当社の企業理念は以下の通りです。
私たちの存在意義(パーパス)
当社は、「世界中の人々の健康と、輝かしい未来に貢献する」ために存在しています。
私たちの価値観(バリュー)
当社は、「誠実:公正・正直・不屈」の精神で支えられた価値観に従います。当社は、これを道しるべとしながら「1.患者さんに寄り添い(Patient)、2.人々と信頼関係を築き(Trust)、3.社会的評価を向上させ(Reputation)、4.事業を発展させる(Business)」を日々の行動指針とします。
私たちが目指す未来(ビジョン)
当社のビジョンは、「すべての患者さんのために、ともに働く仲間のために、いのちを育む地球のために。私たちはこの約束を胸に、革新的な医薬品を創出し続ける」ことです。
私たちの約束(インペラティブ)
当社には、患者さん、ともに働く仲間、そして地域社会に対して果たすべき責任があります。この「私たちの約束」は「私たちの存在意義」と「私たちが目指す未来」を実現するために欠かせない要素です。
すべての患者さんのために
・私たちは、倫理観をもってサイエンスの革新性を追求します。そして、人々の暮らしを豊かにする医薬品の創出に取り組みます。また、私たちの医薬品を、より多くの人々に迅速にお届けします。
ともに働く仲間のために
・私たちは、理想的な働き方を実現します。
いのちを育む地球のために
・私たちは、自然環境の保全に寄与します。
データとデジタル
・データとデジタルの力で、イノベーションを起こします。
世界の製薬産業においては、がん免疫療法や細胞療法、遺伝子治療等の新たな医療技術が登場しており、イノベーションのスピードはかつてよりも速くなっています。このような革新的な医療による成果が現れてきている一方、画期的なバイオ医薬品の研究開発費は高騰し、高齢化社会の進展等も相まって各国の医療制度は財政的課題に直面しております。このため、保険者は保険償還対象となる医薬品をより厳格に選定するようになっており、各国政府は後発品やバイオシミラーの使用を促進し、薬価引き下げの圧力を強めています。しかしながら、未だ満たされていない医療ニーズは多く存在しており、患者さんの医薬品アクセスを高め、持続可能なヘルスケアシステムを維持していくことを含め、研究開発型の製薬企業に期待される役割は大きくなっています。
このような経営環境の下、当社は、世界中の患者さんに画期的な医薬品と革新的な治療法をお届けし得る、自らの企業理念に基づき患者さんを中心に考えるという価値観を根幹とする、機動的でグローバルな研究開発型のバイオ医薬品企業の実現に注力し、変革を続けています。2019年1月のShire plc.(以下、「Shire社」)の買収は、この変革の大きな一歩となりました。本買収は、事業展開の地域バランスの改善と米国をはじめとする主要な市場における競争力の源泉となる規模をもたらし、当社は、世界の大手製薬企業と伍していける力を得ました。連結売上収益に占める米国の割合は約半数にまで高まっております。また、本買収により、消化器系疾患およびニューロサイエンス(神経精神疾患)の領域が強化され、希少疾患および血漿分画製剤の領域における主導的地位がもたらされました。さらに、本買収は、強固かつモダリティ(創薬手法)の多様な、高度に補完的なパイプラインを創出し、イノベーションにフォーカスした研究開発の原動力を強化することにつながっています。財務面においては、キャッシュ・フロー・プロファイルの拡大により、飛躍的な進歩が見込まれる医療技術への投資力が向上しており、株主に対する利益の還元についてもコミットしております。
Shire社の統合は、経験豊富で多様性に富んだ当社経営陣の指揮の下、当社の価値観を尊重しながら実行し基本的に完了しました。当社は、患者さんや社会、株主の皆様に長期的な価値をお届けできるよう、One Takedaとして事業運営を行っております。
当社は、地域戦略を着実に実行するため、「米国」、「日本」、「ヨーロッパおよびカナダ」、ならびに中国、中南米、中東およびアフリカ、アジア太平洋、ロシアおよびCIS(独立国家共同体)から構成される「成長新興国」の4つの地域ビジネスユニットを編成しています。このようにローカル中心のグローバル組織を構築することで、当社医薬品へのアクセス向上や患者さんが入手可能な価格設定といった各地域のニーズに迅速に対応することが可能となります。これら4つの地域ビジネスユニットに加え、専門性の高い領域であるオンコロジー(がん)、ワクチン、血漿分画製剤については、スペシャルティビジネスユニットを編成し、エンド・ツー・エンドの事業運営を行っております。
当社は、持続可能で中長期的な成長を促進するため、引き続き、以下の3つの戦略的優先事項に取り組んでまいります。
1) ビジネスエリアのフォーカス
消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー(がん)、ニューロサイエンス(神経精神疾患)の5つの主要ビジネスエリアにフォーカスします。
2) 研究開発の原動力
当社は、患者さんを中心に考えるサイエンス主導の企業として、サイエンスから人生を変えうるような高度に革新的な医薬品を創出する取り組みを進めております。疾患領域の絞り込み、先進的なパートナーシップモデルの推進、新規メカニズムや新たな専門性への投資を通じて、研究開発の原動力を構築しております。バイオ医薬品の中でも、オンコロジー(がん)、希少遺伝子疾患・血液疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)および消化器系疾患の4つの疾患領域に重点的に取り組むとともに、血漿分画製剤およびワクチンにもターゲットを絞った研究開発投資を行ってまいります。
2021年度は、研究開発体制の変革の取り組みの成果が現れ始める年であり、当社のパイプラインにとって転換期となります。当社は、2021年度において、5つから6つの新規候補物質の米国食品医薬品局(FDA)への承認申請および審査と、うち4つについては承認取得できることを見込んでおります。また、7つの新規候補物質については、合計10の適応症を対象としたピボタル試験を2021年度末までに実施している見込みです。近年、当社はパイプラインの変革を強力に推進してきました。これらパイプラインの価値を最大化するため、2021年度は研究開発投資を増額します。
3) 強固な財務プロファイル
当社は、利益率の中長期的な向上にフォーカスし、事業投資や負債の早期返済、株主へのキャッシュの還元のため、キャッシュ・フローを創出します。
当社では、純有利子負債/調整後EBITDA倍率を2021年度から2023年度の間に2倍台前半にすることを目標としております。この取り組みを加速させるため、約100億米ドルを目標にノン・コア資産の売却を進めてまいりましたが、2019年1月以降公表した12案件の殆どの売却は完了し、目標額を達成しました。
当社では、事業の計画策定および業績評価において、「実質的な成長」(Underlying Growth)の概念を採用しております。当年度と前年度の業績について、為替レートを一定として、事業等の売却影響や本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響等を控除し算定される「実質的な成長」は、事業活動のパフォーマンスを共通の基準で比較するものであり、投資家に追加的な情報を提供できるものと考えています。
その他の優先事項
上記の戦略的優先事項に加え、当社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行する中での最優先事項として、従業員ならびに従業員とともに業務に従事して頂いている方々、従業員の家族、また地域社会の健康を守るため、あらゆる方策を講じるとともに、患者さんが必要とされる医薬品を確実にお届けできるように取り組んでおります。当社の取り組みの詳細につきましては、(新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大による影響と当社の取り組み)をご参照ください。
また、当社は、目的主導型のサステナビリティに取り組んでおります。私たちは、グローバルバイオ医薬品企業として、患者さん、ともに働く仲間、株主の皆さん、保険者の方々、規制当局、政府、そして地域社会、それぞれに対しタケダが果たすべき責任を十分に理解しています。また、これらの環境・社会・ガバナンス(ESG)の責任を真摯に受けとめることで社会から受け入れられ、尊敬され、信頼を得ることができると考えています。
当社は、どのような非財務的課題が当社とステークホルダーにとって戦略的に重要かについての理解を深めるため、包括的な重要課題(マテリアリティ)の評価を2019年度に実施しました。この評価は当社の企業理念を策定するにあたり重要な資料となりました。重要なトピックを事業運営と戦略全体に組み込むことで、グローバルな課題解決に貢献するための資源配分と判断ができるようになります。
例えば、当社では、環境スチュワードシップへの取り組みの一環として、事業活動における温室効果ガス(GHG)の排出をゼロにし(スコープ1および2)、サプライヤーと協働して排出量を大幅に削減し(スコープ3)、スコープ3の残りの排出量を実証済みのカーボンオフセットで相殺することにより、2040年にバリューチェーン全体でカーボンニュートラルを達成することを公表しております。2019年度には、当社内の省エネルギー対策、グリーンエネルギーの調達、ならびに再生可能エネルギー証書(REC)および高品質の検証済みカーボンオフセットへの投資に継続的かつ重点的に取り組んだ結果、当社のバリューチェーン全体でカーボンニュートラルを達成しました。
コミュニティや患者さんが多様であるように、当社でも多様な人材を確保しております。ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包括性)は、当社社内に限らず、当社が事業を運営し、患者さんに寄り添う地域社会においても、普遍的な価値観であると捉えており、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンを積極的に促進・改善することで偏見をなくし、良い変化を起こすことを目指しています。当社では、タケダ・エグゼクティブチームのメンバーが参画するダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン カウンシルを初めてグローバルに設置し、無意識の偏見や、より多様で公平でインクルーシブな職場を確保するための機会について、当社リーダーへのインタビューも実施しています。
医薬品アクセス戦略やグローバルCSRプログラムなど当社のESGへの取り組みは、複数のESG評価機関から高い評価を受けています。例えば、当社は、2021年1月に公表された2021年のAccess to Medicine Indexにおいて業界をリードする順位を獲得しました。当社は、「医薬品アクセスに対するガバナンス(Governance of Access)」のカテゴリーで首位になるなど、Access to Medicine Indexの評価対象である3つのカテゴリーすべてで高いスコアを獲得しました。また、医療制度の強化、コンプライアンス、研究開発の能力構築の領域でも優れた評価を得ました。
(新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大による影響と当社の取り組み)
① 当社の経営成績および財政状態に対するCOVID-19影響
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大が起きてから一年以上が経過しましたが、当社は、引き続きあらゆる取り組みを行っており、業界としても様々な支援を行っております。COVID-19に対するワクチンが広く普及しつつありますが、当社は、過去一年間実施してきた既存の当社プロトコールに加えて、各国・地域の公衆衛生関連規制を引き続き遵守し、COVID-19が当社の事業活動に及ぼす潜在的な影響を注視してまいります。
当社は、当社製品の需要動向について注視しておりますが、当社の医薬品は病院での待機手術を要しない重篤な慢性疾患や生命を脅かす恐れのある疾患に対するものが多く、これまでのところ影響は限定的です。グローバルなサプライチェーンにおいては、COVID-19の大流行による製品供給の重大な問題は発生しておらず、また、発生の可能性を予測しておりません。
この一年、当社は渡航制限や業界関連団体の集会への参加自粛、当社主催の集会の休止等、特定の事業活動を継続して自主的に制限しました。
新たな臨床試験については、COVID-19の流行拡大の初期に、治療薬候補である血漿分画製剤(CoVIg-19)を除き、臨床試験の開始を一時的に休止しました。同時に、すでに進行中の臨床試験についても、一部の例外を除き、新たな試験実施施設の組み入れならびに新規患者さんの登録を一時的に休止しましたが、これは一時的な措置であり、現在大部分の臨床試験は再開しております。
いくつかの臨床試験については、一定の遅延が見込まれており、再度、一時的に休止する可能性もありますが、臨床試験ごとに状況を注視するとともに、各国および各試験実施施設での状況も把握してまいります。
金融市場の動向は注視を続けており、流動性や資金調達に係る重要な問題は現在見込んでおりません。
② COVID-19影響軽減のための当社の取り組み
当社は、「私たちの価値観」(バリュー)に基づき、従業員の健康・安全確保、当社医薬品を必要とされている患者さんへの提供、当社従業員が就業・居住するコミュニティでの感染の軽減およびサポートを中心に引き続き取り組んでおります。
当社は、COVID-19の流行拡大に伴う様々な問題に対処するため、2020年1月に、グローバル危機管理委員会を始動させ、社内外の専門家の支援のもと、様々な対策を講じております。具体的には、COVID-19流行拡大に対する従業員向けガイダンスの策定、関連情報の提供、必須業務における感染対策の強化および職場毎の事例対応プロトコールの導入などが含まれます。また、本委員会では、職場復帰が可能と判断できた時点で、安全かつ段階的な復帰を支援するための包括的なチェックリストも作成しました。
当社は、従業員の安全を確保する措置として、在宅勤務ポリシーの適用を継続し拡充したIT技術によりこれを支援しています。テレワークのガイダンスは、医療従事者と関わる外勤の従業員も可能な限り対象として、世界中の従業員に広範囲で適用しております。また、製造施設や研究所、血漿収集センターであるBioLifeにおいて引き続き勤務する必要のある従業員については、ウイルス感染を軽減するための安全措置を強化しました。
グローバル危機管理委員会ならびにReturn to the Workplace(職場復帰対策)チームは、新型コロナウイルスの侵入と感染を抑制しながらも、事業を継続および強化していくために「新しい職場環境」をどのように作るべきかについて、ガイダンスを作成しました。新しい職場プランは、科学、疫学、地域の公衆衛生事情に基づき、各国の状況に合わせて調整しておりますが、地方自治体の方針および公衆衛生関連規制の遵守、フェイスカバーの使用や物理的な距離を保つことなどの感染予防対策を含めた職場の準備、当社の拠点における人口密度の低減、感染対策プロトコールの強化、個々の従業員の状況の考慮、慎重かつ段階的な実施など、共通原則・要件にも従っております。
また、当社のCOVID-19収束後の職場戦略においては、単一の戦略あるいは方針ではなく、基本方針、新しい職場のデザインに関するガイダンスおよびツールを策定・提供することで、各職場あるいは各機能のリーダーが、最適な職場環境を決定および導入できるようにしました。
今後の状況については常に注視していくものの、移動および大規模な集会に関する制限については継続し、不要不急の移動、大規模な集会の開催や参加については今後新たな方針が示されるまで引き続き休止してまいります。
外勤の従業員については、医療従事者との対面の訪問業務を一部再開したものの、現在も大部分はバーチャルで実施しております。対面の訪問業務は、医療従事者の合意の下でのみ、当社が定める厳格な感染予防対策に加え、公衆衛生上求められる対策および医療機関から求められる追加の対策も行った上で実施しております。
当社は赤十字社や国連主導の組織を含む非営利団体(国連世界食糧計画(国連WFP)、国連人口基金(UNFPA)、国際原子力機関(IAEA))に対する約25百万米ドルの寄付金や現物寄付、社員によるマッチング寄付を通じて、COVID-19対策を支援しております。
事業の継続性の維持の側面では、当社医薬品の製造代替業者の選定を含め、適正な在庫水準を管理し、当社医薬品を患者さんに継続的に提供できる施策を整備しています。当施策は、主要な出発物質、添加剤、医薬品原料、医薬品原薬(API)ならびに製品のグローバルなサプライチェーン全体に対して適用しております。当社は、当社の医薬品を必要とされる方々に確実にお届けできるよう、引き続き状況を注視し、あらゆる必要な措置を講じて製品供給の継続性を確保してまいります。
研究開発においては、患者さんへの治験薬の直接配送や潜在的な中断の可能性も勘案した臨床試験デザインの再検討を可能な限り実施しています。また、臨床試験に参加されている患者さんの遠隔モニタリングが可能となるデジタル技術についても、引き続き検証および構築を進めてまいります。
CoVIg-19 Plasma Allianceは、COVID-19に対抗する治療法を開発するという当社の取り組みの一つです。当社は、2020年4月にCSL Behring社や血漿分画製剤事業を営む複数社と結成したグローバルな提携体制であるCoVIg-19 Plasma Allianceに参画し、提携メンバーとともにCOVID-19による重篤な合併症のリスクを有する患者さんを治療できる可能性のある、抗コロナウイルス高度免疫グロブリン製剤(H-Ig)の開発・製造に取り組んでまいりました。H-Igは、米国国立衛生研究所(NIH)の米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が実施する国際臨床第3相試験において評価され、2021年3月に終了しました。臨床試験結果は評価項目を達成しませんでしたが、この難しいウイルスや、患者さんケアの方法について理解を深めることに当プログラムの結果が貢献することが期待されます。本試験の結果を受けて、CoVIg-19 Plasma Allianceの取り組みは終了しました。
また、当社は、CoVIg-19 Plasma Allianceの他に、COVID-19に対処するため様々な取り組みを進め、複数の既存製品およびパイプラインについて新型コロナウイルスに対する有効性を検証するとともに、グローバルな共同研究にも参画してまいりました。
さらに、当社は、日本におけるCOVID-19ワクチンの供給に係る2つの提携について公表しました。一つ目は、Novavax社のCOVID-19ワクチン候補であるNVX-CoV2373(日本での開発コード:TAK-019)の日本における開発、製造、流通に関する提携です。二つ目は、Moderna社のCOVID-19ワクチン候補であるmRNA-1273(日本での開発コード:TAK-919)の日本への輸入および供給に関するModerna社および厚生労働省との提携です。2021年5月、当社は日本における「TAK-919」の安全性および免疫原性を評価する国内臨床第1/2相試験の良好な結果を受けて、厚生労働省より製造販売承認を取得し、日本における供給を開始しております。また、当社は、IDT Biologika GmbH社(IDT社)と、Johnson & Johnson社グループのJanssen Pharmaceutical Companies社が開発した1回投与のCOVID-19ワクチンを製造するために、当社のデング熱ワクチン候補の製造用に確保していたIDT社の生産施設を活用することについて合意したことを公表しました。
③ COVID-19の世界的な拡大に伴う事業等のリスク
「2 事業等のリスク」をご参照ください。
④ 2020年度実績におけるCOVID-19影響
COVID-19の世界的な流行拡大に伴う、2020年度通期の連結業績への影響は軽微でありました。売上収益については、ニューロサイエンス(神経精神疾患)といった一部の疾患領域において、外出制限期間中に患者さんの医療機関訪問の頻度が減少する等のマイナス影響が見られました。この動向は、当年度を通じて変動してきました。これらのマイナス影響は、服薬の利便性の高い特定の製品の需要拡大が流行拡大の初期に見られる等、処方動向によるプラス影響により一部相殺されております。営業経費については、渡航制限や集会の自粛等、特定の事業活動を自主的に制限したことにより経費使用が減少しました。これらの結果、COVID-19の世界的な流行拡大による利益に対する影響は軽微でした。
[主要製品一覧]
消化器系疾患領域における主要製品は以下の通りです。
・エンティビオ/エンタイビオ(ベドリズマブ):「エンティビオ」は、中等症から重症の潰瘍性大腸炎・クローン病に対する治療剤です。「エンティビオ」は、2014年に米国および欧州において発売以来、売上が伸長しており、2020年度の当社グループの売上トップ製品です。現在、「エンティビオ」は世界72カ国で承認されています。当社は本剤の可能性を最大化するため、その他の国においても本剤の承認取得を進め、さらなる適応症の開発を行うとともに、皮下注射製剤の開発を行います。2020年度の「エンティビオ」の売上収益は4,293億円となりました。
・タケキャブ(ボノプラザンフマル酸塩):酸関連疾患の治療剤「タケキャブ」は、2015年に日本で発売され、逆流性食道炎や低用量アスピリン投与時における胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発抑制などの効能により飛躍的な成長を遂げました。2020年度の「タケキャブ」の売上収益は848億円となりました。
・GATTEX/REVESTIVE(テデュグルチド[DNA組換え型]):非経口(静脈栄養)サポートを必要とする短腸症候群(SBS)の治療薬です。2019年、米国FDAより、「GATTEX」の1才以上の小児SBS患者さんへの適応拡大が承認されました。2020年度の「GATTEX/REVESTIVE」の売上収益は646億円となりました。
・ALOFISEL(darvadstrocel):「ALOFISEL」は、非活動期/軽度活動期の成人の管腔型クローン病患者における、少なくとも一回以上の既存治療または生物学的製剤による治療が効果不十分であった肛囲複雑瘻孔に対する治療薬です。「ALOFISEL」は、2018年に欧州の中央審査により販売承認(MA)された、欧州初の同種異系幹細胞療法です。2020年度の「ALOFISEL」の売上収益は8億円となりました。
希少疾患領域における主要製品は以下の通りです。
・TAKHZYRO(Lanadelumab):「TAKHZYRO」は、遺伝性血管性浮腫(HAE)の発作予防に用いられます。「TAKHZYRO」は、HAEの患者さんにおいて慢性的に制御不能な酵素である血漿カリクレインに選択的に結合し、減少させる完全ヒト型モノクローナル抗体です。「TAKHZYRO」は2018年に米国と欧州にて、2020年に中国にて承認され、さらなる地理的拡大を目指しています。2020年度の「TAKHZYRO」の売上収益は867億円となりました。
・アディノベイト(抗血友病因子(遺伝子組換え型) [PEG化]):「アディノベイト」は、血友病A治療薬であり、遺伝子組換え型半減期延長第Ⅷ因子製剤です。「アディノベイト」は遺伝子組換え型半減期延長第Ⅷ因子製剤「アドベイト」と同じ製造工程で作られ、当社がネクター社より独占的にライセンス取得しているPEG化(体内での循環時間を延長し、投与頻度を減らすための化学修飾処理)技術を追加したものです。2020年度の「アディノベイト」の売上収益は581億円となりました。
・NATPARA/NATPAR(副甲状腺ホルモン):「NATPARA/NATPAR」は、通常療法(カルシウムおよびビタミンDによる治療)で効果不十分な成人の慢性副甲状腺機能低下症(HPT)に対する治薬剤です。HPTは、副甲状腺からの副甲状腺ホルモン(PTH)分泌量不足、または分泌されたPTHの不活性によって起こる希少疾患です。2019年9月、当社は、「NATPARA/NATPAR」のカートリッジのゴム製隔壁部分由来のゴム小片がカートリッジ内に混入する可能性があることが判明したため、米国FDAとの協議に基づき、米国において「NATPARA」全ての用量を回収しました。当社は、2022年3月期に当該製品の米国での売上を想定しておりませんが、早期の事案解決と供給再開に向けて米国FDAと緊密に連携してまいります。米国以外の地域では「NATPARA/NATPAR」は引き続き使用可能です。2020年度の「NATPARA/NATPAR」の売上収益は36億円となりました。
・エラプレース(イデュルスルファーゼ):「エラプレース」は、ハンター症候群(ムコ多糖症II型またはMPS II)に対する酵素補充治療薬です。2020年度の「エラプレース」の売上収益は688億円となりました。
・リプレガル(アガルシダーゼ アルファ):「リプレガル」は、ファブリー病に対して米国以外の市場で販売され、2020年に中国でも承認された酵素補充療法治療薬です。ファブリー病は、脂肪の分解に関与するリソソーム酵素α-ガラクトシダーゼAの活性の欠如に起因する遺伝子性の希少疾患です。2020年度の「リプレガル」の売上収益は518億円となりました。
・ビプリブ(ベラグルセラーゼ アルファ点滴静注用):「ビプリブ」はI型ゴーシェ病に対する酵素補充療法治療薬です。2020年度の「ビプリブ」の売上収益は385億円となりました。
血漿分画製剤領域における主要製品は以下の通りです。
・GAMMAGARD LIQUID(静注用人免疫グロブリン10%製剤):「GAMMAGARD LIQUID」は、抗体補充療法用免疫グロブリン(以下、「IG」)の液体製剤です。「GAMMAGARD LIQUID」は、原発性免疫不全症(PID)の成人および2歳以上の小児患者に対して使用され、静注または皮下注のいずれかの方法で投与します。また、「GAMMAGARD LIQUID」は、成人の多巣性運動ニューロパチー症(MMN)患者に対しても静注投与にて使用されます。「GAMMAGARD LIQUID」は、米国以外の多くの国で製品名「KIOVIG」として販売されています。「KIOVIG」は、欧州においてPIDおよび特定の二次免疫不全症患者、ならびに成人のMMN患者への使用が承認されています。
・GAMMAGARD S/D(静注用人免疫グロブリン製剤):「GAMMAGARD S/D」は、5%溶液中のIgA含量は1μg/mL未満であり、2歳以上の原発性免疫不全症(PID)患者の治療に使われます。「GAMMAGARD S/D」は、低ガンマグロブリン血症およびB細胞慢性リンパ球性白血病(CLL)による再発性細菌感染症における細菌感染症の予防、成人の慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)患者における血小板増加および出血予防・抑制、小児患者における川崎病による冠動脈瘤の出血予防・抑制にも使用されます。「GAMMAGARD S/D」は、IgA含量の低い静注治療(5%溶液中のIgA含量1μg/mL未満)が必要な患者に使用されます。
・HYQVIA(免疫グロブリン注射製剤10%(ヒト)):「HYQVIA」は、人免疫グロブリン(IG)および遺伝子組換え型ヒトヒアルロニダーゼ(Halozyme社よりライセンス取得)からなる製剤です。「HYQVIA」は、PID患者に対して最長で1ヶ月に1回の投与で、1回あたりの注射部位一か所でIGの全治療用量を投与出来る、唯一のIG皮下注用治療薬です。「HYQVIA」は、米国では成人PID患者への使用、また欧州においてPID症候群および骨髄腫患者または重度の続発性低ガンマグロブリン血症および回帰感染を伴う慢性リンパ性白血病患者への使用が承認されております。
・CUVITRU:「CUVITRU」は、ヒト免疫グロブリン(IGSC)皮下注用20%製剤であり、原発性体液性免疫不全症の成人および2歳以上の小児患者に対する補充療法に用いられます。「CUVITRU」は、欧州では特定の二次免疫不全の治療薬としても承認されています。「CUVITRU」は、プロリン不含で、投与部位1か所あたりの耐用量内で最大60 mL(12g)および1時間あたり60 mLまで投与可能な唯一の20%皮下IG治療法であり、従来の皮下IG治療法と比較してより少ない投与部位および短い投与時間での使用が可能です。2020年度の「GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG」「GAMMAGARD S/D」「HYQVIA」「CUVITRU」を含む免疫グロブリン製剤の売上収益は3,349億円となりました。
・LEXBUMIN(ヒトアルブミン):「FLEXBUMIN」(ヒトアルブミンバッグ製剤)およびヒトアルブミン(ガラス瓶製剤)は、濃度5%および25%の液体製剤として販売されています。両製品とも、血液量減少症、一般的な原因および火傷による低アルブミン血症、ならびに心肺バイパス手術時のポンプのプライミングに使用されます。また、「FLEXBUMIN」25%製剤は、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)およびネフローゼに関連する低アルブミン血症、ならびに新生児溶血性疾患(HDN)にも適応されます。2020年度のFLEXBUMINおよびヒトアルブミン(ガラス瓶製剤入り)を含むアルブミン製剤の売上収益は576億円となりました。
オンコロジー領域における主要製品は以下の通りです。
・ニンラーロ(イキサゾミブ):「ニンラーロ」は、多発性骨髄腫(MM)治療に対する初めての経口プロテアソーム阻害剤です。「ニンラーロ」は、再発又は難治性の多発性骨髄腫の効能で、2015年に米国で発売されて以来売上を大幅に伸ばし、2016年に欧州、2017年に日本、2018年に中国で承認されております。当社グループは現在、多発性骨髄腫の維持療法の開発を実施し、適応患者層の拡大を目指しています。2020年度の「ニンラーロ」の売上収益は874億円となりました。
・アドセトリス(ブレンツキシマブ ベドチン):「アドセトリス」は、ホジキンリンパ腫(HL)および全身性未分化大細胞リンパ腫(sALCL)の治療に使用される抗癌剤です。「アドセトリス」は、世界70カ国以上で規制当局から販売承認を受けており、2020年5月には中国で承認されました。当社は、Seagen社と「アドセトリス」を共同開発し、米国およびカナダ以外の国での販売権を保有しています。2020年度の「アドセトリス」の売上収益は594億円となりました。
・アルンブリグ(brigatinib):「アルンブリグ」は、非小細胞肺がん(NSCLC)治療に使用される経口投与の低分子未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤です。2017年に米国で迅速承認され、2018年に欧州委員会より製造販売承認を取得しました。2020年5月に新たにALK陽性転移性NSCLCと診断された患者さんに対する効能が追加されました。2020年度の「アルンブリグ」の売上収益は88億円となりました。
ニューロサイエンス領域における主要製品は以下の通りです。
・バイバンス/ビバンセ(リスデキサンフェタミンメシル酸塩):「バイバンス」は、6歳以上の注意欠陥・多動性障害(AD/HD)患者および成人の中程度から重度の過食性障害患者の治療に用いられる中枢神経刺激剤です。2020年度における「バイバンス」の売上収益は2,715億円となりました。
・トリンテリックス(ボルチオキセチン臭化水素酸塩):「トリンテリックス」は、成人大うつ病性障害の治療に適応される抗うつ薬です。「トリンテリックス」はH. Lundbeck A/S社と共同開発し、当社は米国および日本での販売権を保有しており、米国では2014年、また日本では2019年より販売しています。2020年度の「トリンテリックス」の売上収益は689億円となりました。
当社の業績は、現在および将来において様々なリスクにさらされており、リスクの顕在化により予期せぬ業績の変動を被る可能性があります。以下では、当社が事業を展開していくうえで直面しうる主なリスクを記載いたします。なお、以下に記載したリスクは当社の全てのリスクを網羅したものではなく、記載以外のリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。
当社のグローバルリスク管理ポリシーについては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 3.業務執行に係る事項 <内部統制システムに関する基本的な考え方およびその整備状況> ③ 損失の危険の管理に関する規程その他の体制」をご参照ください。
なお、本項目に含まれる将来に関する事項およびリスクは、当年度末現在において判断したものです。
(1)研究開発に関するリスク
当社は、持続的成長を実現するために、最先端の科学で革新的な医薬品を創出することを目指しています。当社は、研究開発機能の向上および社外パートナーとの提携等により研究開発パイプラインを強化すると共に、世界各国の市場への一日も早い新製品の上市を目指し、質の高い革新的な研究開発パイプラインを構築することで研究開発の成功確率を高める等により効率的な研究開発活動に努めております。しかしながら、医薬品は、自社創製候補物質、導入候補物質にかかわらず、所轄官庁の定めた有効性と安全性に関する厳格な審査により承認されてはじめて上市可能となります。
研究開発の途上において、当該候補物質の有効性・安全性が、承認に必要とされる水準を充たさないことが判明した場合またはその懸念があると審査当局が判断した場合、その時点で当該候補物質の研究開発を途中で断念、または追加の臨床試験・非臨床試験を実施せざるを得ず、それまでにかかったコストを回収できないリスクや製品の上市が遅延するリスク、および研究開発戦略の軌道修正を余儀なくされる可能性があります。
(2)知的財産権に関するリスク
当社の製品は、物質・製法・製剤・用途特許等の複数の特許によって、一定期間保護されております。
当社では特許権を含む知的財産権を厳しく管理し、当社が事業を行う市場における知的財産権や第三者からの侵害状況を継続的にモニタリング、評価および分析し、知的財産権に関するリスクの回避と、受けうる影響の低減を図っていますが、当社の保有する知的財産権が第三者から侵害を受けた場合には、期待される収益が失われる可能性があります。また、当社の自社製品等が第三者の知的財産権を侵害した場合には製造販売の差止めおよび損害賠償等を請求される可能性があります。
(3)特許権満了等による売上低下リスク
当社は、効能追加や剤型変更等により製品のライフサイクルを延長する努力をしておりますが、多くの製品について、特許または規制上の独占権の喪失・満了による後発品の市場参入は避けられず、米国や欧州では後発品が参入すれば通常、短期間で先発品から後発品へ切り替わり、先発品の収益が大きく減少します。国内では、当局が後発品の使用促進を積極的に進め、また、長期収載品のさらなる価格引下げが行われています。これに加え、競合品の特許満了によるその後発品、および競合品のスイッチOTC薬の出現などによって、国内外の競争環境は格段に厳しいものになってきており、その影響如何で当社製品の大幅な売上低下を招く可能性があります。
なお、特許権満了時期等の詳細については「第2 事業の状況 5 研究開発活動 知的財産」をご参照ください。
(4)副作用に関するリスク
医薬品は、世界各国の所轄官庁の厳しい審査を経て発売されます。当社は発売後の医薬品について安全性情報を収集し有効性とリスクのバランスを評価することを含め、安全性監視活動とリスク最小化活動を実施し、より安全、有効に医薬品を使用できるようファーマコビジランス活動を推進し、副作用に関するリスクの回避と受けうる影響の低減に努力しておりますが、市販後の使用成績が蓄積された結果、発売時には予期していなかった副作用が確認されることがあります。新たな副作用が確認された場合には、添付文書の「使用上の注意」への記載を行う、使用する対象患者を制限する、使用方法を制限するなどの処置が必要となるほか、重篤なケースが認められた場合には、販売中止・回収等を余儀なくされることもあり得ます。また、このような場合において、当社は製造物責任を負うとともに、金銭的、法的および社会的信頼に関する損害を負う可能性があります。
(5)薬剤費抑制策による価格引き下げのリスク
医薬品市場では、多くの国々において医療予算の削減が推進され、医療技術評価および国際価格を参照する政策により医薬品価格が低下しています。最大市場である米国では、医薬品価格を下げるための医療計画や仲介機関による取り組みに加え、継続的な法令および規制の制定により先発品への価格引き下げ圧力が一層高まっています。日本においては、政府による一層の後発品の使用促進に加え、医療保険制度における多くの製品の公定薬価が、毎年引き下げられております。欧州においても、薬剤費を抑制し、価格透明性を高め、国際価格を参照する政策により、医薬品価格が低下しております。当社は、各国の薬剤費抑制策の詳細な分析やモニタリングを行い、医薬品の価格状況を管理する組織体制を構築することでリスクの回避と影響低減の努力を行うと共に、各国政府や医療サービス供給者・保険者等と協力して、革新的な医薬品に対する適切な報酬制度を確立するために、価値に基づく新しい価格設定モデル等の解決策を追求しておりますが、これら各国の薬剤費抑制策による価格引き下げにより、当社製品の価格が影響を受け、当社の業績および財務状況に悪影響が生じる可能性があります。
(6)企業買収に関するリスク
当社は、持続的な成長を加速させるため、必要に応じて企業買収を実施しております。世界各国における事業活動は、法令や規則の変更、政情不安、経済動向の不確実性、商慣習の相違その他のリスクに直面する可能性があり、その結果当初想定した買収効果や利益が実現されない可能性があります。取得した資産の価値が下落し、評価損等が発生した場合や、買収した事業の統合から得ることが期待されている利益が実現されない場合には、のれんおよび無形資産等の減損損失の計上等により、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、2019年1月に完了したShire社の買収に必要な資金の調達のための金融機関からの多額の借入れを含め、当社は多額の債務を負っております。当社は、利益の創出および選択的なノン・コア資産の売却等を通じてレバレッジの速やかな低下を進めておりますが、将来の当社の財務状況が悪化した場合には、信用格付けが引き下げられ、その結果、既存の債務の借り換えや新規借入れ、その他資金調達の条件にも影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社の債務には制限条項が付されているものがあり、かかる制限条項に抵触した場合には、債務の早期返済等により当社の財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(7)安定供給に関するリスク
当社は、販売網のグローバル化に確実に対応する供給ネットワークと品質保証体制を強化しており、具体的には、必要に応じて複数のサプライヤーと適切な在庫水準を確保するための製造供給戦略の策定、代替サプライヤーの選定、当社内の製造ネットワークに係る危機管理規則の制定、事業継続管理システムの導入および定期的な内部監査等を行っています。しかしながら、当社または委託先の製造施設・物流施設等において、技術上もしくは法規制上の問題、原材料の不足、または自然災害の発生や感染症の流行等により、製商品の安定的供給に支障が発生する可能性があります。その動向によっては、当社の業績、財務状況および社会的信頼に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社においては昨年、光工場における規制当局からの指摘等への対応により、同工場で製造される一部製品に供給不足が生じ、解決に向けた対応措置を講じております。
(8)IT セキュリティ及び情報管理に関するリスク
当社は、顧客ニーズに合致したデジタルビジネスモデルへ移行するためデジタル変革を加速しております。また、事業の特性上、センシティブな個人情報を含む大量の機密情報を取り扱っており、データ保護の重要性がいっそう高まっております。大規模かつ複雑なIS/IT システム(アウトソーシング企業のシステムを含む)の利用は、従業員またはアウトソーシング企業の不注意または故意の行為、あるいは悪意をもった第三者による攻撃(サイバーアタック)により、システムの停止やセキュリティ上の問題が発生する可能性があります。当社は、これらのリスクを低減するため、包括的なポリシーや手続きを整備するとともに、リスク評価を通じた事業リスク分析および監査や第三者によるリスク低減テストを通じて、セキュリティ戦略の形成とクラウド活用を前提とした事業変革の推進を含む効果的なテクノロジーへの投資を行うことによりセキュリティの継続的な強化に努めておりますが、システムの停止やセキュリティ上の問題が発生した場合、当社の事業活動への悪影響、個人情報や知的財産等の重大な機密情報の流出や喪失、業績および財務状況の悪化、法的な損害ならびに信用の失墜を招く可能性があります。
(9)コンプライアンスに関するリスク
当社は事業の遂行にあたって、薬事規制や製造物責任、独占禁止法等の様々な法的規制やGMP (Good Manufacturing Practice)、GQP(Good Quality Practice)、GCP (Good Clinical Practice)、GLP (Good Laboratory Practice)等のガイドラインの適用を受けています。また、当社は多数のエージェント、サプライヤーや卸売業者等の第三者と協力関係にあり、当社の事業活動はこれらの第三者による業務遂行の影響を受けています。当社は、グローバルエシックス&コンプライアンス部門を設置し、グローバルでコンプライアンスを推進する体制を整備し、当社および当社が関係する第三者の事業活動が法令および社内規定を遵守して実施されていることをモニタリングしていますが、当社の従業員や、当社が関係する第三者がこれらの法令等に違反した場合や社会的要請に反した行動をとった場合、法令による処罰や制裁、規制当局による処分、訴訟の提起を受ける可能性があり、社会的な信頼を失うとともに金銭的損害を負う可能性があります。
(10)進出国および地域におけるカントリーリスク
当社は、グローバルな事業展開に伴い、進出国や地域における政治不安、経済情勢の悪化、新興感染症の拡大、社会混乱、各国・地域間における貿易摩擦等の潜在的なリスクに対応する体制を構築しており、患者さんの医薬品へのアクセスを保護することを優先事項として、リスクの抑止策や発生時の対処法を検討する等のリスク管理に努めております。しかしながら、不測の事態が生じた場合には、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(11)為替変動に関する影響
当社の当年度における海外売上収益は2兆6,381億円であり、連結売上収益全体の82.5%を占めており、そのうち米国での売上収益は1兆5,679億円にのぼり、連結売上収益全体の49.0%を占めております。従って、売上収益については円安は増加要因ですが、一方、研究開発費をはじめとする海外費用が円安により増加するため、利益に対する影響は双方向にあります。また、機能通貨以外で実行される事業上の取引、金融取引および投資に関して為替変動リスクにさらされています。当社は為替リスクを集約的に管理し、外貨建取引に係る取引リスクをヘッジするためにデリバティブ取引を行っておりますが、為替レートが当社の想定を超えて変動した場合には、当社の業績および財務状況に影響が生じる可能性があります。
(12)訴訟等に関するリスク
当社の事業活動に関連して、現在関与している訴訟のほか、将来、医薬品の副作用、製造物責任、労務問題、公正取引等に関連し、訴訟を提起される可能性があり、その動向によっては、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。なお、継続中の重要な訴訟の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 32 コミットメントおよび偶発負債」をご参照ください。
(13)環境に関するリスク
当社は、ステークホルダーからの期待に沿う環境保全活動と法規制への準拠を実現する厳格な環境マネジメントシステムおよび社内プログラムを整備するとともに、これらが有効に運用され、期待する結果を達成していることを確認するための内部監査手続を定めております。しかしながら、万が一、有害物質による予期せぬ汚染や法規制への不適合、不十分な環境保全活動が顕在化した場合には、社会的信頼を損なうとともに、行政措置の対象となり、保険の適用範囲外または補償金額を超える著しい支払義務を伴う改善措置の実施や法的責任を負うことにより、当社の事業活動に悪影響が生じる可能性があります。また、環境法規制の改正や社会の期待の変化により、より厳しいコンプライアンス要件の遵守や社会期待への対応が課せられ、当社の研究、開発、製造その他の事業活動に影響がおよぶ可能性があります。また、かかる要件の遵守や課題への対応が行われない場合には、法規制上の責任を負い、当社の社会的信頼に影響を及ぼすとともに、当社の業務遂行能力に悪影響が生じ、投資家に対する魅力が低下する可能性があります。
当社は、大気中の温室効果ガスによる気候変動を、人々の健康に大きな影響を及ぼす重要な環境課題として認識しております。当社は、当社内の省エネルギー対策、再生可能エネルギーの調達、ならびに再生可能エネルギー証書(REC)および高品質の検証済みカーボンオフセットへの投資等を通じ、温室効果ガス排出量を削減する取り組みを推進しております。また、直接のサプライヤーによる温室効果ガス排出量の削減も支援しています。当社は、2020年(2019年度)からカーボンニュートラルを達成することをコミットし、同年度において当社のバリューチェーン全体でのカーボンニュートラルを達成しました。さらに、2040年度までに、当社の事業活動に直接起因する温室効果ガス排出量をゼロにし、直接のサプライヤーによる温室効果ガス排出量を50%削減する高い目標を掲げています。
また、当社は、良き環境保全活動を行う事業者として、自社の製品とサービスのライフサイクル全体を通じた評価を実施し、環境への影響を緩和するための方策を継続的に検討していく必要性を認識しており、引き続き、水資源の消費削減と環境への影響の低減や廃棄物の埋め立て処分ゼロを目標とするなど、資源の保全に注力しています。当社は、製品のライフサイクルを通じた環境への影響を低減するための社内の評価プログラムや仕組みを確立しております。
このようなサステナビリティ課題に継続的に取り組むことは、当社の企業理念とも合致しています。地球環境を改善することは、患者さんの健康を守り、社会的信頼を築き、当社の評価を高め事業活動が成長する基盤となります。一方で、当社が掲げている高い目標に基づいた行動を実施できない場合や、ステークホルダーの期待に沿う結果が得られない場合には、当社に対する患者さんや社会からの信頼が損なわれ、投資家からは投資対象から外されるなどの事態が生じ、その結果、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(14)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に関するリスク
当社は、COVID-19の拡大に関連して、さまざまな取り組みを行っていますが、COVID-19による影響が深刻化または長期化した場合には、原材料の調達や製品供給の滞り、臨床試験の遅延の拡大等、これらに限定されず、当社事業に更なる影響が及ぶ可能性があり、もしくは、当社に適用のある規制の遵守が困難になる可能性があります。世界の多くの地域では、COVID-19の流行拡大の波に未だ見舞われており、この流行拡大と減速または収束に向けた対策がどの程度続くか未だに明らかではありません。また、ワクチンについては、世界中で段階的な供給が行われている状況です。COVID-19の流行拡大が減速または収束した場合であっても、当社の事業、財政状態および経営成績に対して、長期間継続して影響が及ぶ可能性があります。中期的な業績影響も明らかではありませんが、失業者数の増加や保険支払構造の変化、政府による医療費削減施策の導入の可能性等が影響を及ぼすことが考えられます。
将来の事業等にかかるリスクを最小化するため、当社は引き続き状況を注視し、必要な対策を講じてまいります。COVID-19の拡大による影響と当社の取り組みの詳細については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大による影響と当社の取り組み)」をご参照ください。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当年度の業績および財政状態は以下のとおりとなりました。
なお、当社グループは「医薬品事業」の単一セグメントのため、セグメントごとの経営成績の記載を
省略しております。
② キャッシュ・フローの状況
「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」をご参照下さい。
③ 生産、受注及び販売の状況
(a) 生産実績
当年度における生産実績は次のとおりであります。
(注) 1 当社グループは「医薬品事業」の単一セグメントであります。
2 生産実績金額は、消費税等を除いた販売価格によっております。
(b) 受注状況
当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画をたてて生産しており、一部の受注生産における受注高および受注残高の金額に重要性はありません。
(c) 販売実績
当年度における販売実績は次のとおりであります。
(注) 1 当社グループは「医薬品事業」の単一セグメントであります。
2 販売実績は、外部顧客に対する売上収益を表示しております。
3 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
4 販売実績は、消費税等を除いた金額であります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
① 当年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
(a) 当年度の経営成績の分析
(ⅰ) 当社グループの経営成績に影響を与える事項
事業の概況
当社は、自らの企業理念に基づき患者さんを中心に考えるという価値観を根幹とする、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品企業です。当社は、革新的な医薬品のポートフォリオを有し、研究、開発、製造、およびグローバルでの販売を主要な事業としております。当社は、サイエンスから革新的で患者さんの人生を一変させる医薬品を創出し患者さんにお届けするため、4つの重点疾患領域にフォーカスした研究開発の原動力を構築しました。また、バイオ医薬品や遺伝子治療など多様なモダリティ(創薬手法)へのアクセスを可能とするため、社内の研究能力を活用するとともに、外部パートナーとも連携しております。当社は、グローバルに展開した事業基盤をもとに、世界の主要各国で医療用医薬品を販売しております。
当社は、既存事業の自立的な伸長と企業買収を通じて成長してまいりました。これまで複数の企業買収を実施したことにより、疾患領域、地理的拠点、パイプラインの拡大を推進してまいりました。特に2019年1月にShire社を買収したことにより、当社の消化器系疾患およびニューロサイエンス(神経精神疾患)の領域が強化され、希少疾患と血漿分画製剤の主導的地位を獲得しました。販売においては、本買収は米国、欧州および成長新興国におけるプレゼンスを飛躍的に向上させました。また、本買収は、研究開発の原動力のさらなる強化を促進しました。当社は、本買収や投資、独自の研究開発提携モデルを通じて、相互補完的で強固かつ多様なモダリティ(創薬手法)のパイプラインを構築しました。
当社は、Shire社買収の対価の現金部分の資金を調達するため、多額の負債を計上しましたが、主に営業活動から生じるキャッシュ・フローを用いて、負債の削減を進める方針です。営業活動から生じるキャッシュ・フローは、規模の拡大や統合シナジーにより大幅に改善しているため、負債の返済に加えて、長期的な成長に向けた研究開発への投資、配当をはじめとした株主還元にもコミットしてまいります。
当社グループの事業は単一セグメントであり、資源配分、業績評価、および将来業績の予測においてマネジメントの財務情報に対する視点と整合しております。2021年3月期における売上収益および営業利益はそれぞれ3兆1,978億円および5,093億円であります。
当社グループの経営成績に影響を与える事項
当社グループの経営成績は、グローバルな業界トレンドや事業環境における以下の事項に影響を受けます。
買収
当社グループは、研究開発能力を拡大し(新たな手法に展開することを含みます。)、新しい製品(開発パイプラインや上市済み製品)やその他の戦略的領域を獲得するために、新たな事業を買収する可能性があります。同様に、当社グループの主な成長ドライバーに注力するため、また当社グループのポートフォリオを維持するために、事業や製品ラインを売却しております。
これらの買収は企業結合として会計処理され、取得した資産および引き受けた負債は公正価値で計上されております。当社グループの業績は、通常、棚卸資産、および有形固定資産の公正価値の増加や、無形資産の認識に伴う調整にかかる費用および償却費の計上を含む企業結合会計により影響を受けます。また、買収の対価が追加的な借入金で賄われている場合、支払利息の増加も当社グループの業績に影響を与えます。
当社グループは、2019年1月8日、6兆2,100億円を対価としてShire社を買収し、このうち3兆294億円を現金にて、残額を主に当社普通株式にて支払いました。当社グループは、対価の現金部分の資金を調達するため、3兆2,959億円の有利子負債を計上し、また買収を通じ1兆6,032億円のShire社の有利子負債を引き受けました。当該有利子負債は連結財政状態計算書に計上されております。2019年3月期において買収日における暫定的なShire社の買収に係る取得対価の配分を行い、3兆874億円ののれんおよび3兆8,993億円の無形資産を認識しております。2020年3月期において、当該取得対価の配分が完了したことに伴い取得した資産および引き受けた負債の公正価値を遡及修正しており、遡及修正を含むShire社買収日ののれんおよび無形資産はそれぞれ3兆1,655億円、および3兆7,691億円であります。
Shire社買収は、当社グループの製品ポートフォリオや地理的なプレゼンスの大幅な拡大等を通して、当社グループの事業に大きな変化をもたらしました。当社グループの業績は、売上収益及び関連費用の増加、取得した無形資産に係る償却費、および在庫の公正価値調整の費用化に起因する追加的な費用、買収資金を調達するための借入金に関連する支払利息、また事業統合に係る費用の支払い等により、大きく影響を受けます。
買収および上記の影響により、当社グループの業績は期間比較ができない可能性があります。
事業売却
買収に加え、当社グループは、主要な成長ドライバーに注力し、また長期借入金を速やかに返済するための追加キャッシュ・フローを創出するため、事業や製品ラインを売却しました。2020年3月期から2021年3月期および本報告書提出日時点における主要な事業売却は以下となります。
• 2019年7月、当社グループはLifitegrast点眼剤Xiidra®5%(以下、「XIIDRA」)をNovartis AGに34億米ドル(3,755億円)で譲渡し、今後追加で最大19億米ドル(2,100億円(注1))のマイルストンを受領する可能性があります。なお、当譲渡における譲渡損益に重要性はありません。
• 2020年3月、当社グループの中近東・アフリカ諸国およびロシア・ジョージア・独立国家共同体の国々の一部のノン・コア資産をAcino International AGおよびSTADA Arzneimittel AGに合計約8億6,000万米ドル(約919億円)で譲渡しており、2020年3月期に売却目的で保有する資産に分類した際に129億円の減損損失を計上しております。当譲渡における譲渡損益に重要性はありません。
• 2020年11月、当社グループは、アジア・パシフィックの国々のみで販売する当社ノン・コア資産である一部の一般用医薬品および医療用医薬品を、マイルストンの支払を含め、総額2億7,800万米ドル(268億円)で、Celltrion Inc.に譲渡し、2021年3月期において158億円の譲渡益を計上しました。
• 2020年12月、当社グループは、主にヨーロッパおよびカナダで販売する当社ノン・コア資産である一部の医療用医薬品を、総額5億6,200万米ドル(594億円)でCheplapharmに譲渡し、2021年3月期において214億円の譲渡益を計上しました。
• 2020年12月、当社グループは、中国で販売する当社ノン・コア資産である一部の医療用医薬品を、一定の法律上・規制上のクロージング条件を満たすことを前提に、3億2,200万米ドル(356億円(注1))でHasten Biopharmaceutic Co., Ltd. (China) に譲渡する契約を締結したことを公表しました。
• 2021年1月、当社グループは、ラテンアメリカで販売する一部の医療用医薬品および一般用医薬品のポートフォリオを総額8億2,500万米ドル(825億円)でHypera S.A.に譲渡し、2021年3月期において353億円の譲渡益を計上しました。
• 2021年1月、当社グループは、TachoSil® Fibrin Sealant Patchを3億5,000万ユーロ(429億円)でCorza Health, Inc.に譲渡し、2021年3月期において23億円の譲渡益を計上しました。
• 2021年3月、当社グループは、一部の医療用医薬品および一般用医薬品のポートフォリオをOrifarm Groupに譲渡しました。クロージング時の現金による譲渡価格は5億500万米ドル(558億円)で、クロージング後4年以内に約7,000万米ドル(77億円(注1))を非条件付の現金で受け取ります。今後追加で最大9,500百万米ドル(105億円(注1))のマイルストンを受領する可能性があります。2021年3月期において147億円の利益を計上しました。
• 2021年3月、当社グループは、武田コンシューマーヘルスケア株式会社を2,420億円でThe Blackstone Group Inc.及びその関連会社が運用するファンドが支配するOscar A-Co株式会社に譲渡し、2021年3月期において1,395億円の譲渡益を計上しました。
• 2021年4月、当社グループは、日本における当社ノン・コア資産である一部の製品を、総額1,330億円で、帝人ファーマ株式会社に資産譲渡しました。当該取引による2022年3月期の税引前当期利益(損失)に対する増益影響は約1,300億円と見込まれます。
(注1) 2021年3月31日期末為替レートである1米ドル110.5円および1ユーロ 129.8円を用いて日本円に換算しております。
特許保護と後発品との競争
医薬品は特に、特許保護や規制上の独占権によって市場競争が規制されることにより、当社グループの業績に貢献する場合があります。代替治療の利用が容易でない新製品は当社グループの売上の増加に貢献します。ただし、保護されている製品についても、効能、副作用や価格面で他社との競争が存在します。一方で、特許保護もしくは規制上の独占権の喪失や満了により、後発品が市場に参入するため、当社グループの業績に大きな悪影響を及ぼすことがあります。当社グループの主要製品の一部は、特許やその他の知的財産権保護の満了により、厳しい競争に晒されており、あるいは晒されると予想しております。例えば、米国において当社グループの最大の売上製品の一つであるベルケイドに含まれる有効成分のボルテゾミブの特許権が満了したことにより、ボルテゾミブを含む競合製品が販売されています。これにより、ベルケイドの売上が減少しており、競合品が市場に参入することにより当社製品の売上がさらに大幅に減少する可能性があります。後発品を販売する他社が特許権の有効性に対する申し立てに成功する場合、もしくは想定される特許侵害訴訟に係る費用以上のベネフィットを前提として参入することを決定する場合があります。また、当社グループの特許権の有効性、あるいは製品保護に対する申し立てが提起された場合には、関連する無形資産の減損損失を認識する可能性があります。
原材料の調達による影響
重要な原材料を社内外から調達することができない場合に、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。例えば、ヒト血漿は当社グループの血漿分画製剤において重要な原材料であります。血漿をより多く収集するため、調達および外部との契約を強化し、原料血漿の収集や血漿分画に関連する施設への委託、および規制当局から承認を受けることに成功するための取り組みを行っております。
外国為替変動
2021年3月期において、当社グループでは日本以外の売上が82.5%を占めております。当社グループの収益および費用は、特に当社の表示通貨である日本円に対する米ドルおよびユーロの外国為替レートの変動に影響を受けます。円安は日本円以外の通貨による収益の増加要因となり当社グループの業績に好影響を及ぼしますが、日本円以外の通貨による費用の増加により相殺される可能性があります。反対に、円高は日本円以外の通貨による収益減少要因となり当社グループの業績に悪影響を及ぼしますが、日本円以外の通貨による費用の減少により相殺される可能性があります。以下は、2021年3月期における一定の為替レートによる換算の売上収益を、2020年3月期の売上収益と対比させたものです。
(単位:億円、%以外)
一定の為替レートによる換算の売上収益は、IFRSに準拠して作成された指標ではありません(以下、「非IFRS指標」)。投資家におかれましては、当社グループの過去の財務諸表全体を確認し、IFRSに準拠して表示されている指標を当社グループの業績、価値、将来の見通しを評価する際の主要な指標として使用し、非IFRS指標を補足的な指標として使用することを強く推奨します。一定の為替レートによる換算の売上収益に対して最も直接的に比較可能な指標は、IFRSに準拠して作成された売上収益であります。上表には、一定の為替レートによる換算の売上収益から売上収益への調整が示されております。
当該指標が、当社グループの事業に対する為替レートの影響をよりよく理解し、為替レートの変動の影響を除外した場合に、当社の経営成績が対前年度でどのように変動したかを理解するために、投資家にとって有用であると考えられるため、当社グループは一定の為替レートによる換算の売上収益を表示しております。当該指標は、当社グループの経営者が、当社グループの経営成績を評価するにあたって使用する主要な方法であります。また、証券アナリスト、投資家、その他のステークホルダーが、当社グループが属する業界の同業他社の経営成績を評価する際、類似する業績指標を使用することが多いため、投資家にとっても有用な指標であると考えています。
一定の為替レートによる換算の売上収益は、ある会計年度において、当会計年度の売上収益を、対応する前会計年度の為替レートで換算した売上収益として定義されます。ただし、一定の為替レートによる換算の売上収益は、前会計年度においてIFRSに基づき表示された売上収益の算定に用いられた為替レートと同一の為替レートを用いて算定されていますが、当該会計年度中に締結された取引が同一の為替レートで締結された、または計上されたとは限らないという点で、この表示の有用性には重要な限界があります。当社グループの業界の同業他社が類似する名称の指標を使用している場合であっても、同業他社が当該指標を当社グループとは異なって定義し、異なる算定を行っている可能性があるため、指標が直接的に比較可能ではない場合があります。したがって、一定の為替レートによる換算の売上収益は単独で検討すべきではなく、またIFRSに準拠して作成、表示される収益の指標としてではなく、当該指標の代替的指標としてみなされるべきです。
為替変動リスクを低減するため、当社グループは重要な一部の外貨建取引について、主に先物為替予約、通貨スワップおよび通貨オプションを利用しヘッジを行っております。
季節的要因
当社グループの売上収益は、2020年3月期および2021年3月期において第4四半期に減少しています。これは、卸売業者は年末年始休暇に向けてあらゆる国・地域における在庫数を増やす傾向にあること、年間にわたって価格が上昇していること、暦年の年初の米国における保険の年間免責額の改定等によるものです。
(ⅱ) 重要な会計方針
当社グループの連結財務諸表はIFRSに準拠して作成されております。当連結財務諸表の作成にあたり、経営者は資産および負債の金額、決算日現在の偶発資産および偶発負債の開示、ならびに報告期間における収益および費用の金額に影響を及ぼす見積りおよび仮定の設定を行うことが求められております。見積りおよび仮定は、継続的に見直されます。経営者は、過去の経験、ならびに見積りおよび仮定が設定された時点において合理的であると判断されたその他の様々な要因に基づき当該見積りおよび仮定を設定しております。実際の結果はこれらの見積りおよび仮定とは異なる場合があります。
経営者の見積りおよび仮定に影響を受ける重要な会計方針は以下の通りであります。なお、見積りおよび仮定の変更が連結財務諸表に重大な影響を及ぼす可能性があります。
収益認識
当社グループの収益は主に医薬品販売に関連したものであり、製品に対する支配が顧客に移転した時点で認識されております。収益の認識額は、当社グループが製品と交換に受け取ると見込まれる対価に基づいております。一般的には、出荷時または顧客による受領時点もしくはサービスが履行された時点で収益は認識されます。収益の認識額は、当社グループが財またはサービスと交換に受け取ると見込んでいる対価に基づいております。契約に複数の履行義務が含まれる場合、対価は独立販売価格の比率で各履行義務に配分しております。
当社グループが財またはサービスと交換に受け取る対価は固定金額または変動金額の場合があります。変動対価は重要な戻入れが生じない可能性が非常に高い場合のみ認識しております。
売上高からは、主に小売業者、政府機関、卸売業者、医療保険会社およびマネージドヘルスケア団体に対する割戻や値引等の様々な項目が控除されております。これらの控除額は関連する義務に対し見積られますが、報告期間における当該収益に係る控除額の見積りには判断が伴います。総売上高からこれらの控除額を調整して、純売上高が算定されます。当社グループは、これらの控除額に係る義務を少なくとも四半期毎に確認しており、割戻の変動、リベート・プログラムおよび契約条件、法律の改定、その他重大な事象により関連する義務の見直しが適切であることが示されている場合には、調整を行っております。なお、これまで売上割戻に関する引当金に対する調整が、純損益に重要な影響を与えたことはありません。
米国市場における収益控除に関する取り決めが最も複雑なものになっております。
収益に係る調整のうち最も重要なものは以下のとおりであります。
• 米国メディケイド: 米国のメディケイド・ドラッグ・リベート・プログラムは、連邦政府および州が共同で拠出した資金により医療費を賄えない特定の条件を満たす個人および家族に対して医療費を負担する制度であり、各州が運営を行っております。当プログラムに係る割戻の支払額の算定には、関連規定の解釈が必要となりますが、これは異議申し立てによる影響または政府機関の解釈指針の変更による影響を受ける可能性があります。メディケイドの割戻に係る引当金は、割戻の対象として特定された製品、過去の経験、患者さんからの要請、製品価格ならびに各州の制度における契約内容および関連条項を考慮して算定しております。メディケイドの割戻に係る引当金は関連する売上収益と同じ期間に計上されますが、メディケイドに係る割戻はその期間に全額が支払われません。当社グループの売上控除額計上時点から最終的なメディケイドに係る割戻の会計処理までには通常数カ月の差が生じます。当社グループの売上控除額の算定に用いる製品固有の条件は、当社グループの売上取引が米国のメディケイド・プログラムの対象となるかに関連しています。
• 米国メディケア: 米国のメディケア・プログラムは65歳以上の高齢者もしくは特定の障害者向けの公的医療保険制度であり、当プログラムのパートDにおいて処方薬に係る保険が規定されております。パートDの制度は民間の処方薬剤費保険により運営、提供されております。メディケア・パートDに係る割戻は各処方薬剤費保険の制度内容、患者さんからの要請、製品価格ならびに契約内容を考慮して算定しております。メディケア・パートDの割戻に係る引当金は関連する売上収益と同じ期間に計上されますが、メディケア・パートDに係る割戻はその期間に全額が支払われません。当社グループの売上控除額計上時点から最終的なメディケア・パートDに係る割戻の会計処理までには通常数カ月の差が生じます。当社グループの売上控除額の算定に用いる製品固有の条件は、当社グループの売上取引が米国のメディケア・プログラムの対象となるかに関連しています。
• 顧客に対する割戻: 当社グループは、マーケットシェアの維持と拡大、また、患者さんの当社グループ製品へのアクセスを確実にするために、購入機関、保険会社、マネージドヘルスケア団体およびその他の直接顧客ならびに間接顧客に対して米国コマーシャル・マネージドケアを含む割戻を実施しております。割戻は契約上取決めがなされているため、係る引当金は各取決めの内容、過去の経験および患者さんからの要請を基に算定しております。米国コマーシャル・マネージドケアの割戻に係る引当金は関連する売上収益と同じ期間に計上されますが、米国コマーシャル・マネージドケアに係る割戻はその期間に全額が支払われません。当社グループの売上控除額計上時点から最終的な米国コマーシャル・マネージドケアに係る割戻の会計処理までには通常数カ月の差が生じます。当社グループの売上控除額の算定に用いる製品固有の条件は、当社グループの売上取引が米国コマーシャル・マネージドケアの対象となるかに関連しています。
• 卸売業者に対するチャージバック: 当社グループは特定の間接顧客と、顧客が卸売業者から割引価格で製品を購入可能とする取決めを結んでおります。チャージバックは卸売業者に対する当社グループの請求額および間接顧客に対する契約上の割引価格の差額であります。チャージバックの見積額は各取決めの内容、過去の経験および製品の需要を基に算定しております。当社グループは、売上債権とチャージバックを相殺する法的に強制可能な権利を有し、かつ純額で決済するか、または資産の実現と負債の決済を同時に行う意図を有しております。そのため、チャージバックの見積額は連結財政状態計算書において売上債権から控除しております。
• 返品調整引当金: 返品権付き製品を顧客に販売する際は、当社グループの返品ポリシーや過去の返品率に基づいた返品見込み額を引当金として計上しております。返品見込み率を見積る際は、過去の返品実績、予想される流通チャネル内の在庫量および製品の保管寿命を含む関連要因を考慮しております。
引当額は見積りに基づくため、実際の発生額を完全に反映していない場合があり、特にどの売上取引が最終的にこれらの制度の対象とされるかどうかの判断において使用されるそれぞれの製品固有の条件により変動する可能性があります。
当社グループは、一般的に製品が顧客に引き渡された時点から90日以内に顧客から支払を受けます。当社グループは主としてそれらの取引を本人として履行しますが、他の当事者に代わって販売を行うことがあります。その場合は、代理人として受け取ることが見込まれる販売手数料の金額が収益として認識されます。
当社グループは、知的財産の導出にかかるロイヤルティ、契約一時金およびマイルストンにかかる収益を計上しております。知的財産にかかるロイヤルティ収益は、基礎となる売上が発生した時点で認識しております。契約一時金にかかる収益は、一般的にはライセンスの使用権を付与した時点で認識されます。マイルストンにかかる収益は、一般的にはマイルストンの支払条件が達成される可能性が非常に高く、認識した収益の額の重大な戻入が生じない可能性が非常に高くなった時点で認識しております。導出した化合物の研究開発等のその他のサービスにかかる収益については、サービスの提供期間に応じて認識しております。
当社グループは、一般的に知的財産の導出契約の締結または顧客によるマイルストンの支払条件の達成の確認から60日以内に顧客から支払を受けます。当社グループはグループの知的財産を導出しているため、本人として契約を履行しております。また、当社グループはその他のサービスも本人として提供しております。
無形資産の減損
当社グループは、長期性無形資産について、資産の帳簿価額が回収不能であるかもしれないことを示す事象または状況の変化がある場合には、減損テストを行っております。現在まだ未償却の無形資産については、少なくとも年次で減損テストを実施しております。2021年3月31日時点において、当社グループは無形資産を3兆9,091億円計上しており、これは総資産の30.3%を占めております。
上市後製品に係る無形資産は特許が存続する見込期間または見込まれる経済的便益に応じた他の指標に基づき、3年から20年の耐用年数を用いて定額法で償却しております。開発中の製品に係る無形資産は、特定の市場における商用化が規制当局により承認されるまで償却をしておりません。商用化が承認された時点で、当該資産の見積耐用年数を確定し、償却を開始しております。
無形資産は、通常、その連結財政状態計算書上の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には減損していると判断されます。回収可能価額は個別資産、またはその資産が他の資産と共同で資金を生成する場合はより大きな資金生成単位ごとに見積られます。資金生成単位は独立したキャッシュ・インフローを形成する最小の識別可能な資産グループであります。回収可能価額の見積りには以下を含む複数の仮定の設定が必要となります。
·将来キャッシュ・フローの金額および時期
·競合他社の動向(競合製品の販売開始、マーケティングイニシアチブ等)
·規制当局からの承認の取得可能性
·将来の税率
·永続成長率
·割引率
キャッシュ・フローの金額および時期が変動する可能性のある事象としては、研究開発プロジェクトの失敗もしくは上市後製品の価値の下落があげられます。研究開発プロジェクトの失敗には、開発の中止、大幅な上市の遅延、もしくは規制当局の承認が得られない場合が該当します。これらの事象が発生した場合、見積った将来キャッシュ・フローが回収できない、もしくは資産の取得後に実施した当初もしくは事後の研究開発投資額が回収できない可能性があります。
これらの仮定に変更が生じた場合は、当該連結会計年度において減損損失および減損損失の戻入れを認識しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 12 無形資産」をご参照ください。
企業結合―公正価値
企業結合の会計処理には、取得した資産および引き受けた負債ならびに条件付対価の公正価値を算定することが求められております。公正価値の見積りには、将来のキャッシュ・フロー予測、割引率、開発および承認マイルストン、市場動向に関する予測、ならびに条件付対価に関しては支払可能額等の様々な仮定の設定が必要となります。また、取得日に存在していた事実および状況について取得日から1年以内に新たな情報を入手したことにより、測定期間中の修正が求められることがあります。この修正により、当初算定した資産および負債の暫定的な公正価値が変更される、または新たな資産および負債の認識されることがあります。これらは過去の比較情報に遡及的に適用され、その後の連結財務諸表にも修正が反映されます。
条件付対価は各報告期間の末日において公正価値で計上しております。時間的価値に基づく公正価値の変動は金融費用として、その他の公正価値の変動はその他の営業収益またはその他の営業費用としてそれぞれ連結純損益計算書に認識しております。
当社グループの見積りは、過去の経験や業界における知識に基づいております。見積りは合理的に算出されますが、実績はこれらの見積りとは異なる場合があります。取得した資産グループや企業結合の価値を算出する際に使用される見積りの重要な変化は、当社グループによって取得された有形固定資産または無形資産の将来における減損につながり、当社グループの財政状態および業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。また、偶発負債を含む負債の価値が取得法によって過去に計上された金額と著しく異なる場合は、追加費用の計上が必要となり、当社グループの財政状態および業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。
訴訟に係る偶発事象
当社グループは、通常の営業活動において主に製造物責任訴訟および賠償責任訴訟に関与しております。詳細については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 32 コミットメントおよび偶発負債」をご参照ください。
偶発負債は、その特性から不確実なものであり複雑な判断や可能性に基づいております。訴訟およびその他の偶発事象に係る引当金を算定する際には、該当する訴訟の根拠や管轄、その他の類似した現在および過去の訴訟案件の顛末および発生数、製品の性質、訴訟に関する科学的な事項の評価、和解の可能性ならびに現時点における和解にむけた進行状況等を勘案しております。さらに、未だ提訴されていない製造物責任訴訟については、主に過去の訴訟の経験や製品の使用に係るデータに基づき、費用を合理的に見積ることができる範囲で引当金を計上しております。当社グループが関与する重要な訴訟のうち、それらの最終的な結果により財務上の影響が見込まれる場合であっても、その額について信頼性のある見積りが不可能な訴訟等については、引当金の計上は行っておりません。また、保険の補償範囲期間内である場合は保険による補償についても考慮しております。補償範囲の検討の際に、当社グループは、保険契約の制限や除外、保険会社による補償の拒否の可能性、保険業者の財政状態、ならびに回収可能性および回収期間を考慮しております。引当金および関連する保険補償額の見積りは、連結財政状態計算書上において負債および資産として総額で計上しております。2021年3月31日現在において、係争中の訴訟案件およびその他の案件について734億円の引当金を計上しております。
法人所得税
当社グループは、税法および税規制の解釈指針に基づき税務申告を行っており、これらの判断および解釈に基づいた見積額を計上しております。通常の営業活動において、当社グループの税務申告は様々な税務当局による税務調査の対象であり、これらの調査の結果、追加税額、利息、または罰金の支払いが課される場合があります。法律および様々な管轄地域の租税裁判所の判決に伴う法改正により、不確実な税務ポジションに関する負債の見積りの多くは固有の不確実性を伴います。税務当局が当社グループの税務ポジションを認める可能性が高くないと結論を下した場合に、当社グループは、税務上の不確実性を解消するために必要となる費用の最善の見積り額を認識します。また、未認識の税務上の便益は事実および状況の変化に伴い調整されます。これらの税務ポジションは、例えば、現行の税法の大幅改正、税務当局による税制または解釈指針の発行、税務調査の際に入手した新たな情報、または税務調査の解決により調整が行われる可能性があります。当社グループは、不確実な税務ポジションに係る当社グループの見積りは、現時点において判明している事実および状況に基づき適切かつ十分であると判断しております。
また、各報告期間の末日において繰延税金資産の回収可能性を評価しております。繰延税金資産の回収可能性の評価においては、予想される将来加算一時差異の解消スケジュール、予想される将来課税所得およびタックスプランニングを考慮しております。収益力に基づく将来課税所得は、主に当社グループの事業計画を基礎として見積られており、当該事業計画に含まれる売上高の予測を決定する際の判断に変更があった場合、認識される繰延税金資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。過去の課税所得の水準および繰延税金資産が認識できる期間における将来の課税所得の見積りに基づき、実現する可能性が高いと予想される税務上の便益の額を算定しております。2021年3月31日現在における繰延税金資産を認識していない未使用の繰越欠損金、将来減算一時差異、および未使用の繰越税額控除はそれぞれ1兆5,331億円、2,412億円、および97億円であります。将来における見積りおよび仮定の変更は法人所得税費用に重要な影響を与える可能性があります。
事業構造再編費用
当社グループでは、費用削減に関連した取り組みおよび買収に係る事業統合に関連して事業構造再編費用が発生します。退職金およびリース解約費用が事業構造再編費用の主な内訳であり、事業構造再編に係る引当金については、事業構造再編に係る詳細な公式計画を作成した時点で計上しております。事業構造再編に係る引当金の認識には、支払時期や、事業再編により影響を受ける従業員数等の見積りが必要となります。最終的なコストは当初の見積りから異なる可能性があります。
当社グループは、将来において買収および売却に関連した事業統合に係る追加の事業構造再編費用を計上すると見込んでおります。2021年3月31日現在において、当社グループは、事業構造再編に係る引当金を323億円計上しております。詳細および事業構造再編に係る引当金の推移は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 23 引当金」をご参照ください。
(ⅲ) 当年度における業績の概要
当年度の連結業績は、以下のとおりとなりました。
(単位:億円、%以外)
〔売上収益〕
売上収益は、前年度から934億円減収(△2.8%)の3兆1,978億円となりました。前年度の実勢為替レートを当年度に適用することにより算出した為替影響を除くと、売上収益は0.5%の減収となりました。
当社の主要な疾患領域のうち、消化器系疾患および血漿由来の免疫疾患治療は増収となりました。しかしながら、これら疾患領域における増収は、希少疾患における競争の激化や後発品の浸透による影響、および製品ポートフォリオ全般に亘った為替変動による減収影響を受けて相殺されました。当年度における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のグローバルな流行拡大に伴う売上収益に対する全体的な影響は、重要性のあるものではありませんでした。ニューロサイエンス(神経精神疾患)といった一部の疾患領域において、外出制限により患者さんの医療機関訪問の頻度が減少する等のマイナス影響が継続して見られました。この動向は、当年度を通じて変動してきました。これらのマイナス影響は、服薬の利便性の高い特定の製品の需要拡大が流行拡大の初期に見られる等、処方動向によるプラス影響により一部相殺されております。
当社の主要な疾患領域以外の売上収益は、複数の事業売却による減収影響、および高尿酸血症治療剤「ユーロリック」や痛風治療剤「コルクリス」等の特許満了製品の減収影響を受け、1,307億円の減収(△18.5%)となりました。
地域別売上収益
各地域の売上収益は以下のとおりです。
(単位:億円、%以外)
(注) その他の地域は中東、オセアニアおよびアフリカを含みます。
当社グループの売上収益の大部分は、主要な医療用医薬品により占められております。当年度の各領域における主要製品の売上は以下のとおりです。
(注1)国内製品名:エンタイビオ
(注2)配合剤、パック製剤を含む
(注3)一般名:pantoprazole
(注4)国内製品名:ビバンセ
(注5)2021年3月31日に売却した武田コンシューマーヘルスケア株式会社の売上高を含む
(注6)上表で個別表示されていない品目は、各領域別の「その他」に含まれる
各疾患領域における売上収益の前年度からの増減は、主に以下の製品によるものです。
- 消化器系疾患
消化器系疾患領域の売上収益は、前年度から799億円増収(+11.4%)の7,778億円となりました。当社のトップ製品である潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「エンティビオ」(国内製品名:「エンタイビオ」)の売上が伸長し、前年度から821億円増収(+23.6%)の4,293億円となり、売上成長を牽引しました。本剤は需要の増加により、米国内の売上が、前年度から550億円増収(+23.0%)の2,943億円となり、欧州およびカナダにおける売上は、前年度から210億円増収(+23.9%)の1,089億円となりました。日本においては、主に潰瘍性大腸炎に対する効能により売上が伸長しました。酸関連疾患治療剤「タケキャブ」も、逆流性食道炎や低用量アスピリン投与時における胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発抑制等の効能を中心として、日本において新規処方が拡大し、売上は121億円増収(+16.7%)の848億円となりました。慢性特発性便秘症治療剤「RESOLOR/MOTEGRITY」は、米国市場への浸透がさらに進んだことにより、売上は47億円増収(+71.2%)の112億円となりました。短腸症候群治療剤「GATTEX/REVESTIVE」は、主に成人患者の平均治療期間が伸長したことおよび小児患者数の増加により、売上は28億円増収(+4.5%)の646億円となりました。「エンティビオ」、「タケキャブ」、「RESOLOR/MOTEGRITY」および「GATTEX/REVESTIVE」の売上成長により、特許満了製品である消化性潰瘍治療剤「PANTOLOC/CONTROLOC」(一般名:「パントプラゾール」)(63億円の減収)や、逆流性食道炎治療剤「DEXILANT」(72億円の減収)および慢性便秘症治療剤「AMITIZA」(69億円の減収)等、主に競争の激化および円高の影響を受けたその他製品の減収を吸収しました。
- 希少疾患
希少疾患領域の売上収益は、前年度から431億円減収(△6.8%)の5,917億円となりました。希少血液疾患領域の売上収益は、444億円減収(△13.3%)の2,898億円となりました。「アドベイト」は293億円減収(△18.6%)の1,285億円となり、「アディノベイト」は、6億円減収(△1.0%)の581億円となりました。これは主に米国の血友病Aのインヒビター非保有市場における競争の激化によるものです。「ファイバ」の売上は、主に欧州において、インヒビター保有市場の出血予防セグメントにおける競争圧力が高まったことにより、70億円減収(△13.6%)の445億円となりました。また、希少代謝性疾患領域の売上収益は、82億円減収(△4.8%)の1,626億円となりました。これは主に、副甲状腺機能低下症治療剤「NATPARA」を2019年9月に米国において回収したことにより、「NATPARA/NATPAR」の売上が101億円減収(△74.0%)の36億円となったことに起因します。遺伝性血管性浮腫領域の売上収益は、95億円増収(+7.3%)の1,393億円となりました。これは、「TAKHZYRO」の新規患者獲得により、同剤の売上が184億円増収(+27.0%)の867億円となったことによります。なお、「フィラジル」は、後発品参入と「TAKHZYRO」への切り替え影響により58億円減収(△17.9%)の268億円となり、「CINRYZE」は、主に「TAKHZYRO」への切り替え影響により、25億円減収(△10.2%)の219億円となりました。
- 血漿由来の免疫疾患治療
血漿由来の免疫疾患治療領域の売上収益は、前年度から262億円増収(+6.7%)の4,204億円となりました。免疫グロブリン製剤の売上合計は、強い需要と供給能力の拡大により、362億円増収(+12.1%)の3,349億円となりました。特に、原発性免疫不全症(PID)と多巣性運動ニューロパチー(MMN)の治療に用いられる静注製剤「GAMMAGARD LIQUID」は、これら疾患に対する米国における標準治療剤としてのポジションを引き続き強固なものにしました。皮下注製剤である「CUVITRU」および「HYQVIA」も2桁台の増収率となりました。また、主に血液量減少症と低アルブミン血症の治療に用いられる「HUMAN ALBUMIN」と「FLEXBUMIN」を含むアルブミン製剤の売上合計は前年度から96億円減収(△14.3%)の576億円となりました。これは、前年度上期の中国において、さらにその前の年度からの期ずれによる供給量の増加があり売上が大きくなったこと、および当年度下期において「HUMAN ALBUMIN」のバッチの一時的な出荷中断があったこと等によります。
- オンコロジー
オンコロジー(がん)領域の売上収益は、前年度から44億円減収(△1.1%)の4,165億円となりました。多発性骨髄腫治療剤「ニンラーロ」の売上は、服薬の利便性が高い経口投与の製品特性もあり、特に米国と中国での好調な業績が成長に寄与し、前年度から98億円増収(+12.7%)の874億円となりました。「ニンラーロ」は週一回経口投与のカプセル剤であり、医療機関での点滴や注射を必要としないため、COVID-19拡大下において当年度の最初の数ヶ月患者さんの通院負担を軽減することができました。また、悪性リンパ腫治療剤「アドセトリス」の売上は、近年、複数の効能追加を取得した日本において特に伸長し、前年度から68億円増収(+12.8%)の594億円となりました。白血病治療剤「アイクルシグ」の売上は、米国における新たなオムニチャネル販促アプローチおよび米国外における地理的拡大により、前年度から24億円増収(+7.5%)の342億円となりました。非小細胞肺がん治療剤「アルンブリグ」の売上は、引き続き欧州および新興諸国での上市があったことにより、前年度から16億円増収(+21.7%)の88億円となりました。多発性骨髄腫治療剤「ベルケイド」の売上は、前年度から172億円減収(△14.5%)の1,011億円となり、うち、米国外の売上にかかるロイヤルティ収益は、2019年の欧州および中国における後発品の参入により、前年度から47億円の大幅な減収(△49.4%)の48億円となりました。米国内の売上は、COVID-19に関連する懸念から患者さんが受診を控え、第一選択薬としての新規処方患者数が減少したこと、および2020年5月初めに競合他社の皮下注射製剤が米国において上市されたことから、前年度から125億円減収(△11.5%)の963億円となりました。子宮内膜症・子宮筋腫・閉経前乳がん・前立腺がん等の治療に用いられる特許満了製品の「リュープリン」(一般名:「リュープロレリン」)は、前年度から137億円減収(△12.5%)の954億円となりました。これは、当社の品質基準遵守の取り組みを拡大して実施した日本の製造拠点における生産停止に関連しております。
- ニューロサイエンス
ニューロサイエンス(神経精神疾患)領域の売上収益は、前年度から212億円減収(△4.8%)の4,173億円となりました。減収影響の一部は、アルツハイマー病治療剤「レミニール」の後発品が、2020年6月に日本において上市されたことによるものであり、同剤の売上は前年度から101億円減収(△58.3%)の72億円となりました。また、不眠症治療剤「ロゼレム」の売上も、2019年7月に米国における独占販売期間が満了したことによる減収影響を受け、25億円減収(△17.0%)の120億円となりました。注意欠陥/多動性障害(ADHD)治療剤「ADDERALL XR」の売上は、主に後発品参入による競争の影響を受け、65億円減収(△26.9%)の178億円となりました。ADHD治療剤「バイバンス」(国内製品名:「ビバンセ」)の売上は、前年度から25億円減収(△0.9%)の2,715億円となりました。大うつ病(MDD)治療剤「トリンテリックス」の売上は、前年度から18億円減収(△2.5%)の689億円になりました。「バイバンス」および「トリンテリックス」の売上は、COVID-19に伴う外出制限期間中の外来患者数および診断数の減少と、服薬の一時的な中断による減収影響を受けてきました。COVID-19の流行拡大前の水準に一時的に正常化した時期もありましたが、直近の6ヶ月においては、両剤を販売する国々における感染拡大により再度影響を受けました。これらの減少は、ADHD治療剤「インチュニブ」の売上が、主に日本における需要の増加およびCOVID-19によるライセンシーの在庫積み増しの影響を受け、前年度から58億円増収(+39.5%)の204億円となったことにより、一部相殺されております。
〔売上原価〕
売上原価は、前年度から955億円減少(△8.8%)の9,943億円となり、売上原価率は31.1%(△2.0pp)となりました。これは主に、Shire社買収に伴い計上された棚卸資産の公正価値調整等にかかる非資金性の費用の減少1,183億円によるものです。この減少は、「コルクリス」や「ベルケイド」等の特許満了品を含む利益率の高い製品の売上減少に伴う売上原価の増加により一部相殺されております。
〔販売費及び一般管理費〕
販売費及び一般管理費は、前年度から891億円減少(△9.2%)の8,757億円となりました。この減少は主に、Shire社との統合による経費効率化およびコストシナジーのほか、出張および営業活動の減少等、COVID-19の影響に伴う経費の減少によるものです。
〔研究開発費〕
研究開発費は、前臨床試験段階にある新規候補物質に関連する費用を含む一部の研究開発プログラムにかかる費用の増加がありましたが、主にパイプラインの重点化に関連する費用等の減少やCOVID-19の影響に伴う出張経費の減少により、対前年度365億円減少(△7.4%)の4,558億円となりました。
〔製品に係る無形資産償却費及び減損損失〕
製品に係る無形資産償却費及び減損損失は、前年度から336億円減少(△7.4%)の4,219億円となりました。この減少は主に、前年度において、2019年5月の中間解析を受け開発中止を決定したTAK-616 AMRプログラム、および治験デザインを変更したTAK-607を含む、開発中の製品に係る減損損失を計上したことによるものです。
〔その他の営業収益〕
その他の営業収益は、前年度から2,578億円増加(+428.2%)の3,180億円となりました。この増加は主に、武田コンシューマーヘルスケア株式会社株式および関連資産の売却に伴う譲渡益1,395億円およびその他ノン・コア資産の譲渡に伴う益894億円により、2,289億円の譲渡益を当年度に計上したことによるものです。また、当年度においてSHP647および関連する権利の売却に関する当社グループの義務を解除する2020年5月の欧州委員会の決定に伴い、当社グループがSHP647に関する臨床試験プログラムを中止する意思決定を行ったことを反映し、これまで計上していた当該プログラムに関連する負債の再見積りを行った結果、602億円の再評価益を計上したことによるものです。この増加は主に、繰延事業譲渡益の実現額の減少127億円と一部相殺されております。これは、当社グループとTeva Pharmaceutical Industries Ltd.が設立した合弁会社である、武田テバ薬品株式会社に移管した長期収載品事業に関連する無形資産の減損に伴う繰延事業譲渡益の実現額を前年度に計上したことによるものです。
〔その他の営業費用〕
その他の営業費用は、前年度から102億円増加(+4.1%)の2,589億円となりました。この増加は主に、当社グループがNovartis社に譲渡したXIIDRAの欧州における販売許可申請を同社が取り下げたことを含む、XIIDRAの将来売上見込の算定にかかる前提条件を変更したことに伴う条件付対価契約に関連する資産の公正価値の変動により、729億円の損失を当年度に計上したことによるものです。この増加は、主にShire社との統合費用を含む事業構造再編費用が対前年度652億円減少したことにより一部相殺されております。
〔営業利益〕
営業利益は、上記の要因を反映し、前年度から4,089億円増益(+407.2%)の5,093億円となりました。
〔金融損益〕
金融収益と金融費用をあわせた金融損益は1,431億円の損失となり、前年度から損失が59億円増加しました。当年度の金融損失の増加は主に、2019年10月に上場した企業のワラントにかかるデリバティブ評価益が前年度から110億円減少したことによるものです。この増加は、利息費用(純額)の減少により一部相殺されております。
〔持分法による投資損益〕
当年度の持分法による投資損益は、主に武田テバファーマ株式会社で認識された減損損失に対する当社グループ持分相当額の減少および武田ベンチャー投資Inc.が保有する株式にかかる投資利益を計上したことにより、前年度の持分法による投資損失240億円に対して1億円の利益となりました。なお、当年度認識された減損損失は、武田テバファーマ株式会社においてジェネリック医薬品事業の一部および製造拠点の売却を決定したこと、および長期収載品事業の将来予測を見直したことに伴う、関連資産の回収可能価額の再評価によるものです。
〔法人所得税費用〕
法人所得税費用は、前年度△1,050億円に対して、当年度は△99億円となりました。これは主に、税引前当期利益の増加、前年度のスイスにおける税制改正に伴い計上された非資金性の繰延税金便益946億円、および事業等の売却の税金影響によるものです。これら税金増加の影響は、在外子会社の適用税率との差異、未認識であった繰延税金資産の認識による税務便益、および当年度の税務調査における有利な結果と一部相殺されております。
〔当期利益〕
当期利益は、上記の要因を反映し、前年度から3,319億円増益(+749.3%)の3,762億円となりました。
(ⅳ) 当年度における実質的な成長の概要
Coreと実質的な成長の定義
当社は、事業の計画策定および業績評価において、「実質的な成長」(Underlying Growth)の概念を採用しております。
「実質的な成長」は、当年度と前年度(四半期もしくは年間)の業績を共通の基準で比較するものであり、マネジメントによる業績評価に使用されています。これら共通の基準で比較される業績は、年間計画レートを用いた為替レートを一定として、事業等の売却影響およびその他の非定常的もしくは特別な事象に基づく影響、本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響を控除し算定されます。当社は、この「実質的な成長」が、事業活動のパフォーマンスを表す共通の基準を提供するため、投資家に有用であると考えています。なお、本指標は、国際会計基準(IFRS)に準拠したものではありません。
当社は、「Underlying Revenue Growth」(実質的な売上収益の成長)、「Underlying Core Operating Profit Growth」(実質的なCore営業利益の成長)および「Underlying Core EPS Growth」(実質的なCore EPSの成長)を重要な財務指標としています。
実質的な売上収益は、為替レートを一定として、財務ベースの売上収益に、報告期間における非定常的な事象に基づく影響および事業等の売却影響を調整して計算します。
実質的なCore営業利益は、為替レートを一定として、Core営業利益(以下に定義)に、報告期間における事業等の売却影響を調整して計算します。
実質的なCore EPSは、為替レートを一定として、純利益から、事業等の売却影響、およびCore EPS(以下に定義)の算出において控除された項目を調整した後、比較年度末の自己株式控除後の発行済株式総数で除して算定します。
Core営業利益は、純利益から、法人所得税費用、持分法にかかる投資損益、金融損益、その他の営業収益およびその他の営業費用、製品に係る無形資産償却費及び減損損失を控除して算出します。その他、企業買収に係る会計処理の影響や買収関連費用など、本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響を調整します。
Core EPSは、純利益から、Core営業利益の算出において控除された項目と営業利益以下の各科目のうち、重要性のある、非定常的もしくは特別な事象に基づく影響、本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響を調整します。これらには、条件付対価に係る公正価値変動(時間的価値の変動を含む)影響などが含まれます。さらに、これらの調整項目に係る税金影響を控除した後、報告期間の自己株式控除後の平均発行済株式総数で除して算定します。
当年度の実質的な成長は、以下のとおりとなりました。
〔実質的な売上収益の成長〕
実質的な売上収益の成長は、前年度から+2.2%となりました。タケダの14のグローバル製品(注)の実質的な売上収益は、米国における「NATPARA」の回収や特許が満了した製品の減収影響があったものの、前年度から+16.0%成長しました。
(注)タケダの14のグローバル製品
消化器系疾患:エンティビオ、GATTEX/REVESTIVE、ALOFISEL
希少疾患:NATPARA/NATPAR、アディノベイト、TAKHZYRO、エラプレース、ビプリブ
血漿由来の免疫疾患治療:GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG、HYQVIA、CUVITRU、HUMAN ALBUMIN/FLEXBUMIN
オンコロジー:ニンラーロ、アルンブリグ
(注) 実質的な売上収益は、為替レートを一定として、非定常的な事象に基づく影響および事業等の売却影響を調整します。本調整前の疾患領域別の売上収益や主要な製品売上については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①当年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容 (a)当年度の経営成績の分析 (ⅲ) 当年度における業績の概要〔売上収益〕」をご参照ください。
実質的な売上収益の計算において控除した主な非定常的な事象に基づく影響および事業等の売却影響は次のとおりです。
・ 2019年7月に売却が完了した「XIIDRA」(ドライアイ治療剤)の前年度の売上を控除して調整しております。
・ 2020年3月に売却が完了した中近東・アフリカ諸国における一部の一般用医薬品およびノン・コア資産に係る前年度の売上収益を控除して調整しております。
・ 2020年3月に売却が完了したロシア、ジョージアなどの独立国家共同体の国々における一部の一般用医薬品およびノン・コア資産に係る前年度の売上収益を控除して調整しております。
・ 2020年11月に売却が完了したアジア太平洋における一部の一般用医薬品およびノン・コア資産に係る当年度と前年度の売上収益を控除して調整しております。
・ 2020年12月に売却が完了した主に欧州における一部のノン・コア資産に係る当年度と前年度の売上収益を控除して調整しております。
・ 2021年1月に売却が完了した中南米における一部の一般用医薬品およびノン・コア資産に係る当年度と前年度の売上収益を控除して調整しております。
・ 2021年1月に売却が完了した「TachoSil」(手術用パッチ剤)の当年度と前年度の売上を控除して調整しております。
〔実質的なCore営業利益の成長〕
実質的なCore営業利益の成長は、特許満了品を含む利益率の高い製品の売上減少に伴う売上総利益の減少があったものの、COVID-19の影響による経費減少およびコストシナジー等を反映し、前年度から+13.0%となりました。
Shire社の統合費用や企業結合会計に伴う非資金性の費用など、当社の本業に起因しない(ノン・コア)事象による影響を控除した当年度のCore営業利益は9,679億円となりました。
〔当年度の実質的なCore営業利益率〕
当年度の実質的なCore営業利益率は、前年度から2.9pp増加の30.2%となりました。
〔実質的なCore EPSの成長〕
実質的なCore EPSの成長は、前年度から+24.6%となりました。
〔資産〕
当年度末における資産合計は、前年度末から912億円増加し、12兆9,123億円となりました。現金及び現金同等物ならびに有形固定資産はそれぞれ3,286億円および675億円増加しました。これらの増加は、主に償却による無形資産の減少2,623億円、および当年度における事業等の売却完了に伴う売却目的で保有する資産の減少1,366億円と一部相殺されております。
〔負債〕
当年度末における負債合計は、前年度末から3,585億円減少し、7兆7,351億円となりました。社債及び借入金は、借入金の返済、社債の償還およびコマーシャル・ペーパー発行額減少の結果、前年度末から4,579億円減少の4兆6,354億円(注)となりました。この減少は、その他の金融負債(流動)の増加1,523億円と一部相殺されております。
(注)当年度における社債及び借入金の帳簿価額はそれぞれ3兆5,322億円および1兆1,032億円です。なお、社債及び借入金の内訳は以下の通りです。
社債:
借入金:
2020年4月、米ドル建およびユーロ建のシンジケートローンの借入契約に基づく返済100億円がありました。2020年7月9日、当社グループは元本合計7,000百万米ドルの米ドル建無担保普通社債および元本合計3,600百万ユーロのユーロ建無担保普通社債を発行しました。これらの社債の募集により調達した資金は、2020年7月10日に実施した3,250百万米ドルおよび3,019百万ユーロのシンジケートローンの繰上返済、ならびに2020年8月3日に実施した額面金額2,400百万米ドル(償還期限:2021年9月)および1,250百万ユーロ(償還期限:2020年11月)の無担保普通社債の繰上償還に充てられました。また、2020年7月には、2013年7月に発行された債務の返済1,300億円(借入金700億円、無担保普通社債600億円)がありました。2020年11月には、Shire社買収に伴い発行された変動利付の無担保普通社債の満期償還1,000百万ユーロがありました。さらに、当社グループは、2021年2月26日に実施した1,250百万米ドル(償還期限:2021年11月)、2021年1月22日に実施した900百万米ドル(償還期限:2021年9月)、2021年2月25日に実施した300百万米ドル(償還期限:2022年1月)の繰上償還を含む、額面金額2,450百万米ドルの無担保普通社債の繰上償還を行いました。なお、コマーシャル・ペーパーの発行残高は1,440億円減少しております。
〔資本〕
当年度末における資本合計は、前年度末から4,497億円増加の5兆1,772億円となりました。この増加は、主に円安の影響による為替換算調整勘定の変動によりその他の資本の構成要素が2,736億円増加したこと、および2,837億円の配当金の支払があったものの、当期利益の計上により利益剰余金が1,399億円増加したことによるものです。
資金の調達および使途
当社グループにおいて流動性は、主に営業活動に必要な現金、資本支出、契約上の義務、債務の返済、利息や配当の支払いに関連して必要となります。営業活動においては、研究開発費、マイルストン支払い、販売およびマーケティングに係る費用、人件費およびその他の一般管理費、原材料費等の支払いにあたり現金が必要となります。また、法人所得税の支払いや運転資金にも多額の現金が必要となります。
当社グループは、生産設備の能力増強・合理化、減価償却を終えた資産の入れ替え、業務管理の効率化等のために設備投資を行っています。無形資産に係る資本的支出は、主に第三者のパートナーから導入したライセンス製品に対するマイルストン支払い、およびソフトウェア開発費です。連結財政状態計算書に計上されている有形固定資産および無形資産に係る資本支出は、2020年3月期および2021年3月期において、それぞれ2,463億円および3,307億円であります。また、2021年3月31日現在において、有形固定資産の取得に関する契約上のコミットメントは189億円であります。加えて、2021年3月31日現在において、無形資産の取得に関して契約上の取決めを有しております。無形資産に係るマイルストン支払いの詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記32 コミットメントおよび偶発債務」をご参照ください。また、資本管理の一環として、当社グループは、資金需要、市場等の環境、またはその他の関連する要因に照らして、定期的に資本的支出の評価を行っております。
当社の配当金の支払額は、2020年3月期および2021年3月期において、それぞれ2,827億円および2,837億円であります。1株当たり配当額は中間配当および期末配当金それぞれ90円ずつとし、年間180円を継続することを目指しています。当社の配当政策については「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご参照ください。
当社グループは、有利子負債に対し元本と利息を支払う必要があります。2021年3月31日現在において、1年内に必要となる利息の支払額および負債の返済額は、それぞれ994億円、2,432億円であります。詳細は、「有利子負債および金融債務」をご参照ください。
当社グループの資金の主な調達源は、主に現金及び現金同等物、短期コマーシャル・ペーパー、コミットメントラインによる借入、グローバル資本市場における社債発行を含む長期債務による資金調達であります。さらに、当社グループは、コンティンジェンシーの調達源として、2021年3月31日時点において、金融機関から極度額1,500億円および750百万ドルの短期コミットメントライン契約を締結しております。
当社グループは、キャッシュ・フロー予測に基づき保有外貨を監視し、調整しております。当社グループの事業の大部分は日本国外で行っており、多額の現金を日本国外に保有しております。日本国内で必要なキャッシュ・フローを創出するために外貨を使用することは国内規制による影響を受ける可能性があり、また比較的影響は小さいものの、日本へ現金を移転することから生じる所得税による影響も受けます。
当社グループは、COVID-19の大流行による資金調達に係る問題または流動性不足、金融市場およびその他の市場への影響は現在見込んではおりませんが、資金調達の状況および市場の動向について引き続き注視しております。必要に応じた市場およびその他の供給源からの追加の資金調達力に加えて、当社グループの資本支出計画を必要かつ適切な範囲で見直すことによって、資金調達および流動性の需要を管理する場合があります。
2021年3月31日現在において、当社グループはワクチン運営のための制限付き預り金1,755億円を含む9,662億円の現金及び現金同等物と7,000億円の未使用のバンク・コミットメントライン契約を保有しており、現在の事業活動に必要となる資金は十分に確保できていると考えております。また、当社グループは、事業活動を支えるため、持続的に高い流動性を保ち、資本市場へのアクセス拡大を追求していきます。
連結キャッシュ・フロー
連結キャッシュ・フローの状況は、以下のとおりであります。
(単位:億円)
営業活動によるキャッシュ・フローは、前年度の6,698億円から3,412億円増加の1兆109億円となりました。この増加は主に当期利益が3,319億円増加したことによるものです。さらに、主にワクチン運営のための制限付き預り金の増加に伴うその他の金融負債の増加1,662億円、および主として非資金性費用である繰延税金の増加に伴う法人所得税費用の増加951億円等のその他のプラスの調整額がありました。これらの増加は、事業譲渡及び子会社株式売却益の増加2,132億円によるマイナスの調整額の増加に加え、Shire社買収日において公正価値評価された棚卸資産の費用化の減少に伴い、棚卸資産の減少額において1,115億円の減少影響があったことにより一部相殺されております。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前年度の2,921億円から1,014億円増加の3,935億円となりました。これは主に、前年度に「XIIDRA」の売却があったものの、当年度に武田コンシューマーヘルスケア株式会社株式およびその他ノン・コア資産の売却があったことに伴い、事業売却による収入が688億円増加したことによるものです。また、投資の売却、償還による収入および有形固定資産の売却による収入はそれぞれ252億円および339億円増加しております。これらの増加は、無形資産の取得による支出の増加346億円を含むその他の減少と一部相殺されております。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前年度の△1兆52億円から831億円減少の△1兆884億円となりました。この減少は、主に当年度における早期償還および早期返済に伴う、社債の償還及び長期借入金の返済による支出の増加9,506億円によるものです。この減少は、前年度にハイブリッド社債5,000億円を発行した一方、当年度に米ドル建社債7,000百万米ドルおよびユーロ建社債3,600百万ユーロを発行したことに伴う、社債の発行及び長期借入れによる収入の増加6,833億円と一部相殺されております。さらに、当年度中にコマーシャル・ペーパー発行残高の減少があったものの、前年度には短期シンジケートローン5,000億円の返済があったため、短期借入金およびコマーシャル・ペーパー返済による支出額は2,022億円減少しています。
有利子負債および金融債務
2020年3月期および2021年3月期において社債および借入金はそれぞれ5兆933億円、4兆6,354億円であります。これらの有利子負債は、当社が過年度に発行した無担保社債、普通社債、およびシンジケートローン、また、Shire社買収に必要な資金の一部を調達するための借入金、およびShire社買収により引き受けた負債を含みます。当社の借入金は主に買収関連で発生したものであり、季節性によるものではありません。
当社グループは2020年7月9日に元本合計額7,000百万ドルの米ドル建無担保普通社債(以下、「米ドル債」)および元本合計額3,600百万ユーロのユーロ建無担保普通社債(以下、「ユーロ債」)を発行しました。米ドル債の償還期限は2030年3月31日から2060年7月9日、ユーロ債の償還期限は2027年7月9日から2040年7月9日です。当契約の規定に基づき、当該社債の元本全額または一部を早期償還する可能性があります。米ドル債に係る利息は2.050-3.375%の利率で半年毎に支払われ、ユーロ債に係る利息は0.750-2.000%の利率で年1回支払われます。なお、当該社債に財務制限条項は付されておりません。当発行による収入は、2020年7月10日に実施した3,250百万米ドルおよび3,019百万ユーロのシンジケートローンの繰上返済(返済期限:2024年1月)、ならびに2020年8月3日に実施した額面金額2,400百万米ドル(償還期限:2021年9月)および1,250百万ユーロ(償還期限:2020年11月)の無担保普通社債の繰上償還に充てられました。さらに、当社グループは、2021年2月26日に実施した1,250百万米ドル(償還期限:2021年11月)、2021年1月22日に実施した900百万米ドル(償還期限:2021年9月)、2021年2月25日に実施した300百万米ドル(償還期限:2022年1月)の、額面金額合計2,450百万米ドルの無担保普通社債の繰上償還を行いました。
上記に加えて、2020年4月、米ドル建およびユーロ建のタームローンの借入契約に基づく返済94百万米ドルがありました。また、2020年7月には、2013年7月に借入した借入金700億円および同月に発行された無担保普通社債600億円の、額面金額1,300億円の返済がありました。2020年11月には、Shire社買収に伴い発行された変動利付の無担保普通社債の満期償還1,000百万ユーロがありました。
2021年3月31日時点において、当社グループの長期融資契約には、毎年3月末および9月末において連結財政状態計算書における純負債の過去12か月間の調整後EBITDA(調整後EBITDAは契約書にて定義されたもの)に対する比率が一定水準を上回らないことを求める財務制限条項が含まれています。2021年3月31日現在、当社グループは全ての制限条項を遵守しております。これらは、2019年に設定され、期限が2025年9月である7,000億円の未使用のコミットメントラインからの借入を制限するものではありません。
当社グループは、短期の流動性の管理のため、日本の無担保コマーシャル・ペーパープログラムを保有しております。2020年3月31日時点におけるコマーシャル・ペーパープログラムの資金調達額は1,440億円であり、2021年3月31日時点においては資金調達額はありませんでした。当社グループは、さらに2020年3月31日時点および2021年3月31日時点において、それぞれ極度額1,500億円および750百万ドルの短期コミットメントライン契約を締結しておりますが、借入はしておりません。
借入金の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 20 社債及び借入金」をご参照ください。
信用格付け
当社グループの信用格付けは、当社グループの財務の健全性、業績、債務の返済能力等に関する各格付機関の意見が反映されております。本報告書時点における当社グループの信用格付けは以下のとおりです。
この格付けは、社債の購入、売却、保有を推奨するものではありません。この格付けは指定された格付機関によって適宜改訂あるいは撤回される可能性があります。それぞれの財務の健全性レーティングは、独立評価されたものであります。
オフバランス取引
マイルストン支払
新製品の開発に係る第三者との提携契約に基づき、当社グループは、パイプライン品目の開発、新製品の上市および上市後の販売等にかかる一定のマイルストン達成に応じた支払義務が生じる場合があります。2021年3月31日現在における潜在的なマイルストン支払の契約金額は1兆2,590億円であります。これらは、潜在的なコマーシャルマイルストン支払を除いた金額であります。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 13 共同研究開発契約およびライセンス契約 および 32 コミットメントおよび偶発負債」をご参照ください。
契約上の負債
2021年3月31日現在における契約上の負債は以下のとおりです。
(単位:億円)
(1) 2021年3月31日現在における日本円以外の通貨建債務は、期末為替レートで日本円に換算しており、為替レートの変動により金額が異なる可能性があります。
(2) 当社グループが関連する金融商品の財務制限条項違反を行った場合、返済義務が早まる可能性があります。
(3) 利息支払義務を含みます。
(4) 社債の契約額のうち、「1年以内」の金額には、「第5経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 33 後発事象」に記載の通り、米ドル建無担保普通社債の元本の残額を2021年5月17日において早期償還したため、当社債の元本200百万米ドルが含まれています。借入金の契約額のうち、「1年以内」の金額には、「第5経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 33 後発事象」に記載の通り、株式会社国際協力銀行ローンの残高3,700百万米ドルの一部を、2021年6月11日において繰上返済したため、当ローンの残高2,000百万米ドルが含まれています。当ローンは、満期日が2025年12月11日であり、2021年4月1日まで繰上返済に係る通知が行われなかったことから、2021年3月31日現在において非流動負債に計上されています。社債の契約額のうち、「3年超5年以内」の金額には、劣後特約付きハイブリッド社債(以下、「ハイブリッド債」)元本全額を2024年10月6日以降の各利払日において早期償還する可能性があるため、当ハイブリッド債の元本5,000億円が含まれています。これらの社債および借入金の詳細については、「第5経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 20 社債及び借入金」をご参照ください。
(5) 2022年3月31日以降の年金および退職後給付制度への拠出額については、拠出の時期が不確実であり、利率、運用収益、および法律およびその他の変動要因に依存するため、確定することはできません。
(6) 確定給付債務、訴訟引当金および長期未払法人税等、時期を見積もることができない契約上の負債、また、金額が公正価値の変動により変化するデリバティブ負債および条件付対価契約に関する金融負債は含まれておりません。なお、2021年3月31日現在のデリバティブ負債および条件付対価契約に関する金融負債の帳簿価額は、それぞれ971億円および278億円でした。また、特定の将来の事象の発生に左右されるマイルストン支払いも含んでおりません。
(7) 通常の事業活動における購買に関する発注は含んでおりません。
Shire社の買収
Shire社の買収に関連し、当社は2018年5月8日付でShire社買収に向けての協力契約をShire社との間で締結し、本件買収は2019年1月8日に完了しました。当社はShire社の買収に関連し、負債を負っております。かかる負債に関連する重要な契約は以下のとおりです。
2018年6月8日、当社グループは、JP Morgan Chase Bank, N.A.、株式会社三井住友銀行、株式会社三菱UFJ銀行および株式会社みずほ銀行等との間で総借入限度額75億米国ドルのタームローンクレジット契約を締結しました。2020年3月12日、当社グループはタームローンクレジット契約の元本総額のうち元本総額7億米国ドルを期限前弁済し、2020年4月14日に元本総額94百万米国ドルを約定弁済し、2020年7月10日、残る元本残額を期限前弁済しました。2018年11月21日、当社グループは、株式会社三菱UFJ銀行との間で同社を財務代理人とする財務代理人契約を締結し、同日付けで、当該財務代理人契約に基づき総額75億ユーロのユーロ建無担保普通社債を発行しました。2020年8月3日、当社グループは0.375%固定金利無担保普通社債の元本総額12.5億ユーロを当該財務代理人契約の規定に基づき早期償還しました。2020年11月23日、当社グループは10億ユーロの変動利付の無担保普通社債を当該財務代理人契約の規定に従い満期償還しました。2018年11月26日、当社グループは、MUFG Union Bank, N.A.を受託者とする社債信託契約を締結し、同日付で、当該社債信託契約に基づき総額55億米国ドルの米国ドル建無担保普通社債を発行しました。2019年8月29日、当社グループは、米国ドル建無担保普通社債のうち元本総額10億米国ドルを早期償還しました。2021年2月26日、当社グループは、4.00%固定金利米国ドル建無担保普通社債の元本総額12.5億米ドルを当該社債信託契約の規定に基づき早期償還しました。2018年12月3日、当社グループは、株式会社国際協力銀行との間で総借入限度額37億米国ドルのローン契約(以下、「JBICローン契約」)を締結しました。2018年12月25日、当社グループは、技術的な一部変更を加えるため、JBICローン契約の第1回変更契約を締結しました。2019年12月25日、当社グループは、財務制限条項の改定を含む一部変更を加えるため、JBICローン契約の第2回変更契約を締結しました。2021年6月11日、当社グループは20億米国ドル分の元本総額をJBICローン契約の規定に基づき期限前弁済しました。2019年6月6日、当社グループは、総額5,000億円のハイブリッド社債(劣後特約付社債)を発行しました。本社債の発行により調達された資金は、ショートタームローン契約により構成されShire社買収資金として使用されたシンジケートローンの残額の返済に充当されました。本社債は2079年6月6日に満期となります。2020年7月9日、当社グループは、The Bank of New York Mellonを受託者とする社債信託契約を締結し、同日付で、当該社債信託契約に基づき総額70億米国ドルの米国ドル建無担保普通社債および総額36億ユーロのユーロ建無担保普通社債を発行しました。
上記契約の概要ならびにShire社買収が当社グループの財務状況および業績に与える影響については「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 当年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容 (c) 流動性および資金調達源 有利子負債および金融債務」をご参照ください。
Baxter International Inc.との協定書
2016年1月11日に、Baxter International Inc.(以下、「Baxter社」)、Shire社およびBaxalta社は、Shire社によるBaxalta社の買収に関連し、三社間協定を締結しました。当該協定書は、特に、2015年7月にBaxter社とBaxalta社が分割される以前に両社間で締結した税務契約の一部の取扱いに係る合意に関連するものです。
当該協定書に基づき、2016年6月3日のShire社によるBaxalta社の買収完了以降、Baxalta社はBaxter社およびその関連会社ならびにこれらの経営陣、取締役および従業員に対し、買収により生じる税関連の損失を免責することに合意し、Shire社はかかる免責について保証を提供しました。但し、買収と関連しないBaxter社によるBaxalta社の普通株式の処分、ならびに2015年7月1日付の当初の割り当て、一定の債務と株式との交換、エクスチェンジオファー、Baxter社の米国年金基金へのBaxalta社株式の拠出およびBaxter社の株主への配当(各事象の詳細は当該協定書で規定されています。)以外のBaxalta社普通株式の処分に起因する損失は補償の対象外となっております。
武田コンシューマーヘルスケア株式会社の譲渡
2020年8月24日、当社グループによる武田コンシューマーヘルスケア株式会社(以下、「TCHC社」)の譲渡に関連し、当社グループは、株式譲渡契約を、The Blackstone Group Inc. とその関連会社が運用するファンドが支配するOscar A-Co株式会社と締結しました。当該譲渡は2021年3月31日に完了しました。TCHC社の製品にはビタミンB1製剤であるアリナミンや総合感冒薬であるベンザをはじめとした一般用医薬品およびヘルスケア製品が含まれます。
上記契約の詳細については「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 当年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容 (a)当年度の経営成績の分析 (i)当社グループの経営成績に影響を与える事項 事業売却」をご参照ください。
帝人ファーマ株式会社への資産譲渡
2021年2月26日、当社グループは、日本で販売されている2型糖尿病治療薬4剤(ネシーナ錠、リオベル配合錠、イニシンク配合錠、ザファテック錠)に関して、帝人ファーマ株式会社(以下、「帝人ファーマ」)にその販売を移管するため、帝人株式会社および帝人ファーマとの間で資産譲渡契約を締結しました。本販売移管は2021年4月1日に完了しました。当社グループは、別途の契約を帝人ファーマと締結し、その下で帝人ファーマのために当該製品の製造を行い、流通を担い、また当面当該製品の製造販売承認を保持します。
上記契約の詳細については「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 当年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容 (a)当年度の経営成績の分析 (i)当社グループの経営成績に影響を与える事項 事業売却」をご参照ください。
当年度の研究開発費の総額は4,558億円であります。
医薬品の研究開発のプロセスは、長期にわたり、多額の費用を伴い、その期間は10年を越えることもあります。このプロセスには、新薬の有効性および安全性の評価のための複数の試験、データを審査し販売承認の可否を判断する規制当局に対する申請が含まれます。こうした精査の過程を通過し、臨床での治療に用いることができる候補物質はごく僅かです。承認取得後も、上市後の製品に対しては、メディカルアフェアーズやその他の投資を含め、継続的な研究開発活動による支援が行われます。
臨床試験は、地域的および国際的な規制ガイドラインを遵守し、通常5から7年もしくはそれ以上を費やして実施されるものであり、相応の費用を伴います。通常、臨床試験は医薬品規制調和国際会議(ICH)が制定したガイドラインに沿って実施されます。これに関わる規制当局は、日本では厚生労働省、米国では食品医薬品局(FDA)、欧州連合では欧州医薬品庁(EMA)、中国では国家薬品監督管理局(NMPA)です。
ヒトの臨床試験は以下の3相で実施されます(各相が一部重複することもあります):
・臨床第1相(P-1)試験
少人数の健康な成人の志願者を被験者として、薬物の安全性、吸収、分布、代謝、排泄について評価するために実施
・臨床第2相(P-2)試験
少人数の志願患者を被験者として、安全性、有効性、用量および用法を評価するために実施
臨床第2相試験はP-2aとP-2bとの2つのサブカテゴリーに分割されることがあります。P-2a試験は通常臨床上の有効性または生物学的活性を示すためにデザインされたパイロット試験であり、P-2b試験は薬物が最少の副作用で生物学的活性を示す最適用量を探索するために行われます。
・臨床第3相(P-3)試験
大人数の志願患者を被験者として、既存の薬剤またはプラセボと比較した安全性および有効性を評価するために実施
これら3相のうち、臨床第3相にかかる開発費用が最も大きく、臨床第3相試験へ進めるか否かの決定は、医薬品開発における重要なビジネス判断となります。臨床第3相試験を通過した候補薬物については、管轄の規制当局に新薬承認申請書(NDA)、生物製剤承認申請(BLA)または医薬品販売承認申請(MAA)を提出し、規制当局より承認を取得した場合に上市します。NDA、BLA、MAAの作成には、膨大な量のデータの収集、検証、分析が必要であり、多額の費用が伴います。製品上市後も、保健当局により有害事象の市販後調査や、当該医薬品のリスク・ベネフィットに関する追加情報を提供するための市販後試験の実施を求められることがあります。
当社の研究開発は、サイエンスにより、患者さんの人生を根本的に変えうるような非常に革新性が高い医薬品を創製することに注力しています。当社は、「革新的なバイオ医薬品」、「血漿分画製剤」および「ワクチン」の3つの分野において研究開発活動を実施しています。革新的なバイオ医薬品に対する研究開発は、当社の研究開発投資の中で最も高い比率を占めています。革新的なバイオ医薬品における重点疾患領域(オンコロジー、希少遺伝子疾患および血液疾患、ニューロサイエンス、消化器系疾患)には未だ有効な治療法が確立されていない疾患に対する高い医療ニーズが存在し、当社はベストインクラスあるいはファーストインクラスとなりうる画期的な新規候補物質を創出してまいりました。これまでの数年間、最近ではShire社の買収によってさらに強化されましたが、当社では新たな研究開発能力、さらには次世代プラットフォームに対して社内および外部との提携によるネットワークを通じて投資し、細胞療法および遺伝子治療の領域の強化を図ってまいりました。
自社の研究開発機能向上への注力に加え、社外パートナーとの提携も、当社研究開発パイプライン強化のための戦略における重要な要素の一つです。社外提携の拡充と多様化に向けた戦略により、様々な新製品の研究に参画し、当社が大きな研究関連のブレイクスルーを達成する可能性を高めます。
当社の主要な研究開発施設には以下を含みます:
• 湘南ヘルスイノベーションパーク:日本の神奈川県藤沢・鎌倉地域に位置する湘南ヘルスイノベーションパーク(以下、「湘南アイパーク」)は、当社の湘南研究所として2011年に設立された、当社のニューロサイエンス研究の主要拠点です。2018年4月に、当社は、サイエンスのイノベーションを推進し、多様な外部パートナーとのライフサイエンスエコシステムを構築するために、湘南アイパークを開所しました。2020年4月に、当社はより多様なパートナーを招致し、湘南アイパークのさらなる成功を目指すため、湘南アイパークの所有権を信託設定することとしました。当社は、アンカーテナントとして、信託先と20年間のリースバック契約を締結するとともに、今後も日本におけるライフサイエンス研究活性化にコミットします。
• グレーターボストン地区研究開発サイト:当社のボストン研究開発サイトは米国マサチューセッツ州ケンブリッジに位置しています。本サイトは当社のグローバルでのオンコロジー、消化器系疾患領域および希少遺伝子疾患および血液疾患領域の研究開発の中心であり、加えて血漿分画製剤やワクチンなど他の疾患領域の研究開発や免疫調節および生物学的製剤の研究も支援しています。最近開設された最先端の細胞療法の製造施設を備えた、当社の細胞療法研究の拠点です。
• サンディエゴ研究開発サイト:米国カリフォルニア州サンディエゴにある当社の研究開発拠点であり、消化器系疾患およびニューロサイエンス領域における研究開発を支援しています。本研究サイトは、バイオテックのような形態で研究を行う拠点であり、構造生物学および生物物理学などの社内技術を駆使し、社内外で行われる研究を促進します。
• オーストリア ウィーン研究開発サイト:オーストリア ウィーンおよびオース近郊に位置する当社の研究開発サイトであり、血漿分画製剤および遺伝子治療分野における研究開発を支援しています。本研究サイトは、世界中の患者さんに革新的な医薬品を創製するため、血漿分画製剤および遺伝子治療薬の製造施設を備えています。
当社の2020年4月以降の主要な研究開発活動の進捗は、以下のとおりです。
研究開発パイプライン
オンコロジー
世界中のがん患者さんに革新的な新薬をお届けするために努力し、患者さんの生活を改善するという情熱をもって、画期的なイノベーションの探求に取り組んでいます。本疾患領域では、(1)既発売品である「ニンラーロ」、「アドセトリス」、「アイクルシグ」のライフサイクルマネジメントならびに多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群およびその他血液がんのパイプラインへの継続的な研究開発投資を通じた、血液がんにおける基盤的な専門性の構築、(2)既発売品である「アルンブリグ」を含む肺がんを対象とするパイプラインおよび標的を絞った肺がん患者さんを対象とする開発プログラムのさらなる拡充、(3)社外との提携による新規のがん免疫療法標的および次世代基盤技術の追求ならびに革新的な細胞療法の探索、にフォーカスしています。
[ニンラーロ 一般名:イキサゾミブ]
- 2020年5月、当社は、「ニンラーロ」について、多発性骨髄腫と診断された幹細胞移植歴のない成人患者を対象としたファーストライン(一次)治療後の維持療法の適応追加に係る製造販売承認事項一部変更承認の申請を厚生労働省に行ったことを公表しました。今回の申請は、主にランダム化プラセボ対照二重盲検の多施設共同国際臨床第3相試験である「TOURMALINE-MM4試験」の結果に基づくものです。
- 2020年6月、当社は、第25回欧州血液学会(EHA)において、2つの臨床試験結果をオーラルプレゼンテーションとして発表しました。本発表には、多発性骨髄腫と診断された幹細胞移植歴のない成人患者を対象として、経口で単剤投与された「ニンラーロ」のファーストライン維持療法としての有効性を評価した無作為化臨床第3相試験である「TOURMALINE-MM4試験」における良好な結果も含まれています。また、当社は、非経口剤である「ボルテゾミブ」をベースとした3剤併用導入療法をすでに受けている初発の多発性骨髄腫患者を対象に、同じプロテアソーム阻害剤の経口薬である「ニンラーロ」と「レナリドミド」および「デキサメタゾン」との併用療法へ移行した際の有効性と安全性を検討した「US MM-6試験」から得られた重要な知見についても発表しました。
- 2020年9月、当社は、第8回血液腫瘍学会議のバーチャル会議にて臨床第3相試験である「TOURMALINE-MM2試験」のデータを発表しました。本試験は、自家幹細胞移植が適応とならない初発の多発性骨髄腫患者を対象として、「ニンラーロ」と「レナリドミド」および「デキサメタゾン」の併用療法を、プラセボと「レナリドミド」および「デキサメタゾン」の併用療法と比較して評価しました。本試験結果では、「ニンラーロ」と「レナリドミド」および「デキサメタゾン」の併用療法群で無増悪生存期間(PFS)の中央値が13.5ヵ月(プラセボ群21.8ヵ月に対しニンラーロ群35.3ヵ月、HR=0.830、p=0.073)改善したことが実証されましたが、統計的有意水準を満たしておらず、主要評価項目であるPFSは達成されませんでした。
- 2021年5月、当社は、「ニンラーロ」について、幹細胞移植歴のない多発性骨髄腫に対する初回治療後の維持療法の治療薬として、厚生労働省より多発性骨髄腫における維持療法の効能又は効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを公表しました。今回の承認は、主に、ランダム化プラセボ対照二重盲検多施設共同国際臨床第3相試験である「TOURMALINE-MM4試験」の結果に基づくものです。本試験では、幹細胞移植歴のない成人の多発性骨髄腫患者を対象に無増悪生存期間(PFS)を主要評価項目として、本剤による維持療法がPFSを統計学的に有意に改善することが確認されました。ニンラーロの維持療法における安全性プロファイルは、単剤療法における既知の安全性プロファイルと同様であり、「TOURMALINE-MM4試験」で新たな懸念は確認されませんでした。
[アイクルシグ 一般名:ポナチニブ]
- 2020年5月、当社は、「アイクルシグ」について、バーチャルで開催された第56回米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology:ASCO)年次総会のオーラルセッションにおいて、臨床第2相試験「OPTIC(Optimizing Ponatinib Treatment In CML)」の中間解析データを発表しました。「OPTIC試験」は、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による前治療へ抵抗性または不耐性を示す慢性期の慢性骨髄性白血病(CP-CML)患者に対する、有効性および安全性を最適化することを目的として、「アイクルシグ」の3つの投与開始用量(45mg~、30mg~あるいは15mg~)における奏効に基づく投与量調整レジメンをプロスペクティブに評価する、進行中の無作為化非盲検試験です。
- 2020年12月、当社は、米国食品医薬品局(FDA)より、「アイクルシグ」について、少なくとも2種類以上のチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による前治療へ抵抗性または不耐性を示す慢性期(CP)の慢性骨髄性白血病(CML)成人患者における医薬品承認事項変更申請(sNDA)の承認を取得したことを公表しました。改訂後の添付文書には、CP-CML患者に対して1日45mgから投与を開始し、BCR-ABL1IS≦1%を達成した時点で15mgに減量する、最適化された「アイクルシグ」の奏効に基づく投与量調整レジメンが追記されます。この投与量調整レジメンは、有効性を得ながら、動脈閉塞イベント(AOE)を含む有害事象(AE)のリスクを低減することによって、ベネフィット・リスクプロファイルの最適化を目的としています。
[アルンブリグ 一般名:ブリグチニブ]
- 2020年5月、当社は、「アルンブリグ」について、米国食品医薬品局(FDA)が承認した検査により診断された成人の未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子転座陽性(ALK陽性)転移性非小細胞肺がん(NSCLC) 患者に対する治療薬としてFDAより承認を取得したことを公表しました。今回の承認により、「アルンブリグ」の適応症にファーストライン(一次)治療が追加されました。
- 2020年9月、当社は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO:European Society for Medical Oncology)のバーチャル会議において、「アルンブリグ」のサブ解析データを発表しました。臨床第3相試験である「ALTA 1L試験」のサブ解析により、未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子転座陽性(ALK陽性)の非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対するファーストライン治療薬としての「アルンブリグ」について、頭蓋内病変に対する有効性にかかる説得力のあるエビデンスを確認するとともに、QOLの改善効果も見られました。
- 2021年1月、当社は、「アルンブリグ」について、ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)を適応とする一次および二次以降の治療薬として、厚生労働省より製造販売承認を取得したことを公表しました。今回の承認は主に、ALKチロシンキナーゼ阻害剤治療後に増悪したALK融合遺伝子陽性(以下、ALK陽性)の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)患者72例を対象とした国内臨床第2相試験である「Brigatinib-2001 (J-ALTA)」およびALKチロシンキナーゼ阻害剤による治療歴のないALK陽性の切除不能な進行・再発のNSCLC患者を対象とした海外臨床第3相試験である「AP26113-13-301(ALTA-1L)」の結果に基づくものです。
[アドセトリス 一般名:ブレンツキシマブ ベドチン]
- 2020年5月、当社は、「アドセトリス」について、欧州委員会(EC)より、現在の条件付承認に加えて、未治療の全身性未分化大細胞リンパ腫(sALCL)の成人患者に対するCHP(シクロホスファミド・ドキソルビシン・プレドニゾン)との併用治療に関して適応追加の承認を取得したことを公表しました。ALCLは末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)のサブタイプです。
- 2020年5月、当社は、「アドセトリス」について、再発・難治性の全身性未分化大細胞リンパ腫またはCD30陽性ホジキンリンパ腫の成人患者に対する治療薬として、中国国家薬品監督管理局(NMPA)より承認を取得したことを公表しました。
[カボメティクス 一般名:カボザンチニブ]
- 2020年4月、当社は、「カボメティクス」と小野薬品工業株式会社(小野薬品)のヒト型抗ヒトPD-1(programmed cell death-1)モノクローナル抗体、「オプジーボ」(ニボルマブ)について、未治療の進行性または転移性の腎細胞癌を対象に両製剤の併用療法を評価した多施設国際共同無作為化非盲検第3相試験である「CheckMate -9ER試験」のトップライン結果が得られたことを公表しました。本試験において、「オプジーボ」と「カボメティクス」の併用療法は、「スニチニブ」と比較して、最終解析で主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を、あらかじめ計画されていた中間解析で副次評価項目である全生存期間(OS)、および奏効率(ORR)を改善しました。本試験結果を踏まえ、2020年10月、当社と小野薬品は「オプジーボ」と「カボメティクス」について、根治切除不能または転移性の腎細胞癌を対象とした両製剤の併用療法に係る国内製造販売承認事項一部変更承認申請を厚生労働省に行ったことを公表しました。
- 2020年9月、当社と中外製薬株式会社(中外製薬)は、抗PD-L1(Programmed Death-Ligand 1)ヒト化モノクローナル抗体「テセントリク点滴静注」(アテゾリズマブ)とキナーゼ阻害剤「カボメティクス錠」の併用療法について、国内での開発を両社で実施する決定をしたことを公表しました。日本における両剤の併用療法の開発は、Roche社-Exelixis社間で締結された全世界における「アテゾリズマブ」と「カボザンチニブ」の併用療法に関する共同開発契約に基づき、日本国内での権利を有する当社と中外製薬が実施します。新たな治療法としての「アテゾリズマブ」と「カボザンチニブ」併用療法を検討する3つのグローバル臨床第3相臨床試験である「CONTACT試験」が複数のがん種を対象として進行中であり、当社と中外製薬は国内においてこれらの臨床試験に参加する予定です。
- 2020年9月、ピボタル臨床第3相試験である「CheckMate-9ER試験」の結果がブリストル マイヤーズ スクイブとExelixis社より発表されました。本試験において、未治療の進行腎細胞癌(RCC)を対象に、「オプジーボ」(ニボルマブ)と「カボメティクス」の併用療法が、全生存期間(OS)を含む全ての有効性評価項目で有意な改善を示しました。「オプジーボ」と「カボメティクス」の併用療法は、「スニチニブ」と比較して、死亡リスクを40%低減しました(ハザード比 [HR] 0.60;98.89% 信頼区間 [CI]:0.40 - 0.89;p=0.0010;OSの中央値は両群とも未達)。本試験の主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の中央値は、「スニチニブ」単剤群(8.3カ月)と比較して、「オプジーボ」と「カボメティクス」の併用療法群(16.6カ月)で2倍の延長を示しました(HR 0.51;95% CI:0.41 - 0.64;p<0.0001)。本試験結果は欧州臨床腫瘍学会(ESMO:European Society for Medical Oncology)のバーチャル会議のプレジデンシャルシンポジウムで「Proffered Paper」として取り上げられました。なお、本試験は、ブリストル マイヤーズ スクイブおよび小野薬品がスポンサーとなり、Exelixis社、Ipsen社および当社が共同出資を行っています。
- 2020年11月、当社は、「カボメティクス」について、がん化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞癌に対する治療薬として、厚生労働省より製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを公表しました。今回の承認は、主に、プラセボ群と比較して本剤の有効性が統計的に有意な結果を示し、かつ安全性プロファイルについても確認された二次治療以降の進行肝細胞癌患者を対象とした海外臨床第3相ランダム化二重盲検プラセボ対照試験である「CELESTIAL試験」、ならびに日本人における有効性および安全性を検討した国内臨床第2相非盲検単群試験である「Cabozantinib-2003試験」の結果に基づくものです。
[ゼジューラ 一般名:ニラパリブ]
- 2020年9月、当社は、経口のポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬「ゼジューラカプセル100㎎」について、「卵巣癌における初回化学療法後の維持療法、白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌における維持療法、白金系抗悪性腫瘍剤感受性の相同組換え修復欠損を有する再発卵巣癌」を適応とする治療薬として、厚生労働省より製造販売承認を取得したことを公表しました。本承認は、海外臨床第3相試験である「PRIMA試験」、海外臨床第3相試験である「NOVA試験」、海外臨床第2相試験である「QUADRA試験」、ならびに日本人卵巣癌患者に対し安全性を検討した国内臨床第2相試験の「Niraparib-2001試験」、日本人卵巣癌患者に対し有効性および安全性を検討した国内臨床第2相試験の「Niraparib-2002試験」の結果に基づくものです。
- 2020年11月、当社は、厚生労働省に「ゼジューラカプセル100㎎」の剤形追加として、「ゼジューラ錠100㎎」の製造販売承認申請を行ったことを公表しました。今回の承認申請は、「ゼジューラカプセル」と「ゼジューラ錠」の同等性を確認した「ヒト生物学的同等性試験(3000-01-004 study)及び溶出試験」の結果に基づいています。 「ゼジューラカプセル」の貯法は冷蔵ですが、このたび承認申請を行った「ゼジューラ錠」は、室温で管理することが可能となり、医療関係者や患者における利便性の改善につながる可能性があります。
[開発コード:TAK-924 一般名:pevonedistat]
- 2020年5月、当社は、「pevonedistat」について、バーチャルで開催された第56回米国臨床腫瘍学会(ASCO: American Society of Clinical Oncology)年次総会のオーラルセッションにおいて、臨床第2相試験「Pevonedistat-2001」の結果を発表しました。本試験では、高リスク骨髄異形成症候群(HR-MDS)を含む造血器腫瘍の患者を対象に、「pevonedistat」と「アザシチジン」の併用療法と「アザシチジン」単剤療法を比較しました。これらの結果より、「pevonedistat」と「アザシチジン」の併用療法は非常に有効であり、有望な治療法であることが示されるとともに、HR-MDS患者群においては、「アザシチジン」単剤療法と同様の安全性プロファイルであり、全生存期間(OS)、無イベント生存期間(EFS)、完全寛解率(CR)および輸血非依存達成率を含む臨床的に意義のある複数の評価項目でも有用性が示されました。
- 2020年7月、当社は、「pevonedistat」について、高リスク骨髄異形成症候群(HR-MDS)に対する治療薬として米国食品医薬品局(FDA)よりBreakthrough Therapyの指定を受けたことを公表しました。
[開発コード:TAK-788 一般名:mobocertinib]
- 2020年4月、当社は、プラチナ製剤をベースとした化学療法を実施中あるいは実施後に病勢が進行した上皮増殖因子受容体(EGFR)エクソン20挿入変異を伴う転移性非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する治療薬「mobocertinib」を米国食品医薬品局(FDA)がBreakthrough Therapyに指定したことを公表しました。
- 2020年9月、当社は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO:European Society for Medical Oncology)のバーチャル会議において、「mobocertinib」の臨床第1/2相試験の10カ月間の追跡調査結果を発表しました。本追跡調査では、上皮増殖因子受容体(EGFR)エクソン20挿入変異を伴う転移性NSCLC患者において、1年以上の奏効期間(DoR)を達成したことが示されました。
- 2021年1月、当社は、国際肺癌学会(International Association for the Study of Lung Cancer:IASLC)の2020年度世界肺癌学会議(World Conference on Lung Cancer :WCLC)の最新演題オーラルセッションにおいて、治療歴を有する上皮成長因子受容体(EGFR)エクソン20挿入変異を伴う転移性非小細胞肺がん患者を対象とした「mobocertinib」の臨床第1/2相試験の新たなデータを発表しました。経口標的治療薬である「mobocertinib」は、治験責任医師の判定で奏効率35%、独立判定委員会(IRC)による判定で28%が確認され、臨床的に意義のある奏効を示し、IRCによる判定で奏効期間の中間値で17.5カ月と持続的奏効を示しました。安全性プロファイルは管理可能でした。2020年11月のデータカットオフ時からの安全性プロファイルは、同年5月のデータカットオフ時のものと一致していました。
- 2021年4月、当社は、プラチナ製剤ベースの化学療法による治療歴を有し、米国食品医薬品局(FDA)で承認された検査で検出された上皮成長因子受容体(EGFR)エクソン20挿入変異を伴う転移性非小細胞肺がんの成人患者に対する治療薬「mobocertinib」の新薬承認申請(NDA)を、FDAが優先審査に指定したことを公表しました。「mobocertinib」は、EGFRエクソン20挿入変異を選択的に標的とするよう特異的に設計された初めての経口治療薬です。今回の新薬承認申請は、主に転移性非小細胞肺がん患者を対象に、経口投与された「mobocertinib」の安全性および有効性を評価する臨床第1/2相試験の結果に基づくものです。この申請はFDAの迅速承認制度により行われました。なお、審査終了目標日(PDUFA date)は2021年10月26日です。
- 2021年5月、当社は、「mobocertinib」の安全性および有効性を評価する臨床第1/2相試験から、プラチナ製剤ベースの化学療法の治療歴を有する上皮成長因子受容体(EGFR)エクソン20挿入変異陽性を伴う転移性非小細胞肺がん患者を対象とした最新データを公表しました。試験結果から、「mobocertinib」は1年間の追跡調査後も臨床的に意義のある効果を持続することが示され、バーチャルで開催される第57回米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表される予定です。本試験の結果、全生存期間(OS)の中央値は24ヶ月、フォローアップ期間の中央値は14ヶ月、多様なEGFRエクソン20挿入変異に対して奏功したことが示されました。その他の主要なデータポイントである客観的奏効率(ORR)、奏功期間(DoR)の中央値および病勢コントロール率(DCR)においては、既報データと一貫していました。また、安全性プロファイルにおいても対応可能なもので、既報データと一貫していました。
希少遺伝子疾患および血液疾患
当社は、既存の治療パラダイムを変えうる、最近上市された「TAKHZYRO」を含む遺伝性血管性浮腫に注力するとともに、今後は希少血液疾患および希少代謝性疾患において新たなモダリティとプラットフォームを活用し、特定の疾患に対して機能的な治療を提供していくことを目指します。
[TAKHZYRO 一般名:ラナデルマブ]
- 2020年5月、当社は、「TAKHZYRO」のプレフィルドシリンジ製剤の一部変更承認申請(Type II Variation)について、欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品評価委員会(CHMP)より承認を推奨する旨の肯定的見解が示されたことを公表しました。「TAKHZYRO」は、12歳以上の遺伝性血管性浮腫(HAE)患者における再発性発作の標準的抑制薬として、欧州では皮下投与製剤として承認されています。
- 2020年6月、当社は、臨床第3相「HELP(遺伝性血管性浮腫の長期抑制)試験の非盲検延長(OLE)試験」において、2つの新たな中間解析結果が得られたことを公表しました。解析の結果、「TAKHZYRO」は良好な忍容性を示し、遺伝性血管性浮腫(HAE)発作の1ヵ月あたりの発現率は様々なサブグループで持続的かつ一貫して低下しており、延長期間中においてもHAE発作を抑制していることが示されました。本試験結果は、オンライン開催となった2020年欧州アレルギー臨床免疫学会(EAACI:European Academy of Allergy and Clinical Immunology)にて発表されました。
- 2020年11月、当社は、臨床第3相「HELP(遺伝性血管性浮腫の長期抑制)試験の非盲検延長(OLE)試験」より、「TAKHZYRO」による平均29.6ヵ月(標準偏差8.2ヵ月)の治療を受けた12歳以上の患者において、遺伝性血管性浮腫(HAE)発作が長期的に抑制され、発作頻度の低下を示す最終結果が得られたことを公表しました。結果はピボタル試験における「TAKHZYRO」の安全性および有効性と一致するものでした。HAE発作の平均発現率は全体でベースラインから87.4%(最小-100%、最大852.8%)低下し(n=212)、予め設定された探索的評価項目では、「TAKHZYRO」300mgによる治療を2週毎に受けた患者の70%近く(68.9%)で発作のない期間が12ヵ月を超えました(n=209)。本データは、2020年米国アレルギー喘息免疫学会(American College of Allergy, Asthma and Immunology: ACAAI)のオンライン年次総会で発表され、ACAAIの学会誌Annals of Allergy, Asthma & Immunology 11月号にも掲載されました。
- 2020年12月、当社は、「TAKHZYRO」皮下注射剤について、12歳以上の遺伝性血管性浮腫(HAE)患者の発作を抑制する発作予防薬として、中国国家薬品監督管理局(NMPA)より承認を取得したことを公表しました。
- 2021年3月、当社は、遺伝性血管性浮腫(HAE)発作を抑制するモノクローナル抗体である「ラナデルマブ」皮下投与製剤について、厚生労働省に対し製造販売承認申請を行ったことを公表しました。日本での製造販売承認申請は、主にグローバル臨床第3相試験である「HELP(Hereditary Angioedema Long-term Prophylaxis)試験」、臨床第3相「HELP Open-label Extension(OLE)試験」および日本人患者での「ラナデルマブ」の有効性と安全性を検証する臨床第3相試験の中間結果等に基づいています。これらの試験において、「ラナデルマブ」はHAE発作の予防的治療薬として有効性と安全性を示しました。
[アドベイト 一般名:ルリオクトコグ アルファ(遺伝子組換え)]
[アディノベイト 一般名:ルリオクトコグ アルファ ペゴル(遺伝子組換え)]
- 2020年6月、当社は、2020年世界血友病連盟世界会議(WFH2020)のオーラルプレゼンテーションにおいて、血友病A患者に対する「アドベイト」について長期の転帰を検討した実臨床における「AHEAD試験」からの最新結果を発表しました。「AHEAD試験」の実臨床におけるアウトカム試験の中間解析からは、出血ゼロを達成することができた血友病Aの患者の数が、血液凝固第VIII因子(遺伝子組換え)を投与することによって長年にわたって増加したことを示しています。予防を受けている患者では、出血ゼロの患者数は1年目の34%から6年目の53%に増加し、オンデマンド治療を受けている患者では、1年目の28%から6年目の38%に増加しました。AHEAD(The Antihemophilic factor (recombinant) (rAHF) Hemophilia A outcome Database)試験は日常的臨床診療において血液凝固第VIII因子(遺伝子組換え)を投与されている血友病A患者における長期の有効性と安全性のアウトカムを調査する試験です。
- 2021年2月、当社は、2021年欧州血友病学会議(EAHAD)において、「アドベイト」についての「AHEAD試験」の7年間データを発表しました。本データでは、全ての重篤な血友病A患者において、「アドベイト」を予防投与することによってオンデマンド治療群と比較してより低い年間出血率(ABRs)および年間関節出血率(AJBRs)を達成しました。有害事象は59%の症例(重篤な有害事象は20%)に見られ、12例において新たに第VIII因子インヒビターの発生が確認されました。別解析では、「アドベイト」の予防投与はオンデマンド治療と比較し、標的関節を有する中等度または重症の血友病A患者において7年間にわたり、より低い出血率を示しました。また、追加の後ろ向き解析では、米国の臨床診療において、中等度または重症の血友病A患者(インヒビター保有患者を除く)における、「アドベイト」の予防投与から「アディノベイト」または「エミシズマブ」への薬剤切り替えによる予防効果は統計学的有意差を示しませんでした。
[開発コード:TAK-620 一般名:maribavir]
- 2020年12月、当社は、移植後の難治性/抵抗性サイトメガロウイルス(CMV)感染治療薬「maribavir」の有効性および安全性を評価する臨床第3相試験の結果が得られたことを公表しました。「TAK-620-303(SOLSTICE)試験」は、既存の抗ウイルス療法(「ガンシクロビル」、「バルガンシクロビル」、「ホスカルネット」、「シドフォビル」のいずれか1剤またはその併用)に難治性または抵抗性のCMV感染に罹患する移植後の患者を対象に、「maribavir」または治験責任医師が認めた治療法(IAT)のいずれかを8週間投与して比較する多施設共同、無作為化、非盲検、実薬対照試験です。「SOLSTICE試験」では、IATとの比較において、投与8週終了時にCMV血症が消失した患者の割合と定義される主要評価項目を達成しました。また、投与8週終了時に達成し、さらに投与16週まで維持されたCMV血症の消失および症状コントロールと定義される主な副次的評価項目も達成しました。新たな安全性シグナルは確認されず、「maribavir」はIATと比較して好中球減少症の発生率の低下と関連していました。
- 2021年2月、当社は、デジタルで開催された移植・細胞治療学会議(TCT)2021において、「maribavir」の臨床第3相試験である「TAK-620-303(SOLSTICE)試験」の最新データを発表しました。本試験で、移植後の難治性抵抗性ありまたはなし(R/R)のサイトメガロウイルス(CMV)感染/疾患を有する移植患者において、本試験の主要評価項目である投与8週終了時(投与期終了時)のCMV血症の消失が達成された割合は、既存の抗ウイルス療法群(治験責任医師が定めた治療法[IAT]で、「ガンシクロビル」、「バルガンシクロビル」、「ホスカルネット」もしくは「シドフォビル」のいずれか1剤またはその併用)の23.9%(n=28/117)と比較して、「maribavir」投与群では2倍以上(55.7%、n=131/235)で、主要評価項目を達成しました(95%信頼区間:32.8%、22.8~42.7、p<0.001)。本試験の主な副次評価項目である、投与16週までの、CMV血症の消失および随伴症状コントロールでも、「maribavir」群が既存の抗ウイルス療法群を上回ることにより、達成しました。
- 2021年3月、当社は、第47回欧州骨髄移植学会(EBMT)年次総会のプレジデンシャルシンポジウムにおいて、「maribavir」の臨床第3相試験である「TAK-620-303(SOLSTICE)試験」のサブグループ解析結果を発表しました。この解析結果は、全無作為化集団から得られた有効性を支持するものです。ベースラインで遺伝子型抵抗性CMV感染の移植患者において、投与8週時(投与期終了時)でCMV血症の消失が達成された割合は、既存の抗ウイルス療法群(治験責任医師が定めた治療法[IAT]で、「ガンシクロビル」、「バルガンシクロビル」、「ホスカルネット」もしくは「シドフォビル」のいずれか1剤またはその併用)(20.3%、14/69)と比較して、「maribavir」投与群では3倍以上(62.8%、76/121)でした。(調整群間差[95%信頼区間]:44.1%[31.3、56.9])
- 2021年5月、当社は、固形臓器移植(SOT)または造血幹細胞移植(HCT)の両移植後の難治性/抵抗性(無しも含む)(R/R)サイトメガロウイルス(CMV)感染の治療薬である「maribavir」について、新薬承認申請(NDA)が米国食品医薬品局(FDA)に受理され、優先審査指定を受けたことを公表しました。この申請はグローバル臨床第3相試験である「TAK-620-303(SOLSTICE)試験」に基づいています。「maribavir」は、FDAから、臨床的に重篤なCMV血症およびCMV感染症リスクの高い患者の治療薬として希少疾病用医薬品指定を受けています。またFDAは、CMV感染およびCMV感染症を有し、既存の治療に抵抗性を有するまたは難治性の移植患者への治療薬として、「maribavir」のBreakthrough Therapy指定を行っています。
ニューロサイエンス
当社は、高いアンメット・ニーズが存在する神経疾患および神経筋疾患を対象に、革新的治療法に研究開発投資をフォーカスし、当社の専門知識やパートナーとの提携を生かし、パイプラインを構築しています。疾患の生物学的理解、トランスレーショナルなツール、革新的なモダリティの進展により、当社は神経変性疾患のうち患者セグメントが明確に定義されている疾患(例えば、パーキンソン病)への治療可能性に特化した投資とともに、希少神経疾患(例えば、ナルコレプシー、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、その他の運動失調症)に主にフォーカスしています。
[ブコラム 一般名:ミダゾラム]
- 2020年9月、当社は、てんかん重積状態の治療剤である「ブコラム口腔用液」について、厚生労働省より製造販売承認を取得したことを公表しました。今回の承認は、けいれん性てんかん重積状態を発症した18歳未満の患者に対して「ブコラム」を頬粘膜投与した2つの国内臨床第3相多施設共同介入非無作為化非盲検試験の結果などに基づくものです。「ブコラム」は日本初のてんかん重積状態に対する頬粘膜投与製剤であり、医師の指導に従い、家庭内など医療機関外でも投与可能です。2020年10月、当社は「ブコラム」のNeuraxpharm Groupの子会社(Neuraxpharm社)への売却を完了しました。当社は、日本における製造販売権の保持者として、一定期間にわたり一定のサービスをNeuraxpharm社に提供します。
[開発コード:TAK-935/OV935 一般名:soticlestat]
- 2020年8月、当社とOvid Therapeutics Inc.(Ovid社)は、ドラベ症候群(DS)またはレノックス・ガストー症候群(LGS)の小児患者を対象とした「soticlestat」の無作為化臨床第2相「ELEKTRA試験」の良好なトップラインデータを発表しました。「ELEKTRA試験」において、12週間の治験薬投与維持期に、プラセボ投与群では、けいれん発作(DS)および脱力発作(LGS)の頻度が中央値で3.1%増加したのに対し、「soticlestat」投与群ではベースラインから中央値で27.8%の統計学的に有意な減少が示され(プラセボ調整後の減少率の中央値=30.5%、p=0.0007、治験薬投与維持期において発作がみられた120例での有効性解析に基づく)、主要評価項目を達成しました。さらに、「ELEKTRA試験」の20週間の全治療期間(用量最適化期および治験薬投与維持期)中にプラセボ投与群ではけいれん発作(DS)および脱力発作(LGS)の頻度の変化が中央値で0.0%であったのに対し、「soticlestat」による治療を受けたDSおよびLGS患者群では中央値で29.8%減少しました(プラセボ調整後の減少率=25.1%、p=0.0024)。「soticlestat」の忍容性は概ね良好で、安全性プロファイルはこれまでの試験と同様であり、新たに安全性で留意すべき点は認められませんでした。
- 2021年3月、当社とOvid社は、当社が「soticlestat」について、ドラベ症候群(DS)またはレノックス・ガストー症候群(LGS)を含む発達性およびてんかん性脳症の治療薬として臨床段階にある「soticlestat」について、グローバルでの開発および販売権をOvid社から取得する独占契約を締結したことを公表しました。本独占契約に基づき、「soticlestat」のグローバルでの権利を当社が取得し、今後の全世界での開発と販売を単独で担います。
消化器系疾患
消化器系疾患・肝疾患の患者さんに革新的で人生を変えうる治療法をお届けすることにフォーカスしています。「エンティビオ」および「ALOFISEL」といった炎症性腸疾患におけるフランチャイズのポテンシャルを最大化するとともに、「GATTEX/REVESTIVE」のスペシャリティ消化器系疾患領域におけるポジショニングを拡大させ、社外との提携を通じて消化管運動関連疾患、セリアック病、厳選した肝疾患における機会を探索し、パイプラインの構築を進めています。
[エンティビオ/エンタイビオ 一般名:ベドリズマブ]
- 2020年4月、当社は、「エンティビオ」の自己注射製剤について、カナダにおいて、既存療法または TNF-αアンタゴニスト 「infliximab」 に対して、効果不十分、効果消失、または不耐性であった、18歳以上の中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎患者の在宅での維持療法として承認されたことを公表しました。本承認は、中等症から重症の、活動期潰瘍性大腸炎の成人患者を対象とする、「エンティビオ」皮下注用製剤の維持療法の有効性および安全性を評価した無作為化二重盲検プラセボ対照試験である「VISIBLE 1試験」に基づくものです。
- 2020年5月、当社は、中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎またはクローン病成人患者に対する維持療法として、「エンティビオ」の皮下注射(SC)製剤の製造販売について、欧州委員会より承認を取得したことを公表しました。「エンティビオ」のSC製剤は、プレフィルドシリンジ製剤およびペン製剤の両剤型で利用可能となります。
- 2020年9月、当社は成人の中等症から重症の潰瘍性大腸炎患者を対象とした維持療法に関する「エンティビオ」の皮下注射製剤の米国における開発プログラムの進捗を公表しました。当社は2020年8月にFDAと会議を行い、当社が新しく得たデータの評価を得るとともに、「エンティビオ」皮下注射製剤の承認を支持するのに必要な追加データについて助言を求めました。会議において、追加で必要な注射デバイスのデータに関して明確な理解が得られたため、その対応に向けて取り組んでいます。継続的な注射デバイスの試験実施に時間を要することから、米国での中等症から重症の潰瘍性大腸炎を対象とした「エンティビオ」皮下注射製剤の発売は、承認が得られた後、2022年になる可能性があります。
- 2020年10月、当社は、中等症から重症の活動期潰瘍性大腸炎患者を対象とした、「エンティビオ」の皮下注射製剤による維持療法の長期安全性および有効性を検討する非盲検長期継続投与(VISIBLE OLE)試験の中間解析結果を発表しました。本試験における安全性の主要評価項目の評価において、潰瘍性大腸炎の患者集団の中間解析データから、2年間の「エンティビオ」皮下注射製剤による維持療法後の長期安全性に関する所見が「エンティビオ」の既報の安全性プロファイルと一致していることが示されました。また、この患者集団では、本試験の臨床的有効性の評価項目である臨床的寛解(注1)の維持およびステロイドフリーでの臨床的寛解(注2)が得られた患者の割合から、治療による臨床的効果が継続的に示されました。これらのデータは、バーチャルで開催された欧州消化器病週間(United European Gastroenterology Week: UEG Week)におけるオーラルプレゼンテーションで発表されました。
(注1) 主要評価項目である臨床的寛解は、部分的Mayoスコアが2ポイント以下、かつ全てのサブスコアが1ポイント以下と定義
(注2) ステロイドフリーの臨床的寛解は、ベースライン(0週目)で経口コルチコステロイドを使用している患者として定義
[GATTEX/REVESTIVE 一般名:テデュグルチド]
- 2020年10月、当社は、「テデュグルチド」(遺伝子組換え)について、短腸症候群治療剤として、厚生労働省に製造販売承認申請を行ったことを公表しました。今回の申請は、国内で実施された成人および小児を対象とした臨床第3相試験、ならびに海外にて行われた試験結果に基づくものです。これらの試験において、本剤の有効性が認められ、安全性に大きな問題は見られませんでした。
[ALOFISEL 一般名:Darvadstrocel]
- 2021年2月、当社は、「Darvadstrocel」について、非活動期/軽度活動期のクローン病成人患者における肛門周囲複雑瘻孔治療製品として、厚生労働省に製造販売承認申請を行ったことを公表しました。国内で実施された「Darvadstrocel-3002試験」および、欧州およびイスラエルで実施された「ADMIRE-CD試験」の結果に基づくものです。「Darvadstrocel-3002試験」は日本人の非活動期/軽度活動期のクローン病成人患者22名を対象に「Darvadstrocel」の有効性と安全性を検討した臨床第3相、多施設共同、非盲検非対照試験です。「Darvadstrocel-3002試験」の結果は、学会で今後公表される予定です。「ADMIRE-CD 試験」は、非活動期/軽度活動期のクローン病成人患者さん212名を対象に「Darvadstrocel」の有効性と安全性を検討した臨床第3相、無作為化二重盲検比較試験です。
[タケキャブ 一般名:ボノプラザン]
- 2021年3月、当社は、酸関連疾患治療剤「タケキャブ錠10mg、同錠20mg」の剤形追加として、厚生労働省に口腔内崩壊錠「タケキャブOD錠10mg、同OD錠20mg」の製造販売承認申請を行ったことを公表しました。本申請は、国内で実施されたヒト生物学的同等性試験「TAK-438ODT-1001試験」および溶出試験に基づくものです。
[開発コード:TAK-721 一般名:ブデソニド経口懸濁液]
- 2020年12月、当社は、好酸球性食道炎の治療薬として特異的にデザインされ開発中のブデソニド経口懸濁液である「TAK-721」について、新薬承認申請(NDA)が米国食品医薬品局(FDA)に受理され、優先審査に指定されたことを公表しました。承認された場合、「TAK-721」は好酸球性食道炎の治療薬として初のFDA承認となる見込みであり、製品名は「Eohilia」を予定しています。「TAK-721」はこれまでにFDAからBreakthrough TherapyおよびOrphan Drugの両方の指定を受けています。当社はFDAと協議中であり、議論の結果に応じて承認される見込みです。
血漿分画製剤
当社は、血漿分画製剤(PDT)に特化したPDTビジネスユニットを設立し、血漿の収集から製造および商用化まで、エンド・ツー・エンドのビジネスを運営しています。本疾患領域では製品のライフサイクル全体にわたってイノベーションを推進することにより、希少および複雑な疾患に対する血漿分画製剤による治療の価値を最大化させます。血漿分画製剤に特化した研究開発組織は、新たな治療ターゲットの特定、および、現有する製品の製造効率の最適化という役割を担います。PDTでは、世界中で、様々な希少疾患や、生命を脅かす、慢性および遺伝性疾患の患者さんに有効な治療を行う上で不可欠な治療薬を開発することに焦点を絞ります。
[開発コード:CoVIg-19 (旧 TAK-888) 一般名:抗SARS-CoV-2ポリクローナル高度免疫グロブリン製剤]
- 2020年4月、当社とCSL Behring社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬となり得る血漿分画製剤の開発に関する提携契約、「CoVIg-19 Plasma Alliance」を締結し、本提携にBiotest、BPL、LFB、Octapharmaの各社が参画したことを公表しました。本提携を通じ、COVID-19による重篤な合併症を有する患者の治療薬となり得るノーブランドの製品として、抗SARS-CoV-2ポリクローナル高度免疫グロブリン製剤の臨床開発に直ちに着手します。
- 2020年5月、「CoVIg-19 Plasma Alliance」は参画メンバーとして血漿分画製剤に携わる企業を10社に拡大し、また、COVID-19から回復されたより多くの人々に血漿を提供してもらえるようにするために重要なサポートを行う血漿分画製剤の企業以外のグローバル機関も参画したことを公表しました。本アライアンスの発足当初に発表されたBiotest、BPL、CSL Behring、LFB、Octapharmaならびに当社に加え、新たな業界メンバーとしてADMA Biologics、BioPharma Plasma、GC Pharma、およびSanquinが参画します。これらの企業が一丸となり、COVID-19の治療選択肢となり得る薬剤の開発と流通を加速させるという本アライアンスの目標に寄与するため、専門知識に基づく助言、技術指導および/または物資による支援を提供します。
- 2020年10月、「CoVIg-19 Plasma Alliance」は、米国国立衛生研究所(NIH)の米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が実施する臨床第3相試験「Inpatient Treatment with Anti-Coronavirus Immunoglobulin(ITAC)」において、患者が登録されたことを公表しました。「ITAC試験」では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により重篤な合併症のリスクのある入院した成人の治療における、抗コロナウイルス高度免疫グロブリン静注製剤(H-Ig)の安全性、忍容性、有効性を評価します。「ITAC試験」は、国際多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験で、NIHのグローバルなInterntaional Network of Strategic Initiatives in Global HIV Trials(INSIGHT)ネットワークを通じて米国やメキシコ、およびその他16カ国の5大陸にわたる最大58施設において成人患者500人を対象に実施される予定です。
- 2021年4月、「CoVIg-19 Plasma Alliance」は、米国国立衛生研究所(NIH)の一部である米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が出資し実施した臨床第3相試験「Inpatient Treatment with Anti-Coronavirus Immunoglobulin(ITAC)」において、評価項目を達成しなかったことを公表しました。臨床試験において安全性の重大な懸念は認められませんでした。本試験は、重篤な合併症のリスクのある成人のCOVID-19入院患者に対して、抗コロナウイルス高度免疫グロブリン静注製剤(H-Ig)を、「レムデシビル」を含む標準治療に追加投与した際の、疾患進行のリスク低減を評価することを目的としていました。現在も解析は継続中であり、NIAIDおよびINSIGHT Networkは試験の全結果を近く発表する予定です。「ITAC試験」の結果を受けて、「CoVIg-19アライアンス」の取り組みは終了しました。
ワクチン
ワクチンでは、イノベーションを活用し、デング熱、新型コロナウイルス感染(COVID-19)、ジカウイルス感染、ノロウイルス感染など、世界で最も困難な感染症に取り組んでいます。当社パイプラインの拡充およびプログラムの開発に対する支援を得るために、政府機関(日本、米国)や主要な世界的機関とのパートナーシップを締結しています。これらのパートナーシップは、当社のプログラムを実行し、それらのポテンシャルを最大限に引き出すための重要な能力を構築するために必要不可欠です。
[COVID-19ワクチンモデルナ筋注 (開発コード:mRNA-1273、日本での開発コード:TAK-919)]
- 2020年10月、当社は、Moderna, Inc.(Moderna社)の新型コロナウイルス感染症ワクチン候補である「mRNA-1273」を、2021年前半より、5,000万回の接種分を輸入し、日本において供給することを公表しました。この日本における供給は、日本国内での「mRNA-1273」の製造販売承認取得後に行われます。この取り組みは、当社、Moderna社、厚生労働省の三者間の契約に基づくものです。当該契約に基づき、当社は日本国内に「mRNA-1273」ワクチン5,000万回の接種分を流通させるために必要な製造販売承認の取得を目指します。Moderna社は、ワクチン最終製品の提供に加え、当社へ臨床開発および製造販売承認申請に関する支援を行います。
- 2021年1月、当社は、「TAK-919」について、国内での臨床第1/2相試験を開始したことを公表しました。本試験は、成人被験者200例を対象に、「TAK-919」の安全性および免疫原性を評価するプラセボ対照試験です。
- 2021年2月、当社は、Moderna社の新型コロナウイルス感染症ワクチン候補である「TAK-919」の日本人を対象とした安全性および免疫原性を評価する国内臨床第1/2相試験において、被験者の組み入れを完了したことを公表しました。
- 2021年3月、当社は、「TAK-919」を輸入し、日本国内へ供給するため厚生労働省に製造販売承認申請を行ったことを公表しました。日本において現在実施中のプラセボ対照臨床第1/2相試験では、日本人の健康成人200例を対象に「TAK-919」を28日間の間隔で2回接種した際の安全性および免疫原性を評価しています。本試験成績は5月に揃う予定であり、その後、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出します。申請資料には、Moderna社が米国において実施中の臨床第3相試験(「COVE試験」)の安全性と有効性の成績も含まれています。
- 2021年5月 、当社は日本における「TAK-919」の安全性および免疫原性を評価する国内臨床第1/2相試験の結果を医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出したことを公表しました。当社はModerna社ならびに厚生労働省の三者間の合意により、「TAK-919」の5,000万回接種分を輸入し供給します。本試験の結果では、28日間の間隔で「TAK-919」0.5 mLを2回接種した被験者の100%に、結合抗体と中和抗体の上昇が本剤の2回目接種28日後に確認できたことが示されました。重大な安全性の懸念は報告されず、忍容性は概ね良好でした。当社は本試験の結果を、2021年3月に提出した新薬承認申請の一部として、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出しました。申請資料には、Moderna社が米国において実施中の臨床第3相試験(COVE試験)の安全性と有効性の結果も含まれています。
- 2021年5月、「COVID-19ワクチンモデルナ筋注(TAK-919)」について、厚生労働省より医薬品医療機器等法第14条の3に基づく特例承認を取得したことを公表しました。本承認は、米国で実施されたModerna社の臨床第3相試験(COVE試験)の結果と同様の免疫反応が得られた、日本で実施した「COVID-19ワクチンモデルナ筋注」の安全性および免疫原性を評価する臨床第1/2相試験の結果に基づいています。当社は、日本国内において「COVID-19ワクチンモデルナ筋注」の供給を開始しました。
[開発コード:NVX-CoV2373(日本での開発コード:TAK-019) 一般名:新型コロナウイルス感染症ワクチン]
- 2020年8月、当社とNovavax, Inc.(Novavax社)は、Novavax社が開発中の新型コロナウイルス感染症ワクチン「NVX-CoV2373」の日本における開発、製造、流通に向けた提携に関して基本合意したことを公表しました。「NVX-CoV2373」は、Novavax社の遺伝子組換えたんぱく質ナノ粒子技術を用いた安定したプレフュージョンたんぱく質であり、Novavax社が特許を有するアジュバント「Matrix-M™」を含有しています。当社とNovavax社の提携により、日本における「NVX-CoV2373」の開発、製造、承認申請が進められます。Novavax社は、当社へワクチンの製造技術の使用許諾および移転を行い、「Matrix-M™」を供給します。当社は、厚生労働省への承認申請ならびに、日本における「NVX-CoV2373」の製造および流通を行います。また、当社は、Novavax社からのワクチン製造技術の移転、生産設備の整備、およびスケールアップの資金として、厚生労働省から助成金を受領します。当社は年間2億5千万回分以上の新型コロナウイルス感染症ワクチンの生産能力を整備することを見込んでいます。
- 2021年2月、当社は、Novavax社の新型コロナウイルス感染症ワクチン候補である「TAK-019」について日本人を対象に「TAK-019」の安全性および免疫原性を評価する国内臨床第1/2相試験を開始し、最初の被験者に治験薬の接種が行われたことを公表しました。当社はNovavax社からのワクチン製造技術の移転により、2億5千万回分以上の「TAK-019」の生産能力を有し、開発、供給を担います。「TAK-019」の国内臨床試験の成績は2021年後半に得られる予定で、試験成績は、製造販売承認申請手続きの一環として、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出される予定です。承認取得後、「TAK-019」は2021年後半の供給開始を目指します。
[開発コード:TAK-003 一般名:デング熱ワクチン]
- 2021年3月、当社は、4歳から60歳の人を対象に、すべてのデングウイルス血清型で引き起こされるデング熱の予防を目的として開発中のデング熱ワクチン「TAK-003」について、欧州医薬品庁(EMA)へ承認申請を行い、受理されたことを公表しました。 「TAK-003」の申請資料には、現在進行中のグローバル臨床第3相試験である「TIDES試験(Tetravalent Immunization against Dengue Efficacy Study)」の36ヵ月間の長期にわたる安全性および有効性データが含まれます。本36ヵ月間データの詳細については、学会や査読誌にて2021年内に発表される予定です。なお、当社は、欧州連合(EU)における承認とEU-M4all (旧称:Article 58)制度を通じてのEU域外の国々における承認を目的とした医薬品に適用されるEMAが実施する初の並行審査に参加しています。EU-M4all制度に参加している国々は、欧州医薬品評価委員会(CHMP)からの科学的見解に加え、独自の審査をしたうえで自国における承認について判断します。当社は、EU-M4all制度に参加していないデング熱流行国においても「TAK-003」の承認を目指します。
- 2021年5月、当社は、「TAK-003」が現在進行中のグローバル臨床第3相試験「TIDES試験(Tetravalent Immunization against Dengue Efficacy Study)」のワクチン接種後3年間にわたる長期評価において、本ワクチンのデング熱感染およびデング熱感染による入院に対して持続的な予防効果(被験者のワクチン接種前のデング熱感染歴の有無を問わない)を示し、懸念されるような安全性リスクも認められなかったことを公表しました。「TIDES試験」には、デング熱流行国であるラテンアメリカやアジア地域において2万人以上の小児・若年層(4歳から16歳)の健常被験者が登録されています。「TIDES試験」の36ヵ月間にわたる追跡調査の安全性および有効性データは、第17回国際渡航医学会(CISTM: Conference of the International Society of Travel Medicine)で発表されました。「TAK-003」の3年間(2回目接種後36ヵ月)にわたる長期評価では、デングウイルスの各血清型(計4種)に対する「TAK-003」のワクチン有効性は、各血清型で異なっていたものの、この結果は、これまで報告してきた結果と一貫性のあるものでした。また、安全性においても全般的に忍容性が良好で、懸念されるような安全性リスクも認められませんでした。病態の増悪のエビデンスは確認されませんでした。「TIDES試験」の36ヵ月間にわたる追跡調査の安全性および有効性データは、欧州連合(EU)およびデング熱流行国における承認申請資料に含まれており、今後、2021年内に承認申請が予定されている米国を含むその他の国々における申請資料にも含まれる予定です。
パイプラインの現状
当社グループの各疾患領域および事業分野における研究開発活動の概要は、以下に示すとおりです。後出する主要な疾患領域および事業分野において開示されている当社グループパイプライン上の化合物は、それぞれ異なる開発段階にあり、現在開発中の化合物の開発中止や新規化合物の臨床ステージ入りにより、パイプラインの内容は今後変わる可能性があります。以下に示す化合物が製品として上市に至るかは、前臨床試験や臨床試験の結果、様々な医薬品の市場動向、規制当局からの販売承認取得の有無など、様々な要因に影響されます。以下の表記載は、米国・欧州・日本・中国に限定していますが、当社グループはその他の地域でも開発活動を行っています。以下、「グローバル」の表記は、米国・欧州・日本・中国を指します。下記の表にあるパイプラインのモダリティは、「低分子」、「ペプチド・オリゴヌクレオチド」、「細胞および遺伝子治療」、「マイクロバイオーム」、「生物学的製剤他」のいずれかに分類しています。
2021年5月11日(決算発表日)における当社グループのオンコロジー(がん)領域のパイプラインは以下のとおりです。なお、決算発表日以降の主な開発の進捗は注釈に記載しています。
(注1)Seagen社との提携
(注2)Exelixis社との提携
(注3)中外製薬との提携、P-Ⅲ試験は同社が実施
(注4)中外製薬との提携、P-Ⅲ試験は当社が実施
(注5)GlaxoSmithKline社との提携
(注6)The University of Texas MD Anderson Cancer Centerとの提携
(注7)Noile-immune Biotech社との提携
(注8)Teva Pharmaceutical Industries社との提携
(注9)Turnstone Biologics社との提携
(注10)Memorial Sloan Kettering Cancer Centerとの提携
(注11)Shattuck Labs社との提携
(注12)2021年5月に承認取得
2021年5月11日(決算発表日)における当社グループの希少遺伝子疾患および血液疾患領域のパイプラインは以下のとおりです。なお、決算発表日以降の主な開発の進捗は注釈に記載しています。
(注1)日本においてはKMバイオロジクス社との相互に独占的な共同販売契約
(注2)GlaxoSmithKline社との提携
(注3)再発・難治性の多発性骨髄腫の試験は試験終了まで継続
(注4)日本におけるP-Ⅰ試験が完了し、P-Ⅲ試験開始の時期を検討中
(注5)2021年5月に米国FDAが申請を受理済み
2021年5月11日(決算発表日)における当社グループのニューロサイエンス(神経精神疾患)領域のパイプラインは以下のとおりです。なお、決算発表日以降の主な開発の進捗は注釈に記載しています。
(注1)Neurocrine社との50/50共同開発・共同販売のオプション契約
(注2)Neurocrine社との50/50共同開発・共同販売契約
(注3)AstraZeneca社との提携、P-Ⅰ試験は同社が実施
2021年5月11日(決算発表日)における当社グループの消化器系疾患領域のパイプラインは以下のとおりです。なお、決算発表日以降の主な開発の進捗は注釈に記載しています。
(注1)UCSDおよびFortis Advisors社との提携
(注2)Theravance Biopharma社との提携
(注3)Arrowhead Pharmaceuticals社との提携
(注4)Cour Pharmaceuticals社から開発および製品化の権利を獲得。旧名TIMP-GLIA
(注5)Enterome Biosciences社との提携
(注6)Samsung Bioepis社との提携
(注7)TAK-062を含むPvP Biologics社の買収。それ以前は、旧名Kuma062
(注8)NuBiyota社との提携
(注9)クロストリジウム・ディフィシル感染症でのP-I試験完了。戦略上、本プログラムは肝性脳症で開発予定
(注10)米国FDAから受領した皮下投与製剤に対するComplete Response Letter(審査完了通知)は、臨床での安全性・有効性データに関連するものではなく、皮下投与製剤のデバイスのデザインやラベルに関する内容。当社の最新データのレビューおよび皮下投与製剤の承認を得るために求められる追加データについてガイダンスを求めるために、2020年8月にFDAと面談を実施。面談においてデバイスに対して求められるデータを明確化して、その対応を進めている。デバイスの検討を継続するには時間を要するため、FDAより承認取得後、2022年には米国において中等から重症の潰瘍性大腸炎を対象に上市可能性を見込む。
2021年5月11日(決算発表日)における当社グループの血漿分画製剤のパイプラインは以下のとおりです。なお、決算発表日以降の主な開発の進捗は注釈に記載しています。
(注1)Halozyme社との提携
2021年5月11日(決算発表日)における当社グループのワクチンのパイプラインは以下のとおりです。なお、決算発表日以降の主な開発の進捗は注釈に記載しています。
(注1)Moderna社のCOVID-19ワクチン候補を日本に導入するためのModerna社、厚生労働省との提携
(注2)厚生労働省、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の助成を受け、Novavax社のCOVID-19ワクチン候補を日本に導入するためのNovavax社との提携
(注3)米国政府Biomedical Advanced Research and Development Authority (BARDA) との提携
(注4)欧州での申請に加え、欧州連合(EU)圏外の国を対象としたEU-M4all(旧称:Article58)制度により、EU-M4all制度に参加していない中南米やアジアのデング熱流行国においても申請を開始
(注5)2021年5月に承認取得
ライセンスおよび共同研究開発契約
当社は通常の事業において、製品開発および商業化のために第三者とライセンス契約や業務提携を行うことがあります。当社の事業は、こうした個々の契約に大きく依存するものではありませんが、これらの契約は全体として、社内外のリソースを組み合わせて活用することで新製品の開発や上市を可能にするという当社の戦略の一部を構成しています。これまで製品上市に寄与してきた契約の一部に関する概要は以下の通りであります。
- アドセトリス:2009年、当社はSeagen Inc.(旧シアトルジェネティクス社)(以下、「シアジェン社」)と、「アドセトリス」のグローバル共同開発および世界各国(同社が本剤を販売している米国、カナダを除く)における販売の提携契約を締結しました。本提携関係に基づき、当社による開発および販売の進捗に関してマイルストン支払が発生する可能性があります。また、契約対象地域における「アドセトリス」の正味売上高に基づき10%台半ばから20%台半ばの割合で段階的なロイヤルティを支払います。当社とシアジェン社は、本提携関係のもとで実施される選択された開発活動の費用を均等に共同で負担します。本提携関係は、いずれか一方の当事者による正当な事由または両者の合意をもって解除することができます。当社は本提携関係を自由に解除でき、シアジェン社は一定の状況において本提携関係を解除できます。両社により提携解除がなされなかった場合、本契約は全ての支払い義務の満了をもって自動的に終了します。2021年3月31日現在、当社の「アドセトリス」提携契約に基づく販売マイルストンの残存支払見込額はありません。
- トリンテリックス:2007年、当社はH. Lundbeck A/S(以下、「ルンドベック社」)とライセンス、開発、供給および販売契約を締結し、同社の保有する気分障害・不安障害治療薬パイプライン上の複数の化合物について米国および日本における独占的な共同開発および共同販売権を取得しました。本契約に基づき、当社とルンドベック社は、米国および日本で「トリンテリックス」を販売しており、また、開発資金の大部分を当社が負担することとし、関連化合物の共同開発に合意しました。「トリンテリックス」による収益は当社が計上し、当社はルンドベック社に対し正味売上高の一部に加え、当社による本剤の売上に基づき10%台前半から半ばの割合で段階的なロイヤルティを支払います。また、本提携関係に基づき、当社はルンドベック社に対し、開発および販売の進捗に関して一定の開発および販売マイルストンを支払うことに合意しております。本契約は無期限に存続しますが、両者の合意または正当な事由をもって解除されます。2021年3月31日現在、当社の「トリンテリックス」提携契約に基づく販売マイルストンの残存支払見込額はありません。
- アミティーザ:2004年10月、当社はSucampo Pharmaceuticals(後にMallinckrodtが買収、以下、「マリンクロット社」)と消化器系の適応症での「アミティーザ」の米国およびカナダにおける購買、開発および販売の契約を締結しました。本契約は2020年12月31日まで有効であり、当社により解除されるまで自動的に更新されます。本契約に基づき、当社はマリンクロット社から「アミティーザ」を合意された価格で購入し、北米における売上高に基づき10%台の毎年見直される割合で段階的なロイヤルティを支払います。2021年1月1日以降は、当社とマリンクロット社で「アミティーザ」ブランドの販売による年間正味売上高を均等に分配しています。当社とマリンクロット社は、一部を除いて、規制当局の指示による治験を含む開発費用を当社が負担し、該当費用が合意された上限額を超えた場合は超過分を均等に負担することに合意しております。同社とは、日本および中国を除く、他の国と地域についても類似の契約を締結しています。当社は、本契約の期間において、売上目標達成を条件とした追加のコマーシャルマイルストンの支払いと、年間販売活動に対する最低額の出費に合意しました。これらの支払いは、本剤の後発品発売により減額される可能性があります。2021年3月31日現在、当社の「アミティーザ」提携契約に基づく販売マイルストンの残存支払見込額はありません。
将来に向けた研究プラットフォームの構築/研究開発における提携の強化
- 2020年6月、当社とNeurocrine Biosciences, Inc.(Neurocrine Biosciences社)は、当社の早期から中期開発段階の精神疾患領域パイプラインに関する開発および製品化に関する戦略的提携契約を締結したことを公表しました。当社は、本契約に基づき、統合失調症、治療抵抗性うつ病、無快楽症に関し臨床試験段階にある3つのパイプラインを含む7つのパイプラインプログラムについて、Neurocrine Biosciences社に対し独占的権利を付与します。
- 2020年6月、当社とCarmine Therapeutics(Carmine社)は赤血球細胞外小胞に基づくCarmine社のREGENT(TM)テクノロジーを使用し、希少疾患領域における2つの標的に対する変革的な非ウイルス性遺伝子治療の創薬、開発、および商業化に関する共同研究契約を締結しました。
- 2020年8月、「COVID R&D Alliance」のメンバーである、当社、AbbVie Inc.およびAmgen Inc.(Amgen社)は「I-SPY COVID (Investigation of Serial Studies to Predict Your COVID Therapeutic Response with Biomarker Integration and Adaptive Learning) 臨床試験」(I-SPY COVID試験)に第1例目の患者を登録したことを公表しました。「I-SPY COVID試験」は、高流量酸素療法を必要とするCOVID-19の重症入院患者を対象に、CCケモカイン受容体2および5(CCR2/CCR5)拮抗薬の「cenicriviroc」、PDE4阻害薬の「オテズラ(アプレミラスト)」、およびブラジキニンB2受容体拮抗薬の「フィラジル(イカチバント皮下注)」の有効性の評価を行う試験です。「I-SPY COVID試験」は、治療薬候補の評価に要する被験者数と期間を最小限に留めることにより試験効率性を向上する目的で設計された、「Quantum Leap Healthcare Collaborative(QLHC)」のアダプティブ・プラットフォーム臨床試験デザインを活用します。なお、2021年4月、「I-SPY COVID試験」において「フィラジル(イカチバント皮下注)」群は、事前に決定していた無効基準に達したため、投与を終了しました。
- 2020年9月、当社は細胞医薬品の製造能力を拡張するため、米国マサチューセッツ州ボストンの研究開発拠点内に研究開発用の細胞医薬品製造施設(24,000平方フィート)を新設したことを公表しました。新施設ではエンド・ツー・エンドの研究開発を行い、当初はがん領域に重点を置き、他の疾患領域への拡大の可能性を探りながら、当社の次世代細胞療法の開発に向けた取り組みをさらに加速します。
- 2020年10月、当社とArrowhead Pharmaceuticals Inc.(Arrowhead社)は、α-1アンチトリプシン欠乏症による肝疾患(AATLD)を対象とし、現在臨床第2相試験の段階にあるRNA干渉(RNAi)治療候補薬「ARO-AAT/TAK-999」の開発に向けた提携およびライセンス契約を締結したことを公表しました。「ARO-AAT/TAK-999」は、「AATLD」の進行を引き起こす変異型α-1アンチトリプシン蛋白の産生を低減する目的で設計されたファーストインクラスの治療薬となる可能性があります。本契約に基づき、当社とArrowhead社は、「ARO-AAT/TAK-999」を共同で開発するとともに、本剤が承認された場合、米国においては両社が利益を50:50で折半する形で共同販売を行います。当社は、米国外の全世界における販売戦略を主導するとともに「ARO-AAT/TAK-999」の独占販売権を取得します。
- 2020年12月、当社とペプチドリーム株式会社は、神経筋疾患領域における複数のペプチド-薬物複合体(Peptide Drug Conjugate、以下、「PDC」)創製に関する包括的な共同研究および独占的ライセンス契約を締結したことを公表しました。神経筋疾患領域においては、疾患に対する理解が進んでいる一方、治療にあたっては全身に広く存在する標的組織に治療薬を届けることが必要であり、医薬品開発の大きな課題となっています。今回の契約では、ペプチドリーム株式会社とJCRファーマ株式会社が開発したトランスフェリン受容体結合ペプチドと当社が選択した医薬品候補化合物によるPDC医薬品を創製することでこれらの課題に取り組み、神経筋疾患の治療薬において組織内分布プロファイルを向上させることを目標としています。
- 2020年12月、「COVID R&D Alliance」のメンバーである、当社、Amgen社、およびUCB, Inc.(UCB社)は、「COMMUNITY(COVID-19 Multiple Agents and Modulators Unified Industry Members)試験」に最初の患者を登録したことを公表しました。「COMMUNITY試験」は、新型コロナウイルス感染症の入院患者を対象とした複数の治療薬候補の検討が可能な、無作為化二重盲検プラセボ対照アダプティブ・プラットフォーム試験です。コントロール不良の血管および免疫炎症反応は、新型コロナウイルス感染症の重症患者にみられる顕著な症状であることが確認されています。このような患者では、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や脳卒中、死亡のリスクが高まるおそれがあります。「COMMUNITY試験」に追加される最初の治療薬は、免疫反応またはそれによって生じる炎症を抑制またはコントロールする可能性に基づいて選択されました。これら治療薬には次のものが含まれます。:Amgen社の「オテズラ」(一般名:apremilast):免疫反応による炎症を抑制する可能性があります。;当社の「lanadelumab」:開発中の静脈内注射製剤で、カリクレイン-キニン系の調整によりブラジキニン産生を抑制することにより、炎症を軽減する可能性があります。;UCB社の「zilucoplan」:開発中の薬剤で、ARDSの原因となる免疫系の過剰活性化を抑制する可能性があります。なお、2021年5月、COMMUNITY試験における「lanadelumab」の静脈注射製剤群において、静脈投与に伴う投与上の課題に伴い、一貫性のあるデータを収集することが困難となり、新規の患者組入れを停止しました。本試験において「lanadelumab」投与に関連する安全性の懸念は示されませんでした。本試験への新規患者登録は終了し、既投与患者の観察はプロトコールに従い継続されます。投与上の課題は静脈投与に特有のものであり、 「lanadelumab」の皮下投与製剤に関連するものではありません。
- 2021年3月、当社は、非上場のバイオテクノロジー企業であるMaverick Therapeutics Inc.(Maverick社)を買収するオプション権を行使したことを公表しました。Maverick社は、一定の条件下で活性化される二重特異性T細胞誘導療法を開発しています。本契約に基づき、当社は、Maverick社のT細胞誘導抗体の基盤技術であるCOBRA™と、 Maverick社の主力開発候補薬である「TAK-186」(MVC-101)および「TAK-280」 (MVC-280)などの広範なポートフォリオを取得します。「TAK-186」(MVC-101)は、現在、上皮増殖因子受容体(EGFR)が発現している固形がん患者を対象とした臨床第1/2相試験を実施中であり、「TAK-280」(MVC-280)はB7-H3タンパク質が発現している固形がん患者の治療薬として、2021年度後半に臨床試験を開始する予定です。本買収の完了後、Maverick社の有能な研究者チームを含む従業員は当社グループの研究開発組織に加わります。
当社の上記以外の研究開発ライセンスおよび提携のパイプラインは下表のとおりですが、これらに限定されません。
知的財産
特許や登録商標を用いて可能な限り自社の製品や技術を守ることは、当社グループの事業戦略において重要な部分を占めています。当社グループが市場競争力を維持し高めるためには、営業秘密、当社独自のノウハウ、技術的イノベーションおよび第三者との契約が欠かせません。当社がビジネス上の成功を収めることが出来るかどうかは、強固な特許を取得し行使する能力や、営業秘密を保護し続ける能力、第三者の知的財産権を侵害することなく事業を行う能力、付与されたライセンスの条件を遵守する能力に依存する場合があります。新薬の開発は長期間にわたり、研究開発は多くの費用を必要とします。また、新化合物のうち上市されるものはごくわずかであることから、知的財産の保護は新薬の研究開発への投資の回収において重要な役割を担っています。
当社グループは米国、日本、欧州の主要国において可能な限り当社独自の技術の特許保護を求めていきます。その他の国々についても、可能な国々において、選別したうえで特許保護を求めていきます。いずれの場合にも特許保護自体を取得するか、ライセンサーを通じて特許出願をサポートするよう努めています。特許は、当社グループが使用する技術を保護するための主要な手段です。特許は、医薬品に関する発明の他者による使用を排除する権利を保持者に付与します。当社グループの医薬品を保護するために、有効成分をカバーする物質特許、薬の用途、製造方法、製剤に関する特許等、様々な種類の特許を使用しています。当社グループの低分子化合物は、主に物質特許によって保護されています。通常は物質特許の存続期間終了をもって当該医薬品の市場独占権は失われますが、その後も当該物質の用途、用法、製造方法、新規組成または剤型に関する特許等の非物質特許によって、商業利益が保護されることがあります。物質特許が満了した場合でも、各国の関連法規制によるデータ保護制度により対象製品が保護されることもあります。当社グループのバイオ製品は1件以上の物質特許によって保護されることがありますが、製品によっては物質特許以外の特許または規制当局によるデータ保護、またはその両方が適用されることもあります。しかし、競合会社によって、同じ疾患に対する類似製品および(または)バイオシミラーが当社グループの特許を侵害することなく開発され、販売されることがあることから、バイオ製品にとって特許による保護の重要性は伝統的な医薬品に比べて低い場合があります。
米国では、原則として出願から20年で特許は満了しますが、米国特許商標庁の審査遅延による特許の発行遅延があ った場合は特許期間の調整が行われる可能性があります。また、製品、製品を使用した治療法、製品の製造方法に関する米国の医薬特許は、米国食品医薬品局(FDA)による製品の承認審査期間に応じて特許期間延長の対象となる場合があります。このような場合の存続期間の延長は5年を上限としており、製品の承認取得から14年を超える延長は認められません。FDAの遅延に基づく期間延長が認められるのは、1製品につき1件の特許のみです。FDAは、新規化合物または「オーファンドラッグ」に対しては、特許独占権に加えて、データあるいは市場の独占権を追加付与することがあり、これらは既にある特許保護期間と並行して存続します。データ保護規制またはデータ独占権は、ジェネリック医薬品を発売し得る競合他社が、先発品の安全性および有効性を確立する際にスポンサーが作成した臨床試験データを新規化合物については5年間、「オーファンドラッグ」(希少疾病用医薬品)については7年間使用できないようにするものです。市場独占権は、同一薬剤を同効(同じ適応症)に 対して販売することを禁止するものです。
日本では、有効成分については、特許庁が特許を付与します。用量や投与方法など、治療法は日本では特許の対象となりませんが、特定の投与方法・用量にて使用する医薬組成物や、医薬組成物の製造方法については、特許の対象となります。日本では原則として出願より20年で特許は満了します。医薬特許は、承認までの審査に要した時間により、5年を限度として延長されることがあります。また、日本ではデータ保護制度として「再審査期間」を設けており、その期間は新有効成分含有医薬品については8年、新効能・新医療用配合剤については4年から6年、オーファンドラッグについては10年となっています。
欧州連合(EU)では、欧州特許庁(EPO)または欧州各国で特許を申請することができます。EPOの制度では、EU全体およびスイス、トルコ等のいくつかのEU非加盟国での特許を一括申請することができます。EPOが特許を付与すれば、特許権者が指定する国々において特許が有効となります。EPOまたは欧州諸国のいずれかが認める特許の存続期間は、延長や調整があり得ますが、原則として出願から20年です。医薬品の特許は、補充的保護証明書(SPC)制度のもと、さらに追加の独占期間を付与されます。SPCは、特許権者が欧州医薬品庁または各国の規制当局から販売承認を受けるのに要した時間を補償する制度です。SPCにより、特許期間とあわせて、欧州で最初の販売承認を取得した日から最長15年の独占権を与えられます。ただし、SPCの最長期間は5年です。認可された小児臨床試験計画(PIP)によるデータが提出された製品であれば、6ヶ月の小児用医薬品に係るSPCの追加延長が認められます。SPC制度を含め、承認後の特許は、各国の法制度により運用されています。特許およびSPCに関する規制はそれぞれ欧州特許庁およびEUのレベルで作られましたが、国ごとの運用の違いにより、例えば、EU各国の国内裁判所で無効申立てされた場合など、必ずしも同じ結果にはつながりません。また、EUは承認されたヒト用医薬品につき、特許保護と並行してデータ独占権を与えています。現在承認されている医薬品に関する制度は、通常「8+2+1」と呼ばれています。これは、まず初めに競合他社が関連データに依拠することができないデータ保護期間が8年間、続いて競合他社が販売承認申請のために当該データを使用できるものの、競合品を上市することができない市場独占期間が2年間、さらに、スポンサーが最初のデータ保護期間8年間の間に、他の治療薬が存在しない適応症か「既存治療薬に比べて有意な臨床的有効性」が認められる新たな適応症を追加した場合、追加で1年間の市場独占権を認めるものです。これは各国での承認にもEUの中央審査による承認にも当てはまります。また、EUには米国に類似したオーファンドラッグの独占制度があります。医薬品がオーファンドラッグとして指定された場合、10年間の市場独占権が与えられ、この間当該医薬品と同じ適応症を持つ同様の医薬品には販売承認が付与されません。特定の条件下では、小児臨床試験計画の完了によるさらに2年間の小児用医薬品に係る延長が認められます。
当社グループ製品の関連特許満了後の後発品の市場参入や、競合他社によるOTC医薬品の発売等、当社グループは世界中で知的財産に関わる課題に直面しています。当社グループのグローバルジェネラルカウンセルは、知的財産権および法務の業務について監督責任を負っています。当社グループの知的財産部は、下記3つの優先事項に注力することにより、当社グループの全社的な戦略をサポートしています。
・疾患領域別ユニットの戦略に沿った自社製品および研究開発パイプラインの価値の最大化および関連する権利の保護
・パートナーとの提携サポートによる外部イノベーションのよりダイナミックな活用の促進
・新興国市場を含む世界各国での知的財産権取得および保護
当社グループの知的財産権が侵害されることは、それらの権利から得ることが期待される収益が失われるリスクとなるため、当社グループは特許やその他の知的財産を管理するための内部プロセスを整備しています。このプログラムでは、第三者からの侵害に継続的に警戒するとともに、当社グループの自社製品および活動が第三者の知的財産を侵害しないよう、研究開発段階から注意を払っています。
通常の事業活動において、当社グループの特許は第三者から異議の申し立てを受ける可能性があります。当社グループは、当事者として知的財産権に関する訴訟等に関与しております。継続中の重要な訴訟の詳細については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 連結財務諸表注記 32 コミットメントおよび偶発負債」をご参照ください。
下表では、記載された製品について、対象地域ごとに、存続している物質特許およびデータ保護期間(以下、「RDP」)(米国およびEU)もしくは再審査期間(以下、「RP」)(日本)ならびに満了日を記載しております。RDPとRPについてはそれらの制度的な独占期間が特許満了日後にも与えられる場合にのみ記載しています。特許期間の延長(PTE)、補充的保護証明書(SPC)、小児用医薬品に係る独占期間(PEP)は当局により認められたものについては満了日に反映され、申請手続中で認められていないものについては、延長された満了日を別途記載しています。
当社グループのバイオ医薬品は、下記の特許満了期間に関わらず、同じ適応症に対する類似製品またはバイオシミラーを製造する他社との競争に直面するか、今後直面する可能性があります。また、欧州の特許の一部は、SPCにより、いくつかの国で下表に記載の満了期限を超えて対象製品に追加的な保護が付与されます。
(注1) 表中の「—」は物質特許の満了または該当なしを表します。
(注2) 日本では、後発品の承認申請は、先発品の再審査期間終了後に行われ、規制当局による審査の後、承認、薬価収載されます。したがって、後発品は再審査期間の満了後から一定の期間を経て市場に参入します。
(注3) 本製品は、第三者への導出契約を締結しているため、全ての地域で当社グループが販売を行っているわけではありません。
(注4) 本製品は、特定の地域限定で第三者からの導入契約を締結しているため、全ての地域で当社グループが販売を行っているわけではありません。詳細については「ライセンスおよび共同研究開発契約」をご参照ください。
(注5) ANDA申請者との合意により、2023年3月以降に後発品が発売される可能性があります。
(注6) ANDA申請者との合意により、2021年1月以降(または一定の状況下でより早期)に後発品が発売される可能性があります。
(注7) これらの医薬品は血漿分画製剤です。
(注8) 当社は2032年に満了するENTYVIOに関連した特許を保有し、バイオシミラーの正確な参入時期について現時点では不確実性があります。