第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

帝人グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において帝人グループが判断したものです。

 

(1) 帝人グループが目指す姿

帝人グループは、2024年4月に、帝人グループのパーパス(存在意義)を明確化し、実行力を高めることを目的に、帝人グループのパーパス「Pioneering solutions together for a healthy planet」を策定しました。このパーパスは、帝人グループの過去や現在、未来について全社を挙げて議論を重ねた結果洗い出された、帝人グループが大切にしてきた価値観そのものであり、美しい地球に人々がいつまでも暮らし続けるためのソリューションの提供に挑戦する会社でありたいという社員の想いが強く反映されています。

 

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[パーパスに込めた想い]

Pioneering

帝人グループが100年以上の歴史の中で常にパイオニアであり続け、行動的で、先見性があり、イノベーションを生んできたことを誇りに思い、今後もそのアントレプレナーシップを引き継いでいきたいという想いが込められています。

Solutions

市場のニーズを満たす製品やサービスだけでなく、帝人の持つ科学の力を使って、社会課題に対する解決策(=ソリューション)も提供するという意気込みが表現されています。

Together

互いの違いや多様性を尊重して社員が力を合わせ、社外のパートナーと協力し、顧客を含む社外のさまざまなステークホルダーから共感され続ける存在でありたいという想いが込められています。

Healthy Planet

地球環境と、そこに住む人々やあらゆる生命に寄り添い、その健康や安全を願う想いが込められています。

 

帝人グループでは、このパーパスに併せて、3つのバリュー「①すべての挑戦をリスペクトします、②多様な仲間と専門性を活かして成長します、③地球とあらゆる生命に寄り添い、守ります」を設定しています。パーパスを軸に、バリューを重視することで、帝人グループの長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」(モビリティ、インフラ&インダストリアル領域:「地球の健康を優先し、環境を守り、循環型社会を支える会社」、ヘルスケア領域:「より支えを必要とする患者、家族、地域社会の課題を解決する会社」)を目指していきます。

 

 

(2) 中期経営計画

 当社は、2024年5月に「帝人グループ 中期経営計画2024-2025」を公表し、当社の対処すべき課題として、①収益性改善の完遂による基礎収益力の回復、②事業ポートフォリオ変革、③グローバル経営基盤の強化、の3つを掲げ、成長軌道に回帰するため、これらの課題に対して強い決意を持って取り組んでいます。

 

①収益性改善の完遂による基礎収益力の回復

 2024年度は、2023年度から進める収益性改善の完遂による基礎収益力の回復に向けて、以下の施策に重点的に取り組み、複合成形材料の北米事業における労働生産性の改善や価格改定効果の発現、アラミド事業における安定供給体制の確立やヘルスケア事業における固定費削減効果の前倒し発現、国内での「ネクストキャリア支援制度」(早期退職優遇制度)を含む固定費削減の実行等、一定の成果を上げました。

一方、欧州や中国を中心としたグローバルでの景気減速による需要低迷や市場競争環境の激化影響を受けたアラミド事業や炭素繊維事業に加え、薬価改定や後発品の浸透加速の影響を受けたヘルスケア事業は基礎収益力を十分に回復することができず、その収益力改善が2025年度の新たな課題として残りました。

 

 [主な施策と進捗状況]

2024-2025年度 主な施策

進捗状況

(複合成形材料事業)

■生産安定化を含む更なる改善

■労働生産性の改善や価格改定による収益性改善

■高採算新規プログラムの安定立上げに伴う販売増

■北米事業の業績大幅改善と事業売却の決定

(アラミド事業)

 ■確立した安定供給体制によりマーケットシェアを奪回

 ■設備・運転・保全面でのコーポレート支援継続

■安定供給体制の確立

 ■光ファイバー用途では競合影響を受けるも、タイヤ用途・防弾防護用途では高いシェアを維持

■サステナビリティ施策は順調に推進中

■コーポレート支援による設備管理体制の強化

(ヘルスケア事業)

 ■希少疾患3製品の国内早期上市に向けた準備

 ■固定費削減目標(2025年度:50億円)の確実な達成

■希少疾患3製品の開発は何れも着実に進捗

 ■在宅医療事業で培ったサービス基盤を活かした成長戦略「希少疾患治療+在宅医療」に最適な組織への転換を推進

 ■固定費削減は前倒しで進捗・発現しており、2025年度に効果がフル発現し、効果は目標の50億円を上回る見通し

(固定費削減)

 ■国内での「ネクストキャリア支援制度(早期退職優遇制度:150人)」を含む固定費削減目標(2025年度:40億円)の確実な達成

 ■国内での「ネクストキャリア支援制度」を実行。2025年度に削減効果がフル発現し、40億円の目標を達成する見通し

 

 [対処すべき課題]

収益性改善のための施策

(アラミド事業)

 ■欧州、中国を中心とする景気低迷や光ファイバー用途での厳しい競争環境により一時的に低迷。厳しい環境下でも十分に「稼ぐ」力を発揮できる最適生産体制への移行及びコスト削減

(炭素繊維事業)

■航空機用途以外での厳しい競争環境を前提とした最適生産体制への移行及びコスト削減

■収益性を軸としたビジネスの取捨選択を徹底

(ヘルスケア事業)

■KPI徹底による主要4製品(HOT、CPAP、糖尿病治療剤、「オスタバロ」)の収益極大化

■固定費削減目標(2025年度:50億円)の確実な達成と更なる削減の追求

 

②事業ポートフォリオ変革

 2026年度以降の次期中期経営計画期間において、変革後の事業ポートフォリオによる成長を実現していくために、今中期経営計画においては、不採算事業・非注力事業の戦略的オプションを実行し、運営する事業を絞るとともに、重要産業セクターとして設定したモビリティ、インフラ&インダストリアル、ヘルスケアの領域での成長に向けた取り組みを推進しています。具体的には、素材や製品単体を提供する事業から、繊維・製品事業が持つ先端素材開発から生産・販売まで垂直統合した強固なサプライチェーンや在宅医療事業で培ったサービス基盤を活かした顧客に寄り添った提供価値主体の事業へと変革を進めています。2024年度は、不採算事業や非注力事業の事業売却等を強力に推進しました。2024年10月には電子コミックを手掛けるインフォコム株式会社の売却を完了させるとともに、近年業績が低迷していた複合成形材料の北米事業に関しても、2025年3月にTeijin Automotive Technologies NA Holdings Corp.の株式譲渡契約を締結し、譲渡完了に向けた対応を進めています。加えて、コーポレート新事業でもビオリエ・ニュートラシューティカルビジネスからの撤退や帝人ナカシマメディカル株式会社の株式譲渡を決定し、事業の絞り込みを進めています。また、持続的に成長戦略を推進するためにはそれを支える既存事業の収益力の維持・拡大が必要であり、他社との提携を含む様々な選択肢を検討しています。

2025年度は、2026年度以降に大きく羽ばたくための準備期間として、絞り込んだ事業を中心に今後、どの様に成長していくかの具体的な方策を追求していきます。

 

 [対処すべき課題]

成長戦略の具現化のための施策

 ■既存事業における収益拡大を目指し、業界再編や川中・川下領域への展開を含む他社との提携を模索。また、スペシャリティ製品の競争優位性を確保しつつ、製品がコモディティ化しても勝てる事業にもなるべく事業構造の転換を模索

 ■マテリアル事業領域や繊維・製品事業を中心とした事業間シナジーを追求し、価値提供を軸とする事業展開を模索

■重要産業セクターにおけるM&Aの具体化に向けた検討

 

③グローバル経営基盤の強化

 事業ポートフォリオ変革に併せて、グローバル経営基盤を強化し、パーパスを軸とした実行力の向上を目指すため、今中期経営計画においては特に、ガバナンス面で「グローバル企業・多角化企業に最適化されたガバナンス体制の確立」、生産・製造技術面で「国内外の知見・技術の融合による設備・運転・保全レベルの進化」、人的資本の面で「戦略を実装する『適所』の確立と『適材』の確保」の課題に取り組んでいます。

2024年度は、パーパスやバリューをただの標語とせず、社員一人ひとりの具体的な行動に落とし込む「マイアクション」活動を推進しました。全社員へ浸透させることで、パーパスやバリューを確実に体現する体制や組織風土を醸成し、帝人グループならではの価値を社会に提供していきます。ガバナンス体制の強化策としては、意思決定の迅速化や取締役会における経営上の重要課題の議論の一層の充実化を目的に、監査等委員会設置会社への移行を決定しました。また、技術戦略管掌やデジタル・情報システム管掌を新規に設置するなど、経営課題に対応した管掌機能を再編することで、グローバル経営体制の強化を図っています。人的資本戦略としては、グローバルでの「適所適材」の実現のため、海外拠点への異動も可能とする社内公募制度「グローバルジョブポスティング制度」の導入や職務に基づく処遇を実現するため、経営管理職に対するジョブ型制度を導入するなど、計画した施策を着実に実行しました。そのほか、生産・製造技術の向上やサステナビリティへの取り組みも順調に進めております。

2025年度は、2024年度に実施した戦略的オプションや次期中期計画を踏まえた組織体制の最適化をより一層、進めていきます。

 

 [対処すべき課題]

グローバル経営基盤の強化に向けた施策

 ■2024年度に実施した戦略的オプションや、次期中期経営計画を踏まえた最適な組織体制の検討(グループ横断的な横串機能の最適化等)

 

 

 2024年度は複数の戦略的オプションの実行による事業ポートフォリオ変革や機関設計の変更決定などを力強く推し進め、将来の成長に向けた基盤を整備した1年となりました。2025年度も引き続き、マテリアル事業領域では、アラミド事業や炭素繊維事業などで最適生産体制の整備を進め、状況の変化にレジリエントに対応していくとともに、構造改革を進めます。また、ヘルスケア事業では、在宅医療事業の基盤を活かした成長戦略の中で、2023年11月に導入した希少疾患製品(ホルモン治療薬 3剤)を、早期に市場投入できるよう着実に準備を進めます。

 2025年度の業績予想は、事業利益350億円、税後事業利益ROIC3%、ROE3% (IFRSベース)となる見込みです。今中期経営計画の目標である2025年度ROE6%以上を下回りますが、2026年度から始まる次期中期経営計画期間における成長、発展のための1年と位置付け、成長基盤整備および施策の完遂を目指します。

また、2025年度は、次期中期経営計画を策定する年となります。基礎収益力の拡大を図るのは自明のこととして、先端素材など、スペシャリティ製品の「品質」を武器に勝負するメーカーから、顧客の課題を深く理解した価値やサービスの提供ができる、「素材やヘルスケア製品の枠を超えた課題解決のパートナー」にもなるべく成長を図り、どの様な製品でも「稼ぐ力」を備える会社へと移行するための計画を策定する予定です。また、我々帝人グループには変革に対するスピードが必要であることを認識しています。計画策定途上であっても我々の目的に合致した戦略については、慎重な判断のもとスピード感を持って実行していきます。

帝人グループは、投資家をはじめとするステークホルダーの期待に応えられる持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現し、早期にROE10%以上、PBR1倍以上の達成を目指していきます。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

帝人グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において帝人グループが判断したものです。

 

(1)重要課題に関する取り組み

帝人グループは、パーパス「Pioneering solutions together for a healthy planet」を軸に、地球環境とあらゆる生命が健康である「Healthy Planet」の実現を目指しています。社会・環境問題をはじめとするサステナビリティ(持続可能性)を巡る課題から自社にとっての機会とリスクを整理し、以下のとおり、重要社会課題と重要経営課題を特定して、取り組みを推進しています。

 

重要社会課題

1) 気候変動の緩和と適応

2) サーキュラーエコノミーの実現

3) 人と地球社会の安心・安全の確保

4) 人々の健康で快適な暮らしの実現

重要経営課題

5) 持続可能な経営基盤のさらなる強化

 

①ガバナンス

サステナビリティに関する活動の責任者として、人事・総務/サステナビリティ管掌を定め、取締役会の指示・監督のもと、事業と一体化したサステナビリティの取り組みを推進しています。サステナビリティに関する方針や重要課題は、取締役会における決議事項であり、それらの方針に沿ったサステナビリティの取り組みは、執行側で管理指標も設定して進め、その対応状況については、適宜、CEOまたは人事・総務/サステナビリティ管掌から取締役会に報告され議論を行っています。さらに、サステナビリティに関する課題に迅速かつ適確に対応するため、CEOの下に「サステナビリティ・コミティー」を新たに設置し、サステナビリティに関する方針の検討や推進に取り組んでいきます。サステナビリティ・コミティーを含むコーポレート・ガバナンス体制図は「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

②戦略

重要社会課題を事業の成長機会と捉え、社会が必要とする新たな価値を創造・提供していくことで、事業と社会の持続的な発展を目指します。

1) 気候変動の緩和と適応

「気候変動の緩和」では、高機能・高付加価値材料によるモビリティの軽量化や高耐久化を中心としたソリューションを提供します。「気候変動への適応」では、高機能素材によるインフラ補強材や、DXも駆使したヘルスケアサービス等を通し、自然災害発生時の被害低減と迅速な復旧に役立つソリューションの提供に取り組みます。また、事業活動に伴う地球環境への負荷低減として、脱石炭火力を図るとともに、省エネルギー・再生可能エネルギー化の推進やプロセスイノベーション等の技術革新にも取り組みます。

2) サーキュラーエコノミーの実現

高性能タイヤ補強材やコンベヤーベルト等、製品の長寿命化につながる「高耐久・高品質素材」や、ポリエステル繊維やアラミド繊維等の「リサイクル技術」の提供を通じて、バリューチェーン全体での資源循環性の向上に貢献します。また、事業活動に伴う資源循環の取り組みとして、リユース、リサイクル等による廃棄物の削減や、水使用量の少ない製品の拡大と事業活動における水の効率的利用に努めます。

3) 人と地域社会の安心・安全の確保

火災の高熱にも耐えるアラミド繊維、地震災害時の天井落下リスクを軽減する超軽量天井材等、高機能素材による防災ソリューションを提供します。また、ナノレベルの微細技術を活用したフィルターや環境エンジニアリング等により、地球環境汚染の防止・浄化に貢献します。事業活動における生態系の破壊や環境汚染につながる有害化学物質については、把握と管理を徹底し、事業活動に伴う有害化学物質排出量を計画的に削減します。

4) 人々の健康で快適な暮らしの実現

医薬品・医療機器・医療材料等を総合的に活用し、人々の健康的で快適な生活を支えるソリューションを提供します。特に、希少疾患・難病等疾患領域を中心に、より支えを必要とする患者、家族、地域社会の課題を解決するソリューションを提供していくことを目指します。また、安全と健康に配慮した職場環境を提供するため、労働災害の撲滅、長時間労働の是正、メンタルヘルスの向上に取り組みます。

 

また、重要経営課題については、「未来の社会を支える会社」になるという長期ビジョンの実現に向け、その礎となる経営基盤の強化に取り組んでいます。

 

5) 持続可能な経営基盤の強化

2025年6月25日をもって機関設計を変更(監査等委員会設置会社に移行)し、コーポレート・ガバナンス体制の更なる強化を図ると同時に、経営人財も内部育成に拘らず、積極的に外部人財を迎え入れることにより、高度な専門性と新しい視点・発想を得ることにより、より強固な経営基盤の構築に取り組んでいます。

詳細は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

③リスク管理

 当社では、サステナビリティのリスクを、気候変動に伴う物理リスクを含む風水害、地震などの大規模自然災害リスク、人権問題などの社会リスク、重大不祥事などのコンプライアンスリスク、気候変動の移行リスクを含む各種サステナビリティに関わる政策、法規制の当社への影響などと捉え、トータル・リスクマネジメント(TRM)の枠組みの中で他のリスクと合わせて統合的にリスクを管理しています。詳細は、「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

④指標と目標

環境関連課題に対して、次の表のとおり長期的なKPIを設定しています。当社が掲げる温室効果ガスの削減目標は「2℃を十分に下回る目標水準(Well-below 2℃)」であるとして、パリ協定の定める目標に科学的に整合する温室効果ガスの排出削減目標「Science Based Targets(SBT)」の認定を受けており、長期目標達成のロードマップを設定して、ネット・ゼロの実現に向けて取り組んでいます。なお、各KPIに対する実績については当社ウェブサイト(https://www.teijin.co.jp/csr/materiality/)をご参照ください。

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*1 CO2以外に、メタン、一酸化二窒素を含んでいます。

*2 当社製品使用による、サプライチェーン川下でのCO2削減効果を貢献量として算出しています。

*3 事業基盤を強化するKPIはいずれも2018年度を基準年とする目標値です。

*4 スコープ3排出量のうち、カテゴリー1(購入した製品・サービス)の商社ビジネスを除く範囲を対象としています。

 

 

(2)人的資本(人材の多様性を含む)に関する取り組み

帝人グループは、パーパス「Pioneering solutions together for a healthy planet」を軸に、長期ビジョン「未来の社会を支える会社」となることを目指しており、「帝人グループ 中期経営計画2024-2025」で示した経営戦略・事業戦略を「組織」と「人財」を通じて実現するため、次のとおり「人的資本の考え方」を策定しました。

 

<人的資本の考え方>

帝人グループは、「人財」を究極の経営資本と位置付けています。

・帝人グループに集う多様な社員が、それぞれの人間的成長や豊かな人生を実現できるよう、会社は魅力的な働く環境を整備し、社員の自律的なキャリア形成を支援します。

・事業の成長には、組織と人財の能力開発・発揮が不可欠であり、それに必要な「組織設計」「採用」「配置」「人財開発」「評価・処遇」等といった一連の人事施策を通じて、適所適材を実現します。

 

①ガバナンス

帝人グループは、全経営役員をメンバーとする「グループ人事/D&I会議」(2024年度は15回開催)にて、役員及びグローバルレベルで重要なポジションにおけるサクセッションプランの検討状況の共有や個別アサインメントの検討、経営者育成に向けた施策に関する議論を実施しています。

また、人的資本や多様性を含めた人事・人財育成に関わる事項のうち重要なものについては経営会議及び取締役会に報告されます。

これらの活動は、人事・総務/サステナビリティ管掌(CHRO)を責任者として、国内の人事部門の部長、事業本部の人事トップマネージャー等と連携して進めています。

 

②戦略(人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針)

経営戦略・事業戦略を実現するためには、組織及び人財の競争力を高める必要があります。そのため、人事戦略の大きな柱を、「戦略を実装する『適所』の確立と『適材』の確保」と「人財が活躍するための施策」としました。人事戦略の全体像は、次のとおりです。

 

[人事戦略の全体像]

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 ■「戦略を実装する『適所』の確立と『適材』の確保」とそれに関する取り組みの狙い

a.社内グローバル人財の最大限活用

b.人財ポートフォリオの最適化

c.社員のキャリア自律

 これらを達成するため、日本を含むグローバルにおいては適所適材を実現するための施策、日本国内においては、職務に基づく評価・処遇制度(いわゆるジョブ型の人事制度)への改定等を進めていきます。

 

■「人財が活躍するための施策」とそれに関する取り組みの狙い

d.多様な視点からのイノベーション促進

e.社員エンゲージメント向上

 帝人グループの多様な人財が、自らの能力やスキルを最大限に発揮し生き生きと活躍できる環境を作るため、多様性をより一層富ませるとともに、社員エンゲージメントの阻害要因を特定し、改善アクションを設定、かつそれを実行していくことで、社員エンゲージメントの向上を図っていきます。

 

グループ全体の経営戦略に基づく各事業戦略の実行に適した組織を設計し、それぞれのポジションの職務を定義し、事業戦略を実行する人財を適所適材で確保し、グローバルで職務に適した処遇を行っていくことで、戦略の実現及び事業競争力の強化を目指しています。併せて、帝人グループに集う多様な人財が、経験や価値観等からアイデアや考えを出し合い、時には衝突しながらも、それを乗り越えてより良いソリューションやイノベーションを創出していくとともに、多様な人財がエンゲージメント高く生き生きと活躍し、自分らしいキャリアを実現していくための施策を実行しています。また、社員のキャリア自律を促すこと、グローバル適所適材を推進することにより、事業戦略に貢献する人財ポートフォリオを構築し、企業価値向上を図っていきます。

 

上記を実現するために、2024年度は主に以下の取り組みを進めました。

1)日本を含むグローバルでの適所適材の推進

[推進策の全体像]

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a.戦略の実装に向けた組織設計

2024年度は、「帝人グループ 中期経営計画2024-2025」の事業ポートフォリオ変革に基づく事業構造改革を行い、事業戦略の早期実現に向けて事業ごとに最適な組織の在り方を検討してきました。2025年度以降は、事業ごとに設計した組織改変を着実に実施することに加え、海外を含めた帝人グループ全体で管理職以上のジョブグレードを整合させるための第一段階として、海外/国内の主要会社を対象にグローバルで共通のグレードを設定し、人財のモビリティの向上を目指します。

 

b.人財ポートフォリオの構築、最適化

事業戦略の早期実現に向けて、DX人財・グローバル人財・専門人財などの経営戦略・事業戦略の実現に必要なスキルや経験等を洗い出して整理し、各種スキルの強化・育成を進めています。

 

c.コアポストのサクセッションプランニングの遂行

役員のポストについては、各役員がサクセッションプランを策定した後、CEO及び人事・総務/サステナビリティ管掌との三者面談で確認したうえ、グループ人事/D&I会議にて議論をするというプロセスによって、サクセッションプランのアップデートを行い、そのギャップを埋めるための施策(採用、配置、人財開発)を実行しています。グループ人事/D&I会議の中で、役員ポジションを起点としたサクセッションプランにおけるコアポスト就任候補者の外部採用の可能性や、社内サクセッサーの戦略的配置についても議論し、ポジションに就任させるまでの育成を加速しています。部門長クラスについては、部門長本人がサクセッションプランを策定した後、各役員がアップデートさせ、人事・総務/サステナビリティ管掌と役員との事業別人事会議で議論を実施し、戦略的配置のほか、サクセッサー候補者の人財開発のための個別育成を実施します。2024年度はプランを着実に実行することで、ポストごとに設定している必要サクセッサー候補者数のカバー率(*)は2023年度74%から、2024年度は84%に向上しました。

* サクセッサーカバー率は、候補者数÷(ポスト数×各ポストに必要な候補者数(最大7名))で算出

 

d.グローバルジョブポスティングの拡充

社員がグローバルで自律的にキャリア形成できるよう、また、グローバルでの適所適材を推進する施策として、社内公募をグローバルに展開しています。2024年度は、日本とオランダの計4ポジションに対し、日本・ヨーロッパ・アメリカ・アジアから計6名の応募がありましたが、職務内容や期待役割、労働条件等とのマッチング不足から成立には至りませんでした。しかしながら、グローバルでの自律的なキャリア機会を社員に提供していくという会社の姿勢の明示に繋がりました。

また、日本では、1990年代から社内公募制度「ジョブチャレンジ制度」を実施しておりますが、2023年度より社内公募の活性化とともに社内のキャリア機会を知ってもらう取り組み「ジョブポスティングウィーク」(公募している部署の所属長がオンライン説明会などにより、職場や仕事の内容を紹介し、参加者と双方向のコミュニケーションをとることのできるイベント)を実施しています。

2024年度の募集件数は、日本とグローバル合計で105件となり、今後はグローバルでのジョブポスティングの一層の拡大を図っていきます。

 

2)日本における人事制度改革

[推進策の全体像]

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a.職務に基づく評価・処遇の実現

2023年4月に役員層について、ポジションにおける役割・責任と処遇の関連性を明確にしたジョブ型人事・評価を導入しました。次いで、2024年4月に部門長以上の管理職について、職務の大きさ(幅、難易度、責任の重さなど)に応じて処遇を決める処遇制度に移行しました。2024年度は、その対象を広げ、部長以下の管理職についても移行に向けた準備を進め、2025年4月より制度運用を開始します。

これらの制度改定により、ポジションの職務内容を明確化し、職務に応じた処遇を実現することで、優秀人財の採用力を強化し、また社内では、適所適材となる人財配置や、個別の人財開発を促進します。

 

b. タレントアクイジション戦略

戦略を実現し、事業競争力を高めるためには、専門性の高い人財を獲得していく必要があります。帝人・帝人ファーマの2024年度の入社者におけるキャリア採用の割合は59.8%でした。2025年度以降、採用方法の多様化を進め、事業のニーズに適した専門性の高い人財の確実な採用を図っていきます。

 

c.自律的なキャリア形成/成長支援

社員の自律的なキャリア形成を促すことは、会社と社員の健全な関係のベースとなるものであり、社員の社内・市場競争力を高めるための努力は、企業価値の向上に大きな貢献をするものであると考えています。

2025年度より、旧来の自己申告制度を改修し、今後のキャリア形成について本人・上司が話し合う場としてのキャリア面談制度を本格的に開始します。キャリア形成は自己責任ではあるものの、会社はキャリア形成をし易い環境を整えるなど、社員のキャリア自律を最大限にサポートする責任があります。2024年度は本格開始に先駆けて、「上司(面談者)向けキャリア面談の進め方研修」を開始し、2024年度内で128名の管理職の履修がありました。

また、前記「1) d. グローバルジョブポスティングの拡充」のジョブポスティングウィークでは、公募している部署の所属長が自身の部署と仕事の魅力をPRすることで、社内にどのようなキャリアの可能性があるのかを示しています。

このように、今後も社員の自律的なキャリア形成・成長支援を行っていきます。

 

 

 

 

3)人財が活躍するための施策

グローバルで帝人グループに集う多様な社員が、自らの能力やスキルを最大限に発揮し生き生きと働き活躍することが必要であり、社員が活躍できる環境を作るため、「DE&Iの推進」と「社員エンゲージメントの向上」を進めています。

 

a.DE&Iの推進

帝人グループは、多様な人財を活用することが創造性を高め、イノベーションを促進すると考え、2000年より女性の活躍の推進、外国籍の社員の採用などに積極的に取り組んできました。事業のグローバル化に伴い、日本を中心とした取り組みを世界に広げ、役員層の多様性推進のためのKPIを設定しています。役員候補のパイプライン形成、また部課長として活躍している女性を増やすため、事業本部ごとに女性部課長の比率目標を設定し、事業本部内での計画的な育成と登用を実施しています。また、女性が自分らしいリーダーシップを発揮できるよう、2024年度より企業横断クロスメンタリングを実施し、メンターからのアドバイスや示唆を受けて実際の業務の中で実行するというPDCAサイクルの中で、リーダーとしての成長を促しています。

帝人グループでは、毎年エンゲージメントサーベイを実施していますが、2023年度に実施したサーベイの結果からDE&Iの方針や考え方のグローバルでの浸透度に課題があることが分かり、2024年度は、下記「b.社員エンゲージメントの向上」に記載の通り、トップダウンとボトムアップ双方の取り組みを継続し、DE&Iの浸透と意識の向上を図っています。

障がい者活躍に関しては、特例子会社の帝人ソレイユで野菜・バラ・胡蝶蘭を中心とした農業事業と、オフィスサポート事業を実施し、障がい者一人ひとりの特性に応じた活躍の場を作っています。ハンディキャップがあってもそれぞれの持つ能力を最大限発揮することで、会社・事業に貢献するだけでなく、自らが経済社会を構成する労働者の一員であることに“やりがい”と“誇り”を感じられることを目指しています。特に農業事業においては売上増加及び営業利益黒字化を目標に販売拡大に取り組んでいます。なお、2025年3月時点での帝人・帝人ファーマ・帝人ヘルスケア・帝人ソレイユにおける障がい者の雇用率は2.86%で、法定雇用率である2.5%を上回っています。2021年度にはノウフク・アワード(*1)で特例子会社として初のチャレンジ賞を受賞、2023年度は「もにす認定」(*2)を受けました。

また、LGBTQ+当事者の活躍のため、2017年以降、①会社としての方針明示、②社員への啓発活動、③当事者に配慮した人事給与の制度改定、④当事者への支援の取り組みを実施してきました。①及び③は既に実施済であることから、②については、社員への関連映画や動画の展開、階層研修のテーマとして取り扱うなどの啓発活動に取り組み、④については当事者との個別相談などの支援を継続して実施しています。

上記のとおり、これまでは、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包摂性)を推進しておりましたが、社員の属性やニーズがさらに多様化している状況の中、今後は、一人ひとりがパフォーマンスを発揮できるよう、個々に合わせて支援内容を調整し、公平な土台をつくり上げる「エクイティ(公平性)」の施策も検討、実施しています。

   *1 障がい者をはじめとする多様な人々が農林水産業などの分野で活躍することを通じて持続可能な共生社会を生み出す農福連携(自然・農林水産業と人・福祉の連携)の取り組みを表彰する制度

   *2 障がい者の雇用の促進及び雇用の安定に関する取り組みの実施状況などが優良な事業主を、厚生労働大臣が認定する制度

 

[DE&I施策の全体像]

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b.社員エンゲージメントの向上

事業戦略の実現には、社員一人ひとりが会社の理念に共感し、自身の仕事にやりがいを持って意欲的に取り組むエンゲージメントの高い組織を築く必要があり、年に1回、エンゲージメントサーベイを実施しています。

特に、事業ポートフォリオ変革やグローバル経営基盤強化等に取り組んでいる中、帝人グループ全体で“One Teijin”としてシナジーを創出することが急務であると考え、地域や事業ごとの取り組みに加え、グループ全体の強みと機会を特定し、エンゲージメントの向上に向けた取り組みを推進しています。2024年度は、日本・海外のグループ社員約19,500人を対象として実施し、回答率は76%と前年比+5%増加、エンゲージメントスコアは64と前年比2スコア上昇しました。すべての質問、事業、地域において前年比でスコアが改善もしくは維持されており、全社的にエンゲージメントの向上が見られました。

2024年度以降は、エンゲージメントスコアのKPIを設定することで、役員自らがエンゲージメント向上へコミットし、改善へ向けた取り組みを責任を持ってリードする体制を整えています。また、部課単位でのエンゲージメントサーベイの結果は上司から所属する社員にも共有され、チーム全体で改善点を対話した上で、対策を決定・実行することで、社員一人ひとりがエンゲージメント向上に向けた取り組みを進めています。

グループ全体のエンゲージメントスコアは社内イントラネット上に公開し、“One Teijin”でエンゲージメントの高い組織を築いていけるよう情報提供を進めています。

また、サーベイを通じて、社員からは部門や事業を超えたコミュニケーション機会を増やしていくことに期待する声が多く寄せられました。コミュニケーションに関しては、グループ全体でのタウンホールの開催や、パーパスワークショップを実施することで、社員一人ひとりが考えや想いを共有する場を定期的に設けており、グループ全体でコミュニケーション機会の創出に努めています。今後も現場の社員から役員層まで、全階層を巻き込んだ取り組みを推進することで、エンゲージメントの高い競争力のある組織を目指していきます。

 

③ リスク管理

帝人グループでは「人財」を究極の経営資本と位置づけ、人財が帝人グループの競争力の源泉の一つであると認識しています。そのうえで、人的資本を巡るリスクについては、コンプライアンス、労働慣行、健康・安全、DE&I、流動性、社員エンゲージメント、人財育成などの多くの要素が複雑に絡み合い、企業価値に与える影響は重大かつ多岐にわたっていることから、各社・各所の人事部門による対応のほか、帝人グループ全体のリスクとして捉え、トータル・リスクマネジメント(TRM)体制のもとで対応すべきリスク領域として位置づけ管理しています。詳細は、「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

④ 指標及び目標

人事戦略の柱の一つである「人財が活躍するための施策」の状況を測るため、役員層・管理職層の多様性と社員エンゲージメントに関する指標を設定しています。計画的な育成と登用で役員層・管理職層の多様性を改善し、エンゲージメント改善アクションの設定と実行で社員エンゲージメントを向上させ、目標の達成を目指します。

なお、各KPIに対する実績については当社ウェブサイト(https://www.teijin.co.jp/csr/materiality/)にも掲載しております。

 

   [多様性に関するKPI]

多様性に関するKPI

2023年10月

2024年10月

2026年4月

2030年4月

実績

実績

マイルストーン

目標

役員*1

女性

12%

20%

20%

30%

外国籍

8%

8%

10%

30%

管理職*2

女性部課長

10%

11

12%

20

 

   [社員エンゲージメントに関するKPI]

社員エンゲージメントに

関するKPI

2023年9月

2024年9月

2026年4月*3

2030年4月*3

実績

実績

マイルストーン

目標

社員エンゲージメントスコア

62

64

64

68

*1 取締役、監査役(2025年6月以降は監査等委員である取締役)、グループ執行役員

*2 日本を含めたグローバルでラインポストに就く役職者

*3 前年9月実施分

 

(3) 知的財産に関する取り組み

帝人グループでは、知的財産は重要な無形の経営基盤の一つであるとの認識のもと、知的財産に関する基本方針を下記のとおり定め、事業戦略及び技術戦略と一体となって経営戦略に積極的に関与する知的財産戦略を遂行しています。また、中長期的な視点で各事業の知的財産戦略を策定し、これに基づいて知的財産を創造、保護及び活用することで、帝人グループの各事業がグローバル競争において優位に事業活動を展開できるようにしています。さらに、ここ数年で「知財インテリジェンス(意思決定に資する知財情報解析)」を帝人グループの最も重要な知財機能の一つとして強化したことによって、経営や事業における重要な意思決定にIPランドスケープを活用する取り組みが定着しています。

 

 [知的財産に関する基本方針]

(1)知的財産の創造

帝人グループは、グループ内外の研究開発等により創造された知的財産を、高い参入障壁となる「知的財産」および「知的財産権」として獲得且つ確立する。

(2)知的財産の保護

帝人グループは、事業戦略に基づいて知的財産を取得し、維持管理する。

(3)知的財産の活用

帝人グループは、知的財産の適正な評価に基づいて、事業戦略の一環として権利行使またはライセンスする。

(4)他者知的財産権の尊重

帝人グループは、自社事業の障害となる他者知的財産権に対しては、これを尊重しつつ必要な対応策を講じる。

(5)技術流出防止への対応

帝人グループは、技術流出を防止し、グローバルな技術競争力を維持する。

 

①ガバナンス

帝人グループの知財・無形資産に関するガバナンス体制としては、知的財産部は、経営戦略・事業戦略に対応した知財戦略に関する全社的な事項と各事業における知財に関連する事項を、事業本部等は、各部門の競争優位につながる事項を取締役会へそれぞれ報告することで、取締役会が、全社の知財・無形資産に関する戦略、投資活動を実効的に監督する体制を構築しています。本体制において、知的財産部は、海外グループ会社も含め各事業責任者と事業知財戦略会議を年2回の頻度で実施し、知財面からみた事業の強みと弱みの分析や、IPランドスケープを活用した競合比較、それに基づく課題と対策を議論することで、実効的な知財戦略の策定及び遂行をしています。さらに、知的財産部は帝人グループ全体の知財状況に加えて、事業知財戦略会議を通して集約された各事業の知財状況を、CEOが主催するグループ経営戦略会議で報告し指示を受けた事項に対応したうえで、取締役会へ報告し、監督を受けています。2024年度は、事業単位の知財戦略の報告に加え、全社の知財戦略についても経営層と知的財産部が議論を深めたうえ、今後目指すべき方向性を明確化するために、①帝人グループ各事業のプロダクトライフサイクル(PLC)の分析・評価及び各PLCにおいて採用するべき知財戦略、②地政学的評価を通した各事業環境状況、③知財価値創出力向上策、などについて取締役会に報告し、監督を受けました。

0102010_007.png

 

 

②戦略

1) 事業ポートフォリオ評価への知財情報活用

事業ポートフォリオの評価に際して、事業の属する技術分野における特許件数のCAGR(年平均成長率)と、事業の総特許価値(Patent Asset IndexTM)の情報を活用した、独自のプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)手法を用いることで、帝人グループ各事業の競争優位性や成長性、ライフサイクルの状況を知的財産の観点から客観的に可視化・評価し、その結果を事業ポートフォリオマネジメントに役立てる取り組みを実施しています。

 

0102010_008.png

使用ツール:PatentSight(LexisNexis社)

横軸:各事業が属する技術分野における自社の総特許価値(Patent Asset IndexTM(PAI))の割合(シェア)

縦軸:各事業が属する技術分野における生存特許件数のCAGR(年平均成長率)

バブルの大きさ:自社の各事業の総特許価値(PAI)

 

 

2) 経営陣・事業本部における知財情報活用に関する仕組み作り

経営や事業での重要な決定案件については、検討の初期段階からIPランドスケープによる客観分析を実施する仕組みを構築することで、知財情報を経営戦略や事業戦略に役立てる取り組みを実施しています。これにより、例えば投資判断時において、知財情報を意思決定プロセスに活用することで、その投資案件の合目的性をより客観的に判断できるようになります。

 

③リスク管理

第三者から知的財産権侵害の指摘を受け、製造販売の差止めや損害賠償等が生じた場合または帝人グループが保有する知的財産権が第三者によって不法に侵害された場合に、帝人グループの業績に影響が生じる可能性があります。また、帝人グループが営業秘密として管理する未公開の技術ノウハウ等が第三者によって不正に取得された場合に、帝人グループの競争優位性が損なわれる可能性があります。

このような知的財産に関するリスクについては、トータル・リスクマネジメント(TRM)体制においても全社共通のリスク分類に従って抽出・管理(詳細は「3 事業等のリスク」をご参照)すると同時に、次のような管理を行っています。

1)帝人グループに関連する事業分野において他社が保有する知的財産権を定常的に監視するとともに、帝人グループ知的財産権の侵害被疑品に対しては正当な権利主張を行っています。

2)営業秘密管理の帝人グループ統一基準である「グループ営業秘密管理ガイドライン」等に基づく管理と、定期的な管理状況の監査により、厳格な営業秘密の管理を行っています。

 

 

(4) 社会貢献活動

 帝人グループ社会貢献基本方針に則り、自然との調和を大切にし、地域コミュニティとともに発展するため、よき企業市民として事業特性や地域性を尊重した適切な社会貢献活動を推進しています。主な活動は以下の通りです。

[学術・教育]

・若き科学技術者の育成を目的とした「帝人奨学会久村奨学生制度」や、中国の南通地区の学生を支援する「南通帝人愛心慈善助学基金」などの奨学金制度を運用しています。

・「科学甲子園 全国大会」に協賛し、科学技術系人材の育成を支援しています。

・国内グループ社員から提供された、不要になった物品を換金して日本の絵本を購入し、海外の図書館等に寄贈する「ブック・ドリーム・プロジェクト」を2008年度から継続して行っています。

    [健康・スポーツ]

・「全国高校サッカー選手権大会」に協賛し、区大会で優勝し全国大会に出場する高校に帝人グループの人工皮革「コードレ」を使用したオリジナルサッカーボールを寄贈しています。

・東南アジア諸国におけるサッカークリニック開催などの活動を通じて、子供たちに夢を与えるとともに日本とアジアのサッカーの発展を支援しています。

    [環境保全活動]

・全国の小学生を対象に実施している環境教育「みどりの小道」環境プロジェクトに協賛し、小学生たちが日ごろから身近な地球環境について考えるきっかけを提供しています。

    [被災地支援]

・自然災害によって被災された方の支援や被災地復興に役立てていただくことを目的に寄付や製品の無償提供を行っております。また、「令和6年能登半島地震・豪雨災害」に対して被災地に対する復興支援を行いました。

 

 

 

3【事業等のリスク】

(1) トータル・リスクマネジメント(TRM)の基本原則

 リスクマネジメントは、コンプライアンスとともに、内部統制を支える要と位置づけ、帝人グループの経営全般をカバーする総合的な体制としてトータル・リスクマネジメント(TRM)体制を構築しています。

当社は、その株主価値を高め、さらに株主を始めとするステークホルダーが満足できる事業活動を継続する使命があり、その実現を脅かすあらゆるリスク(不確実性)に対処する必要があるとの認識のもと、グループ全体が晒されるかかるリスクを統合的かつ効率的に把握・評価・管理し、グループ経営に活かすための組織的・体系的アプローチを行うこととしています。

 当社取締役会は、帝人グループ全体のリスクマネジメントを監督し、経営戦略・経営計画策定、戦略的なアクション、個別投資プロジェクトの決定等に伴う「経営戦略リスク」と、会社に悪影響をもたらす様々な有害事象である「業務運営リスク」のアセスメントを、意思決定を行うに際しての重要な判断材料として位置付けています。

また、当社は、グループ会社とその役員に対し、上記の原則を充分理解し、会社活動を脅かすあらゆるリスクに対処するよう求めています。

 

上記の基本原則に則り、TRM推進のため、経営戦略リスクと業務運営リスクについて、以下の体制を整備しています。

[経営戦略リスク]

CEOが議長を務め、業務執行に関する重要事項を審議する「グループ経営戦略会議」において、取り組みの推進を行います。

当面の具体的なリスクとして、米国大統領交代に伴う通商政策の影響、欧州の炭素繊維規制のほかPFAS規制の動向など、個々の案件に関連付けた分析と議論を行っています。また、同意なき買収、個別事業ダイベストメントのグループ全体への影響、AI等のテクノロジーの進化による業界構造の変化、国際情勢・秩序の流動化によるグローバルな経済枠組みの変化なども念頭におき、経営戦略上のリスクに適切に対処していきます。

[業務運営リスク]

人事・総務/サステナビリティ管掌が担当するものとし、CEOの下に設置する「リスクマネジメント・コミティー」において、業務運営リスクマネジメントに関する方針の検討、この方針に基づく取り組みの推進・進捗管理を行います。リスクマネジメント・コミティーの委員長はCEOとし、その他の委員は、人事・総務/サステナビリティ管掌及びCEOが指名した者とします。

業務運営リスクの詳細については、下記「(2)2025年度TRM基本計画」をご参照ください。

 

 なお、以下の文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において帝人グループが判断したものです。当社グループは、下記リスクのほか、本有価証券報告書中の他の箇所に記載されているリスクに直面しておりますが、これらのリスクの影響により、実際の業績が、将来見通しに基づく記述が想定しているものとは異なってくる可能性があります。

 

(2) 2025年度TRM基本計画

 2025年度においては、取締役会の審議を経て、下記のとおり対応方針を設定しています。

■リスクマネジメント・コミティーは「発現すると経営への影響が大きい」業務運営リスクに対応する。

■各リスクの対策については、リスクマネジメントオーナー(担当役員)、リスクマネジメントオーナーをサポートする組織・会議体を明確化して、実効性の高い運用に取り組む。

■グループ重大リスクの中でもグループ最重要課題とする重大リスクAを特定して優先的な対策対象とする。

 

 2025年度は、上記方針に基づき、リスク領域を9領域(大規模自然災害、情報、地政学(経済安全保障)、品質、コンプライアンス、経営管理(人財)、安全、環境、社会)に整理し、各領域のリスクについて、①影響度、②発生確率、③発生時期から評価を行い、次の表の主要なリスクから重大リスクを特定し、リスクマネジメントオーナー(担当役員)を任命して、その責任と範囲を明確化したうえで、リスクの管理に取り組んでいます。リスクマネジメントの実効性を高めるため、重大リスクの中でも特に重点管理する重大リスクAを絞り込んでいます。

 

 

 

リスク

領域

主要リスク

リスク内容

対応方針

影響度

発生確率

発生時期

評価※

大規模自然災害

首都圏直下型地震

都内で最大規模の被害が想定される「都心南部直下地震」の発生

経営中枢機能BCPを中心とした計画の見直し及び訓練実施

短~長期

A

南海トラフ地震

M9クラスの地震発生により中四国、関西エリアにある事業所等が被災

帝人グループの被災想定を最新化、各所BCP対策の確認・見直し検討

短~長期

B

富士山噴火

三島事業所に溶岩流が到達し全壊

三島事業所全壊のBCPを事業で検討

中~長期

C

情報

情報セキュリティ

サイバー攻撃による重要情報流出。システムダウンによる業務停止

グループ全体のセキュリティレベル把握・是正の促進支援

短期

A

DX/AI

DXを推進する人財がグループ内で枯渇し、グループ全体の競争力低下

・情報系人財の教育プログラムの整備

・グループ内DX人財育成プログラムの継続的提供

中期

C

地政学

(経済安全保障)

サプライチェーン寸断

サプライチェーンの寸断による主要原材料の供給停止

事業と連携し複数サプライヤーの確保等の対策を検討・実行

短期

A

技術情報流出

管理の脆弱部分が狙われ重要技術情報等の流出が発生

管理状態の把握、事業所の管理強化検討

短期

B

為替激変・エネルギーコスト高騰

軍事衝突、経済的対立等によりエネルギーコストが高騰

事業損益管理の中での対応継続

短~中期

C

品質

重大品質不正・偽装

製造・検査プロセスにおける法令非準拠等の発生

コーポレートによる品質コンプライアンス監査及び是正対応等

短期

B

コンプライアンス

重大不祥事

初動対応遅れ等によりマスコミ報道加熱、レピュテーション低下

事案発生時の即応体制を整備

短期

B

経営管理

(人財)

人財流出・採用

人財流出や採用困難状態の持続による経営基盤の弱体化

・労働環境の改善推進(ジョブ型・キャリア自律支援)

・主要会社の離職率水準の定期的確認

中~長期

C

安全

火災・爆発

事業所での火災・爆発の発生により、製造や供給停止が長期化し、顧客喪失や訴訟が発生

漏洩・火災など重大な防災事故の事前防止のための各所の対応検証・診断と防災マネジメント見直し

短期

C

環境

気候変動

(移行リスク)

環境規制や情報開示義務への対応、顧客からのCO2削減要請への対応遅れにより、顧客喪失、投資家離れが発生

グローバルの規制動向モニターの継続と、遅延ない対応

中~長期

C

社会

サプライチェーン人権

規制強化への対応不備や人権侵害発覚により、レピュテーション低下、顧客喪失、訴訟、人財流出が発生

外部リスクアセスメント(サーベイ)に基づくハイリスク事業の課題対応とモニタリング

中期

C

※評価: A=重大リスクA B=重大リスクB C=その他リスク

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

帝人グループは、当連結会計年度よりIFRSを適用しています。また、前連結会計年度の数値についても、IFRSに組替えて比較分析を行っています。

なお、財務数値に係るIFRSと日本基準との差異については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記「40.初度適用」」をご覧ください。

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において帝人グループが判断したものです。

(1)経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

2024年度における世界経済は、ウクライナ情勢の長期化や、イスラエルおよび周辺国における紛争の勃発により不安定となる中、個人消費が底堅い米国を除き、世界的に景気は低調に推移しました。特に中国の不動産市況低迷に起因する景気減速や、インフレや高金利、外需不振に伴う欧州製造業の不調に加え、2025年1月の米国の政権交代に伴う通商政策見直しの動きが影響し、先行き不透明な状況が継続しました。

 

帝人グループは、2024年5月に中期経営計画2024-2025を公表し、「収益性改善の完遂による基礎収益力の回復」と「事業ポートフォリオ変革」を主要課題に掲げ、各種施策を推進しています。2024年度は収益性改善の施策を概ね計画通り達成するとともに、戦略的オプションの実行による事業の絞り込みに目途を付けました。一方、景気減速の影響により、マテリアル事業領域の需要が伸び悩むなど、新たな課題に直面しました。中期経営計画で掲げた中長期的な方針に変更はありませんが、成長軌道への回帰に向けて、短期的には足元の厳しい市場環境に適応すべく、生産体制の見直しを含むコスト削減に取り組むなどレジリエントな対応を進めております。

 

1)経営成績

帝人グループの当連結会計年度の経営成績は、売上収益1兆55億円(前期比4.7%増)、営業損失△718億円、事業利益276億円(同25.7%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益283億円(前期 親会社の所有者に帰属する当期損失117億円)となりました。

                                           (単位:億円)

 

158期

(2024年3月期)

159期

(2025年3月期)

増減額

増減率

売上収益

9,605

10,055

450

4.7%

営業損失(△)

△49

△718

△669

事業利益

220

276

56

25.7%

親会社の所有者に帰属する当期利益(△は損失)

△117

283

401

 

 

報告セグメントごとの経営成績の概況は次のとおりです。なお、当連結会計年度より、システムの運用・開発・メンテナンス及び電子コミック配信サービス等を行う「IT」事業を非継続事業に分類しています。

                                                                                      (単位:億円)

 

158期

(2024年3月期)

159期

(2025年3月期)

増減額

増減率

マテリアル

4,392

4,593

201

4.6%

繊維・製品

3,217

3,519

302

9.4%

ヘルスケア

1,447

1,370

△77

△5.3%

その他

548

573

24

4.4%

合計

9,605

10,055

450

4.7%

マテリアル

△17

60

78

繊維・製品

130

178

49

37.5%

ヘルスケア

182

57

△125

△68.7%

その他

11

71

60

554.0%

消去又は全社

△86

△90

△5

合計

220

276

56

25.7%

 

2)財政状態

当期末の資産合計は、前期末に比べ1,653億円減少し、10,613億円となりました。現金及び現金同等物や営業債権及びその他の債権等が減少したほか、償却ならびに減損により有形固定資産や無形資産が減少しました。

負債合計は、主に借入金の返済により前期末に比べて1,671億円減少し、6,227億円となりました。

資本合計(非支配持分を含む)は、多額の減損損失を計上する一方で、インフォコム株式の譲渡による関係会社株式売却益を計上することで前期末に比べて18億円増加し、4,385億円となりました。

これらの結果、D/Eレシオは0.9倍、親会社所有者帰属持分比率は40.6%となりました。(前期末 D/Eレシオ1.26倍、親会社所有者帰属持分比率33.%)

なお、当期末のBS換算レートは、150円/米ドル、162円/ユーロ、1.08米ドル/ユーロ(前期末151円/米ドル、163円/ユーロ、1.08米ドル/ユーロ)となっています。

 

② キャッシュ・フローの状況

当期の営業活動によるキャッシュ・フローは、減損損失や減価償却費及び償却費等の非資金費用を除いた利益等により、合計で698億円の収入(前期は806億円の収入)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資等の支出があった一方、関係会社株式の売却による収入等により、525億円の収入(前期は566億円の支出)となりました。

この結果、営業活動に投資活動を加えたフリー・キャッシュ・フローは1,224億円の収入(前期は240億円の収入)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済や社債の償還による支出、配当の支払により、1,345億円の支出(前期は438億円の支出)となりました。

これらの結果、現金及び現金同等物に係る換算差額等も加え、当期における最終的な現金及び現金同等物の減少額は157億円となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

帝人グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その形態、単位等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多いため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。

このため生産、受注及び販売の状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 1)経営成績」における各報告セグメントの経営成績に関連付けて示しています。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容等

経営者の視点による帝人グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

帝人グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方針に関する記載」(以下、「連結財務諸表規則」という。)第312条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 

1) 経営成績等

a. 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

帝人グループの当期の経営成績は、売上収益が前期比で4.7%増の1兆55億円となり、事業利益(注)は同25.7%増の276億円となりました。また、複合成形材料の北米事業の減損損失の計上等により営業損失は718億円(前期は49億円の営業損失)、親会社の所有者に帰属する当期利益は283億円(前期は117億円の当期損失)となりました。事業利益に関して、マテリアル事業領域では、収益性改善策の効果の追加発現や、アラミド事業および樹脂事業を中心とした複数の用途での販売量増加により増益となりました。また繊維・製品事業は、販売が好調に推移し増益となりました。ヘルスケア事業においては、薬価改定影響および在宅医療機器の新機台投入によるコスト増などにより減益となりました。

 

その結果、収益性を示すROEは6.7%、ROICは2.6%となり、キャッシュ創出力を示すEBITDAについては982億円となりました。

 

(注)事業利益は、営業利益に持分法による投資損益を加算し、非経常的な損益(持分法による投資損益のうち金融損益や減損損失等の非経常的な損益を含む)を除いて算出しています。

 

セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析は次のとおりです。なお、当連結会計年度より、システムの運用・開発・メンテナンス及び電子コミック配信サービス等を行うIT事業を非継続事業に分類しています。

 

マテリアル事業領域

:[売上収益 4,593億円(前期比 4.6%増)、事業利益 60億円(前期 事業損失17億円)、EBITDA 325億円(同 1.2%減)]

複合成形材料事業での収益性改善効果の発現と減損処理等に伴う償却費減少影響やアラミド事業および樹脂事業での販売量増加などが収益に貢献しました。一方、アラミド事業や炭素繊維事業での競争激化による販売価格の低下影響およびアラミド事業での前期に計上した保険金収入剥落の影響を受けました。

 

売上収益は4,593億円と前期比201億円の増収(4.6%増)、事業利益は60億円と前期比78億円の増益となりました。EBITDAは前期比4億円減の325億円となり、ROICは1%となりました。

 

アラミド事業では、原燃料価格の低下や競争激化の影響で一部の用途において販売価格が低下したほか、前期に計上した火災保険金収入分が剥落したことなどが減益要因となりました。一方、自動車用途や防弾・防護用途での販売量の増加や原燃料価格低下によるコスト減などで一部相殺した結果、前期比減収・減益となりました。

 

樹脂事業では、主力のポリカーボネート樹脂において、中国での低調な景気継続等により全般的に需要が低迷したものの、一部用途においてサプライチェーン上での在庫調整が緩和し販売量が増加しました。一方、競争激化の影響から販売価格が低下し、スプレッドも若干低下しました。結果、前期比増収・増益となりました。

 

炭素繊維事業では、汎用品を中心とした競争の激化により産業用途等で販売量が減少し、販売価格も低下しました。一方、航空機向け用途は、サプライチェーン上での調達制約の影響を受けながらも、堅調な旅客需要を背景としてビルドレートが上昇し、販売量は増加しました。結果、前期比減収・減益となりました。

 

複合成形材料事業では、販売価格改定、コスト削減等の収益性改善施策の発現、固定資産の減損処理に伴う償却費減等により、前期比増収・増益となりました。

 

マテリアル事業領域の事業利益の増減分析(前期比)は以下のとおりです。

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繊維・製品事業

: [売上収益 3,519億円(前期比 9.4%増)、事業利益 178億円(同 37.5%増)、EBITDA 255億円(同 22.9%増)]

売上収益は3,519億円と前期比302億円の増収(9.4%増)、事業利益は178億円と前期比49億円の増益(37.5%増)となりました。EBITDAは前期比47億円増の255億円となり、ROICは8%となりました。

 

衣料繊維分野は、北米や中国向けのテキスタイル・衣料品の販売が好調に推移し、国内向けも衣料品の販売好調が継続しました。産業資材分野では、水処理フィルター向けのポリエステル短繊維、人工皮革、テレビ通販での生活雑貨の販売が好調に推移しました。拡販に伴う経費増や円安による仕入れコスト増がありましたが、販売価格改定や生産性の改善を進めました。

 

繊維・製品事業の事業利益の増減分析(前期比)は以下のとおりです。

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ヘルスケア事業

:[売上収益 1,370億円(前期比 5.3%減)、事業利益 57億円(同 68.7%減)、EBITDA 347億円(同 23.6%減)]

医薬品の薬価改定および在宅医療機器の新機台投入によるコスト増が収益に影響しました。一方で、在宅医療機器のレンタルは堅調に推移し、医薬品「ソマチュリン」、「ゼオマイン」、「オスタバロ」も順調に販売量を拡大しました。

 

売上収益は1,370億円と前期比77億円の減収(5.3%減)、事業利益は57億円と前期比125億円の減益(68.7%減)となりました。EBITDAは前期比107億円減の347億円となり、ROICは2%となりました。

 

医薬品分野では、長期収載品を中心とした2024年4月の薬価改定および後発品浸透の加速が収益に影響しました。一方で、「オスタバロ」、「ソマチュリン*1」、「ゼオマイン*2」が順調に販売量を拡大しました。

*1 先端巨大症・下垂体性巨人症/甲状腺刺激ホルモン産生下垂体腫瘍/膵・消化管神経内分泌腫瘍治療剤 ソマチュリン®/Somatuline®は、Ipsen Pharma(仏)の登録商標です。

*2 上肢・下肢痙縮治療剤 ゼオマイン®/Xeomin®は、Merz Pharma GmbH &Co, KGaA(独)の登録商標です。

 

在宅医療機器分野では、在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)市場において、検査数の増加に伴い新規処方件数の拡大が継続し、レンタル台数は順調に増加(前期末比約7%増)しました。一方、新機台の投入台数や消耗品の使用量の増加に伴うコスト負担が増大しました。また、在宅酸素療法(HOT)市場では、全体としてはレンタル台数が微減となりましたが、2023年7月に上市した携帯型酸素濃縮装置新機種「ハイサンソポータブルαⅢ」のレンタル台数が順調に増加しました。

 

ヘルスケア事業の事業利益の増減分析(前期比)は以下のとおりです。

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その他

: [売上収益 573億円(前期比 4.4%増)、事業利益 71億円(同 554.0%増)]

売上収益は573億円と前期比24億円の増収(4.4%増)、事業利益は71億円と前期比60億円の増益(554.0%増)となりました。

 

電池部材・メンブレン分野は、販売好調により収益が伸長しました。

 

人工関節・吸収性骨接合材等の埋込医療機器分野では、帝人メディカルテクノロジー(株)が2024年6月に発売した心・血管修復パッチ「シンフォリウム」の使用が順調に拡大しています。

 

再生医療分野では、帝人リジェネット(株)の岩国ファクトリーが再生医療等製品の製造業許可を、柏の葉ファシリティーが特定細胞培養加工施設許可をそれぞれ取得するなど、CDMO*事業の立ち上げが順調に進捗しました。

* Contract Development and Manufacturing Organization 製品の開発・製造を受託する機関

 

その他の事業利益の増減分析(前期比)は以下のとおりです。

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b. 財政状態及びキャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の財政状態、キャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 2)財政状態、② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

(帝人グループの資本の財源及び資金の流動性について)

帝人グループの資金需要の主なものは、製品製造のための原材料等の購入、製造費、販売費やサービス提供費用等の運転資金需要に加え、設備投資や研究開発活動費等の投資があります。これらに必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用、金融機関からの借入及び社債発行等により資金調達を行っているほか、複数の金融機関とのコミットメントライン契約や当座貸越枠を含む十分な借入枠を有しています。このように、帝人グループの事業運営に必要な運転資金や投資資金の調達に関しては問題なく実施可能と認識しており、高水準で維持している現預金も含め、緊急時の流動性を確保しています。

また、帝人グループではグループ内余剰資金を活用するため、日米欧中の各拠点におけるキャッシュ・マネジメント・システムおよび日米欧間のグローバル・キャッシュ・マネジメント・システムを導入し、資金効率の向上に努めています。資金調達にあたっては、D/Eレシオ0.9を目安に財務体質の健全性を維持しながら、資金需要の見通しや金融情勢に応じて最適な手段を選択しています。なお、資金調達コストの低減に努める一方、設備投資に対応する借入の大部分については長期調達するとともに、過度に金利変動リスクに晒されないよう金利スワップ等の手段を活用し、固定化しています。

 

2) 経営成績に重要な影響を与える要因

経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

3) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

2024年度は、2023年度から進める収益性改善の完遂による基礎収益力の回復に向けて、複合成形材料の北米事業における労働生産性の改善や価格改定効果の発現、アラミド事業における安定供給体制の確立やヘルスケア事業における固定費削減効果の前倒し発現、国内での「ネクストキャリア支援制度」(早期退職優遇制度)を含む固定費削減の実行等、一定の成果を上げました。

一方、欧州や中国を中心としたグローバルでの景気減速による需要低迷や市場競争環境の激化影響を受けたアラミド事業や炭素繊維事業に加え、薬価改定や後発品の浸透加速の影響を受けたヘルスケア事業は基礎収益力を十分に回復することができず、その収益力改善が2025年度の新たな課題として残りました。2024年度のROEは6.7%、事業利益ROICは2.6%、事業利益は276億円となり、このような状況を背景とし、当社経営に対する市場評価の一つであるPBR(Price Book-value Ratio: 株価純資産倍率)が1倍割れの状況にあります。

 

また、各種指標の実績と目標は以下のとおりです。

 

 

第159期

(2025年3月期)

見通し

(2026年3月期)

目標

(中期経営計画

2024-2025)

ROE(%)

6.7

3

≧6

ROIC(%)

2.6

3

≧4

事業利益(億円)

276

350

500

(注)各指標はいずれも当社連結ベースの財務数値を用いて算出しています。

・ROE:親会社の所有者に帰属する当期利益/期首・期末平均親会社の所有者に帰属する持分

・ROIC:税引後事業利益/期首・期末平均投下資本

※投下資本・・・資本+有利子負債

・事業利益:営業利益に持分法による投資損益を加算し、非経常的な損益(持分法による投資損益のうち金融損益や減損損失等の非経常的な損益を含む)を除いて算出しています。

 

 

2025年度も引き続き、マテリアル事業では、アラミド事業や炭素繊維事業などで最適生産体制の整備を進め、状況の変化にレジリエントに対応していくとともに、構造改革を進めます。また、ヘルスケア事業では、在宅医療事業の基盤を活かした成長戦略の中で、2023年11月に導入した希少疾患製品(ホルモン治療薬 3剤)を、早期に市場投入できるよう着実に準備を進めます。

2025年度は、ROEは3%、事業利益ROICは3%、事業利益は350億円を予想しており、今中期経営計画の目標である2025年度ROE6%以上を下回りますが、2026年度から始まる次期中期経営計画期間における成長、発展のための1年と位置付け、成長基盤整備および施策の完遂を目指します。

 

(3)並行開示情報

連結財務諸表規則(第3編から第6編までを除く。以下、「日本基準」という。)により作成した要約連結財務諸表は、以下のとおりです。

なお、日本基準により作成した当連結会計年度の要約連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けていません。

 

① 要約連結貸借対照表(日本基準)

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2024年3月31日)

当連結会計年度

(2025年3月31日)

資産の部

 

 

流動資産

623,504

581,399

固定資産

 

 

有形固定資産

370,029

279,727

無形固定資産

145,287

114,401

投資その他の資産

112,202

90,932

固定資産合計

627,517

485,060

資産合計

1,251,021

1,066,459

 

 

 

負債の部

 

 

流動負債

424,682

302,111

固定負債

344,406

303,600

負債合計

769,088

605,711

 

 

 

純資産の部

 

 

株主資本

382,332

393,576

その他の包括利益累計額

71,778

59,847

新株予約権

474

162

非支配株主持分

27,348

7,164

純資産合計

481,933

460,748

負債純資産合計

1,251,021

1,066,459

 

② 要約連結損益計算書及び要約連結包括利益計算書(日本基準)

要約連結損益計算書

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2023年4月 1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月 1日

至 2025年3月31日)

売上高

1,032,773

1,049,676

売上原価

757,000

787,921

売上総利益

275,774

261,755

販売費及び一般管理費

262,232

240,280

営業利益

13,542

21,475

営業外収益

21,674

8,155

営業外費用

19,652

17,256

経常利益

15,564

12,375

特別利益

28,153

124,987

特別損失

15,307

117,365

税金等調整前当期純利益

28,411

19,996

法人税等合計

14,795

10,154

当期純利益

13,615

9,842

非支配株主に帰属する当期純利益

3,017

1,963

親会社株主に帰属する当期純利益

10,599

7,879

 

要約連結包括利益計算書

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2023年4月 1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月 1日

至 2025年3月31日)

当期純利益

13,615

9,842

その他の包括利益合計

23,320

△8,487

包括利益

36,936

1,355

(内訳)

 

 

親会社株主に係る包括利益

34,011

△601

非支配株主に係る包括利益

2,924

1,956

 

③ 要約連結株主資本等変動計算書(日本基準)

前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

株主資本

その他の包括利益

累計額

新株予約権

非支配株主持分

純資産合計

当期首残高

376,617

48,365

682

25,420

451,084

当期変動額

5,715

23,412

△207

1,928

30,849

当期末残高

382,332

71,778

474

27,348

481,933

 

当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

株主資本

その他の包括利益

累計額

新株予約権

非支配株主持分

純資産合計

当期首残高

382,332

71,778

474

27,348

481,933

当期変動額

11,244

△11,931

△312

△20,184

△21,185

当期末残高

393,576

59,847

162

7,164

460,748

 

④ 要約連結キャッシュ・フロー計算書(日本基準)

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(自 2023年4月 1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月 1日

至 2025年3月31日)

営業活動によるキャッシュ・フロー

69,451

60,750

投資活動によるキャッシュ・フロー

△46,052

52,517

財務活動によるキャッシュ・フロー

△43,159

△125,366

現金及び現金同等物に係る換算差額

3,015

△2,126

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

△16,745

△14,225

現金及び現金同等物の期首残高

140,307

123,562

現金及び現金同等物の期末残高

123,562

109,337

 

 

⑤ 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更(日本基準)

前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

(連結の範囲の変更)

 増加3社(取得、設立等)

 減少3社(株式譲渡等)

 

(持分法適用の範囲の変更)

 増加1社(取得)

 減少3社(株式譲渡等)

 

(会計方針の変更)

 該当事項はありません。

 

当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

(連結の範囲の変更)

 減少4社(株式譲渡、清算等)

 

(持分法適用の範囲の変更)

 増加6社(取得、設立等)

 減少12社(株式譲渡、清算等)

 

(会計方針の変更)

 該当事項はありません。

 

(4)経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報

IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりです。

 

前連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)

 「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記「40.初度適用」」に記載のとおりです。

 

当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

(非継続事業への振替)

 日本基準では、継続事業・非継続事業の区分がないため、IT事業に関連する損益をその機能別に区分していますが、IFRSにおいては、IT事業に関連する損益106,058百万円を「非継続事業からの当期利益」に区分し、表示しています。

 

(費用に関する表示)

 日本基準では、固定資産除売却損、減損損失等の非経常的に発生する費用・損失を特別損失等に含めていますが、IFRSにおいては、「売上原価」「販売費及び一般管理費」として表示しています。この影響により、IFRSでは、「売上原価」「販売費及び一般管理費」が合計で94,802百万円増加しています。

 

(のれんの償却)

 日本基準では、のれんをその投資効果の及ぶ期間で償却していますが、IFRSにおいては、移行日以降の償却を停止しています。この影響により、IFRSでは、「販売費及び一般管理費」が1,617百万円減少しています。

 

(仕掛研究開発の資産化)

 日本基準では、他社から仕掛中の研究開発投資を取得した際の支出を発生時に費用化しますが、IFRSにおいては、無形資産の定義を満たすものについては資産計上し、見積耐用年数にわたって定額法で償却しています。この影響により、IFRSでは、「無形資産」が12,302百万円、「販売費及び一般管理費」が123百万円増加しています。

 

 

(資本性金融商品の売却)

 日本基準では投資有価証券売却損益を特別損益等に含めていますが、IFRSにおいては資本性金融商品をその他の包括利益を通じて公正価値で測定される金融資産に指定し、売却損益を純損益として認識していません。この影響により、日本基準と比較しIFRSでは、「税引前利益」が9,713百万円減少しています。

 

(非金融資産の減損)

 日本基準では、固定資産の減損は、割引前将来キャッシュ・フローを用いた認識と回収可能価額を用いた測定の2段階となっています。IFRSにおいては、のれん及び耐用年数を確定できない、または未だ使用

可能ではない無形資産を除く非金融資産の減損については、回収可能価額を用いた測定の1段階のみで実施します。

 そのため、IFRSでは日本基準よりも、早期に減損損失を認識しています。IFRSでは移行日及び前連結会計年度に減損損失を計上しており、当連結会計年度の減損損失が減少した結果、「売上原価」「販売費及び一般管理費」が合計で42,016百万円減少しています。また、IFRSでは当連結会計年度に減損損失の計上した影響により、「販売費及び一般管理費」が28,000百万円増加しています。

5【重要な契約等】

当連結会計年度において締結した重要な契約等は以下のとおりです。

(1) インフォコム(株)の株式譲渡

当社は、2024年5月13日付「帝人グループ 中期経営計画2024-2025」で公表したとおり、事業ポートフォリオ変革に取り組んでおります。連結子会社であるインフォコム(株)(以下、インフォコム)につきましても、更なるグループシナジーの模索と同時に、あらゆる選択肢の検討を進めてまいりましたが、インフォコム株式の譲渡を実施することが、当社及びインフォコムの企業価値及び株主共同の利益の向上を図る上で最適であると判断し、2024年6月18日開催の取締役会において決議のうえ、ビー・エックス・ジェイ・シー・ツー・ホールディング(株)(以下、公開買付者)との間で下記の取引基本契約を締結しました。

 

契約会社名

相手先

内容

契約時期

帝人(株)

(当社)

ビー・エックス・ジェイ・シー・ツー・ホールディング(株)

①公開買付者が実施する当社の連結子会社であるインフォコムの普通株式(以下、インフォコム株式)及び新株予約権に対する公開買付けに、当社が保有するインフォコム株式の全てを応募しないこと

②本公開買付け成立後に、インフォコムの株主を当社及び公開買付者のみとするための手続を実施すること

③インフォコムによる自己株式取得により、当社がその時点で保有するインフォコム株式の全てをインフォコムに譲渡すること等に関する取引基本契約

2024年6月18日

 

(2) Esteve Teijin Healthcare, S.L.の株式譲渡

当社は、在宅医療事業のグローバル・プラットフォーム構築の一環として、欧州における事業展開のベースとなる拠点確立を目的に、Corporacion Quimico Farmaceutica Esteve S.A.(以下、Esteve社)との合弁会社Esteve Teijin Healthcare, S.L.(以下、ETH社)を設立し、2009年2月よりスペインにおける在宅医療サービス事業を開始しました。スペインにおける在宅医療サービス事業はEsteve社との関係及びEsteve社のスペインにおける強固な事業基盤に基づいて展開してまいりましたが、今般 Esteve社より在宅医療サービス事業以外のヘルスケア分野に注力するとの意向が示されたことを受け、当社およびETH社のさらなる成長のためにはETH社株式の譲渡が最善の選択肢であると判断し、ETH社株式の譲渡契約を締結しました。

契約会社名

相手先

内容

契約時期

Teijin Holdings Europe B.V.

(連結子会社)

 

Oximesa S.L.U.

異動前の所有株式数:

17,850 株(議決権所有割合:50.00%)

譲渡株式数:

17,850 株

 譲渡価額:

  普通株式 62百万ユーロ

異動後の所有株式数:

    0 株 (議決権所有割合:0.00%)

2024年12月19日

 

 

 

(3) Teijin Automotive Technologies NA Holdings Corp.の株式譲渡

当社は、自動車向け複合成形材料事業について、2017年の北米事業買収以降、様々な新技術・新プログラムの獲得、さらにグローバルな展開を並行して実施し、事業拡大を進めてまいりましたが、帝人グループの将来の柱と位置付けるには事業安定性や成長性の観点から困難と判断し、2025年3月31日開催の取締役会において決議のうえ、北米事業会社の株式譲渡契約を締結しました。

契約会社名

相手先

内容

契約時期

Teijin Holdings USA, Inc.

(連結子会社)

Stork BidCo Inc.

異動前の所有株式数:

82,792 株(議決権所有割合:100.00%)

譲渡株式数:

82,792 株

異動後の所有株式数:

   0 株 (議決権所有割合:0.00%)

 

2025年3月31日

 

 

 

6【研究開発活動】

(1) 研究開発活動

帝人グループは、持続可能な社会の実現に向けて、長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」になることを目指しています。具体的には、モビリティ、インフラ&インダストリアル領域において「地球の健康を優先し、環境を守り、循環型社会を支える会社」となること、ヘルスケア領域において、希少疾患・難病などの疾病領域を中心として「より支えを必要とする患者、家族、地域社会の課題を解決する会社」となることを目指して社会に価値を提供していきます。

 

帝人グループ内の研究開発体制については、海外13ヵ所、国内12ヵ所の研究開発拠点からなるグローバルなネットワークを活かし、グループ各社の連携を強化して組織を活性化するとともに、2023年4月からは、将来投資の領域となる新規事業関連、事業間の共創によるイノベーションの創出を全社横断的に実施するために、各事業統轄下で育成してきた新事業及びコーポレートビジネスインキュベーション部門をコーポレート新事業本部として統合し、多様な人財が能力を発揮してイノベーション創出を加速する仕組みを取り入れています。また、経営戦略に基づく技術戦略の立案、実行推進に加え、帝人グループ全体の研究開発に関する基本方針・戦略の立案、実行推進を目的に、2024年10月に技術戦略管掌(CTO)を設置し、事業間の共創によるシナジー創出強化を目指し、技術戦略を実現するプロジェクトに取り組んでいます。

 

さらに、デジタルトランスフォーメーション(DX)についても、IoTモニタリング技術、機械学習やAI技術、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)による研究開発力の強化を図ると同時に、スマートプラントの推進などによる製造現場の生産性向上など、多様な事業、分野において積極的に取り組んでいます。こうしたDX活動を加速するために、2023年4月にDX推進体制を強化し、デジタル技術やデータ活用の全社戦略策定の他、社内外との連携支援や情報発信、さらには“自律的DX”実現のための人財育成を実施しています。また、2025年4月にはデジタル・情報システム管掌(CDO)を新たに設置し、グループとしてのDXの基盤整備・強化をさらに進めていきます。

 

このような研究開発活動を通じ、帝人グループは既存事業の垣根を越えた重要産業セクター(モビリティ、インフラ&インダストリアル及びヘルスケア領域)を中心とした成長を目指すとともに、社会課題の解決に取り組んでいきます。

 

なお、当連結会計年度の研究開発費は309億円(前期比18億円減)でした。

報告セグメントごとの研究開発活動の概要は次のとおりです。

<マテリアル事業領域>

アラミド事業では、その高い機能性を活かして自動車、防弾・防護衣料、航空用コンテナ、ロープやケーブル補強など幅広い分野にアラミド繊維が使用されており、オートモーティブ、ライフプロテクション、プロテクティブアパレル、エアロスペース、リニューアブルエナジーの5つを主力テーマとして、アラミド繊維製造技術及び新商品の開発に取り組んでいます。パラ系アラミド繊維である「トワロン」「テクノーラ」の海洋ロープ用途開発では、蘭FibreMax B.V.社とともにJust Transition Fund Groningen-Emmen(JTF)から4百万ユーロの助成金を得て浮体式洋上風力発電を推進しています。リサイクル原料を用いた生産機でのリサイクルトワロンの試作に成功し、2024年3月にはタイヤ業界における国際展示会「Tire Technology Expo 2024」において、「Materials Innovation of the Year」を受賞するなど、その活動は広く認知されてきています。2030年までにトワロンリサイクル率25%を目指し長期的な取り組みを継続しています。

 

樹脂事業では、今後成長が見込まれる次世代情報端末、自動車先進化、カーボンニュートラルに対応した高機能材料の研究開発を行っています。ポリカーボネート樹脂では、高度な分子設計技術と重合制御技術を活かして、多様な屈折率要求に対応するスマートフォンカメラレンズ向け樹脂の開発を進めました。コンパウンド製品では、持続可能な社会の実現に向けてリサイクル技術を活用した環境対応材料の開発を進めています。加工製品では多様な用途に適用可能な成形加工用加飾シート、車載ディスプレイ大型化に対応する高機能シート・フィルムの開発を行っています。また、これらの樹脂材料開発全般において、マテリアルズ・インフォマティクスを活用することで研究の加速に役立っています。

 

炭素繊維事業では、高収益・高成長分野での事業拡大を進めるとともに、環境規制の高まりに伴う低燃費化の要請に応え、「軽くて強い」高機能素材の拡大を図っています。特に未来の最新鋭航空機に向けたソリューションとして、炭素繊維原糸から織物基材、熱可塑性及び熱硬化性樹脂を使用した中間材料や工法の開発に積極的に取り組んでいます。また、今後の需要拡大が期待される圧力容器用途に高い適性を有する炭素繊維を上市し、航空機用途だけでなく幅広い潜在ニーズに応える製品の開発を行っています。環境負荷低減へのニーズに対しては、環境配慮型の炭素繊維製品ブランド「Tenax Next(テナックス ネクスト)」を立ち上げ、持続可能な国際的認証の一つである ISCC PLUS 認証に基づき環境配慮型の原料を用いた「テナックス」等の生産と販売を行っています。そのほか、炭素繊維リサイクル技術の開発、リサイクル炭素繊維を使用した製品の生産・供給体制の構築に向けた取り組みを進めており、革新的な高性能材料とソリューションを提供していきます。

 

複合成形材料事業では、サステナブルな社会の実現に貢献すべく、素材から加工、成形、リサイクルに至るバリューチェーン全体のライフサイクルにおけるCO₂排出量削減に寄与する技術開発や様々な取り組みを続けています。具体的な例として、リサイクル可能な複合成形材料の開発、複合成形材料を用いた製品の性能向上、耐久性向上や長寿命化に取り組んでおり、自動車業界を中心に幅広い分野で、サステナビリティに貢献するソリューションを提供していきます。更にはこれらの生産に際し、自動化及びICT技術の導入を進めることで、複合成形材料や製品の性能安定性、品質を向上させ、従来は金属などの既存材料でしか製造出来ないと考えられていた構造部材や機能製品での採用実績を増やし、同時に生産効率やコスト効率を高めることで、顧客への提案力を強化していきます。

 

当セグメントに係る研究開発費は113億円です。

 

 

 

<繊維・製品事業>

繊維・製品事業では、環境配慮型の素材開発や事業活動を推進しました。一部にリサイクルポリエステルを使用し、「すだれ」の構造を再現することで高い通気性と紫外線遮蔽性を両立する高機能快適素材「爽多(そうた)」や、PFAS(有機フッ素化合物)フリーの撥水機能を付与したリサイクルポリエステル100%からなり、接触冷感機能と汗のべたつき防止機能を両立する次世代型快適素材「COOLSHELL CARAT」など、環境に配慮した機能性テキスタイルを開発しました。さらに、「繊維 to 繊維」の社会実装を目指し、東京都庁や国立競技場で古着回収の実証試験を実施しました。循環型社会の実現に向けた事業戦略をさらに強化し、取り組みを拡大していきます。

 

当セグメントに係る研究開発費は22億円です。

 

 

 

<ヘルスケア事業>

「より支えを必要とする患者、家族、地域社会の課題を解決する会社」となるという帝人グループの長期ビジョンに基づき、ヘルスケア事業においては、希少疾患や難病領域に注力して、新たな治療選択肢の提供につながる医薬品、医療機器、そして付加価値サービスを生み出すための積極的な研究開発を行っています。今後は、在宅医療で培った事業基盤と医薬品、医療機器を組み合わせて、誰もが住み慣れた自宅で安心して治療を継続できる新しい価値提供を推進し、患者さんが必要とする治療(医薬品・医療機器)の普及に貢献することを目指します。

 

医薬品分野では、2023年11月にAscendis Pharma, A/S.から日本国内での製造販売ライセンスを取得した「パロペグテリパラチド(開発コード:ACP-014)」について、2024年12月に「副甲状腺機能低下症」を効能・効果として製造販売承認を申請しました。また、「ゼオマイン 筋注用50単位、100単位、200単位」(*)の適応拡大として、2024年7月に「慢性流涎症」を効能・効果として製造販売承認を申請しました。加えて、「ゼオマイン」の適応拡大に向けて、現在痙性斜頸患者及び眼瞼痙攣患者を対象とする国内第Ⅲ相臨床試験を実施中であり、2024年12月には小児の痙縮患者を対象とする国内第Ⅲ相臨床試験に着手しました。また、ナルコレプシー治療を対象とした自社創生候補化合物について、2024年3月に全世界における独占的開発・製造・販売権をフランスの製薬企業であるBioprojet社に供与するライセンス契約を締結しました。帝人ファーマ(株)は当該契約に基づいて必要な技術移管・支援等に対応し、ライセンシーにおいて臨床試験開始に向けた活動が進捗しております。さらに、2024年4月、当社はアクセリード(株)との共同出資により、Axcelead Tokyo West Partners(株)(以下、「ATWP」)を設立しました。この新会社は、帝人ファーマ(株)から移管した創薬研究の一部機能と経営資源、アクセリード(株)の創薬支援事業の専門知識を活かして、創薬研究支援サービスを提供する事業を展開します。帝人ファーマ(株)は、ATWPとの連携によって、創薬研究の効率化と、より幅広い研究分野の強化を目指すとともに、国内外の創薬プレイヤーとの協働による創薬研究の強化を図ります。これまで欧米の大手製薬企業等に研究成果を導出してきた能力や実績を活かし、研究開発機能が独自に収益を生む、製薬企業としての新たなビジネスモデルの確立を図っていきます。

* 上肢・下肢痙縮治療剤 ゼオマイン®/Xeomin®は、Merz Pharma GmbH &Co, KGaA(独)の登録商標です。

 

在宅医療機器分野では、呼吸検知のための呼吸センサを追加した酸素濃縮装置「ハイサンソi」の一変認証を2024年7月に取得しました。引き続き、モニタリング機能向上のための研究を進めるとともに「HOT見守り番Web」などのシステムとのデータ連携を強化し、質の高いサービス提供を可能とするよう研究開発を進めていきます。なお、2020年4月に出資した米国ヘルスケアベンチャーキャピタルファンドであるMedtech Convergence Fundでは米国を中心に医療機器のスタートアップ企業に対する投資を通じて画期的なヘルスケア領域の新規製品・サービスの獲得を目指します。

 

当セグメントに係る研究開発費は114億円です。

 

 

 

 

 

上記セグメントに属さない研究開発活動として、再生医療・埋込医療機器分野では、医療・健康サポートを通じた、人々の健康維持・健康寿命の延伸に貢献する素材の開発に取り組んでおり、先天性心疾患への外科治療における新たな選択肢のために、大阪医科薬科大学、福井経編興業(株)とともに共同開発を進めてきた心・血管修復パッチ「シンフォリウム」について、2024年3月の保険適用を経て2024年6月から帝人メディカルテクノロジー(株)が販売を開始しています。また、再生医療CDMO(開発製造受託機関)需要拡大を見据え、帝人リジェネット(株)は2024年2月に稼働開始した「柏の葉ファシリティ(所在地:千葉県柏市)」で、2024年7月に「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づく細胞培養加工施設として許可を取得しました。さらに、2023年8月に稼働開始した「岩国ファクトリー(所在地:山口県岩国市)」では、2024年11月に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」に基づく再生医療等製品製造業(一般)の許可を取得しました。「岩国ファクトリー」と「柏の葉ファシリティ」はシームレスに連携し、治験製品の製法開発からスケールアップ、商用生産までの一貫した製造体制を目指します。

電池部材・メンブレン分野では、高機能素材の活用で、安全性・強靭性を備えた社会の構築に貢献する素材として、リチウムイオン二次電池(LIB)の性能を飛躍的に向上させることのできる革新的セパレータの製造販売及び新製品の開発に取り組んでいます。エンドユーザーや基材メーカーとの連携による次世代製品の開発を進めるとともに、取得した知的財産権のライセンスビジネスも実現しています。

環境ソリューション分野では注力領域をエネルギー転換・サーキュラーエコノミー・自然再生と特定し、新たな研究・開発を推進します。サーキュラーエコノミーに関するプロジェクトでは社内外との連携を通じ、将来に向けた社会課題の解決にあたります。

 

この他、事業間の協創によるイノベーションの創出に取り組んでいるほか、エンジニアリング分野に関する研究開発等を行っています。

 

これに係る研究開発費は60億円です。