(1) 時代認識
ウクライナ情勢が混迷を深め、目下の世界情勢の大きな波乱要因となっています。世界のパワーバランスが方向感を失い、資源エネルギー・食糧の危機、サプライチェーンの混乱など社会の構造を揺るがしています。コロナパンデミックが長期化し、ウクライナ戦争が加わりました。まったく先の読めない時代に突入しています。想定外をマネージする感性を高め、環境の変化に即応できる経営の「Adaptability」力が試されると考えております。
以上のように、経済情勢の先行きは非常に不透明感が強いものの、科学とテクノロジーの進化、イノベーションが加速しており、社会は環境にやさしい健康で安全な暮らし、サステナビリティを可能にする新常態に向かっております。
(2) 当社の存在意義(Purpose)~カガクでネガイをカナエル会社・カネカ~
当社は、世界がこのようなサステナビリティの実現をめざす動きは、「人間性の回復(ルネッサンス)」を求めているものと考えています。社会の潮流を構造化し、「地球環境・エネルギーの危機」「食の危機」「健康(豊かに生きる)の危機」の3つをサステナビリティのクライシスと考え、事業領域としてきました。
当社は「技術革新とグローバル展開を通して、革新的な素材開発によるソリューションを提供することにより、社会的課題を解決し、サステナブルな社会の構築に貢献する」ことを存在意義と定義しております。
地球環境を守り、人間性の回復に貢献し「命を育む社会を支える」健康経営を進めてまいります。
(3) 経営方針、経営戦略
当社は、ESG経営を「世界を健康にする健康経営-Wellness First」と定義し、全ての活動のプラットフォーム(憲法)とします。当社の健康経営は人間賛歌の経営です。価値あるソリューションをグローバルに提供することを通じて世界の人々の人生と環境の進化に貢献し、存在感のある企業として成長し続けます。
・これらの取り組みを強化・加速させるべく、2022年4月1日付で、新たにTask Force「Sustainability(SX)本部」を立ち上げました。
・多様な異種技術を組み合わせることで価値あるソリューションを創り出す「ハイブリッド経営」に基づき、変革と成長を加速します。
① サステナブルをめざす健康経営(ESG経営)
ⅰ.カガクでネガイをカナエル会社~カネカは実験カンパニー~
化学という「不思議の海」の冒険を通して、環境負荷を低減し人々の人生に役立つ会社になります。
ⅱ.ソリューションプロバイダー
「経営システムTransformationのトリプルPackage」に基づいてソリューションプロバイダーの道を進みます。
図1、2
ⅲ.実験カンパニー
(大量に試していいものだけを残す)熱い「実験カンパニー」を行動指針とし、新陳代謝を繰り返しながら新しいポートフォリオに変革する「Value Creating Company」を目指します。
② 選択と集中
ⅰ. Domain
3つのクライシス(「環境・エネルギー」「食糧」「健康と豊かな暮らし」)をDomainとしたポートフォリオ変革を急ぎます。
ⅱ.R&B(リサーチ&ビジネス)
革新的な素材開発(Breakthrough Technology)により社会課題を解決し、サステナブルな社会の実現に貢献します。
ⅲ. コア事業群の強化
キャッシュを生むコア事業群を強化しながら、(未来への投資である)研究開発活動に経営資源を積極的に投入します。
③ 経営基盤の強化
ⅰ.新規事業の社会実装化をスピードアップ
スケールのあるテーマに「選択と集中」させ、R&Bの生産性を向上させます。
ⅱ.業務の変革とDX
時代に合致する新しい制度を導入し、(AIではできない)人間的価値を回復させる(ルネッサンス-人間性の回復) Work Culture創出に取り組みます。一人ひとりが価値を生む生産性の高い組織・人づくりを実現します。
ⅲ.カネカ「1on1」
狙いどおり、仕事と人の成長を両立させる制度として運用を図ります。
ⅳ.オープンイノベーション
アライアンス、M&Aを積極的に実行し、事業ポートフォリオの変革と非連続な成長を加速させます。
図1 カネカタワー
・当社の経営モデルの基本構造であり、当社の創業以来の持つ強み(DNA)を活かし、「事業構築力(内なる力)」と「市場開発力(外なるPower)」を進化させ、「現場力」がその実行を支え、常に時代の変化に応じて経営革新を自律的に行えるようにします。
・自治機能を高める2つのWork Shop(変革と成長のトライアングル、カネカ1on1)を通して現場をInspireします。

図2 経営システムTransformationのトリプルPackage
・変革と成長を実現するための、ビジネス思考のプラットフォームです。経営のソフトウェアとハードウェアをドッキングすることにより、実効性を上げます。
・時代認識/仕掛け/成果のトライアングルは、経営計画のなかで、どのように目標を設定し、技術革新を含めた達成のための仕掛けを整え、スケール・スピードを意識したうえで、いったい何を成果として位置付けるのか。経営計画の骨格そのものとなります。

(4) ポートフォリオの変革
① Earthology Chemical Solution
化学素材の無限の可能性を引き出し、持続可能型社会を支え、地球環境と生活の革新に貢献します。
・生分解性バイオポリマー「Green Planet® 」は今後大型新規事業化を目指します。PV & Energy management SVはカーボンニュートラル社会への貢献を目指します。
・Vinyls and Chlor-Alkali SV、Performance Polymers(MOD) SV、Performance Polymers(MS) SV、Foam &Residential Techs SV、Performance Fibers SVについては、ユニークな特性を生かし世の中の変化に対応した製品群のラインナップを急ぎます。
・E & I Technology SVは5Gに代表されるAIやIoTなどの社会の急速なデジタル化、スマート化、デバイスの高機能化への動きを先取りし、ソリューションを提供する素材開発に注力していきます。


② Active Human Life Solution
化学を軸に、食と医療を一つにとらえ、人々に健康で活力のある人生をもたらす革新的なソリューションを提供します。
・Foods & Agris SVはおいしさに加え食を健康の原点とする食生活の質的向上に貢献する素材を提供してまいります。乳製品など新規事業の本格事業化、サプリメントとの協業によるNutrition価値を追求した製品を開発してまいります。
・Medical SVはユニークな医療デバイスの市場開拓を進め、最新鋭医療機器工場の新設により医療器事業のグローバル展開を加速してまいります。
・Pharma & Supplemental Nutrition SVはジェネリック化する医薬品市場において新しい中間体・API製品を開発するとともに、カネカユーロジェンテックを中心としたワクチンや感染症医薬品などバイオ医薬の成長を実現します。還元型コエンザイムQ10や乳酸菌を柱とするサプリメント素材の多様化・品揃えを進めてまいります。


(5) 経営施策
① R&B(リサーチ&ビジネス)戦略
サステナブルな社会の実現に向けて、当社は多様な事業、多様な技術、Only One、グローバルNo.1の技術から生み出したオリジナル製品により貢献してまいります。
a.研究開発に積極的に資源投入を行い、新事業創出に向けての研究テーマの「選択と集中」を行います。
b.自社の多様な技術に加えオープンイノベーションやM&Aにより、世の中の最先端技術を融合させ、失敗を恐れず「実験カンパニー」としてチャレンジを続けます。
c.新しい製品の創出と社会実装により、付加価値の高いポートフォリオ変革を実現します。
② モノづくり戦略(R&B+P)
世界がサステナブル社会への潮流を加速するなか、私たちの技術を製品化し、市場に広く採用されることで社会課題の解決に貢献する(市場の高い評価を得る)ことが、研究開発型企業としての当社のモノづくりの理想像と考 えています。その実現に向け、「研究」、「製造」、「販売」それぞれの組織と「顧客・市場」をつなぐネットワーク的企画機能によりR&B+Productionを強化することに取り組んでまいります。
③ グローバル戦略
ユニークな技術と製品を世界の隅々にまで届け、人の命や社会課題を解決する企業を目指しています。地域に根ざした活動を推進していきます。海外事業は文化の移植です。化学に国境はなく、文化の違いを乗り越えた現地発信(グローカル)にフォーカスしていきます。ボーダレスに価値あるソリューションをタイムリーに世界の市場に提供し、グローバルに存在感ある企業を目指します。
④ 人材戦略
・「Human Driven Company」こそ当社の経営思想の背骨であり、仕事を通じて人の成長を企図する「Work Shop」を制度化したものが「カネカ1on1」です。「カネカタワー(図1)」においても、経営革新力を支える「実験カンパニー」の背骨であります。
・「人の成長」と「仕事の成果」はコインの表と裏であり、「カネカ1on1」を通じて人材育成と目標達成を同時に実現することを目指しています。
・多様な事業を成長させるには、人材の多様性は欠かせません。年齢、性別、国籍などを問わず意欲の高い多様な人材に挑戦の場を用意しています。女性の活躍推進に特に力を入れており、採用の拡大や登用を重点的に進めています。

⑤ コーポレートガバナンスの充実
当社は、社員一人ひとりの心と体の健康と、企業活動や姿勢が健全であるという「健康経営」に取り組んでいます。重要なことは、経営があるべき社会に熟慮し、姿勢を正して行動する企業統治力、コーポレートガバナンスの強化です。
パラダイムチェンジが進み、事業が拡大するなか、執行機能の強化が課題になります。イノベーションを行動の羅針盤“Scope of compass”にして未知を開くESG経営・健康経営を組織(現場)に定着させます。そのためには、各執行機能が全体知(Perspective)を反映させながら、現場を観察し、チョークポイントを発見する執行機能の強化に取り組んでまいります。自己変革を続け、経営目標を実現する体制づくり、コーポレートガバナンスの一層の充実を図ることが重要と考えています。
(6) 対処すべき課題
IMFは本年4月、2022年の世界GDP成長率を3.6%に引き下げました。大きく減速すると見込んでいます。コロナの長い戦いとウクライナ戦争という二重の戦いが世界経済全体のパフォーマンスに強いネガティブインパクトで反映されつつあります。食料やエネルギー価格が跳ね上がり経済の回復基調の腰折れ局面を迎えようとしています。特に本年1月以降の情況変化は著しい状況にあります。加えて、地球温暖化を原因とする自然災害についても予断を持てません。予測不可能ですが、不確実性の困難を超えて、Adaptabilityがキーワードと考えています。
他方、科学とテクノロジーの進化、イノベーションが加速しています。当社は化学の化ける力を総動員して世界の変化のPainをGainにする戦いにチャレンジしています。地球環境を守りサステナブルな人間性の回復に貢献します。続けてきた長年の研究開発の努力が世界の課題解決への可能性と希望の扉を開きつつあります。変化に素早く対応するAdaptability はカネカがカネカであるための「Going Concern」です。
コア事業群が、既存の事業領域にある未知のフロンティアを見つけ、新鮮な目で新しいテクノロジー開発に取り組んでおり、先端事業化が進んでいます。先端事業群が広げようとしているニュードメインは地平線の向こうにある未知を見ることではなく、当社研究者が安全な既知の場所に居つかず、地平線の向こうに向かって一歩を踏み出す毎日を習慣にしています。当社は既存事業群も先端事業群もドキドキワクワクして未知なるものに触れる実験を楽しむ「科学する心」を大切にし、ドメインを変え新しい土俵(ニューフロンティア)を意識してユニークな技術による変身をつづけています。なお、今年度より、変成シリコーンポリマー事業を先端事業群に加えました。
(1) リスクマネジメントの基本的な考え方
当社グループは、世界を健康にする「健康経営-Wellness First」を目指すに当たり、事業展開する上で想定されるリスクへの対応として、「リスク管理に関する基本方針」を定めています。
リスク管理については、各部門が、業務の遂行に際して、または関連して発生しそうなリスクを想定して適切な予防策を打ち、万一、リスクが発現した場合には、関連部門の支援を得ながら適切に対処することを基本としています。
潜在的リスク発現に対する予防策については、倫理・法令遵守に関するものも含め、ESG委員会コンプライアンス部会が全社の計画の立案・推進を統括します。
リスクが発現した場合、または発現するおそれが具体的に想定される場合には、適宜ESG委員会が当該部門と協働して対処します。
以上のことが、的確に実施されているかどうかについて定期的に点検を行い、体制の形骸化を回避するとともに、実効性を維持・改善していきます。
(注)2022年4月1日付の組織再編により、ESG委員会コンプライアンス部会の機能は、「Sustainability(SX)本部」の傘下にある「Compliance Committee」に変更となっています。
(2) 事業等のリスク
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。
なお、ここに記載した事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループがリスクとして判断したものでありますが、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではありません。
① 新型コロナウイルス感染症拡大に関するリスク
当社グループは、国境を越え、地球規模のスケールでつながる科学技術のサプライチェーンに沿って事業活動を行っております。このコロナ禍のなかで、世界に広がる社員やその家族の健康と安全を守ることを最優先しながら、世界各国・各地域でエッセンシャルビジネスと目される多くの事業群で生産維持に努め、製品の安定供給の責任を果たしてきました。しかしながら、仮にグローバルに感染症の再拡大等が発生した場合、このサプライチェーンの停滞により、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 当社事業の優位性の確保と国内外の経済環境の動向に係るリスク
当社グループは、自社開発技術に先端技術を外部から導入あるいは融合し、多岐にわたる分野で高付加価値製品を開発、商品化し、継続的に新規市場の開拓を行うことで、事業の優位性を確保すると同時に、事業構造改革を推し進め経営基盤の強化に取り組んでおります。しかしながら、経済環境の急激な変化、技術革新の急速な進展、自然災害やパンデミックが生じた場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 事業のグローバル化に伴うリスク(海外事業展開、為替変動)
当社グループは、これまで常に世界に視野を置き、他社に先駆けた事業展開を推進してきました。現在ではグローカル(現地発信の事業展開)に軸足を置き、世界各地の特性にあわせた技術開発、素材開発を加速させています。海外における事業活動には、予測不能な法律、規制、税制などの変更、移転価格税制による課税、急激な為替変動、テロ・戦争などによる社会的、政治的混乱などのリスクがあります。その発現を未然に防ぎまたは影響を軽減するために、グループ会社のガバナンス強化、専門家体制の整備、為替耐性強化策、損害保険の付保、従業員の安全対策等諸施策を講じておりますが、仮にこれらの事象が生じた場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 原燃料価格の変動に係るリスク
当社グループは、原燃料の調達について、グローバル購買、中長期契約とスポット市場での購入を組み合わせ最有利に行う体制を構築し運用しておりますが、その多くが国際市況商品であることから、想定外の相場変動が生じた場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 製造物責任・産業事故・大規模災害に係るリスク
当社グループは、お客様に提供する製品の品質、流通には万全の体制を構築して運用し、万一事故が発生した場合に備え、グループ全体を補償対象とする賠償責任保険を付保しております。また、安全をすべてにおいて優先し、法令順守の下、事業活動に取り組んでおりますが、想定外の事故や地震などの大規模自然災害により、主要な製造設備の損壊及びシステム障害に起因する事業の中断とそれに伴う機会損失が発生する可能性があります。これらのリスクに備えて、必要な保険を付保しておりますが、その補償範囲を超えた損失が発生するリスクがあります。このような状態が生じた場合に は、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 知的財産権の保護に係るリスク
当社グループは、研究開発の成果を特許などの知的財産として確実に権利化することにより、社会課題の解決に資するソリューションの早期提供を目指しています。一方、他社の知的財産に対しては、これを尊重し係争を未然に回避すべくテーマ提案・事業化・仕様変更などの事業開発の節目において必ず特許調査を実施し、パテントクリアランスの確保に万全を期しております。しかしながら、グローバル化や情報技術の進展などにより、当社グループが開発した技術ノウハウなどの漏洩、不正利用や使用許諾に関する係争等のリスクがあります。仮にこのような事態が発生した場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 環境関連規制の影響
当社グループは、「ESG憲章」に基づき、製品の全ライフサイクルにおいて、それぞれの段階で地球環境の保護に取り組み、資源の保全、環境負荷の低減により、社会の持続的発展と豊かな社会の実現を目指しています。2021年3月には、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、カーボンニュートラルの実現に向けて努力しております。一方、環境関連規制は年々強化される方向にあり、規制の内容によっては事業のサプライチェーンにおいて活動の制約など、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 訴訟などに係るリスク
当社グループは、コンプライアンス経営を重視し、法令及び社会的ルールの遵守の徹底を図っております。しかしながら、国内外において事業活動を行う過程で、予期せぬ訴訟、行政措置などを受けるリスクがあります。仮に重要な訴訟などが提起された場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 情報セキュリティに係るリスク
当社グループにとって、情報システムは、事業活動のあらゆる側面において、重要な役割を担っております。一方、サイバー攻撃、不正アクセス、災害等によるシステム障害、情報漏洩等の発生するリスクが高まっています。その対応策として、「情報管理基本方針」に基づき、経営層によるリスク管理体制を構築するとともに、外部専門家の知見を取り入れ、セキュリティシステムの強化、情報セキュリティの社員教育等を行うことで、リスク回避を図っております。しかしながら、想定外の事態が発生する場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑩ その他のリスク
当社グループは、中長期的な取引関係構築、維持及び強化等を目的に、取引先及び金融機関の株式を保有しております。これら株式の期末時の時価等が著しく下落した場合には、「金融商品に関する会計基準」の適用により、評価損を計上する可能性があります。
固定資産については、今後、事業環境の大幅な悪化や保有する遊休土地の時価が更に低下した場合等には、「固定資産の減損に係る会計基準」の適用により、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
棚卸資産については、将来の需要予測に基づく見込生産を行うため、その販売可能性には不確実性を伴い、経済条件の変動等により販売が困難と判断した場合には、評価損を計上する可能性があります。
退職給付債務については、数理計算上の基礎である割引率が著しく低下した場合や、年金資産の運用が著しく悪化した場合には、多額の積立不足が生じる可能性があります。
繰延税金資産については、将来減算一時差異に対して、将来の課税所得等に関する予測に基づいて回収可能性を検討し計上しておりますが、実際の課税所得等が予測と異なり、繰延税金資産の取崩しが必要となる可能性があります。
仮に以上のような事象が生じた場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
また、第1四半期連結会計期間は第1四半期、第2四半期連結会計期間は第2四半期、第3四半期連結会計期間は第3四半期、第4四半期連結会計期間は第4四半期と表示します。
ウクライナ情勢が混迷を深め、目下の世界情勢の大きな波乱要因となっています。世界のパワーバランスが方向感を失い、資源エネルギー・食糧の危機、サプライチェーンの混乱など社会の構造を揺るがしています。コロナパンデミックが長期化し、ウクライナ戦争が加わりました。まったく先の読めない時代に突入しています。想定外をマネージする感性を高め、環境の変化に即応できる経営の「Adaptability」力に磨きをかけてまいります。
当連結会計年度(2021年4月~2022年3月、以下、当期)の世界経済は、ワクチン接種が進み、コロナ規制緩和と各国の財政・金融政策が後押しして回復基調となりました。しかしながら、ウクライナ問題がエネルギー・資材・食糧等の高騰の引き金となり、インフレの進行に拍車をかけています。対ロシア制裁の影響が見えず、物価高が回復しかけた景気の足どりを乱すことが懸念されます。事業環境は一層不透明な情勢となっています。日本では感染者数減少カーブは緩やかであり、エネルギー・食糧価格等の物価上昇や円安シフトが景気回復に水を差すのではないか不安が広がっています。
このような状況のなか、当社グループの当期の業績は、売上高691,530百万円(前連結会計年度(以下、前期)比19.8%増)、営業利益43,562百万円(前期比58.2%増)、経常利益40,816百万円(前期比85.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益26,487百万円(前期比67.3%増)と増収・増益となりました。
2022年3月期 連結業績 (単位:百万円)
セグメント別売上高・営業利益 (単位:百万円)
① 花開いた海外オペレーション
今期は世界経済の回復は力強く、海外売上高比率は過去最高(45%)を記録しました。グローカル視点に立って運営しているオペレーション力が花開き、全社の大幅な増収増益の原動力となりました。
・Material SUおよびE & I Technology、Performance Fibers、Medical、Pharma、Supplemental Nutritionの海外需要はコロナ前をはるかに上回るモメンタムを創り、グローバルネットワーク(世界を三分割した地域統括会社制度)の現場力がグローバル販売を大きく押し上げました。
・第3四半期、第4四半期の原燃料価格の歴史的高騰に対しては機敏にスプレッドの拡大に努めました。
この結果、通期の全社売上高は過去最高を更新し、すべての事業セグメントで増収増益となりました。
② 進展したポートフォリオ変革
コア事業群がキャッシュを生み出し、先端事業群の収益が着実に拡大する好循環エコノミーの進化が続いています。
・先端事業では、MSポリマーの欧米・アジア向け販売をはじめ、Medicalの血液浄化・カテーテル新製品、Pharmaの低分子・バイオ医薬品、米州向けSupplemental Nutritionなど重点領域の販売が順調に伸びました。また、デジタル社会が急速に進展するなか、E & I Technologyのスマートフォン・PC向けポリイミド製品、大型TV向けアクリルフィルム用樹脂の販売が大きく伸びました。カーボンニュートラルに向けた再生可能エネルギー需要の伸長を追い風に、ゼロエネルギー住宅(ZEH)・ゼロエネルギービルディング(ZEB)に貢献する独自の高効率太陽電池製品の販売が拡大しました。これにより先端事業の収益は着実に拡大しました。
・コア事業では、Vinyls and Chlor-Alkali、Performance Polymersのモディファイヤー、Performance Fibersなどで生産能力を上回るほどの受注状況となり、当社のファンダメンタル事業としてキャッシュを生む力を確実にしています。これにより事業ポートフォリオの変革が着実に進んでいます。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(Material Solutions Unit)
当セグメントの売上高は299,908百万円と前期比69,399百万円(30.1%増)の増収となり、営業利益は36,385百万円と前期比13,112百万円(56.3%増)の増益となりました。
Vinyls and Chlor-Alkaliにつきましては、アジア市場の旺盛な需要拡大が続きました。海外市況が上昇し収益増に貢献しました。
Performance Polymersのモディファイヤーにつきましては、欧米亜の需要が好調に推移しました。非塩ビ用途(自動車、PC・家電向け)の販売がグローバルに拡大しています。グローバル4拠点を持つ供給体制の強みが力を発揮しました。世界的なサプライチェーン混乱のなかでPainをGainに変えました。
変成シリコーンポリマーにつきましては、欧米の需要増が続いています。加えてアジアの新しい市場(建築用途など)が拡大しています。今後の旺盛な需要を見越して、各生産拠点の生産能力増強を急ぎます。
生分解性バイオポリマー Green Planet®は、2月に大型能力増強を決定しました。新製品開発の加速と次世代のユニークな生産プロセス革新技術を導入し、生産性の向上やコストダウンを実現します。次期増設に向けて生産技術を進化させます。国内では「プラスチック資源循環促進法」が大型需要の呼び水になっています。ホテル、コンビニなどのカトラリー用途やショッピング袋など引き合いが急拡大しています。コンポストをめざす国や地方自治体などから強い期待が寄せられています。また、海外では環境負荷低減に関心の高い世界中のブランドホルダーとの大型共同商談が進展しています。
(Quality of Life Solutions Unit)
当セグメントの売上高は169,067百万円と前期比28,091百万円(19.9%増)の増収となり、営業利益は16,942百万円と前期比6,292百万円(59.1%増)の増益となりました。
Foam & Residential Techsのスチレン系発泡樹脂及び押出発泡ボードは、原燃料価格の高騰などの影響を強く受けました。発泡ポリオレフィンは、世界的に自動車の減産が続くなか需要回復が遅れています。低温輸送でワクチンを安全に運ぶ「Tack Pack®」は各自治体で採用になり、コロナ対応ソリューションとして貢献しました。
PV & Energy managementにつきましては、再生可能エネルギーの普及促進が国のエネルギー安保の重要テーマに位置付けられ、太陽光発電の実装化に弾みがついています。当社の住宅向け高効率太陽電池も搭載率アップにより販売が拡大し、ZEBの社会実装化に適した「発電する窓(シ-スルー型太陽電池)」、「発電する壁(壁面設置型太陽電池)」への需要も加速しています。次世代型太陽電池として期待される高性能「ペロブスカイト太陽電池」開発への国の助成金交付決定を受け、実用化技術開発を加速します。
E & I Technologyにつきましては、スマートフォンや有機ELディスプレイ用のポリイミドフィルム、ポリイミドワニス、大型TV向けのアクリルフィルム用樹脂の販売が好調に推移しました。デジタル化の波が加速し、拡大する需要に応える供給体制の整備が必須です。生産能力増強を検討しています。
Performance Fibersにつきましては、アフリカ向け頭髪製品の旺盛な需要が継続し、難燃資材向けの需要も回復基調となりました。さらなる需要の伸長に対応するため、次期能力増強を検討しています。
(Health Care Solutions Unit)
当セグメントの売上高は58,936百万円と前期比6,513百万円(12.4%増)の増収となり、営業利益は12,662百万円と前期比1,226百万円(10.7%増)の増益となりました。
Medicalは、新製品ASO治療用血液浄化器の治療効果が高く、販売が大幅に増加しました。カテーテルでは脳動脈瘤塞栓コイルなど海外向けを中心に販売が拡大しました。また、迅速な開発力を活かしてコロナウイルス変異株に対応したPCR検査キットをいち早く上市し、感染拡大の防止に貢献しました。1月には、プロセス革新による自動化・高度化をデザインしたフィールドオペレーション・ゼロの最新鋭医療機器工場の新設(北海道苫小牧市)を決定しました。医療器事業のグローバル展開を加速してまいります。
Pharmaは、バイオ医薬品では、カネカユーロジェンテック増設ラインでのコロナワクチンの受託製造が業績に寄与しました。研究試薬・検査診断サービスも順調でした。低分子医薬品では抗ウィルス薬新規大型案件の販売が開始され業績に貢献しました。
(Nutrition Solutions Unit)
当セグメントの売上高は162,554百万円と前期比10,186百万円(6.7%増)の増収となり、営業利益は5,084百万円と前期比205百万円(4.2%増)の増益となりました。
Supplemental Nutritionにつきましては、「免疫力アップ」意識の高まりを背景に、還元型コエンザイムQ10の販売が好調に推移しました。国内は新たな機能性表示食品である「わたしのチカラ」還元型コエンザイムQ10配合シリーズのラインナップを強化しました。乳酸菌事業は、市場認知が進んだ米国での生産体制強化を進め、販売を拡大してまいります。
Foods & Agrisにつきましては、油脂等原料価格の大幅上昇の影響を強く受けました。新たにスタートしたモール型ECサイト「ぱん結び」は好評で、「パン好きの牛乳®」、「ベルギーヨーグルト」「わたしのチカラ®Q10ヨーグルト」と合わせてSNS他メディア戦略を強力に進めてまいります。また、北海道別海で展開中の有機酪農・乳製品事業は好評で生産体制の強化を検討中です。
(その他)
当セグメントの売上高は1,062百万円と前期比87百万円(7.6%減)の減収となり、営業利益は501百万円と前期比96百万円(16.1%減)の減益となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 生産金額は売価換算値で表示しております。
2 連結会社間の取引が複雑で、セグメント毎の生産高を正確に把握することが困難なため、概算値で表示しております。
主として見込み生産であります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度末の総資産は、売掛金や棚卸資産の増加等により前連結会計年度末に比べて59,530百万円増加し726,959百万円となりました。負債は、買掛金の増加等により前連結会計年度末に対して28,366百万円増加し314,755百万円となりました。また、純資産は、利益剰余金や為替換算調整勘定の増加等により前連結会計年度末に対し31,163百万円増加し412,204百万円となりました。この結果、自己資本比率は53.3%となりました。
なお、ROA(総資産経常利益率)は5.9%となり前連結会計年度(3.3%)を上回りました。ROE(自己資本当期純利益率)は7.1%となり前連結会計年度(4.6%)を上回りました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)の残高は、前連結会計年度末に比べ5,647百万円減少し、40,712百万円となりました。
区分毎の概況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、34,106百万円の収入(前期比39,933百万円減)となりました。税金等調整前当期純利益36,405百万円、減価償却費37,953百万円等による資金の増加がその主な内容です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、39,595百万円の支出(前期比3,633百万円減)となりました。有形固定資産の取得による支出37,329百万円等がその主な内容です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、1,105百万円の支出(前期比20,798百万円減)となりました。配当金の支払6,523百万円等による資金の減少がその主な内容です。
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
当社は、付加価値のある新しい事業を生み出しポートフォリオの変革を実現することで成長を続ける研究開発型企業を目指しています。基盤事業により十分なキャッシュを確保し、新事業創出のための研究開発や設備投資資金に活用していくことを基本とし、更なる成長投資に必要な資金については、その目的・規模や金融環境に応じ最も適切な調達方法を採ることとしています。
資金需要に応じ有利かつ円滑な資金調達ができるよう信用格付の維持・向上や金融機関・資本市場との良好な関係維持に努めるとともに、緊急な資金需要に備え融資枠や社債発行登録枠の設定を含め十分な手元流動性を確保しています。また、資金調達の方法については、自己資本など財務の安全性を確保しながら、資本効率の向上につながる資本・負債構成を考慮し、社債や借入金のいわゆる負債による資金調達を実施しています。
株主還元については、毎期の業績、中長期の収益動向、投資計画、財務状況を総合的に勘案し、連結配当性向30%を目安に、自己株式の取得も状況に応じ機動的に実施し、安定的に継続することを基本方針としています。
(4) 重要な会計上の見積り及び当期見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
① 減損会計における将来キャッシュ・フロー
減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定において用いられる将来キャッシュ・フローは、中期経営計画を基礎として、資産グループの現在の使用状況や合理的な使用計画等を考慮し見積っております。中期経営計画の見積期間を超える期間の将来キャッシュ・フローは、中期経営計画を基礎として、それまでの計画に基づく趨勢を踏まえた一定の仮定をおいて見積っております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において減損損失が発生する可能性があります。
② 棚卸資産の評価
棚卸資産は、収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定しており、正味売却価額が帳簿価額よりも下回っている場合は、帳簿価額を正味売却価額まで切り下げております。入庫日から1年超経過している棚卸資産については、需要予測等に基づく収益性の低下の事実を反映するように、個別に回収可能性を見積っております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において認識する棚卸資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。
③ 繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産の回収可能性は、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかで判断しております。当該判断は、将来減算一時差異に対する将来の課税所得等に関する予測に基づいております。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。
④ 退職給付債務の算定
確定給付制度の退職給付債務及び関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率等の計算基礎があります。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。
なお、当連結会計年度末の退職給付債務の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (退職給付関係) 2 確定給付制度 (9)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載のとおりであります。
特記すべき重要な契約等はありません。
(1) 事業セグメント別の主な活動
当社グループの主な研究開発活動は以下のとおりです。
① Material Solutions Unit
素材の豊かさを引出し、生活と環境の進化に貢献できる機能性材料や、競争力を強化するプロセス開発に取り組んでおります。当連結会計年度では、海洋分解性などユニークな特徴を持つ当社独自の「カネカ生分解性バイオポリマー Green Planet®」において、世界の大手ブランドホルダーとの共同開発や様々なニーズに応える加工技術開発・バイオ技術開発が進みました。
② Quality of Life Solutions Unit
素材の力で生活価値の先端を創る製品の研究開発に取り組んでおります。当連結会計年度では、衝撃吸収や断熱性にすぐれる発泡樹脂、ワクチンを始めとする医薬品の定温輸送を実現するパッケージ、独特の風合いと難燃性にすぐれた繊維、5Gなど次世代情報通信を支えるポリイミドを中心とした高機能素材、住宅やビルのゼロエネルギー化(ZEH、ZEB)に貢献する太陽電池などの製品開発に注力しました。
③ Health Care Solutions Unit
革新医療がより多くの患者に届けられる世界を創るために高齢化社会、医療の高度化に貢献する製品の研究開発に取り組んでいます。当連結会計年度では、発酵、精密合成、ポリマー技術を健康分野に適用し、低分子医薬品、新規バイオ医薬品、脳・心臓・消化器等の治療用医療機器、新型コロナウイルス検査キットなどの開発を進めました。
④ Nutrition Solutions Unit
食の多様化に貢献する新素材や機能性食品など食と健康、食料生産に革新をもたらす技術開発に取り組んでいます。当連結会計年度では、高品質でおいしい乳製品や還元型コエンザイムQ10の機能性表示への展開や機能性乳酸菌の市場開発を進めました。また、日本たばこ産業株式会社から取得した植物バイオテクノロジーと当社独自技術の融合を進め、食糧危機に対するソリューション開発に注力しています。
(2) 研究開発費
当連結会計年度における研究開発費は、総額で