第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断しています。

(1)経営方針

 当社グループは、創業以来『品質第一、原価逓減、研究努力』の3つの社訓を経営の規範として会社を運営してまいりました。創業者は『品質第一』と『原価逓減』が、「より良い製品を、より安価に、お客様に提供することが会社隆昌の基本」であり、この「2つの社訓を実現する原動力となるのは不断の研究活動である」と3つ目の『研究努力』を説いています。この創業精神に則り、当社グループは、事業環境の急速な変化および市場の多様化に対応し、持続的な企業価値の向上を図ります。翌連結会計年度より従来の材料別6セグメントから、分野別の「電子・情報」、「環境・エネルギー」、「ライフ・ウェルネス」、「コア・マテリアル」の4セグメントへと開示セグメントの区分を変更します。これにより、各分野の特性に即した戦略立案を可能とするとともに、ステークホルダーの皆様に対する当社事業内容の理解促進、ならびに経営資源の効率的な管理・分析を通じた事業運営の高度化を図ってまいります。

 

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<各事業セグメントの方針>

■ 電子・情報

・次世代高速通信に対応した低誘電材料の拡販

・技術トレンドに沿ったディスプレイ向け先端材料の開発促進

・独自技術を生かした次世代半導体材料への新規参入

■ 環境・エネルギー

・サステナブル社会実現に貢献するリチウムイオンバッテリー関連材料の開発

・電動化、電装化とともに循環社会に貢献する樹脂材料で拡大

・再生可能エネルギーの推進に貢献する太陽電池用材料の拡大

■ ライフ・ウェルネス

・認知機能維持をサポートする機能性表示食品「冬虫夏草」の拡販

・界面活性剤の技術を基盤に、食品添加物、香粧品、クリーニング用薬剤、においビジネスの拡大を図り、新しい用途への素材開発を推進

■ コア・マテリアル

・脱炭素社会へ貢献する環境負荷の少ない天然由来原料の活用

・コア技術である界面技術を注力分野3分野へ展開

・伝統ある製品・技術が産業界の基盤強化と発展に寄与

 

中長期的な成長を見据えた柔軟かつ持続的な経営基盤の構築に努め、安定的な収益を生み出すための企業体質強化の取り組みを継続します。「こたえる、化学。」をミッションに掲げ、当社グループの成長戦略を確実に軌道に乗せるための諸施策を、全社員が一丸となり確実に実行し、新たな会社の歴史を作ります。

社訓『品質第一、原価逓減、研究努力』を礎に、社是「産業を通じて、国家・社会に貢献する」の実現に努めてまいります。

 

(2)経営戦略等

 当社は、2025年4月より、5カ年中期経営計画「SMART 2030(スマート ニイゼロサンゼロ)」を始動しました。2030年度の業績目標を設定し、持続的な企業価値の向上を目指しています。

本計画においては、以下の基本方針のもと経営体制および事業運営の強化を図ります。

1.事業運営体制の強化

 事業本部制を導入し、営業部門および研究部門が一体となった分野別の事業部を設置しています。これにより、顧客課題への迅速な対応および新規開発テーマへの取り組みを可能とする体制を構築し、併せて、事業責任の明確化を通じた機動的な組織運営を推進します。

2.研究開発体制の強化

 経営直轄組織として「生産技術研究所」および「京都中央研究所」を設置し、研究開発力の強化とスピードアップを図ります。取り組むテーマを短期および中長期に区分し、開発期間の短縮を図ることで、事業効率および競争力の一層の向上に取り組んでいます。

3.人事制度改革と人財育成の推進

 新たな人事制度を導入することで、労働生産性の向上を図っています。成果を正当に評価する制度の構築により、社員一人ひとりの成長が企業の成長に直結する仕組みを整備するとともに、挑戦する社員を賞賛する企業風土の醸成を進めています。

また、当社は、従業員の健康保持・増進を重要な経営課題と捉え、「健康経営」の推進に取り組んでいます。その成果として、経済産業省および東京証券取引所が共同で選定する「健康経営銘柄」に連続で選定されています。これらの取り組みについては、執行役員が出席する委員会・会議において結果報告および計画の承認を受ける体制としており、企業の生産性ならびに企業価値の更なる向上を図ってまいります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 2020年4月から開始した中期経営計画「FELIZ 115」の5年間が終了しました。わが国経済は、インバウンド需要の拡大や雇用・所得環境の改善が見られ、緩やかな景気回復となりました。しかしながら、世界的な資源価格の上昇や原材料価格の高止まりが続いており、円安の進行や物価高騰に伴う消費マインドの変化、海外からの安価な化学品が流入するなど、経済の先行きには依然として不透明感が残っています。

 このような状況のもと、中期経営計画「FELIZ 115」の5年目は、継続した価格転嫁とともに、好調なハイエンドサーバ向けの製品の需要が好調を維持し、最高利益の達成となりました。

 4月から始動する新中期経営計画は、「SMART 2030」と名付けました。「ユニ・トップ」、「サステナビリティ」、「チャレンジ」の3つをキーワードに、本計画を通じ、社会のさまざまな課題を解決するスマート・ケミカルパートナーを目指してまいります。本計画がぶれる要素としては、原材料価格及びエネルギーコストの高騰、金利の上昇、経済市況の悪化に加え、地政学リスクの継続が考えられます。

 

なお資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応については以下のとおりです。

当社グループのPBR(株価純資産倍率)は、2025年3月期末時点で、市場環境の影響により1倍を下回っています。PBR改善に向けては、資本効率の向上に加え、事業ポートフォリオの見直し、成長投資の推進、株主還元の充実、IR活動による市場との対話に取り組み、株主価値の持続的な向上を図ります。

中期経営計画「SMART 2030」では、ROIC(投下資本利益率)を重要指標としています。今後もWACC(加重平均資本コスト)を上回るROICと投資収益を確保し、企業価値の向上に努めます。

配当については、事業成長に必要な内部留保とのバランスを図りつつ、長期的かつ安定的な配当を基本方針としています。「SMART 2030」計画の2030年3月期の連結配当性向を高めることを目標とし、積極的な株主還元を実施してまいります。内部留保は、国際競争力の強化や将来の成長に向けた投資に活用し、企業価値の増大を図ります。

 

(4)経営環境

 当連結会計年度は、世界的な資源価格の上昇や原材料価格の高止まり、円安の進行や物価高騰、海外からの安価な化学品が流入するなど、経済の先行きには依然として不透明感がある中、価格転嫁、高付加価値製品拡販により、過去最高の営業利益となりました。

 2025年4月からスタートする中期経営計画「SMART 2030」において、研究開発の強化とスピードアップにより競争力を高め、営業と研究を一体化した事業本部制を導入します。生産技術研究所、京都中央研究所など新組織を設立し、重点分野で技術革新を推進します。新人事制度で成果を正当に評価し、挑戦を称える企業文化を醸成します。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

企業価値を高めていくために会社が対処すべき課題は、次の3点と認識しています。

第1に、研究開発・事業体制の整備を行い、競争力強化を図ります。研究開発の加速と営業との一体化によって、顧客ニーズに迅速に対応できる「事業本部制」を導入し、注力分野(電子・情報、環境・エネルギー、ライフ・ウェルネス、コア・マテリアル)での技術革新を推進します。さらに、生産技術研究所、京都中央研究所で短期・中長期のテーマに基づく開発強化を図ります。

第2に、人事制度改革を通じて人財を最大限に活用し、企業文化を変革します。新人事制度を導入し、チャレンジした社員が賞賛される組織風土を醸成します。

第3に、ライフサイエンス事業の早期黒字化と市場拡大を進めます。BtoC製品の拡販に注力しつつ、脱臭・消臭技術の応用展開や医薬品GMPをはじめとする受託事業を強化し、収益化を図ります。

 

 2025年度は中期経営計画「SMART 2030」の初年度であり、当社グループが企業価値のさらなる創造を目指して本格的な変革に踏み出す重要な一年です。本年度の年間標語には「付加価値を産み出す企業へ」を掲げ、変革への強い意志を表明しています。「ユニ・トップ」「サステナビリティ」「チャレンジ」の3つをキーワードに、行動規範を整備し、人財の充実に取り組むとともに、人的資本を含む無形資産の最大化と企業の持続的成長を連動させることを基本方針としています。

 さらに、サステナビリティ開示の充実に取り組みます。気候変動、人的資本、人権尊重などの課題に対処するための活動を拡充していきます。

地球温暖化や資源の枯渇などの環境問題、また少子高齢化などさまざまな社会課題が私たちの暮らしを取り巻いています。当社は、環境や生活の安全性や快適性などを高めるため、「こたえる、化学。」を追求します。

今後とも当社グループへのご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

 

(免責・注意事項)

 本計画に記載されている当社の現在の計画、戦略、確信などのうち、歴史的事実でないものは、将来の実績等

に関する見通しであり、リスクや不確定な要因を含んでおります。そのため、実際の業績につきましては、一般

的経済状況、製品需給や市場価格の状況、市場での競争の状況、為替の変動等のさまざまな要因により、これら

見通しと大きく異なる結果となることがあり得ます。

 従って、当社として、その確実性を保証するものではありませんので、ご承知おきください。

 

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中の将来に関する事項は、当社が有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により異なる可能性があります。

 

(1)サステナビリティ

 当社グループは、化学メーカーとして116年の歴史で培ったコア技術と幅広い経験を基に、SDGs及び国連グローバル・コンパクトの定める4分野10原則に取り組みます。当社が社会的課題の解決に貢献できるテーマをSDGsと紐づけ、③すべての人に健康と福祉を、⑦エネルギーをみんなにそしてクリーンに、⑨産業と技術革新の基盤をつくろう、⑫つくる責任つかう責任、⑰パートナーシップで目標を達成しようの5項目を、特に注力すべきものとして抽出しました。

 これらの注力すべき社会的課題に対処するためにサステナビリティ委員会を設置し、取り組みを加速させています。新たな中期経営計画「SMART 2030」では、ステークホルダーエンゲージメントやESG・サステナビリティ戦略の促進などの非財務戦略を、2030年に向けた成長戦略として掲げています。

 当社のESG基本方針に則り、ESGに関する重要課題と向き合い、人々の環境や暮らしを守り、安全・快適性を高めるため、「こたえる、化学。」を追求し、持続可能な社会の構築に貢献します。

 

<サステナビリティ(ESG)基本方針>

第一工業製薬グループは、ESGに関する重要課題と向き合い、人々の環境や暮らしを守り、安全・快適性を高めるため、「こたえる、化学。」を追求し、持続可能な社会の構築への貢献を目指します。

 

① ガバナンス

 当社は、経営会議メンバーで構成される「サステナビリティ会議」を設置し、サステナビリティに関わる委員会、会議を傘下とし、方針の決定、上程事項の審議及び意思決定、会社の活動状況の確認を行う場としています。

 また毎月1回以上の頻度で開催するサステナビリティ委員会では、気候変動対策ワーキンググループ、人的資本経営ワーキンググループ、人権尊重ワーキンググループを傘下に加え検討推進を行っています。年1回以上、取締役会にて答申・進捗報告を行い、適宜、戦略や目標、計画の見直しを行っています。

 

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② 戦略

 当社は、今年度よりスタートした中期経営計画「SMART 2030」では、「ユニ・トップ」、「サステナビリティ」、「チャレンジ」の3つをキーワードとし、人的資本を含む無形資産の最大化と企業の成長を連動させる変革実行を目指す理念としています。

 また、サステナビリティ基本方針の実践として以下の5つの個別戦略を掲げています。

 

<5つの個別戦略>

「カーボンニュートラル」:2050年カーボンニュートラルに向けてGHG排出量削減の取り組みを加速

「環境貢献型製品の拡大」:顧客の環境課題解決に貢献する製品の開発と提供

「人権の尊重」:企業が求められる人権尊重の責任を果たし、持続可能な社会の実現への寄与

「人的資本の強化」:戦略的人財投資による人財の価値最大化を図り、長期的な成長と企業価値向上の実現

「ガバナンスの深化」:社外役員による監督強化と成長支援による公正で透明な経営体制の確保

 当社のマテリアリティをサステナビリティアクションプランに落とし込み、経営計画の方針に基づき推進する成長戦略や事業投資を通じて、課題解決につなげていきたいと考えております。

 

③リスク管理

 当社は、グループ全体のリスクマネジメントを実施するために、担当する執行役員を委員長とし、各部門および関係会社の代表者で構成されるリスクマネジメント統制委員会を定期的に開催して計画的に活動を進めています。リスクマネジメント統制委員会では、事業目的の達成を阻害する恐れのあるリスクを適切なレベルまで低減することを目的として、リスク管理システムに基づいてPDCAサイクルを回しています。定期的および都度、新たなリスクの洗い出しを行い、リスクの特定、分析、評価を行っています。特定されたリスクは、影響度と発生頻度でリスクマトリクスを作成し、重要度をランク分けしています。重要度の高いリスクは、委員会の管理リスクとして、リスク対応担当者を決定し、対策の計画や進捗状況のモニタリング、レビューを実施しています。

 なお、サステナビリティに関する現状想定されるリスクとして、環境および人権問題への対応不備や遅れによる事業活動の制限、海外生産拠点における水ストレスの悪化、カーボンプライシング政策の導入によるコストの増加等が考えられますが、リスクへの対応を機会と捉え、グリーン・トランスフォーメーション戦略に基づく取組みの展開や「国連グローバル・コンパクトの4分野10原則」に基づく取組み等を計画に沿って実施しています。

 

④指標及び目標

 当社は、2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、2030年度までに当社グループの国内拠点におけるGHG排出量(Scope1及びScope2)を2013年度比で30%削減する目標を設定しています。主要な対策として、省エネを推進するとともに、再エネ由来の電力の調達や太陽光発電の導入を進めていきます。

 また、持続的な成長を支える重要な基盤として、研究開発活動を推進しております。事業環境の変化に迅速に対応し、社会のニーズに応える製品・サービスを創出し続けるため、新製品化率25%以上を目標として設定し、中長期的な事業の継続性と収益性の向上に努めます。

 人的資本については、労働生産性の向上を重要課題として位置づけ、人財の価値最大化を図るべく、人財育成目標や健康経営目標を設定し、戦略的投資を積極的に行っています。各目標に関する主要な指標(KPI)の進捗状況については、後述の(3)人的資本「④ 指標及び目標」をご参照ください。

 

項目

注記

目標(2030年)

GHG排出量削減(対2013年)

 

30%削減

新製品化率(単体)

(注)1

25%以上

労働生産性(単体)

(注)2

9.7百万円/人以上

(注)1.過去3年間に製品化した製品の売上高を、売上高の総額で割ったものです。

2.営業利益を従業員数で割った、一人あたりの営業利益を指します。

 

(2)気候変動

 当社は、気候変動関連のリスクおよび機会が経営上の重要課題であるという認識のもと、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明しています。気候変動が当社の事業活動に与える影響などについて情報開示を進め、サプライチェーン全体で脱炭素社会の実現に取り組むことで持続可能な社会をめざします。

 

① ガバナンス

 サステナビリティ委員会では、気候変動に関するシナリオ分析の結果を踏まえて、当社の対応策を審議・決定するとともに、取締役会へ報告することで、監督が適切に図られる体制を整えています。

 

② 戦略

 気候変動がもたらすリスクや機会が当社の事業に与える影響を評価し、事業戦略のレジリエンスを強化するためにシナリオ分析を行っています。シナリオ分析は、IEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が公表する気候変動シナリオを参照し、移行リスクは国の政策が強化されることを想定して1.5℃/2℃未満シナリオ、物理リスクは災害が激甚化することを想定して4℃シナリオを用いています。事業インパクト評価では、事業や財務への影響度とその影響が顕在化する時期を緊急度として評価しています。シナリオ分析の結果、カーボンプライシング導入などの政策リスクの影響が大きく、特に炭素税導入による原料への価格転嫁の影響が大きくなると予測しています。また、物理リスクとしての自然災害の激甚化による工場への影響は中長期的に高まると予測しています。その一方で、環境への意識の高まりにより、環境負荷の少ない製品の需要が増加すると考えており、当社が持つ製品や技術は、新たな市場ニーズを捉え、当社の事業拡大の機会となります。省エネルギー化やクリーンエネルギーの実現に貢献する製品など、気候変動問題を解決するための研究開発に取り組み、市場の求めるニーズに応えていきます。

 

<気候変動に関するシナリオ分析>

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③ リスク管理

 当社は、グループ全体のリスクマネジメントを実施するために、担当する執行役員を委員長とし、各部門および関係会社の代表者で構成されるリスクマネジメント統制委員会を定期的に開催して計画的に活動を進めています。リスクマネジメント統制委員会では、事業目的の達成を阻害する恐れのあるリスクを適切なレベルまで低減することを目的として、リスク管理システムに基づいてPDCAサイクルを回しています。定期的および都度、新たなリスクの洗い出しを行い、リスクの特定、分析、評価を行っています。特定されたリスクは、影響度と発生頻度でリスクマトリクスを作成し、重要度をランク分けしています。重要度の高いリスクは、委員会の管理リスクとして、リスク対応担当者を決定し、対策の計画や進捗状況のモニタリング、レビューを実施しています。

 

④ 指標及び目標

 当社は、2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、2030年度に当社グループ国内全体でGHG排出量(Scope1、Scope2)を2013年度比で30%削減することを目標としています。当連結会計年度は、生産プロセスの効率化で一定の効果が得られましたが、エネルギー消費の大きな製品の生産量が大幅に増加した影響もあり、GHG排出量(Scope1、Scope2)は、2013年度比で16.4%の削減となりました。省エネの推進に加えて、再生可能エネルギーの利用を拡大し、GHG排出量を削減していきます。

 また、当社単体を対象としてScope3排出量(カテゴリ1~7)の算定を行っています。2024年度の結果についてはDKSレポート2025で公表する予定です。今後、算定範囲は個別からグループ全体に拡大していきます。

 

<Scope1、Scope2(国内グループ)>

 

2022年度

実績

2023年度

実績

2024年度

実績

2030年度

目標

GHG排出量削減(対2013年)

16.9%

22.9%

16.4%

30%

GHG排出量(千t-CO2)

43.0

39.9

43.3

36.2

 

<GHG排出量の実績(単体)>

                                   (単位:千t-CO2e)

Scope/カテゴリ

2022年度実績

2023年度実績

Scope1

15.5

12.7

Scope2

12.0

11.5

Scope3

200.7

184.0

カテゴリ1

購入した製品・サービス

173.3

158.2

カテゴリ2

資本財

4.7

4.3

カテゴリ3

Scope1,2に含まれない

燃料およびエネルギー活動

12.0

10.3

カテゴリ4

輸送、配送(上流)

5.7

5.8

カテゴリ5

事業から出る廃棄物

4.8

5.1

カテゴリ6

出張

0.1

0.1

カテゴリ7

雇用者の通勤

0.2

0.2

 

(3)人的資本

 当社にとって最も重要な財産は人であり、人を大切にするという思想のもと、優秀な人財と多様性の確保を重要視しています。2025年4月からスタートする中期経営計画「SMART 2030」では、「チャレンジ」をキーワードに掲げ、従業員に対して教育投資を増加させ、労働生産性の向上を目指します。従業員の教育、健康への投資を通じて、社員がチャレンジする機会を提供し、各人の成長の基盤を構築します。これらの投資により従業員の成長が会社の持続的な発展を推進させる原動力となり、広範な企業価値の向上につなげます。また従業員の最大限のパフォーマンスを発揮するために、従業員の健康管理を徹底し、健康維持・向上に取り組みます。

 

① ガバナンス

 毎月1回以上の頻度で開催するサステナビリティ委員会において、人的資本に関する重要な課題の年度計画に対する進捗確認や、サステナビリティ会議への上程事項の審議及び意思決定を行っています。サステナビリティ委員会での活動を取締役会へ報告することで、監督が適切に図られる体制を整えています。

 

② 戦略

 人的資本と経営戦略を結び付けるため、教育制度の刷新を通じて従業員の自律的な思考を促進するとともに、健康経営の推進によって従業員の健康基盤を整え、労働生産性の向上を目指します。

教育制度の刷新では、中期経営計画「SMART 2030」での目指すべき人財像を「自律」、「事業貢献」、「環境変化に柔軟」としました。この人財像からバックキャストし、入社5年目までの教育を一つの線としてとらえ体系化しました。教育は単に研修だけで終わることなく、職場に持ち帰って上長とともに取り組むことをプログラム化し、研修効果の持続を目指しています。

 次に自律する社員への成長を促しキャリア教育を強化します。また選抜型研修、手上げ研修を増やし、従業員のチャレンジによる成長を後押しします。従業員個々人が目指す姿と会社が成長してほしい姿をすり合わせることで、自身の歩んでいく道を自ら示し、成長の礎となるよう進めます。

 健康経営の取り組みでは、経営的な視点から健康宣言のもと会社が従業員の健康の維持・向上に努めています。従業員健康行動指針で従業員の具体的な健康アクションを明文化し、「健康経営推進委員会」を設定して全社横断的な健康づくりを健康経営戦略マップに基づき推進しています。

 すべての従業員が安心して働ける環境を整えるため、働き方・ダイバーシティに関する項目を取り上げ人財戦略に取り込み、指標化することで目標の達成に努めます。事業貢献と紐づく報酬制度について新人事制度を導入し、事業貢献ができる社員に報いる、成長したい従業員に投資できる環境を整えることで、人財育成を強化し、労働生産性の向上に努めます。

 

<人財戦略>

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<健康経営戦略マップ>

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③ リスク管理

  当社は、グループ全体のリスクマネジメントを実施するために、担当する執行役員を委員長とし、各部門および関係会社の代表者で構成されるリスクマネジメント統制委員会を定期的に開催して計画的に活動を進めています。リスクマネジメント統制委員会では、事業目的の達成を阻害する恐れのあるリスクを適切なレベルまで低減することを目的として、リスク管理システムに基づいてPDCAサイクルを回しています。定期的および都度、新たなリスクの洗い出しを行い、リスクの特定、分析、評価を行っています。特定されたリスクは、影響度と発生頻度でリスクマトリクスを作成し、重要度をランク分けしています。重要度の高いリスクは、委員会の管理リスクとして、リスク対応担当者を決定し、対策の計画や進捗状況のモニタリング、レビューを実施しています。

  また、人権尊重ワーキンググループでは、コンプライアンス、労働慣行、健康・安全、ダイバーシティ、サプライチェーンといった分野ごとのチェックリストをもとに、リスクの深刻性と発生可能性の二軸でマトリクスを作成しています。このマトリクスにより、各リスクの優先度を可視化し、優先度の高いリスクから順に、リスク軽減に向けた具体的な取り組みを実施しています。

 

 

④ 指標及び目標

当連結会計年度の人的資本に関する指標は、以下のとおりです。

 

<人財育成・働き方・ダイバーシティに関する項目>

項目

注記

目標(2029年度

2024年度実績

労働生産性

 

9.7百万円/人

2.2百万円/人

教育投資

 

100百万円/年

13百万円/年

研修時間

 

20,000時間/年

8,322時間/年

DX人財育成プログラム受講者割合

(注)2

75%

62%

該当者に対する月平均選抜研修時間

(注)3

800時間

364時間

新卒3年定着率

(注)4

90%以上

70.0%

月平均時間外労働

(注)5

10時間未満

10.7時間

女性産休復職率

(注)6

100%

100%

育児フルタイム復職率

(注)7

100%

100%

障がい者定着率

(注)8

80%以上

60.0%

  (注)1.人財育成・働き方・ダイバーシティに関する取り組みは連結子会社各社で行われていますが、規模・制度の違いから一律に記載せず、人財の大多数が所属する当社単体について上記は開示しています。

2.全従業員に対するDX人財育成プログラム受講者の割合です。

3.年間選抜研修時間を12で割ったものです。

4.2021年度の新入社員のうち、入社3年後に在籍していた人数の割合です。

5.係長以下の休日出勤を含む月平均時間外労働時間を係長以下の従業員数で割ったものです。

6.女性産休取得者人数のうち、産休取得後に復職した人数の割合です。

7.育児休職者取得者人数のうち、育児休職取得後に復職した人数の割合です。

8.2021~2023年度に入社した障がい者のうち、現在も在籍している人数の割合です。

 

<健康経営(健康・安全)に関する項目>

 当社は、設立の翌年の1919年には全従業員対象に健康診断を始めるなど、従業員の健康管理に対し積極的な企業文化を持っています。2017年には健康宣言「第一工業製薬は、従業員を会社の財産と考え、従業員の健康の維持向上に努めます。」を表明し、健康経営への取り組みを開始しました。具体的な取り組みとして、運動習慣定着のために定期的にウォーキングイベントを実施、また毎朝のラジオ体操と15時の「DKS体操」を実施しています。そして新たな取り組みとして体力年齢を測定する体力測定会も開始し、運動の必要性を実感するきっかけになっています。またメンタルヘルス対策にも注力しており、新入社員、新任管理職にはカウンセリングのハードルを下げるために自身で予約し受けてもらう体験カウンセリングを行っています。

 そのような健康経営に関する取り組みが評価され、以下のとおり外部機関からの評価を得ています。

 当社における健康経営の取り組みは、従業員の健康を維持・増進することで会社の生産性の向上をひいては企業価値の向上を目指しています。なお、健康経営の実施は、役員の出席する会議体において結果の報告とそれに基づき策定された計画に承認を得ています。

 

項目

目標(2029年度)

2024年度実績

アブセンティーイズムの低減

1.5%以下

1.7%

プレゼンティーイズムの低減

5.5%以下

6.8%

ワークエンゲージメントの向上

偏差値 53以上

51.3

ポピュレーションアプローチ

BMI 25kg/m²以上の者の割合を減らす

20%以下

24.0%

ハイリスクアプローチ

40歳以上のメタボリックシンド

ローム予備軍と該当者の割合を減らす

24%以下

25.8%

メンタルヘルス不調者の発生

予防・早期発見・対応)

メンタルヘルス不調による

休職者の発生率

0.20%以下

0.66%

(注)健康経営に関する取り組みは連結子会社各社で行われていますが、規模・制度の違いから一律に記載せず、人財の大多数が所属する当社単体および国内関係会社(ゲンブ㈱、京都エレックス㈱、第一セラモ㈱、第一建工㈱、池田薬草㈱)を対象としています。なお、四日市合成㈱および㈱バイオコクーン研究所については、独自で取り組んでいるため対象外としています。

 

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3【事業等のリスク】

 当社グループでは、リスク管理に関し、組織的な対応として「リスクマネジメント統制委員会」を設置して、活動計画の策定、活動のレビュー、リスクの特定と対応策の検討などを行っています。当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フロー等に影響を及ぼす可能性があるリスクには、以下のようなものがあります。なお、これらのものは、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において当社グループが判断したものであり、事業等のリスクはこれに限られるものではありません。

①原材料の市況変動(顕在化する可能性:高、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループでは、主に石油化学製品系の原材料を使用しております。代理店・サプライヤー・顧客との連携を含む生産コスト削減や販売価格の是正に努めておりますが、原油・ナフサ価格の高騰による主要原材料の価格の上昇は当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

②為替の変動(顕在化する可能性:高、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 中国などのアジアを中心に生産拠点や販売拠点を設立するなど、積極的な海外展開を行っています。在外連結子会社等の財務諸表については、資産及び負債を期末日の為替レートで、収益及び費用を期中平均為替レートで円換算しているため、為替相場の大幅な変動により当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。また、外国通貨建取引については、為替予約等によりリスクを軽減させる措置を講じていますが、為替相場の大幅な変動により当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

③グローバル経済の変動(顕在化する可能性:低~中、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 海外にも生産拠点や販売拠点を設立するなど、グローバルな事業展開を行っています。このような海外展開において、予期し得ないような外国の法律・規則の変更、産業基盤の不安定性、人財確保の困難性、紛争・政治不安定化など、常に経済的、社会的リスクが存在し、これらが顕在化することによって、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

④競争の激化(顕在化する可能性:高、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループは、顧客との関係を密にしたソリューション提案や製品のカスタマイズ化などによる差別化戦略の推進により競争優位性の維持・向上に努めておりますが、競合他社の技術水準や生産力の向上による他社安価品への置き換え等が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります

⑤地政学に関するリスク(顕在化する可能性:中、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢、米国における保護主義的な政策の動向等により、地政学リスクが著しく高まっています。こうした政治的・社会的情勢の不安定化や外交関係の緊迫化、紛争等により事業環境が悪化し、当社グループの企業活動に対して、エネルギーや原材料価格の高騰、サプライチェーンの分断などが発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

⑥特有の法的規制等に係る課題(顕在化する可能性:中、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 法規制あるいは当局の法令解釈が従来よりも厳しくなること等により、当社グループの事業が規制を受ける可能性またはこれらの法規制に適合するために当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

⑦自然災害・事故等(顕在化する可能性:低、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 大規模地震等の大きな自然災害、感染症の拡大、製造拠点における火災事故等が発生した場合には、生産活動や原料搬入・製品搬出などが中断させられる可能性があります。製造・物流拠点の分散・見直し、在庫の分散保有等の事業継続計画(BCP)に基づく対策強化を進めておりますが、これらが発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります

⑧知的財産(顕在化する可能性:中、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 事業活動に関わる知的財産権の取得に努める一方、第三者の知的財産権侵害を防ぐため、第三者の知的財産等の調査を行っています。しかしながら、第三者との知的財産に関わる問題発生の可能性が無いとは言えず、訴訟等が発生した場合には当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

⑨情報セキュリティ(顕在化する可能性:中、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 事業活動において、顧客情報、個人情報、機密情報を保有しており、電子情報の形式で保管しています。したがって、情報セキュリティ方針、対策基準及び実施手順を定め、インフラ基盤を随時最適化することにより情報漏洩等に対する対策を講じています。しかしながら、第三者による不正アクセスやコンピューターウイルスの感染により、当社グループが保有する情報の漏洩や改ざん等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

⑩製品品質(顕在化する可能性:中、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 品質マネジメントシステムを構築し、品質保証の基本方針を遵守して高い品質の確保と顧客満足の向上に取り組んでいますが、予期せぬトラブル等により品質に関する問題が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

⑪気候変動に係るリスク(顕在化する可能性:中、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 さまざまな化学物質を取り扱うなかで「環境・安全・健康」を確保するためレスポンシブル・ケア活動を推進し、地球環境に配慮した事業活動を行っていますが、気候変動による気温上昇を抑制するためにカーボンプライシングや炭素税等が導入された場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。当社は、気候変動を重要な経営課題の一つとして認識しており、2022年3月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明しています。TCFDの提言に沿ったシナリオ分析を行い、気候変動が当社の事業活動に与える影響等について情報開示を進め、持続可能な社会の実現にむけた施策を推進しています。

⑫固定資産の減損(顕在化する可能性:高、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小~中)

 当社グループが保有する製造設備等の固定資産について、事業環境の変化に伴う収益性の低下や資産価値の下落等により減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、コメを始めとする食品などの値上がりや寒波の影響を受けて個人消費が停滞しました。2025年度は、実質賃金や個人消費の増加などにより緩やかな回復が見込まれています。一方で、米国による大幅な関税引き上げの不確実性や中国経済の動向といったリスク要因により、世界的に景気後退への警戒感も高まっています。また、為替相場の変動や金融政策の変更に起因する金利上昇の影響についても、一層不透明感が増しています。

このような環境下、当社グループは事業環境の急激な変化に迅速に対応し、企業活動の持続的発展に努めてまいりました。その結果、ハイエンドサーバ向け製品や新規電池材料の販売拡大の取り組みが奏功し、前年度比較で増収増益となり、売上高、営業利益ともに過去最高を更新しました。

4月から新たな中期経営計画「SMART 2030」が始動しました。さらなる研究開発の確度とスピードの向上を図り、競争力を向上させます。人事制度改革を通じ、人的資源の最大効率活用、企業文化の革新を図ります。これらの戦略的な取り組みにより、新規事業の早期収益化を実現し、当初計画を前倒しすることをめざします。

当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ25億75百万円増加し、971億13百万円となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ6億32百万円減少し、526億8百万円となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ32億7百万円増加し、445億4百万円となりました。

 

b.経営成績

 当連結会計年度の経営成績は、売上高は732億55百万円(前期比16.1%増)、営業利益は53億51百万円(前期比157.6%増)、経常利益は57億37百万円(前期比178.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は25億85百万円(前期比120.1%増)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 界面活性剤の売上高は193億18百万円(前期比4.3%増)、営業利益は15億47百万円(前期比14.8%減)となりました。

 アメニティ材料の売上高は91億30百万円(前期比8.3%増)、営業利益は7億73百万円(前期比68.4%増)となりました。

 ウレタン材料の売上高は92億47百万円(前期比4.2%増)、営業損失は2億19百万円(前期は2億43百万円の損失)となりました。

 機能材料の売上高は271億51百万円(前期比26.6%増)、営業利益は40億44百万円(前期は10億3百万円の利益)となりました。

 電子デバイス材料の売上高は79億67百万円(前期比46.0%増)、営業損失は53百万円(前期は43百万円の損失)となりました。

 ライフサイエンスの売上高は4億39百万円(前期比12.0%増)、営業損失は7億41百万円(前期は9億14百万円の損失)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比べて6億9百万円増加し、165億56百万円となりました。

 

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、得られた資金は75億28百万円(前期は70億91百万円)となりました。これは、売上債権の増加12億96百万円(前期は31億99百万円の増加)、棚卸資産の増加15億62百万円(前期は26億84百万円の減少)などにより資金が減少したことに対し、税金等調整前当期純利益51億94百万円(前期は23億43百万円)、減価償却費32億23百万円(前期は32億16百万円)、仕入債務の増加13億7百万円(前期は21億50百万円の増加)などにより資金が増加したことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、使用した資金は21億38百万円(前期は20億8百万円)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出21億40百万円(前期は25億2百万円)などにより資金が減少したことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、使用した資金は50億45百万円(前期は16億46百万円の収入)となりました。これは、長期借入れによる収入40億円(前期は86億3百万円)により資金が増加したことに対し、長期借入金の返済70億27百万円(前期は55億34百万円)、配当金の支払い8億61百万円(前期は5億73百万円)などにより資金が減少したことによるものです。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前期比(%)

界面活性剤(百万円)

17,688

103.9

アメニティ材料(百万円)

6,061

111.5

ウレタン材料(百万円)

8,352

103.7

機能材料(百万円)

15,465

135.3

電子デバイス材料(百万円)

7,777

153.7

ライフサイエンス(百万円)

400

110.2

合計(百万円)

55,744

117.7

(注)生産実績の金額は平均販売価格で表示しております。

 

b.受注実績

 当社グループは、受注生産を行っていないため、該当事項はありません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前期比(%)

界面活性剤(百万円)

19,318

104.3

アメニティ材料(百万円)

9,130

108.3

ウレタン材料(百万円)

9,247

104.2

機能材料(百万円)

27,151

126.6

電子デバイス材料(百万円)

7,967

146.0

ライフサイエンス(百万円)

439

112.0

合計(百万円)

73,255

116.1

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり採用した会計方針及びその適用方法並びに見積りの評価について
は、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」及び「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しているため省略しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

1)財政状態

(資産合計)

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ25億75百万円増加し、971億13百万円となりました。

 流動資産は572億47百万円となり、前連結会計年度末に比べ36億32百万円増加しました。これは主に、現金及び預金が6億25百万円、受取手形及び売掛金が15億43百万円、商品及び製品などの棚卸資産の合計が17億59百万円増加したことなどによるものです。

 固定資産は398億65百万円となり、前連結会計年度末に比べ10億57百万円減少しました。これは主に建設仮勘定が7億21百万円減少したことなどによるものです。

(負債合計)

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ6億32百万円減少し、526億8百万円となりました。

 流動負債は265億32百万円となり、前連結会計年度末に比べ13億73百万円増加しました。これは主に、短期借入金が15億47百万円減少したものの、支払手形及び買掛金が15億4百万円、賞与引当金が6億37百万円増加したことなどによるものです。

 固定負債は260億75百万円となり、前連結会計年度末に比べ20億5百万円減少しました。これは主に、長期借入金が18億35百万円減少したことなどによるものです。

(純資産合計)

 当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ32億7百万円増加し、445億4百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益25億85百万円及び剰余金の配当8億61百万円などにより利益剰余金が17億24百万円、非支配株主持分が12億25百万円増加したことなどによるものです。

 

2)経営成績

 当連結会計年度の業績としましては、すべてのセグメントが増収になりました。『機能材料』セグメントのハイエンドサーバ向け光硬化樹脂材料及び『電子デバイス材料』セグメントの新規電池材料の販売が大幅に伸長したことから、売上高は732億55百万円(前期比16.1%増)となりました。

 損益面につきましては、『機能材料』セグメントを中心として売上高が伸長したことにより収益性が改善し、営業利益53億51百万円(前期比157.6%増)、経常利益は57億37百万円(前期比178.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は25億85百万円(前期比120.1%増)となりました。

 

b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 2020年4月から開始した中期経営計画「FELIZ 115」が終了しました。売上高は、『機能材料』セグメントのハイエンドサーバ向け光硬化樹脂材料及び『電子デバイス材料』セグメントの新規電池材料の販売が大幅に伸長したことから増収となりました。また、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は、『機能材料』セグメントを中心として売上高が伸長したことにより収益性が改善したことにより増益となりました。

 

c.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報

1) 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

2) 資金需要

 当社グループの事業活動による資金需要は主に、製品の原材料の仕入、製造に要した費用、外注費及び販売費といった運転資金需要や、新製品を創製するための研究開発費などがあります。また、投資活動による資金需要は主に、生産性の向上や新製品の製造のための設備の購入、IT設備投資及び事業展開上必要な投資有価証券の取得などがあります。

3) 財務政策

 当社グループは中期経営計画「FELIZ 115」の資金として2020年2月に銀行保証付私募債を発行し、60億円を調達しております。また、かねてより78億円のコミットメントライン契約(契約期間3年)を締結することで、機動的な資金確保にも留意しております。今後も、資本市場からの調達を視野に入れた財務体質の改善強化、あるいは流動資産をはじめとする資産効率の改善に努めます。

 なお、海外子会社につきましては、邦銀の現地拠点等から直接に資金を調達しております。

 

d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

新中期経営計画「SMART 2030」では、2030年3月期を最終年度として、数値目標を掲げております。

①連結売上高   1,000億円

②連結営業利益   100億円

③連結営業利益率   10.0%

④総資産回転率    1.0回

⑤設備投資額    300億円(5年累計)

⑥ROE        10.0%

⑦ROIC         8.0%

 

e.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(界面活性剤)

界面活性剤の売上高は、総じて堅調に推移しました。

国内では、IT・電子用途は大きく落ち込みましたが、機械・金属用途、塗料・色材用途は堅調に推移し、石鹸・洗剤用途は大幅に伸長しました。

海外では、繊維用途は堅調に推移しましたが、ゴム・プラスチック用途、塗料・色材用途は低調に推移しました。

その結果、当セグメントの売上高は193億18百万円(前期比4.3%増)となりました。

営業利益は、売上高が堅調に推移したものの営業経費が増加したことにより、15億47百万円(前期比14.8%減)となりました。

 

(アメニティ材料)

アメニティ材料の売上高は、総じて大幅に伸長しました。

国内では、ビニル系高分子材料はゴム・プラスチック用途が堅調に推移し、セルロース系高分子材料はエネルギー・環境用途が大幅に伸長しました。ショ糖脂肪酸エステルは食品用途が大幅に伸長しました。

海外では、ショ糖脂肪酸エステルは香粧品用途が堅調に推移し、食品用途が大幅に伸長しました。

その結果、当セグメントの売上高は91億30百万円(前期比8.3%増)となりました。

営業利益は、売上高が大幅に伸長したことにより、7億73百万円(前期比68.4%増)となりました。

 

(ウレタン材料)

ウレタン材料の売上高は、総じて堅調に推移しました。

フロン規制に関連する環境配慮型の合成潤滑油は低調に推移しましたが、公共工事に関連する土木用薬剤は堅調に推移し、機能性ウレタンはIT・電子用途が大幅に伸長しました。

その結果、当セグメントの売上高は92億47百万円(前期比4.2%増)、営業損失は2億19百万円(前期は2億43百万円の損失)となりました。

 

(機能材料)

機能材料の売上高は、総じて大幅に伸長しました。

国内では、難燃剤はゴム・プラスチック用途が低調に推移しましたが、水系ウレタンは繊維用途が堅調に推移し、光硬化樹脂材料はIT・電子用途が大幅に伸長しました。

海外では、難燃剤はゴム・プラスチック用途が低調に推移しましたが、光硬化樹脂材料はIT・電子用途が大幅に伸長しました。

その結果、当セグメントの売上高は271億51百万円(前期比26.6%増)となりました。

営業利益は、売上高が大幅に伸長したことにより、40億44百万円(前期は10億3百万円の利益)となりました。

 

(電子デバイス材料)

電子デバイス材料の売上高は、総じて大幅に伸長しました。

ディスプレイ用途のイオン液体は堅調に推移し、太陽電池用途の導電性ペーストは大幅に伸長しました。電池用途のリチウムイオンバッテリー用材料は大幅に伸長しました。

その結果、当セグメントの売上高は79億67百万円(前期比46.0%増)となりました。

営業利益は、売上高が大幅に伸長したものの研究開発費を中心に営業経費がかさみ、53百万円の営業損失(前期は43百万円の損失)となりました。

 

(ライフサイエンス)

ライフサイエンスの売上高は、前期と比べ47百万円増加し、4億39百万円(前期比12.0%増)となりました。

医薬品添加物や天然素材からの抽出物の濃縮化、粉末化による健康食品等の受託事業は堅調に推移しました。

営業利益は、売上高が伸長したことに加え、営業経費が減少したことにより、7億41百万円の営業損失(前期は9億14百万円の損失)となりました。

 

5【重要な契約等】

 当社は、2024年12月25日開催の取締役会において、当社の営む「特殊ポリエーテル及び関連材料」事業を吸収分割により当社の連結子会社である四日市合成株式会社に対し承継することを決議し、2025年1月27日に吸収分割契約を締結しました。

 詳細は、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりであります。

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、工業用薬剤メーカーとして、産業の化学化にこたえる存在感のある企業であり続けることを経営理念とし、積極的な研究活動を行っております。

 2025年4月から始まる中期経営計画「SMART 2030」では、営業と研究を一体化した事業本部制を導入し、生産技術研究所や京都中央研究所を設立して、研究開発の強化とスピードアップを図ります。

 当連結会計年度は、電池材料やセルロースナノファイバーの新規用途開発、IT・電子用途等を中心とした高付加価値付与品の研究開発に注力し、出願した特許は206件であります。研究開発に要した費用の総額は3,759百万円で、これは売上高の5.1%にあたります。

 各セグメント別の研究の狙いと当連結会計年度の主な研究開発成果は次のとおりであります。

(1)界面活性剤

 従来から注力している水生生物毒性に配慮した環境対応型界面活性剤の市場開発に加え、「環境配慮と高機能化」をキーワードに高付加価値製品の研究開発に取り組んでおります。

 当連結会計年度の成果として、様々な産業分野でエネルギーコスト削減やVOC(揮散有機化合物)削減に繋がる工程薬剤、樹脂分野向けを中心とした反応性乳化剤や糖誘導体、電子・情報機器関連材料分野向けの洗浄剤、表面処理剤の開発を実施しました。また、海外の関係会社に対しては、化成品分野全般の機能加工薬剤の技術支援を行うとともに、協力して塗料・粘着剤分野向け添加剤の開発を実施しました。

 なお、本セグメントにおける研究開発費の総額は542百万円であります。

(2)アメニティ材料

 食品、医薬・香粧品、トイレタリーをはじめ、水畜産、土木、農業、脱臭等の産業分野を対象に、生活関連産業密着型の素材提供と機能を追究するための研究開発を進めております。

 当連結会計年度の成果として、各種用途に適したショ糖脂肪酸エステル及び配合製剤については、応用技術検討に取り組みました。また、食品分野、香粧品分野を中心とした国内外の市場開発支援も行いました。カルボキシメチルセルロースナトリウムについては、リチウムイオン電池向け分散剤としての品質向上と応用開発検討に注力しました。セルロースナノファイバーについては、市場要求に応える新規グレードも創製し、社会実装に向けた用途開発を加速させました。

 なお、本セグメントにおける研究開発費の総額は486百万円であります。

(3)ウレタン材料

 社会的及び顧客ニーズである「地球環境や資源・エネルギー及び健康に配慮した高機能性を有するウレタン材料」に重点を置き、研究開発に取り組んでおります。

 当連結会計年度の成果として、機能性ウレタン分野では、長期難燃性、信頼性に優れた高機能性電気絶縁材料、水フィルター等に用いる接着剤用ウレタンプレポリマー、含水ゲル化材、次に、フォーム分野ではトンネル掘削用岩盤固結材、温暖化ガスの排出量削減に寄与するノンフロン及び水発泡断熱材用ポリオールやシステムなどの開発を実施しました。

 なお、本セグメントにおける研究開発費の総額は436百万円であります。

(4)機能材料

 VOCを主とした環境リスクや省エネルギーに配慮した水系ウレタン樹脂、光(紫外線・電子線)硬化性樹脂と難燃剤をはじめとした樹脂添加材料の研究開発を進めております。

 当連結会計年度の成果として、自動車、家電、建築等への塗料・接着材料、フィルム、金属等へのコーティング材料及びフィラー、繊維等へのバインダー材料としての水系ウレタン樹脂の応用開発、液晶テレビ等フラットパネルディスプレイ表示部材用途等をはじめとする電子材料分野、及び、プラスチック・建材(木材)等への意匠性を付与する機能性塗料・コーティング用途に用いられる紫外線硬化樹脂材料用モノマー及び機能性オリゴマーの開発を実施しました。また、環境に配慮した次世代の発泡ポリスチレン用難燃剤の開発を実施しました。既存品においては、増加する需要への供給体制強化や製造コスト削減などに取り組みました。

 なお、本セグメントにおける研究開発費の総額は1,380百万円であります。

(5)電子デバイス材料

 エネルギーデバイス及びディスプレイデバイスに関する新規デバイス及び材料を中心に研究開発を進めております。

 当連結会計年度の成果として、リチウム電池材料について新規活物質向けバインダー材料を開発し、実用化に向けて検討をさらに進めております。また、低粘度で高イオン導電性を示すイオン液体の開発は、エネルギー分野・電子デバイス材料分野でのアプリケーションに向けてさらなる技術開発及び市場開拓を促進しております。

 なお、本セグメントにおける研究開発費の総額は634百万円であります。

 

(6)ライフサイエンス

 健康社会への貢献を目指し、「カイコ冬虫夏草」や「Sudachin®」などの健康食品に関する機能性研究を行っております。また、当社の界面活性剤技術を活用し、食品に用いられる難溶性物質の可溶化について事業化に向けた研究を進めています。

 当連結会計年度の成果として、「カイコ冬虫夏草」によるヒトでのテストステロン増加作用を明らかとし、学会・論文での発表を行っております。また、難溶性物質の可溶化について試作設備を導入し、162期の新製品投入、実績化に向けた研究開発を促進しております。

 なお、本セグメントにおける研究開発費の総額は278百万円であります。