当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)企業理念、行動指針、必達
当社グループでは、創業者である高橋 義博が1968年に制定した社是<必達>を経営方針の中心に据えて経営に取り組んで参りました。職場の目に付くところに掲示し、社是<必達>に込められた精神、考え方を常に確認すると同時に、従業員への浸透を図ることを行ってきました。
社是<必達>の精神は、現在においても何らその価値を失っていないものと考えますが、既存の仕事、製品を軸に、役職員個々人の心構えや行動に重点を置いた内容としているため、近年の社会環境、経済環境が変化していく中で、社内外の人との関連性、新しい技術革新、製品開発への一層の目配り、社会の中における当社との連環という視点で、不十分さを感じるような状況になってきました。
そのため、2015年12月開催の当社取締役会において、社是<必達>の考え方に加える形で、新たに<企業理念>、<行動指針>を規定し、経営方針を一層充実したものといたしました。
これは、すべての経済原則や経営理論は「人」の行動原理に基づくものであるとの理解に立ち、まずは社内外を問わず全ての「人」に興味を持つべきであるとし、技術革新や商品開発など新しいことへの取り組みが、人や企業の活性化につながるという点を改めて確認し、一方、未来に目を向けると、人も企業も他者との連環(関連)の中で生き抜いていかざるをえないことを再認識した上で、社会に必要とされ、社会の発展に資する姿勢を打ち出していくべきとしたものであります。比較的平易な表現とすることで、若手従業員から経営トップに至るまで、<必達>と合わせて、浸透を図ることを企図したものであります。
これらを踏まえ、当社グループは以下の<企業理念>、<行動指針>、<必達>の社是の下、事業活動を行うに当たって人財の付加価値を一層高めることに努め、全てのステークホルダーを尊重し連携を図りながら、地球環境保全などサステナブル社会に対する企業責任を積極的に果たしてまいります。
<企業理念>
・人に興味を持とう
・新しいことに興味を持とう
・未来に興味を持とう
<行動指針>
人間は面白い。
その面白い人間が作っているのが企業であり、また顧客である。
全ての経済原則、経営理論は、人の行動原理に基本がある。
人に興味を持とう。
新しいことはワクワクする。
技術革新や商品開発は顧客や市場を開拓すると同時に、人間も活性化する。
新しいことに興味を持とう。
未来を考えることは楽しい。
未来は子供たちのものだ。
未来を考えれば、人も企業も自分だけでは生きて行けないことが分かる。
顧客の発展が無ければ、当社は富んでも長続きしない。
更に、社会に生かされなければ、人も企業も存続し得ない。
未来に興味を持とう。
一方、当社には1968年に制定した、社是「必達」が存在します。上記の企業理念と共に、歴史ある社是「必達」を、誇りを持って遵守しています。
<必達>
私たちはカラーエイジを担う大日精化の社員として<必達>の社是のもとに誇りを持って仕事をすすめよう
1.仕事は必ず目標を立てこれを必達しよう
1.正しい製品知識を身につけ製品普及のチャンスを積極的に求めよう
1.仕事を通じ製品を通じて会社の信用を更に高めよう
1.社会人として常に教養を高め反省を深める機会を持とう
1.仕事を通じて社会に貢献し大日精化を最高の企業体としよう
(2)経営理念
創業者 高橋 義博の「自分の生活が好きな色彩によって包まれたいと思うのが私たちの念願」との遺志を引き継ぎ、世界中の「もっと便利に、もっと安全に、もっと自由に彩りたい」という願いをかなえることを使命として、当社グループは企業理念や社是<必達>のもとに、企業としての持続的成長と価値向上を目指した「CSR・ESG基本方針」を、そしてこれを補完するために近年の社会的課題である地球環境、ガバナンス、人権尊重、情報管理、品質管理、安全衛生、人財育成、健康経営などに関する各種方針を制定し、役職員がこれらを徹底することで、全てのステークホルダーの課題に寄り添い、彩りと特性を持った素材をさまざまな分野に提供し、実現しております。
また、2023年10月には社内公募により、新ブランドメッセージ「彩りの、その先へ(今日の未知は未来への道)」を決定し、コア技術である①有機無機合成・顔料処理技術、②分散加工技術、③樹脂合成技術を更に深化させ、「色彩のその先の可能性」を追求して「機能性マテリアル分野のエクセレントカンパニー」を目指しております。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2024年6月に公表した2025年3月期を初年度とする3か年中期経営計画「明日への変革 2027」(以下、「本中期経営計画」といいます。)において、前中期経営計画を引き継ぎ、ROE(自己資本利益率)9%、ROA(総資産経常利益率)5%とすることを長期の経営目標として、またその過程として本中期経営計画の最終年度である2027年3月期の目標として、ROE4.6%、ROA4.3%を掲げておりますが、初年度が経過した2025年3月期では、ROE8.4%、ROA4.0%の結果となりました。
これは、埼玉県川口市に所有していた当社旧川口製造事業所跡地の売却に伴う固定資産売却益として約77億円を特別利益に計上したことが主要因ですが、業績面において、継続的な原材料価格の上昇はあるものの、コロナ禍における巣ごもり需要後の長期にわたるサプライチェーン上の在庫調整がようやく終了したことにより、当社を取り巻く事業環境が好転してきていることも要因の一つであります。
また2025年5月には、本中期経営計画の最終年度である2027年3月期の目標ROEを5%以上とすることを公表しており、引き続き本中期経営計画の各施策を進めて参ります。
(4)経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題等
当社グループの置かれている経営環境については、以下のとおりと認識しております。
①お客様の国内外の事業展開に寄り添い、収益性、効率性をご提案するために、当社では国内外の拠点の強みを活かし、国内、海外の一方に偏することなくバランスのよい業務展開をするべきであることが重要な課題であると認識しております。
②当社グループの持続的な成長のためには、ESGへの取組みがあらゆる事業活動の基本理念であり、E(環境配慮)、S(社会貢献)の実現のための研究・開発が果たす役割が、特に重要であると認識しております。このため社会全体の持続性、安全性、収益性、効率性、採算性などの側面から十分に検証の上で、前述の「(2)経営理念」に記載の「3つのコア技術」を更に深化させること、新たな技術を取り入れることに、人財と設備、資金を投入していく必要があるものと認識しております。
③ステークホルダーの皆様から信頼され常に選ばれる企業であり続けるためには、上記②で述べたように、長期的・持続的な成長とともに、製品や事業活動を通して地球規模の環境や社会問題へ取り組む企業姿勢と、意思決定の透明性、公正性を確保できるガバナンス体制の下で、従業員一人ひとりの思いが企業風土として醸成されることが企業価値の向上においても大きな影響を与えるものと再認識した上で、全社を挙げてE(環境配慮)、S(社会貢献)、G(企業統治)の側面から能動的に活動を促進することが必要と理解しております。
また、2025年6月27日に開催いたしました第122期定時株主総会において、株主の皆様のご承認を得て、「監査役会設置会社」から「監査等委員会設置会社」へ移行しております。これは、委員の過半数が社外取締役で構成される監査等委員会が、取締役の業務執行の適法性、妥当性の監査・監督を担うことでより透明性の高い経営を実現し、国内外のステークホルダーの期待により的確に応えうる体制の構築を目指したものであります。
④今後さらに、デジタル技術及びデータ分析の活用が当社グループの競争力の源泉のひとつとして重要性を増し、経営目標を達成するための重要な手段になると認識しております。当社は基幹システムを2018年10月に刷新し、さらなる活用のための周辺システムの整備も着々と進めてきておりますが、より高度化していく外部環境からの要請事項に対し、これまで以上に、適時かつ的確に対応していくことが必要であると認識しております。また、データ駆動型ビジネスへ転換し、効率的で確実性の高い戦略、独創性のある製品開発を強力に推進することが不可欠であり、そのためにも有効なデータ、優秀な人財と、柔軟で素早い意思決定が重要であると認識しており、これらへの取り組みを加速させるため、2024年11月にはグループウエアの刷新を行うことで、AIを日々の業務において活用できるようにしております。社内情報の共有化や組織を超えた連携など、DXを支える基盤になることを確信しております。
⑤当社グループの掲げる長期目標の達成には、人的資本及び知的財産への投資と活用によるイノベーションの創出が不可欠であると認識し、企業にとって財産である「人財」の育成と活気溢れる企業風土の醸成は重要な経営課題のひとつと考え、従業員のモチベーションとエンゲージメント向上を目指したHR戦略を推し進めます。また別途定める「人財育成方針」「社内環境整備方針」に沿って、企業と人財が互いに高め合っていくビジョンを共有し、持続可能な成長に向けて地道にかつ着実に、相互に磨き上げていくことにより、当社グループの成長と人財の成長との間に好循環を生み出すことができるものと確信しております。本件については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」「(3)人的資本投資・人財育成及び人財の多様性の活用」にて詳細を記載しております。
これらを踏まえ、昨年公表しております本中期経営計画を引き続き重点的に進めております。
ア、技術主導による競争優位性の確保
当社グループでは、保有する技術を、技術マネジメント手法を用いて再評価し、社会的なニーズ(ESG)への貢献を最優先課題として、オープンイノベーション、セグメント間のシナジー、知財戦略などを組み合わせ、3つのコア技術(1 有機無機合成・顔料処理技術、2 分散加工技術、3 樹脂合成技術)を深化させた技術開発に取り組んでおります。
本中期経営計画においても、これらコア技術は重要な基盤として、市場規模・収益性・成長性を評価し、新規発展分野として①IT・エレクトロニクス 機能性材料、②ライフサイエンス・パーソナルケアの2つを、継続発展分野において環境配慮型製品へのより一層のシフトをテーマとする③モビリティ、④環境配慮型パッケージングを開発の中心に据え、人財と設備と資金とを積極的に投入することを行い、技術主導による競争優位の確保を目的とした体制の構築を進めております。具体的には、2025年2月14日に開催した当社取締役会において、2025年4月1日より保有技術ごとの縦割り体制であった技術機構組織から、開発ステージごとの組織体制に刷新することを決議し、実行しております。併せて、お客様と対面で開発を進めている事業機構の技術部門との融合と、オープンイノベーションなどから技術開発・製品開発力を強化することで、技術主導で事業創出できる体制を作ってまいります。これらの取り組みにより、10年後のありたい姿である「機能性マテリアル分野のエクセレントカンパニー」を目指し、製品の差別化、品質向上により社会貢献度を高め、同時に収益性の確保を図ることとしております。
本中期経営計画では、技術主導による新規開発製品の売上高を2027年3月期までに2024年3月期比26億円増加させることを目標に掲げて取り組んでおります。初年度を終了した2025年3月末時点では、個々の開発テーマの進捗は概ね順調に進んでおり、売上高は7億円の増加となりました。新規開発製品が売上に寄与するまでには一定程度の時間が必要となることによりますが、引き続き、新規開発製品の早期売上寄与を目指してまいります。
本中期経営計画の初年度を終了した2025年3月末時点における各セグメント毎の状況は、以下のとおりと認識しております。
①IT・エレクトロニクス 機能性材料
二次電池用部材、導電性部材、熱マネジメント部材、機能性ポリマー、高付加価値顔料・分散体などにおいて、電池部材や半導体周辺部材、精密電子機器部材などで多数の新規案件が獲得できました。新たに複数の大学やメーカーとオープンイノベーションを開始することで、新たな技術シーズ創出を進めるとともに、既にある技術シーズを積極的に発信し、社会ニーズに対応すべく応用開発を進め、遅延なく生産設備も導入し、売上高への早期寄与を図ってまいります。
②ライフサイエンス・パーソナルケア
天然物由来化粧品原料においては、大学発の技術を導入し、キノコ石突などのキノコ廃材や端材を原料とした菌糸パルプ分散液の開発に取り組みました。アップサイクル素材の化粧品原料として製品化を進めております。
生分解性微粒子においては、量産化ラインの検討を開始し、さらなる高機能製品の開発も着実に進めてまいります。
③モビリティ
軽量・高強度樹脂コンパウンドにおいては、リサイクル素材の使いこなしに加え、天然物フィラーの微分散技術を向上させました。今後は積極的に市場開拓を進めてまいります。ウレタン ・アクリル・シリコーンポリマーでは海外の厳しい法規制に対応する環境配慮を更に強化した製品設計に目途がたちました。今後は海外での量産体制構築も見据え、拡販に繋げてまいります。加飾フィルムでは、高分子合成技術と分散加工技術を駆使し、新たな提案ができるような開発を進めてまいります。
④環境配慮型パッケージング
水性フレキソインキでは完全水性品の特徴を活かし、海外の市場ニーズにも対応しつつ、新たに水性フレキソラミネート剤の開発に注力しています。今後は市場ニーズを探りつつ、開発、販売の鋭意強化に努めてまいります。ガスバリアコート材・環境配慮型接着剤では、ユーザー評価を進めながらキーマテリアルのパイロットプラント導入に着手しました。来期中に稼働し、市場への本格投入に繋げていきます。また、消耗品パッケージングではない高耐久インキの開発にも着手し着実な一歩を踏み出すことができました。
イ、事業基盤の強化のための海外事業の拡大
当社グループの収益、成長の源泉は、国内・海外双方に存在し、GDP高伸長国での事業展開などバランスよく事業育成をしていく必要があるとの認識の基に事業を展開してまいりました。本中期経営計画では、海外事業の売上高を2027年3月期までに2024年3月期比36億円増加させることを目標に掲げて取り組んでおります。初年度を終了した2025年3月末時点では、売上高は20億円の増加(為替影響除く)となりました。中国では家電やOA機器、輸送業界向けを中心に生産数量の低調が続きましたが、中国以外では、市況の回復や価格修正の効果により好調に推移しました。引き続き、「地産地消」の推進と海外拠点の拡充及び新規ビジネスの創出を軸に、積極的な業務の展開に注力してまいります。
本中期経営計画の初年度を終了した2025年3月末時点における状況は、以下のとおりと認識しております。
(ア) カラー&ファンクショナル プロダクト
高機能着色剤、機能製品の拡販に注力いたしましたが、中国では家電OA機器向けのコンパウンド・着色剤が低調に推移しました。また、情報電子分野のIJ分散液・顔料も欧州向けの輸出が減少しました。一方、タイ・ベトナムについてはEV化/電装部品用樹脂コンパウンドなどが順調に拡大、タイでは増設設備の稼働が販売に寄与しており、更なるラインの増設を進めています。今後は、情報電子分野で欧州を中心に新規顧客の開拓を行うと同時に、インド・東南アジアを中心として電線用などの高機能着色剤の拡販を目指します。
(イ) ポリマー&コーティング マテリアル
北米でサステナビリティ貢献製品の水性表面処理剤の展開を図り、販売を拡大させることができました。今後も地産地消をより一層推進するため、北米企業向けや日系車両メーカーの海外拠点向けに国内生産していた水性表面処理剤の米国拠点への生産移管を引き続き進めて参ります。
また、中国ではスポーツアパレル向けの透湿ウレタン樹脂が昨年度に続き好調に推移しました。今後は、欧州の業界自主規制によって透湿ウレタン樹脂は減少する見通しも、水性表面処理剤の伸長を見込んでいます。インドにおいても接着剤事業の進展を図ることができました。
(ウ) グラフィック&プリンティング マテリアル
インドネシアにおいては、グラビアインキの拡販と適切な価格修正により販売計画を達成しており、旺盛な現地の需要に対応するために増能力投資を計画しています。一方、価格競争も激化しており、高品質製品を維持しながら事業拡大に向けた取り組みを推進してまいります。
ウ、サステナブル社会の実現に向けたESG重視の経営推進
当社グループでは、サステナブルな社会を実現するために、ESG経営を本中期経営計画の戦略のひとつに掲げ、お客様とのあらたな価値の共創を目指して原材料調達段階から当社製品を使用した製品が廃棄されるまでを含めたライフサイクル全体において、「(ア)サステナビリティ貢献製品開発・拡販」、「(イ)気候変動への取り組み」、「(ウ)資源循環促進」、「(エ)生物多様性への取り組み」、「(オ)社会貢献の一層の促進」、「(カ)コーポレート・ガバナンスへの一層の取り組み」を推進しています。
同時にこれら重要な経営課題における様々な外部要因、内部要因の変化に対して、リスクと機会に効率よく対処できるように統合型リスクマネジメント(ERM)を活用しています。
本中期経営計画では、「エ.DX推進」と「オ.HR戦略」を戦略に追加し、10年後のありたい姿である「機能性マテリアル分野のエクセレントカンパニーになる」の実現に向けて、ステークホルダーの皆様と価値共創に努めてまいります。
(ア) サステナビリティ貢献製品開発・拡販
当社グループでは、環境負荷低減に貢献できる環境配慮型製品に加え、人々の暮らしを豊かにする製品を含めたサステナビリティ貢献製品の拡販により、サステナブル社会の実現を推進しております。
本中期経営計画では、サステナビリティ貢献製品の売上高を2027年3月期までに2024年3月期比30億円増加させることを目標に掲げて取り組んでおります。
初年度を終了した2025年3月末時点では、この目標を達成するために、顧客ニーズ、市場ニーズを的確に技術開発テーマにつなげスピーディに事業化していく事を目指した社内体制の整備を行いましたが、サステナビリティ貢献製品の多くを占める情報電子材関連、自動車関連向けの製品群が、中国をはじめとする主力市場の景気後退の影響を受け、サステナビリティ貢献製品の売上高は、2024年3月期比で5億円増に留まりました。
(イ) 気候変動への取り組み
当社グループでは、気候変動は地球規模で取組むべき喫緊の課題と捉えており、リスクと機会の両面から積極的に課題解決に取り組んでおります。日本政府が掲げる2050年カーボンニュートラルに貢献するために、温室効果ガスの主たる要因であるエネルギー消費に伴い発生する当社グループ全体のCO2排出量の削減について、最新の国際的な目標(※)に沿って2020年3月期を基準年度とし、2027年3月期までに31%削減、2031年3月期までに48%削減する中長期目標を立て、継続的な省エネルギー対策と再生可能エネルギーの導入を進めております。
※Intergovernmental Panel on Climate Change(IPCC)の第6次報告の1.5℃シナリオ
本中期経営計画の初年度を終了した2025年3月末時点では、国内生産拠点を中心に、太陽光発電設備の設置、ボイラーの運用改善、生産設備の高効率化、照明器具のLED化などの省エネルギー対策を実施すると同時に、買電を再生可能エネルギー由来の電力に切り換えることを進めました。その結果、当社グループ全体のCO2排出量(Scope1&2)は、2025年3月期に2020年3月期比で49%削減となり、中長期目標達成に向けて順調に推移しています(Scope2はGHGプロトコル・マーケット基準にて算定)。
また当社製品を通じて世の中のCO2排出量(Scope3)も削減できるようにTCFDの枠組みに沿って当社グループの気候変動に関するリスクと収益機会を管理し、企業価値向上に貢献してまいります。
詳細は「2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動への取り組み TCFD提言に沿った情報開示」を参照ください。
(ウ) 資源循環促進(サーキュラーエコノミー)
当社グループでは、資源循環型社会の実現に向けて、特に世界的に関心の高まっているプラスチック資源の循環に関して化石由来資源の枯渇防止と廃棄の際の環境負荷低減といった環境リスクの低減と収益機会の創出を目指し、当社グループでは、原材料のバイオマス化及び廃プラスチックの排出量抑制・リサイクル促進を進めております。
当社グループでは、使用済みプラスチックは廃棄物ではなく資源であるという考え方に基づき、廃プラスチックのリサイクル率を毎年対前年度比で1ポイント向上させることを本中期経営計画の目標に掲げて全社的に取り組んでいます。本中期経営計画の初年度を終了した2025年3月末時点では、7ポイント改善を達成しており、引き続き原材料のバイオマス化及び廃プラスチックの排出量抑制・リサイクル促進を目指し、生産工程から生じるロスを削減するための工程管理の強化と廃プラスチックの分別強化をグローバルに展開してまいります。
(エ) 生物多様性への取り組み
化学物質を扱う当社グループは、事業活動のみならず製品のライフサイクル全般において生態系に与える様々な影響をリスクと機会の両面から把握し、生態系への負荷を最小限に抑える義務があると認識しています。2024年3月期にはこの考え方に加え、当社技術を活かして「生物多様性の保全と持続可能な利用」に貢献する価値の創出に努める事が重要であると認識し、それまでの「環境負荷低減」というマテリアリティを「生物多様性の保全」に改訂いたしました。
この課題解決に向けて、有機溶剤などの使用時に生じる大気汚染や水質汚染等の環境負荷軽減に向けた自らの管理活動と当社グループの製品使用段階で生じる環境負荷軽減に貢献する製品開発の両輪でTNFDの枠組みに沿って推進してまいります。
また、当社グループが現在加盟しているCLOMAをはじめとするイニシアティブへの参加や事業所の近隣地域コミュニティーとの協働作業にも積極的に参加し、生物多様性の保全に努めてまいります。
詳細は「2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (4)生物多様性の保全に関する取り組み」を参照ください。
(オ) 社会貢献の一層の促進
お客様とのかかわりにおいては、お客様の信頼と期待に応えられるように適切な化学物質管理(新管理システムの導入、リスクアセスメントなど)、品質保証(ISO9001による全社的なQMS活動実施、内部監査実施)、責任ある原材料調達(CSR調達基準によるサプライヤー調査)、サステナブルな物流業務の展開(輸送ロットアップ、在庫拠点集約など)に取り組んでおります。
またお客様から積極的に選ばれるサプライヤーになるために、お客様からいただくサプライヤー調査には誠実に回答すると同時に自らの取り組みを反省する機会と捉え、お客様との対話の機会には積極的に参加し、当社グループにとって参考になる意見交換をさせていただいております。
このお客様との対話を通じて、当社グループの取り組みを見直す動きが盛んになり、当社内の制度の認識が深まり、見直しにもつながっております。
従業員とのかかわりにおいては、ワークライフバランスの充実、女性、外国人、中途採用者の一層の活躍などの点から、人事制度の充実を図っております。
またサステナブルな成長を実現させるためには従業員の心身の健康維持・増進と多様な人財が働きやすい職場環境・企業風土づくりが重要であるという考えから、 2023年に健康経営宣言を行い、2025年3月に健康経営優良法人2025(大規模法人部門)に認定されました。健康経営を積極的に推進し、従業員がポテンシャルを最大限発揮することで事業活動を通じて社会に貢献してまいります。
地域社会とのかかわりにおいては、生産拠点の近隣に対する安全・安心を最優先に防災活動に加え、生物多様性の保全の一環として近隣の生態系に一層の配慮を行い、環境負荷の低減と自然環境の保全に努めてまいります。これらの諸施策は着実に、継続的に実施することにより効果を得られるものであるため、今後も注力して対応してまいります。
(カ) コーポレート・ガバナンスへの一層の取り組み
単に法令遵守、ルール遵守に留まるだけでは実質的なガバナンスの向上につながらないとの認識から、コンプライアンスの徹底のために経営層からのメッセージの発信・従業員からのフィードバックを継続的に実施しております。今期は経営層からのトップダウンと実行部門からのボトムアップを活性化させた双方向コミュニケーションを充実させ経営戦略を社員一人ひとりが「自分ゴト」として捉えて行動できるように社内環境を整備してまいりました。
また、2025年6月27日に開催いたしました第122期定時株主総会において、株主の皆様のご承認を得て、「監査等委員会設置会社」へ移行しており、これにより委員の過半数が社外取締役で構成される監査等委員会が、取締役の業務執行の適法性、妥当性の監査・監督を担うことでより透明性の高い経営を実現し、国内外のステークホルダーの期待により的確に応えうる体制の構築を目指しております。
(キ) 人的資本投資・人財育成
当社グループでは、新たな価値の創出には、新たな発想が必要であり、それには“人の力”が不可欠と考えています。“人の力”を引き出し、“人を育成する”ことで、人は価値を生み出す企業の財産であるとの認識から、当社グループでは「人材」ではなく「人財」と表現しております。
本中期経営計画では、最優先に取り組む施策として、モノづくりメーカーの従業員としての“働き甲斐”、“誇り”、“仲間への貢献意欲”といったエンゲージメント向上を目指した「人事制度改革」を重点戦略のひとつに掲げ、ステークホルダーの皆様と価値共創に努めてまいります。
詳細は「オ、HR戦略」をご参照ください。
エ、DX推進
上記のア~ウの戦略を推し進めるために、業務のデジタル化による効率化、データ蓄積・共有の基盤構築を進め、データ駆動型ビジネスへの転換を目指し、効率的で確実性の高い戦略、独創性のある製品開発を重点的に推進します。
本中期経営計画初年度を終えた現在の状況としては、オフィスワークにおけるITツールの強化や生成AIの活用を開始しており、業務の効率化を図りました。
今後の施策として、具体的には①マーケティングにおいては、担当する部門に関わりなく市場ニーズをデータベースとして蓄積し、市場ニーズと当社技術を結び付け新規案件を開拓する、②技術開発においては、使用する原材料や開発情報を横断的にデータベースとして蓄積し、これらを組み合わせ、MIにより開発期間を短縮する、③生産部門においては、生産現場の負荷を軽減しながらデータの蓄積・見える化を進め、早期異常発見率を高めることにより生産効率を上げる、などを実施していきます。このために、デジタルリテラシー向上やAI活用の研修、データ分析のOJTなども効率的に行うことにより、一層のデジタル人財の基盤強化を図ることといたします。
オ、HR戦略
上記エと合わせて、上記のア~ウの戦略を推し進めるために、従業員の将来のありたい姿の実現に向けて「イノベーションが湧き上がる活力に満ちた企業風土」を醸成させていくことが不可欠であるとの認識を前提に、モノ作り企業の従業員としてのエンゲージメント向上を目指したHR戦略を推し進めていくことといたします。
具体的には、当社内のエンゲージメント調査結果から、経営方針や戦略を最前線の社員の目標まで落とし込む事が必要と認識しており、その対応として経営層と従業員との対話を深めお互いの期待感を共有し、具体化させていく機会を増やしてまいります。
2025年4月より、新人事制度を導入いたしました。評価の仕組みについては、ジョブディスクリプション(JD)を策定し、明確性や公平性の確保、納得感の得られる評価、成長につながる評価、心理的安全性の高い評価などにつなげ、魅力ある会社になることで、エンゲージメントの向上と人財の育成を図ることができ、イノベーションの創出が達成できるものと期待しております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ共通
①ガバナンス
当社グループでは、お客様と社会に貢献し、社会に生かされることで当社も社会と共に発展していくという考え方を1968年に制定した社是に盛り込んでおり、今日までのサステナブル経営の基礎として経営者と全従業員が誇りをもって社是を遵守しています。
この社是に加え、サステナブルな成長を加速させるために2022年に「CSR・ESG基本方針」を制定し、化学メーカーとして製品のライフサイクル全体において取り組むべき社会的な課題解決と事業成長の為の価値創出に向けた推進体制を整えています。
「サステナビリティに関する戦略と取組」は、代表取締役社長の直轄組織であり、サステナビリティ関連の責任部署であるCSR・ESG推進本部にて、マテリアリティ(重要課題)を特定し、マテリアリティ毎のリスクと機会の抽出、指標と目標の設定、及びその進捗管理を以下の当社のガバナンス体制にて行っております。
CSR・ESG推進本部で立案された目標と施策は代表取締役社長の指示のもと実行部門にて対応しています。
マテリアリティに関しては後述「
2025年3月期では、各実行部門と内部統制に関する各委員会との間での報告・監査活動において、より実効性の高いPDCAサイクルを回していけるように、活動報告と活動評価の見直しを行いました。
内部統制に関する各委員会での評価結果は、代表取締役社長並びに取締役会に定期的及び必要時に随時報告し、監督・指示されています。その指示内容は内部統制に関する各委員会と実行部門にフィードバックされています。
2025年3月期では、合計13回の取締役会を開催しましたが、そのうち、『気候変動への対応』、『HR戦略』、『コンプライアンスアンケート調査の結果報告』、『健康経営』など、サステナビリティに関する審議を行った取締役会は10回となりました。
また内部監査室では、内部統制に関する各委員会の報告に基づき独自に実行部門の活動を監査し、その結果を代表取締役社長並びに取締役会に報告しています。
当社グループでは、以上の体制で、サステナビリティに関する取り組みを推進しています。
また、サステナビリティ関連業務に対する業績評価を、人事考課制度に組み入れ、給与に反映させる仕組みを運用しています。2025年3月期は、ESG課題の考課ウェイトを7.5%に設定しています。
「CSR・ESG基本方針」とその方針に基づく各種方針は当社グループのホームページにてご確認下さい。
URL:https://www.daicolor.co.jp/csr/policy/index.html
②戦略
当社グループは、企業理念と社是<必達>のもと、化学メーカーとして製品のライフサイクル全体において取り組むべきマテリアリティを以下のように特定し、マテリアリティ毎にリスクと機会の両面から当社の成長に必要な取り組みを前述「
2025年3月期では、新たな価値の創出、イノベーションには人のポテンシャルを最大限に引き出すことが必須と考え、人的資本投資・人財育成を加速させるHR戦略を中期経営計画の戦略に追加しました。今期もこのHR戦略により当社の強みを更に活かしてお客様との新たな価値共創に取り組んでいきます。
③リスク管理
当社グループのサステナビリティに関するリスク管理は、「
④指標と目標及び実績
当社グループでは、サステナビリティに関する指標と目標をマテリアリティ毎に設定し、実施状況を管理しております。
下表に主要なマテリアリティをご説明いたします。
|
マテリアリティ |
短・中期指標 |
目標 |
2025年3月期実績 |
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気候変動対策 地球温暖化対策
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a. 国内外のエネルギー使用に伴う GHG排出量(Scope1・2) |
a. 2027年3月期に2020年 3月期比で31%削減 |
a. 2020年3月期比 49%削減(※1) |
|
b. 国内製造拠点のエネルギー 原単位 |
b. 対前年度比1%削減 |
b. 0.2%削減 |
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|
c. サステナビリティ貢献製品の 売上高 |
c. 2027年3月期に2024年 3月期比で30億円増 |
c. 2024年3月期比 5億円増 |
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サーキュラー エコノミー推進
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d. 国内製造拠点の廃プラス チックのリサイクル率を改善 |
d. 2027年3月期に2021年 3月期比3ポイント 改善 |
d. 7.4ポイント改善 |
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ダイバーシティ& インクルージョン
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e. 国内の新卒採用者の女性比率 |
e. 30%以上 |
e. 37.9% |
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f. 国内の有給休暇取得率 |
f. 70%以上 |
f. 74.8% |
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g. 国内の女性・外国人・中途 採用者の管理職比率 |
g. 2031年3月期までに 2021年3月期比 6ポイント向上 |
g. 1.6ポイント向上 |
(※1)Scope2はGHGプロトコル・マーケット基準にて算定
(2)気候変動への取り組み TCFD提言に沿った情報開示
①ガバナンス
気候変動対応に関するガバナンスは、「
②戦略
当社グループでは、気候変動に関する政府間パネル(以下「IPCC」といいます)が発表したIPCC第5次報告書、第6次報告書、及びIEA World Energy Outlook:Net Zero Emission by 2050 Scenario、当社グループの顧客、サプライヤーの対応情報を基にリスクと機会を分析し、対処すべきリスクとその対応策を進めております。
世界の平均気温の上昇を産業革命前と比較して、2℃より充分低く抑え、1.5℃に抑える努力を求められている事から、その目的を達成する為に、温室効果ガスの排出量を削減し、将来的には実質ゼロ・カーボンニュートラルとする脱炭素化が必須課題と認識しております。
当社グループでは、代表取締役社長の指示のもと、サプライチェーンの一員として気候変動対策に貢献する為に、IPCC第6次評価報告書を基にリスク分析を行い、1.5℃シナリオ及び2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、製造工程における省エネルギー対策、再生可能エネルギーの積極的な利用により自らが排出する温室効果ガスの排出量を減らすと共に当社の製品を通じて世の中の温室効果ガスの排出量削減に貢献できるように取り組んでまいります。
以下、想定シナリオです。
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1.5℃シナリオ 想定概要 |
地球温暖化防止に向けた規制強化や地球温暖化防止に貢献する需要構造の変化が加速。 将来的に炭素税の単価が欧米先進国並みに上昇すると考えられる。 自然災害の影響も現在よりも重視する必要があると想定。 |
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4℃シナリオ 想定概要 |
地球温暖化が深刻化し、平均気温上昇による需要構造の変化と労働環境への影響が発生。 大規模な自然災害による事業活動への影響が頻発すると想定。 |
シナリオに基づく想定リスクとその対応策は以下のとおりです。
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リスク分類 |
想定リスク |
対応策 |
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1.5 ℃シナリオ |
移行 リスク |
①炭素税導入による財務負担増 ②GHG排出量削減規制の強化 ③顧客からのGHG削減要請の強化 |
①当社グループ想定炭素税: 約9億2千9百万円(@14,500円/t-CO2) ②適切な価格で再生可能エネルギーを調達する事で、GHG排出量の削減と財務面への影響を軽減させる。 想定削減炭素税:約3億7千3百万円 ③継続的な省エネ対策の実施 |
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④化石資源由来の原材料調達が困難になる |
④原材料の脱炭素化の開発を進める |
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⑤需給構造の変化により商機を損失する |
⑤業界動向を迅速に社内展開し、事業活動を強化する。 |
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物理的 リスク |
自然災害によるサプライチェーン寸断に よる事業活動停滞の影響 |
・原材料調達地域、購入会社の分散化 ・物流への影響軽減に備えた在庫管理 |
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製造現場の作業環境の悪化及びそれによる 設備投資額の増加 |
・作業環境改善と生産効率向上に寄与する 効率的な設備投資を行う |
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4 ℃シナリオ |
移行 リスク |
需給構造の変化に対応する製品開発力の 強化 |
・業界動向、市場動向を迅速に社内に 展開し、製品開発と事業計画に反映 させる |
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物理的 リスク |
大規模な自然災害による当社設備の損傷に よる事業活動停滞の影響 豪雨時の浸水による製品と原材料在庫の 損失 |
・ハザードマップに応じた設備改修促進 ・生産拠点の分散化 ・豪雨災害時の有害物質の流出防止策 |
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製造現場の作業環境の悪化を改善する為の 設備投資増加 |
・製造現場の暑さ対策、人的負荷軽減の 設備投資を行い生産効率の低下を防止 |
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シナリオに基づく機会分析と戦略は以下のとおりです。
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想定機会 |
戦略(以下の製品開発と販売促進) |
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1.5 ℃シナリオ |
脱炭素化に貢献する製品の需要拡大 ・車両のEV化、自動運転化の促進 ・車両の軽量化促進 ・電力インフラの需要拡大 |
サステナビリティ 貢献製品の拡販: 2027年3月期に 30億円増 (2024年3月期比) |
・二次電池向け製品 ・車両向けワイヤーハーネス関連製品 ・車両の軽量に寄与する製品 ・太陽光電池向け製品 ・CO2を原材料とするポリウレタン樹脂 |
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サーキュラーエコノミーに向けた需要 変化 ・プラスチック資源リサイクルが加速 ・バイオマス由来の製品需要が拡大 |
・軟包装材向け脱墨型インキ ・バイオマス由来原材料の樹脂ビーズ ・バイオマス由来原材料のインキ、 接着剤 |
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4 ℃シナリオ |
気温上昇による生活様式、需給構造の変化 ・暑さ対策のための建築物の仕様変更 ・飲料容器需要の拡大 |
・建築物の空調の省エネ向け遮熱塗料 ・飲料用軟包装材向けインキ関連製品 |
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激甚自然災害に備えたインフラ強化事業の拡大に向けた 製品の需要拡大 ・電力・通信インフラの更新需要が拡大 ・建築物の改修工事需要の拡大 |
・高速大容量通信線向け被覆材用着色剤 ・建築外装材向け高耐候性塗料用色材 ・高強度・高耐久繊維向け着色剤 |
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③リスク管理
当社グループでは、CSR・ESG推進本部にて、気候変動により生じるリスクについて、法令改正や業界動向の変化などによる規制強化や需給構造の変化を移行リスクと特定し、自然災害へのレジリエンス強化や温暖化の進行による労働環境の悪化を物理的リスクと特定しております。これらリスク内容は前述「
リスクの特定結果とリスク対応業務とその実施状況は、内部統制に関する環境委員会に四半期毎に報告され、取締役会にて年1回以上報告され、監督されております。
④指標と目標及び実績
気候変動に関する指標と目標は、前述「
本中期経営計画では当社グループのエネルギー使用に伴い発生するCO2排出量(Scope1+Scope2)を2020年3月期を基準年度とし、2027年3月期までに31%削減することを計画しました。
この目標を達成する為に、再生可能エネルギーの積極的な導入と継続的な省エネルギー対策により、気候変動の要因となるCO2排出量の削減に向けて省エネルギーに取り組んでおります。具体的な取り組み実績は以下のとおりです。
2025年3月期のCO2排出量実績は2020年3月期比で30%削減となり、中期目標に向かって順調に推移しております。
日本の省エネ法で努力義務とされている毎年エネルギー原単位1%以上削減に向けて、2025年3月期では、省エネルギー対策として当社国内グループでは原油換算で205KL相当の省エネルギー対策の実行を目標に設定し、この目標に対して、79件の省エネルギー対策を実施し、その年間効果は、目標を上回る原油換算378KL相当の削減と試算されています。
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主な省エネルギー対策 |
年間削減効果 (原油換算値) |
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・蒸気用ボイラーの高効率化 ・蒸気配管からの放熱ロスの削減対策 ・太陽光発電設備の導入 |
158KL 56KL 32KL |
2024年3月期及び2025年3月期に計画していた省エネルギー対策を計画値以上に実施してまいりましたが、生産量の減少、暑さ対策のためのエアコン使用量の増加などの様々な要因から、国内グループでのエネルギー原単位は0.2%削減に留まり、目標としていた1%削減には届きませんでした。
当社の海外製造拠点における省エネ対策、再生可能エネルギーの導入に関しては、国内製造拠点に比べて遅れており、国内製造拠点で培ってきた省エネ対策を海外へ積極的に展開するとともに、現地の環境規制とエネルギー事情に合わせた再生可能エネルギーの導入を進めております。
また今後もCO2排出量の規制強化が考えられることから、欧米での炭素取引単価を参考に、インターナルカーボンプライシングでは、炭素税単価を14,500円/t-CO2に設定しています。その単価から試算される当社グループ全体での炭素税額は約9億2千9百万円となり、各製品に対する収益性への影響を分析し、その影響を回避するためのCO2排出量削減対策の立案と販売価格の値上げの必要性を検討しています。
近年、顧客から要請が高まっております、CO2排出量Scope3カテゴリー1~8の算定と開示を行っており、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量における当社グループの影響度を把握し、削減に貢献できるように努めてまいります。
(3)人的資本投資・人財育成及び人財の多様性の活用
①ガバナンス
人的資本投資・人財育成及び人財の多様性の活用に関するガバナンスは、「
②戦略
当社グループでは、時代の変化と共に社会から求められる企業価値も変化している事を認識し、企業価値の向上と新たな価値の創出に向け、サステナビリティを意識したESG経営に取り組んでおります。
新たな価値の創出には、新たな発想が必要であり、それには“人の力”が不可欠と考えております。“人の力”を引き出し、“人を育成する”ことで人は価値を生み出す企業の財産になるとの認識から、当社では「人材」ではなく「人財」と表現しております。
当社グループの掲げる3か年中期経営計画「明日への変革 2027」の目標達成に向けて、人的資本及び知的財産への投資と人財育成の重要性を認識し、2023年4月に以下の「人財育成方針」「社内環境整備方針」を制定しました。
そして、HR戦略に資する施策として、2025年4月より新たな人事制度の運用を開始しました。新たな人事制度ではチャレンジを推奨・評価する仕組みや職階ごとの期待役割を明確にし、行動を評価する仕組みなどを取り入れ、よりメリハリある評価と処遇を目指しました。これにより、チャレンジしたいと思える環境づくりから「イノベーションが湧きあがる活力に満ちた組織風土の醸成」を目指します。
詳細は「
a.「人財育成方針」
当社グループは、企業の成長は人に拠って立ち、人の成長も企業に拠って立つという互いに切磋琢磨していく関係にあると理解しております。このため、財産である「人財」の育成は、企業価値の向上に必要不可欠であり、重要な経営課題のひとつと考えております。
当社グループでは、「人に興味を持とう、新しいことに興味を持とう、未来に興味を持とう」という企業理念を礎として、従業員の多様性や仕事に対する考え方を十分に尊重しつつ、企業と人財が互いに高め合っていくビジョンを共有し、自らがありたい姿の実現に向けて、地道にかつ着実に、相互に磨き上げてまいります。
更に「人財育成方針」を実現させるための「社内環境整備方針」を以下のように定めております。
b.「社内環境整備方針」
当社グループは、人財育成方針を実現し、魅力ある会社となることを目指し、全社目標の達成に向けて社員一人一人の能力を十分に発揮できるように、以下の社内環境整備に取り組んでまいります。
・世代を問わず自ら学ぶ姿勢を支援します。
・成果に対する適切な評価と対話を行います。
・社内・外との知識交流・文化交流の機会を創出します。
・達成欲求・貢献意欲を高める人事制度を推進します。
・多様性と価値観を尊重し、人財を活かせる人事制度を推進します。
・長く働ける職場環境整備と人事制度を推進します。
c.戦略と人的資本、知的財産(知恵・経験・人脈)の連携
当社グループの掲げる新3か年中期経営計画「明日への変革 2027」の基本戦略の実現に向けて、人的資本及び知的財産の投資と活用は、競争優位性確保を実現するイノベーションの創出に不可欠な取り組みです。必要な人的資本と知的財産の現状を把握し、企業文化としての定着促進などの視点を踏まえ、以下のような取り組みを行っております。
本中期経営計画「明日への変革 2027」に基づく手段と取り組みは以下のとおりです。
各テーマの指標と目標は事業の状況を鑑み、適宜見直しを行ってまいります。
経営戦略:技術主導による競争優位性の確保
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実現のための手段 |
取り組み |
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・技術者の採用強化 ・技術者の育成 ・知財の獲得及び知財の市場ニーズへの展開 |
・研究開発費の強化、職場環境の充実 ・オープンイノベーションの取り組みの促進 ・知財戦略の積極的展開 |
経営戦略:事業基盤の強化のための海外事業の拡大
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実現のための手段 |
取り組み |
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・海外営業力の強化 |
・外国人や海外駐在経験者の中途採用強化 ・海外ビジネススキル向上の機会の提供 ・多様性を認め合う企業風土づくり |
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・海外法人の経営能力の強化(育成) |
・海外ビジネススキル・ノウハウの蓄積・継承 |
経営戦略:サステナブル社会の実現に向けたESG重視の経営推進
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実現のための手段 |
取り組み |
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・労働安全衛生向上 ・化学物質管理 ・ダイバーシティ&インクルージョン ・ガバナンス体制の強化 |
・職場環境の整備と更なる改善 ・労働安全衛生の管理強化 ・IoT、DXを活用した労働生産性の向上 ・年齢、性別、国籍、宗教に対する偏見を排除する社風の維持向上 |
経営戦略:HR戦略
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実現のための手段 |
取り組み |
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・経営戦略と個人目標の連動 ・新人事制度の運用開始 ・人財育成のための研修制度 |
・社員が成長を感じられる環境整備 ・納得感が得られる人事制度の運用 ・管理職を対象とした研修の実施 ・エンゲージメント調査の実施と公表 ・社員の健康増進に向けた取り組みの拡充 |
d.健康経営
ⅰ)健康経営に関する考え方
大日精化グループは、「CSR・ESG基本方針」に掲げるサステナブルな成長を実現させるために、従業員の心身の健康維持・増進と多様な人財が働きやすい職場環境・企業風土づくりが重要であると考えます。
健康経営に関する取組みの積極的推進により従業員がポテンシャルを最大限発揮することで企業価値の向上を図り、事業活動を通じて社会に貢献してまいります。
ⅱ)推進体制
当社グループでは、代表取締役社長を健康経営責任者とし、大日精化健康保険組合と従業員の健康課題の把握と対策の検討にあたり、関係組織と連携して心と身体の健康づくりに関する具体的な施策を実施していきます。
詳細は以下のサイトにてご確認下さい。
https://www.daicolor.co.jp/csr/social/health/index.html
③リスク管理
当社グループでは、社会全体がサステナブルな成長を達成するためには、人財育成と多様性の活用を進めると同時に人権に配慮した事業活動、製品の提供が必要であると認識しております。
当社グループでは、以下に述べる取り組みを通して、サプライチェーンパートナーと共に価値を創出し、サステナブルな成長を目指してまいります。
a.人権尊重に関する取り組み
ⅰ)人権尊重に対する考え方
当社グループは、人権の尊重は事業活動において最優先に遵守すべきコンプライアンス課題であり、当社グループが社会とともに持続可能な発展を遂げるためには、当社グループの従業員や近隣住民の人権のみならず、当社グループが調達する原材料から製品の廃棄段階に至るまでのサプライチェーン全体に関係するあらゆる人々の人権尊重に取り組む必要があると考えます。
上記の考え方に基づき、当社グループは、基本的人権尊重の原則を定めた「国際人権章典」、国際労働機関(ILO)の定めた「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」、国連の定めた「ビジネスと人権に関する指導原則」及び「国連グローバル・コンパクト10原則」などの人権に関する国際的な規範を支持・尊重し、「CSR・ESG基本方針」に基づき「人権方針」を定め、人権尊重に関する取り組みを推進しています。
当社グループでは、「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築しています。CSR・ESG推進本部が主体となり、当社グループの事業活動に関わる人権リスクの特定、その防止及び軽減に努めています。万一人権侵害が確認された場合は、速やかに救済に取り組み、その有効性を確認した上で再発防止策を講じます。
人権リスクを予防・軽減するために、従業員に向けた人権尊重に関するコンプライアンス教育に取り組むとともに、当社グループのサプライヤーに向けては、人権尊重に関する行動指針を明記した「CSR調達基準」を提示し、取り組みへの賛同を求めています。
人権尊重に関する取り組みの状況は、コンプライアンス推進活動の一環として定期的に取締役会に報告し、必要に応じて情報開示を行っています。
ⅱ)「人権方針」
当社グループでは、基本的人権尊重の原則を定めた「国際人権章典」、国際労働機関(ILO)の定めた「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」、国連の定めた「ビジネスと人権に関する指導原則」及び「国連グローバル・コンパクト10原則」などの人権に関する国際的な規範を支持、尊重し、「CSR・ESG基本方針」に基づき「人権方針」を定め、人権尊重に関する取り組みを推進しております。
「人権方針」は当社グループのホームページにてご確認下さい。
URL:https://www.daicolor.co.jp/csr/policy/index.html#no01
ⅲ)推進体制
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当社グループでは、CSR・ESG推進本部が主体となり総務・人事本部や購買本部などの関連組織と連携して人権リスクの特定・評価及び予防・軽減にあたっています。 主要な人権リスクについては、内部統制の各委員会が対策の実効性の評価を行い、その結果を定期的及び必要に応じて随時取締役会に報告しています。 なお、CSR・ESG推進本部及び内部統制の各委員会は、いずれも取締役または役付執行役員を責任者としています。 |
|
ⅳ)人権尊重の取り組み
当社グループの人権尊重の取り組みのプロセスは以下のとおりです。
人権デュー・ディリジェンス
当社グループは、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、自らの事業活動に関連した人権に対する負の影響を特定し、その予防と軽減に努めてまいります。
ⅴ)主な人権リスク
当社グループにおいて配慮すべきと認識する主な人権リスクは次のとおりです。
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人権リスク |
主な取り組み |
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ハラスメント |
(「 |
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過剰・不当な労働時間 |
・36協定の遵守 |
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安全で健康な作業環境 |
・労働安全衛生の推進 |
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児童労働・強制労働 |
・採用時の年齢確認の実施 ・パスポート等の会社による保管の禁止 |
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サプライチェーン上の人権問題 |
・CSRアンケート調査の実施 |
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紛争等の影響を受ける地域における人権問題 |
・責任ある鉱物調達の実施 ・安全保障貿易管理の徹底 |
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救済へアクセスする権利 |
(「 |
ⅵ)ハラスメントの防止
当社グループは、職場におけるハラスメントの防止を人権尊重における最も重要な取り組みの一つと考えます。
当社グループでは、「ハラスメント等防止規程」を定め、ハラスメント防止委員会が各拠点に選任されたハラスメント相談員と連携してハラスメントの防止に関する取り組みを行っています。
2025年3月期における取り組みの実績は次のとおりです。
・ハラスメント相談対応(ハラスメント相談員との連携による)
・「ハラスメント等防止規程」の改定
・「ハラスメント防止委員会全社会議」の開催
・「ハラスメント防止便り」の定期配信
・全従業員向けe-ラーニング研修の実施
・ハラスメント相談員向け研修の実施
ⅶ)教育
当社グループでは、人権の尊重、法令や社会規範の遵守はもとより、高い倫理観と良識を身に付け、人権リスクの発生防止の為に、コンプライアンス研修と管理職を対象としたハラスメント防止研修を行っております。その研修結果は取締役会に報告、指示を受けております。
ⅷ)通報
当社グループでは、法令違反、社会規範に反する行為等の不適正行為の早期発見、早期是正に向けて、公益通報者保護法第7条第3項第1号及び第2号に基づき、内部通報規程を制定し、その規程に基づき指名した「企業倫理ホットライン窓口」を設置しております。窓口は、当社の従業員による「CSR・ESG推進統括部窓口」、当社の監査役による「監査役窓口」、当社から委託した法律事務所の弁護士による「外部窓口」の3種類を設けております。各窓口に通報された事案は直ちにCSR・ESG推進本部長に報告され、内部通報規程にて選任されている調査業務従事者による調査と評価が行われます。
これらの取り組みの結果、重大な人権リスクは発生しておりません。
ⅸ)評価
内部統制の各委員会が実効性の評価を行う人権尊重の取り組みは次のとおりです。
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委員会 |
評価事項 |
関連組織 |
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環境委員会 |
環境汚染に由来する健康被害の防止 |
CSR・ESG推進本部 |
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全社安全衛生委員会 |
労働者の安全と健康の確保 |
総務・人事本部 CSR・ESG推進本部 |
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化学物質管理委員会 |
有害化学物質による被害の防止 |
CSR・ESG推進本部 |
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輸出管理委員会 |
人権侵害につながる貨物等の拡散防止 |
海外事業本部 |
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品質管理委員会 |
製品の安全性の確保 |
CSR・ESG推進本部 |
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情報管理委員会 |
知る権利及びプライバシーの確保 |
CSR・ESG推進本部 総務・人事本部 情報システム本部 |
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ハラスメント防止委員会 |
職場におけるハラスメントの防止 |
CSR・ESG推進本部 |
このほか、CSR・ESG推進本部が社内コンプライアンス監査の実施や内部統制の各委員会及び関連組織との連携を通じて取り組みの実効性を評価しています。
当社グループのサプライヤーに対しては、「人権方針」に加え、基本的人権の尊重、差別や強制労働、児童労働の排除、労働環境の改善について明記した「CSR調達基準」を提示の上、「CSRアンケート調査」の実施を通じてサプライチェーン全体での取り組みの実効性を評価しています。
ⅹ)救済
当社グループでは、企業倫理ホットライン及びハラスメント相談員を設置し、人権リスクに関する役職員からの通報・相談に対応しています。
このほか、当社ウェブサイトに「お問い合わせ」ページ(日本語・英語)を設けてステークホルダーからの通報・相談にも対応しています。
いずれの窓口に寄せられた通報・相談についても、事実関係を調査の上、必要に応じて速やかに是正措置を講じるとともに、個人情報等の保護と通報者の不利益な取扱いの防止を徹底しています。
b.パートナーシップ構築宣言
当社グループでは、サプライチェーンの様々な企業との新たな価値を創出し、共存・共栄を目指すと共に、取引先との適切な関係を維持するために、2023年3月1日にパートナーシップ構築宣言に登録いたしました。
当社グループの積極的に取り組む個別項目は以下の2項です。
・オープンイノベーションによる企業間の連携
・脱炭素化社会の実現に貢献する製品の拡販、生産工程等の脱・低炭素化によるグリーン化の取組み。
詳細は以下のサイトにてご確認下さい。
https://www.biz-partnership.jp/declaration/23418-05-08-tokyo.pdf
c.マルチステークホルダー方針
当社グループでは、様々なステークホルダーとの協働により生み出された収益をステークホルダーの皆様に適切に分配し、共に成長していく事を目指して、2023年3月1日にマルチステークホルダー方針を制定しました。
従業員に対しては、積極的な人財育成と適正な賃金の引き上げによりエンゲージメントの向上に取り組むと共に、取引先の皆様に対しては上記のパートナーシップ構築宣言に沿った取り組みを進めてまいります。
詳細は以下のサイトにてご確認下さい。
https://www.daicolor.co.jp/csr/policy/index.html
④指標と目標及び実績
当社グループでは、多様化する社会のニーズに対する経営戦略において、異なる経験・経歴、技能、属性を持つ者を幅広く採用し、「人財の化学反応」を早期に起こすことを優先すべきとの観点から、多様な働き方、人財育成方針、社内環境整備方針、マルチステークホルダー方針等に沿って、性別、国籍、採用時期等の区別なく積極的に採用の機会を設け、仕事に対する考え方、思いも十分に尊重した人事配置とジョブ・ローテーションにより、従業員に活躍の場を平等に提供しております。
その結果、女性・外国人・中途採用者の比率は着実に増加しており、特に、女性社員の比率、就業年数、管理職・中核人財への登用の比率が確実に伸びてきておりますが、女性・外国人・中途採用者に固執することなく優れた社員を管理職に登用するべきであり、属性別に数値目標を掲げることは寧ろ機会平等に反する結果になりかねないとの方針により、現状では、敢えて、女性・外国人・中途採用者ごとの目標は設定しておりません。このため、女性・外国人・中途採用者を合計した数値で管理職登用の中期目標を定め状況をモニタリングしております。
人財の多様性及び女性活躍推進に関する開示 指標と目標及び実績(集計範囲:当社国内グループ)
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女性の職業生活における活躍の推進に関する法律 (以下、「女性活躍推進法」)の開示項目(指標) |
当社の目標 |
2025年3月期 実績 |
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区分 |
項目 |
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女性活躍促進法の開示 項目(指標) |
新卒採用者に占める 女性の比率 |
占める女性正社員比率 |
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職業生活と家庭生活の 両立 |
有給休暇取得率 (役員、海外赴任者除く) |
休暇取得率 |
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男女の 賃金の 差異 |
区分 |
大日精化工業㈱ |
浮間合成㈱ |
ハイテックケミ㈱ |
大日カラー・ コンポジット㈱ |
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全労働者 |
73.0% |
66.5% |
60.4% |
65.7% |
|
|
正社員 |
72.2% |
64.8% |
63.1% |
63.8% |
|
|
パート・ 有期社員 |
64.7% |
75.1% |
59.9% |
70.2% |
男女の賃金の差異:女性の平均賃金÷男性の平均賃金(%)
対象期間:2024年4月1日から2025年3月31日
賃金:基本給、超過労働に対する報酬、賞与等を含み、退職手当、通勤手当を除く
正社員:当社から社外への出向者は除き、社外から当社への出向者を含む
パート・有期社員:期間工、パートタイマー、嘱託を含み、派遣社員を除く
(補足説明)
基準外賃金を除いた正規社員職階(※)別男女の賃金差異の平均値
|
男女の賃金の 差異 |
C1 |
C2 |
C3 |
C4 |
C5 |
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96.9% |
90.1% |
93.3% |
92.9% |
93.1% |
※新卒入社者はC1に格付けられ、C5が管理職層となる
当社のキャリアパス制度は職階制を用いております。各人が担う役割や責任を負う層ごとに区切った上で、所定時間外労働や休日労働に起因する賃金を除いて比較すると、大きな差は存在しません。
当社では、「賃金は労働の対価である」という原則に基づき賃金制度を運用していることから、賃金の設定・支給について性別を理由とする区別は設けておりません。
(4)生物多様性の保全に関する取り組み
生物多様性の保全に関する考え方
我々の日常生活や企業活動は、自然資本の恩恵により成り立っています。原材料の調達段階から製品の廃棄段階までを含めた製品のライフサイクル全般において、当社グループの事業活動が自然から受ける恩恵と自然に及ぼす影響の双方から評価し、サステナブルな成長を遂げられるように事業を計画する必要があります。
当社グループでは、事業活動による生態系への負荷を最小限に抑えるために、事業活動が生態系に与える影響をTNFDの枠組みに基づき製品のライフサイクル全般においてリスクと機会の両面から把握し、TCFDと相互に連携させ、当社技術を活かして生物多様性の保全とサステナブル社会実現に貢献する価値の創出に努める事に取り組んでおります。
代表的な取り組みとしては、揮発性有機化合物や特定化学物質の使用により生じる大気汚染や水質汚染等の環境負荷軽減に向けた自らの管理活動と当社グループの製品使用段階で生じる環境負荷軽減に貢献する製品開発の両輪で推進してまいります。
また、当社グループが現在加盟しているクリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)をはじめとするイニシアティブへの参加や事業所の近隣地域コミュニティーとの協働作業にも積極的に参加し、生物多様性の保全と再生に努めてまいります。
①ガバナンス
生物多様性の保全に関するガバナンスは、「
②戦略
当社グループのライフサイクルにおけるリスクと機会を以下の様に特定し、取り組んでおります。
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ライフ サイクル |
リスクと機会 |
当社グループの取り組み |
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原材料調達 |
リスク |
生態系の破壊や貴重な種の絶滅を防止、保全するために植物や鉱物の採取の制限が生じる |
購買方針に基づき、生態系に悪影響を与える事が確認されたサプライヤーからの原材料調達を停止する。 |
|
水リスク地域における揚水量の制限が生じる |
水の循環利用に努め、揚水量・排水量を削減する。 |
||
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機会 |
貴重な資源の枯渇防止に繋がる製品の市場価値が高まる |
汎用原材料を使用してレアメタルの代替品となる製品の開発を検討する |
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製品開発 製造・物流 |
リスク |
水系の生態系の保全のために、工場からの排水管理の規制が強化される |
工場の排水処理設備の管理を徹底し、水系の生態系への負荷を低減させると共に保全に努める。 水系、特に廃プラスチックによる海洋汚染防止の為に廃プラスチックのリサイクルを促進する。 |
|
大気汚染に繋がる有害物質を含む原材料、資材の使用に関する規制が強化される |
当社製品の製造工程で発生する有害物質(主に揮発性有機化合物)や温室効果ガスを低減させると共に保全に努める。 |
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機会 |
有害物質の使用量を減らした環境配慮型製品の市場価値が高まる |
お客様から大気中に排出される有害物質(主に揮発性有機化合物)や温室効果ガスを減らせる製品の開発と販売を促進する。 お客様の工場から水系に排出される有害物質を低減できる製品の開発と販売を促進する。 |
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廃プラスチックによる水系の汚染防止の意識と法規制が高まる |
水系での生分解性プラスチックの開発を促進する。 |
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その他 |
リスク |
過去に発生した当社グループ敷地内の土壌汚染物資が拡散するリスク |
土壌汚染が確認された事業所では、直ちに行政と協議の上、汚染の拡散防止対策と浄化作業に着手している。 |
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機会 |
当社グループの事業所外の近隣地域の生態系の保全活動を行い、社会的な価値を高める |
近隣のコミュニティーと協働し、事業所周辺の美化活動、緑化の支援、水系の保全活動を推進する |
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想定機会と注力事業は以下のとおりです。
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想定機会 |
注力事業(以下の製品開発と販売促進) |
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大気への有害物質の使用量を減らした環境配慮型製品の市場価値が高まる |
・揮発性有機化合物の使用量を減らした水性塗料・インキ、ノントルエンインキ ・塗工工程の乾燥段階で揮発性有機化合物の排出と乾燥 エネルギー消費に伴うCO2排出量を削減できるUVコート剤、 EBコート剤 |
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水系への有害物質の使用量を減らした環境配慮型製品の市場価値が高まる |
・化学染料を使用した繊維着色工程の排水による水系への 環境負荷を避ける為に化学繊維の紡糸段階で着色する 原液着色剤 |
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廃プラスチックによる水系の汚染防止の意識と法規制が高まる |
・マイクロプラスチックによる海洋汚染防止に寄与できる 化粧品材料向け生分解性を有する天然素材による樹脂 パウダー |
③リスク管理
当社グループでは、CSR・ESG推進本部にて、生物多様性の保全に関するリスクについて、気候変動への取り組みと同様に法令改正や業界動向の変化などによる規制強化や需給構造の変化を把握し、リスクと機会を特定し、事業計画に反映させております。これらリスクと機会の内容は前述「
リスク内容に応じてCSR・ESG推進本部から実行部門である各機構及び関係部署にリスク対応業務を指示しております。リスクの特定結果とリスク対応業務とその実施状況は、内部統制に関する環境委員会に四半期毎に報告され、取締役会にて年1回以上報告され、監督されております。
④指標と目標及び実績
生物多様性の保全に関する指標と目標は、「
(1)リスク管理体制
当社グループのリスク管理は、当社を取り巻くさまざまなリスクを包括的・戦略的に把握・評価し、優先度をつけて効率的に対処し、経営目標の達成と企業価値の向上に寄与することを目指して、代表取締役社長の指示のもとCSR・ESG推進本部が内部統制に関する社内体制整備として推進しています。リスク管理の体制は、各機構の取締役及び役付執行役員がリスクの自己点検を行い、これにより確認されたリスクから重大なリスクを抽出、評価・選別の上、その対処すべきリスク対策を各機構の取締役及び役付執行役員から業務執行部門に指示し、その進捗状況を管理しております。このリスク対策の進捗状況は、定期的に各機構の取締役からCSR・ESG推進本部に報告され、代表取締役社長と監査等委員である取締役に情報共有・監督されております。
また、化学物質を扱う製造業にとって重大かつ恒久的に生じる安全衛生・保安防災、環境保護、化学物質管理などのリスク管理については、全社横断的に対応する為の委員会を設置し、リスク低減の為の活動方針の策定、業務執行の監督を行っております。緊急に重大リスクとなり得る問題が発生した場合は、適宜、対策本部等を設置し、対応を図ってまいります。
(2)事業リスク
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
Ⅰ.戦略リスク
グローバル化への対応と事業の長期発展に対応するための戦略に起因するリスクのうち、現状、以下の3つを主要なリスクと認識しております。
*短期:1~2年以内、中期:3~5年以内、長期:5年超、不明:想定困難
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1)需要構造変化への対応 |
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顕在化する可能性:高 |
顕在化し得る時期*:短期~中期 |
顕在化した場合の影響度:大 |
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リスク:需要変動 |
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当社グループは、車両業界、情報・電子業界、建材業界、繊維業界、パッケージ業界など様々なお客様向けに製品を提供し、グローバルに事業展開をしております。 好調・不調を相互に補完できる幅広い業界とお取引がありますが、個々の業界や特定の地域で大きな需要変動があった場合にはその事業範囲で影響を受けることとなり、経営成績に影響を与える可能性があります。 |
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対応:①車両業界、情報・電子業界 |
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車両業界では、対前年で車の生産台数が減少したことと、液晶ディスプレイのカラーフィルター用顔料がお客様の商権移動があったことから、これら業界向けに販売している事業領域で影響を受けました。お客様の情報を元に当社生産計画を適時修正することにより適切な在庫管理を行うとともに、サプライチェーン上の在庫調整が終了した際の出荷増・販売増にも対応できる体制を継続しました。 |
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対応:②パッケージ業界 |
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パッケージ業界向けの、食品包装用やペットボトルラベル用のグラビアインキは、比較的景気に左右されにくい事業と認識しております。グラビアインキ等を生産していた埼玉県川口市から茨城県坂東市への新工場建設による移転が2024年3月末に完了しました。フードロス問題に起因する販売数量の減少、コロナ禍での人流減と原材料価格高騰、物価高による買い控えの影響など、当初想定していた移転計画の根拠となる事業計画と乖離が生じておりましたが、国内3拠点(川口、滋賀、坂東)稼働が2拠点(滋賀、坂東)稼働となり、固定費負担等の削減と、新設備での合理化効果、インドネシア現地法人の販売価格改定が進んだことなどにより営業利益面での改善が進みました。引き続き、当社の強みを生かせる市場への注力、また、塗加工技術を生かした成長が見込める情報電子・産業資材への拡大を進めてまいります。 |
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対応:③印刷市場 |
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オンデマンド印刷やデジタルサイネージの普及に加え、リモートワークなど働き方改革が広まった事により、商業印刷市場に依存したオフセットインキ事業においては市場縮小の影響を受けております。このトレンドは一層強まることとなると予想しており、オフセットインキ事業の経営効率化に取り組んでおります。一方、オンデマンド印刷向けの事業として、インクジェットインキ用色材、液晶ディスプレイパネル向けの事業として、カラーフィルター用顔料、パネル用コーティング剤などの開発と拡販に注力しております。 |
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リスク:サステナビリティへの対応 |
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サプライチェーン全体で脱炭素化、資源の循環、人権の保護などサステナビリティ社会の実現に向けた意識が高まっています。当社グループではステークホルダーの期待と信頼に応え、社会から生かされる会社、選ばれる会社となるために、積極的にサステナビリティ経営を推進する必要があると認識しております。 今後も社会・環境と当社の発展に向けて、お客様とサステナビリティに貢献できる価値を共創してまいります。 詳細は、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。 |
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対応: |
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社会的課題とお客様の要望を当社の製品で実現できるように、技術開発力、お客様対応力、生産現場力のそれぞれの強みを発揮、連携させていきます。 そのためには人のチカラが重要と認識しており、人財の潜在能力を発揮させるために、社員のエンゲージメント向上に向けたHR戦略と業務改善に向けたDXを推進してまいります。 詳細は、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。 |
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リスク:サーキュラーエコノミーへの対応 |
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世界的なプラスチックを取り巻く事業環境が変化し、プラスチックは資源であり、リサイクル利用すること、また枯渇する可能性が高い石油由来原材料でプラスチックを製造し、焼却処分する形態の事業は望まれない社会となっていると認識しております。特に欧州のプラスチック製品については再生材使用の動きが高まり、当社グループの主要製品である自動車向けプラスチックコンパウンド市場においては、再生材使用率の向上や情報開示に向けた動きを捉えています。今後もこのプラスチックの循環利用とバイオマス原材料によるプラスチック製品の需要が高まると想定しております。 |
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対応: |
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当社グループのポリウレタン樹脂の事業においては、これまで培ってきたウレタン樹脂合成技術を活かし、ケミカルリサイクル技術の開発、ポリウレタン樹脂の原材料のバイオマス化といったイノベーションを創出していく事に取り組んでおります。これらのイノベーションを創出させるには、サプライチェーンパートナーとの連携に加え、設備投資や人的資本・知的財産への投資にも取り組んでいきます。 また当社グループの事業活動から排出されるプラスチック廃棄物を再資源化するために、各現場での廃棄物の分別回収を強化しております。 |
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リスク:生物多様性への対応 |
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世界的な動きである生物多様性の保全に向けた取り組みの強化を受け、生態系への負荷の少ない製品が求められております。当社グループの各種インキ、塗料、表面処理剤、ウレタン樹脂などは、顧客側で使用される段階で揮発性有機溶剤(VOCs)から有害なガスを発生させるものがあり、それらが大気汚染の原因になると認識しております。 |
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対応: |
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これらの製品を通じて生物多様性の保全に寄与すると共に、これら事業の持続可能な成長を目指して、製品の水性化、溶剤使用量の低減に取り組んでおります。サプライチェーンパートナーと連携し、従来の溶剤系製品を順次環境負荷の少ない製品に切替えを進めております。 |
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2)海外事業活動に関するリスク |
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顕在化する可能性:低 |
顕在化し得る時期*:不明 |
顕在化した場合の影響度:大 |
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リスク:政治・地政学変動に関するリスク |
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当社グループの海外生産拠点は、当該国の政治体制、各種法令・規制の変更、経済的基盤及び自然災害発生のリスクがあり、これらが、グループ危機管理の想定以上に深刻化した場合には、各生産拠点の生産活動に重大な支障が生じ、当社グループの経営成績に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、長期化するロシアのウクライナ侵攻や、中東情勢、台湾有事が発生した場合の影響として、資源価格の高騰やサプライチェーン及び物流の混乱等のリスクがあると想定しております。 |
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対応: |
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このリスクを回避するためには、特定国への投資に過大にシフトすることなく、リスク要因も考慮の上で適正な水準・割合に投資配分することで全体的なリスク緩和を図ることとしてまいります。 |
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3)金融リスク |
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顕在化する可能性:中 |
顕在化し得る時期*:短期 |
顕在化した場合の影響度:小 |
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リスク:①為替リスク |
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2025年3月期を初年度とする中期経営計画の施策として、「事業基盤の強化のための海外事業の拡大」を掲げております。現状の海外売上高比率は約30%にとどまっているものの、海外事業は為替変動の影響を受けるため、今後同比率が高まっていくことにより、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。 国内から輸出している事業、海外から調達している原材料については、個々の取引において為替影響を受けるため、これらの事業拡大によりリスクが拡大することが想定されます。 |
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対応: |
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当社グループでは、国内における外貨建て輸出・輸入と海外連結子会社の外貨建て損益の円換算時に為替影響が生じます。現在、損益の均衡が比較的取れている状況であるため、為替の変動による収益への影響、リスクは小さいと認識しております。また、本リスクを極力回避するため、収入、支出を極力同一通貨で支払うこと、海外拠点における現地通貨の借入れを検討すること、必要に応じて為替先物契約を締結することなどにより、リスクヘッジを図ってまいります。 |
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リスク:②金利変動リスク |
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当社グループは、事業資金の一部を主として金融機関から借入金として調達しております。2025年3月末時点において長短期借入金合計で約208億円ありますが、成長投資や設備投資などで借入額が増加した場合や、今後の金利水準が上昇した場合には、支払利息が増加することにより、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。 |
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対応: |
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足元の金融環境を勘案すると、長短ともに金利水準は上昇基調にありますが、以下に述べる方策により、本リスクが当社グループに与える影響は比較的小さいと思われます。新たに資金需要が生じた場合においても、キャッシュマネジメントシステム(CMS)により、金融費用の削減、当社グループ内に存する資金を効率的に活用することで対応するほか、取引金融機関との間で調整の上で、長期固定金利借入や金利スワップ契約等を導入することで、長期にわたって低金利を享受できる契約構成を維持できるよう進めてまいります。 |
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Ⅱ.オペレーショナルリスク
事業系オペレーショナルリスク(仕入・生産・販売活動)及び管理系オペレーショナルリスク(事業継続するための管理体制とCSR対応)に起因するリスクのうち、現状、以下の4つを主要なリスクと認識しております。
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1)購買に関わるリスク |
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顕在化する可能性:高 |
顕在化し得る時期*:短期 |
顕在化した場合の影響度:大 |
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リスク:原材料調達リスク、原材料及びエネルギー価格の変動リスク |
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主力原材料である石油化学誘導品及びエネルギー(電気、ガス等)は、市況や原油価格の動向に伴う価格変動のほか、為替変動、天災、事故、政策なども含めた生産国での状況や経営基盤の変化などにより、価格変動のみならず、調達不安に陥る可能性もあります。当社グループ製品が使用されている最終消費財の市況や供給責任なども勘案しますと、原材料及びエネルギー価格の上昇をすぐさま製品価格に反映させるには時間を要すことから、結果として原材料及びエネルギー価格の上昇が当社グループの収益を圧迫することにつながります。 |
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対応: |
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主力原材料である石油化学誘導品及びエネルギー(電気、ガス等)は、市況や原油価格の動向に伴う価格変動のほか、為替変動、天災、事故、政策なども含めた生産国での状況の変化や、経営者の後継者問題や資金繰りなど経営基盤の変化によっても、価格変動のみならず、調達不安に陥る可能性もあります。そのため、特定の企業・国に偏することなく、原材料の代替購入先を常日頃から調査の上で確保することなどにより、当社グループの業績に与える影響を緩和することに努めております。原材料及びエネルギー価格の上昇による当社グループ製品の価格に与える影響額を算出し、販売活動に生かすことが必要ですが、使用している原材料の数が多いため、影響額の算出に時間を要しており、結果として当社グループの収益を圧迫することにつながっています。コスト増の販売活動への反映には、一定の時間はかかるものの、お客様へ原材料及びエネルギーの市場動向や予測されるリスクなどを説明し、販売価格の見直しにご理解をいただけるように努めております。 |
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2)コンプライアンスに係わるリスク |
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顕在化する可能性:中 |
顕在化し得る時期*:中期 |
顕在化した場合の影響度:大 |
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リスク:①化学物質管理リスク、品質管理リスク |
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当社グループでは、多種の化学物質を取り扱っており、その保管、使用、移動、排出、廃棄において法令遵守を徹底しております。しかしながら、化学物質管理や環境管理関連において、国内・海外を問わず法的要件が強化されることがあり、遵守できていない場合には罰則を受けるだけでなく、輸出入の禁止や生産活動の停止による、収益機会の喪失、あるいは対処するための支出を招く蓋然性があり、当社グループの業績に与える影響は甚大となる可能性があります。 |
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対応: |
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特定のセグメント(事業機構)から独立した化学物質管理体制及び環境、安全衛生体制(組織)を充実させることと同時に、特に化学物質管理においては要件変更への対処に遺漏が生じることのないように、システムによる管理(新化学物質管理システム)を進めており、これによりリスクコントロールを行うこととしております。 |
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リスク:②製造物責任、補償のリスク |
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環境、安全衛生上の問題や、製品の品質管理上の問題などに起因して、大規模な損害賠償につながるリスクが現実化し、賠償金支払いが生じる可能性があります。 |
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対応: |
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現在、当社グループが付保しております賠償責任保険等、保険契約の内容を勘案すると、これらの発生する蓋然性は比較的小さいものと判断しておりますが、引き続き、保険内容を十分に検討した上での付保手続きを進めてまいります。 |
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3)情報セキュリティリスク |
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顕在化する可能性:中 |
顕在化し得る時期*:中期 |
顕在化した場合の影響度:大 |
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リスク: |
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当社グループは事業活動の中で取引先の情報、技術、契約、人事等の機密情報を取り扱いますが、多くは情報システムで管理しております。サイバー攻撃、不正アクセス等によるデータの改ざん、逸失、情報の漏洩、また災害や障害によるシステムの停止が引き起こす事業活動の停止などが発生した場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
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対応: |
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これらのリスクを低減するため、ネットワーク監視、ウイルス対策、アカウント管理などの基本的な情報セキュリティ対策、バックアップなどの適切なデータ保全、従業員に対する情報セキュリティ教育、セキュリティ事故等に対応する体制の整備などに取り組んでおります。 また、万が一、情報セキュリティに関する重大なインシデントが発生した場合に対処するために、社内にCSIRT(セキュリティ事故対応チーム)を設置しております。 |
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4)人員・人財不足のリスク |
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顕在化する可能性:中 |
顕在化し得る時期*:中期 |
顕在化した場合の影響度:大 |
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リスク: |
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当社グループのサステナブルな成長には、優秀な人財の継続的な獲得が欠かせないと認識しております。出生率低下で新卒者減少に伴う優秀な人財の採用逸失、有能な人財の流出が頻発する場合は、当社の長期的な成長戦略に影響を及ぼす可能性があります。 |
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対応: |
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新卒・中途を問わず積極的に採用を行いつつ、イノベーションが湧き上がる活力に満ちた企業風土を醸成するべくHR戦略を推進しております。例えば新卒採用については、就職活動早期化に対応する為のインターンシップ開催時期の前倒し、確実な入社に繋げるべく内定者との懇談の頻度を上げる等の工夫を行い、重要な経営資源である人財の維持・拡充を図っております。また、経営目標を効率よく達成するために、異なる経験・経歴、技能、属性を持つ者を幅広く採用し、「人財の化学反応」を早期に起こすことを優先するという観点から、性別、国籍、採用時期などの区別なく積極的に中途採用の機会を設けております。 2026年3月期からは、チャレンジを推奨・評価する仕組みや職階ごとの期待役割を明確にしたジョブディスクリプションを設定し、行動を評価する仕組みなどを取り入れ、チャレンジしたいと思える環境づくりから「イノベーションが湧きあがる活力に満ちた組織風土の醸成」を目指します。これらの施策により、人財のエンゲージメント向上を図ることで、人財流出を回避することとしております。詳細は、「2.サステナビリティに関する考え方及び取組(3)人的資本投資・人財育成及び人財の多様性の活用」を参照ください。 |
Ⅲ.ハザードリスク
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1)自然災害のリスク |
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顕在化する可能性:中 |
顕在化し得る時期*:不明 |
顕在化した場合の影響度:中 |
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リスク: |
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近年、大規模地震や大雨等の自然災害のリスクは高まっており、被害の規模によっては生産設備や情報処理システムの毀損、従業員の出勤不能、物流機能の停滞、原材料の調達難などにより当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループの営業拠点や生産拠点の在る自治体のハザードマップによると操業に大きな影響を及ぼす可能性のある拠点があります。大規模な集中豪雨などにより、一時的に事業の継続が困難になる可能性があります。 |
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対応: |
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大規模災害などの経営危機に迅速に対応できるように、本社にて危機管理体制を整備し、各事業所にも災害対応の初動体制を設けております。通常運営時の収益性とビジネス・コンティニュイティ・プラン(BCP)のバランスを考慮し、主要な事業や製品供給の代替体制を逐次推進しております。しかしながら、特定リスクの発生確率を事前評価することは非常に困難であり、大規模災害時には予想通りの状況にならないという教訓から、様々な状況に機動的に対応できる訓練を重視した事業継続対策を進めております。 |
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2)疫病等のリスク |
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顕在化する可能性:中 |
顕在化し得る時期*:不明 |
顕在化した場合の影響度:中 |
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リスク: |
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感染症の大流行(パンデミック)が発生すると、従業員の出勤不能、物流機能の停滞、原材料の調達難などにより当社グループの事業活動と業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。 |
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対応: |
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突然のパンデミックに迅速に対応できるように、本社にて危機管理体制を整備し、各事業所にもパンデミック対応の初動体制を設けております。通常運営時の収益性とビジネス・コンティニュイティ・プラン(BCP)のバランスを考慮し、主要な事業や製品供給の代替体制を逐次推進しております。 |
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当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
(1)経営成績等の状況の概要
①経営成績
当連結会計年度の当社グループの主要な販売先動向は以下のとおりとなりました。
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輸送機器業界 |
自動車向けコンパウンド・着色剤・ウレタン樹脂は、国内は第2四半期会計期間を底に回復傾向、海外は、中国向けが低調も北米向けが好調に推移 |
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情報電子業界 |
液晶ディスプレイ向けは、顔料が第2四半期以降低調に推移もコーティング剤は年間を通して堅調に推移、オフィス事務機器向け顔料及び着色剤は低調に推移 |
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包装・パッケージ業界 |
グラビアインキは、食料品用途等の軟包装向けが流通在庫の解消により堅調に推移、飲料ラベル用途は、猛暑による天候要因、旺盛なインバウンド需要により堅調に推移 |
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建材業界 |
新築需要向けの着色剤・コーティング剤は低調も、リフォーム用途の着色剤は堅調に推移 |
以上の結果、売上高は、1,247億6千万円(前年同期比4.1%増)と増収になりました。営業利益は、海外法人が好調に推移したこと及び新工場移転完了による拠点統合効果等により、70億4百万円(同53.9%増)、経常利益は、77億6千4百万円(同55.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、特別損失に関係会社出資金売却損11億9千3百万円を計上しましたが、特別利益に旧川口製造事業所跡地等の固定資産売却益77億6千1百万円を計上したことなどにより、102億8千9百万円(同181.1%増)とそれぞれ増益になりました。
次に報告セグメントの業績についてご報告いたします。
(カラー&ファンクショナル プロダクト)
当セグメントでは、顔料及び顔料の2次加工品を中心に、顔料・繊維用着色剤、プラスチック用着色剤、樹脂コンパウンド、顔料分散体、機能性材料の製造・販売を行っています。
情報電子業界向けの顔料及び分散体の売上高は、液晶ディスプレイ用途及びオフィス事務機器用途が低調に推移しました。輸送機器業界向けのコンパウンド・着色剤は、国内は第2四半期会計期間を底に回復基調で推移しました。海外のコンパウンド・着色剤は、タイ・ベトナム現地法人の食品包材・自動車向けコンパウンドが好調に推移した一方、中国現地法人の家電OA機器向けが低調に推移しました。
これらの結果、当セグメントの売上高は673億2千5百万円(同2.8%増)、営業利益は31億3千4百万円(同27.7%増)と増収増益になりました。
(ポリマー&コーティング マテリアル)
当セグメントでは、合成樹脂及び特殊コーティング剤を中心に、ウレタン樹脂、天然物由来高分子、紫外線・電子線硬化型コーティング剤の製造・販売を行っています。
ウレタン樹脂は、北米の輸送機器業界向けは好調でしたが、自動車メーカーの生産台数減や販売不振により全体としては低調に推移しました。衣料品・服飾品業界のアウトドアウェア用途は好調に推移しました。産業資材業界向けの感熱記録用コーティング剤は、在庫調整が完了し回復しました。情報電子業界向けのコーティング剤は、年間を通して堅調に推移しました。
海外は、中国現地法人の衣料品向け及び自動車向け、米国現地法人の自動車向けが好調に推移しました。
これらの結果、当セグメントの売上高は、253億4千2百万円(同6.0%増)、営業利益は、31億4千5百万円(同18.3%増)と増収増益になりました。
(グラフィック&プリンティング マテリアル)
当セグメントでは、パッケージ用及び広告出版用インキを中心に、各種用途に対応した幅広い種類のグラビア・フレキソインキ、オフセットインキの開発、製造及び販売を行っています。
包装業界向けのグラビアインキは、食料品用途等の軟包装向けが流通在庫の調整が完了し堅調に推移、飲料ラベル用途も猛暑等の天候要因及び旺盛なインバウンド需要に支えられ堅調に推移しました。オフセットインキは、需要減少により低調に推移しました。海外は、インドネシア現地法人では、競争激化等により販売数量は横這いも販売価格の改定が進み増収となりました。
これらの結果、当セグメントの売上高は320億2千3百万円(同5.6%増)と増収になり、営業損益は、新工場移転完了による拠点統合効果及び海外子会社における販売価格の改定等により損益改善が進み7億1千6百万円(前年同期は5億6千1百万円の営業損失)と黒字転換しました。
②財政状態
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は1,967億8千4百万円となり、前連結会計年度末と比べ19億3千1百万円増加しました。これは主に「売掛金」が減少した一方で、「退職給付に係る資産」及び「機械装置及び運搬具」が増加したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は662億8千6百万円となり、前連結会計年度末と比べ93億9千8百万円減少しました。これは主に「繰延税金負債」が増加した一方で、有利子負債及び「退職給付に係る負債」が減少したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は1,304億9千7百万円となり、前連結会計年度末と比べ113億3千万円増加しました。これは主に配当金の支払の一方で、「親会社株主に帰属する当期純利益」の計上により「利益剰余金」が増加したこと及び「為替換算調整勘定」が増加したことによるものであります。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ2億7千1百万円増加し、216億9千6百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりとなっております。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、41億6千5百万円(前年同期比53.8%減)となりました。これは主に退職給付に係る負債の減少により資金が減少した一方、「税金等調整前当期純利益」及び「減価償却費」の計上により資金が増加したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は、14億1千5百万円(前年同期は14億4千5百万円の使用)となりました。これは主に「有形固定資産の取得による支出」により資金が減少した一方、「有形固定資産の売却による収入」により資金が増加したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、70億円(前年同期比31.4%減)となりました。これは主に借入金の返済及び配当金の支払により資金が減少したことによるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:t)
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自2024年4月1日 至2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
カラー&ファンクショナル プロダクト |
193,858 |
1.9 |
|
ポリマー&コーティング マテリアル |
24,843 |
6.9 |
|
グラフィック&プリンティング マテリアル |
34,274 |
3.1 |
|
報告セグメント計 |
252,975 |
2.6 |
|
その他 |
- |
- |
|
合計 |
252,975 |
2.6 |
b.受注実績
当社グループは過去の販売実績と将来の予想に基づいて見込生産を行っており、受注生産は行っておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:百万円)
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自2024年4月1日 至2025年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
カラー&ファンクショナル プロダクト |
67,325 |
2.8 |
|
ポリマー&コーティング マテリアル |
25,342 |
6.0 |
|
グラフィック&プリンティング マテリアル |
32,023 |
5.6 |
|
報告セグメント計 |
124,691 |
4.1 |
|
その他 |
69 |
△6.1 |
|
合計 |
124,760 |
4.1 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討等
ⅰ経営成績の分析
当連結会計年度の当社グループの経営成績に対して特に重要な影響を与えた事象は、以下のとおりと考えております。
当連結会計年度の事業環境については、世界経済はインフレ圧力が続く中で、米国経済は堅調に推移した一方で、欧州・中国経済は停滞しました。中国以外のアジア地域では、インド、ASEANの一部諸国において比較的高い成長となりました。このような環境下、海外子会社においては、中国華南地区を除き総じて好調に推移しました。業界別では、車両向けは北米は好調でしたが、国内は2024年年明けの能登地震、車両生産台数の減少により2024年後半からの回復となり、全体としては低調に推移しました。液晶ディスプレイ用途については、カラーフィルター用顔料は商権移動による影響を受け低調に推移しましたが、パネル面積の拡大を受けてコーティング剤は好調に推移しました。国内においては、インバウンド消費の拡大、猛暑による消費拡大により飲料用途のグラビアインキ・フレキソインキが伸長、電化製品の小型化・高機能化により開発品の耐熱性高機能樹脂も伸長しました。
こうした社会的、経済的状況のもとで、売上高は、販売価格の見直しを進めたこと、円安による為替換算の影響を受けたことにより1,247億6千万円(前年同期比4.1%増)となり、利益面ではコスト上昇分の価格転嫁を進めたこと、在庫調整の一巡したことなどから、営業利益は70億4百万円(同53.9%増)、経常利益は77億6千4百万円(同55.2%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、旧川口製造事業所跡地等の固定資産売却益77億6千1百万円を計上したことなどにより、102億8千9百万円(同181.1%増)となりました。
足元では、インフレ、金融政策の転換、地政学的な緊張の高まりに加え、米国関税政策により、最終需要の減少の懸念や景気変動を先読みした金利や為替の変動が生じており、先行き不透明な状況が続くことが想定されます。
当社グループでは「3.事業等のリスク」で記載したとおり、引き続き各リスクに対応したリスク回避・削減策を積極的に推進していくことといたします。
各報告セグメントの概況は以下のとおりであります。
なお報告セグメント毎の実績は上記「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績」に、生産実績・受注実績・販売実績は、同「④生産、受注及び販売の実績」にて、それぞれ記載しております。
(カラー&ファンクショナル プロダクト)
当セグメントでは、顔料及び顔料の2次加工品を中心に、顔料・繊維用着色剤、プラスチック用着色剤、樹脂コンパウンド、顔料分散体、機能性材料の製造・販売を行っています。
情報電子業界向けの液晶ディスプレイのカラーフィルター用顔料は商権移動による影響を受け低調に推移しました。オフィス事務機器用途は、需要先において一時的な生産調整があり低調に推移しました。車両業界向けのコンパウンド・着色剤は、2024年初の能登地震、車両生産台数の減少により第3四半期以降の回復となりましたが、全体としては低調に推移しました。海外は、中国華南地区がOA機器、車両用途で低調に推移しましたが、東南アジアで新規アイテムの獲得があり好調に推移しました。今後の受注増に備えて増能力投資を計画しています。
(ポリマー&コーティング マテリアル)
当セグメントでは、合成樹脂及び特殊コーティング剤を中心に、ウレタン樹脂、天然物由来高分子、紫外線・電子線硬化型コーティング剤の製造・販売を行っています。
ウレタン樹脂は、北米の輸送機器業界向けは好調でしたが、自動車メーカーの生産台数減や販売不振により全体としては低調に推移しました。衣料品・服飾品業界のアウトドアウェア用途は好調に推移しました。産業資材業界向けの感熱記録用コーティング剤は、在庫調整が完了し回復しました。情報電子業界向けの液晶ディスプレイ用コーティング剤は、年間を通して堅調に推移しました。電化製品の小型化・高機能化により高度な性能が要求される、耐熱性高機能樹脂が大きく伸長しました。また、二酸化炭素を原料とするヒドロキシポリウレタン(HPU)については、NEDOグリーンイノベーション基金事業として、量産化に向けたパイロットプラントの建設に着手しました。
(グラフィック&プリンティング マテリアル)
当セグメントでは、パッケージ用及び広告出版用インキを中心に、各種用途に対応した幅広い種類のグラビア・フレキソインキ、オフセットインキの開発、製造及び販売を行っています。
包装業界向けのグラビアインキ、フレキソインキは、国内は飲料ラベル用途等が堅調に推移しました。海外は、インドネシア子会社で競争激化等により販売数量は横這いでしたが、販売価格の改定が進み大幅に増収となりました。飲料ラベル用グラビアインキ、水性フレキソインキにつきましては、猛暑による消費拡大とインバウンド消費の拡大により伸長しました。また、情報・電子業界向けとしてスマートフォン用については需要が回復しました。グラビアインキ・フレキソインキ事業は、茨城県坂東市に開所しました坂東製造事業所への生産移管が2023年12月末に完了し、生産拠点統合による合理化効果を期初から得ることができました。また、最新の合理化された生産設備を用いてお客様の必要とされる品質とスペックを適時・的確に供給していくことについても継続して進めております。なお、需要減少の流れを踏まえた合理化施策を進めてきているオフセットインキは、引き続き低調に推移しました。
ⅱ財政状態の分析
当連結会計年度末における総資産は1,967億8千4百万円(前連結会計年度末比19億3千1百万円増加)、負債計は662億8千6百万円(前連結会計年度年度末比93億9千8百万円減少)、純資産計は1,304億9千7百万円(前連結会計年度末比113億3千万円増加)となりました。
総資産は、当連結会計年度末の為替レートが、前連結会計年度末に比べて5~8%円安となったことから、海外連結子会社が保有する資産の円換算額が増加したため実質は横這いから減少となりました。
負債及び純資産の部は、為替レート差による負債・純資産の円換算による影響の他、連結損益計算書の特別利益に計上した旧川口製造事業所の売却収入を株主に対する還元、従業員に対する還元、M&Aを始めとする成長投資の原資として内部留保と3つに分配する方針で実行し、結果として大きく増減することとなりました。
(資産)
「現金及び預金」は、242億5千1百万円(前連結会計年度末比6億7千1百万円増加)となりました。円安により16億円弱増加していることから、実質的には10億円弱の減少となりました。当社及び主要な国内子会社の計5社においては、効率的な資金運用を目的として、2024年3月にキャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入し、日次で資金残高を把握、過不足がある場合には国内グループ会社間で貸付・借入を行う体制となりました。この結果、国内の資金残高は、月商の0.5ヶ月程度を目途に維持しております。海外会社においては、「地産地消」が主であり、取り扱う通貨の種類が多岐にわたることから、現時点においては、各社で月商2ヶ月程度の残高を目指しております。
売掛金・受取手形などの「売上債権」、原材料・製品等の「棚卸資産」及び仕入・電子記録債務などの「仕入債務」の運転資本については、事業運営の主体である各事業部ごとに回転期間などで管理しております。「売上債権」については、成長投資等の資金需要に応じて流動化等の手法を検討しております。
有形固定資産及び無形固定資産の合計は、501億9千3百万円(前連結会計年度末比11億7千4百万円増加)となりました。設備を59億7百万円取得した一方、減価償却費を49億円1千2百万円計上したことによるものであります。主な取得資産は、当社東京製造事業所及び東海製造事業所の生産増能力投資等です。2024年4月から開始した3か年中期経営計画において、総額150億円の設備投資を予定しており、1年目である2025年3月期は41億円(発注ベース)実施しました。戦略製品投資は、カラーフィルター向け顔料、自動車向けコンパウンド、HPU生産設備、タイ工場の増能力等になります。また、2025年6月にインドネシア現地法人の生産能力増加及びR&D施設拡充を目的として約8億円の増資を決議しております。
「投資有価証券」は、185億1千4百万円(前連結会計年度末比2億6千3百万円減少)となりました。これは、政策保有株式を計17銘柄3億円縮減したことなどによるものです。保有している政策保有株式については、毎年取締役会において、保有目的の適切さや保有に伴う便益・リスクが資本コストに見合っているか等を精査し、保有の適否を検証しております。3か年中期経営計画において、2024年3月末の政策保有株式残高154億9千8百万円から15%以上削減することを目標としており、2025年3月期については約3%削減いたしました。
「出資金」は、6千1百万円(前連結会計年度末比8億7千2百万円減少)となりました。これは、2025年3月に持分法適用関連会社であったオランダ現地法人の持分全額の売却契約を締結、4月に売却完了したものによります。(2025年3月期をもって持分法適用関連会社からは除外済)同社は、各種樹脂コンパウンドの受託コンパウンド事業を運営しておりましたが、重点戦略地域であるインドなどアジア全般に経営資源を集中するために譲渡することとしたものであります。
「退職給付に係る資産」は、157億5千3百万円(前連結会計年度末比16億5千2百万円増加)となりました。企業年金基金の運用はマイナスとなったものの、金利上昇による割引率上昇により退職給付債務が減少したことにより増加したものです。
(負債)
「短期借入金」「長期借入金」などの有利子負債は、210億4千4百万円(前連結会計年度末比42億3千4百万円減少)となりました。3か年中期経営計画では、資本コストを意識し、借入金等の有利子負債で調達した資金でM&A等の成長投資を実施する計画としております。しかし、2025年3月期は成長投資に適した案件が少なくM&Aまで至らなかったため、上述の不動産売却収入等の資金を一時的に有利子負債の返済に充てたことにより減少したものであります。
「退職給付に係る負債」は、33億5千7百万円(前連結会計年度末比36億7千8百万円減少)となりました。これも、上述の不動産売却収入の一部を従業員へ還元する一環として、将来の退職一時金の原資として退職給付信託に30億円を拠出したことによるものであります。
(純資産)
「利益剰余金」は、909億1千万円(前連結会計年度末比68億8千7百万円増加)となりました。「親会社株主に帰属する当期純利益」を102億8千9百万円計上したことなどによるものであります。株主還元は、3か年中期経営計画期間中は、総還元性向40~50%相当とする方針でありますが、旧川口製造事業所売却益(法人税相当額控除後)の40%相当額を2024年3月期から4期間にわたり1株当たり年間30円・総額約20億円を特別配当として還元予定であることから、総還元性向は26.0%となっております。なお、普通配当原資(48億円)に対する配当性向は45%・総額21億円強となります。
「自己株式」は、20億4千6百万円(前連結会計年度末比10億8千4百万円減少)となりました。2025年2月に自己株式500千株を消却したことによるものであります。また、同月に従業員持株会への入会会員に1人当たり110株の譲渡制限付株式を自己株式から付与することを決議しております。
「その他の包括利益累計額」は、円安に伴い「為替換算調整勘定」が82億5千5百万円(前連結会計年度末比28億5千5百万円増加)と大きく増加となりました。
この結果、自己資本比率は65.0%となり、前連結会計年度に比べ5.1ポイント上昇しました。事業の特性や成長戦略、市場環境などを総合的に勘案し、資本効率性を重視した活用を行ってまいります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、216億9千6百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。なお、連結キャッシュ・フロー計算書も併せてご参照ください。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動から得られた資金は41億6千5百万円となりました。これは「税金等調整前当期純利益」に「減価償却費」及び「売上債権」「仕入債務」「棚卸資産」などの増減を加味したものであります。従業員の将来の退職一時金の支払に備え信託財産に30億円拠出したことにより「退職給付に係る負債」が大きく減少したこと等により、前連結会計年度に比べて営業キャッシュ・フローは減少しております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動から得られた資金は、14億1千5百万円となりました。当社東京製造事業所及び東海製造事業所を中心に有形固定資産の取得により54億3千7百万円を支出した一方、旧川口製造事業所の土地売却等により「有形固定資産の売却による収入」を75億3千万円計上したことにより投資活動によるキャッシュ・フローはキャッシュ・インとなりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、70億円となりました。
有利子負債によるキャッシュ・フローは次のとおりであります。
(単位:百万円)
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主な項目 |
前連結会計年度 (自2023年4月1日 至2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自2024年4月1日 至2025年3月31日) |
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短期借入による収入 |
2,970 |
3,617 |
|
短期借入金の返済による支出 |
△3,790 |
△4,834 |
|
長期借入による収入 |
757 |
1,198 |
|
長期借入金の返済による支出 |
△5,518 |
△4,134 |
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リース債務の返済による支出 |
△234 |
△154 |
当社グループ内にて保有する資金のうちから営業活動の遂行にあたり必要となる資金相当分を控除した資金を活用することと合わせ、当該資金で不足する場合には、調達までの機動性や増資等による株式の希薄化を回避するためにも、主として銀行借入により調達しております。
③資本の財源及び資金の流動性
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、主として営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入金などにより、資金を調達しております。また、当社及び主要な国内子会社の計5社でキャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入しており、グループ内資金を一元管理し、現預金の水準を引き下げ、資金の効率化を図っております。財務上の方針としては、キャッシュ・フローの創出能力を最大化し、当社の長期的な経営目標としているROE(自己資本利益率)9%、ROA(総資産経常利益率)5%の達成に向けて、財務面から継続的に支援を行うこととし、規律ある積極投資の基準を設けるとともに、短期的な運転資金並びに設備投資や成長投資への資金につきましても有利子負債の活用を行う方針です。
有利子負債に関する数値基準としては、D/Eレシオ1倍以下を目安としており、当連結会計年度末におけるD/Eレシオは0.16倍となっております。金融機関には充分な借入枠を有していること、また取引銀行4行と個別に計70億円の貸出コミットメントラインを設定しており、流動性の補完にも対応が可能となっております。
④経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、中期経営計画「明日への変革 2027」において、「機能性マテリアル分野のエクセレントカンパニーになる」ことを10年後のありたい姿として公表し、環境への負荷を減らす事業活動に努め、素材に機能を付与した「機能性マテリアル」を開発・供給し続けることで、当社グループを取り巻くあらゆるステークホルダーとWIN+WINの関係性を構築し、人々の暮らしを豊かにすることを目指しております。そして、事業の収益性・資本効率を重視する点から、ROE(自己資本利益率)9%、ROA(総資産経常利益率)5%を長期的な経営目標として掲げております。
なお、技術開発に鋭意取り組んでいる新規発展分野及び継続発展分野への投資や海外新規ビジネス投資については、事業単位でのEBITDA(償却前・利払前利益)分析を行い事業評価を行うことなどにより積極的な成長機会を追求し、併せて、経営環境の変化に適時に対応するために、財務基盤の安定と成長を両立させることも重要な課題として認識しております。
⑤重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(出資持分の譲渡)
当社は、2025年3月26日に開催された取締役会決議に基づき、当社が保有する持分法適用会社PLALLOY MTD B.V.の全出資持分を、KISCO株式会社に譲渡する契約を締結いたしました。これに伴い、2025年3月期において関係会社出資金売却損を特別損失として計上するとともに、同社を持分法適用の範囲から除外しております。
(固定資産の譲渡)
当社は、2024年3月25日開催の取締役会において、以下のとおり、固定資産の譲渡について決議を行い、2024年3月27日に不動産売買契約を締結しました。
1.譲渡の理由
当社では、「グラフィック&プリンティング マテリアル」セグメントにおける効率的な生産体制の確立を目的として、川口製造事業所(埼玉県川口市)から坂東製造事業所(茨城県坂東市)への移転を行いました。
この移転により、川口製造事業所の跡地利活用について、慎重に検討を重ねてまいりましたが、保有資産の有効活用及び資産効率向上のため、当該固定資産を譲渡することといたしました。
2.譲渡資産の内容
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(1) |
資産の名称 |
川口製造事業所 |
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(2) |
所在地 |
埼玉県川口市 |
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(3) |
土地面積 |
計16,755.45㎡(敷地面積) |
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(4) |
建屋面積 |
計5,708.53㎡(延床面積) |
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(5) |
譲渡益 |
77億円 |
※譲渡先と当社との間には特記すべき資本関係、人的関係及び取引関係はありません。また譲渡先は、当社の関連当事者には該当しません。
3.譲渡の日程
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取締役会決議日 |
2024年3月25日 |
|
契約締結日 |
2024年3月27日 |
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物件引渡期日 |
2024年8月30日 |
4.当該事象の連結財務諸表に与える影響額
当該事象により、2025年3月期において、固定資産売却益を特別利益として計上いたしました。
(組織再編)
当社は、2024年1月17日開催の取締役会決議に基づき、2024年4月1日付でグループ内組織再編を行いました。詳細は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係)」に記載しております。
(コミットメントライン契約)
当社は、運転資金の効率的な調達を行うため、取引銀行4行と個別に計70億円の貸出コミットメントライン契約を締結しております。
詳細は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結貸借対照表関係)」及び「第5 経理の状況 2.財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (貸借対照表関係)」に記載しております。
当社グループは、企業の持続的な成長には新しい価値を創出し、社会貢献を行うことが必要という原点に立ち返り、変化する経済環境にも迅速に対応できる事業基盤を強化し、お客様へ課題解決を提案する化学メーカーとなるべく積極的に活動を進めております。3か年中期経営計画「明日への変革 2027」の施策では、①IT・エレクトロニクス 機能性材料、②ライフサイエンス・パーソナルケアの二つを新規発展分野、③モビリティ、④環境配慮型パッケージングの二つを継続発展分野として開発対象の中心に据え、人財と設備と資金とを積極的に投入することを行い、技術主導による競争優位の確保を目的とした体制の構築を進めております。
また、2025年4月1日より保有技術ごとの縦割り体制であった従来の技術機構組織から、開発ステージごとの組織体制に刷新しており、併せて、お客様と対面で開発を進めている事業機構の技術部門との融合と、オープンイノベーションなどから技術開発・製品開発力を強化することで、技術主導で事業創出できる体制を作ってまいります。
これらの取り組みにより、10年後のありたい姿である「機能性マテリアル分野のエクセレントカンパニー」を目指し、製品の差別化、品質向上により社会貢献度を高め、同時に収益性の確保を図ることとしております。
当連結会計年度における各セグメント別の研究開発費の金額は次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
増減率 |
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カラー&ファンクショナル プロダクト |
1,546百万円 |
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△1.4% |
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ポリマー&コーティング マテリアル |
1,024 |
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△1.5 |
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グラフィック&プリンティング マテリアル |
461 |
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△3.3 |
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合計 |
3,032 |
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△1.7 |
なお、複数の報告セグメントに係る研究開発費については、適切な配賦基準によって各報告セグメントへ配分しております。
また、当連結会計年度における各セグメント別の研究開発活動の状況は以下のとおりであります。
(カラー&ファンクショナル プロダクト)
当セグメントでは、顔料合成技術を基に粒子形状や表面性質を高度に制御することで各種用途への高付加価値製品を提供するとともに、分散加工技術を基に繊維用・プラスチック用着色剤を内外の様々な産業分野に提供しております。また、当社グループ技術の多角的な展開を図り、機能性材料の開発・製品化にも取り組んでおります。
当セグメントに該当する分野は以下のとおりです。
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IT・エレクトロニクス機能性材料分野 |
各種用途へ適性を持つ高品位製品の開発とともに、当社グループ内の関係技術部門との連携を緊密にし、要素技術の複合化により、色特性、省エネルギー化の向上に寄与するディスプレイ向けカラーフィルター用顔料やオフィス事務機器用顔料、電子部品の熱制御素材として熱伝導性・放熱機能を有する無機複合材料・コンパウンド、情報端末などに使用される特殊配線被覆材向け着色剤、半導体関連材料向け導電コンパウンドなどの開発・改良に取り組み、新グレードの市場展開を開始しました。また、IJプリンターの印刷対象の広がりに対応した高意匠性を発現するIJインキ用顔料及び顔料分散体では、新たに産業用途向けへの開発を継続し、市場評価を進めました。 |
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ライフサイエンス・ パーソナルケア分野 |
海洋生分解性をもち、「マイクロプラスチック」の課題を解決する化粧品材料として天然物由来材料「RUBLALEAFシリーズ」の開発・改良に取り組み、採用につなげました。 |
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モビリティ分野 |
微分散化技術と調色・配合設計技術を基に、顔料及び機能性材料を加工したマスターバッチやコンパウンドを、様々な内外装材向けとして開発・改良に取り組み、採用に結び付けてきました。 また、新たな加工技術の開発に注力しつつ、車内空間の快適化や環境負荷低減、電気自動車、安全運転や自動運転化に貢献するマスターバッチ・コンパウンドの研究開発に取り組むとともに、その成果を展示会やオンラインで情報発信することにより、新規顧客開拓並びにユーザー評価を進めました。 |
(ポリマー&コーティング マテリアル)
当セグメントでは、樹脂合成技術を軸とした高機能製品の創出及び環境課題解決を目的に、独自設計の無溶剤系及び水系ウレタン樹脂、原材料メーカーとの協創で進めるバイオマスウレタン樹脂などの樹脂の開発・製品化と、天然物由来材料を使用した素材の開発・製品化に取り組んでおります。また、分散加工技術を基に各種コーティング剤を内外の様々な産業分野に提供しております。
当セグメントに該当する分野は以下のとおりです。
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IT・エレクトロニクス機能性材料分野 |
機器の小型化・高集積化、「高速通信技術」の深化、スマート社会実現に貢献する材料として、プリント配線基板向けなどにウレタン微粒子が高機能フィラーとして継続採用され、耐熱性・耐久性を向上したウレタン樹脂は採用が拡大、イミド系樹脂は市場評価が進みました。 また同分野ではフラットパネルディスプレイやタッチパネル、半導体関連向け紫外線・電子線硬化型コーティング剤、精密機器などの表面に機能付与する熱硬化型コーティング剤の開発・改良に取り組みました。紫外線・電子線硬化型コーティング剤では硬化度を多段階で制御することで伸度と硬度を両立する加飾コーティング剤や環境対応の水性化、バイオマス材料を活用した開発・改良に加え、更に機能性付与に向けた微分散技術、高粘度分散技術の確立により、無溶剤系の新グレードを開発し価値提案を進めました。 |
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ライフサイエンス・ パーソナルケア分野 |
大学発の技術を導入し、キノコ石突などのキノコ廃材や端材を原料とした菌糸パルプ分散液の開発に取り組みました。アップサイクル素材の化粧品原料として増粘剤などへの検討を進めました。 |
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モビリティ分野 |
サステナビリティ貢献製品として、主に車両内装向けに水系や無溶剤、バイオマスウレタン樹脂及びウレタン微粒子の開発・グローバル販売を推進しております。更に次世代車両電装関連部材においてはより耐熱性や耐久性を向上させたウレタン樹脂の開発に取り組み、一部採用が進みました。また、水系やバイオマスウレタン樹脂はサステナビリティ貢献製品としてモビリティ分野にとどまらず、アパレルやパッケージング分野等への応用展開に引き続き取り組み、採用が広がりつつあります。 |
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環境配慮型 パッケージング |
CO2を原料とするヒドロキシポリウレタン(HPU)のモノマー:環状カーボネートをNEDOグリーンイノベーション基金事業として開発を進めております。ラボでの評価が順調に進み、2026年3月の稼働を目標に、中間プラントの建設に着手しました。注力領域として特異的なバリア性機能の特長を生かし、フードロス対策に寄与するパッケージング分野での採用に向けて市場評価は順調に進んでいます。 |
(グラフィック&プリンティング マテリアル)
当セグメントでは、分散加工技術を基に汎用の印刷インキの提供とともに、独自の配合技術などを活用し、特殊インキ・コーティング剤の開発・製品化に取り組んでおります。
当セグメントに該当する分野は以下のとおりです。
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環境配慮型 パッケージング |
環境負荷低減に寄与する製品として、VOC排出量削減に繋がる水性フレキソインキ「ハイドリックFC」や水性グラビアインキ「ハイドリックPRP」、ポリエチレン溶融ラミネート用水性アンカーコート剤「セイカダイン」のほか、業界最高水準のバイオマス度で設計した「TRISURF」、循環型社会に貢献するためのリサイクルインキ「CycleFine」などを販売し、数量も増加しました。また、CO2を原料とするヒロドキシポリウレタン「HPU」を利用した印刷インキやOPニス、バリアコート剤の開発に引き続き取り組みました。 |
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オフセットインキ分野 |
メタリックインキ「輝(かがやき)」やUV・水性コーティングニスにより多種多様な紙に印刷することで高い意匠性・機能性を付与し、川下ユーザーの要望に応えうる製品の拡充に取り組んでおります。 |
(その他の研究開発活動)
社会が抱える課題を解決する技術開発から新規事業創出と評価技術の導出を目的として、電池用材料やバイオマス樹脂等の研究開発に注力しました。
電池用材料の用途の1つとして、センシング向け導電性エラストマーを開発しました。想定ニーズとのマッチング及びレベル確認を目的に、事業部門の開発品とともに「新機能性材料展2025」に出展し、サンプルワークを開始しました。
外部研究機関との連携も行っており、代表的なものとして「リビングラジカル重合による機能性材料の開発」が挙げられます。国内外の大学と共同研究の具体例としては「濃厚ポリマーブラシ(CPB)の工業的製造方法の確立」などがあり、摺動部材や機械部品に向けた新規トライポロジー材料の研究開発を行っております。その他複数の大学などとの共同研究やコンソーシアムへの参画などにより、プリンテッドエレクトロニクス等の新分野に対応可能な新技術と自社技術との融合・発展を進めました。