当中間連結会計期間(以下、「当期」)において、新たな事業等のリスクの発生、または、前年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」について重要な変更はありません。
(1) 業績の概要
当期の連結業績は、以下のとおりとなりました。
本項において、国際会計基準(IFRS)に準拠した実勢レート(Actual Exchange Rate)ベースの増減額および増減率は「AER」の表記で示し、国際会計基準(IFRS)に準拠しない恒常為替レート(Constant Exchange Rate)ベースの増減率は「CER」の表記で示しています。「CERベースの増減」の追加的な情報については、「当期(2025年4-9月期)におけるCore業績の概要」の「Core財務指標とCERベースの増減の定義および説明」をご参照ください。
〔売上収益〕
売上収益は、2兆2,195億円(△1,645億円および△6.9% AER、△3.9% CER)となりました。この減収は、主に当社の6つの主要なビジネスエリアの一つであるニューロサイエンス(神経精神疾患)における減収、および為替相場が円高に推移したことによるものです。ニューロサイエンスにおける減収は、主に米国における注意欠陥/多動性障害(ADHD)治療剤VYVANSEの後発品の市場浸透による減収影響を引き続き受けたことによるものです。為替影響を除いた場合、当社の主要なビジネスエリアである消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー(がん)における売上収益はやや増収となった一方、ワクチンの売上収益は減収となりました。一部の製品は米国におけるメディケア・パートDの再設計および340Bプログラムの拡大による影響を受けたものの、米国以外の地域におけるその他の製品の安定した需要により、この影響は相殺されました。当社の6つの主要なビジネスエリア以外の売上収益は、1,031億円(△237億円および△18.7% AER、△17.5% CER)となりました。
地域別売上収益
各地域の売上収益は以下のとおりです。
(注) その他の地域は中東、オセアニアおよびアフリカを含みます。
ビジネスエリア別売上収益
各ビジネスエリアの売上収益は以下のとおりです。
各ビジネスエリアにおける売上収益の前年同期からの増減は、主に以下の製品によるものです。
・消化器系疾患
消化器系疾患の売上収益は、6,928億円(△24億円および△0.3% AER、+3.2% CER)となりました。
慢性特発性便秘症治療剤RESOLOR/MOTEGRITYの売上は、36億円(△76億円および△67.7% AER、△66.2% CER)となりました。この減収は、主に米国において2025年1月から複数の後発品が参入したことによるものです。
逆流性食道炎治療剤DEXILANTの売上は、164億円(△35億円および△17.4% AER、△12.4% CER)となりました。この減収は、主にカナダにおいて複数の後発品が参入したことに加え、円高による減収影響によるものです。
短腸症候群治療剤GATTEX/レベスティブの売上は、716億円(△16億円および△2.2% AER、+2.0% CER)となりました。この減収は、主に円高による減収影響によるものですが、米国における需要増加および処方拡大(小児適応拡大)による増収影響により一部相殺されました。
潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤ENTYVIO(国内製品名:エンタイビオ)の売上は、4,792億円(+60億円および+1.3% AER、+5.1% CER)となりました。米国における売上は、3,189億円(△76億円および△2.3% AER)となりました。この減収は、円高による減収影響、および競争環境の激化によるものですが、皮下注射製剤の売上が伸長したことで、減収影響を一部相殺しました。欧州およびカナダにおける売上は、1,202億円(+78億円および+6.9% AER)となりました。この増収は、主に皮下注射製剤の継続的な使用拡大に伴い患者が増加したことによるものです。
酸関連疾患治療剤タケキャブ/VOCINTIの売上は、689億円(+46億円および+7.2% AER、+8.6% CER)となりました。この増収は、主に日本および中国における堅調な需要によるものです。
・希少疾患
希少疾患の売上収益は、3,805億円(△82億円および△2.1% AER、+0.7% CER)となりました。
血友病A治療剤アディノベイト/ADYNOVIの売上は288億円(△57億円および△16.5% AER、△14.2% CER)となりました。この減収は、主に米国における競争の激化に加え、円高による減収影響によるものです。
血友病A治療剤アドベイトの売上は536億円(△52億円および△8.8% AER、△6.2% CER)となりました。この減収は、主に米国における競争の激化に加え、円高による減収影響によるものです。
ハンター症候群治療剤エラプレースの売上は、491億円(△41億円および△7.6% AER、△5.1% CER)となりました。この減収は、主に成長新興国における売上が減少したことに加え、円高による減収影響によるものです。
ファブリー病治療剤リプレガルの売上は、387億円(△26億円および△6.3% AER、△5.4% CER)となりました。この減収は、主に競争の激化により欧州における売上が減少したことによるものです。
移植後のサイトメガロウイルス(CMV)感染/感染症治療剤リブテンシティの売上は、221億円(+66億円および+42.6% AER、+47.7% CER)となりました。この増収は、主に米国において市場浸透が継続して好調に進んだことに加え、欧州および成長新興国において引き続き販売エリアが拡大したことによるものです。
遺伝性血管性浮腫治療剤タクザイロの売上は、1,133億円(+23億円および+2.0% AER、+5.9% CER)となりました。この増収は、主に成長新興国、米国および欧州における高い治療継続率および予防市場の成長により需要が増加したことによるものですが、円高による減収影響により一部相殺されました。
・血漿分画製剤
血漿分画製剤の売上収益は、5,174億円(△182億円および△3.4% AER、+0.4% CER)となりました。
血友病Aおよび血友病B治療剤ファイバの売上は、174億円(△62億円および△26.3% AER、△24.1% CER)となりました。この減収は、成長新興国および欧州において売上が減少したことによるものです。
主に血液量減少症と低アルブミン血症の治療に用いられるHUMAN ALBUMINとFLEXBUMINを含むアルブミン製剤の売上合計は、661億円(△42億円および△6.0% AER、△2.4% CER)となりました。この減収は、主に成長新興国における売上が減少したことに加え、円高による減収影響によるものです。
免疫グロブリン製剤の売上合計は、3,871億円(△40億円および△1.0% AER、+3.1% CER)となりました。為替影響を除いたCERベースでは、皮下注射製剤のキュービトルとハイキュービアの売上が伸長したことにより、増収となりました。原発性免疫不全症(PID)と多巣性運動ニューロパチー(MMN)の治療に用いられる静脈注射製剤GAMMAGARD LIQUID/KIOVIGの売上は、主に円高による影響を受け、減収となりました。GAMMAGARD LIQUIDについては、米国におけるメディケア・パートDの再設計および340Bプログラムの拡大による影響を受けました。
血友病A治療剤HEMOFIL、血友病A治療剤IMMUNATE、および血友病B治療剤IMMUNINEの売上合計は、126億円(△19億円および△13.3% AER、 △11.9% CER)となりました。この減収は、主に欧州における売上が減少したことによるものです。
・オンコロジー
オンコロジーの売上収益は、2,878億円(+28億円および+1.0% AER、+3.4% CER)となりました。
悪性リンパ腫治療剤アドセトリスの売上は、745億円(+63億円および+9.2% AER、+11.5% CER)となりました。この増収は、成長新興国における堅調な需要によるものです。
大腸がん治療剤FRUZAQLA(国内製品名:フリュザクラ)の売上は、273億円(+42億円および+18.2% AER、+22.2% CER)となりました。この増収は、主に本剤が転移性大腸がんにおける新たな治療選択肢として、欧州、カナダおよび日本において上市後、着実に市場浸透したことによるものです。この増収は、米国における売上がメディケア・パートDの再設計による影響を受けて減少したことで一部相殺されました。
多発性骨髄腫治療剤ニンラーロの売上は、414億円(△60億円および△12.6% AER、△9.6% CER)となりました。この減収は、主に米国における競争の激化と需要の減少によるものです。この減収は、成長新興国における売上が増加したことにより一部相殺されました。
子宮内膜症・子宮筋腫・閉経前乳がん・前立腺がん等の治療に用いられるリュープリン/ENANTONEの売上は、586億円(△18億円および△3.0% AER、△1.9% CER)となりました。この減収は、主に米国、欧州およびカナダにおける売上が減少したことによるものです。
・ワクチン
ワクチンの売上収益は、317億円(△65億円および△16.9% AER、△16.8% CER)となりました。
デング熱ワクチンQDENGAの売上は、211億円(+12億円および+6.0% AER、+6.2% CER)となりました。この増収は、成長新興国における高い需要により上市以降、売上が増加したことによるものです。
その他のワクチンの売上合計は、減収となりました。この減収は、主に日本における新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンの供給量が減少したことによるものです。
・ニューロサイエンス
ニューロサイエンスの売上収益は、2,061億円(△1,084億円および△34.5% AER、△32.1% CER)となりました。
ADHD治療剤VYVANSE/ELVANSE(国内製品名:ビバンセ)の売上は、1,066億円(△966億円および△47.6% AER、△ 45.6% CER)となりました。この減収は、主に米国において後発品の市場浸透が引き続き進んだことによるものです。
大うつ病(MDD)治療剤トリンテリックスの売上は、570億円(△72億円および△11.2% AER、△7.0% CER)となりました。この減収は、主に米国におけるメディケア・パートDの再設計による影響、および主要な顧客一社における流通モデルの変更によるものです。
ADHD治療剤ADDERALL XRの売上は、106億円(△62億円および△37.0% AER、△32.9% CER)となりました。この減収は、米国において後発品が市場浸透したことによるものです。
〔売上原価〕
売上原価は、7,647億円(△165億円および△2.1% AER、+0.9% CER)となりました。主に売上収益の減少および円高による為替影響により減少しましたが、特に米国においてVYVANSEの後発品の市場浸透が引き続き進んだことに伴って製品構成が変化したことによるコストの増加があり、大部分が相殺されました。
〔販売費及び一般管理費〕
販売費及び一般管理費は、5,094億円(△289億円および△5.4% AER、△2.0% CER)となりました。この減少は、主に円高による為替影響、および全社的な効率化プログラムのコスト節減効果として人件費をはじめとした費用が削減されたことによるものです。
〔研究開発費〕
研究開発費は、3,054億円(△387億円および△11.2% AER、△7.5% CER)となりました。この減少は、主に特定の開発プログラムの終了による費用の削減、円高による為替影響、および全社的な効率化プログラムの節減効果によるものです。この減少は、後期開発パイプラインに対する投資の増加により一部相殺されております。
〔製品に係る無形資産償却費及び減損損失〕
製品に係る無形資産償却費及び減損損失は、3,368億円(+315億円および+10.3% AER、+13.5% CER)となりました。無形資産償却費は、主に円高による為替影響および償却対象の無形資産の減少により減少(△167億円)しました。無形資産減損損失は、当期の計上額が前年同期を上回り増加(+483億円)しました。当期の計上額は、主にガンマ・デルタT細胞療法プラットフォームおよび関連するオンコロジーのプログラムに係る582億円の減損損失、およびその他の仕掛研究開発品に係る減損損失を含み、いずれも関連する研究開発活動の中止決定を受けて計上されたものです。前年同期の計上額は、臨床第3相試験において主要評価項目を達成できなかったことにより計上したソチクレスタット(TAK-935)に係る215億円の減損損失を含みます。
〔その他の営業収益〕
その他の営業収益は、235億円(+96億円および+68.8% AER、+68.6% CER)となりました。この増加は、主に事業譲渡益の増加によるものです。当期においては、主に欧州、中東および北アフリカ地域において当社非中核資産の製品やMEPACTに係る事業の譲渡完了に伴い、譲渡益を179億円計上しました。前年同期には、TACHOSILの製造事業の譲渡が完了したことに伴い、譲渡益を61億円計上しております。
〔その他の営業費用〕
その他の営業費用は、731億円(△54億円および△6.9% AER、△4.9% CER)となりました。この減少は、主に全社的な効率化プログラムに係る費用を含む事業構造再編費用が前年同期から342億円減少、および固定資産に係る減損損失が減少したものの、費用計上した承認前在庫が増加し大部分が相殺されたことによるものです。
〔営業利益〕
営業利益は、上記の要因を反映し、2,536億円(△970億円および△27.7% AER、△26.0% CER)となりました。
〔金融損益〕
金融収益と金融費用をあわせた金融損益は721億円の損失(△212億円および△22.7% AER、△21.6% CER)となりました。この減少は、主に前年同期において、武田テバファーマ株式会社の株式を売却目的で保有する資産に分類したことにより183億円の減損損失を計上したことによるものです。
〔持分法による投資損益〕
持分法による投資損益は、26億円の損失(+14億円および+109.7% AER、+85.3% CER)となりました。
〔税引前中間利益〕
税引前中間利益は、上記の要因を反映し、1,788億円(△772億円および△30.1% AER、△28.1% CER)となりました。
〔法人所得税費用〕
法人所得税費用は、663億円(△23億円および△3.4% AER、△6.9% CER)となりました。当期において、主に繰延税金資産の回収可能性の見直しに関して認識した税金費用の減少がありましたが、税額控除が減少したことにより一部が相殺されました。
〔中間利益〕
上記の要因を反映し、中間利益は、1,125億円(△749億円および△39.9% AER、△35.8% CER)、中間利益(親会社の所有者帰属分)は、1,124億円(△749億円および△40.0% AER、△35.9% CER)となりました。
当期(2025年4-9月期)におけるCore業績の概要
Core財務指標とCERベースの増減の定義および説明
Core財務指標
当社グループのCore売上収益、Core営業利益、Core当期利益(親会社の所有者帰属分)、Core EPSをはじめとするCore財務指標は、売却に伴う収益、製品(仕掛研究開発品を含む)に係る無形資産償却費及び減損損失、その他、非定常的な事象に基づく影響、企業結合会計影響や買収関連費用など、当社グループの中核事業の本質的な業績に関連しない事象による影響を控除しています。Core売上収益は、財務ベースの売上収益から、当社グループの中核事業の本質的な業績に関連しない売上収益に係る影響(主に、事業売却および清算に係る売上収益および関連する調整)を控除して算出します。Core営業利益は、財務ベースの営業利益から、その他の営業収益及びその他の営業費用、製品(仕掛研究開発品を含む)に係る無形資産償却費及び減損損失、その他、非資金項目または当社グループの中核事業の本質的な業績に関連しない事象による影響を控除して算出します。Core当期利益(親会社の所有者帰属分)は、財務ベースの当期利益(親会社の所有者帰属分)から、Core営業利益の算出において控除された項目、および特別、非定常的な事象に基づく影響、または当社グループの中核事業の本質的な業績に関連しない事象による影響を控除し、これらの調整項目に係る税金影響を控除して算出します。これらの調整項目には、条件付対価に係る公正価値変動(時間的価値の変動を含む)影響などが含まれます。Core EPSは、Core当期利益(親会社の所有者帰属分)を報告期間の自己株式控除後の平均発行済株式総数で除して算出します。
当社グループがCore財務指標を表示する理由は、これらの指標が、当社グループの中核事業の本質的な業績に関連しない事象による影響を控除するものであり、当社グループ事業の本質的な業績を理解していただくにあたり有用であると考えているためです。控除される項目には、(i) 前年度から著しく変動する項目、もしくは毎年度発生するものではない項目、または(ii)当社グループの中核事業の本質的な業績の変動とはほぼ相関関係がないと認められる項目が含まれます。同様の指標は、同業他社においても頻繁に使用されていると認識しており、本指標を表示することは、投資家が当社グループの業績を過年度の業績と比較される際だけではなく、同業他社と類似の基準に基づき比較される際にも有用になると考えています。また、当社グループがCore財務指標を表示する理由は、これらの指標が予算の策定や報酬の設定(CEOおよびCFOのインセンティブ報酬を含む、当社グループの短期インセンティブならびに長期インセンティブ報酬プログラムに係る一定の目標はCore財務指標の結果に関連して設定)に用いられているためです。
CER(Constant Exchange Rate: 恒常為替レート)ベースの増減
CERベースの増減は、当期の国際会計基準(IFRS)に準拠した業績またはCore財務指標(Non-IFRS)について、前年同期に適用した為替レートを用いて換算することにより、前年同期との比較において為替影響を控除するものです。ただし、超インフレが発生し、IAS第29号「超インフレ経済下における財務報告」が適用されている子会社の業績についてはCERベースの増減調整は行わないこととし、これら子会社に係るCERベースの増減はIAS第29号に基づいて算出しています。
当社グループがCERベースの増減を表示する理由は、変動する為替レートが当社グループの事業に与える影響を踏まえ、為替影響がなかった場合の経営成績の増減について投資家に理解していただくにあたり有用であると考えているためです。CERベースの増減は、当社グループの経営陣が経営成績を評価するに際して使用する主な指標になっています。また、製薬業界における各社が為替影響を調整した同様の業績指標を頻繁に用いているため、証券アナリスト、投資家その他の関係者が各社の経営成績を評価するに際しても、本指標が有用であると考えています。
ただし、CERベースの増減の有用性には、一例として次の限界があります。例えば、CERベースの増減は、前年度においてIFRSに準拠した業績を算定するために用いた為替レートと同一の為替レートを用いますが、そのことは必ずしも、当年度の取引が前年度と同一の為替レートで実施され得た、あるいは計上され得たことを示すものではありません。また、類似の名称の指標を用いている同業他社が、当社グループとは異なる方法で指標を定義し、算定している可能性があるため、そのような指標との比較可能性に欠け得るものです。従って、CERベースの増減はIFRSに準拠して作成、表示された業績と切り離して考慮してはならず、また、これらの代替と捉えてはならないものです。
Core業績
〔Core売上収益〕
Core売上収益は、2兆2,195億円(△1,645億円および△6.9% AER、△3.9% CER)となりました。この減収は、主にニューロサイエンスにおける減収、および為替相場が円高に推移したことによるものです。ニューロサイエンスにおける減収は、主に米国においてVYVANSEの後発品の市場浸透が引き続き進んだ影響を受けたことによるものです。タケダの成長製品・新製品(注)の売上収益は1兆1,430億円(+160億円および+1.4% AER、+5.3% CER)となりました。
(注)タケダの成長製品・新製品
消化器系疾患:ENTYVIO、EOHILIA
希少疾患:タクザイロ、リブテンシティ、アジンマ
血漿分画製剤:GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG、ハイキュービア、キュービトルを含む免疫グロブリン製剤、
HUMAN ALBUMIN、FLEXBUMINを含むアルブミン製剤
オンコロジー:アルンブリグ、FRUZAQLA
ワクチン:QDENGA
〔Core営業利益〕
Core営業利益は、6,392億円(△807億円および△11.2% AER、△8.8% CER)となりました。Core営業利益の内訳は以下の通りです。
報告期間における上記項目の増減は以下の通りです。
〔Core売上原価〕
Core売上原価は、7,652億円(△163億円および△2.1% AER、+0.9% CER)となりました。主に売上収益の減少および円高による為替影響により減少しましたが、特に米国においてVYVANSEの後発品の市場浸透が引き続き進んだことに伴って製品構成が変化したことによるコストの増加があり、大部分が相殺されました。
〔Core販売費及び一般管理費〕
Core販売費及び一般管理費は、5,097億円(△289億円および△5.4% AER、△2.0% CER)となりました。この減少は、主に円高による為替影響、および全社的な効率化プログラムのコスト節減効果として人件費をはじめとした費用が削減されたことによるものです。
〔Core研究開発費〕
Core研究開発費は、3,055億円(△387億円および△11.2% AER、△7.5% CER)となりました。この減少は、主に特定の開発プログラムの終了による費用の削減、円高による為替影響、および全社的な効率化プログラムの節減効果によるものです。この減少は、後期開発パイプラインに対する投資の増加により一部相殺されております。
〔Core中間利益〕
Core中間利益は、4,387億円(△505億円および△10.3% AER、△11.1% CER)、Core中間利益(親会社の所有者帰属分)は、4,386億円(△505億円および△10.3% AER、△11.1% CER)となりました。Core中間利益は、Core営業利益に基づき、以下の通り算出されます。
報告期間における上記項目の増減は以下の通りです。
〔Core金融損益〕
Core金融収益とCore金融費用をあわせた金融損益は、671億円の損失(△62億円および△8.4% AER、△7.1% CER)となりました。
〔Core持分法による投資損益〕
当期のCore持分法による投資損益は、6億円の損失(△22億円)となりました。前年同期におけるCore持分法による投資損益は、16億円の利益でした。
〔Core税引前中間利益〕
Core税引前中間利益は、5,715億円(△768億円および△11.8% AER、△9.3% CER)となりました。
〔Core法人所得税費用〕
Core法人所得税費用は、1,328億円(△263億円および△16.5% AER、△3.6% CER)となりました。当期において、主に繰延税金資産の回収可能性の見直しに関して認識した税金費用の減少がありましたが、税額控除が減少したことにより一部が相殺されました。
〔Core EPS〕
Core EPSは、279円(△31円および△10.0% AER、△10.8% CER)となりました。
(2) 財政状態の分析
〔資産〕
当期末における資産合計は、14兆4,703億円(+2,220億円)となりました。現金及び現金同等物の増加(+2,964億円)に加え、主に為替換算の影響によりのれんが増加(+1,073億円)しております。また、主にPDT製品およびENTYVIOに関連する仕掛品ならびに製品在庫の増加、為替換算の影響により棚卸資産が増加(+821億円)しております。これらの増加は、主に償却による無形資産の減少(△3,323億円)により一部相殺されております。
〔負債〕
当期末における負債合計は、7兆3,386億円(+262億円)となりました。当期末における社債及び借入金合計は4兆6,453億円(注)(+1,301億円)となり、償還および返済により一部相殺されたものの、主に為替換算の影響に加え、円貨建無担保普通社債および米ドル建保証付無担保普通社債の発行により増加しております。この増加は、賞与の支払による未払費用の減少に伴う、その他の流動負債の減少(△908億円)により一部相殺されております。
(注) 当期末における社債及び借入金の帳簿価額はそれぞれ4兆4,053億円および2,401億円です。なお、社債及び借入金の内訳は以下の通りです。
社債:
借入金:
当社グループは、2025年4月25日に、バイラテラルローン100億円を満期返済しました。2025年6月12日には、発行総額1,840億円、償還期日2030年6月12日から2035年6月12日の円貨建無担保社債(「本円建社債」)を発行しました。本円建社債の発行により調達した資金は、コマーシャル・ペーパーの償還に充当されました。その後、2025年6月23日には、米ドル建無担保普通社債800百万米ドルを満期償還しました。また、2025年3月31日に借入れた500百万米ドルのバイラテラルローンについては、2025年7月3日まで月次で借換をしています。
2025年7月2日には、発行総額2,400百万米ドル、償還期日2035年7月7日および2055年7月7日の米ドル建保証付無担保普通社債(「本米ドル建社債」)を、当社の間接的な完全子会社である武田U.S.ファイナンシング Inc.により発行しました。本米ドル建社債の発行により調達した資金は、2025年7月3日の500百万米ドルのバイラテラルローンの返済と2025年7月にコマーシャル・ペーパーの償還に主に充当されました。
(注)上記の社債及び借入金に関する説明に記載している金額は、元本金額で表示しております。
〔資本〕
当期末における資本合計は、7兆1,317億円(+1,957億円)となりました。この増加は、主に円安の影響による為替換算調整勘定の変動により、その他の資本の構成要素が増加(+2,534億円)したことによるものです。この増加は、主に中間利益1,124億円の計上があったものの、配当金の支払いに伴う1,544億円の減少により、利益剰余金が減少(△389億円)したことにより一部相殺されております。
(3) キャッシュ・フロー
〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕
営業活動によるキャッシュ・フローは、5,937億円(+1,424億円)となりました。この増加は主に、売上債権及びその他の債権ならびに仕入債務及びその他の債務の変動などにより、資産及び負債の増減額が増加したことによるものです。この増加は、非資金項目およびその他の調整項目を調整した後の中間利益の減少により一部相殺されております。
〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕
投資活動によるキャッシュ・フローは、△813億円(+1,505億円)となりました。この増加は主に、無形資産の取得による支出、ライセンスを獲得するためのオプションの取得による支出、および投資の取得による支出が減少したことに加え、事業売却による収入(処分した現金及び現金同等物控除後)が増加したことによるものです。
〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕
財務活動によるキャッシュ・フローは、△2,269億円(△4,332億円)となりました。この減少は主に、社債及び長期借入金の発行・返済に伴う正味キャッシュ・フローの減少、自己株式の取得の増加、また前年同期の社債及び借入金に係る金利通貨スワップの決済によるものです。
(4) 研究開発活動の内容および成果
当期の研究開発費の総額は3,054億円であります。なお、当社の研究開発費の予算は、全社的に決定されており、特定の支出は開発の結果および優先事項に応じて再配分の対象となる場合があるため、当社の研究開発費について、疾患領域あるいは臨床試験段階毎の内訳を報告しておりません。
当社の研究開発は、サイエンスにより、患者さんの人生を根本的に変え得るような非常に革新性が高い医薬品を創製することに注力しております。当社は、「革新的なバイオ医薬品」、「血漿分画製剤」および「ワクチン」の3つの分野において研究開発活動を実施しております。「革新的なバイオ医薬品」に対する研究開発は、当社の研究開発投資費用の中で最も大きい比率を占めております。「革新的なバイオ医薬品」における重点疾患領域(消化器系・炎症性疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、オンコロジー)には、希少疾患および有病率がより高い疾患のいずれにおいても、未だ有効な治療法が確立されていない高い医療ニーズ(アンメット・メディカル・ニーズ)が存在する疾患に対し、当社はベスト・イン・クラスあるいはファースト・イン・クラスとなりうる画期的な新規候補物質を創出してまいりました。当社は希少疾患と有病率がより高い疾患のいずれに対してもコミットしており、当社が探求している患者さんの人生を根本的に変え得るような医薬品の多くは、当社の重点疾患領域および血漿分画製剤領域における希少疾患を治療するものとなります。また、当社はイノベーションの質を向上させ、実行を加速させることを目指し、データ・デジタル技術を活用しております。
当社のパイプラインは、当社事業の短期的および長期的かつ持続的な成長を支えるものです。初回の承認取得後も上市後の製品に対して、地理的拡大や効能追加に加え、市販後調査および剤型追加の可能性を含めた継続的な研究開発活動による支援体制が整っております。当社の研究開発チームは、販売部門との緊密な連携を通じ既発売品の価値の最大化を図り、販売活動を通じて得られた知見を研究開発戦略やポートフォリオに反映します。
当社の2025年4月以降の主要な研究開発活動の進捗は、以下のとおりです。
研究開発パイプライン
消化器系・炎症性疾患
消化器系・炎症性疾患において、消化器系疾患(肝疾患を含む)および免疫介在性の炎症性疾患の患者さんに革新的で人生を変え得るような治療法をお届けすることに注力しております。炎症性腸疾患(IBD)においては、ENTYVIO(国内製品名:エンタイビオ)の皮下注射製剤の上市や、IBD治療パラダイムにおけるENTYVIOのバックボーン治療薬としての位置づけを実証し、患者さんの予後をさらに改善する方法への理解を深めるため、実臨床エビデンスを構築する臨床試験を実施するなど、フランチャイズのポテンシャルを最大化しております。Zasocitinib(TAK-279)は、次世代の経口チロシンキナーゼ2(TYK2)阻害薬であり、複数の免疫介在性の炎症性疾患の治療薬となる可能性があります。また、fazirsiran(TAK-999)は、α-1アンチトリプシン欠損関連肝疾患に対するファースト・イン・クラスのRNA干渉治療薬となる可能性があり、後期開発段階にあります。Mezagitamab(TAK-079)は、免疫性血小板減少症(ITP)やIgA腎症(IgAN)など複数の免疫介在性疾患に対する疾患修飾薬としてベスト・イン・クラスとなる可能性を有する抗CD38抗体です。さらに、当社は、自社創製、社外との提携および事業開発を通じて炎症性疾患(消化器系、皮膚科系、リウマチ性の疾患)に加え、厳選した希少血液疾患および腎疾患(アジンマ、mezagitamab(TAK-079))、肝疾患、神経性消化器疾患における機会を探索し、パイプラインの構築を進めております。
[開発コード:TAK-079 一般名:mezagitamab]
- 2025年6月、当社は、完全ヒト免疫グロブリンIgG1モノクローナル抗体mezagitamabが、免疫性血小板減少症(ITP)を予定される効能・効果として厚生労働省よりオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定を取得したことを公表しました。Mezagitamabは血小板数の迅速かつ持続的な改善をもたらすようにデザインされており、現在ITPおよびIgA腎症(IgAN)を対象とした国際共同臨床第3相試験が進行中です。
ニューロサイエンス(神経精神疾患)
当社は、高いアンメット・ニーズが存在する神経疾患および神経筋疾患を対象に、革新的治療法に研究開発投資を集中させ、社内の専門知識や外部パートナーとの提携を生かし、革新的なパイプラインを構築しています。当社のニューロサイエンス(神経精神疾患)における重点領域として、オレキシン生物学、希少神経疾患および神経変性疾患に注力しています。オレキシン生物学の関与が示唆される希少な睡眠・覚醒障害およびその他の疾患に対する標準治療の再定義を目指し、オレキシンの可能性を最大限に引き出すために最適化された治療薬ポートフォリオ(oveporexton(TAK-861)、TAK-360など)の開発を推進しています。また、当社のポートフォリオ全体にわたり、疾患生物学の理解、トランスレーショナルなツール、革新的モダリティ、デジタルイノベーションの進展を活用し、治療薬の開発および患者さんへのアクセスを加速させています。
[開発コード:TAK-861 一般名:oveporexton]
- 2025年5月、当社は、ナルコレプシータイプ1(NT1)患者におけるoveporextonの臨床第2b相試験(TAK-861-2001試験)データがThe New England Journal of Medicine誌に掲載されたことを公表しました。主要評価項目および副次評価項目として、覚醒度と日中の眠気の客観的および主観的な指標、情動脱力発作(カタプレキシー)発現率、および安全性に対するoveporextonの影響をプラセボと比較して評価しました。8週間にわたってプラセボと比較し、すべての用量で日中の過度の眠気(Excessive Daytime Sleepiness, EDS)の有意な改善、カタプレキシー発現率の減少、疾患の重症度および生活の質(QOL)において臨床的に意義のある改善を示しました。 また、本試験においてoveporextonの安全性および忍容性は概ね良好でした。
- 2025年9月、当社は、NT1を対象とした画期的なoveporextonの臨床第3相試験のデータを、世界睡眠学会World Sleep 2025において複数の口頭発表を行ったことを公表しました。The FirstLightとthe RadiantLightの両試験ともに、NT1の幅広い症状に該当するすべての主要評価項目および副次評価項目においてプラセボと比較して統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善が示されており、12週時点では、すべての用量群(1mg1日2回/2mg1日2回)でp値は<0.001でした。Oveporextonの忍容性は概ね良好であり、安全性プロファイルはこれまでの臨床試験と同様でした。試験を完了した被験者の95%以上が実施中の長期継続投与試験に組み入れられました。本学会での口頭発表には、覚醒度に対する客観的評価および患者報告による主観的評価の他、カタプレキシー、症状の重症度および生活の質などのデータが含まれました。当社は、2025年度中に米国食品医薬品局(FDA)および世界各地の医薬品規制当局に新薬承認申請を行う予定です。
- 覚醒:Oveporextonは日中の過度の眠気(EDS)を改善し、12週時点の覚醒維持検査(MWT)による平均睡眠潜時およびエプワース眠気尺度(ESS)スコアのベースラインからの変化が、すべての用量群でプラセボ群と比較して統計学的に有意な改善を示しました。2mg1日2回投与群の被験者の大多数が、MWTで正常範囲内(20分以上)とされる覚醒を達成し、被験者の85%近くが健常者と同程度のESSスコア(10以下)を達成しました。
- カタプレキシー:Oveporexton群の1週間あたりのカタプレキシー発現率(WCR)は、12週にわたり、すべての用量群でプラセボ群と比較して有意に低下しました(ベースラインからの変化率の中央値は80%超)。カタプレキシーが発現しない日の頻度をプラセボ群と比較した検討では、中央値でベースラインでは週あたり0日であったのが、12週時点で1週間あたり4〜5日にまで改善しました。カタプレキシーはNT1の特徴的な症状であり、強い感情によって引き起こされる筋緊張の突然の喪失です。
- 症状の重症度:Oveporextonは、プラセボ群と比較して、ナルコレプシー重症度尺度(NSS-CT)の総スコアにおいて、ベースラインから統計学的に有意な変化を示し、すべての用量群で70%を超える被験者が最も低い重症度(軽度、スコア0〜14)を示しました。また、種々のナルコレプシー症状に対する患者の全体的な自己評価となるPatient Global Impression of Change(PGI-C)スコアでは、統計学的に有意な改善が認められ、投与を受けたほぼすべての被験者(97%)において改善が報告されました。
- 生活の質(QOL):SF-36(Short Form-36-item)による生活の質の評価において、oveporextonは統計学的に有意な改善をもたらし、スコアは正常範囲とされるレベルにまで達しました。これらの結果は、EQ-5D-5L (EuroQol 5-Dimension 5-Level)を含む探索的評価項目の顕著な改善によって裏付けられています。
- 安全性プロファイル:いずれの試験でも、oveporextonの忍容性は概ね良好でした。治験薬と関連のある重篤な有害事象の報告はありませんでした。過去の臨床試験で得られた結果と同様に、最も多く認められた有害事象は不眠、尿意切迫および頻尿でした。ほとんどの有害事象は軽度から中等度でした。
- 2025年9月、当社は、oveporextonがNT1を予定される効能又は効果として厚生労働省より先駆的医薬品およびオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)に指定されたことを公表しました。本指定は国際共同第2b相臨床試験(TAK-861-2001試験)の結果に基づくものです。
オンコロジー
オンコロジー領域では、当社の治療薬のポートフォリオへのアクセスを確立し世界中の患者さんの治療に貢献するとともに、将来治療薬となりうるパイプラインの推進に注力しています。研究開発の取り組みにおいては、3つの疾患領域および3つのモダリティに焦点を当てています。当社は胸部、消化器および血液がんに対する治療薬の開発を推し進めており、血液がん領域では、骨髄性腫瘍に対するrusfertide(TAK-121)、elritercept(TAK-226)を含む治療薬ポートフォリオを拡充しています。注力するモダリティには抗体薬物複合体(ADC)、複雑な生物学的製剤および低分子化合物が含まれます。また、強固な提携ネットワークを活用することで、社内の専門性とグローバル拠点を補完しています。当社は、患者さんを通じて得られるインスピレーションおよびあらゆるイノベーションを活用することで、がんの治癒を目指しております。
[アドセトリス 一般名:ブレンツキシマブ ベドチン]
- 2025年6月、当社は、欧州委員会(EC)より、リスク因子を有するⅡb期、Ⅲ期およびⅣ期の未治療の成人ホジキンリンパ腫患者に対するアドセトリスとエトポシド、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ダカルバジンおよびデキサメタゾン(BrECADD)の併用療法の承認を取得したことを公表しました。本承認は、2025年4月の欧州医薬品評価委員会(CHMP)による肯定的見解に基づくものです。BrECADDとして知られるホジキンリンパ腫のフロントライン治療におけるアドセトリス併用療法の承認は、無作為化臨床第3相HD21試験の結果に基づきます。本試験では、欧州における標準治療であるブレオマイシン、エトポシド、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾンの増量レジメン(eBEACOPP)と比較して、BrECADDが治療関連合併症率(TRMB)において有意に優れた安全性を示し、無増悪生存率(PFS)の非劣性を示したことにより、安全性および有効性の複合主要評価項目を達成しました。
[ベクティビックス 一般名:パニツムマブ]
- 2025年9月、当社は、ベクティビックスについて、KRAS G12C阻害剤であるルマケラス錠(ソトラシブ)との併用療法として、がん化学療法後に増悪したKRAS G12C変異陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌の 新たな効能又は効果ならびに用法及び用量の製造販売承認事項一部変更承認を厚生労働省より取得したことを公表しました。本承認は、KRAS G12C変異陽性の既治療の転移性の結腸・直腸癌患者を対象として、ベクティビックスとルマケラスを併用投与した際の有効性および安全性を評価する、臨床第3相、国際共同、多施設共同、ランダム化、非盲検、実薬対照試験(CodeBreaK 300試験)の結果に基づくものです。
[開発コード:TAK-121 一般名:rusfertide]
- 2025年6月、当社とProtagonist Therapeutics社は、臨床第3相VERIFY試験の詳細な結果を第61回米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会のプレナリーセッションにおいて発表したことを公表しました。本試験は、主要評価項目である臨床的奏功割合を達成しました。臨床的奏効とは、20週から32週の間に瀉血の適格性がないことと定義されました。Rusfertideと現在の標準治療を併用した患者の76.9%が臨床的奏効を達成し、プラセボと現在の標準治療を併用した群では32.9%でした(p<0.0001)。Rusfertide群で観察された反応は、リスクの有無や併用されている細胞減少療法の種類にかかわらず、すべてのサブグループで一貫していました。さらに、VERIFY試験において、rusfertide群はプラセボ群と比較し主な副次評価項目すべてで統計学的に有意な結果を示しました。欧州連合(EU)規制当局に事前指定された主要評価項目でもある、rusfertide群の患者1人あたりの平均瀉血回数は0.5回であり、プラセボ群の患者1人あたりの平均瀉血回数は1.8回でした(0~32週目;p<0.0001)。Rusfertide群の患者の27%が0週から32週の間に瀉血を必要とした一方、プラセボ群では78%でした。Rusfertide群における0週から32週の平均瀉血回数は、リスクの有無や併用されている細胞減少療法の使用を含むすべてのサブグループにおいて、プラセボ群と比較して減少していました。事前に設定された他の3つの主な副次評価項目であるヘマトクリット値のコントロールおよびPROMIS Fatigue SF-8aとMFSAF TSS-7を使用した患者報告アウトカムも統計学的な有意差をもって達成されました。Rusfertideは概ね良好な忍容性を示し、大半の有害事象は低グレードであり重篤ではなく、rusfertideに関係すると判定された重篤な有害事象は報告されませんでした。主要評価項目の分析の時点で、rusfertide群とプラセボ群の比較においてがんのリスク増加のエビデンスは認められませんでした。最も頻度が高かった治療関連有害事象は、局所注射部位反応(55.9%)、貧血(15.9%)、疲労(15.2%)でした。
その他の希少疾患品目
当社の研究開発は、3つの重点疾患領域(消化器系・炎症性疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、オンコロジー)にわたり、希少疾患および有病率がより高い疾患のいずれにおいても、未だ有効な治療法が確立されていない高い医療ニーズ(アンメット・メディカル・ニーズ)が存在する疾患に注力しております。その他の希少疾患品目においては、遺伝性血管性浮腫に対するタクザイロなどの既発売品に加え、高いアンメット・メディカル・ニーズが存在する複数の疾患に焦点をあて取り組んでおります。希少血液疾患においては、アドベイト、アディノベイト/ADYNOVIを通じて、出血性疾患治療における現在のニーズへ対応することに注力しております。また、リブテンシティにおいては、移植後サイトメガロウイルス(CMV)感染/感染症の治療を再定義することを目指しております。当社は、希少疾患の患者さんに対し革新的な医薬品を届けるという当社のビジョンを実現するための取り組みに注力します。当社は、希少疾患において当社が有する専門能力の活用が可能であり、希少疾患に対する当社のコミットメントおよびリーダーシップを高める可能性のある、後期開発段階の事業開発機会の探索を今後も継続する予定です。
[ボンベンディ 一般名:フォン・ヴィレブランド因子(遺伝子組み換え)]
- 2025年6月、当社は、ボンベンディについて、18歳未満のフォン・ヴィレブランド病(VWD)患者に対する用法・用量追加に係る製造販売承認事項一部変更承認申請を厚生労働省に行ったことを公表しました。本申請は、主に海外臨床第3相非盲検試験(071102試験)および海外臨床第3b相継続投与試験(SHP677-304試験)における18歳未満のVWD患者の出血時ならびに周術期に関する安全性および有効性のデータに基づくものです。
- 2025年9月、当社は、米国食品医薬品局(FDA)が、ボンベンディの生物学的製剤承認一部変更申請(sBLA)を承認したことを公表しました。本承認によりボンベンディの適応症に、1型および2型を含むVWDの成人患者(18歳以上)に対する定期補充療法ならびに小児患者に対する出血時の止血治療および周術期の止血管理が追加されます。ボンベンディは、VWDの成人患者に対する出血時の止血治療および周術期の止血管理ならびに出血時の止血治療を受けている重度3型VWDの成人患者に対する定期補充療法がすでに適応症として承認されていました。本承認は、成人VWD患者を対象とした臨床第3相試験、小児VWD患者を対象とした臨床第3相試験、成人および小児VWD患者を対象とした臨床第3b相継続投与試験ならびにこれらを補完する実臨床データに基づきます。
[タクザイロ 一般名:ラナデルマブ]
- 2025年9月、当社は、タクザイロ皮下注300mgペンについて、タクザイロシリンジの剤型追加として厚生労働省より製造販売承認を取得したことを公表しました。
血漿分画製剤
当社は、血漿分画製剤(PDT)に特化したPDTビジネスユニットを設立し、血漿の収集から製造、研究開発および商用化まで、エンド・ツー・エンドのビジネスの運営に注力しております。本領域では、様々な希少かつ複雑な慢性疾患に対する患者さんにとって生命の維持に必要不可欠な治療薬の開発を目指しております。本領域に特化した研究開発部門は、既発売の治療薬の価値最大化、新たな治療ターゲットの特定および血漿収集から製造に至るまで血漿分画製剤のバリューチェーン全体にわたる効率性の最適化という役割を担っております。短期的には、当社の幅広い免疫グロブリン製剤ポートフォリオ(ハイキュービア、キュービトル、GAMMAGARD LIQUIDおよびGAMMAGARD LIQUID ERC)における効能追加、地理的拡大および総合的な医療テクノロジーの活用を通じたより良い患者体験を追求しております。また、当社は、グローバルに販売している20種類以上にわたる治療薬ポートフォリオに加え、20%促進型皮下注用免疫グロブリン製剤(TAK-881)といった次世代の免疫グロブリン製剤の開発、およびその他の早期段階の治療薬候補(高シアル化免疫グロブリン(hsIgG)であるTAK-411を含む)の開発を行っております。
[ハイキュービア 一般名:遺伝子組換えヒトヒアルロニダーゼ含有皮下注(ヒト)免疫グロブリン10%]
- 2025年6月、当社は、ハイキュービアについて、CIDP及び多巣性運動ニューロパチー(MMN)の運動機能低下の進行抑制(筋力低下の改善が認められた場合)の適応追加に係る製造販売承認事項一部変更承認を厚生労働省から取得したことを公表しました。本承認は、日本人のCIDP患者およびMMN患者を対象とした国内臨床第3相試験(TAK-771-3002試験)、ならびにCIDP患者を対象とした2つの海外臨床第3相試験(161403試験および161505試験)に基づくものです。
- 2025年7月、当社は、ハイキュービアを在宅や病院内で針を用いずに薬液を輸注セットへ移注できる、17歳以上の患者に対する医療機器であるHYHUBおよびHYHUB DUOについて、米国食品医薬品局(FDA)より、市販前届出510(k)のクリアランスを取得したことを公表しました。ハイキュービアは、皮下注用人免疫グロブリン製剤のバイアル1本とヒアルロニダーゼ製剤のバイアル1本を含むデュアルバイアルユニット(DVU)で構成されています。これらのバイアル用のドッキングステーションとして機能するHYHUBおよびHYHUB DUOは、2つ以上のDVUの投与に必要な手順を減らすことで、ハイキュービアの投与を簡便化するために開発されました。
[GAMMAGARD LIQUID ERC 一般名:(ヒト)免疫グロブリン10%(低IgA)
- 2025年6月、当社は、2歳以上の原発性免疫不全症(PID)患者に対する補充療法として、免疫グロブリンA(IgA)含有量の少ない、溶解操作不要な唯一の液状人免疫グロブリン製剤GAMMAGARD LIQUID ERC(IgAの含有量が2μg/mL以下の10%製剤)が、 米国食品医薬品局(FDA)により承認されたことを公表しました。GAMMAGARD LIQUID ERCは溶解操作が不要な液状製剤であり、静脈注射または皮下注射が可能であることから、患者および医療従事者の投与負担の軽減に貢献することが期待されます。
ワクチン
ワクチンでは、イノベーションを活用し、デング熱(QDENGA)、新型コロナウイルス感染(COVID-19)(ヌバキソビッド筋注)など、世界で最も困難な感染症に取り組んでおります。当社パイプラインの拡充およびプログラムの開発に対する支援を得るために、日本の政府機関およびWHO(世界保健機関)、PAHO(Pan American Health Organization)、Gavi(Global Alliance for Vaccines and Immunization)を含む主要な世界的機関とのパートナーシップを締結しております。これらのパートナーシップは、当社のプログラムを実行し、それらのポテンシャルを最大限に引き出すための重要な能力を構築するために必要不可欠です。
[ヌバキソビッド筋注 一般名:組換えコロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン]
- 2025年8月、当社は、同年6月に製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったSARS-CoV-2オミクロン株LP.8.1系統を抗原株としたヌバキソビッドについて厚生労働省より承認を取得したことを公表しました。本承認は、品質の抗原株の変更に係るデータに加え、LP.8.1系統を抗原株としたヌバキソビッドが直近のSARS-CoV-2変異株(LP.8.1、LP.8.1.1、JN.1、KP.3.1.1、XEC、XEC.4、NP.1、LF.7及びLF.7.2.1 )に対しても中和抗体を産生することが認められた非臨床データに基づきます。
将来に向けた研究プラットフォームの構築/研究開発における提携の強化
自社の研究開発機能向上への注力に加え、社外パートナーとの提携も、当社研究開発パイプライン強化のための戦略における重要な要素の一つです。社外提携の拡充と多様化に向けた戦略により、様々な新製品の研究に参画し、当社が大きな研究関連のブレイクスルーを達成する可能性を高めます。
- 2025年10月、当社は、Innovent Biologics(Innovent社)と、後期開発段階にある2つのがん治療薬IBI363およびIBI343について、中国・香港・マカオ・台湾以外の全世界における開発、製造、商業化に関するライセンスおよび提携契約を締結したことを公表しました。IBI363は、非小細胞肺がんおよび結腸・直腸がんで評価されており、他の種類の固形腫瘍にも有効性が期待されています。IBI343は、胃がんおよび膵臓がんで評価されています。また、初期開発段階の治療薬であるIBI3001の中国・香港・マカオ・台湾以外での全世界での独占的ライセンスオプションを取得します。IBI363は、ファースト・イン・クラスとなる可能性のある 、PD-1/IL-2α-bias二重特異性抗体融合タンパク質です。IBI363は、米国食品医薬品局(FDA)から、抗PD-(L)1療法およびプラチナベースの化学療法後に進行した切除不能な局所進行または転移性sqNSCLC患者さんの治療のためにファストトラック指定を受けています。開発中のIBI343は、胃がんおよび膵臓がん細胞に高頻度で発現するClaudin 18.2タンパクを標的とする次世代抗体薬物複合体(ADC)治療薬です。IBI343は、FDAより、1ライン前の治療後に再発または抵抗性となった進行切除不能または転移性膵管がん(PDAC)の治療においてファストトラック指定を受けています。IBI3001は、EGFRおよびB7H3の両方を標的とするように設計された、ファースト・イン・クラスとなる可能性のある二重特異性ADCです。将来的なオプション行使を含めた本取引の完了には、規制当局の承認など、一般的な取引完了条件を満たす必要があります。
当社の研究活動に関するアップデート
- 2025年10月、当社は、戦略的なポートフォリオの優先順位を検討した結果、細胞療法に関する自社での取り組みを中止する決定を公表しました。今後、当社は、当社の細胞療法プラットフォーム技術の強化ならびに当分野での研究や臨床応用可能なプログラムのさらなる進展を担うことのできる外部パートナーを模索してまいります。なお、現在当社が細胞療法技術を用いて実施している進行中の臨床試験はありません。当社は今後、患者さんに対しより迅速かつ大規模に革新的な治療法を届けることができると考えられるプログラムに短期的な投資を再集中します。
当期(2025年4月-9月)において、重要な契約等の決定又は締結等はありません。