文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当企業グループが判断したものであります。
当企業グループは、「人間尊重の経営」を経営哲学に掲げ、「世界にひろがる生活文化創造企業を目指す」ことを経営理念とし、「CS(顧客満足)、ES(社員満足)、SS(社会満足)、SHS(株主満足)を向上させる」ことを行動指針として、全ての企業活動を進めています。
時代を超えてこれらの経営哲学や経営理念、行動指針は不変のものとし継続しながらも、時代に応じて読み替えながら進化させることで、創業200周年に向け持続的な成長を目指していきます。
具体的には、生活文化創造企業として貢献する対象を、生活者だけでなく、生命や地球環境まで拡げ、これらの課題解決に取り組むことで、すべての対象がいきいきと共生する世界の実現に貢献してまいります。
また価値革新への追求や、リスクマネジメントの高度化も含めた、自らの持続的成長を可能にする企業体質への変革と、すべてのステークホルダーの持続に貢献する長期的な視点での満足度の向上に努めていきます。
当企業グループでは、持続的成長を可能にする企業体質へと変革する観点から、売上高や利益を重要な経営指標と位置付け、事業の拡大と企業価値の向上に努めてまいります。
当企業グループでは10年単位の長期構想を掲げており、次なるターゲットである2027年に向けて提供していく価値を「For a Vibrant World」と定め、「100年レンジでの持続的成長が可能な企業体質に変革し、すべての生活者・生命・地球環境がいきいきと共生する世界に貢献する企業グループ」を目指し、2018年度から3回の中期経営計画を進めています。2021年度からは第二ステップの中期経営計画である「SIC(Scientific Innovation Chain)-Ⅱ」(2021年度~2023年度)を推進し、変わりつつある新たな社会ニーズに対して、真に必要とされる価値を提供し続けていく企業となるべく、「新たな時代に貢献する生活文化創造企業」を目指す姿として掲げ、3つの基本方針「事業の収益力強化」「重点開発領域の創出と拡大」「持続的成長に向けた経営資源の価値向上」のもと、その実現に取り組んでいます。
「事業の収益力強化」では、高付加価値品へのシフトを通じて戦略的な高収益事業群を増加させるとともに、構造的な課題を抱える事業に関しては大胆な施策を講じていきます。今後も成長が見込まれるグローバルのパッケージ市場に向けた環境調和型製品の投入や、エレクトロニクス関連素材の拡販、また貼付型医薬品の開発促進やリチウムイオン電池材料ビジネスの立上げにより新たな収益の柱を育成する一方で、商業印刷向けインキ事業や顔料事業では市場構造変化に応じた改革を継続し収益体質を強化していきます。
「重点開発領域の創出と拡大」については、withコロナ/afterコロナの社会で真に必要とされるニーズを捉え自社の強みと競争優位に基づく価値提供モデルを設計していきます。3つの注力領域のうち「サステナブル・サイエンス」では、バイオマスインキや環境対応型粘接着剤、次世代エネルギー向け素材を提供し持続可能でグリーンな社会の実現に貢献します。「コミュニケーション・サイエンス」では、センサー・ディスプレイ・IoTデバイス関連材料など社会のデジタル化の基盤となるキー素材とソリューションを展開していきます。「ライフ・サイエンス」では、医薬品・ヘルスケア素材・次世代印刷分野の製品を通じて人々の生活を豊か・健やかにする事業の創出へ挑戦いたします。
「持続的成長に向けた経営資源の価値向上」については、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進やESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組み強化により企業体質を改善し、企業インフラである経営資源の価値向上に努めていきます。
中期経営計画「SIC-Ⅱ」の2年目である次期連結会計年度では、各事業を以下の通り推進していきます。
色材・機能材関連事業では、液晶ディスプレイカラーフィルター用材料で中国市場での更なるシェア拡大のために現地企業とのアライアンスやコストダウン施策に取り組みます。また、車載用リチウムイオン電池材料につきましては、北米及び欧州製造拠点の確実な軌道化を進めるとともに自動車4大市場(欧州・米国・中国・日本)での採用拡大を図ります。
ポリマー・塗加工関連事業では、粘着剤及び接着剤事業の高付加価値製品へのシフトと各国拠点の新製造設備の確実な軌道化で収益を向上させるとともに、5Gや光学などの市場に向けた新たな製品やソリューションを提案していきます。また年々高まるサステナビリティニーズに応え、無溶剤やバイオマス、生分解など環境調和型製品群の開発・展開を進めます。
パッケージ関連事業では、高バイオマスインキや水性印刷ソリューション、脱プラスチック関連材料など環境対応トレンドに応じた製品展開を一層加速させるとともに、海外では中国及びインドでの新工場安定稼働と収益貢献、トルコ新工場の早期立ち上げ、東南アジア及びインドでのシェア拡大に向けた戦略製品群の拡販に取り組んでまいります。
印刷・情報関連事業では、国内外での構造改革とSCM改善による事業体質強化に継続して取り組むことに加え、環境対応UVインキをラベル・容器市場へ投入し競争優位性を確立していきます。
これらに加え、サステナビリティビジョン「TSV2050/2030」に基づき、モノづくりと製品提供を通じた環境負荷低減に貢献していきますほか、東京工業大学との協働研究拠点を設置し、最先端の科学技術分野における共同研究により革新的なテクノロジーを生み出していきます。また、定時株主総会の承認を経て監査等委員会設置会社に移行することにより、取締役会の監督機能を強化するとともに、意思決定と業務執行の迅速化を図り、更なるコーポレートガバナンスの充実と企業価値向上を目指していきます。
当社は、リスク担当役員(サステナビリティ委員会リスクマネジメント部会長)のもと、リスクマネジメント部会がグループ全体のリスクを網羅的・総括的に管理しております。また、当企業グループの各社・各部門では、日常業務に潜むリスクを洗い出して評価・検討し、対策を実施しております。
リスクマネジメント部会では、各社・各部門のリスクを発生頻度と重大性に基づき評価したリスクマップを作成して全社で共有しております。重大リスクについては取締役会に報告するとともに、リスク低減のための活動の進捗と達成度を部会で確認しております。新たに重大リスクとなりうる問題が発生した場合は、緊急対策本部を設置し対応を図ってまいります。
上記リスクマネジメント活動を通じて経営者が当企業グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限定されるものではありません。
①色材・機能材関連事業
当企業グループにとって、有機顔料の合成技術は原点の一つです。また、インキや塗料の製造で培われた分散技術は、着色するという用途を大きく越え、液晶ディスプレイカラーフィルター用材料やカーボンナノチューブを応用した新たな分散体の開発などにも展開しております。
顔料事業においては、国内印刷市場のデジタル化に伴う構造的不況のなか、印刷インキ用顔料の需要が大きく縮小するリスクがあり、売上高及び利益の低下を招く可能性があります。そのため、成長性の高い食品包装用途への展開を図ることにより事業リスク低減に努めてまいります。着色事業においては、廃プラスチック問題など環境意識の高まりに伴う需要減少のリスクがありますが、生分解樹脂用の着色剤といった環境調和型製品の開発、あるいは電気自動車や自動運転をターゲットとした製品群の展開によって持続可能な社会に貢献するとともに、事業リスク低減に取り組んでまいります。
②ポリマー・塗加工関連事業
当企業グループでは、ポリマー・塗加工の技術を活かし、パッケージ、自動車、エレクトロニクス、エネルギー、メディカル・ヘルスケアなどの分野に展開しております。
当事業の原材料の多くは石油由来であり、環境保全を目的とした各国の規制や社会要請などにより使用の制約を受け、売上高等が変動する可能性があります。社会生活に必要な最終製品の材料供給者としての責任を果たすべく、現行品の機能を確保する環境調和型製品の開発と代替を進めてまいります。
エレクトロニクス市場向け材料については、スマートフォンのように、毎年、最終製品の仕様が変わるなか、その採用可否により売上高や利益が変動する可能性があります。品質・コスト面などの優位性を高めることでの採用確度の向上や、使用先の拡大などにより、リスク低減に努めます。
メディカル・ヘルスケア市場向け材料については、研究開発に相応の時間と費用を必要とし、上市までの過程で、研究開発の遅れや変更又は中止となる可能性があります。また、医薬行政の動向を受けた関連法規の改変や公定価格の変動が、売上高や利益に影響を及ぼす可能性があります。開発のパイプラインを増やすとともに、ヘルスケア粘着剤や医療機器の周辺材料など事業の裾野を拡げてリスク分散に取り組んでまいります。
③パッケージ関連事業
当企業グループでは、パッケージの製造工程において多様な高機能製品を提供しております。特に安心・安全が求められる食品包装の分野では、インキや接着剤の水性化、無溶剤化などを進めております。また、持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向け、バイオマス製品の開発も積極的に行っております。
パッケージ関連事業においては、廃プラスチック問題など環境意識の高まりによって、フィルム用インキや接着剤の消費需要が落ち込み、売上高及び利益の低下を招く可能性があります。市場や環境の変化をチャンスと捉え、新たな製品開発を強化し、リスク分散に取り組んでまいります。
④印刷・情報関連事業
当企業グループでは、原材料の顔料や樹脂から最終製品までを一貫生産できる強みを活かし、環境調和型製品や高機能のUVインキなど多様な製品を開発するとともに、お客様の印刷工程でのソリューション提供にも取り組んでおります。
印刷・情報関連事業においては、デジタル化に伴う情報系印刷市場の縮小により、想定以上に売上高及び利益の低下の進展が早まり、また、印刷市場を取り巻く変化に伴う顧客や取引先の経営状況によっては、売掛債権の回収に影響を及ぼすリスクがあります。そのため、経済情勢の変化や信用不安の兆候を早期に把握できるよう情報収集と与信管理を徹底してまいります。経営資源を成長分野に弾力的にシフトするとともに、事業効率を徹底的に高め、市場環境への適合を進めてまいります。
①海外活動に潜在するリスク
当企業グループは、海外においても生産及び販売活動を行っており、今後伸長が見込まれる事業分野において、海外事業の深耕を行っていく方針です 。これらの海外事業には以下のようなリスクが内在しております。
・予期しえない法律・規制・不利な影響を及ぼす租税制度の変更
・社会的共通資本が未整備なことによる当企業グループの活動への悪影響
・不利な政治的要因の発生
・テロ、戦争、伝染病などによる社会的混乱
・予期しえない労働環境の急激な変化
・海外の重要取引先や現地パートナーを取り巻く環境の変化
これらの事象の発生可能性や影響等を合理的に予測することは困難でありますが、当企業グループの経営成績及び財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。しかしながら、当企業グループにおいては、各国の経済動向やその他リスクの影響を受けづらい収益構造とするために、世界各国における事業展開の促進や事業分野のバランスの向上、リスクに対して柔軟に対応できるSCM(サプライチェーンマネジメント)の構築、固定費や原材料費等の変動費の削減を行い、そのリスクを最小化するための対策に努めております。
②情報漏洩、滅失、毀損に関するリスク
当企業グループでは、事業を展開する上で、当企業グループ及び取引先の機密情報や個人情報などの秘密情報を保持しております。その多くは電子情報として保持・利用されておりますが、テレワークが拡大するビジネス環境のもと、インターネットを通じたコンピュータウイルスやセキュリティ侵害による情報漏洩、滅失又は毀損のリスクは増大する傾向にあります。当企業グループとしては、情報システム面で万全の対策を講じるとともに、情報セキュリティオフィスを設置し、情報管理強化と社員教育を通じてリスク低減に努めております。万一不測の事態により情報漏洩、滅失又は毀損が発生した場合は、社会的信頼の失墜、秘密保持契約違反、ノウハウの流出又は逸失による競争力の低下などにより、当企業グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
③品質・製造物責任に関するリスク
当企業グループでは、品質保証体制の強化を図っておりますが、製品の品質に起因する事故、あるいはクレームにより当企業グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社が支払う損害賠償金が製造物責任賠償保険で全額補償される保証はありません。
当企業グループでは、引き続き、品質や安全に関する法的規制の遵守に努めるとともに、製品の性能向上やお客様の安心・安全に貢献する製品開発を継続して進めることで更なる満足度向上と信頼を得ることにより、リスク低減に取り組んでまいります。
④自然災害・疫病等に関するリスク
当企業グループでは、新型コロナウイルスの感染拡大と長期化により、世界的な消費活動の停滞に伴う販売の伸び悩みに加え、原料の調達や生産活動への支障が発生しました。新型コロナウイルスの感染拡大が更に長期化することにより、当企業グループ製商品の需要が一層落ち込むほか、予想を上回る規模での原料の調達困難、事業所の操業停止、従業員の出勤不能、物流機能の停滞等に至った場合は、当企業グループの経営成績及び財政状態等に更なる影響を及ぼす可能性があります。なお、当企業グループでは、関係者の安全と事業継続のため、社員向け新型コロナウイルス対策ハンドブックの作成と周知をした上で、下記施策等を実施中です。
・検温、マスク着用、手洗い、消毒
・時差出勤、在宅勤務、WEB会議システムの活用
・社員及びその同居家族に感染が疑われる場合の管理者及び対応部門に対する迅速な状況報告と感染の有無
や症状に応じた出勤制限
・新型コロナウイルスワクチン職域接種
近年、大規模地震や大雨等の自然災害や国内外における感染症の大流行(パンデミック)等に関するリスクは高まりつつあり、予想を上回る被害の拡大や長期化が進みますと、建物や生産設備等をはじめとする資産の毀損、従業員の出勤不能、電力・水道の使用制限、原材料の調達困難、物流機能の停滞等により供給能力が低下し当企業グループの経営成績及び財政状態等に甚大な悪影響を及ぼす可能性があります。これらの不可避的な事業中断リスクを想定し、リスクに応じた緊急行動マニュアルの策定や定期的な実地訓練等による事業継続体制の整備に努めております。
⑤原料調達に関するリスク
当企業グループの製品の主原料は石油化学製品であり、仕入価格及び調達状況は、原油・ナフサなどの市況変動、天災、事故、政策などに影響を受けます。特に当連結会計年度においては、昨年来の新型コロナウイルスの感染拡大と、米国での寒波による工場停止、各国大手メーカーで発生したプラント事故、中国のエネルギー規制強化、グローバルでの物流混乱、需要急回復による供給不足などにより、多くの原料で入手困難と価格高騰のリスクが発生しました。仕入価格の上昇につきましては、当企業グループの製品が使用される消費財は、市況価格及び供給責任の面からも、販売価格への転嫁には時間を要するため、当企業グループの売上高及び利益の低下を招く可能性があります。また、原料が入手困難となるリスクにつきましては、顧客への製品供給不履行による損害賠償が発生し、その賠償金額によっては経営成績及び財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクを回避すべく、市況価格の予測や需要予測の精度をあげて原料調達に反映させ、最適な価格での購入を進めるとともに、市況及び顧客の需要に基づいた生産計画のもと、原料の特性に応じた在庫確保などによる製品の安定供給のための原料調達を進めております。また、日頃より原料購入先の情報を幅広く収集し、特定の企業、国に偏ることなく、原料調達を進めることで、当企業グループの業績に与える影響を緩和することに努めております。
⑥為替の変動に関するリスク
当企業グループは世界各国で事業を展開しており、海外連結子会社の財務諸表項目は連結財務諸表作成のために円換算されますが、急激な為替変動によって当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、輸出入等の外貨建て取引においても、同様の可能性があります。このため、当企業グループは、為替予約や外貨建て債権債務のバランス化等によって、為替相場変動リスクの抑制に努めております。
⑦一般的な法的規制に関するリスク
当企業グループは、事業活動に関わる一般的な法的規制の適用を、事業展開する内外各国において受けております。これらの遵守のためサステナビリティ委員会の傘下に専門部会であるESG推進部会、コンプライアンス部会、リスクマネジメント部会を設置・運用し、事業活動に関わる法的規制を調査、抽出するとともに、適法・適正な事業活動を確保するため、製造・販売・研究開発の各活動領域における業務プロセスの検証や見直し、社内規程の整備、関係者への教育などの必要な施策を展開しています。また、財務報告の適正性確保のための内部統制システムの整備と運用の確保に努めております。
しかしながら、国内及び海外事業に関連して、環境問題や製造物責任、特許侵害を始めとする当企業グループの事業に重大な影響を及ぼす訴訟紛争、その他の法律的手続きが今後発生しないという保証は無く、万一訴訟等が提起された場合、その争訟金額等によっては当企業グループの経営成績及び財政状態等に場合によっては甚大な影響を及ぼす可能性があります。
⑧環境負荷発生のリスク
当企業グループは化学品製造業を主な事業としており、原材料及び製品として各種の化学物質を扱っております。これらの化学物質が環境に及ぼす影響度を確認し環境負荷低減に積極的に取り組んでおります。当企業グループはサステナビリティ委員会を設置しSDGsの推進を意識するとともに、自社拠点だけでなくサプライチェーン全体における環境負荷低減に取り組んでまいります。当企業グループは製造の過程で発生する廃棄物や排水、騒音・振動、土壌汚染、CO2排出などについても国内外の様々な環境法令を遵守し活動を行っておりますが、近年は、これらの化学物質関係法令や環境法令は国内外において規制が強化されたり、基準がより厳しくなる傾向にあり、設備投資や管理のためのコストが発生する可能性があります。また、社会的要請としても脱プラスチック、カーボンニュートラルなどが求められており、環境負荷の少ない原材料の選択・調達、製造工程におけるエネルギー使用量の低減(省エネルギー)、製品による環境への貢献を拡大していく必要があり、追加的な投資(コスト)の発生、生産プロセスの改善、又は事業形態の変更などの必要が生じる可能性があり、当企業グループの経営成績・財務状況に悪影響を及ぼす可能性がありますが、これらリスクに対して、適切に対処し、積極的な開示を行うことで長期的には社会的信頼が高まり優位性を得る可能性もあります。当企業グループとしては、長期の経営計画の中で製造工程の見直しによる使用エネルギーやCO2の排出削減、化学物質の管理強化やシステム化、製品の脱VOC(揮発性有機化合物)化、マテリアルリサイクル化など様々な施策に取り組んでおります。
⑨気候変動に関するリスク
世界的なGHG(温室効果ガス)排出増大に起因する地球温暖化がもたらす急性的あるいは慢性的な気候変動、及びそれに対して各国や地域行政が講じる政策・施策は、市場環境や原材料の調達、消費者の志向などに大きな影響を与え、当企業グループの事業の継続や業績に悪影響を及ぼす可能性が高いと認識しております。当企業グループは、このような気候変動の可能性に対して適切な対応を図り、経営計画や事業計画に反映させていくため、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に準拠した対応活動を推進し、投資家に向けた適切な情報開示を実施すべく、気候変動に対応する体制を構築し、取り組みを行っております。具体的な組織体制として、当企業グループのコーポレート・ガバナンス体制における従来のCSR統括委員会をサステナビリティ委員会と改称し、その下部組織としてESG推進部会を新設いたしました。
当企業グループにおける全社的な気候変動対応活動の推進、施策の立案と経営・事業主体に向けた提言、グループ社員に向けた啓発と情報提供、そして、投資家をはじめとする社外ステークホルダーに向けた情報開示を遂行する体制を構築しております。
⑩一般的な債権回収に関するリスク
当企業グループは、国内外のさまざまな業界の多数の顧客に製品を納入しておりますが、顧客の経営状況によっては、これらに対する売上債権等を回収することができないこともあり得ます。現有債権につきましては回収不能見込額を既に引当金として計上しておりますが、予想を上回る回収不能が発生した場合には、当企業グループの経営成績及び財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、与信情報等を参考に、営業現場からの定性的情報も加味することで、顧客の与信リスクを定期的に見直し、それに応じた債権保全策を実施するなど与信管理の強化に努めてまいります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当企業グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が徐々に緩和されつつあるものの、変異株の影響もあり、先行きが依然として不透明な状況にあります。また、当企業グループの事業環境におきましては、原材料の供給面での制約や価格高騰の継続により企業活動に大きな影響がありました。
このような厳しい環境ではありましたが、当企業グループは次の3つを経営方針として掲げ、経営活動を行ってまいりました。
第一の方針である「事業の収益力強化」について、液晶ディスプレイカラーフィルター用材料では好調な市場需要を背景に中国や台湾市場での拡販を進めるとともに、パッケージ向けのリキッドインキ及び接着剤をアジア市場中心に拡大しました。海外拠点での生産能力向上として、中国に建設した新工場の稼働を開始しましたことに加え、米国やインドでも粘着剤の新製造設備を立ち上げました。また競争力強化のための事業再編として、ポリマー・塗加工関連事業ではトーヨーケム株式会社と東洋アドレ株式会社を合併することでグループ内の粘接着関連技術を融合し、色材・機能材関連事業ではトーヨーカラー株式会社でインクジェットインキ事業の顔料合成からインキまでの一貫開発体制を構築しました。一方、欧州及び東南アジアでのプラスチック用着色剤事業の不採算拠点撤退や、国内で印刷・情報関連事業の構造改革などにも取り組み収益基盤の改善も図りました。
第二の方針である「重点開発領域の創出と拡大」については3つの注力領域を掲げており、「サステナビリティ・サイエンス」では世界的な電気自動車の普及を見据え自動車4大市場(欧州・米国・中国・日本)に向けた車載用リチウムイオン電池材料の供給体制構築が進み、北米及び欧州拠点でも生産を開始しました。また、再生可能な植物由来原料を用いたバイオマスインキや水性インキなどの環境対応製品の開発も進めました。「コミュニケーション・サイエンス」では、5G通信向け機能性フィルムの開発・販売を好調に進めましたうえ、自動運転のキー技術となるミリ波レーダー向けの電波吸収コンパウンドなど次世代ニーズに向けた新製品の開発を行いました。「ライフ・サイエンス」では、高透湿粘着剤や低皮膚刺激性粘着剤などヘルスケア向けのポリマー製品を展開しましたほか、貼付型医薬品事業拡大のため医薬品新工場を着工しました。またこれらの重点領域における中期的な開発を加速するため中核事業会社に新たな研究所体制を構築しました。
第三の方針である「持続的成長に向けた経営資源の価値向上」については、DX(デジタルトランスフォーメーション)を引き続き推進し、特にデジタルマーケティング、M.I.(マテリアルズ・インフォマティクス)、スマートファクトリー化などの施策に注力しました。またESG(環境・社会・ガバナンス)に対する社会的要請の高まりに応えるべく、持続可能な社会の実現に向けたサステナビリティビジョン「TSV2050/2030」を策定し、定量的な環境負荷低減KPIも設定しましたことに加え、社外取締役の増員、役員報酬の業績連動性を高めることなどにより企業ガバナンスを強化しました。これらESG関連を含めたあらゆる企業活動について全てのステークホルダーへ適切に開示を行うため統合報告書の発行を開始しました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は2,879億89百万円(前期比11.8%増)、営業利益は130億5百万円(前期比0.7%増)と増収増益となりました。また、経常利益は154億42百万円(前期比23.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は94億92百万円(前期比57.7%増)と、それぞれ増益になりました。
セグメントごとの経営成績につきましては、次のとおりです。
なお、当連結会計年度より、一部事業について、報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は、変更後の区分に基づいております。
高機能顔料や液晶ディスプレイカラーフィルター用材料は、外出自粛に伴いテレビやタブレット、パソコン用のディスプレイ向けに需要が好調でしたうえ、台湾や中国での拡販も進みました。
汎用顔料は、リキッドインキ用は堅調に推移しましたが、情報系印刷インキ用は低調が続いたことに加え、原材料価格高騰の影響も受けました。インクジェットインキは、中国や欧米など海外を中心にデジタル印刷需要が堅調に推移しました。
プラスチック用着色剤は、日用品や容器向けが好調でしたほか、欧州や東南アジアの不採算拠点からの撤退により採算改善が進みました。また、原材料価格の上昇を受けて販売価格の改定も進めさせていただいております。
車載用リチウムイオン電池材料は、米国の拠点を立ち上げ、現地生産を開始しました。
これらの結果、当事業全体の売上高は749億95百万円(前期比15.3%増)、営業利益は53億91百万円(前期比138.6%増)と、増収増益になりました。
b. ポリマー・塗加工関連事業
塗工材料は、スマートフォン向けに導電性接着シートや電磁波シールドフィルムが拡大したうえ、液晶パネルや自動車向けの耐熱微粘着フィルムも好調に推移しました。
接着剤は、スナックやペットフード向けなど包装用が堅調に推移し、粘着剤もラベル用や偏光板用が国内外で伸長しました。一方で、世界的な原材料の調達難や急激な価格高騰が継続しており、コスト削減や販売価格の改定を進めさせていただいているものの、利益は大きく圧迫されました。
缶用塗料は、国内では巣ごもり需要の取り込みや新製品の拡販により、飲料缶用が堅調に推移し、海外でも中国やタイで需要が回復したものの、原材料価格高騰の影響を受けました。
これらの結果、当事業全体の売上高は707億36百万円(前期比13.5%増)と増収になりましたが、営業利益は35億70百万円(前期比39.9%減)と、減益になりました。
リキッドインキは、国内では、外出自粛に伴いお土産や衣料品の紙袋向けが低調でしたが、冷食や麺類等の家庭用食品向けが堅調に推移しましたうえ拡販も進み、建装材用も需要が回復しました。海外でも、東南アジアでの食品包装用の需要が堅調でしたうえ、中国やインド、中東でも好調に推移しました。一方、世界的な原材料の調達難や価格高騰が継続しており、販売価格の改定を進めさせていただいておりますが、利益面で大きく影響を受けました。
グラビアのシリンダー製版事業は、エレクトロニクス関連の精密製版が堅調で、軟包装や紙器関連の包装用も回復しました。
これらの結果、当事業全体の売上高は736億45百万円(前期比10.6%増)と増収になりましたが、営業利益は18億13百万円(前期比53.3%減)と減益になりました。
情報系印刷市場の構造的な縮小が、新型コロナウイルスの感染拡大と長期化、経済活動の制限でさらに進み、国内ではチラシや広告、出版向けが低調でしたが、同業他社との協業やコストダウン、原材料価格上昇に対する販売価格への一部転嫁など、事業体質の改善が進みました。
海外では、中国やインドで需要が回復しましたほか、食品や医療品などの紙器向けが堅調に推移しました。また需要に合わせて、グローバルでの供給体制最適化や、各拠点の事業体制再構築にも取り組みました。
これらの結果、当事業全体の売上高は666億95百万円(前期比7.2%増)、営業利益は17億30百万円(前期比189.4%増)と増収増益になりました。
上記のセグメントに含まれない事業や、東洋インキSCホールディングスなどによる役務提供などを対象にしています。売上高は57億46百万円(前期比7.7%減)と減収になりましたが、営業利益は5億31百万円(前期比126.2%増)と増益になりました。
財政状態につきましては、次のとおりです。
当連結会計年度末における総資産は4,068億96百万円で、前連結会計年度末より266億68百万円増加しました。負債は1,799億48百万円で、前連結会計年度末より170億46百万円増加しました。純資産は2,269億47百万円で、前連結会計年度末より96億22百万円増加しました。
当連結会計年度末日の為替レートが前連結会計年度末日の為替レートに比べ、円安外貨高に振れたため、海外子会社で保有する資産及び負債、為替換算調整勘定が増加しました。また、原材料価格の上昇に伴い、たな卸資産や支払手形及び買掛金が増加しました。さらに、日本国内の株価上昇を反映し、投資有価証券、繰延税金負債、その他有価証券評価差額金が増加しました。一方、有形固定資産の取得、自己株式の取得、配当金の支払いに伴う支出により、現金及び預金は減少しました。なお、返済期限の1年以内到来に伴い、短期借入金が増加し、長期借入金は減少しました。
当連結会計年度の現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)の期末残高は、前期末残高より121億68百万円減少し、609億49百万円となりました。
営業活動により得られた資金は157億60百万円(前連結会計年度比9億82百万円減)となりました。税金等調整前当期純利益計上による資金の増加や法人税等の支払いによる資金の減少などがありました。
投資活動により使用した資金は175億76百万円(前連結会計年度比42億81百万円増)となりました。有形固定資産の取得などに伴う支出などによるものです。
財務活動により使用した資金は119億88百万円(前連結会計年度は162億21百万円の収入)となりました。短期借入金の純減、自己株式の取得、配当金の支払いによる資金の減少などがありました。
③ 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 生産金額は製造原価によっており、消費税等は含まれておりません。
当企業グループにおける受注生産は極めて少なく、大部分が計画生産のため、記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 上記の金額は、連結会社間の内部売上高を除いております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合につきましては、販売実績の総販売実績に対する割合が10%以上の相手先が存在しないため、記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当企業グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当企業グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されていますが、その作成には経営者による会計方針の選択・適用と、資産・負債及び収益・費用の報告金額に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りにあたっては過去の実績等を勘案し合理的な判断を行っていますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性がありますため、これらの見積りと異なる場合があります。
当企業グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営成績の分析
当連結会計年度の売上高は、前期比303億13百万円(11.8%)増の2,879億89百万円(期初計画 2,700億円、2021年8月6日公表修正計画 2,800億円)となりました。その内容は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しており、新型コロナウイルス感染症による厳しい経済環境が海外を中心に徐々に緩和されつつあるなか、液晶ディスプレイカラーフィルター用材料やエレクトロニクス関連材料が好調に推移したことに加え、為替変動に伴う海外子会社の円換算額の増加もあり、増収となりました。
営業利益は、前期比96百万円(0.7%)増の130億5百万円(期初計画 140億円、修正計画 145億円)となりました。ナフサ価格の上昇や世界的な供給不足に伴う原材料価格の急激な高騰の影響が大きく、価格改定やコストダウンの施策を実施するも前期並みの利益に留まりました。
経常利益は、為替差益が大きく発生しましたため、前期比28億98百万円(23.1%)増の154億42百万円(期初計画 140億円、修正計画 150億円)となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、生産機能や研究機能の構造改善に伴う損失が発生したものの、経常利益の増加に加え、保有資産の見直しによる利益も発生しましたため前期比34億72百万円(57.7%)増の94億92百万円(期初計画 75億円、修正計画 85億円)となりました。
なお、セグメント別の経営成績については「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。
b. 財政状態の分析
財政状態の分析については「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであり、セグメント別の財政状態は、成長事業や地域への積極的な設備投資などにより、以下となりました。
色材・機能材関連事業の資産1,149億29百万円(前期末より47億2百万円増加)。
ポリマー・塗加工関連事業の資産1,009億62百万円(前期末より117億47百万円増加)。
パッケージ関連事業の資産906億94百万円(前期末より45億32百万円増加)。
印刷・情報関連事業の資産915億2百万円(前期末より58億14百万円増加)。
その他の事業の資産88億8百万円(前期末より1億27百万円減少)。
c. キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析については「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであり、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、成長を促進させる設備投資の実施や、機動的な資本政策の遂行を可能とする自己株式の取得などにより、609億49百万円と前期末より減少しております。今後とも、手元資金を確保しつつも将来の成長に向けた資金運用に努めてまいります。
当企業グループが提供する製品の市場は多岐に渡っておりますが、一般的な消費動向や、石油化学系原料の仕入価格、為替レートなどは、当企業グループの経営成績に大きく影響を与える要因になっております。
当連結会計年度では、世界経済の回復に伴う原材料の供給不足や、原材料製造元の事故等による操業停止及び供給制限があり、企業活動に大きな影響がありました。また、ナフサ価格の高騰や、世界的環境規制の強化が継続しており、原材料価格が高止まりしております。この厳しい事業環境のなか、製品の供給責任を優先したうえで、グループ会社間のグローバル規模での生産協力や、生産や物流の効率化、原材料の代替対応などの対策を講じてまいりました。
その他、海外活動や災害への対応など、当企業グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクについては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりですが、これらの発生を抑制する活動を、サステナビリティ統括委員会傘下のリスクマネジメント部会を中心に、引き続き積極的に推進していきます。
当企業グループは、「人間尊重の経営」を経営哲学に掲げ、「世界にひろがる生活文化創造企業を目指す」ことを経営理念とし、「CS(顧客満足)、ES(社員満足)、SS(社会満足)、SHS(株主満足)を向上させる」ことを行動指針として、全ての企業活動を進めています。
また、長期構想「Scientific Innovation Chain 2027 (SIC27)」では、次なるターゲットである2027年に向けて提供していく価値を「For a Vibrant World」と定め、すべての生活者・生命・地球環境がいきいきと共生する世界に貢献する企業グループを目指し、2018年度から3回の中期経営計画を進めています。これに伴いドメインについても、これまでの枠組みを戦略的に拡大し、成長市場のみならず、社会課題の解決や、生命や地球環境の持続成長可能性に繋がる領域にも注力しています。
2021年度からは第二ステップの中期経営計画である「SIC-Ⅱ」(2021年度~2023年度)を推進し、変わりつつある新たな社会ニーズに対して、真に必要とされる価値を提供し続けていく企業となるべく、「新たな時代に貢献する生活文化創造企業」を目指す姿として掲げ、3つの基本方針「事業の収益力強化」「重点開発領域の創出と拡大」「持続的成長に向けた経営資源の価値向上」のもと、その実現に取り組んでいます。本中期経営計画期間の初年度となる当連結会計年度におきましては、原材料の供給面での制約や価格高騰の継続により企業活動に大きく影響を受けましたが、3つの方針に基づく事業活動を着実に進めてまいりました。
次期につきましても、原材料の供給面での制約や物流の混乱、価格高騰の継続など、厳しい事業環境が続くものと予想されますが、事業別には「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりの活動を実行することで、長期構想の実現に向かって着実な成果を積み重ねてまいります。
なお、次期の目標とする年度計画指標としては、売上高2,950億円、営業利益145億円、経常利益150億円、親会社株主に帰属する当期純利益100億円となっております。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当企業グループの主な運転資金需要は、製品製造のための原材料費や労務費及び製造経費をはじめ、販売費及び一般管理費、新製品創出や事業領域拡大のための研究開発活動費などにあります。また、設備投資では、成長領域や事業拡大に合わせた生産設備投資によるグローバル供給体制の強化や、統合システム整備による事業や業績のグローバル一体管理を進めています。さらには、事業拡大を目的とした各種アライアンスや、人材・技術・事業などの戦略投資についても機動的に実施してまいります。
なお、これらの資金需要につきましては、主に手元資金や営業活動によるキャッシュ・フローから創出するとともに、必要に応じて、金融機関からの借入なども実施してまいります。当連結会計年度の有利子負債残高は、新型コロナウイルス感染症の長期化に備えた長期借入金の影響もあり、810億7百万円となっております。また、国内では、キャッシュ・マネジメント・システムを導入しており、当企業グループの余剰資金を効率的に運用しております。
当社は、2021年6月11日開催の取締役会において、当社の連結子会社であるマツイカガク株式会社との間で、当社を株式交換完全親会社、マツイカガク株式会社を株式交換完全子会社とする株式交換を行うことを決議するとともに、同日付で株式交換契約を締結しており、これに伴い、2021年7月26日付で株式交換を実施しました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 (1)連結財務諸表 注記事項」の(企業結合等関係)をご参照ください。
当企業グループは、創業200周年を見据え、10年後のありたい姿を新たな長期構想として掲げ、持続的な成長を実現する企業活動のコンセプト「Scientific Innovation Chain 2027(SIC27)」を設定し、第二ステップである中期経営計画「SIC-Ⅱ」を2021年度より展開しています。すべての生活者・生命・地球環境がいきいきと共生する世界に貢献する企業グループを目指し、研究開発においては、サイエンス領域を広げて新技術を獲得し、新たな価値を創造し、お客様とともに成長、発展すべく積極的に活動を進めております。
「SIC-Ⅱ」ではサステナブル・サイエンス、コミュニケーション・サイエンス、ライフ・サイエンスを重点開発領域として設定し、変わりつつある新たな社会ニーズに対して真に必要とされる価値を提供し続けていきます。「SIC-Ⅱ」の初年度となる2021年度は、それら重点開発領域の拡大と創出に注力し、それぞれの領域で戦略的に技術開発し、イノベーションの連鎖を起こすべく、日々取り組んでまいりました。
当企業グループにおける研究開発においては、素材開発力の強化と新製品・新事業の創出を加速させるため、各セグメントの中核事業会社に2~5年の中期的な研究開発を担う研究所(先端材料研究所、ポリマー材料研究所、機能材開発研究所)を新設しました。当社のR&D本部(技術開発研究所、フロンティア研究所、解析技術研究所)、生産・物流本部(生産技術研究所)では長期的な開発を担います。各研究所及び国内外の各連結子会社の技術部門では、持続可能でクリーンな社会の実現に向けた新素材やシステムの提供、5G・IoT社会への貢献、人々の生活を豊か・健やかにする製品やソリューション創出など、それぞれの社会ニーズに対して真に必要とされる価値を提供し、新たな事業の創出・拡大を目指すべく研究開発活動を推進しております。
連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、
当事業では、コア技術である有機合成技術と精密分散技術を融合し、市場のニーズに合った独自の新素材、分散加工製品、着色剤、インクジェットインキの製品開発を続けております。
顔料及び顔料分散体事業関連では、印刷インキ市場に向けてデジタル印刷を含む各種インキの広色域化、難分散顔料の易分散化に寄与できる色材の開発を進めております。また、塗料市場に向けて顔料の高濃度かつ微細分散技術を応用した新製品開発を進めております。
メディア事業関連では、液晶ディスプレイカラーフィルター用材料において原料高騰を製法革新などによるコストダウンで補うとともに、好調な市場需要により中国、台湾市場で伸長しました。独自開発した色材もハイエンド用途で採用が伸びております。また、新型ディスプレイ向け低温硬化レジストを新規開発し、量産を開始しました。
着色事業関連では、光波長制御機能を持つ新素材を、フィルム包装容器製品や自動車の衝突防止システムに使用されるミリ波レーダー向けの電波吸収コンパウンドへ展開しております。また、CO2削減や廃プラスチック問題などの社会課題を解決するため、電気自動車関連製品及びリサイクル材料やバイオプラスチックを使用した製品の開発に積極的に取り組んでおります。
機能材料事業関連では、カーボンナノチューブを用いた車載用リチウムイオン電池材料の供給を米国の拠点よりスタートさせるとともに、欧州でも工場の整備を進め、生産を開始しております。また、特殊無機材料、金属材料の精密分散技術を応用した新たな製品展開として、電子材料向け金属分散体の量産も開始しました。
インクジェットインキでは、今期から事業を本セグメントへ移管し、これまで培ってきたインキ及び周辺材料の技術を集結し、高濃度、高演色インキの開発を加速しています。また、食品包装用水性インキについては、耐熱性・耐水性向上や、多様な基材への対応を進めており、パッケージ印刷のさまざまなニーズに対しデジタル化、水性化の提案を行うべく開発を進めております。
当事業に係わる研究開発費は、
当事業では、重点市場を①包装・工業材市場、②エレクトロニクス市場、③メディカル・ヘルスケア市場と位置づけ、その事業の礎となるポリマー・サイエンス・テクノロジープラットフォームの拡充に取り組み、高付加価値製品や環境調和型製品の開発を続けております。
包装・工業材市場向けについては、粘着剤では、環境調和型製品のラインナップを更に拡大し、90%以上分解する生分解性粘着剤や、薄膜でも接着力の高い粘着剤などを開発しました。接着剤では、破断強度と伸びを両立する二液硬化型接着剤「LIOWELDTM」を開発し、市場評価が進んでおります。ホットメルト(熱溶融型接着剤)では、飲料ペットボトルに巻き付けるラベルの剥がしやすさを向上したホットメルト粘着剤を開発しました。また、トーヨーケム株式会社と東洋アドレ株式会社との合併を実施し、その技術シナジーにより温度依存性の少ないポリウレタン型反応性ホットメルト粘着剤を開発しました。缶用塗料では、前連結会計年度に新ブランドとして立ち上げたビスフェノールAを意図的に含まないBPA-NI塗料「LIONOVA TM」を上市しました。
エレクトロニクス市場向けについては、スマートフォン・タブレット向けに高速通信対応の電磁波シールドフィルムの販売が好調に推移しましたうえ、次世代品の開発も進みました。センサー関連では、介護分野でセンサーシート「Fichvita®」が引き続き順調に出荷されております。また、中型自動運転バスに座席センサー、飲食店舗内にフロアセンサーをそれぞれ設置し、屋内施設における滞在人数や位置をリアルタイムに把握する実証試験を行いました。
メディカル・ヘルスケア市場向けについては、貼付型医薬品、検査薬用のシート製品、ヘルスケア用の高透湿性アクリル系粘着剤や低皮膚刺激性ウレタン系粘着剤の開発を引き続き進めております。
当事業に係わる研究開発費は、
当事業では、環境調和型の軟包装用グラビア、フレキソインキを始め、建装材用グラビアインキ、機能性インキの開発やマテリアルリサイクルのシステム構築など、持続可能な社会の実現及び新たな価値の創造に向けた開発に力を入れております。
再生可能な植物由来原料を活用したバイオマスインキでは、フィルムラミネート用及び表刷り用、紙器用やシート段ボール用など幅広い製品をラインナップしています。特に、フィルムラミネート用グラビアインキは市場で高い評価を頂いており、CO2排出削減に貢献しております。
また、水性化の障壁となっていた乾燥性の課題をブレークスルーしたハイソリッド水性グラビアインキや印刷適性に優れる水性フレキソインキを開発・上市し、国内外で実績化が進んでおります。
建装材分野では、建築物の外装など屋外用途に適した高耐久性グラビアインキ及びトップコートの販売を開始しました。製品の長寿命化や、グラビア印刷による可飾ソリューションのさらなる普及拡大を目指してまいります。
今後も、リサイクル技術、バイオマス製品をはじめ、各種の環境調和型製品やシステムの開発を通じて、お客様とともに持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献する製品とサービスを提供し、社会に貢献してまいります。
当事業に係わる研究開発費は、
当事業では、持続可能な社会の実現に向けて、CO2排出量や廃棄物の削減に寄与する製品群の開発を積極的に行っております。
油性インキ及びUVインキでは、脱炭素社会実現に向けてCO2排出量の削減に貢献するバイオマスインキの開発に注力しており、多様な用途に対応した製品群を上市しています。特に、バイオマス原料の活用が困難とされてきたUVインキにおいて、パッケージ、シール・ラベル、カップ、情報出版用途のバイオマスインキ製品をラインナップしています。バイオマス度の向上にも絶えず努めており、UVランプよりさらに省エネルギーなLEDランプでも硬化するバイオマス度20%のシール・ラベル用UVフレキソインキを開発し、工業化に向けた活動を進めております。また、シリコン系添加剤不使用の後加工適性に配慮したUV硬化型スクリーン印刷用バイオマスインキを開発しました。なお、バイオマス成分については、外食産業等から排出された使用済みの植物油を変性して活用するなど、食用でない植物材料にこだわることで、廃棄物の有効活用を進めております。
また、抗菌、抗ウイルス加工製品へのニーズの高まりに対し、油性インキ及びUVインキに対応した抗菌ニス、抗ウイルスニスの開発と市場評価を進めております。
当事業に係わる研究開発費は、
なお、上記の4つの事業に含まれない研究開発費は、