第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当企業グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当企業グループは、「人間尊重の経営」を経営哲学に掲げ、「世界にひろがる生活文化創造企業を目指す」ことを経営理念とし、「CS(顧客満足)、ES(社員満足)、SS(社会満足)、SHS(株主満足)を向上させる」ことを行動指針として、全ての企業活動を進めています。
 時代を超えてこれらの経営哲学や経営理念、行動指針は不変のものとし継続しながらも、時代に応じて読み替えながら進化させることで、創業200周年に向け持続的な成長を目指していきます。
 具体的には、生活文化創造企業として貢献する対象を、生活者だけでなく、生命や地球環境まで拡げ、これらの課題解決に取り組むことで、すべての対象がいきいきと共生する世界の実現に貢献してまいります。
 また価値革新への追求や、リスクマネジメントの高度化も含めた、自らの持続的成長を可能にする企業体質への変革と、すべてのステークホルダーの持続に貢献する長期的な視点での満足度の向上に努めていきます。

 

(2) 中長期的な経営戦略

当企業グループでは、長期構想を10年単位で掲げているなか、次なるターゲットである2027年に向けて提供していく価値を「For a Vibrant World」と定め、「100年レンジでの持続的成長が可能な企業体質に変革し、すべての生活者・生命・地球環境がいきいきと共生する世界に貢献する企業グループ」を目指しており、この第一ステップの中期経営計画「SIC(Scientific Innovation Chain)-Ⅰ」(2018年度~2020年度)では、「ターゲット設定と具体的な行動でイノベーションの連鎖の起点を立て続けに打つ」のスローガンのもと事業活動を推進してきました。本中期経営計画期間においては、デジタル化の急速な進展による構造的な市場縮小や、世界的な環境規制強化による原材料価格の高騰に加え、新型コロナウイルスの感染拡大と長期化といった事業環境の悪化により、目標とする業績には及びませんでしたものの、不採算事業や地域での構造改革を実行するとともに、ポリマー・塗加工関連やパッケージ関連事業への収益シフトを進め、また、リチウムイオン電池材料やセンサー向け材料、メディカル関連材料などの新事業にも資源を投入してきました。

第二ステップである中期経営計画「SIC-Ⅱ」(2021年度~2023年度)においては、新型コロナウイルスの影響により変わりつつある新たな社会ニーズに対して、真に必要とされる価値を提供し続けていく企業となるべく、「新たな時代に貢献する生活文化創造企業」を目指す姿として掲げ、3つの基本方針「事業の収益力強化」「重点開発領域の創出と拡大」「持続的成長に向けた経営資源の価値向上」のもと、その実現に取り組んでまいります。

「事業の収益力強化」では、戦略的な高収益事業群の形成と低収益事業の継続的な再編や改革により、持続成長が可能な強靭な事業ポートフォリオの構築を目指します。グローバルでのパッケージ市場に向けた環境調和型のインキや接着剤の展開、5GやIoT市場関連部材の拡販により、収益源の事業をさらに伸長させるほか、貼付型医薬品の開発促進やリチウムイオン電池材料の育成などにより、新たな収益の柱の確立を目指します。一方で、構造的な市場縮小が続く出版・商業印刷向けインキや顔料事業については、事業効率を高めるための構造改革を継続し、収益体質の強化を進めていきます。また、「重点開発領域の創出と拡大」では、研究開発機能を再配置するとともに、重点開発領域への資源配分を強化することで、新たな社会のニーズに対して強固な技術基盤を応用展開し、事業の創出と拡大を加速させます。サスティナブルサイエンスドメインでは、環境調和型製品やリサイクルシステムなどを展開し、持続可能でグリーンな社会の実現に向けた新素材やシステムを提供していきます。コミュニケーションサイエンスドメインでは、センサー向け材料や導電材料などデバイスの基盤となるキー素材とソリューションで5G・IoT社会への貢献を目指します。ライフサイエンスドメインでは、メディカルや次世代印刷分野で、人々の生活を豊か・健やかにする製品やソリューション創出へ挑戦いたします。さらには、「持続的成長に向けた経営資源の価値向上」では、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進やESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組み強化により企業体質を改善し、企業インフラである経営資源価値の向上に努めていきます。
 

 

 

(3) 対処すべき課題

中期経営計画「SIC-Ⅱ」の初年度である次期連結会計年度では、以下のように各事業を推進していきます。

色材・機能材関連事業では、液晶ディスプレイカラーフィルター用材料で、中国市場を中心に差別化製品によるシェア拡大を進めていくことに加え、センサー向け材料では、独自の開発、品質保証体制を整備し拡販を図ります。また、車載用リチウムイオン電池材料の米国や欧州拠点の円滑な立ち上げを進めるうえ、インクジェット用インキ関連事業を再編し、顔料合成からの一貫開発体制により競争力を高めていきます。

ポリマー・塗加工関連事業では、トーヨーケム株式会社と東洋アドレ株式会社を2021年1月に合併し、環境調和型粘着剤や無溶剤のホットメルト(熱溶融型接着剤)の技術融合を図り、環境、エレクトロニクス、ヘルスケア市場に向けてイノベーション製品やサービスの開発を強化します。また、国内、インド、米国、中国などで生産体制の強化を進めますほか、5G関連市場では、低誘電や導電性などを訴求した差別化製品で拡販を推進します。

パッケージ関連事業では、中国の新工場の早期立ち上げやトルコでの円滑な新工場建設で、堅調な需要に対する供給体制を整えていきますほか、伸長する東南アジア、インドへの集中的な資源投入も行いさらなる拡販を図ります。また、高まる環境意識や安全衛生ニーズに対応して、環境対応製品群や抗菌・抗ウイルス製品群、リサイクルなどの環境システム構築について展開を加速させていきます。

印刷・情報関連事業では、UVインキの原材料のコストダウンを継続的に進めることに加え、シールラベルや紙器などのパッケージ市場への展開を強化します。また、市場の縮小に対応した構造改革をさらに進めて体質を強化します。

これらに加え、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、あらゆる事業プロセスをデジタルの力で進化させるとともに、ガバナンスやリスクマネジメントの強化により経営資源の価値を高め、社会環境が大きく変化するなか、柔軟かつ強靭に企業活動を継続してまいります。

 

 

 

 

2 【事業等のリスク】

当社は、リスク担当役員(CSR統括委員会リスクマネジメント部会長)のもと、リスクマネジメント部会がグループ全体のリスクを網羅的・総括的に管理しております。また、当企業グループの各社・各部門では、日常業務に潜むリスクを洗い出して評価・検討し、対策を実施しております。

リスクマネジメント部会では、各社・各部門のリスクを発生頻度と重大性に基づき評価したリスクマップを作成して全社で共有しております。重大リスクについては取締役会に報告するとともに、リスク低減のための活動の進捗と達成度を部会で確認しております。新たに重大リスクとなりうる問題が発生した場合は、緊急対策本部を設置し対応を図ってまいります。

上記リスクマネジメント活動を通じて経営者が当企業グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限定されるものではありません。

 

(1) 事業セグメント固有のリスク

 ①色材・機能材関連事業

当企業グループにとって、有機顔料の合成技術は原点の一つです。またインキや塗料の製造で培われた分散技術は、着色するという用途を大きく越え、液晶ディスプレイカラーフィルタ用材料やカーボンナノチューブを応用した新たな分散体の開発などにも展開しております。

顔料事業においては、国内印刷市場のデジタル化に伴う構造的不況のなか、印刷インキ用顔料の需要が大きく縮小するリスクがあり、売上高及び利益の低下を招く可能性があります。そのため、成長性の高い食品包装用途への展開を図ることにより事業リスク低減に努めてまいります。着色事業においては、廃プラスチック問題など環境意識の高まりに伴う需要減少のリスクがありますが、生分解樹脂用の着色剤といった環境調和型製品の開発により、持続可能な社会に貢献するとともに、事業リスク低減に取り組んでまいります。

 

②ポリマー・塗加工関連事業

 当企業グループでは、ポリマー・塗加工の技術を活かし、パッケージ、自動車、エレクトロニクス、エネルギー、メディカル・ヘルスケアなどの分野に展開しております。

 当事業の原材料の多くは石油由来であり、環境保全を目的とした各国の規制や社会要請などにより使用の制約を受け、売上高等が変動する可能性があります。社会生活に必要な最終製品の材料供給者としての責任を果たすべく、現行品の機能を確保する環境調和型製品の開発と代替を進めてまいります。

 エレクトロニクス市場向け材料については、スマートフォンのように、毎年、最終製品の仕様が変わるなか、その採用可否により売上高や利益が変動する可能性があります。品質・コスト面などの優位性を高めることでの採用確度の向上や、使用先の拡大などにより、リスク低減に努めます。

 メディカル・ヘルスケア市場向け材料については、研究開発に相応の時間と費用を必要とし、上市までの過程で、遅れや変更または中止となる可能性があります。また、医薬行政の動向を受けた関連法規の改変や公定価格の変動が、売上高や利益に影響を及ぼす可能性があります。開発のパイプラインを増やすとともに、ヘルスケア粘着剤や医療機器の周辺材料など事業の裾野を拡げてリスク分散に取り組んでまいります。

 

③パッケージ関連事業

 当企業グループでは、パッケージの製造工程において多様な高機能製品を提供しております。特に安心・安全が求められる食品包装の分野では、インキや接着剤の水性化、無溶剤化などを進めております。また、持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向け、バイオマス製品の開発も積極的に行っております。

 パッケージ関連事業においては、廃プラスチック問題など環境意識の高まりによって、フィルム用インキや接着剤の消費需要が落ち込み、売上高及び利益の低下を招く可能性があります。市場や環境の変化をチャンスと捉え、新たな製品開発を強化し、リスク分散に取り組んでまいります。

 

④印刷・情報関連事業

 当企業グループでは、原材料の顔料や樹脂から最終製品までを一貫生産できる強みを活かし、環境調和型製品や高機能のUVインキなど多様な製品を開発するとともに、お客様の印刷工程でのソリューション提供にも取り組んでおります。

 印刷・情報関連事業においては、デジタル化に伴う情報系印刷市場の縮小により、想定以上に売上高及び利益の低下の進展が早まり、また、印刷市場を取り巻く変化に伴う顧客や取引先の経営状況によっては、売掛債権の回収に影響を及ぼすリスクがあります。そのため、経済情勢の変化や信用不安の兆候を早期に把握できるよう情報収集と与信管理を徹底してまいります。経営資源を成長分野に弾力的にシフトするとともに、事業効率を徹底的に高め、市場環境への適合を進めてまいります。

 

(2) グループ全体に係るリスク

 ①海外活動に潜在するリスク

当企業グループは、海外においても生産及び販売活動を行っており、今後伸長が見込まれる事業分野において、海外事業の深耕を行っていく方針です 。これらの海外事業には以下のようなリスクが内在しております。

 ・予期しえない法律・規制・不利な影響を及ぼす租税制度の変更
  ・社会的共通資本が未整備なことによる当企業グループの活動への悪影響
  ・不利な政治的要因の発生
  ・テロ、戦争、伝染病などによる社会的混乱
  ・予期しえない労働環境の急激な変化
  これらの事象の発生可能性や影響等を合理的に予測することは困難でありますが、当企業グループの経営成績及び財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。しかしながら、当企業グループにおいては、各国の経済動向やその他リスクの影響を受けづらい収益構造とするために、世界各国における事業展開の促進や事業分野のバランスの向上、リスクに対して柔軟に対応できるSCM(サプライチェーンマネジメント)の構築、固定費や原材料費等の変動費の削減を行い、そのリスクを最小化するための対策に努めております。

 

②情報漏洩、滅失、毀損に関するリスク

 当企業グループでは、事業を展開する上で、当企業グループ及び取引先の機密情報や個人情報などの秘密情報を保持しております。その多くは電子情報として保持・利用されておりますが、テレワークが拡大するビジネス環境のもと、インターネットを通じたコンピュータウイルスやセキュリティ侵害による情報漏洩、滅失又は毀損のリスクは増大する傾向にあります。当企業グループとしては、情報システム面で万全の対策を講じるとともに、情報セキュリティオフィスを設置し、情報管理強化と社員教育を通じてリスク低減に努めております。万一不測の事態により情報漏洩、滅失又は毀損が発生した場合は、社会的信頼の失墜、秘密保持契約違反、ノウハウの流出又は逸失による競争力の低下などにより、当企業グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③品質・製造物責任に関するリスク

 当企業グループでは、品質保証体制の強化を図っておりますが、製品の品質に起因する事故、あるいはクレームにより当企業グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社が支払う損害賠償金が製造物責任賠償保険で全額補償される保証はありません。当企業グループでは、引き続き、品質や安全に関する法的規制の遵守に努めるとともに、製品の性能向上やお客様の安心・安全に貢献する製品開発を継続して進めることで更なる満足度向上と信頼を得ることにより、リスク低減に取り組んでまいります。

 

④自然災害・疫病等に関するリスク

 当企業グループでは、新型コロナウイルスの感染拡大と長期化により、世界的な消費活動の停滞に伴う販売の伸び悩みに加え、原料の調達や生産活動への支障が発生しました。新型コロナウイルスの感染拡大が更に長期化することにより、当企業グループ製商品の需要が一層落ち込むほか、予想を上回る規模での原料の調達困難、事業所の操業停止、従業員の出勤不能、物流機能の停滞等に至った場合は、当企業グループの経営成績及び財政状態等に更なる影響を及ぼす可能性があります。なお、当企業グループでは、関係者の安全と事業継続のため、社員向け新型コロナウイルス対策ハンドブックの作成と周知をしたうえで、下記施策等を実施中です。

   ・ 検温、マスク着用、手洗い、消毒
    ・ 時差出勤、在宅勤務、WEB会議システムの活用
    ・ 社員及びその同居家族に感染が疑われる場合の管理者及び対応部門に対する迅速な状況報告と感染の有無
       や症状に応じた出勤制限
  近年、大規模地震や大雨等の自然災害や国内外における感染症の大流行(パンデミック)等に関するリスクは高まりつつあり、予想を上回る被害の拡大や長期化が進みますと、建物や生産設備等をはじめとする資産の毀損、従業員の出勤不能、電力・水道の使用制限、原材料の調達困難、物流機能の停滞等により供給能力が低下し当企業グループの経営成績及び財政状態等に甚大な悪影響を及ぼす可能性があります。これらの不可避的な事業中断リスクを想定し、リスクに応じた緊急行動マニュアルの策定や定期的な実地訓練等による事業継続体制の整備に努めております。

 

⑤原料調達に関するリスク

  当企業グループの製品の主原料は石油化学製品であり、仕入価格及び調達状況は、原油・ナフサなどの市況変動、天災、事故、政策などに影響を受けます。特に当連結会計年度においては新型コロナウイルスの感染拡大により一部の原料で入手困難に陥るリスクが発生しました。仕入価格の上昇につきましては、当企業グループの製品が使用される消費財は、市況価格及び供給責任を考えますと、販売価格への転嫁には時間を要するため、当企業グループの売上高及び利益の低下を招く可能性があります。また、原料が入手困難となるリスクにつきましては、お客様に対し、製品が供給不履行となり、損害賠償等の金額によっては経営成績及び財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクを回避すべく、市況価格予測や需要予測の精度をあげて原料調達に反映させ、最適な価格での購入を進めるとともに、市況及びお客様の需要に基づいた生産計画のもと、原料の特性に応じた在庫確保などによる製品の安定供給のための原料調達を進めております。また、日頃より原料の購入先の情報を幅広く収集し、特定の企業、国に偏ることなく、原料調達を進めることで、当企業グループの業績に与える影響を緩和することに努めております。

 

⑥為替の変動に関するリスク

  当企業グループは世界各国で事業を展開しており、海外連結子会社の財務諸表項目は連結財務諸表作成のために円換算されますが、急激な為替変動によって当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、輸出入等の外貨建て取引においても、同様の可能性があります。このため、当企業グループは、為替予約や外貨建て債権債務のバランス化等によって、為替相場変動リスクの抑制に努めております。

 

⑦一般的な法的規制に関するリスク

  当企業グループは、事業活動に関わる一般的な法的規制の適用を、事業展開する内外各国において受けております。これらの遵守のためCSR統括委員会の傘下にCSR推進連絡会議及び専門部会であるコンプライアンス部会、リスクマネジメント部会、環境安全部会を設置・運用し、事業活動に関わる法的規制を調査、抽出するとともに、適法・適正な事業活動を確保するため、製造・販売・研究開発の各活動領域における業務プロセスの検証や見直し、社内規程の整備、関係者への教育などの必要な施策を展開しています。また、財務報告の適正性確保のための内部統制システムの整備と運用の確保に努めております。
 しかしながら、国内及び海外事業に関連して、環境問題や製造物責任、特許侵害を始めとする当企業グループの事業に重大な影響を及ぼす訴訟紛争、その他の法律的手続きが今後発生しないという保証は無く、万一訴訟等が提起された場合、その争訟金額等によっては当企業グループの経営成績及び財政状態等に場合によっては甚大な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧環境負荷発生のリスク

  当企業グループは化学製造業を主な事業としており、原材料及び製品として各種の化学物質を扱っております。これらの化学物質が環境に及ぼす影響について、CSR経営の一環としてCSR統括委員会傘下の環境安全部会を中心に影響度を確認し環境負荷低減に積極的に取り組んでおります。また製造の過程で発生する廃棄物や排水、騒音・振動、土壌汚染、CO2排出などについても国内外の様々な環境法規による規制を受けております。近年は、これらの化学物質関係法令や環境規制法令は国内外において環境改善のため強化される傾向にあります。また社会的要請としての脱プラスチック、カーボンニュートラルなどが求められております。これらにより原材料・製品・製造工程いずれにおいても、追加的な義務(コスト)の発生、生産規模の縮小、または事業形態の変更などの可能性があり、当企業グループの経営成績・財務状況に悪影響を及ぼす可能性がありますが、これらのリスクに対して、適切に対処することで長期的には社会的信頼が高まり優位性を得る可能性もあります。当企業グループとしては、長期の経営計画の中で製造工程の見直しによる使用エネルギーやCO2の排出削減、化学物質の管理強化やシステム化、製品の脱VOC(揮発性有機化合物)化、マテリアルリサイクル化など様々な施策に取り組んでおります。

 

⑨一般的な債権回収に関するリスク

  当企業グループの製品は、国内外のさまざまな業界の多数の顧客に納入しておりますが、顧客の経営状況によっては、これらに対する売上債権等を回収することができないこともあり得ます。現有債権につきましては回収不能見込額を既に引当金として計上しておりますが、予想を上回る回収不能が発生した場合には、当企業グループの経営成績及び財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、与信情報等を参考に、営業現場からの定性的情報も加味することで、顧客の与信リスクを定期的に見直し、それに応じた債権保全策を実施するなど与信管理の強化に努めてまいります。
 
 

 

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 (1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当企業グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 ① 財政状態及び経営成績の状況

 

 

 

(単位:百万円)

 

売上高

営業利益

経常利益

親会社株主に帰属する当期純利益

2020年12月

257,675

12,909

12,543

6,019

伸長率(%)

△7.9

△2.0

△9.4

△29.3

2019年12月

279,892

13,174

13,847

8,509

 

 

当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大と長期化により、個人消費や企業活動を中心に急速な悪化が進み、依然として収束の見通しが立たない状況が続いております。

このような厳しい環境ではありましたが、当企業グループは次の3つを年度の方針として掲げ、経営活動を行ってまいりました。

第一の方針である「積極的に拡大させる事業への社内外との連携強化、重点投資による着実な成果の創出」では、環境問題に関する危機意識の世界的な高まりや、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う社会の変化に対しても、新たな価値を提供することに取り組んできました。テレワーク需要が拡大するなか、液晶パネル需要がシフトしている中国市場で液晶ディスプレイカラーフィルター用材料の販売を拡大させるとともに、高速通信対応のモバイル端末向け塗工材料の開発や拡販も進めました。また、循環型社会の実現に向けてバイオマスインキや環境調和型粘着剤の展開に注力しましたことに加え、電気自動車の普及が促進されてきたことに伴い、車載用リチウムイオン電池材料の北米や欧州での供給体制構築に着手し、日本、中国と合わせた自動車4大市場へのビジネス展開の礎を整えました。さらに、安心・安全・衛生への関心が高まるなか、印刷物に抗菌性を付与する印刷インキを開発しましたほか、メディカル・ヘルスケア事業で生産能力増強と最新規制への対応を図るため、貼付型医薬品新工場の建設に着手しました。

第二の方針である「生販技一体となったコストダウン、利益創出による事業やエリアの構造改革の確実な実行」については、デジタル化に伴い市場が縮小している国内の印刷・情報関連事業で構造改革を進め、同業他社とのアライアンスにより生産を最適化するとともに、人員の配置転換により組織のダウンサイジングを実行しました。一方、中国や東南アジア、インド、トルコなどの新興国では、生活必需品の需要拡大を今後も見込んでおり、パッケージ関連のインキや接着剤の生産設備増強を進めました。また、着色剤事業では、グローバルでの事業体制を見直し、収益が低迷していたヨーロッパや東南アジアの一部拠点について撤退を進めました。

第三の方針である「業務改革への間断なき挑戦の繰り返しによる大胆な変化」については、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、在宅勤務での新しい働き方のトライアルを人事制度面、システム面、ファシリティ面で行ったことに加え、海外グループ会社での設備立ち上げや技術支援をリモートで行うことで業務の効率化とコスト削減を実現しました。また、プライベートショウや日常の販促活動においても、リアルとデジタルを融合させた新しいマーケティング活動を推進しました。さらには、前連結会計年度に判明したフィリピンの子会社における不適切な会計処理に対する改善として、グループ全体で内部統制の再構築を進めました。

しかし、世界的な消費活動の停滞に伴う販売の伸び悩みに加え、原材料の調達や生産活動への支障が発生するなど、非常に厳しい状況が続き、当連結会計年度の売上高は2,576億75百万円(前期比7.9%減)と減収になり、営業利益は129億9百万円(前期比2.0%減)、経常利益は125億43百万円(前期比9.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は60億19百万円(前期比29.3%減)と、それぞれ減益になりました。

 

セグメントごとの経営成績につきましては、次のとおりです。

 

売上高

営業利益

セグメントの名称

前連結
会計年度

(百万円)

当連結
会計年度
(百万円)

増減率
(%)

前連結
会計年度

(百万円)

当連結
会計年度
(百万円)

増減率

(%)

色材・機能材関連事業

67,400

61,642

△8.5

3,386

2,610

△22.9

ポリマー・塗加工関連事業

65,887

62,328

△5.4

6,013

5,937

△1.3

パッケージ関連事業

68,071

66,589

△2.2

3,058

3,885

27.1

印刷・情報関連事業

76,680

65,595

△14.5

314

247

△21.2

その他

7,291

6,229

△14.6

424

234

△44.6

285,332

262,384

△8.0

13,197

12,916

△2.1

 調整額

△5,439

△4,708

△23

△7

連結

279,892

257,675

△7.9

13,174

12,909

△2.0

 

 

a. 色材・機能材関連事業

高機能顔料や液晶ディスプレイカラーフィルター用材料は、米中貿易摩擦や新型コロナウイルスの感染拡大などにより、前半は大型テレビやスマートフォン向けが低調でしたものの、後半に回復してきましたうえ、パソコンやタブレット向けが伸長しました。一方、中国への市場シフトによりコストダウン要請が厳しくなり、利益は圧迫されました。

汎用顔料は、印刷インキ用の低調が通年続きましたうえ、前半の自動車販売の落ち込みに伴い塗料用も低調に推移しました。

プラスチック用着色剤は、国内では衛生関連の容器用が伸長しましたが、外出自粛やインバウンド市場の落ち込みに伴い、飲料キャップ用や化粧品容器用などが伸び悩みましたうえ、建材や太陽電池向けなどの販売も減少しました。また東南アジアでの事務機器向けや、北米や欧州の自動車向けも低調に推移しました。

これらの結果、当事業全体の売上高は616億42百万円(前期比8.5%減)、営業利益は26億10百万円(前期比22.9%減)と、減収減益になりました。

 

b. ポリマー・塗加工関連事業

塗工材料は、スマートフォン向けが前半はサプライチェーンの寸断や需要減少で低迷しましたものの、後半は回復してきましたうえ、高速通信対応の電磁波シールドフィルムの開発や拡販が進みました。

接着剤は、国内では包装用が堅調に推移しましたものの、リチウムイオン電池用は伸び悩みました。また海外では、新型コロナウイルスに伴う事業活動の一時停止により、中国や東南アジアが低調となりました。粘着剤は、国内で自動車向けが伸び悩みましたが、ラベル用は堅調に推移し、ディスプレイ保護用などの拡販が国内外で進みました。

缶用塗料(フィニッシェス)は、国内では外出自粛に伴いアルコール飲料缶用が伸長しましたが、自動販売機やコンビニエンスストア向けのコーヒーや清涼飲料缶用は伸び悩みましたうえ、中国や北米でも低調に推移しました。

これらの結果、当事業全体の売上高は623億28百万円(前期比5.4%減)、営業利益は59億37百万円(前期比1.3%減)と、減収減益になりました。

 

c. パッケージ関連事業

国内のグラビアインキは、主力の包装用でインバウンド需要は落ち込みましたものの、外出自粛に伴い冷食やレトルト等の家庭用食品向けや、衛生商品向けの販売が堅調に推移し、中でもバイオマスインキが伸長しました。一方、出版用の需要減少が続きましたうえ、建装材用も低調に推移し、溶剤や機器販売も減少しました。

海外では、中国や東南アジア、インドなどで、顧客や自社拠点の操業停止に伴う影響を受けましたものの、生活必需品として比較的に早く稼働を回復できましたうえ、環境対応製品の拡販も進みました。

グラビアのシリンダー製版事業は、包装用が後半に伸び悩みましたが、エレクトロニクス関連の精密製版の拡販は進みました。

これらの結果、当事業全体の売上高は665億89百万円(前期比2.2%減)と減収になりましたが、営業利益は38億85百万円(前期比27.1%増)と増益になりました。

 

d. 印刷・情報関連事業

デジタル化に伴う情報系印刷市場の縮小が続くなか、国内ではビジネス規模の最適化や同業他社との協業、コストダウンを強力に進め、利益の確保を図る一方、海外ではグローバルな拠点拡充を図りました。また、高感度UVインキや、オンデマンド印刷向けインクジェット用インキなどの開発や拡販にも取り組みましたうえ、環境規制に伴う原材料価格上昇の一部を転嫁させていただくため、販売価格の改定も進めております。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大や長期化に伴い、国内では外出自粛やイベント中止などでチラシや広告などの印刷物が減少し、インキの需要減少が進みました。また中国やインドなど一部地域では事業活動の一時停止も余儀なくされました。

これらの結果、当事業全体の売上高は655億95百万円(前期比14.5%減)、営業利益は2億47百万円(前期比21.2%減)と、減収減益になりました。

 

e. その他

上記のセグメントに含まれない事業や、東洋インキSCホールディングスなどによる役務提供などを対象にしていますが、売上高は62億29百万円(前期比14.6%減)と減収になりましたうえ、役務提供の対価の見直しや退職給付費用の増加などにより、営業利益は2億34百万円(前期比44.6%減)と減益になりました。

 

財政状態につきましては、次のとおりです。

 

前連結会計年度(百万円)

当連結会計年度(百万円)

増減(百万円)

総資産

376,130

380,227

4,096

負債

149,237

162,902

13,664

純資産

226,892

217,325

△9,567

 

 

当連結会計年度末における総資産は3,802億27百万円で、前連結会計年度末より40億96百万円増加しました。負債は1,629億2百万円で、前連結会計年度末より136億64百万円増加しました。純資産は2,173億25百万円で、前連結会計年度末より95億67百万円減少しました。

当連結会計年度末日の為替レートが前連結会計年度末日の為替レートに比べ、円高外貨安に振れたため、海外子会社で保有する資産及び負債、為替換算調整勘定が減少しました。また、売上高の減収に伴い、受取手形及び売掛金と支払手形及び買掛金が減少しました。さらに、日本国内の株価下落を反映し、投資有価証券、繰延税金負債、その他有価証券評価差額金が減少しました。一方、新型コロナウイルスの感染拡大と長期化に備え、新規の長期借入や、短期から長期への借り換えを実施したため、現金及び預金、長期借入金は増加し、短期借入金が減少しました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 

前連結会計年度(百万円)

当連結会計年度(百万円)

増減(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

19,673

16,743

△2,930

投資活動によるキャッシュ・フロー

△10,404

△13,294

△2,890

財務活動によるキャッシュ・フロー

△6,247

16,221

22,469

現金及び現金同等物の期末残高

53,765

73,117

19,352

 

 

当連結会計年度の現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)の期末残高は、前期末残高より193億52百万円増加し、731億17百万円となりました。

営業活動により得られた資金は167億43百万円(前連結会計年度比29億30百万円減)となりました。税金等調整前当期純利益計上による資金の増加や法人税等の支払いによる資金の減少などがありました。

投資活動により使用した資金は132億94百万円(前連結会計年度比28億90百万円増)となりました。有形固定資産の取得などに伴う支出などによるものです。

財務活動により得られた資金は162億21百万円(前連結会計年度比224億69百万円増)となりました。新型コロナウイルスの感染拡大と長期化に備えた新規借入金による資金の増加や配当金の支払いによる資金の減少などがありました。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

色材・機能材関連事業

70,931

△3.3

ポリマー・塗加工関連事業

47,462

△1.7

パッケージ関連事業

50,486

△1.9

印刷・情報関連事業

42,338

△13.2

    報告セグメント計

211,218

△4.8

その他

178

△15.0

合計

211,397

△4.8

 

(注) 生産金額は製造原価によっており、消費税等は含まれておりません。

 

b. 受注実績

当企業グループにおける受注生産は極めて少なく、大部分が計画生産のため、記載を省略しております。

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

色材・機能材関連事業

59,365

△8.8

ポリマー・塗加工関連事業

62,050

△5.4

パッケージ関連事業

65,977

△2.0

印刷・情報関連事業

65,577

△14.4

    報告セグメント計

252,971

△7.9

その他

4,704

△9.5

合計

257,675

△7.9

 

(注) 1  上記の金額は、連結会社間の内部売上高を除いております。

2  上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

3  主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合につきましては、販売実績の総販売実績に対する割合が10%以上の相手先が存在しないため、記載を省略しております。

 

 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当企業グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当企業グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されていますが、その作成には経営者による会計方針の選択・適用と、資産・負債及び収益・費用の報告金額に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りにあたっては過去の実績等を勘案し合理的な判断を行っていますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性がありますため、これらの見積りと異なる場合があります。

当企業グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりです。

a.固定資産の減損

当企業グループは、資産においては管理会計上の区分を基準にグルーピングし、遊休資産及び賃貸資産においては個別物件単位でグルーピングを行っております。収益力の低下や時価の下落が著しい資産グループについては、割引前将来キャッシュ・フローの見積りを行い、資産グループの帳簿価額を下回る場合、回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。当該処理については、決算時点での入手可能な情報に基づき、合理的に判断していますが、不確実な経済条件の変化や地価の変動等、前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となることがあります。

 

b.繰延税金資産の回収可能性

当企業グループは、繰延税金資産の回収可能性について、将来の事業計画に基づいた課税所得見込額を考慮しており、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲内で繰延税金資産を計上しております。しかしながら、不確実な経済条件の変動により、将来の課税所得が予測と異なり、繰延税金資産の修正が必要となる場合には、当企業グループの経営成績や財政状況に影響を与えることになります。

 

なお、新型コロナウイルス感染症の影響に関する仮定については、「第5 経理の状況 1(1)連結財務諸表 注記事項 追加情報」に記載しており、上記した割引前将来キャッシュ・フローの見積りや、将来の事業計画に基づいた課税所得見込額については、当該仮定を前提に算出しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 経営成績の分析

当連結会計年度の売上高は、前期比222億16百万円(7.9%)減の2,576億75百万円(期初計画 2,900億円、2020年8月6日公表修正計画 2,600億円)となりました。その内容は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおり、新型コロナウイルスの感染拡大と長期化による世界的な消費活動の停滞に伴う販売の伸び悩みに加え、為替変動に伴う海外子会社の円換算額の目減りもあり、減収となりました。

営業利益は、前期比2億64百万円(2.0%)減の129億9百万円(期初計画 150億円、修正計画 120憶円)となりました。環境調和型製品や先端材料などの高付加価値製品の拡販に加え、ナフサ価格の下落や内製化による原材料価格の低減や、コストダウンも徹底したものの、販売の伸び悩みに伴う利益の減少を補うまでには至りませんでした。

経常利益は、営業利益の減少に加え、為替差損の増加により、前期比13億3百万円(9.4%)減の125億43百万円(期初計画 155億円、修正計画 115億円)となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益の減少に加え、不採算拠点の整理による損失も発生したため、前期比24億89百万円(29.3%)減の60億19百万円(期初計画 100億円、修正計画 60憶円)となりました。

なお、セグメント別の経営成績については「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。

 

b. 財政状態の分析

財政状態の分析については「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであり、セグメント別の財政状態は、成長事業や地域への積極的な設備投資などにより、以下となりました。

色材・機能材関連事業の資産1,056億76百万円(前期末より18億21百万円増加)。

ポリマー・塗加工関連事業の資産892億14百万円(前期末より64億54百万円増加)。

パッケージ関連事業の資産861億61百万円(前期末より21億27百万円増加)。

印刷・情報関連事業の資産902億38百万円(前期末より54億65百万円減少)。

その他の事業の資産89億36百万円(前期末より8億40百万円減少)。

 

 

c. キャッシュ・フローの分析

キャッシュ・フローの分析については「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであり、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、新型コロナウイルスの感染拡大と長期化に備えた新規借入の実施などにより、731億17百万円と前期末より増加しております。これに伴い、手元資金が厚くなり、財務基盤の安定性をより一層高めております。

 

③ 経営成績に重要な影響を与える要因について

当企業グループが提供する製品の市場は多岐に渡っておりますが、一般的な消費動向や、石油化学系原料の仕入価格、為替レートなどは、当企業グループの経営成績に大きく影響を与える要因になっております。

また当連結会計年度では、新型コロナウィルスの感染拡大と長期化により、事業活動が大きな支障を受けました。消費活動の停滞に伴って販売が伸び悩む一方で、中国や東南アジア、インドでの操業停止を始め、原材料、労働力、輸配送などの確保が困難になるなか、生活必需品を含む製品の供給に障害が発生しましたが、 グループ会社間の グローバル規模での生産協力や、生産や物流の効率化、原材料の代替対応、感染の抑制などの対策を講じて、これに対処してまいりました。

その他、海外活動や災害への対応など、当企業グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクについては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりですが、これらの発生を抑制する活動を、CSR統括委員会傘下のリスクマネジメント部会を中心に、引き続き積極的に推進していきます。

 

④ 経営戦略の現状と見通し

当企業グループは、「人間尊重の経営」を経営哲学に掲げ、「世界にひろがる生活文化創造企業を目指す」ことを経営理念とし、「CS(顧客満足)、ES(社員満足)、SS(社会満足)、SHS(株主満足)を向上させる」ことを行動指針として、全ての企業活動を進めています。

また、長期構想「Scientific Innovation Chain 2027 (SIC27)」では、次なるターゲットである2027年に向けて提供していく価値を「For a Vibrant World」と定め、すべての生活者・生命・地球環境がいきいきと共生する世界に貢献する企業グループを目指しています。これに伴いドメインについても、これまでの枠組みを戦略的に拡大し、成長市場のみならず、社会課題の解決や、生命や地球環境の持続成長可能性に繋がる領域にも注力しています。

この長期構想の第一ステップとなる中期経営計画「SIC-Ⅰ」では、当企業グループが持続的に成長していくための礎を創り上げる期間と位置づけており、「ターゲット設定と具体的な行動でイノベーションの連鎖の起点を立て続けに打つ」のスローガンのもと事業活動を推進してきました。本中期経営計画期間の最終年度となる当連結会計年度におきましては、新型コロナウイルスの感染拡大と長期化といった事業環境の悪化により、目標とする業績には及びませんでしたものの、不採算事業や地域での構造改革を実行するとともに、新事業にも資源を投入しております。

第二ステップである中期経営計画「SIC-Ⅱ」(2021年度~2023年度)においては、新型コロナウイルスの影響により変わりつつある新たな社会ニーズに対して、真に必要とされる価値を提供し続けていく企業となるべく、「新たな時代に貢献する生活文化創造企業」を目指す姿として掲げ、3つの基本方針「事業の収益力強化」「重点開発領域の創出と拡大」「持続的成長に向けた経営資源の価値向上」のもと、その実現に取り組んでまいります。

なお、詳細につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。

 

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当企業グループの主な運転資金需要は、製品製造のための原材料費や労務費及び製造経費をはじめ、販売費及び一般管理費、新製品創出や事業領域拡大のための研究開発活動費などにあります。また、設備投資では、成長領域や事業拡大に合わせた生産設備投資によるグローバル供給体制の強化や、統合システム整備による事業や業績のグローバル一体管理を進めています。さらには、事業拡大を目的とした各種アライアンスや、人材・技術・事業などの戦略投資についても機動的に実施してまいります。

なお、これらの資金需要につきましては、主に手元資金や営業活動によるキャッシュ・フローから創出するとともに、必要に応じて、金融機関からの借入なども実施していきます。当連結会計年度においては、新型コロナウイルスの感染拡大と長期化に備え、新規借入を実施することで手元資金を厚くするとともに、短期から長期への借り換えも実施し、財務基盤の安定性をより一層高めております。有利子負債は、813億86百万円と増加しておりますが、一方で現預金も増加しております。また、国内では、キャッシュ・マネジメント・システムを導入しており、当企業グループの余剰資金を効率的に運用しております。

 

⑥ 経営者の問題認識と今後の方針について

今後の経済環境は、新型コロナウイルスの感染長期化を前提とする新しい生活様式への対応が進むなかで緩やかな回復が期待されます一方、引き続き経済活動が一定程度抑制されることによる減速懸念も高まりつつあります。また、当企業グループにおいても、原材料価格の上昇など、厳しい事業環境が続くものと予想されます。

このような厳しい事業環境ではありますが、長期構想の第二ステップである中期経営計画「SIC-Ⅱ」においては、新型コロナウイルスの影響により変わりつつある新たな社会ニーズに対して、真に必要とされる価値を提供し続けていく企業となるべく、その一年目となる次期は、「新たな時代に貢献する生活文化創造企業」を目指す姿として掲げ、事業別には「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりの活動を実行することで、長期構想の実現に向かって着実な成果を積み重ねてまいります。

なお、次期の目標とする年度計画指標としては、売上高2,700億円、営業利益140億円、経常利益140億円、親会社株主に帰属する当期純利益75億円となっております。

 

4 【経営上の重要な契約等】

当社は、2020年9月11日開催の取締役会において、ポリマー・塗加工関連事業の再編を実施することを決議しております。これに伴い、当社は、100%子会社であるトーヨーケム株式会社と同じく100%子会社である東洋アドレ株式会社の合併を2021年1月1日付で実施しております。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」の(重要な後発事象)をご参照ください。

 

5 【研究開発活動】

当企業グループは、創業200周年を見据え、10年後のありたい姿を新たな長期構想として掲げ、持続的な成長を実現する企業活動のコンセプト「Scientific Innovation Chain 2027(SIC27)」を設定し、それに向けた中期経営計画「SIC-Ⅰ」を2018年度より展開しています。すべての生活者・生命・地球環境がいきいきと共生する世界に貢献する企業グループを目指し、研究開発においては、サイエンス領域を広げて新技術を獲得し、新たな価値を創造し、お客様とともに成長、発展すべく積極的に活動を進めております。

当企業グループの目指す事業ドメインは①サスティナブルサイエンスドメイン、②コミュニケーションサイエンスドメイン、③ライフサイエンスドメインであり、「SIC-Ⅰ」の最終年度となる2020年度は、それらのドメインを細分化した11の領域からパッケージ、メディカル、モビリティ、IoT、エネルギー、天然材料の6分野に注力し、それぞれの領域で戦略的に技術開発し、イノベーションの連鎖を起こすべく、日々取り組んでまいりました。

当企業グループにおける研究開発は、当社のグループテクノロジーセンター(イノベーションラボ、マテリアルサイエンスラボ、ポリマーデザインラボ、解析技術ラボ)、生産・物流センター(プロセスイノベーションラボ)及び国内外の各連結子会社の技術部門により、5G化による人々の豊かな暮らしを支える機能性製品開発や、新たな社会ニーズである抗菌・抗ウイルス性製品といったWithコロナを意識した新製品開発など、新たな価値の創造に向けた研究開発活動を推進しております。

 

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、8,112百万円であり、各セグメント別の研究目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は、次のとおりです。

 

(1) 色材・機能材関連事業

当事業では、コア技術である有機合成技術と精密分散技術を融合し、市場のニーズに合った独自の新素材、機能性分散体の製品開発を続けております。

顔料及び顔料分散体事業関連では、主にデジタル印刷市場への展開を進めるために、独自の顔料表面処理及び分散技術を活用した高鮮明で分散安定性に優れた新規の色材を開発し、その製造プロセスに対応した生産設備の導入も完了しました。また、難分散素材のカーボンナノチューブを高度に分散することで、これまでにない漆黒性の発現が可能となり、「ZENBLACK®」として市場へ提案し評価が進んでおります。

メディア事業関連では、顔料粒子制御と分散技術をベースにしたTV、モバイル用カラーフィルター材料が中国、台湾市場で伸長しました。さらに、独自開発した色材による拡販を目指しております。また、センサー用途においては、可視域から赤外域にかけて各種色材をラインナップし、画像センサーだけでなく、様々な用途への提案を始めております。

着色事業関連では、合成技術と分散技術を融合し光波長制御機能を持つ新素材を開発し、フィルム包装容器分野へ機能性製品の展開を進めております。また、近年、プラスチックによる海洋汚染問題が深刻化している中、様々な規制に対応するべく環境対応製品の開発に注力し環境負荷低減に積極的に取り組んでおります。

機能材料事業関連では、カーボンナノチューブを用いたリチウムイオン電池用の分散体製品を日本、中国、米国、欧州から供給できる体制の礎を整えました。また、電子材料向け金属分散体の開発にも成功するなど、これら特殊無機材料、金属材料の精密分散技術を応用した新たな製品を川下分野に展開し、成長市場での実績拡大を図っていきます。

当事業に係わる研究開発費は、2,912百万円です。

 

(2) ポリマー・塗加工関連事業

当事業では、重点市場を①包装・工業材市場、②エレクトロニクス市場、③メディカル・ヘルスケア市場と位置づけ、その事業の礎となるポリマー・サイエンス・テクノロジープラットフォームの拡充に取り組み、高付加価値製品や環境調和製品の開発を続けております。

包装・工業材市場向けについては、粘着剤では、環境調和型製品(ハイソリッド粘着剤、バイオマス粘着剤、生分解粘着剤)の開発が進み、一部外部発表を行い国内外のお客様から多くの引き合いを頂きました。ラミネート接着剤も同様に、環境調和型製品(無溶剤接着剤、バイオマス接着剤、生分解接着剤、包材のリサイクル対応接着剤)の開発・拡販が進みました。粘接着剤分野では、トーヨーケム株式会社と東洋アドレ株式会社の合併を機に、グループ内の接着剤関連の技術を融合させながら開発をさらに強化してまいります。缶用塗料(フィニッシェス)では、環境調和型製品として、ビスフェノールAを意図的に含まないBPA-NI塗料製品群の開発を推進し、「LIONOVATM」ブランドを立ち上げました。さらに、歴史ある金属密着高加工塗料の技術を用いてEV用材料への展開を進めております。樹脂分野では、プラスチック削減に寄与する食品に直接接触可能な紙コート剤「FILLHARMO®」の拡販が進み、また国内外の規制に対応した新製品の開発も進みました。

エレクトロニクス市場向けについては、スマートフォン・タブレット向けは、高速通信対応の電磁波シールドフィルムの拡販と、これにあわせて低誘電率ポリマーの開発がさらに進みました。ディスプレイ向けには次期光学用粘着剤の開発が進展し、中国での採用が本格化しました。センサー関連では、介護関連で採用されたセンサーシート「Fichvita®」が順調に出荷されております。また、自動運転・無人店舗等のトライアルで蓄積された人の行動データをリアルタイムで確認するシステムを構築しており、今後のIoT社会で応用できるセンサーシステムとして開発してまいります。

メディカル・ヘルスケア市場向けについては、貼付型医薬品、検査薬用のシート製品、ヘルスケア用の粘着剤の開発を進めております。

当事業に係わる研究開発費は、2,308百万円です。

 

 

(3) パッケージ関連事業

当事業では、軟包装用のグラビア、フレキソインキを始め、建装材用グラビアインキ、機能性インキの開発とサービスの提供をグローバルに展開しております。また、マテリアルリサイクルの仕組みの構築に向けた開発にも力を入れています。

再生可能な植物由来原料を活用したバイオマスインキでは、ラミネート用、表刷り用及び紙用のグラビアインキだけでなく、処理ポリエチレン(PE)用、紙器用やシート段ボール用のフレキソインキなど製品ラインナップを拡大しております。特にフィルムラミネート用グラビアインキは大きく伸長し、二酸化炭素排出削減に貢献しております。

また、揮発性有機化合物排出削減や作業環境改善のソリューションとして、既存の印刷機でも水性化が可能なラミネート用のハイソリッド水性グラビアインキや水性フレキソインキを開発し、その実績化も国内外で進んでおります。

さらに、海洋プラスチックごみ問題の解決に向けて、伊藤忠商事株式会社とも協業して2022年までに世界初となる複層フィルム包材のマテリアルリサイクル実用化を目指してまいります。また、機能性インキ分野では、高耐久性建材用トップコート剤を開発し、高い評価を頂いております。

今後も、リサイクル技術、バイオマス製品を始め、各種の環境対応型製品の開発を通じて、お客様とともに持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献する製品とサービスを提供し、社会に貢献してまいります。

当事業に係わる研究開発費は、1,310百万円です。

 

(4) 印刷・情報関連事業

当事業では、枯渇性資源に依存しない持続可能な社会の実現に向けて、持続可能な開発目標(SDGs)に連動した製品群の開発・販売を積極的に行っております。

油性インキでは、再生植物油などリサイクル原料や米ぬか油などの植物由来の有機資源を独自の材料変性技術と組み合わせ、バイオマス度をさらに高めた製品群を拡充し、持続可能な社会に貢献するとともに、お客様の安心・安全、生産性向上、コスト削減に貢献する製品開発を継続して進めております。

UVインキにおいても、単に植物由来原料を使用するだけではなく、非可食原料やリサイクル原料を積極的に活用したシール・ラベル用途やカップ用途のバイオマス製品のラインナップを拡充させるとともに、更なる環境調和型インキの開発に注力しております。また、昨今の安心・安全・衛生に関する意識の高まりを背景に、印刷物へ衛生性を付与するUV硬化型抗菌ニスの開発・拡充も行っており、幅広い分野で高い評価を得ております。

インクジェットインキでは、食品包装用水性インキの実用化に加えて熱水耐性を付与した材料開発やパッケージ印刷に適した広演色インキの開発を進めております。また、UVインキでは飲料缶や鋼板など産業印刷分野への用途拡大を行っております。

当事業に係わる研究開発費は、1,572百万円です。

 

なお、上記の4つの事業に含まれない研究開発費は、8百万円であります。