当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、第18次中期経営計画策定にあたり、新たに「塗料で人を幸せにする」ことをMVV(Mission、Vision、Value)におけるビジョンと定めております。「塗料で人を幸せにする」とは、当社グループに関わる人々を豊かにし、困りごとを解決することを意味しており、塗料を世界中の人々に届けることで人を幸せにするという「ありたい姿」を、目指していきます。
「ありたい姿」を実現していくために必要なことは、ステークホルダーとのエンゲージメントと事業を強化し、「関西ペイントと関わって良かった」と思っていただくことです。そのために、地域の特徴や個社のブランドを活かす事業分野においては地域軸で、顧客企業がグローバルに展開する事業分野においては事業軸で、それぞれ事業を強化し価値提供の機会を拡大していきます。当社グループはこのような考えのもと、収益性と効率性においてグローバルトップレベルを目指すとともに、資産効率性・財務健全性のバランスを確保し積極的かつ安定的に株主還元を実行していくことで、企業価値を高めてまいります。
当社グループのMVV(Mission、Vision、Value)詳細は、当社ウェブサイトをご参照ください。
https://www.kansai.co.jp/company/philosophy/
(2)中長期的な経営戦略、経営環境及び対処すべき課題
当社グループは、2024年11月、第18次中期経営計画を策定・公表の上、本年4月より始動しました。
本計画では、事業、人材、エンゲージメントの強化をテーマにしています。2022年度から設定しております
2030年の目標(KPI2030)に向けて、2027年度に財務・非財務両方の中間目標を達成することで、ありたい姿の実現可能性を高めていきます。
本計画の重点方針は、「構造改革による収益性と効率性の強化」、「事業を伸ばす製品開発とDXの推進」、「人材育成と最適配置の両立」、「最適資本構成に基づく積極的な投資と還元」であり、地域ごとの重点方針に対する戦略を具体的に示し取り組んでまいります。また、株主との対話を重視し、建設的な対話を継続しながら、信頼関係を築き、企業価値の向上を目指します。
中期経営計画・サステナビリティ・リスクマネジメントに関する取り組みの詳細は、当社ウェブサイトをご参照ください。
・中期経営計画
https://www.kansai.co.jp/ir/business-policy/plan/
・サステナビリティ
https://www.kansai.co.jp/sustainability/
・リスクマネジメント
https://www.kansai.co.jp/sustainability/governance/risk-management/
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは塗料メーカーとして人に役立つ素晴らしい塗料を開発し、 それを世界中に届けることを目指しています。 社員一人一人が関西ペイントグループの一員として「塗料で人を幸せにする」というビジョンを掲げ、 社会への貢献意識を持って活動していきます。塗料にはモノの寿命を延ばすことや、モノの機能を高める役割などがあります。その機能を通じて環境の負荷を低減することができ、製造過程においてもCO2排出量は少なく、本来サステナビリティに大きく貢献をしている産業です。この産業において当社のバリューにもあるように「利益と公正」「正しいことをしながらより多くの資金を作り出し、その資金を寝かせずに将来のために投資していく。これが循環し、規模を拡大することで世の中への貢献度合いを高めていく」という創業時からの変わらない価値観をもとに誠実に課題に取り組んできました。お客様との長きにわたる協業において、お客様で使用される時に発生するCO2削減を可能にする塗料の開発や、粉体塗料、水性塗料に代表される環境負荷を小さくする事業をサステナビリティ経営が叫ばれるはるか昔より進めてきています。しかしながら、人類が直面している地球環境の変化はこれまで私たちが想定してきたものよりも大きく、社会発展の在り方そのものの見直しが求められています。石油などの鉱物資源に由来する原料を扱ってきた化学産業は、商品の設計、原材料、製造、物流、販売など様々な領域で非連続な転換が必要です。
私たちは自らのバリューチェーンを抜本的に見直し、これからのお客様と社会のニーズに応え、新たな価値提供を実現することが課題であり、同時に機会でもあると考えています。
以上の認識から当社グループでは「脱炭素の実現」「QOL(生命の質・生活の質)の向上」「資源と経済循環両立の高度化」「多様な人材が活躍するグループへ」という4つのマテリアリティ(重要課題)をKPI2030として策定しました。非財務目標であるKPI2030と財務目標の両面での目標達成を通じてビジョンである「塗料で人を幸せにする」を実現していきます。
2025年度から開始した第18次中期経営計画では4つのマテリアリティの達成に加えて、解決していくのは人材であるという観点から、当社グループの変革を牽引、推進する人材の発掘、育成を重要施策のひとつに掲げております。人事制度の刷新、人材のグローバル化、個々人の課題特定と能力向上を支援するなど、制度の改革、改善及び適切な機会を提供することを通じて、挑戦する意欲に満ちた文化の醸成に取り組んでいます。
2025年度に当社グループではMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を刷新し、以下に定めました。
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サステナビリティ情報全般に関する開示
(1)ガバナンス
2022年4月より、「サステナビリティ推進委員会」は経営監理委員会に組み入れ、方針の明確化とモニタリングを行う体制を整えました。2024年4月からはサステナビリティ担当役員及び専門部署のサステナビリティ戦略部を設置しています。サステナビリティ戦略部が担うのはサステナビリティ経営を体現する全社戦略企画、並びに各子会社・部署と連携した情報の収集分析・具体案立案・推進支援です。今後、事業部門と一体となって、長期的な企業価値向上に取り組んでいきます。そして、KPIに関する計画と進捗を四半期毎に経営会議・取締役会へ報告し、取締役会における監視の徹底に努めます。
(2)戦略
当社グループのマテリアリティと特定プロセス
当社のマテリアリティは社会貢献であり、ビジネス機会です。そして、マテリアリティは「塗料で人を幸せにする」ことと完全に一致します。「QOL向上」は生命の質と生活の質を高めていく製品・サービスを開発し、機能やカラー、塗膜の質感などで人の心を豊かにする精神的な幸せをつくります。「脱炭素の実現」と「資源と経済循環両立の高度化」は人の健康や暮らしやすさを高めるなどの物理的な幸せをつくります。マテリアリティへの取り組みにおいては、多様な人材が自由闊達に活躍することで世の中にインパクトを与え、当社グループが必要とされる高い価値創造を可能にします。
以下の4つのマテリアリティを選定し、取り組んでおります。
①脱炭素の実現:2050年、グループ全体でのカーボンニュートラル実現
(取り組み)
お客様
1)お客様の塗料使用段階でのエネルギー使用の低減に寄与
2)製品ライフサイクルでのCO2排出を大幅に縮減
社会
1)脱炭素に積極貢献する製品開発・技術開発を行う
2)ZEBやZEHに塗料で寄与
3)交通システム全体の変革に合わせた最適塗料の開発
4)脱炭素領域での事業拡大
自社
1)生産・物流に用いるエネルギーを変える
2)使用エネルギーの大幅縮減を図る
3)脱炭素を推進しやすい社内環境・社内制度を整備する
4)脱炭素エネルギー・低炭素エネルギーの調達を行う
②QOL(生命の質・生活の質)の向上:全てのステークホルダー(社会全体、ユーザー、サプライヤー、従業員)のQOLを向上する
(取り組み)
1)QOL向上につながる製品サービスの提供
2)サプライチェーンに関わる人の健康、安全性、効率性の向上
3)サステナブル製品(主にQOLに寄与するもの)を開発・提供
③資源と経済循環両立の高度化:塗料のライフサイクル全体を見渡し、資源有効利用・サーキュラーエコノミーの高度化を図る
(取り組み)
1)サプライチェーンの全ての過程で資源の有効活用の高度化を図る
2)塗料と塗料が塗られるあらゆるもののリサイクル、リユースを可能にする製品・サービスの普及を図る
3)お客様での塗料使用における廃棄物量を低減する
4)グループ拠点における資源利用の効率化・リサイクル推進を図る
5)サプライチェーン企業と協働し、資源循環の高度化を図る
6)最終製品の資源有効利用に寄与する塗料・製品を開発する
7)原料段階・生産段階・使用段階での資源循環コストを検討する
④多様な人材が活躍するグループへ:あらゆる違い(性別・国籍・人種・宗教・バックグラウンド・年齢・障がい・性的指向他)が受容、尊重され、個々が能力を発揮して活躍できる環境を作り、人材の多様性推進を図る
(取り組み)
1)公平な人材育成と登用の実現
・女性活躍推進を図る
・グローバルの生産拠点における管理人材の育成を図る
・海外の販売拠点におけるローカルマネージャー比率の向上を図る
2)多様な働き方の実現
3)健康・福祉を増進し安全な職場の実現
(3)リスクと機会を評価・識別するプロセス
マテリアリティ選定に際し、取締役会決議を経て設立されたサステナビリティ推進委員会は、経営層とともに、外部アドバイザー、株主、投資家、サステナビリティ評価機関との対話を通じ、当社課題の洗い出しとマテリアリティの方向性を検討しました。また、特定に当たっては、事業、製品を通じた社会課題の解決といった、機会につながる課題と、環境、社会に及ぼす影響を含む当社へのインパクトとステークホルダーにとっての重要性を把握し、ステークホルダーに与える負荷を軽減するといったリスクの観点から評価、分析、検証を行っております。
<リスクと機会を管理するプロセス>
社会や環境を取り巻く問題認識は日々変化しています。刻一刻と変化する社会情勢の中で、当社グループはリスクへの対応とさらなる成長機会の両面からマネジメントを実施しています。
1)リスクと機会について、重要な変更点が無いかをサステナビリティ推進委員会にて確認
2)リスクと機会に対応する全社としての行動方針については、取締役会で審議・決議
3)各事業部門の行動計画は、経営会議にて審議・決議し、中期経営計画及び毎年度の組織及び予算に織り込む
4)決議された行動計画は、四半期毎にサステナビリティ推進委員会が取りまとめ、経営会議と取締役会で報告、討議する
5)リスク管理委員会とサステナビリティ推進委員会は、情報共有を密にする
前述の2つのプロセスが総合的リスク管理に統合されているかを、毎年の予算や中期経営計画にて確認を行います。
(4)目標及び指標
当社グループは、4つのマテリアリティ(重要課題)に対して目標を設定しています。
<KPI2030(第18次中期経営計画)目標>
①脱炭素の実現:2050年、グループ全体でのカーボンニュートラル実現
・長期視点に立ち、脱炭素の観点から、使用するエネルギー種別を変えていきます
(脱化石燃料、再生可能エネルギーや次世代エネルギーの導入等)
・中期視点に立ち、事業活動の最適化によって、使用するエネルギーの量を大幅に縮減させます
・お客様やサプライヤーとともに、製品ライフサイクル全体でのCO2排出を減らします
・設備投資の機会を捉え、エネルギー使用のあり方を変革します
・エネルギー消費量(2030年度目標):20%減(2021年比)
・再生可能エネルギー比率(2030年度目標):使用率15%以上
・GHG排出量(Scope1&2)(2030年度目標):30%減(2021年比)
②QOL(生命の質・生活の質)の向上:全てのステークホルダー(社会全体、ユーザー、サプライヤー、従業員)のQOLを向上させる
・塗料によって社会全体を美しく強靭にすることで、生活者の暮らしの質を向上します
・健康や衛生に寄与する塗料を供給し、ユーザーの生命の質を向上します
・労働安全衛生や職場環境を整えることにより、ユーザー、サプライヤー、従業員の安全を向上します
・気候変動に伴う健康被害(高温被害・衛生悪化等)をなくしていくことに貢献します
・サステナビリティ製品の展開(2030年度目標):対象製品比率30%以上
・開発テーマの内、80%以上をサステナビリティ関連の内容にすることを目標とします
・災害度数率(ILO準拠)1.5以下を目標に、グループ全体で安全な職場環境を整えます
・Connecting to the Future Program(CFP)という社会貢献活動に対する定義を2024年度に策定しました(2030年度目標:1,000件以上)
③資源と経済循環両立の高度化:塗料のライフサイクル全体を見渡し、資源有効利用・サーキュラーエコノミーの高度化を図る
・原料、生産、使用、そして塗装された最終製品という全ての段階を視野に入れ、社会全体の資源循環の高度化を探求し続けます
・資源循環と経済循環の両立という「ブレークスルー」を目指します
・塗装された最終製品や、塗料自体のリサイクル性の向上に挑戦します
・自社グループでは徹底した資源利用の効率化やリサイクル推進を図ります
・水使用量(取水量)(2030年度目標):20%減(2021年比)
・廃棄物量(2030年度目標):30%削減(2021年比)
・リサイクル可能容器の使用率(2030年度目標):50%以上
④多様な人材が活躍するグループへ:あらゆる違い(性別・国籍・人種・宗教・バックグラウンド・年齢・障が
い・性的指向)を受容し、人材の多様性推進を図る
・グローバルでの理念共有や人材育成を図るとともに、運営のローカライゼーションを図ります
・公平な人材育成と登用により、グループ全体の管理職に占める女性比率30%以上(2030年)を目指します
・女性活躍の推進を図り、役員の女性比率30%達成(2030年)を目指します
・多様な働き方の実現を通じて、多様な人材の活躍を促進します
・年齢を超えた技術やノウハウの継承を図り、関西ペイントグループに対するお客様からの信頼を継続します
・関西ペイントが100年以上にわたって作り上げてきた想いや行動規範を2025年度中に策定し、KP wayとして全従業員へ周知・啓蒙します(2030年目標):社員へ100%周知、啓蒙
・全社員のエンゲージメントを図るため、社員エンゲージメントサーベイ実施率(2030年度目標):100%
・健康経営の項目を2024年度に定め、健康経営の実施目標を今年度掲げました。健康経営実施カバー率(2030年度目標):100%
2024年度の主な取り組みと進捗状況は以下の通りです。
<KPI2030の進捗>
(5)環境
当社では、「地球環境に関する会社方針」を定めレスポンシブル・ケアをはじめ環境課題に取り組んできました。この会社方針のもと、気候変動、水資源、生物多様性に関する基本的な考え方を定めました。当社の事業を進めていくうえで、気候変動や自然環境から受ける影響、環境資源への依存、そして、環境変化などによって考えられる機会とリスクについて正しく認識し、GHG排出量の削減や環境資源への負荷低減に向けた活動を推進します。
また気候変動・水資源・環境負荷低減・生物多様性・グリーン調達等サステナビリティに関するガバナンス体制につきましてはサステナビリティ全般のガバナンス体制と同様に非財務視点による企業価値向上を統括する「サステナビリティ推進委員会」を経営監理委員会の直下に設置し、管理を行うとともに迅速な意思決定を行います。常設組織であるサステナビリティ戦略部にて計画の最新化を行い、各部門と連携し具体策を実行していくことで先進性と実現性の両立を担保し、長期的な企業価値向上に取り組んでいます。
<気候変動への基本的な考え方>
気候変動は地球の共通課題であり、世界中の人々の安全を脅かす問題となっています。当社グループは、気候変動を解決すべき重要課題の一つと捉え、「地球環境に関する会社方針」をもとに気候変動に関する基本的な考え方を定めました。マテリアリティの一つに脱炭素の実現を選定し、GHG排出量の削減に取り組み、2050年までにカーボンニュートラルを実現します。
具体的には、当社グループのサプライチェーンを通してGHG排出量削減への取り組みを進め、製品・サービスのカーボンフットプリントを低減するとともに、環境負荷物質の適切な管理により、環境への影響を抑え持続可能な社会への実現に貢献することをコミットします。
気候変動の対応としてマテリアリティであるKPI2030の項目に以下の2つについて2027年の中期・長期の目標をそれぞれ掲げています。
・GHG(Scope1,2):2027年20%減、2030年30%減
・エネルギー消費量:2027年10%減、2030年30%減
※GHG排出量算出は環境省が公表している方法に準じて行っている。
<TCFD提言に基づく情報開示>
当社グループはTCFD提言の11の推奨開示項目を順次開示していく取り組みを進めています。
気候変動はもはや人類共通の、誰もが逃れることのできない課題です。当社グループでは経営上の最重要課題の一つと捉え、社内における議論、各方面の知見者からのヒアリングを経て、グループ全体で取り組むことを宣言しました。2021年11月にはその活動の幹となる新しいマテリアリティを公表し、その中で気候変動への取り組みとしての「脱炭素の実現」「資源と経済循環両立の高度化」を掲げています。
2021年11月にはTCFDへの賛同を表明しました。気候変動への取り組みとともにTCFD提言に基づく情報開示を進めシナリオ分析、リスク機会の特定と情報公開も進めていきます。これらを進めるにあたり、京都大学との産学連携により、当社を取り巻く市場環境における気候変動の影響、グローバルにおける地域特性などに関する検討を行っています。
シナリオ分析にあたっては気候変動対応シナリオ(1.5℃)、成り行きシナリオ(4℃)における様々な影響を検討しながら、市場環境の変化を想定します。想定に基づき各事業部門におけるリスクと機会の再評価を進めています。
<リスクと機会の特定>
マテリアリティ特定にあたり、外部専門家の協力のもと経営層ワークショップを開催し、取り組みの重要性を確認しました。取締役会決議を経て設立されたサステナビリティ推進委員会は、経営層とともに外部アドバイザー、株主・投資家、サステナビリティ評価機関との対話を通じ、当社課題の洗い出しとマテリアリティの方向性の検討を進めました。また、特定にあたっては、事業、製品を通じた社会課題の解決といった、機会につながる課題と、環境、社会に及ぼす影響を把握し、ステークホルダーに与える負荷を低減するといったリスクの観点から評価、分析、検証を行っています
人的資本に関する開示
(1)戦略
当社グループの第18次中期経営計画では、「人材育成と最適配置の両立」を重点方針の一つに掲げています。それは、人材こそが「宝」であり企業価値向上の源泉であるとの考えに加え、今回新しく定めた「塗料で人を幸せにする」というグループビジョンのもと、社員が当社に関わる全ての人々の幸せのために最大限に力を発揮し挑戦できる機会をつくることが重要と考えているからです。
そのためにグローバル人事制度をはじめとした「明確な役割と生み出した成果に報いる人事制度」の整備を推進します。事業のグローバル化を支える人材開発を実現するため、中長期的な視点を持って人材開発戦略を構築し、社員全員が「利益と公正」を体現し、働きがいを実感しながら最前線で新たな価値を創出し続けられる好循環を生み出していきます。
当社の人材開発戦略における3つの重点施策は以下のとおりです。
ジョブ制を取り入れた新人事制度
1)新人事制度の導入
社員の役割を明確にし、生み出した成果や貢献に報いる新たな人事制度の導入を推進していきます。
経営基幹職に対しては、外部アセスメントを定期的に実施することで社内評価だけでなく第3者による客観的な視点も取り入れ、評価とその結果に基づいた報酬、最適配置を実施します。総合職に対しても、成果追求型の人事制度へ刷新し、実力主義の評価制度へと進化させることで、従業員のモチベーション向上を図っています。
2)ジョブディスクリプション(職務定義書)の再整備
「塗料で人を幸せにする」というビジョン実現に向けて、求める人材像やコンピテンシー、一人ひとりの果たすべき役割と行動を言語化/定義化して共通認識を持つために、全ての経営基幹職におけるジョブディスクリプションを中期経営計画の方向性に基づいて再整備します。
人材育成と最適配置
1)社内教育
コンピテンシーや経営リテラシー、ビジネススキル、それぞれの要素の能力向上を支援する新たな教育体制を構築します。教育体系を刷新し社員個々の能力を高め、個人の自己実現と組織の成果追求の両立を可能にしていきます。
2)グローバルでの人材育成と最適配置
世界中で社員が誇りを持ち、活き活きと躍動し活躍できるグローバル人事制度を設計・運営し、グローバルで人材育成と最適配置を推進していきます。また、グローバルタレントマネジメントシステムの整備・一元管理や、多国間人材交流の促進を目指します。これらの活動を通じて、当社グループ特有の経営モデルである「ONE KANSAI」の展開を主導する人材を継続的に輩出していきます。
エンゲージメント向上による信頼関係の強化と継続的な改善
社員が会社の行動規範となる新たな「ミッション・ビジョン・バリュー」に共感し、誇りや働きがいを感じながら働くことができるよう、会社と社員との信頼関係の更なる強化に取り組んでいきます。また、実施した様々な施策に対する継続的な効果検証を通じて本質的な課題抽出につなげ、改善に向けた対話を後押しする仕組み作りや社内風土の醸成を推進し、エンゲージメントを向上させていきます。
(2)目標及び指標
当社グループのマテリアリティの一つである「多様な人材が活躍するグループへ」の目標及び指標は、
当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼすリスクとして以下の事項があり、これらは投資者の判断に影響を及ぼす可能性があります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経済・市況等に係るもの
① 当社グループの業績・財務状況は、当社グループが製品を販売する国・地域経済状況のほか、当社グループの顧客企業や市場の動向、他社との競合による市場価格の変動等の影響を受けます。これらの影響を最小化すべく、グループ各社業績及び業績指標推移の定期的なモニタリングの実施により、地域・市場分野毎の事業特性分析、収益性評価、低収益資産の整理等を通じ、地域事業の強化を図るとともに、グループ経営の安定化を推進してまいります。
② 当社グループが生産活動で使用する原材料は、世界的な経済動向による需給バランス、為替変動等の影響を受けます。これらの急激な高騰は生産コスト上昇につながり、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、一部の特殊な原材料については限定的な調達ソースによるものがあります。これらの影響を最小化すべく、ハイリスクな原材料、または使途先が限定される原材料につき、選定し代替原材料を検討するとともに、他の原材料への統合も図ってまいります。
③ 為替、金利等の相場変動については、一部についてヘッジ取引を行っておりますが、当社グループの業績・財務状況に影響を及ぼします。また、連結財務諸表の作成にあたっては、海外グループ会社の財務諸表等を外貨から円貨に換算しており、外貨建数値に変動がない場合でも、為替相場の変動が円換算後の連結財務諸表に影響を及ぼします。これらの影響を最小化すべく、デリバティブ取引実績や残高などは、経営会議・取締役会へ定期的に報告し、これら内容を含むオフバランス取引についても、モニタリングを実施しております。
④ 従業員の退職給付債務及び退職給付費用は、割引率等の年金数理計算上の前提条件や年金資産の期待運用収益率等に基づいて算出されておりますが、前提条件が変更された場合、または前提条件と実際の結果との間に著しい乖離が発生した場合には、積立不足の発生等により、当社グループの業績・財務状況に影響を及ぼします。なお、これら要素の一部については、外部機関へ運用支援を委託することにより影響の緩和を図っております。
(2)法律・規制、社会的・政治的要因等に係るもの
① 当社グループが事業活動を行う国・地域における予期せぬ法律・税制変更など、政治的要因、戦争やテロが当社の事業活動・業績に影響を及ぼす可能性があります。これらの影響を最小化すべく、事業拠点の多様化・最適化を進める中で、カントリーリスクの検証を含む、国際情勢の情報収集に努めてまいります。
② 当社グループの国内外の事業活動に関連し、訴訟、係争、その他の法的手続きの対象となるリスクがあり、重大な訴訟等が提起された場合には、当社グループの業績・財務状況に影響を及ぼす可能性があります。これらの影響を最小化すべく、専門家のサポート体制を拡充し連携を密にして、訴訟等が発生した場合には、迅速かつ適切に対応する体制をとっております。
③ 当社グループは、知的財産についての管理規程を定め、充分な調査及び管理を行ってリスクを最小限にするよう努めておりますが、他者との間で、当社グループの保有する特許その他の知的財産、または他者の保有する知的財産に係る訴訟等の紛争が発生した場合、当社グループの業績・財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。これらの影響を最小化すべく、他者の権利を侵害する可能性を市場展開前にチェックしており、研究開発テーマを設定する際にもその可能性を調査しております。
④ 当社グループは、事業活動を行う上で、様々な法規制の適用を受けております。これらの法令等に対する違反や社会的要請に反した行動等により、処罰・訴訟の発生、社会的制裁またはステークホルダーの信頼失墜に繋がり、業績・財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。当社は、法令等の遵守はもとより企業としての社会的責任を果たすため、「利益と公正」を企業活動の基軸とする行動指針を明確に打ち出しておりますが、それにもかかわらず当社グループ及び関係先等が重大なコンプライアンス違反を発生させた場合、当社グループの信用・業績・財務状況に影響を及ぼす可能性があります。これらの影響を最小化すべく、「コンプライアンス推進委員会」を主体として、組織的に社内教育・啓蒙活動を推進しております。
(3)製品、品質の要因によるもの
当社グループは、品質管理基準に従って製品の製造を行っており、また、製造物責任賠償保険に加入しておりますが、万一、製造物責任賠償保険で填補しえない製品の欠陥による損失が発生した場合には、当社グループの業績・財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。これらの影響を最小化すべく、品質保証体制の整備に努めております。
(4)ウイルス・感染症等の拡大によるもの
当社グループは、国内外に事業展開しており、新型コロナウイルス等の感染症が発生・拡大した場合には、当社グループの業績・財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。これらの影響を最小化すべく、対策委員会や専門部会を設置し、タイムリーかつ効果的な対策を検討の上、通達やマニュアル等の発信を行い、従業員の安全確保と事業を継続するための統制、及びグループ各社との連携を図って対処する体制としております。
(5)環境・気候変動によるもの
当社グループは、環境・気候変動・安全・健康問題に対してより総合的な見地から地球環境保全の取組を行っておりますが、気候変動による地球規模での気温上昇の影響を抑えるための社会的課題に対し適切な解決ができない場合、あるいは万一、予期せぬ環境汚染等による第三者への損害及び社会的信用の低下等に伴う損失が発生した場合には、当社グループの業績・財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。これらの影響を最小化すべく、当社は、地球環境に関する会社方針を定め、製品の環境負荷低減、製品安全の確保、お客様への情報提供などをトップ診断の下で活動を行っています。また、気候変動に関しては、TCFDに賛同を表明し、その指針に沿ったシナリオを策定し、サステナビリティ推進委員会にて各事業部門のリスクと機会の特定・評価・対策等の検討を進めていく体制としております。
(6)自然災害・事故災害によるもの
当社グループは、事故発生の未然防止、また災害発生時の被害軽減を図るため、国内外グループでの教育・啓蒙、施設・設備等の対策、点検整備及び事業継続計画に基づく生産拠点の分散化等の対策に取り組んでおりますが、万一、損害保険等で填補しえない自然災害を含む事故・災害が発生した場合には、当社グループの業績・財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。これらの影響を最小化すべく、「リスク管理委員会」を設置し、災害発生時の、主にサプライチェーンにおけるBCP文書の策定や訓練実施など、事業継続計画の精緻化推進を行っております。また、損害保険の付保内容については、外部機関による妥当性の評価を受けるなどして適正化を図っております。
(7)その他
① 当社グループは、事業の展開によっては、技術提携、合弁等の形態で他社と共同活動を行っておりますが、共同活動の当事者間で歩調の不一致等が生じた場合は、当社グループの業績・財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。これらの影響を最小化すべく、事業部門制に基づき、グループ会社の管掌を明確化し、連携強化に努め、また合弁事業については当社から役員を派遣するなど、適切な関係を以って事業活動が推進されるよう努めております。
② 当社グループは、事業活動におけるITの効率的活用により、ITシステムへの依存度は高まっておりますが、これら機密情報等に対するサイバー攻撃や、機器やソフトウェアの障害に伴う事業中断・損害の発生、個人情報を含む機密情報の漏洩等のリスクがあります。これらのリスクが顕在化した場合、当社グループの事業活動に支障が生じ、当社グループの業績・財務状況に影響を与える可能性があります。これらの影響を最小化すべく、部門横断の「情報セキュリティ委員会」を設置し、事故防止や攻撃防御に関する教育・啓蒙活動、及び監視システムの導入等、対策を推進する体制としております。
③ 当社グループにおいては、メディアやSNSを媒体とした情報発信やブランディング活動を推進していくことが想定され、当社グループの情報発信等における不適切な表現が、SNS等を通じて拡散された場合、あるいは当社グループの誤った情報が拡散された場合、当社グループのブランド価値や企業の信用を低下させる可能性があります。これらの影響を最小化すべく、ウェブサイトやSNSの運用体制・ガイドラインを整備するとともに、チェック体制を整備しております。
④ 当社グループが、今後持続的成長を成していくためには、必要となる専門性を有する、あるいはグローバル視点で実行力・構想力を有する人材の計画的確保と育成が必要でありますが、人材の確保や定着が達成されず事業活動に支障が出る場合には、業績・財務状況に影響を及ぼす可能性があります。これらの影響を最小化すべく、人事制度改訂やエンゲージメントを高める活動の推進、多様な人材が活躍するための土壌醸成を進めております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
(経営成績の状況)
当期における世界経済は、欧米各国、日銀による政策金利の変更に伴う為替変動や、地政学リスクの高まり、米国の通商政策を含む不確実な政策動向、金融資本市場の変動などを背景に、依然として先行きは不透明な状況が続きました。このような状況下、わが国経済は、総じて景気は緩やかに回復していますが、持続的な物価上昇の影響を受けつつ、金利の上昇、ウクライナ・中東情勢の問題及び為替の変動などにより、景気の先行きに注視が必要な状況が続きました。インドにおいては、物価上昇や金利の高止まりにより成長ペースが鈍化傾向にありましたが、中央銀行が利下げに動くなど景気下支えに向けた支援が行われ、引き続き内需主導の堅調な成長が続く見込みです。欧州においては、インフレ圧力の緩やかな緩和を受けて利下げが実施され、景気は緩やかに回復する見通しですが、一部の地域では依然として足踏み状態が続いております。中国においては、景気の持ち直しの動きはみられるものの、不動産市場の停滞に伴う景気の下振れが懸念されています。
当社グループの当連結会計年度における売上高は5,888億25百万円(前期比4.7%増)となりました。営業利益は、固定費の増加があったものの、原価低減や販売価格の改善などに取り組んだ結果、520億50百万円(前期比0.9%増)となりました。経常利益は、超インフレ会計による正味貨幣持高に係る損失や為替差損の計上、持分法適用会社において、のれんなどの減損損失を計上するなど、持分法による投資利益が大幅に減少したことなどから、491億3百万円(前期比14.9%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、前年に計上されていた一過性の特別利益の影響がなくなったことに加え、早期割増退職金や事業撤退損などの一過性の特別損失の計上により、383億6百万円(前期比42.9%減)となりました。
各セグメントの状況は以下のとおりであります。
1)日本
自動車分野では、一部自動車メーカーの生産・出荷停止等の影響で自動車生産台数が前年を下回ったものの、販売価格の改善に取り組んだ結果、売上高は前年を上回りました。工業分野、建築分野及び防食分野では、市況低調などの影響により販売を拡大できず、トータルで売上高は前年を下回りました。船舶分野では、外航船向けの市況は好調に推移しました。セグメント利益は、一部の原材料価格が低下してきたことに加え、販売価格の改善に取り組んだことなどから前年を上回りました。
これらの結果、売上高は1,638億96百万円(前期比0.9%減)、セグメント利益は239億19百万円(前期比11.5%増)となりました。
2)インド
建築分野では、販売促進活動を推進するものの、市場環境の激化や低価格品へのシフトも進み、売上高は前年を下回りました。一方、インドの自動車生産台数は安定して推移しており、自動車分野の売上高は前年を大幅に上回り、インド全体の売上高は、前年を上回りました。セグメント利益は、人件費などの固定費が増加し、前年を下回りました。
これらの結果、当セグメントの売上高は1,423億35百万円(前期比4.2%増)、セグメント利益は141億93百万円(前期比4.1%減)となりました。
3)欧州
トルコでは、自動車生産台数は減少したものの、販売価格改善の取り組みにより、売上高は前年並みとなりました。その他欧州各国においては、工業分野を中心とした堅調な需要と新規連結の影響により、売上高は前年を上回りました。一方で、セグメント利益は原材料価格が安定して推移したものの、インフレ影響による固定費の増加に加え、持分法適用会社において、のれんなどの減損損失を計上するなど、持分法による投資損失が大幅に拡大し、前年を下回りました。
これらの結果、当セグメントの売上高は1,564億69百万円(前期比15.1%増)、セグメント損失は9億79百万円となりました。
4)アジア
中国においては、自動車生産台数は前年を上回ったものの主要顧客の需要は伸び悩み、売上高は前年を下回りました。タイ及びインドネシアにおいては、自動車生産台数の減少を受け、売上高は前年を下回りました。マレーシアでは、自動車生産台数が堅調に推移し、販売数量が伸びたほか、販売価格の改善に取り組んだことにより、売上高は前年を上回りました。セグメント利益は、自動車分野の減収の影響を受け、前年を下回りました。
これらの結果、当セグメントの売上高は686億70百万円(前期比4.5%減)、セグメント利益は91億88百万円(前期比12.9%減)となりました。
5)アフリカ
南アフリカ及び近隣諸国の経済は慢性的な電力不足やインフレ圧力により消費が低迷するなか、販売活動の促進に努めたほか新規顧客の獲得により、売上高は前年を上回りました。東アフリカ地域では、デモや天候不順の影響などあったものの、建築分野において拡販を進めたことにより、売上高は前年を上回りました。セグメント利益はコスト削減などに取り組んだことにより、前年を上回りました。
これらの結果、当セグメントの売上高は474億23百万円(前期比9.4%増)、セグメント利益は43億50百万円(前期比6.7%増)となりました。
6)その他
北米では、自動車生産台数は堅調に推移し、売上高は前年を上回りました。セグメント利益については、増収に伴い営業利益が改善したものの、持分法による投資利益が減少したことなどにより、前年をわずかに下回りました。
これらの結果、当セグメントの売上高は100億31百万円(前期比8.9%増)、セグメント利益は32億4百万円(前期比2.8%減)となりました。
(財政状態の状況)
1)流動資産
当連結会計年度末における流動資産合計は、3,555億30百万円(前期末比268億9百万円増)となりました。
流動資産の増加は、主に受取手形、売掛金及び契約資産、有価証券や原材料及び貯蔵品などが増加したことによるものであります。
2)固定資産
当連結会計年度末における固定資産合計は、3,951億68百万円(前期末比341億86百万円増)となりました。
固定資産の増加は、投資有価証券などが減少したものの、主に有形固定資産、無形固定資産及び出資金などが増加したことによるものであります。
3)流動負債
当連結会計年度末における流動負債合計は、1,770億49百万円(前期末比242億円増)となりました。
流動負債の増加は、主に未払法人税等が減少したものの、短期借入金、短期社債や未払費用などが増加したことによるものであります。
4)固定負債
当連結会計年度末における固定負債合計は、2,236億39百万円(前期末比670億33百万円増)となりました。
固定負債の増加は、主に社債、長期借入金や繰延税金負債などが増加したことによるものであります。
5)純資産
当連結会計年度末における純資産合計は、3,500億9百万円(前期末比302億38百万円減)となりました。
純資産の減少は、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことや為替換算調整勘定などが増加したものの、自己株式を取得して消却を実施したことにより、利益剰余金が減少したことによるものであります。
なお、Weilburgerグループ各社の株式を取得し子会社化した影響が含まれており、これに伴い主に固定資産などが増加しております。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前期末に比べ78億5百万円減少し631億47百万円となりました。
1)営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、前期比321億17百万円収入が減少し、349億66百万円の収入となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益652億68百万円、減価償却費207億3百万円などの収入、法人税等の支払額312億92百万円、固定資産除売却損益118億47百万円、投資有価証券売却損益70億23百万円などの支出によるものであります。
2)投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前期比301億57百万円支出が増加し、392億円の支出となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出額201億5百万円、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出額194億円、定期預金の預入による支出額150億81百万円、有価証券の増加額75億14百万円、無形固定資産の取得による支出額52億31百万円などの支出、有形固定資産の売却による収入額132億38百万円、定期預金の払戻による収入81億15百万円、投資有価証券の売却による収入額71億7百万円などの収入によるものであります。
3)財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、前期比648億49百万円支出が減少し、80億6百万円の支出となりました。これは主に、社債の償還による支出額3,719億21百万円、自己株式の取得による支出額800億8百万円、配当金の支払額87億41百万円、長期借入金の返済による支出額87億9百万円などの支出、社債の発行による収入額4,639億7百万円などの収入によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
1)生産実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの生産実績は次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前期比(%) |
|
日本 |
100,366 |
△1.3 |
|
インド |
92,682 |
4.5 |
|
欧州 |
108,775 |
12.6 |
|
アジア |
53,478 |
△6.5 |
|
アフリカ |
31,342 |
15.3 |
|
報告セグメント計 |
386,645 |
4.1 |
|
その他 |
6,588 |
14.4 |
|
合計 |
393,233 |
4.2 |
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しておりません。
2.金額は、製造原価によっております。
2)受注実績
当社グループは、主として見込生産によっておりますので、特に記載すべき事項はありません。
3)販売実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの販売実績は次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前期比(%) |
|
日本 |
163,896 |
△0.9 |
|
インド |
142,335 |
4.2 |
|
欧州 |
156,469 |
15.1 |
|
アジア |
68,670 |
△4.5 |
|
アフリカ |
47,423 |
9.4 |
|
報告セグメント計 |
578,794 |
4.7 |
|
その他 |
10,031 |
8.9 |
|
合計 |
588,825 |
4.7 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの目標とする経営指標と当連結会計年度の実績は次のとおりであります。
|
指標 |
当連結会計年度(実績) |
2025年度見込 |
|
連結売上高(百万円) |
588,825 |
600,000 |
|
営業利益(百万円) |
52,050 |
54,000 |
|
経常利益(百万円) |
49,103 |
58,000 |
|
連結EBITDA(百万円) |
81,214 |
86,000 |
|
連結EBITDAマージン(%) |
13.8% |
14.3% |
|
親会社株主に帰属する当期純利益(百万円) |
38,306 |
36,000 |
|
調整後ROE(%)※ |
13.1% |
13.3% |
(注)1.EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却費+持分法投資損益
2.調整後ROE=(当期純利益+のれん償却費) / 株主資本(期首期末平均) ※一過性除く
当連結会計年度の連結売上高は5,888億円(前期比4.7%増)、営業利益は520億円(前期比0.9%増)となりました。これは、欧州における新規連結による影響および積極的な原価低減の取り組みにより、売上および営業利益が増加したためです。一方で、持分法適用会社において、のれんなどの減損損失を計上したことなどにより、持分法による投資利益が大幅に減少し、連結EBITDAマージンは13.8%(前期比0.8ポイント減)となりました。2025年度は第18次中期経営計画の初年度であり、第17次中期経営計画で積み上げた成果を基軸に連結売上高6,000億円、営業利益540億円、経常利益580億円、親会社株主に帰属する当期純利益360億円と連結売上高、営業利益、経常利益ともに過去最高を計画しております。
当社は、2024年11月、第18次中期経営計画を策定・公表の上、2025年4月より始動しました。
本計画では、事業、人材、エンゲージメントの強化をテーマにしています。2022年度から設定しております2030年の目標(KPI2030)に向けて、2027年度に財務・非財務両方の中間目標を達成することで、ありたい姿の実現可能性を高めていきます。
本計画の重点方針は、「構造改革による収益性と効率性の強化」、「事業を伸ばす製品開発とDXの推進」、「人材育成と最適配置の両立」、「最適資本構成に基づく積極的な投資と還元」であり、地域ごとの重点方針に対する戦略を具体的に示し取り組んでまいります。また、株主との対話を重視し、建設的な対話を継続しながら、信頼関係を築き、企業価値の向上を目指します。
以上のような考え方のもと、第18次中期経営計画の最終年度目標としては、売上高7,000億円、EBITDAマージン17%、調整後ROE15%と設定しております。これらは、当社の事業部門が管轄しているグループ会社と共同で策定した現実的な目標値であると考えております。このように当社は積極的な事業成長への投資を通じて企業価値の更なる向上に努めてまいります。
2024年度通期決算の詳細は当社ウェブサイトに掲載しております。詳細は「戦略説明会 資料(2025/5/16)」(https://www.kansai.co.jp/ir/library/explanation/)をご参照ください。
地域別セグメントの業績は次のとおりであります。
|
セグメント の名称 |
売上高 |
セグメント利益 |
||||||
|
前連結 会計年度 (百万円) |
当連結 会計年度 (百万円) |
増減率 (%) |
2025年度 見込 (百万円) |
前連結 会計年度 (百万円) |
当連結 会計年度 (百万円) |
増減率 (%) |
2025年度 見込 (百万円) |
|
|
日本 |
165,301 |
163,896 |
△0.9 |
165,000 |
21,451 |
23,919 |
11.5 |
24,000 |
|
インド |
136,648 |
142,335 |
4.2 |
145,000 |
14,807 |
14,193 |
△4.1 |
14,500 |
|
欧州 |
135,902 |
156,469 |
15.1 |
165,000 |
5,068 |
△979 |
- |
3,000 |
|
アジア |
71,876 |
68,670 |
△4.5 |
65,000 |
10,548 |
9,188 |
△12.9 |
8,500 |
|
アフリカ |
43,338 |
47,423 |
9.4 |
50,000 |
4,077 |
4,350 |
6.7 |
5,500 |
|
その他 |
9,210 |
10,031 |
8.9 |
10,000 |
3,297 |
3,204 |
△2.8 |
2,500 |
|
合計 |
562,277 |
588,825 |
4.7 |
600,000 |
59,239 |
53,879 |
△9.0 |
58,000 |
(注)セグメント利益=営業利益+持分法投資損益
事業部別セグメントの当連結会計年度の売上高と対前期比増減率の内訳は次のとおりであります
|
セグメント の名称 |
自動車塗料 |
工業塗料 |
建築塗料 |
自動車(補修用)船舶・ 防食塗料 |
その他 |
合計 |
||||||
|
金額 (百万円) |
増減率 (%) |
金額 (百万円) |
増減率 (%) |
金額 (百万円) |
増減率 (%) |
金額 (百万円) |
増減率 (%) |
金額 (百万円) |
増減率 (%) |
金額 (百万円) |
増減率 (%) |
|
|
日本 |
67,565 |
2.3 |
35,435 |
△4.4 |
22,298 |
△5.6 |
37,521 |
△1.0 |
1,074 |
64.1 |
163,896 |
△0.9 |
|
インド |
48,066 |
13.4 |
23,484 |
12.2 |
67,088 |
△4.1 |
2,996 |
8.8 |
698 |
13.6 |
142,335 |
4.2 |
|
欧州 |
12,004 |
△0.4 |
90,379 |
25.8 |
8,268 |
9.3 |
16,054 |
0.8 |
29,761 |
4.4 |
156,469 |
15.1 |
|
アジア |
38,758 |
△9.2 |
13,856 |
6.7 |
10,648 |
4.3 |
3,623 |
△1.8 |
1,783 |
△22.5 |
68,670 |
△4.5 |
|
アフリカ |
467 |
△1.7 |
4,977 |
0.5 |
36,335 |
12.3 |
2,988 |
15.4 |
2,654 |
△10.2 |
47,423 |
9.4 |
|
その他 |
10,031 |
8.9 |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
- |
10,031 |
8.9 |
|
合計 |
176,894 |
2.3 |
168,133 |
13.8 |
144,639 |
0.6 |
63,185 |
0.5 |
35,973 |
2.7 |
588,825 |
4.7 |
上記を踏まえた上での経営成績の状況に関する分析は次のとおりであります。
1)売上高及び営業利益
当期の売上高は前期比4.7%増、265億48百万円増収の5,888億25百万円となり、営業利益は前期比0.9%増、4億55百万円増の520億50百万円となりました。売上高、営業利益ともに2025年2月時点で見直した公表値を上回り、過去最高となりました。増収増益の主たる要因は欧州における新規連結による影響や価格転嫁に加え、一部の原材料価格水準の低下によるものであり、固定費の増加があったものの、増益となっております。
各セグメントの詳細は「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。
(当社の売上高及び営業利益に影響を与える主要な指標)
|
国名 |
自動車生産台数(万台) |
|
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
|
|
日本 |
868 |
847 |
|
インド |
597 |
609 |
|
中国 |
3,016 |
3,128 |
|
タイ |
183 |
147 |
|
インドネシア |
140 |
120 |
|
マレーシア |
77 |
79 |
|
トルコ |
114 |
104 |
日本の2025年度の自動車生産台数は840万台と想定
出所:日本自動車工業会、マークラインズ、日本の当連結会計年度は当社推定
(単位:円/kl)
|
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
2025年度 |
||
|
上期 |
下期 |
上期 |
下期 |
通期 |
|
|
国内ナフサ価格 |
65,500 |
72,600 |
78,000 |
73,300 |
63,000 |
上記数値は当社推定値であります。
2)営業外損益及び経常利益
当期の営業外損益は前期比90億36百万円減少の29億47百万円のマイナスとなりました。主な減少要因は、持分法適用会社において、のれんなどの減損損失を計上するなど、持分法による投資利益が大幅に減少したことや為替差損の計上によるものであります。
これらの結果、当期の経常利益は前期比14.9%減、85億81百万円減益の491億3百万円となりました。
3)特別損益及び税金等調整前当期純利益
当期の特別損益は前期比345億26百万円減少の161億64百万円のプラスとなりました。主な減少要因は、前年に計上されていた一過性の特別利益の影響がなくなったことに加え、早期割増退職金や事業撤退損などの一過性の特別損失の計上によるものであります。
これらの結果、当期の税金等調整前当期純利益は前期比39.8%減、431億7百万円減益の652億68百万円となりました。
4)法人税等(法人税等調整額を含む)及び親会社株主に帰属する当期純利益
当期の法人税等は、前期比119億94百万円減少の200億34百万円となりました。主な減少要因は当社グループにおける税引前当期純利益の減少による税金費用の減少によるものであります。
これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比42.9%減、288億3百万円減益の383億6百万円となりました。
財政状態については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に含めて記載しております。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因は次のとおりであります。
当社グループは、自動車用、工業用、建築用、船舶用、防食用など幅広い分野を対象とした塗料の製造販売を行っております。国内塗料需要がほぼ横ばいで推移する中、積極的な海外事業展開を行い、海外売上高比率は国内を上回っております。今後も、海外での事業活動の規模は拡大していくものと予想され、事業展開地域、国の法律・規制・政治的要因等が当社グループの事業活動・業績に影響を及ぼします。こうした中、熾烈なグローバル競争を勝ち抜き、成長していくため、グループ全体でのシナジーを創出していくとともに、企業統治体制を高めていきます。
当社グループは、各国に製造拠点を設け事業活動を展開することを基本としておりますが、製品・原材料を他拠点から調達する場合等、為替相場の変動が当社グループの事業活動・業績に影響を及ぼします。製品の生産移管や、原材料の現地調達を進めていくほか、為替予約の実施等によるリスクヘッジを図っていきます。
また、当社グループの原材料は主に原油・ナフサ価格の変動による影響を受けます。急激な原材料価格の変動により販売価格への反映が充分でない場合は、当社グループの事業活動・業績に影響を及ぼします。グローバル調達、品種統合の取組等によるコスト削減に努めるほか、迅速な対応が図れるよう原材料供給メーカーとの関係を強化していきます。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に含めて記載しております。
資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりであります。
当社グループの資金需要の主なものは生産活動のための原材料仕入、製造費、営業活動のための販売促進費、製品競争力の強化、市場に適合した新技術の開発を目的とした研究開発費、各事業についての一般管理費等であります。投資活動については、成長投資・収益性向上に資する設備投資、事業拡大に関連した投融資が主な内容であります。また、特に海外での成長投資、国内では収益性向上に繋がる投資に対して、獲得した営業キャッシュ・フローを投入し、不足分については主に銀行借入と社債の発行による資金調達を行っております。短期借入金は主に営業取引に伴う資金調達であり、長期借入金及び社債は主に設備投資や投融資にかかる資金調達であります。
当社は機動的な社債発行を可能にするため、発行登録制度を利用しており、2024年8月に、自己株式取得資金、短期社債償還資金及び運転資金に充当するために国内無担保普通社債を発行いたしました。
さらに、当社グループ内資産効率化のためキャッシュマネジメントサービスの導入、コマーシャル・ペーパーの発行など資金調達方法の多様化を進めております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、収益及び費用並びに資産及び負債等の額の算定に際して様々な見積り及び判断が行われておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が、連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に影響を与える可能性があります。
(有形固定資産及び無形固定資産)
固定資産の簿価について、それが回収できなくなる可能性を示す兆候がある場合には、減損テストを行っております。資産グループの回収可能価額は、事業用資産については将来キャッシュ・フローを基にした使用価値により、遊休資産及び処分予定の資産については売却予定額を基にした正味売却価額によりそれぞれ測定しております。将来キャッシュ・フローの見積りは合理的であると判断しておりますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化によって見積りが変更されることにより、回収可能価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。
(投資有価証券)
その他有価証券のうち市場価格のない株式等以外のものについては、時価が取得原価に比して50%以上下落した場合は、時価の回復可能性がないものとして一律に減損処理を実施し、下落率が30%以上50%未満の場合には、時価の回復可能性の判定を行い、減損処理の要否を決定しております。また、市場価格のない株式等の減損処理にあたっては、財政状態の悪化があり、かつ実質価額が取得原価に比して50%以上下落した場合は原則減損としますが、個別に回復可能性を判断し、最終的に減損処理の要否を決定しております。回復可能性の判断が適切なものであると判断しておりますが、回復可能性ありと判断している有価証券についても、将来、時価の下落又は投資先の財政状態の悪化により、減損損失が発生する可能性があります。
(繰延税金資産)
回収可能性がないと判断される繰延税金資産に対して評価性引当額を設定し、適切な繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は十分な課税所得を計上するか否かによって判断されるため、その評価には、実績情報とともに将来に関する情報が考慮されております。当該計上額が適切なものであると判断しておりますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化に伴う経営悪化により、繰延税金資産に対する評価性引当額を追加で設定する可能性があります。
技術援助契約
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契約 会社名 |
相手先 |
国別 |
契約の内容 |
契約期間 |
対価 |
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提 |
Kansai Nerolac Paints Ltd. |
インド |
各種塗料の製造技術及び製造販売権並びに商標の使用許諾 |
2021年4月1日から2026年3月31日まで |
売上高に対して一定率 |
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Thai Kansai Paint Co.,Ltd. |
タイ |
各種塗料の製造技術及び商標の使用許諾 |
1995年7月1日から会社存続期間中 |
売上高に対して一定率 |
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PPG Kansai Automotive Finishes Technologies,LP |
米国 |
自動車用塗料の製造技術及び製造販売権 |
2005年1月4日から相手先との合意により解約するまで |
売上高に対して一定率 |
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湖南湘江関西塗料 有限公司 |
中国 |
自動車用塗料の製造技術及び製造販売権 |
2013年6月1日から会社存続期間中 |
売上高に対して一定率 |
当社グループは、R&D部門、技術開発部門を中核とする開発センターを中心に、国内外グループ各社の技術部門と連携をとりながら、市場ニーズに適応した製品のタイムリーな開発及び持続的成長につながる次世代製品・新技術の開発に積極的に取り組んでおります。また、グローバル展開を加速していくなかで、事業部門含めたグループ各社との連携をより一層強化し、各国市場に適合した新技術の開発及び世界に通用する人財育成に取り組んでおります。
当連結会計年度に支出した当社グループ全体の研究開発費の総額は
主な研究開発活動状況は次のとおりであります。
不透明な未来を開拓するべく、当社の研究開発は既存領域を探索する『知の深化』と新領域に挑戦する『知の探索』の両利きを意識して進めております。前者については、塗料のコア技術として位置付ける『配合技術』『成膜技術』『粉体分散技術』『樹脂設計技術』『意匠色材技術』の深掘りを行い、より機能性に富んだ塗料を創出しています。更にはマテリアルインフォマティクスなどのデジタル技術やエコフレンドリーなグリーン材料を取込み、効率的な研究開発と社会性の高い塗料の実現を試みています。一方、後者については、当社の要素技術を他の成長市場に適用し、産官学と共創しながら新たな提供価値を探索しています。一例として、当社の粉体分散技術を応用して、二次電池電極膜の導電性能を改良し、車載用電池分野への参入を果たしました。
分析研究においては、塗料・塗膜および電極膜のような新規分野製品の組成・状態・現象などを分析・解析できる技術を確立し、当社の研究開発に貢献しております。また、蓄積された莫大な耐久性に関する分析データを活用して高耐久性塗料の製品開発や販売促進に有用な情報を提供するなど、当社グループ全体の事業を支援しております。
意匠色材研究においては、自動車塗料分野において日本および海外JVの新色設計者やデザイナーが協同でグローバル視点での流行色動向を調査・分析し、その結果を反映させたグローバルトレンドカラーを提案しております。また、当社に蓄積された色材情報やデジタル技術を活用したカラーデザインツールの適用開発によって、顧客や社内とのカラーに関するコミュニケーションや開発業務を効率化し、さらに新たなUXの創出を目指した研究を推進しております。
高まる環境意識に対し、近年、基礎研究領域ではエコフレンドリーテーマを増大させております。開発・製造効率を向上させるデバイスやデジタルツールを自ら作成したり、材料開発の段階から負荷の少ない製造工程を模索したりすることで、製品を生み出すための消費エネルギーを低減させております。またバイオマスポリマーなどの非石油系材料の探索も始めております。
塗料・塗装システム開発においては、当社グループ全体のビジネス拡大を念頭に、社会への持続的な貢献を目指し、地球環境に配慮した塗料や塗装を実現する技術の開発や、嗜好の多様性にマッチした新しい意匠、メンテナンス低減を可能にする塗料の開発を推進しております。自動車塗料分野では、省工程・省エネルギーの環境対応技術として評価の高い水性3ウェット塗装システムの拡大・多様化の研究開発を一層推進するとともに、低VOC塗料・低温硬化・光硬化・脱スプレー化・薄膜システム等、さらなる環境負荷低減材料設計を行っております。工業塗料分野は、特に海外事業において、急速に環境対応・省工程・水性化・ハイソリッド化のニーズが高まっており、海外グループ会社と連携強化し、技術開発を加速させております。建築塗料及び防食塗料分野においては、市場での高まる環境対応にタイムリーに対応し、塗料の水性化を推進するとともに、遮熱・抗菌・抗ウィルス・防蚊・多彩模様化・耐火などの高機能化に関する研究と商品化に努めております。また、自動車補修分野では、業界初のオール有機則フリーシステムへの高作業性と短時間硬化性付与、及びコンピューター調色システムの調色精度向上等、市場をリードする開発に取り組んでおります。これらの塗料開発に必要な評価技術や評価装置の開発もあわせて行い、塗料開発の効率化、期間短縮による使用エネルギー削減、開発品の完成度向上を図っております。
得られた技術は、当社グループ各社との共有化を図り、品質管理や環境・安全面に関する指導、お客様に対するコンサルティングなどのサービスに努め、信頼性の高いグローバル体制の確立をすすめております。また、コンプライアンスの視点から製品品質のみならず化学物質管理における当社グループ全体のガバナンス強化を進めており、お客様により安心・安全にご利用いただける製品の提供を行うと共に、情報公開を更に推進してまいります。
なお、セグメントごとの研究開発費は、「日本」