文中において将来について記載した事項は、提出日現在において判断したものです。
当社の経営理念は、「存在意義」「使命」「信条」の3つのパートから構成されています。この経営理念は、有用性と信頼性の高い医薬品で世界の人々の健康に貢献し、企業価値を持続的に向上させることを目指していく当社の姿勢を表現しています。
アステラスの存在意義:先端・信頼の医薬で、世界の人々の健康に貢献する
・生命科学の未知なる可能性を、誰よりも深く究めたい。
・新しい挑戦を続け、最先端の医薬品を生み出したい。
・高い品質を確かな情報と共に届け、揺るぎない信頼を築きたい。
・世界の人々の健やかな生活に応えていくために。
・世界で輝き続ける私たちであるために。
アステラスの使命:企業価値の持続的向上
・アステラスは、企業価値の持続的向上を使命とします。
・アステラスは、企業価値向上のため、お客様、株主、社員、環境・社会など、すべてのステークホルダーから選ばれ、信頼されることを目指します。
アステラスの信条
アステラスの「信条」は、私たちが常に大事にする行動規範です。
アステラスは、これらの信条に共鳴し実践する人々の集団であり続けます。
高い倫理観: 常に、高い倫理観をもって、経営活動に取り組みます。
顧客志向: 常に、お客様のニーズを把握し、お客様の満足に向かって行動します。
創造性発揮: 常に、現状を是とせず、未来志向で自己革新に挑戦し、新しい価値を創造します。
競争の視点: 常に、視野広く外に目を向け、より優れた価値を、より早く生み出し続けます。
アステラスは、信条に則した行動を通じて、ステークホルダーの皆様への責任を適切に果たし続けるとともに、積極的な情報開示を行います。
製薬産業を取り巻く事業環境は、時代とともに大きく変化しています。新薬開発の難易度の上昇、医療費抑制政策等マイナスの影響がある一方で、イノベーションを評価する制度の拡充や、科学技術の進歩に伴い、創薬に活用できる治療手段が増加するなどプラスの動きもあります。また、デジタル技術や工学技術の進歩は、異業種との融合を促し、患者さんに新しい医療ソリューションの提供を可能にします。
当社は、世界中の人々がより健康でより良い生活を送ることができるよう、「先端・信頼の医薬で、世界の人々の健康に貢献する」という経営理念のもと取り組みを続けています。そして、革新的な治療法を常に探究し続ける組織作りを進め、アンメットメディカルニーズが依然として高い領域において「価値」をもたらすよう取り組んでいます。
当社は、「変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの価値に変える」ことをVISIONに掲げ、最先端の科学を追求し、患者さんに「価値」をもたらす医療ソリューションの創出を継続的に目指しています。
このVISION実現に向けて、2021年度からの5年間を対象とする「経営計画2021」を新たに策定しました。「経営計画2021」では、これまでの基本戦略を引き継ぎつつ進化・発展させた、患者さんの「価値」を最大化する戦略目標を設定しています。また、組織健全性目標のもと、イノベーションの促進、人材の活躍、コラボレーションの浸透が相まった企業文化を醸成し、戦略の実行力を高めていきます。これによって意欲的な成果目標の達成を目指します。
「経営計画2021」の4つの戦略目標は以下のとおりです。
中長期的な成長を牽引するXTANDI及び重点戦略製品について、計画しているスケジュールから遅滞のない承認申請やグローバル展開までの期間短縮、洗練された発売計画を実行していくことなどによって、「価値」最大化を図ります。
研究開発戦略上のPrimary Focusに優先的に経営資源を投下し、パイプライン価値を高めます。バイオ医薬品における最先端のイノベーションを効果的に探索し、革新的な医薬品を創出するためのFocus Areaアプローチの実行を新たな次元へ進めます。
Rx+ビジネスは、「経営計画2021」において事業創成に向けた取り組みが実を結ぶステージに入ります。科学の進歩を患者さんの「価値」に変えることを引き続き追求します。糖尿病を対象としたデジタルセラピューティクスであるBlueStarの日本展開や、腹部及び骨盤内手術時に尿管を可視化する蛍光造影剤であるASP5354の上市など、本経営計画期間中に複数のプロジェクトで事業化を予定しています。
当社は患者さんに貢献するコアビジネスにおいて、社会に「価値」を提供し続けています。さらに、今後はサステナビリティ向上への取り組みの重要性を認識し、社会及び当社の持続可能性向上に努めます。特に、「保健医療へのアクセス向上」と「環境(気候変動対策)」を重点テーマとし、ステークホルダーからの信頼獲得を目指します。
② 株主還元方針
当社は、企業価値の持続的向上に努めるとともに、株主還元にも積極的に取り組んでいます。成長を実現するための事業投資を優先しながら、配当については、連結ベースでの中長期的な利益成長に基づき、安定的かつ持続的な向上に努めます。「経営計画2021」の期間中は堅調な利益成長予想に基づき、より高い水準の配当を目指します。
また、自己株式の取得を必要に応じて機動的に実施し、資本効率の改善と1株当たり利益の向上を図ります。
当社は、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、製薬会社の使命として患者さんの安全性の確保及び医療現場の負担軽減に寄与するべく様々な取り組みを行っています。これまでに、医薬品の安定供給、治療薬等の研究開発への貢献、感染が拡大する地域への救援等の取り組みを実施しています。
今後も各方面からの情報収集を迅速に行い、日々変化する状況を正確に把握し、各国の関係機関とも連携しながら必要な対応を速やかに実施していきます。
1) 事業の継続と医薬品の安定供給の維持について
・国や地域の状況に応じ、出社と在宅での勤務を組み合わせて、社員の安全確保及び感染拡大防止に努めています。
・社員の安全を最優先としながらも、当社の社会的使命である、医薬品の安定供給・品質管理・安全管理・情報提供につきましては、必要な活動を継続しています。
・営業活動に関しては、日本及び米国、欧州、アジアをはじめとする全ての地域において、感染拡大防止策をとりながら、適切な情報の提供及び収集を各医療機関のルールに従って実施しています。
・製品の供給に関しては、事業の継続と製品の安定供給を考慮した上で、原料や資材の調達元や製造委託先と緊密に連携することで、原料や資材の調達や完成品出荷への新型コロナウイルス感染症によるリスクを管理しています。
2) 患者さんの安全確保と医療現場への負担軽減に向けて
患者さんの安全を確保すること、そして医療現場への負担を軽減するために、以下のとおり、介入臨床試験の実施に関する対応を取っています。
・新型コロナウイルス感染者の増加が収まらない国・地域において、治験実施施設における新たな介入臨床試験立ち上げのための活動を一時中止していましたが、試験ごとにベネフィット/リスクを評価した上で、全ての国で臨床試験を再開しています。
・各国の薬事規制当局が発行したガイダンスに沿って、臨床試験実施計画書を評価し、患者さんの安全を確保しつつ、医療制度への負担を軽減するための対応を行っています。
・試験によっては、患者さんの安全を最優先するために、臨床試験実施計画書に定められた時期に患者さんが来院できない場合には、電話等による遠隔での安全性確認、治験実施施設以外の近隣施設での必要な検査の実施や患者さん宅への治験薬の送付等の取り組みも実施しています。
・いまだ続いている感染拡大に伴う変化に応じて、臨床試験実施計画書の改訂等で柔軟に対応できる仕組みを構築しています。
・当社が実施する全ての介入臨床試験について、常に状況を注視しながら対応を評価・検討していきます。
・引き続き、患者さんの安全性確保を第一に考え、臨床開発プログラムにおけるコンプライアンスの徹底及びデータインテグリティ(データ完全性)の維持に注力します。
3) 治療薬等の研究開発への貢献について
・政府の要請に応じた医薬品の提供等に対し、関係機関と連携しながら適切な対応を速やかに実施しています。
・厚生労働省・国立感染症研究所における「新型コロナウイルス感染症の治療に用いる医薬品の基礎的なスクリーニング計画」に応じた化合物の提供を行っています。
・欧州製薬団体連合会・画期的新薬イニシアチブによる「新型ウイルス治療薬の開発を目指した活動」への協力呼びかけにも対応しています。
・当社のグループ会社であるアステラス ファーマ ヨーロッパ Ltd.は、欧州で最大規模の、新型コロナウイルス感染症に関する課題解決に向けた官民パートナーシップである「CAREコンソーシアム」に参画しています。CAREコンソーシアムは、画期的新薬イニシアチブからの資金提供のもと、新型コロナウイルス感染症治療薬の開発をより一層加速させることを目指しています。
・米国では、非営利団体であるTransCelerate BioPharma Inc.の会員活動の一環として、タスクフォースに参加し、他の製薬企業20社とともに、感染拡大下において、患者さんの安全とデータ完全性の維持を図りつつ、いかに臨床試験を継続していくかという点について、ベストプラクティスを共有しています。
・当社が保有する技術や開発・販売中の薬剤を新型コロナウイルス感染症の治療等に用いる様々な提案を社内外から受けており、迅速に評価・検討を行っています。
・各国政府からの要請に基づく研究段階の化合物の提供要請に対応しています。当社では、安全性を第一に考え、同時に一刻も早くあらゆる可能性を探るため、治療薬等の研究開発に引き続き貢献していきます。
4) 各国・地域における救援活動について
・日本においては、新型コロナウイルス感染症関連研究への助成を目的として、公益財団法人アステラス病態代謝研究会に500万円の寄附を行いました。これは、同財団が募集する2020年度研究助成プログラムの中から新型コロナウイルス感染症関連の研究に活用されました。また、同財団では、研究者の海外留学を支援しており、その中で、新型コロナウイルス感染症によって経済的影響を受けた研究者に対し、同財団から資金援助が行われました。
・米国においては、当社のグループ会社であるアステラス ファーマ US, Inc.及びアステラス・グローバルヘルス財団が、それぞれ個別に、患者さん、医療従事者、緊急対応員への支援となる財源・物資を緊急に提供するための総額270万米ドル以上の資金援助を実施しています。
米国全土レベルでは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けるコミュニティへの人道的支援を展開する組織・団体への援助を実施しています。具体的には、アメリケアズ、アメリカ赤十字社、ダイレクトリリーフが行う緊急的措置への企業としての寄付・寄贈が含まれます。さらに、社内慈善寄附プロセスに則り、当社の注力領域に関連する非営利のヘルスケア団体に対し、新型コロナウイルス感染症対策支援のための提案依頼書を発信し、パンデミック中の患者とケアパートナー支援のため、注力分野に沿った5つの非営利団体に資金援助を実施しました。また、各種機器・器具や個人防護具の寄贈、アメリカ疾病管理予防センターのガイダンスに沿った献血、社員による社会貢献やボランティア活動等も推進中です。さらに、アステラス ファーマ US, Inc.があるイリノイ州で、州知事による新型コロナウイルス感染症対策基金、及びIllinois Biotechnology Innovation Organizationによる個人防護具の新型コロナウイルス感染症救援基金において、それぞれ共同設立者を務めるなど、様々な州内の組織・団体と連携しています。
アステラス・グローバルヘルス財団は、特に脆弱で医療へのアクセスが困難な地域において、新型コロナウイルス感染症の拡大と影響長期化を防ごうと奮闘している人道支援組織の差し迫ったニーズの支援に、総額200万米ドルの資金援助を実施しました。この資金援助は、医療インフラの整備及び新型コロナウイルス感染症に関する教育・訓練活動にあてられ、ケニアやドミニカ共和国、南スーダン、コンゴ民主共和国、ガーナ、エチオピア、ナイジェリアに住む725,000人以上の生活の改善につながります。
・米国における、患者さんによる当社薬剤へのアクセスを確保し、保険償還をサポートするための取り組みを通じ、新型コロナウイルス感染症の影響で失業及び保険に加入できなくなってしまった患者さんがより迅速にサポートの申請を行い、審査されるようプロセスの変更を行い、カスタマーサービスによるサポート体制を強化しています。
・イタリアにおいては、当社のグループ会社であるアステラス ファーマ S.p.A.が公的医療機関及びNPOへの必要物資補給のために17万4,800ユーロ分の寄付を行いました。
・スペインにおいては、当社のグループ会社であるアステラス ファーマ S.A.が医療機関への必要物資補給を目的として、同国保健省に20万ユーロ分の寄付を行いました。
・政府や非営利団体等からの様々な医療現場の支援活動の要請に対応できるよう、医療資格を有するアステラス社員が自らのコミュニティで求められるボランティア活動への参加を希望する場合には、各国の法令及び社内規程に準拠した上で最長4週間の有給休暇を付与します。
① 経営計画2018の達成度
2018年度から3年間の「経営計画2018」において、最終年度である2020年度の計数ガイダンスの達成度は以下のとおりです。
売上収益は計画策定時の想定を下回りましたが、将来成長に向けた先行投資を行った上でも、コア営業利益率は目標を達成しました。
(注) 1.当社は、会社の経常的な収益性を示す指標としてコアベースの業績を開示しています。当該コアベースの業績は、フルベースの業績から当社が定める非経常的な項目を調整項目として除外したものです。調整項目には、減損損失、有形固定資産売却損益、リストラクチャリング費用、災害による損失、訴訟等による多額の賠償又は和解費用等のほか、会社が除外すべきと判断する項目が含まれます。
2.基本的1株当たりコア当期利益は、コア当期利益をその期間の自己株式を調整した発行済普通株式の加重平均株式数で除して算定しています。
② 経営計画2021の成果目標
「経営計画2021」では以下の成果目標を設定しています。
1) XTANDI及び重点戦略製品(注1)の売上:1.2兆円以上(2025年度)
2)Focus Areaプロジェクトからの売上:5,000億円以上(2030年度)
3)コア営業利益率(注2):30%以上(2025年度)
これらの成果目標達成により、足元の利益を大きく改善しつつ、将来の力強い成長をもたらすパイプラインの価値を高めることで、2025年度に株式時価総額7兆円以上と評価されるような企業となることを目指します。
(注) 1.ゾスパタ, PADCEV, エベレンゾ, fezolinetant, ゾルベツキシマブ, AT132
2.当社は、会社の経常的な収益性を示す指標としてコアベースの業績を開示しています。当該コアベースの業績は、フルベースの業績から当社が定める非経常的な項目を調整項目として除外したものです。調整項目には、減損損失、有形固定資産売却損益、リストラクチャリング費用、災害による損失、訴訟等による多額の賠償又は和解費用等のほか、会社が除外すべきと判断する項目が含まれます。
(1) 事業活動遂行に係るリスクの特定とリスク低減への取り組み
グローバルに事業を展開する製薬企業には高い水準で各種規制を遵守することが求められており、当社も業績やレピュテーションに影響を及ぼしうる、多様なリスクに対応する必要があります。当社ではこれまでのリスク管理活動のさらなる発展を目指し、2019年度にリスク管理を統括するコーポレートリスクマネジメント部門及び経営管理・コンプライアンス担当が議長を務めるグローバル・リスク&レジリエンス委員会を新たに設置し、エンタープライズ・リスク管理の運用を進めています。
エンタープライズ・リスク管理では、全社的並びに部門別に識別されたリスクを、一貫した評価によって優先順位を付けて分類し、必要に応じて普遍的な解決手段の策定に結び付けます。識別されたリスクはグローバル・リスク&レジリエンス委員会で定期的に評価し、優先順位の高いリスクに関しては、代表取締役社長が議長を務めるエグゼクティブ・コミッティでその解決・低減策を協議します。
(2) リスク管理体制
当社のリスク管理体制は以下のとおりです。
詳細については、 「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ③ 内部統制システムに関する基本的な考え方及びその整備状況 2.リスク (損失の危険) の管理に関する規程その他の体制」をご参照ください。

(3) 最重要リスク
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関連する事項のうち、経営者が、連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している事項には、主として以下のようなものがあります。
なお、文中において将来について記載した事項は、当連結会計年度末において判断したものです。
①サイバーセキュリティに関するリスク
近年、サイバー攻撃はこれまで以上に技術が高度化し、攻撃手法も多様化・巧妙化しています。このような状況を踏まえ、当社はサイバーセキュリティに関するリスクを最重要リスクの一つと認識し、情報システム部門を中心に、ネットワーク及び設備の監視を始めとする各種サイバー攻撃対策をグローバルベースで実施し、その管理には万全を期しています。
しかしながら、これらの対策にもかかわらず、サイバー攻撃やそれに伴う深刻なシステム障害等により実質的にビジネスが中断した場合、または個人を特定できる情報を含む重要データが逸失、破損、社外流出した場合、当社グループの経営成績は大きな影響を受ける可能性があります。
②サプライチェーンマネジメントに関するリスク
医薬品事業において、安全で有効な医薬品を確実に製造し安定的に提供することは極めて重要です。当社はサプライチェーンマネジメントに関するリスクを最重要リスクの一つと認識し、製薬技術部門を中心に、医薬品の製造工程における製造管理、品質管理の基準 (GMP) 及び適正流通の基準 (GDP) に合致した独自の基準を設定し、製造施設・設備のほか、原料の調達から保管、製造、さらに配送まで、一貫した高水準の品質管理を徹底しています。また、サプライチェーンの複雑化に対応すべく、グローバルベースでの製造受託機関 (CMO) 管理の導入、緊急事態の供給に関する事業継続計画 (BCP) の作成等の対策を進めています。
しかしながら、これらの対策にもかかわらず、供給中断、欠品、品質問題が発生した場合、また、これらに伴い当社のレピュテーションが棄損した場合、当社グループの経営成績は大きな影響を受ける可能性があります。
③薬事行政の影響に関するリスク
医薬品事業は、事業を行っている各国の薬事行政により様々な規制を受けています。当社は米国政府による医薬品価格政策の変更を最重要リスクの一つと認識し、動向を注視しています。
このような先進国を中心とした医療費抑制策、開発、製造及び流通に関わる諸規制の厳格化等によって当社グループの経営成績は大きな影響を受ける可能性があります。
これらの当社グループが認識している最重要リスクに加え、研究開発の不確実性、知的財産権を侵害される又は侵害するリスク、製品に副作用や安全性の問題が生じるリスク、当社グループのビジネスが他社の開発した医薬品のライセンス及び販売に一部依存するリスクなど、製薬産業に特有のリスクのほか、競合品との競争、環境・安全衛生に関する関係法令違反、事業を行う過程において訴訟を提起されるリスク、災害などによる製造の遅滞や休止、為替レートの変動など、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性のあるさまざまなリスクが存在しています。なお、ここに記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー (以下「経営成績等」) の状況の概要は次のとおりです。
[財政状態]
第1四半期連結会計期間において、2020年1月に買収したAudentes社の取得資産と引受負債の公正価値を修正したことにより前連結会計年度末の連結財政状態計算書を遡及修正しています。その結果、遡及修正前と比較し、のれんが増加、無形資産と繰延税金負債が減少しました。なお、当連結会計年度末において、支払対価の配分は完了しています。
当連結会計年度末の連結財政状態計算書の概要及び遡及修正後の前連結会計年度末からの主な変動は以下のとおりです。
総資産は、2兆2,736億円 (前連結会計年度末比415億円減) となりました。
非流動資産は、1兆4,010億円 (同466億円減) となりました。有形固定資産は、2,646億円 (同40億円減) となりました。のれんは2,840億円 (同58億円増) 、無形資産は6,514億円 (同733億円減) となりました。当連結会計年度において、抗TIGIT抗体ASP8374/PTZ-201の開発中止に伴う減損損失や遺伝子治療薬AT132の開発計画の見直しに伴う減損損失を計上したことなどにより、無形資産が減少しました。
流動資産は、8,726億円 (同51億円増) となりました。現金及び現金同等物は3,261億円 (同77億円増) となりました。
資本合計は、1兆3,861億円 (同969億円増) となり、親会社所有者帰属持分比率は61.0%となりました。当期利益1,206億円を計上した一方で、剰余金の配当762億円を実施しました。
負債合計は、8,875億円 (同1,385億円減) となりました。
非流動負債は2,951億円 (同678億円増) となりました。その他の金融負債は1,990億円 (同697億円増) となりました。第1四半期連結会計期間において、短期借入金から長期借入金へ800億円の借り換えを実施したことにより、増加しました。
流動負債は5,924億円 (同2,063億円減) となりました。当連結会計年度末の社債の残高は1,200億円となりました。上述の短期借入金の長期借入金への借り換え及び返済などにより、その他の金融負債は1,482億円 (同1,975億円減) となりました。
[経営成績]
<連結業績 (コアベース) >
当連結会計年度の連結業績 (コアベース) は、下表のとおりです。売上収益、コア営業利益、コア当期利益はいずれも減少しました。
売上収益
・主要製品の前立腺がん治療剤XTANDI/イクスタンジ、急性骨髄性白血病治療剤ゾスパタの売上が引き続き増加したことに加え、尿路上皮がん治療剤PADCEVの共同販促収入の伸長が売上収益に貢献しました。
・加えて、過活動膀胱 (OAB) 治療剤ベタニス/ミラベトリック/ベットミガの売上が順調に推移したほか、骨粗鬆症治療剤イベニティや糖尿病治療剤スーグラとスージャヌ配合錠などの日本の新製品群が伸長しました。
・しかしながら、欧州におけるOAB治療剤ベシケアの独占販売期間満了をはじめ、日本における喘息治療剤シムビコート、KMバイオロジクス株式会社のヒト用ワクチン、高血圧症治療剤ミカルディスファミリー及び消炎・鎮痛剤セレコックスの販売契約終了などにより、売上収益が減少しました。さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、売上がマイナスの影響を受けました。
以上の結果、売上収益は、1兆2,495億円 (前連結会計年度比3.9%減) となりました。
コア営業利益/コア当期利益
・売上総利益は、1兆35億円 (同2.0%減) となりました。売上原価率は、製品構成の変化等により前連結会計年度に比べ1.6ポイント低下し、19.7%となりました。
・販売費及び一般管理費は、5,043億円 (同1.0%増) となりました。経費の効率的な使用やリソース配分の最適化を推進したことに加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い営業活動等を自粛したことなどによる経費の減少がありましたが、XTANDIの米国での売上拡大に伴う共同販促費用の増加、さらには前連結会計年度において損失評価引当金の戻入れが一過性の費用減少要因となっていたこともあり、総額として僅かに増加しました。
・研究開発費は、2,245億円 (同0.1%増) となりました。新型コロナウイルス感染症の拡大が一部の臨床試験の実施に影響したことによる開発費用の減少がありましたが、重点後期開発品である選択的ニューロキニン3受容体拮抗薬fezolinetantの開発費用の増加やAudentes社の研究開発費が加わったことにより、総額として前連結会計年度と同程度となりました。売上収益研究開発費比率は、前連結会計年度に比べ0.7ポイント増加し、18.0%となりました。
・無形資産償却費は、238億円 (同12.3%増) となりました。
以上の結果、コア営業利益は2,514億円 (同9.5%減) 、コア当期利益は2,099億円 (同5.9%減) となりました。
<連結業績 (フルベース) >
当連結会計年度の連結業績 (フルベース) は、下表のとおりです。売上収益、営業利益、税引前利益、当期利益はいずれも減少しました。
フルベースの業績には、コアベースの業績で除外される「その他の収益」、「その他の費用」等が含まれます。当連結会計年度における「その他の収益」は76億円 (前連結会計年度:122億円) 、「その他の費用」は1,230億円 (前連結会計年度:459億円) となりました。
「その他の費用」として、第2四半期連結会計期間において、抗TIGIT抗体ASP8374/PTZ-201の開発中止に伴う減損損失を302億円計上したことに加えて、第4四半期連結会計期間においては、X連鎖性ミオチュブラーミオパチー患者を対象とする遺伝子治療薬AT132の開発計画の見直しに伴う減損損失を588億円計上したことなどにより、フルベースの業績はコアベースの業績と比較して減益幅が大きくなりました。
<主要製品の売上>
(注) プログラフ:アドバグラフ、グラセプター、アスタグラフXLを含む
・XTANDI/イクスタンジの売上は、4,584億円 (前連結会計年度比14.6%増) となりました。日本、米国、エスタブリッシュドマーケット、グレーターチャイナ及びインターナショナルマーケットの全ての地域で売上が増加しました。
・ゾスパタの売上は、238億円 (同67.2%増) となりました。日本、米国及びエスタブリッシュドマーケットで売上が増加したことに加え、2020年8月にインターナショナルマーケットで、2020年12月にグレーターチャイナでそれぞれ販売を開始しました。
・PADCEVの米国での共同販促収入は大きく伸長し、128億円 (同607.3%増) となりました。
・2019年11月から日本において販売している腎性貧血治療剤エベレンゾは順調に伸長しました。
・ベタニス/ミラベトリック/ベットミガの売上は、1,636億円 (同1.2%増) となりました。米国で新型コロナウイルス感染症の拡大の影響による受診抑制に伴う需要減などにより売上が減少しましたが、日本、エスタブリッシュドマーケット、グレーターチャイナ及びインターナショナルマーケットでは売上が増加しました。
・プログラフの売上は、1,827億円 (同5.3%減) となりました。グレーターチャイナの売上は増加、インターナショナルマーケットの売上は前連結会計年度と同程度となりました。一方、それ以外の地域の売上は減少しました。
・日本では、イベニティをはじめ、スーグラとスージャヌ配合錠などの新製品群の売上が引き続き増加しました。一方、シムビコート、KMバイオロジクス株式会社のヒト用ワクチン、ミカルディスファミリー及びセレコックスの販売契約終了が主な売上の減少要因となりました。
・米国では、主に第1四半期連結会計期間において、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響による受診抑制に伴う需要減があったことから、心機能検査補助剤レキスキャンの売上が減少しました。
<地域別売上収益の状況>
地域別の売上収益は下表のとおりです。米国は増加した一方、日本、エスタブリッシュドマーケット、グレーターチャイナ及びインターナショナルマーケットは減少しました。
(注) エスタブリッシュドマーケット:欧州、カナダ、オーストラリア
グレーターチャイナ:中国、香港、台湾
インターナショナルマーケット:ロシア、中南米、中東、アフリカ、東南アジア、南アジア、韓国、輸出売上等
[セグメント情報]
当社グループは、医薬品事業の単一セグメントのため、記載を省略しています。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、3,068億円 (前連結会計年度比848億円増) となりました。
・法人所得税の支払額は179億円 (同301億円減) となりました。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、△819億円 (同3,079億円支出減) となりました。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、△2,295億円 (前連結会計年度は1,811億円の収入) となりました。
・長期借入による収入800億円があった一方、社債及び短期借入金残高の減少が2,060億円ありました。また、配当金の支払額は762億円 (前連結会計年度比26億円増) となりました。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、3,261億円 (前連結会計年度末比77億円増) となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
(注) 1.金額は、販売価格によっています。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。
(注) 1.主な相手先の販売実績及び総販売実績に対する割合は、以下のとおりです。
2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。また、文中において将来について記載した事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
なお、新型コロナウイルス感染症の拡大による当連結会計年度における経営成績等への大きな影響はありませんでした。
財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しています。
[キャッシュ・フロー]
キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しています。
[財務政策]
当社グループは、企業価値の持続的向上に努めるとともに、株主還元にも積極的に取り組んでいます。
成長を実現するための事業投資を優先しながら、配当については、連結ベースでの中長期的な利益成長に基づき、安定的かつ持続的な向上に努めます。また、自己株式の取得を必要に応じて機動的に実施し、資本効率の改善と1株当たり利益の向上を図ります。資金の流動性については、短期社債及び借入金による資金調達を行い、当面の運転資金及び設備資金に加え、一定の戦略的投資機会にも備えられる現預金水準を確保しています。
「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、当社グループの事業等は医薬品事業に特有の様々なリスクを伴っています。事業展開にあたっては、必要資金を円滑にかつ低利で調達できるよう財務基盤の健全性の維持に努めます。
当社グループは、IFRSに準拠して連結財務諸表を作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しています。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積り、判断及び仮定」に記載のとおりです。
(注) 1.以下の技術導入契約を終了しています。
・ゼリア新薬工業株式会社 (日本) とのアコチアミド (アコファイド) に関する技術導入契約
・Immunomic Therapeutics, Inc. (米国) とのスギ花粉症治療ワクチンに関する技術導入契約
・Merck & Co., Inc. (米国) との欧州等におけるフィダキソマイシン (ディフィクリア) に関する技術導入契約
・TOLMAR Inc. (米国) とのエリガードに関する技術導入契約
2.以下の技術導入契約は記載を省略しています。
・AstraZeneca UK Limited (英国) とのクエチアピンフマル酸塩 (セロクエル) に関する技術導入契約
・EAファーマ株式会社 (日本) とのナテグリニド (スターシス) に関する技術導入契約
・Arbor Group (米国) とのガバペンチン エナカルビル (レグナイト) に関する技術導入契約
・Ilypsa, Inc. (米国) とのビキサロマー (キックリン) に関する技術導入契約
・Cytokinetics, Incorporated (米国) との骨格筋活性化剤に関する技術導入契約
・Ambrx Inc. (米国) との新規抗体-薬物複合体 (ADC) に関する技術導入契約
3.アトルバスタチン (リピトール) に関する技術導入契約及びセレコキシブ (セレコックス) に関する技術導入契約について、相手先の記載をPfizer Group (米国) からViatris Group(米国)に変更しています。
4.Viatris Group (米国) とのアトルバスタチン (リピトール) に関する技術導入契約については、2021年7月をもって終了する変更契約を締結しています。また、当該契約の変更に伴い、2021年3月に製造権を返還しています。
5.Viatris Group (米国) とのセレコキシブ (セレコックス) に関する技術導入契約については、2021年7月をもって終了する変更契約を締結しています。また、当該契約の変更に伴い、2020年12月に共同販促を終了し、2021年3月に製造権を返還しています。
6.Seattle Genetics, Inc. (米国) はSeagen Inc.へ社名を変更しています。
(注) 1.以下の技術導出契約の契約期間を変更しています。
・Mundipharma Group (英国) とのベンダムスチン塩酸塩に関する技術導出契約
2.以下の技術導出契約を終了しています。
・シンバイオ製薬株式会社 (日本) との日本におけるベンダムスチン塩酸塩に関する技術導出契約
(注) 1.以下の取引契約の契約期間を変更しています。
・株式会社三和化学研究所 (日本) との「アーガメイト」の販売及び共同販促契約
2.以下の取引契約を終了しています。
・Genentech, Inc.(米国)との「タルセバ」の共同開発及び共同事業化契約
3.以下の取引契約は記載を省略しています。
・東レ株式会社 (日本) との「ドルナー」の販売契約
・株式会社三和化学研究所 (日本) との「キックリン」の共同販促契約
4.トーアエイヨー株式会社 (日本) との医薬品の販売提携契約については、提出日現在において契約期間を2022年3月までに変更しています。
(5) その他
・Nanna Therapeutics Limited (英国) 買収に関する契約
当連結会計年度において、当社の子会社であるアステラス ファーマ ヨーロッパ Ltd.は、バイオテクノロジー企業であるNanna Therapeutics Limitedとの間で、同社を買収する契約を締結しました。この契約に基づき、英国時間2020年4月18日に同社の買収が完了し、同社を当社の完全子会社としました。
・Iota Biosciences, Inc. (米国) 買収に関する契約
当連結会計年度において、当社の子会社であるアステラス US ホールディング Inc.は、スタートアップ企業であるIota Biosciences, Inc.との間で、同社を買収する契約を締結しました。この契約に基づき、米国西海岸時間2020年10月29日に同社の買収が完了し、同社を当社の完全子会社としました。
・アステラス ファーマ テック株式会社との合併
当社は、2022年4月1日 (予定) を効力発生日として、当社を吸収合併存続会社、当社の子会社であるアステラス ファーマ テック株式会社を吸収合併消滅会社とする吸収合併を行うことを決定しました。
① 吸収合併の目的
アステラス ファーマ テック株式会社は、当社の医療用医薬品や治験薬などの製造業務を行っています。今後、抗体医薬や細胞医療、遺伝子治療などのFocus Areaアプローチに基づく新たなモダリティを活用した新薬の早期上市、安定供給を実現するためには、早い段階から生産や供給を考慮して研究・開発を進めることが不可欠です。今回の吸収合併によって、2つの組織の隔たりがなくなり、製品化までのプロセス開発が加速され、さらに生産技術の融合が期待できます。
(a) 吸収合併の日程
合併決議日 :2020年11月11日
合併契約締結日 :2021年12月中 (予定)
合併期日 (効力発生日) :2022年4月1日 (予定)
当社を存続会社とし、アステラス ファーマ テック株式会社を消滅会社とする吸収合併です。
本合併による株式割当その他の対価の交付は行いません。
③ 引継資産・負債の状況 (2021年3月31日現在) (日本基準)
資産合計:95,247百万円
負債合計:13,275百万円
④ 吸収合併存続会社となる会社の概要
商号 :アステラス製薬株式会社
資本金の額:103,001百万円
事業の内容:医薬品の製造・販売及び輸出入
当社は、当連結会計年度を最終年度とする「経営計画2018」において、「製品価値の最大化とOperational Excellenceの更なる追求」「Focus Areaアプローチによる価値創造」「Rx+プログラムへの挑戦」の3つを戦略目標として掲げ、中長期にわたる持続的な成長に向けた取り組みを進めてきました。
当連結会計年度における主な取り組みは以下のとおりです。
(1) 製品価値の最大化とOperational Excellenceの更なる追求
主要製品の前立腺がん治療剤XTANDI/イクスタンジや過活動膀胱(OAB)治療剤ベタニス/ミラベトリック/ベットミガに加え、「経営計画2018」の期間中に発売された急性骨髄性白血病治療剤ゾスパタや尿路上皮がん治療剤PADCEV、腎性貧血治療剤エベレンゾ等、当社の成長をけん引する製品の育成と製品価値の最大化を図りました。
・XTANDI/イクスタンジについては、更なるマーケットアクセスの強化と泌尿器科医への一層の浸透に取り組むとともに、発売後に蓄積した臨床試験に基づく豊富なデータを活用し、より早期ステージの前立腺がんへの浸透を図りました。
・ベタニス/ミラベトリック/ベットミガについては、継続的な疾患啓発活動による市場拡大を目指すとともに、作用機序及び製品特性である有効性と忍容性のバランスを浸透させることにより、第一選択薬としてのポジショニングの確立を図りました。
・ゾスパタについては、2018年12月に日本と米国で、2019年11月に欧州で発売するなど、順調に発売国が拡大しました。また、急性骨髄性白血病治療の新たな選択肢として、血液内科専門医/がん専門医への浸透に取り組むとともに、製品認知度向上やFLT3遺伝子変異検査実施率の向上に取り組むなど、マーケットリーダーとしてのポジショニングの確立を図りました。
・PADCEVについては、2019年12月に米国で発売され、尿路上皮がんに対する新たな治療選択肢として、早期の市場浸透を図るとともに、承認を取得した適応症の患者層に対する推奨治療オプションとしてのポジショニングの確立を図りました。
・エベレンゾについては、 2019年11月に日本で発売し、新たな作用メカニズムの普及を通じた差別化により市場浸透を図るとともに、ファーストインクラスの低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素阻害薬としてマーケットシェアの拡大に取り組みました。
これらの製品を含む、中長期にわたる持続的な成長を支える重点後期開発品に優先的に経営資源を振り向け、着実に開発を進めました。中国におけるゾスパタの承認取得、日本におけるエベレンゾの追加適応承認取得や、米国におけるPADCEVの適応拡大を目的とした承認申請等、多くの進展がありました。
各重点後期開発品の開発の主な進捗状況は以下のとおりです。
・前立腺がん治療剤XTANDI/イクスタンジ(一般名:エンザルタミド)
2020年5月 日本において、遠隔転移を有する前立腺がんへの追加適応に関する承認を取得しました。
2020年6月 欧州において、非転移性去勢抵抗性前立腺がん患者を対象とした第Ⅲ相PROSPER試験で得られた全生存期間のデータを添付文書に追加することに関し、承認申請を行いました。
2020年10月 米国において、非転移性去勢抵抗性前立腺がん患者を対象とした第Ⅲ相PROSPER試験で得られた全生存期間のデータを添付文書に追加することに関し、承認を取得しました。
2020年11月 中国において、非転移性去勢抵抗性前立腺がんへの追加適応に関する承認を取得しました。
2021年3月 欧州において、転移性ホルモン感受性前立腺がんへの追加適応に関する販売承認勧告が採択されました。
・急性骨髄性白血病治療剤ゾスパタ(一般名:ギルテリチニブフマル酸塩)
2020年12月 未治療のFLT3遺伝子変異陽性急性骨髄性白血病患者を対象とした第Ⅲ相LACEWING試験において、主要評価項目(全生存期間の延長)が達成されず、当該試験への患者登録を中止しました。
2021年1月 中国において、成人の再発又は難治性のFLT3遺伝子変異陽性急性骨髄性白血病に関し、条件付き承認を取得しました。
2021年3月 再発又は難治性のFLT3遺伝子陽性急性骨髄性白血病患者を対象とした第Ⅲ相COMMODORE試験の中間解析において、主要評価項目(全生存期間)を達成したことを公表しました。
・尿路上皮がん治療剤 PADCEV(一般名:エンホルツマブ ベドチン)
2020年9月 白金製剤を含む化学療法及び抗PD-1抗体薬又は抗PD-L1抗体薬による治療歴のある局所進行性又は転移性尿路上皮がん患者を対象とした第Ⅲ相EV-301試験に関し、化学療法と比較して主要評価項目である全生存期間が統計学的に有意な延長を示したことを発表しました。
2020年10月 抗PD-1抗体薬又は抗PD-L1抗体薬による治療歴があり、白金製剤による化学療法未治療かつシスプラチン不適応の局所進行性又は転移性尿路上皮がん患者を対象とした第Ⅱ相EV-201試験コホート2に関し、良好な結果が得られたことを発表しました。
2021年2月 米国において、白金製剤を含む化学療法及び抗PD-1抗体薬又は抗PD-L1抗体薬による治療歴のある局所進行性又は転移性尿路上皮がん患者を対象として、第Ⅲ相EV-301試験の結果に基づき、生物学的製剤一部変更承認を申請しました。
2021年2月 米国において、抗PD-1抗体薬又は抗PD-L1抗体薬による治療歴があり、シスプラチン不適応の局所進行性又は転移性尿路上皮がん患者を対象として、第Ⅱ相EV-201試験コホート2の結果に基づき、生物学的製剤一部変更承認を申請しました。
2021年3月 日本において、治療歴のある局所進行性又は転移性尿路上皮がんの治療薬として、製造販売承認を申請しました。
2021年3月 欧州において、白金製剤を含む化学療法及び抗PD-1抗体薬又は抗PD-L1抗体薬による治療歴がある、局所進行性又は転移性尿路上皮がん患者を対象とした承認申請が、迅速審査の指定を受けました。
・腎性貧血治療剤エベレンゾ(一般名:ロキサデュスタット)
2020年4月 欧州において、成人の慢性腎臓病に伴う貧血に関する承認申請を行いました。
2020年11月 日本において、透析導入前(保存期)の慢性腎臓病に伴う貧血の追加適応に関する承認を取得しました。
・選択的ニューロキニン3受容体拮抗薬fezolinetant(一般名)
2021年2月 閉経に伴う中等度から重度の血管運動神経症状患者を対象とした2つの国際共同第Ⅲ相試験(SKYLIGHT 1及びSKYLIGHT 2)において、プラセボ投与群と比較して、統計学的に有意な血管運動神経症状の頻度及び重症度の改善を示し、全ての主要評価項目を達成したことを公表しました。
・抗Claudin18.2モノクローナル抗体ゾルベツキシマブ(一般名)
胃腺がん及び食道胃接合部腺がんを対象とした第Ⅲ相試験並びに膵臓腺がんを対象とした第Ⅱ相試験が進行中です。
その他、以下の承認取得及び承認申請がありました。
2020年5月 過活動膀胱治療剤ベシケア(一般名:コハク酸ソリフェナシン)に関し、2歳以上の小児における神経因性膀胱を追加適応症として、米国において承認を取得しました。
2020年12月 免疫抑制剤プログラフ(一般名:タクロリムス)に関し、肺移植における拒絶反応の抑制を追加適応症として、米国において承認申請を行いました。
2021年3月 過活動膀胱治療剤ミラベトリック(一般名:ミラベグロン)に関し、新剤型である懸濁液用顆粒(経口徐放性製剤)と既存の錠剤(徐放性製剤)について、3歳以上の小児における神経因性排尿筋過活動の追加適応症に関し、米国において承認を取得しました。
また、当連結会計年度において、以下の販売移管等がありました。
2020年10月 精神神経用剤/消化性潰瘍用剤ドグマチール(一般名:スルピリド)に関し、日本において、日医工株式会社への製造販売承認の承継及び販売移管をしました。
2020年12月 非ステロイド性消炎・鎮痛剤セレコックス(一般名:セレコキシブ)に関し、日本において、ヴィアトリス製薬株式会社と共同で行っていた販促活動を終了しました。また、2021年7月31日をもってセレコックスに係る製造販売承認を当社から同社に承継し、販売を移管する予定です。
2021年3月 機能性ディスペプシア治療剤アコファイド(一般名:アコチアミド塩酸塩水和物)に関し、日本においてゼリア新薬工業株式会社と行っていた共同販促活動を終了し、当社が行っていた流通・販売を同社に移管しました。
Operational Excellenceの更なる追求の取り組みでは、多面的な視点から全ての活動を見直し、ビジネス基盤の強化を図りました。当連結会計年度における主な取り組みは以下のとおりです。
2020年11月 当社の完全子会社であるアステラス ファーマ テック株式会社及びアステラスグリーンサプライ株式会社を当社が吸収合併することを決定しました(合併期日:2022年4月1日(予定))。
2020年11月 クロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤ディフィクリア錠(一般名:フィダキソマイシン)に関し、欧州、中東、アフリカ及び独立国家共同体の一部地域において、製造販売承認をTillotts Pharma社(スイス)に承継する資産譲渡契約を締結し、対象国・地域における承継を進めています。
2021年1月 国内4カ所目の物流拠点となる九州物流センターを、福岡県北九州市に稼働させました。
2021年1月 当社の生産子会社であるアステラス ファーマ テック株式会社の焼津技術センター内に、無菌製剤の製造ラインを新設することを決定し、着工しました。
2021年1月 当社子会社のアステラス ファーマ ヨーロッパ Ltd.が販売していた進行性前立腺がん治療剤エリガード(一般名:リュープロレリン酢酸塩)について、欧州や中東、独立国家共同体、アジア等におけるライセンスをTolmar International社(アイルランド)に返還しました。また、同社から新たにライセンスを受けてエリガードを販売するRecordati Industria Chimica e Farmaceutica社(イタリア)との間で、製造販売承認の承継及び販売移管に関する契約を締結し、対象国・地域における承継及び移管を進めています。
(2) Focus Areaアプローチによる価値創造
当社は、Focus Areaアプローチによる価値創造の取り組みとして、3つの構成要素「①病態関連性が高いバイオロジー」「②汎用性のあるモダリティ/テクノロジー」「③これらバイオロジー、モダリティ/テクノロジーの2つの要素により解決が期待されるアンメットメディカルニーズの高い疾患」の組合せの集合をFocus Areaとして定義し、このFocus Areaに独自の専門性とプラットフォームを構築することで、革新的製品の継続的な創出を目指しています。複数の新薬候補が生み出され、リード化合物が臨床段階まで進んだ時に、Primary Focusという、最優先に経営資源を投下する領域として認定しています。
2021年3月現在、Primary Focusとして「再生と視力の維持・回復」「ミトコンドリアバイオロジー」「遺伝子治療」「がん免疫」の4つを認定するとともに、新たに「がん原遺伝子変異」「免疫ホメオスタシス」の2つをPrimary Focus候補として認定しています。
「遺伝子治療」においてはオーデンテス セラピューティクス Inc.が、「がん免疫」においてはザイフォス バイオサイエンシズ Inc.が、それぞれ中核拠点としてPrimary Focusのさらなる前進に向けて取り組んできました。さらに、2021年4月には、オーデンテス部門の再編を行い、遺伝子治療の領域に特化した研究・製造部門、開発部門、コマーシャル部門(Astellas Gene Therapiesと総称する)を設置しました。
また、各Primary Focusの進捗に加え、もともと独立していたPrimary Focus同士が有機的につながり始めています。各Primary Focusで研究していたモダリティ/テクノロジーが、他のPrimary Focusでも活用されることで、様々なバイオロジーや疾患への展開が進んでいます。
当連結会計年度における各Primary Focusの主な進展は以下のとおりです。
・遺伝子治療
2020年12月 米国食品医薬品局の指示により差し止めとなっていたX連鎖性ミオチュブラーミオパチー患者を対象とする遺伝子治療AT132(一般名:resamirigene bilparvovec)の第Ⅰ/Ⅱ相試験(ASPIRO試験)に関し、米国食品医薬品局から差し止め解除の通知を受領しました。
2021年3月 2021年4月1日付でオーデンテス部門を再編し、遺伝子治療の中核拠点の役割を担うAstellas Gene Therapiesを設置することを公表しました。
・再生と視力の維持・回復
2020年9月 ピッツバーグ大学(米国)との間で、後眼部疾患の一つである萎縮型加齢黄斑変性の治療に対する開発候補品創出を目的として、アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いた遺伝子治療に関する共同研究を開始したことを公表しました。
・がん免疫
2020年12月 KaliVir Immunotherapeutics社(米国)と、静脈内投与が可能な腫瘍溶解性ウイルス「VET2-L2」及び2番目となる後続の開発候補品の共同研究開発及び商業化に関する、全世界における独占的ライセンス契約を締結しました。
・ミトコンドリアバイオロジー
2020年4月 ミトコンドリア関連疾患を含むアンメットメディカルニーズの高い、加齢に伴う疾患に対する創薬研究に注力するバイオベンチャー企業であるNanna Therapeutics社(英国)を買収し、同社を当社の完全子会社としました。
2020年10月 選択的PPARδ調節剤ASP0367/MA-0211に関し、原発性ミトコンドリアミオパチー治療薬としての開発について、米国においてファストトラック指定を受けました。
・その他
2020年4月 ハーバード大学(米国)と、相互に関心のある革新的治療薬及び技術に関する研究開発に向けた戦略的研究提携体制を構築すべく提携したことを公表しました。
2020年7月 オピオイド使用障害の治療における追加維持療法を適応として開発中のGABAB受容体陽性アロステリック修飾物質ASP8062の2つの第Ⅰ相試験に関し、米国国立薬物乱用研究所から、これらの試験に対する助成金を獲得しました。
2020年9月 国立大学法人東京大学内の、東京大学ライフサイエンス連携研究教育拠点及び東京大学センター・オブ・イノベーションのそれぞれと、革新的な新薬や医療ソリューションの創出を目指して連携協力して行う取り組みに関する協定を締結しました。
2020年10月 これまでPrimary Focusに認定してきた「ASIM(抗原特異的免疫調節)バイオロジー」について、プロジェクトを創出する役割を完了したと判断し、次世代免疫調節技術の研究に移行することを公表しました。
2021年3月 学校法人同志社 同志社大学及び公立大学法人和歌山県立医科大学のそれぞれと、AI及び統計学を活用した、医薬品開発の意思決定最適化及び患者さん個別の治療効果推定に関する共同研究について、共同研究契約を締結しました。
(3) Rx+プログラムへの挑戦
当社は、中長期にわたる持続的な成長を実現していくため、Rx+プログラムに挑戦しています。当社がこれまで医療用医薬品(Rx)事業で培ってきた強みをベースに、最先端の医療技術や異分野の先端技術を融合させることで、Patient Journey全体において患者さんに貢献し、かつ単独で利益を生み出せる事業をRx+事業と定義しています。Rx+事業創出の戦略的方向性を示すRx+ Storyに基づき、「科学的根拠に基づくヘルスケアソリューションによって、心身ともに健康に、自分らしく生きることができる社会」の実現を目指し、事業創出活動に鋭意取り組んでいます。
当連結会計年度における主な取り組みは以下のとおりです。
・慢性疾患の重症化予防
2020年4月 株式会社バンダイナムコエンターテインメントと、ゲーム性を取り入れた科学的根拠のある運動プログラムの提供を通じて、運動の継続を支援するスマートフォン等向けアプリの共同開発、試験販売等に関する契約を締結したことを公表しました。
2020年9月 神奈川県横浜市、公立大学法人横浜市立大学との産官学連携により開発した、科学的根拠に基づいた2型糖尿病患者に対する運動療法のための運動プログラムについて、神奈川県内のフィットネスクラブを通じて、地域限定でサービスを開始しました。
・身体・運動機能の補完・代替
2020年10月 バイオエレクトロニクス技術に特化し、画期的な極小体内埋め込み型医療機器に関する技術を有するIota Biosciences社(米国)を買収し、同社を当社の完全子会社としました。
・手術・診断精度向上による患者アウトカム最大化
2020年10月 腹部及び骨盤内手術時に尿管を可視化する蛍光造影剤ASP5354の開発について、米国食品医薬品局からファストトラック指定を受けました。
2021年1月 Actinium Pharmaceuticals社(米国)と、診断と治療を組み合わせるセラノスティクス開発への取り組みの一環として、分子標的型放射線治療に関する共同研究を開始したことを公表しました。
なお、当連結会計年度の研究開発費は