第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
 
(1) 会社の経営の基本方針

当社グループの経営理念は、次のとおりです。

1.製品・サービスを通じて社会課題を解決し、持続可能な社会の実現に向けて貢献する。

2.独創性に溢れた発想と高度な複合化技術によって市場を絞り込みその市場でナンバーワン、オンリーワン

になることを目指し価値を提供する。

3.会社の成長発展を通して、社員の幸福を追求すると同時に社員の自己実現を支援する。

 

当社グループは、この経営理念の下、目まぐるしく変化を続ける経営環境の中でグループの総合力を発揮し、 社会の発展に役立つ製品・サービスを提供する企業であり続けることを目指しています。

 

(2) 目標とする経営指標

ROE、ROA等の指標を重要な経営指標と認識していますが、収益を伴った着実な成長を目指した経営活動を実践していくため、売上高と営業利益を当社グループの基本的な経営指標としています。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

2022年に入り、コロナ禍からの回復局面にありましたが、ロシアのウクライナ侵攻の影響で、さらなる資源の供給不安が加わり、原油市場・金融市場をはじめ世界中のフェーズが不安定さを増大しており、世界経済への影響は予断を許さない状況となってきています。

今期76期は、第13次3ヶ年計画の最終年度として、「市場を絞り込み、その市場でナンバーワン・オンリーワンになること」と「社員の顧客志向徹底」を継続し、環境の変化を変革の機会と捉え価値のある製品、サービスの提供に努めていきます。また、事業継続体制(BCP)の強化、社会的責任(SDGs/ESG)の徹底により、万全な経営基盤を構築し、企業価値の向上を目指していきます。工場のリニューアルでは、これから求められる工場を構築していくための第1Stepとして、生産効率の向上(製造ラインの集約)を実施しています。

 

(4) 対処すべき課題

①事業ポートフォリオ最適化による収益基盤の再構築

②人材の強化(採用、育成、多様化への対応)

③社会の課題解決と新しい価値創造に向けた研究開発の強化

④BCP体制の強化

⑤工場の生産性向上、リニューアル

⑥SDGs、ESGへの取り組みと企業価値向上

 

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。当該リスクが顕在化する可能性、時期、顕在化した際の当社グループに与える影響については、合理的に算出することが困難なため記載していません。これらのリスクを認識した上で、発生の回避、影響を最小限にするよう、情報収集、訓練、環境等対策を行っています。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)事業等の変動要因について

当社グループの経営成績は、設備投資や個人消費の動向及び政府・自治体の交通安全対策の実施状況ならびに石油系を主とする原材料価格や為替変動、株式市況等の影響を受ける可能性があります。

(2)原材料の価格及び調達について

当社グループの主要な原材料の多くは石油関連製品であり、原油・ナフサ価格の動向により当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、原材料の調達について、複数のサプライヤーから購入することにより安定調達を図り、生産に必要な原材料が十分に確保されるよう努めています。しかしながら、一部の特殊な原材料については限られたサプライヤーに依存する場合があります。また、サプライヤーの被災、事故、倒産などによる原材料の供給中断、需要の急増による供給不足が発生した場合には当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 法的規制について

当社グループの事業に関係する法規制には、環境、化学物質、安全衛生などがあり各法規制の強化が進んでいます。当社グループは、コンプライアンスの徹底を図りながら、これらの法規制を遵守し各事業活動を行っています。しかしながら、法令の大幅な変更や規制強化が行われた場合は当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 事業継続について

①工場の火災、爆発事故について

当社グループは、危険物及び化学薬品を取扱っており、事故発生の防止として安全体制の強化を徹底していますが、万が一大規模な火災事故、爆発事故が発生した場合、一時的に操業を停止するなど、当社グループの経営成績、財務状況等に影響を与える可能性があります。

②自然災害について

大規模な自然災害(大地震、大雨、洪水など)が数多く発生している昨今、工場の被害、停電など活動の中断事象が発生するだけではなく、原材料、部品の調達先での被害発生により影響を受ける可能性も高まってきています。当社グループでは、これらに対する被害・損害を最小限にするための防災、減災対策、社員の安全確保、システムのバックアップ、製品の安定供給を行うために事業継続計画(BCP)を策定しています。各事象に対応するために社員教育、防災訓練等を行い事業の継続を目指しています。しかしながら、被害状況によっては、正常な事業活動の継続が困難となり、当社グループの経営成績、財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。

③新型感染症感染拡大について

当社グループでは、新型感染症等の感染拡大に伴い、正しく情報を収集し、感染予防や拡大防止に対して一早く適切な社内体制を構築しています。しかしながら感染症が拡大した場合、一時的に操業を停止するなど当社グループの経営成績、財務状況等に影響を与える可能性があります。

(5)ITリスク

当社グループは、ITを活用し事業を効率的に進めるために、多くの情報、システムを運用しています。これらを安全に運用するために権限責任の明確化、チェック体制、外部からの侵入対策、社員教育など情報セキュリティーの強化を図っています。しかしながら、サイバー攻撃を含む意図的な行為や過失により、情報の漏洩、消失、各種障害等の影響を受け、事業活動が一時的に中断する可能性があります。

(6)製造物責任について

当社グループは、品質管理規程に基づき製品の製造を行っていますが、製品に欠陥が生じた場合に備え賠償保険に加入しています。しかし、想定外の大規模な製品欠陥の場合、多額の費用及び当社グループの信頼の低下等により当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりです。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、長期化する新型コロナウイルス感染症の影響により緊急事態宣言の発出やまん延防止等重点措置が繰り返し要請され経済活動の制限や停滞が続いていましたが、ワクチン接種等により経済活動に回復の兆しが見られました。一方、原材料や輸送・電力コスト等の高騰、急激な円安の進行に加えロシアのウクライナ侵攻等による地政学的なリスクなどにより景気の先行きは一層不透明な状況となっています。

このような厳しい環境のもと、引き続きコロナウイルス感染予防と拡大防止に努め、原材料と調達コストの高騰に対応するため種々のコスト削減を行うとともに、原材料の調達が厳しいなか製品の安定供給に努めるため原料の代替等を行い対応してきました。

また、このような状況のなか、自助努力による対応が厳しくなったため第3四半期より一部製品の価格改定を行いました。

この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高110億61百万円(前連結会計年度111億22百万円)、営業利益4億21百万円(同 6億44百万円)、経常利益4億47百万円(同 6億33百万円)親会社株主に帰属する当期純利益3億78百万円(同 3億79百万円)となりました。

 

セグメント別の経営成績は次のとおりです。
<塗料販売事業>

建築用は、7月8月の長雨の影響で防水材は減少しましたが、アトムサーベイシステム等のPR活動により工場屋根関連製品が伸長しました。床用塗料は生産活動の休止を余儀なくされた工場での営繕・補修に向けた従業員が施工しやすい水性塗料関連製品が伸長しました。家庭用塗料は、インターネット販売は伸長しましたが、取引先の破産の影響とホームセンターへの出荷が減少しました。道路用塗料は、インフラ補修関連製品の出荷は減少しましたが、官公庁の工事関連の発注が堅調に推移し路面標示用塗料及び視覚障がい者用シートが伸長しました。アトムレイズ(水性アクリルゴム系塗膜防水材)は、レイズ工業会の新規会員の開拓及び設計事務所等への訪問営業活動を行い出荷量が伸長しました。

この結果、当連結会計年度の塗料販売事業の売上高は103億72百万円(前連結会計年度101億55百万円)となりました。

 

<施工事業>

床材工事は製造工場の受注案件が順調に受注しています。子会社アトムテクノスの工事売上は当連結会計年度より適用した収益認識に関する会計基準により4億25百万円減少しています。

この結果、当連結会計年度の施工事業の売上高は6億89百万円(前連結会計年度9億67百万円)となりました。

 

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて3百万円減少し、145億43百万円となりました。

当連結会計年度の負債合計は、前連結会計年度末に比べて3億5百万円減少し、45億72百万円となりました。

当連結会計年度の純資産合計は、前連結会計年度に比べて3億2百万円増加し、99億71百万円となりました。

 

 

②キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローは、得られた資金は6億94百万円(前連結会計年度は12億12百万円獲得)となりました。これは主に、賞与引当金の減少で1億20百万円、棚卸資産の増加で2億13百万円、未成工事受入金の減少で59百万円、法人税等の支払で1億84百万円支出したものの、税金等調整前当期純利益により5億68百万円、減価償却費で3億30百万円、売上債権の減少で4億64百万円増加したことによるものです。

 

投資活動によるキャッシュ・フローは、使用した資金は1億49百万円(前連結会計年度は2億89百万円使用)となりました。これは主に、投資有価証券の売却による収入により2億31百万円増加したものの、有形固定資産の取得により2億円、無形固定資産の取得により1億80百万円支出したことによるものです。

 

財務活動によるキャッシュ・フローは、使用した資金は1億80百万円(前連結会計年度は8億56百万円使用)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出で63百万円、配当金の支払額で83百万円支出したことによるものです。

 

これらの結果、当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べて3億64百万円増加し31億88百万円となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当連結会計年度に係る生産、受注及び販売の実績については、当該会計基準等を適用した後の数値となっています。

-1. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

塗料販売事業

9,324,400

103.7

施工事業

689,847

55.1

合計

10,014,248

97.8

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しています。

2 生産実績は販売価額で表示しています。

3 上記生産実績のほかに次のとおり製品の仕入を行っています。

 

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

塗料販売事業

697,249

100.9

合計

697,249

100.9

 

 

-2. 受注実績

当社グループの製品は、主として見込生産を行っています。

なお、当連結会計年度における施工事業の受注実績を示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

施工事業

636,200

146.6

38,910

7.2

 

(注)  セグメント間取引については、相殺消去しています。

 

-3.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

塗料販売事業

10,372,118

102.1

施工事業

689,847

71.3

合計

11,061,965

99.5

 

(注) セグメント間取引については、相殺消去しています。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

財政状態

当連結会計年度における資産合計は、前連結会計年度末に比べて3百万円減少し、145億43百万円となりました。この要因となった流動資産、固定資産の状況は次のとおりです。

流動資産は、前連結会計年度末に比べて1億94百万円増加し、90億24百万円となりました。これは主に、仕掛品3億8百万円減少したものの、現金及び預金3億64百万円原材料及び貯蔵品1億16百万円増加したことによるものです。

固定資産は、前連結会計年度末に比べて1億98百万円減少し、55億19百万円となりました。これは主に、無形固定資産(主にソフトウエア)で1億21百万円増加したものの、投資有価証券2億32百万円繰延税金資産67百万円減少したことによるものです。

また、負債及び純資産の状況は次のとおりです。

流動負債は、前連結会計年度末に比べて2億37百万円減少し、39億49百万円となりました。これは主に、電子記録債務1億5百万円増加したものの、未払法人税等55百万円賞与引当金1億20百万円、その他(主に未払金)で1億47百万円減少したことによるものです。

固定負債は、前連結会計年度末に比べて68百万円減少し、6億22百万円となりました。これは主に、長期借入金60百万円、その他で9百万円減少したことによるものです。

純資産は、前連結会計年度末に比べて3億2百万円増加し、99億71百万円となりました。これは主に、その他有価証券評価差額金86百万円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益3億78百万円増加したことによるものです。

 

上記内容から、自己資本比率は前連結会計年度末と比べて2.1ポイント増加し68.6%、流動比率も17.7ポイント増加し228.5%となりました。流動比率、当座比率ともに高い水準であり、有利子負債比率も低いため、当面の間の資金繰り及び資金調達には問題はないと判断しています。

 

経営成績

(売上高)

当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度と比べて60百万円減少し、110億61百万円となりました。

 

(営業利益)

当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度と比べて2億23百万円減少し、4億21百万円となり、売上高営業利益率が2.0ポイント減少し3.8%となりました。

これは、主に原材料と調達コストの上昇により、売上高原価率が前連結会計年度と比べて、2.0ポイント増加したことによるものです。

 

(経常利益)

当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度と比べて1億86百万円減少し、4億47百万円となり、売上高経常利益率が1.6ポイント減少し4.0%となりました。

これは、主に借入金の返済により支払利息が減少したものの、売上高営業利益率が2.0ポイント減少したことによるものです。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度と比べて1百万円減少し、3億78百万円となり、売上高親会社株主に帰属する当期純利益率が3.4%となりました。これは、主に投資有価証券の売却益を計上したものの、売上高営業利益率が2.0ポイント減少したことによるものです。

 

当社グループの経営戦略は、「第2 事業の状況  1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等  (3)中長期的な会社の経営戦略」に記載のとおりです。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの運転資金需要の主なものは、原材料の購入費用、生産設備の維持更新費用、研究開発活動費用及び広告宣伝費用です。これらの短期及び長期的な必要資金は自己資金や金融機関からの借入金を中心とし、金融商品等での運用や投機的な取引を行わないことを基本としています。資金の流動性については、事業計画、投資計画に応じた現金及び預金残高の確保と必要に応じて外部資金の調達を行うことにより維持していきます。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。連結財務諸表の作成に当たり採用した重要な会計方針、会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものにつきましては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表  注記事項  (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」及び「(重要な会計上の見積り)」に記載しています。

また、引当金、繰延税金資産の計上等の会計上の見積りを要する項目に関して、過去の実績や当該事象の状況を勘案して、合理的と考えられる方法により見積り及び判断を行い、その結果を反映して連結財務諸表を作成していますが、実際の結果は見積りの不確実性があるため異なる場合があります。

なお、新型コロナウイルス感染症に伴う会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表  注記事項 (追加情報)(新型コロナウイルス感染症に伴う会計上の見積りについて)」に記載しています。

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

(1) 技術援助

 

契約会社名

相手先

国名

契約の内容

契約期間

対価

当社

ハイアップ・ホン社

タイ

溶融型道路用塗料の製造技術並びに販売実施権の供与

2018年3月1日から
2023年2月28日まで

生産量の一定率

 

 

5 【研究開発活動】

当社グループは「製品・サービスを通じて社会課題を解決し持続可能な社会の実現に向けて貢献すること」を基本方針として、道路用・建築用・家庭用の分野における塗料と道路用塗料の施工機に関する研究開発を行っています。

当連結会計年度における研究開発費の総額は191百万円であり、セグメントごとの主な研究開発活動の状況は次のとおりです。

 

(1) 塗料販売事業

道路用塗料では「交通安全」「道路とその周辺環境の美化」をコンセプトに、主に通学路の安全対策や視覚障がい者などの交通弱者対策、遮熱対策などの機能製品や施工機の研究開発に取り組んでまいりました。建築用塗料では「建物と屋外施設の保護、保全」をコンセプトに、床、屋根、防水材の新製品開発と性能向上に取り組んでまいりました。このほか、家庭用では「快適な住まいと暮らしのお手伝い」をコンセプトに、DIY塗料やホームケア製品の開発に取り組んでまいりました。この結果、当連結会計年度において、塗料販売事業に投入しました研究開発費の合計は191百万円となりました。

 

(2) 施工事業

当連結会計年度においては、施工事業に係る研究開発活動を行っていません。