当第3四半期連結累計期間において、事業等のリスクについての重要な変更及び新たに発生した重要なリスクはありません。
(1) 業績等の概要
当第3四半期連結累計期間(2020年4月1日から同年12月31日)における世界経済は、9月頃から経済活動が段階的に再開し持ち直しの動きが見られましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の勢いは衰えておらず、また米中対立の激化やバイデン新政権の政権運営への懸念もあり、先行き不透明な状況が続きました。
当社グループ事業の主要対象分野である自動車関連分野は、第3四半期に入り中国・米国市場を中心に自動車販売が回復しました。IT・デジタル家電分野は、テレワークやデジタル化推進を背景にパソコンやテレビの需要が継続した一方で、スマートフォンは販売低迷が続きました。食品分野は、インバウンド需要の消失や夏場の長雨、猛暑が影響し、特にコンビニ、観光・外食産業は低調に推移しました。
このような厳しい事業環境ではありますが、当社グループは中期経営計画『BEYOND 3000』(2018年度~2020年度)の3つの基本戦略「3本柱の規模拡大(樹脂添加剤、化学品、食品)」「新規領域への進出」「経営基盤の強化」のもと様々な施策を着実に実行しています。化学品では、中国の艾迪科精細化工(浙江)有限公司で樹脂添加剤などの化学製品を製造する新工場が稼働しました。また、韓国のADEKA KOREA CORP.でDRAM向け半導体材料、千葉工場で光酸発生剤などの半導体周辺材料、相馬工場でエンジンオイル用潤滑油添加剤の設備を増強しました。食品では、食品ロス削減や省力化に貢献する練込用マーガリン「マーベラス」が、2021年1月に日本経済新聞社主催の「2020年日経優秀製品・サービス賞」において「日経MJ賞」を受賞しました。
当社グループにおける新型コロナウイルス感染症への対応としましては、お客様ならびに従業員の安全を最優先にウェブ会議の活用やテレワークなど社内外への感染症拡大防止を推進しつつ、各国政府の政策に対応した形で事業活動を継続しました。
以上の結果、当第3四半期連結累計期間の売上高は、前年同期に比べ45億25百万円(前年同期比△2.1%)減収の2,138億44百万円となり、営業利益は前年同期に比べ17億1百万円(同+12.1%)増益の157億24百万円、経常利益は前年同期に比べ18億48百万円(同+13.9%)増益の151億64百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は前年同期に比べ2億89百万円(同+2.9%)増益の104億4百万円となりました。
なお、第1四半期連結会計期間より、財務諸表上の重要性が増したため、艾迪科精細化工(浙江)有限公司、ADEKA AL OTAIBA MIDDLE EAST LLC、NICHINO EUROPE CO., LTD.の3社を連結の範囲に含めています。また同じく、NICHINO VIETNAM CO., LTD.を持分法の適用範囲に含めています。
<報告セグメントの概況>
(化学品事業)
当事業の売上高は前年同期に比べ73億24百万円(同△6.0%)減収の1,146億53百万円となり、営業利益は前年同期に比べ3億60百万円(同△2.7%)減益の131億20百万円となりました。
① 樹脂添加剤
自動車向けでは、第3四半期以降、自動車生産の急回復に伴い核剤、光安定剤、ゴム用可塑剤の販売が回復しました。
建材向けでは、国内を中心に住宅着工数減少の影響を受け、塩ビ用安定剤の販売が低調に推移しました。
医療用途では、感染予防対策関連で一部需要の増大が見られましたが、一般医療分野での低迷もあり、全体では伸び悩む結果となりました。
食品包装関連向けでは、透明化剤等の販売が海外を中心に堅調に推移しました。
自動車や家電、日用品等のプラスチック製品に幅広く使用される酸化防止剤は、価格競争の影響を受け販売が低調でした。
家電筐体向けエンジニアリングプラスチック用難燃剤は、テレワークの広がりによるパソコン需要の拡大に対し安定供給を実施したことで、中国、東南アジア等で販売が堅調に推移しました。
樹脂添加剤全体では、第3四半期以降、自動車向け材料を中心に回復基調を辿りましたが、第2四半期までの低迷をカバーするには至らず、前年同期に比べ減収減益となりました。
② 情報・電子化学品
半導体向けでは、5G通信を中心とした旺盛な半導体需要を背景に、先端DRAM向け新製品の出荷が順調に拡大し、NAND向け製品の販売も堅調に推移しました。また、EUVに代表される最先端のリソグラフィ工程で使用される光酸発生剤の販売が引き続き好調に推移しました。
ディスプレイ向けでは、巣ごもり需要に加えテレワークやオンライン授業などライフスタイルの変化に伴う液晶パネルや有機ELパネルの需要増もあり、光学フィルム向け光硬化樹脂、カラーフィルター向け光重合開始剤の販売が好調に推移しました。また、ディスプレイ用エッチング薬液の販売が堅調でした。
情報・電子化学品全体では、半導体材料での新製品寄与もあり、前年同期に比べ増収増益となりました。
③ 機能化学品
自動車向けでは、第3四半期以降、自動車生産の急回復に伴いエンジンオイル用潤滑油添加剤、特殊エポキシ樹脂や接着剤の販売が回復しました。また、土木・建築や一般工業向けの界面活性剤、過酸化製品、プロピレングリコール類も堅調に推移しました。
化粧品・トイレタリー向けでは、国内の手洗い・消毒向け製品の販売が引き続き堅調に推移しましたが、インバウンド需要の消失により、化粧品用特殊界面活性剤の販売が国内外で低調でした。
機能化学品全体では、第3四半期以降、自動車向け材料を中心に回復基調を辿りましたが、第2四半期までの低迷をカバーするには至らず、前年同期に比べ減収減益となりました。
(食品事業)
当事業の売上高は前年同期に比べ20億49百万円(同△3.8%)減収の511億93百万円となり、営業利益は前年同期に比べ2億39百万円(同△24.9%)減益の7億22百万円となりました。
製パン、製菓用のマーガリン、ショートニング類は、夏場の天候不順影響を受けたものの、外出自粛を受けた内食・中食需要が高まり、販売が底堅く推移しました。また、パン等のおいしさを持続させる練込用マーガリン「マーベラス」は食品ロス対策として各社とも様々な取り組みを行うなかで、消費期限延長効果が評価され順調に販売が拡大しました。一方で、観光や帰省需要の消失により、土産菓子用のマーガリン、ショートニング、フィリング類の販売が低調でした。
洋菓子・デザート向けでは、ホイップクリームの販売が引き続き好調に推移しました。
海外では、中国で製パン、製菓用のマーガリン、ショートニング類の需要が第3四半期末にかけて回復し、販売が底堅く推移しました。
食品事業全体では、高付加価値品の拡販に努めたものの、海外での販売数量の減少により、前年同期に比べ減収減益となりました。
(ライフサイエンス事業)
当事業の売上高は前年同期に比べ46億46百万円(同+12.5%)増収の417億44百万円となり、営業利益は前年同期に比べ22億26百万円増益の11億92百万円(前年同期は10億33百万円の営業損失)となりました。
農薬は、国内では、主力自社開発品目の普及拡販に努めた結果、販売が好調に推移しました。海外では、欧州、インドなどでの販売が好調でした。一方で、南米地域ではブラジル市場の競争激化の影響などから、販売が低調でした。
医薬品は、外用抗真菌剤「ルリコナゾール」の販売が好調に推移しました。
ライフサイエンス事業全体では、海外での農薬販売の拡大やNICHINO EUROPE CO., LTD.を連結化したことにより、前年同期に比べて増収増益となりました。
(2) 財政状態の分析
(資産)
当第3四半期連結会計期間末における総資産は4,102億64百万円(前連結会計年度比+0.2%)となり、前連結会計年度末に比べ8億11百万円の増加となりました。
(負債)
当第3四半期連結会計期間末における総負債は1,541億37百万円(同△2.9%)となり、前連結会計年度末に比べ46億80百万円の減少となりました。
主な要因は、短期借入金の減少です。
(純資産)
当第3四半期連結会計期間末における純資産は2,561億26百万円(同+2.2%)となり、前連結会計年度末に比べ54億92百万円の増加となりました。
主な要因は、利益剰余金の増加です。
(3) 事業上及び財務上の対処すべき課題
① グループ戦略課題
新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大し、その終息時期が不透明ななか、国内外経済への深刻な影響は避けられず、当社グループを取り巻く経営環境も大変厳しくなるものと見込んでいます。
当社グループの主要対象分野である自動車関連分野は、一部の自動車メーカー等で生産調整・停止が行われたことで、自動車部材に使用される当社の樹脂添加剤をはじめとする化学製品にも既に影響が及んでおり、今後も不透明な状況です。IT・デジタル家電分野は、世界的な消費の冷え込みが懸念されるものの、5G通信のサービス開始やテレワーク等の加速により中長期的な成長が続くと見込んでいます。
食品分野は、パンや菓子等の需要は底堅く推移すると予想されるものの、個人消費の落ち込みやインバウンド消費の回復に相当の時間を要することから、厳しい状況で推移すると見込んでいます。
このような状況のなか、当社グループは3カ年の中期経営計画『BEYOND 3000』の最終年度を迎え、3つの基本戦略「3本柱の規模拡大」「新規領域への進出」「経営基盤の強化」のもと、事業環境の潮目の変化を的確に捉え、掲げた目標の達成を目指してまいります。市場環境の変化や社会ニーズを先読みできるよう、サプライチェーンの全体像を把握し、強固なプラットフォームのもとで技術優位な製品をグローバルに提供することで、さらなる成長を続けてまいります。
なお、前連結会計年度の有価証券報告書で記載した内容から重要な変更はありません。
② 財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当第3四半期連結累計期間において、財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針に変更はありません。
当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、100億43百万円です。
なお、昨今の新型コロナウイルス感染症による研究開発活動への影響は、本報告書提出日現在においてはほとんど顕著化していません。感染のさらなる拡大など今後の情勢変化が大きくなった場合は、適切に対策をしてまいります。
① 化学品事業
当社の基盤技術を活用し、市場環境の変化に対応した研究開発を行っています。単に素材を提供するだけでなく、ユーザーにおける課題を解決できるソリューションとして提案すべく、評価技術の向上を図るとともに、グループ内の技術連携にも努めています。また、成長が期待される新規分野や先端素材の研究開発では、外部機関との連携も積極的に推進しています。
i) 樹脂添加剤分野
新興国の経済成長や自動車のマルチマテリアル化などに伴い、プラスチックの需要は拡大の一途をたどっています。その一方で、海洋プラスチック問題で注目されるバイオプラスチックや、廃プラスチック再利用時の実用性向上など、製造側には新たな対策が求められています。当社は、省エネや環境負荷低減を可能とする高機能樹脂添加剤である核剤/透明化剤、光安定剤、難燃剤などの開発を通じ、持続可能な社会に貢献します。
環境対応型樹脂添加剤の新ブランド「アデカシクロエイド」を立ち上げ、リサイクル樹脂向けワンパック添加剤とバイオ由来原料塩ビ用可塑剤等を開発し、サンプル提供を開始しました。環境対応型プラスチック市場に製品を積極投入することで、プラスチック資源の循環型社会へ貢献してまいります。
ⅱ) 情報・電子化学品分野
5G通信の商用化エリア拡大に伴うスマートフォンの高機能化や基地局の拡大、企業のビッグデータ利用推進によるデータセンターの需要拡大が進んでいます。また、スマートフォンやプリント配線基板では、中国企業の台頭が目覚ましく、中国内での部材の地産地消が進んでいます。当社は、このような市場環境変化に加え、主要顧客からの要求に対するスピーディーな対応と、対韓国輸出規制も鑑み、研究開発を推進しています。
ⅲ) 機能化学品分野
持続可能な開発目標(SDGs)やパリ協定の発効により、以前にも増して環境意識が高まり、環境に関する課題への取組みがますます大きな機会をもたらすと考えられます。当社は、自動車のエンジンオイルへ添加すると燃費向上効果を発揮するモリブデン系潤滑油添加剤「アデカサクラルーブ」や、国内外で排出規制強化が進む揮発性有機化合物(VOC)低減に貢献する水系コーティング材料をはじめとする環境配慮型製品の開発を推進しています。
反応性乳化剤として世界で初めて米国食品医薬品局(FDA)の認証を取得していた「アデカリアソープ」シリーズについて、使用量上限を3%に引き上げて、改めて認証を取得しました。粘着剤用ポリマーの製造における配合の自由度が高まることで、これまで以上に食品包装やラベル用途での採用拡大が期待でき、米国・欧州市場を中心に提案を強化してまいります。
② 食品事業
食品ロスの削減や人手不足、環境への配慮といった社会的な課題への対応に加え、食品産業の構造変化、また新型コロナウイルス感染症禍による働き方の多様化や消費行動の変化などに伴う課題をとらえ、ニーズに即した新製品開発を行っています。
2020年4月には、「おいしさとやさしさで貢献します」をテーマに以下の新製品を発表しました。
i) 加工油脂分野
焼き立てのパンのような食感を時間が経っても維持できる機能性練込油脂「マーベラス」、さっくりとした食感に仕上がり、作業性に優れ長持ちする固形フライオイル「EZフライオイル」など。
ⅱ) 加工食品分野
合わせる素材の風味を引き立て、冷凍・解凍後もおいしさを維持できる混合用のホイップクリーム「アレンジホイップ」、洋菓子生地の食感改良や形状安定化による歩留まり向上に効果のある練込素材「スタビリティリキッド」など。
パーム油を配合する製品にあっては、全て持続可能なパーム油(RSPO認証油)を使用しています。また、全ての新製品が低トランス脂肪酸対応品です。
“おいしさ“はもちろん、食品ロス削減や労働力不足解消、持続可能な原料の使用など、お客様や環境、社会、健康に貢献する”やさしさ“を兼ね備えた商品がご好評をいただいています。
③ ライフサイエンス事業
連結子会社である日本農薬㈱は、「研究開発型企業」として、技術革新をすすめ、安全性の高い環境に配慮した新製品の開発を行っています。
持続的な新規剤創出を目指してパイプラインの早期拡充に取り組むとともに、既存剤の維持・拡大を目指し全社的な連携による戦略的な研究開発を推進しています。
当期における主な成果は以下のとおりです。
日本・インド同時開発を進めている新規水稲用殺虫剤ベンズピリモキサン(商品名「オーケストラ」)は、2020年9月に日本で農薬登録を取得いたしました。インドでも2019年2月に登録申請を完了し、順調に評価が進んでおり、2022年の登録取得を見込んでいます。
汎用性殺菌剤ピラジフルミド(国内商品名「パレード」)は、国内において野菜用で新規処理分野(セル苗灌注処理)での開発を推進し、レタス、はくさい、キャベツに加え、新たにねぎでの登録を取得しました。同剤については、グローバルな開発も展開中であり、2019年2月に韓国において製剤登録を取得し、韓国販社と協力し、2020年3月に販売を開始しました。また、2019年に米国、カナダ及びメキシコでの農薬登録申請をしました。
④ 新規事業分野
注力分野として「ライフサイエンス」、「環境」、「エネルギー」を掲げ、研究開発体制を強化して新規事業の創出に取り組んでいます。
i) ライフサイエンス分野
世界に前例のない超高齢化が進む日本では、健康長寿社会の形成が急務です。健康と長寿を共に享受するため、疾病の予防や早期発見による重症化防止、高齢者の生活機能低下の抑制、疾病や創傷の治療のあとのQOL改善のための対策を講じなくてはなりません。当社はこれまでに蓄積した化学品分野と食品分野の技術やネットワークはもちろんのこと、社外リソースの活用も図り、健康長寿社会の形成に貢献する新規事業の創出を加速しています。
ⅱ) 環境・エネルギー分野
再生可能エネルギーの導入拡大の中で太陽光や風力などの電源のコスト低減が進み、コスト競争力のある電源となったことで、更なる導入拡大を生むというサイクルが世界的に生じています。しかしながら、太陽光や風力のような変動電源をさらに増加させるには出力変動に対応する必要があり、その対策の一つに二次電池を用いた電力貯蔵技術が挙げられます。当社では、次世代二次電池向けの電極材料や電解液添加剤などの各種材料の開発を推進しています。
東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 大塚 英幸教授と共同で、プラスチックに自己修復性を付与できる架橋剤を開発しました。高分子学会広報委員会パブリシティ賞を受賞し、「第29回ポリマー材料フォーラム」において発表しました。
当第3四半期連結累計期間において、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因に変更はありません。
当第3四半期連結累計期間において、経営者の問題認識と今後の方針についての変更はありません。
当第3四半期連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。