第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

 当社グループは、創業以来『品質第一、原価逓減、研究努力』の3つの社訓を経営の規範として会社を運営してまいりました。創業者は『品質第一』と『原価逓減』が、「より良い製品を、より安価に、お客様に提供することが会社隆昌の基本」であり、この「2つの社訓を実現する原動力となるのは不断の研究活動である」と3つ目の『研究努力』を説いています。これら3つの創業精神に則り、以下の素材で区分した6つのセグメント別の連結事業運営を行っております。

①非イオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤を中心とする『界面活性剤』

②セルロース系高分子材料、ショ糖脂肪酸エステル、アクリル系高分子材料及びビニル系高分子材料を中心とする『アメニティ材料』

③ポリエーテルポリオール及びウレタンプレポリマーを中心とする『ウレタン材料』

④光硬化樹脂材料、難燃剤及び水系ウレタン樹脂を中心とする『機能材料』

⑤導電性ペースト及び射出成形用ペレットを中心とする『電子デバイス材料』

⑥健康食品及び食品/医薬品/化成品等の受託事業を中心とする『ライフサイエンス』

 安定的な収益を生み出すための企業体質強化の取り組みを継続します。その一方で、「京都から、世界へ未来へ。」と飛躍を志した当社グループの成長戦略を確実に軌道に乗せるための諸施策を、全社員が一丸となり確実に実行し、新たな会社の歴史を作ります。

 3つの社訓『品質第一、原価逓減、研究努力』を礎に、社是「産業を通じて、国家・社会に貢献する」の実現に努めてまいります。

 

(2)経営戦略等

 中期経営計画「FELIZ 115」では、以下の経営方針を掲げて取り組んでいます。

①2030年の業績は、売上高1,000億円、営業利益100億円(営業利益率10.0%)として総資産回転率1.0回をめざします。

②計画的設備投資の結果である総資産を最大活用し、アクチャルの質的充実、ネクストの拡大増強、ドリームの開発・育成を図ります。製品別管理と並行して、顧客別のマーケティングを強化します。

③営業、研究、生産、管理の本部制を敷き、経営資源の最適配分を行います。貢献に報いる業績評価体系により、社員幸福度経営を実践します。企業を取り巻く4つのステークホルダーの期待に応え、企業価値を高めます。

 当社は、健康経営に優れた企業として経済産業省と東京証券取引所が共同で取り組む「健康経営銘柄」に5年連続で選定されました。従業員の健康を維持・増進することで会社の生産性向上を、ひいては企業価値の向上をめざします。この取り組みは、執行役員の出席する委員会、会議において結果の報告とそれに基づき策定された計画の承認を得ています。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 2020年4月から開始した中期経営計画「FELIZ 115」の4年目が終了しました。4年目はロシアのウクライナへの軍事侵攻などの地政学リスクの影響、原油・ナフサをはじめとする原材料価格の高騰などが収益確保を妨げる要因となりました。

 中期経営計画「FELIZ 115」では、2025年3月期を最終年度として数値目標を掲げています。「FELIZ 115」計画がぶれる要素としては、原材料価格及びエネルギーコストの高騰、ゼロ金利の転換、経済市況の悪化に加え、地政学リスクの継続が考えられます。

 

①連結売上高    700億円

②連結営業利益    45億円

③連結営業利益率   6.4%

④総資産回転率    0.88回

⑤設備投資額    144億円(5年累計)

⑥ROE         7.3%

 

 なお資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応については以下のとおりです。

 当社グループは、2022年3月期以降PBRが1倍を割る状況が継続していました。価格転嫁や経費削減のみならず新規開発などの各種対策が進み収益構造を良化させました。2024年3月期末時点ではPBRが1倍超に改善しています。引き続き、加重平均資本コストを意識しながら、それを上回るROIC、投資利益の実現をめざします。

 配当については、将来の事業展開に必要な内部留保との調和を図りつつ、株主の皆さまへの長期的かつ安定的な配当を維持することを基本方針としています。内部留保金については、国際競争力の強化や新たな成長につながる今後の事業展開に積極的に活用し、企業価値の増大に努めます。

 

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(4)経営環境

 当連結会計年度である第160期は、原材料価格の高騰、半導体ショックの継続に加え、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻による市況悪化に伴い、価格転嫁、高付加価値製品拡販、経費削減に注力しました。上期は大幅な収益低下を招きましたが、下期は対策の効果によりV字回復しました。

 中期経営計画「FELIZ 115」の最終年度である第161期は、喫緊の経営課題である「セグメント管理の強化」、「経営資源の再配分」、「業績評価・報酬体系の再構築」などに取り組み、経営基盤の強化を図ります。さらには、業績回復に資する開発テーマの早期実現とライフサイエンス事業の実績化を図り、グループ一丸となって収益改善に努めます。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 企業価値を高めていくために会社が対処すべき課題は、次の3点と認識しています。

 第一に、高騰が続く原材料価格への対応です。不安定な状況下でも事業運営に不可欠な原料を確実に確保できるように原料調達プロセスならびにサプライチェーンを見直します。地政学リスクを慎重に見極めながら、企業としてできることを確実に実行してまいります。

 第二に、経営資源最適化の加速です。2023年4月に新設した戦略統括部にて、中長期経営計画の策定管理、事業ポートフォリオの検証と見直し、事業戦略の企画・立案・進捗管理、M&A、協業、事業提携、マーケティング及び情報収集により、素早く事業の方向性を決定し、既存事業の拡大と新規事業の拡充を加速させます。

 第三に、先行投資した事業収益の早期刈り取りと次期投資の絞り込みです。三重県四日市市に投資したプラントは、フル稼働の状態になれば中期経営計画「FELIZ 115」の目標値を実現する可能性が高まります。パートナー企業との連携を強化し、早期の投資回収を実現します。

 ライフサイエンス事業としては、有用成分「ナトリード®」を含有する「快脳冬虫夏草」を、機能性表示食品として販売開始しました。カイコハナサナギタケ冬虫夏草については、ヒトに対する睡眠改善効果を確認し、この成果は学会誌に掲載されました。引き続き、エビデンスの強化を図ります。また、160期には既存技術をライフサイエンス分野に展開しニーズにマッチさせた消臭剤「NIOCAN®」を、新商品として販売開始しました。当社の発展に寄与させるため、事業の早期黒字化、受託事業拡大、研究開発スピードアップを推進してまいります。

 

 中期経営計画「FELIZ 115」で掲げた最終年度の目標は、連結売上高700億円です。①原料高、②金利上昇、③経済悪化の発生は、ある程度想定した上で計画を組んでいました。最初の2年間は足元を見つめ、3年目から事業拡大するシナリオです。ロシアによるウクライナ軍事侵攻が想定外であり、計画3年目で定量目標完遂の前提条件が崩れました。これに起因する原材料高騰、マーケットの沈滞で未曽有の業績悪化となりました。一方では、取り組んだ成長投資の課題が判明し、腰を据え未来を考える良い契機と受け止めています。

 今期は、電子・情報分野、環境・エネルギー分野を中心とした研究開発のテーマを優先性と収益性で絞り込み、経営資源を集中し収益確保に努めます。

 株主の皆様にはご理解と変わらぬご支援ご協力を賜りますようお願い申しあげます。

 

(免責・注意事項)

 本計画に記載されている当社の現在の計画、戦略、確信などのうち、歴史的事実でないものは、将来の実績等

に関する見通しであり、リスクや不確定な要因を含んでおります。そのため、実際の業績につきましては、一般

的経済状況、製品需給や市場価格の状況、市場での競争の状況、為替の変動等のさまざまな要因により、これら

見通しと大きく異なる結果となることがあり得ます。

 従って、当社として、その確実性を保証するものではありませんので、ご承知おきください。

 

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中の将来に関する事項は、当社が有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により異なる可能性があります。

 

(1)サステナビリティ

 地球温暖化、資源の枯渇、生物多様性の危機などの環境問題をはじめ、人口増加にともなう食資源、エネルギー問題、さらにはグローバル化の進展と社会の情報化など、さまざまな課題が私たちの暮らしを取り巻いています。当社はこうした社会課題と向き合い、人々の環境や暮らしを守り、安全性や快適性を高めるため、「こたえる、化学。」を追求し、持続可能な社会の構築に貢献しています。

 

① ガバナンス

 当社は、経営会議メンバーで構成される「サステナビリティ会議」を設置し、サステナビリティに関わる委員会、会議を傘下とし、方針の決定、上程事項の審議及び意思決定、会社の活動状況の確認を行う場としています。またサステナビリティ委員会では、気候変動対策ワーキンググループ、人的資本経営ワーキンググループ、人権尊重ワーキンググループを傘下に加え検討推進を行っています。年1回以上、取締役会にて答申・進捗報告を行い、適宜、戦略や目標、計画の見直しを行っています。

 

② リスク管理

 当社は、グループ全体のリスクマネジメントを実施するために、担当する執行役員を委員長とし、各部門および関係会社の代表者で構成されるリスクマネジメント統制委員会を定期的に開催して計画的に活動を進めています。リスクマネジメント統制委員会では、事業目的の達成を阻害する恐れのあるリスクを適切なレベルまで低減することを目的として、リスク管理システムに基づいてPDCAサイクルを回しています。定期的および都度、新たなリスクの洗い出しを行い、リスクの特定、分析、評価を行っています。特定されたリスクは、影響度と発生頻度でリスクマトリクスを作成し、重要度をランク分けしています。重要度の高いリスクは、委員会の管理リスクとして、リスク対応担当者を決定し、対策の計画や進捗状況のモニタリング、レビューを実施しています。

 なお、サステナビリティに関する現状想定されるリスクとして、環境および人権問題への対応不備や遅れによる事業活動の制限、カーボンプライシング政策の導入によるコストの増加等が考えられます。リスクへの対応を機会と捉え、製造工程の短縮による省エネルギー化に貢献できる製品や温暖化を防ぐためのクリーンエネルギー実現に貢献する製品の開発、「国連グローバル・コンパクトの 4分野10原則」に基づく取り組み等を計画に沿って実施しています。

 

(2)気候変動

 当社は、気候変動関連のリスクおよび機会が経営上の重要課題であるという認識の下、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明しています。気候変動が当社の事業活動に与える影響などについて情報開示を進め、サプライチェーン全体で脱炭素社会の実現に取り組むことで持続可能な社会をめざします。

 

① ガバナンス

 当社は、温室効果ガス(GHG)排出削減の中長期目標などの重要な課題は「サステナビリティ委員会」において審議・決定するとともに、年1回以上、取締役会にて答申・進捗報告することで、監督が適切に図られる体制を整えています。

 

② 戦略

 気候変動がもたらすリスクや機会が当社の事業に与える影響を評価し、事業戦略のレジリエンスを強化するためにシナリオ分析を行っています。シナリオ分析は、IEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が公表する気候変動シナリオを参照し、移行リスクは国の政策が強化されることを想定して1.5℃/2℃未満シナリオ、物理リスクは災害が激甚化することを想定して4℃シナリオを用いています。事業インパクト評価では、事業や財務への影響度とその影響が顕在化する時期を緊急度として評価しています。シナリオ分析の結果、カーボンプライシング導入などの政策リスクの影響が大きく、特に炭素税導入による原料への価格転嫁の影響が大きくなると予測しています。また、物理リスクとしての自然災害の激甚化による工場への影響は中長期的に高まると予測しています。その一方で、環境への意識の高まりにより、環境負荷の少ない製品の需要が増加すると考えており、当社が持つ製品や技術は、新たな市場ニーズを捉え、当社の事業拡大の機会となります。省エネルギー化やクリーンエネルギーの実現に貢献する製品など、気候変動問題を解決するための研究開発に取り組み、市場の求めるニーズに応えていきます。

③ リスク管理

 当社は、グループ全体のリスクマネジメントを実施するために、担当する執行役員を委員長とし、各部門 および関係会社の代表者で構成されるリスクマネジメント統制委員会を定期的に開催して計画的に活動を進めています。リスクマネジメント統制委員会では、事業目的の達成を阻害する恐れのあるリスクを適切なレベルまで低減することを目的として、リスク管理システムに基づいてPDCAサイクルを回しています。定期的および都度、新たなリスクの洗い出しを行い、リスクの特定、分析、評価を行っています。特定されたリスクは、影響度と発生頻度でリスクマトリクスを作成し、重要度をランク分けしています。重要度の高いリスクは、委員会の管理リスクとして、リスク対応担当者を決定し、対策の計画や進捗状況のモニタリング、レビューを実施しています。

 

④ 指標及び目標

 当社は、2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、2030年度に当社グループ国内全体で温室効果ガス排出量(Scope1、Scope2)を2013年度比で30%削減することを目標としています。当連結会計年度は、エネルギー消費の大きなプラントに集中してプロセスの効率化に取り組んだ結果、温室効果ガス排出量(Scope1、Scope2)は、前年度比6.8%削減し、2013年度比では22.7%削減しました。また、当社のScope3排出量の算出も行い、DKSレポート2023で公表しました。

 

(3)人的資本

 当社にとって最も重要な財産は人であり、人を大切にするという思想のもと、優秀な人材と多様性の確保をめざしています。従業員の成長が土台となって会社の持続的な発展を推進させる原動力となり、広範な企業価値の向上につながるものと認識しています。また従業員の成長には欠かせない健康管理に対しても積極的な企業文化を持っており、「従業員の幸福度向上」を目標の一つに掲げ、従業員の健康維持・向上に取り組んでいます。

 

① ガバナンス

 当社は、人的資本に関する重要な課題は「サステナビリティ委員会」において審議・決定するとともに、年1回以上、取締役会にて答申・進捗報告することで、監督が適切に図られる体制を整えています。

 

② 戦略

 人材開発の取り組みについては、従業員の等級に沿った人材育成と評価制度の仕組みにより個人の欲求に働きかけることで、中期経営計画達成の基盤とするという基本方針を掲げ各種施策を推進しています。人材育成は、個人のキャリアプランと会社視点での本人キャリアのすり合わせを行い、両者にとってWIN WINの実現に向けた教育機会の提供や働き方を目指しています。また評価制度については、事業貢献したものに報いる、挑戦を推奨する組織風土の醸成のための基盤作りとして、2023年度より係長以下の従業員に対する目標管理制度の運用開始、さらには、従業員の業績へ貢献度をより明確にした新報奨制度を導入しました。更なる利益貢献、会社の成長のために人事制度の改革を進めていきます。

 

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 健康経営の取り組みについては、経営的な視点から健康宣言のもと会社が従業員の健康の維持・向上に努めています。従業員健康行動指針で従業員の具体的な健康アクションを明文化し、「健康経営推進委員会」を設定して全社横断的な健康づくりを健康経営戦略マップに基づき推進しています。

 

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③ リスク管理

当社はグループ全体のリスクマネジメントを実施するために、担当する執行役員を委員長とし、各部門および関係会社の代表者で構成されるリスクマネジメント統制委員会を定期的に開催して計画的に活動を進めています。リスクマネジメント統制委員会では、事業目的の達成を阻害する恐れのあるリスクを適切なレベルまで低減することを目的として、リスク管理システムに基づいてPDCAサイクルを回しています。定期的および都度、新たなリスクの洗い出しを行い、リスクの特定、分析、評価を行っています。特定されたリスクは、影響度と発生頻度でリスクマトリクスを作成し、重要度をランク分けしています。重要度の高いリスクは、委員会の管理リスクとして、リスク対応担当者を決定し、対策の計画や進捗状況のモニタリング、レビューを実施しています。

 

④ 指標及び目標

 当連結会計年度の人的資本に関する指標は、以下の通りです。

 

<人材育成、働き方、ダイバーシティに関する項目>

 

 

目標(2024年度

2023年度実績

DX人材育成プログラム受講者割合

(注)2

60%

59.2%

該当者に対する月平均選抜研修時間

(注)3

350時間

342時間

新卒3年定着率

(注)4

90%以上

89.7%

月平均時間外労働

(注)5

10時間未満

8.7時間

女性産休復職率

(注)6

100%

100%

育児フルタイム復職率

(注)7

100%

100%

障がい者定着率

(注)8

80%以上を維持

81.8%

(注)1.人材育成・働き方・ダイバーシティに関する取り組みは連結子会社各社で行われていますが、規模・制度の違いから一律に記載せず、人材の大多数が所属する当社単体について上記は開示しています。

2.全従業員に対するDX人材育成プログラム受講者の割合です。

3.DX人材育成プログラム受講者の年間選抜研修時間を12で割ったものです。

4.2021年度の新入社員のうち、入社3年後に在籍していた人数の割合です。

5.係長以下の休日出勤を含む月平均時間外労働時間を係長以下の従業員数で割ったものです。

6.女性産休取得者人数のうち、産休取得後に復職した人数の割合です。

7.育児休職者取得者人数のうち、育児休職取得後に復職した人数の割合です。

8.2021~2023年度に入社した障がい者のうち、現在も在籍している人数の割合です。

 

<健康経営(健康・安全)に関する項目>

 

目標(2024年度

2023年度実績

アブセンティーイズムの低減

2.0%以下維持

1.1%

プレゼンティーイズムの低減

2.0%以下維持

1.4%

ワークエンゲージメントの向上

偏差値51達成

50

(健常者に対する発生予防)

腹囲基準を超える者の割合

25.0%

28.6%

(高リスク者に対する重症化予防)

40歳以上のメタボリックシンド

ローム予備軍と該当者の割合

22.0%

26.2%

(メンタルヘルス不調者の発生

予防・早期発見・対応)

メンタルヘルス不調による

休職者の発生率

0.20%以下を維持

0.14%

(禁煙につながる環境づくり)

喫煙者の割合

11.4%

19.2%

(注)健康経営に関する取り組みは連結子会社各社で行われていますが、規模・制度の違いから一律に記載せず、人材の大多数が所属する当社単体および国内関係会社(ゲンブ㈱、京都エレックス㈱、第一セラモ㈱、第一建工㈱、池田薬草㈱)を対象としています。なお、四日市合成㈱および㈱バイオコクーン研究所については、独自で取り組んでいるため対象外としています。

 当社は、設立の翌年の1919年には全従業員対象に健康診断を始めるなど、従業員の健康管理に対し積極的な企業文化を持っています。2017年には健康宣言「第一工業製薬は、従業員を会社の財産と考え、従業員の健康の維持向上に努めます。」を表明し、健康経営への取り組みを開始しました。中期経営計画 「FELIZ 115」では「従業員の幸福度向上」を目標の一つに掲げ、その実現に不可欠である従業員の健康の維持・向上に取り組んでいます。具体的な取り組みとして、運動習慣定着のために定期的にウォーキングイベントを実施、また毎朝のラジオ体操と15時の「DKS体操」を実施しています。そして新たな取り組みとして体力年齢を測定する体力測定会も開始し、運動の必要性を実感するきっかけになっています。またメンタルヘルス対策にも注力しており、新入社員、新任管理職にはカウンセリングのハードルを下げるために自身で予約し受けてもらう体験カウンセリングを行っています。

 そのような健康経営に関する取り組みが評価され、以下のとおり外部機関からの評価を得ています。

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3【事業等のリスク】

 当社グループでは、リスク管理に関し、組織的な対応として「リスクマネジメント統制委員会」を設置して、活動計画の策定、活動のレビュー、リスクの特定と対応策の検討などを行っています。当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フロー等に影響を及ぼす可能性があるリスクには、以下のようなものがあります。なお、これらのものは、当連結会計年度末(2024年3月31日)現在において当社グループが判断したものであり、事業等のリスクはこれに限られるものではありません。

①原材料の市況変動

 石油化学製品系の原材料を使用していることが多いことから、原油・ナフサ価格の高騰による主要原材料の価格の上昇は当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

②為替の変動

 中国などのアジアを中心に生産拠点や販売拠点を設立するなど、積極的な海外展開を行っています。在外連結子会社等の財務諸表の円換算額や外国通貨建取引において為替予約等によりリスクを軽減させる措置を講じていますが、いずれの場合にも為替相場の大幅な変動により当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

③グローバル経済の変動

 海外にも生産拠点や販売拠点を設立するなど、グローバルな事業展開を行っています。このような海外展開において、予期し得ないような外国の法律・規則の変更、産業基盤の不安定性、人材確保の困難性、紛争・政治不安定化など、常に経済的、社会的リスクが存在し、これらが顕在化することによって、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

④地政学リスクに関するリスク

ロシア・ウクライナ問題等により、地政学リスクが著しく高まっています。これら政治的・社会的情勢の不安定化や外交関係の緊迫化、紛争等により事業環境が悪化し、当社グループの企業活動に対して、エネルギーや原材料価格の高騰、サプライチェーンの分断などが発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

⑤特有の法的規制等に係る課題

 法規制あるいは当局の法令解釈が従来よりも厳しくなること等により、当社グループの事業が規制を受ける可能性またはこれらの法規制に適合するために当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

⑥大規模地震等の自然災害

 大規模地震等の大きな自然災害が発生した場合には、生産活動や原料搬入・製品搬出などが中断させられる可能性があります。これらが発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

⑦知的財産

 事業活動に関わる知的財産権の取得に努める一方、第三者の知的財産権侵害を防ぐため、第三者の知的財産等の調査を行っています。しかしながら、第三者との知的財産に関わる問題発生の可能性が無いとは言えず、訴訟等が発生した場合には当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

⑧情報セキュリティ

 事業活動において、顧客情報、個人情報、機密情報を保有しており、電子情報の形式で保管しています。したがって、情報セキュリティ方針、対策基準及び実施手順を定め、インフラ基盤を随時最適化することにより情報漏洩等に対する対策を講じています。しかしながら、第三者による不正アクセスやコンピューターウイルスの感染により、当社グループが保有する情報の漏洩や改ざん等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

⑨製品品質

 品質マネジメントシステムを構築し、品質保証の基本方針を遵守して高い品質の確保と顧客満足の向上に取り組んでいますが、予期せぬトラブル等により品質に関する問題が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

⑩気候変動に係るリスク

 さまざまな化学物質を取り扱うなかで「環境・安全・健康」を確保するためレスポンシブル・ケア活動を推進し、地球環境に配慮した事業活動を行っていますが、気候変動による気温上昇を抑制するためにカーボンプライシングや炭素税等が導入された場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。当社は、気候変動を重要な経営課題の一つとして認識しており、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明しています。TCFDの提言に沿ったシナリオ分析を行い、気候変動が当社の事業活動に与える影響等について情報開示を進め、持続可能な社会の実現にむけた施策を推進しています。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における我が国の経済は、所得・雇用環境の改善や各種政策の効果により、社会経済活動に緩やかな回復の動きが見られました。しかしながら、国際情勢の変動による原油をはじめとしたエネルギー価格や原材料価格の高騰、世界的な金融引締めに伴う影響や物価上昇など依然として先行きは不透明な状況が続いております。

このような環境のもと、当社グループでは足元の事業を取り巻く大きな環境変化へ迅速に取り組み、企業活動の継続に努めてまいりました。その結果、前期業績と比較し減収ながら増益に転じました。ハイエンドサーバ向け情報通信分野で売上が伸長したことや値上げ活動による価格転嫁が進んだことで増益に寄与しました。また、全社一丸となって実施した経費削減活動も利益に貢献しました。

2024年度は中期経営計画「FELIZ 115」の最終年度となります。売上好調な光硬化樹脂材料に加え、半導体関連の洗浄剤や電子制御関連の封止材など、新規開発が少しずつ結実してくる計画です。ライフサイエンス事業は黒字化に目途をつけ、目標数値の達成をめざしてまいります。

当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ95億11百万円増加し、945億37百万円となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ65億11百万円増加し、532億40百万円となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ30億円増加し、412億97百万円となりました。

 

b.経営成績

 当連結会計年度の経営成績は、売上高は631億18百万円(前期比3.0%減)、営業利益は20億77百万円(前期比75.1%増)、経常利益は20億60百万円(前期比71.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は11億74百万円(前期は4億7百万円の損失)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 界面活性剤の売上高は185億29百万円(前期比2.4%減)、営業利益は18億16百万円(前期比3.8%増)となりました。

 アメニティ材料の売上高は84億30百万円(前期比4.3%増)、営業利益は4億59百万円(前期は1百万円の損失)となりました。

 ウレタン材料の売上高は88億70百万円(前期比1.2%増)、営業損失は2億43百万円(前期は2億47百万円の損失)となりました。

 機能材料の売上高は214億39百万円(前期比5.0%減)、営業利益は10億3百万円(前期比256.2%増)となりました。

 電子デバイス材料の売上高は54億56百万円(前期比11.9%減)、営業損失は43百万円(前期は1億39百万円の利益)となりました。

 ライフサイエンスの売上高は3億92百万円(前期比21.3%減)、営業損失は9億14百万円(前期は7億34百万円の損失)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べて68億95百万円増加し、159億47百万円となりました。

 

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、得られた資金は70億91百万円(前期は7億24百万円)となりました。これは、売上債権の増加31億99百万円(前期は7億22百万円の増加)などにより資金が減少したことに対し、税金等調整前当期純利益23億43百万円(前期は2億24百万円)、減価償却費32億16百万円(前期は32億95百万円)、棚卸資産の減少26億84百万円(前期は13億62百万円の増加)、仕入債務の増加21億50百万円(前期は3億21百万円の減少)などにより資金が増加したことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、使用した資金は20億8百万円(前期は28億83百万円)となりました。これは、投資有価証券の売却による収入5億96百万円(前期は70百万円)などにより資金が増加したことに対し、有形固定資産の取得による支出25億2百万円(前期は28億34百万円)などにより資金が減少したことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、得られた資金は16億46百万円(前期は10億30百万円の支出)となりました。これは、長期借入金の返済55億34百万円(前期は58億79百万円)、配当金の支払い5億73百万円(前期は8億40百万円)などにより資金が減少したことに対し、長期借入れによる収入86億3百万円(前期は77億円)により資金が増加したことによるものです。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前期比(%)

界面活性剤(百万円)

17,020

94.7

アメニティ材料(百万円)

5,436

103.8

ウレタン材料(百万円)

8,053

100.8

機能材料(百万円)

11,432

115.4

電子デバイス材料(百万円)

5,059

85.2

ライフサイエンス(百万円)

362

79.2

合計(百万円)

47,365

99.7

(注)生産実績の金額は平均販売価格で表示しております。

 

b.受注実績

 当社グループは、受注生産を行っていないため、該当事項はありません。

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前期比(%)

界面活性剤(百万円)

18,529

97.6

アメニティ材料(百万円)

8,430

104.3

ウレタン材料(百万円)

8,870

101.2

機能材料(百万円)

21,439

95.0

電子デバイス材料(百万円)

5,456

88.1

ライフサイエンス(百万円)

392

78.7

合計(百万円)

63,118

97.0

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり採用した会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価について
は、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」及び「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しているため省略しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

1)財政状態

(資産合計)

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ95億11百万円増加し、945億37百万円となりました。

 流動資産は536億14百万円となり、前連結会計年度末に比べ82億3百万円増加しました。これは主に、商品及び製品などの棚卸資産の合計が24億95百万円減少したものの、現金及び預金が69億97百万円、売掛金が32億67百万円増加したことなどによるものです。

 固定資産は409億22百万円となり、前連結会計年度末に比べ13億8百万円増加しました。これは主に、有形固定資産の合計が2億75百万円減少したものの、投資有価証券が13億67百万円、退職給付に係る資産が5億37百万円増加したことなどによるものです。

(負債合計)

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ65億11百万円増加し、532億40百万円となりました。

 流動負債は251億59百万円となり、前連結会計年度末に比べ45億19百万円増加しました。これは主に、支払手形及び買掛金が20億7百万円、短期借入金が13億31百万円増加したことなどによるものです。

 固定負債は280億81百万円となり、前連結会計年度末に比べ19億91百万円増加しました。これは主に、長期借入金が16億1百万円増加したことなどによるものです。

(純資産合計)

 当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ30億円増加し、412億97百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益11億74百万円及び剰余金の配当5億73百万円により利益剰余金が6億1百万円、その他有価証券評価差額金が12億3百万円、非支配株主持分が5億99百万円増加したことなどによるものです。

 

2)経営成績

 当連結会計年度の業績といたしましては、『機能材料』セグメントの光硬化樹脂材料が大幅に伸長したものの、海外向け難燃剤が大きく落ち込んだことにより、売上高は631億18百万円(前期比3.0%減)となりました。

 損益面につきましては、市況回復による需要増加や価格転嫁の進捗に加え、経費削減をはじめとした各種対策が進んだことから、営業利益は20億77百万円(前期比75.1%増)、経常利益は20億60百万円(前期比71.6%増)となりました。これに投資有価証券売却益などを加減しました結果、親会社株主に帰属する当期純利益は11億74百万円(前期は4億7百万円の損失)となりました。

 

b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 2020年4月から開始した中期経営計画「FELIZ 115」の4年目が終了しました。売上高は、『機能材料』セグメントの光硬化樹脂材料が大幅に伸長したものの、海外向け難燃剤が大きく落ち込んだことにより減収となりました。一方、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は、市況回復による需要増加や価格転嫁の進捗に加え、経費削減をはじめとした各種対策が進んだことにより増益となりました。

 

c.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報

1) 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

2) 資金需要

 当社グループの事業活動による資金需要は主に、製品の原材料の仕入、製造に要した費用、外注費及び販売費といった運転資金需要や、新製品を創製するための研究開発費などがあります。また、投資活動による資金需要は主に、生産性の向上や新製品の製造のための設備の購入、IT設備投資及び事業展開上必要な投資有価証券の取得などがあります。

3) 財務政策

 当社グループは中期経営計画「FELIZ 115」の資金として2020年2月に銀行保証付私募債を発行し、60億円を調達しております。また、かねてより78億円のコミットメントライン契約(契約期間3年)を締結することで、機動的な資金確保にも留意しております。今後も、資本市場からの調達を視野に入れた財務体質の改善強化、あるいは流動資産をはじめとする資産効率の改善に努めます。

 なお、海外子会社につきましては、邦銀の現地拠点等から直接に資金を調達しております。

 

d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

中期経営計画「FELIZ 115」では、2025年3月期を最終年度として、数値目標を掲げております。

①連結売上高    700億円

②連結営業利益    45億円

③連結営業利益率   6.4%

④総資産回転率    0.88回

⑤設備投資額    144億円(5年累計)

⑥ROE         7.3%

 

e.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(界面活性剤)

界面活性剤の売上高は、総じて低調に推移しました。

国内では、ゴム・プラスチック用途、塗料・色材用途は堅調に推移しましたが、IT・電子用途は低調に推移しました。石鹸・洗剤用途は大きく落ち込みました。

海外では、ゴム・プラスチック用途、塗料・色材用途は堅調に推移しました。

その結果、当セグメントの売上高は185億29百万円(前期比2.4%減)となりました。

営業利益は、営業経費の削減により18億16百万円(前期比3.8%増)となりました。

 

(アメニティ材料)

アメニティ材料の売上高は、総じて堅調に推移しました。

国内では、セルロース系高分子材料はエネルギー・環境用途が低調に推移し、ビニル系高分子材料はゴム・プラスチック用途が低調に推移しました。ショ糖脂肪酸エステルは食品用途が堅調に推移しました。

海外では、ショ糖脂肪酸エステルは食品用途、香粧品用途が堅調に推移しました。

その結果、当セグメントの売上高は84億30百万円(前期比4.3%増)となりました。

営業利益は、営業経費の削減により4億59百万円(前期は1百万円の損失)となりました。

 

(ウレタン材料)

ウレタン材料の売上高は、総じて堅調に推移しました。

フロン規制に関連する環境配慮型の合成潤滑油は低調に推移しましたが、公共工事に関連する土木用薬剤は堅調に推移しました。

機能性ウレタンはIT・電子用途が堅調に推移しました。

その結果、当セグメントの売上高は88億70百万円(前期比1.2%増)となりました。

営業利益は、原材料価格高騰の影響を受け2億43百万円の営業損失(前期は2億47百万円の損失)となりました。

 

(機能材料)

機能材料の売上高は、総じて低調に推移しました。

国内では、光硬化樹脂材料はIT・電子用途が大幅に伸長しました。水系ウレタンはIT・電子用途が堅調に推移しましたが、繊維用途が低調に推移しました。難燃剤はゴム・プラスチック用途が大きく落ち込みました。

海外では、光硬化樹脂材料はIT・電子用途が大幅に伸長しましたが、難燃剤はゴム・プラスチック用途が大きく落ち込みました。

その結果、当セグメントの売上高は214億39百万円(前期比5.0%減)となりました。

営業利益は高付加価値品の光硬化樹脂材料の大幅な売上高の伸長に加え、営業経費の削減により10億3百万円(前期比256.2%増)となりました。

 

(電子デバイス材料)

電子デバイス材料の売上高は、総じて大きく落ち込みました。

ディスプレイ用途のイオン液体は堅調に推移しましたが、太陽電池用途の導電性ペーストが大きく落ち込みました。

その結果、当セグメントの売上高は54億56百万円(前期比11.9%減)となりました。

営業利益は、売上高が大きく落ち込んだことに加え、営業経費が増加したことにより43百万円の営業損失(前期は1億39百万円の利益)となりました。

 

(ライフサイエンス)

ライフサイエンスの売上高は、前期と比べ1億5百万円減少し、3億92百万円(前期比21.3%減)となりました。

医薬品添加物や天然素材からの抽出物の濃縮化、粉末化による健康食品等の受託事業は低調に推移しました。

営業利益は、売上高が大きく落ち込んだほか、研究開発費を中心に営業経費が増加したことにより9億14百万円の営業損失(前期は7億34百万円の損失)となりました。

2025年3月期には、ライフサイエンス事業の黒字化に目途を立てるべく、①2023年8月に発売を開始した中高年の認知機能の一部である認知機能速度や視覚的な記憶力を維持するのに役立つ機能性表示食品「快脳冬虫夏草」を中心とするBtoC、②カイコ冬虫夏草粉末やスダチ果皮エキスなど素材販売を狙ったBtoB、③グループ会社である池田薬草の受託事業拡大などにより、事業の収益化を図ります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、工業用薬剤メーカーとして、産業の化学化にこたえる存在感のある企業であり続けることを経営理念とし、積極的な研究活動を行っております。

 当連結会計年度は、電池材料やセルロースナノファイバーの新規用途開発、IT・電子用途等を中心とした高付加価値付与品の研究開発に注力し、出願した特許は156件であります。研究開発に要した費用の総額は3,170百万円で、これは売上高の5.0%にあたります。

 各セグメント別の研究の狙いと当連結会計年度の主な研究開発成果は次のとおりであります。

(1)界面活性剤

 従来から注力している水生生物毒性に配慮した環境対応型界面活性剤の市場開発に加え、「環境配慮と高機能化」をキーワードに高付加価値製品の研究開発に取り組んでおります。

 当連結会計年度の成果として、様々な産業分野でエネルギーコスト削減やVOC(揮散有機化合物)削減に繋がる工程薬剤、樹脂分野向けを中心とした反応性乳化剤や糖誘導体、電子・情報機器関連材料分野向けの洗浄剤、表面処理剤の開発を実施しました。また、海外の関係会社に対しては、化成品分野全般の機能加工薬剤の技術支援を行うとともに、協力して塗料・粘着剤分野向け添加剤の開発を実施しました。

 なお、本セグメントにおける研究開発費の総額は486百万円であります。

(2)アメニティ材料

 食品、医薬・香粧品、トイレタリーをはじめ、水畜産、土木、農業、脱臭等の産業分野を対象に、生活関連産業密着型の素材提供と機能を追究するための研究開発を進めております。

 当連結会計年度の成果として、各種用途に適したショ糖脂肪酸エステル及び配合製剤については、応用技術検討に取り組みました。また、食品分野、香粧品分野を中心とした国内外の市場開発支援も行いました。カルボキシメチルセルロースナトリウムについては、リチウムイオン電池向け分散剤としての品質向上と応用開発検討に注力しました。セルロースナノファイバーについては、市場要求に応える新規グレードも創製し、社会実装に向けた用途開発を加速させました。

 なお、本セグメントにおける研究開発費の総額は412百万円であります。

(3)ウレタン材料

 社会的及び顧客ニーズである「地球環境や資源・エネルギー及び健康に配慮した高機能性を有するウレタン材料」に重点を置き、研究開発に取り組んでおります。

 当連結会計年度の成果として、機能性ウレタン分野では、長期難燃性、信頼性に優れた高機能性電気絶縁材料、水フィルター用接着剤、防水材・接着剤用ウレタンプレポリマー、含水ゲル化材、次に、フォーム分野ではトンネル掘削用岩盤固結材、温暖化ガスの排出量削減に寄与するノンフロン及び水発泡断熱材用ポリオールやシステムなどの開発を実施しました。

 なお、本セグメントにおける研究開発費の総額は406百万円であります。

(4)機能材料

 VOCを主とした環境リスクや省エネルギーに配慮した水系ウレタン樹脂、光(紫外線・電子線)硬化性樹脂と難燃剤をはじめとした樹脂添加材料の研究開発を進めております。

 当連結会計年度の成果として、自動車、家電、建築等への塗料・接着材料、フィルム、金属等へのコーティング材料及びフィラ―、繊維等へのバインダー材料としての水系ウレタン樹脂の応用開発、液晶テレビ等フラットパネルディスプレイ表示部材用途等をはじめとする電子材料分野、及び、プラスチック・建材(木材)等への意匠性を付与する機能性塗料・コーティング用途に用いられる紫外線硬化樹脂材料用モノマー及び機能性オリゴマーの開発を実施しました。また、環境に配慮した次世代の発泡ポリスチレン用難燃剤の開発を実施しました。既存品においては、増加する需要への供給体制強化や製造コスト削減などに取り組みました。

 なお、本セグメントにおける研究開発費の総額は1,001百万円であります。

(5)電子デバイス材料

 エネルギーデバイス及びディスプレイデバイスに関する新規デバイス及び材料を中心に研究開発を進めております。

 当連結会計年度の成果として、リチウム電池材料について新規活物質向けバインダー材料を開発し、実用化に向けて検討をさらに進めております。また、低粘度で高イオン導電性を示すイオン液体の開発は、エネルギー分野・電子デバイス材料分野でのアプリケーションに向けてさらなる技術開発及び市場開拓を促進しております。

 なお、本セグメントにおける研究開発費の総額は333百万円であります。

(6)ライフサイエンス

 「カイコ冬虫夏草」や「Sudachin®」をはじめとした健康食品に関して、天然物や培養物からの抽出・高濃度化技術、量産化技術、機能性評価等を中心に研究開発を進めております。

 当連結会計年度の成果として、「カイコ冬虫夏草」に含有する新規有用物質の定量化や高産生条件の探索、「Sudachin®」の高濃縮技術の確立、機能性評価、加えて製品品質の安定化に取組み、機能性表示食品の開発など市場への新製品投入に向けた研究開発を促進しております。

 なお、本セグメントにおける研究開発費の総額は529百万円であります。