第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社、連結子会社及び持分法適用会社(以下、「当社グループ」)が判断したものです。

 

(1) 経営方針・経営戦略等

① 当社グループミッション等

当社グループでは、「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献します。」というグループミッション(存在意義)のもと、「健康で快適な生活」と「環境との共生」の実現を通して、社会に新たな価値を提供することをグループビジョン(目指す姿)として掲げています。

また、グループバリュー(共通の価値観)として「誠実」「挑戦」「創造」を定めており、すべてのステークホルダーの皆様に対し「誠実」に経営することを通じて、社会の課題解決や事業環境の変化に積極果敢に「挑戦」し、絶えず新たな価値を「創造」することで、事業を通じて企業の社会的責任を果たしていくことを基本方針としています。

 

② 当社グループ全体の経営方針・経営戦略等

<経営環境・経営課題>

当社グループは、創業以来100年間、「生活基盤の確立」「物資豊富な生活」「豊かで便利・快適な生活」「新興国での需要」といった各時代のニーズに応えてきました。

国連で採択された「SDGs」(持続可能な開発目標)に象徴されるように、社会課題に対する意識は世界的に高まっています。特に、2020年より感染拡大したCOVID-19による世の中の変化は、「地殻変動」とも言うべき、私たちがかつて経験をしたことがない大きな変化をもたらしました。人びとの価値観は大きく変化し、社会課題や環境課題が顕在化しています。いのちや健康、衛生に対する意識が高まるとともに、リモートワークの普及などを通じて人びとの働き方や暮らしが大きく変わり、個人の生きがい、働きがいがより一層重要視されるようになりました。また、「誰一人取り残さない」というSDGsの原則にあるように、自社のみならず、取引先を含めたサプライチェーン全体における人権尊重の取り組みが、企業活動の前提として求められています。

地球環境への関心も高まっており、特に気候変動リスクの主要因である温室効果ガスの排出量の削減は、人類の喫緊の課題です。また、プラスチックについて、不適切な廃棄による環境汚染問題や資源の有効活用の観点などから、海洋プラスチック汚染対策やサーキュラーエコノミー(循環型社会)に向けた取り組みが求められるなど、各国での規制がより一層強化されています。

これらの課題は1つの企業・産業で解決できないものも多く、企業や産業を超えた共創が益々重要になってきます。例えば、住宅とエネルギー、医療と住宅等のように、これまでの産業の境界を越えて相互に関連しあうテーマ・課題が多く存在しています。また、デジタル技術の急速な進歩普及が、これらの共創を加速させ、産業間の垣根は益々低くなっていくことが予想されます。このような環境は、マテリアル・住宅・ヘルスケアの3つの領域を持つ当社にとっては大きな事業機会であると認識しています。当社は、3つの領域にまたがり人財・コア技術・マーケティングチャネル等、多様な資産を有しており、これらをデジタルの力で繋げ、活かすことで、当社独自のアプローチで社会課題の解決に貢献できると考えています。不確実性の高い時代だからこそ、当社の持つ多様な資産を最大限活用しながら先手を打ち、「持続可能な社会への貢献」と「持続的な企業価値向上」の2つのサステナビリティの好循環を追求していきます。

 

ⅰ サステナビリティマネジメントの強化

当社グループは、2021年度に「サステナビリティ基本方針」を制定しました。これは、サステナビリティに関する方針をより具体的に記述することで、当社グループの方針を明示するとともに、サステナブルな社会の実現に向けた行動を一段と推進していくことを狙いとするものです。

 


 

経営方針・経営戦略

● 旭化成の2030年の目指す姿

COVID-19をはじめとする社会の大きな変化は、人類が取り組むべき課題を浮き彫りにしました。その課題は、当社が掲げてきた「Care for People」「Care for Earth」(人と地球の未来を想う)と重なるものであり、世界共通の課題の解決に向けた貢献を加速させていきます。当社は5つの価値提供分野として、カーボンニュートラル/循環型社会に貢献する「Environment & Energy」、安全・快適・エコなモビリティに貢献する「Mobility」、より快適・便利なくらしに貢献する「Life Material」、人生を豊かにする住まい・街に貢献する「Home & Living」、生き生きとした健康長寿社会に貢献する「Health Care」にフォーカスして事業展開を進めていきます。

 

我々が直面する課題は、産業の垣根が低くなるにつれて、様々な業界にわたって相互に関連してきます。これは多様な事業を持つことで、様々な分野での知見を有する当社にとって大きな事業機会であると認識し、この事業機会に対して当社グループの「コア技術」「変革のDNA」「多様な人財」を以て、更なる成長を目指します。その結果として、2030年近傍には、営業利益4,000億円、ROE15%以上、ROIC10%以上を展望します。また、当社グループのGHG排出量目標として2013年度比で30%以上の削減を目指します。


 

 

・ 中期経営計画2024 ~Be a Trailblazer~の進捗状況

2022年4月に発表しました中期経営計画2024 ~Be a Trailblazer~は、2030年の目指す姿に向けたファーストステップと位置づけ、利益成長、ROE、ROICを重要指標として、「次の成長事業への重点リソース投入」と「成長投資の刈り取りと戦略再構築事業の改革」による事業ポートフォリオ進化を進めています。中計1年目となる2022年度は、半導体不足の長期化や中国ロックダウンによる需要減退、原燃料価格高騰など厳しい経営環境が影響し、営業利益は1,284億円と低迷しました。経営環境は徐々に改善すると見込んでいますが、中期的な視点で成長を目指すスタンスは変わっておらず、当初成長戦略に沿った実行を徹底することで再び成長軌道へ回帰し、当初目標の2,700億円は2~3年遅れでの達成を目指します。2024年度の営業利益目標は2,000億円以上と再設定し、資本効率の目標も利益目標の修正に合わせて、2024年度でROE9%以上、ROIC6%以上へと変更しています。

 

ⅰ 事業ポートフォリオ進化の基本方針

事業ポートフォリオの進化にあたっては、“成長の為の挑戦的な投資”と“構造転換や既存事業強化によるフリー・キャッシュ・フローの創出”の両輪を回すことが重要と考え、「スピード」「アセットライト」「高付加価値」の3つを強く意識して推進しています。「アセットライト」については、旧来の設備産業的な考えにこだわらず、各事業に応じて最適なビジネスモデル、スキームを追求していきます。この考え方には2つの視点があり、既存事業の視点では、既に保有しているアセットの最大活用による利益創出を目指します。特にマテリアル領域ではカーボンニュートラルに向けたGHG排出量削減の視点から、EXITの可能性等も含めた検討を進めています。また、新規事業の立ち上げの視点では、研究開発投資を一から自前で行い、事業化の設備も自己所有で行うことにはこだわらず、他社資本の活用など、最適な資本のかけ方を追求していきます。新規事業展開において「アセットライト」を志向することは「スピード」の向上にも繋がり、結果的に旭化成が優位なポジションを築ける分野にフォーカスされ「高付加価値」に繋がると考えています。

経営環境変化により収益が想定より下回ったことを受け、改めて各事業のポジションと中期的な方向性をROICと利益成長率の観点から整理しています。ヘルスケア領域においては2022年度の業績は期待を下回る水準でしたが、一時的要因も多く、当初の利益成長計画から1年遅れ程度と捉えています。これまでの積極的な投資からの刈取りを徹底してROICを高めながら、非連続成長の機会を継続的にうかがい、持続的成長を目指します。住宅領域はグループにとってその安定的で高いキャッシュ創出を行う事業として、非常に重要な役割を担っています。アセットライトな事業モデルを展開し、高いROICを維持しながらも、海外住宅を中心とした成長機会については積極的に検討を進めています。マテリアル領域においてはデジタルソリューションが高いROICを維持しながら高成長も期待できる事業であり、非連続成長機会も含めて積極的な拡大施策を実行していきます。また環境ソリューションにおいては、セパレータや水素関連の事業の中期的成長ポテンシャルが高く、先行的な投資を当面は継続させる予定です。短期的にはそれらの投資からの利益貢献は期待しにくいため、当面の収益改善に向けた生産性向上などの取り組みを徹底します。それ以外の事業については、構造転換の加速が喫緊の課題となっており、特に基盤マテリアル事業を中心とした汎用的な製品については抜本的な打ち手を検討します。


 

 

ⅱ 成長戦略

中期経営計画2024においては、次の成長を牽引する10の事業を「10のGrowth Gears(以下、GG10)」として設定しました。Growth Gearには旭化成の成長を回すギアとともに、社会の変革を回していくギアという2つの意味を込めており、持続可能な社会の実現への貢献を加速していきます。「次の成長の為の挑戦的な投資」をGG10にフォーカスする考え方は変わりませんが、この1年の状況も踏まえGG10の中でもリソースアロケーションの優先順位をより明確にして推進しています。ヘルスケア領域における「クリティカルケア」、「グローバルスペシャリティファーマ」、「バイオプロセス」と、マテリアル領域のライフイノベーション事業の「デジタルソリューション」を“重点成長”分野と位置づけ、過去投資からの利益刈取りに注力しながらも、非連続成長を含む積極投資を継続させる予定です。環境ソリューション事業における「水素関連」、「CO2ケミストリー」、「蓄エネルギー(セパレータ)」の3つは、先行的投資の側面が強い“戦略的育成”分野と位置付けています。ハイポアにおける北米投資など、今中計期間に規模の大きな投資意思決定を行うことも見据えており、中期的視点での成長につなげます。GG10のそれ以外の事業は“収益基盤拡大”分野と位置づけ、安定収益創出を維持しながら、その収益基盤を確度高く強化できる投資を検討します。GG10に関しては2022~2024年度の累計投資額(意思決定ベース)で約6,000億円、2024年度のグループの事業利益の50%以上(本社共通費などを除く、事業利益の合計値に占める割合)という目標を掲げていますが、いずれも当初の予定に沿った形で進捗しています。


 

ⅲ 構造転換や既存事業強化からのフリー・キャッシュ・フロー創出

当初計画より業績が下回る状況を鑑み、事業の構造転換をこれまで以上に加速させていきます。これまで、COVID-19の影響等で足元の業績が悪化した「戦略再構築事業」の改革と、業績は堅調でも旭化成の目指す姿との適合性から事業の方向性を考える「抜本的事業構造転換」の2つのアプローチで進めておりましたが、事業におけるチェーンのつながりも踏まえてそれらのアプローチを統合して検討しています。対象事業の売上規模は約7,000億円以上(2021年度実績)と、幅広に初期的な検討を進めています。その中でも「戦略再構築事業」でEXITと判断した対象を含む複数の事業については、中計期間内に構造転換の完了を目指しており、それらの事業の売上高は合計で1,000億円以上の規模となります。また収益のボラティリティが改めて課題として浮き彫りになった汎用的な化学品などは、“石油化学チェーン関連事業”として売上高約6,000億円規模を検討対象(前述の1,000億円と重複する事業も一部含む)として、特にカーボンニュートラルを見据えた場合の事業の在り方に重きを置いて議論を進めています。検討においては、①JVなどによる他社との共同事業化、②事業からのEXIT、③カーボンニュートラル関連の技術開発・高付加価値化の推進、の3つの戦略オプションに対して、③を追求しながらも、①と②の可能性も並行して検討しています。既に複数の事業にて方向性を確定して具体的なアクションを進めており、それ以外の事業についても2024年度中には方向性を確定させることを目指します。

 

ⅳ 財務・資本政策

(外部環境・課題)

2022年度は事業環境悪化により、営業キャッシュ・フローは当初想定より減少しました。このような状況においても、中長期的な成長に資する案件への投資は、採算性をより精査しながら着実に実行しています。また、安定的配当を重視した株主還元方針に基づき、増配を決定しています。財務健全性を示すD/Eレシオは想定の水準を維持できているものの、生産性向上やコスト削減などによる体質強化を図り、アセットライトを意識した事業モデルへの転換などを通じて、当社グループのキャッシュ創出力や資本効率を持続的に高めていきます。

 

(具体的な方針・戦略)

■ 資金の源泉と使途の枠組み

現中期経営計画の3年間における営業キャッシュ・フローは、収益低迷により当初見立てより減少し6,000~7,000億円を見込んでいます。一方、投資キャッシュ・フローは、過去に意思決定した案件に対するキャッシュアウトが含まれていることもあり、当初見込み水準と同じ8,000~9,000億円を想定しています。しかしながら、厳しい事業環境とキャッシュの状況を踏まえ、投資意思決定においては採算性をこれまで以上に厳しく精査し、厳選した案件にフォーカスしています。株主還元についても当初見込みと変わらず、3年間累計の還元総額で1,500~1,800億円を計画しています。資金調達は有利子負債で行うことを基本とし、現段階では2,500~5,000億円の増加を見込んでいますが、事業売却や投資の際の他社資本活用など、より戦略的観点でのキャッシュソースの確保も検討していきます。D/Eレシオは0.7程度、ネットD/Eレシオ0.6程度を見込んでおり、十分な財務健全性を維持できると考えています。


 

■ 設備投資・投融資

現中期経営計画の3年間において累計1兆円超の意思決定を見込み、そのうち約6,000億円をGG10に投入することを予定しています。2022年度はこの計画に沿って着実に進捗しており、投資案件の選定にあたっては財務規律を重視し、「環境価値」「投資効率」「投資スキーム」の3点の視点で案件を精査していきます。「環境価値」視点ではカーボンプライシング等を考慮しても投資価値があるか、「投資効率」視点では最終的にその事業のROICが向上するか、「投資スキーム」視点では他社資本の活用等、より適した投資形態になっているか、このような視点を持って成長に向けたメリハリのある投資を実行していきます

 

 

■ 株主還元

2022年度はPolypore社ののれん及び無形固定資産の減損損失計上により当期純利益が大きく落ち込みましたが、配当を通じた安定的な株主還元を実現する方針を重視し、1株あたり配当金は36円と前年より2円増配しています。また、2023年度及び2024年度においても収益は当初計画を下回る状況を見込んでいますが、安定的な株主還元を行う方針は堅持し、1株当たり配当金は現状水準の維持・向上を予定しています。自己株取得は資本構成適正化に加え、投資案件や株価の状況等を総合的に勘案して検討・実施していきます。配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」と合わせてご参照ください。

 

■ 資本効率の改善と企業価値の向上

現中期経営計画ではこれまで以上に資本効率を重要視しています。収益計画の見直しを受け、自己資本利益率(ROE)の2024年目標を11%以上から9%以上に下方修正しましたが、資本効率の向上を強く意識した施策に引き続き取り組みます。具体的には、投下資本利益率(ROIC)が加重平均資本コスト(WACC)を継続的に下回るような低資本効率事業の構造転換、営業収益力強化や製造原価低減に加え販管費削減などの収益力強化などに取り組み、ROEの改善を目指します。株価収益率(PER)の観点では、石油化学チェーン関連事業の構造転換を着実に実行すること、過去に行ったヘルスケア等への投資からの利益成長を実現させること、さらには長期的視点での当グループの成長に向けた水素やセパレータ事業の展開を実行していきます。これらの施策を通じ、株価純資産倍率(PBR)の早期向上を目指します


 

ⅴ 経営基盤の強化

経営環境の不透明さが増す中では、事業を支える土台となる経営基盤をより強固にすることが重要であると考えています。経営基盤強化として、「無形資産の最大活用」「Green(グリーントランスフォーメーション)」「Digital(デジタルトランスフォーメーション)」「People(人財のトランスフォーメーション)」「リスクマネジメントの強化」「コーポレート・ガバナンスの最適化」について重点的に取り組んでいます。

 

 

■ 無形資産の最大活用

当社グループでは、3領域にまたがり、人財、コア技術、マーケティングチャネル等、多様な無形資産を持ち、活用できることが強みであり、デジタルを活用し、これらの無形資産を最大限コネクトさせることによって、戦略構築や新事業の創出を推進しています。

具体例はマテリアル領域の取り組みである「P-PaaS: Product based Platform as a Service」です。単なるモノ売りではなく、当社ノウハウや、顧客接点等の無形資産を活かしたソリューション型事業への転換に取り組んでいます。旭化成の素材・製品の付加価値をベースとして、顧客の価値向上となるプラットフォームを提供するというコンセプトをP-PaaSと表現し、その可能性を追求しています。既にそのコンセプトに沿っている取り組みも複数進んでおり、クラウド型生鮮物流ソリューション「Fresh Logi」や偽造防止デジタルプラットフォーム「Akliteia®(アクリティア)」など、顧客のビジネスプロセスを変革できるソリューションを提供していきます。

また、当社グループでは、従来から知財情報の戦略的活用を志向しており、事業戦略に知財情報を活用するIPランドスケープ(以下、IPL)活動を全社的に推進してきました。知財部門の強みであるIPLと知財の実務能力を融合させることで、知財部独自の視点に立った事業戦略モデル案の策定・提言活動を実施しています。IPLの詳細は「6 研究開発活動 2 基盤的な取り組み (2) 知的財産の活用」もご参照ください。

企業の強みとなる無形資産を活用して競争力の維持・強化を図り、中長期的な企業価値を創造するサステナブルなビジネスモデルを構築し、それを巡る企業経営者と投資家との間の相互理解と対話・エンゲージメントを促進させる必要性が増し、企業価値向上に知財面から貢献する意義が益々高まってきました。上記の背景から、当社グループでは2022年度に社長直下に知財インテリジェンス室を創設し、無形資産の多面的な可視化による情報解析等を通して、経営・事業戦略策定に貢献しています。今後も、グループ全体での無形資産の活用をさらに加速し、企業価値向上に繋げていきます

 

 

■ Green(グリーントランスフォーメーション)

・ カーボンニュートラルでサステナブルな社会の実現に向けた活動

(温室効果ガス(GHG)の削減)

持続可能な社会の実現に向けて、当社グループは2021年5月に、2050年時点でのカーボンニュートラル(実質排出ゼロ)を目指すことを表明しました。当社グループの事業活動に直接関わるGHG排出量であるScope1(自社によるGHGの直接排出)、Scope2(他社から供給された電気・熱・蒸気の使用に伴う間接排出)の排出量を対象としています。カーボンニュートラルを実現するため、エネルギー使用量の削減、エネルギーの脱炭素化、製造プロセスの革新、高付加価値/低炭素型事業へのシフトなど、実現に向けたロードマップを策定し、目標達成に向けて取り組みを加速させていきます。また、2030年には、2013年度対比でGHG排出量を30%以上削減することを目指しています

その具体化のため、2022年度にはカーボンニュートラル担当役員を設置するとともに、カーボンニュートラル推進プロジェクトを新設し、GHG削減策の具体的検討、2030年、2050年目標達成へのシナリオ案の検討、コスト試算等を実施しました。2022年度に実施した個別の施策としてはエネルギーの低炭素化の推進が挙げられます。2022年3月に燃料転換工事(石炭から液化天然ガス[LNG]への転換)が完工した火力発電所は順調に稼働を開始しました。また、数十年にわたり活用してきた水力発電設備について、今後も長く活用できるよう、設備の更新と効率化の工事を順次進めています。旭化成ホームズ㈱では、「ヘーベルメゾン™」の屋根に太陽光発電設備を設置する取り組みを進めており、発電した電気を事業に活用しています。さらには、国内外の機能樹脂コンパウンド拠点など、外部からの電力を購入している工場では、証書、クレジットを活用した電力実質再エネ化の取り組みを開始しました

当社グループの事業活動におけるGHG排出量の削減はもとより、お客様も含めたバリューチェーン全体でのGHG排出量削減を進めるためには、当社製品に関わるGHG排出量を的確に把握することが必要です。そこで、製品のカーボンフットプリント(原料採掘から製品生産までのGHG排出量)算定に関する取り組みも推進し、主要製品での算定を進めるとともに、算定のシステム化も開始しました

カーボンニュートラル実現に向けた事業化の検討と推進も引き続き加速しています。水素関連においては、設備の大型化や変動する再生可能エネルギー由来の電力活用にも対応できる信頼性の高い製品の技術開発を行うため、川崎製造所において、水素製造用のアルカリ水電解パイロット試験設備の導入を決定しました。詳細は、「6 研究開発活動 3 主な研究開発活動 (1) 当社グループ全体(「全社」) アルカリ水電解システムの開発」をご参照ください。技術開発以外の点では、水素バリューチェーン推進協議会(JH2A)に理事会員として、また、Hydrogen Council(水素協議会)にステアリングメンバーとして参画し、水素に関する情報収集、当社技術のPR、プレゼンスの向上、他社との協業機会の探索を開始しました。一方、バイオエタノールから基礎原料を創出する技術の開発も進めています。バイオエタノールは様々なバイオマス原料の中で、大量かつ比較的安価に入手できる可能性が高い原料であること、また、当技術は既存のコンビナートやプロセスの利用が可能であることから、化学産業のグリーン化に資するものと考えており、実現に向けたさらなる技術開発を進めていきます。

一方、当社グループの製品やサービスで世界のGHG排出量削減に貢献することも重点テーマです。当社では第三者の専門家の視点を入れて妥当性を確認した、GHG排出量削減効果を期待できる製品・サービスを「環境貢献製品」として拡大・普及することを進めています。2022年度までの累計で20事業・製品を「環境貢献製品」として位置付けました。これらの「環境貢献製品」によるGHG削減貢献量を、2030年度には2020年度の2倍以上とし、また売上高に占める割合も高めていくことを目標とし、様々な取り組みを実施しています。

なお、気候変動が企業の財務に与える影響を分析し開示するよう求める「TCFD提言」に基づく検討を行い、結果を開示しています。詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティ共通 ②気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応」をご参照ください

 

 

(プラスチックの課題への対応)

当社グループでは、プラスチックが海洋に流出することや、マイクロプラスチックとして地球環境、生態系に悪影響を及ぼすことを防ぐのはもとより、限りある資源を持続可能なものとして活用していくための取り組みを進めています。例えば、世界で広く用いられている汎用プラスチックの1つであるポリスチレンについて、グループ会社のPSジャパン㈱がケミカルリサイクルの実証に向けた最終の準備を進めています。また、ポリエチレンについては、消費財メーカー、成型メーカー、リサイクル業者等のサプライチェーンの関係者や大学と協力し、リサイクル技術の開発に関する取り組みを推進しました。ただし、使用済みプラスチックを廃棄物とせずに資源として活用していくためには、技術の開発だけでなく、消費者も含めた社会全体の取り組みが必要であり、当社では再生プラスチックの資源循環を可視化するプラットフォーム「BLUE Plastics(Blockchain Loop to Unlock the value of the circular Economy、ブルー・プラスチックス)」の開発を進めています。2022年9月には、株式会社ファミリーマート、伊藤忠商事株式会社、伊藤忠プラスチックス株式会社との協業で、株式会社ファミリーマートの都内店舗での実証を行いました。使用済みペットボトルを回収BOXに投函したあと、リサイクル素材に加工されるまでを、スマートフォンのアプリでトレース(追跡)できるサービスの実証実験です。この取り組みを通じて、デジタルプラットフォームによるトレーサビリティの価値を確認し、さらなるプラスチック資源循環を推進していきます

また、持続可能な製品の国際的な認証制度の一つであるISCC PLUS認証を複数製品で取得しました。当認証は、バイオマス原料や再生原料等が、製品製造を含むサプライチェーンにおいてマスバランス方式で適切に管理されていることを第三者機関が確認し認証するものです。今後、顧客や社会からの期待に応じ、当認証取得製品を提供していきます。なお、プラスチックや循環経済に関する諸課題への対応は、各社共通のテーマでもあることから、当社グループはCLOMA(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス)、循環経済パートナーシップ(J4CE)、一般社団法人 日本化学工業協会、日本プラスチック工業連盟等のアライアンスや業界団体の活動にも積極的に参画し、課題への取り組みを他社と協力しながら推進しました


 

 

 

■ Digital(デジタルトランスフォーメーション)

当社グループが持つ多様な無形資産を活用し、ビジネスモデルを変革し価値創造をリードするものとして、デジタル技術の活用を積極的に推進しています。推進にあたっては、全体ロードマップを策定し、2021年度までを現場に密着し実課題をデジタル技術で解決する「デジタル導入期」及び事業軸・地域軸・職域等に横串を刺しデジタルを展開する「デジタル展開期」として、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)推進の基礎固めを進めてきました。2022年度からは「デジタル創造期」としてデジタル基盤強化、経営高度化、ビジネス変革の視点で、DXによる経営革新を実現し、今後、グループ会社全体、全社員がデジタルを活用するのが当たり前になる「デジタルノーマル期」を目指しています。これまでの取り組みにより、当社は経済産業省が東京証券取引所と共同で選定する「DX銘柄2021」「DX銘柄2022」「DX銘柄2023」に3年連続で選出され、経済産業省・厚生労働省・文部科学省の三省の共同著書「ものづくり白書」にも取り組みが掲載されました

 


 

また、当社グループ全体でのDXに関する活動が認められ、様々な団体からの表彰等、評価を頂いています。

・日経B2Bマーケティングアワード 大賞(デジタルマーケティング)

・HRX of the Year 2022優秀賞(人材育成)

・JDMC2023年データ人材賞(人材育成)

・Forbes CIO Award 2022経営貢献賞(DX全般)

・SAP Japan Customer Award 2022(サステナビリティ)

 

(DX推進体制の強化)

グループ全体でDXを加速していくために、推進体制の強化に継続して取り組んできました。2021年4月にデジタル共創本部を設立後、いくつかの重要な組織変更を行いました。2022年4月には、全社展開を加速したい営業・マーケティング領域について、体制強化を行い、カスタマーエクスペリエンス(CX)戦略強化をしています。また旭化成グループのDX推進・企画について一元的に各組織の業務・施策を効果的に推進するDX経営推進センターを設置しました。さらに、2023年1月にはDX経営推進センター内にデジタルタレント戦略室を新設し、全社員デジタル人財化計画やオープンバッジなどの人財育成カリキュラムを運営しています。また、各事業部門のトップとデジタル共創本部の連携体制(リレーションシップマネージャー制度)を整え、各事業における課題・重点テーマ等を共有し、密に連携して具体的な取り組みを進めています

 

 

(人財の育成)

デジタル人財の育成も積極的に実施しており、グループ全従業員がデジタルリテラシーを身につけ、全社員がデジタル活用のマインドセットで働く「4万人デジタル人財化」構想の下、DXオープンバッジ教育プログラムを進めています。このプログラムはレベル1から5までの5段階でデジタルリテラシーとスキルを向上させていく構成になっています。また、このような育成プログラムの実施や採用を通じて、高度なデジタル技術とデータを活用し、事業の課題解決や、新しい価値・ビジネスモデルを創出できるデジタルプロフェッショナル人財の育成・獲得を積極的に進めています。2022年度末にデジタルプロフェッショナル人財1,206名を育成・獲得し、現時点の目標は予定どおり達成しました。

 

(デジタル創造期の3つの柱)

2022年度からは「デジタル創造期」として、デジタル基盤強化、経営の高度化、ビジネスモデル変革を推進しています。デジタル基盤の強化では、デジタル人財の育成・獲得の加速、デザイン思考等を活用したアジャイル開発のグループ全体への浸透、データ活用促進等を進めています。経営の高度化では、経営の見える化/意思決定への活用、知的財産活用の高度化、人財を活かすための活用、先端研究開発、カーボンフットプリントの見える化等に取り組んでいます。ビジネスモデル変革では、無形資産の価値化/共創の加速、マーケティングの革新、サプライチェーン連携、新事業創出、スマートファクトリー等に取り組んでいきます。この3つの視点で共通の技術やノウハウを生かしグループを横断するプロジェクトとして行うとともに、各領域毎に具体的テーマが進んでいます。また、DXの進捗を測るKPI(2024年度目標)として「DX-Challenge 10-10-100」を定めました。2022年度末で、デジタルプロフェッショナル人財を2021年比で10倍(グローバル全従業員のうち2,500名程度)の目標に対し1,206名、グループ全体のデジタルデータ活用量を2021年比で10倍の目標に対し2.6倍、そして通常活動のDX活用による利益貢献に加え、選定した重点テーマで100億円の増益貢献(2024年度までの3年累計)に対して28億円の実績となっています。デジタルで多様な資産を最大限に活用し、ビジネスモデルを最速で変えていきます。


 

 

■ People(「人財」のトランスフォーメーション)

当社は1922年に創業し、2022年に100周年を迎えましたが、この間事業ポートフォリオを大きく変革してきました。1960年代には石油化学事業と繊維事業が売上高の大半を占めていましたが、社会課題の解決に向けた事業展開により、現在は3領域経営を進めています。大きな変革を遂げながら成長してきましたが、今後も、持続可能な社会に向けてさらなる変革が必要です

そのなかで現中計では、従業員に求める心構えとして「A-Spirit」という言葉を掲げています。旭化成の「A」と、アニマルスピリットの「A」をかけたもので、具体的には、野心的な意欲、健全な危機感、迅速果断、進取の気風、という4つのことを強く意識し、チャレンジングな人間、チャレンジングな人財であってほしいと伝えています。また、そのような想いから、挑戦・成長を自ら求めていく「終身成長」と、多様性を促す「共創力」を人財戦略の柱としています。これらは、当社グループが100年かけて培ったグループバリュー、多様性、自由闊達な風土などの無形資産をさらに磨き、活かしきるということでもあります。


 

「終身成長」に関しては、一人ひとりが自立的にキャリアを描き、成長に向けた学びや挑戦を進めること、そして、リーダーが個人とチームの力を最大限引き出せるようマネジメント力を強化することが重要と考えています。また「共創力」に関しては、多様性を“拡げる”“つなげる”という視点でさまざまな取り組みを進めています。主要KPIとしては、「高度専門職任命者数」、「従業員エンゲージメント(成長行動指標)」「ラインポスト+高度専門職における女性比率」を掲げており、下図のとおり順調に推移しています。


 

また、2022年度より次の3点を役員報酬に連動させ、取り組みを加速させています。

指標

指標の算定方法

2022年度目標値・基準値

2022年度実績値

働きがい

メンタルヘルス不調による

休業者率

0.80%

1.07%

DX

デジタルプロフェッショナル

人財総人数

1,000名

1,206名

ダイバーシティ

ラインポスト及び高度専門職における女性の占める割合

3.9%

3.8%

 

具体的な取組みについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 人的資本に関する開示」を参照ください。

 

■ リスクマネジメントの強化

詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください

 

■ コーポレート・ガバナンスの最適化

詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください

 

ⅵ 財務・非財務主要KPI

中期経営計画2024の実行、そして、その先の目指す姿の実現のために、財務・非財務のKPIを明確にして、各施策を実行していきます。財務KPIにおいては、利益成長・資本効率・事業ポートフォリオ転換の視点で、2024年度目標・2030年度目標を設定し、具体的な施策の実行を進めていきます。非財務KPIに関しては、10の成長を牽引する事業(GG10)における有効特許件数の割合、デジタルプロフェッショナル人財と高度専門職の育成・獲得、そして、当社GHG排出量、環境貢献製品を通じたGHG削減貢献量を主要なKPIとして設定し推進を加速していきます

中期経営計画2024で設定した財務・非財務主要KPI一覧


 

 

③ 各セグメントの経営方針・経営戦略等

各セグメントにおいて次の成長を牽引する事業(GG10)に重点的にリソースを投入していきます。GG10の詳細は「②当社グループ全体の経営方針・経営戦略等 <経営方針・経営戦略> ⅱ 成長戦略」をご参照ください。各セグメントの経営方針・経営戦略は以下のとおりです。

 

 「マテリアル」セグメント

本セグメントにおいては石油化学関連の収益安定化を図りながら、付加価値の高い事業の構成比を高めることで利益成長を目指します。

 

価値提供分野「Environment & Energy」、「Mobility」、「Life Material」

●基本戦略:カーボンニュートラルの実現に向け、既存の延長線ではない戦略・戦術でポートフォリオ変革を図り、収益性と投資効率の向上を目指す

経営指標:営業利益、営業利益率、ROIC

 

経営環境・経営課題

本セグメントにおいては、「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおり、セパレータや石油化学関連製品を中心とする環境ソリューション事業、自動車用途向け製品を中心とするモビリティ&インダストリアル事業、電子部品・電子材料、繊維、消費財を中心とするライフイノベーション事業を運営しています。これらの事業において、ビジネスモデルや市場の状況、競争優位性等の事業環境は、製品群によって大きく異なるため、各事業が置かれている環境認識に基づいた経営課題に対して取り組んでいます。本セグメント全体の観点では、事業ポートフォリオの転換を最も重要な経営課題と認識し、次の成長分野への重点的な投資を行う一方で、既存アセットを最大活用することでのキャッシュ創出や事業の構造改革を推進しています。本セグメントにおける経営環境は以下のとおりと認識しています

ⅰ 環境ソリューション事業

主要国における電気自動車等の環境対応車の需要の急速な立ち上がりと、それに向けたリチウムイオン電池需要の高まり

・カーボンニュートラルの動きを受けた、石化関連製品の中長期視点でのサステナビリティ対応の加速・脱炭素に貢献する技術やソリューションに対するニーズの急速な高まり

 

ⅱ モビリティ&インダストリアル事業

・次世代モビリティで求められる安全、快適、環境特性に優れた素材ニーズの高まり

 

ⅲ ライフイノベーション事業

電気自動車の普及やデジタル社会への進展に伴う、先端半導体技術のニーズの高まり

通信技術の高度化や衛生意識の変容等、新たなライフスタイルによる様々なセンシングニーズの高まり

 

<経営方針・経営戦略>

本セグメントにおける主な取り組みの方針・進捗は、以下のとおりです。

ⅰ 環境ソリューション事業

■ 価値提供の方向性:独自の技術・知見を活かした新しい価値の創出

これまでに培った技術や知見などの事業基盤を活かした、旭化成が目指す2つのサステナビリティ(“持続可能な社会への貢献”と“持続的な企業価値向上”)の好循環の実現への貢献

■ 主な取り組み

グリーンソリューション推進(水素関連の事業化推進、CO2ケミストリーの多面的展開)

・蓄エネルギー分野の深耕(セパレータ事業の成長追求、知見を活かした新しい事業展開)

カーボンニュートラルに向けた取り組み推進(石化事業の中期的な転換、グループ横串体制での取り組み加速)

 

ⅱ モビリティ&インダストリアル事業

■ 価値提供の方向性:提案型事業へのシフト

電気自動車等の環境対応車に求められるサステナビリティ要求に対する、軽量かつ安全な製品のコンセプト提案、環境調和型素材の提案

・キーカスタマーへの横断的なマーケティング強化

■ 主な取り組み

・自動車内装ファブリック事業:Sage Automotive Interiors, Inc.を中心とした事業の拡大と合理化、買収したAdient plcの自動車内装ファブリック事業や環境特性に優れた人工皮革「Dinamica®(旧ラムース®)」との相乗効果の追求

・エンジニアリング樹脂事業:自動車構造部品や自動車用リチウムイオン電池構造部品に向けたエンジニアリング樹脂発泡体「サンフォース®」展開の加速やCAE(Computer Aided Engineering)等のデジタル技術活用を通じた自動車メーカーの開発パートナーとしての価値提供

 

ⅲ ライフイノベーション事業

■ 価値提供の方向性:先進・独自技術による高付加価値素材の提供

・デジタル社会の進展で求められるニーズへの、特徴ある部品・部材、ソリューションの提供

・生活者の視点に立った、健康で快適な暮らしに貢献する製品・サービスの提供

■ 主な取り組み

・電子材料、基板材料事業:DXの加速による最先端半導体を支える革新材料開発の強化

・電子部品:省エネ・快適市場において競争力のあるセンシングデバイス・ソリューションの展開

電子材料と電子部品との融合による特徴ある部材・部品、ソリューションの展開

新事業の展開加速:半導体プロセス材料の事業拡大に向けた共同研究・開発の促進、次世代パワーデバイス用途に最適な電流センシングデバイスの製品展開、CO2センサー、アルコールセンサーなどを活用した快適・安全・安心な車室空間ソリューションの提供、センシング技術と高性能な保冷素材を活用した鮮度保持ソリューション「Fresh Logi™」の展開

・CO2センサー、アルコールセンサー事業:各種センサーを活用した快適・安全・安心な車室空間ソリューションの提供

 

Ⅱ 「住宅」セグメント

●価値提供分野:「Home & Living」

●基本戦略  :国内事業は生涯にわたる顧客価値の最大化、海外事業は成長投資継続とこれまでの投資からのリターン創出による、高いROSとROICの維持と、キャッシュ創出力の向上

経営指標  :営業利益、営業利益率、売上高FCF率

 

<経営環境・経営課題>

日本国内の建築請負事業においては、COVID-19の影響で、住宅展示場来場者数の減少により、新規集客・受注活動に影響が出ていますが、都市・近郊・郊外それぞれのエリア特性やお客様のニーズに合わせたきめ細かいサービスを実施していくことで引続き高品質な住まいの提案に努めています。依然として先行き不透明な状況が続くため、従来の住宅展示場に依った集客・受注活動からデジタル技術を活用した新たなビジネスモデルへ転換することが課題です。一方、自然災害の多発化、COVID-19による顧客意識の変容、人生100年時代におけるライフスタイル・ワークスタイルの多様化、さらに脱炭素化の加速により、住宅を取り巻くニーズは変化し続けています。今後は、災害に強く安心できるレジリエンス(防災力)の高い住宅、環境負荷を低減する住宅やシニア、子育て世帯が安心かつ快適に生活できる住宅等の事業機会は益々広がっていくと考えています。これらの機会に対応し、都市で培ったノウハウを活かし、日本国内の関連市場へ新事業を展開していくこと、また、日本国内市場の成長の鈍化を踏まえて、海外市場へ事業展開を加速していくことが課題であると考えています

 

 

<経営方針・経営戦略>

本セグメントにおける主な取り組みの方針・進捗は、以下のとおりです

ⅰ デジタル技術を活用したマーケティング等による集客、受注活動の推進や生産性の向上

ⅱ サステナビリティ実現に向けた取り組み強化

・旭化成ホームズ㈱が参加しているRE100目標達成に向けた早期実現の推進

・ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)・ZEH-M(ゼッチ・マンション)普及に向けた取り組みの推進

集合住宅「ヘーベルメゾン™」の太陽光発電設備で創出した環境価値による当社及び旭化成ホームズ㈱の本社使用電力のグリーン化の推進

環境貢献度の高い断熱材「ネオマフォーム™」の拡販

環境省による「生物多様性のための30by30アライアンス」への旭化成ホームズ㈱の参加

ⅲ レジリエンスの強化

・耐震性・耐火性の高い住宅や防災科学技術研究所とのリアルタイム地震被害推定システム研究など、安心できる住まいを実現させる取り組みの推進

・DX技術を活用したプッシュ型の災害時無人対応システムによる、お客様へ災害時における安心の提供

他社とともに推進してきた「宮益坂ビルディング」建替え事業が「ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)2023」において、「準グランプリ・金賞」を受賞

旭化成ホームズ少額短期保険㈱が開発した独自の保険商品とサービス体制で災害時の安心提供を強化する取り組みが、「ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)2023」において「最優秀賞」を受賞

ⅳ 海外事業の展開加速

・豪州事業

事業を開始したニューサウスウェールズ州のほか、新たにビルダーを買収するなど他州にも事業エリアを拡大しています。ビルダー単独・サプライヤー単独では成しえない競争優位性の高い豪州モデルを確立させることで、豪州における注文住宅の建築請負及び分譲住宅の販売においてトップブランドを目指します。2023年2月には豪州子会社のNXT Building Group Pty Ltd(旧McDonald Jones Homes Pty Ltd)を通じて、ビクトリア州で戸建住宅の建設・販売を行うArden Homes Pty Ltdを買収し、豪州市場において更なる事業拡大を目指します

北米事業

大手建築部材サプライヤーErickson社、基礎工事や設備工事を行うAustin社、配管工事を行うBrewer 社とともにシナジーの発揮を目指す体制の構築に努め、旭化成ホームズ㈱が持つ工業化住宅のノウハウを通じて、製造や施工現場での多岐にわたる工程を合理的に担えるサプライヤーモデルを確立させることで、施工合理化と高品質な建物の提供を目指します。2022年10月には、米国の住宅の建築工事を行うサプライヤーのFocus 社(Focus Plumbing LLC等5社)を買収し、米国の住宅建築における生産性や品質の更なる向上を目指します。

 

 

Ⅲ 「ヘルスケア」セグメント

●価値提供分野:「Health Care」

●基本戦略  :医薬・医療機器の双方でグローバル市場の幅広い事業機会を捉え、グループの利益成長を牽引

●経営指標  :EBITDA、EBITDAマージン、ROIC

 

<経営環境・経営課題>

医薬事業において、COVID-19の影響によるMR(医薬情報担当者)の対面活動の制限は継続しているものの、オンラインでの企画の強化やチャネルの拡大など病院訪問を前提としないMR活動の推進や、米国における感染拡大影響の緩和により売上は堅調に増加しています。また、医療事業においては、生物学的製剤市場の継続的な成長と製薬会社における新薬の開発及び商業生産化へのニーズの高まりにより、ウイルス除去フィルターの需要が増加しています。今後もこの基調が継続するものと予測しており、安定生産と生産能力増強を通じて供給責任を果たしていきます。クリティカルケア事業においては、除細動器の半導体等の部材調達難による販売数量の減少や、景気後退を背景とした北米における医療機関向け除細動器の受注の減少により2022年度は成長が一時的に停滞しましたが、この状況は徐々に改善しつつあり、今後も成長を継続していく見通しです

中長期的には、医療費削減圧力が高まることによる国内の市場成長の鈍化が予想される一方、先進諸外国においては、より良い医療に対するニーズの高まりや長寿社会の進展に伴い、引き続き安定的な市場成長が継続すると認識しています。そのため、「ヘルスケア」セグメントの中長期的な成長のための課題は、グローバルにおける事業展開を加速することであり、当社グループに足りない経営資源を追加・補強する手段としてM&Aやライセンス導入による事業開発を位置付けています。2022年度は、医療事業においてBionova Scientific, LLC (次世代抗体医薬品CDMO)の買収を通じて、既存のバイオプロセス製品事業、装置事業、バイオセーフティ試験受託サービス事業に加え、バイオ医薬品CDMO事業に参入しました

今後は、2021年度にZOLL Medical Corporationが買収したRespicardia,Inc.とItamar Medical Ltd.の2社や、上述のBionova Scientific, LLCなどの収益成長による投資成果の刈り取りを図るとともに、既存事業の成長とM&A等の事業開発の活用を継続することで成長を続け、医薬・医療機器の双方でグローバル市場における幅広い事業機会を捉え、当社グループの成長を牽引する柱となることを目指します

 

<経営方針と経営戦略>

本セグメントにおける主な取り組みの方針・進捗は、以下のとおりです

ⅰ クリティカルケア事業

心肺蘇生、心疾患領域を中心とした既存事業の持続的成長、及び企業買収を通じた既存事業強化と周辺領域への拡大により、重篤な心肺関連疾患領域での成長を追求します。近年、買収した企業は以下のとおりです

2019年6月 Cardiac Science Corporation(自動体外式除細動器(AED))

2019年6月 TherOx, Inc.(急性心筋梗塞治療用機器)

・2021年4月 Respicardia, Inc.(中枢性睡眠時無呼吸症治療 植え込み型神経刺激デバイス)

2021年12月 Itamar Medical Ltd.(睡眠時無呼吸症在宅検査・診断ソリューション)

ⅱ 医薬事業(海外)

・免疫・移植周辺を中心とした疾患領域、及び大病院市場へフォーカスし、旭化成ファーマ㈱とVeloxis Pharmaceuticals, Inc.の連携のもとで事業開発、臨床開発、販売を推進しています。また2021年度より、両社協同でART-123の化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)の発症抑制に関する日米国際共同第1相臨床試験を開始しました。

・Veloxis Pharmaceuticals, Inc.の腎移植手術患者向け免疫抑制剤「Envarsus XR」の着実な伸長、及びOSE Immunotherapeutics SAから導入したCD28阻害薬「FR104」(臓器移植における新規免疫抑制薬)を開発しています。

 

ⅲ 医薬事業(国内)

重点領域(整形外科領域、救急集中治療、免疫)における新薬上市と販売の拡大を継続します。整形外科領域においては、骨粗鬆症治療薬「テリボン®オートインジェクター」の更なる市場への浸透を図ります。免疫領域においては、関節リウマチ治療剤「ケブザラ®」と、2021年度にサノフィ株式会社より導入した免疫調整剤「プラケニル®」の更なる市場浸透を図ります。研究開発においては、オープンイノベーションや事業開発を活用し、重点領域におけるパイプラインを拡充しています。

 

ⅳ 医療事業

生物学的製剤の市場成長に合わせたウイルス除去フィルター「プラノバ™」の市場ポジション・販売拡大と生産能力の増強に加え、製薬企業向けバイオセーフティ試験受託サービス事業やバイオ医薬品CDMO事業への事業展開により、製剤の安全性と生産性向上に貢献する製薬企業にとってのプレミアムパートナーとなることで製薬市場の成長を取り込みます。

近年、買収した企業は以下のとおりです

2019年10月 Virusure Forschung und Entwicklung GmbH (ウイルス等安全性試験受託サービス等)

2021年12月 Bionique Testing Laboratories LLC (マイコプラズマ試験受託サービス)

・2022年5月 Bionova Scientific, LLC (次世代抗体医薬品CDMO)

 

 

(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 事業上の課題

「(1) 経営方針・経営戦略等 ③ 各セグメントの経営方針・経営戦略等」に記載の項目に加えて、以下の事業上の課題があります。

 

Ⅰ 「マテリアル」セグメント

ⅰ 環境ソリューション事業

環境ソリューション事業においては、リチウムイオン電池用セパレータの世界的な需要変化及び競合他社の販売政策により販売量・販売価格が当社予測を下回る可能性があります。そのため、当社グループは、多様化する顧客ニーズに対応すべく、中長期で需要が増えると予測する電気自動車等の環境対応車や蓄電システム(ESS)用途を中心に生産能力の増強を推進し、湿式・乾式という特徴が異なる両タイプの製品を保有することを活かし、安定的かつ高水準の品質を強みに様々な顧客ニーズに対応します。また、同事業は、各国の規制・環境問題や供給制約の顕在化等によるサプライチェーンの変化、テクノロジーの変化により、事業環境が急激に変化することが中期的なリスク要因と考えられるため、事業環境の動向の把握と迅速な対応を続けていきます

 

 モビリティ&インダストリアル事業

モビリティ&インダストリアル事業は、世界の自動車業界の動向に影響を受ける場合があります。2022年度の自動車関連部材については、COVID-19、半導体不足による影響を受け、自動車生産台数の減少による関連製品の需要減が見られました。また、事業運営は、ロシア・ウクライナ情勢を契機とした燃料価格の高騰に伴う用役コスト上昇、中国ゼロコロナ政策等の影響によるサプライチェーン混乱、及び金融引き締めによる世界経済の減速等、年間を通じて厳しい環境下にありました。そのような中で各国の自動車関連市場を注視するとともに、サプライチェーンの管理を強化し、適正な水準の在庫を保有することで、変化する需要に柔軟に対応していきます

一方、中長期的には自動車の「CASE」と呼ばれる技術革新の進展が加速し、又は変化していくことにより、 新たなニーズが生まれてくると考えています。特に低炭素社会の実現に向けて、電気自動車等の環境対応車の需要拡大や資源の有効活用など、欧州を中心に自動車業界における環境負荷低減の動きが今後加速するものと考えており、このような社会ニーズに向けた対応が必要です

車室空間には、これまでにない快適性やデザイン性に加えて、リサイクル原料の使用、車体軽量化による自動車燃費の向上、電動化等、環境負荷低減に繋がる製品が求められています。環境特性に優れた人工皮革「Dinamica®」は、需要増加に対応するため供給能力を増強するとともに、米国子会社のSage Automotive Interiors, Inc.との連携を強化し、2020年度に買収した大手自動車シートサプライヤーの米国Adient plcの自動車内装ファブリック事業との統合効果を発現させていきます。また、車体軽量化に寄与する構造部品向けのエンジニアリング樹脂製品や樹脂発泡体の展開もグローバルに加速していきます。今後も顧客要求に迅速に対応するべく、グローバル市場におけるキーカスタマーへの事業横断的なアプローチやデジタルマーケティングを強化し、持続的に成長できるビジネスモデルの構築を推進していきます。

 

 

 ライフイノベーション事業(価値提供分野:Life Material)

ライフイノベーション事業においては、デジタルトランスフォーメーションの進展や次世代通信の普及に伴う情報通信高度化の需要が益々拡大しており、情報通信機器に用いられる電子材料や電子部品のニーズは年々増加しています。特に急速な電気自動車の普及がもたらす変化として、様々なセンシングデバイスの高度化・高信頼性化が求められています。また、自動車の安全性向上に向けては、2018年度に買収したSenseair ABのアルコールセンサーによる飲酒運転防止等、快適・安全・安心な車室空間への新たな価値提供を実現していきます。半導体のニーズが益々拡大する一方で、米中デカップリングによるサプライチェーンの混乱や分断がもたらす影響を的確に捉えて、対応を進めていきます。世界各国の半導体ファウンドリ(foundry)やOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly & Test)を活用する分業体制が業界全体として展開されているため、半導体製造に関わるサプライチェーンの動向に影響を受ける可能性があります。半導体生産に必要なレアガス(希ガス)やレアメタル(希少金属)などの原材料不足や、COVID-19などの影響を受けての需要変化による製造リードタイムの長期化など、電子部品事業において環境変化が見通しにくい状況となっています。そのような中で、半導体製造関連の主要サプライチェーンの状況(特に米国、中国、台湾)の動向をモニタリングし、リスクの発生状況を常時評価し、迅速に対応していきます。今後も市場動向を注視しながらデジタル社会で求められる最先端のニーズを捉えて、電子材料と部品の双方を有するユニークさを活かし、特徴ある材料・部品、ソリューションを提供していきます。

 

Ⅱ 「住宅」セグメント(価値提供分野:Home & Living)

本セグメントの国内事業においては、日本国内の個人消費動向・金利・地価・住宅関連政策ないし税制の動向に大きく影響を受ける場合があります。COVID-19感染拡大により、顧客とのコミュニケーションのあり方が大きく変わるなどの影響を受けていますが、一方で、在宅勤務等により暮らしや働き方の新たなニーズが生まれる機会でもあると考えています。当社グループは、デジタル技術を活用したマーケティング等による集客、受注活動の推進やグループ全体のモニタリング体制・人員強化の実施等により、新たな顧客とのコミュニケーションのあり方を確立し、ニーズに対応していきます。

北米、豪州の事業においては、各国の住宅市場の影響を受けることから、現地の関係会社を通じ、市場動向をモニタリングしていきます。また、国内事業同様に、住宅需要増、半導体不足や災害等により、原材料や建築資材の需給バランスが崩れて価格が変動する可能性があるため、原材料や建築資材価格をモニタリングし、影響の抑制に努めていきます。

加えて、事業の特性上、大量の個人情報を扱っているため、個人情報の漏洩等があれば、当社グループの信用を毀損するリスクがあります。そのため、情報を端末に置かないデータ保存のクラウド化等個人情報保護の徹底した対策を講じています。

 

Ⅲ 「ヘルスケア」セグメント(価値提供分野:Health Care)

医薬品や医療機器等の事業においては、一般的に、その販売数量や販売単価等が定期的な薬価・保険償還価格の改定の影響を受ける場合があります。特に新薬の研究開発期間は長期にわたることに加え、新薬が承認取得に至る確率が高くないことなどから、製品化の確度や時期について正確な予測が困難な状況にあり、計画どおりに製品化できなかった場合は業績に影響を与える可能性があります。医薬品や医療機器が製品化した場合でも、競合品の開発・上市の動向、有害事象の報告、後発品の上市等により、業績に影響を与える可能性があります。そのため、当社グループでは医薬事業と医療事業の両方を持つことで、多様な成長力・競争力を獲得し、イノベーション獲得機会の増加を図るとともに、医療規制等将来の不確実性への対応力を高めていきます。また、パイプラインの拡充、製品導出・導入、共同開発、グローバル展開の加速等に努めることで持続的な安定成長を図ります。

 

 財務上の課題

「(1) 経営方針・経営戦略等 ② 当社グループ全体の経営方針・経営戦略等」 <経営方針・経営戦略> ⅳ 財務・資本政策の項目をご参照ください。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1) サステナビリティ共通

当社グループでは、サステナビリティの追求を経営の柱として位置づけており、「サステナビリティ基本方針」として明確にしています。すなわち、当社グループはグループミッションである「世界の人びとのいのち”とくらし”に貢献」するため、「持続可能な社会への貢献」と「持続的な企業価値向上」の2つのサステナビリティの好循環を追求すること、その実現に最適なガバナンスを追求すること、そして、持続可能な社会への貢献による価値創造/責任ある事業活動/従業員の活躍の促進の3点を実践すること、を方針としています。

 

① サステナビリティマネジメント及び旭化成グループのマテリアリティ

■ ガバナンス

当社は、「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献します。」というグループミッションのもと、社会への貢献による持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指しており、事業環境の変化に応じた、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うコーポレート・ガバナンスを追求しています。その中で、サステナビリティは、事業の機会とリスクの両面に関わる重要な事項として、複数の委員会を含むガバナンス体制としています。具体的には、社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」「リスク・コンプライアンス委員会」「環境安全・品質保証委員会」を設置し、事業部門責任者や関係するスタッフ部門を委員として、議論・方針確認などを行っています。これらの委員会での議論内容を含む実施状況は取締役会に報告され、取締役会は監督と助言を行っています。サステナビリティ推進委員会には、より専門的な議論を行うための専門委員会である「地球環境対策推進委員会」「人権専門委員会」を設置しています。また、専任部署であるサステナビリティ推進部を設置し、当社グループのサステナビリティ全般を推進する機能としています。

サステナビリティマネジメント体制


 

■ 戦略

当社グループは目指すべき「持続可能な社会」を、グループビジョンに示す「健康で快適な生活」「環境との共生」に照らして定めています。すなわち、「健康で快適な生活」の観点では、Care for People”のキーワードによる、「ニューノーマル」での生き生きとしたくらしの実現”、「環境との共生」の観点では、Care for Earth”のキーワードによる、カーボンニュートラルでサステナブルな社会の実現”の二つです。COVID-19をはじめとする社会の大きな変化は、人類が取り組むべき課題を一段と浮き彫りにしています。この認識のもと、当社は創業来100年で培ってきた多様な人財・技術・事業を活かしながら、また、事業活動の前提となる基盤的な活動に注力しながら、5つの価値提供分野「Environment & Energy」「Mobility」「Life Material」「Home & Living」「Health Care」において、世界共通の課題の解決に向けた貢献を加速させていきます。

 

 

■ リスク管理

サステナビリティを追求する上で、多様なリスクを的確に認識し、対応を積極的に図ることが重要です。そこで当社では、一段と激しくなる事業環境や経営環境の変化を踏まえ、リスク管理体制を強化しています。サステナビリティに関する事項を含む具体的なリスクに関する認識と管理体制は「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

■ 指標と目標

当社では、経営における重要課題(マテリアリティ)を以下のように定めています。いずれもサステナビリティを追求していく上で重要な要素であり、これらに重点を置いた経営活動を行い、定量的な管理が可能なものは、指標や目標を設定して管理しています。

旭化成グループのマテリアリティ


 

「中期経営計画2024」では、以下を目標としています。


 

また、事業の前提の一つである「安全」については、「休業災害件数」「休業度数率」等により管理し、徹底を図っています。

 

 

② 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応

■ ガバナンス

当社グループでは気候変動対策を重要な経営課題と捉え、経営戦略の中核テーマの一つとしています。気候変動に関する方針や重要事項は取締役会で、また、関連する具体的事項は経営執行の意思決定機関である経営会議で、審議・決定を行っています(具体的には、中期経営計画、GHG排出量の削減目標、設備投資計画などの決定と実績の進捗確認等を行っています)。これらの取締役会・経営会議での決定を事業レベルで推進するため、社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」を設置し、経営の各執行責任者が気候変動を含むサステナビリティに関する課題の共有と議論を実施しています。委員会の結果は取締役会に報告され、グループ全体での取り組みのあり方等についての議論を行っています。なお、GHG排出量の削減目標達成に向けてカーボンニュートラル推進プロジェクトで、具体的なロードマップを検討しています。詳細は旭化成レポートをご参照ください。

https://www.asahi-kasei.com/jp/ir/library/asahikasei_report/pdf/22jp_29.pdf

 

■ 戦略

[リスク]

「+4」シナリオでは、主として酷暑・大雨・洪水などの物理リスクを想定しています。特に、風水害の甚大化により、当社の国内外の主要な製造拠点における被災とその損害額をリスクとして認識しています。「+1.5」シナリオでは、主として脱炭素化に向けたカーボンプライシング等の政策による規制強化や、脱炭素に適した素材への需要シフトをリスクとして想定しています。さらに、循環経済への移行加速や脱炭素社会に向けた革新技術の登場による、市場構造変化もリスクとして想定しています。これらのリスクは濃淡がありながらも、今後の気候変動の中でいずれも発現しうるものと当社グループでは捉えており、リスク低減の取り組みを進めます。

 

[機会]

当社グループは中期経営計画で「Environment & Energy」「Mobility」「Life Material」「Home & Living」「Health Care」を価値提供分野として位置付けています。また、成長に向けて重点的に資源投入する事業としてGG10を定めています。これらは、気候変動等のメガトレンドを踏まえて設定したもので、最新のIPCC、WEOの報告に照らし合わせても、さまざまな気候変動シナリオにおいて、緩和や適応の観点から価値を提供しうる分野であることが明らかです。当社の事業展開と方向性は、気候変動課題の解決に向けて、さまざまな製品・サービスを事業機会として提供しうるものと認識しています。

 

■ リスク管理

第三者保証を伴うGHG排出量の実績把握を年1回行っています。実績値並びに目標への進捗状況は、サステナビリティ推進委員会及びその分科会である地球環境対策推進委員会で共有し、今後の取り組みを議論しています。また、中期経営計画の策定や毎年の見直しの中でも、GHG排出量削減状況の把握、事業戦略検討、取締役会への報告等を行っています。さらに、四半期、月次でも、関連する事項の把握を行っています。随時検討・提案される設備投資では、インターナルカーボンプライシングを考慮して採算性を評価し、実施決定しています。

 

■ 指標と目標

当社グループは、以下の指標を気候変動のリスク・機会に関係するものとして位置付けています。


 

③ 責任ある事業活動へ向けた取り組み

■ 環境安全・品質保証活動

当社グループは、提供する製品・サービスのすべてのライフサイクルにおいて環境・安全・健康・品質に配慮する「環境安全・品質保証活動」を実施しています。しかし、誠に遺憾ながら、2022年4月9日に宮崎県延岡市にある当社のベンベルグ工場で火災が発生しました。従業員一同「安全は経営の最重要課題」であることをあらためて認識し、危機感を持って安全活動に取り組んでいきます。環境安全・品質保証に関するリスクマネジメントの詳細は「3 事業等のリスク (4) 当社グループ全体に係るリスク」もご参照ください。

 

■ コンプライアンス、人権・多様性の尊重

当社グループは、事業・業務に関する法令・諸規則や社内ルールの遵守を徹底し、事業活動においては、グループミッションに基づくグループバリュー(共通の価値観)として「誠実な行動」を促進しています。その実効性を高めるため、2019年度以降、各部署で「グループ行動規範」の読み合わせ活動を継続実施しており、従業員一人ひとりのコンプライアンス意識の底上げを図っています。また、グループ全体のコンプライアンス体制の強化を図るために、リスク・コンプライアンス委員会を設置し、当社グループ全体のコンプライアンスに関する遵守状況をモニタリングし、取締役会に報告しています。

「人権・多様性(ダイバーシティ)の尊重」については、当社グループは国際人権憲章(世界人権宣言並びに国際人権規約)を支持するとともに、国連グローバル・コンパクトの署名企業として、グローバル・コンパクトの人権に関する原則、及び国連「ビジネスと人権に関する指導原則」「子どもの権利とビジネスの原則」にも賛同しています。当社グループでは、従来より、多様性の尊重を含む人権に関するグループの考え方を「グループ行動規範」にて明示し、従業員研修等を通じてグループ内浸透を図っていますが、人権尊重の重要性を踏まえ、2022年3月、「旭化成グループ人権方針」を取締役会で決定し、公開しました。さらに、人権尊重について議論・方向付けする場として、また、「旭化成グループ人権方針」の実現のための推進体制として、人権専門委員会を新設し、2022年11月、第1回委員会を開催しました。今後、「旭化成グループ人権方針」のグループ内での普及啓発を進めるとともに、人権に関するリスクを抽出し、軽減・対応を行う「人権デュー・ディリジェンス」への取り組みを進めていきます。

 

■ ステークホルダーとの対話の強化

当社グループでは、ステークホルダーの皆様に適切な情報開示を行うとともに、双方向のコミュニケーションを取ることが重要と考えています。そこで、2022年度は、前年度に引き続き、投資家、メディアの皆様に対し、当社グループのサステナビリティに対する考え方と実行の状況を説明するため、「サステナビリティ説明会」を開催しました。2022年度の説明会では、「持続可能な社会への貢献」「持続的な企業価値向上」という2つのサステナビリティの好循環を追求し、経営基盤の強化と事業の高度化により新たな価値を創出していくため、事業共通の重要テーマであるGreen(グリーントランスフォーメーション)、People(人財のトランスフォーメーション)に関する当社グループの考え方と取り組みを紹介しました。

 

(2) 人的資本に関する開示

■ 戦略、指標と目標

前提となる人財戦略の概要については「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営方針・経営戦略等 ② 当社グループ全体の経営方針・経営戦略等 <経営方針・経営戦略> ⅴ 経営基盤の強化 ■ People (「人財」のトランスフォーメーション)」記載のとおりであり、人財戦略の柱は、社員一人ひとりが挑戦・成長し続ける「終身成長」、当社の多様性を活かしコラボレーションを推進する「共創力」の2つを置いています。

「終身成長」については、一人ひとりが自らのキャリアを描き、成長に向けた学び・挑戦を進めること、そして、個とチームの力を最大限引き出し成果に結びつけるマネジメント力の向上に、一層取り組んでいきます。

「共創力」については、多様性を“拡げる”という視点と“つなげる”という視点から、様々な取り組みを実行していきます。具体的には下記のような取り組みを進めています。

 

(人財育成方針)

・高度専門職制度の拡充によるプロフェッショナル人財の育成強化

新事業創出、事業強化へ積極的に関与し、貢献できると期待できる人財に対しふさわしい処遇を行い、社内外に通用する専門性の高い人財を増やしていく仕組みです。人数をKPIとして注視しており、制度を開始した16年度90名から順調に増え、前中計最終年度である21年度時点で259名となっていました。22年度からの新中計では24年度300名を目標としていましたが、直近の増加ペースを踏まえて目標を引き上げ、24年度までに360名まで増やすことを新たな目標としています。(22年度実績294名)

 

・エンゲージメント向上 KSA(活力と成長アセスメント)

個人と組織の状態を可視化してPDCAを回し、エンゲージメントや挑戦・成長行動を高めていく取り組みです。毎年1回サーベイを実施して組織ごとの結果を各ラインマネージャーにフィードバックし、各組織が当事者意識を持って課題解決に向け取り組むものです。KSAでは「職場環境・上司部下関係」「活力」「成長行動指標」の3つの指標を測定していますが、このうち「成長行動指標」をKPIとして注視しています。取組開始以来順調に推移しており、直近22年度は3.71(1~5段階評価)まで上がってきましたが、今後もより高めていきたいと考えています。

 

・DE&I、女性活躍推進

DE&Iに関しては、以前より女性管理職へのメンタープログラムなど様々な取り組みを行ってきた結果、1994年に3名だった女性管理職は276名に増加しています(2023年3月31日現在)。また女性の執行役員は2名、取締役は2名、監査役は1名となっています(2023年6月27日現在)。

2022年度からは、多様な人財の活躍状況を測るKPIとして、管理職の中でも特に指導的役割を果たすポジション(ラインポスト及び高度専門職)の女性比率を2030年度に10%まで増やすという目標を掲げました(2022年度実績3.8%)。またその比率を役員報酬にも連動させており、2024年度は5.0%を目標としています。

これを達成するため、社長から各事業部門に対し女性活躍推進に経営課題として取り組むよう指示を発信し、部門ごとにアンケート等を実施し、各事業部門の現場課題に即した具体的な取組みを進めています。経営トップのコミットメントとリーダーシップでこのような具体的な現場での活動を強力に後押ししつつ、あわせて、「管理職の長時間労働」や「男女の基幹的職務の経験差」といった共通的な課題に対応すべく、体制の強化も行います。

この取り組みは、女性活躍にとどまらず多様な人財が活躍し、連携し、「共創力」で新たな価値を生み出していくことが真の狙いです。女性・外国人・キャリア入社者の中核人材登用に関してはコーポレート・ガバナンスに関する報告書にも記載しているほか、障がい者雇用に関する取組みや各種データ類はサステナビリティレポートを参照ください。

 

https://www.asahi-kasei.com/jp/sustainability/social/human_resources/

 

 

シニア活性化と定年延長

「終身成長」というコンセプトのもと、60歳を超えても専門性を磨き、環境に合わせて挑戦&変化し続ける人財を応援したい、シニア人財の持てる力をより一層引き出したい、というねらいで、2023年度から定年を65歳に引き上げました。60歳到達前に、改めて本人に自分のwill/can/mustを考えてもらい、それに沿った職務をマッチングする、という仕組みにしています。自身の意欲や能力に沿った業務についていただくことで、本人の働き甲斐は勿論、若手への伝承や刺激を与えていただくことも期待しています。

 

・マネジメント力強化、経営人材育成

組織マネジメントのキーとなる部長層に対する研修プログラムを充実させています。プログラムには、マネジメントに関する集合研修及びeラーニング、360度フィードバック、1on1講座、KSA(上述)活用講座のほか、2020年度からは部長一人ひとりにコーチを付けて、ラインマネージャー自身が自ら考え解決していくことを支援することも含めています。2023年2月時点で部長層約680名中、すでに200名がプログラム受講済みです。

また経営幹部の育成・獲得にも力を入れており、次世代リーダー候補者にコーチング等を通じて自らの成長を促すとともに、リーダーシップやチームワークを強化するためのプログラムを通じた育成を行っています。毎年数名がこのプログラムを経てグループ役員*1)に昇格しています。2023年4月時点でグループ役員36名に対しそのプール人財は76名となっており、今後も質・量ともに同等以上のプール人財を維持していきたいと考えています。

*1) 執行役員の中から旭化成グループ全体の企業価値向上に責任と権限を有する者として、旭化成の取締役会決議に基づきグループ役員を任命しており、具体的には旭化成株式会社の上席執行役員以上及びそれに相応する事業会社の執行役員がこれにあたります。

 

(社内環境整備方針)

・経営戦略と人財戦略を連動させる仕組み

2021年度に社長を責任者とした人財戦略プロジェクトを立ち上げ、2022年度からの中期経営計画に連動した人財戦略を策定しました。現在実行している人事施策はこれをベースにしています。

人事部門トップが取締役会メンバーであるほか、会長・社長と人事担当役員・人事部長によるミーティングを毎月1回実施し、経営戦略と人財戦略が常に連動する仕組みにしています。また各事業部門トップと人事担当役員・人事部長の定期ミーティングも実施し、ポートフォリオ転換を含めた事業課題を人事課題に落とし込み、施策に反映させています。

 

・自立な学習プラットフォーム「CLAP」

CLAPとはCo-Learning Adventure Placeの頭文字をとったもので、1万以上の社内外のeラーニングのコンテンツから、従業員が自分に必要な学習を、無料で自由に学べる当社独自の仕組みです。2022年12月の導入から2023年3月末までの間に対象者の81%にあたる15,500人がCLAPを利用し、そのうち12,300人は一つ以上のコンテンツの学習を完了しており、すでに多くの従業員が自律的に学習しています。

 

・人財の可視化、事業領域を超えた人事異動、公募人事制度

当社グループでは以前より事業領域を越えた人事異動を積極的に行っています。一例としては、当社の住宅事業は近年海外に進出しましたが、この事業展開にあたっては、グループ全体の人材・ノウハウなどの経営基盤を活用することで、スピーディに展開することができました。海外事業の拡大によって業績も伸び、キャッシュ創出力も高めています。2022年度からはタレントマネジメントシステムも導入し、人財の可視化を進め、グループ全体での人財の活用力を一層高めていきます。

また公募人事制度については2003年度から行っており、毎年数十名の人財が、自らの意思で部署を異動し、新たな環境に挑戦しています。

 

 

・人事部門の組織ケーパビリティの向上、キャリア開発室の設置

人的資本経営を実践していくためには、実働部隊である人事部門の組織能力の向上も重要です。当社では人事部門に今後必要となる能力について改めて定義づけを行い、その中でもデータ利活用スキルとキャリアコンサルティング能力については特に力を入れて向上に努めています。データ利活用スキルについては大阪大学開本教授監修のもと独自のプログラムを内製し、データの収集や分析に関するノウハウを人事メンバー全員が習得するように取り組んでいます(2023年3月31日時点で77名が受講済)。また、国家資格キャリアコンサルタントの資格取得も奨励しており、2023年4月時点で27名が資格を取得しています。2022年度には従業員のキャリア形成を支援するためにキャリア開発室を設置し、シニア層及び若手・中堅層に対してキャリア施策を充実させています。

 

人財戦略及び具体策については、旭化成レポートにも記載がありますので、あわせて参照ください。また、人事関連の諸データに関しては当社サステナビリティレポートにも掲載しています。

https://www.asahi-kasei.com/jp/sustainability/esg_data/

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループは、広範にわたる事業により安定的な事業運営を実現していますが、個々の事業では事業の性格により異なる市場リスク・投資リスクをはじめ様々なリスクを内在しています。これらのリスクは予測不可能な不確実性を含んでおり、当社グループの財政状態や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクの回避及び発生した場合の対応に必要なリスク管理体制及び管理手法を整備し、リスクの監視及び管理等の対策を講じますが、これらすべてのリスクを完全に回避するものではありません。しかしながら、以下のような取り組みを通じて当社グループはリスク低減とリスク感度の向上に努めています。

将来の事項に関する記述につきましては、有価証券報告書提出日現在において入手可能な情報に基づき、当社グループが合理的であると判断したものです

 

(1) リスクマネジメントの強化

当社グループが3領域における多様な事業でグローバル展開を加速する一方で、COVID-19感染拡大以降の価値観の変化や米中デカップリング、ロシア・ウクライナ情勢等の国際関係の緊張の高まりなどにより、当社グループを取り巻く事業環境は激しく変化しています。新たなリスクや複雑化するリスクが当社グループに及ぼす影響は従来以上に大きくなっており、グループ全体のリスクを可視化して対応策を強化することが必要です。そのため、2022年度をリスクマネジメント強化のファーストステップと位置付け、具体的な対策を推進しています

 

(2) リスクマネジメント体制と関係者の役割

取締役会の監督のもと、リスクマネジメント全体についての責任者である社長を、リスク・コンプライアンス担当役員が補佐します。同役員は、社長の指示のもとリスクマネジメント全体を把握して、個別のリスク対策について各部門長(スタッフ部門担当役員・事業部門長等)に指示・支援を行います。また、リスク・コンプライアンス担当役員のもとにリスクマネジメントチームを設置し、同チームは社内各部門の活動をモニタリングし、具体的なリスク対策を支援します。そして、社長が委員長となるリスク・コンプライアンス委員会で、リスクマネジメントに関する経営レベルの決定事項や指示事項を各部門長に周知徹底しています。


 

 

(3) リスクマネジメントのPDCAサイクルの強化

各組織における自律的なリスク管理を基本とし、その中でもリスクの対応状況について取締役会が定期的に監督する特に重要なリスクを「グループ重大リスク」、各事業部門における年度経営計画のアサインメントの達成を阻害する可能性があるリスクで当該年度に重点的に取り組むものを「事業重要リスク」と定め、PDCA管理を強化しています。

リスクマネジメントのPDCAサイクル(グループ重大リスクと事業重要リスク)


 

(4) 当社グループ全体に係るリスク

グループ重大リスクとして設定したリスクについて

① 国内外の生産拠点における事故発生リスク(環境異常、保安事故、労災)

国内外に広く生産拠点を展開している当社グループにとって、事故発生による事業への影響は大きく、事業継続に支障をきたす可能性があります。当社グループでは、安全な操業を継続することは、社会からの信頼、従業員や地域社会の安全、環境配慮等における価値を守るための最重要事項と認識しています。そのため重篤な労災や保安事故の防止に向け、発生した事故の教訓を生かし、不安全行動による重篤災害撲滅を目指したLSA(ライフセービングアクション)活動の推進や、工場等の機械のリスクアセスメント実施における専門技術者の育成及び工場設備等の点検強化、各生産拠点におけるプロセス安全技術の維持を目的とした保安防災伝承活動の展開、防消火技術の向上等を進めています。また、現場の監査における専門家等第三者の視点の導入、人材育成を含む安全文化の醸成強化に努めています。今後はこれらの活動の全社レベルでの更なる活動定着を進めていきます。

 

② 国内外の品質不正リスク

製品の設計・検査の不備、不適切な顧客対応や報告が行われた場合や、法規制・規格等の遵守不備があった場合、リコールや当社ブランドに対する社会的信頼の喪失や製品の生産・流通の停止等により、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。当社グループでは、「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3つのセグメントにわたり、様々な製品を提供していますが、それぞれの製品の品質を確保することは、お客様をはじめ、全てのステークホルダーの方々の信頼をいただくために最重要と認識しています。品質不正の発生を防ぐため、各拠点の品質保証活動の健全性を確認する点検や、現場従業員の品質意識向上を目的として本社所管部門が現場を訪問して実施するタウンホールミーティングの各拠点での展開を行っています。今後は上記取組の継続推進と併せ、品質データを扱う現場・マネージャー、設計開発部門、営業部門向けの品質リスク教育の強化を進めていきます。

 

③ 国内外の環境安全・品質保証にかかわる法規制要求事項の未遵守リスク

環境安全・品質保証に関わる法規制等の未遵守の状態が発生した場合、リコールや当社ブランドに対する社会的信頼の喪失や製品の生産・流通の停止等により当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。環境安全・品質保証に関わる法規制等の遵守を徹底するために、関連法規等の内容を定期的に更新するとともに専門家等の第三者による確認も経たうえで社内へ周知し、チェックシート等を活用し現場従業員がその遵守状況を確認できる仕組みを構築しています。今後は上記取組の継続とともに、当社グループにおいて様々な製品に使用している化学品の法規制等の管理を徹底するための新たなシステムの運用も進めていきます。

 

 

④ グローバルサプライチェーンにおけるリスク

当社グループは、「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3つのセグメントからなる多様な事業を運営しており、事業ごとに原材料や部品、施工業者、物流経路、倉庫、販売先に至るまで、国内外で多様なサプライチェーンを構成しています。そのため、世界中で発生する自然災害、保安事故、人権問題、紛争、経営破綻等による、取引先との取引回避や取引先の機能不全により、サプライチェーンが途絶する可能性があり、主なリスクとして以下のものを認識しています。

 

・ 経済制裁・輸出管理規制の強化等の経済安全保障リスク

当社グループは、製品の輸出や海外における現地生産等、幅広く海外で事業展開をしており、安定的な国際通商のメリットを享受しています。そのため、何らかの理由により二国間あるいは多国間の通商環境が変化することにより、海外の会社との取引や出資、その他事業活動に影響を受けるリスクがあります。特に、米中対立やロシア・ウクライナ情勢の長期化等、近年国際関係の緊張が高まっており、これに伴って日本や諸外国において、経済安全保障の観点から経済制裁、輸出管理規制、外国直接投資規制を強化する動きが続いています。これらの規制に対応することにより、取引先との取引の停滞・中断、資金の移動の遅延・停止、事業遂行の遅延・不能等により、業績に影響を及ぼすなどのリスクがあります。地政学や法規制の動向には常に注意を払っており、外部有識者によるセミナーを経営層や事業部門・スタッフ部門の管理者層に実施してグループ全体の感度向上を図っています。また、適時に規制内容を理解することや関係当局に事前に相談することに加えて、経済制裁については外部の顧客スクリーニングシステム等を利用して慎重な取引審査を行うなどにより、適切な対応に努めています。

 

・ サプライチェーン上の人権課題に関するリスク

サプライチェーン上の人権課題に適切な対応がとられていない場合は、取引先との取引停止、法令による罰則の適用、当社グループに対する社会的信頼の喪失等により、事業継続に支障をきたす可能性があります。当社グループでは旭化成グループ人権方針を策定して各種施策の取り組みを実施しています。2022年度は、経営層をメンバーとする人権専門委員会を新設して、人権への取り組みを重要な経営課題として経営層に広く共有しました。また、外部有識者によるセミナーの実施により経営層の意識向上を図るとともに、社内報やeラーニングを活用して人権尊重の取り組みの重要性を従業員全体へ周知し、グループ全体での意識啓発を進めています。これらの取り組みを継続するとともに、サプライチェーンにおける人権デュー・ディリジェンスの実施の具体化を進めていくことを今後の課題として認識しています。

 

・ 原料・資材の調達リスク

サプライチェーンが各国・地域の法規制の動向や突発事象などにより影響を受ける場合に、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループではサプライヤーの選定におけるリスク評価や監査の実施、サプライヤー及び販売先のモニタリングなどを通じて、リスクを低減させることに加えて、主要製品・事業における原材料の調達ルートの多様化や適正な水準の在庫の確保を通じて、安定操業に向けて取り組んでいます。また、強靭で持続可能なサプライチェーンを維持するための、体系的かつ継続的なサプライチェーンリスクマネジメント(SCRM)の実施へ向けて、2022年度にグループを横断して、リスクの洗い出し・評価・対策の設定を開始しました。サプライチェーンに関連する各部門(製造、経営企画、営業、技術開発などの各部署)との連携や、実効性のあるリスク対策の実施を今後の課題として認識しており、進捗状況を定期的にモニタリングしてSCRMを推進します。

 

 

⑤ サイバーセキュリティ、通信インフラに関するリスク

昨今のサイバー攻撃の急増・巧妙化が進む一方で、サイバーセキュリティ対策が脆弱であった場合は、サーバダウン等の原因で事業継続が困難になる可能性があります。安心・安全・安定したIT基盤の運用は経営の大前提であり、当社グループは情報セキュリティ対策を重大な経営課題と認識し、サイバー攻撃の検知・対応ツールの強化、インシデント発生時の迅速で漏れの無い情報フローの構築を推進するほか、メール訓練等による従業員のセキュリティ意識の向上施策を実施しています。今後はグループ全体でのセキュリティ意識向上施策の展開を進め、経営陣とのセキュリティ対策に関するディスカッションをはじめ、個々の従業員への教育等の継続展開を進めていきます。

 

⑥ 大規模災害やパンデミック、海外有事(テロ、紛争)に関するリスク

近年頻繁に発生している自然災害、COVID-19のようなパンデミックや、テロ・個別紛争等のリスクは年々高まっており、リスク顕在時には従業員安全の確保や事業継続に支障を来す可能性があります。国内外に幅広く拠点を展開している当社グループでは、まずは国内の事業所、製造拠点を想定した、緊急事態発生時の情報伝達フローの明確化等を目的とした関係規程の改定、各種緊急事態対応マニュアルの再整備を進めています。また、国内の各製造拠点においては自然災害について、拠点ごとのリスク想定、減災計画、緊急時対応計画を策定し、訓練を含めた対応を進めています。今後は、国内における規程・マニュアルの周知及び事務所地区を中心とした自然災害訓練等の実施、海外拠点・工場、国内に独立して存在する工場における減災対応・マニュアル整備を進めていきます。

 

⑦ M&Aに関するリスク

当社グループは、事業ポートフォリオの進化にあたっては、「成長の為の挑戦的な投資」と「構造転換や既存事業強化からのフリー・キャッシュ・フロー創出」の両輪を回すことが重要と考え、事業投資、新規事業の創出や事業ポートフォリオの転換の手段として、国内外におけるM&Aを通じた事業展開を行っています。これまでZOLL Medical Corporation(2012年度)、Polypore International Inc.(2015年度、以下、Polypore社という)、Sage Automotive Interiors, Inc.(2018年度)、Veloxis Pharmaceuticals A/S(2019年度)など、大型買収を行ったことからのれん及び無形固定資産残高は増加傾向にあります。M&Aの結果取得した無形固定資産の企業結合日時点における時価については、コスト・アプローチ、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチなどによって合理的に算定された価額を基礎として算定しており、事業計画等の不確実性を伴う仮定が反映されています。

そのため、事業計画等において初期に期待した投資効果が発現しなかった場合や合弁会社の経営が悪化した場合、被買収企業との事業統合が遅延した場合など、のれんや無形固定資産の減損等により当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。当社グループでは、買収検討の対象企業のデューデリジェンス(詳細調査)を慎重に行い、買収後の事業統合の計画を入念に検証することで、リスクの低減に努めています。しかし、過去の大型買収が海外での新規市場や成長市場に関する案件であり、想定外の事業環境の変化への対応を誤ると、投資額の回収が困難となるリスクを抱えています。今年度のPolypore社ののれん及び無形固定資産の減損損失計上も踏まえ、業界動向を見通すことが難しい事業については、より一層の精査をすることやリスクをより慎重に見積もることで対処していきます。

 

⑧ 気候変動に関するリスク

当社グループは、気候変動に関して生じる変化を重要なリスク要因として認識しています。当社グループではTCFD提言に賛同するとともに、TCFD提言の枠組みに基づき、気候変動が事業に及ぼす影響の分析、対応策の検討を行っています。詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティ共通 ②気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への対応」の記載をご参照ください。

 

 

上記以外のリスクについて

上記に記載したリスク以外にも、当社グループの事業運営全体にかかわるリスクに対して日々の事業活動の中でリスク低減に努めており、主なリスク項目は以下のとおりです。

 

① 通商に関するリスク

当社グループは、原材料の購入や製品の輸出、海外における現地生産等、幅広く海外で事業を展開し、国際貿易や資金決済に関する二国間あるいは多国間の協定や枠組みのメリットを享受しています。これらの協定や各種枠組み等の変更や新規規制の導入などにより、関税の増加、通関の遅延・不能、資金決済の遅延・不能が生じ、代金回収や事業遂行の遅延・不能、業績悪化等が発生するリスクを負っています。当社グループでは、適時に規制内容を理解することや、関係当局に事前に相談し、対策を講じることによって、これらのリスクの低減に努めています。

また、グループ会社間の国際的な取引価格については、当社グループ税務方針に基づき、日本国政府及び相手国政府の移転価格税制を遵守していますが、税務当局から取引価格が不適切であるとの指摘を受ける可能性や、協議が不調となった場合に二重課税や追徴課税を受ける可能性があります。そのため、重要性の高いグループ会社間取引については、事前確認制度の活用、あるいは、外部専門家の意見も参考にしながら、各国の移転価格税制を踏まえた独立企業間価格を設定しています。

 

② 事業競争力に関するリスク

当社グループは、「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3つのセグメントにおいて、付加価値の高い製品・サービスを提供していますが、類似の製品や技術による競合企業のキャッチアップ、新たな競合企業の参入等によって競争環境が激化することや、デジタル技術や脱炭素化に貢献する技術等急速な技術革新による産業構造の変化、急激な需要構造・市場構造の変化などにより、当社グループの各事業の競争力を損なう可能性があります。当社グループでは、競合製品の競争力や産業構造の変化をタイムリーかつ的確に見通すことに努めるとともに、製品やサービスの絶え間ない差別化や模倣困難なビジネスモデルの構築、知的財産等による高い参入障壁を設けることにより、これらのリスクの低減に努めています。

 

③ 市況変動によるリスク

・ 原油・ナフサ価格変動リスク

当社グループは、原油やナフサを原料とした石油化学製品の製造・販売事業を展開しています。また、各原料市況並びに需給バランスから固有の市況を形成しており、その変動は当該事業や誘導品からなる当社グループの各事業に影響を及ぼします。特に、事業規模が大きいアクリロニトリル事業は市況の変動の影響が大きいため、販売価格のフォーミュラの見直し等、収益の安定化に努めています。

 

・ 為替変動リスク

当社グループは、輸出入及び外国間等の貿易取引において、外貨建ての決済を行うことに伴い、円に対する外国通貨レートの変動による影響を受けます。そのため、取引においては、先物為替予約等によるヘッジ策やCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)の活用による、安定的かつ効率的な資金活用を目指しています。当社グループは、収益の多くが外貨建てであることに加え、当社の報告通貨が円であることから、外国通貨に対して円高が進むと、当社グループの業績にマイナスのインパクトを与えます。当社の試算では、米ドル・円レートが1円変動すると連結営業利益に年間10億円の変動をもたらします。

 

(5) 各セグメントに係るリスク

「マテリアル」、「住宅」、「ヘルスケア」の各セグメントでは、事業上の課題やリスクへの対策検討を実施する中で事業重要リスクのPDCA管理も実施しています。各事業の課題やリスクに関する詳細は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」をご参照ください。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

本項の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は、将来のリスク、不確実性及び仮定を伴う予測情報を含んでいます。これらの記述は、現時点で当社が入手している情報を踏まえた一定の前提条件や見解に基づくものであり、「3 事業等のリスク」等に記載された事項及びその他の要因により、当社グループの実際の業績はこれらの予測された内容とは大幅に異なる可能性があります。

 

(1) 経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容

① 経営成績

Ⅰ 当社グループ全体

当社グループの当連結会計年度(2022年4月1日~2023年3月31日、以下、「当期」)における世界経済は、COVID-19に対するワクチン接種の進展等による経済活動の再開の進展や雇用の安定がみられる一方で、国際商品市況の2022年夏頃にかけての高騰や経済全体での労働コストの増加等を背景として物価上昇が進行しつつ、物価安定に向けて金利及び量の双方から、過去と比較しても急速な金融引締めが進み、経済活動に対する政策的な下押しもみられました。

このような環境の中で、当社グループの当期における連結業績は、既存事業の拡大や円安影響、石化製品市況の高騰や「住宅」領域の買収による新規連結等により、全領域で増収となり、売上高は2兆7,265億円で前連結会計年度(以下、「前期」)比2,652億円の増収となりました。一方、「住宅」領域が堅調に推移したものの、経営環境の悪化や一時的な要因等により「マテリアル」及び「ヘルスケア」領域で減益となったことから、営業利益は1,284億円で前期比743億円減益となり、経常利益1,215億円で前期比905億円減益となりました。また、親会社株主に帰属する当期純損失は、セパレータ事業でPolypore社ののれん及び無形固定資産について減損損失を計上したこと等により、△913億円と前期比2,532億円の大幅な減益となりました。その結果、EPS(1株当たりの当期純利益)は△65.84円と前期比182.52円の減少となりました

資本効率について、当期のROICは4.0%で前期比2.6%の低下、ROEは△5.5%で前期比15.7%の低下となりました。当期の資本効率低下の主な原因は、ROICについては、経営環境の悪化による営業利益の減少に加えて、有利子負債の増加の他、円安による為替換算差等の増加で投下資本が増加したこと、ROEについてはPolypore社の減損損失等で当期純損失が発生したことによるものです。

財務健全性については、有利子負債が増加したことを受けて、D/Eレシオは0.57となりました

 

〈当社グループの業績〉

 

経営指標

2020年度

2021年度

2022年度

前期との

差異

収益性

売上高

(億円)

21,061

24,613

27,265

+2,652

営業利益

(億円)

1,718

2,026

1,284

△743

売上高営業利益率

(%)

8.2

8.2

4.7

△3.5

EBITDA

(億円)

3,051

3,508

3,050

△458

売上高EBITDA率

(%)

14.5

14.3

11.2

△3.1

親会社株主に帰属する当期純利益又は当期純損失(△)

(億円)

798

1,619

△913

△2,532

EPS

(円)

57.49

116.68

△65.84

△182.52

資本効率

ROIC

(%)

4.9

6.6

4.0

△2.6

ROE

(%)

5.6

10.3

△5.5

△15.7

財務健全性

D/Eレシオ

 

0.45

0.45

0.57

0.11

 

 

 

Ⅱ セグメント別

ⅰ 「マテリアル」セグメント(価値提供分野:「Environment & Energy」「Mobility」「Life Material」)

売上高は1兆3,166億円前期比1,066億円の増収となり、営業利益は410億円で前期比650億円の減益となりました。為替の円安や、石化製品市況高騰等を受けた価格転嫁による販売価格の上昇により増収となる一方、セパレータやエンジニアリング樹脂の販売数量減少や操業度が低下したほか、基盤マテリアル事業の交易条件悪化や在庫受払差の減益影響等により、大幅な減益となりました

 

・ 環境ソリューション事業

基盤マテリアル事業は、市況上昇や円安の一方で、原燃料価格高騰を受けた交易条件の悪化や在庫受払差の影響等により増収減益となりました。主力事業であるアクリロニトリル事業については、交易条件が悪化したことにより減益となりました。なお、同事業では、販売価格の原材料連動フォーミュラ化を進めるなど、市況の影響を受けにくい安定的な収益を創出できるよう努めています。リチウムイオン電池用セパレータの業績は、電気自動車等の環境対応車やスマートフォン等の民生機器、また蓄電システム(ESS)等の需要動向に影響を受けます。セパレータ事業は、湿式タイプの「ハイポア™」の需要が中国の景気後退や自動車減産の影響により民生用途・車載用途ともに減少し、減収減益となりました

 

・ モビリティ&インダストリアル事業

本事業は、自動車内装材やエンジニアリング樹脂等、自動車用途の製品の割合が大きいため、その業績は、グローバルでの自動車生産台数増減の影響を強く受けます。自動車内装材については、自動車減産の影響が改善したこと等を受けて需要が増加し、増益となりました。エンジニアリング樹脂については、自動車減産の影響の長期化や家電・OA機器向けの需要の減少により減益となりました。

 

・ ライフイノベーション事業

電子部品や電子材料を中心とするデジタルソリューション事業は、為替の円安影響に加え、上期は半導体市況の活況等により好調に推移したものの下期は需要減による販売数量が減少し、また、固定費の増加の影響もあり増収減益となりました。その他の事業(繊維事業や消費財事業等)は、円安効果があったものの、原燃料高騰に加え固定費増等により増収減益となりました

 

ⅱ 「住宅」セグメント(価値提供分野:「Home & Living」)

売上高は8,990億円前期比765億円の増収となり、営業利益は760億円で前期比31億円の増益となりました。


・ 住宅事業

建築請負部門は、物件の大型化・高付加価値化による平均販売単価の上昇やコストダウン等により資材価格高騰の影響をカバーし、増収増益となりました。不動産部門は、賃貸管理事業の順調な推移に加え、資産売却益が前年度より多かったことから、増収増益となりました。海外事業部門は、北米事業において、下期は金利上昇影響により工事件数が減少しましたが、為替の円安によるプラスと、Brewer社やFocus社の新規連結などがあったことにより、増収増益となりました

 

ⅲ 「ヘルスケア」セグメント(価値提供分野:「Health Care」)

売上高は4,969億円前期比810億円の増収となり、営業利益は419億円前期比103億円の減益となりました医薬・医療事業は、Bionova社の新規連結に伴う減益影響がある一方、主力製品が堅調に推移したことにより、増収増益となりました。クリティカルケア事業は、為替換算差の影響がありましたが、前期のCOVID-19による人工呼吸器特需の影響がなくなったことや、Itamar社、Respicardia社の買収影響等の一時要因に加え、部材調達難の影響等を受け、増収減益となりました。

 

・ 医薬・医療事業

医薬事業においては、「テリボン®」、「ケブザラ®」、「プラケニル®」、「Envarsus XR」の販売数量の好調な推移、ライセンス収入の増加、前期の導入一時金の差異等の販管費減少等により、増収増益となりました。医療事業においては、円安による為替換算差のプラス等があった一方、Bionova社の新規連結による減益影響や原燃料価格高騰、活動費が増加したこと等により増収減益となりました

 

・ クリティカルケア事業

「LifeVest®」事業は保険償還状況の改善や円安による換算差等により増益となりました。除細動器事業は前期の人工呼吸器特需の影響がなくなったことに加え、部材調達難による販売数量の減少及び調達費用の増加、景気後退に伴う下期を中心とした北米の医療機関向け除細動器の受注減少等により減益となりました。その他に、Itamar社の新規連結や前期のRespicardia社買収時の会計処理影響がなくなったことも減益要因となっています

 

Ⅲ 生産、受注及び販売の状況

ⅰ 生産実績

当社グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではないため、セグメントごとに生産規模を金額あるいは数量で示すことはしていません

このため、生産の状況については、「Ⅱ セグメント別」における各セグメントの業績に関連付けて示しています

 

ⅱ 受注状況

当社グループは注文住宅に関して受注生産を行っており、その受注状況は次のとおりです。その他の製品については主として見込生産を行っているため、特記すべき受注生産はありません

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

住宅

355,551

92.5

503,040

94.3

 

 

ⅲ 販売実績

当期における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

販売実績(百万円)

前期比(%)

マテリアル

1,316,615

108.8

住宅

898,971

109.3

ヘルスケア

496,881

119.5

その他

14,019

108.1

合計

2,726,485

110.8

 

(注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しています。

2 前期及び当期において、主要な販売先として記載すべきものはありません。

 

 

② 財政状態

当期末の総資産は、Polypore社における固定資産の減損損失1,864億円を計上したものの、石化製品市況高騰や為替の円安等により棚卸資産が増加したことなどから、前期比1,055億円増加し、3兆4,545億円となりました。

流動資産は、棚卸資産が1,023億円、受取手形、売掛金及び契約資産が81億円、現金及び預金が65億円増加したことなどから、前期比1,540億円増加し、1兆4,882億円となりました。

固定資産は、有形固定資産が665億円、退職給付に係る資産が246億円増加したものの、無形固定資産が1,001億円、投資有価証券が341億円減少したことなどから、前期比485億円減少し、1兆9,663億円となりました。

流動負債は、1年内償還予定の社債が400億円、コマーシャル・ペーパーが110億円、前受金が105億円増加したものの、短期借入金が435億円、未払法人税等が406億円減少したことなどから、前期比117億円減少し、9,122億円となりました。

固定負債は、繰延税金負債が242億円、退職給付に係る負債が234億円減少したものの、長期借入金が1,556億円増加したことなどから、前期比1,399億円増加し、8,464億円となりました。

有利子負債は、前期比1,732億円増加し、9,395億円となりました。

純資産は、為替換算調整勘定が978億円、退職給付に係る調整累計額が305億円増加したものの、親会社株主に帰属する当期純損失を913億円計上したことや配当金の支払486億円があったことなどから、前期末の1兆7,188億円から228億円減少し、1兆6,960億円になりました。

その結果、1株当たり純資産は前期比18.04円減少し1,198.30円となり、自己資本比率は前期末の50.4%から48.1%となりました。D/E レシオは前期末から0.11ポイント増加し0.57となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

Ⅰ キャッシュ・フローの状況

当期のフリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計額)は、固定資産の取得や法人税等の支払などによる支出が増加し、1,228億円の支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローでは、長期借入れによる収入などにより、1,118億円の収入となりました。

以上の要因に加え、現金及び現金同等物に係る換算差額等により、現金及び現金同等物の期末残高は、前期末に比べて50億円増加し、2,479億円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当期の営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払1,106億円、棚卸資産の増加841億円、税金等調整前当期純損失619億円などの支出があったものの、減損損失1,894億円、減価償却費1,390億円、のれん償却額377億円などの収入があったことから、908億円の収入(前期比925億円の収入の減少)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当期の投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入432億円などがあったものの、有形固定資産の取得による支出1,520億円Bionova社及びFocus社の買収により連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出784億円、無形固定資産の取得による支出202億円などがあったことから、2,136億円の支出(前期比74億円の支出の減少)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当期の財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出755億円、配当金の支払額486億円、短期借入金の減少298億円などの支出があったものの、長期借入れによる収入2,096億円、社債の発行による収入500億円などの収入があったことから、1,118億円の収入(前期比695億円の収入の増加)となりました。

 

当社グループの連結キャッシュ・フローの推移

(単位:億円)

 

2020年度

2021年度

2022年度

営業活動によるキャッシュ・フロー①

2,537

1,833

908

投資活動によるキャッシュ・フロー②

△1,578

△2,210

△2,136

フリー・キャッシュ・フロー③(①+②)

959

△377

△1,228

財務活動によるキャッシュ・フロー④

△959

423

1,118

現金及び現金同等物に係る換算差額⑤

96

210

157

現金及び現金同等物の増減額⑥(③+④+⑤)

97

256

47

現金及び現金同等物の期首残高⑦

2,048

2,162

2,429

連結の範囲の変更に伴う増減額⑧

18

11

2

現金及び現金同等物の期末残高(⑥+⑦+⑧)

2,162

2,429

2,479

 

 

Ⅱ 流動性と資金調達の源泉

(資本の財源及び資金の流動性について)

2024年3月31日に終了する連結会計年度においては、上期は厳しい経営環境を想定するものの、下期にかけて利益回復の取り組みや経営環境の改善を見込んでおり、各セグメントにおいて前連結会計年度を上回るキャッシュ・フローを創出することを見込んでいます。加えて、財務規律の強化や事業ポートフォリオ転換などを通じた収益体質の強化にも取り組み、更なるキャッシュの創出に継続的に努めています。

また、当社グループでは、D/Eレシオ0.4~0.7を目安に健全な財務体質を維持しつつ、これを背景に金融情勢に機動的に対応し、金融機関借入、社債やコマーシャル・ペーパーの発行など多様な調達手段により、安定的かつ低コストの資金調達を図ります。同時に資金の年度別返済の集中を避けることで借り換えリスクの低減も図っています。

これらの資金を、経営基盤の強化・変革、持続可能な社会の実現と企業価値の継続的な向上のための戦略的な投資、及び株主の皆様への還元に活用していきます。

なお、当社グループでは、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)とグローバル・ノーショナル・キャッシュ・プーリングを導入しており、国内外の金融子会社、海外現地法人などにおいて集中的な資金調達を行い、子会社へ資金供給するというグループファイナンスの考え方を基本としています。グローバル拡大への対応とグループ経営の深化の視点から、今後も連結ベースでの資金管理体制の更なる充実と資金効率化を図ります。

 

(2) 重要な判断を要する会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりです。

当社グループは、退職給付会計、税効果会計、貸倒引当金、棚卸資産の評価、投資その他の資産の評価、訴訟等の偶発事象などに関して、過去の実績や当該取引の状況に照らして、合理的と考えられる見積り及び判断を行い、その結果を資産・負債の帳簿価額及び収益・費用の金額に反映して連結財務諸表を作成していますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの財政状態又は経営成績に対して重大な影響を与え得る会計上の見積り及び判断が必要となる項目は以下のとおりです。なお、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。

 

① 棚卸資産の評価

当社グループで保有する棚卸資産は取得原価をもって貸借対照表価額とし、収益性の低下により期末における回収可能価額が取得原価よりも下落している場合には、回収可能価額まで棚卸資産の評価を切り下げています。回収可能価額は、商品及び製品については正味売却価額に基づき、原材料等については再調達原価に基づいています。経営者は、棚卸資産の評価に用いられた方法及び前提条件は適切であると判断しています。ただし、当社グループは、主に「マテリアル」セグメントを中心として市場価格の変動リスクに晒されており、将来、経営環境の悪化等により市場価格が下落した場合には棚卸資産の簿価を切り下げることになります。

 

② 企業結合取引の結果取得した無形固定資産の企業結合日時点における時価

当社グループは、企業結合取引の結果取得した無形固定資産の企業結合日時点における時価について、コスト・アプローチ、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチなどの合理的に算定された価額を基礎として算定しています。

経営者は、無形固定資産の時価の見積りに用いられた、事業計画に含まれる将来の販売数量の見込みや割引率等についての主要な仮定について合理的であると判断しています。

 

③ 有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)の減損

当社グループは、有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)について、帳簿価額が回収できない可能性を示す事象や状況の変化が生じた場合に、減損の兆候があるものとして、減損損失の認識の判定を行っています。減損の存在が相当程度に確実と判断した場合、減損損失の測定を行い、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。回収可能価額は、使用価値と正味売却価額のうち、いずれか高い金額としています。使用価値は、将来の市場の成長度合い、収益と費用の予想、資産の予想使用期間、割引率等の前提条件に基づき将来キャッシュ・フローを見積もることにより算出しています。

経営者は、減損の兆候及び減損損失の認識に関する判断、及び回収可能価額の見積りに関する評価は合理的であると判断しています。ただし、予測不能な市場環境の悪化等により有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)の評価に関する見積りの前提に重要な変化が生じた場合には、減損損失を計上する可能性があります。

 

④ 繰延税金資産の評価

当社グループは、繰延税金資産のうち、回収可能性に不確実性があり、将来において回収が見込まれない金額を評価性引当額として設定しています。繰延税金資産の回収可能性については、課税所得及びタックスプランニングの見積りにより計上していますが、特に課税所得の見積りには将来に関する予測や情報が含まれています。将来の予測や情報に基づき、繰延税金資産の一部又は全部が回収できない可能性が高いと判断した場合には、将来回収が可能と判断される額までを繰延税金資産に計上しています。経営者は、繰延税金資産の回収可能性の判断及び前提となる課税所得やタックスプランニングの見積りは適切であると判断しています。ただし、将来、経営環境の悪化等により、想定していた課税所得が見込まれなくなった場合は、評価性引当額を設定することにより繰延税金資産が取崩される可能性があります。

 

⑤ 退職給付債務及び費用

当社グループは主として従業員の確定給付制度に基づく退職給付債務及び費用について、割引率、昇給率、退職率、死亡率、年金資産の長期期待運用収益率等の前提条件を用いた数理計算により算出しています。割引率は測定日時点における、従業員の給付が実行されるまでの予想平均期間に応じた長期国債利回りに基づき決定し、各前提条件については定期的に見直しを行っています。長期期待運用収益率については、過去の年金資産の運用実績及び将来見通しを基礎として決定しています。

経営者は、年金数理計算上用いられた方法及び前提条件は適切であると判断しています。ただし、前提条件を変更した場合、あるいは前提条件と実際の数値に差異が生じた場合には、数理計算上の差異が発生し、当社グループの退職給付債務及び費用に影響を与える可能性があります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1) 合弁会社株主間契約

契約会社名

契約締結先

内容

合弁会社名

契約締結日

契約期間

旭化成㈱

(当社)

PTT Public Company Limited

合弁会社株主間契約 等

PTT Asahi Chemical Co., Ltd.

2008年3月24日

締結日から合弁会社の存続する期間

 

 

(2) 米国Bionova Holdings, Inc.の株式の取得について

当社の連結子会社である旭化成メディカル㈱(以下、「旭化成メディカル」)は旭化成メディカルの米国子会社であるAsahi Kasei Bioprocess Holdings, Inc.を通じて、バイオ医薬品製薬企業への製造プロセス開発受託、抗体医薬品GMP製造(※)受託を行うBionova Scientific, LLCの100%親会社であるBionova Holdings, Inc.(登記上の本店所在地:米国デラウェア州、CEO:Darren Head)を買収することを決定し、その手続きを2022年5月31日(日本時間)に完了しました。

なお、詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 (企業結合等関係)」に記載しています。

※GMPとはGood Manufacturing Practiceの略であり、医薬品製造業者が遵守すべき製造に関連する諸基準を定めたものです。GMPの厳格な基準に準拠して医薬品の製造をすることを医薬品GMP製造と呼んでいます。

 

(3) 会社分割(簡易吸収分割)によるフォトマスク用ペリクル事業の三井化学株式会社への承継

当社は、2022年5月27日の取締役会の決議において、日本国内、韓国、台湾、北米及び中国において当社が営むフォトマスク用ペリクル製品の製造、開発、販売に関する事業及びその製造を請負う当社の連結子会社である旭化成EMS㈱の全株式(以下、「本件事業」)を吸収分割の方法により、2023年7月1日(予定)を効力発生日として、三井化学株式会社(本社:東京都港区、社長:橋本 修、以下、「三井化学」)に承継させること(以下、「本吸収分割」)等を内容とする最終契約(以下、「本最終契約」)を決定し、三井化学と合意しました。

 

① 事業分離の概要

Ⅰ 分離先企業の名称

三井化学株式会社

 

Ⅱ 分離した事業の内容

ペリクルの製造、開発及び販売に関する事業

 

Ⅲ 事業分離を行った主な理由

当社及び三井化学は、両社のペリクル事業の今後の在り方について協議を重ねた結果、迅速な意思決定と事業強化の観点から、FPDペリクル及びLSIペリクル事業を三井化学の盤石な体制のもとで運営していくことが最善との結論に至ったためです。

 

Ⅳ 事業分離日

2023年7月1日(予定)

 

 

Ⅴ 法的形式を含む取引の概要

当社を吸収分割会社、三井化学を吸収分割承継会社とする受取対価を現金等の財産のみとする吸収分割。三井化学は本吸収分割により、本件事業に帰属する資産、債務その他の権利義務のうち、本吸収分割契約において規定するものを承継します。

なお、本吸収分割とは別に、本件事業に関連する事業として、当社の連結子会社である台湾旭化成電子股份有限公司及びAsahi Kasei E-materials Korea Inc.が行う事業について、本吸収分割の効力発生日までに、事業譲渡の方法等により三井化学又はその関連会社に承継する(以下、「本事業譲渡」)予定です。

また、当社は、本吸収分割に際して、承継する権利義務に代わる対価として現金7,258百万円の交付を三井化学から受ける予定です。当該金額には、上記の本事業譲渡の対価が含まれています。なお、最終的な対価は本最終契約に基づく調整を行った上で確定する予定です。

 

② 分離した事業が含まれている報告セグメントの名称

マテリアル

 

(4) 米国Focus社の持分の取得について

当社の連結子会社である旭化成ホームズ㈱(以下、「旭化成ホームズ」)は、旭化成ホームズの米国子会社を通じて、住宅の建築工事を行う、Focus Plumbing LLC、Focus Framing, Door & Trim LLC、Focus Electric LLC、Focus Concrete, LLC及びFocus Fire Protection LLC(本社:米国ネバダ州、CEO:Steve Menzies)の持分100%を取得する契約を2022年10月14日(米国東部時間)に締結し、その手続きを2022年10月31日(米国東部時間)に完了しました。

なお、詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係)」に記載しています。

 

 

6 【研究開発活動】

当社及び連結子会社(以下、「当社グループ」)の研究費、主たる研究開発活動の概要及び成果は以下のとおりです。

 

 

当連結会計年度

 

マテリアル

41,844

百万円

 

住宅

3,908

百万円

 

ヘルスケア

46,572

百万円

 

その他

149

百万円

 

92,473

百万円

 

全社

12,554

百万円

 

合計

105,027

百万円

 

 

 

1 コーポレートの研究開発における基本方針

(1) ミッションとあるべき姿

コーポレートの研究開発のミッションを以下のとおり定め、サステナビリティ(カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーなど)及びヘルスケア領域で、当社グループの技術フロンティアとして、新事業創出に繋がる新しい価値を創造し続けることを、あるべき姿として目指していきます。

(コーポレートの研究開発のミッション)

コア技術の深化・獲得

差別性・優位性の高い製品・サービス開発のためのコア技術の深化及び外部技術獲得・育成

新価値創造

潜在的な顧客・社会ニーズを捉えた未来視点での新しい価値の創造

技術基盤機能の深化と進化

当社グループを支える技術基盤機能の深化と進化

 

 

(2) 重点戦略分野・重点技術プラットフォーム

重点戦略分野として、「脱炭素・水素(カーボンニュートラル)」「資源循環(サーキュラーエコノミー)」「ヘルスケア」の3分野を設定し、サステナビリティの実現に貢献するための研究開発テーマに資源配分を進めていきます。また、これらを含めた研究開発を進めるにあたっては、「R&D DX」を重点技術プラットフォームとして設定し、デジタル技術を駆使した研究開発のDXを推進します。具体的には、マテリアルズ・インフォマティクスやIPランドスケープ、デジタルプラットフォーム等を駆使し、技術戦略の策定やマーケットトレンドの先読み等を積極的に実施していきます。

 

2 基盤的な取り組み

(1) ステージゲート制度によるテーマの取り組み

研究開発テーマのポートフォリオ管理や適切な資源配分を目的として、ステージゲート制度を導入しています。探索、研究、開発、事業開発、事業化準備の各ステージの要件や、各研究開発テーマのステージ上の位置付けを明確にし、研究開発テーマを次のステージに移行させる判断にあたっては、技術視点のみならず、ビジネスモデル、事業戦略、特許戦略、環境安全対応等、ステージごとに必要な審査を強化しています。また、審査プロセスを通じて、適切なテーマの管理を可能にするだけではなく、研究開発部門の内外のメンバーから多面的な助言を得ることや、各事業との連携を深め、研究開発テーマの意義、既存事業との関係性の整理・明確化、研究開発の加速に取り組んでいます。

 

 

(2) 知的財産の活用

当社グループにおける知的財産に関する重点活動として、①知的財産権の活用シナリオに基づいた事業に貢献する知財網の構築、②事業遂行を保証する知財クリアランス、③事業のグローバル化を支える知財活動の実践、④DXによる業務高度化への知的財産面からの貢献、の4つに取り組むとともに、そのベースとなる計画的な人財育成プランを進めています。DXによる事業高度化については、IPランドスケープ(以下、IPL)活動を積極的に活用し、市場における当社グループの事業のポジションや強み、発展性等についての議論を行い、事業強化、知財戦略の構築、新事業の創出等に繋げています。最近では、IPLを活用し、シナジー分析を行うことで、事業統合の妥当性を検証する取組みを実施しています。また、新事業の創出を後押しする活動として、①IPLを活用し、当社の多様なコア技術とエマージング技術(将来変革をもたらす可能性のある技術)の結び付きを俯瞰するシステムを提供することや、②コア技術に関する社内専門家をリコメンドする社内知財情報を活用したシステム(SPACE)を提供することなど、全社を牽引する取り組みも行っています。

IPLや当社の知的財産情報の戦略的活用については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営方針・経営戦略等 ② 当社グループ全体の経営方針・経営戦略等 <経営方針・経営戦略> v 経営基盤の強化 ■ 無形資産の最大活用」もご参照ください

 

(3) CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の活動

当社グループは、2008年に日本国内でCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を設立し、2011年から米国を拠点として、ベンチャー企業への投資を通して最先端技術・ビジネスを獲得し、新事業の創出を行ってきました。現在は、米国のみならず、ドイツ、中国の拠点として加え、グローバルな活動の幅を広げています。具体的な活動としては、当社グループと親和性のあるベンチャー企業を発掘するための情報ネットワーク構築と関連部門への情報発信、投資・買収の交渉と関連実務の遂行、投資先企業のサポートを通じた事業化推進を行っています。3年間で7,500万ドルの投資枠を設けており、1社当たり500万ドルまでの投資に関しては本社での決裁を不要とするなど、スピーディな意思決定、手続きができるような仕組みを運用しています。これまで既存事業から少し離れたテクノロジー、住宅及びヘルスケア関連数十社へ投資を実施してきましたが、今後は新中期経営計画における重点分野(GG10)であるサステナビリティ領域への投資機会の探索を加えます。2023年4月には、カーボンニュートラルを実現する新たな取り組みとして「Care for Earth」投資枠を設定し、水素、蓄エネルギー、カーボンマネジメント、バイオケミカルなどの環境分野の課題解決に取り組むアーリーステージのスタートアップ企業を対象に、2027年度までの5年間にグローバルで1億ドルの出資を実施していく予定です

 

3 主な研究開発活動

(1) 当社グループ全体(「全社」)

・ アルカリ水電解システムの開発

カーボンニュートラルを実現するための取り組みとして、再生エネルギーを活用したアルカリ水電解システムの開発を実施しています。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の事業の一環として、福島県双葉郡浪江町にて10MW級大型アルカリ水電解システムの開発に取り組んでおり、また、NEDOに創設された「グリーンイノベーション基金事業/再エネ等由来の電力を活用した水電解による水素製造」に対し、2021~2030年度を事業期間と想定した「大規模アルカリ水電解水素製造システムの開発及びグリーンケミカルプラントの実証」と題したプロジェクトを日揮ホールディング株式会社と共同提案して採択されるなど、NEDOや協力企業とともに、水素を用いたエネルギー貯蔵・利用の実用化に向けた技術開発事業の拡充・強化を行っています。2022年11月には、同基金の助成を受けて建設・運用される水素製造用のアルカリ水電解パイロット試験設備を当社川崎製造所において着工しました。現状の水電解システムに掛かるトータルコストは、水素・燃料電池ロードマップ目標値より依然として高く、さらなるイノベーションが必要と認識しています。電解槽のコストダウン検討を継続して取り組み、EPC(設計・調達・建設)費用の割合も大きいため、技術力を有する企業との連携を進めていきます。

 

 

・ CO2ケミストリー技術、CO2分離回収システムの開発

当社グループでは、CO2を原料に使用するポリカーボネート(PC)樹脂製造プロセスを世界で初めて確立し、有毒な化合物(ホスゲン)を使用しない、CO2を原料に代替することによる地球環境負荷の低い製法で、社会へ新たな価値を提供してきました。また、2018年に実証が完了したCO2を原料とするジフェニルカーボネート製造プロセスや、現在開発中であるCO2誘導体利用技術のイソシアネート製法など、更なる展開を進めていきます。加えて、ゼオライトを吸着材として用いたCO2分離回収システムの開発も進めており、2022年9月には当社と岡山県倉敷市とでバイオガス精製システムの性能評価、実証を行う契約を締結し、ゼオライト系CO2分離回収システムの実証開始へ向けて取り組んでいます。

 

・ バイオマス原料由来のポリアミド66の実用化検討

当社は、協力会社との提携により、開発の初期段階から「バイオマス原料をベースにしたヘキサメチレンジアミン(HMD)」を優先的に利用し、ポリアミド66用原料としての可能性を評価・検討する権利を取得し、バイオマス由来原料を利用したポリアミド66(バイオポリアミド66)の検討を加速しています。この検討は、当社グループが目指す2050年までのカーボンニュートラル実現に寄与するものと考えており、当社自身のGHG排出量の削減や、お客様の製品のライフサイクル全体での環境負荷の低減への貢献を進めるものであり、事業化の検討を進めています。

 

・ XRP(セルロースナノファイバーコンポジット)の開発

バイオ由来のセルロースナノファイバーと、エンジニアリング樹脂をナノコンポジット化することで、素材の高機能化と環境技術を両立し、サステナビリティに貢献する製品の実現を目指しています。当社グループでは、セルロースナノファイバーからセルロースナノファイバーコンポジットまでの一貫製造プロセスを保有していることの特長を活かし、今後は低コスト、低環境負荷、高機能を満たす製品開発及びマーケティング活動を通じた事業化の検討を進めています。

 

・ エンジニアリング樹脂発泡体の開発

自動車の車体軽量化に寄与する、構造部品向けのエンジニアリング樹脂発泡体の開発を進めています。ポリアミド発泡体では、高い発泡倍率と吸音性能を強みとして展開を加速し、各自動車メーカーや自動車部材メーカーとの関係を活かしたマーケティングを進めています。また、独自のCAE(Computer Aided Engineering)技術の高度化を推進し、部品設計の提案まで手掛けることにより、提供価値の創出に努めており、事業化を加速するために事業部門への移管が完了しました。

 

・ 深紫外LED/深紫外レーザーの開発

現在、殺菌、ウイルス不活性化に最も効果の高い、波長265nmを高出力で実現できる深紫外LEDの展開を実施していますが、更なる高出力化に向けた研究や、基板の大口径化や高品質化にも継続して取り組んでいます。また、名古屋大学との協力により、深紫外レーザーの開発を行っており、2019年にはUV-C帯の世界で最も短波長のレーザー発振に成功しました。また、その技術をさらに進化させ、2022年11月には深紫外半導体レーザーの室温連続発振に世界で初めて成功し、電池駆動も可能なレーザー発振の成功により、実用化に向けて飛躍的に前進しています。今後は、ガス分析等センシングへの応用、局所殺菌、DNAや微粒子などの計測・解析といった、ヘルスケア・医療分野への応用の検討を進めていきます。

 

(2) 「マテリアル」セグメント

・ 環境ソリューション事業

アクリロニトリル事業では当社の強みである触媒のブラッシュアップに継続的に取り組んでいます。セパレータ事業では、高分子設計・合成や、製膜加工や塗工などのコア技術を活かして、「省資源・省エネルギー・コストダウン」「環境負荷軽減」「再生可能エネルギーの普及」に向けた開発を推進しています。電気自動車等の環境対応車、電子機器、電動ツールや蓄電システム用途に展開するリチウムイオン電池用高機能セパレータ等の環境・エネルギー関連素材の展開に注力していきます。

 

 

・ モビリティ&インダストリアル事業 

カーインテリア事業及び機能材料事業では、自動車内装材及び構造部材を重点マーケット領域と定め、人工皮革「Dinamica®」、ポリアミド66とガラス繊維織物による連続繊維強化複合材料「レンセン®」の開発が進捗しています。加えて、独自のCAE(Computer Aided Engineering)技術の活用により、新規用途開拓と海外展開を加速していきます。また、環境負荷低減に貢献するバイオマス由来原料、リサイクル原材料の積極的な活用を検討しています。

 

・ ライフイノベーション事業

電子材料事業では、最先端半導体・実装プロセス革新に向け、感光性ポリイミド「パイメル™」や感光性ドライフィルム「サンフォート™」など先進・独自の技術による高付加価値製品の展開を進めています。特にDXの加速によって、知財データの活用や、マテリアルズインフォマティクス(MI)などによる、開発競争の強化を図っています。さらに電子部品事業との融合を図り、デジタル社会で求められるニーズに対し特徴ある部品、部材、ソリューションを展開していきます。

電子部品事業では、デジタル社会の進展に対応し、「音」「磁気」「ガス」のセンシング技術を主軸に、省エネ・健康・快適に繋がるソリューションを提供できる技術及び製品の開発を推進しています。豊富な技術資産と柔軟なエンジニア組織運営により、センサ・ミックスドシグナルLSI・アルゴリズム技術等を融合し、独自のソフトウェアを活かした高機能電子部品の開発のみならず、モジュール型ビジネスへの展開にも積極的に取り組んでいきます。特に電気自動車(EV)化に伴うパワー系のセンシングソリューション、またサウンドマネジメントソリューションのトレンドを的確に掴んだ、特徴のあるソリューション提案を進めています。

また、生活者の視点と健康で快適な暮らしへの貢献を意識し、新事業領域として、新規セルロース素材の事業化や、高機能テキスタイル、新基軸不織布の開発などにも取り組んでいます。

繊維事業では、自動車内装材、アパレル、おむつの3つを重点マーケット領域と定め、人工皮革「Dinamica®」、ナイロン66繊維「レオナ®」、キュプラ繊維「ベンベルグ®」、ポリウレタン弾性繊維「ロイカ®」及び各種不織布を軸に、独自性を活かし、かつ、サステナビリティに対応した付加価値の高い製品創出や生産プロセス革新のための研究開発を進めています。

 

(3) 「住宅」セグメント

住宅事業では、「ロングライフの実現」を支えるコア技術について、重点的な研究開発を続けています。シェルター技術については、安全性(耐震・制震技術、火災時の安全性向上技術)、耐久性(耐久性向上・評価技術、維持管理技術、リフォーム技術)に加えて、居住性(温熱・空気環境技術、遮音技術)、環境対応性(省エネルギー技術、低炭素化技術)の開発を行っています。また、住ソフト技術については、都市部における二世帯同居やシニア等の住まい方についての研究を推進するとともに、住宅における生活エネルギー消費量削減と人の生理・心理から捉えた快適性を研究し、健康・快適性と省エネルギーを両立させる、環境共生型住まいを実現する技術開発に注力しています。

建材事業では、「良質空間を追求し、グッド・マテリアルを通じて、未来を見据え新たな価値を創造する」を事業ビジョンとし、軽量気泡コンクリート(ALC)、フェノールフォーム断熱材、杭基礎、鉄骨造構造資材の4つの事業分野において基盤技術の強化を推進しています。

 

 

(4) 「ヘルスケア」セグメント

医薬事業では、自社オリジナル製品の研究開発で培った経験をもとに、免疫領域(SLE、移植等)、整形外科領域(骨、疼痛等)及び救急領域を中心に、有効な治療方法がない医療ニーズを解決することによって、「健康でいたい」と願う世界中の人びとのQOL(Quality of Life)向上を図ることを目指して、積極的な研究開発を行っています。創薬技術や創薬シーズ、創薬テーマについては、世界中の企業や大学とのコラボレーションを積極的に推進することによって、絶えざる革新を日々進めています

医療事業では、治療の可能性を広げ、医療水準を向上させる製品、技術、サービスを提供するために、グループ総力を挙げた研究開発に取り組んでいます。これまで培ってきた豊富な基礎技術と研究開発の応用により、人工腎臓、血液浄化治療、輸血製剤の白血球除去、製剤のウイルス安全性確保をはじめとしたバイオプロセス分野における技術をさらに発展させていきます。

クリティカルケア事業では、突然の心停止からの生存率を向上する心肺蘇生領域における技術開発を原点とし、重篤な心肺関連疾患の診断・治療・管理領域にも研究開発を広げています。予後が悪く医療ニーズの高い、心不全・急性心筋梗塞・呼吸機能障害等におけるアンメットメディカルニーズに対する新規治療法や技術の発展と提供を通じ、患者様と臨床医に役立つことを使命としています。

 

(5) 「その他」

エンジニアリング分野等に関する研究開発を行っています。