注カートリッジ 1.5mg」について2022年8月に製造販売承認を取得し、PHC株式会社と共同開発した専用の電動注入器「オスタバロインジェクター」とともに2023年1月に販売を開始しました。また、2023年2月に、アクセリード株式会社と創薬研究に関する合弁会社設立の基本合意書を締結しました。設立する合弁会社との提携によって、創薬研究の効率化と、より幅広い研究分野の強化を目指すとともに、国内外の創薬プレイヤーとの協働による創薬研究の強化を図ります。さらに、腎疾患を対象とした自社創製低分子化合物について、2023年3月に全世界における独占的開発・製造・販売権をNovartis AGに供与するライセンス契約を締結しました。なお、2022年4月に共同研究契約締結を公表したIktos社とは、医薬品の候補となる化合物の探索プロセスを人工知能(AI)で効率化する技術についての共同研究開発を継続しています。

 

在宅医療分野では、高流量でありながら小型軽量な酸素濃縮装置「ハイサンソi7」を2022年11月に上市しました。既に展開中の統合型濃縮器「ハイサンソi」、低濃度処方にお使いいただける「マイルドサンソ 40i」と同様の見やすい液晶表示や通信機能の搭載によって、よりきめ細やかにアドヒアランスの確認をサポートできる製品です。中国では中国国内販売向け医療機器の生産許可証を取得し、携帯型の酸素濃縮装置「silentair」の製品登録を完了、2022年12月に上市しました。引続き、周辺機器を含めた製品ラインナップの充実のため研究開発を進めます。なお、2020年4月に出資した米国ヘルスケアベンチャーキャピタルファンドであるMedtech Convergence Fundでは米国を中心に医療機器のスタートアップ企業に対する投資やインキュベーション活動を継続しており、これらを通じて画期的なヘルスケア領域の新規製品・サービスの獲得を目指します。

 

当セグメントに係る研究開発費は139億円です。

 

 

 

<繊維・製品事業>

繊維・製品事業では、環境戦略「THINK ECO®」を掲げ、環境配慮型のタイヤコードや、優れた生分解性によりマイクロプラスチックの削減に貢献するPLA(ポリ乳酸)樹脂を開発するなど、衣料繊維から産業資材までの幅広い用途で環境負荷低減に貢献するソリューションを提供しています。また、自社工場におけるポリエステル繊維製造時のCO2排出量算出システムを確立するとともに、新たな解重合触媒を使用することで、着色されたポリエステル繊維を石油由来の原料と同等品質に再生可能で、再生工程の環境負荷も低減する新リサイクル技術を開発しました。さらに、回収した廃棄衣料品からポリエステル素材を選別して効率的に再生原料を作り出すリサイクルシステム構築の取り組みを開始するなど、サーキュラーエコノミーの実現に向けた事業戦略をさらに強化しています。

 

当セグメントに係る研究開発費は19億円です。

 

 

 

 

<IT事業>

ネットビジネス分野において、電子コミック配信サービス「めちゃコミック」へのAIの適用について、またITサービス分野において、ヘルスケア領域等でのデータ活用・AI活用に加え、中小企業向けのクラウドサービス開発技術について、調査・研究を行いました。

 

当セグメントに係る研究開発費は1億円です。

 

上記セグメントに属さない研究開発活動として、再生医療事業領域において、当社の子会社である(株)ジャパン・ティッシュエンジニアリングが厚生労働省からメラノサイト含有自家培養表皮「ジャスミン」の製造販売承認を取得しました。また、大阪医科薬科大学、福井経編興業(株)との3者で共同開発を進めている心・血管修復パッチ「OFT-G1(仮称)」の臨床試験において、主要評価項目の達成を確認し、国内において製造承認申請しました。2023年度内での上市を目指すとともに、海外での事業化も検討していきます。

 

この他、グループ共通の基盤技術の向上やエンジニアリング分野に関する研究開発等を行っています。

これに係る研究開発費は28億円です。

 

(2) 知的財産活動

帝人グループでは、知的財産は企業の競争力の根源となる重要な経営資産であるとの理解の下、経営戦略の実現を目標とした知財活動に取り組んでいます。2020年度から2022年度にかけ、中期経営計画2020-2022に基づき、「ポートフォリオ変革」の実現に向けて、帝人グループの知財ポートフォリオ変革を目的とした知財活動を推進してきました。具体的には、将来の収益獲得のために育成するStrategic Focus分野及びさらなる成長を目指すProfitable Growth分野の両方において、経営戦略に沿った事業目標を達成するため、それぞれの事業分野において以下を基本方針とした知財・無形資産の創出を促進しました。

 

<Strategic Focus分野(将来の収益源育成)>

事業戦略に沿ってテーマ毎に、競争優位性を確保するための知財創出目標を策定し、目標の達成に向けて知的財産を、R&Dだけではなく、M&A等も含めて戦略的に創出・取得する。また、知財創出目標の策定に当たっては、各種産業財産権に限らず、著作権、営業秘密及び知財関係契約等を総合的に活用する「知財ミックス」を重視する。

 

<Profitable Growth分野(利益ある成長)>

事業競争優位性の維持・向上のため、既存の知財網を延命化する知的財産の創出・取得を継続する。また、基本技術に関する知的財産権の存続期間満了後も事業競争優位性を維持できるよう、独自の技術ノウハウについては営業秘密として厳格な管理を維持継続する。

 

このような各分野の基本方針に基づいた知財活動の推進により、帝人グループの知財ポートフォリオは経営戦略に沿う方向に着実に変化しました。例えば、帝人グループが保有する特許権がカバーする技術領域は、Profitable Growth分野を確実に維持しながら、Strategic Focus分野において拡大しました(図1)。また、帝人グループが保有する特許権の総価値(Patent Asset Index™)に占めるStrategic Focus分野の特許価値の割合も増加しました(図2)。今後は、「帝人グループ 収益性改善に向けた改革」に基づき、帝人グループの長期ビジョンを見据えて知財ポートフォリオの最適化を実施するとともに、「環境貢献に資する自動車・航空機、エネルギー分野」、及び「希少疾患・難病などの疾病領域」における競争優位性の確保に向けた知財投資活動を具体化し、推進していきます。

 

図1 帝人グループ特許ポートフォリオ

 

0102010_009.jpg

[図中の各点は特許を表し、各点間の距離は技術の類似性により決まる。テキストマイニング技術によって技術的に近い特許は集合を形成する。]

2014年からの対比において、2022年のマテリアルStrategic Focus領域では、軽量化技術として環境分野に寄与し得る自動車向け複合成形材料や航空機向け炭素繊維を中心に特許ポートフォリオが充実化(緑囲み)。ヘルスケアのStrategic Focus領域では、人工関節分野や吸収性インプラント関連の特許が充実化するとともに、再生医療分野への参入により当該分野の特許が加わっている(赤囲み)。一方、フィルム事業の2019年度の事業譲渡によりフィルム関連特許は大きく減少している。

 

図2 特許価値(Patent Asset Index™)のSF/PG割合

0102010_010.jpg

[Patent Asset Index™は各特許における各国特許庁審査官の特許引用度(技術的価値に相当)及び各国出願・権利化状況(市場的価値)から算出される。]

2014年からの対比において、2022年ではStrategic Focus領域の特許価値割合が全体の23%に増加。特にマテリアル事業のStrategic Focus分野である自動車向け複合成形材料や航空機向け炭素繊維関連への積極投資を反映し、当該分野の特許価値が増加。

 

以上のような経営戦略の実現に向けた知財活動に加え、知財情報解析の戦略的活用として、IPランドスケープを経営・事業の意思決定に役立てる取り組みを推進しています。具体的には、グローバル知財情報に学術論文情報や市場情報等の非知財情報をミックスした情報解析手法や、それらと特許価値評価を組み合わせた手法を独自に開発し、客観情報に基づいて①M&A・アライアンス候補先の探索・評価、②新規事業・新規R&Dテーマ探索、③保有知的財産権の価値評価と維持管理の適正化等の意思決定のために活用しています。また、長年の研究開発活動及び事業活動によって蓄積された重要技術ノウハウ等の営業秘密も知的財産権と同様に競争優位性の確保に資する重要な経営資産であるとの理解の下、グループ統一基準である「グループ営業秘密管理ガイドライン」等を策定し、これに基づいた厳格な営業秘密管理を継続しています。さらに、グループの新規事業の創出、既存事業の新規技術分野の開拓に多大な貢献をした製品に関する特許を対象とする「帝人発明賞」や、事業の発展維持に顕著な効果を持つ特許出願を対象とする「帝人特許実施賞」といった表彰制度を設け、業務の革新と創造に取り組む気風を醸成するとともに、社員のチャレンジへの意識高揚を後押ししています。