第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、消費者・顧客の立場にたって、心をこめた“よきモノづくり”を行い、世界の人々の喜びと満足のある、豊かな生活文化を実現するとともに、社会のサステナビリティ(持続可能性)に貢献することを使命としています。

私たちは、企業理念である「花王ウェイ」をすべての活動の根幹に据え、グループ全員でこれを共有し、考え方や行動の拠り所として日々、実践していきます。そして、当社グループ全員の熱意と力を合わせ、資産の最大活用をさらに進めて、清潔で美しくすこやかな暮らしに役立つ商品と、産業界の発展に寄与する工業用製品の分野において、消費者・顧客とともに感動を分かち合う価値ある商品とブランドを、これからも提供し続けていきます。

社会情勢や自然環境は大きく変化しており、当社グループが今後も持続的に成長をしていくためには、自ら変わり、変化を先導する企業にならなければなりません。本質研究をさらに深化させ、社会にインパクトを与えるようなレベルのイノベーションを積極的に提案していきます。

さらに財務面だけでなく、非財務面での戦略や取り組みも経営上の最重要課題と位置づけ、「Kirei Action」と名付けたグループのグローバルなESG活動を本格化させていきます。世界中の人々が目指すべき未来の形成のために、「持続可能な開発目標 (SDGs:Sustainable Development Goals)」で掲げられた社会課題と真摯に向き合い、環境に関する法規制の強化や消費者のエシカル(倫理的)な志向等に対応し、花王らしいアプローチで取り組んでいきます。そして利益ある成長と高いレベルでのステークホルダーへの還元を実現しながら、2030年までにグローバルで存在感のある企業グループになっていきます。

ESGの中でもガバナンスは、経営の想いや夢を「攻め」と「守り」の両面からサポートし、企業価値を継続的に向上させていくための最重要の経営基盤と考えています。そのために、迅速で効率よく、健全かつ公正で透明性の高い経営が実現できるよう、絶えざる革新を図るとともに、経営の執行においては内部統制をさらに充実させていきます。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは、投下資本のコストを考慮した真の利益を表すEVAを経営の主指標としています。その本質は、株主等の資金提供者の視点を持って、資本を効率的に活用し利益を生み出すことにあります。EVAを継続的に増加させていくことが企業価値の増大につながり、株主だけでなく全てのステークホルダーの長期的な利益とも合致するものと考えています。そして事業規模の拡大を図りながら、EVAを増加させることを事業活動の目標としており、個別事業の評価、設備や買収等の投資評価、年度ごとの業績管理や報酬制度等に活用しています。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

1.長期経営戦略

当社グループは、上記の経営の基本方針に基づき、2030年までに達成したい姿として、持続的な利益ある成長と、事業活動を通じた社会的課題の解決や社会貢献活動による社会のサステナビリティへの貢献との両立により、『グローバルで存在感のある会社「Kao」』を目指します。この実現のために、強みである既存事業の一層の磐石化及び未来を創造する研究開発力を活かしたグローバル視点での新しい市場の創造を推進するとともに、より高いレベルの安全・安心を目指した基本的な活動を実践します。

世界中で起きている様々な変化は、スピード、大きさ、変化の方向等、あらゆる面で予見することが難しくなっています。このような状況に対処していくために、「自ら変わり、そして変化を先導する企業へ」をスローガンに、当社グループの総合力を発揮し、目標の実現を目指していきます。

2030年までに達成したい姿として、以下を掲げています。

 

グローバルで存在感のある会社「Kao」

■特長ある企業イメージ

 「生活者の気持ちにそっと寄り添える企業」

■高収益グローバル消費財企業

 ・売上高2.5兆円(海外1兆円)を超える

 ・営業利益率17%を超える

 ・ROE20%を超える

■ステークホルダーへの高レベル還元

2.中期経営計画

当社グループは、2020年までの中期経営計画を「2030年までに達成したい姿」を実現するための重要な通過点と位置付け、企業価値の増大に向けて、2017年から2020年までの4ヵ年を対象とした花王グループ中期経営計画「K20」を策定し、2016年12月12日に公表しました。そして、企業理念である「花王ウェイ」に掲げる「正道を歩む」を貫くことを全員で共有・実践しながら、本質研究を深化させ、ESG活動を一層強化していきます。2018年7月にはESG部門を新設し、グローバルにESG活動を推進していく体制が整いました。また、AIやIoT、ロボット等の先端技術を駆使し、より次元の高い資産の最大活用を通じて、高いレベルの利益ある成長と新しい資産の創造を行い、以下の目標を達成していきます。

 

「K20」の目標 (3つのこだわり)

■特長ある企業イメージの醸成へのこだわり

■「利益ある成長」へのこだわり

 ・過去最高益更新の継続

 ・実質売上高CAGR+5%、営業利益率 15%を目指す

 ・売上高1,000億円ブランドを3つ

  (ベビー用紙おむつ「メリーズ」、衣料用洗剤「アタック」、スキンケア製品「ビオレ」)

※ 実質: 為替の変動・販売制度変更等の影響を除く

 CAGR: 年平均成長率

■ステークホルダー還元へのこだわり

 ・株主: 連続増配継続 (配当性向 40%目標)

 ・社員: 継続的な処遇アップ、健康サポート

 ・顧客: Win-Winの最大化

 ・社会: 社会的課題への先進的取り組み

 

さらに「K20」では「2030年までに達成したい姿」を実現するために、その礎をしっかりと築いておかなければなりません。それは、積極的な投資を活かしながら稼ぐ力を生み出し、利益ある成長を達成していくという「脱デフレ型成長モデル」を進化させるということです。そのためには、これまでのやり方、あり方、考え方を抜本的に見直し、より高いレベルで当社グループの資産の最大化、そしてその最大活用をしていかなければなりません。当社グループは「K20」の「自ら変わり、そして変化を先導する企業へ」というスローガンを、「正道を歩む」を貫くことにこだわりながら実践していきます。

 

(4)会社の対処すべき課題

市場競争の激化や市場構造の変化、原材料市況や為替の変動等事業環境は不透明な状況が続いています。消費者の環境や健康等に関する意識の変化やそれに伴う購買意識の変化、さらには高齢化社会の進行や衛生等の社会的課題も増大しています。また、事業がグローバルに拡大し、様々な分野で構造的変化が進む中、事業を取り巻くリスクの変化に対応していかなければなりません。このような中、当社グループは、変化の半歩先を行く「よきモノづくり」を通して、利益ある成長と社会のサステナビリティへの貢献の両立を進めていきます。そのために以下のような課題に対し適切に対処していきます。

事業を取り巻くリスクの変化に対応するため、経営への影響が特に大きく対応の強化が必要なリスクをコーポレートリスクと定め、管理体制を一層強化することで、グループ全体の企業価値を損なわないように取り組んでいきます。

技術革新に伴う価値観の多様化、それに伴う購買行動や流通構造の変化等が急速に進む現状において、これまで効率良く進めることが出来ていたマスを対象にしたビジネスモデルを、研究開発、生産、物流、販売、マーケティング等あらゆる方面から見直す必要があります。これらの課題を解決するため本質研究の強化やAIやIoT、ロボット等の先端技術の活用を積極的に進めていきます。

海洋プラスチック等のごみ問題、気候変動、水資源の枯渇、持続可能で責任ある調達等の環境保全・資源保護や安全、人権等の社会的課題に適切に対応し、持続的に企業価値を向上させていかなければなりません。そのため、これまで実施してきたESGに関する取り組みを、ESG部門を中心にグローバルに進展、加速させ、それをチェック・管理していくような経営管理体制を強化していきます。なお、2018年10月に「私たちのプラスチック包装容器宣言」を公表しました

2【事業等のリスク】

企業が事業を遂行している限り、様々なリスクが伴います。当社グループにおいては、リスクを把握、評価し、必要な対応策を策定、実行する等してリスクを適切に管理しております。また、リスクが顕在化した際には、対策組織を立ち上げ、迅速な対応を行うことで被害、損害をできるかぎり小さくするよう努めております。しかし、以下のような主要リスクが顕在化した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、以下の主要リスクは当社グループにおける全てのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在し、それらは投資家の判断に影響を与える可能性があります。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)コンシューマープロダクツ事業

①消費者ニーズの変化への対応
 当社グループのコンシューマープロダクツ事業は、各国市場の景気変動や消費者の価値観の変化により影響を受けます。当事業は消費者ニーズの変化を捉え、当社グループのモノづくりの総合力を活用し、環境・健康・高齢化・衛生等を切り口とした商品の高付加価値化やサービスの提供に取り組み、ブランド価値を維持向上させております。しかしながら、この事業活動には様々な要因による不確実性が伴うため、消費者ニーズの変化に対応した商品やサービスを提供できず、ブランド価値を落とした場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②流通の変化への対応
 当社グループのコンシューマープロダクツ事業は、市場での流通業の合併や統合による新たな企業グループ化の進展、新たな流通チャネルの出現、拡大等の流通構造の変化により影響を受けます。当事業は、このような流通構造の変化に対した販売活動を推進し、新たな提案をしております。しかしながら、この事業活動には様々な要因による不確実性が伴うため、流通構造の変化に対応した販売活動や新たな提案ができない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)ケミカル事業
 当社グループのケミカル事業は、顧客の需要動向や原材料価格の変動等により影響を受けます。当事業はコスト削減、製品への価格対応を図り、さらに、顧客ニーズに合った製品の高付加価値化、環境に配慮した製品の研究開発を進め、提供しております。しかしながら、この事業活動には様々な要因による不確実性が伴うため、顧客のニーズに合った製品の提供や原材料価格の変動等への対応ができない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)事業買収、業務提携、合弁事業等
 当社グループは事業買収、業務提携、合弁事業等を実施する可能性があります。これらの実施に際しては、経済的価値、相手企業の調査を十分に行い決定します。しかしながら、事業活動には予想できない様々な不確実性が伴うため、当初の期待していた効果が出せない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)海外事業展開
 当社グループは、成長戦略のひとつとしてアジア、欧米市場等での事業展開を進めており、特に経済成長率が高く、市場規模が大きくなることが予想される国々での事業の強化を重視しております。しかしながら、事業を進める上で、経済成長の鈍化、政治的・社会的に不安定な情勢が生じる、競合との競争の激化、コスト管理が十分できない、小売店・代理店等の取引先との関係に問題が発生する等、様々な要因による不確実性が伴い、事業の強化ができない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)原材料の調達
 当社グループの製品で使用している天然油脂や石油関連の原材料の市場価格は、地政学的リスクや需給バランス、異常気象、為替の変動等の影響を受けます。当社グループは原材料価格の上昇に対して、原価低減や売価への転嫁の施策を図り、その影響を軽減しております。また、天然油脂原料に関しては、非可食原料の高度有効利用の研究による代替原料の開発にも取り組んでおります。しかしながら、予想を超えて市場価格に急激な変動が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)品質管理
 当社グループ商品の品質管理については、消費者・顧客の視点に立ち、関連法規の遵守並びに自主的に設定した厳しい基準に従って設計、製造を行っております。発売前の開発段階では、徹底的に試験、調査研究を行い、安全性を確認しております。また発売後には、消費者相談窓口を通じて、商品への意見、要望等をくみ上げ、さらなる品質向上に努めております。しかしながら、予想を超える重大な品質トラブル又は新たな科学的知見により商品の安全と安心に対する懸念等が発生した場合には、当該ブランドの問題だけではなく、他のブランドや当社グループ全体の信用の低下にもつながり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)大規模地震や気候変動等に伴う自然災害及び事故等への対応
 当社グループは、地震をはじめとする自然災害に対して、生産工場及び主要な事業拠点を対象に災害対策、事業継続計画(BCP)の策定を行っており、今後も強化と充実を図っていきます。しかしながら、大規模地震や気候変動に伴う自然災害等により、原材料の確保、生産の継続等に問題が生じて商品の市場への供給に支障をきたした場合、また、震災等に伴う経済環境の悪化によって需要動向に大きな変化が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
 また、生産工場の爆発・火災事故、情報・制御システムの障害、原材料購入先のトラブル、電力や水等の社会インフラの機能不全、有害物質による環境汚染、感染症の蔓延、テロ、政変、暴動等が発生し、商品の市場への供給に支障をきたした場合には、当社グループへの信用、財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)為替の変動
 外国通貨建ての取引については為替相場の変動による影響を受けますが、外貨預金口座を通じての決済、為替予約取引や通貨スワップ取引等により為替変動リスクをヘッジすることにしており、経営成績に与える影響を軽減しております。なお、投機的なデリバティブ取引は行っておりません。しかしながら、在外連結子会社の財務諸表の各項目は円換算するため、換算時の為替レートが予想を超えて大幅に変動した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績が影響を受けます。

 

(9)繰延税金資産や減損処理の影響
 当社グループは、事業用の様々な有形固定資産・無形資産や企業買収の際に生じたのれん、繰延税金資産等を計上しております。これらの資産については、今後の業績計画との乖離や時価の下落等によって、期待されるキャッシュ・フローが生み出せない場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)人財の確保
 当社グループは、グローバルでの事業目標達成のために多様で優秀な人財の確保に努めております。消費者の方々に支持される“よきモノづくり”を目指すために、研究開発、生産、マーケティング、販売等に関する高度な専門性を持った人財が不可欠であります。しかしながら、雇用情勢の変動等により、必要な人財を確保できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)法規制等の遵守と対応
 当社グループは、事業活動を行う上で、商品の品質、安全、環境関連、化学物質関連、また会計基準や税法、労務関連、取引関連等の様々な法規制の適用を受けております。また、今後は気候変動の緩和のための各国の政策や法規制強化への対応が必要となります。当社グループは、コンプライアンス体制等を構築し、遵守や対応に努めておりますが、当社グループ及び委託先等が重大な法令違反を起こした場合は、当社グループへの信用、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、現行の法規制の変更や新たな法規制等が追加された場合には、当社グループの事業活動が制限され、あるいはその対応のために投資が必要になる等、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)情報管理
 当社グループは、研究開発、生産、マーケティング、販売等に関する機密情報や、商品開発、販売促進等に用いる多くのお客様の個人情報を保有しております。当社グループでは、情報取扱いガイドラインによる情報管理を徹底し、情報システムのハード面・ソフト面を含めた適切なセキュリティ対策を実施しております。しかしながら、予想を超えるサイバー攻撃、不正アクセス、コンピュータウィルスへの感染等により、保有する機密情報・個人情報が漏洩した場合には、当社グループへの信用、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)訴訟の提起
 当社グループは、グローバルで多岐にわたる事業展開をしており、様々な訴訟等を受ける可能性があります。訴訟が提起された場合には結果によっては、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等)の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。

 

(1)重要な会計方針及び見積り

当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号。以下、「連結財務諸表規則」)第93条の規定により、国際会計基準(以下、「IFRS」)に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、採用している重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表に関する注記事項 3.重要な会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。

 

(2)経営成績の分析

注:以下、( )付きの数字はマイナス表示であり、「実質」とは為替変動の影響を除く増減率を表示しています。

 

売上高

営業利益

営業利益率

税引前利益

当期利益

親会社の

所有者に帰属する当期利益

基本的

1株当たり

当期利益

 

(億円)

(億円)

(%)

(億円)

(億円)

(億円)

(円)

2018年12月期

15,080

2,077

13.8

2,073

1,553

1,537

314.25

2017年12月期

14,894

2,048

13.7

2,043

1,486

1,470

298.30

増減率

1.2%

実質1.3%

1.4%

-

1.4%

4.5%

4.5%

5.3%

 

世界景気は、貿易問題の動向、中国を始めアジア新興国等の経済の先行き、また欧米での政策に関する不確実性の影響等により不透明な状況にあります。

当社グループの主要市場である日本のトイレタリー(化粧品を除くコンシューマープロダクツ)及び化粧品市場は、小売店の販売実績や消費者購入調査データによると、2018年1月から12月において、金額では堅調に推移しました。いずれのカテゴリーも、Eコマースチャネルの構成がさらに高まり、トイレタリー商品の平均単価は、前期に対して1ポイント上昇しました。

このような中、当期は、2017年から2020年までの4ヵ年にわたる花王グループ中期経営計画「K20」の2年目を終了しました。AI、IoT等の技術革新とともに流通構造や購買行動等がグローバルで、スピーディーに変化し、消費者の価値観も多様化しています。当社グループは、将来に向けて積極的に投資を行い、これらの変化に対応した新製品・改良品の発売やマーケティング、販売活動の強化等に取り組みました。その結果、連結業績は、9期連続の営業利益及び当期利益の増益、6期連続の営業最高益を達成することができました。親会社の所有者に帰属する当期利益を除き、連結業績予想に到達しませんでしたが、今後も「K20」達成に向けて全社を挙げて取り組んでいきます。

売上高は、前期に対して1.2%増の1兆5,080億円(実質1.3%増)となりました。コンシューマープロダクツ事業では、日本において、新製品・改良品の発売及び販売促進活動のさらなる強化等に取り組みましたが、売り上げはわずかに減少しました。海外では、売り上げは前期を上回りました。ケミカル事業では、天然油脂価格の下落に伴う販売価格改定等が影響しましたが、高付加価値化を進め、前期を上回りました。

利益面では、減価償却費等が増加しましたが、マーケティング費用の効率化やアジアのコンシューマープロダクツ事業の増収効果等により、営業利益は2,077億円(対前期29億円増)、営業利益率は13.8%となり、税引前利益は2,073億円(対前期30億円増)となりました。当期利益は、1,553億円(対前期67億円増)となりました。

基本的1株当たり当期利益は314.25円となり、前期の298.30円より15.95円増加(前期比5.3%増)しました。

当社グループが経営指標としているEVA(経済的付加価値)は、NOPAT(税引後営業利益)が増加し、前期を31億円上回り935億円となりました。

なお、2018年4月27日開催の取締役会において、資本効率の向上と株主への一層の利益還元のため、自己株式の取得を決議し、総額500億円の自己株式を取得しました。また、9月14日に自己株式の消却630万株を実施しました。

 

当期の海外連結子会社等の財務諸表項目(収益及び費用)の主な為替の換算レートは、次のとおりです。

 

 

第1四半期

(1-3月)

第2四半期

(4-6月)

第3四半期

(7-9月)

第4四半期

(10-12月)

米ドル

108.44円[113.71円]

109.08円[111.13円]

111.44円[110.97円]

112.82円[112.92円]

ユーロ

133.23円[121.13円]

130.09円[122.28円]

129.62円[130.35円]

128.76円[132.95円]

中国元

17.04円[ 16.50円]

17.11円[ 16.19円]

16.39円[ 16.63円]

16.31円[ 17.07円]

注:[ ]内は前期の換算レート

〔セグメント別の概況〕

当期より以下の変更を行っています。

1.ビューティケア事業を化粧品事業とスキンケア・ヘアケア事業に区分し、従来4区分としていた報告セグメントを5区分に変更しています。

2.従来、スキンケア・ヘアケア製品に分類していた乾燥性敏感肌ケア「キュレル」を化粧品事業に、ヒューマンヘルスケア事業に分類していたメンズプロダクツ「サクセス」をスキンケア・ヘアケア事業に組み入れたことにより、前期の売上高及び営業利益を組み替えて表示しています。

3.日本のコンシューマープロダクツ事業の販売組織を再編したため、前期の営業利益を組み替えて表示しています。

 

セグメントの業績

 

売上高

営業利益

通期

増減率

通期

増 減

(億円)

2017年

12月期

(億円)

2018年

12月期

(億円)

(%)

実質

(%)

2017年

12月期

2018年

12月期

(億円)

利益率

(%)

(億円)

利益率

(%)

 

化粧品事業

2,662

2,796

5.0

5.0

130

4.9

277

9.9

147

 

スキンケア・ヘアケア事業

3,329

3,414

2.6

2.7

493

14.8

488

14.3

(5)

 

ヒューマンヘルスケア事業

2,812

2,677

(4.8)

(4.4)

345

12.3

279

10.4

(65)

 

ファブリック&ホームケア事業

3,357

3,441

2.5

2.6

762

22.7

712

20.7

(50)

コンシューマープロダクツ事業

12,160

12,329

1.4

1.6

1,730

14.2

1,757

14.3

27

ケミカル事業

3,103

3,128

0.8

0.5

303

9.8

306

9.8

3

小   計

15,263

15,457

1.3

1.3

2,033

-

2,063

-

30

セグメント間消去又は調整

(369)

(377)

-

-

15

-

14

-

(1)

合   計

14,894

15,080

1.2

1.3

2,048

13.7

2,077

13.8

29

 

販売実績

(億円、増減率%)

通期

日 本

アジア

米 州

欧 州

合 計

 

化粧品事業

2017年

2,150

254

63

195

2,662

2018年

2,177

347

64

208

2,796

増減率

1.3

36.7

1.9

6.6

5.0

実質

1.3

36.6

3.5

5.5

5.0

スキンケア・ヘアケア事業

2017年

1,919

279

689

442

3,329

2018年

1,958

285

728

443

3,414

増減率

2.1

2.0

5.7

0.2

2.6

実質

2.1

3.4

7.8

(2.6)

2.7

ヒューマンヘルスケア事業

2017年

1,845

967

0

-

2,812

2018年

1,716

960

1

-

2,677

増減率

(7.0)

(0.8)

109.9

-

(4.8)

実質

(7.0)

0.5

118.9

-

(4.4)

ファブリック&ホームケア事業

2017年

2,948

388

21

-

3,357

2018年

2,987

396

57

1

3,441

増減率

1.3

2.0

174.4

-

2.5

実質

1.3

2.7

179.6

-

2.6

コンシューマープロダクツ事業

2017年

8,862

1,888

773

638

12,160

2018年

8,839

1,987

850

652

12,329

増減率

(0.3)

5.3

10.0

2.3

1.4

実質

(0.3)

6.3

12.1

0.1

1.6

ケミカル事業

2017年

1,239

696

526

642

3,103

2018年

1,266

675

518

669

3,128

増減率

2.2

(3.0)

(1.5)

4.3

0.8

実質

2.2

(3.3)

0.7

1.1

0.5

セグメント間売上高の消去

2017年

(318)

(34)

(1)

(16)

(369)

2018年

(329)

(31)

(1)

(16)

(377)

売上高

2017年

9,782

2,550

1,298

1,264

14,894

2018年

9,776

2,631

1,368

1,305

15,080

増減率

(0.1)

3.2

5.4

3.3

1.2

実質

(0.1)

3.8

7.5

0.6

1.3

注:コンシューマープロダクツ事業は、外部顧客への売上高を記載しており、ケミカル事業では、コンシューマープロダクツ事業に対する売上高を含めています。地域別の売上高は、販売元の所在地に基づき分類しています。

 

売上高に占める海外に所在する顧客への売上高の割合は、前期の37.0%から37.7%となりました。

コンシューマープロダクツ事業

売上高は、前期に対して1.4%増の1兆2,329億円(実質1.6%増)となりました

消費者の価値観の多様化に対応した新製品・改良品の発売や購買行動の変化に合わせたEコマースの強化等、より効果的なマーケティング・販売活動に取り組みました。

日本の売上高は、前期に対してわずかに減少し、0.3%減の8,839億円となりました。

アジアでは、順調に伸長し、売上高は5.3%増の1,987億円(実質6.3%増)となりました。

米州の売上高は、10.0%増の850億円(実質12.1%増)となり、欧州の売上高は、2.3%増の652億円(実質0.1%増)となりました。

営業利益は、1,757億円(対前期27億円増)となりました。

 

当社は、〔化粧品事業〕、〔スキンケア・ヘアケア事業〕、〔ヒューマンヘルスケア事業〕、〔ファブリック&ホームケア事業〕を総称して、コンシューマープロダクツ事業としています。

 

〔化粧品事業〕

売上高は、前期に対し5.0%増の2,796億円(実質5.0%増)となりました

2018年5月に新たな成長戦略を発表し、ブランドポートフォリオの最適化やマーケティングの強化等に取り組み、一定の成果を上げることが出来ました。重点戦略ブランドを決め、選択と集中を進めるとともに、消費者の購買行動の変化に対応して、デジタルマーケティングの強化を図りました

デパートチャネルで展開しているカウンセリング化粧品の「SUQQU」や「RMK」、セルフ化粧品では、低刺激で和漢植物エキスを配合した「フリープラス」、乾燥性敏感肌ケア「キュレル」の売り上げは、好調に推移しました。また、2018年9月に改良した土台美容液「ソフィーナiP」は、多くの消費者に受け入れられ、順調に売り上げを伸ばしました。好調なアジアでは、中国を中心に売り上げは大きく伸長しました。今後も着実に構造改革を進めながら、新成長戦略を実行し、化粧品事業をさらに発展させていきます。

営業利益は、好調なブランドやアジア事業の増収効果等により、277億円(対前期147億円増)と大きく改善しました

 

〔スキンケア・ヘアケア事業〕

売上高は、前期に対し2.6%増の3,414億円(実質2.7%増)となりました

スキンケア製品では、「ビオレ」が日本、アジアで順調に売り上げを伸ばしましたが、米州では、競合品の激しい攻勢を受けました。ハンド&ボディローションの「ジャーゲンズ」は米州で順調に推移しました

ヘアケア製品では、日本で、革新的な次世代型の白髪ケア「リライズ」ブランドを立ち上げ、好調に推移しましたが、シャンプー・リンスは、拡大するプレミアム市場への対応が遅れたことや、マス市場の縮小が影響し、売り上げは前期を下回りました。欧州ではヘアケアブランド「ジョン・フリーダ」が厳しい市場競争の影響を受けました

また、2018年1月にスーパープレミアム価格帯のヘアサロン向けブランド「Oribe(オリベ)」を所有するOribe Hair Care, LLC(米国)が連結子会社になり好調に推移しました。

営業利益は、日本やアジアのスキンケア製品の増収効果がありましたが、欧米の構造改革費用を計上したこと等により、488億円(対前期5億円減)となりました

 

〔ヒューマンヘルスケア事業〕

売上高は、前期に対して4.8%減の2,677億円(実質4.4%減)となりました

ベビー用紙おむつ「メリーズ」は、日本では製品の改良を行い、サンプリング等の販売促進活動を強化して、消費者からの支持は拡大しましたが、2019年1月から中国で施行の新電子商取引法の影響等で、中国での転売を目的とした需要が大きく減少し、売り上げは前期を下回りました。また中国では、価格競争の激化や現地メーカーの攻勢等により、売り上げは前期に比べて減少しました。一方、インドネシアでは、中間所得層向けの現地生産品が好調に推移し、また、ロシアやその周辺国でも、消費者に広く受け入れられ、シェアを伸ばしました

生理用品「ロリエ」は、日本、中国等で高付加価値品が好調に推移し、大人用紙おむつは、日本で下着らしさにこだわった超薄型紙パンツの「リリーフ まるで下着」が、順調に売り上げを伸ばしました

パーソナルヘルス製品の売り上げは、順調に推移しました。オーラルケアや入浴剤では、高機能品が順調に推移しました。蒸気の温熱シート「めぐりズム」は、改良品の発売やデジタルマーケティングを強化したこと等でロイヤルユーザーが拡大し、売り上げが伸長しました

フード&ビバレッジ製品では、事業構造改革を進め、収益構造が改善しました。

営業利益は、ベビー用紙おむつの売り上げ減少や原材料価格の上昇、減価償却費の増加等により、279億円(対前期65億円減)となりました

 

 

〔ファブリック&ホームケア事業〕

売上高は、前年同期に対して2.5%増の3,441億円(実質2.6%増)となりました。

ファブリックケア製品は、日本で厳しい競争環境の中、売り上げは、堅調に推移しました。衣料用洗剤「アタック」は、「洗たく水を抗菌水に変える」という価値伝達の強化を図り、柔軟仕上げ剤では、高付加価値商品の市場拡大が続く中、「フレア フレグランス」を改良しシェアを伸ばしました

ホームケア製品は、売り上げは、堅調に推移しました。日本では、泡スプレータイプの食器用洗剤「キュキュット」を改良して新たな使用者を開拓し、順調に推移しました

アジアでは、タイ等で高付加価値品の投入と店頭展開の強化を進め、売り上げは堅調に推移しました。また、海外での業務品事業を強化する目的で、2018年8月にWashing Systems, LLC(米国)の買収を完了し、連結子会社になりました。

営業利益は、厳しい競争環境の中、石化原料等の価格上昇の影響等により、712億円(対前期50億円減)となりました

 

ケミカル事業

売上高は、前期に対して0.8%増の3,128億円(実質0.5%増)となりました

油脂製品では、海外での需要は堅調でしたが、天然油脂価格の下落に伴う販売価格調整の影響により、売り上げは減少しました。機能材料製品では、インフラ関連分野での拡販の貢献もあり、売り上げを伸ばしました。スペシャルティケミカルズ製品では、トナー・トナーバインダーは顧客の需要減の影響を受けたものの、ハードディスク関連製品は順調に推移しました

営業利益は、海外での油脂製品の伸長と高付加価値化により、最高益を更新し306億円(対前期3億円増)となりました

 

(3)財政状態の分析

(連結財政状態)

 

 

 

 

前連結会計年度

2017年12月末

当連結会計年度

2018年12月末

増 減

資産合計(億円)

14,274

14,610

336

負債合計(億円)

6,080

6,255

175

資本合計(億円)

8,194

8,355

161

親会社所有者帰属持分比率

56.5%

56.3%

-

1株当たり親会社所有者帰属持分(円)

1,636.41

1,689.82

53.41

社債及び借入金(億円)

1,206

1,208

2

 

資産合計は、前期末に比べ336億円増加し、1兆4,610億円となりました。主な増加は、棚卸資産137億円、有形固定資産231億円、のれん416億円、無形資産297億円、主な減少は、現金及び現金同等物771億円です

負債合計は、前期末に比べ175億円増加し、6,255億円となりました。主な増加は、退職給付に係る負債199億円です

資本合計は、前期末に比べ161億円増加し、8,355億円となりました。主な増加は、当期利益1,553億円、主な減少は、市場買付けによる自己株式の取得500億円、配当金575億円、その他の包括利益321億円です

以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は、前期末の56.5%から56.3%となりました。親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)は18.9%となり、引き続き高い水準を維持することができました

また、2018年9月14日に自己株式の消却630万株を実施しました

 

(4)キャッシュ・フローの分析

(連結キャッシュ・フローの状況)

 

 

 

通期

増 減

2017年12月期

2018年12月期

 

(億円)

(億円)

(億円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

1,858

1,956

98

投資活動によるキャッシュ・フロー

(961)

(1,579)

(617)

フリー・キャッシュ・フロー(営業活動+投資活動)

897

377

(520)

財務活動によるキャッシュ・フロー

(532)

(1,086)

(553)

 

営業活動によるキャッシュ・フローは、1,956億円となりました。主な増加は、税引前利益2,073億円、減価償却費及び償却費607億円、退職給付に係る負債の増減額207億円であり、主な減少は、営業債権及びその他の債権の増減額126億円、棚卸資産の増減額157億円、法人所得税等の支払額517億円です

投資活動によるキャッシュ・フローは、△1,579億円となりました。主な内訳は、日本の生産拠点の能力増強に加えて、伸長著しいアジアでも積極的に設備投資を行ったことによる有形固定資産の取得による支出803億円、既存事業とのシナジー効果が期待されるヘアサロン向け事業や業務品事業等における企業結合による支出739億円です

営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは、377億円となりました

財務活動によるキャッシュ・フローは、△1,086億円となりました。安定的かつ継続的な配当を重視しており、またEVA視点から資本効率の向上を目的として、自己株式の取得及び消却も弾力的に行っています。当期の主な内訳は、非支配持分への支払いを含めた支払配当金576億円、自己株式の取得による支出500億円です。なお、適正な資本コスト率の維持及び成長投資のための財務基盤の強化を目的に、社債の発行と償還を行い、その内訳は社債の発行による収入251億円、社債の償還による支出249億円です

当期末の現金及び現金同等物の残高は、為替変動による影響を含めて前期末に比べ771億円減少し、2,660億円となりました

 

 

(5)資本の財源及び資金の流動性についての分析

重要な資本的支出の2019年度の予定額は、約1,000億円であり、主に当社グループ内の資金を有効活用する予定であります。なお、計画については「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。

 

(6)生産、受注及び販売の実績

当社グループの生産・販売品目は、産業界向けのケミカル製品から一般消費者向けのコンシューマー製品まで極めて多種多様であり、それら製品の在庫をほぼ一定の必要水準に保つように、主として見込み生産を行っております。従って、生産実績は販売実績に類似しております。生産及び販売の実績については、「(2)経営成績の分析」に記載のとおりであります。

 

(7)経営成績に重要な影響を与える要因

経営成績に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

(8)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、達成状況は、「(2)経営成績の分析」に記載のとおりであります。

 

(9)経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報

IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と、日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりであります。

なお、当社は日本基準に基づく連結財務諸表を作成していないため、当該差異の金額については、概算額で記載しております。

 

(収益)

日本基準では、当社グループが顧客に対して支払う対価である販売促進費等の一部について、販売費及び一般管理費に含めて表示しておりましたが、IFRSでは売上高から控除しております。この結果、売上高が494億円減少しております。

 

(のれんの償却停止)

日本基準では、のれんの償却については、実質的に償却年数を見積り、その年数で償却することとしておりましたが、IFRSでは償却を停止しております。この結果、販売費及び一般管理費が日本基準より138億円減少しております。

 

(退職給付に係る費用)

①日本基準では、退職給付に係る期待運用収益及び利息費用は退職給付費用として売上原価、販売費及び一般管理費に含めて表示しておりましたが、IFRSでは退職給付に係る利息純額を金融費用として表示しております。この結果、売上原価、販売費及び一般管理費から金融費用に△59億円の表示組替が発生しております。

②日本基準では、数理計算上の差異は、発生時にその他の包括利益で認識し、従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数による定額法により按分した額を発生年度から純損益に認識しておりましたが、IFRSでは、発生時にその他の包括利益として一括で認識し、直ちに利益剰余金に振り替えております。また、日本基準では、過去勤務費用について、発生時にその他の包括利益で認識し、従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数による定額法により按分した額を発生年度から純損益に認識しておりましたが、IFRSでは発生時に純損益として認識しております。これらの結果、売上原価、販売費及び一般管理費が日本基準より25億円減少しております。

③日本基準では、退職給付費用として、退職給付債務に割引率を乗じて利息費用を、年金資産に期待運用収益率を乗じて期待運用収益をそれぞれ認識しておりましたが、IFRSでは退職給付債務と年金資産の純額に割引率を乗じた利息純額を認識しております。この結果、金融費用が66億円増加しております。

 

 

4【経営上の重要な契約等】

(1)株式譲渡契約

  当社は、米国子会社であるKao USA Inc.を通じて、北米中心に業務用クリーニング会社向けに洗剤の処方開発、販

売等を行うWashing Systems Intermediate Holdings, Inc.の全株式を取得する契約を2018年7月24日に締結し、2018

年8月9日に取引を完了しました。

 

(2)合弁事業契約

国名

契約先

合弁会社名称

出資比率

※1

契約日

マレーシア

IOI Oleochemical Industries Berhad

Fatty Chemical

(Malaysia) Sdn. Bhd.

70.0%

2

1988年2月29日

インドネシア

PT Rodamas

PT Kao Indonesia

72.2%

1994年8月29日

 ※1 当連結会計年度末の出資比率を記載しております。

 ※2 出資比率は、間接出資比率であり、 Kao Singapore Private Limited(当社100%出資)が出資しております。

 

 

5【研究開発活動】

消費者・顧客の立場にたって、心をこめた“よきモノづくり”を行ない、世界の人々の喜びと満足のある豊かな生活文化を実現するとともに、社会のサステナビリティ(持続可能性)に貢献するという使命のもと、研究開発部門では、多様な国や地域の消費者の様々な文化やニーズを理解し、独創的なシーズと組み合わせることで、新たな価値や市場を創造する画期的な商品・技術の開発に取り組んでおります。

当社は、社会課題に対応すべく、清潔・美・健康、さらには環境分野の研究資産を結集し、技術イノベーションで社会に貢献する取り組みを一層強化しております。研究成果として、“Fine Fiber(ファインファイバー)※1”、“RNA Monitoring (RNAモニタリング)※2”、“Created Color(クリエイティッド カラー)※3”、“Bio IOS(バイオIOS)※4”、“Package RecyCreation(パッケージ リサイクリエーション)※5”の5つの新技術を公開しました。幅広い事業領域で培ってきた研究資産を活用し、産官学等との連携・協働により、新たな価値創出に挑戦していきます。

当社グループ全体で、約3,000名が研究開発業務に携わっております。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、577億円(売上高比3.8%)であり、主な成果は、下記のとおりであります。

※1:肌表面に、極細の繊維からなる積層型極薄膜を直接形成する技術

※2:日々変動する皮膚状態を反映する遺伝子発現情報「RNA(リボ核酸)」を顔の皮脂から単離し、分析する技術

※3:より安心して利用でき、より魅力的な発色を実現するカラーリング剤の開発技術

※4:アブラヤシの多くを占める果肉部から抽出する油脂を、洗浄用途に適した成分に転換した界面活性剤の技術

※5:海洋プラスチックごみゼロ、再生プラスチック100%活用、残液ゼロを目指すエアインフィルムボトルの開発技術

 

コンシューマープロダクツ事業

〔化粧品事業〕

界の人々の肌を深く知る本質研究による確かなエビデンスと五感に訴える感性研究を融合して、新しい美の価値創造を目指しております。

カウンセリング化粧品では、カネボウ化粧品より「DEW」からやわらかくもっちりとしたつややかな肌に導く「DEW マッサージクリーム」と新“ハリ美容液”「DEW モイストリフトエッセンス」を発売しました。長年のヒアルロン酸研究とこだわりの“五感設計”を駆使したラインアップにより、スキンケアというプロセスを、特別な体験に変えていくことを提案します。

セルフ化粧品では、「ソフィーナ iP」の土台美容液を「ソフィーナ iP ベースケアエッセンス(土台美容液)」として刷新し、日本、香港、台湾、シンガポールで展開した他、「ソフィーナ iP 美活パワームース(土台美容液)」として、中国でも新たに発売しました。従来からの特徴を踏襲しながら、泡をより長く保持できる技術を搭載し、保湿成分を追加した独自の“iPパワー処方EX”を採用し、うるおってやわらかくもちもちした肌へ整えます。また、「ソフィーナ プリマヴィスタ 皮脂くずれ防止化粧下地」を改良しました。テカリ防止機能向上に加え、ファンデーションのとれ・ヨレ防止機能を兼ね備え、気温や湿度の高い日でもテカリのないファンデーションのきれいな仕上がりを持続させます。高機能サンスクリーンブランド「アリィー」では、汗や水だけでなく、摩擦にも強く落ちにくい新機能“フリクションプルーフ”を搭載した「アリィー エクストラUVジェル」をはじめとするラインアップを刷新しました。

当事業に係る研究開発費は、105億円であります。

 

〔スキンケア・ヘアケア事業〕

世界の人々の肌や髪を深く知る本質研究と、革新的な技術と品質により、ユニークで付加価値の高い製品の開発をとおして、多様な価値観やライフスタイルに合わせた最適な美の提案を目指しております。

スキンケア製品では、ふいた瞬間に肌の表面温度を下げることができる「ビオレ 冷シート」を発売しました。花王独自開発の不織布により、多くの冷却ウォーターを含ませ、たっぷり移すことができるため、肌の熱をすばやく蒸散し、肌温度を下げることができます。大判シートなので、一枚で乾かず全身広い範囲をふくことができます。また、「メンズビオレ 洗顔シート」を改良しました。独自開発の“タフテックシート※1”を採用し、顔だけでなく、腕や胸元等上半身までしっかりふくことができるようになりました。

ヘアケア製品では、染めても染めてものびてくる白髪の悩みや、ヘアカラーをくり返すことで髪の傷みが気になる方に、100%天然由来の“黒髪メラニンのもと※2”を配合した白髪用染毛料「リライズ 白髪用髪色サーバー」を発売しました。使うたびに、徐々に白髪に自然な黒さを補い、繰り返し使っても髪を傷めません。また、お風呂で使えて簡単です。ヘアサロン専用ブランド「ゴールドウェル」から欧州において、ヘアカラーリング製品「ピュアピグメント」を発売しました。富士フイルム株式会社とドイツのドレスデン工科大学との共同研究により生まれた、非反応型染毛染料“レインボー染料”のテクノロジーを活用し、幅広い色合いと、毛髪の動きや光の当たり方に応じて色が鮮やかに変化する、多次元的な発色を生み出すことを可能にしました。

当事業に係る研究開発費は、160億円であります。

※1:「破れにくい、乾きにくい、丸まりにくい」タフなシート設計

※2:着色成分(ジヒドロキシインドール)

 

〔ヒューマンヘルスケア事業〕

人が本来持っている健康力を生かしたQOL(Quality of Life:生活の質)の向上を目指し、心と身体の両面からヘルスケア研究を進めております。

フード&ビバレッジ製品では、“脂肪を代謝する力を高め、体脂肪を減らすのを助ける”特定保健用食品の許可表示を取得した「ヘルシアウォーター」を改良しました。はちみつを入れすっきりとした後味に仕上げることで、運動時にゴクゴク飲めるようになりました。

サニタリー製品では、大人用紙パンツ「リリーフ」から、へそ下丈のローライズ(浅ばき)でファッション性が高く、下着のように使える、超うす型の使いきり吸水パンツ「リリーフ まるで下着1回分 ローライズ」を発売しました。楽しく安心してお出かけができる、新しい提案です。

パーソナルヘルス製品では、歯周トラブルが気になる方に向けたブランドの「ピュオーラ」から、特に悩み意識の高い口臭を防止する、泡タイプのハミガキ「薬用ピュオーラ 泡で出てくるハミガキ」を発売しました。泡を舌の上に直接のせるという日本初の新提案で、きめ細かい泡が舌の上に密着し、殺菌することで口臭を防ぎます。

当事業に係る研究開発費は、113億円であります。

※:当社調べ(泡を舌にのせる使い方として)

 

〔ファブリック&ホームケア事業〕

多様なニーズに応える家庭用製品から、高度な清浄・衛生(洗い上がり)が求められる業務用製品まで、幅広い分野での研究開発に取り組んでおります。

ファブリックケア製品では、部屋干し中だけでなく、着ている最中までしつこい生乾き臭を徹底防臭する「ハミングファイン 部屋干しEX」を発売しました。部屋干し中の生乾き臭に効果的な防臭成分と、着用中の生乾き臭に効果的な新防臭成分を配合した抗菌防臭Wバリア処方により、部屋干し中はもちろん、着ている最中まで生乾き臭を徹底防臭します。ベトナムでは「アタックデオドラントエクストラ」を発売しました。アセアンの高温多湿な気候に加え、有職女性の増加等を背景にした洗濯頻度の低下等からくる臭い不満に対応するために、抗菌成分を配合し、汗による臭いを24時間抑える価値を提案しております。

ホームケア製品では、「バスマジックリン泡立ちスプレー SUPER CLEAN」を発売しました。汚れの原因となる微生物に直接アプローチし、次の発生を防ぐ独自の微生物制御システムを新たに採用して、排水口のヌメリやピンク汚れ、黒カビ等の汚れの発生を防ぎます。

当事業に係る研究開発費は、98億円であります。

 

ケミカル事業

油脂科学、界面科学、高分子科学等における研究開発の成果をさらに深化させ、幅広い産業界の多様なニーズに対応した特徴あるケミカル製品を提供すべく、研究開発に取り組んでおります。

油脂製品では、油脂アルコールや三級アミンにおいて独自の触媒・プロセス技術開発を進めております。機能材料製品では、環境負荷低減に対応した付加価値製品の開発に努め、廃棄物や、エネルギー低減に寄与する、低温鋼板洗浄剤や鋳造用材料等の開発に取り組んでおります。スペシャルティケミカルズ製品では、独自開発のVOCレス設計の水性インクジェット用顔料インク(LUNAJET)を活用し、印刷分野で実用化を進めております。

当事業に係る研究開発費は、102億円であります。

※:印刷工程において排出されるVOC(volatile organic compounds:揮発性有機化合物)が(炭素換算で)700ppmC以下のものを

VOCレスと定義。改正大気汚染防止法(平成18年)により、VOC排出規制が実施されております。