第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社は「新しい価値の創造を通じて地球環境や資源を護り、広く社会の繁栄と豊かな暮らしの実現に貢献できる企業を目指します。」という経営理念のもと、持続的成長力をもつ企業たるべく事業展開を図っております。

2024年度を初年度とする『2026中期経営計画』の策定においては、この経営理念を改めて見つめなおし、DNTグループが重視するマテリアリティを刷新のうえ、創立100周年となる2029年度に向けてありたい姿(ビジョン2029)を明確化いたしました。

 

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループでは企業価値の向上に向けて、持続的な事業成長を果たすための指標としては売上高を、資本コストを踏まえた本業における利益成長を推進するための指標としては営業利益およびNOPAT-ROE(税引後営業利益ベースROE)を設定しており、当社のNOPAT-ROEの分母は前期末及び当期末株主資本の平均値であります。

株価を意識した経営の観点から、安定的かつ積極的な株主還元を通じて株主価値の向上を目指すべく、株主還元指標としてDOE(株主資本配当率)を採用しており、当社のDOEの分母は原則として前期末の株主資本を基準としております。

ビジョン2029及び2026中期経営計画における各指標の連結目標値は下記のとおりであります。

 

参考:2023年度実績
(2023中期経営計画最終年度)

2026年度目標
(2026中期経営計画最終年度)

2029年度目標
(2029中期経営計画最終年度)

売上高

719億円

800億円

1,000億円

営業利益

49億円

80億円

100億円

NOPAT-ROE

6.1%

8.0%程度

8.0%程度

DOE

2.4%

3.0%以上

5.0%以上

 

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(3)経営環境及び対処すべき課題

2026年3月期における当社グループを取り巻く事業環境は、国際的な政治・経済の不確実性やサプライチェーンの混乱を背景に、引き続き市場動向やリスク要因に対する注視が必要な状況です。国内塗料事業においては、建築・土木分野での人手不足や住宅着工件数の長期的な低迷といった構造的課題が継続する一方、金属製品や各種機械向けには安定的な需要が期待されます。海外塗料事業については、日系自動車メーカーによる生産調整の影響が継続し、米国をはじめとする各国の通商政策や景気動向に大きく左右される状況が続くと想定されます。照明機器事業については、都市部の再開発案件を背景に堅調な需要環境が継続すると見込まれます。なお、現在当社の一部製品においてJISマーク表示の一時停止処分を受けております。これに対し、当社グループでは是正措置の徹底及び管理体制の強化を進めており、処分の早期解除が実現した場合は業績の好転が見込まれます。

中長期的な見通しとしましては、国内塗料市場においては、今後マーケットの大きな伸長を期待することは難しいと見込まれます。一方、サステナビリティに関連する分野を成長市場かつ先駆的領域と位置づけて注力し、収益性の改善に努めてまいります。併せて、新興国を中心とした海外塗料市場を市場の拡大が見込まれる成長市場と位置付け、売上比率を高めていく必要があると考えております。また、当社は前中期経営計画である2023中期経営計画において、5つの重点施策を中心に持続的成長の実現に向けた基盤整備と成長軌道の確立に向けて取り組んでまいりました。各施策における成果と課題は下記のとおりであり、これらを踏まえた当社の課題としては、事業セグメントや塗料部門ごとの戦略を明確にした上で、それにふさわしい人材育成と組織体制を再構築すると同時に、メリハリをつけた資源配分を行っていくこと等と認識しております。

 

 

重点施策

成果

課題

提供価値の強化

•防食、コーティングの両技術センター活用による
顧客リレーションの強化、ソリューション営業の深化

•新たな成長領域の育成、探索

価格競争力の強化

•原材料コスト低減施策によって原材料価格高騰影響の緩和に貢献•拠点集約による固定費削減の進展

•原材料コストの抜本的改善には至らず

•生産工場・設備の老朽化問題が残存

販売体制の強化

•市場開発部の新設により、市場や製品横断の営業活動が活性化

•部門ごとの個別最適にとどまり、技術
開発を含めた総合力を発揮しきれず

労働生産性の向上

•「働き方改革」や「ウィズコロナ」をキーワードと して柔軟な勤務体系が定着化

•人的資本経営への本格的な取組みは検討段階に留まる

海外事業の強化

•製造現法を浙江に移転し、上海現法の外部への譲渡を完了

•中国事業の合理化が大幅に遅延

•攻めへのリソースの配分未実施

 

上記の経営理念と経営環境を踏まえ、事業活動を通じた社会への貢献及びその事業活動の持続性確保という視点から、当社グループが対処すべき重要課題を6つのマテリアリティとして下記のとおり再定義いたしました。詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」を参照ください。

①安全・快適な社会と社会インフラへの貢献

②未来を見据えた製品及び技術開発による社会への貢献

③気候変動対策・脱炭素社会への貢献

④資源の循環・サーキュラーエコノミーへの貢献

⑤多様な人材の確保と能力を発揮できる環境づくり

⑥コーポレート・ガバナンスの強化、社会的責任の遂行

 

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(4)経営戦略

当社が設定する各マテリアリティの実現に向けて、創立100周年となる2029年度におけるDNTグループのありたい姿として、「(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、従前より掲げていた連結財務目標「売上高1,000億円、営業利益100億円」を明確な目標として再設定いたしました。さらに、資本コストと株価を意識した経営を推進すべく「NOPAT-ROE(税引後営業利益ベースROE)8.0%程度の確保、DOE(株主資本配当率)5.0%」という2つの業績指標を新たに追加しました。

これらをグループ共通の中長期目標「ビジョン2029」と位置づけることで、全てのセグメントを通じて企業価値の向上に邁進してまいります。2026中期経営計画においては、ビジョン2029からのバックキャストと2023中期経営計画の振り返りに基づき、3年間で遂行すべき3つの基本方針を定めました。

 

①成長市場と先駆的領域への注力

持続性ある事業成長に向けて、サステナビリティ分野を中心とする成長市場や先駆的領域に対して、社内リソースの多くを配分し注力してまいります。

②外部リソース獲得・活用による事業基盤拡大

市場成長が見込まれる海外において外部リソースの活用を前提とした事業基盤の拡大を推進してまいります。国内においては大きな市場拡大が見込めないものの、効率化を図る上で外部との連携が重要と考えております。

③人材及び事業活動の全社最適化

設備刷新やDXを絡めた職場環境改善を推し進め、照明機器や蛍光色材も扱う総合塗料メーカーとしての優位性を発揮してまいります。

 

以上の諸施策を強く推進することで、創業100周年を迎える2029年度には、連結売上高1,000億円、連結営業利益100億円、NOPAT-ROE8.0%程度の達成とDOE5.0%の実現を目指し、ひいては企業価値の向上に邁進してまいります。

 

(品質に関する不適切行為)

当社は、一部の日本産業規格(以下、JISという)認証製品について、検査結果を改ざんし製品を出荷、社内で定めた検査規格から逸脱した製品を出荷していることが確認されました。本事案につきましては、2023年10月26日付でJISマーク表示の一時停止を受領しておりましたが、2024年3月7日付で解除されております。また、一部のJIS認証製品において、一般財団法人日本塗料検査協会に申請を行っていない外注先製造会社に対して製造を委託し、JISマークを表示して製品を出荷する等、外注管理の不備があることが確認されました。本事案は、2024年11月29日付でこれらの不適切事案について一般財団法人日本塗料検査協会に報告を行い、同協会の審査を受審し、JISマークの一時停止の通知を受領しました。加えて、社内で定める検査手順や条件を遵守せずに製品を出荷した事案が確認されました。

上記の事案の対象製品の組成及び品質に問題がないと判断しております。そのうえで、お客様に対しては、謝罪とともに事案の内容及び当該製品の品質が担保されていることについて、ご説明し、適切に対応しております。なお、2023年10月26日に公表した不適切行為及び2024年11月29日付で公表したJISマーク表示の一時停止について、外部弁護士を中心とする特別調査委員会の調査結果を踏まえ、2025年5月12日付で調査報告書を公表いたしました。当社では、今回の事態を重大なものとして受け止め、特別調査委員会の指摘を踏まえ、引き続き全力を挙げて信頼回復に向けて取り組んでまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(サステナビリティ全般)

1.ガバナンス

当社グループは「新しい価値の創造を通じて地球環境や資源を護り、広く社会の繁栄と豊かな暮らしの実現に貢献できる企業を目指します。」という経営理念のもと、持続的成長力を持つ企業たるべく事業展開を図っております。また、株主の皆様をはじめとする様々なステークホルダーから「存在価値のある企業」として認められるためには、コーポレート・ガバナンスの充実・強化が経営の最重要課題の一つであると考えます。そのために、当社では取締役会の他、取締役会の諮問機関として、指名諮問委員会および報酬諮問委員会を設置しており、執行役員制度の採用により、経営と業務執行を適切に分離し、経営環境の変化に対応して迅速・適確な意思決定と管理監督を行うとともに、業務執行の効率を高めております。社外取締役や監査役制度により経営監視機能を強化・維持し、さらに、決算や経営施策等の情報開示を適時かつ適切に行う等、透明性の高い企業経営の実現に向けて努力しております。

サステナビリティに関しては、取締役会の管理監督のもと、サステナビリティに関する委員会として2021年に「サステナビリティ委員会」を設置し、原則年2回開催しています。この委員会は、社長を委員長とし、執行役員(取締役兼務含む)、常勤監査役と管理本部各部長によって構成し、事務局は経営企画室が担っています。委員会では、グループ全体のサステナビリティに関する方針や目標・計画などの審議・決定、計画推進・目標達成状況のモニタリングなどを行っており、進捗状況等については取締役会に報告するとともに、委員会で審議された重要事項については、取締役会において審議・決定しています。

 

2.戦略

当社グループは、長期ビジョンと経営理念に基づき、社会課題の解決と持続的な企業価値向上を目指し、重要課題(マテリアリティ)を特定しています。2023年度には、ビジョン2029及び2026中期経営計画の策定に伴い事業環境や外部環境の変化を踏まえ、下記プロセスを通じてマテリアリティの見直しを行いました。

STEP1

社会課題の把握・整理(ESG評価基準などのガイドラインを踏まえ、当社独自の項目を追加)

STEP2

社会課題の抽出・重要性の評価(若手を含む社内アンケートを実施し、幅広く意見を抽出。外部専門家の意見を聴取し、抽出した課題に対する重要性を評価)

STEP3

妥当性の評価(7回のサステナビリティ委員会を開催し、マテリアリティの整理と目指す姿について議論)

STEP4

マテリアリティの特定(サステナビリティ委員会、経営会議、取締役会における審議、承認)

 

 

 

具体的には事業活動を通じた社会への貢献、その事業の持続性確保という視点から6つのマテリアリティを特定しました。それぞれのマテリアリティに対しKPIを設定し、2024年度から取組みを推進しております。

マテリアリティ

目指す姿

安全・快適な社会と社会インフラへの貢献

•社会インフラの強靭化に貢献する製品の開発と普及

•ライフサイクル延伸に貢献するサービス開発と普及

•製品を通じたユーザーの人材不足や自動化への適応

•製品を通じた社会全体の防災・減災と安全への貢献

未来を見据えた製品及び技術
開発による社会への貢献

•成長が期待される事業領域向けの高付加価値製品・技術開発の推進

•コーティングと照明の力で生活に彩りを加える製品・技術開発の推進

気候変動対策・脱炭素社会への貢献

•環境対応、気候変動対策に資する製品開発の強化

•製品ライフサイクル全体における気候変動対策の推進

•調達、製造、販売過程における気候変動対策・環境対応の推進

資源の循環・サーキュラー
エコノミーへの貢献

•資源の循環、廃棄物削減への貢献

•製造過程におけるサーキュラーエコノミーへの貢献

多様な人材の確保と能力を発揮できる環境づくり

•持続的成長のための多様で優秀な人材の確保

•働きやすい環境整備によるエンゲージメント向上

•次世代を担う人材育成の促進

コーポレート・ガバナンスの
強化、社会的責任の遂行

•コンプライアンス意識向上による不正・不祥事防止

•リスクマネジメントの継続的な向上

•ステークホルダーエンゲージメントの推進

 

 

3.リスク管理

当社グループのリスク管理としては、社内ではコンプライアンス委員会、リスク管理委員会を設置しており、外部ではヘルプラインを設置しリスクの管理を行っております。また取締役会では社外取締役3名、監査役会では社外監査役2名が担当しており、経営やリスク監視の強化を進めております。サステナビリティに関連するリスク管理について、全社リスクマネジメントの枠組みの中でサステナビリティ委員会がこれに主導的に関与(抽出や評価等)する形で運用し、気候変動を含むサステナビリティ関連リスクの低減に努めており、サステナビリティ関連リスクを識別及び評価し、取締役会に報告しております。

リスクマネジメントとしては、当社は、2007年2月に「リスク管理規定」を定め、グループ経営において重大な影響を与える危機の発生の予防を図るとともに、危機が発生した際の影響を最小限に止める体制を整備しています。また、リスク管理の全社的推進とリスク管理に必要な情報の共有化等のため、リスク管理委員会を設置しています。具体的な取組みとして、毎年、「リスクの洗い出し(経営リスク、事故・災害リスク等)」、「リスク分析(影響度×発生頻度を元にリスク度の優先順位付を実施)」、「リスク対策(短期・中長期的対策)」を実施し、活動結果については、リスク管理委員会で審議し、取締役会に報告しています。

当社グループでは、全従業員を対象に、国内において毎年コンプライアンス研修を実施するとともに、新入社員研修や管理職研修等の階層別研修を行っています。また、各職場での具体的な課題、要望事項を経営マターとして認識することを目的とし、経営層と従業員における意見交換の場として「ラウンドテーブル」を実施し、社内のコミュニケーション活性化や風土改革に繋げていきます。海外では、海外赴任者向けにハラスメントや各国特有のテーマに絞った研修を実施し、海外現地法人の従業員に対しては4コマ漫画を使った事例を配布するなど、啓蒙活動に取り組んでいます。

また、法令違反等の早期発見と未然防止を目的に、内部通報を受ける窓口として「ヘルプライン」を社内(コンプラ相談窓口)及び社外(顧問弁護士)、更に海外の連結子会社及び同社の顧問弁護士等に設け、当社グループ全役職員に周知徹底しています。通報者からの内部通報に対して、調査、是正措置、再発防止措置及び通報者の保護(通報者への不利益な取り扱いの禁止)等、「内部通報規定」に基づき、ルールを整備しており、内部通報の運用状況については、定期的(年2回)にコンプライアンス委員会及び取締役会に報告しています。

 

4.指標及び目標

当社グループは、長期ビジョンと経営理念に基づき、社会課題の解決と持続的な企業価値向上を目指し、具体的なKPIを設定して、サステナビリティ経営を実践しています。現在の主なKPIは以下のとおりです。

 

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このうち、気候変動対応への取組みおよび人的資本については、以下に詳細を記載しています。

 

(気候変動に関する取組み)

当社グループでは、気候変動に対する取組みを重要な経営課題として捉えており、経営戦略と連動して取組みを推進しています。「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に基づき「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」に関する情報、シナリオ分析や関連情報の開示を進めています。当社グループの企業価値向上、更に社会の持続可能性に貢献すべく、気候変動に対する取組みを強化していきます。

 

1.ガバナンス

当社は、気候変動対策に関する中長期目標などの重要な審議については、2021年度より社長を委員長とする「サステナ ビリティ委員会」(原則年2回開催)において行い、当社グループ全体でのサステナビリティ関連のリスクの識別、当社グループへの事業及び財務影響を評価し、具体的な対応策を策定しています。取締役会は、同委員会へ全社的な気候変動に対する取組みの協議、施策の決定及び進捗管理を委嘱し、同委員会から報告を受けています。

 

2.戦略

当社は、気候変動が及ぼす影響については、TCFD提言に基づき脱炭素が極端に進行する世界の1.5/2℃シナリオと自然災害が極端に激甚化する世界の4℃シナリオの両極端を想定し、現実世界がどちらに進んでも事業を遂行できるレジリエントな体制を構築するため、気候変動が当社グループの事業にもたらす「リスク」と「機会」を明確にし、「リスク」を低減し、「機会」を拡大するための事業戦略立案に向けて、シナリオ分析を実施しました。

 

3.リスク管理

当社グループでは、グループ全体のリスク管理とリスク管理に必要な情報を共有し、リスクの未然防止及び会社損失の最小化を図るため、「リスク管理委員会」を設置しています。気候変動に関連するリスクについては、リスク管理委員会と情報共有、連携する形でサステナビリティ委員会が主導的にリスクの抽出や評価等を行っています。

 

4.指標及び目標

当社グループでは、2029年度の創立100周年に向け、当社グループのScope1、Scope2の削減目標を「2021年度比30%削減」と定め活動してきましたが、今年度より2050年のカーボンニュートラル達成を見据え、40%削減に目標水準を引き上げて取り組んでいきます。バリューチェーン全体では、国内グループのScope3の算定により現状把握を行っていますが、海外グループの算定実施や削減目標の設定検討を今後の課題としています。

 

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また、当社のマテリアリティで掲げている気候変動対策とともに環境改善として以下の取組みを進めております。

 

環境対応製品

当社では、製品ライフサイクルの視点で環境負荷を低減するため、2026年度までに環境対応製品出荷比率を70%以上とすることを目標としています。今後も、塗料配合や塗装工程などを考慮した環境対応製品の開発に取り組んでいきます。

 

廃棄物排出量の削減

当社は、廃溶剤の再利用や廃塗料のセメント原料へのリサイクル化、その他廃棄物のリサイクルにより、最終埋め立て処分量の主な塗料タイプその他4%削減に取り組んでいます。また、廃棄物発生量を削減するため、生産効率の見直しや品質向上に努めています。

 

大気汚染防止

当社は、SOx・NOx・ばい塵(すす)などの大気汚染物質が規制値を超えて工場や事業所から排出・飛散しないように大気汚染防止法・条例・協定を遵守し、その対策を講じています。

 

水質汚濁防止

当社では、水質汚濁防止法・条例を遵守しているほか、工場・事業所にて定期的に水質を検査し、汚濁防止に努めています。また、水質汚濁につながるような漏洩事故の発生を想定して「緊急事態発生対応ガイドライン(事前処置とその対策)」を作成し、事故の未然防止と緊急時の対応に備えているほか、ガイドラインに基づいた防災訓練を定期的に実施しています。

 

水利用量

当社では、水性塗料の原料や、工場設備の冷却水などとして水資源を取り扱っています。水資源の枯渇や水質悪化のリスクを考慮し、排水管理だけでなく適正な水利用に取り組んでいきます。

 

化学物質の管理

主力製品である塗料には多くの化学物質が使用されており、生産工程で取り扱う化学物質による地球環境や人間の健康への影響を避けるため、適切な管理が必要となります。関連法規制を遵守するとともに、原材料などに使用する化学物質については、公共機関からの情報や原材料の安全データシート(SDS)などの情報をもとにデータベース化、当社内におけるリスク評価をもとに化学物質のリスクアセスメントを実施しています。また、製品のSDSを作成し、お客さまへ適切な情報発信を行っています。

 

化学物質規制への対応

これまでの化学物質規制の考え方は、危険有害性の高い特定の化学物質の使用を規制・禁止するハザード評価によるものでしたが、現在では、健康や環境への有害性と暴露の頻度からリスクを評価し適切に管理する方向に変わっています。近年、労働安全衛生法、化管法や化審法が強化され、対象化学物質が拡大しています。化審法で第二種特定化学物質に指定された、ポリ(オキシエチレン)=ノニルフェニルエーテル(NPE)についても、代替原料への切り替え検討を進めています。化学物質を取り扱う企業にとっては、ますます適切な管理が求められる状況となっています。当社では、こうした動向を注視するとともに個別の動きを確認しながら、今後も国内外における化学物質規制に適切に対応していきます。

 

(人的資本に関する取組み)

1.戦略

(1)人材育成方針

当社は、「一人ひとりが「自ら考え、行動に移す」こと、周囲へ発信し、刺激を与え、頼られ信頼される人材の育成」という人材育成方針のもと、次の点に取り組んでいます。

・主体的に課題に取組み、執念を持って成果に繋げる人材育成

・多様な個性と能力を尊重し、チャレンジ精神ある人材が活躍できる組織風土の実現

・仕事に基づき、一人ひとりの成長を支援するための能力開発教育を推進

 

(2)社内環境整備

当社は、人材育成方針に基づき、次の制度を導入し、人材育成に努めています。

人事制度

・人材を軸に会社を活性化できる人事システムを構築

・成果に繋がる行動をとった人、成果を上げた人が報われる評価体系

・人材を軸として組織横断的に適材適所を進める施策として公募制度を導入

研修制度

・階層別研修(管理職研修、新入社員研修、中堅社員育成研修、中堅リーダー研修、新任基幹職研修)、管理職研修にてマネジメント力を強化。部門別研修、OJTを通じて、自身の成長へ繋げられる研修を実施

・海外事業拡大に向け、若手が活躍できる人材の育成を目的にトレーニー制度を導入

・社員の自己啓発の促進とキャリア形成支援のための通信教育制度を導入

働き方の多様性

・社員が生き生きと働ける職場づくり、ウェルビーイングを高めパフォーマンスの向上を目指し、自己選択による勤務時間の繰上げ繰下げ、フレックスタイム、在宅勤務と柔軟な勤務制度を導入

 

これらの制度のもとに以下の取組みを進めております。

 

女性社員の採用比率・女性管理職比率

女性活躍推進法に基づく行動計画において、「採用者に占める女性比率を20%以上とする」として、女性社員の積極採用を実施してきました。2024年度の当社の女性社員の採用比率は18.9%、女性管理職比率は3.6%とKPIは未達ながらも年々増加しており、今後も継続して活動を行っていきます。

 

再雇用制度・高齢者雇用の推進

定年退職者が引き続き就労することを希望した場合、高齢者雇用安定法の趣旨に基づいて「シニアスタッフ制度」を採用しています。これは定年退職者の豊富な経験・知識・技能を会社の業務に活かし、併せて高齢者の生きがいの充実を図りながら会社の発展に資することを目的としたものです。

 

障がい者雇用の促進

障がい者の社会参加と職業的自立を図るために、雇用・就労の場を確保することが企業としての社会的責任です。2024年度における当社の障がい者の雇用率は3.1%と、法的基準(2.5%)を満たしております。

 

男女の賃金差異

男女の賃金差異を算出したところ、正社員では78.0%、パート・有期社員では60.8%となっています。賃金は性別に関係なく同一の基準を適用しており、人数、社員資格、在籍年数の違い等により男女で差が生じています。

 

ワークライフバランスの推進

当社は、働き方改革の一環として、従業員一人ひとりの事情に極力対応できるよう、各種制度面や運用面の拡充に努めています。例えば、フレックスタイム制度や在宅勤務制度を設け、従業員一人ひとりのライフスタイルに応じた働き方ができるような環境づくりに取り組んでいます。その他、育児休業制度や介護休業制度、時間単位での有給休暇取得制度などにより、ワークライフバランスの充実に取り組んでいます。

 

メンタルヘルスへの取組み

従業員が健やかに仕事に取り組めるよう、身体面の健康ケアだけでなく、さまざまなメンタルヘルスケアにも取り組んでいます。例えば、ストレスチェックの義務化に伴い、各地区においてストレスチェックテストを実施しています。また、EAP(Employee Assistance Program)サービスの活用もその一つで、従業員が社外の専門機関にメールや電話・面談などによって悩みを相談できる環境を整えています。

 

労働安全衛生

当社の生産拠点である那須事業所及び小牧事業所では、職場環境に潜在する危険性や有害性を特定し、労働災害を未然に防止するリスクアセスメント活動を実施しています。また、那須事業所及び小牧事業所と併せグループ会社において、経営幹部・労働組合・事務局による環境・安全パトロールを実施し、適切な改善指導を行い、職場環境の改善につなげています。今後も従業員全員が安全に作業できるよう、労働災害防止に向けた活動を継続して取り組んでまいります。大阪事業所・那須事業所及び小牧事業所において、防災訓練を実施し、大規模地震を想定した避難訓練・人命救急訓練(AED取り扱い説明)や消火訓練などを行いました。那須事業所及び小牧事業所では防災訓練だけでなく、消火訓練・遮断訓練・漏洩訓練などを実施しており、緊急事態に即応できる体制づくりに取り組んでいます。また、当社は地震をはじめとする災害時の従業員の安否が一斉に確認できる「安否確認システム」を導入しており、年2回訓練を実施しています。今後も安全・災害防止につながる活動に積極的に取り組んでまいります。

 

経営と現場の意見交換の場「ラウンドテーブル」を開催

当社では、社内コミュニケーション活性化の新たな施策として「ラウンドテーブル」を実施しています。ラウンドテーブルは、立場、役職、部署が異なる者が、上下関係や立場を気にせず自由に意見交換を行う場であり、当社では経営層が現場の具体的な課題や要望を従業員から直接聞いて、今後の経営に活かし風土改革に繋げていくことを目的としています。具体的には「経営層の情報発信力」や「コンプライアンス意識」を討議テーマに、本社(大阪)や那須事業所をはじめ4ヵ所で実施し、参加者からは討議テーマに捉われず、職場の環境改善や人事制度に関する意見や要望が飛び交うなど、活発な意見交換がなされました。

 

2.指標及び目標

当社は人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。なお、当社グループでは、必ずしも全ての会社で指標のデータ管理が行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、指標に関する目標及び実績は、当社を対象に記載しております。

指標

目標(2029年4月までに)

実績(2025年3月期)

管理職に占める女性労働者の割合

10以上

3.6

男性労働者の育児休業取得率

85

57.1

労働者の男女の賃金の差異

80

74.2

 

また、当社の連結子会社である神東塗料グループの指標は以下のとおりであります。

指標

目標(2026年4月までに)

実績(2025年3月期)

管理職に占める女性労働者の割合(%)

10以上

8.6

男性労働者の育児休業取得率(%)

75.0

労働者の男女の賃金の差異(%)

81.9

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、また、本記載は将来発生しうる全てのリスクを網羅したものではありません。

 

(1)事業展開に係るリスク

①  市場環境変化に関するリスク

当社グループの事業は、1)国内塗料事業、2)海外塗料事業、3)照明機器事業、4)蛍光色材事業、5)その他事業で構成され、売上の拡大や生産性の向上を図るとともに、原材料費用の低減並びに販売費及び一般管理費の抑制等のコスト削減に注力し、事業環境の変化に影響されにくい高い収益性を維持できる収益体質を確立すべく事業を展開しております。これらの関連業界市場の需要減少や販売地域での景気後退により、地政学的な問題(戦争、テロ、社会的不安等)及び自然災害(地震、台風、大雨等)の要因で販売数量の減少や価格の下落が生じた場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

事業ごとの状況は以下のとおりであります。

1)国内塗料事業では、国内市場において広範囲な産業に製品を提供しております。製品の高付加価値化の拡大を図っておりますが、これらの市場において需要の低迷、競争の激化等が生じた場合は、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

特に創業以来培ってきた防食技術の需要分野は多方面に亘り、売上の重要部分を占めておりますが、防食塗料の需要は公共投資の動向に多大な影響を受けます。また、外装建材用塗料については民間住宅投資の動向やそれに係わる法的規制等に多大な影響を受けます。

2)海外塗料事業では、東南アジア、中国、メキシコに製造・販売拠点を構築し、グローバルに製品を提供しております。新規顧客の開拓や製品の高付加価値化の拡大を図っておりますが、為替レートの変動に加え、法律・規制の変更、不利な影響を及ぼす租税制度の変更や政治・経済状況の激変、テロ・戦争等海外特有の社会的混乱、その他予期せぬリスクが生じた場合は、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

3)照明機器事業では、建設業許可を受け、電気工事業者として登録し、主として当事業の製品である照明器具について、商業施設の内装に係る工事を受注しております。LEDをはじめとした新しい光源の発達に対応すべく今まで培ってきた技術力・ノウハウ・人材を活かして事業の拡大を図っておりますが、販売競争の激化等が生じた場合は、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

4)蛍光色材事業では、蛍光顔料、蛍光塗料、特殊コーティング材等で、蛍光色材の国内唯一の総合メーカーとして、国内外市場において広範囲な産業に製品を提供しております。製品の高付加価値化の拡大を図っておりますが、これらの業界市場において需要の低迷が生じた場合は、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

5)その他事業では、塗装工事及び塗料製品の運送・保管等で、需要の低迷が生じた場合は、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

②  原材料調達に関するリスク

当社グループの塗料事業に用いる原材料は、ナフサ等からなる石油化学製品であり、原材料の調達においては複数購買、代替品調査等の施策により安価で安定した調達を図っておりますが、石油関連製品の世界的需要構造の変化及び為替レートの変動により原材料価格が大幅に上昇した場合や、需給バランスの逼迫や遅延により原材料の調達が困難になった場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

③  販売価格に関するリスク

当社グループは、原材料価格の高騰に対し販売価格に転嫁すべく努力しておりますが、販売競争の激化等により価格転嫁が充分に進まない場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

④  為替レート変動に関するリスク

当社グループの海外展開する連結会社等は、財務諸表項目の円換算額が為替レートの変動による影響を受けるため為替レートに大幅な変動が生じた場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

⑤  情報セキュリティに関するリスク

当社グループは、事業活動の基盤である情報システム・情報ネットワークに対し、様々なセキュリティ対策を実施しておりますが、災害、サイバー攻撃、不正アクセス等により情報システム等に改ざんや障害が生じた場合、企業情報及び個人情報等が社外に流出した場合は、事業活動の停滞や社会的評価・信用の低下等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥  退職給付に関するリスク

当社グループの退職給付費用及び債務は、年金数理計算上使用される各種の基礎率と年金資産の運用利回り等の前提に基づき計算されておりますが、年金資産の運用環境の悪化により前提と実績に乖離が生じた場合は、積立不足等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

⑦  固定資産の減損に関するリスク

当社グループが保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化等による収益性の低下又は市場価格の下落等により、減損損失が発生した場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

⑧  繰延税金資産の取崩しに関するリスク

当社グループは、将来の課税所得に関する予測・仮定に基づき、繰延税金資産の回収可能性の判断を行っておりますが、将来の課税所得の予測・仮定が変更され、繰延税金資産が減額された場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)法律及び規制に係るリスク

①  法的規制等に関するリスク

当社グループは、事業活動を行う上で、商取引、環境、安全、保安、品質保証、化学物質管理、労働、特許、会計基準及び租税等の様々な法規制の適用を受けており、法令遵守を基本として事業活動を行っております。

特に環境・安全・健康を確保するための責任ある自主活動「レスポンシブル・ケア」のほか、ISO14001の認証取得による全事業所での環境マネジメントシステムを実施し、環境汚染の防止に関する各種法律の遵守、重防食塗装を全て水性塗料で可能とする「DNT水性重防食システム」や、低臭気の室内用水性塗料「COZY PACK(コージーパック)」をはじめとする環境対応形各種塗料、抗菌・抗ウイルス塗料「COZY PACK Air」を開発しておりますが、今後の法改正や法規制強化のあり方次第では、生産・研究施設の改善あるいは製品設計・開発に多大な投資を必要とし、新製品開発の遅延による機会損失が生じた場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、競争力基盤の強化のため、様々な知的財産権を保有し、維持・管理しておりますが、第三者による侵害や訴訟を提起された場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

②  製品品質に関するリスク

当社グループは、製品の特性に応じて品質保証及び環境保全を最優先課題として製品を製造しておりますが、様々な技術上、あるいはそれ以外の要因により不良品が発生し、クレームを受ける場合があります。大規模なクレームや製造物責任を問われる事態が生じた場合は、これらの補償、対策費用が発生し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

特に住宅建材メーカーに納入する外装建材用塗料については、1999年に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が施行されて以降、住宅建材メーカー各社がこれを契機に高級外装材の拡販戦略として10年あるいはそれ以上の長期保証を打ち出し、塗料メーカーにも同様の塗膜保証を求めてきております。同塗料のトップメーカーである当社としては、製品の開発・製造には万全の注意を払い、損害賠償保険等による対策をとっておりますが、保証期間が伸長され、新製品発売により、当社のクレーム発生件数増加や補償負担の発生リスクを伴うものであります。

③  品質不適切行為に関するリスク

当社グループは、2023年10月26日に公表した当社連結子会社である岡山化工株式会社における不適切行為(改ざん)及び2024年11月29日付で公表したJISマーク表示の一時停止(規格外出荷、外注管理に係る不備)について、JIS認証機関より処分を受けました。当社グループにおいては、再発防止策の推進及びコンプライアンス遵守の徹底に取り組んでまいりましたが、同活動を進めるなかで新たな不適切事案を確認いたしました。これを受け、当社は当事案に該当するJIS認証製品の出荷を自粛し、その後2024年11月29日付で該当製品はJISマーク表示の一時停止となりました。また、外部弁護士を中心とする特別調査委員会の調査結果を踏まえ、2025年5月12日付で調査報告書を公表させていただきました。当社は一連の不適切行為を重く受け止め、特別調査委員会の提言に基づいた再発防止策をグループ一体となって取り組むとともに、信頼回復に向けて最大限努力してまいりますが、お客様への補償費用の発生や本件に起因する販売数量の減少等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)災害等に係るリスク

①  災害、事故に関するリスク

当社グループは、災害や事故発生時の被害を最小限にとどめ、速やかな復旧により事業を円滑に継続できる体制の整備と維持に努めておりますが、予想を上回る規模の地震や台風等の自然災害に見舞われた場合、火災等の事故が発生した場合は、人的、物的損害のほか、事業活動の停止、制約等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

特に当社グループの事業拠点について、塗料事業の生産拠点は分散化を図っておりますが、照明機器事業の生産拠点として、蛍光ランプ類は神奈川県秦野市に、安定器・照明器具類は秋田県潟上市に、蛍光色材事業の生産拠点は神奈川県鎌倉市にあり、自然災害等の外的要因により生産活動を停止せざるを得ないケースでは、代替する生産拠点を有しておりません。

各事業の生産拠点のいずれかが地震等の災害に罹災し稼働困難となった場合、コンピュータの基幹システムに重大な障害が発生した場合、あるいは電力需要調整の必要が生じた場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

②  感染症に関するリスク

当社グループの従業員への新型コロナウイルス、インフルエンザ等の感染症に対しては、手洗い、うがい、アルコール消毒等の感染予防対策を講じておりますが、感染者が発生し一時的に操業を停止した場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

③  気候変動対応に関するリスク

当社グループは、環境対応形各種塗料の開発に注力するなど、事業活動を通じてCO2排出量の削減等に取り組み、環境改善や気候変動リスクの低減に努めております。また、以下の気候変動リスクを識別及び評価しております。

・脱炭素化に向けたクリーンエネルギー及びCO2排出削減設備を導入することによるコスト増加

・環境負荷の低い原材料を購入することによる購入コストの増加

・気候変動による異常気象がもたらすサプライチェーンや事業活動停止によるコスト増加

・環境対応形製品への需要シフトといった市場ニーズの変化による当社の既存製品の陳腐化による事業悪化

・温室効果ガスの排出に関する新たな税負担が発生した場合のコスト増加

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

1.経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

 

(1)経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド消費の増加等により緩やかな回復基調にあるものの、物価上昇の継続が個人消費や企業の設備投資を下押しし、一部に弱さが見られる状況となりました。先行きについては、長期化するウクライナ情勢や中東地域の不安定な政情、為替の円安推移等によりエネルギー価格や原材料価格の高止まりをもたらしているほか、米国新政権の保護主義的な政策運営が金利・為替・株式相場の変動を引き起こすなど、将来の不確実性はいっそう高まっております。

当社グループにおいては、2024年3月期に公表いたしました当社一部製品に係る不適切行為を受けて、再発防止策の推進及びコンプライアンス遵守の徹底に取り組んでまいりましたが、同活動を進めるなかで新たな不適切事案を確認いたしました。これを受け、当社は当事案に該当するJIS認証製品の出荷を自粛し、その後2024年11月29日付で該当製品はJISマーク表示の一時停止となりました。

当社グループの経営成績については、照明機器事業の堅調な推移により、売上高は725億1千1百万円(前期比 0.8%増)となりました。利益面は、国内塗料事業における費用増加や海外塗料事業における売上減少に伴う利益率低下により、営業利益は47億1千6百万円(同 1億8千5百万円減)、経常利益は51億9千9百万円(同 1億3千7百万円減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、2025年3月18日付で神東塗料株式会社を子会社化したことに伴う負ののれん発生益の計上及び政策保有株式の縮減による投資有価証券売却益の計上により、94億3千7百万円(同 48億3千6百万円増)となりました。

なお、当連結会計年度においては、連結貸借対照表には神東塗料株式会社の資産及び負債を含んでおりますが、連結損益計算書には神東塗料株式会社の損益を含んでおりません。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 

[国内塗料事業]

一般用分野は、不適切行為問題による需要の減少影響により、売上高は前期を下回りました。工業用分野は、金属建材用途などの一部市況の回復や過年度より進めてきた価格是正の進展により、売上高は前期を上回りました。インク・分散技術関連では、新製品の拡販やディスプレイ用途への採用が進展し、売上高は前期を上回りました。

この結果、売上高は509億2千1百万円(前期比 0.7%増)となりました。営業利益は、基幹システム更新に伴う一過性の費用増加や人件費等の増加により、19億6千8百万円(同 2億3千2百万円減)となりました。

 

[海外塗料事業]

東南アジアは、自動車生産台数の減少影響や建材用塗料の需要減少により、売上高は前期を下回りました。メキシコは、自動車生産台数の増加及び新規取引の需要増加により、売上高は前期を上回りました。中国は、日系自動車メーカーの低迷や金属建材向けの需要減少により、売上高は前期を下回りました。

この結果、売上高は81億3千3百万円(前期比 4.7%減)となりました。営業利益は、東南アジア及び中国における売上減少に伴う利益率低下により、2億3千8百万円(同 1億7千7百万円減)となりました。

 

[照明機器事業]

業務用LED照明分野は、好調なインバウンド需要や都市部再開発を背景に商業施設や宿泊施設向けを中心に需要が堅調に推移したほか、販売価格の改善が進展し、売上高は前期を上回りました。UVランプ分野は、紫外線殺菌用途の需要は堅調なものの、一部製品の需要が減少し、売上高は前期を下回りました。蛍光ランプ分野は、販売価格の改善に継続して努めておりますが市場縮小に伴う需要の減少により、売上高は前期を下回りました。

この結果、売上高は104億1千8百万円(前期比 7.6%増)となりました。営業利益は、人件費の増加や本社移転による減価償却費の増加等がありましたが、業務用LED照明分野における大幅な増収により費用増加を吸収し、20億6千3百万円(同 1億7千3百万円増)となりました。

 

[蛍光色材事業]

顔料分野は、EU地域等の海外向け需要が回復し、売上高は前期を上回りました。加工品分野では、安全対策用塗料の需要は堅調に推移しておりますが、テープ製品の需要が減少し、売上高は前期を下回りました。

この結果、売上高は11億5千8百万円(前期比 1.4%減)となりました。営業利益は、製品ミックスの改善や経費抑制により、5千9百万円(同 3千1百万円増)となりました。

 

[その他事業]

物流事業は、物流業界における各種コストの上昇に対して単価改善に努めたものの取扱量が減少し、売上高は前期を下回りました。塗装工事事業は、工事受注が減少し、売上高は前期を下回りました。

この結果、売上高は18億7千9百万円(前期比 5.9%減)、営業利益は、7千9百万円(同 5千8百万円減)となりました。

 

(2)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前連結会計年度末より36億1百万円増加し、114億6千9百万円となりました。

 

① キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動により得られた資金は、35億7千万円(前連結会計年度は34億6千3百万円の収入)となりました。これは税金等調整前当期純利益及び減価償却費等による収入と、退職給付に係る資産の増加、法人税等の支払等の支出が主因とするものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動により使用した資金は、3億6千4百万円(前連結会計年度は7億7千2百万円の支出)となりました。これは有形固定資産の売却、投資有価証券の売却、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得等による収入と、有形固定資産の取得、無形固定資産の取得等の支出が主因とするものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動により使用した資金は、7千5百万円(前連結会計年度は16億5千7百万円の支出)となりました。これは短期借入金の借入、長期借入金の借入等の収入と、配当金の支払、長期借入金の返済等の支出が主因とするものであります。

② 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループでは、営業活動から得られたキャッシュ・フローの収入を財源に運転資金、製造設備や研究開発設備の購入、配当金の支払い及び借入金の返済等に利用しております。

事業活動の持続的成長に欠かせない資金の流動性や安定的確保において、短期運転資金については、自己資金及び取引金融機関からの短期借入を基本とし、また設備投資など長期運転資金の調達については、長期借入を基本としております。当連結会計年度においては、重要な資金調達はありません。その結果、短期借入金残高は105億3千6百万円(前連結会計年度は44億円)、長期借入金残高は10億4千万円(前連結会計年度は7億円)となっております。

当連結会計年度における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は140億7千5百万円となっております。また、現金及び預金残高は126億4千9百万円となっております。一部の国内子会社については、各社の余剰資金を効率的に活用するため、CMS(キャッシュマネジメントサービス)を導入し、資金及び財務効率性を目的とした一元管理を行っております。なお、在外子会社については、現地での設備投資や運転資金等の資金需要のために必要な現預金を保有しており、余剰資金が発生した場合には、将来的な資金需要を考慮しながら配当金を通じて、当社が余剰資金を回収しております。

ウクライナ情勢の長期化、中東情勢の悪化及び米国新政権の保護主義的な政策運営が金利・為替・株式相場の変動を引き起こす等、足元の業績が不透明な中で、当社としては手元資金の流動性の確保に向け金融機関と日々連携しており、当面の資金繰りについては、十分に担保されております。今後、運転資金等の需要が増加した場合には、コミットメントライン契約の活用の検討や、主力銀行等からの追加の短期資金調達を実施いたします。

 

(3)生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前期比(%)

国内塗料(百万円)

50,759

98.5

海外塗料(百万円)

7,228

93.6

照明機器(百万円)

6,291

100.0

蛍光色材(百万円)

945

100.2

合 計(百万円)

65,225

98.1

(注)1.金額は、販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

2.前記セグメント区分以外の「その他」は、塗装工事事業、物流事業等であり、提供するサービスの性格上、生産実績を定義することが困難であるため、記載しておりません。

 

② 受注実績

当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ)は、一部特需関係等を除き主として見込生産によっておりますので、受注並びに受注残等について特に記載すべき事項はありません。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前期比(%)

国内塗料(百万円)

50,921

100.7

海外塗料(百万円)

8,133

95.3

照明機器(百万円)

10,418

107.6

蛍光色材(百万円)

1,158

98.6

報告セグメント計(百万円)

70,632

101.0

その他(百万円)

1,879

94.1

合 計(百万円)

72,511

100.8

(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。当社グループの連結財務諸表の作成において、損益又は資産の状況に影響を与える見積り、判断は、合理的と考えられる要因を考慮した上で行っております。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

(2)当連結会計年度の経営成績の分析

当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高は照明機器事業の堅調な推移により前期を上回りましたが、営業利益は国内塗料事業の費用増加等の影響により前期を下回りました。

売上高と営業利益のセグメントごとの経営成績の詳細については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

(3)経営成績に重要な影響を与える要因について

「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

(4)当連結会計年度における財政状態の分析

 

前連結会計年度

(2024年3月31日)

当連結会計年度

(2025年3月31日)

増減額

資産 (百万円)

 

101,618

133,344

31,725

負債 (百万円)

 

39,128

57,173

18,045

純資産(百万円)

 

62,490

76,170

13,679

自己資本比率(%)

 

58.6

48.8

9.8ポイント減

 

当連結会計年度末における総資産は、1,333億4千4百万円となり、前連結会計年度末と比較して317億2千5百万円の増加となりました。流動資産は、530億6千6百万円で前連結会計年度末と比較して128億6千7百万円の増加となりましたが、これは現金及び預金の増加、受取手形、売掛金及び契約資産の増加、電子記録債権の増加、棚卸資産の増加が主因であります。固定資産は、802億7千7百万円で前連結会計年度末と比較して188億5千8百万円の増加となりましたが、これは有形固定資産の増加、無形固定資産の増加が主因であります。

負債は、571億7千3百万円となり、前連結会計年度末と比較して180億4千5百万円の増加となりました。流動負債は、396億4千1百万円で前連結会計年度末と比較して109億4千8百万円の増加となりましたが、これは支払手形及び買掛金の増加、短期借入金の増加が主因であります。固定負債は、175億3千2百万円で前連結会計年度末と比較して70億9千7百万円の増加となりましたが、これは長期借入金の増加、退職給付に係る負債の増加、企業結合に係る特定勘定の増加、繰延税金負債の増加が主因であります。

純資産は、761億7千万円となり、前連結会計年度末と比較して136億7千9百万円の増加となりましたが、これは利益剰余金の増加、為替換算調整勘定の増加、非支配株主持分の増加が主因であります。

 

(5)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況

当社グループでは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、ビジョン2029及び2026中期経営計画における経営上の目標としての業績指標に、売上高、営業利益、NOPAT-ROEを設定しております。これらの目標を踏まえ、各期においても期初に事業環境等を考慮して計画値を設定し、その達成に向け努めております。

当連結会計年度の達成・進捗状況は以下のとおりであります。

 

2024年5月10日公表の業績予想との比較

 

 

 

 

指 標

当連結会計年度

当連結会計年度

(予想比)

(予想比)(%)

2026年度

2029年度

(予 想)

(実 績)

(目標)

(目標)

売上高(百万円)

74,000

72,511

△1,488

98.0

80,000

100,000

営業利益(百万円)

4,250

4,716

466

111.0

8,000

10,000

NOPAT-ROE(%)

5.3

5.3

0.0ポイント

8.0程度

8.0程度

 

2024年5月10日公表の業績予想との比較では、売上高は予想比14億8千8百万円減(予想比 2.0%減)、営業利益は予想比4億6千6百万円増(同 11.0%増)、NOPAT-ROEは予想比0.0ポイントとなりました。

この要因としては、売上高は、国内塗料事業におけるJISマーク表示の一時停止処分に伴う出荷の減少、並びに海外塗料事業における東南アジア・中国市場での日系自動車メーカーの低迷による販売低迷により、期初予想を下回りました。営業利益は、国内塗料事業及び照明機器事業において付加価値の高い製品の拡販注力及びかねてより推進している価格是正の浸透により、期初予想を上回りました。NOPAT-ROEは、営業利益が期初予想を上回ったと同時に、期中における神東塗料の連結子会社化により期初時点の想定よりも自己資本が増加したことで、結果として期初予想水準となりました。

 

 

2024年11月8日業績予想発表時(修正)

 

 

 

指 標

当連結会計年度

当連結会計年度

当連結会計年度

当連結会計年度

(予 想)

(実 績)

(予想比)

(予想比)(%)

売上高(百万円)

74,000

72,511

△1,488

98.0

営業利益(百万円)

4,800

4,716

△83

98.3

売上高営業利益率(%)

6.5

6.5

0.0ポイント

 

2025年5月7日業績予想発表時(修正)

 

 

 

指 標

当連結会計年度

当連結会計年度

当連結会計年度

当連結会計年度

(予 想)

(実 績)

(予想比)

(予想比)(%)

売上高(百万円)

72,510

72,511

1

100.0

営業利益(百万円)

4,710

4,716

6

100.1

売上高営業利益率(%)

6.5

6.5

0.0ポイント

 

前連結会計年度実績比較

 

 

 

 

指 標

前連結会計年度

当連結会計年度

当連結会計年度

当連結会計年度

(実 績)

(実 績)

(実績比)

(実績比)(%)

売上高(百万円)

71,940

72,511

570

100.8

営業利益(百万円)

4,901

4,716

△185

96.2

売上高営業利益率(%)

6.8

6.5

△0.3ポイント

 

 

5【重要な契約等】

技術提携

(1)技術供与

相手先

国別

契約の内容

契約期間

対価

PPG Coatings

(Malaysia)Sdn.Bhd.

マレーシア

プラスチック用塗料の製造販売権

2022年7月1日から2025年6月30日まで
以後3年毎の自動更新

売上高に対して一定率

Taiyang Paints

Corporation

台湾

重防食塗料及びその他工業用塗料

の製造販売権

2022年10月20日から2027年10月19日まで
以後5年毎の自動更新

売上高に対して一定率

The Sherwin-Williams Company

米国

プラスチック用塗料の製造販売権

①2024年12月1日から2027年11月30日まで

以後3年毎の自動更新

②2016年8月1日から2026年7月31日まで

以後10年毎の自動更新

売上高に対して一定率

P.T.

Tunggal Djaja

Indah

インドネシア

重防食塗料及びその他工業用塗料

の製造販売権

2025年1月8日から2026年1月7日まで
以後1年毎の自動更新

売上高に対して一定率

Maharani

Innovative Paints

Pvt. Ltd.

インド

自動車部品用塗料及びその他工業

用塗料の製造販売権

2024年2月21日から2027年2月20日まで

以後3年毎の自動更新

①イニシャルロイヤリティー

②売上高に対して一定率

TOA-SHINTO(THAILAND)

CO.,LTD.

タイ

製造権・販売権

2024年12月31日から2025年12月31日まで

以後1年毎の自動更新

売上高に対して一定率

神東アクサルタコーティングシステムズ株式会社

日本

製造権・販売権

再実施権

1997年10月2日から

 

(2)技術導入

相手先

国別

契約の内容

契約期間

対価

Valspar

Corporation

米国

パイプ用塗料の製造販売権

2025年3月27日から2026年3月26日まで

以後1年毎の自動更新

売上高に対して一定率

The Sherwin-Williams Company

米国

インモールドコーティングの製造

販売権

2021年1月1日から2025年12月31日まで

以後5年毎の自動更新

売上高に対して一定率

 

 

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、コアビジネスである塗料事業をはじめ、照明機器、蛍光色材、ジェットインク及び、機能性材料などの塗料事業以外の製品開発にも取り組んでおります。

塗料事業においてはSDGsの達成に向け地球環境に優しい製品、省エネルギー・省力化に対応した製品、高機能・高付加価値製品の開発に注力するとともに、2020年に開所した防食技術センター、コーティング技術センターの両センターを活用しつつ、新製品開発の基礎となる機能性を有する塗料用樹脂や新規材料の調査・研究開発を始め、防食理論、分析・評価技術、顔料分散技術、塗膜形成技術及び、塗装技術等の基盤技術を拡充し、新しい価値を継続的に市場へ提供できる取組みを進めております。また、CO2削減の提案に向けた取組みとして、省工程化を目的とした簡易的なインフラ点検方法や効率的な補修方法に関する基盤技術の構築、更にバイオマス原料を活用した塗料の脱炭素化、カーボンニュートラルに貢献できる技術の調査を進めております。例えば、新たな工法によるカーボンニュートラルへの貢献が期待できる加飾フィルム向けコーティング材の検討を行っており、顧客との検討も進めております。当連結会計年度における研究開発費の総額は2,165百万円となりました。

当連結会計年度の主な研究開発活動は次のとおりであります。

 

(1)国内塗料事業

① 構造物塗料分野

橋梁や各種プラント施設に代表される大型の鋼構造物や土木コンクリート構造物などにおいて「LCC(ライフサイクルコスト)の低減」、「環境負荷低減」、「省力化」、「点検・診断」、「安全・安心」をキーワードに、公共性の高い社会インフラを長期間護るための材料開発と塗装システム開発及び、メンテナンス市場をターゲットとした補修・補強材料や塗膜診断技術を活用した塗膜の寿命予測などに注力しております。LCCの低減では、塩害環境向け高遮断塗装システム「タイエンダーシステム」や新設コンクリート向け養生被覆工法「シールドベトン工法」、環境負荷低減では、「塗る」作業を「貼る」作業に変える画期的製品である重防食シート「メタモルシート#1」やVOC(揮発性有機化合物)を大幅に削減した「DNT水性重防食システム」「水性グリーンボーセイ速乾」、点検・診断では、鋼構造物点検時の簡易補修材料「サビシャットスプレー」、カレントインタラプタ(CI)法により理想的な構造物維持管理サイクルを実現した「DNT塗膜診断システム」、安全・安心では、橋脚や標識ポール、照明等の地際・基部腐食対策塗装システム「ポールダンサーシステム」等の開発を行い、市場展開に取り組んでおります。

また、防食技術センターを活用して、顧客と協業での現場施工性に関する検証試験や企業間コラボレーションによる新規材料・工法の研究開発を進めております。

② 建築塗料分野

近年、建築分野においては、カーボンニュートラル、サーキューラーエコノミー、ネイチャーポジティブといった課題の対策技術に焦点をあて様々な材料開発が行われております。

当社においても、オフィスビルや戸建・集合住宅の新築・改修工事に対して「高耐久性・省工程・安全・快適・省エネ」をキーワードに環境に優しい独創的な製品の開発に取り組んでおります。特に2003年発売開始の遮熱塗料「エコクールシリーズ」は、塗装することで被塗物の温度を下げられ、CO2削減効果が期待できる材料として販売数量を伸ばしております。今後も新たな遮熱機能開発を行い、差別化に繋げてまいります。その他、ビル外壁・エントランス等でも実績が増えつつある高意匠メタリック仕上げをローラー塗装できる弱溶剤形ふっ素樹脂塗料「Vフロン#200スマイルRBメタリック」、工場や商業施設等の扉や手摺りなどの、人の手が多く触れる箇所での皮脂による汚れ・はがれの問題を解決し、かつ臭気を抑えた「アクアマリンタックレス 凛」などの機能性製品の市場展開に取り組んでおります。

③ 車輌産機・自動車補修塗料・プラスチック塗料分野

車輌産機・自動車補修分野ともに環境対応型塗料として水性塗料、カーボンニュートラルへ貢献できる塗料として省工程化によるCO2削減塗料の市場展開を進めております。

車輌産機分野の水性塗料は、高外観、速乾性の特徴を有する工業用向け水性上塗塗料「AQウレタン」、自動車補修分野は、自動車シャーシ用塗料「Auto ハイドロシャーシ」を市場展開し、車輌産機分野の省工程化塗料は、溶剤系下塗、上塗兼用「オールイン1ウレタン」「プライムトップ」、自動車補修分野は、特定化学物質障害予防規則対応の溶剤系下塗塗料「AutoラピッドドライシャーシNexT」を市場展開しております。

自動車プラスチック分野においては、インモールドコーティング(IMC)塗料の新規開発における、具体的なラインを想定したトライの実施で、市場での採用活動をしております。

意匠性・工程短縮として、工程短縮での金属調塗料の検討、メッキに代わる、更なる金属調塗料の開発に取り組んでおります。さらに高塗着効率対応の塗料開発及び、ハイソリッド塗料の開発に取り組んでおります。

④ 建材塗料分野

新設住宅市場向けの外装建材用塗料、屋根建材用塗料、内装建材用塗料での高意匠、高機能、高耐久化などの顧客ニーズに応える環境に配慮した高付加価値塗料と塗装システムの開発に取り組んでおります。特にインクジェット加飾システムによる高意匠化と高耐久・高付加価値塗料とを組み合わせた積層塗膜での提案を進めております。

また、戸建を含む住宅分野だけでなく、店舗や非住宅分野へも展開できる意匠性や塗装システムの開発にも取り組んでおります。

⑤ 金属焼付塗料・粉体塗料分野

溶剤塗料においては、垂直面への作業性に優れており、垂れ難い設計である厚膜塗装作業性に優れたアミノアルキド樹脂系塗料「NEWデリコンHB」を発売しました。既に発売中の低温焼付形ポリウレタン樹脂系塗料「Vクロマ#100ECO-LB」、アクリル樹脂系塗料「NEWアクローゼ」と同様、塗装作業者の健康への影響に配慮した特定化学物質障害予防規則に対応した組成となっております。

粉体塗料においては、モーターやブスバーなどの電器部品に塗装される絶縁粉体塗料を製品化しました。次世代の主力製品とすることを目標に市場での評価を実施、順次発売開始予定です。

⑥ インクジェット・新事業分野

当社の塗料の分散技術をインクジェットインク開発に応用し、UV硬化インクや水性インク等の環境対応製品の開発を進めております。新事業としては、無機酸化物をナノレベルまで分散した反射防止用などのナノコーティング材、合成技術と表面処理技術を活用した貴金属ナノ粒子などの機能材開発に取り組んでおります。

開発した貴金属ナノ粒子を活用した展開先として、当社で世界初の細胞外小胞用イムノクロマトキット「Exorapid-qIC®」を発売し、新たにライフサイエンス分野への参入にも取り組んでおります。

また、コーティング技術センターで当社の強みであるインクジェットインクによる加飾技術と塗料の積層技術を組み合わせた高意匠性で高付加価値な製品の提案も行っております。住宅建材・内装材関係の検討とインクジェットインク・塗料の積層コーティングを請負う加飾プロバイダーに対するインク販売を開始して更なる市場展開を進めております。

⑦ 防食技術センター(那須事業所)

2020年7月に開所して以来、延べ850社を超える企業、研究機関の方々に施設の見学及び様々な塗料、塗装工法の検証にご活用いただいております。

塗料中の揮発性有機溶剤(VOC)を削減し、塗装環境を改善できる水性塗料及び次の塗り替え工事までの期間を延長することができる高耐久性塗料、従来の塗装と比較して施工時間・工程を短縮し、工事を効率的に実施できる省工程化塗料・防食シート工法、構造物において腐食しやすい箇所を部分的に補強する工法などの検証を行っており、ユーザーとの共同開発製品も誕生しております。

⑧ コーティング技術センター(小牧事業所)

2020年6月に開所して以来、延べ700社を超える企業、商社が来所して施設の見学や新規採用の塗装仕様検討などを実施して有効活用いただいております。来客数だけでなく実績に繋がったテーマも2021年度11件、2022年度16件、2023年度23件、2024年度30件と順調に増加しております。

来所されるお客様は環境対応と高意匠に対する関心が高く、理論上の塗着効率が100%であるオールインクジェット仕様(プライマー、ベース、加飾、トップクリヤーの全工程)の新塗装システム提案、また、これまでの塗装というウェット工法に替わる環境対応技術として、ドライ工法である加飾フィルム成形工法について、お客様との共同開発を開始いたしました。

 

(2)海外塗料事業

自動車プラスチック塗料分野においては、タイでのバンパー用水系塗料の検討及び、低温化の検討に取り組んでおります。

 

(3)照明機器事業

照明機器事業を展開するDNライティンググループでは、新たな価値を生み出す拠点としての技術開発センター機能を有する、伊勢原新本社を2024年10月に新築稼働し、開発・評価設備を大幅に刷新しました。これらの最新鋭のインフラを最大限に有効活用し高品質、高機能で市場に求められる製品をタイムリーに提供してまいります。

今年度も照明器具の存在感を誇張せず、美しく心地よい空間を演出するキーワード「納まる溶け込む」をコンセプトに、新たに「進化したライン照明 もっと遠くまで届く・もっと曲がる」をコンセプトに加え、照明器具の開発に注力し、多くの新製品を発売いたしました。

高天井や大きな空間にも光を届けられ、天井や壁面素材の質感を演出可能にした「ライナーウオッシュシリーズ」、粒感のあるテープライトに光を拡散するハウジングをセットして、手軽にまぶしさがない照明にすることができる「マルチカバーシステム」、半径50㎜の小さな半円にも設置でき空間演出の新たな可能性を提起するフレキシブルLED「FXCシリーズ」、昨年発売し好評の曲面も均一に美しく演出することができるチェーンタイプのLED、「CHCシリーズ」には防滴性能を加え軒下用途などを拡大しました。

また、既存のLED照明器具をより一層効率化して省エネやCO₂排出削減に寄与する、高効率LED搭載の器具開発や、より快適さを追求した自然光LED搭載の器具開発を進め、日本照明工業会が新しい照明の概念として提唱する「lighting5.0」で規定された「健康」「安全」「快適」「便利」という4つの価値を持つ照明の普及を通して新しいあかり文化の創生と、サステナビリティ戦略の実行を通して脱炭素社会への貢献を目指し、持続可能な社会に向けた取組みを拡大・加速してまいります。

 

(4)蛍光色材事業

蛍光色材事業では蛍光色の特徴を生かした、社会に貢献できる製品及び人や環境に優しい製品の開発や販売にいっそう注力し、多くのお客様からご好評をいただいております。

蛍光顔料事業においては、生物由来や生分解性原料を用いた顔料開発を行うとともに、それらの顔料を用いた新規蛍光塗料を開発しご採用いただきました。また含有化学物質や工場廃棄物などを管理した、人や環境に優しい製品としてエコパスポートおよびZDHC Level 3を取得した水分散顔料「SW-100シリーズ」は、アパレル業界でご賞賛いただいております。

蛍光塗料事業では昨今の自然災害の頻発や来るべき巨大災害に対し防災、減災や避難誘導用途として、蛍光・蓄光・反射塗料が多くの自治体にご採用いただいております。特に近年激甚化する豪雨に伴う河川の氾濫に対し、水位状況を知らせる量水標に視認性が高い蛍光塗料の「スーパールミノVトップ」が多く採用され、防災・減災活動に大きく貢献しております。

今後も人や環境に優しく社会貢献できる製品を開発、提案しながらESG活動に取り組んでまいります。

 

なお、セグメントごとの研究開発費は、「国内塗料事業」1,610百万円、「照明機器事業」467百万円、「蛍光色材事業」87百万円であります。