第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

(1) 当社の存在意義(Purpose)

当社は、「人と技術の創造的融合を繰り返し、技術革新とグローバル展開を通して、革新的な素材開発によるソリューションを提供することにより、社会的課題を解決し、世界を健康にする」ことを存在意義と定義しております。

今、自然環境にますます負荷がかかり、人間の行動が危険な気候変動や大量絶滅をもたらしかねません。そのリスクを減らすうえで、自然に対する理解を深め、適切なテクノロジーを一層迅速に配備する必要があります。この視座こそが「カガクでネガイをカナエル会社-カネカ」が目指すパーパス経営です。当社は、環境・エネルギー、食糧、健康(よりよく生きる)の危機の三つをドメインとしてテクノロジーに磨きをかけ、社会実装化による最適なソリューションを提供したいと考えています。

 

(2) パーパス経営を実現する3つのValue

当社は、カネカタワーとTransformationのトリプルPackageの2つの経営システムを、変革の根幹としています。

 

① カネカタワー 「当社の経営モデルの基本構造」-その視座と視点(大切にすること)-

  当社の経営モデルの基本構造であり、当社の創業以来の持つ強み(DNA)を活かし、「事業構想力(内なる力)」と「市場開発力(外なるPower)」を進化させ、「現場力」がその実行を支え、常に時代の変化に応じて経営革新を自律的に行えるようにします。

  自治機能を高める2つのWork Shop(変革と成長のトライアングル、カネカ1on1)を通して現場をInspireします。

 


 

② 経営システム TransformationのトリプルPackage

  変革と成長を実現するための、ビジネス思考のプラットフォームです。経営のソフトウェアとハードウェアをドッキングすることにより、実効性を上げます。

  時代認識/仕掛け/成果のトライアングルは、経営計画のなかで、どのように目標を設定し、技術革新を含めた達成のための仕掛けを整え、スケール・スピードを意識したうえで、いったい何を成果として位置付けるのか。経営計画の骨格そのものとなります。

 


(3) 経営方針

当社は、ESG経営を「世界を健康にする健康経営-Wellness First」と定義し、全ての活動のプラットフォーム(憲法)とします。当社の健康経営は人間賛歌の経営です。価値あるソリューションをグローバルに提供することを通じて世界の人々の人生と環境の進化に貢献し、存在感のある企業として成長し続けます。

 

① カガクでネガイをカナエル会社・カネカ

化学という「不思議の海」の冒険を通して、Dream をRealにし、人々の人生に役立つ会社になります。

 

② ソリューションプロバイダー

「経営システムTransformationのトリプルPackage」に基づいて、Sustainability(持続可能社会)の構築に貢献します。当社グループが提供するソリューションはP18~21に記載の通りです。

 

 

 

③ ハイブリッド経営

イノベーションとは「違ったやり方でコトを運ぶ新結合」のことです。異質なものどうしを、異質な事業領域で、新しく組み合わせることを当社は「ハイブリッド経営」と呼んでいます。当社が保有する多種多様な異種技術による驚きの組み合わせで、独創的な価値あるソリューションを創り出す「ハイブリッド経営」を通じて社会問題の解決に貢献してまいります。

 

④ 実験カンパニー

(大量に試していいものだけを残す)熱い「実験カンパニー」を行動指針とし、新陳代謝を繰り返しながら新しいポートフォリオに変革する「Value Creating Company」を目指します。

 


 


 

(4) 対処すべき課題

  カネカのパーパス経営

自然環境にますます負荷がかかり、人間の行動が危険な気候変動や大量絶滅をもたらしかねません。そのリスクを減らすうえで、自然に対する理解を深め、適切なテクノロジーを一層迅速に配備する必要があります。この視座こそが「カガクでネガイをカナエル会社-カネカ」が目指すパーパス経営です。

当社は、環境・エネルギー、食糧、健康(よりよく生きる)の危機の三つをドメインとしてテクノロジーに磨きをかけ、社会実装化による最適なソリューションを提供したいと考えています。

 

  ハイブリッド経営

イノベーションとは「違ったやり方でコトを運ぶ新結合」のことです。

異質なものどうしを、異質な事業領域で、新しく組み合わせることを「ハイブリッド経営」と呼んでいます。

保有する多種多様な異種技術による驚きの組み合わせで、独創的な価値あるソリューションを創り出す「ハイブリッド経営」を通じて、社会問題の解決に貢献してまいります。

 

  R2B+P (Research to Businessの加速)

研究開発とビジネスとの結合を進め、Research to Businessの流れを一層加速させます。独創的な優れた素材を創出しソリューションを世界の市場に提供します。

「R2B」と「P」(モノづくり)が一体となった取り組みを強化し、モノづくり起点で事業の最大化とマネタイズに拘り新製品事業化のスピードとスケールを向上させます。

 

  ライフサイエンスへの重点シフト

化学で「地球生命」という大きな「いのち」を健康にする、そのテクノロジーと創造的な活動が「ライフサイエンス」の定義です。

カネカ生分解性バイオポリマーGreen Planet®、ゲノム編集技術、バイオ医薬品、再生・細胞医療、有機酪農乳製品事業、サプリメント、発酵培養プロセス技術などカネカの「バイオものづくり」やPV Technology、医療器は、すべて「地球生命」という大きな「いのち」に繋がっています。

カネカは、ライフサイエンス領域での「R2B」に挑戦することで、ポートフォリオ変革をドライブします。

 

  Think Global, Act Local (The Best Glocal Kaneka Wayの推進)

地域に根差した事業展開を可能にするグローバルネットワークが強みです。

ソリューションを世界の隅々に届け人々の命や社会課題を解決することを使命とし、文化の違いを乗り越えた現地発信(グローカル)にフォーカスします。グローバルに存在感ある企業をめざします。

経営資源を広く世界に求め、M&A、技術・業務提携、Open Innovationを積極的に推進し、グローバルでの事業構造変革と飛躍的成長に繋げます。

 

  Diversity 新たな価値の創造と女性の活躍

「年齢・性別・国籍・人種(属性)を問わず、多様な個性と多彩な視点から新たな発想が生まれ、カネカならでは!と世界を驚かせるユニークな価値を発信し続ける」

当社がめざすDiversityの姿です。特に女性活躍を推進し成長と変革を牽引する女性リーダー層の育成強化に取り組んでいます。

「人は仕事で成長し、会社は人で成長する」の考えに基づき『カネカ1on1X』を通じて、個人の成長と組織の成果を高めます。

今年も「‒Trust & Respect‒ 人間賛歌の経営」に取り組んでいきます。

 

 

  カーボンニュートラル・DXの取り組み

カネカは2030年にGHG排出量を30%削減することをめざしています。2050年にはカーボンニュートラルを実現することが目標です。自家発電設備の燃料転換やプロセス革新によるエネルギー消費量削減などに取り組みます。

また、DXの取り組みを強化し、R2B+Pを通した価値創出を大幅に加速させます。最先端の技術を取り入れた生産プラントへ進化させ、未来の製造現場をつくり上げます。

研究開発・営業・SCM・バックオフィスの業務革新を進めるために、最新のデジタル技術を使った全社デジタルプラットフォーム構想にも取り組んでいます。

 

アメリカトランプ政権の相互関税政策(トランプ関税)の発表で、世界は激震しています。この「トランプ関税」の世界経済に及ぼす影響は、現時点では未知数であり、事態は非常に流動的で予断を許さないカオス的な状況にあります。加えて、ウクライナや中東での紛争など地政学的リスクは長期化しており、世界経済の今後は極めて不透明な状況です。

21世紀におけるキーワードは変化(Change)であり、その時代認識のもと、変化に強く柔軟でResilientなポートフォリオ変革(Change)に取り組んでいます。究極の目標は差別化であり、他との違いをつくることです。また、当社の強みは需要のあるところで生産する地産地消型グローバルビジネス体制であり、今回の「トランプ関税」などの不意打ち的な変化にはResilientな力が影響を最小化するものと考えています。Regional Head Quarterを中心にグローバルなAdaptabilityを強化していきます。

 


 


 

 


 


 

 


 


 

 


 


 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

① サステナビリティ全般

技術革新とDXが社会のパラダイムシフトを加速させています。カーボンニュートラルな脱炭素社会を目指す世界的な動きが活発になってきました。当社は、この社会の潮流を構造化し、「地球環境・エネルギーの危機」、「食の危機」、「健康(豊かに生きる)の危機」の3つをサステナブルな危機と考え、当社の重点事業領域として定め、事業ポートフォリオを変革していきます。地球環境を守り、サステナブルな人間性回復に貢献します。「命を育む社会を支える」健康経営 =“Wellness First”を進めていきます。

 

② ガバナンス

- 基本的な考え方 -

当社グループは、2018年にESG経営への進化に取り組むべく「ESG憲章」を制定しました。「ESG憲章」は、企業理念を実現するための一人ひとりの行動指針であり、また化学を軸に価値あるソリューションをグローバルに提供することを目的としています。

 

- 推進体制 -

2022年4月1日付で、ESG経営を統括・強化するため、ESG関連組織を再編し、Task Force 「Sustainability(SX)本部」を立ち上げ、大きく推進体制を変更しました。同本部のなかに、9つのReal(実装)組織(2024年4月1日付でESG committeeを新設)を設けて、全社関係部署を横断的に統括し、ESG、SDGsの推進を図ります。地球環境を守り、人間性の回復に貢献し、「命を育む社会を支える」健康経営、ESG経営の強化に取り組んでいます。

 


 

 

③ リスク管理

リスク管理に関する基本方針に基づき、「危機」に対応するための基本的な体制・役割、危機の事例・ランクなどを明確にした「危機管理規程」を定めています。当社グループが受ける悪影響を可能な限り回避・低減して企業活動を維持することによって、社会的責任を継続的に果たしていきます。

 

(2) 重要なサステナビリティ項目

上記、ガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下のとおりです。

・気候変動

・人的資本

それぞれの項目に係る当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりです。

 

① 気候変動

当社グループは「人と、技術の創造的融合により未来を切り拓く価値を共創し、地球環境とゆたかな暮らしに貢献します。」という企業理念のもと、製品・サービスを通じて気候変動問題に対して価値あるソリューションをグローバルに提供するとともに、製造工程や物流工程で生じるさまざまな気候変動への影響に対し社会的責任を果たしていきます。そのような中、当社は2021年3月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言への賛同を表明しました。

 

- ガバナンス -

ESG経営を統括・強化するため、2022年4月1日付で、ESG関連組織を再編し、取締役副社長を本部長とするTask Force「Sustainability(SX)本部」を設けました。カーボンニュートラルに係る生産戦略は、その傘下にあるDX・CN Committeeがその推進を担います。

DX・CN Committeeは、事業部、スタッフ部門、工場、研究所、グループ会社と連携しながら、モノづくり領域のDXとカーボンニュートラルを一体とした取り組みを加速させることでカーボンニュートラルを推進していきます。DX・CN Committeeでの活動は3か月に1回、Task Force「Sustainability(SX)本部」へ報告され、今後の活動方針が審議・決定され、戦略、主要な行動計画、事業計画などへ反映されます。その結果については、代表取締役に報告されます。

 

- 戦略 -

気候変動のリスクと機会について、当社にとって特に重大と判断したものを下表にまとめています。2023年度は、太陽光発電の普及、バイオマスプラスチックの利用拡大、廃棄物有効活用の需要増加について、当社の重要度の高い事業機会として1.5℃シナリオと4℃シナリオで分析を行い、関係部門に共有しました。主な対応策は事業計画に組み込まれており、継続して取り組みを進めることとしました。

 

 

 


- リスク管理 -

気候変動に関するリスクは、信頼の生産力センター品質・地球環境センターが、掌理しています。気候変動に関するリスクやその予防策の策定では、事業部門・生産部門・研究部門と協議の上、信頼の生産力センター品質・地球環境センターからTask Force「Sustainability(SX)本部」へ提案・審議され、各部門と協業しながら対処していきます。

 

 

- 指標及び目標 -

当社グループは2050年までにカーボンニュートラルを実現します。そのマイルストーンとして、2030年にGHG排出量30%削減(2013年度比)を目標として設定しました。

2023年度の当社グループのScope1とScope2のGHG排出量合計は、1,513千トンCO₂e(2013年度比97.9%)でした。また、カネカ単体のScope3のGHG排出量は3,006千トンCO₂eでした。

なお、以下では、指標及び目標に対する2023年度実績値を示します。2024年度実績データについては、2025年度に当社ウェブサイトにて公表予定の「データ集2025」を参照ください。

 

■GHG排出量(※1)・エネルギー起源CO₂排出原単位指数(※2)


 

※1 GHG排出量:

GHGプロトコルに沿った方法で算定されたエネルギー起源CO₂排出量、非エネルギー起源CO₂排出量、およびメタン、一酸化二窒素、三フッ化窒素のCO₂換算排出量の合計値。

 

※2 CO₂排出原単位指数:

エネルギー起源CO₂排出量を活動量で除して求めたエネルギー起源CO₂排出原単位について、2013年度を100として指数化した数値。

 

 

② 人的資本

- 戦略 -

当社の成長をけん引しているのは、社員一人ひとりのチャレンジです。チャレンジできる環境を整え、機会を与え、成長を促進し、変革を実現する。これがHuman Driven Company、当社の人材戦略です。

当社の人材戦略の3本柱は、ⅰ.カネカ1on1を柱とした人材・リーダー育成、ⅱ.Diversityの推進、ⅲ.Wellnessの推進です。


 

ⅰ.カネカ1on1を柱とした人材・リーダー育成

<1on1の質の向上>

1on1は2018年度から導入した制度です。上司が、日ごろからメンバー(部下)の中長期の育成イメージを持ち、具体的なフィードバックを提供することで、メンバーは自身の強みや改善点を理解し、成長のためのアクションの質を高めることができます。成長に目を向けた対話を促進し、1on1の質を高めるため、従来の幹部職向けワークショップに加えて、2023年度から部門長やメンバー向けのワークショップを開始しました。2024年度はさらに拡充し、研修費用は約2倍となっています。

 

<次世代リーダー育成>

経営トップが主催する「一粒の種モミ塾」は2015年度の開講以来、121名が受講し、うち31名が部門長を担っています。塾生は、ローテーションやチャレンジングなアサインメントを通じて、新たな経験値の獲得や異なる環境でのリーダーシップやマネジメント力を強化します。また、女性幹部の参加も増やし、女性リーダーの育成も進めています。

 

<DX人材育成>

DXコア人材の育成に注力し、対象をビジネス企画領域にも拡充しています。

ビジネス、生産、研究・開発の各現場で、コア人材を中心にDXを自律的に推進し、新たな価値を生み出しています。また全社員向けのIT・DXリテラシー教育を開始し、生成AIの活用教育や大規模試験導入も進めています。

 

 

ⅱ.Diversityの推進

創業以来、社員一人ひとりのタレントを活かすことが事業の成長に欠かせないという理念のもとで取り組んでおります。今後も属性の差を越えて、個を活かす多様性を重視し、将来のビジネスや経営を担う人材を育成してまいります。

 

<幹部職の登用>

当社は「人の成長」を経営理念や労使の労働協約理念の根幹に据えております。学歴や勤続年数に関わらず、実力主義を貫いて幹部登用しています。

 

<シニア人材の活躍推進>

定年後の社員が年齢を問わず意欲高く仕事に取り組めるように、ジョブ型を取り入れた再雇用制度を設けています。これまで培ってきた経験やスキルをベースにして、自ら希望する仕事や働き方に応じて職務を選択する社内公募によるジョブマッチングを行い、定年後もイキイキと働ける再雇用制度を運用しています。

 

<障がい者雇用>

2024年度の障がい者雇用率は、2.8%となりました。今後も働きやすい環境整備と職域拡大に取り組み、雇用率を向上していきます。

 

<グローバル人材の育成>

グループ全体では、11,512名(2025年3月末時点)の社員のうち約3,500名の外国籍社員が全世界で業務に従事しています。海外拠点から日本への研修も実施しています。派遣された者は、日本での業務を通して、技術レベルの向上、人的ネットワークの向上に取り組んでいます。

 

<女性活躍推進>

当社は、女性活躍推進に特に力を入れており、女性社員を積極的に採用するとともに、行動計画を掲げ、幹部職登用や環境整備を進めています。

・幹部職層/主任層の成長機会

計画的な配置・育成とキャリア採用の強化により、女性幹部職比率を上げる取り組みを継続し、中長期的には幹部職の候補者となる、主任層の育成にも力を入れています。

・女性採用に向けた取り組み 

新卒採用において、事務系は男女同数程度を採用しています。2023年度には、理系の女性を対象とした新卒採用セミナーを大幅にリニューアルし、ワークライフバランスに資する制度や、技術系職種で働く女性のキャリアやマインドを紹介する場を設けました。その結果、2025年度入社の技術系女性採用人数は増加しています。

 

<男性社員の育児休業取得について>

仕事と生活の両面支援を進めていくメッセージとして、上司向けにイクボス講演会を実施しました。仕事と育児が両立しやすい職場環境をめざし、職場単位で組織の好循環を促しています。指標の1つである、出生から1年以内に育児目的で連続2週間以上休む男性の割合は30%を超え、年々増加しています。

 

 

ⅲ.Wellnessの推進

イキイキとチャレンジをする上で、社員一人ひとりの心身の健康は欠かせません。「目指す健康像」を定め、社員と組織のWellness向上に取り組んでいます。「疾病・生活習慣病予防」「メンタルヘルス」「絆」の3つの視点で健康増進と健全な組織づくりを、Task Force「Sustainability(SX)本部」をトップとした全社的な推進体制で実現していきます。

 

<目指す健康像>

・働く組織:健全・自由闊達で、多様な個性、個人の能力が進化・最大限に発揮できるOne Teamな職場

・働く仲間:元気でイキイキとした生活を送り、仕事に取り組む仲間たち

 

- 指標目標 -

女性活躍推進 行動計画(計画期間 2021年4月1日~2026年3月31日)

 

目標1

女性幹部職を3倍以上にする。(2021年3月31日時点比)

 

目標2

子供が生まれてから1年の内に、育児目的で連続2週間以上休む男性の割合を3割以上にする。

 

目標3

女性が働きやすい環境整備に取り組む。

 

 

 

3 【事業等のリスク】

(1) リスクマネジメントの基本的な考え方

当社グループは、世界を健康にする「健康経営-Wellness First」を目指すに当たり、事業展開する上で想定されるリスクへの対応として、「リスク管理に関する基本方針」を定めています。

リスク管理については、各部門が、業務の遂行に際して、または関連して発生しそうなリスクを想定して適切な予防策を打ち、万一、リスクが発現した場合には、関連部門の支援を得ながら適切に対処することを基本としています。

潜在的リスク発現に対する予防策については、倫理・法令遵守に関するものも含め、「Compliance Committee」が全社の計画の立案・推進を統括します。

リスクが発現した場合、または発現するおそれが具体的に想定される場合には、適宜「Compliance Committee」が当該部門と協働して対処します。

以上のことが、的確に実施されているかどうかについて定期的に点検を行い、体制の形骸化を回避するとともに、実効性を維持・改善していきます。

 

(2) 事業等のリスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。

なお、ここに記載した事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループがリスクとして判断したものでありますが、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではありません。

 

① 当社事業の優位性の確保と国内外の経済環境の動向に係るリスク

当社グループは、自社開発技術に先端技術を外部から導入あるいは融合し、多岐にわたる分野で高付加価値製品を開発、商品化し、継続的に新規市場の開拓を行い、グローバルにネットワークを構築して安定供給することで、事業の優位性を確保すると同時に、事業構造改革を推し進め経営基盤の強化に取り組んでおります。しかしながら、経済活動の急激な変化、技術革新の急速な進展、自然災害や大規模感染症(パンデミック)が生じた場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 事業のグローバル化に伴うリスク(海外事業展開、為替変動)

当社グループは、これまで常に世界に視野を置き、他社に先駆けた事業展開を推進してきました。現在ではグローカル(現地発信の事業展開)に軸足を置き、世界各地の特性にあわせた技術開発、素材開発を加速させています。海外における事業活動には、予測不能な法律、規制、税制などの変更、移転価格税制による課税、急激な為替変動、テロ・戦争などによる社会的、政治的混乱などのリスクがあります。その発現を未然に防ぎまたは影響を軽減するために、グループ会社のガバナンス強化、専門家体制の整備、為替耐性強化策、損害保険の付保、従業員の安全対策等諸施策を講じておりますが、仮にこれらの事象が生じた場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 原燃料価格の変動に係るリスク

当社グループは、原燃料の調達について、グローバル購買、中長期契約とスポット市場での購入を組み合わせ最有利に行う体制を構築し運用しておりますが、その多くが国際市況商品であることから、想定外の相場変動が生じた場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 製造物責任・産業事故・大規模災害に係るリスク

当社グループは、お客様に提供する製品の品質、流通には万全の体制を構築して運用し、万一事故が発生した場合に備え、グループ全体を補償対象とする賠償責任保険を付保しております。また、安全をすべてにおいて優先し、法令順守の下、事業活動に取り組んでおりますが、想定外の事故や地震などの大規模自然災害により、主要な製造設備の損壊及びシステム障害に起因する事業の中断とそれに伴う機会損失が発生する可能性があります。これらのリスクに備えて、必要な保険を付保しておりますが、その補償範囲を超えた損失が発生するリスクがあります。このような状態が生じた場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

⑤ 知的財産権の保護に係るリスク

当社グループは、研究開発の成果を特許などの知的財産として確実に権利化することにより、社会課題の解決に資するソリューションの早期提供を目指しています。一方、他社の知的財産に対しては、これを尊重し係争を未然に回避すべくテーマ提案・事業化・仕様変更などの事業開発の節目において必ず特許調査を実施し、パテントクリアランスの確保に万全を期しております。しかしながら、グローバル化や情報技術の進展などにより、当社グループが開発した技術ノウハウなどの漏洩、不正利用や使用許諾に関する係争等のリスクがあります。仮にこのような事態が発生した場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 環境関連規制の影響

当社グループは、「ESG憲章」に基づき、製品の全ライフサイクルにおいて、それぞれの段階で地球環境の保護に取り組み、資源の保全、環境負荷の低減により、社会の持続的発展と豊かな社会の実現を目指しています。2021年3月には、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、カーボンニュートラルの実現に向けて努力しております。一方、環境関連規制は年々強化される方向にあり、規制の内容によっては事業のサプライチェーンにおいて活動の制約など、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 訴訟などに係るリスク

当社グループは、コンプライアンス経営を重視し、法令及び社会的ルールの遵守の徹底を図っております。しかしながら、国内外において事業活動を行う過程で、予期せぬ訴訟、行政措置などを受けるリスクがあります。仮に重要な訴訟などが提起された場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 情報セキュリティに係るリスク

当社グループにとって、情報システムは、事業活動のあらゆる側面において、重要な役割を担っております。一方、サイバー攻撃、不正アクセス、災害等によるシステム障害、情報漏洩等の発生するリスクが高まっています。その対応策として、「情報管理基本方針」に基づき、経営層によるリスク管理体制を構築するとともに、外部専門家の知見を取り入れ、セキュリティシステムの強化、情報セキュリティの社員教育等を行うことで、リスク回避を図っております。しかしながら、想定外の事態が発生する場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ その他のリスク

当社グループは、中長期的な取引関係構築、維持及び強化等を目的に、取引先及び金融機関の株式を保有しております。これら株式の期末時の時価等が著しく下落した場合には、「金融商品に関する会計基準」の適用により、評価損を計上する可能性があります。

固定資産については、今後、事業環境の大幅な悪化や保有する遊休土地の時価が更に低下した場合等には、「固定資産の減損に係る会計基準」の適用により、減損損失の計上が必要となる可能性があります。

棚卸資産については、将来の需要予測に基づく見込生産を行うため、その販売可能性には不確実性を伴い、経済条件の変動等により販売が困難と判断した場合には、評価損を計上する可能性があります。

退職給付債務については、数理計算上の基礎である割引率が著しく低下した場合や、年金資産の運用が著しく悪化した場合には、多額の積立不足が生じる可能性があります。

繰延税金資産については、将来減算一時差異に対して、将来の課税所得等に関する予測に基づいて回収可能性を検討し計上しておりますが、実際の課税所得等が予測と異なり、繰延税金資産の取崩しが必要となる可能性があります。

仮に以上のような事象が生じた場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

また、第1四半期連結会計期間は第1四半期、第2四半期連結会計期間は第2四半期、第3四半期連結会計期間は第3四半期、第4四半期連結会計期間は第4四半期、第1四半期及び第2四半期は上期、第3四半期及び第4四半期は下期と表示します。

 

(1) 経営成績


世界経済の状況 - 視界不良が続いている -

 

世界経済の成長が見通し難い不透明な一年となりました。中国経済は低迷が続いており、欧米の景気はVolatileで先行きが読めない状況です。

日本については、歴史的な円安が輸出を下支えしたものの、円安による食とエネルギーの輸入インフレにより、将来不安と生活の縮小から所得が増えても消費が増えない不安定な状況が続きました。

直近では米国の相互関税政策により世界が激震しており、先行きが見通せない視界不良の状況が、2025年度の不安材料となっています。

 


当社グループの業績 - 増収増益 -

 

このような状況のなか、当社グループの当連結会計年度(2024年4月2025年3月)の連結業績は、売上高807,200百万円前連結会計年度(以下、前期)比5.9%増)、営業利益40,050百万円前期比22.9%増)、経常利益32,863百万円前期比12.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益25,309百万円(前期比9.0%増)となりました。

 

2025年3月期  連結業績                (単位:百万円)

 

2024年3月

2025年3月

前期比

売上高

762,302

807,200

44,897

(5.9%)

営業利益

32,579

40,050

7,470

(22.9%)

経常利益

29,222

32,863

3,640
(12.5%)

親会社株主に帰属する

当期純利益

23,220

25,309

2,089
(9.0%)

 

 

 

セグメント別売上高・営業利益                                                     (単位:百万円)

 

売上高

2024年3月

2025年3月

増減

第1

四半期

第2

四半期

第3

四半期

第4

四半期

第1

四半期

第2

四半期

第3

四半期

第4

四半期

通期

Material SU

77,659

78,814

81,444

84,982

322,902

86,042

83,862

85,603

87,398

342,906

20,003
(6.2%)

Quality of Life SU

40,878

43,880

46,638

44,785

176,182

45,058

48,354

50,872

46,698

190,984

14,801
(8.4%)

Health Care SU

17,745

18,448

17,209

21,452

74,856

18,372

18,022

19,043

21,846

77,284

2,428
(3.2%)

Nutrition SU

46,037

46,006

49,038

46,099

187,182

48,674

47,137

51,275

47,885

194,972

7,790
(4.2%)

その他

419

226

280

252

1,178

234

204

290

322

1,052

△126
(△10.7%)

182,740

187,376

194,611

197,574

762,302

198,382

197,580

207,084

204,151

807,200

44,897
(5.9%)

 

 

 

営業利益

2024年3月

2025年3月

増減

第1

四半期

第2

四半期

第3

四半期

第4

四半期

第1

四半期

第2

四半期

第3

四半期

第4

四半期

通期

Material SU

5,513

6,610

6,996

8,375

27,495

8,382

7,690

6,658

8,229

30,961

3,465
(12.6%)

Quality of Life SU

2,939

4,159

4,655

3,607

15,361

4,256

5,296

6,148

4,327

20,027

4,665
(30.4%)

Health Care SU

2,967

2,926

2,451

4,596

12,941

2,992

2,451

3,276

4,679

13,399

458
(3.5%)

Nutrition SU

2,277

2,298

3,820

3,680

12,076

3,903

2,545

3,695

2,927

13,072

996
(8.2%)

その他

288

101

151

125

667

111

66

154

185

517

△149
(△22.4%)

調整額

△8,381

△9,093

△9,070

△9,417

△35,963

△9,369

△9,225

△9,898

△9,434

△37,928

△1,965
(-)

5,603

7,002

9,004

10,968

32,579

10,276

8,824

10,033

10,914

40,050

7,470
(22.9%)

 

 


全社業績についてのRemarks

 

世界の景気回復の足取りが重く、需要動向が不安定な逆風のなか、当社の全社営業利益は前期比で75億円増益(前期比22.9%増)の401億円となりました。四半期別に総括すると、第2四半期を底に第3四半期・第4四半期は100億円/四半期を超える利益水準に回復しました。また、全てのSUが前期比で増収増益となりました。

 

① 先端事業とコア事業

当連結会計年度業績の特徴は、先端事業の躍進と堅調なコア事業を実現したことです。

先端事業の営業利益は前期比59億円増の377億円となり、コア事業は前期比36億円増の403億円となりました。

 

先端事業の構成比率は、2023年度の46%から2024年度下期には50%に伸長し、特にMedical・E & I Technologyが大幅に業績を伸ばしました。

Medicalは新製品の拡販が大きく進展し、E & I Technologyは高い技術力を活かした製品の優位性が効果を発揮してスマートフォン市場を中心に拡販を実現しました。

 

コア事業は、Performance Polymers(MOD)が大幅な増益となりました。強い競争力と付加価値の高い製品の拡販により、業容拡大が進んでいます。Performance Fibersは、販売地域の拡大や高機能化した製品の拡販が寄与し、業績は回復しています。Foods & Agrisは、高付加価値品への販売シフトとスプレッドの拡大により、高い水準の収益となりました。

 

 

② 成長に向けた投資計画の進捗

Medicalは、北海道・苫東工場の血液浄化器プラントが第2四半期に順調に稼働しました。

さらにMedical事業の競争力を強化するため、同地でのカテーテルプラントの建設に着手しました。また、脳血管治療領域に強みを持つイスラエルの医療機器企業をM&Aするなど、Open Innovationによる製品ラインアップの拡充を加速しています。

Green Planet®は、国内外での採用がさらに拡大しました。土中・海水中ともに生分解するという優れた機能を持つ製品の社会実装が進みました。

Performance Polymers(MS)のベルギーでの能力増強は、第2四半期に稼働しました。今後は欧州グリーンディール政策の進展に伴う需要増を取り込んでいく計画です。

 

このように先端事業の成長を加速させる投資を積極的に進め、選択と集中を強化してまいります。

 

(注)先端事業Performance Polymers(MS)・E & I Technology・PV & Energy management・Pharma・Medical・Supplemental Nutrition、

コア事業Vinyls and Chlor-Alkali・Performance Polymers(MOD)・Foam & Residential Techs・Performance Fibers・Foods & Agris

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

(Material Solutions Unit)

当セグメントの売上高は342,906百万円前期比20,003百万円増6.2%増)となり、営業利益は30,961百万円前期比3,465百万円増12.6%増)となりました。塩ビのアジア市況の下振れが続きましたが、Performance Polymers(MOD)の強い競争力とPerformance Polymers(MS)の拡販により全体では増収増益となりました。

Vinyls and Chlor-Alkaliは、価格改定を進めましたが、アジア市況の下落の影響を受け、減益となりました。

Performance Polymersのモディファイヤーは、欧米の建築需要の回復が遅れるなか、事業競争力強化の取り組みと非塩ビ用途・MXの拡販により大幅な増益となりました。

変成シリコーンポリマーは、他にないユニークな機能特性を活かした拡販策により販売が堅調に拡大し、増益となりました。ベルギーの能力増強設備を最大限に活かし、さらに拡販を進めていきます。

生分解性バイオポリマー「Green Planet®」は、国内外の引き合いが増加しています。スターバックスコーヒージャパンでの採用実績が新しいモメンタムを創出し、大手ブランドホルダーとの大型案件の取り組みが加速しています。

 

(Quality of Life Solutions Unit)

当セグメントの売上高は190,984百万円前期比14,801百万円増8.4%増)となり、営業利益は20,027百万円前期比4,665百万円増30.4%増)となりました。E & I Technology・PV & Energy management・Performance Fibersが増益となりました。Foam & Residential Techsは原料高の影響を受けましたが、全体ではE & I Technologyの好調により大幅な増収増益となりました。

Foam & Residential Techsは、価格改定を進めたものの、自動車分野や農水産・建築分野での需要減および原料高の影響により減益となりました。

E & I Technologyは、年間を通じてポリイミドフィルム・液晶TV用アクリル樹脂が高水準の販売を実現し、大幅な増益となりました。

PV & Energy managementは、国内で戸建て住宅向け高効率太陽電池の販売が堅調に推移しました。

Performance Fibersは、頭髪製品の販売が着実に増加しました。難燃ファブリック分野の需要も拡大しています。

 

 

(Health Care Solutions Unit)

当セグメントの売上高は77,284百万円前期比2,428百万円増3.2%増)となり、営業利益は13,399百万円前期比458百万円増3.5%増)となりました。Medicalが大幅な収益増となりましたが、PharmaはCDMO市場の需要調整の影響を受けました。全体では増収増益となりました。

Medicalは、血液浄化器・カテーテルともに販売が拡大しました。カテーテル新製品のスコアリングバルーンの拡販が、業容拡大を牽引しています。血液浄化器の北海道新プラント(苫東工場)の高い競争力を活かし、海外展開を強化していきます。

Pharmaは、低分子およびバイオ医薬の需要調整が想定以上に長引きましたが、第3四半期以降需要は回復しました。

 

(Nutrition Solutions Unit)

当セグメントの売上高は194,972百万円前期比7,790百万円増4.2%増)となり、営業利益は13,072百万円前期比996百万円増8.2%増)となりました。Foods & Agris・Supplemental Nutritionともに好調な一年となり、増収増益の稔りを得ました。

Supplemental Nutritionは、還元型コエンザイムQ10が米国を中心にグローバルでの拡販が進みました。乳酸菌事業も着実に事業を拡大しています。最大市場の米国でのさらなる販売拡大に向け、新製品の上市やマーケティングの強化に注力します。

Foods & Agrisは、高付加価値品シフトとスプレッドの拡大により、収益力が一段と高まりました。有機乳製品などの付加価値の高い「B2C」製品の拡販を強化し、業容拡大を加速します。

 

(その他)

当セグメントの売上高は1,052百万円前期比126百万円減10.7%減)となり、営業利益は517百万円前期比149百万円減22.4%減)となりました。

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度(百万円)

前期比(%)

Material Solutions Unit

331,663

11.0

Quality of Life Solutions Unit

153,527

7.7

Health Care Solutions Unit

85,658

9.4

Nutrition Solutions Unit

111,788

5.4

その他

合計

682,637

9.1

 

(注) 1  生産金額は売価換算値で表示しております。

2  連結会社間の取引が複雑で、セグメント毎の生産高を正確に把握することが困難なため、概算値で表示しております。

 

② 受注実績

主として見込み生産であります。

 

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度(百万円)

前期比(%)

Material Solutions Unit

342,906

6.2

Quality of Life Solutions Unit

190,984

8.4

Health Care Solutions Unit

77,284

3.2

Nutrition Solutions Unit

194,972

4.2

その他

1,052

△10.7

合計

807,200

5.9

 

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末の総資産は、棚卸資産の増加に加え、設備投資の拡大による固定資産増加等により、前連結会計年度末に比べて49,937百万円増加920,143百万円となりました。

負債については、借入金の増加等により前連結会計年度末に対して31,901百万円増加427,724百万円となりました。

純資産については、利益剰余金の増加等により前連結会計年度末に対し18,035百万円増加492,419百万円となり、自己資本比率は51.2%となりました。

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や減価償却費等により41,252百万円の収入となり、前期比で20,658百万円の収入減となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出により55,038百万円の支出となり、前期比3,733百万円の支出減となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、社債償還や自己株式取得による支出の一方、借入金の増加により14,453百万円の収入となり、前期比で15,973百万円の収入増となりました。

この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ1,353百万円増加し、44,631百万円となりました。

 

(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)

当社は、付加価値のある新しい事業を生み出しポートフォリオの変革を実現することで成長を続ける研究開発型企業を目指しています。基盤事業により十分なキャッシュを確保し、新事業創出のための研究開発や設備投資資金に活用していくことを基本とし、更なる成長投資に必要な資金については、その目的・規模や金融環境に応じ最も適切な調達方法を採ることとしています。

資金需要に応じ有利かつ円滑な資金調達ができるよう信用格付の維持・向上や金融機関・資本市場との良好な関係維持に努めるとともに、緊急な資金需要に備え融資枠や社債発行登録枠の設定を含め十分な手元流動性を確保しています。また、資金調達の方法については、自己資本など財務の安全性を確保しながら、資本効率の向上につながる資本・負債構成を考慮し、社債や借入金のいわゆる負債による資金調達を実施しています。

株主還元については、毎期の業績、中長期の収益動向、投資計画、財務状況を総合的に勘案し、連結配当性向30%を目安に、自己株式の取得も状況に応じ機動的に実施し、安定的に継続することを基本方針としています。

 

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当期見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

① 減損会計における将来キャッシュ・フロー

減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定において用いられる将来キャッシュ・フローは、中期経営計画を基礎として、資産グループの現在の使用状況や合理的な使用計画等を考慮し見積っております。中期経営計画の見積期間を超える期間の将来キャッシュ・フローは、中期経営計画を基礎として、それまでの計画に基づく趨勢を踏まえた一定の仮定をおいて見積っております。

当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において減損損失が発生する可能性があります。

 

② 棚卸資産の評価

棚卸資産は、収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定しており、正味売却価額が帳簿価額よりも下回っている場合は、帳簿価額を正味売却価額まで切り下げております。入庫日から1年超経過している棚卸資産については、需要予測等に基づく収益性の低下の事実を反映するように、個別に回収可能性を見積っております。

当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において認識する棚卸資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。

 

③ 繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産の回収可能性は、将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかで判断しております。当該判断は、将来減算一時差異に対する将来の課税所得等に関する予測に基づいております。

当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。

 

④ 退職給付債務の算定

確定給付制度の退職給付債務及び関連する勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割り引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率等の計算基礎があります。

当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表において認識する退職給付に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。

なお、当連結会計年度末の退職給付債務の算定に用いた主要な数理計算上の仮定は「第5 経理の状況  1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表  注記事項 (退職給付関係) 2 確定給付制度 (9)数理計算上の計算基礎に関する事項」に記載のとおりであります。

 

5 【重要な契約等】

特記すべき重要な契約等はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

(1) 事業セグメント別の主な活動

当社グループの主な研究開発活動は以下のとおりです。

 

① Material Solutions Unit

素材の豊かさを引出し、生活と環境の進化に貢献できる機能性材料や、競争力を強化するプロセス開発に取り組んでおります。当連結会計年度では、植物油から微生物によって生産され海洋分解性などユニークな特徴を持つ「カネカ生分解性バイオポリマーGreen Planet®」において、世界の大手ブランドホルダーとの共同開発や様々なニーズに応える加工技術開発に注力しました。また、廃食油やCOからの樹脂培養技術の研究を進めました。

 

② Quality of Life Solutions Unit

素材の力で生活価値の先端を創る製品の研究開発に取り組んでおります。当連結会計年度では、衝撃吸収や断熱性にすぐれる発泡樹脂、ワクチンを始めとする医薬品の定温輸送を実現するパッケージ、独特の風合いと難燃性にすぐれた繊維、5Gなど次世代情報通信を支えるポリイミドを中心とした高機能素材、住宅やビルのゼロエネルギー化(ZEH、ZEB)に貢献する太陽電池や車載用太陽電池などの製品開発に注力しました。

 

③ Health Care Solutions Unit

革新医療がより多くの患者に届けられる世界を創るために高齢化社会、医療の高度化に貢献する製品の研究開発に取り組んでいます。当連結会計年度では、発酵、精密合成、ポリマー技術を健康分野に適用し、低分子医薬品、新規バイオ医薬品、血液浄化機器、脳・心臓・消化器等の治療用医療機器、新型コロナウイルス検査キットなどの開発を進めました。

 

④ Nutrition Solutions Unit

食の多様化に貢献する新素材や機能性食品など食と健康、食料生産に革新をもたらす技術開発に取り組んでいます。当連結会計年度では、高品質でおいしい乳製品や還元型コエンザイムQ10の機能性表示食品への展開や機能性乳酸菌の市場開発を進めました。また、当社独自の技術と日本たばこ産業株式会社から取得した植物バイオテクノロジーとの融合を進め、食糧危機に対する食糧生産ソリューションの開発に注力しました。

 

(2) 研究開発費

当連結会計年度における研究開発費は、総額で39,342百万円となりました。その内訳は、Material Solutions Unit 4,209百万円、Quality of Life Solutions Unit 2,279百万円、Health Care Solutions Unit 2,572百万円、Nutrition Solutions Unit 1,170百万円及び特定のセグメントに区分できない基礎的研究開発費29,111百万円であります。