第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営理念及び経営ビジョン

 経営理念:私たち新日本理化グループは、もの創りを通して広く社会の発展に貢献します。

 ビジョン2030(2030年のありたい姿):Be the best SPICE!~心躍る極上のスパイスになる~

 

 当社は、1919年の創業からこれまで、上記経営理念のもと着実に事業を継続してまいりました。そして2030年のありたい姿を示すものとして、ビジョン2030「Be the best SPICE!~心躍る極上のスパイスになる~」を策定しております。

 当社が創るものは、社会の様々なシーンを支える、キラリと光る唯一無二の特性をもった素材です。それらの素材は、当社自身が、多様な価値観を活かす、精鋭の集まりであってこそ生み出されるものだと考えております。当社の一人ひとりが、スパイスのようにお互いを引き立て合い、そして人々の心を躍らせるようなスパイスを提供する企業となること、それが2030年に向けて、当社が目指す姿です。

 

(2)中期経営計画の進捗と対処すべき課題

 ビジョン2030の達成に向け、5ヶ年の中期経営計画(2021年度~2025年度)を策定の上、多方面で取組みを進めております。なお、計画最終年度の経営目標につきましては、2024年6月6日付で目標数値の修正を行っております。

 

<中期経営計画の基本コンセプト>

・環境・社会・人(命)に関わる課題に果敢にチャレンジし、価値創造企業を目指す。

・「情報・通信」「モビリティ」「ライフサイエンス」「環境ソリューション」の4領域に経営資源を集中し、成長戦略を実現する。

 

<中期経営計画の事業戦略骨子>

・稼ぐ力の再構築

・技術革新による競争優位の獲得

・CSRの推進

・組織再編と人材育成の強化

 

<経営目標(連結)>(2024年6月6日付修正数値)

 

2025年度目標

売上高

340億円

営業利益

8億円

ROE

6.0%以上

 なお、2024年度(2025年3月期)の営業利益は8億2千9百万円であり、上記の2025年度目標を前倒しで達成する形となりました。2025年度(2026年3月期)の営業利益は9億円を予想しております。

 

 

<事業戦略の進捗(2021年度~2024年度)>

これまでの進捗は以下のとおりです。

稼ぐ力の再構築

・ステアリン酸の生産を終了

・製造の内製化/外製化の戦略見直しと生産拠点の最適化

(堺工場での可塑剤・酸無水物の生産終了と他工場への生産集約を含む)

・ノンコア製品の製造・販売を終了、製品ラインナップの整理

・環境価値を訴求できる製品の開発にリソースを集中投下

・政策保有株式の縮減による資産効率の向上

技術革新による競争優位の獲得

・新研究所「京都R&Dセンター」の開設

・他社(異業種含む)や大学との技術交流・共同研究開発の積極推進

・事業戦略・開発戦略・知財戦略の三位一体化

・生産現場主体のDXによる生産性向上とノウハウの確実な承継

・社内サプライチェーン(受注生産検査出荷)のデジタル化

CSRの推進

・CSR委員会の設置、CSR報告書の発行開始

・2050年度カーボンニュートラル達成に向けたロードマップ策定

・一部工場にて再生可能エネルギーの調達を開始

・バイオマス由来製品の開発とラインナップ強化

・CSR調達基本方針の策定及び「ホワイト物流」推進運動への賛同表明

組織再編と

人材育成の強化

・機能別5本部と本部横断2組織(DX推進/CN推進)への再編

・多様な人材の採用・登用

・チャレンジを促進する人事制度導入(年功要素削減、等級の役割明確化、挑戦の評価)

・定期的な1on1による課題共有、エンゲージメントの定点観測

 

<対処すべき課題(2025年度)>

①稼ぐ力の再構築

 事業のスクラップ&ビルドによるポートフォリオの組換えを引き続き進めてまいります。不採算製品について生産撤退を含む合理化策を講じる一方、事業基盤を担う可塑剤は業界変動を好機とすべく、SCM(サプライチェーンマネジメント)強化を急ぎ、シェア拡大と収益力向上に繋げてまいります。また、次世代品として位置付ける植物油由来の化粧品素材「RiKANATURA®」や樹脂成形の効率向上に寄与する結晶核剤「RiKACRYSTA®」について、リソースを重点投下し事業開発・育成を進めてまいります。

 

②技術革新による競争優位の獲得

 2022年4月に立ち上げたDX推進室を軸に、生産現場主体のデジタル化及びデータ活用を推進しております。生産・設備データ活用の取組みについては、実証実験を経て全社展開のフェーズに移行しており、今後は実務への定着を図るとともに効果検証を行ってまいります。

 また、従来取り組んでいた知的財産活動については、権利化によるリスク低減にとどまらず、知財活用によるプロフィット化を目指しております。特許解析で得た情報を起点に技術開発や営業活動を行うなど、事業機会の創出に資する知的財産戦略を遂行してまいります。

 

③CSRの推進

 「もの創りを通して広く社会の発展に貢献する」という経営理念のもと、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的成長の両立を目指しております。なかでも2050年度のカーボンニュートラル達成を重要課題と位置付けており、製造プロセス改善による省エネ化や再生可能エネルギー導入に加え、顧客の低・脱炭素化に貢献する製品開発に引き続き注力してまいります。さらに、原材料調達のプロセスにおいても、本年策定したCSR調達基本方針に基づき、取引先とともに持続可能なサプライチェーンの構築を進めてまいります。

 

④組織再編と人材育成の強化

 「誰もがやりがいを持って働ける組織の実現」と「自ら考え行動する挑戦型人材の育成」を主眼に置いた人事戦略を遂行しております。挑戦を支援するための人事制度改革や働く場所・時間の柔軟化などの環境整備を進めてまいりましたが、今後は、挑戦意欲の向上やキャリア意識の醸成、心理的安全性の確保など、ソフト面に重点を置いた取組みを推進してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、「もの創りを通して広く社会の発展に貢献する」という経営理念のもと、事業を通して社会価値を創造し、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な成長を目指すことをCSR方針に掲げております。CSRを通してサステナビリティへの取組みを推進し、経営のレジリエンスを高めるため、代表取締役社長が委員長を務めるCSR委員会を設置し、CSRの取組みについて審議・協議し、必要に応じて取締役会に報告しています。CSR委員会の構成委員は本部長である執行役員及び国内連結子会社社長であり、各組織でのCSR課題への取組みを遂行する責任を担っております。また、CSR委員会の内部組織としてESG事務局を設置し、コンプライアンス委員会、安全衛生委員会、省エネ委員会、品質管理委員会と連携し、グループ全体のCSR課題への取組みを推進しております。

 また、環境への取組みにおいては、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、2022年4月CN(カーボンニュートラル)推進室を立ち上げました。CN推進室は全社横断型の組織であり、その取組み内容については、定期的に経営会議にて報告しております。

 

<CSR推進体制>

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(2)戦略

 当社グループは、事業を通して社会価値を創造することが経営理念の実現そのものであり、企業と社会の持続的な成長に繋がると考え、以下のとおりCSR方針及びCSR目標を策定しております。

 

<CSR方針>

1.社会課題の解決

社会課題の解決に事業を通して貢献することで企業の持続的な成長を目指します。

2.環境への責任

事業活動の環境影響に責任を持ち、地球環境と調和した事業活動を行います。

3.安全への責任

安全を事業運営上の最優先に位置付け、職場と地域社会に安全・安心を提供します。

4.人権の尊重

基本的人権を尊重し、あらゆる差別、不当労働やハラスメントなどの非人道的な行いを排除します。

5.企業統治の責任

健全かつ透明度の高い経営に努め、全てのステークホルダーの理解と信頼を深めます。

6.従業員への責任

従業員の自己実現を支援し、安全で働きがいのある職場を創ります。

 

 

<CSR目標>

① 中期目標(2025年度):環境・社会・人(命)に関わる課題に果敢にチャレンジし、価値創造企業を目指す。

② 2024年度目標:

・持続可能について考える(意識)

・スピード!やり切る!全員参加!(行動)

 

 また、上記目標の達成に向けて当社グループが取組むCSR重要課題(マテリアリティ)を以下のとおり特定しました。

 

<CSR重要課題>

 

重要課題

E

(環境)

カーボンニュートラルの実現

製品のバイオマス化推進

資源(水・燃料)の有効利用

人・環境にやさしい製品の拡充

S

(社会)

人権の尊重

多様な人材の育成と確保

安全で働きやすい職場づくり

サプライチェーンマネジメント

地域活性化への貢献

G

(企業統治)

ステークホルダーエンゲージメントの実践

リスクマネジメントの徹底

迅速果断な意思決定を支えるガバナンスの構築

 

 なかでも、環境項目のカーボンニュートラルの実現及び社会項目の多様な人材の育成と確保は最重要課題と捉え、以下のとおり取組みを進めています。また、その他の重要課題に対する取組みと進捗につきましても、当社Webサイトに掲載しております。

 

<カーボンニュートラルの実現に向けた取組み>

① 製造時のCO2排出量削減に向けて

 事業活動で使用する電力及びガスの再生可能エネルギー化を進め、電力については2030年までに国内事業所における再生可能エネルギー化率100%を目指します。加えて、これまでの省エネルギー活動を見直し、設備における燃料の使用状況を根本から把握しムダ・ムラをより一層排除していくことで、燃料効率の向上を図ってまいります。

 

② 事業を通した低炭素社会へのアプローチ

 低炭素社会への移行に伴い、従来主流であった石化原料からバイオマス原料へのシフトが求められているなか、当社は、創業当初より培ってきた油脂技術の知見を活かし、非石化製品群の拡大と需要開拓を進めております。これまでに、バイオマス由来の可塑剤やエステル油など、石化由来品と同等以上の性能を発揮する製品の開発に成功しており、顧客での評価が進んでおります。また、プラスチックを取り巻く課題にアプローチする結晶核剤の開発も進めており、すでに、ポリプロピレン樹脂の成形加工のサイクルタイムを短縮する結晶核剤を開発し、省エネルギー効果や成形性の改善効果などを実証しております。今後も引き続き、低炭素社会の実現に貢献する製品の拡大と提案強化に努めてまいります。

 

<人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する取組み>

 当社は、人材の持続的な成長が、企業の持続的な成長に繋がるという考えのもと、Vision2030「Be the best SPICE! ~心躍る極上のスパイスになる~」では、従業員の意欲や挑戦を引き出すこと、多様な価値観を受容する企業風土を創造することで、活力ある組織の実現を目指しています。そのための施策として、人事制度改革、教育制度の見直し、社内環境整備に取組んでおります。

 

 

① 人事制度改革

 昨今、経営環境の変化が大幅に加速し、従業員の就労意識や職業観などにも大きな変化が見られるなか、当社は新たな人材マネジメントの実現に向けて人事制度の改革に挑戦しています。新たな人事制度では、旧来の制度、事業を守り支えるだけでなく、新たな課題や事業に取り組む挑戦型の人材が評価される仕組みへと改めました。従業員ひとりひとりの課題や問題意識に寄り添い、安心して働きやすい環境を整えることで、チャレンジする従業員をしっかり後押しをするような人材マネジメントを目指します。

 

・人事制度改革の方針

 保守的人材から挑戦型人材への変革 ~Change & Challenge!~

 

・人事制度の改定

 急速に変化する社会環境の中で、変化を前向きに捉え、自ら挑戦し、新たな価値を創造できる人材をより力強く後押ししていくため、外部環境や内部環境の変化に合わせた継続的な見直しを進めています。

 従業員一人ひとりが主体的に会社・組織・個人の現状の課題を考え、能動的に解決策を実行していける人材の育成を目的として、2022年4月に新たな評価制度を導入しました。

 さらに、評価制度と紐づく職能資格等級制度を2023年4月に導入することで、年功的な要素を弱め、役割の明確化と健全な競争意識を醸成し社員一人一人の挑戦と自律的な成長を促しております。等級と役職の関係性をよりシンプルに整理し、昇給・昇格のみならず、育成や配置を含めた人材マネジメント全体の実効性を高めてまいります。

 現在は、こうした制度の定着と実効性向上を重視しながら、各組織における双方向のコミュニケーションを深化させ、挑戦が企業文化として浸透、定着していくことに取り組んでいます。今後も、時代の変化に柔軟に対応しながら、社員が自らの可能性を切り拓ける環境づくりを推進してまいります。

 

② 教育制度の見直し

 人事制度の改定に伴い、教育制度についても段階的な見直しを進めています。

 2023年4月には、従来の階層別研修及び次世代選抜型研修に加え、社員が自身のニーズに応じて自由に受講できる選択型研修を新たに導入しました。多種多様な研修機会を提供することで、自律的な学びとキャリア形成を支援しています。2024年度は、等級制度との連動を図るべく、実効性の高い育成体系の構築を目指し、等級毎に求められる能力を精査しました。

 2025年度は、求められる能力に紐づいた推奨コンテンツを展開する事で、社員一人ひとりの成長をさらに支援し、社員が自身の成長を実感できる仕組みと組織全体の持続的な競争力向上に繋がる風土づくりを推進してまいります。

 

③ 社内環境整備

 当社は、組織風土の変革の加速と実現のため、多様な経験やキャリアを有する人材の採用と登用を通じて、ダイバーシティ&インクルージョンにも取組んでいます。また、一人ひとりが心身ともに健康であるために、各職場における従業員の安全管理の強化や健康づくりの取り組みを継続して実施しています。さらに、柔軟な働き方を可能にする勤務体系の整備にも注力しており、働きやすい環境づくりを支援しています。「女性活躍推進法」(2025年)及び「次世代育成支援対策推進法」(2022年)に基づき、男女の均衡ある育児参加や成長機会を平等に提供するための行動計画を推進しています。引き続き、多様なライフスタイルに対応した制度の整備と、社員の能力を最大限に発揮できる環境づくりを目指します。

 

④ エンゲージメント

 当社は、従業員の満足度を把握するため、定期的に独自の従業員満足度調査を実施しています。2023年度の調査では、24項目に対するポジティブ回答率が60%となりました。2024年度は、全社目標として掲げるポジティブ回答率70%の達成に向け、各部署長が部員とともに現場での課題解決に取り組んだ結果、目標は未達ではあるものの65.3%となりました(前年比+5.3ポイント)。特に、適切な進捗確認や目標達成に向けた行動の再設定を問う設問については、24項目の中で最も高い13.3ポイントの向上となりました。

 調査の結果から、定量的な変化と各組織の取り組みの関係性の把握を目的に、人事総務部員と従業員との1on1ミーティングを実施しました。各部署における好事例を各部署長に横展開することにより、組織運営を支援しています。

 

 

(3)リスク管理

 当社グループではCSRとして取組むべき重要課題をCSR委員会にて策定しました。CSR重要課題は、サステナビリティ経営に向けて取組まなければならないと認識した社会課題へのアプローチであり、経営課題と捉えております。

 それぞれの課題を各部門の業務計画へ落とし込み、進捗管理を実施しております。CSR重要課題の取組み状況は、CSR委員会の内部組織であるESG事務局が確認及び支援を行っています。また、取組みの進捗状況については、各部門より業務計画の進捗と併せて経営会議に報告しております。

 サステナビリティに関するリスクと機会に関しては、各種指標やシナリオを参考に分析を進めていき、取締役会及び執行の諸機関、委員会におけるサステナビリティに関する議論の活発化を図ってまいります。

 

(4)指標及び目標

 当社グループでは、CSR重要課題の各項目に対してKPIを設定し、取組みを進めております。なかでも最重要課題と位置付けている環境項目のカーボンニュートラルの実現及び社会項目の多様な人材の育成と確保においての指標及び目標は以下のとおりです。

 

<カーボンニュートラルの実現に向けた取組みの指標及び目標>

 カーボンニュートラルの実現に向け、パリ協定で努力目標とされる高水準の1.5℃目標でのCO2削減を目指し、2030年度には2013年度比で50%のCO2排出量削減、更に2050年度にはカーボンニュートラルの達成を目標としております。当該目標に関する指標として、現時点では当社及び国内連結子会社におけるScope1及びScope2のCO2排出量を用いており、その実績は次のとおりです。なお、Scope3を含めたCO2排出量につきましては、現在、算定を進めております。

 算定期間:2024年4月~2025年3月

 算定範囲:新日本理化株式会社、日新理化株式会社、日東化成工業株式会社のScope1及びScope2

年度

2013年度実績

2024年度実績

2030年度目標

CO2排出量(t-CO2)

44,273

21,302

22,136

削減率(%)

-

約51.9%

50%

※ 2024年度からは、対象範囲に日東化成工業株式会社を含めたことに伴い、基準値である2013年度実績及び2030年度目標を変更しております。

※ 2024年度実績のCO2排出量の算定においては、再生可能エネルギー由来の非化石証書が有する環境価値を付加した電力の使用によるCO2排出量、及びJ-クレジット制度の排出削減プロジェクトに基づき発行されたクレジットの購入により相殺されるCO2排出量を除外しております。

※ CO2排出量の算定においては、2025年6月時点において環境省より公開されている温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧、ガス事業者別排出係数一覧及び電気事業者別排出係数一覧の排出係数を使用しています。

 

<人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する取組みの指標及び目標>

 当社グループでは、一人ひとりの多様な背景や経験、知識を活かし、能力を最大限に発揮できる環境を整えるとともに、活躍への意識を高め、次世代を担う人材の育成を加速させます。また、働く環境の改善やワークエンゲージメントの向上にも取組んでおり、様々な施策を通じて、多様な人材がそれぞれの強みを生かして働くことのできる組織づくりを進めております。

 人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する取組みの指標は次のとおりです。管理職に占める女性労働者の割合と男性労働者の育児休業取得率において、当事業年度は2025年度目標に到達いたしました。引き続き男女問わず活躍できる環境づくりを進めてまいります。

 なお、本取組みはグループ会社までの実行には至っておらず、以下に示す実績、目標は提出会社である当社のみのデータとなっております。

方針に関する指標

2024年度実績

2025年度目標

管理職に占める女性労働者の割合

9.9

7%以上

男性労働者の育児休業取得率

100.0

100

※ 男女賃金格差については、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に当事業年度の実績を記載しております。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)原材料の価格変動

 当社グループの主要原材料である油脂原料及び石化原料の購入価格は、国内外の市況の変動の影響を受けます。植物系油脂原料の購入価格は、気候変動による不作やバイオ燃料需要の拡大により上昇する可能性があります。また、石化原料の購入価格は、原油・ナフサの国際市況の影響を受けます。原油価格は、国際的な需給バランスに加え、中東等の産油国の情勢や先物市場での投機的な要因により変動する可能性があります。これらの原材料価格が大幅に変動した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 リスク低減のため、製品販売価格への転嫁等の対策をとっております。

 

(2)原材料の調達

 当社グループが調達する原材料の供給元において、自然災害や事故等による製品供給の停止や遅れ、品質不良が発生した場合、当社製品の安定生産が困難となり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 リスク低減のため、品質・コストを踏まえ調達先の多様化を図るなど安定的な調達に努めております。

 

(3)為替相場の変動

 為替相場の変動により輸入原材料価格が大幅に変動した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 リスク低減のため、必要な範囲で為替予約を行うなどの対策をとっております。

 

(4)物流の確保

 当社グループの製品輸送に関し、人手不足等を背景に物流費用の増加が顕著であることから、最適な物流手段の確保が困難となり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 リスク低減のため、国内外の海運及び国内陸送等の幅広い物流手段を活用しており、コスト・時間・品質面での最適化に努めております。

 

(5)自然災害、事故災害

 当社グループの工場において大規模な自然災害や事故災害が発生した場合、生産活動の停止による機会損失及び顧客に対する補償に加え、近隣地域への損害賠償や社会的信用の失墜に見舞われることにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 リスク低減のため、災害に備えた教育訓練の実施や製造設備の定期保全、損害保険への加入等の対策をとっております。

 

(6)製品の品質

 当社グループの製品に予期しない欠陥が生じる等の重大な品質問題が発生した場合、製品回収や顧客への損害賠償を行うことにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 リスク低減のため、品質マネジメントシステムに基づく品質保証体制の強化のほか、製造物賠償責任保険を付保する等の対策をとっております。

 

(7)知的財産

 当社グループの予期しない事情により第三者との間で知的財産に関する紛争が発生し、当社グループに不利な判断がなされた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 リスク低減のため、開発した技術を早期に権利化するほか、第三者が保有する知的財産権を十分に調査することにより、第三者の権利を侵害することがないよう努めております。

 

(8)人材の確保

 日本国内の労働者人口の減少や価値観の変化により、優秀な人材の採用及び維持が困難となった場合、人材不足により事業運営に支障をきたすことにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 リスク低減のため、採用方法及び雇用形態の多様化や働きやすい環境の整備のほか、デジタル技術を活用した技能伝承を進めるなど人材の確保に努めております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における世界経済は、低調な中国経済に対して、欧州及び米国経済は堅調な個人消費に支えられ、底堅く推移しました。わが国経済は、製造業における人手不足感が高まっているものの、好調な外需と国内設備投資により、緩やかな回復基調を保ちました。しかしながら、緊張が続く世界情勢に加え、米国の相互関税引き上げに起因する貿易摩擦の激化が懸念されるなど、先行きは不透明さを増しています。

 当社グループにおいては、主要原材料の一つである油脂相場の高騰や、中国による廉価品の海外輸出拡大に端を発した価格競争激化などが、汎用品の収益を圧迫する状況にあります。一方、高耐候性可塑剤や医薬品原料などの高機能製品は、末端需要の増加から販売数量を伸ばし、全社収益を牽引しました。

 このような環境のなか、当社グループは、2024年6月に修正いたしました中期経営計画(2022年3月期~2026年3月期)に基づき、モノづくり力の向上と事業ポートフォリオの組換えに注力してまいりました。当連結会計年度におきましては、生産・設備保全・品質管理体制の見直しによる生産ロス低減や調達ソースの多様化など事業基盤の強化を進めました。また、製品の統廃合を含むラインアップ見直しのほか、需要拡大を見込む環境貢献製品の開発・用途開拓など、事業構造転換に向けた取り組みを推進しました。加えて、拠点集約のため生産を停止しておりました堺工場において、すべての製品の移管が完了したことから、建物・設備の撤去及び処分を決定し、当連結会計年度において資産除去債務を計上いたしました。

 この結果、当連結会計年度における当社グループの売上高は、327億3百万円(前期比0.5%減)となり、損益面では、営業利益8億2千9百万円(前期比129.2%増)、経常利益11億9千5百万円(前期比53.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5億2千2百万円(前期比136.5%増)となりました。

 

 当連結会計年度における主要製品の概況は次のとおりであります。

 トイレタリー向け界面活性剤は、国内観光業の好調から製品需要は堅調に推移し、数量、売上高ともに前年並みとなりました。繊維油剤原料をはじめとする工業向け天然高級アルコールは、原料相場の高騰をうけた価格改定及び新規顧客の開拓により数量、売上高ともに前年を上回りました。日用品雑貨などのポリオレフィン樹脂成形物向け添加剤は、主要輸出先である欧州での需要が好調に推移し、食品・医薬品向け添加剤についても、需要が堅調であったことから数量、売上高ともに前年を上回りました。

 主に床材や壁紙、電線被覆材などの建築部材に使用される汎用可塑剤は、国内需要の低迷に加え、安価な海外品との競争激化により数量、売上高ともに前年を大きく下回りました。

 自動車産業向け製品は、需要の伸び悩みにより、数量、売上高ともに前年を下回りました。

 電子材料向け製品については、ユーザー需要が堅調に推移したことから、数量、売上高ともに前年並みとなりました。

 

 当連結会計年度末の総資産は前期末比6.5%減、金額で25億9千5百万円減少の375億1千9百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ9億1千5百万円減少し、27億8千万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、資金は2億2千4百万円減少(前期は35億7千8百万円増加)しました。これは主に、仕入債務の減少28億2千7百万円及び棚卸資産の増加5億4千7百万円と売上債権の減少20億7千2百万円によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、資金は1億7千4百万円減少(前期は6千万円減少)しました。これは主に、有形固定資産の取得による支出6億6千5百万円及び投資有価証券の売却による収入5億6千万円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、資金は5億1千3百万円減少(前期は25億9千6百万円減少)しました。これは主に、短期借入金の純減9億9千5百万円及び長期借入金の純増5億4千2百万円によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

1)生産実績

 当連結会計年度における生産実績を示すと、次のとおりであります。

生産量(トン)

前年同期比(%)

57,284

77.5

 

2)受注状況

 当社グループ(当社及び連結子会社)は、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。

 

3)販売実績

 当連結会計年度における販売実績を示すと、次のとおりであります。

販売高(百万円)

前年同期比(%)

32,703

99.5

(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自2023年4月1日

至2024年3月31日)

当連結会計年度

(自2024年4月1日

至2025年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

昭和化成工業(株)

3,088

9.4

3,422

10.5

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度の売上高は、前期比0.5%減、金額で1億6千万円減少の327億3百万円となりました。これは主に、高耐候性可塑剤や医療用原料などの高機能製品が末端需要の増加から販売数量を伸ばしたものの、汎用品は安価な海外品との価格競争激化などにより販売数量が減少したためであります。

 営業利益は前期比129.2%増、金額で4億6千7百万円増加の8億2千9百万円となりました。これは主に、生産・設備保全・品質管理体制の見直しによる生産ロス低減によるものであります。

 受取配当金、持分法による投資利益等の営業外損益を加えた経常利益は前期比53.2%増、金額で4億1千4百万円増加の11億9千5百万円となり、原状回復費用や法人税等を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比136.5%増、金額で3億1百万円増加の5億2千2百万円となりました。

 当連結会計年度末の総資産は前期末比6.5%減、金額で25億9千5百万円減少の375億1千9百万円となりました。

 流動資産につきましては、現金及び預金、受取手形及び売掛金が減少した影響などにより前期末比11.4%減、金額で22億6千万円減少の175億8千4百万円となりました。固定資産につきましては、投資有価証券の売却などにより前期末比1.7%減、金額で3億3千4百万円減少の199億3千4百万円となりました。

 流動負債につきましては、支払手形及び買掛金が減少したことなどにより前期末比29.3%減、金額で37億6千万円減少の90億7千6百万円となりました。固定負債につきましては、資産除去債務が増加したことなどにより前期末比7.3%増、金額で6億4千5百万円増加の94億4千6百万円となりました。

 純資産につきましては、利益剰余金が増加したことなどにより前期末比2.8%増、金額で5億1千9百万円増加の189億9千5百万円となりました。

 この結果、当連結会計年度末の自己資本比率は47.4%となりました。

 

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、運転資金及び設備資金を内部資金又は借入により資金調達することとしております。このうち、借入金による資金調達につきましては、運転資金は短期借入金で、設備資金などの長期資金は長期借入金で調達しております。

 なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は72億9千5百万円となっております。

 また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は27億8千万円となっております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されています。

 連結財務諸表の作成にあたっては、経営者の判断の下、一定の前提条件に基づく見積りが必要となる場合がありますが、この前提条件の置き方などにより、連結貸借対照表上の資産及び負債、連結損益計算書上の収益及び費用などに重要な影響を及ぼすことがあります。

 なお、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【重要な契約等】

 当社は、以下のとおり財務上の特約が付されたシンジケートローン契約を締結しております。

契約内容

① 借入金額:3,000百万円

② 契約締結日:2021年9月22日

③ 借入期間:2021年9月30日から2031年9月30日

④ アレンジャー兼エージェント:株式会社りそな銀行

⑤ ジョイント・アレンジャー:株式会社日本政策投資銀行

⑥ コ・アレンジャー:株式会社三菱UFJ銀行

⑦ 貸付人:株式会社りそな銀行、株式会社日本政策投資銀行、株式会社三菱UFJ銀行

⑧ 担保の内容:融資対象物件に各貸付人が同順位で抵当権設定

⑨ 金銭消費貸借契約に係る債務の期末残高:1,950百万円

⑩ 財務上の特約:各年度の決算期の末日における単体の貸借対照表における純資産の部の金額を前年同期比75%

以上に維持する。

 

 

6【研究開発活動】

 私たち新日本理化グループは、もの創りを通して広く社会の発展に貢献することを経営理念として、次の100年に向けた新規事業の創出を目指します。Vision 2030 Be the best SPICEのもと、Only Oneの技術・製品の開発、2050年カーボンニュートラルの実現に向けたSPICE製品の開発を進めています。

 当連結会計年度における研究開発費の総額は946百万円となっております。なお、当社グループは単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 第152期に工場試作が完了した有機EL用材料向けの特殊酸二無水物は順調に販売が継続しており、研究開発部門では、今後の市場拡大に向けた準備として生産能力の向上検討と新規設備設計を行っています。生産能力の向上にあたっては、品質の担保が最優先となるため、京都R&Dセンターに、製品中の微量金属を測定するためのICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析法)装置を導入し稼働を開始しました。ppbレベルでの金属不純物の分析が可能となったことで品質保証体制の強化とともに、電子材料、半導体材料向けの新製品の開発にも繋げていく予定です。

 また、有機EL向けの次世代製品の開発のために大学との共同開発を開始し、京都R&Dセンターの一室を半導体材料評価が可能なようにイエロールームに改造しました。第154期から本格稼働させて、「情報通信」向け次世代製品の開発を促進していきます。また、これらの特殊酸二無水物は、「モビリティ」分野の材料としても有用であり、有機EL材料とともに製品開発を進めています。

 さらに、京都R&Dセンターの新しい設備としてパイロットエリアに50Lの試作設備が完成しました。300℃の高温反応から晶析精製まで可能な多目的反応缶であり、当社が得意とするエステル化反応を中心に利用が始まっています。これまで数十kg程度の少量試作は京都工場の設備を利用しており、京都工場と生産数量、スケジュール、人員などの調整が必要でやや機動性に課題がありましたが、この設備の完成により需要家の要望に合わせたサンプル製造ができるようになりました。

 完成後には、光学材料向けの材料、潤滑油、特殊バイオマス可塑剤のスケールアップサンプルの製造を行い、需要家へスケールアップテスト用として供試しております。これらについては評価結果が期待されています。

 また、ラボと並行して試作ができる環境となり、需要家の要望に対してよりタイムリーにサンプル調整、発送ができるようになりました。また、工場設備での生産前に必要なデータを得られることで、今後、工場での量産化時にスムーズな立ち上げに寄与するものと期待しています。

 「環境ソリューション」分野では、ポリオレフィン系の結晶化促進剤として開発中の「RiKACRYSTA®」は、これまでポリプロピレンでの開発だけでしたが、生分解性樹脂のポリ乳酸樹脂(PLA)にも高い結晶化効果がでることが見いだされました。PLAはバイオマスプラスチックとして古くから知られている樹脂ですが、成形性が悪いため市場開発が進んでいません。成形性が改善することで、市場開発が大きく前進するものと期待しています。なお、このRiKACRYSTA®のPLA用途開発は、第75回大阪工研協会の工業技術賞の受賞が決定しており、第73回のポリプロピレン用核剤に引続きの受賞です。結晶核剤として、さまざまな樹脂・分野で高い能力を発揮しています。なお、第74回工業技術賞では、バイオマス可塑剤であるグリーンサイザーが受賞しており、今回で3年連続の受賞となりました。

 グリーンサイザーに続く新規の可塑剤としては、非PVC樹脂であるナイロン用可塑剤の開発が順調に推移しており、数回の試作を実施し定常的な販売に至っています。

 「ライフサイエンス」分野では、バイオマスエステルと植物由来アルカンの開発品「リカナチュラ」は、製造特許と用途特許の出願が完了し、本格的にユーザー評価を開始しました。エステルは各種化粧品原料との相溶性が高く特に紫外線吸収剤の溶解性に優れており、また、肌に潤い感を与えるなど、ヘアケア、スキンケア等の用途での機能を訴求しています。またアルカンは、軽い感触と伸びに優れており、欧州で規制が進んでいる環状シリコーンD5の代替材料としての提案を行っています。

 新製品開発の他、生産本部との協力のもと、既存製品の工程改善、CO2排出量の削減にも取組でいます。当社の基幹技術・製品である可塑剤、高圧水素化還元、酸無水物の製造プロセスの合理化及び最適化検討が完了しており、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて進んでいます。