第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社、連結子会社及び持分法適用会社(以下、「当社グループ」)が判断したものです。

 

(1) 経営方針・経営戦略等

① 当社グループ理念等

当社グループでは、「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献します。」というグループ理念のもと、「健康で快適な生活」と「環境との共生」の実現を通して、社会に新たな価値を提供することをグループビジョン(目指す姿)として掲げています。

また、グループバリュー(共通の価値観)として「誠実」「挑戦」「創造」を定めており、すべてのステークホルダーの皆様に対し「誠実」に経営することを通じて、社会の課題解決や事業環境の変化に積極果敢に「挑戦」し、絶えず新たな価値を「創造」することで、事業を通じて企業の社会的責任を果たしていくことを基本方針としています。

 

② 当社グループ全体の経営方針・経営戦略等

Ⅰ サステナビリティの追求(中期経営計画「Cs+ for Tomorrow 2021」)

<経営環境・経営課題>

2015年に国連で採択された「SDGs」(持続可能な開発目標)に象徴されるように、社会課題や環境課題に対する意識は世界的に高まっています。人類は技術の進歩とともに発展してきましたが、世界には今なお繁栄から取り残された地域や人びとが存在し、他方で、地球環境の観点において、従来型の発展が限界に至りつつあることは、人類にとって大きな課題です。加えて、先進国を中心とした少子高齢化の進展は、新たな課題を提示しつつあります。当社グループは、企業としてこれらの事実に正面から向き合う必要があります。

特に、2020年より感染拡大したCOVID-19による世の中の変化は、「地殻変動」とも言うべき、私たちがかつて経験をしたことがない大きな変化をもたらしました。人びとの価値観は大きく変化し、社会課題や環境課題の顕在化を加速させています。いのちや健康、衛生に対する意識が高まるとともに、リモートワークの普及等を通じて人びとの働き方や暮らしが大きく変わり、個人の生きがい、働きがいがより一層重要視されるようになりました。このような中、当社グループにおいては、世界の人びとの「いのち」と「くらし」に関わる製品・サービスの提供を途絶えさせないよう尽力しながら、顧客、取引先及び従業員の安全・健康を最優先に考えて、リモートワークやウェブミーティングの活用等、新たな働き方の推進に積極的に取り組んできました。

地球環境への関心も急速に高まっており、特に気候変動リスクの主要因である温室効果ガスの排出量の削減は、人類の喫緊の課題です。世界主要各国・地域が2050年にカーボンニュートラルを目指すことを宣言し、各企業もその実現の貢献に向けた取り組みを開始しています。また、プラスチックについて、不適切な廃棄による環境汚染問題や資源の有効活用の観点などから、海洋プラスチック汚染対策やサーキュラーエコノミー(循環型社会)に向けた取り組みが求められるなど、各国での規制がより一層強化されています。加えて、人権の尊重においては、企業活動の前提として、自社のみならず、関係企業や取引先を含めたサプライチェーン全体における取り組みが求められています。

 

(COVID-19感染拡大後に加速した主な経営環境の変化)

・人びとのいのち、健康、衛生に対する意識の向上

・リモートワーク、ウェブミーティング等の活用

・個人の生き方・働き方の多様化

・持続可能な社会への取り組み(カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー等)

・デジタル技術活用へのシフト(AI、次世代通信、ロボティクス等)

産業構造、需要構造の不可逆的な変化

・米中対立等、国際情勢の変化

 

 

当社グループは、グループ理念「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献します。」を掲げ、世の中の課題に応じた事業展開を行ってきました。約100年前に“人類文化の向上”を唱えて創業して以来、「生活基盤の確立」「物資豊富な生活」「豊かで便利・快適な生活」「新興国での需要」といった、変遷するニーズに応えるべく歩んできました。当社グループは、上記に象徴される現在の社会ニーズを「持続可能な社会の実現」と捉え、社会全体の変革の機会として積極的に取り組んでいきます。「持続可能な社会の実現」に向けて、当社グループが継続して取り組みを進めていくためには、高い収益性を実現するとともに、すべてのステークホルダーとの信頼関係を深めていくことが重要です。当社グループは、透明・公正な経営により、「持続可能な社会の実現」への貢献と「持続的な企業価値の向上」の両立を進めることで、サステナビリティを追求していきます。

 

<経営方針・経営戦略>

「持続可能な社会の実現」への貢献と「持続的な企業価値の向上」を実現するため、2019年4月より3ヵ年の中期経営計画「Cs+(シーズプラス) for Tomorrow 2021」を進めています。「Cs+ for Tomorrow 2021」では、前中期経営計画「Cs for Tomorrow 2018」で定めた「Compliance」「Communication」「Challenge」「Connect」という“Cs”に、「Care for People」「Care for Earth」(人と地球の未来を想う)という2つの“C”を追加し、人びとと地球のサステナブルな発展に貢献していく当社グループの姿勢を表現しました。この基本的な考え方は、COVID-19感染拡大により経営環境が大きく変わった現在においても変わりません。

また、2022年度は次期中期経営計画がスタートする年度であり、当社創立100周年の節目でもあります。創業者である野口遵の「吾々工業家は飽くまでも大衆文化の向上を念として、最善の生活資料を最低廉価に然も豊富に給することを以て究局の目的としなければならぬ。」という想いを大切にし、当社グループが100年間で培ってきた人財・技術・事業の「多様性」と、従業員、組織、会社それぞれの創意工夫による「変革力」を通じて、「Care for People」「Care for Earth」という、“人と地球の未来への想い”を次の100年へ繋ぐべく、新たな変革に挑戦していきます。

サステナビリティを追求していくためには、社会、環境の変化に応じて「持続可能な社会」に高い価値を提供する事業体へと、事業ポートフォリオの転換を進めていくことが重要です。当社グループにとって特に影響度が大きい課題であり、かつ社会にとっての影響度が大きい課題をマテリアリティとして定めて、「環境貢献事業の推進」「健康・長寿への貢献」「安心で快適なくらしへの貢献」を目指した事業を推進していきます(下図参照)。さらには、安全/品質/リスク管理/コンプライアンスの強化を含む、全社を挙げたサステナビリティマネジメントもより一層強化していきます。

 

旭化成グループのマテリアリティ

 


また、当社グループの人財・技術・事業の「多様性」と、それらから生み出される「変革力」という強みを最大限活かすためには、デジタル技術を駆使して、当社グループに存在する様々なデータを結び付けていくことが重要であると考えています。デジタルトランスフォーメーション(DX)を当社グループの強力な変革の基盤として、積極的に推進していきます。加えて、研究開発や新事業創出を加速することで新たな価値創出に取り組むこと、さらには、これらの活動の礎となる人財育成・活性化、グローバルオペレーションの強化、ガバナンスの強化といった事業基盤の強化も継続して取り組んでいきます。これらの考えから、以下の対応方針に基づき、各種施策を進めていきます。

 

ⅰ 高い付加価値型事業の集合体の追求

■ 各セグメントにおける価値提供注力分野

当社グループでは「マテリアル」セグメント、「住宅」セグメント、「ヘルスケア」セグメントの3つのセグメントで事業運営をしていますが、創業以来、変化する社会ニーズを捉え、社会課題や環境課題に対する解決策を提供すべく、事業ポートフォリオを転換してきました。今後においても、「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献します。」という当社のグループ理念に沿って、世の中の課題に応じた事業展開を行うべく、人財・技術・事業の「多様性」と「変革力」を活かし、事業ポートフォリオの転換を行っていくことを最も重要な経営戦略と位置付けています。

これらの3つのセグメントにおいて、当社グループのマテリアリティへ対応するため、「マテリアル」セグメントでは「Environment & Energy」「Mobility」「Life Material」、「住宅」セグメントでは「Home & Living」、「ヘルスケア」セグメントでは「Health Care」の5つの価値提供注力分野を定めています。これらの5つの分野を中心に経営資源を投入し、収益性の高い高付加価値型事業の集合体を形成することにより、持続的な事業成長を図るとともに、持続可能な社会の実現に向けて貢献していきたいと考えています。

 

「Cs+ for Tomorrow 2021」のコンセプトと当社グループの価値提供注力分野

 


セグメント

当社グループの価値提供注力分野

サステナビリティにおけるテーマ

マテリアル

Environment & Energy

環境負荷低減

Mobility

安全・快適な移動

Life Material

快適な生活

住宅

Home & Living

安心で豊かな暮らし

ヘルスケア

Health Care

健康長寿社会の実現

 

 

■ 中期経営計画「Cs+ for Tomorrow 2021」進捗状況と各セグメントにおける中期的な方向性

当社グループは、収益性の高い高付加価値型事業の集合体による、グローバルGDP成長率を上回る「持続的な利益成長」を志向しています。収益性、資本効率、財務健全性における以下の経営指標をモニタリングし、経営環境の変化や計画の進捗状況に応じて、必要な対策を講じています。2019年度に中期経営計画「Cs+ for Tomorrow 2021」を策定した以降、米中対立等の国際情勢の変化やCOVID-19感染拡大の影響等による産業構造や需要構造の変化により、収益性や資本効率が低下し、当初の計画値を下回る進捗となっています。中期経営計画「Cs+ for Tomorrow 2021」における各施策を加速し、産業構造や需要構造の変化へ戦略的に対応することにより収益性及び資本効率を向上させ、「持続可能な社会の実現」への貢献と「持続的な企業価値の向上」の両立を引き続き目指します。

なお、2020年度の具体的な結果については「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容」をご参照ください。

 

当社グループの主要な経営指標の推移


*2021年度当初計画は、2019年5月に中期経営計画「Cs+ for Tomorrow 2021」を発表したときの計画です。

 

(各経営指標の定義)

EBITDA     :営業利益+減価償却費(有形固定資産・無形固定資産(のれんを含む))

EPS      :親会社株主に帰属する当期純利益÷期中平均発行済株式数(ただし、自社株は除く)

ROIC      :(営業利益-法人税等)÷期中平均投下資本

ROE      :親会社株主に帰属する当期純利益÷期中平均自己資本

D/Eレシオ   :期末有利子負債÷期末自己資本

 

中期経営計画「Cs+ for Tomorrow 2021」は折り返し地点を過ぎ、各セグメントにおける経営環境は計画策定時から変化しています。COVID-19感染拡大が及ぼす影響は、セグメントごとに異なりますが、特に「マテリアル」セグメントでの経営環境が大きく変わり、事業によっては成長の減速や収益の低迷が見られています。社会への価値提供が困難になった事業の再構築や構造転換、サステナビリティに貢献する価値提供注力分野への資源配分など事業ポートフォリオの転換の加速を進めていきます。

 

 

各セグメントの中期経営計画の進捗と中期的な方向性


■ 事業ポートフォリオ転換の取り組み

事業ポートフォリオの転換を進めるため、事業ごとの「成長性(売上高成長率)×収益性(営業利益率)」の評価をベースに、「資本効率(ROIC)と資本コストの視点」「サステナビリティの視点(温室効果ガス(GHG)排出量等定量指標)」「利益額、利益の変動性や事業ステージの視点」などを加えた事業評価を年に2回実施し、事業を「成長牽引」「高収益基盤」「体質強化」「戦略再構築」の4つに分類しています。

2020年度においては、上述の事業評価のプロセスを経て、当社グループの約60事業のうち、特に「マテリアル」セグメントの汎用製品を扱う事業を中心に、15事業を「戦略再構築事業」として抽出し、社長を含む経営メンバーと各事業側のメンバーとで戦略討議を複数回実施しました。COVID-19感染拡大の影響を踏まえ、今後の競争環境の見立てに基づいた戦略の再検討を実施し、KPIやマイルストーンを設定した上で、継続的に状況をフォローしています。また、既にいくつかの事業については、事業の構造転換を見据えたアクションに着手しています。

今後も、これらの活動を通じて、事業ポートフォリオ転換の具体策の検討を加速していきます。

 

ⅱ サステナビリティマネジメントの強化

当社グループは、中期経営計画「Cs+ for Tomorrow 2021」に示すとおり、当社グループの強みである人財・技術・事業の「多様性」と「変革力」により、事業を通じた持続可能な社会への貢献と、当社グループの企業価値の持続的な向上の2つの持続可能性を、好循環で実現することを目指しています。サステナビリティ推進体制として、サステナビリティ推進部を社長直下組織として設けているほか、社長を委員長とし、技術機能部門担当、経営管理機能部門担当、事業領域担当の各役員他を委員とするサステナビリティ推進委員会を設置し、取り組みを推進しています。サステナビリティ推進委員会では、地球環境対策としての当社グループ及び社会の脱炭素化実現に向けた取り組みを検討するとともに、リスク・コンプライアンス委員会やレスポンシブル・ケア委員会等の関連する委員会との連携を取りながら、ESG(環境・社会・ガバナンス)全般に関する方針立案や課題への対応の検討を進めています。

 

 

サステナビリティマネジメント体制


リスク・コンプライアンス委員会:グループ全体のリスク管理とコンプライアンス体制の強化を図るために、コンプライアンスに関する遵守状況とリスク対策の進捗状況をモニタリングする社長直轄の委員会

レスポンシブル・ケア委員会:環境保全、品質保証、保安防災、労働安全衛生及び健康等のレスポンシブル・ケアに関する計画・実績を審議する社長直轄の委員会

 

2020年度に実施した、サステナビリティに関する活動のうち、主なものは以下のとおりです。

■ カーボンニュートラルでサステナブルな社会の実現に向けた活動

・ 温室効果ガス(GHG)の削減

持続可能な社会の実現に向けて、当社グループは2021年5月に、2050年時点でのカーボンニュートラル(実質排出ゼロ)を目指すことを表明しました。当社グループの事業活動に直接関わるGHG排出量であるScope1(自社によるGHGの直接排出)、Scope2(他社から供給された電気・熱・蒸気の使用に伴う間接排出)を対象としています。カーボンニュートラルを実現するため、エネルギー使用量の削減、エネルギーの脱炭素化、製造プロセスの革新、高付加価値/低炭素型事業へのシフトなど、実現に向けたロードマップを策定し、目標達成に向けて取り組みを加速させていきます。また、2030年には、2013年度対比でGHGの排出を30%以上削減することを目指します。

2020年度の具体的な取り組みとしては、当社グループが保有する火力発電所のうち、石炭を燃料とするものについて、CO2排出の少ない液化天然ガス(LNG)に転換するための工事を行っています。当社グループが保有する水力発電設備については、今後も長く活用できるよう、設備の更新と効率化の工事に取り組んでいます。さらに、集合住宅「ヘーベルメゾン」の屋根に当社グループの太陽光発電設備を設置し、発電した電力を当社グループの川崎製造所に供給することで、再生可能エネルギーの活用を推進する取り組みを開始しました。経営管理制度においては、GHG排出削減を加速するため、設備投資の採算性の検討に社内炭素価格の導入を開始しました。

カーボンニュートラル実現に向けた事業化の検討も加速しています。水素関連においては、福島県双葉郡浪江町「福島水素エネルギー研究フィールド」における世界最大規模のアルカリ水電解水素製造システムによる水素供給(グリーン水素の製造)を開始したほか、2021年4月に事業開発強化のためのグリーンソリューションプロジェクトを立ち上げました。加えて、CO2分離・回収システムの開発、次世代CO2ケミストリー技術等の環境貢献技術・製品の開発にも注力しています。

一方、当社グループの既存の製品やサービスで世界のGHG排出削減に貢献することも重点テーマとしています。第三者の専門家の視点を入れて、GHG排出削減効果を期待できる製品・サービスであることの効果算定の妥当性等を確認し、妥当性を確認できた製品やサービスは「環境貢献製品」として広く拡大・普及することを進めています。2020年度は7つの事業・製品を追加し、累積で13事業・製品を「環境貢献製品」として位置付けました。

なお、気候変動が企業の財務に与える影響を分析し開示する「TCFD提言」に基づく検討を、「マテリアル」セグメント、「住宅」セグメントで行い、結果を開示しました。詳細は、「2 事業等のリスク (3) 当社グループ全体に係るリスク ① 気候変動リスク」をご参照ください。

 

・ プラスチックの課題への対応

当社グループでは、プラスチックが海洋流出することや、マイクロプラスチックとして地球環境、生態系に悪影響を及ぼすことを防止するため、各種の取り組みを進めています。マイクロプラスチックの海洋における生成過程の実態を把握することが必要であることから、九州大学と共同で実態解明に向けた研究を進めました。また、世界で最も広く用いられている汎用プラスチックのポリエチレンについて、福岡大学や消費材メーカー、成型メーカー、リサイクル業者等サプライチェーンの関係者と協力し、リサイクル技術の開発の取り組みを推進しました。さらに、ポリスチレンについて、グループ会社のPSジャパン㈱がケミカルリサイクルの実証設備建設の検討を推進するなど、ポリスチレンのリサイクル性を高めるための取り組みを進めました。なお、プラスチックの課題への対応は、各社共通のテーマでもあることから、当社グループはJaIME(海洋プラスチック問題対応協議会)、CLOMA(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス)、一般社団法人 日本化学工業協会、日本プラスチック工業連盟等のアライアンスや業界団体の活動に積極的に参画し、プラスチックの課題への取り組みを他社と協力しながら推進しました。

 

当社グループが考える「カーボンニュートラルでサステナブルな社会」


 

■ レスポンシブル・ケア活動

当社グループは、従来、提供する製品・サービスのすべてのライフサイクルにおいて、「現場」「現物」「現実」を重視して行動する三現主義を徹底し、環境・安全・健康・品質に配慮する「レスポンシブル・ケア活動」を実施しています。しかしながら、2020年度は日本国内にて2件の重大な工場事故が発生しました。当社グループは、安全は経営の最重要課題であると認識し、地域社会や従業員の安全確保に取り組んでいますが、今回の事故を受け、原因究明及び再発防止に努めていきます。

 

・ 守山製造所ハイポア工場の爆発事故について

2020年6月10日に守山製造所ハイポア工場において爆発死亡事故が発生しました。事故を受けて、守山製造所にて事故調査委員会を設置し、本社の事故対策委員会と事故原因の究明及び再発防止策についての検討を進め、2020年10月28日に最終報告をまとめました。設備の安全設計及び腐食対策等の事故再発防止策を徹底し、全社への水平展開を図っています。

 

 

・ 半導体工場の火災事故について

2020年10月20日に宮崎県延岡市にある旭化成エレクトロニクス㈱の半導体製造工場で火災が発生しました。出火原因につきましては、有価証券報告書提出日現在においては判明していませんが、引き続き火災原因の究明、再発防止に取り組んでいきます。製品の供給においては、個々のお客様と協議の上「他社製品への切り替え」及び切り替えが難しいお客様向けとして「代替生産」を進めており、今後も安定した製品供給の確立に努めていきます。

また、2020年度は、リスクアセスメントの展開及び製造プロセスの設備改善のほか、現場での重篤労災の発生を防止するための安全行動活動(ライフ・セービング・アクション)を開始しました。加えて、最近の異常気象にも備えた自然災害リスクの評価活動等も開始しました。製品安全を含む品質活動においては、eラーニング等のオンラインでの教育ツールも活用しながらグループ品質方針の徹底を図り、全従業員が「品質の重要性」と「確信の品質」への理解を高める活動を行いました。

 

■ コンプライアンス・人権

当社グループは、コンプライアンスを重視し、事業・業務に関する法令・諸規則や社内ルールの遵守を徹底しています。また、事業活動において、社会的な規範を含むより高いレベルの企業倫理を実践し、グループ理念に基づくグループバリュー(共通の価値観)にかなった「誠実な行動」を目指しています。その実効性を高めるため、2020年度はコンプライアンス教育を実施したほか、「グループ行動規範」の読み合わせ活動を各部署で行いました。

また「人権・多様性(ダイバーシティ)の尊重」については、国際人権憲章(世界人権宣言並びに国際人権規約)を支持し、基本的人権と多様性の尊重に取り組んでいます。従業員に対して、人権に関するグループの考え方を「グループ行動規範」にて明示し、研修等を通じて浸透を図っています。また、国連グローバル・コンパクトの署名企業として、グローバル・コンパクトの人権に関する原則、及び国連「ビジネスと人権に関する指導原則」「子どもの権利とビジネスの原則」にも賛同し、これらの枠組みに則った人権方針の策定と人権デューデリジェンスの仕組み構築に着手しました。

 

■ ステークホルダーとの対話の強化

当社グループでは、ステークホルダーの皆様に適切な情報開示を行うとともに、双方向のコミュニケーションを取ることが重要と考えています。そこで、2020年度は、投資家、メディアの皆様に対し、当社グループのサステナビリティに対する考え方と実行の状況を説明するため、「サステナビリティ説明会」を開催しました。説明会では、「気候危機」や「COVID-19の感染拡大」という大きな環境変化を受け、中期経営計画「Cs+ for Tomorrow 2021」において掲げた基本姿勢“Care for People, Care for Earth(人と地球の未来を想う)”を踏まえつつ、2050年を見据えて「カーボンニュートラルでサステナブルな社会の実現」「ニューノーマルでの生き生きとしたくらしの実現」に挑戦する方針を示しました。

 

 

ⅲ デジタルトランスフォーメーション(DX)推進による事業高度化

当社グループでは、デジタル技術により当社の強みである人財・技術・事業の「多様性」と「変革力」を最大限活かし、ビジネスモデルを変革させ、価値創造をリードするものとして、DXを積極的に推進しています。2021年度には、DX Vision 2030を策定し、「私たち旭化成はデジタルの力で境界を越えてつながり、“すこやかなくらし”と“笑顔のあふれる地球の未来”を共に創ります」という当社グループが2030年にDXを通じて実現していく世界を表現しました。

また、グループ全体でDXの推進を加速していくために、推進体制の強化に取り組んでいます。2021年4月にはデジタル共創本部を設置し、事業・経営全体におけるDX活用、営業・マーケティング、研究開発、製造・生産におけるDX推進、IT基盤・セキュリティ関連の各機能を集約し、社内外とのデジタル分野における共創・連携体制を整えました。また、このような共創・連携の具現化を進めるべく、デジタル共創ラボ「CoCo-CAFE」を開設しました。社内外のデジタル関連人財の交流を促進し、DX基盤の強化とビジネス創出を目指していきます。加えて、人財の育成、獲得も積極的に実施していきます。グループ全従業員向けのDX教育を強化し、全社員がデジタル活用のマインドセットで働く「4万人デジタル人財化」の施策を進め、DX人財の基盤を固めるとともに、事業責任者をDXリーダーに育成する等、各事業部でDXを自律的に推進できる育成を行っていきます。また、2021年度末までに、育成プログラムの実施や採用を通じて、高度なデジタル技術とデータを活用し、事業の課題解決や、新しい価値・ビジネスモデルを創出できるデジタルプロフェッショナル人財を230名確保することを目指しています。現在までの取り組みが評価され、当社は経済産業省が東京証券取引所と共同で選定する「DX銘柄2021」に選ばれました。

上記のようなDXを推進するにあたり、DX展開ロードマップの策定やKPIを設定し、取り組みの効果を明確にしていきます。現時点においても既に約400件のDX案件が生まれ、いくつかの部門で成果が出始めていますが、今後はこの成果をグループ全体に展開していきます。

 

旭化成グループのDX展開ロードマップとDXの具体事例


 

ⅳ 研究開発と新事業創出

当社グループでは、研究開発においてコア技術やテーマの棚卸を行い、注力すべき対象を定めています。研究開発の具体的な内容については、「5 研究開発活動」をご参照ください。

新事業創出については、社内リソースのみならず、米国を中心に活動を拡大するCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の更なる活用や、他企業、大学、行政等との柔軟な連携により、広い視野を持ちながらスピードを意識して進めていきます。2020年度は、フードロス削減、CO2削減に向けた青果物の鮮度・品質保持ソリューション「Fresh Logi」の展開や、サプライチェーンにおける偽造防止ソリューション(複製困難な透明RFIDラベルとブロックチェーンを用いた偽造防止ソリューション)の開発等に取り組んでいます。

 

ⅴ 事業基盤の強化

■ 従業員が活躍できる基盤づくり

当社グループが目指す、人財・技術・事業の「多様性」と「変革力」による新たな価値の創出に向けて、「人は財産、すべては『人』から」という基本思想のもとに、従業員の自律的成長を後押しし、多様な「個」が活躍できる基盤づくりを推進しています。COVID-19感染拡大の影響による出社や出張の制限により、人びとの働く環境は大きく変わり、そのような行動様式の変化とも相まって個人の価値観の多様化も進んでいます。当社グループでは、主に国内においては多様な人財の活躍及びワークエンゲージメントの向上を目的として、在宅勤務等の多様な働き方を推進するとともに、高度専門職制度の拡充によるプロフェッショナル人財の育成強化や、「KSA(活力と成長アセスメント)」という新たなエンゲージメントサーベイに基づいた組織の活性化・人財の成長施策を進めています。グループの経営を担う人財の拡充の視点では、次世代リーダー候補者にコーチング等を通じて自らの成長を促すとともに、リーダーシップやチームワークを強化するためのプログラムを通じた育成を行っています。また、COVID-19感染拡大後のニューノーマル環境下においては、制度やITインフラの観点等で従業員が働きやすい環境づくりを実施しています。今後は、より変化の激しい時代においても、多様な「個」が世代を問わず、専門性を高め成長し続ける「終身成長」を目指し、施策の具体化を進めていきます。

また、従業員が生き生きと活躍し、「終身成長」を目指すためには、心身ともに健康であることが前提となります。当社グループでは、2019年度に健康経営担当役員・同補佐、並びに健康経営推進室を設置し、2020年度より健康経営を本格的に推進しています。健康経営の目的は、「人は財産、すべては『人』から」という基本思想のもとに、従業員と家族の心身の健康保持・増進を基盤にして、活躍・成長の機会を創造するための休業率低減や従業員の働きがい向上、活気あふれる強い組織風土の醸成を通じた生産性向上、さらには当社グループが目指すサステナビリティへの貢献を実現することです。その中でも、「メンタルヘルス」「メタボリックシンドローム」「がん」「喫煙」「睡眠」「個人・組織活性化」を重点項目として取り組んでいきます。また、当社グループの「ヘルスケア」セグメントの事業にも関連して、AED救命講習の継続的実施やグループ会社での骨粗しょう症検診補助制度の導入などを実施しています。

 

旭化成グループにおける従業員が活躍できる基盤づくり


 

 

■ グローバルオペレーション強化

当社グループの2020年度の海外売上高比率が約4割以上を占める中、地域ごとに市場特性を踏まえて、事業の成長促進とシナジー創出を後押しする機能を強化しています。COVID-19感染拡大の影響により、日本と各地域の拠点間の往来が難しくなったため、ウェブミーティングの実施等オンラインで密にコミュニケーションを取ること、また拠点における管理機能やガバナンス機能を強化することで、サプライチェーンの安定化や地政学的リスクの対応などを進めています。

また、欧州の統括拠点であるAsahi Kasei Europe GmbHAsahi Kasei Microdevices Europe GmbH及び欧州R&Dセンターがドイツ・デュッセルドルフ市内の再開発地域のMedia Harbor西部に位置する「C-View Offices」に移転しました。主に欧州自動車関連産業へのアプローチの強化に取り組み、迅速な顧客対応、市場への新ソリューションの提案、並びに現地パートナーとの共同研究開発プロジェクトの積極的な促進などをより一層進めていきます。

 

当社グループにおける地域ごとの位置付け

米国   :新規ビジネスモデル発信地域、ヘルスケア先進地域

欧州   :環境・自動車の先進地域

中国   :世界市場の一極としての巨大市場

インド  :成長市場

ASEAN   :成長市場、重要製造拠点

 

■ ガバナンス体制の進化

「多様性」と「変革力」を発揮するガバナンス体制の進化を継続的に図っていきます。具体的には「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。

 

 

Ⅱ 財務・資本政策

<経営環境・経営課題>

中期経営計画「Cs+ for Tomorrow 2021」の当初の計画に対して、米中対立やCOVID-19感染拡大の影響による経営環境の変化を踏まえて財務規律を重視し、設備投資・投融資の案件を厳選したことや適切な在庫管理・経費管理を徹底することなど、財務面への影響の抑制に努めました。その結果、営業キャッシュ・フローは目標レンジに到達することを目指せる範囲で推移しており、株主還元は当初の想定の水準で実施する予定です。今後も健全な財務状態を保ちながら、事業ポートフォリオの転換や中長期的な成長に資する案件の投資を着実に実行することで、当社グループのキャッシュ創出力や資本効率を持続的に高め、「持続可能な社会の実現」への貢献と「持続的な企業価値の向上」の両立を実現していきます。

 

<経営方針・経営戦略>

ⅰ 資金の源泉:米中対立やCOVID-19感染拡大の影響を最も強く受けた「マテリアル」セグメントでは、事業ポートフォリオ転換を通じた収益性や資本効率の持続的な向上、「住宅」セグメントでは、新事業での成長や生産性向上による継続的なキャッシュ・フローの創出、「ヘルスケア」セグメントでは、過去の投資からのリターン創出を通じた利益成長と収益性を追求し、グループ全体としてキャッシュ創出力や資本効率を向上させていきます。また、2020年度に強化した在庫管理・経費管理を今後も継続して実施していきます。有利子負債の調達においては、中期経営計画「Cs+ for Tomorrow 2021」で想定していた2,000~4,000億円の範囲での増加を見込み、D/Eレシオ:0.5を目安とした調達を引き続き実施していきます。

 

 

ⅱ 設備投資・投融資:COVID-19感染拡大による経営環境の変化を受けて、設備投資・投融資案件を厳選し、中期経営計画「Cs+ for Tomorrow 2021」の期間内においては、7,000~8,000億円の水準で意思決定を行う計画です。中期的成長が見込める「ヘルスケア」セグメントにおけるM&A、「マテリアル」セグメントの価値提供注力分野における事業の生産能力増強投資、DXやサステナビリティ関連の投資など、当社グループの持続的な成長が見込めるテーマへの投資を積極的に行っていきます。

 

中期経営計画「Cs+ for Tomorrow 2021」における投資・投融資の進捗


 

ⅲ 株主還元:成長投資と株主還元をバランスよく行うため、適切な内部留保を保ちながら、安定配当と継続的な収益拡大による増配を目指すことを基本方針としています。一時的な利益水準の変動によらず、財務体質や中期的なフリー・キャッシュ・フローの見通しを踏まえた最適な株主還元を実現していきます。配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」とあわせてご参照ください。

 

ⅳ 資本コスト:当社グループは株主資本コストを認識し、持続的にこれを上回る自己資本利益率(ROE)を追求します。最適資本構成を追求するとともに、各事業の投下資本利益率(ROIC)の向上に向けた事業ポートフォリオの転換、競争優位性の構築、生産性の向上、投資案件の精査と投資効果の追求等を進めていきます。

 

中期経営計画「Cs+ for Tomorrow 2021」における財務・資本についての計画と現在の見立て


 

 

 

③ 各セグメントの経営方針・経営戦略等

 「マテリアル」セグメント

価値提供注力分野  :「Environment & Energy」「Mobility」「Life Material」

基本戦略          :価値提供注力分野への経営資源の柔軟なシフト

 

<経営環境・経営課題>

本セグメントにおいては、「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおり、汎用の石油化学製品を中心とする基盤マテリアル事業、繊維、高機能ポリマー、消費財を中心とするパフォーマンスプロダクツ事業、電池用セパレータや電子材料等特殊用途の素材、電子部品等を中心とするスペシャルティソリューション事業を運営しています。これらの事業において、ビジネスモデルや市場の状況、競争優位性等の事業環境は、製品群によって大きく異なります。特に、COVID-19感染拡大により産業構造や需要構造が不可逆的に変化したため、事業の規模拡大を追求するよりも、収益性や資本効率の持続的な向上を優先し、中期的な成長が期待される分野へ経営リソースの配分を加速することで、事業ポートフォリオの転換を進めていきたいと考えています。各価値提供注力分野における経営環境は以下のとおりと認識しています。

ⅰ 「Environment & Energy」分野

カーボンニュートラルの動きがグローバル全体で加速

脱炭素に貢献する技術やソリューションに対するニーズの急速な高まり

ⅱ 「Mobility」分野

一時的に市場は低迷したが、「CASE」と呼ばれる技術革新の進展による、素材を通じた価値提供機会の増加

ⅲ 「Life Material」分野

COVID-19感染拡大の環境においても需要は堅調に推移

次世代通信の進展や衛生意識の変容、新しいライフスタイルによる新たなニーズの高まり

 

<経営方針・経営戦略>

価値提供注力分野である「Environment & Energy」「Mobility」「Life Material」における主な取り組みの方針・進捗は、以下のとおりです。

ⅰ 「Environment & Energy」分野

■ 価値提供の方向性:システム化・ソリューション提供

素材の要素技術やプロセス、オペレーションノウハウを組み合わせたシステム化・ソリューション提供

環境貢献技術・製品の開発加速

■ 主な取り組み

・リチウムイオン電池用セパレータ事業:供給能力を電気自動車等の環境対応車の市場拡大に合わせ段階的に拡大し、23年度に19億㎡、中期的に30億㎡体制を計画。湿式タイプと乾式タイプの両技術で多様な顧客の要求に対応

 

 

ⅱ 「Mobility」分野

■ 価値提供の方向性:提案型事業へのシフト

・電気自動車等の環境対応車に求められるサステナビリティ要求に対して、部品の軽量化、モジュール化、環境親和素材の提案

・キーカスタマーへのマーケティング強化

■ 主な取り組み

・自動車内装ファブリック事業:Sage Automotive Interiors, Inc.を中心とした事業の拡大。買収したAdient plcの自動車内装ファブリック事業や環境にやさしい人工皮革「ラムース®」との相乗効果の追求

・エンジニアリング樹脂事業:自動車構造部品や自動車用リチウムイオン電池構造部品に向けたエンジニアリング樹脂発泡体「サンフォース®」展開の加速やCAE(Computer Aided Engineering)等のデジタル技術活用を通じた自動車メーカーへの部品提案

・CO2センサー、アルコールセンサー事業:各種センサーを活用した車室空間ソリューションの提供

 

ⅲ 「Life Material」分野

■ 価値提供の方向性:高付加価値素材での性能・機能の提供

・デジタル社会の進展で求められる性能や機能を素材で実現

特徴ある素材・デバイスでヘルスケア等の分野の新しいニーズへ価値提供

■ 主な取り組み

・電子材料・基板材料事業:次世代通信向け素材の展開加速

添加剤事業:医薬品向け高機能品の拡大に向けた結晶セルロース「セオラス®」第2工場の建設

・感光材事業:フレキソ印刷(包装資材向け)に使われる水現像感光性樹脂用の全自動製版システムを他社協業で展開

・新事業の展開加速:診断薬用着色セルロース粒子「NanoAct®」のCOVID-19抗原検査キット等への展開、ドラッグデリバリーシステム基剤向けヒアルロン酸ナノゲルの開発

 

Ⅱ 「住宅」セグメント

●価値提供注力分野  :「Home & Living」

●基本戦略          :バリューチェーン・マネジメントの強化・拡張

 

<経営環境・経営課題>

日本国内の建築請負事業においては、COVID-19感染拡大の影響により、住宅展示場の閉鎖等による新規集客・受注活動の制限の影響が出ています。これらの影響を軽減するために、デジタル技術を活用した様々なチャネルで集客活動、受注活動を強化し、集客数及び受注数を向上させることが課題です。

一方、自然災害の多発化や人生100年時代におけるライフスタイルの多様化により、住宅を取り巻くニーズは変化し続けています。今後は、災害に強く安心できるレジリエンス(防災力)の高い住宅、環境負荷を低減する住宅やシニアが安心かつ快適に生活できる住宅等の事業機会は広がっていくと考えています。これらの機会に対応し、都市で培ったノウハウを活かし、日本国内の関連市場へ新事業を展開していくこと、また、日本国内市場の成長の鈍化を踏まえて、海外市場へ事業展開を加速していくことが課題であると考えています。

 

 

<経営方針・経営戦略>

価値提供注力分野である「Home & Living」における主な取り組みの方針・進捗は、以下のとおりです。

ⅰ デジタル技術を活用したマーケティング等による集客、受注活動の推進や生産性の向上

ⅱ サステナビリティ実現に向けた取り組み強化

旭化成ホームズ㈱のRE100への参加やZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)普及に向けた取り組みの推進、国内初となる非FIT非化石電源の当社グループ内の供給。環境貢献度の高い断熱材「ネオマフォーム」に関して、第18回GSC賞環境大臣賞、第52回日化協技術賞環境技術賞受賞。

ⅲ レジリエンスの強化

耐震性の高い住宅や防災科学技術研究所とのリアルタイム地震被害推定システム研究など、安心できる住まいを実現させる取り組みの推進。当社グループの分譲マンションである「アトラス上熊本」に関して、第7回ジャパン・レジリエンス・アワード最優秀賞受賞。

ⅳ 新事業の展開加速

■ 海外事業

国内請負事業で培った工業化住宅の強みを活かせる海外事業の拡大。豪州では、当社グループが株式の40%を保有するMcDonald Jones Homes Pty Ltdの株式を追加取得する契約を締結し、連結子会社化。躯体サプライヤーも垂直統合し、豪州における注文住宅の建築請負及び分譲住宅の販売において、トップブランドを目指す。北米では、Erickson Framing Operations LLCに、戸建住宅の住宅用電気設備・基礎工事・空調設備工事を行うAustin Electric Services, LLC、Austin Concrete & Stone LLC、Austin HVAC LLCを水平統合し、合理化と高品質な建物の提供を目指す。

■ シニア事業

健常期~フレイル期~要介護期までのシームレスなサービス提供を実現し、生涯にわたる安心な暮らしを提供。介護施設の運営を行うシマダリビングパートナーズとの資本業務提携。

■ 中高層事業

安全性・メンテナンス・長期保証を含む持続可能な都市型ビルを提供し、ビル経営における新たな価値創造や将来の不安解消を実現。

 

Ⅲ 「ヘルスケア」セグメント

●価値提供注力分野  :「Health Care」

●基本戦略          :グローバル・ヘルスケア・カンパニーへの進化の更なる加速

 

<経営環境・経営課題>

短期的には、医薬事業において、COVID-19感染拡大の影響によりMR(医薬情報担当者)の病院への訪問等の活動が制限を受けています。オンラインでの企画の強化やチャネルの拡大など、病院への訪問を前提としない営業活動を強化していくことが課題です。一方で、COVID-19に罹患した患者様を治療するための人工呼吸器の需要が急激に増加し、供給量を大幅に増やすことで、患者様の命を救うことに貢献してきました。また、COVID-19治療薬の開発品目の増加を受け、生物学的製剤向けウイルス除去フィルター等の需要が高まり、安定生産や生産能力増強を通じて供給責任を果たすことで、COVID-19の早期収束と収束後の医療へ貢献したいと考えています。

中長期的には、医療費削減圧力が高まることによる市場成長の鈍化が予想される一方、先進諸外国においては、より良い医療に対するニーズの高まりや長寿社会の進展に伴い、引き続き安定的な市場成長が継続すると認識しています。そのため、「ヘルスケア」セグメントの中長期的な成長のための課題は、「グローバル・ヘルスケア・カンパニー」への進化を加速することであり、当社グループに足りない経営資源を追加・補強する手段としてM&Aやライセンス導入による事業開発を位置付けています。2020年度は、2019年度に買収したVeloxis Pharmaceuticals, Inc.の腎移植手術患者向け免疫抑制剤「Envarsus XR」が着実に販売数を伸ばし、より多くの患者様のアンメットニーズに対応してきました。引き続き、既存事業の成長とM&A等の事業開発を活用した成長により、医薬事業と医療事業の両事業の稼ぐ力を強化し、当社グループの成長を牽引する第三の柱となることを目指します。

 

<経営方針と経営戦略>

価値提供注力分野である「Health Care」における主な取り組みの方針・進捗は、以下のとおりです。

ⅰ クリティカルケア事業

心肺蘇生を中心とした既存事業(Chain of Survival”)の持続的な成長及び企業買収を通じた、更なる既存事業強化と周辺領域への拡大。近年、買収した企業は以下のとおりです。

2019年6月 Cardiac Science Corporation(自動体外式除細動器(AED))

2019年6月 TherOx, Inc.(急性心筋梗塞治療用機器)

・2021年4月 Respicardia, Inc.(中枢性睡眠時無呼吸症治療 植え込み型神経刺激デバイス)

ⅱ 医薬事業(海外)

Veloxis Pharmaceuticals, Inc.の腎移植手術患者向け免疫抑制剤「Envarsus XR」の着実な伸長及びCD28阻害薬「FR104」のOSE Immunotherapeutics SAからのライセンス導入契約締結(FR104:臓器移植における新規免疫抑制薬として、現在の標準治療薬の代替となる可能性のある新薬開発品)。

ⅲ 医薬事業(国内)

骨粗しょう症治療薬「テリボン®オートインジェクター」の市場への浸透、慢性疼痛薬AK1780のELI LILLY AND COMPANYへの独占的実施権許諾のライセンス契約締結。骨検(ほねけん)ウェブサイト開設による、骨粗しょう症の疾患啓発活動の開始。

ⅳ 医療事業

生物学的製剤の市場成長に合わせたウイルス除去フィルター「プラノバ™」の販売拡大と生産能力の増強(中空糸生産能力:4万㎡/年増加し、トータルで13万㎡/年へ)及びVirusure Forschung und Entwicklung GmbHの買収を通じた製薬企業向けバイオセーフティ試験受託サービス事業へ参入。

 

 

(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

「マテリアル」セグメント

「(1) 経営方針・経営戦略等 ③ 各セグメントの経営方針・経営戦略等」 Ⅰ 「マテリアル」セグメントに記載の項目に加えて、以下の事業上の課題があります。

 

Ⅰ 「Environment & Energy」分野

リチウムイオン電池用セパレータ事業については、2015年度に買収したPolypore International, LPの製品群も含めて、湿式・乾式の特徴が異なる両タイプの製品を提供し、世界市場で高いシェアを維持しています。特に、今後も需要が拡大すると考えられる、電気自動車等の環境対応車向けのリチウムイオン電池用途では、更なるビジネス拡大の機会があると考えています。また、需要拡大に伴い競合他社との競争も厳しくなってきています。そのため、市場動向を見極めつつタイムリーに需要に対応し、競争優位性のある高付加価値製品を供給し続けていくことが課題であると認識しています。タイムリーな能力増強と継続的な高付加価値製品の開発を進めていきます。

 

Ⅱ 「Mobility」分野

2020年度第1四半期を中心に、COVID-19の感染拡大による外出自粛や各国における都市閉鎖の影響を受け、自動車生産台数の減少による関連製品の需要減が見られました。2020年度第2四半期からは、各国での自動車関連製品の需要が回復し、2021年度は一部半導体不足等による需要減少のリスクがあるものの、引き続き回復傾向にあると見ています。一方、中長期的には自動車の「CASE」と呼ばれる技術革新の進展が加速し、又は変化していくことにより、新たなニーズが生まれてくると考えています。特に低炭素社会の実現に向けて、電気自動車等の環境対応車の需要拡大や資源の有効活用など、自動車業界における環境負荷低減の動きが今後加速するものと考えており、このような社会ニーズに向けた対応が必要です。

車室空間には、これまでにない快適性やデザイン性に加えて、リサイクル原料の使用等環境負荷低減に繋がる製品が求められており、環境特性に優れた人工皮革「ラムース®」の需要増加に対応するため、供給能力を増強しています。また、米国子会社のSage Automotive Interiors, Inc.との連携を強化しつつ、2020年度に買収した大手自動車シートサプライヤーの米国Adient plcの自動車内装ファブリック事業との統合効果を発現させていきます。

加えて、自動車の燃費向上・電動化等による車体軽量化のニーズが拡大しています。これらの顧客のニーズに合わせて、車体軽量化に寄与する構造部品向けのエンジニアリング樹脂製品や樹脂発泡体の展開をグローバルに加速していくとともに、このようなニーズへ対応すべく、グローバル市場におけるキーカスタマーへのマーケティングを強化していきます。

一方、自動車の安全性の更なるニーズも機会として認識しています。2018年度に買収したSenseair ABのアルコールセンサーによる飲酒運転防止等、新たな価値提供を実現するため、開発を推進していきます。

 

Ⅲ 「Life Material」分野

次世代通信による情報通信高度化の需要は順調に拡大しており、情報通信機器に使用されるガラスクロス等の電子材料・基板材料のニーズは増加しています。今後も市場動向を注視し、タイムリーに顧客へソリューション提供をしていくべく、対応の高度化を進めていきます。

また、結晶セルロース「セオラス®」の主用途である医薬品錠剤向け需要は、世界的に堅調であり、将来的な供給能力の拡充が必要であること、顧客からの生産拠点複数化による安定供給力向上のニーズが高まっていることから、第2工場の建設を意思決定しました。より多くのお客様に提供できるように計画通り進めていきます。

 

 

 「住宅」セグメント

「(1) 経営方針・経営戦略等 ③ 各セグメントの経営方針・経営戦略等」 Ⅱ 「住宅」セグメントの項目をご参照ください。

 

③ 「ヘルスケア」セグメント

「(1) 経営方針・経営戦略等 ③ 各セグメントの経営方針・経営戦略等」 Ⅲ 「ヘルスケア」セグメントの項目をご参照ください。

 

④ 財務上の課題

「(1) 経営方針・経営戦略等 ② 当社グループ全体の経営方針・経営戦略等」Ⅱ 財務・資本政策の項目をご参照ください。

 

 

2 【事業等のリスク】

当社グループは、その広範にわたる事業により安定的な事業運営を実現していますが、個々の事業では事業の性格により異なる市場リスク・投資リスクをはじめ様々なリスクを内在しています。これらのリスクは予測不可能な不確実性を含んでおり、当社グループの財政状態や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクの回避及び発生した場合の対応に必要なリスク管理体制及び管理手法を整備し、リスクの監視及び管理等の対策を講じますが、これらすべてのリスクを完全に回避するものではありません。

将来の事項に関する記述につきましては、有価証券報告書提出日現在において入手可能な情報に基づき、当社グループが合理的であると判断したものです。

 

(1) グループのリスク管理・コンプライアンス基本規程

グループ全体のリスク管理とコンプライアンスの推進を一元的に管理・運営するため、「グループリスク管理・コンプライアンス基本規程」において、組織体制等の基本的事項を定めています。

 


 

(2) リスク・コンプライアンス管理体制

社長を委員長とし、各事業本部と事業会社の長を委員とするリスク・コンプライアンス委員会を設置し、当社グループ全体のリスク管理とコンプライアンスに関する方針決定や審議、リスク対策の進捗状況とコンプライアンスの徹底状況のモニタリングを行っています。なお、委員会での審議結果等については、年に2回、取締役会に報告しています。


 

 

(3) 当社グループ全体に係るリスク

① 気候変動リスク

当社グループは、気候変動に関して生じる変化を重要なリスク要因として認識しています。当社グループは、2019年5月にTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)提言に賛同し、気候変動リスクを分析し、開示しました。なかでも、気候変動が事業に与える影響が比較的大きいと想定され、TCFD提言で開示が推奨されるセクターに該当する「マテリアル」セグメント、「住宅」セグメントについて、2つのシナリオに基づき気候変動が事業に及ぼす影響の分析、対応策の検討を行いました。

産業革命前からの気温上昇を+2℃未満に抑えるシナリオ(主として移行リスク)においては、社会の脱炭素化に向けた規制強化によるコストの増加が、業績に影響を与える可能性があります(例:国際エネルギー機関(IEA)のシナリオに基づく炭素税水準を想定する場合、製造コストの増加は、最大年間600億円程度(2019年度温室効果額(GHG)排出量約4百万トン×炭素税$140/トン))。このようなリスクに対して、当社グループは、再生可能エネルギーの活用、エネルギー消費の低減、新たな工業プロセスの適用、事業ポートフォリオの転換等により、影響の抑制を図っていきます。また、脱炭素社会で必要となる電気自動車等の環境対応車の普及や、住宅等の建築物でのGHG排出抑制は、当社グループの高機能素材や住宅事業にとって、事業展開・拡大の機会であると分析しています。

一方、温暖化が十分に防止されず、産業革命前からの気温上昇が+4℃となるシナリオ(主として物理的リスク)においては、風水害の甚大化による工場の被災・生産停止、原材料供給網の寸断、また、酷暑による住宅建設現場等での屋外作業の労働環境・生産性の悪化が懸念され、業績に影響を与える可能性があります。これらのリスクに対して、当社グループは、BCP(事業継続計画)の継続的見直し、自然災害に対するレジリエンス向上、住宅建設の更なる工業化・デジタル技術の活用等により、影響の抑制を図っていきます。また、強靭性を特長とする住宅事業や、極めて高い断熱性を有する断熱材事業の展開・拡大の機会であると分析しています。

以上のとおり、気候変動は、当社グループ経営に少なからずマイナスの影響を与えうると想定されるものの、多様な事業からなる事業ポートフォリオによりリスク対応が可能であることから、グループ全体に与える財務的なネガティブリスクは限定的と分析しています。一方で、多様な技術・事業によって、気候変動に関する新たな事業機会を獲得できるポテンシャルがあると認識しています。今後、「ヘルスケア」セグメントにも分析の範囲を広げるなど、検討内容の充実を図り、結果を開示していきます。

 

② COVID-19感染拡大によるリスク

COVID-19感染症の研究や人びとへのワクチンの接種が進んでいますが、感染力が強く重症化リスクが高いとされる変異株が確認され、再び感染者数が増加するなど、感染拡大が経済活動に及ぼす影響の程度、期間については見通しが依然不透明であり、当社グループの業績に影響を及ぼすリスクがあります。また、感染者増加の抑制や各地域政府による操業規制等の方針により、当社グループの製造・営業・物流・工事・建設等の拠点において、事業活動が制約を受ける可能性があるため、引き続き、オンラインでの業務対応等によりその影響を軽減していきます。加えて、COVID-19感染拡大による影響の内容や程度により、需要が大きく変動する製品もあるため、注意深く需要動向をモニタリングし、適正な水準の在庫の維持や安定的な供給対応を進めていきます。

 

③ グローバルなサプライチェーンに関するリスク

当社グループは、「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3つのセグメントからなる多様な事業を運営しており、事業ごとに原材料や部品、施工業者、物流経路、倉庫、販売先に至るまで、国内外で多様なサプライチェーンを構成しています。そのため、世界中で発生する自然災害、産業事故、人権問題、紛争、経営破綻等による、取引先との取引回避や取引先の機能不全により、サプライチェーンが途絶するリスクがあります。サプライヤーの選定におけるリスク評価や監査の実施、サプライヤー及び販売先のモニタリングなどを通じて、リスクを低減させることに加えて、主要製品・事業における原材料の調達ルートの多様化や適正な水準の在庫の確保を通じて、安定操業に向けた取り組みを強化しています。

 

 

④ 通商・経済制裁等規制に関するリスク

・ 通商に関するリスク

当社グループは、原材料の購入や製品の輸出、海外における現地生産等、幅広く海外で事業を展開し、国際貿易や資金決済に関する二国間あるいは多国間の協定や枠組みのメリットを享受しています。これらの協定や各種枠組み等の変更や新規規制の導入などにより、関税の増加、通関の遅延・不能、資金決済の遅延・不能が生じ、代金回収や事業遂行の遅延・不能、業績悪化等が発生するリスクを負っています。当社グループでは、適時に規制内容を理解することや、関係当局に事前に相談し、対策を講じることによって、これらのリスクの低減に努めています。また、グループ会社間の国際的な取引価格については、当社グループ税務方針に基づき、日本国政府及び相手国政府の移転価格税制を遵守していますが、税務当局から取引価格が不適切であるとの指摘を受ける可能性や、協議が不調となった場合に二重課税や追徴課税を受ける可能性があります。そのため、重要性の高いグループ会社間取引については、事前確認制度の活用、あるいは、外部専門家の意見も参考にしながら、各国の移転価格税制を踏まえた独立企業間価格を設定しています。

 

・ 経済制裁、各種規制に関するリスク

当社グループは、製品の輸出や海外における現地生産等、幅広く海外で事業展開をしており、安定的な国際通商のメリットを享受しています。そのため、何らかの理由により二国間あるいは多国間の通商環境が変化することにより、海外の会社との取引や出資、その他事業活動に影響を受けるリスクがあります。特に、近年国際関係の緊張が高まっており、これに伴って日本や諸外国において、経済安全保障の観点から経済制裁、輸出管理規制、外国直接投資規制を強化する動きが続いています。これらの動向には常に注意を払っており、適時に規制内容を理解することや関係当局に事前に相談することに加えて、経済制裁については外部の顧客スクリーニングシステム等を利用して慎重な取引審査を行うなどにより、適切な対応に努めています。一方で、これらの規制に対応することにより、取引先との取引の停滞・中断、資金の移動の遅延・停止、事業遂行の遅延・不能等により、業績に影響を及ぼすなどのリスクがあります。

 

⑤ 事業競争力に関するリスク

当社グループは、「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3つのセグメントにおいて、付加価値の高い製品・サービスを提供していますが、類似の製品や技術による競合企業のキャッチアップ、新たな競合企業の参入等によって競争環境が激化することや、デジタル技術や脱炭素化に貢献する技術等急速な技術革新による産業構造の変化、急激な需要構造・市場構造の変化などにより、当社グループの各事業の競争力を損なう可能性があります。当社グループでは、競合製品の競争力や産業構造の変化をタイムリーかつ的確に見通すことに努めるとともに、製品やサービスの絶え間ない差別化や模倣困難なビジネスモデルの構築、知的財産等による高い参入障壁を設けることにより、これらのリスクの低減に努めています。

 

⑥ M&Aに関するリスク

当社グループは、高い付加価値型事業の集合体を目指し、事業投資、新規事業の創出や事業ポートフォリオの転換の手段として、国内外におけるM&Aを通じた事業展開を行っています。これまでZOLL Medical Corporation(2012年度)、Polypore International Inc.(2015年度)、Sage Automotive Interiors, Inc.(2018年度)、Veloxis Pharmaceuticals A/S(2019年度)など、大型買収を行ったことからのれん及び無形固定資産残高は増加傾向にあります。M&Aの結果取得した無形固定資産の企業結合日時点における時価については、コスト・アプローチ、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチなどによって合理的に算定された価額を基礎として算定しており、事業計画等の不確実性を伴う仮定が反映されています。

そのため、事業計画等において初期に期待した投資効果が発現しなかった場合や合弁会社の経営が悪化した場合、被買収企業との事業統合が遅延した場合など、のれんや無形固定資産の減損等により当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。当社グループでは、買収検討の対象企業のデューデリジェンス(詳細調査)を慎重に行い、買収後の事業統合の計画を入念に検証することで、リスクの低減に努め、過去の大型買収に関する減損損失の計上はありません。しかし、過去の大型買収が海外での新規市場や成長市場に関する案件であり、想定外の事業環境の変化への対応を誤ると、投資額の回収が困難となるリスクを抱えています。

 

⑦ 市況によるリスク

・ 原油・ナフサ価格変動リスク

当社グループは、原油やナフサを原料とした石油化学製品の製造・販売事業を展開しています。また、各原料市況並びに需給バランスから固有の市況を形成しており、その変動は当該事業や誘導品からなる当社グループの各事業に影響を及ぼします。特に、事業規模が大きいアクリロニトリル事業は市況の変動の影響が大きいため、販売価格のフォーミュラの見直し等、収益の安定化に努めています。

 

・ 為替変動リスク

当社グループは、輸出入及び外国間等の貿易取引において、外貨建ての決済を行うことに伴い、円に対する外国通貨レートの変動による影響を受けます。そのため、取引においては、先物為替予約等によるヘッジ策やCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)の活用による、安定的かつ効率的な資金活用を目指しています。当社グループは、収益の多くが外貨建てであることに加え、当社の報告通貨が円であることから、外国通貨に対して円高が進むと、当社グループの業績にマイナスのインパクトを与えます。当社の試算では、米ドル・円レートが1円変動すると連結営業利益に年間14億円の変動をもたらします。

 

⑧ その他のリスク

上記のリスクのほか、大規模自然災害、産業事故、製品の欠陥に起因する事故、知的財産権、新たな法令に起因する事業上のリスクが想定されますが、担当専門部署にて、予防策を講じることでリスクのミニマイズに努めています。また、リスクが顕在化した場合の復旧費用等に充当する目的で損害保険付保によるリスクファイナンス(資金確保)を行っています。さらには、重要なリスク案件について、定期的にリスク・コンプライアンス委員会で議題として確認し、経営の品質向上に努めています。

 

(4) 各セグメントに係るリスク

① 「マテリアル」セグメント

「Environment & Energy」分野においては、リチウムイオン電池用セパレータの世界的な需要変化及び競合他社の販売政策により販売量・販売価格が当社予測を下回る可能性があります。そのため、当社グループは、多様化する顧客ニーズに対応すべく、中長期で需要が増えると予測する電気自動車等の環境対応車や蓄電システム(ESS)用途を中心に生産能力の増強を推進し、安定的かつ高水準の品質を強みに様々な顧客ニーズに対応します。また、同事業は、各国の規制・環境問題等によるサプライチェーンの変化、テクノロジーの変化により、事業環境が急激に変化することが中期的なリスク要因と考えられるため、事業環境の動向の把握と迅速な対応を続けていきます。

「Mobility」分野の事業は、世界の自動車業界の動向に影響を受ける場合があります。自動車部材用のエンジニアリング樹脂や低燃費タイヤ向けの合成ゴム、自動車内装材等については、2020年度第1四半期においてはCOVID-19の感染拡大の影響により需要が減少しましたが、2020年度第2四半期より需要が急回復する一方、足元では半導体不足の影響等による需要の減速リスクがあるなど、需要の変動が見通しにくい状況が続いています。各国の自動車関連市場を注視するとともに、適正な水準の在庫を保有し、変化する需要に柔軟に対応します。一方、自動車の「CASE」と呼ばれる技術革新をはじめとした業界の変化は、今後も進展していくと考えています。特に低炭素社会の実現に向けて、電気自動車向け素材等、環境負荷低減に対応した素材が求められており、自動車に求められるニーズは加速的に変化しています。このようなニーズに対応した、素材のラインナップ拡充や展開エリアの拡張を図り、持続的に成長できるビジネスモデルの構築を推進していきます。

 

 

② 「住宅」セグメント

「Home & Living」分野の国内事業においては、日本国内の個人消費動向・金利・地価・住宅関連政策ないし税制の動向に大きく影響を受ける場合があります。足元ではCOVID-19感染拡大により、顧客とのコミュニケーションのあり方が大きく変わるなどの影響を受けていますが、一方で、在宅勤務が増えることで、新たな暮らしのニーズが生まれる機会でもあると考えています。当社グループは、デジタル技術を活用したマーケティング等による集客、受注活動の推進等により、新たな顧客とのコミュニケーションのあり方を確立し、ニーズに対応していきます。

米国、豪州の事業においては、各国の住宅市場の影響を受けることから、現地の関係会社を通じ、市場動向をモニタリングしていきます。また、世界的に木材需要が逼迫する「ウッドショック」が発生しており、今後の需給状況によってはさらに木材価格が変動するリスクがあります。国内事業は、木材の使用量は少なく影響は軽微であると見ていますが、米国、豪州の事業は木材を多く使用しているため、今後の木材市況をモニタリングし、影響の抑制に努めていきます。

加えて、事業の特性上、大量の個人情報を扱っているため、個人情報の漏洩等があれば、当社グループの信用を毀損するリスクがあります。そのため、個人情報保護には特に配慮して対策を講じています。

 

③ 「ヘルスケア」セグメント

医薬品や医療機器等の「Health Care」分野の事業においては、一般的に、その販売数量や販売単価等が定期的な薬価・保険償還価格の改定の影響を受ける場合があります。特に新薬の研究開発期間は長期にわたることに加え、新薬が承認取得に至る確率が高くないことなどから、製品化の確度や時期について正確な予測が困難な状況にあり、計画どおりに製品化できなかった場合は業績に影響を与える可能性があります。医薬品や医療機器が製品化した場合でも、競合品の開発・上市の動向、有害事象の報告、後発品の上市等により、業績に影響を与える可能性があります。そのため、当社では医薬事業と医療事業の両方を持つことで、多様な成長力・競争力を獲得し、イノベーション獲得機会の増加を図るとともに、医療規制等将来の不確実性への対応力を高めていきます。また、パイプラインの拡充、製品導出・導入、共同開発、グローバル展開の加速等に努めることで持続的な安定成長を図ります。

足元では、引き続き、COVID-19感染拡大による患者様の受診抑制等の影響により、国内医薬品やクリティカルケア製品の一部の需要が減少する可能性があり、今後も状況を注視していきます。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

本項の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は、将来のリスク、不確実性及び仮定を伴う予測情報を含んでいます。これらの記述は、現時点で当社が入手している情報を踏まえた一定の前提条件や見解に基づくものであり、「2 事業等のリスク」等に記載された事項及びその他の要因により、当社グループの実際の業績はこれらの予測された内容とは大幅に異なる可能性があります。

 

(1) 経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容

① 経営成績

Ⅰ 当社グループ全体

当社グループの当連結会計年度(2020年4月1日~2021年3月31日、以下、「当期」)における世界経済は、米中対立に加えて、第1四半期を中心に、世界的なCOVID-19感染拡大の影響による都市封鎖や外出自粛などにより経済活動が停滞し、第2四半期から景気が回復基調に転じたものの、年間を通じて世界のGDPがマイナスに転じるなど、大変厳しい経済環境でした。

このような経営環境を受けて、当社グループの連結業績は、「ヘルスケア」セグメントはCOVID-19の治療等に貢献する事業を中心に前連結会計年度(以下、「前期」)比増収増益となりましたが、「マテリアル」セグメントにおけるCOVID-19感染拡大による世界経済悪化及び住宅領域における消費増税やCOVID-19による影響があったことから、売上高は2兆1,061億円となり前期比456億円の減収、営業利益は1,718億円で前期比55億円の減益、経常利益は1,780億円で前期比60億円の減益となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、半導体工場火災の影響等による特別損失の計上やVeloxis Pharmaceuticals, Inc.の組織再編に伴う税金費用の一時的な増加により798億円と前期比242億円の減益となりました。その結果、EPS(1株当たりの当期純利益)は57.49円と前期比17.36円の減少となりました。

資本効率については、2020年度はROIC:4.9%と前期比1.7%の減少、ROE:5.6%と前期比2.0%の減少となりました。当期の資本効率低下の主な原因は、営業利益及び親会社株主に帰属する当期純利益が、上述のVeloxis Pharmaceuticals, Inc.の組織再編に伴うグループ内資産譲渡益課税による税金費用の計上により減少したことに加え、前期のVeloxis Pharmaceuticals, Inc.の買収等に伴い総資産が増加したことによるものです。

 

〈当社グループの業績〉

 

経営指標

2018年度

2019年度

2020年度

前期との

差異

収益性

売上高

(億円)

21,704

21,516

21,061

△456

営業利益

(億円)

2,096

1,773

1,718

△55

売上高営業利益率

(%)

9.7

8.2

8.2

△0.0

EBITDA

(億円)

3,136

2,956

3,051

+95

売上高EBITDA率

(%)

14.5

13.7

14.5

+0.8

親会社株主に帰属する当期純利益

(億円)

1,475

1,039

798

△242

EPS

(円)

105.66

74.85

57.49

△17.36

資本効率

ROIC

(%)

8.8

6.6

4.9

△1.7

ROE

(%)

11.1

7.6

5.6

△2.0

財務健全性

D/Eレシオ

 

0.31

0.52

0.45

△0.07

 

 

 

Ⅱ セグメント別

ⅰ 「マテリアル」セグメント(価値提供注力分野:「Environment & Energy」「Mobility」「Life Material」)

第1四半期を中心に、COVID-19感染拡大の影響による自動車関連市場の需要減少や石化製品市況の悪化の影響を受け、第2四半期から需要や市況の回復等を背景に業績が回復したものの、売上高は9,912億円で前期比1,019億円の減収、営業利益は665億円で前期比259億円の減益となりました。

 

・ 基盤マテリアル事業

第1四半期を中心に、COVID-19感染拡大の影響による世界的な経済活動の停滞により、石化製品の需要減少や石化市況の下落があり、第2四半期より市場、市況ともに回復傾向ではありましたが、各製品の販売数量減や期首に製品市況が急激に下落したことに伴う在庫受払差により、減益となりました。主力事業であるアクリロニトリル事業では、販売数量の減少に加えて、市況下落による交易条件の悪化による減益となっています。第2四半期以降は、需要の回復に伴い、販売量及び市況ともに改善が見られました。なお、同事業では、販売価格の原材料連動フォーミュラ化を進めるなど、市況の影響を受けにくい安定的な収益を創出できるよう努めています。

 

・ パフォーマンスプロダクツ事業

本事業は、繊維、エンジニアリング樹脂や合成ゴム等、自動車用途の製品の割合が大きいため、その業績は、グローバルでの自動車生産台数増減の影響を強く受けます。第1四半期を中心にCOVID-19感染拡大の影響により、自動車の生産台数が減少したことから自動車用途の製品の販売量が減少しました。加えて、衣料市場でも、外出機会の減少に伴う衣服の需要減少により、衣料向け繊維製品の販売量が減少したことを受けて、減収減益となりました。自動車用途の製品については、第2四半期より需要の回復が続いています。一方、衣料向け繊維製品については、各国の都市封鎖や外出自粛などによる衣料市場の低迷が続いています。また、衛生材料向け繊維製品については、医療用ガウンやマスク向けなどの需要が、一定の水準で継続しており、堅調に推移しています。

 

・ スペシャルティソリューション事業

リチウムイオン電池用セパレータの業績は、電気自動車等の環境対応車やスマートフォン等の民生機器、また蓄電システム(ESS)等の需要動向に影響を受けます。第1四半期を中心に、COVID-19感染拡大の影響による自動車の生産台数の減少により、自動車向けの鉛蓄電池用セパレータや機能性コーティング材料、電子部品等の販売量が減少しました。加えて、下期には、当社の子会社での半導体工場火災があり、電子部品の販売数量が減少しましたが、巣ごもり需要等による電子機器の需要増加により、リチウムイオン電池用セパレータや電子材料製品が好調に推移したことから、減収の一方で増益となりました。なお、セパレータ事業については、湿式タイプの「ハイポア™」は民生機器や環境対応車向けの需要が拡大する中、生産能力増強が寄与し、販売数量を伸ばすとともに、乾式タイプの「セルガード®」も、韓国での蓄電システム(ESS)火災による需要減少から復調し、販売数量が増加しました。

 

 

ⅱ 「住宅」セグメント(価値提供注力分野:「Home & Living」)

不動産部門は堅調に推移しましたが、2019年10月の消費増税による受注減少やCOVID-19感染拡大の影響による、建築請負部門及びリフォームの落ち込みにより、売上高は6,926億円で前期比118億円の減収、営業利益は635億円で前期比92億円の減益となりました。


・ 住宅事業

建築請負部門においては、前期の消費増税前の需要増加の反動や、COVID-19感染拡大の影響による住宅展示場の閉鎖等、新規集客・受注活動の制限による引渡棟数の減少により、減収減益となりました。また、リフォーム部門においても、COVID-19感染拡大の影響による受注減少により、減収減益となりました。一方、不動産部門においては、大型の分譲住宅の販売が好調に推移し、利益率が向上したことに加えて、賃貸管理事業も堅調に推移したため、増収増益となりました。

 

・ 建材事業

COVID-19感染拡大の影響による建築着工の延期や中止があったことで販売数量が減少し、減収減益となりました。

 

ⅲ 「ヘルスケア」セグメント(価値提供注力分野:「Health Care」)

COVID-19感染拡大の影響を受け、営業活動に制約が生じましたが、クリティカルケア事業で人工呼吸器の需要が大きく伸長したことに加えて、医薬・医療事業も堅調に推移したことにより、売上高は4,079億円で前期比701億円の増収、営業利益は676億円で前期比241億円の増益となりました。

 

・ 医薬・医療事業

医薬事業においては、前期に買収したVeloxis Pharmaceuticals, Inc.買収に伴う無形固定資産等の償却費の増加や、COVID-19感染拡大の影響によるMR(医療情報担当者)の活動制限がありましたが、活動が制約されたことによる販促費用の減少や、「テリボン®オートインジェクター」、「ケブザラ®」の販売数量が伸びたこと、さらには、慢性疼痛薬「AK1780」に関するライセンス契約一時金を、ELY LILLY AND COMPANYより受領したことにより、増収増益となりました。医療事業においては、生物学的製剤の市場拡大に加えて、COVID-19治療薬関連の需要の増加により、ウイルス除去フィルター「プラノバ™」の販売数量が増加し、増収増益となりました。

 

・ クリティカルケア事業

COVID-19感染拡大の影響による人工呼吸器の特需があり、販売数量が増加したこと等から、増収増益となりました。

 

Ⅲ 生産、受注及び販売の状況

ⅰ 生産実績

当社グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではないため、セグメントごとに生産規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。

このため、生産の状況については、「Ⅱ セグメント別」における各セグメントの業績に関連付けて示しています。

 

ⅱ 受注状況

当社グループは注文住宅に関して受注生産を行っており、その受注状況は次のとおりです。その他の製品については主として見込生産を行っているため、特記すべき受注生産はありません。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

住宅

326,573

81.6

527,515

91.2

 

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

 

ⅲ 販売実績

当期における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

販売実績(百万円)

前期比(%)

マテリアル

991,227

90.7

住宅

692,639

98.3

ヘルスケア

407,904

120.8

その他

14,281

87.7

合計

2,106,051

97.9

 

(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しています。

2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。

3 前期及び当期において、主要な販売先として記載すべきものはありません。

 

② 財政状態

当期末の総資産は、設備投資の増加や上場株式の時価上昇などにより、前期比967億円増加し、2兆9,189億円となりました。

流動資産は、現金及び預金が138億円、受取手形及び売掛金が76億円、たな卸資産が36億円増加したことなどから、前期比293億円増加し、1兆1,368億円となりました。

固定資産は、繰延税金資産が234億円、無形固定資産が209億円減少したものの、有形固定資産が636億円、投資有価証券が419億円増加したことなどから、前期比673億円増加し、1兆7,822億円となりました。

流動負債は、支払手形及び買掛金が109億円増加したものの、短期借入金が1,311億円、コマーシャル・ペーパーが550億円減少したことなどから、前期比1,394億円減少し、7,032億円となりました。

固定負債は、退職給付に係る負債が155億円、繰延税金負債が119億円減少したものの、長期借入金が912億円、社債が500億円増加したことなどから、前期比1,250億円増加し、7,212億円となりました。

有利子負債は、前期比449億円減少し、6,590億円となりました。

純資産は、配当金の支払458億円があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益を798億円計上したことや為替換算調整勘定が374億円、その他有価証券評価差額金が249億円、退職給付に係る調整累計額が129億円増加したことなどから、前期末の1兆3,835億円から1,111億円増加し、1兆4,945億円になりました。

その結果、1株当たり純資産は前期比77.92円増加し1,057.61円となり、自己資本比率は前期末の48.2%から50.3%となりました。D/Eレシオは前期末から0.07ポイント低下し0.45となりました。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

Ⅰ キャッシュ・フローの状況

当期のフリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計額)は、税金等調整前当期純利益などを源泉とした収入が固定資産の取得や法人税等の支払による支出などを上回り、959億円の収入となりました。財務活動によるキャッシュ・フローでは、短期借入金の返済などにより、959億円の支出となりました。

以上の要因に加え、現金及び現金同等物に係る換算差額などにより、現金及び現金同等物の期末残高は、前期末に比べて115億円増加し2,162億円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当期の営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払707億円などの支出があったものの、税金等調整前当期純利益1,509億円、減価償却費1,084億円、のれん償却額249億円などの収入があったことから、2,537億円の収入(前期比1,292億円の収入の増加)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当期の投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入203億円などがあったものの、有形固定資産の取得による支出1,333億円、Adient plcの自動車内装ファブリック事業の買収に伴う事業譲受による支出176億円、無形固定資産の取得による支出169億円などがあったことから、1,578億円の支出(前期比1,604億円の支出の減少)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当期の財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入1,435億円、社債の発行による収入500億円などがあったものの、短期借入金の減少1,686億円、コマーシャル・ペーパーの減少550億円、配当金の支払458億円などがあったことから、959億円の支出(前期比3,178億円の支出の増加)となりました。

 

当社グループの連結キャッシュ・フローの推移

(単位:億円)

 

2018年度

2019年度

2020年度

営業活動によるキャッシュ・フロー①

2,121

1,245

2,537

投資活動によるキャッシュ・フロー②

△1,989

△3,182

△1,578

フリー・キャッシュ・フロー③(①+②)

131

△1,937

959

財務活動によるキャッシュ・フロー④

174

2,219

△959

現金及び現金同等物に係る換算差額⑤

5

△41

96

現金及び現金同等物の増減額⑥(③+④+⑤)

311

242

97

現金及び現金同等物の期首残高⑦

1,486

1,805

2,048

連結の範囲の変更に伴う増減額⑧

8

1

18

現金及び現金同等物の期末残高(⑥+⑦+⑧)

1,805

2,048

2,162

 

 

 

Ⅱ 流動性と資金調達の源泉

(資本の財源及び資金の流動性について)

2022年3月31日に終了する連結会計年度においては、各セグメントが安定的なキャッシュ・フローを創出することを見込んでいます。加えて、財務規律の強化や事業ポートフォリオ転換などを通じた収益体質の強化にも取り組み、更なるキャッシュの創出に継続的に努めています。

また、当社グループでは、D/Eレシオ0.5程度を目安に健全な財務体質を維持しつつ、これを背景に金融情勢に機動的に対応し、金融機関借入、社債やコマーシャル・ペーパーの発行など多様な調達手段により、安定的かつ低コストの資金調達を図ります。同時に資金の年度別返済の集中を避けることで借り換えリスクの低減も図っています。

これらの資金を、経営基盤の強化・変革、持続可能な社会の実現と企業価値の継続的な向上のための戦略的な投資、及び株主の皆様への還元に活用していきます。

なお、当社グループでは、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しており、国内外の金融子会社、海外現地法人などにおいて集中的な資金調達を行い、子会社へ資金供給するというグループファイナンスの考え方を基本としています。グローバル拡大への対応とグループ経営の深化の視点から、今後も連結ベースでの資金管理体制の更なる充実と資金効率化を図ります。

 

(2) 重要な判断を要する会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりです。

当社グループは、退職給付会計、税効果会計、貸倒引当金、たな卸資産の評価、投資その他の資産の評価、訴訟等の偶発事象などに関して、過去の実績や当該取引の状況に照らして、合理的と考えられる見積り及び判断を行い、その結果を資産・負債の帳簿価額及び収益・費用の金額に反映して連結財務諸表を作成していますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの財政状態又は経営成績に対して重大な影響を与え得る会計上の見積り及び判断が必要となる項目は以下のとおりです。なお、COVID-19の影響に関する仮定についての情報は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載しています。また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。

 

① たな卸資産の評価

当社グループで保有するたな卸資産は取得原価をもって貸借対照表価額とし、収益性の低下により期末における回収可能価額が取得原価よりも下落している場合には、回収可能価額までたな卸資産の評価を切り下げています。回収可能価額は、商品及び製品については正味売却価額に基づき、原材料等については再調達原価に基づいています。経営者は、たな卸資産の評価に用いられた方法及び前提条件は適切であると判断しています。ただし、当社グループは、主に「マテリアル」セグメントを中心として市場価格の変動リスクに晒されており、将来、経営環境の悪化等により市場価格が下落した場合にはたな卸資産の簿価を切り下げることになります。

 

 

② 企業結合取引の結果取得した無形固定資産の企業結合日時点における時価

当社グループは、企業結合取引の結果取得した無形固定資産の企業結合日時点における時価について、コスト・アプローチ、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチなどの合理的に算定された価額を基礎として算定しています。

経営者は、無形固定資産の時価の見積りに用いられた、事業計画に含まれる将来の販売数量の見込みや割引率等についての主要な仮定について合理的であると判断しています。

 

③ 有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)の減損

当社グループは、有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)について、帳簿価額が回収できない可能性を示す事象や状況の変化が生じた場合に、減損の兆候があるものとして、減損損失の認識の判定を行っています。減損の存在が相当程度に確実と判断した場合、減損損失の測定を行い、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。回収可能価額は、使用価値と正味売却価額のうち、いずれか高い金額としています。使用価値は、将来の市場の成長度合い、収益と費用の予想、資産の予想使用期間、割引率等の前提条件に基づき将来キャッシュ・フローを見積もることにより算出しています。

経営者は、減損の兆候及び減損損失の認識に関する判断、及び回収可能価額の見積りに関する評価は合理的であると判断しています。ただし、予測不能な市場環境の悪化等により有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)の評価に関する見積りの前提に重要な変化が生じた場合には、減損損失を計上する可能性があります。

 

④ 繰延税金資産の評価

当社グループは、繰延税金資産のうち、回収可能性に不確実性があり、将来において回収が見込まれない金額を評価性引当額として設定しています。繰延税金資産の回収可能性については、課税所得及びタックスプランニングの見積りにより計上していますが、特に課税所得の見積りには将来に関する予測や情報が含まれています。将来の予測や情報に基づき、繰延税金資産の一部又は全部が回収できない可能性が高いと判断した場合には、将来回収が可能と判断される額までを繰延税金資産に計上しています。経営者は、繰延税金資産の回収可能性の判断及び前提となる課税所得やタックスプランニングの見積りは適切であると判断しています。ただし、将来、経営環境の悪化等により、想定していた課税所得が見込まれなくなった場合は、評価性引当額を設定することにより繰延税金資産が取崩される可能性があります。

 

⑤ 退職給付債務及び費用

当社グループは主として従業員の確定給付制度に基づく退職給付債務及び費用について、割引率、昇給率、退職率、死亡率、年金資産の長期期待運用収益率等の前提条件を用いた数理計算により算出しています。割引率は測定日時点における、従業員の給付が実行されるまでの予想平均期間に応じた長期国債利回りに基づき決定し、各前提条件については定期的に見直しを行っています。長期期待運用収益率については、過去の年金資産の運用実績及び将来見通しを基礎として決定しています。

経営者は、年金数理計算上用いられた方法及び前提条件は適切であると判断しています。ただし、前提条件を変更した場合、あるいは前提条件と実際の数値に差異が生じた場合には、数理計算上の差異が発生し、当社グループの退職給付債務及び費用に影響を与える可能性があります。

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

合弁会社株主間契約

契約会社名

契約締結先

内容

合弁会社名

契約締結日

契約期間

旭化成㈱

(当社)

PTT Public Company Limited

合弁会社株主間契約 等

PTT Asahi Chemical Co., Ltd.

2008年3月24日

締結日から合弁会社の存続する期間

 

 

 

5 【研究開発活動】

当社及び連結子会社(以下、「当社グループ」)の主たる研究開発活動の概要、成果及び研究開発費(総額89,745百万円)は以下のとおりです。

 

1 コーポレートの研究開発における基本方針

(1) ミッションとあるべき姿

コーポレートの研究開発のミッションを以下のとおり定め、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーを含むサステナビリティ及びヘルスケア領域で、当社グループの技術フロンティアとして、新事業創出に繋がる新しい価値を創造し続けることを、あるべき姿として目指していきます。

(コーポレートの研究開発のミッション)

コア技術の深化・獲得

差別性・優位性の高い製品・サービス開発のためのコア技術の深化及び外部技術獲得・育成

新価値創造

潜在的な顧客・社会ニーズを捉えた未来視点での新しい価値の創造

技術基盤機能の深化と進化

当社グループを支える技術基盤機能の深化と進化

 

 

(2) 重点戦略分野・重点技術プラットフォーム

重点戦略分野として、「脱炭素・水素」「資源循環」「ヘルスケア」の3分野を設定し、サステナビリティの実現に貢献するための研究開発テーマに資源配分を進めていきます。また、これらを含めた研究開発を進めるにあたっては、「R&D DX」を重点技術プラットフォームとして設定し、デジタル技術を駆使した研究開発のDXを推進します。具体的には、マテリアルズ・インフォマティクスやIPランドスケープ、デジタルプラットフォーム等を駆使し、技術戦略の策定やマーケットトレンドの先読み等を積極的に実施していきます。

 

2 基盤的な取り組み

(1) ステージゲート制度によるテーマの取り組み

研究開発テーマのポートフォリオ管理や適切な資源配分を目的として、ステージゲート制度を導入しています。探索、研究、開発、事業開発の各ステージの要件や、各研究開発テーマのステージ上の位置付けを明確にし、研究開発テーマを次のステージに移行させる判断にあたっては、技術視点のみならず、ビジネスモデル、事業戦略、特許戦略、環境安全対応等、ステージごとに必要な審査を強化しています。また、審査プロセスを通じて、適切なテーマの管理を可能にするだけではなく、研究開発部門の内外のメンバーから多面的な助言を得ることや、研究開発テーマの意義、既存事業との関係性の整理・明確化も実行することができています。

 

(2) 知的財産の活用

当社グループにおける知的財産に関する重点活動として、①知的財産権の活用シナリオに基づいた事業に貢献する知財網の構築、②事業遂行を保証する知財クリアランス、③事業のグローバル化を支える知財活動の実践、④DXによる業務高度化への知的財産面からの貢献、の4つに取り組むとともに、そのベースとなる計画的な人財育成プランを進めています。DXによる事業高度化については、知財解析を経営・事業戦略の構築・見直しに活用する「IPランドスケープ」にも積極的に取り組んでいます。業界・マーケット情報を踏まえて、ビッグデータである特許や論文情報の知的財産情報を収集・加工して、俯瞰マップ等を経営・事業部へ提供しています。その後、市場における当社グループの事業のポジションや強み、発展性等についての議論を行い、最終的に、事業強化、新事業の創出、M&A等の経営・事業判断に繋げています。最近では、IPランドスケープをベースにした議論を通じて、旭化成の多様なコア技術、マーケティング機能、企画機能を結び付け、気づきの連鎖を起こさせることで、新事業の創出の前段階であるイノベーション創発を促す社内コネクトイベント(IPL de Connect) を主導するなど、全社を牽引する取り組みも行っています。

このような知財活動が高く評価され、2021年4月には経済産業省特許庁が主催する、「知財功労賞」の経済産業大臣表彰を受賞しました。

 

 

(3) CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の活動

当社グループは、2008年に日本国内でCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を設立し、2011年から米国を拠点として、ベンチャー企業への投資を通して最先端技術・ビジネスを獲得し、新事業の創出を行っています。現在は、米国のみならず、ドイツ、中国の拠点において活動の幅を広げています。具体的には、当社グループと親和性のあるベンチャー企業を発掘するための情報ネットワーク構築と関連部門への情報発信、投資・買収の交渉と関連実務の遂行、投資先企業のサポートを通じた事業化推進を行っています。また、3年間で7,500万ドルの投資枠を設けており、1社当たり500万ドルまでの投資に関しては本社での決裁を不要とするなど、スピーディな意思決定、手続きができるような仕組みを運用しています。これまで数十社の企業へ投資を実施し、深紫外LEDを開発するCrystal IS, Inc.や、ガスセンサーモジュールを開発・製造・販売するSenseair ABの買収を実施してきました。今後も投資ポートフォリオの拡大とともに、CVC活動体制の最適化と拡大を図り、当社グループの新事業創出を継続的に行っていきます。

 

3 セグメント別の研究開発活動

(1) 当社グループ全体(「全社」)

アルカリ水電解システムの開発

カーボンニュートラルを実現するための取り組みとして、再生エネルギーを活用したアルカリ水電解システムの開発を実施しています。福島県双葉郡浪江町にて10MW級大型アルカリ水電解システムを立ち上げ、水素の供給運転を開始し、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発/再エネ利用水素システムの事業モデル構築と大規模実証に係る技術開発」において、NEDOや協力企業とともに、水素を用いたエネルギー貯蔵・利用の実用化に向けた技術開発事業の拡充・強化を行っています。現在では、水電解システムに掛かるトータルコストは、水素・燃料電池ロードマップ目標値より依然として高く、更なるイノベーションが必要と認識しています。電解槽のコストダウン検討を継続して取り組み、EPC(設計・調達・建設)費用の割合も大きいため、技術力を有する企業との連携を進めていきます。

 

CO2ケミストリー技術、CO2分離回収システムの開発

当社グループでは、CO2を原料に使用するポリカーボネート(PC)樹脂製造プロセスを世界で初めて確立し、有毒な化合物(ホスゲン)を使用しない、CO2を原料に代替することによる地球環境にやさしい製法で、社会へ新たな価値を提供してきました。また、2018年に実証が完了したCO2を原料とするジフェニルカーボネート製造プロセスや、現在開発中であるCO2誘導体利用技術のイソシアネート製法など、更なる展開を進めていきます。加えて、ゼオライトを吸着材として用いたCO2分離回収システムの開発も進めています。

 

・ポリエチレンリサイクルの取り組み

使用済みのポリエチレンのリサイクルにおいて、大学や消費材メーカー、成型メーカー、リサイクル業者等サプライチェーンの関係者でリサイクル技術の開発に取り組んでいます。また、ブロックチェーンを活用し、サプライチェーンを管理・可視化するプラットフォーム構築に取り組んでいます。リサイクル製品を改ざん不可能なブロックチェーンで来歴管理することにより、循環性、透明性、トレーサビリティを提供することで、新たなビジネスモデルを確立し、サーキュラーエコノミーの実現に貢献していきます。

 

・XRP(セルロースナノファイバーコンポジット)の開発

バイオ由来のセルロースナノファイバーと、エンジニアリング樹脂をナノコンポジット化することで、素材の高機能化と環境技術を両立し、サステナビリティに貢献する製品の実現を目指しています。当社グループでは、セルロースナノファイバーからセルロースナノファイバーコンポジットまでの一貫製造プロセスを保有していることの特長を活かし、今後は低コスト、低環境負荷、高機能を満たす製品開発及びマーケティング活動を通じた事業化の検討を進めていきます。

 

 

・エンジニアリング樹脂発泡体の開発

自動車の車体軽量化に寄与する、構造部品向けのエンジニアリング樹脂発泡体の開発を進めています。ポリアミド発泡体では、高い発泡倍率と吸音性能を強みとして展開を加速し、各自動車メーカーや自動車部材メーカーとの関係を活かしたマーケティングを進めています。また、独自のCAE(Computer Aided Engineering)技術の高度化を推進し、部品設計の提案まで手掛けることにより、提供価値の創出に努めています。

 

・深紫外LED/深紫外レーザーの開発

現在、殺菌、ウイルス不活性化に最も効果の高い、波長265nmを高出力で実現できる深紫外LEDの展開を実施していますが、更なる高出力化に向けた研究や、基板の大口径化や高品質化にも継続して取り組んでいます。また、名古屋大学との協力により、深紫外レーザーの開発を行っており、2019年にはUV-C帯の世界で最も短波長のレーザー発振に成功しました。今後は、ガス分析等センシングへの応用、局所殺菌、DNAや微粒子などの計測・解析といった、ヘルスケア・医療分野への応用の検討を進めていきます。

 

当社グループ全体(「全社」)に係る研究開発費の金額は、14,185百万円です。

 

(2) 「マテリアル」セグメント

・ 基盤マテリアル事業

アクリロニトリル事業では当社の強みである触媒のブラッシュアップに継続的に取り組んでいます。

 

・ パフォーマンスプロダクツ事業

繊維事業では、グループ内外との連携により、研究開発機能を充実・高度化させるとともに、成果実現のスピードアップを図っています。主力製品である人工皮革「ラムース®」、キュプラ繊維「ベンベルグ®」、ナイロン66繊維「レオナ®」及び各種不織布において、独自性を活かした付加価値の高い製品の創出や、生産プロセスの革新を進めています。

また、「健康で快適な生活」「環境との共生」に寄与する新事業領域の創出にも注力しており、新規セルロース素材の事業化や、高機能テキスタイル、新基軸不織布の開発などに取り組んでいます。

高機能ポリマー事業では、新たなポリマー設計による高剛性・易成形性のポリアミドや次世代低燃費タイヤ用変性S-SBRなどの開発が進捗しています。さらに、独自のCAE(Computer Aided Engineering)技術の高度化を推進し、機能樹脂事業において新規用途開拓と海外展開を加速していきます。

 

・ スペシャルティソリューション事業

電子材料事業では、環境に配慮した食塩電解プロセス用のフッ素系イオン交換膜の開発を強化するとともに、電子材料関連では、次世代電子デバイスの要求に対応できる感光性樹脂材料の開発を加速しています。また、事業本部の広範な技術シナジーを活用した新事業創出の取組みも実施しています。

セパレータ事業では、高分子設計・合成や、製膜加工などのコア技術を活かして、「省資源・省エネルギー」「環境負荷軽減」に貢献する新規材料の開発を推進しています。電気自動車等の環境対応車や電子機器、蓄電システム用途に展開するリチウムイオン電池用高機能セパレータや鉛蓄電池用セパレータ等の環境・エネルギー関連素材の展開に注力していきます。

電子部品事業では、デジタル社会の進展に対応して、「磁気」「音」「可視外光」「高周波」を主軸に「エンドユーザーのベネフィット」に繋がるソリューションを提供できる技術及び製品の開発を推進しています。豊富な技術資産と柔軟なエンジニア組織運営により、ミックスドシグナルLSI・化合物半導体・高機能パッケージ等を融合し、独自のソフトウェアを活かした高機能電子部品の開発のみならず、モジュール型製品への展開にも積極的に取り組んでいきます。

 

当セグメントに係る研究開発費の金額は32,848百万円です。

 

 

(3) 「住宅」セグメント

住宅事業では、「ロングライフの実現」を支えるコア技術について、重点的な研究開発を続けています。シェルター技術については、安全性(耐震・制震・免震技術、火災時の安全性向上技術)、耐久性(耐久性向上・評価技術、維持管理技術、リフォーム技術)に加えて、居住性(温熱・空気環境技術、遮音技術)、環境対応性(省エネルギー技術、低炭素化技術)の開発を行っています。住ソフト技術については、二世帯同居等の住まい方についての研究を、評価・シミュレーション技術については、デジタル技術等の活用により直感的に理解可能な環境シミュレーションシステムの構築を、それぞれ進めています。また、住宅における生活エネルギー消費量削減とともに、人の生理・心理から捉えた快適性を研究し、健康・快適性と省エネルギーを両立させる、環境共生型住まいを実現する技術開発に注力しています。

建材事業では、「良質空間を追求し、グッドマテリアルを通じて、未来を見据え新たな価値を創造する」を事業ビジョンとし、軽量気泡コンクリート(ALC)、フェノールフォーム断熱材、杭基礎、鉄骨造構造資材の4つの事業分野において基盤技術の強化を推進しています。

 

当セグメントに係る研究開発費の金額は3,412百万円です。

 

(4) 「ヘルスケア」セグメント

医薬事業では、自社オリジナル製品の研究開発で培った経験をもとに、整形外科領域(骨、疼痛等)、リウマチ関連領域及び救急領域を中心に、有効な治療方法がない医療ニーズを解決することによって、「健康でいたい」と願う世界中の人びとのQOL(Quality of Life)向上を図ることを目指して、積極的な研究開発を行っています。創薬技術や創薬シーズ、創薬テーマについては、世界中の企業や大学とのコラボレーションを積極的に推進することによって、絶えざる革新を日々進めています。

医療事業では、治療の可能性を広げ、医療水準を向上させる製品、技術、サービスを提供するために、グループ総力をあげた研究開発に取り組んでいます。これまで培ってきた豊富な基礎技術と研究開発の応用により、人工腎臓、血液浄化技術、白血球やウイルスの除去技術をさらに発展させていきます。

クリティカルケア事業では、突然の心停止からの生存率を向上する技術開発を原点とし、新規領域にも研究を広げています。急性心筋梗塞・脳卒中・敗血症・呼吸困難等、予後の悪い緊急疾病に対する新規治療法や技術が求められており、患者様と臨床医に役立つことを使命としています。

 

当セグメントに係る研究開発費の金額は39,169百万円です。

 

(5) 「その他」

エンジニアリング分野等に関する研究開発を行っています。当セグメントに係る研究開発費の金額は131百万円です。