当社は、「優れた医薬品の創出を通じて人々の健康と医療の未来に貢献する」というミッションを追求しています。また、当社は、「誠実:公正・正直・不屈」を企業活動の根幹に据え、「Patient(常に患者さんを中心に) 」、「Trust(社会との深い信頼関係を築く)」、「Reputation(当社の評価をさらに高める)」、「Business(ビジネスを成長させる)」を優先順位とする価値観に従います。
世界の製薬産業においては、がん免疫療法や細胞療法、遺伝子治療等の新たな医療技術が登場しており、イノベーションのスピードはかつてよりも速くなっています。このような革新的な医療による成果が現れてきている一方、画期的なバイオ医薬品の研究開発費は高騰し、高齢化社会の進展等も相まって各国の医療制度は財政的課題に直面しております。このため、保険者は保険償還対象となる医薬品をより厳格に選定するようになっており、各国政府は後発品やバイオシミラーの使用を促進し、薬価引き下げの圧力を強めています。しかしながら、未だ満たされていない医療ニーズは多く存在しており、患者さんの医薬品アクセスを高め、持続可能なヘルスケアシステムを維持していくことを含め、研究開発型の製薬企業に期待される役割は大きくなっています。
このような経営環境の下、当社は、世界中の患者さんに画期的な医薬品と革新的な治療法をお届けし得る、バリュー(価値観)、すなわち当社の経営の基本精神に基づき患者さんを中心に考える、機動的でグローバルな研究開発型のバイオ医薬品企業の実現に注力し、変革を続けています。2019年1月のShire社の買収は、この変革の大きな一歩となりました。本買収は、事業展開の地域バランスの改善と米国をはじめとする主要な市場における競争力の源泉となる規模をもたらし、当社は、世界の大手製薬企業と伍していける力を得ました。連結売上収益に占める米国の割合は約半数にまで高まっております。また、本買収により、消化器系疾患およびニューロサイエンス(神経精神疾患)の領域が強化され、希少疾患および血漿分画製剤の領域における主導的地位がもたらされました。さらに、本買収は、強固かつモダリティ(創薬手法)の多様な、高度に補完的なパイプラインを創出し、イノベーションにフォーカスしたR&Dエンジンを強化することにつながっています。財務面においては、キャッシュフロープロファイルの拡大により、飛躍的な進歩が見込まれる医療技術への投資力が向上しており、株主に対する利益の還元についてもコミットしております。
Shire社の統合は、経験豊富で多様性に富んだ当社経営陣の指揮の下、当社の価値観を尊重しながら引き続き着実に実行してまいりますが、患者さんや社会、株主の皆様に長期的な価値をお届けできるよう、当社は既にOne Takedaとして事業運営を行っております。
当社は、地域戦略を着実に実行するため、「米国」、「日本」、「ヨーロッパ及びカナダ」、並びに中国、中南米、中東及びアフリカ、アジア太平洋、ロシア及びCIS(独立国家共同体)から構成される「成長新興国」の4つの地域ビジネスユニットを編成しています。このようにローカル中心のグローバル組織を構築することで、当社医薬品へのアクセス向上や患者さんが入手可能な価格設定といった各地域のニーズに迅速に対応することが可能となります。これら4つの地域ビジネスユニットに加え、専門性の高い領域であるオンコロジー(がん)、ワクチン、血漿分画製剤については、スペシャルティビジネスユニットを編成し、エンド・ツー・エンドの事業運営を行っております。
当社は、持続可能で中長期的な成長を促進するため、引き続き、以下の3つの戦略的優先事項に取り組んでまいります。
1)ビジネスエリアのフォーカス
消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー(がん)、ニューロサイエンス(神経精神疾患)の5つの主要ビジネスエリアにフォーカスします。
2)R&Dエンジン
当社は、患者さんを中心に考えるサイエンス主導の企業として、サイエンスから人生を変え得るような高度に革新的な医薬品を創出する取り組みを進めております。疾患領域の絞り込み、先進的なパートナーシップモデルの推進、新規メカニズムや新たな専門性への投資を通じて、R&Dエンジンを構築しております。バイオ医薬品の中でも、オンコロジー(がん)、希少疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)および消化器系疾患の4つの疾患領域に重点的に取り組むとともに、血漿分画製剤およびワクチンにもターゲットを絞った研究開発投資を行ってまいります。
当社は、今後数年にわたり、当社のパイプラインより、患者さんの標準治療の向上につながるベスト・イン・クラスもしくはファースト・イン・クラスの治療薬となり得る12の新規候補物質(14の効能)の世界での承認取得を見込んでいます。
3)強固な財務プロファイル
当社は、利益率の中長期的な向上にフォーカスし、事業投資や負債の早期返済、株主へのキャッシュの還元のため、キャッシュフローを創出します。
当社では、純有利子負債/調整後EBITDA倍率を2021年度から2023年度の間に2倍にすることを目標としております。この取り組みを加速させるため、約100億米ドルを目標にノン・コア資産の売却を進めています。
当社では、事業の計画策定および業績評価において、「実質的な成長」(Underlying Growth)の概念を採用しております。当年度と前年度の業績について、為替レートを一定として、事業等の売却影響や本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響等を控除し算定される「実質的な成長」は、事業活動のパフォーマンスを共通の基準で比較するものであり、投資家に追加的な情報を提供できるものと考えています。
なお、上記の戦略的優先事項に加え、当社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行する中での最優先事項として、従業員ならびに従業員とともに業務に従事して頂いている方々、従業員の家族、また地域社会の健康を守るため、あらゆる方策を講じるとともに、患者さんが必要とされる医薬品を確実にお届けできるように取り組んでおります。当社は、2020年4月に血漿分画製剤事業を営む複数社と結成したグローバルな提携体制であるCoVIg-19 Plasma Allianceに参画し、患者さん中心の価値観の下、一企業としての利益を顧みることなく、あらゆるパートナーと協働することを通じてCOVID-19の治療法開発を促進することに注力しております。
また、当社は、ESG(Environmental, Social and Governance)への取り組みを一層強化してまいります。当社は、患者さんに貢献するには、より広範なグローバルコミュニティへの貢献に努めなければならないと認識しております。当社は、地球温暖化に伴う気候変動の影響を、人々の健康に大きな影響を及ぼす重要な環境課題として認識しており、2040年にバリューチェーン全体でカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げ、取り組みを加速しております。さらに、医薬品アクセス戦略やグローバルCSRプログラムを含む社会貢献プログラムに取り組み、強固なコーポレート・ガバナンスを推進してまいります。
(新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大による影響と当社の取り組み)
① 当社の経営成績および財政状態に対するCOVID-19影響
当社の事業活動は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大により、様々に影響を受けており、また、今後影響を受ける可能性があります。
当社は、当社製品の需要動向について注視しておりますが、当社の医薬品は病院での待機手術を要しない重篤な慢性疾患や生命を脅かす恐れのある疾患に対するものが多く、これまでのところ影響は限定的です。なお、ドナーからの血漿採取量に幾らかの減少が見られていますが、今後数カ月のうちに、一部あるいは完全に補えるほどに採取量が回復し得る複数の要素があるため、総採取量についての長期的な影響を現時点で予測することは時期尚早です。グローバルなサプライチェーンにおいては、COVID-19の大流行による製品供給の重大な混乱は発生しておらず、また、発生の可能性を現時点で予測しておりません。
事業運営においては、渡航制限や業界関連団体の集会への参加自粛、当社主催の集会の休止等、特定の事業活動を自主的に制限しております。
新たな臨床試験については、COVID-19の治療薬候補である血漿分画製剤(CoVIg-19)を除き、臨床試験の開始を一時的に休止しております。また、すでに進行中の臨床試験については、一部の例外を除き、新たな試験実施施設の組み入れならびに新規患者さんの登録を一時的に休止しておりますが、これら臨床試験のスケジュールや申請計画に対する影響を現時点で予測することは時期尚早です。
金融市場の動向は注視を続けており、流動性や資金調達に係る問題は現在見込んでおりません。
② COVID-19影響軽減のための当社の取り組み
当社は、COVID-19の大流行に対して、3つの優先事項を中心に取り組んでおります。
1.従業員とその家族の安全確保とヘルスケアシステムに対する影響の低減
2.事業の継続性の維持、特に当社医薬品の患者さんへの提供
3.COVID-19を治療もしくは予防し得る医薬品の開発
当社は、COVID-19の流行拡大に伴う様々な問題に対処するため、2020年1月に、グローバル危機管理委員会を始動させ、社内外の専門家の支援のもと、様々な対策を講じております。本委員会は、チーフ グローバル コーポレート アフェアーズ オフィサーとグローバル ワクチン ビジネス ユニット プレジデントのリードのもと、機能横断のチームによって組織されています。
当社は、従業員の安全を確保する措置として、在宅勤務ポリシーの適用を開始し、これを支援するIT技術を拡充しました。テレワークのガイダンスは、医療従事者と関わる外勤の従業員も可能な限り対象として、世界中の従業員に広範囲で適用しております。また、すべての不要不急の移動を休止し、大人数での従業員の集まりを制限しています。製造施設や研究所、血漿収集センターにおいて引き続き勤務する必要のある従業員については、ウイルス感染の安全・軽減措置を強化しました。
事業の継続性の維持の側面では、当社医薬品の製造代替業者の選定を含め、適正な在庫水準を管理し、当社医薬品を患者さんに継続的に提供できる施策を整備しています。当施策は、主要な出発物質、添加剤、医薬品原料、医薬品原薬(API)ならびに製品のグローバルなサプライチェーン全体に対して適用しております。当社は、当社の医薬品を必要とされる方々に確実にお届けできるよう、引き続き状況を注視し、あらゆる必要な措置を講じて製品供給の継続性を確保してまいります。
研究開発においては、進行中の臨床試験に対する影響を最小限に抑えるため、CRO(医薬品開発業務受託機関)と連携しながら、患者さんへの治験薬の直接配送や遠隔モニタリングの方法を検証する等、様々に取り組んでおります。一方、COVID-19による重篤な合併症患者さんの治療薬候補である抗SARS-CoV-2ポリクローナル高度免疫グロブリン製剤(CoVIg-19)を除き、新たな臨床試験の開始は一時的に休止しております。
CoVIg-19のプログラムは、COVID-19に対抗する治療法を開発するという当社の取り組みの一つです。当社は、2020年4月に血漿分画製剤事業を営む複数社と結成したグローバルな提携体制であるCoVIg-19 Plasma Allianceに参画し、患者さん中心の価値観の下、一企業としての利益を顧みることなく、あらゆるパートナーと協働することを通じてCOVID-19の治療法開発を促進することに注力しております。また、当社は、社内の既存のアセットがCOVID-19の治療薬となり得るかを評価しているとともに、新たなアプローチでの治療研究を進めております。
さらに、当社は赤十字社や国連主導の組織を含む非営利団体に対する約25百万米ドルの寄付金や現物寄付を通じて、COVID-19対策を支援しております。
③ COVID-19の世界的な拡大に伴う事業等のリスク
「2 事業等のリスク」をご参照ください。
④ 2019年度実績におけるCOVID-19影響
COVID-19の世界的な流行拡大に伴う、当年度業績への影響は軽微でありました。影響を受けた各国の医薬品市場の停滞により、売上収益は幾らかのマイナス影響を受けましたが、同時に、渡航制限や集会の自粛等、特定の事業活動を自主的に制限したことにより経費使用が減少したため、利益に対する影響は限定的でした。
[主要製品一覧]
(注)2019年度の「GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG」「GAMMAGARD S/D」「HYQVIA」「CUVITRU」を含む免疫グロブリン製剤の売上収益は2,987億円となりました。
当社の業績は、現在および将来において様々なリスクにさらされており、リスクの顕在化により予期せぬ業績の変動を被る可能性があります。以下では、当社が事業を展開していくうえで直面しうる主なリスクを記載いたします。なお、以下に記載したリスクは当社の全てのリスクを網羅したものではなく、記載以外のリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、「グローバルリスク管理ポリシー」に基づき、全社規模のリスク管理を行っており、主要なリスクおよびその低減策等について、リスク・エシックス&コンプライアンス・コミッティーおよび取締役会に適宜報告される体制を整えています。具体的には、当社の業績に与えうる影響の程度と発生の蓋然性の両面から主要なリスクを識別し、これらを含むあらゆる損失危険要因について、各部門の責任者は、計数面および定性面から管理を行うとともに、リスクの程度・内容に応じた対応策・コンティンジェンシープランに基づきリスクの回避措置、受けうる影響の低減措置を行っています。また、リスクが顕在化した場合の事業への影響を最小化するため、その影響度に応じて事業継続計画を策定しています。
なお、本項目に含まれる将来に関する事項およびリスクは、当年度末現在において判断したものです。
(1)研究開発に関するリスク
当社は、研究開発機能の向上および社外パートナーとの提携等により研究開発パイプラインを強化すると共に、世界各国の市場への一日も早い新製品の上市を目指し、質の高い革新的な研究開発パイプラインを構築することで研究開発の成功確率を高める等により効率的な研究開発活動に努めております。しかしながら、医薬品は、自社創製候補物質、導入候補物質にかかわらず、所轄官庁の定めた有効性と安全性に関する厳格な審査により承認されてはじめて上市可能となります。
研究開発の途上において、当該候補物質の有効性・安全性が、承認に必要とされる水準を充たさないことが判明した場合またはその懸念があると審査当局が判断した場合、その時点で当該候補物質の研究開発を途中で断念、または追加の臨床試験・非臨床試験を実施せざるを得ず、それまでにかかったコストを回収できないリスクや製品の上市が遅延するリスク、および研究開発戦略の軌道修正を余儀なくされる可能性があります。
(2)知的財産権に関するリスク
当社の製品は、物質・製法・製剤・用途特許等の複数の特許によって、一定期間保護されております。
当社では特許権を含む知的財産権を厳しく管理し、当社が事業を行う市場における知的財産権や第三者からの侵害状況を継続的にモニタリング、評価および分析し、知的財産権に関するリスクの回避と、受けうる影響の低減を図っていますが、当社の保有する知的財産権が第三者から侵害を受けた場合には、期待される収益が失われる可能性があります。また、当社の自社製品等が第三者の知的財産権を侵害した場合には製造販売の差止めおよび損害賠償等を請求される可能性があります。
(3)特許権満了等による売上低下リスク
当社は、効能追加や剤型変更等により製品のライフサイクルを延長する努力をしておりますが、多くの製品について、特許が満了すれば、後発品の市場参入は避けられず、米国や欧州では後発品が参入すれば通常、短期間で先発品から後発品へ切り替わり、先発品の収益が大きく減少します。国内では、当局が後発品の使用促進を積極的に進め、また、長期収載品のさらなる価格引下げが行われています。これに加え、競合品の特許満了によるその後発品、および競合品のスイッチOTC薬の出現などによって、国内外の競争環境は格段に厳しいものになってきており、その影響如何で当社製品の大幅な売上低下を招く可能性があります。
なお、特許権満了時期等の詳細については「第2 事業の状況 5 研究開発活動 知的財産」をご参照ください。
(4)副作用に関するリスク
医薬品は、世界各国の所轄官庁の厳しい審査を経て発売されます。当社は発売後の医薬品について安全性情報を収集し有効性とリスクのバランスを評価することを含め、安全性監視活動とリスク最小化活動を実施し、より安全、有効に医薬品を使用できるようファーマコビジランス活動を推進し、副作用に関するリスクの回避と受けうる影響の低減に努力しておりますが、市販後の使用成績が蓄積された結果、発売時には予期していなかった副作用が確認されることがあります。新たな副作用が確認された場合には、添付文書の「使用上の注意」への記載を行う、使用する対象患者を制限する、使用方法を制限するなどの処置が必要となるほか、重篤なケースが認められた場合には、販売中止・回収等を余儀なくされることもあり得ます。また、このような場合において、当社は製造物責任を負うとともに、金銭的、法的および社会的信頼に関する損害を負う可能性があります。
(5)薬剤費抑制策による価格引き下げのリスク
最大市場である米国では、医薬品価格を下げるための医療計画や仲介機関による取り組みに加え、継続的な法令および規制の制定により先発品への価格引き下げ圧力が一層高まっています。日本においては、政府による一層の後発品の使用促進に加え、医療保険制度における多くの製品の公定薬価が、2021年より毎年引き下げられることが計画されております。欧州においても、薬剤費を抑制し、価格透明性を高め、国際価格を参照する政策により、医薬品価格が低下しております。当社は、各国の薬剤費抑制策の詳細な分析やモニタリングを行い、医薬品の価格状況を管理する組織体制を構築することでリスクの回避と影響低減の努力を行うと共に、各国政府や医療サービス供給者・保険者等と協力して、革新的な医薬品に対する適切な報酬制度を確立するために、価値に基づく新しい価格設定モデル等の解決策を追求しておりますが、これら各国の薬剤費抑制策による価格引き下げにより、当社製品の価格が影響を受け、当社の業績および財務状況に悪影響が生じる可能性があります。
(6)企業買収に関するリスク
当社は、持続的な成長を加速させるため、必要に応じて企業買収を実施しております。世界各国における事業活動は、法令や規則の変更、政情不安、経済動向の不確実性、商慣習の相違その他のリスクに直面する可能性があり、その結果当初想定した買収効果や利益が実現されない可能性があります。取得した資産の価値が下落し、評価損等が発生した場合や、買収した事業の統合から得ることが期待されている利益が実現されない場合には、のれんおよび無形資産等の減損損失の計上等により、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社は、2019年1月にShire社の買収を完了しました。当社は、Shire社の買収提案を行うにあたり慎重にリスク分析を行い、また、買収後も統合によるシナジー効果を最大限発揮する事業モデルを構築し、統合の進捗状況をモニタリングしていますが、Shire社との統合後の事業において、買収により取得した製品(開発中のパイプラインを含む)から得られる成長機会もしくは統合によるコスト削減を含むシナジー効果等の買収の成果が当初の想定通りに実現されない場合、または、Shire社との統合プロセスやShire社の事業から生じる法規制および税制上のリスク等を適切に管理できない場合には、Shire社買収に伴い計上した多額ののれんおよび無形資産等の減損損失の計上により、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、Shire社の買収に必要な資金の調達のための金融機関からの多額の借入れを含め、当社は多額の債務を負っております。当社は、利益の創出および選択的なノン・コア資産の売却等を通じてレバレッジの速やかな低下を進めておりますが、将来の当社の財務状況が悪化した場合には、信用格付けが引き下げられ、その結果、既存の債務の借り換えや新規借入れ、その他資金調達の条件にも影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社の債務には制限条項が付されているものがあり、かかる制限条項に抵触した場合には、債務の早期返済等により当社の財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(7)安定供給に関するリスク
当社は、販売網のグローバル化に確実に対応する供給ネットワークと品質保証体制を強化しており、具体的には、可能な限り複数のサプライヤーと適切な在庫水準を確保するための製造供給戦略の策定、代替サプライヤーの選定、当社内の製造ネットワークに係る危機管理規則の制定、事業継続管理システムの導入および定期的な内部監査等を行っています。しかしながら、当社または委託先の製造施設・物流施設等において、技術上もしくは法規制上の問題、原材料の不足、または地震、火災その他の災害や感染症等により、製商品の安定的供給に支障が発生する可能性があります。その動向によっては、当社の業績、財務状況および社会的信頼に影響を及ぼす可能性があります。
(8)IT セキュリティ及び情報管理に関するリスク
当社は大規模かつ複雑なIS/IT システム(アウトソーシング企業のシステムを含む)を利用しておりますが、従業員またはアウトソーシング企業の不注意または故意の行為、あるいは悪意をもった第三者による攻撃(サイバーアタック)により、システムの停止やセキュリティ上の問題が発生する可能性があります。当社は、これらのリスクを低減するため、包括的なポリシーや手続きを整備するとともに、リスク評価を通じた事業リスク分析および監査や第三者によるリスク低減テストを通じて、セキュリティ戦略の形成と効果的なテクノロジーへの投資を行うことによりセキュリティの継続的な強化に努めておりますが、システムの停止やセキュリティ上の問題が発生した場合、当社の事業活動への悪影響、個人情報や知的財産等の重大な機密情報の流出や喪失、業績および財務状況の悪化、法的な損害ならびに信用の失墜を招く可能性があります。
(9)コンプライアンスに関するリスク
当社は事業の遂行にあたって、薬事規制や製造物責任等の様々な法的規制の適用を受けています。当社は、グローバルエシックス&コンプライアンス部門を設置し、グローバルでコンプライアンスを推進する体制を整備し、当社の事業活動が法令および社内規定を遵守して実施されていることをモニタリングしていますが、当社の従業員や、当社が関係する医療従事者、委託先等の第三者がこれらの法令等に違反した場合や社会的要請に反した行動をとった場合、法令による処罰や制裁、訴訟の提起を受ける可能性があり、社会的な信頼を失うとともに金銭的損害を負う可能性があります。
(10)進出国および地域におけるカントリーリスク
当社は、グローバルな事業展開に伴い、進出国や地域における政治不安、経済情勢の悪化、新興感染症の拡大、社会混乱等の潜在的なリスクに対応する体制を構築しており、患者さんの医薬品へのアクセスを保護することを優先事項として、リスクの抑止策や発生時の対処法を検討する等のリスク管理に努めております。しかしながら、不測の事態が生じた場合には、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(11)為替変動に関する影響
当社の当年度における海外売上収益は2兆6,984億円であり、連結売上収益全体の82.0%を占めており、そのうち米国での売上収益は1兆5,959億円にのぼり、連結売上収益全体の48.5%を占めております。従って、売上収益については円安は増加要因ですが、一方、研究開発費をはじめとする海外費用が円安により増加するため、利益に対する影響は双方向にあります。また、機能通貨以外で実行される事業上の取引、金融取引および投資に関して為替変動リスクにさらされています。当社は為替リスクを集約的に管理し、外貨建取引に係る取引リスクをヘッジするためにデリバティブ取引を行っておりますが、為替レートが当社の想定を超えて変動した場合には、当社の業績および財務状況に影響が生じる可能性があります。
(12)訴訟等に関するリスク
当社の事業活動に関連して、現在関与している訴訟のほか、将来、医薬品の副作用、製造物責任、労務問題、公正取引等に関連し、訴訟を提起される可能性があり、その動向によっては、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。なお、継続中の重要な訴訟の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 32 コミットメントおよび偶発負債 (5)訴訟」をご参照ください。
(13) 環境に関するリスク
当社は、環境法規制に対する継続的な準拠と、環境課題と持続可能な社会の実現に向けた当社の貢献に対するステークホルダーからの期待に応えるため、環境マネジメントシステムおよび社内プログラムを整備するとともに、これらが有効に運用されていることを確保するための内部監査手続を定めております。しかしながら、万が一、有害物質による予期せぬ汚染やそれに伴う危害が顕在化した場合には、著しい改善措置実施の義務などの行政措置の対象となることや、保険の適用範囲外または補償金額を超える費用、支払、法的責任を負うことにより、当社の事業活動に悪影響が生じるとともに、社会的信頼を著しく損なう可能性があります。また、環境法規制の改正や社会の期待の変化により、より厳しいコンプライアンス要件の遵守や環境課題への対応が課せられ、当社の研究、開発、製造その他の事業活動が制限される可能性があり、かかる要件の遵守や課題への対応が行われない場合には、法規制上の責任を負い、当社の社会的信頼に影響を及ぼすとともに、当社の業務遂行能力に悪影響が生じ、投資家に対する魅力が低下する可能性があります。
また、当社は、地球温暖化に伴う気候変動の影響を、人々の健康に大きな影響を及ぼす重要な環境課題として認識しており、2040年にバリューチェーン全体でカーボンニュートラルを達成するという目標に向けて、省エネルギー活動の展開、オンサイト発電、再生可能エネルギーの購入や再生可能エネルギーに対する投資、実証済みのカーボンオフセット等を通じ、CO2排出量を削減する取り組みを推進しております。さらに、当社は水管理と廃棄物を最大限削減することを、持続可能な社会において注力すべき環境課題として認識しており、引き続き、水資源の消費削減に取り組むとともに、廃棄物の埋め立て処分ゼロおよびプラスチック廃棄物を最大限削減することを目的とした社内プログラムを確立しております。
このようなサステナビリティ課題に取り組むことは、企業活動を通じた長期的な収益を実現する基盤となりますが、適切な情報開示を含め、対応を怠った場合、または当社の目標を達成できない場合には、当社に対する患者さんや社会からの信頼が損なわれ、また、投資家からはサステナビリティ・リスクが高いとして投資対象から外されるなどの事態が生じ、その結果、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(14)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に関するリスク
当社は、COVID-19の拡大に関連して、さまざまな取り組みを行っていますが、COVID-19による影響が深刻化または長期化した場合には、原材料の調達や製品供給の滞り、臨床試験の遅延の拡大等、これらに限定されず、当社事業に更なる影響が及ぶ可能性があり、もしくは、当社に適用のある規制の遵守が困難になる可能性があります。現時点では、COVID-19の流行拡大がどの程度続くか明らかではありませんが、COVID-19の流行拡大が減速または収束した場合であっても、当社の事業、財政状態および経営成績に対して、長期間継続して影響が及ぶ可能性があります。中期的な業績影響も明らかではありませんが、失業者数の増加や保険支払構造の変化、政府による医療費削減施策の導入の可能性等が影響を及ぼすことが考えられます。
将来の事業等にかかるリスクを最小化するため、当社は引き続き状況を注視し、必要な対策を講じてまいります。COVID-19の拡大による影響と当社の取り組みの詳細については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大による影響と当社の取り組み)」をご参照ください。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当年度の業績および財政状態は以下のとおりとなりました。
なお、当社グループは「医薬品事業」の単一セグメントのため、セグメントごとの経営成績の記載を
省略しております。
② キャッシュ・フローの状況
「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」をご参照下さい。
③ 生産、受注及び販売の状況
(a) 生産実績
当年度における生産実績は次のとおりであります。
(注) 1 当社グループは「医薬品事業」の単一セグメントであります。
2 生産実績金額は、消費税等を除いた販売価格によっております。
3 Shire社の買収に伴い、生産実績が増加しております。
(b) 受注状況
当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画をたてて生産しております。
一部の事業において受注生産を行っていますが、受注高および受注残高の金額に重要性はありません。
(c) 販売実績
当年度における販売実績は次のとおりであります。
(注) 1 当社グループは「医薬品事業」の単一セグメントであります。
2 販売実績は、外部顧客に対する売上収益を表示しております。
3 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。なお、総販売実績に対する割合が100分の10未満となっている年度については記載を省略しております。
4 販売実績金額は、消費税等を除いた金額であります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 当年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
(a) 当年度の経営成績の分析
(ⅰ) 当社グループの経営成績に影響を与える事項
事業の概況
当社は、バリュー(価値観)、すなわち当社の経営の基本精神に基づき患者さんを中心に考える、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品企業です。当社は、革新的な医薬品のポートフォリオを有し、研究、開発、製造、および販売を主要な事業としており、グローバルに展開した事業基盤をもとに、世界各国で医療用医薬品を販売しています。
当社は、既存事業の自立的な伸長と企業買収を通じて成長してまいりました。これまで複数の企業買収を実施したことにより、疾患領域、地理的拠点、パイプラインの拡大を推進してまいりました。特に2019年1月にShire社を買収したことにより、当社の消化器系疾患およびニューロサイエンス(神経精神疾患)の領域が強化され、希少疾患と血漿分画製剤の主導的地位を獲得しました。また、研究開発エンジンのさらなる強化と相互補完的で強固かつ多様なモダリティ(創薬手法)のパイプラインの構築を実現しました。さらに、販売においては、本買収は米国におけるプレゼンスを飛躍的に向上させました。
当社は、Shire社買収の対価の現金部分の資金を調達するため、多額の負債を計上しましたが、営業活動から生じるキャッシュ・フローを用いると共にノン・コア資産の処分を進めることにより、レバレッジの低下を引き続き速やかに実現させる方針です。
当社グループの事業は単一セグメントであり、資源配分、業績評価、および将来業績の予測においてマネジメントの財務情報に対する視点と整合しております。2020年3月期における売上収益および営業利益はそれぞれ3兆2,912億円および1,004億円であります。
当社グループの経営成績に影響を与える事項
当社グループの経営成績は、グローバルな業界トレンドや事業環境における以下の事項に影響を受けます。
買収
当社グループは、研究開発能力を拡大し(新たな手法に展開することを含みます。)、新しい製品(開発パイプラインや上市済み製品)やその他の戦略的領域を獲得するために、新たな事業を買収する可能性があります。同様に、当社グループの主な成長ドライバーに注力するため、また当社グループのポートフォリオを維持するために、事業や製品ラインを売却しております。
これらの買収は企業結合として会計処理され、取得した資産および引き受けた負債は公正価値で計上されております。当社グループの業績は、通常、棚卸資産、および有形固定資産の公正価値の増加や、無形資産の認識に伴う調整にかかる費用および償却費の計上を含む企業結合会計により影響を受けます。また、買収の対価が追加的な借入金で賄われている場合、支払利息の増加も当社グループの業績に影響を与えます。
当社グループは、2019年1月8日、約6兆2,100億円を対価としてShire社を買収し、このうち3兆294億円を現金にて、残額を主に当社普通株式にて支払いました。当社グループは、対価の現金部分の資金を調達するため、3兆2,959億円の有利子負債を計上し、また買収を通じ1兆6,032億円のShire社の有利子負債を引き受けました。当該有利子負債は連結財政状態計算書に計上されております。2019年3月期において買収日における暫定的なShire社の買収に係る取得対価の配分を行い、3兆874億円ののれんおよび3兆8,993億円の無形資産を認識しております。2020年3月期において、当該取得対価の配分が完了したことに伴い前期取得した資産および引き受けた負債の公正価値を遡及修正しており、遡及修正を含むShire社買収日ののれんおよび無形資産はそれぞれ3兆1,655億円、および3兆7,691億円であります。完了したShire社の買収に係る取得対価の配分の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 注記 31 企業結合」をご参照ください。
Shire社買収は、当社グループの製品ポートフォリオや地理的なプレゼンスの大幅な拡大等を通して、当社グループの事業に大きな変化をもたらしました。当社グループの業績は、売上収益及び関連費用の増加、取得した無形資産に係る償却費、および在庫の公正価値調整の費用化に起因する追加的な費用、買収資金を調達するための借入金に関連する支払利息、また事業統合に係る費用の支払い等により、大きく影響を受けます。Shire社買収完了と当社事業への統合に伴い、Shire社買収完了から3期目の会計年度末までに、売上、販売管理機能、研究開発の合理化に向けた取り組みや製品の製造と供給における効率化を通じ、年間約23億米ドルの税引前シナジーが継続的に発生すると予想しております。当社グループは、このようなシナジーを実現するために、Shire社買収完了から会計期間3期にわたり、約30億米ドルの臨時的な費用を要すると考えております。当社グループは、大幅なキャッシュ・フロー創出により、安定した配当政策や、買収完了後のレバレッジ低下を維持することができると考えており、速やかなレバレッジ低下を進めるため、ノンコア資産の処分を開始しております。
買収および上記の影響により、当社グループの業績は期間比較ができない可能性があります。
事業売却
買収に加え、当社グループは、主要な成長ドライバーに注力し、また長期借入金を速やかに返済するための追加キャッシュ・フローを創出するため、事業や製品ラインを売却しております。前年度および当年度における主要な事業売却は以下となります。
•2018年7月、当社グループの連結子会社であるMultilab Indústria e Comércio de Produtos Farmacêuticos Ltda.の全株式およびそれに伴う全ての資産をNovamed Fabricação de Produtos Farmacêuticos Ltd.に譲渡しております。
•2018年8月、当社グループが保有する広東テックプール・バイオファーマCo., Ltd.の全株式およびそれに伴う全ての資産をShanghai Pharmaceutical Holding Co.に2億8,000万米ドル(308億円(注))で譲渡し、2019年3月期において184億円の事業譲渡益を計上しております。
•2019年7月、当社グループはLifitegrast点眼剤Xiidra®5%(以下、「XIIDRA」)をNovartis AGに34億米ドル(3,755億円)で譲渡し、今後追加で最大19億米ドル(2,062億円(注))のマイルストンを受領する可能性があります。なお、当譲渡における譲渡損益に重要性はありません。
•2020年3月、当社グループの中近東・アフリカ諸国およびロシア・ジョージア・独立国家共同体の国々の一部のノンコア資産をAcino International AGおよびSTADA Arzneimittel AGに合計約8億6,000万米ドル(約919億円(注))で譲渡しており、2020年3月期に売却目的保有資産に分類した際に129億円の減損損失を計上しております。当譲渡における譲渡損益に重要性はありません。
•2020年3月、当社グループはラテンアメリカに限定された一部のノンコア資産をHypera S.Aに8億2,500万米ドル(約895億円(注))で譲渡する契約を締結しております。
•2020年4月、当社グループは欧州で販売する一般用医薬品および医療用医薬品ポートフォリオの一部、ならびにデンマークおよびポーランドに所在する2つの製造拠点を、ノンコア資産としてOrifarm Groupに、一定の法律上・規制上のクロージング条件を満たすことを前提に、最大6億7,000万米ドル(727億円(注))で譲渡する契約を締結しております。
•2020年4月、当社グループは欧州委員会による独占禁止法上の懸念が生じた結果、Ethicon, Inc.とのTachoSil譲渡契約を解除しておりますが、継続してTachoSilの売却機会を模索しております。
•2020年6月、当社グループはアジア・パシフィックの国々のみで販売する当社ノン・コア資産である一部の一般用医療薬品および医療用薬品を、一定の法律上・規制上のクロージング条件を満たすことを前提に、総額最大2億7,800万米ドル(302億円(注))でCelltrion Inc.に譲渡する契約を締結しております。
当社グループは速やかなレバレッジ低下を進めるため、引き続きノンコア資産の処分を行います。
(注) 2020年3月31日期末為替レートで米ドルを日本円に換算しております。
特許保護と後発品との競争
医薬品は特に、特許保護や規制上の独占権によって市場競争が規制されることにより、当社グループの業績に貢献する場合があります。代替治療の利用が容易でない新製品は当社グループの売上の増加に貢献します。ただし、保護されている製品についても、効能、副作用や価格面で他社との競争が存在します。一方で、特許保護もしくは規制上の独占権の喪失や満了により、後発品が市場に参入するため、当社グループの業績に大きな悪影響を及ぼすことがあります。当社グループの主要製品の一部は、特許やその他の知的財産権保護の満了により、厳しい競争に晒されており、あるいは晒されると予想しております。例えば、米国において当社グループの最大の売上製品の一つであるベルケイドに含まれる有効成分のボルテゾミブの特許権が満了したことにより、ボルテゾミブを含む競合製品が販売されています。これにより、ベルケイドの売上が減少しており、競合品が市場に参入することにより当社製品の売上がさらに大幅に減少する可能性があります。後発品を販売する他社が特許権の有効性に対する申し立てに成功する場合、もしくは想定される特許侵害訴訟に係る費用以上のベネフィットを前提として参入することを決定する場合があります。また、当社グループの特許権の有効性、あるいは製品保護に対する申し立てが提起された場合には、関連する無形資産の減損損失を認識する可能性があります。
原材料の調達による影響
重要な原材料を社内外から調達することができない場合に、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。例えば、ヒト血漿は当社グループの血漿分画製剤において重要な原材料であります。血漿をより多く収集するため、原料血漿の収集や血漿分画に関連する施設への委託、及び規制当局からの承認を受ける取り組みを行っております。
外国為替変動
2020年3月期において、当社グループでは日本以外の売上が82.0%を占めております。当社グループの収益および費用は、特に当社の表示通貨である日本円に対する米ドルおよびユーロの外国為替レートの変動に影響を受けます。円安は日本円以外の通貨による収益の増加要因となり当社グループの業績に好影響を及ぼしますが、日本円以外の通貨による費用の増加により相殺される可能性があります。反対に、円高は日本円以外の通貨による収益減少要因となり当社グループの業績に悪影響を及ぼしますが、日本円以外の通貨による費用の減少により相殺される可能性があります。為替変動リスクを低減するため、当社グループは重要な一部の外貨建取引について、主に先物為替予約、通貨スワップおよび通貨オプションを利用しヘッジを行っております。
季節的要因
当社グループの売上収益、営業利益および当期利益は、主に日本国内での売上収益の変動により2019年3月期および2020年3月期において第4四半期に減少しています。日本の医薬品卸売業者は、一般的に3月31日である期末に向けて在庫数が減少するよう調整する傾向があり、第4四半期における当社グループの売上収益の減少につながっています。また、日本の医薬品卸売業者は年末年始休暇に向けて在庫数を増やす傾向があり、10月1日から12月31日までの第3四半期に売上収益が増加いたします。
(ⅱ) 重要な会計方針
当社グループの連結財務諸表はIFRSに準拠して作成されております。当連結財務諸表の作成にあたり、経営者は資産および負債の金額、決算日現在の偶発資産および偶発負債の開示、ならびに報告期間における収益および費用の金額に影響を及ぼす見積りおよび仮定の設定を行うことが求められております。見積りおよび仮定は、継続的に見直されます。経営者は、過去の経験、ならびに見積りおよび仮定が設定された時点において合理的であると判断されたその他の様々な要因に基づき当該見積りおよび仮定を設定しております。実際の結果はこれらの見積りおよび仮定とは異なる場合があります。
経営者の見積りおよび仮定に影響を受ける重要な会計方針は以下の通りであります。なお、見積りおよび仮定の変更が連結財務諸表に重大な影響を及ぼす可能性があります。
収益認識
当社グループの収益は主に医薬品販売に関連したものであり、製品に対する支配が顧客に移転した時点で認識されております。収益の認識額は、当社グループが製品と交換に受け取ると見込まれる対価に基づいております。一般的には、出荷時または顧客による受領時点もしくはサービスが履行された時点で収益は認識されます。収益の認識額は、当社グループが財およびサービスと交換に受け取ると見込んでいる対価に基づいております。契約に複数の履行義務が含まれる場合、対価は独立販売価格の比率で各履行義務に配分しております。
当社グループが財およびサービスと交換に受け取る対価は固定金額または変動金額の場合があります。変動対価は重要な戻入れが生じない可能性が非常に高い場合のみ認識しております。
売上高からは、主に小売業者、政府機関、卸売業者、医療保険会社およびマネージドヘルスケア団体に対する割戻や値引等の様々な項目が控除されております。これらの控除額は関連する義務に対し見積られますが、報告期間における当該収益に係る控除額の見積りには判断が伴います。総売上高からこれらの控除額を調整して、純売上高が算定されます。当社グループは、これらの控除額に係る義務を少なくとも四半期毎に確認しており、割戻の変動、リベート・プログラムおよび契約条件、法律の改定、その他重大な事象により関連する義務の見直しが適切であることが示されている場合には、調整を行っております。なお、これまで売上割戻に関する引当金に対する調整が、純損益に重要な影響を与えたことはありません。
米国市場における収益控除に関する取り決めが最も複雑なものになっております。
収益に係る調整のうち最も重要なものは以下のとおりであります。
• 米国メディケイド: 米国のメディケイド・ドラッグ・リベート・プログラムは、連邦政府および州が共同で拠出した資金により医療費を賄えない特定の条件を満たす個人および家族に対して医療費を負担する制度であり、各州が運営を行っております。当プログラムに係る割戻の支払額の算定には、関連規定の解釈が必要となりますが、これは異議申し立てによる影響または政府機関の解釈指針の変更による影響を受ける可能性があります。メディケイドの割戻に係る引当金は、割戻の対象として特定された製品、過去の経験、患者さんからの要請、製品価格ならびに各州の制度における契約内容および関連条項を考慮して算定しております。メディケイドの割戻に係る引当金は関連する売上収益と同じ期間に計上されますが、メディケイドに係る割戻はその期間に全額が支払われません。当社グループの売上控除額計上時点から最終的なメディケイドに係る割戻の会計処理までには通常数カ月の差が生じます。当社グループの売上控除額の算定に用いる製品固有の条件は、当社グループの売上取引が米国のメディケイド・プログラムの対象となるかに関連しています。
• 米国メディケア: 米国のメディケア・プログラムは65歳以上の高齢者もしくは特定の障害者向けの公的医療保険制度であり、当プログラムのパートDにおいて処方薬に係る保険が規定されております。パートDの制度は民間の処方薬剤費保険により運営、提供されております。メディケア・パートDに係る割戻は各処方薬剤費保険の制度内容、患者さんからの要請、製品価格ならびに契約内容を考慮して算定しております。メディケア・パートDの割戻に係る引当金は関連する売上収益と同じ期間に計上されますが、メディケア・パートDに係る割戻はその期間に全額が支払われません。当社グループの売上控除額計上時点から最終的なメディケア・パートDに係る割戻の会計処理までには通常数カ月の差が生じます。当社グループの売上控除額の算定に用いる製品固有の条件は、当社グループの売上取引が米国のメディケア・プログラムの対象となるかに関連しています。
• 顧客に対する割戻: 当社グループは、マーケットシェアの維持と拡大、また、患者さんの当社グループ製品へのアクセスを確実にするために、購入機関、保険会社、マネージドヘルスケア団体およびその他の直接顧客ならびに間接顧客に対して米国コマーシャル・マネージドケアを含む割戻を実施しております。割戻は契約上取決めがなされているため、係る引当金は各取決めの内容、過去の経験および患者さんからの要請を基に算定しております。米国コマーシャル・マネージドケアの割戻に係る引当金は関連する売上収益と同じ期間に計上されますが、米国コマーシャル・マネージドケアに係る割戻はその期間に全額が支払われません。当社グループの売上控除額計上時点から最終的な米国コマーシャル・マネージドケアに係る割戻の会計処理までには通常数カ月の差が生じます。当社グループの売上控除額の算定に用いる製品固有の条件は、当社グループの売上取引が米国コマーシャル・マネージドケアの対象となるかに関連しています。
• 卸売業者に対するチャージバック: 当社グループは特定の間接顧客と、顧客が卸売業者から割引価格で製品を購入可能とする取決めを結んでおります。チャージバックは卸売業者に対する当社グループの請求額および間接顧客に対する契約上の割引価格の差額であります。チャージバックの見積額は各取決めの内容、過去の経験および製品の需要を基に算定しております。当社グループは、売上債権とチャージバックを相殺する法的に強制可能な権利を有し、かつ純額で決済するか、または資産の実現と負債の決済を同時に行う意図を有しております。そのため、チャージバックの見積額は連結財政状態計算書において売上債権から控除しております。
• 返品調整引当金: 返品権付き製品を顧客に販売する際は、当社グループの返品ポリシーや過去の返品率に基づいた返品見込み額を引当金として計上しております。返品見込み率を見積る際は、過去の返品実績、予想される流通チャネル内の在庫量および製品の保管寿命を含む関連要因を考慮しております。
引当額は見積りに基づくため、実際の発生額を完全に反映していない場合があり、特に購入機関の種類、最終消費者および製品の売上構成により変動する可能性があります。
当社グループは、一般的に製品が顧客に引き渡された時点から90日以内に顧客から支払を受けます。当社グループは主としてそれらの取引を本人として履行しますが、他の当事者に代わって販売を行うことがあります。その場合は、代理人として受け取ることが見込まれる販売手数料の金額が収益として認識されます。
当社グループは、知的財産の導出にかかるロイヤルティ、契約一時金およびマイルストンにかかる収益を計上しております。知的財産にかかるロイヤルティ収益は、基礎となる売上が発生した時点で認識しております。契約一時金にかかる収益は、一般的にはライセンスの使用権を付与した時点で認識されます。マイルストンにかかる収益は、一般的にはマイルストンの支払条件が達成される可能性が非常に高く、認識した収益の額の重大な戻入が生じない可能性が非常に高くなった時点で認識しております。導出した化合物の研究開発等のその他のサービスにかかる収益については、サービスの提供期間に応じて認識しております。
当社グループは、一般的に知的財産の導出契約の締結または顧客によるマイルストンの支払条件の達成の確認から60日以内に顧客から支払を受けます。当社グループはグループの知的財産を導出しているため、本人として契約を履行しております。また、当社グループはその他のサービスも本人として提供しております。
のれんおよび無形資産の減損
当社グループは、長期性無形資産について、その資産の帳簿価額が回収不能であるかもしれないことを示す事象または状況の変化がある場合には、減損テストを行っております。のれんおよびその他の現在まだ未償却の無形資産については、少なくとも年次で減損テストを実施しております。2020年3月31日時点において、当社グループはのれんを4兆125億円、無形資産を4兆1,714億円計上しており、これは総資産の63.8%を占めております。
製品に係る無形資産は特許期間に応じた3年から20年の耐用年数を用いて定額法で償却しております。開発中の製品に係る無形資産は、特定の市場における商用化が規制当局により承認されるまで償却をしておりません。商用化が承認された時点で、当該資産の見積耐用年数を確定し、償却を開始しております。
資産は、通常、その財政状態計算書上の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には減損していると判断されます。回収可能価額は個別資産、またはその資産が他の資産と共同で資金を生成する場合はより大きな資金生成単位ごとに見積られます。のれんは、シナジーから便益を得ると見込まれる資金生成単位または資金生成単位グループに配分され、回収可能価額はその資金生成単位ごとに見積られます。資金生成単位は独立したキャッシュ・インフローを形成する最小の識別可能な資産グループであります。回収可能価額の見積りには以下を含む複数の仮定の設定が必要となります。
·将来キャッシュ・フローの金額および時期
·競合他社の動向(競合製品の販売開始、マーケティングイニシアチブ等)
·規制当局からの承認の取得可能性
·将来の税率
·永続成長率
·割引率
キャッシュ・フローが変動する可能性のある事象としては、研究開発プロジェクトの失敗もしくは上市後製品の価値の下落があげられます。研究開発プロジェクトの失敗には、開発の中止、大幅な上市の遅延、もしくは規制当局の承認が得られない場合が該当します。これらの事象が発生した場合、見積った将来キャッシュ・フローが回収できない、もしくは資産の取得後に実施した当初もしくは事後の研究開発投資額が回収できない可能性があります。
これらの仮定に変更が生じた場合は、当該連結会計年度において減損損失および減損損失の戻入れを認識しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 11 のれん および12 無形資産」をご参照ください。
退職給付およびその他の退職後給付制度
当社グループは、当社グループの従業員の大半を対象とする年金およびその他の退職後給付制度を有しております。退職給付費用およびこれらの制度に係る負債の現在価値の算定には将来の事象に関する重要な仮定および見積りの設定を行うことが求められております。これには将来の確定給付債務および確定給付費用の見積りに使用する利率や将来の年金増加率が含まれます。さらに、これらの見積りに関連して、年金数理人が制度からの脱退率や死亡率等の統計情報を経営者に提供しております。市場状況および経済状況の変化、脱退率の増減、加入者の寿命の変化等の要因により、使用した仮定および見積りは実績と大幅に異なる場合があります。重要な数理計算上の仮定に係る感応度情報については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 22 従業員給付」をご参照ください。見積りの大幅な変動は連結財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があります。2020年3月31日現在において、退職給付に係る負債を1,566億円計上しております。
企業結合―公正価値
企業結合の会計処理には、取得した資産および引き受けた負債ならびに条件付対価の公正価値を算定することが求められております。公正価値の見積りには、将来のキャッシュ・フロー予測、割引率、開発および承認マイルストン、市場動向に関する予測、ならびに条件付対価に関しては支払可能額等の様々な仮定の設定が必要となります。また、取得日に存在していた事実および状況について取得日から1年以内に新たな情報を入手したことにより、測定期間中の修正が求められることがあります。この修正により、当初算定した資産および負債の暫定的な公正価値が変更される、または新たな資産および負債の認識されることがあります。これらは過去の比較情報に遡及的に適用され、その後の財務諸表にも修正が反映されます。2020年3月期において、この修正は主に上市後製品から構成される無形資産から生じており、それぞれの公正価値を見積る際の主な仮定には、将来の売上予測および関連する市場の需要が含まれます。
条件付対価は各報告期間の末日おいて公正価値で計上しております。時間的価値に基づく公正価値の変動は金融費用として、その他の公正価値の変動はその他の営業収益またはその他の営業費用としてそれぞれ連結純損益計算書に認識しております。2020年3月期において、公正価値の変動により、条件付対価契約に関する金融負債が81億円減少しております。
当社グループの見積りは、過去の経験や業界における知識に基づいております。見積りは合理的に算出されますが、実績はこれらの見積りとは異なる場合があります。取得した資産グループや企業結合の価値を算出する際に使用される見積りの重要な変化は、当社グループによって取得された有形固定資産または無形資産の将来における減損につながり、当社グループの財政状態および業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。また、偶発負債を含む負債の価値が取得法によって過去に計上された金額と著しく異なる場合は、追加費用の計上が必要となり、当社グループの財政状態および業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。
訴訟に係る偶発事象
当社グループは、通常の営業活動において主に製造物責任訴訟および賠償責任訴訟に関与しております。詳細については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 32 コミットメントおよび偶発負債」をご参照ください。
偶発負債は、その特性から不確実なものであり複雑な判断や可能性に基づいております。訴訟およびその他の偶発事象に係る引当金を算定する際には、該当する訴訟の根拠や管轄、その他の類似した現在および過去の訴訟案件の顛末および発生数、製品の性質、訴訟に関する科学的な事項の評価、和解の可能性ならびに現時点における和解にむけた進行状況等を勘案しております。さらに、未だ提訴されていない製造物責任訴訟については、主に過去の訴訟の経験や製品の使用に係るデータに基づき、費用を合理的に見積ることができる範囲で引当金を計上しております。また、保険の補償範囲期間内である場合は保険による補償についても考慮しております。補償範囲の検討の際に、当社グループは、保険契約の制限や除外、保険会社による補償の拒否の可能性、保険業者の財政状態、ならびに回収可能性および回収期間を考慮しております。引当金および関連する保険補償額の見積りは、連結財政状態計算書上において負債および資産として総額で計上しております。2020年3月31日現在において、係争中の訴訟案件およびその他の案件について497億円の引当金を計上しております。
法人所得税
当社グループは、税法および税規制の解釈指針に基づき税務申告を行っており、これらの判断および解釈に基づいた見積額を計上しております。通常の営業活動において、当社グループの税務申告は様々な税務当局による税務調査の対象であり、これらの調査の結果、追加税額、利息、または罰金の支払いが課される場合があります。法律および様々な管轄地域の租税裁判所の判決に伴う法改正により、不確実な税務ポジションの見積りの多くは固有の不確実性を伴います。税務当局が当社グループの税務ポジションを認める可能性が高くないと結論を下した場合に、当社グループは、税務上の不確実性を解消するために必要となる費用の最善の見積り額を認識します。また、未認識の税務上の便益は事実および状況の変化に伴い調整されます。これらの税務ポジションは、例えば、現行の税法の大幅改正、税務当局による税制または解釈指針の発行、税務調査の際に入手した新たな情報、または税務調査の解決により調整が行われる可能性があります。当社グループは、不確実な税務ポジションに係る当社グループの見積りは、現時点において判明している事実および状況に基づき適切かつ十分であると判断しております。
また、各報告期間の末日において繰延税金資産の回収可能性を評価しております。繰延税金資産の回収可能性の評価においては、予想される将来加算一時差異の解消スケジュール、予想される将来課税所得およびタックスプランニングを考慮しております。過去の課税所得の水準および繰延税金資産が認識できる期間における将来の課税所得の見積りに基づき、実現する可能性が高いと予想される税務上の便益の額を算定しております。2020年3月31日現在における繰延税金資産を認識していない未使用の繰越欠損金、将来減算一時差異、および未使用の繰越税額控除はそれぞれ1兆5,802億円、3,333億円、および93億円であります。将来における見積りおよび仮定の変更は法人所得税費用に重要な影響を与える可能性があります。
事業構造再編費用
当社グループでは、費用削減に関連した取り組みおよび買収に係る事業統合に関連して事業構造再編費用が発生します。退職金およびリース解約費用が事業構造再編費用の主な内訳であり、事業構造再編に係る引当金については、計画が承認され、費用を見積もることができ、支払の可能性が高い場合に引当金を計上しております。事業構造再編に係る引当金の認識には、支払時期や、退職金を受領した後一定期間会社に在籍する従業員数等の様々な見積りが必要となります。最終的なコストは当初の見積りから異なる可能性があります。
当社グループは、将来において買収および売却に関連した事業統合に係る追加の事業構造再編費用を計上すると見込んでおります。2020年3月31日現在において、当社グループは、事業構造再編に係る引当金を450億円計上しております。詳細および事業構造再編に係る引当金の推移は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 23 引当金」をご参照ください。
(ⅲ) 当年度における業績の概要
当年度の連結業績は、以下のとおりとなりました。
(単位:億円、%以外)
(注) Shire社の買収に伴い、前年度の業績には、2019年1月8日から3月31日までの期間における同社の業績が含まれています。
当年度において、当社グループはShire 社買収により取得した資産および引き受けた負債について取得対価の配分を完了しました。この結果、前年度の連結純損益計算書を遡及修正しております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 31企業結合」をご参照ください。
〔売上収益〕
売上収益は、前年度から1兆1,940億円増収(+56.9%)の3兆2,912億円となりました。Shire社買収により獲得した製品の売上が年間を通じて計上された(1兆5,222億円)ことが主な要因であり、これによる増収額は1兆2,130億円となりました。
地域別売上収益
各地域の売上収益は以下のとおりです。
(単位:億円、%以外)
(注) その他の地域は中東、オセアニアおよびアフリカを含みます。
当社グループの売上収益の大部分は、主要な医療用医薬品により占められております。当年度の各領域における主要製品の売上は以下のとおりです。
(注) 配合剤、パック製剤を含む。
各疾患領域における売上収益の前年度からの増減は、主に以下の製品によるものです。
- 消化器系疾患
消化器系疾患領域の売上収益は、前年度から1,586億円増収(+29.4%)の6,979億円となりました。当社のトップ製品である潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「エンティビオ」(国内製品名:「エンタイビオ」)の売上が伸長し、前年度から780億円増収(+29.0%)の3,472億円となり、売上成長を牽引しました。米国および欧州においては、潰瘍性大腸炎とクローン病に対する生物学的製剤の新規投与患者シェアがさらに拡大し、同剤の全体の市場シェアも伸長しました。また、日本においては、当第1四半期において、クローン病の効能追加を取得しました。酸関連疾患治療剤「タケキャブ」も、逆流性食道炎や低用量アスピリン投与時における胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発抑制等の効能を中心として、日本において新規処方が拡大し、売上は145億円増収(+24.8%)の727億円となりました。また、Shire社買収により獲得した短腸症候群治療剤「GATTEX / REVESTIVE」の当年度の売上は、年間を通じて計上されたことから、491億円増収の618億円となりました。
- 希少疾患
Shire社買収により獲得した希少疾患領域の当年度の売上収益は、年間を通じて計上されたことから、5,055億円増収の6,349億円となりました。売上収益に最も寄与した製品の売上は、希少血液疾患領域では血友病A治療剤「アドベイト」の1,579億円、遺伝性血管性浮腫領域では同疾患の発作予防剤「TAKHZYRO」の683億円、希少代謝性疾患領域ではハンター症候群治療剤「エラプレース」の679億円であり、それぞれ1,258億円、585億円および528億円の増収となりました。
- 血漿由来の免疫疾患治療
血漿由来の免疫疾患治療領域の売上収益は、主にShire社買収により獲得した製品が加わったことにより、3,007億円増収の3,942億円となりました。当売上収益は、Shire社買収前から日本で血漿分画製剤事業を展開してきた当社連結子会社である日本製薬株式会社の製品売上を含みます。免疫グロブリン製剤の売上合計は2,987億円となり、最も寄与した製品は、原発性免疫不全症(PID)と多巣性運動ニューロパチー(MMN)の治療に主に用いられ、これら疾患に対する米国における標準治療剤である静注製剤「GAMMAGARD LIQUID」でした。また、主に血液量減少症と低アルブミン血症の治療に用いられる「ALBUMIN GLASS」と「FLEXBUMIN」を含むアルブミン製剤の売上合計は672億円となり、その他の血漿由来の免疫疾患治療剤の売上合計は283億円となりました。
- オンコロジー
オンコロジー(がん)領域の売上収益は、前年度から215億円増収(+5.4%)の4,210億円となりました。多発性骨髄腫治療剤「ニンラーロ」の売上は、特に米国と中国での好調な業績が成長に寄与し、前年度から154億円増収(+24.7%)の776億円となりました。また、悪性リンパ腫治療剤「アドセトリス」の売上は、CD30陽性ホジキンリンパ腫に対する一次治療の効能追加を取得した日本において特に伸長し、98億円増収(+22.8%)の527億円となりました。非小細胞肺がん治療剤「アルンブリグ」の売上は、引き続き欧州諸国での上市があったことにより前年度から20億円増収(+39.2%)の72億円となりました。多発性骨髄腫治療剤「ベルケイド」はオンコロジー領域の中でも売上が大きい製品ですが、同剤の売上は、対前年度95億円減収(△7.5%)の1,183億円となり、うち、米国外の売上にかかるロイヤルティ収益は、対前年度127億円の大幅な減収(△57.0%)により96億円となりました。米国では、競合品の追加参入による影響が想定を下回り、31億円増収(+2.9%)の1,088億円となりました。
- ニューロサイエンス
ニューロサイエンス(神経精神疾患)領域の売上収益は、前年度から2,839億円増収(+183.5%)の4,385億円となりました。増収の主な要因は、2,247億円増収の2,741億円の売上となった注意欠陥/多動性障害(ADHD)治療剤「バイバンス」(国内製品名:「ビバンセ」)を含め、Shire社買収により獲得したポートフォリオが、年間を通じて売上計上されたことによります。旧武田薬品の製品である大うつ病(MDD)治療剤「トリンテリックス」の売上は、新規患者の増加と治療期間の拡大により、前年度から131億円増収(+22.8%)の707億円となりました。両製品は、当第3四半期に日本においても上市されております。
〔売上原価〕
売上原価は、対前年度4,380億円増加(+67.2%)の1兆898億円となりました。この増加は、主にShire社の買収により取得した製品にかかる年間の売上原価およびShire社買収に伴い計上された棚卸資産の公正価値調整等にかかる非資金性の費用の増加1,257億円によるものです。これらの増加は、主に製品構成の改善等による旧武田薬品の製品にかかる売上原価の減少と一部相殺されております。
〔販売費及び一般管理費〕
販売費及び一般管理費は、主に買収したShire社の事業運営にかかる費用の影響により、対前年度2,471億円増加(+34.4%)の9,647億円となりました。この増加は、グローバル経費削減イニシアチブ(注1)による削減効果、Shire社との統合によるコストシナジーのほか、前年度に発生したShire社買収関連費用238億円の影響により一部相殺されております。
(注1)消費量の削減、購買価格低減による経費削減、および組織の最適化によって売上収益比率の向上を目指す当社グループのイニシアチブ
〔研究開発費〕
研究開発費は、主にShire社買収により取得した研究開発活動にかかる費用の影響により、対前年度1,241億円増加(+33.7%)の4,924億円となりました。
〔製品に係る無形資産償却費及び減損損失〕
製品に係る無形資産償却費及び減損損失は、対前年度2,768億円増加(+155.0%)の4,554億円となりました。これは主にShire社買収に伴い取得した無形資産の償却費が2,506億円増加したことによります。減損損失は347億円増加の433億円となりました。この減損損失の増加は、2019年5月の中間解析結果を受けTAK-616 AMRプログラムの開発中止を決定したことに伴い計上した減損損失156億円、およびTAK-607の治験デザイン変更に伴い計上した減損損失109億円を含む、一部の上市後製品および開発中の製品に係る減損損失を計上したことによるものです。なお、前年度は、Mersana Therapeuticsとの共同研究開発の終了に伴う減損損失72億円を含む86億円の減損損失を計上しました。
〔その他の営業収益〕
その他の営業収益は、対前年度997億円減少(△62.3%)の602億円となりました。この減少は、主に前年度において、当社グループの旧東京本社ビルを含む有形固定資産の売却益503億円、および不動産事業の譲渡に関連して連結子会社株式譲渡益382億円を計上したことによります。また、前年度に広東テックプール・バイオファーマCo., Ltd.の株式売却益184億円を計上したことも減少要因となりました。
〔その他の営業費用〕
その他の営業費用は、対前年度1,455億円増加(+141.1%)の2,487億円となりました。このうち事業構造再編費用については、対前年度981億円増加の1,810億円となりました。この増加は、主にShire社との統合が進捗していることに伴い、アイルランドの製造拠点の合理化により計上した減損損失を含むShire社買収に関連する統合費用が対前年度757億円増加し1,354億円となったことに加え、湘南ヘルスイノベーションパーク(「湘南アイパーク」)のセール・アンド・リースバック契約に伴い有形固定資産の減損損失等を計上したことによるものです。また、当年度において承認前在庫にかかる評価損を304億円計上した一方、前年度は承認取得に伴い過去の承認前在庫にかかる評価損の戻入41億円を計上したことにより、承認前在庫にかかる評価損が345億円増加しました。
〔営業利益〕
営業利益は、上記の要因を反映し、前年度から1,373億円減少(△57.8%)の1,004億円となりました。
〔金融損益〕
金融収益と金融費用をあわせた金融損益は1,372億円の損失となり、前年度から707億円の損失増加となりました。これは、主にShire社買収に伴い発行された社債及び借入金により利息費用が1,008億円増加したことによるものです。この利息費用の増加は、前年度に計上されたShire社買収のためのブリッジローン契約に伴うファシリティー・フィー161億円、および当社がワラントを保有する未上場企業の株式が上場されたことに伴い当年度計上した評価益213億円により一部相殺されております。
〔持分法による投資損益〕
持分法による投資損益は240億円の損失となり、前年度から196億円(△45.0%)の損失減少となりました。これは、主に武田テバ薬品株式会社(注2)において認識された減損損失の減少によるものです。
(注2)武田テバ薬品株式会社は長期収載品事業およびジェネリック医薬品事業を営んでおります。
〔法人所得税費用〕
法人所得税費用は、前年度△75億円に対して、当年度は△1,050億円となりました。これは主に、当年度のスイスにおける税制改正に伴い計上された非資金性の繰延税金便益△946億円の計上、繰越欠損金に対する繰延税金資産の認識、および主に償却費、棚卸資産の公正価値調整、統合費用等のShire社買収に関連する費用を計上したことに伴う税引前利益の減少によるものです。これらの税金費用の減少影響は、不確実な税務ポジションによる税金負債の増加および事業構造再編にかかる税金影響と一部相殺されております。
〔当期利益〕
当期利益は、上記の要因を反映し、前年度から908億円減益(△67.2%)の443億円となりました。
(ⅳ) 当年度における実質的な成長の概要
Coreと実質的な成長の定義
当社は、事業の計画策定および業績評価において、「実質的な成長」(Underlying Growth)の概念を採用しております。
「実質的な成長」は、当年度と前年度(四半期もしくは年間)の業績を共通の基準で比較するものであり、マネジメントによる業績評価に使用されています。これら共通の基準で比較される業績は、為替レートを一定として、事業等の売却影響およびその他の非定常的もしくは特別な事象に基づく影響、本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響を控除し算定されます。当社は、この「実質的な成長」が、事業活動のパフォーマンスを表す共通の基準を提供するため、投資家に有用であると考えています。なお、本指標は、国際会計基準(IFRS)に準拠したものではありません。
当社は、「Underlying Revenue Growth」(実質的な売上収益の成長)、「Underlying Core Operating Profit Growth」(実質的なCore営業利益の成長)および「Underlying Core EPS Growth」(実質的なCore EPSの成長)を重要な財務指標としています。
実質的な売上収益は、為替レートを一定として、財務ベースの売上収益に、報告期間における非定常的な事象に基づく影響および事業等の売却影響を調整して計算します。
実質的なCore営業利益は、為替レートを一定として、Core営業利益(以下に定義)に、報告期間における事業等の売却影響を調整して計算します。
Core営業利益*は、当期利益から、法人所得税費用、持分法による投資損益、金融損益、その他の営業収益およびその他の営業費用、製品に係る無形資産償却費及び減損損失を控除して算出します。その他、企業買収に係る会計処理の影響や買収関連費用など、本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響を調整します。
* 2019年度より、「Core Earnings」の名称を「Core営業利益」に変更しました。なお、その定義に変更はありません。
実質的なCore EPSの算定にあたっては、為替レートを一定として、当期利益から、事業等の売却影響、およびCore営業利益の算出において控除された項目と営業利益以下の各科目のうち、重要性のある、非定常的もしくは特別な事象に基づく影響、本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響を調整します。これらには、条件付対価に係る公正価値変動(時間的価値の変動を含む)影響などが含まれます。さらに、これらの調整項目に係る税金影響を控除した後、比較年度末の自社株式控除後の発行済株式総数で除して算定します。
当年度の実質的な成長は、以下のとおりとなりました。
(注1)当年度の実質ベースの成長率は、対前年度のpro-forma成長率。前年度 pro-formaは、前年度(2018年4月-2019年3月)の武田薬品売上収益(事業売却等を調整)と、前年度の年間平均レート(1米ドル111円)で円貨換算し米国会計基準(US GAAP)から国際会計基準(IFRS)に組み替えた(なお、重要な差異は認められなかった)2018年4月から買収完了日(2019年1月8日)までの旧Shire社売上収益(事業売却等を調整)の合計
〔実質的な売上収益の成長〕
実質的な売上収益の成長は、タケダの14のグローバル製品(注2)の好調な業績(+21.2%)が牽引し、対前年度+1.6%となりました。競争の激化や後発品の浸透により、一部の製品、特に希少血液疾患領域において影響を受けましたが、当社の主要な疾患領域である消化器系疾患、血漿由来の免疫疾患治療、オンコロジーおよびニューロサイエンスにおいて、それぞれ+11.5%、+9.2%、+8.4%、+10.9%の成長となりました。
(注2)タケダの14のグローバル製品
消化器系疾患:エンティビオ、GATTEX/REVESTIVE、ALOFISEL
希少疾患:NATPARA、アディノベイト/ADYNOVI、TAKHZYRO、エラプレース、ビプリブ
血漿由来の免疫疾患治療:GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG、HYQVIA、CUVITRU、アルブミン
オンコロジー:ニンラーロ、アルンブリグ
・ 消化器系疾患
消化器系疾患領域の実質的な売上収益は、前年度から+11.5%の成長となりました。後発品のさらなる浸透により、「パントプラゾール」(△15.3%)、「ランソプラゾール」(△23.0%)、「リアルダ」(△38.9%)などの特許満了製品の売上が減少したものの、「エンティビオ」(+32.9%)と「タケキャブ」(+24.9%)が、これらの減収影響を上回る増収となりました。また、「GATTEX / REVESTIVE」は、2019年5月、米国において小児適応の効能追加を取得し、成人患者の平均治療期間が伸長したことなどにより+21.7%の増収となりました。
・ 希少疾患
希少疾患領域の実質的な売上収益は、競争圧力の高まりと米国における「NATPARA」の回収の影響により△4.9%の減収となりました。特に、希少血液疾患領域(△8.6%)では競合品による影響が顕著となり、半減期延長型製剤「アディノベイト」(+9.8%)の増収により一部相殺したものの、血友病A治療剤である「アドベイト」(△12.3%)と「ファイバ」(△15.5%)が大幅な減収となりました。希少代謝性疾患領域(△3.2%)では、副甲状腺ホルモン製剤「NATPARA」(△49.7%)のカートリッジのゴム製隔壁に関連する問題が判明したため、2019年9月、米国において同剤を回収しました。また、遺伝性血管性浮腫領域(+3.4%)においては、「フィラジル」(△50.2%)が後発品の参入により、「CINRYZE」(△30.7%)が患者数の減少により減収となりましたが、米国および欧州における「TAKHZYRO」(+318.3%)の増収がこれらの影響を上回り、増収となりました。
・ 血漿由来の免疫疾患治療
血漿由来の免疫疾患治療領域の実質的な売上収益は、+9.2%の成長となりました。免疫グロブリン製剤は、静注製剤、皮下注製剤ともに伸長し+7.2%の増収となりました。また、アルブミン製剤は、中国における需要の増加による好調な売上伸長や生産能力の拡大もあり、+20.3%の増収となりました。
・ オンコロジー
オンコロジー(がん)領域の実質的な売上収益は、「ニンラーロ」(+28.5%)と「アドセトリス」(+33.1%)が牽引し、前年度から+8.4%の成長となりました。また、「アルンブリグ」も+43.1%の増収となりました。オンコロジー製品の中では、唯一、「ベルケイド」(△5.9%)が減収となりましたが、これは、欧州において2019年4月に後発品が参入したことにより、米国外の売上にかかるロイヤルティ収益が△56.3%減少したことによります。
・ ニューロサイエンス
ニューロサイエンス(神経精神疾患)領域の実質的な売上収益は、それぞれが注意欠陥/多動性障害(ADHD)と大うつ病(MDD)治療の米国における主要製品である「バイバンス」(+13.7%)および「トリンテリックス」(+25.0%)の増収により、+10.9%の成長となりました。「ADDERALL XR」は、後発品との競合の影響が増大し、△27.5%の減収となりました。
(注3) 当年度の実質ベースの成長率は、対前年度のpro-forma成長率。前年度 pro-formaは、前年度(2018年4月-2019年3月)の武田薬品売上収益(事業売却等を調整)と、前年度の年間平均レート(1米ドル111円)で円貨換算し米国会計基準(US GAAP)から国際会計基準(IFRS)に組み替えた(なお、重要な差異は認められなかった)2018年4月から買収完了日(2019年1月8日)までの旧Shire社売上収益(事業売却等を調整)の合計
実質的な売上収益の計算において控除した主な非定常的な事象に基づく影響および事業等の売却影響は次の通りです。
・ 2019年3月期に連結子会社であった広東テックプール・バイオファーマCo,.Ltd.(「テックプール社」)およびMultilab Indústria e Comércio de Produtos Farmacêuticos Ltda.(「マルチラブ社」)を売却したため、前年度における両社の売上収益を連結の売上収益から控除しています。
・ 2019年5月に売却に合意した 「XIIDRA」(2019年7月に売却完了)および「TACHOSIL」の売上を、当年度および前年度の売上収益から控除しています。
〔当年度の実質的なCore営業利益率〕
当年度の実質的なCore営業利益率は、グローバル経費削減イニシアチブおよびShire社との統合のコストシナジーを反映し、28.9%となりました。
Shire社の統合費用や企業結合会計に伴う非資金性の費用など、当社の本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響を控除した当年度のCore営業利益は9,622億円となりました。
〔当年度の実質的なCore EPS〕
当年度の実質的なCore EPSは、395円となりました。
〔資産〕
当年度末における資産合計は、前年度末から9,717億円減少し、12兆8,211億円となりました。のれんおよび無形資産は、 主に為替影響や無形資産の償却により、それぞれ2,277億円および5,798億円減少しました。また、主に「XIIDRA」の売却完了により売却目的で保有する資産が3,319億円減少し、さらに棚卸資産が主に買収により取得した棚卸資産の公正価値調整の費用化に伴い1,601億円減少しました。これらの減少は、主に繰延税金資産の増加2,191億円、「XIIDRA」の売却に伴い条件付対価契約に関する資産が認識されたことによるその他の金融資産(非流動)の増加704億円、および主に新リース会計基準(IFRS第16号)(注1)を適用したことによる有形固定資産の増加544億円により一部相殺されております。
(注1)IFRS第16号では、リースの評価額および関連する負債を連結財政状態計算書の非流動資産および非流動負債に計上することを規定しております。負債に関する説明は以下をご覧ください。
〔負債〕
当年度末における負債合計は、前年度末から5,132億円減少し、8兆936億円となりました。この減少は、主に社債の償還、借入金の返済および為替影響により社債及び借入金が6,576億円減少し5兆933億円(注2)となったことによるものです。なお、2019年6月にハイブリッド社債(劣後特約付社債)5,000億円を発行した一方、シンジケートローン5,000億円を返済しております。さらに、2019年8月には、1,404.5百万米ドル(1,502億円)の米ドル建て無担保普通社債を繰上償還し、2019年9月には3,300百万米ドル(3,507億円)の米ドル建て無担保普通社債を償還しました。2020年3月には700百万米ドル(774億円)の米ドル建てシンジケートローンを繰上返済しました。また、社債及び借入金の減少に加え、主に「XIIDRA」の売却完了により売却目的で保有する負債が1,278億円減少しております。これらの減少は、主に上述のIFRS第16号を適用したことによるその他の金融負債(非流動)の増加1,589億円により一部相殺されております。
(注2)当年度における社債及び借入金の帳簿価額はそれぞれ3兆2,050億円および1兆8,883億円です。なお、社債及び借入金の内訳は以下の通りです。
社債:
借入金:
[資本]
当年度における資本合計は、前年度末から4,585億円減少の4兆7,275億円となりました。この減少は、主に2,827億円の配当金の支払により利益剰余金が2,255億円減少したことや、円高の影響による為替換算調整勘定の変動によりその他の資本の構成要素が2,573億円減少したことによります。
資金の調達および使途
当社グループにおいて流動性は、主に営業活動に必要な現金、資本支出、契約上の義務、債務の返済、利息や配当の支払いに関連して必要となります。営業活動においては、研究開発費、マイルストン支払い、販売およびマーケティングに係る費用、人件費およびその他の一般管理費、原材料費等の支払いにあたり現金が必要となります。また、法人所得税の支払いや運転資金にも多額の現金が必要となります。
当社グループは、生産設備の能力増強・合理化、減価償却を終えた資産の入れ替え、業務管理の効率化等のために設備投資を行っています。無形資産に係る資本的支出は、主に第三者のパートナーから導入したライセンス製品に対するマイルストン支払い、およびソフトウェア開発費です。連結財政状態計算書に計上されている有形固定資産および無形資産に係る資本支出は、2019年3月期および2020年3月期において、それぞれ2,446億円および2,463億円であります。また、2020年3月31日現在において、有形固定資産の取得に関する契約上のコミットメントは302億円であります。加えて、2020年3月31日現在において、無形資産の取得に関して契約上の取決めを有しております。無形資産に係るマイルストン支払いの詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記32 コミットメントおよび偶発債務」をご参照ください。また、資本管理の一環として、当社グループは、資金需要、市場等の環境、またはその他の関連する要因に照らして、定期的に資本的支出の評価を行っております。
当社の配当金の支払額は、2019年3月期および2020年3月期において、それぞれ1,430億円および2,827億円であります。1株当たり配当額は中間配当および期末配当金それぞれ90円ずつとし、年間180円を継続することを目指しています。詳細は、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご参照ください。
当社グループは、有利子負債に対し元本と利息を支払う必要があります。2020年3月31日現在において、1年内に必要となる社債および借入金の返済額および利息の支払額は、それぞれ5,871億円、1,025億円であります。詳細は、「有利子負債および金融債務」をご参照ください。
当社グループの資金の調達源は、主に現金及び現金同等物、短期コマーシャルペーパー、金融機関からのコミットメントラインによる借入、グローバル資本市場からの長期借入金であります。当社グループは、キャッシュ・フロー予測に基づき保有外貨を監視し、調整しております。当社グループの事業の大部分は日本国外で行っており、多額の現金を日本国外に保有しております。日本国内で必要なキャッシュ・フローを創出するために外貨を使用することは国内規制による影響を受ける可能性があり、また比較的影響は小さいものの、日本へ現金を移転することから生じる所得税による影響も受けます。
2020年3月31日現在において、当社グループは6,376億円の現金及び現金同等物と7,000億円の未使用のコミットメントライン契約を保有しており、現在の事業活動に必要となる資金は十分に確保できていると考えております。当社グループは、事業活動を支えるため、持続的に高い流動性を保ち、資本市場へのアクセス拡大を追求していきます。
連結キャッシュ・フロー
連結キャッシュ・フローの状況は、以下のとおりであります。
(単位:億円)
営業活動によるキャッシュ・フローは、前年度3,285億円から3,413億円増加の6,698億円となりました。この増加は、前年度より当期利益は908億円減少したものの、主にShire社買収に関連する非資金性費用の影響を除いた、事業から生み出されるキャッシュが増加したことによります。非資金性費用の影響は、主にShire社買収に伴い計上した製品に係る無形資産により減価償却費及び償却費が3,360億円増加したこと、一部の上市後製品および開発中の製品、アイルランドの製造拠点や湘南アイパーク等の拠点再編に関連して減損損失が918億円増加したこと、また、主にShire社買収日において公正価値評価された棚卸資産の費用化に伴い棚卸資産が868億円減少したこと等によるものです。
また、Shire社買収のための資金調達にかかる利息費用を含む金融費用(純額)の増加707億円、および賞与引当金等の資産負債の増減影響が営業活動によるキャッシュ・フローのプラスの調整項目として含まれています。
これらの増加は、主に前年度に買収した旧Shire社における法人所得税の支払いによる法人所得税等の支払額の増加1,831億円により一部相殺されております。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前年度の△2兆8,357億円から3兆1,278億円増加の2,921億円となりました。これは主に、前年度においてShire社買収に伴い2兆8,919億円(取得した現預金等を除いた支出額)を支出したことによるものです。加えて、当年度において「XIIDRA」の売却による3,755億円の収入を計上したことに伴い、事業売却による収入が3,764億円増加したことによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前年度の2兆9,462億円から△1兆52億円となりました。この3兆9,515億円の減少は主に、前年度にShire社買収のための社債の発行及び長期借入れによる収入2兆7,959億円を計上したこと、また当年度に7,011億円の社債の償還及び長期借入金の返済による支出を計上したことによるものです。さらに、短期借入金の減少7,185億円、配当金の支払額の増加1,396億円、および主にShire社買収のための資金調達に伴い利息の支払額の増加923億円等がありました。
なお、当年度において、ハイブリッド社債の発行5,000億円を含む長期借入れ及び社債の発行による収入4,962億円があった一方、主に短期シンジケートローンの返済5,000億円による短期借入金の純減少額3,512億円がありました。
有利子負債および金融債務
2019年3月31日および2020年3月31日現在において社債及び借入金はそれぞれ5兆7,510億円、5兆933億円であります。これらの有利子負債は、当社が過年度に発行した無担保社債、普通社債、およびシンジケートローン、また、Shire社買収に必要な資金の一部を調達するための借入金、およびShire社買収により引き受けた負債を含み、連結財政状態計算書に計上されております。当社の借入金は主に買収関連のものであり、季節性によるものではありません。
当社グループは2019年6月6日に合計元本額5,000億円の劣後特約付きハイブリッド社債(以下、「ハイブリッド債」)を発行しました。当発行による収入はShire社の買収に必要な資金を調達するために発行されたショートタームローンによる既存のシンジケートローンの返済に充てられました。当ハイブリッド債の返済期限は2079年6月6日ですが、当ハイブリッド債の契約条件に基づき、元本全額を、2024年10月6日以降の各利払日において早期償還する可能性があります。利息は毎年改定される利率に基づき半年毎に支払われます。なお、当ハイブリッド債は無担保であり、財務制限条項は付されておりません。
当社グループは2019年9月に7,000億円のコミットメントファシリティー契約を複数の日本および在外銀行と締結することに合意しました。当コミットメントファシリティーの期間は、2019年10月から最低5年間です。なお、当コミットメントファシリティーの契約締結にあたり、2020年3月に満期を迎える既存の短期コミットメントファシリティー3,000億円は、2019年9月に解約しております。当コミットメントファシリティーは、一般事業資金として使用することを目的としております。なお、2020年3月31日現在において当7,000億円のコミットメントファシリティーの使用はありません。
2019年3月期に関しては社債および長期借入金の償還または返済を行っておりませんが、当社グループは2020年3月期に7,011億円の社債および長期借入金を償還または返済しております。2019年7月、600億円の無担保社債および600億円のシンジケートローンをそれぞれの返済期限に伴い償還または返済しております。また2019年8月、合計1,404.5百万米ドル(1,502億円)の米ドル建無担保普通社債の早期償還を行っております。2019年9月、合計3,300百万米ドル(3,507億円)の米ドル建て無担保普通社債を償還期日に伴い償還しております。さらに2020年3月、700万米ドル(774億円)の米ドル建てシンジケートローンの早期償還を行っております。
当社グループは2019年12月に、2018年11月19日に私募により発行された2018年度米ドル建無担保普通社債のうち、2019年8月29日に償還した1,000百万米ドル(利率3.8%)を除く全額(以下、「発行済社債」)についてエクスチェンジ・オファーを完了しました。当該エクスチェンジ・オファーの結果、4,461百万米ドルに相当する発行済社債残高の概ねが、元本および契約条件を同一とする、1933年米国証券法に基づく登録債への交換に応募されました。本交換募集に応募され、受理された全ての発行済社債は償却された一方、応募されなかった元本金額39百万米ドル相当は未登録の発行済社債として残っております。
2020年3月31日時点において、当社グループの長期融資契約には、特定の財務比率や社債及び借入金の上限額、その他の制限を規定する各種の制限条項を含む様々な財務制限条項が付されております。2020年3月31日現在、当社グループはこれらの全ての制限条項を遵守しております。2020年3月期において、当社グループは特定の借入金に関する複数の財務制限条項を改定しました。この改定による主な変更は、2020年7月以降に最終弁済期限を迎える一定の借入金を対象としております。当該変更は、連続する2事業年度において税引前利益がマイナスになることを禁じる財務制限条項の削除、並びにこれに替わる毎年3月末および9月末において連結財政状態計算書における純負債の過去12か月間の連結EBITDA(連結EBITDAは契約書にて定義されたもの)に対する比率が一定水準を上回らないことを求める財務制限条項の導入が含まれます。2020年3月31日現在、当社グループは全ての制限条項を遵守しております。これらは、7,000億円の未使用のコミットメントラインからの借入を制限するものではありません。
当社グループは、短期の流動性の管理のため、日本の無担保コマーシャルペーパープログラムを保有しております。2020年3月31日時点におけるコマーシャルペーパープログラムの資金調達額は1,440億円であります。当社グループは、さらに2020年3月期において極度額2,300億円の短期コミットメントライン契約を締結しておりますが、借入はしておりません。
借入金の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 20 社債及び借入金」をご参照ください。
信用格付け
当社グループの信用格付けは、当社グループの財務の健全性、業績、債務の返済能力等に関する各格付機関の意見が反映されております。本報告書時点における当社グループの信用格付けは以下のとおりです。
この格付けは、社債の購入、売却、保有を推奨するものではありません。この格付けは指定された格付機関によって適宜改訂あるいは撤回される可能性があります。それぞれの財務の健全性レーティングは、独立評価されたものであります。
オフバランス取引
マイルストン支払
新製品の開発に係る第三者との提携契約に基づき、当社グループは、パイプライン品目の開発、新製品の上市および上市後の販売等にかかる一定のマイルストン達成に応じた支払義務が生じる場合があります。2019年3月31日および2020年3月31日現在における潜在的なマイルストン支払の契約金額は、それぞれ6,555億円および8,239億円であります。これらは、開発中のパイプライン品目に係る潜在的なコマーシャルマイルストン支払を除いた金額であります。
契約負債
2020年3月31日現在における契約負債は以下のとおりです。
(単位:億円)
(1) 2020年3月31日現在における日本円以外の通貨建債務は、期末為替レートで日本円に換算しており、為替レートの変動により金額が異なる可能性があります。
(2) 当社グループが関連する金融商品の財務制限条項違反を行った場合、返済義務が早まる可能性があります。
(3) 利息支払義務を含みます。
(4) 社債の契約額のうち、「3年超5年以内」の金額には、劣後特約付きハイブリッド社債(ハイブリッド債)元本全額を2024年10月6日以降の各利払日において早期償還する可能性があるため、当ハイブリッド債の元本5,000億円が含まれています(早期償還可能日である2024年10月6日までの利率(1.720%)を用いて期日別残高を作成しています。2024年10月以降の利息は上記の表には含まれておりません)。ハイブリッド債の詳細については、「第5経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 20 社債及び借入金」をご参照ください。
(5) 2021年3月31日以降の年金および退職後給付制度への拠出額については、拠出の時期が不確実であり、利率、運用収益、および法律およびその他の変動要因に依存するため、確定することはできません。
(6) 確定給付債務、訴訟引当金および長期未払法人税等、時期を見積もることができない契約負債、また、金額が公正価値の変動により変化するデリバティブ負債および条件付対価等の負債は含まれておりません。また、特定の将来の事象の発生に左右されるマイルストン支払いも含んでおりません。
(7) 通常の事業活動における購買に関する発注は含んでおりません。
Shire社の買収
Shire社の買収に関連し、当社グループは2018年5月8日付でShire社買収に向けての協力契約をShire社との間で締結し、本件買収は2019年1月8日に完了しました。当社グループはShire社の買収に関連し、負債を負っております。かかる負債に関連する重要な契約は以下のとおりです。
2018年6月8日、当社グループは、JP Morgan Chase Bank, N.A.、株式会社三井住友銀行、株式会社三菱UFJ銀行および株式会社みずほ銀行等との間で総借入限度額75億米国ドルのタームローンクレジット契約を締結しました。2018年12月20日、当社グループは、技術的な一部変更を加えるため、タームローンクレジット契約の第1回変更契約を締結しました。2019年10月18日には、当社グループは、財務制限条項の改定を含む一部変更を加えるため、タームローンクレジット契約の第2回変更契約を締結しました。2020年3月12日、当社グループは、タームローンクレジット契約の元本残額のうち元本総額7億米国ドルを期限前弁済しました。2018年10月26日、当社グループは、株式会社三井住友銀行、株式会社三菱UFJ銀行、株式会社みずほ銀行、農林中央金庫および三井住友信託銀行株式会社との間で総借入限度額5,000億円のショートタームローンファシリティ契約を締結しました。2018年12月20日、当社グループは、技術的な一部変更を加えるため、ショートタームローンファシリティ契約の第1回変更契約を締結しました。また、2018年10月26日、当社グループは、株式会社三井住友銀行、株式会社三菱UFJ銀行、株式会社みずほ銀行、農林中央金庫および三井住友信託銀行株式会社との間で、ショートタームローン契約に基づく借り入れの借り換えの一部または全部に充当可能な総借入限度額5,000億円の劣後特約付ローン契約を締結しました。2019年6月6日には、当社グループは、劣後特約付ローン契約を解約しました。2018年11月21日、当社は、株式会社三菱UFJ銀行との間で同社を財務代理人とする財務代理人契約を締結し、同日付けで、当該財務代理人契約に基づき総額75億ユーロのユーロ建無担保普通社債を発行しました。2018年11月26日、当社グループは、MUFG Union Bank, N.A.を受託者とする社債信託契約を締結し、同日付で、当該社債信託契約に基づき総額55億米国ドルの米国ドル建無担保普通社債を発行しました。2019年8月29日、当社グループは、米国ドル建無担保普通社債のうち元本総額10億米国ドルを償還しました。2018年12月3日、当社は、株式会社国際協力銀行との間で総借入限度額37億米国ドルのローン契約(以下、「JBICローン契約」)を締結しました。2018年12月25日、当社グループは、技術的な一部変更を加えるため、JBICローン契約の第1回変更契約を締結しました。2019年12月25日、当社グループは、財務制限条項の改定を含む一部変更を加えるため、JBICローン契約の第2回変更契約を締結しました。2019年6月6日、当社グループは、ショートタームローンの借り換えを目的として、総額5,000億円のハイブリッド社債(劣後特約付社債)を発行しました。
上記契約の概要ならびにShire社買収が当社グループの財務状況および業績に与える影響については「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 当年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容 (c) 流動性および資金調達源 有利子負債および金融債務」をご参照ください。
Baxter International Inc.との協定書
2016年1月11日に、Baxter International Inc.(以下、「Baxter社」)、Shire社およびBaxalta社は、Shire社によるBaxalta社の買収に関連し、三社間協定を締結しました。当該協定書は、特に、2015年7月にBaxter社とBaxalta社が分割される以前に両社間で締結した税務契約の一部の取扱いに係る合意に関連するものです。
当該協定書に基づき、2016年6月3日のShire社によるBaxalta社の買収完了以降、Baxalta社はBaxter社およびその関連会社ならびにこれらの経営陣、取締役および従業員に対し、買収により生じる税関連の損失を免責することに合意し、Shire社はかかる免責について保証を提供しました。但し、買収と関連しないBaxter社によるBaxalta社の普通株式の処分、ならびに2015年7月1日付の当初の割り当て、一定の債務と株式との交換、エクスチェンジオファー、Baxter社の米国年金基金へのBaxalta社株式の拠出およびBaxter社の株主への配当(各事象の詳細は当該協定書で規定されています。)以外のBaxalta社普通株式の処分に起因する損失は補償の対象外となっております。
当年度の研究開発費の総額は4,924億円であります。
医薬品の研究開発のプロセスは、長期にわたり、多額の費用を伴い、その期間は10年を越えることもあります。このプロセスには、新薬の有効性および安全性の評価のための複数の試験、データを審査し販売承認の可否を判断する規制当局に対する申請が含まれます。こうした精査の過程を通過し、臨床での治療に用いることができる候補物質はごく僅かです。承認取得後も、上市後の製品に対しては、メディカルアフェアーズやその他の投資を含め、継続的な研究開発活動による支援が行われます。
臨床試験は、地域的および国際的な規制ガイドラインを遵守し、通常5から7年もしくはそれ以上を費やして実施されるものであり、相応の費用を伴います。通常、臨床試験は医薬品規制調和国際会議(ICH)が制定したガイドラインに沿って実施されます。これに関わる規制当局は、米国では食品医薬品局(FDA)、欧州連合では欧州医薬品庁(EMA)、日本では厚生労働省、中国では国家食品薬品監督管理局(NMPA)です。
ヒトの臨床試験は以下の3相で実施されます(各相が一部重複することもあります):
・臨床第1相(P-1)試験
少人数の健康な成人の志願者を被験者として、薬物の安全性、吸収、分布、代謝、排泄について評価するために実施
・臨床第2相(P-2)試験
少人数の志願患者を被験者として、安全性、有効性、用量および用法を評価するために実施
臨床第2相試験はP-2aとP-2bとの2つのサブカテゴリ―に分割されることがあります。P-2a試験は通常臨床上の有効性または生物学的活性を示すためにデザインされたパイロット試験であり、P-2b試験は薬物が最少の副作用で生物学的活性を示す最適用量を探索するために行われます。
・臨床第3相(P-3)試験
大人数の志願患者を被験者として、既存の薬剤またはプラセボと比較した安全性および有効性を評価するために実施
これら3相のうち、臨床第3相にかかる開発費用が最も大きく、臨床第3相試験へ進めるか否かの決定は、医薬品開発における重要なビジネス判断となります。臨床第3相試験を通過した候補薬物については、管轄の規制当局に新薬承認申請書(NDA)または医薬品販売承認申請(MAA)を提出し、規制当局より承認を取得した場合に上市します。NDAやMAAの作成には、膨大な量のデータの収集、検証、分析が必要であり、多額の費用が伴います。製品上市後も、保健当局により有害事象の市販後調査や、当該医薬品のリスク・ベネフィットに関する追加情報を提供するための市販後試験の実施を求められることがあります。
当社の研究開発は、サイエンスにより、患者さんの人生を根本的に変えうるような非常に革新性が高い医薬品を創製することに注力しています。当社は、「革新的なバイオ医薬品」、「血漿分画製剤」および「ワクチン」の3つの分野において研究開発活動を実施しています。革新的なバイオ医薬品に対する研究開発は、当社の研究開発投資の中で最も高い比率を占めています。革新的なバイオ医薬品における重点疾患領域(オンコロジー、希少疾患、ニューロサイエンス、消化器系疾患)には高いアンメットメディカルニーズが存在し、当社はベストインクラスあるいはファーストインクラスとなりうる画期的な新規候補物質を創出してまいりました。これまでの数年間、最近ではShire社の買収によってさらに強化されましたが、当社では新たな研究開発能力、さらには次世代プラットフォームに対して社内および外部との提携によるネットワークを通じて投資し、細胞療法および遺伝子治療の領域の強化を図ってまいりました。
自社の研究開発機能向上への注力に加え、社外パートナーとの提携も、当社研究開発パイプライン強化のための戦略における重要な要素の一つです。社外提携の拡充と多様化に向けた戦略により、様々な新製品の研究に参画し、当社が大きな研究関連のブレイクスルーを達成する可能性を高めます。
当社の主要な研究開発施設には以下を含みます:
・ 湘南ヘルスイノベーションパーク:日本の神奈川県藤沢・鎌倉地域に位置する湘南ヘルスイノベーションパーク(「湘南アイパーク」)は、当社の湘南研究所として2011年に設立された、当社のニューロサイエンス研究の主要拠点です。2018年4月に、当社は、サイエンスイノベーションを推進し、多様な外部パートナーとのライフサイエンスエコシステムを構築するために、湘南アイパークを開所致しました。2020年4月に、当社はより多様なプレーヤーを招致し、湘南アイパークのさらなる成功を目指すため、湘南アイパークの所有権を信託設定することを発表しました。当社は、アンカーテナントとして、信託先と20年間のリースバック契約を締結するとともに、今後も日本におけるライフサイエンス研究活性化にコミットします。
・ グレーターボストン地区研究開発サイト:当社のボストン研究開発ハブは米国マサチューセッツ州ケンブリッジに位置しています。本サイトは当社のグローバルなオンコロジー(がん)、消化器系疾患領域および希少疾患領域の研究開発の中心であり、加えて血漿分画製剤やワクチンなど他の疾患領域の研究開発や免疫調節および生物学的製剤の研究も支援しています。最近開設された最先端の細胞療法の製造施設を備えた、当社の細胞療法研究の拠点です。
・ サンディエゴ研究開発サイト:米国カリフォルニア州サンディエゴにある当社の研究開発拠点であり、消化器系疾患およびニューロサイエンス領域における研究開発を支援しています。本研究サイトは、バイオテックのような形態で研究を行う拠点であり、構造生物学および生物物理学などの社内技術を駆使し、社内外で行われる研究を促進します。
当社の2019年4月以降の主要な研究開発活動の進捗は、以下のとおりです。
研究開発パイプライン
オンコロジー
世界中のがん患者さんに革新的な新薬をお届けするために努力し、患者さんの生活を改善するという情熱をもって、画期的なイノベーションの探求に取り組んでいます。本疾患領域では、(1)既発売品である「ニンラーロ」、「アドセトリス」、「アイクルシグ」のライフサイクルマネジメントならびに多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群およびその他血液がんのパイプラインへの継続的な研究開発投資を通じた、血液がんにおける基盤的な専門性の構築、(2)既発売品である「ALUNBRIG」を含む肺がんを対象とするパイプラインおよび標的を絞った肺がん患者さんを対象とする開発プログラムのさらなる拡充、(3)社外との提携による新規のがん免疫療法標的および次世代基盤技術の追求ならびに革新的な細胞療法の探索、にフォーカスしています。
[ニンラーロ 一般名: イキサゾミブ]
- 2019年6月、当社は、「ニンラーロ」について、再発又は難治性の全身性(AL)アミロイドーシス患者を対象とした臨床第3相試験である「TOURMALINE-AL1試験」において、2つの主要評価項目のうち最初の結果が主要評価項目を満たさなかったことを公表しました。「ニンラーロ」および「デキサメタゾン」の併用群は、医師が選択した標準治療群と比較して、血液学的奏効率において有意な改善はみられませんでした。解析の結果より、当社は本試験を中止することを決定しましたが、副次評価項目の有望なデータについては、12月、第61回米国血液学会(American Society of Hematology:ASH)年次総会のオーラルセッションにおいて発表されました。
- 2019年11月、当社は、「ニンラーロ」について、移植歴のない初発の多発性骨髄腫患者を対象としたファーストライン維持療法に関する臨床第3相試験「TOURMALINE-MM4試験」が主要評価項目を達成したことを公表しました。無増悪生存期間が統計学的に有意に改善され、本試験データはバーチャルで開催された第56回米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)年次総会のオーラルセッションにおいて発表されました。
- 2020年3月、当社は、「ニンラーロ」について、国際共同ランダム化二重盲検プラセボ対照の臨床第3相試験である 「TOURMALINE-MM2試験」において、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を達成しなかったことを公表しました。本試験は、幹細胞移植が適応とならない初発の多発性骨髄腫の成人患者を対象として、「ニンラーロ」を「レナリドミド」および「デキサメタゾン」に併用することにより、PFSの中央値が13.5ヵ月(プラセボ群21.8ヵ月に対しニンラーロ群35.3ヵ月、HR=0.83、p=0.073)改善が認められましたが、統計的有意水準を満たしませんでした。「TOURMALINE-MM2試験」から得られた「ニンラーロ」の安全性プロファイルは、既報の添付文書と概ね同様でした。本試験結果は、本試験データはバーチャルで開催された第56回米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)年次総会のオーラルセッションにおいて発表されました。
- 2020年3月、当社は、「ニンラーロ」について、多発性骨髄腫における自家造血幹細胞移植後の維持療法の治療薬として、厚生労働省より製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを公表しました。今回の承認は、ランダム化プラセボ対照二重盲検多施設共同国際臨床第3相試験である「TOURMALINE-MM3試験」の結果に基づくものです。本試験では、大量化学療法および自家造血幹細胞移植に奏効した成人の多発性骨髄腫患者さんを対象に、無増悪生存期間(PFS)を主要評価項目として「ニンラーロ」の維持療法の有効性と安全性をプラセボと比較検討しました。
- 2020年5月、当社は、「ニンラーロ」について、多発性骨髄腫と診断された幹細胞移植歴の無い成人患者を対象としたファーストライン(一次)治療後の維持療法の適応追加に係る製造販売承認事項一部変更承認の申請を厚生労働省に行ったことを公表しました。今回の申請は、主にランダム化プラセボ対照二重盲検の多施設共同国際臨床第3相試験である「TOURMALINE-MM4試験」の結果に基づくものです。
[アイクルシグ 一般名:ポナチニブ]
- 2020年5月、当社は、「アイクルシグ」について、バーチャルで開催された第56回米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)年次総会のオーラルセッションにおいて、臨床第2相試験「OPTIC(Optimizing Ponatinib Treatment In CML)」の中間解析データを発表しました。「OPTIC試験」は、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による前治療へ抵抗性または不耐性を示す慢性期の慢性骨髄性白血病(CP-CML)患者に対する、有効性および安全性を最適化することを目的として、アイクルシグの3つの投与開始用量(45mg~、30mg~あるいは15mg~)における奏効に基づく投与量調整レジメンをプロスペクティブに評価する、進行中の無作為化非盲検試験です。
[ALUNBRIG 一般名:ブリグチニブ]
- 2019年11月、当社は、「ALUNBRIG」について、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害薬による前治療歴のない進行性未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子転座陽性(ALK陽性)の非小細胞肺がん(NSCLC)の成人患者に対する「ALUNBRIG」とクリゾチニブを評価した臨床第3相試験「ALTA-1L試験」の最新情報を発表しました。試験結果では、2年以上の追跡後も、「ALUNBRIG」は、全患者においても病状進行または死亡リスクを57%低下させることを示しました (HR: 0.43、95%CI: 0.31-0.61)。また、登録時の治験責任医師評価において脳転移を有すると新たに診断された患者に対して、病状進行または死亡リスクを76%低下させることが示されました(HR: 0.24、95%CI: 0.12-0.45)。これらのデータは、欧州臨床腫瘍学会(European Society for Medical Oncology:ESMO)2019アジア大会のプレジデンシャルセッションで発表されました。
- 2020年2月、当社は、「ブリグチニブ」について、他の未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)チロシンキナーゼ阻害剤での治療に不耐容もしくは同治療後に進行が認められたALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に対する治療薬として厚生労働省に製造販売承認申請を行ったことを公表しました。今回の申請は、主に国内第2相試験のBrigatinib-2001 (J-ALTA)および海外第2相試験のAP26113-13-201(ALTA)の結果に基づくものです。
- 2020年3月、当社は、「ALUNBRIG」について、欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品評価委員会(CHMP)が、ALK阻害薬による前治療歴のない成人の未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子転座陽性(ALK陽性)進行性非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する単剤療法として承認を推奨する肯定的見解を示したことを公表しました。続いて、2020年4月、欧州委員会(EC)より同適応での適応追加の承認を取得したことを公表しました。
- 2020年5月、当社は、「ALUNBRIG」について、米国食品医薬品局(FDA)が承認した検査により診断された成人の未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子転座陽性(ALK陽性)転移性非小細胞肺がん患者に対する治療薬としてFDAより承認を取得したことを公表しました。今回の承認により、「ALUNBRIG」の適応症にファーストライン(一次)治療が追加されました。
[アドセトリス 一般名: ブレンツキシマブ ベドチン]
- 2019年12月、当社は、「アドセトリス」について、第61回米国血液学会(American Society of Hematology:ASH)年次総会において、「アドセトリス」のフロントライン治療としての有用性を検討した臨床第3相試験である「ECHELON-1試験」と「ECHELON-2試験」についての追加解析データを発表しました。
- 2019年12月、当社は、日本において、「アドセトリス」について、「CD30陽性末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)」に対する効能および用法用量、ならびに小児の「再発または難治性のCD30陽性ホジキンリンパ腫および末梢性T細胞リンパ腫」に対する用法用量に関する製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを公表しました。
- 2020年5月、当社は、「アドセトリス」について、欧州委員会(EC)より、現在の条件付承認に加えて、未治療の全身性未分化大細胞リンパ腫(sALCL)の成人患者に対するCHP(シクロホスファミド・ドキソルビシン・プレドニゾン)との併用治療に関して適応追加の承認を取得したことを公表しました。ALCLは末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)のサブタイプです。
- 2020年5月、当社は、「アドセトリス」について、再発・難治性の全身性未分化大細胞リンパ腫またはCD30陽性ホジキンリンパ腫の成人患者に対する治療薬として、中国国家食品薬品監督管理局(NMPA)より承認を取得したことを公表しました。
[カボメティクス 一般名: カボザンチニブ]
- 2020年1月、当社は、「カボザンチニブ」について、がん化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞癌に対する治療薬として、厚生労働省に製造販売承認申請を行ったことを公表しました。今回の申請は、主に、プラセボ群と比較して「カボザンチニブ」の有効性が統計的に有意な結果を示し、かつ安全性プロファイルについても確認された二次治療以降の進行肝細胞癌患者を対象とした海外臨床第3相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験である「XL184-309試験」、ならびに日本人における有効性および安全性を検討した国内臨床第2相試験である「Cabozantinib-2003試験」の結果に基づくものです。
- 2020年3月、当社は、「カボメティクス」について、切除不能又は転移性の腎細胞癌に対する治療薬として、厚生労働省より製造販売承認を取得したことを公表しました。今回の承認は、血管内皮細胞増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤(VEGFR-TKI)による治療後に増悪した、根治切除不能または転移性の腎細胞癌患者さんを対象とした国際臨床第3相試験の「METEOR試験」、化学療法歴のない、根治切除不能または転移性の腎細胞癌患者さんを対象とした海外臨床第2相試験の「CABOSUN試験」、およびVEGFR-TKIによる治療後に増悪した日本人進行腎細胞癌患者さん35名を対象に有効性と安全性を検討した国内臨床第2相試験である「Cabozantinib-2001試験」の結果に基づくものです。
- 2020年4月、当社は、「カボメティクス」と小野薬品工業株式会社のヒト型抗ヒトPD-1(programmed cell death-1)モノクローナル抗体、「オプジーボ」(一般名:ニボルマブ)について、未治療の進行性又は転移性の腎細胞がんを対象に両製剤の併用療法を評価した多施設国際共同無作為化非盲検第3相試験である「CheckMate -9ER試験」のトップライン結果が得られたことを公表しました。本試験において、オプジーボとカボザンチニブの併用療法は、スニチニブと比較して、最終解析で主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を、あらかじめ計画されていた中間解析で副次評価項目である全生存期間(OS)、および奏効率(ORR)を改善しました。
[一般名: ニラパリブ]
- 2019年11月、当社は、「ニラパリブ」について、卵巣がんに対する治療薬として、厚生労働省に製造販売承認申請を行ったことを公表しました。本申請は、海外臨床第3相試験である「NOVA試験」、海外臨床第2相試験である「QUADRA試験」、ならびに日本人卵巣がん患者に対し安全性を検討した国内臨床第2相試験の「Niraparib-2001試験」、日本人卵巣がん患者に対し有効性および安全性を検討した国内臨床第2相試験の「Niraparib-2002試験」の結果に基づくものです。
[開発コード: TAK-924 一般名:pevonedistat]
- 2020年5月、当社は、「pevonedistat」について、バーチャルで開催された第56回米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)年次総会のオーラルセッションにおいて、臨床第2相試験「Pevonedistat-2001」の結果を発表しました。本試験では、高リスク骨髄異形成症候群(HR-MDS)を含む造血器腫瘍の患者を対象に、pevonedistatとアザシチジンの併用療法とアザシチジン単剤療法を比較しました。これらの結果より、pevonedistatとアザシチジンの併用療法は非常に有効であり、有望な治療法であることが示されるとともに、HR-MDS患者群においては、アザシチジン単剤療法と同様の安全性プロファイルであり、全生存期間(OS)、無イベント生存期間(EFS)、完全寛解率(CR)および輸血非依存達成率を含む臨床的に意義のある複数の評価項目でも有用性が示されました。
[開発コード: TAK-788 一般名:mobocertinib]
- 2019年6月、当社は、「TAK-788」について、2019年米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)年次総会のオーラルセッションにおいて、新たなデータを発表しました。非盲検、多施設共同臨床第1/2相試験により、EGFR エクソン20挿入遺伝子変異を有する局所進行性あるいは転移性の非小細胞肺がん患者において、「TAK-788」の無増悪生存期間(PFS)の中央値が7.3ヵ月、客観的奏効率(ORR)が43%という結果が示されました。
- 2020年4月、当社は、プラチナ製剤をベースとした化学療法を実施中あるいは実施後に病勢が進行した上皮増殖因子受容体(EGFR)エクソン20挿入変異を伴う転移性非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する治療薬「mobocertinib (TAK-788)」を米国食品医薬品局(FDA)がBreakthrough Therapyに指定したことを公表しました。
[開発コード: TAK-007]
- 2019年11月、当社とThe University of Texas MD Anderson Cancer Centerは、臨床段階にある、既成のCAR-NK細胞療法製品「TAK-007」の開発を共同で加速することを公表しました。現在実施中の「TAK-007」の臨床第1/2a相試験から、2021年には主要臨床試験への患者登録を予定しています。「TAK-007」は外来患者に投与可能な初めてのCAR細胞療法となる可能性があります。
[開発コード: TAK-605]
- 2019年12月、当社とTurnstone Biologics(「Turnstone社」)は、Turnstone社が有する独自のワクシニアウイルスプラットフォームを用いて幅広い種類のがんを対象とした複数の製品を開発するための戦略的共同開発契約を締結したことを発表しました。同社のリードプログラムである「TAK-605」(TBio-6517, RIVAL-01)は、Flt3リガンド、抗CTLA-4抗体およびIL-12サイトカインに対する導入遺伝子をコードするワクシニアウイルスバックボーンから構成されています。
希少疾患
当社は、次の3治療分野に注力しています。(1)これまでの治療パラダイムを変え得る、最近上市された「TAKHZYRO」を含む希少免疫疾患(例:遺伝性血管性浮腫)、(2)幅広いポートフォリオを有する希少血液疾患、(3)希少代謝性疾患(ファブリー病、ハンター症候群、ならびにゴーシェ病治療薬への注力)。
[TAKHZYRO 一般名:lanadelumab-flyo]
- 2019年6月、当社は、「TAKHZYRO」の効果発現を評価する臨床第3相試験である「HELP試験」における投与0~69日データについて追加解析を行い、新たなデータを欧州アレルギー・臨床免疫学会(European Academy of Allergy and Clinical Immunology:EAACI)にて発表しました。追加解析により「TAKHZYRO」が、プラセボ群と比較して月間平均発作発現率を80.1%減少させ、初期治療期間中において遺伝性血管性浮腫(HAE)の発症を防ぎ始めることが示唆されました。
- 2019年11月、当社は、12歳以上の遺伝性血管性浮腫(HAE)患者を対象に実施中の臨床第3相「HELP試験」(長期予防試験)の非盲検延長(OLE)試験より、「TAKHZYRO」注射剤の長期安全性および有効性を示す新たなデータを発表しました。2019年米国アレルギー喘息免疫学会(American College of Allergy, Asthma and Immunology:ACAAI)年次総会において発表された解析結果では、「TAKHZYRO」が継続的にHAE発作を予防しており、多くの被験者が平均19.7ヵ月(0 - 26.1ヵ月)の投与延長期間においても、ピボタル「HELP試験」でみられた予防頻度と同様の割合で発作が発現しなかったことを示されました。解析結果は、ACAAIの学会誌である「Annals of Allergy, Asthma & Immunology」の11月号に掲載されました。
- 2020年5月、当社は、「TAKHZYRO」のプレフィルドシリンジ製剤の一部変更承認申請(Type II Variation)について、欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品評価委員会(CHMP)より承認を推奨する旨の肯定的見解が示されたことを公表しました。TAKHZYROは、12歳以上の遺伝性血管性浮腫(HAE)患者における再発性発作の標準的抑制薬として、欧州では皮下投与製剤として承認されています。
[アディノベイト 一般名:ルリオクトコグ アルファ ペゴル(遺伝子組換え)]
- 2019年7月、当社は、第27回国際血栓止血学会(International Society on Thrombosis and Haemostasis Congress:ISTH)年次総会において、「アディノベイト」の臨床第3b/4相試験である「PROPEL試験」の新たな成績を発表しました。「PROPEL試験」は重症血友病A患者を対象とし、2つの異なる第Ⅷ因子トラフ値をターゲットとして、薬物動態(PK)に基づく定期補充療法後に「アディノベイト」の安全性および有効性を比較する前向き無作為化多施設共同試験です。
[ボンベンディ 一般名:ボニコグ アルファ(遺伝子組換え)]
- 2020年3月、当社は、ヒトフォン・ヴィレブランド因子(VWF)製剤「ボンベンディ」について、厚生労働省より製造販売承認を取得したことを公表しました。フォン・ヴィレブランド病は、止血に重要な役割を果たす凝固タンパク質であるフォン・ヴィレブランド因子の消失あるいは欠損に起因する遺伝性疾患です。フォン・ヴィレブランド因子の補充療法は、最も効果的な治療法です。
[開発コード:TAK-620 一般名:maribavir]
- 2019年9月、当社は、経口投与可能な抗ウイルス性化合物である「TAK-620」の臨床第2相試験結果がThe New England Journal of Medicineに掲載されたことを公表しました。当試験は、造血幹細胞移植または固形臓器移植後のサイトメガロウイルス(CMV)感染患者を対象とし、無作為化、非盲検で12週間実施されました。CMVはベータヘルペスウイルスであり、臓器または幹細胞の移植者を含む免疫力が低下した患者では、死亡する可能性のある臨床的に対処が難しい合併症を引き起こします。
ニューロサイエンス
当社は、治療法が確立していない神経疾患を患っている患者さんに革新的な医薬品を提供することを目指しています。当社は、社内の専門知識やパートナーとの提携をいかして、アルツハイマー病、パーキンソン病といった神経疾患、ナルコレプシーやその他の睡眠障害、ハンチントン病といった希少中枢疾患に対するパイプラインを構築します。
[トリンテリックス 一般名:ボルチオキセチン]
- 2019年7月、当社は、第16回日本うつ病学会総会において大うつ病性障害治療薬「ボルチオキセチン」について、国内第3相無作為化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験の結果を公表しました。本試験では、日本の成人再発うつ病患者さんを「ボルチオキセチン」10mg群、20mg群、プラセボ群のいずれかに無作為に割り付け、1日1回投与で有効性・安全性を評価しました。主要評価項目は、投与8週時におけるMontgomery-Åsberg Depression Rating Scale(MADRS)合計スコアのベースラインからの変化量で、プラセボ群との群間差が「ボルチオキセチン」10㎎、20㎎群でそれぞれ-2.66、-3.07であり、プラセボ群に対して統計学的に有意な低下が認められました(P値 0.0080, 0.0023)。
- 2019年9月、当社は、「トリンテリックス」について、厚生労働省よりうつ病・うつ状態に対する治療薬として、製造販売承認を取得したことを公表しました。
[インチュニブ 一般名:グアンファシン塩酸塩]
- 2019年6月、当社は、塩野義製薬が製造販売承認を有し、塩野義製薬と当社が情報提供を行っている注意欠陥/多動性障害治療剤「インチュニブ」について、厚生労働省より成人患者(18歳以上)に対する適応追加による一部変更が承認されたことを公表しました。
[BUCCOLAM 一般名:ミタゾラム]
- 2020年2月、当社は、「ミダゾラム」(口腔用液)について、てんかん重積状態の治療剤として、厚生労働省に製造販売承認申請を行ったことを公表しました。今回の申請は、けいれん性てんかん重積状態を発症した 18 歳未満の患者さんに対して本剤を頬粘膜投与した2つの国内第3相多施設共同介入無作為化非盲検試験の結果などに基づくものです。これらの介入試験において、本剤の有効性が認められ、安全性に大きな問題はありませんでした。
[開発コード:TAK-925]
- 2019年9月、当社は、開発中のオレキシン2受容体選択的作動薬である「TAK-925」のナルコレプシータイプ1に対する臨床第1相POC(コンセプト実証)試験ならびに断眠した健康成人を対象とする臨床試験の結果データを発表しました。これらの試験において、「TAK-925」の9時間単回静脈内投与時の安全性、忍容性、薬物動態、薬力学的作用が検討され、いずれの試験においても「TAK-925」はすべての用量において良好な忍容性を示しました。これらの試験結果は、2019年世界睡眠学会(World Sleep Congress)にて発表されました。
消化器系疾患
消化器系疾患・肝疾患の患者さんに革新的で人生を変えうる治療法をお届けすることにフォーカスしています。「エンティビオ」および「アロフィセル」といった炎症性腸疾患におけるフランチャイズのポテンシャルを最大化するとともに、「ガテックス」のスペシャリティ消化器系疾患領域におけるポジショニングを拡大させ、社外との提携を通じて消化管運動関連疾患、セリアック病、肝疾患およびマイクロバイオーム(腸内細菌)における機会を探索し、パイプラインの構築を進めています。
[エンティビオ/エンタイビオ 一般名:ベドリズマブ]
- 2019年5月、当社は、成人の中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎患者に対する維持療法として「ベドリズマブ」の皮下注射製剤の生物学的製剤承認申請を米国食品医薬品局(FDA)に提出し、受理されたことを公表しました。当社は、「ベドリズマブ」の皮下投与において、プレフィルドシリンジ製剤およびペン製剤の両剤型を申請しています。
- 2019年5月、当社は、「エンタイビオ」について、中等症から重症の活動期のクローン病の治療及び維持療法の治療薬として、厚生労働省より製造販売承認事項一部変更の承認を取得したことを公表しました。
- 2019年5月、当社は潰瘍性大腸炎を対象とした2つの生物学的製剤を初めて直接比較し、「ベドリズマブ」が「アダリムマブ」に対し52週時点で有意に高い臨床的寛解(注1)を達成したVARSITY試験から得た新たな探索的データを米国消化器病週間(Digestive Disease Week:DDW)2019において発表しました。
(注1)主要評価項目である臨床的寛解は、完全Mayoスコア(潰瘍性大腸炎の疾患活動性を評価するための指標)が2ポイント以下、かつ全てのサブスコアが1ポイント以下と定義
- 2019年8月、当社は、「ベドリズマブ」の皮下投与製剤について、中等症から重症の活動期の潰瘍性大腸炎に対する維持療法の治療薬として、厚生労働省に製造販売承認申請を行ったことを公表しました。当社は、「ベドリズマブ」の皮下投与において、プレフィルドシリンジ製剤およびペン製剤の両剤型を申請しています。
- 2019年9月、当社は、「ベドリズマブ」が、中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎患者を対象に、「アダリムマブ」と直接比較したVARSITY試験において、主要評価項目である治療期52週時点での臨床的寛解(注1)について「ベドリズマブ」が有意に優れる結果を示したデータが、The New England Journal of Medicineに掲載されたことを公表しました。
(注1)主要評価項目である臨床的寛解は、完全Mayoスコア(潰瘍性大腸炎の疾患活動性を評価するための指標)が2ポイント以下、かつ全てのサブスコアが1ポイント以下と定義
- 2019年10月、当社は、診療記録を用いたレトロスペクティブ研究である「EVOLVE試験」の結果を発表しました。本研究は、過去に生物学的製剤の投与経験のない中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎患者またはクローン病患者を対象に、「ベドリズマブ」および抗TNFα抗体製剤による重篤な有害事象および重篤な感染症の発現の可能性を、実臨床の場において調査したものです。これらのデータは、欧州消化器病週間(United European Gastroenterology Week: UEGW)2019のオーラルセッションにおいて発表されました。
- 2019年12月、当社は、米国において、成人の中等症から重症の潰瘍性大腸炎における維持療法としての「ベドリズマブ」の皮下注射製剤の生物学的製剤承認申請に関し、米国食品医薬品局(FDA)から審査完了報告通知を受領したことを公表しました。本報告通知において、FDAからは、生物学的製剤承認申請に用いられた主試験から得られた臨床データおよびその結論とは関連のない質問が提起されています。
- 2020年2月、当社は、中等症から重症の活動期クローン病成人患者に対して、「ベドリズマブ」の皮下注射製剤による維持療法を実施した第3相「VISIBLE 2試験」における有効性および安全性の評価結果を発表しました。本試験は、治療開始時点(0週)および2週時点に非盲検下にてベドリズマブの点滴静注製剤による静脈内投与を2回行う導入療法を実施後、6週時点で臨床的改善(注1)が得られた患者に対して実施されました。本試験の結果、52週時点で臨床的寛解(注2)が得られた患者の割合は、ベドリズマブ皮下投与群でプラセボ投与群と比較して有意に高く(48.0%[n=132/275]対34.3%[n=46/134]、p=0.008)、本試験の主要評価目的を達成したことが示されました。本成績は、第15回欧州クローン病・大腸炎会議(Congress of European Crohns and Colitis Organisation: ECCO)のオーラルプレゼンテーションにて発表されました。
(注1)臨床的改善:クローン病活動指数(CDAI:Crohn's Disease Activity Index)のスコアがベースライン(0週)から70ポイント以上の減少と定義。
(注2)主要評価項目:臨床的寛解は、CDAIのスコアが52週時点で150以下と定義
- 2020年3月、当社は、「ENTYVIO」について、中国国家薬品監督管理局(NMPA)より承認されたことを公表しました。本剤は、標準療法又はTNFα阻害薬による治療のいずれかに対し効果不十分、効果消失がみられた、もしくは不耐性である中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎およびクローン病成人患者に対する治療薬として承認されました。「ENTYVIO」は、NMPAによる迅速承認のための「緊急に必要な」海外医薬品の、2018年の初回(first batch)のリストに含まれていました。
- 2020年4月、当社は、「ENTYVIO」の自己注射製剤について、カナダにおいて、既存療法または TNF-αアンタゴニスト infliximab に対して、効果不十分、効果消失、または不耐性であった、18歳以上の中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎患者の在宅での維持療法として承認されたことを公表しました。本承認は、中等症から重症の、活動期潰瘍性大腸炎の成人患者を対象とする、「ENTYVIO」皮下注用製剤の維持療法の有効性および安全性を評価した無作為化二重盲検プラセボ対照試験である「VISIBLE 1試験」に基づくものです。
- 2020年5月、当社は、中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎またはクローン病成人患者に対する維持療法として、「ENTYVIO」の皮下注射(SC)製剤の製造販売について、欧州委員会より承認を取得したことを公表しました。「ENTYVIO」のSC製剤は、プレフィルドシリンジ製剤およびペン製剤の両剤型で利用可能となります。
[ガテックス 一般名:teduglutide]
- 2019年5月、当社は、「ガテックス」について、追加の栄養もしくは液体の静脈投与(非経口栄養補給)が必要な短腸症候群の1歳以上の小児患者への投与が米国食品医薬品局(FDA)より追加で承認されたことを公表しました。
[キャブピリン:ボノプラザンと低用量アスピリンの配合剤]
- 2020年3月、当社は、「ボノプラザン」と低用量アスピリンの配合剤である「キャブピリン配合錠」について、厚生労働省より製造販売承認を取得したことを公表しました。
血漿分画製剤
当社は、血漿分画製剤(PDT)に特化したPDTビジネスユニットを設立し、血漿の収集から製造および商用化まで、エンド・ツー・エンドのビジネスを運営しています。本疾患領域では製品のライフサイクル全体にわたってイノベーションを推進することにより、希少および複雑な疾患に対する血漿分画製剤による治療の価値を最大化させます。血漿分画製剤に特化した研究開発組織は、新たな治療ターゲットの特定、および、現有する製品の製造効率の最適化という役割を担います。PDTでは、世界中で、様々な希少疾患や、生命を脅かす、慢性および遺伝性疾患の患者さんに有効な治療を行う上で不可欠な治療薬を開発することに焦点を絞ります。
[開発コード:CoVIg-19 (旧 TAK-888)/ 一般名:抗SARS-CoV-2ポリクローナル高度免疫グロブリン製剤]
- 2020年3月、当社は、米国議会において、当社が新型コロナウイルスに感染されたハイリスク患者さんに対する治療薬として抗 SARS-CoV-2ポリクローナル高免疫グロブリン(H−IG)の開発を開始すること、および、当社の上市済みの製品およびパイプラインの中で感染者に対する有効な治療薬となり得るものを調査していることについて情報共有しました。SARS-CoV-2は、COVID-19の原因となるウイルスです。高度免疫グロブリンは、これまでに重症急性ウイルス性呼吸器感染症の治療薬として有効であることが示されている血漿分画製剤であり、COVID-19の治療選択肢となる可能性があります。
- 2020年4月、当社とCSL Behring社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬となり得る血漿分画製剤の開発に関する提携契約、「CoVIg-19 Plasma Alliance」を締結し、本提携にBiotest、BPL、LFB、Octapharmaの各社が参画したことを公表しました。本提携を通じ、COVID-19による重篤な合併症を有する患者さんの治療薬となり得るノーブランドの製品として、抗SARS-CoV-2ポリクローナル高度免疫グロブリン製剤の臨床開発に直ちに着手します。
- 2020年5月、「CoVIg-19 Plasma Alliance」は参画メンバーとして血漿分画製剤に携わる企業を10社に拡大し、また、COVID-19から回復されたより多くの人々に血漿を提供してもらえるようにするために重要なサポートを行う血漿分画製剤の企業以外のグローバル機関も参画したことを公表しました。本アライアンスの発足当初に発表されたBiotest、BPL、CSL Behring、LFB、Octapharmaならびに当社に加え、新たな業界メンバーとしてADMA Biologics、BioPharma Plasma、GC Pharma、およびSanquinが参画します。これらの企業が一丸となり、COVID-19の治療選択肢となり得る薬剤の開発と流通を加速させるという本アライアンスの目標に寄与するため、専門知識に基づく助言、技術指導および/または物資による支援を提供します。
ワクチン
ワクチンでは、イノベーションを活用し、デング熱、ジカウイルス感染、ノロウイルス感染など、世界で最も困難な感染症に取り組んでいます。当社パイプラインの拡充およびプログラムの開発に対する支援を得るために、政府機関(日本、米国、シンガポール)や主要な世界的機関とのパートナーシップを締結しています。これらのパートナーシップは、当社のプログラムを実行し、それらのポテンシャルを最大限に引き出すための重要な能力を構築するために必要不可欠です。
[開発コード: TAK-003]
- 2019年11月、当社は、「TAK-003」について、現在進行中のグローバル臨床第3相試験である「TIDES試験」(Tetravalent Immunization against Dengue Efficacy Study)の主要評価項目の解析結果が、The New England Journal of Medicineに掲載されたことを公表しました。「TAK-003」は、4歳から16歳の小児・若年層において、デングウイルスの感染歴に関係なく、主要評価項目であるウイルス学的に確認されたデング熱感染(VCD)に対する予防効果を示しました。「TAK-003」の初回接種3か月後に2回目を接種した後、12か月の追跡期間におけるワクチン有効率(VE)は80.2%(95%信頼区間:73.3%~85.3%、p<0.001)でした。また、あらかじめ設定されていた副次評価項目の探索的解析では、デングウイルス感染歴のある被験者および感染歴のない被験者において同様の予防効果が示されました(それぞれVE:82.2%(95%信頼区間:74.5%~87.6%)、VE:74.9%(95%信頼区間:57.0%~85.4%))。
- 2019年11月、当社は、「TAK-003」について、「TIDES試験」の最新結果を、米国熱帯医学会(American Society of Tropical Medicine and Hygiene:ASTMH)第68回年次学術集会にて発表しました。「TAK-003」の初回接種3ヵ月後に2回目を接種した後、18ヵ月の追跡期間で得られたデータには、ワクチン有効率(VE)に関する最新情報と、デングウイルスの血清型別、ワクチン接種前の血清反応(デングウイルス感染歴の有無)別および重症度別の有効性に関する副次評価項目の解析結果が含まれています。「TIDES試験」では解析に十分な発症例数を収集し、全ての副次評価項目を満たしました。18ヵ月間追跡におけるパート2のVEおよび安全性に関する結果は、12ヵ月間追跡における主要評価項目の解析で報告されたデータと一貫性のある結果を示しました[接種2回目以後18ヵ月間追跡におけるVE:73.3%(95%信頼区間:66.5%~78.8%)、接種2回目以後12ヵ月間追跡における主要評価項目解析時のVE:80.2%(95%信頼区間:73.3%~85.3%)、p<0.001]。
- 2020年3月、当社は、「TAK-003」に関する2つの論文がLancetに掲載されたことを公表しました。これらの論文は、現在進行中の臨床第3相試験である「TIDES試験」の18ヵ月時点の解析結果および臨床第2相試験である「DEN-204試験」の最終的な48ヵ月の解析結果についての報告であり、既報における「TAK-003」の安全性、免疫原性および有効性データと一貫性のあるものでした。
パイプラインの現状
当社グループの各疾患領域および事業分野における研究開発活動の概要は、以下に示すとおりです。後出する主要な疾患領域および事業分野において開示されている当社グループパイプライン上の化合物は、それぞれ異なる開発段階にあり、現在開発中の化合物の開発中止や新規化合物の臨床ステージ入りにより、パイプラインの内容は今後変わる可能性があります。以下に示す化合物が製品として上市に至るかは、前臨床試験や臨床試験の結果、様々な医薬品の市場動向、規制当局からの販売承認取得の有無など、様々な要因に影響されます。以下の表記載は、米国・欧州・日本・中国に限定していますが、当社グループはその他の地域でも開発活動を行っています。以下、「グローバル」の表記は、米国・欧州・日本・中国を指します。
2020年5月13日(決算発表日)における当社グループのオンコロジー領域のパイプラインは以下のとおりです。
2020年5月13日(決算発表日)における当社グループの希少疾患領域のパイプラインは以下のとおりです。
2020年5月13日(決算発表日)における当社グループのニューロサイエンス領域のパイプラインは以下のとおりです。
2020年5月13日(決算発表日)における当社グループの消化器系疾患領域のパイプラインは以下のとおりです。
2020年5月13日(決算発表日)における当社グループの血漿分画製剤のパイプラインは以下のとおりです。
2020年5月13日(決算発表日)における当社グループのワクチンのパイプラインは以下のとおりです。
(注1)製品名および国名/地域の記載は、米国・欧州・日本・中国のいずれかにおいて何らかの適応症で承認を取得した品目の製品名および国名であり、当社が該当品目の販売権を有していることを意味します。
(注2)ここでの国/地域の記載は、米国・欧州・日本・中国のいずれかにおける販売承認取得の意図をもって臨床試験が進行中または承認申請済みであることを示しています。
(注3)2020年5月に承認済み。
(注4)日本については2020年5月に申請済み。
(注5)再発・難治性の多発性骨髄腫の試験は試験終了まで継続。TAK-079は希少疾患の重症筋無力症および免疫性血小板減少性紫斑病で開発の予定(FSI(第一被験者の登録日)は2020年度前半の見込み)。
(注6)日本におけるP-Ⅰ試験が完了し、P-Ⅲ試験開始の時期を検討。
(注7)2020年6月16日に当社グループは、当社グループのTAK-041、TAK-653およびTAK-831を含む早期から中期開発段階の精神疾患領域パイプラインの開発および製品化に関する、Neurocrine Biosciences, Inc.との戦略的提携について発表致しました。当社グループは一時金として現金を受け取り、また、一定の開発マイルストン、販売マイルストン、および売上高に応じたロイヤルティを取得する権利を有します。特定の開発段階において、当社グループは、すべての臨床試験プログラムについて、1つひとつのパイプラインごとに、50:50の利益配分を受ける、または受けない選択をすることができます。当社グループが50:50の利益配分の適用を受けるパイプラインについて、当社グループは開発または販売マイルストンを受領する権利を有しません。
(注8)米国FDAから受領した皮下投与製剤に対するComplete Response Letter(審査完了通知)は、臨床での安全性・有効性データに関連するものではなく、皮下投与製剤のデザインやラベルに関する内容です。本CRLの内の解決に向けて取り組んでおり、2020年前半にタイムラインを更新できることを期待しております。
(注9)TAK-101(旧「TIMP-GLIA」)のライセンスはCour Pharmaceuticals社より取得しました。
(注10)TAK-062を含むPvP Biologics社を買収しました。旧開発コードはKuma062です。
当社グループの承認取得の進捗状況は以下のとおりであります。
(注1)国/地域の記載は、米国・欧州・日本・中国のいずれかにおいて、臨床試験が継続しているまたは販売承認申請がなされた国/地域を示しています。
(注2)2020年5月13日(決算発表日)後、以下の品目が承認されています。
・SGN-35 未治療の全身性未分化大細胞リンパ腫(sALCL)(欧州、2020年5月承認)
・SGN-35 再発・難治性のホジキンリンパ腫(中国、2020年5月承認)
・SGN-35 再発・難治性の全身性未分化大細胞リンパ腫(sALCL)(中国、2020年5月承認)
・Brigatinib ALK陽性非小細胞肺がん(フロントライン適応)(米国、2020年5月承認)
ライセンスおよび共同研究開発契約
当社は通常の事業において、製品開発および商業化のために第三者とライセンス契約や業務提携を行うことがあります。当社の事業は、こうした個々の契約に大きく依存するものではありませんが、これらの契約は全体として、社内外のリソースを組み合わせて活用することで新製品の開発や上市を可能にするという当社の戦略の一部を構成しています。これまで製品上市に寄与してきた契約の一部に関する概要は以下の通りであります。
- アドセトリス:2009年、当社はSeattle Genetics(以下、「シアトルジェネティクス社」)と、「アドセトリス」のグローバル共同開発および世界各国(同社が本剤を販売している米国、カナダを除く)における販売の提携契約を締結しました。本提携関係に基づき、当社による開発ならびに販売の進捗に関してマイルストン支払が発生する可能性があります。また、契約対象地域における「アドセトリス」の正味売上高に基づき10%台半ばから20%台半ばの割合で段階的なロイヤルティを支払います。当社とシアトルジェネティクス社は、本提携関係のもとで実施される選択された開発活動の費用を均等に共同で負担します。本提携関係は、いずれか一方の当事者による正当な事由または両者の合意をもって解除することができます。当社は本提携関係を自由に解除でき、シアトルジェネティクス社は一定の状況において本提携関係を解除できます。両社により提携解除がなされなかった場合、本契約は全ての支払い義務の満了をもって自動的に終了します。2020年3月31日現在、当社の「アドセトリス」提携契約に基づく開発およびコマーシャルマイルストンの残存支払見込額はありません。
- トリンテリックス:2007年、当社はH. Lundbeck A/S(以下、「ルンドベック社」)とライセンス、開発、供給および販売契約を締結し、同社の保有する気分障害・不安障害治療薬パイプライン上の複数の化合物について米国および日本における独占的な共同開発および共同販売権を取得しました。本契約に基づき、当社は米国および日本で「トリンテリックス」を販売しております。本契約に基づき、当社とルンドベック社は、開発資金の大部分を当社が負担することとし、関連化合物の共同開発に合意しました。「トリンテリックス」による収益は当社が計上し、当社はルンドベック社に対し売上の一部に加え、当社による本剤の売上に基づき10%台前半から半ばの割合で段階的なロイヤルティを支払います。本契約は無期限に存続しますが、両者の合意または正当な事由をもって解除することができます。2020年3月31日現在、当社の「トリンテリックス」提携契約に基づく開発および販売マイルストンの残存支払見込額は、約5百万米ドルです。
- アミティーザ:2004年10月、当社はSucampo Pharmaceuticals(後にMallinckrodtが買収、以下、「マリンクロット社」)と消化器系の適応症での「アミティーザ」の米国およびカナダにおける購買、開発および販売の契約を締結しました。本契約は2020年12月31日まで有効であり、当社により解除されるまで自動的に更新されます。本契約に基づき、当社はマリンクロット社から「アミティーザ」を合意された価格で購入し、北米における売上高に基づき10%台の毎年見直される割合で段階的なロイヤルティを支払います。2021年1月1日以降は、当社とマリンクロット社で「アミティーザ」ブランドの販売による年間正味売上高を均等に分配します。当社とマリンクロット社は、一部を除いて、規制当局の指示による治験を含む開発費用を当社が負担し、該当費用が合意された上限額を超えた場合は超過分を均等に負担することに合意しております。同社とは、日本および中国を除く、他の国と地域についても類似の契約を締結しています。当社は、本契約の期間において、売上目標達成を条件とした追加のコマーシャルマイルストンの支払いと、年間販売活動に対する最低額の出費に合意しました。これらの支払いは、本剤の後発品発売により減額される可能性があります。2020年3月31日現在、当社の「アミティーザ」提携契約に基づく販売マイルストンの残存支払見込額はありません。
将来に向けた研究プラットフォームの構築/研究開発における提携の強化
- 2019年7月、当社と京都大学iPS細胞研究所(「CiRA」(サイラ))は、新規iPS細胞由来キメラ抗原受容体(CAR)1遺伝子改変T細胞療法(iCART)に関する研究成果が、両社の共同研究プログラムであるT-CiRAから当社に継承されたことを公表しました。本プログラムの臨床試験に向けたプロセス開発が開始されています。
- 2019年10月、当社とCOUR Pharmaceuticals Development Company, Inc.(「COUR社」)は当社がCOUR社からグリアジンタンパク質含有のImmune Modifying Nanoparticleである「CNP-101/TAK-101」の全世界での独占的な開発および製品化の権利を獲得したことを公表しました。COUR社の抗原特異的な免疫寛容技術を用いた「TAK-101」は、グルテン摂取により小腸の炎症・傷害を引き起こす重篤な自己免疫疾患であるセリアック病の異常免疫反応に対するファーストインクラスとなる可能性のある治療薬です。セリアック病患者34名を対象とし、「TAK-101」の有効性および安全性を示す可能性のあるマーカーを検討した、無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験である臨床試験の結果は、欧州消化器病週間(United European Gastroenterology Week: UEGW)2019のLate-breaking Abstractとして発表されました。良好にコントロールされ、生検によりセリアック病と診断された患者が本試験に登録され、その後、患者はグルテンチャレンジを実施しました。本試験の結果を受け、当社は「TAK-101」の独占的な全世界のライセンスを獲得するオプション権を行使しました。
- 2019年11月、当社とThe University of Texas MD Anderson Cancer Center (「MD Anderson」)は、B細胞性悪性腫瘍やその他のがんをターゲットとしたIL-15分泌促進型キメラ抗原受容体を発現した臍帯血由来NK(CAR NK)細胞療法に関し、独占的ライセンス契約ならびに共同研究開発契約を締結したことを公表しました。本契約に基づき、当社はMD AndersonのCAR NK基盤技術へのアクセス権と、CD19をターゲットとしたCAR NK細胞療法や、B細胞成熟抗原(BCMA)をターゲットとしたCAR NK細胞療法を含む最大4つのプログラムについての開発および販売に関する独占的権利を獲得します。当社およびMD Andersonはまた、これらのCAR NKプログラムの開発をさらに進展させるための共同研究を実施します。
- 2019年12月、当社とTurnstone Biologics(「Turnstone社」)は、Turnstone社が有する独自のワクシニアウイルスプラットフォームを用いて幅広い種類のがんを対象とした複数の製品を開発するための戦略的共同開発契約を締結したことを公表しました。両社はTurnstone社のリードプログラムである「RIVAL-01」(TAK-605)についてグローバルで共同開発・商業化を行うとともに、今後、ワクシニアウイルスプラットフォームに基づいた追加の新規治療薬候補を特定するための共同研究も併せて実施します。
- 2020年2月、当社は、コントロール不良のセリアック病の治療薬である「TAK-062(Kuma062)」の臨床第1相試験としてのproof-of-mechanism試験(作用機序の確認試験)の結果を受け、PvP Biologics, Inc.を買収したことを公表しました。「TAK-062」は、ベストインクラスとなり得る、極めて強力なスーパーグルテナーゼ(摂取したグルテンを分解するタンパク質)であり、グルテンの摂取によって小腸に炎症や損傷がもたらされる深刻な自己免疫疾患であるセリアック病の治療薬としてコンピュータで設計されました。臨床第1相試験では、健常人とセリアック病患者の両方で「TAK-062」の安全性と忍容性を検討しました。摂取したグルテンに対するTAK-062の分解能については、健常人を対象として検討しました。当社は、本臨床第1相試験の結果を、今後の医学会において発表するため、データを提出する予定です。
当社の上記以外の研究開発ライセンスおよび提携のパイプラインは下表のとおりですが、これらに限定されません。
知的財産
特許や登録商標を用いて可能な限り自社の製品や技術を守ることは、当社グループの事業戦略において重要な部分を占めています。当社グループが市場競争力を維持し高めるためには、企業秘密、当社グループ独自のノウハウ、技術的イノベーションおよび第三者との契約が欠かせません。当社がビジネス上の成功を収めることが出来るかどうかは、強固な特許を取得し行使する能力や、企業秘密を保護し続ける能力、第三者の知的財産権を侵害することなく事業を行う能力、付与されたライセンスの条件を遵守する能力に依存する場合があります。新薬の開発は長期間にわたり、研究開発は多くの費用を必要します。また、新化合物のうち上市されるものはごくわずかであることから、知的財産の保護は新薬の研究開発への投資の回収において重要な役割を担っています。
当社グループは米国、日本、欧州の主要国において可能な限り当社独自の技術の特許保護を求めていきます。その他の国々についても、可能な国々において、選別したうえで特許保護を求めていきます。いずれの場合にも特許保護自体を取得するか、ライセンサーを通じて特許出願をサポートするよう努めています。特許は、当社グループが使用する技術を保護するための主要な手段です。特許は、医薬品に関する発明の使用から他者を排除する権利を保持者に付与します。当社グループの医薬品を保護するために、有効成分をカバーする物質特許、薬の用途、製造方法、製剤に関する特許等、様々な種類の特許を使用しています。当社グループの低分子化合物は、主に物質特許によって保護されています。通常は物質特許の存続期間終了をもって当該医薬品の市場独占権は失われますが、その後も当該物質の用途、用法、製造方法、新規組成または剤型に関する特許等の非物質特許によって、商業利益が保護されることがあります。物質特許が満了した場合でも、各国の関連法規制によるデータ保護制度により対象製品が保護されることもあります。当社グループのバイオ製品は1件以上の物質特許によって保護されることがありますが、製品によっては物質特許以外の特許または規制当局によるデータ保護、またはその両方が適用されることもあります。しかし、競合会社によって、同じ疾患に対する類似製品および(または)バイオシミラーが当社グループの特許を侵害することなく開発され、販売されることがあることから、バイオ製品にとって特許による保護の重要性は伝統的な医薬品に比べて低いと思われます。
米国では、原則として出願から20年で特許は満了しますが、米国特許商標庁の審査遅延による特許の発行遅延があ った場合は特許期間の調整が行われる可能性があります。また、製品、製品を使用した治療法、製品の製造方法に関する米国の医薬特許は、米国食品医薬品局(FDA)による製品の承認審査期間に応じて特許期間延長の対象となる場合があります。このような場合の存続期間の延長は5年を上限としており、製品の承認取得から14年を超える延長は認められません。FDAの遅延に基づく期間延長が認められるのは、1製品につき1件の特許のみです。FDAは、新規化合物または「オーファンドラッグ」に対しては、特許独占権に加えて、データあるいは市場の独占権を追加付与することがあり、これらは既にある特許保護期間と並行して存続します。データ保護規制またはデータ独占権は、ジェネリック医薬品を発売し得る競合他社が、先発品の安全性および有効性を確立する際にスポンサーが作成した臨床試験データを新規化合物については5年間、「オーファンドラッグ」については7年間使用できないようにするものです。市場独占権は、同一薬剤を同効(同じ適応症)に 対して販売することを禁止するものです。
日本では、有効成分については、特許庁が特許を付与します。用量や投与方法など、治療法は日本では特許の対象となりませんが、特定の用法・用量にて使用する医薬組成物や、医薬組成物の製造方法については、特許の対象となります。日本では原則として出願より20年で特許は満了します。医薬特許は、承認までの審査に要した時間により、5年を限度として延長されることがあります。また、日本ではデータ保護制度として「再審査期間」を設けており、その期間は新有効成分含有医薬品については8年、新効能・新医療用配合剤については4年から6年、オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)については10年となっています。
欧州連合(EU)では、欧州特許庁(EPO)または欧州各国で特許を申請することができます。EPOの制度では、EU全体およびスイス、トルコ等のいくつかのEU非加盟国での特許を一括申請することができます。EPOが特許を付与すれば、特許権者が指定する国々において特許が有効となります。EPOまたは欧州諸国のいずれかが認める特許の存続期間は、延長や調整があり得ますが、原則として出願から20年です。医薬品の特許は、補充的保護証明書(SPC)制度のもと、さらに追加の独占期間を付与されます。SPCは、特許権者が欧州医薬品庁または各国の規制当局から販売承認を受けるのに要した時間を補償する制度です。SPCにより、特許期間とあわせて、欧州で最初の販売承認を取得した日から最長15年の独占権を与えられます。ただし、SPCの最長期間は5年です。認可された小児臨床試験計画によるデータが提出された製品であれば、6ヶ月の小児用医薬品に係る延長が認められます。SPC制度を含め、承認後の特許は、各国の法制度により運用されています。特許およびSPCに関する規制はそれぞれ欧州特許庁およびEUのレベルで作られましたが、国ごとの運用の違いにより、例えば、EU各国の国内裁判所で無効申立てされた場合など、必ずしも同じ結果にはつながりません。また、EUは承認されたヒト用医薬品につき、特許保護と並行してデータ独占権を与えています。現在承認されている医薬品に関する制度は、通常「8+2+1」と呼ばれています。これは、まず初めに競合他社が関連データに依拠することができないデータ保護期間が8年間、続いて競合他社が販売承認申請のために当該データを使用できるものの、競合品を上市することができない市場独占期間が2年間、さらに、スポンサーが最初のデータ保護期間8年間の間に、他の治療薬が存在しない適応症か「既存治療薬に比べて有意な臨床的有効性」が認められる新たな適応症を追加した場合、追加で1年間の市場独占権を認めるものです。これは各国での承認にもEUの中央審査による承認にも当てはまります。また、EUには米国の類似したオーファンドラッグの独占制度があります。医薬品がオーファンドラッグとして指定された場合、10年間の市場独占権が与えられ、この間当該医薬品と同じ適応症を持つ同様の医薬品には販売承認が付与されません。特定の条件下では、さらに2年間の小児用医薬品に係る延長が認められます。
当社グループ製品の関連特許満了後の後発品の市場参入や、競合他社によるOTC医薬品の発売等、当社グループは世界中で知的財産に関わる課題に直面しています。当社グループのグローバルジェネラルカウンセルは、知的財産権および法務の業務について監督責任を負っています。当社グループの知的財産部は、下記3つの優先事項に注力することにより、当社グループの全社的な戦略をサポートしています。
・疾患領域別ユニットの戦略に沿った自社製品および研究開発パイプラインの価値の最大化および関連
する権利の保護
・パートナーとの提携サポートによる外部イノベーションのよりダイナミックな活用の促進
・新興国市場を含む世界各国での知的財産権取得および保護
当社グループの知的財産権が侵害されることは、それらの権利から得ることが期待される収益が失われるリスクとなるため、当社グループは特許やその他の知的財産を管理するための内部プロセスを整備しています。このプログラムでは、第三者からの侵害に継続的に警戒するともに、当社グループの自社製品および活動が第三者の知的財産を侵害しないよう、製品開発 段階から注意を払っています。
通常の事業活動において、当社グループの特許は第三者から異議の申し立てを受ける可能性があります。当社グループは、当事者として知的財産権に関する訴訟等に関与しております。継続中の重要な訴訟の詳細については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 連結財務諸表注記 32 コミットメント及び偶発負債 (5)訴訟」をご参照ください。
下表では、記載された製品について、対象地域ごとに、存続している物質特許およびデータ保護期間(以下、「RDP」)(米国およびEU)もしくは再審査期間(以下、「RP」)(日本)ならびに満了日を記載しております。RDPとRPについてはそれらの制度的な独占期間が特許満了日後にも与えられる場合にのみ記載しています。特許期間の延長(PTE)、補充的保護証明書(SPC)、小児用医薬品に係る独占期間(以下、「PEP」)は当局により認められたものについては満了日に反映され、申請手続中で認められていないものについては、延長された満了日を別途記載しています。
当社グループのバイオ医薬品は、下記の特許満了期間に関わらず、同じ適応症に対する類似製品またはバイオシミラーを製造する他社との競争に直面するか、今後直面する可能性があります。また、欧州の特許の一部は、SPCにより、いくつかの国で下表に記載の満了期限を超えて対象製品に追加的な保護が付与されます。
(注1) 表中の「―」は物質特許の満了または該当なしを表します。
(注2) 日本では、後発品の承認申請は、先発品の再審査期間終了後に行われ、規制当局による審査の後、承認、薬価収載されます。したがって、後発品は再審査期間の満了後から一定の期間を経て市場に参入します。
(注3) 本製品は、第三者への導出契約を締結しているため、全ての地域で当社グループが販売を行っているわけではありません。
(注4) 本製品は、特定の地域限定で第三者からの導入契約を締結しているため、全ての地域で当社グループが販売を行っているわけではありません。詳細については「ライセンスおよび共同研究開発契約」をご参照ください。
(注5) ANDA申請者との合意により、2023年3月以降に後発品が発売される可能性があります。
(注6) ANDA申請者との合意により、2021年1月以降(または一定の状況下でより早期)に後発品が発売される可能性があります。
(注7) これらの医薬品は血漿分画製剤です。