当社は「新しい価値の創造を通じて社会に貢献する」ことを企業理念として掲げ、これに基づき経営基本方針を以下のとおり定めている。
お客様のために 新しい価値と高い品質の製品とサービスを
社員のために 働きがいと公正な機会を
株主のために 誠実で信頼に応える経営を
社会のために 社会の一員として責任を果たし相互信頼と連携を
即ち、当社は、社会の中でお客様、社員、株主など数多くのステークホルダーによって支えられていることを認識し、それぞれに対して責任を果たし、広く社会に貢献することを経営の基本方針としている。
当社グループは2011年に長期経営ビジョン“AP-Growth TORAY 2020”を策定した。その第1ステージとして、2013年度までの3ヵ年は中期経営課題“プロジェクト AP-G 2013”、2016年度までの3ヵ年は第2ステージとして中期経営課題“プロジェクト AP-G 2016”を実行してきた。2017年度からは2019年度までの3ヵ年を期間とする新たな中期経営課題“プロジェクト AP-G 2019”に取り組み、前2回の中期経営課題で要としていた「成長分野、成長国・地域での事業拡大」と「競争力強化」を踏襲しつつ、これまで進めてきた経営課題への取り組みを仕上げていく。また、同時に、2020年以降の持続的成長と企業価値向上を担う新たな収益源の創出についての取り組みも強化している。
2019年度の世界経済は、中国や米国を中心に成長テンポが鈍化するものの、年後半以降はやや持ち直す見通しである。ただし、米中などの貿易摩擦の激化、中国景気の下振れ、英国のEU離脱交渉の行方等のリスク要因に注意を払う必要がある。日本経済については、輸出や生産の伸びは鈍化するものの、雇用・所得環境の改善を背景に、緩やかな景気回復が続くことを想定しているが、海外経済の不確実性や、原油価格及び金融・資本市場の変動が景気に及ぼす影響等に留意する必要がある。
このような状況の下、当社グループは、先端材料、コア技術、グローバルな事業基盤という強みを活かして事業拡大を進める。成長分野、成長国・地域には、設備投資や研究・技術開発といった経営資源を重点的に配分する。また、当社の強みを活かしてシナジーの発揮が期待できる場合には、M&Aやアライアンスを機動的に行うことで、既存事業の成長を増幅・補完していく。
為替や原燃料価格の変動などに対しては、グローバルな事業基盤を活用することで、こうした外部要因の影響をできるだけ受けない企業体質の確保に引き続き努めていく。そして、中長期的視点に立った設備投資や研究・技術開発、人材育成を行っていくことで持続的な成長を図り、ステークホルダーの信頼に応える経営を実践していく。
配当については、引き続き業績の改善に連動して安定的、継続的に配当を増加させていくことを基本方針とする。
安全・防災・環境保全、企業倫理・法令遵守をはじめとしたCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)は最優先の経営課題として取り組みを強化している。2019年度までの3ヵ年を期間とする「第6次CSRロードマップ」を策定し、事業活動のあらゆる側面におけるCSRを引き続き体系的に推進することで経営戦略とCSRを連動させ、当社グループの持続的発展とCSRの両立を図っていく。
当社グループは、すべての製品の元となる素材には、社会を本質的に変える力があるという信念のもと、常に世界に先駆けた技術革新に挑戦し、最先端の技術や新素材を生み出し事業化することを目指している。そして、企業活動のあらゆる場面で現場力を重視し、徹底的な現状把握と現状分析に基づいて問題を克服していくことで、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」を具現化していく。
「第2 事業の状況」、「第5 経理の状況」等での記載事項に関して、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクは、以下のとおりである。当社グループは、日常的にこれら潜在するリスクからの回避、又はその影響の低減に努めるとともに、不測の事態が発生した場合には迅速な対応と的確な情報開示を実施しうる体制を構築すべく努めている。なお、以下は当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、事業等のリスクはこれらに限定されるものではない。また、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2019年6月25日)現在において当社グループが判断したものである。
当社グループは基礎素材製品を広範な産業に供給しており、世界的あるいは地域的な需給環境の変動や素材代替の進行、取引先の購買方針の変更等により当社グループの製品に対する需要が急速に減退する可能性がある。また、当社グループの様々な事業は他企業との厳しい競争状態にあり、新規参入の脅威に曝されているものもあるほか、医薬・医療事業には薬価並びに償還価格改定による価格変動要因がある。当社グループは持続的に競争優位の確保に努めているものの、これら製品の需要が減少あるいは価格が下落した場合、あるいは取引先の与信リスクが顕在化した場合、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。
当社グループが使用する石油化学原料や燃料は、価格が大きく変動することがあり、これら原燃料の価格上昇分を製品価格に十分に転嫁できない場合、あるいは品種転換による採算の改善が困難な場合、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。
当社グループは広範囲にわたる事業領域で設備投資を実施しており、また、第三者との間で様々な合弁事業や戦略的提携、事業買収等を行っている。これら設備投資、合弁事業・提携・買収等の実施にあたっては、事前に収益性や投資回収の可能性について様々な観点から検討を行っているが、必ずしも確実に予期したとおりの成果が得られるという保証があるわけではなく、事業環境の急変などにより、予期せぬ状況変化や所期の事業計画からの大幅な乖離が生じた場合、固定資産等の減損損失や持分法投資損失等が発生し、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性がある。
(4) 為替相場の変動、金利の変動、有価証券等の価値の変動等に関わるリスク
当社グループの海外事業の現地通貨建て財務諸表の各項目は、円換算時の為替レート変動の影響を受ける。外国通貨建て取引については、為替予約等によりリスクを軽減させる措置を講じているが、予測を超えた為替変動が当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性がある。また、予期せぬ金利水準の急激な変動やその他の金融市場の混乱、当社グループの保有する有価証券あるいは年金資産の価値の変動等が当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性がある。
当社の単独及び連結財務諸表は、将来に関する一定の前提を置いた年金数理計算に基づいて退職給付債務を計上しており、また、将来年度の課税所得の見積額に基づき回収可能性を判断したうえで繰延税金資産を計上しているが、年金数理計算に使用する前提条件に変動が生じた場合、あるいは将来の課税所得の見積額に変動が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性がある。
当社グループは、アジア・欧州・米国をはじめ海外で広く事業を展開しているが、各地域において以下のようなリスクがあり、これらの事象が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。
①不利な影響を及ぼす税制や関税の変更等、予期しない諸規制の設定又は改廃
②予期しない不利な経済的又は政治的要因の発生
③テロ・紛争等による社会的混乱 など
当社グループは、世界最高水準の品質を追求しているが、予期し得ない重大な品質問題が発生する可能性は皆無ではなく、そうした重大事態が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。
当社グループが広範な事業活動を展開する中で、知的財産権、製造物責任、環境、労務等、様々な訴訟の対象となるリスクがある。重大な訴訟が提起された場合、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。
当社グループは、事業活動を行っている各国及び地域において、環境、商取引、労務、知的財産権、租税、為替等の各種関係法令、投資に関する許認可や輸出入規制、独占禁止法に基づく競争政策等の適用を受けている。当社グループは内部統制システムの整備・維持を図り各種法令等の遵守に努めているが、新たな環境規制や環境税の導入、法人税率の変動等これらの法令の改変があった場合や各種法令に違反したと判定された場合、公正取引委員会による行政処分を受けた場合や税務当局から更正通知を受領した場合、あるいは従業員による不正行為があった場合や財務報告に係る内部統制の有効性が維持できなかった場合、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。
(10) 自然災害・事故災害に関わるリスク
当社グループは、「安全・防災・環境保全」をあらゆる経営課題に優先し、生産活動の中断による損害を最小限に抑えるため、製造設備の定期的な防災点検及び設備保守、また安全活動を推進しているが、突発的に発生する災害や天災、不慮の事故等で製造設備等が損害を受けた場合や原材料等の供給不足が生じた場合、電力・物流をはじめとする社会インフラの機能が低下した場合等には、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。
(11) 情報セキュリティに関わるリスク
当社グループが事業活動を行う上で、情報システム及び情報ネットワークは欠くことのできない基盤であり、構築・運用に当たっては十分なセキュリティの確保に努めているものの、不正侵入、情報の改ざん・盗用・破壊、システムの利用妨害などにより業務の停滞や信用の低下が生じた場合、あるいは機密情報が社外に流出した場合等には、当社グループの業績及び財務状況が悪影響を被る可能性がある。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。
当社グループは、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 2018年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態の状況及び関連する指標については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っている。
なお、文中の将来における事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成している。連結財務諸表の作成において採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載している。連結財務諸表の作成にあたっては、資産・負債及び収益・費用の報告額に影響を与える見積りが必要となる。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しているが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。
当連結会計年度の世界経済は、先行き不透明感による景気下押し圧力が続く中、好調な米国の下支えもあり、全体としては緩やかな回復が続いたが、年度後半には貿易摩擦の激化や中国の減速が顕著となり成長テンポが鈍化した。国内経済については、年度末にかけて輸出や生産に弱さがみられたものの、企業部門、家計部門とも総じて底堅く推移し、緩やかな景気回復が続いた。
また、原燃料価格の上昇は当社グループ収益の下押し要因となった。
このような事業環境の中で、当社グループは2017年度から、2019年度までの3ヵ年を期間とする中期経営課題“プロジェクト AP-G 2019”に取り組んでおり、「成長分野での事業拡大」、「成長国・地域での事業拡大」、「競争力強化」を要とした成長戦略を実行している。
(単位:億円)
当連結会計年度の売上高は、ライフサイエンス事業を除くすべてのセグメントで増収となり、前連結会計年度比1,840億円(8.3%)増収の2兆3,888億円で過去最高となった。営業利益は、機能化成品事業、炭素繊維複合材料事業を中心に減益となり、前連結会計年度比150億円(9.6%)減益の1,415億円となった。
営業利益の前連結会計年度比増減要因を分析すると、販売・生産数量の増加による増益279億円があった一方で、原料価格上昇や費用の増加などによる減益△429億円があり、差し引き150億円の減益となった。
営業外損益は、休止設備関連費用が増加したことなどにより、前連結会計年度比28億円の減益となり、経常利益は同178億円(11.7%)減益の1,345億円となった。
特別利益は有形固定資産売却益が増加したことを主因に前連結会計年度比178億円増の223億円、特別損失は減損損失が増加したことを主因に同92億円増の294億円となり、税金等調整前当期純利益は同92億円(6.7%)減益の1,274億円となった。
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度比165億円(17.2%)減益の794億円となった。自己資本利益率は、7.1%と前連結会計年度比1.9ポイント悪化した。
2019年度の見通しについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 経営環境及び対処すべき課題等」で記載した厳しい事業環境の中、グリーンイノベーションやライフイノベーションなどの成長分野を中心に事業拡大を進めることを踏まえ、連結売上高2兆5,300億円、営業利益1,600億円、経常利益1,550億円、親会社株主に帰属する当期純利益930億円としている。
当連結会計年度のセグメント別の経営成績は、次のとおりである。
(繊維事業)
国内では、自動車関連など産業用途は総じて需要が堅調なものの、衣料用途は天候不順の影響もあり荷動きは低調に推移する中、各用途での拡販に加え、糸綿/テキスタイル/製品一貫型ビジネスの拡大を進めるとともに、事業体質強化に注力した。
海外では、東南アジアなどの一部子会社の業績が低調であったほか、中国経済の減速により、年度後半から自動車関連用途向けなどで需要減速の影響を受けた。衣料用途では一貫型ビジネスの拡大を進めた。
また、国内外とも全般的に原料価格上昇の影響を受けた。
以上の結果、繊維事業全体では、売上高は前連結会計年度比6.6%増の9,743億円、営業利益は同0.6%増の729億円となった。
主要な製品の生産規模は、ナイロン糸が前連結会計年度比1.3%減の約468億円(販売価格ベース)、ポリエステル糸が同0.6%増の約598億円(販売価格ベース)、ポリエステルステープルが同7.0%増の約630億円(販売価格ベース)となった。
(機能化成品事業)
樹脂事業は、自動車用途向けに拡販するとともに、原料価格上昇に対する価格転嫁を推進したが、中国経済減速の影響を受けた。ケミカル事業は、基礎原料市況が改善するとともに、ファインケミカル製品も増収となった。フィルム事業は、リチウムイオン二次電池向けバッテリーセパレータフィルムが需要の伸長を背景に出荷を拡大したが、原料価格上昇の影響がポリエステルフィルムなど広範にわたった。電子情報材料事業は、スマートフォン市場の需要鈍化の影響を受けた。
以上の結果、機能化成品事業全体では、売上高は前連結会計年度比8.2%増の8,688億円、営業利益は同5.1%減の677億円となった。
主要な製品の生産規模は、ABS樹脂が前連結会計年度比1.5%増の約1,039億円(販売価格ベース)、ナイロン樹脂とPBT樹脂が同9.2%増の約278億円(販売価格ベース)、ポリエステルフィルムが同0.1%減の約1,298億円(販売価格ベース)となった。
(炭素繊維複合材料事業)
航空宇宙用途では、航空機向けサプライチェーンでの在庫調整が完了したことを受け、需要は概ね堅調に推移した。一般産業用途では、圧縮天然ガスタンクや風力発電翼などの環境・エネルギー関連向けを中心に、全体として需要が回復傾向となった。
一方、原料価格の上昇や競合激化の影響を受けたほか、海外のコンポジット子会社で新規案件立ち上げに伴う費用が増加し、TenCate Advanced Composites Holding B.V.の全株式取得に関連する費用も発生した。
以上の結果、炭素繊維複合材料事業全体では、売上高は前連結会計年度比21.3%増の2,159億円、営業利益は同44.4%減の115億円となった。
炭素繊維複合材料の生産規模は前連結会計年度比19.4%増の約1,958億円(販売価格ベース)となった。
(環境・エンジニアリング事業)
水処理事業は、国内外で逆浸透膜などの需要が概ね堅調に推移した。
国内子会社では、商事子会社の取扱高が増加したが、海外のエンジニアリング子会社において、大型プラント工事案件が終了した影響を受けた。
以上の結果、環境・エンジニアリング事業全体では、売上高は前連結会計年度比8.1%増の2,577億円、営業利益は同7.9%減の122億円となった。
(ライフサイエンス事業)
医薬事業は、経口プロスタサイクリン誘導体製剤ドルナー®が海外向けに数量を拡大したものの、国内では後発医薬品や薬価改定の影響を受けた。経口そう痒症改善薬レミッチ®*は、後発医薬品発売の影響を受けた。
医療機器事業は、ダイアライザーが国内保険償還価格の引き下げと原料価格上昇の影響を受けたが、国内外で堅調に数量を伸ばしたほか、透析装置も数量を拡大した。
以上の結果、ライフサイエンス事業全体では、売上高は前連結会計年度比0.3%減の537億円、営業利益は同33.0%減の13億円となった。
医療機器の生産規模は前連結会計年度比6.7%減の約167億円(販売価格ベース)となった。
*レミッチ®は鳥居薬品㈱の登録商標である。
(その他)
売上高は前連結会計年度比3.2%増の185億円、営業利益は同6.5%増の31億円となった。
(生産、受注及び販売の状況)
当社グループ(当社及び連結子会社)の生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その形態、単位等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多いため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていない。
このため生産、受注及び販売の状況については、各セグメントの業績に関連付けて示している。
当連結会計年度末の財政状態は、資産の部は、受取手形及び売掛金が増加した結果、流動資産が前連結会計年度末比643億円増加し、固定資産も有形固定資産や無形固定資産の増加を主因に同1,481億円増加したことから、資産合計では同2,124億円増加の2兆7,884億円となった。
負債の部は、有利子負債が増加したことを主因に前連結会計年度末比1,677億円増加の1兆5,744億円となった。当連結会計年度末の有利子負債残高は前連結会計年度末比1,599億円増加の9,763億円となった。
純資産の部は、純利益の計上による利益剰余金の増加を主因に純資産合計で前連結会計年度末比448億円増加の1兆2,139億円となり、このうち自己資本は1兆1,310億円となった。当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末比1.8ポイント低下し40.6%、D/Eレシオは同0.11ポイント悪化し0.86ポイントとなった。
(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、投資活動による資金の減少が営業活動による資金の増加を840億円上回った一方、有利子負債の増加を主因に財務活動による資金の増加が1,189億円となったこと等により、当連結会計年度末には前連結会計年度末比388億円(28.9%)増の1,731億円となった。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動による資金の増加は、前連結会計年度比471億円(36.4%)増の1,762億円となった。これは、税金等調整前当期純利益が1,274億円(前連結会計年度比92億円減)、減価償却費が1,017億円(同59億円増)、たな卸資産の減少額が284億円(同599億円増)であった一方、法人税等の支払額が426億円(同82億円増)であったこと等によるものである。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動による資金の減少は、前連結会計年度比736億円(39.4%)増の2,602億円となった。これは、有形固定資産の取得による支出が1,658億円(前連結会計年度比204億円増)、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が1,146億円(同1,119億円増)であったこと等によるものである。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動による資金の増加は、前連結会計年度比571億円(92.5%)増の1,189億円となった。これは、長期借入れによる資金の調達が1,345億円(前連結会計年度比556億円増)であったこと等によるものである。
(注) 時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産額
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー/利払い
株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出している。
また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用している。
当社グループの資金需要の主なものは、設備投資、投融資などの長期資金需要と当社製品製造のための原材料の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費などの運転資金需要である。このうち、設備投資の概要及び重要な設備の新設の計画については、「第3 設備の状況」に記載している。
当社グループは、資金需要の見通しや金融市場の動向などを総合的に勘案した上で、最適なタイミング、規模、手段を判断して資金調達を実施している。また、事業拡大と財務体質強化の両立という基本方針の下、運転資金の圧縮、固定資産の稼働率向上、キャッシュマネジメントシステムによるグループ内余剰資金の有効活用等、資産効率の改善にも取り組んでいる。
財務状況は健全性を保っており、現金及び現金同等物、有価証券などの流動性資産に加え、営業活動によるキャッシュ・フロー、借入金、社債等による資金調達により、事業拡大に必要な資金を十分に賄えると考えている。また、緊急に資金が必要となる場合や金融市場の混乱に備え、国内外の金融機関とコミットメントライン契約、当座貸越契約等を締結し、資金流動性を確保している。
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載している。
(注)持分法適用関連会社である東レ・ダウコーニング㈱が、2019年2月1日付で会社分割によりシリコーン事業の一部をダウ・東レ㈱に承継したことに伴い、新たに契約を締結している。
(TenCate Advanced Composites Holding B.V.の株式取得)
当社は、2018年7月8日付でTenCate Advanced Composites Holding B.V.(現・Toray TCAC Holding B.V.)の全株式を取得する株式譲渡契約を親会社であるKoninklijke Ten Cate B.V.との間で締結し、2018年7月17日付で取得した。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項」の(企業結合等関係)に記載している。
当社グループ(当社及び連結子会社)の研究・技術開発は、有機合成化学、高分子化学、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーをコア技術とし、これらの技術をベースに、重合、製糸、繊維高次加工、製膜、有機合成など要素技術の深化と融合を進め、繊維、フィルム、ケミカル、樹脂、さらには電子情報材料、炭素繊維複合材料、医薬、医療機器、水処理事業とさまざまな事業分野で、先端材料を創出し事業化を実現している。
2017年2月に策定した中期経営課題“プロジェクト AP-G 2019”では、「グリーンイノベーション」、「ライフイノベーション」事業に重点を置き新技術・新素材を創出するとともに、そうした技術・素材の持つ本質的価値を顕在化させるための取り組みを進めることで収益を確保する。また、知的財産戦略による参入障壁の構築により技術競争力の優位性を堅持していく。
当連結会計年度のセグメント別の研究・技術開発の概要は次のとおりである。
基幹事業としての安定収益基盤の強化と収益拡大に向け、極限技術追求による高機能製品や繊維先端材料の創出・拡大に主眼を置いた研究・技術開発を推進している。その成果として、革新的な複合紡糸技術NANODESIGN®(ナノデザイン)を用い、世界最細繊度である0.8dtexの2成分バイメタル繊維からなる新しいPrimeflex®(プライムフレックス)の開発に成功した。また、独自の技術により、ナイロンポリマーを染料が結合しやすい構造に改質するとともに、セラミックス粒子を均一に微分散することで、色落ちの原因となる非結晶部分が少ない繊維構造を形成し、鮮やかで深みのある色彩と、高い染色堅牢性を持つ紫外線遮蔽ナイロンテキスタイル「深発色™ナイロン」を開発した。さらに世界で初めて、植物由来原料をポリエステルとポリウレタンの一部に使用し、世界最高水準となる約30%の植物由来原料比率を実現したスエード調人工皮革「Ultrasuede® BX」(ウルトラスエード ビーエックス)の開発に成功した。
基幹事業として安定収益基盤の強化、戦略的拡大事業として中長期での収益拡大に向け、新製品開発、高付加価値化を目指し、研究・技術開発に取り組んでいる。その成果として、当社独自のナノテクノロジーであるナノアロイ®をベースとしたアロイ精密制御技術を用いてポリマー構造を最適化することで、ポリフェニレンサルファイド樹脂(以下「PPS樹脂」)が有する高い耐熱性や耐薬品性を維持しながら、世界最高レベルの柔軟性を有した新規PPS樹脂を開発した。また、独自のナノ積層技術をさらに深化させ、革新的な層配列デザインにより、ガラス並みの透明性を維持しつつ、温度上昇の原因となる太陽からの赤外線に対する世界最高レベルの遮熱性を備えた革新的な遮熱フィルムを開発した。さらに、食品や生活用品など身近な商品の軟包装材向け印刷用に世界初となる水なしオフセット印刷機を開発した。独自の水なし平版と、省電力LED-UV技術によるインキ乾燥方式と組み合わせることで、揮発性有機化合物を用いず、従来の印刷方式に比べて約80%の消費電力削減を実現した。
当社の代表的ナンバーワン事業であり戦略的拡大事業として、グリーンイノベーション事業拡大、アジア・新興国及び米州での事業拡大のための研究・技術開発に取り組んでいる。その成果として、トレードオフの関係にある繊維強度と弾性率の両方を極限追求し、従来よりも細かいナノレベルで繊維内部の黒鉛結晶構造を緻密に制御し配向性を高める技術を適用し、従来の炭素繊維と同等の弾性率を保持したまま、強度を約30%向上させた新しい炭素繊維「トレカ®MXシリーズ」を開発した。また、昨年度開発したオートクレーブを使用しない新成形技術に適した航空機一次構造部材向けプリプレグを新たに開発した。
機能化成品、炭素繊維複合材料に続く次の収益拡大の柱とするために、重点育成・拡大事業として研究・技術開発に取り組んでいる。その成果として、逆浸透膜(RO膜)エレメントに通す供給水と透過水が流れる際の抵抗を極限まで抑えつつ、供給水の流速を高める技術を開発し、造水効率を最大2倍に向上させることに成功した。また、様々な分野の水処理用途に展開しているPVDF(ポリフッ化ビニリデン)製限外ろ過(UF)膜について、孔径制御技術を深化させ、微少な物質を効果的に分離し、かつ高透水性を兼ね備えたUF膜創出に成功した。
重点育成・拡大事業として研究・技術開発に取り組んでいる。その成果として、合成繊維の紡糸技術を応用し、海島複合繊維の表面形態や化学構造を制御することで、細胞やタンパク質等のバイオターゲットの選択的除去を可能にし、これまでの繊維吸着体に比べ性能と安全性の向上が期待される、新規の血液浄化用繊維吸着体を創出した。また、当社DNAチップを用いて実施された、早期がん及び認知症の検出用マーカー開発を目的とした大規模国家プロジェクトを完遂した。研究成果の実用化に向け、早期の体外診断薬承認取得を目指す。さらに、㈱ボナックと共同開発を進めてきた核酸医薬品「TRK-250」について、米国での第Ⅰ相臨床試験を開始した。その上、米国食品医薬品局より特発性肺線維症を適応とするオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の指定を受けた。そのほか、第Ⅰ相臨床試験を進めている抗体医薬品「TRK-950」は、現在、新たな治験実施施設を追加し、数種類のがん種を対象に、既存抗がん剤との併用投与を行い、薬効が得られるがん種を探索している。引き続き、関係機関と連携して開発を加速し、がん治療薬として早期の承認取得を目指す。
上記セグメントに属さない基礎研究、基盤技術開発として、独自の機能性高分子設計技術を駆使し、初期長に対して10倍に引き伸ばしても破断せずに復元する、皮膚のような柔軟性を有する新規の生体吸収性ポリマーを創出した。加えて、このポリマーの加水分解による分解速度を10倍に向上させる技術も見出した。今後、本技術を適用したポリマーを用いた再生医療などの医療用途の開発や各種産業用途への拡大を推進する。
当連結会計年度の当社グループの研究開発費総額は、
当連結会計年度の当社グループの特許出願件数は、国内で1,617件、海外で4,037件、登録された件数は国内で473件、海外で2,087件である。