当社は、人々の健康で豊かな生活のために、研究開発を基盤とした新たな価値の創造により、広く社会に貢献することを企業理念とし、以下の経営理念を掲げております。
■ 顧客視点の経営と革新的な研究を旨とし、これからの医療と健やかな生活に貢献する
■ たゆまぬ事業の発展を通して企業価値を持続的に拡大し、株主の信頼に応える
■ 社員が自らの可能性と創造性を伸ばし、その能力を発揮することができる機会を提供していく
■ 企業市民として社会からの信用・信頼を堅持し、よりよい地球環境の実現に貢献する
当社は、この企業理念の実践を「CSR経営」と定義し、事業活動を通してSDGs(持続可能な開発目標)の達成にも貢献していきます。
高齢化社会の進展や医療財政のさらなるひっ迫が想定されるなか、製薬業界は、デジタル技術を活用した創薬や治療方法の創出、予防医療の普及など「変革の時」を迎えています。かかる環境において、当社は、企業理念のもと、ヘルスケア領域での課題解決に貢献するため、新たなビジョン「もっと、ずっと、健やかに。最先端の技術と英知で、未来を切り拓く企業」と、2018年度を起点とした2022年度までの5か年の「中期経営計画2022」を2019年4月に発表しました。
「中期経営計画2022」の基本方針は、次のとおりです。
中期経営計画2022
<基本方針>
ポスト・ラツーダ、すなわち、2023年2月20日以降に米国において非定型抗精神病薬「ラツーダ」の後発医薬品の市場参入が可能となる将来の事業環境を見据えつつ、「変革の時」に対応するため、「成長エンジンの確立」と「柔軟で効率的な組織基盤づくり」により、事業基盤の再構築に取り組む。
この方針に則り、当社は、2019年12月からロイバント・サイエンシズ・リミテッド(以下「ロイバント社」)との戦略的提携を開始するとともに、新設子会社であるスミトバント・バイオファーマ・リミテッド(以下「スミトバント社」)の傘下に5社の子会社を迎えました。この戦略的提携では、米国における「ラツーダ」の独占販売期間終了後の持続的成長に向けて、大型化を期待するレルゴリクス(ゴナドトロピン放出ホルモン受容体アンタゴニスト)およびビベグロン(β3アドレナリン受容体アゴニスト)を含む多数のパイプラインならびに当社のデジタル革新を加速するヘルスケアテクノロジープラットフォームであるDrugOMEおよびDigital Innovationとそれらに関わる人材を獲得しました。他方で、ポスト・ラツーダの成長ドライバーとして期待していたナパブカシンの開発を2021年3月に中止しました。
ナパブカシンの開発中止による影響は、売上収益の減少はスミトバント社新製品の売上増加により補えるものの、スミトバント社新製品の販売関連費用および特許権償却費の計上の影響もあり、コア営業利益は減少すると見込んでいます。これを踏まえて、「中期経営計画2022」で掲げた2022年度の経営目標について、次のとおり修正しました。
2022年度の経営目標
※1 ROIC=(コア営業利益-法人所得税)/(資本合計+有利子負債)
※2 ROE=親会社の所有者に帰属する当期利益/親会社の所有者に帰属する持分
当社グループは、レルゴリクスおよびビベグロンの製品価値最大化を追求すると同時に、中長期的な事業拡大に向け、精神神経領域、がん領域および再生・細胞医薬分野において大型化が期待できる製品の開発に最大限注力してまいります。また、フロンティア事業の展開も推進してまいります。事業運営においては、各事業ユニットおよび地域での基盤強化などの経営体質の強化を進めるとともに、変革を加速する企業文化の醸成と人材の育成にも継続して取り組みます。
また、DrugOMEの解析担当者およびDigital Innovationの活用を推進する専任技術者を日米で合わせて約35名擁し、生産性の向上と業務課題の解決を進めていますが、今後もデジタル技術を積極的に活用し、データ駆動型企業への変革を加速してまいります。
当社グループは、これらの取組を通じて持続的に成長することにより、2020年代の後半にROE10%以上となることを目指してまいります。
2021年度活動方針
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により、当社グループが事業を展開する各国・地域において、情報提供活動の制限や臨床試験の遅延が生じるなど、事業活動への様々な影響が続いています。当社グループは、引き続き、患者さんに確実に医薬品をお届けするため、原材料の確保から製品の製造および販売に至る各段階の活動が停滞しないよう細心の注意を払い、医薬品の安定供給に努めるとともに、医療関係者、取引先、従業員等の安全を最優先に事業活動を進めてまいります。また、オンラインコミュニケーションツールの活用など、テレワークにより対面での意思疎通ができないことを補う取組を推進してまいります。
当社グループの2021年度の事業活動方針は、次のとおりです。
①CSR経営
当社グループは、CSR経営を実践していくための重要課題をマテリアリティとして特定しています。マテリアリティでは、革新的な医薬品と医療ソリューションの創出、サイエンス発展への貢献などの持続的成長のために重要な独自性の高い「価値創造につながるマテリアリティ」と、コーポレートガバナンス、コンプライアンスなどの事業活動継続のために不可欠である「事業継続の基盤となるマテリアリティ」に分類して取り組んでいます。今後も様々なステークホルダーからのご意見を踏まえ、定量目標の設定も含め、当社の企業理念に整合する適切な目標となるよう継続的な見直しを行い、また、これを実践することを通じて、企業価値の向上に取り組んでまいります。

②研究開発活動
当社グループは、「グローバル・スペシャライズド・プレーヤー」を2033年の目指す姿として掲げています。精神神経領域、がん領域および再生・細胞医薬分野の重点3領域でグローバルリーダーになることを目指し、積極的に研究開発に取り組むとともに、価値にフォーカスしたベストインクラスの医薬品の開発や、感染症領域の研究開発にも取り組んでまいります。また、医薬品以外のヘルスケア領域でのソリューションを提供することを目的として、フロンティア事業にも取り組んでまいります。また、AIを用いた創薬やDrugOMEなどの積極的なデジタル技術の活用および日米各グループ会社の連携強化を通じたシナジー効果の発揮により、研究開発の生産性向上にも取り組んでまいります。

(ア)精神神経領域
先端技術を取り入れながら築いた自社独自の創薬技術プラットフォームを基盤に、競争力のある創薬研究を推進しています。精神疾患領域(統合失調症、うつ、神経疾患周辺症状など)においては、神経回路病態に基づく創薬によりアンメット・メディカル・ニーズを満たす治療の最適化を目指し、神経疾患領域(認知症、パーキンソン病、希少疾患など)においては、分子病態メカニズムに基づく創薬により神経変性疾患の根治療法を目指しています。また、自社製品の臨床試験の情報から得られた知見をトランスレーショナル研究に活用し、ゲノム情報やイメージング画像などのビッグデータから適切な創薬ターゲットやバイオマーカーを選定することで、研究開発の確度の向上を図ってまいります。
開発段階では、日米が一体となったグローバル臨床開発体制のもと、戦略的な開発計画を策定し、効率的に臨床開発を推進して、早期に承認取得することを目指しています。
SEP-363856について、米国での統合失調症を対象としたフェーズ3試験ならびに日本および中国での統合失調症を対象としたフェーズ2/3試験を推進し、加えて、他の疾患を対象とした臨床試験の開始に向けて検討を進めてまいります。また、SEP-4199について、国際共同フェーズ2試験の結果を踏まえて、双極Ⅰ型障害うつを対象としたフェーズ3試験を開始します。さらには、エクセンティア・リミテッドとの共同研究を通じて、AIを活用して創製した、強迫性障害を対象としたフェーズ1試験を実施中のDSP-1181や、治療抵抗性うつを対象としたフェース1試験を実施中のSEP-378614などの初期開発品についても、積極的に取り組んでまいります。
(イ)がん領域
当社グループは、これまでの研究開発活動を通じて、様々な知見を得るとともに、創薬力を強化し、特長を有する複数の開発パイプラインを創出してまいりました。これらを生かし、引き続きアンメット・メディカル・ニーズの高いがん領域の研究開発に注力してまいります。
創薬においては、自社が有する新規技術を用いたモダリティ展開やアカデミアとの共同研究などの取組を通じて競争力を高め、革新的な新薬の創出を目指してまいります。
開発段階では、当社の特長を有する開発パイプラインについて、短期、小規模の試験により最適な対象がん種および製品価値を見極め、成功確度の向上と早期の承認取得を目指してまいります。
膠芽腫を対象とした併用での国際共同フェーズ3試験を実施中のがんペプチドワクチンであるアデグラモチド酢酸塩/ネラチモチドトリフルオロ酢酸塩(開発コード:DSP-7888)のほか、急性骨髄性白血病を対象として外部研究機関主導治験によるフェーズ1/2試験を実施中のdubermatinib(開発コード:TP-0903)に加えて、初期開発品の臨床開発を進めてまいります。
(ウ)再生・細胞医薬分野
オープンイノベーションを基軸に、高度な工業化・生産技術と最先端のサイエンスを追求する当社独自の成長モデルにより早期事業化を目指し、複数の研究開発プロジェクトを推進してまいります。神経領域および眼疾患領域に関するプロジェクトを着実に推進するとともに、立体臓器の再生を含む次世代の再生医療の取組も視野に入れ、グローバル(日本、米国およびアジア)での展開を目指し、まずは日本および米国を中心に次期中期経営計画(以下「次期中計」)の期間(2023年度から2027年度まで)での収益貢献を目指してまいります。
小児先天性無胸腺症を対象として2021年4月に再申請を行ったRVT-802について、2021年度中の承認取得に向けて取り組んでまいります。iPS細胞由来では、パーキンソン病を対象として京都大学にて医師主導治験実施中の先駆け審査指定制度の指定品目である「非自己iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞」について、2021年度中に7例すべての治験予定の患者さんへの細胞移植が完了する予定であり、当社グループは、京都大学と連携して実用化に向けて取り組むとともに、米国での2022年度の企業治験開始を目指した準備を進めてまいります。また、加齢黄斑変性について、2021年度中の企業治験開始を目指し、網膜色素変性、脊髄損傷および腎不全の研究開発プロジェクトについても提携先とともに積極的に推進してまいります。さらには、次世代技術を取り入れたパイプラインの拡充にも取り組んでまいります。
(エ)感染症領域
薬剤耐性菌感染症治療薬、マラリアワクチンおよびユニバーサルインフルエンザワクチンの共同研究を推進するなど、グローバルヘルスに貢献するため、引き続き研究開発に積極的に取り組み、次期中計の期間中の実用化を目指してまいります。
(オ)その他の領域
米国における「ラツーダ」の独占販売期間終了後の成長に向けて、価値にフォーカスしたベストインクラスの医薬品の開発などを推進してまいります。米国において、子宮筋腫を対象とした承認申請を行ったレルゴリクス配合剤について、着実な承認取得に向けて取り組む(2021年5月承認取得済)とともに、子宮内膜症を対象とした承認申請に向けて準備を進めてまいります。また、rodatristat ethylについて、肺動脈性肺高血圧症(PAH)を対象としたフェーズ2試験を進めてまいります。
日本においては、イメグリミン塩酸塩の2型糖尿病を対象とした承認取得に向けて取り組んでまいります。(2021年6月承認取得済)
(カ)フロンティア事業
株式会社Save Medicalとの2型糖尿病管理指導用モバイルアプリケーション(開発コード:SMC-01)の共同開発を推進するなど、自社医薬事業とシナジーが見込める領域として、メンタルレジリエンス(精神神経疾患の兆候を早期に把握することによる悪化の未然防止)およびアクティブエイジング(高齢者の健康の意識レベルからの改善および維持・向上)にフォーカスし、核となる技術(情報系、工学系等)やネットワーク(アライアンス、ベンチャー投資等)などの事業基盤の構築を進めることにより、次期中計の期間に成長エンジンとして確立することを目指し、日本、米国および中国を中心に様々な展開の可能性を追求してまいります。
③各地域セグメントにおける事業活動
日本においては、薬価中間年改定の開始などの薬剤費抑制策により厳しさを増す市場環境に対応すべく、より一層の効率的な事業運営を推進してまいります。精神神経領域では、2020年6月に統合失調症および双極性障害におけるうつ症状の改善を適応症として上市した「ラツーダ」の市場浸透に努めてまいります。糖尿病領域では、2型糖尿病治療剤「トルリシティ」、「エクア」および「エクメット」の販売拡大に努めるとともに、2021年度に上市を計画しているイメグリミン塩酸塩の販売準備活動を進めてまいります。
北米セグメントでは、ポスト・ラツーダを見据えた成長路線の確立を目指し、サノビオン・ファーマシューティカルズ・インク(以下「サノビオン社」)およびスミトバントグループにおいて事業活動を進めてまいります。サノビオン社では、当社グループの収益の柱である「ラツーダ」のさらなる収益拡大、また、2020年9月に上市したパーキンソン病に伴うオフ症状治療剤「キンモビ」に注力してまいります。スミトバントグループでは、マイオバント・サイエンシズ・リミテッド(以下「マイオバント社」)が2021年1月に上市した進行性前立腺がん治療剤「オルゴビクス」(一般名:レルゴリクス)および2021年度に上市を計画している子宮筋腫を対象としたレルゴリクス配合剤「マイフェンブリー」について、ファイザー・インク(以下「ファイザー社」)とのコ・プロモーションにより速やかな市場浸透および販売拡大に注力してまいります。ユーロバント・サイエンシズ・リミテッド(以下「ユーロバント社」)では、2021年4月に上市した過活動膀胱治療剤「ジェムテサ」(一般名:ビべグロン)の市場浸透に努めてまいります。マイオバント社およびユーロバント社の販売に際しては、サノビオン社が有するコマーシャル機能を有効活用するなど、効率的な販売に努めてまいります。
当社グループは、中国を第3の柱として基盤強化に取り組むとともに、アジアを成長市場として捉えて足場固めを推進してまいります。中国セグメントでは、薬剤費抑制策が進んではいるものの、さらなる成長に向けて、カルバペネム系抗生物質製剤「メロペン」、非定型抗精神病薬「ロナセン」および「ラツーダ」の販売拡大に努めてまいります。東南アジアでは、自社パイプラインに適した国での事業拡大を進めるとともに、提携企業との連携による「メロペン」および「ラツーダ」の販売拡大に努めてまいります。
④柔軟で効率的な組織基盤の構築
当社グループは、「変革の時」に対応し、「ちゃんとやりきる力」を強化するため、「粘り強く精緻に物事を進める文化」を維持しつつ、環境変化を好機と捉えて潮流を読み、自ら変革して柔軟に動く文化の醸成および人材の育成を推進してまいります。
また、事業環境の変化に対応していくため、基盤強化を進めるとともに、Digital Innovationの利用拡大などデジタル革新を推進してまいります。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響によりテレワークを余儀なくされるなかでの業務効率の向上など、これを機に働き方改革の加速に取り組んでまいります。
株主還元
当社は、株主への還元について、安定的な配当に加えて、業績向上に連動した増配を行うことを基本方針としており、「中期経営計画2022」で掲げているとおり、2018年度から2022年度までの5年間における平均の配当性向20%以上を目指してまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)に重要な影響を及ぼす可能性のある主なリスクには以下のようなものがあります。当社は、これらのリスクが発生する可能性を認識した上で、発生の防止または最小化に努めるとともに、発生した場合の的確な対応に努めていく方針です。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。また、すべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見できない又は重要と見なされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。
(1) 新製品の研究開発に関わるリスク
当社グループは、独創性の高い国際的に通用する有用な新製品の開発に取り組んでおります。しかしながら、新薬開発の難度が高まる中、開発が今後計画どおりに進み承認・発売に至るとは限らず、また、有効性や安全性の観点から開発が遅延し、または開発を中止しなければならない事態も起こり得ます。大型化を期待している研究開発品目においてそのような事態が発生した場合には、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは研究開発リスクも踏まえつつ、精神神経領域、がん領域および再生・細胞医薬分野を重点3領域として研究開発に注力し、当該領域におけるパイプラインの充実化を進めております。また、グローバルで運営する開発体制とすることにより、戦略的な開発計画を策定し、効率的な臨床開発を推進しております。当社では、開発ステージの移行時期にあわせて計画修正の是非等を確認する会議体などを通じて適宜研究開発方針を見直し、適切にポートフォリオを管理しております。
(2) 連結売上収益における比率の高い特定製品に関するリスク
当社グループの収益の柱である、「ラツーダ」(ルラシドン塩酸塩)の当連結会計年度の北米での売上収益は、当社連結売上収益の40%を占めております。「ラツーダ」の有力な競合品の出現(これには先発医薬品メーカーによる競合品の上市のほか、後発医薬品メーカーによる「ラツーダ」の競合品の発売が含まれますが、これらに限りません。)または原材料調達を含むサプライチェーンへの影響その他の予期せぬ事情等により、売上収益が減少した場合には、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、中期経営計画2022のもと、成長エンジンの確立に取り組んでおります。精神神経領域、がん領域および再生・細胞医薬分野の重点3領域を中心とする研究開発への注力に加え、戦略的投資によって早期の収益に貢献することが期待できる後期開発品目の獲得を含むパイプラインの充実化を図っております。また、自社医薬事業とのシナジーが見込める領域を中心に、社会に新しい価値を提供するヘルスケアソリューションの事業化に向けたフロンティア事業の立ち上げにも取り組んでおります。地域戦略においては、主力市場である日本および北米に加え、中国を第3の柱として事業基盤の強化に取り組んでおります。
(3) 知的財産権に関わるリスク
当社グループは研究開発において種々の知的財産権を保有しておりますが、当社グループの技術を十分な範囲で権利化できない場合、競合他社が当社グループの知的財産権を回避した場合、または当社が厳格に管理しているノウハウなどの営業秘密が予期せぬ事態により外部に流出した場合には、競争上の優位性を確保できない可能性があります。また、当社グループの事業は多くの知的財産権によって保護されていますが、保有する知的財産権が第三者に侵害された場合のほか、知的財産権の有効性や帰属を巡る係争が発生した場合には、競争上の優位性を十分に保持できない可能性があります。これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。他方、当社グループは、事業活動に必要な知的財産権について適法に使用する権限を有していると認識しておりますが、当該認識の範囲外で第三者の知的財産権を侵害する可能性があります。
当社グループでは、主となる物質特許のみならず、用途、製法、製剤などの関連特許を含めたパテントポートフォリオを構築し、製品および開発品の総合的な保護を図っております。また、再生・細胞医薬分野の事業化を推進するため、同分野における当社グループの技術を権利化するにあたっての課題を検討し、権利化のための方策を講じております。
(4) 医療制度改革について
国内においては、急速に進展する少子高齢化等により医療保険財政が悪化する中、先発医薬品の価格抑制や後発医薬品の使用促進などの医療費抑制策が図られ、さらなる医療制度改革の論議が続けられております。また、医療用医薬品の最大市場である米国においても、連邦・州政府および世論を通じたブランド薬の薬価引き下げ圧力が年々高まっており、薬価抑制を企図した制度改革が決定・導入される可能性があります。さらには、中国においても政府による医薬品の集中購買制度の拡大をはじめとした医薬品費用抑制を企図する医療制度変更が推進されています。これら各国の医療制度改革の方向性によっては当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、医薬品会社として各国制度を遵守し、制度に従って適切に対応を行います。
(5) 副作用に関わるリスク
医薬品は開発段階において充分に安全性の試験を実施し、世界各国の所轄官庁の厳しい審査を受けて承認されておりますが、市販後に新たな副作用が見つかることも少なくありません。当社グループが販売する医薬品について市販後に予期せぬ副作用が発生した場合は、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、国内外で収集された安全性情報をデータベースで一元管理して評価し、医薬品の安全性確保および適正使用のために必要な対策を立案し、タイムリーな安全対策の実施につなげております。このような活動は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」や「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する省令」を遵守した医薬品安全性監視活動として実践しております。
(6) 品質に関わるリスク
当社グループは、厳格な品質管理のもと製品の製造および委託製造を行っておりますが、重大な品質問題が発生した場合には、製品回収、行政処分、社会的信用の毀損等により、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社製品のグローバルな製造及び流通については、医薬品等の製造管理及び品質管理の基準(GMP)や医薬品規制調和国際会議(ICH)ガイドライン等の薬事関連法規に準拠しており、厚生労働省、米国食品医薬品局(FDA)や欧州医薬品庁(EMA)などの所管当局の厳しい査察を受け、許可を得ております。また、これら製造所に対しては当社グループにて定期的な監査を行い、重大な品質問題や法令違反がないことを確認しております。さらにグローバル品の製造所に対しては海外提携企業からの監査も受けており、グローバルレベルの厳しい品質基準もクリアする高い設備設計水準や品質保証体制を整えております。
(7) 主要な事業活動の前提となる事項について
当社グループの主な事業は医療用医薬品事業であり、国内においては、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」等の薬事に関する法令に基づき、その研究開発および製造販売等を行うにあたり、「第一種医薬品製造販売業」、「第二種医薬品製造販売業」(いずれも有効期間5年)等の許可等を取得しております。また、海外においても医療用医薬品事業を行うにあたっては、当該国の薬事関連法規等の規制を受け、必要に応じて許可等を取得しております。これらの許可等については、各法令で定める手続きを適切に実施しなければ効力を失います。また各法令に違反した場合、許可等の取消し、または期間を定めてその業務の全部もしくは一部の停止等を命ぜられることがある旨が定められております。当社グループは、現時点において、許可等の取消し等の事由となる事実はないものと認識しておりますが、将来、当該許可等の取消し等を命ぜられた場合には、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、コンプライアンスの推進を全ての事業活動の土台と位置付け、法令および企業倫理の遵守に努めております。当社では、「コンプライアンス行動基準」を制定し、事業活動における具体的な行動の規範としております。また、当社および国内外におけるグループ会社のコンプライアンスに関する事項を統括するコンプライアンス担当執行役員を設置しております。コンプライアンス担当執行役員は、当社のコンプライアンス委員会に加えて、国内グループ会社コンプライアンス委員会および海外グループ会社コンプライアンス委員会の委員長を務めるとともに、各委員会の活動状況を取締役会に報告しております。
(8) 訴訟に関わるリスク
当社グループの事業活動に関連して、医薬品の副作用、製造物責任、公正取引等に関連し、訴訟を提起される可能性があります。これらの訴訟およびその他の訴訟には性質上不確実性があり、その動向によっては、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(9) 工場の閉鎖または操業停止に関わるリスク
当社グループの工場が、技術上の問題、使用原材料の供給停止、火災、地震、その他の災害、感染症拡大等により閉鎖または操業停止となり、製品の供給が遅滞もしくは休止した場合、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社グループの工場では、事業継続計画(BCP)に基づいて緊急時対応手順をマニュアルとして整備し、対応しています。
(10) 非金融資産の減損損失リスク
当社グループは、持続的成長のために、企業買収や開発品の導入等を行っておりますが、これに伴い、のれんや仕掛研究開発等の無形資産を計上しております。開発の中止や当初想定した利益の実現が見込めない等、期待する将来利益の低下により、買収および導入等から見込まれる回収可能価額が、のれんや無形資産の帳簿価額を下回ると想定される場合、減損損失が発生し、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、定期的にこれらのれんや無形資産の減損テストを通じて評価額を把握し、適切に処理しております。
(11) 金融資産に関わるリスク
当社グループは、他社株式等の金融資産を保有しております。これら保有する金融資産の市場価額または公正価値が帳簿価額を下回った場合、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社は、企業提携、重要な取引先との取引関係の構築・維持その他事業上の必要性のある場合を除き、新たに他社の株式を保有しないこととしております。また、定期的にこれらの金融資産の減損テストを行い、評価額変動の把握および必要な処理を行っております。
(12) 金融市況および為替変動による影響について
金利動向によっては借入金等の支払利息が増加するほか、金融市況の悪化によっては退職給付制度債務が増加するなど、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、金利リスクを回避する目的で固定・変動金利を組み合わせた資金調達の最適化を図っております。また、為替相場の変動によっては、外貨建て金融資産および連結子会社業績等の円換算において、重要な影響を受ける可能性があります。当社グループでは、為替リスクを回避する目的で為替予約を行っております。
(13) 親会社との取引について
当社と親会社である住友化学株式会社との間で、研究所および工場の土地賃借、これらの事業所等で使用する用役や主に原薬を製造する際に使用する原料の購入契約を締結しております。当該契約等は、一般的な市場価格を参考に双方協議のうえ合理的に価格が決定され、当事者からの申し出がない限り1年ごとに自動更新されるものであります。このほか、親会社から出向者の受入を行っており、また、資金効率向上等の観点から親会社への短期貸付を実施しております。今後も当該取引等を継続していく方針でありますが、同社との契約・取引内容等に変化が生じた場合には、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社が親会社と行う重要な取引等については、当社の企業価値の向上の観点からその公正性および合理性を確保するために、独立社外取締役が出席する取締役会において承認を得ることとするなど、重要性に応じて適切に監督しております。
(14) 海外事業展開、大規模災害・感染症等に関するリスク
当社グループは、北米、中国を中心にグローバルな事業活動を展開しておりますが、各国の規制・制度変更や外交関係の悪化、政情不安等のリスクが内在しており、このようなリスクに直面した場合、当社グループの事業計画が達成できず、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、大規模災害や感染症の大流行に直面した場合、当社グループの事業計画が達成できず、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社では、事業活動に影響を及ぼすリスクに対応するため「リスクマネジメント規則」を制定し、社長がリスクマネジメントを統括することを明確にするとともに、リスクごとにリスクマネジメントを推進する体制を整備しております。大規模災害発生・感染症の大流行に際しては、直ちに対策本部を設置して全社的な対応体制を構築するとともに、医薬品企業の使命として製品供給を第一に考え、生産・供給体制を整備いたします。
(15) 情報管理に関するリスク
当社グループは、各種情報システムを使用しているため、システムの障害やコンピューターウィルス等により、業務が阻害される可能性があります。また、個人情報を含め多くの機密情報を保有していますが、これらが社外に漏洩した場合には、損害賠償、行政処分、社会的信用の毀損等により、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社では記録・情報の取扱いおよびITセキュリティに関する社内ルールを制定し、継続的に社員教育を実施し、適切な運用に努めております。
(16) 環境保全に関するリスク
当社グループは、研究開発および製品製造のために種々の化学物質を使用しており、重大な環境問題が発生した場合には、操業停止、行政処分、社会的信用の毀損等により、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、将来の環境関連法規制等の強化、環境負荷低減の追加的な義務等による環境保全に関連する費用が増加した場合、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。さらには、地球規模で気候変動が課題となる中、大型台風や集中豪雨等の水リスクが顕在化することにより国内外事業所および調達先での操業に影響した場合や、炭素税導入などの規制強化によって原材料・用役コストが増加した場合にも、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、種々の環境関連法規制等を遵守して事業活動を行っており、国内工場および蘇州工場(中国)では環境マネジメントシステムに関する国際規格であるISO14001認証を取得しております。また、グリーン製品開発、グリーン設備設計およびグリーン物流ガイドラインを運用し、製品のライフサイクルを通じた環境保全の取組を継続しております。気候変動および水に関するリスクと機会については、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD;Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言に沿った情報開示に向けて取り組んでおります。
なお、上記以外にもさまざまなリスクがあり、ここに記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
また、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。
連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しております。
連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの財政状態又は経営成績等に重要な影響を及ぼす会計上の見積りおよび判断は、以下のとおりであります。
・のれん及び無形資産
のれん及び無形資産の減損テストにおける使用価値は、将来キャッシュ・フローの見積額を資金生成単位ごとに設定した加重平均資本コスト等を割引率として用い、現在価値に割り引いて算定しております。将来キャッシュ・フローの見積りには、対象となる無形資産に関する開発品の上市時期、研究開発活動の成功確率、製品及び開発品の収益予測等の計画等、多くの前提条件が含まれておりますが、これらの前提条件や割引率は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があります。
・その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産
公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示する金融商品のうち、非上場株式の一部については、その公正価値を割引キャッシュ・フロー法により算定しております。割引キャッシュ・フロー法に用いる将来キャッシュ・フローの見積りには、非上場会社における開発品の上市時期、研究開発活動の成功確率、収益予測等の計画等、多くの前提条件が含まれておりますが、これらの前提条件や割引率は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があります。
・引当金
引当金は、期末日における将来の債務の決済時期及び決済に必要と予想されるキャッシュ・フロー等に関する最善の見積りに基づいて算定しております。特に、米国で販売している製品に適用される売上割戻引当金の見積りに用いられる将来の販売数量や割戻率等は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があります。
・条件付対価の公正価値
企業結合により生じた条件付対価は、特定の開発品の開発進捗や販売後の売上収益に応じて支払う対価等であり、その公正価値は、それらが達成される可能性や時間的価値を考慮して算定しております。特定の開発品の開発進捗や将来の売上収益の予測等及び割引率等は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があります。
・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行に伴い、日本を含む各国・地域において情報提供活動の制限や臨床試験の遅延など、当社グループの事業活動に様々な影響が生じております。
当社グループは、製品の安定供給に努めるとともに、患者さん、関係者および従業員の安全を最優先に事業活動を進めてまいりますが、今後もこの状況が続けば、事業活動がさらなる影響を受ける可能性があり、その場合は、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
(2) 経営成績
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により経済活動が大きく抑制されたことを受け、景気は大幅に落ち込み、全体として厳しい状況で推移しました。わが国経済についても、新型コロナウイルス感染症の影響により個人消費や輸出が大きく減少するなど、厳しい状況で推移し、依然として先行きは不透明な状況が続いています。
医薬品業界においては、日本において薬価中間年改定の対象範囲が拡大されるなど先発医薬品の価格抑制や後発医薬品の使用促進が一段と進むなか、研究開発費は益々高騰し、競争は激化しています。一方で、デジタル創薬の取組強化や予防・未病領域の事業強化などが進展しています。
このような状況のもと、当社グループは、2018年度を起点とする5か年の「中期経営計画2022」に基づき、事業活動を進めてまいりました。当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、当社グループが事業を展開する各国・地域において、情報提供活動の制限や臨床試験の遅延が生じるなど、事業活動に様々な影響が生じました。これに対して、当社グループは、原材料の確保から製品の製造および販売に至る各段階の活動が停滞しないよう細心の注意を払い、医薬品を患者さんのもとに確実に届けてまいりました。また、オンライン面談やデジタルツールを活用した情報提供活動等を行うなど、医療関係者、取引先、従業員等の安全を最優先に事業活動を進めてまいりました。
日本においては、「トルリシティ」、「エクア」および「エクメット」、パーキンソン病治療剤「トレリーフ」などの主力製品の売上拡大に努めるとともに、当連結会計年度に販売を開始した「ラツーダ」などの新製品の早期の市場浸透を図るべく、情報提供活動に注力しました。
北米においては、サノビオン社が、グローバル戦略品である「ラツーダ」の一層の売上拡大に取り組むとともに、他の主力製品や新製品の売上拡大に向けた事業活動を行いました。
スミトバント社においては、その子会社であるマイオバント社が、レルゴリクスについて、2020年12月に、ファイザー社との間で、がん領域および婦人科領域における北米での共同開発および共同販売に関する契約を締結しました。マイオバント社は、2021年1月に、「オルゴビクス」を米国において発売し、上記契約に基づきファイザー社とのコ・プロモーションを開始しました。
同じくスミトバント社の子会社であるユーロバント社が、2020年12月に「ジェムテサ」の米国での承認を取得しました。また、スミトバント社は、2021年3月にユーロバント社を完全子会社としました。
中国においては、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、「メロペン」の医療機関での使用機会が減少するなど、厳しい環境のなか、住友制葯(蘇州)有限公司が、「ラツーダ」等の売上拡大に向けた販売活動に取り組みました。
(業績管理指標として「コア営業利益」を採用)
当社グループでは、IFRSの適用にあたり、会社の経常的な収益性を示す利益指標として、「コア営業利益」を設定し、これを当社独自の業績管理指標として採用しています。
「コア営業利益」は、営業利益から当社グループが定める非経常的な要因による損益(以下「非経常項目」)を除外したものとなります。非経常項目として除かれる主なものは、減損損失、事業構造改善費用、企業買収に係る条件付対価公正価値の変動額などです。
当連結会計年度の当社グループの連結業績は、以下のとおりです。
(単位:億円)
■ 売上収益は、5,160億円(前連結会計年度比6.9%増)となりました。
日本セグメントにおいて「エクア」および「エクメット」の販売が通年で寄与したこと、また、北米セグメントにおいて「ラツーダ」などの売上が拡大したことやレルゴリクス関連の収益認識により、増収となりました。
■ コア営業利益は、696億円(前連結会計年度比3.3%減)となりました。
増収により売上総利益は増加しましたが、スミトバント社およびその子会社の費用が通期での負担となり、コアベースの販売費及び一般管理費ならびに研究開発費が大きく増加したため、コア営業利益は減益となりました。
■ 営業利益は、712億円(前連結会計年度比14.4%減)となりました。
当連結会計年度は、がん領域におけるナパブカシンの開発中止や事業計画の見直しに伴い、条件付対価公正価値の減少による費用の戻入とそれを上回る無形資産の減損損失を計上しましたが、旧茨木工場の資産売却による固定資産売却益があり、営業利益はコア営業利益に比べ増加しました。前連結会計年度は、条件付対価公正価値の減少による費用の戻入が無形資産の減損損失を上回っていたこともあり、当連結会計年度の営業利益は前連結会計年度と比べ減益となりました。
■ 税引前当期利益は、779億円(前連結会計年度比7.3%減)となりました。
当連結会計年度末の円安による為替差益の計上により、金融収益が金融費用を上回ったことから、税引前当期利益は営業利益に比べ増加しました。
■ 当期利益は、368億円(前連結会計年度比2.5%増)となりました。
前連結会計年度は米国における繰延税金資産の取崩しがありましたが、当連結会計年度にはそのような要因がないことから法人所得税が減少し、当期利益は増益となりました。
■ 親会社の所有者に帰属する当期利益は、562億円(前連結会計年度比38.0%増)となりました。
スミトバント社傘下の子会社の損失を通期にわたって計上したことにより、当期利益から非支配持分に帰属する損失を控除した親会社の所有者に帰属する当期利益は、大幅な増益となりました。
なお、親会社の所有者に帰属する当期利益の売上収益に対する比率は10.9%となりました。
(セグメント業績指標として「コアセグメント利益」を採用)
セグメント別の業績では、各セグメントの経常的な収益性を示す利益指標として、「コアセグメント利益」を設定し、当社独自のセグメント業績指標として採用しています。
「コアセグメント利益」は、「コア営業利益」から、グローバルに管理しているため各セグメントに配分できない研究開発費、事業譲渡損益などを除外したセグメント別の利益となります。
セグメント別の経営成績は次のとおりです。
<日本>
■ 売上収益は、1,525億円(前連結会計年度比9.2%増)となりました。
「エクア」および「エクメット」の売上高が通年で計上されたことに加え、「トルリシティ」の伸長や新製品「ラツーダ」の販売による増収が、長期収載品などの販売減少や薬価改定の影響を上回り、増収となりました。
■ コアセグメント利益は、243億円(前連結会計年度比6.1%増)となりました。
増収による売上総利益の増加に加え、新型コロナウイルス感染症の影響により、販売関連費用などの販売費及び一般管理費が減少したことから、増益となりました。
<北米>
■ 売上収益は、2,815億円(前連結会計年度比7.3%増)となりました。
「ラツーダ」や、抗てんかん剤「アプティオム」が引き続き売上を伸ばしたことに加え、レルゴリクスの共同開発および共同販売に関する契約などに伴う収入の一部を売上収益に計上したことから、増収となりました。
■ コアセグメント利益は、1,169億円(前連結会計年度比0.5%減)となりました。
増収により売上総利益は増加しましたが、スミトバント社およびその子会社の費用が通期での負担となるなど、販売費及び一般管理費が増加したため、減益となりました。
<中国>
■ 売上収益は、278億円(前連結会計年度比2.7%減)となりました。
「メロペン」の売上減少の影響が大きく、減収となりました。
■ コアセグメント利益は、132億円(前連結会計年度比8.1%減)となりました。
減収による売上総利益の減少などにより、減益となりました。
<海外その他>
■ 売上収益は、172億円(前連結会計年度比16.5%増)となりました。
東南アジアにおける「メロペン」の販売が減少しましたが、その他の輸出が増加し、増収となりました。
■ コアセグメント利益は、87億円(前連結会計年度比35.9%増)となりました。
増収により売上総利益が増加したことなどから、増益となりました。
上記報告セグメントのほか、当社グループは、食品素材・食品添加物および化学製品材料、動物用医薬品などの販売を行っており、これらの売上収益は369億円(前連結会計年度比1.3%減)、コアセグメント利益は36億円(前連結会計年度比11.6%増)となりました。
(3) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は販売価格により換算したものであります。
2 セグメント間取引については相殺消去しております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
4 当連結会計年度において、北米セグメントにおける生産実績が著しく減少しました。これは、「ラツーダ」等の在庫調整によるものであります。
② 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は仕入価格によっております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3 当連結会計年度において、日本セグメントにおける仕入実績が著しく増加しました。これは、「トルリシティ」や、「エクア」および「エクメット」の売上高の増加等によるものであります。
③ 受注状況
当社グループの生産は見込生産で、受注生産は行っておりません。
④ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(4) 財政状態
資産については、非流動資産では、無形資産が償却や減損により減少したことなどから、前連結会計年度末に比べ441億円減少しました。
流動資産は、棚卸資産や現金及び現金同等物などの増加により、前連結会計年度末に比べ957億円増加しました。
これらの結果、資産合計は前連結会計年度末に比べ516億円増加し、1兆3,081億円となりました。
負債については、連結子会社における開発および販売提携契約の締結により、その他の非流動負債に含まれる前受収益が増加したことに加え、引当金などが増加しました。また、長期借入の実施や劣後特約付社債の発行による資金調達を行い、短期借入金の返済を行った結果、非流動負債の社債及び借入金が増加し、流動負債の借入金が減少しました。
これらの結果、負債合計は前連結会計年度末に比べ393億円増加し、6,599億円となりました。
資本については、親会社の所有者に帰属する持分は、利益剰余金の増加等により、前連結会計年度末に比べ479億円増加し、5,806億円となりました。非支配持分は、スミトバント社傘下の子会社の業績が損失となったことに加え、当連結会計年度においてユーロバント社を完全子会社化したことにより、前連結会計年度末に比べ356億円減少しました。
これらの結果、資本合計は前連結会計年度末に比べ123億円増加し、6,482億円となりました。
なお、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は44.4%となりました。
(5) キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、法人所得税の支払額が増加しましたが、引当金の増加などのキャッシュの増加要因や連結子会社における開発および販売提携契約の締結による契約一時金の受領などにより、前連結会計年度に比べ895億円収入が増加し、1,356億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、当社旧茨木工場の譲渡により有形固定資産の売却による収入が増加しました。前連結会計年度には、ロイバント社株式の取得など、投資の取得による支出や、スミトバント社およびその傘下の子会社の支配獲得による支出があったため、前連結会計年度に比べ3,216億円支出が減少し、89億円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度には、ロイバント社との戦略的提携の対価の支払いのため短期借入による資金調達を実施しました。一方、当連結会計年度には、長期借入の実施や劣後特約付社債の発行による資金調達を行い、短期借入金の返済を実施したことや、ユーロバント社の完全子会社化により、非支配持分からの子会社持分取得による支出が増加したことなどから、前連結会計年度に比べ2,883億円収入が減少し、572億円の支出となりました。
上記の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は1,937億円となり、前連結会計年度末に比べ920億円増加しました。
当社グループの資本の財源および資金の流動性は、以下のとおりです。
当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、銀行借入などにより、必要資金を調達し、買収で取得した開発品への先行投資などを行っております。
当社グループの財務活動の方針は、自己資金に加えて、必要に応じて借入によるレバレッジの活用などにより必要資金を確保することであります。
当連結会計年度においては、財務の健全性維持を考慮した劣後特約付社債の発行による1,200億円の資金調達を行うとともに、金融機関から1,250億円の長期借入を実施し、前連結会計年度にロイバント社との戦略的提携に係る資金として調達した短期借入金(ブリッジローン)2,700億円の借換えを実施しました。
当社グループでは、現金及び現金同等物に短期貸付金を加えた金額を運用資金と定義しております。当連結会計年度末の運用資金は2,214億円であり、流動比率(流動資産/流動負債)は165.3%であります。
(1) 技術導入
(注)1 当連結会計年度において、シャイアー社より武田ファーマシューティカルズ・アメリカ社に業務移管されております。
2 当連結会計年度において、EPI-743に関する権利を返還しました。
(2) 技術導出
(3) 販売契約等
(注)1 当連結会計年度において、ファイザー㈱アップジョン事業部門は同社より分離・独立し、ヴィアトリス製薬㈱に社名変更しております。
2 当該契約には、がん領域におけるアメリカ、カナダと一部のアジアを除く地域でのレルゴリクスの販売に関する独占的なオプション権の許諾が含まれております。
以下の契約については、契約終了の合意もしくは契約期間満了に伴い、当連結会計年度において終了しました。
技術導出
販売契約等
(4) 公募ハイブリッド社債(公募劣後特約付社債)の発行
当社は、2019年10月にロイバント社と戦略的提携に関する契約を締結し、2019年12月に2,700億円の資金の借入を行ったうえで、本戦略的提携の対価として総額約30億米ドル(約3,300億円)を支払いました。
今般、本戦略的提携のために調達した借入金の返済資金の一部に充当することを目的として、2020年9月10日に総額1,200億円の公募形式によるハイブリッド社債(劣後特約付社債)を発行しました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 22.社債及び借入金」に記載しております。
当社グループは、精神神経領域、がん領域および再生・細胞医薬分野を研究重点領域として、自社研究に加え、技術導入、ベンチャー企業やアカデミアとの共同研究など、あらゆる方法で最先端の技術を取り入れて、研究開発活動に取り組んでおり、優れた医薬品の継続的な創製を目指しています。また、感染症領域にも取り組み、グローバルヘルスへの貢献を目指しています。さらに、医薬品以外のヘルスケア領域において、社会課題の解決のための新たなソリューションを提供することを目的として、フロンティア事業の立ち上げを目指しています。
当連結会計年度における主な開発の進捗状況は、次のとおりです。
(1)精神神経領域
①「キンモビ」(一般名:アポモルヒネ塩酸塩水和物)
米国において、成人のパーキンソン病に伴うオフ症状の改善を適応症とした承認を2020年5月に取得し、同年9月に発売しました。
②「ロナセン」(一般名:ブロナンセリン)
日本において、統合失調症における小児の用法・用量を追加する一部変更承認を2021年3月に取得し、本剤は日本で初めての統合失調症の小児適応を持つ非定型抗精神病薬となりました。
③ SEP-363856
日本および中国において、統合失調症を対象とした国際共同フェーズ2/3試験を開始しました。
(2)がん領域
①「オルゴビクス」(一般名:レルゴリクス)
米国において、成人の進行性前立腺がんを適応症とした承認を2020年12月に取得しました。また、欧州において、2021年3月に進行性前立腺がんを対象とした承認申請を行いました。
② ナパブカシン(開発コード:BBI608)
米国、日本等において、結腸直腸がんを対象とした国際共同フェーズ3試験を実施していましたが、同試験の解析結果において主要評価項目を達成しませんでした。この結果を受けて、実施中の臨床試験を順次中止しました。
③ alvocidib(開発コード:DSP-2033)
米国において、急性骨髄性白血病(AML)を対象としたフェーズ2試験等を実施していましたが、競合状況およびこれまでに得られた知見を踏まえ、これらの試験を中止することにしました。
(3)再生・細胞医薬分野
① RVT-802
デューク大学と連携して開発中のRVT-802について、米国において、小児先天性無胸腺症を対象とした再申請の準備を行いました。
② 他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞
京都大学において実施されているパーキンソン病を対象とした医師主導治験の4例目から、当社が製造したドパミン神経前駆細胞が移植されています。
③ 他家iPS細胞由来網膜シート
神戸市立神戸アイセンター病院において網膜色素変性に対する臨床研究が開始され、予定されていた全2例に対して、当社が製造した網膜シートが移植されました。
(4)感染症領域
① 薬剤耐性菌感染症治療薬
北里研究所との共同研究を推進しました。なお、本共同研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)に係る研究開発課題として採択されており、AMEDからの委託研究開発費を活用しています。
② マラリアワクチン
愛媛大学とのマラリア発病阻止ワクチンの共同研究ならびに愛媛大学および米国PATHとのマラリア伝搬阻止ワクチンおよびマラリア感染阻止ワクチンの共同研究を推進しました。なお、これら3つのプロジェクトについては、それぞれグローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)の助成案件に選定されています。
③ ユニバーサルインフルエンザワクチン
医薬基盤・健康・栄養研究所との共同研究を推進しました。
(5)その他の領域
①「ジェムテサ」(一般名:ビベグロン)
米国において、成人の切迫性尿失禁、尿意切迫感および頻尿の症状を伴う過活動膀胱(OAB)を適応症とした承認を2020年12月に取得しました。
② レルゴリクス配合剤
米国において、2020年5月に子宮筋腫を対象とした承認申請を行いました。また、子宮内膜症を対象とした2本のフェーズ3試験において良好な解析結果を得ました。
③ イメグリミン塩酸塩(開発コード:PXL008)
日本において、2020年7月に2型糖尿病を対象とした承認申請を行いました。
(6)フロンティア事業
① 2020年6月に、サノビオン社とBehaVR, Inc.(ビヘイビア社)との間で、社交不安障害を緩和するVR機器のコンテンツに関する共同研究開発契約を締結しました。
② 2020年7月に、損害保険ジャパン株式会社および株式会社Aikomiとの間で、認知症・介護関連のデジタル機器の研究開発および事業化に向けた連携を開始しました。
③ 2020年8月に、株式会社Save Medicalとの間で、2型糖尿病管理指導用モバイルアプリケーション(開発コード:SMC-01)の共同開発契約を締結し、日本において、フェーズ3試験を開始しました。
④ 2020年10月に、ドローブリッジ・ヘルス・インクとの間で、生活習慣病を対象とした自動採血・保存機器に関する共同研究開発契約を締結しました。
このような研究開発活動の結果、当連結会計年度の研究開発費の総額は
当社グループにおける開発状況は以下のとおりであります。
(注)DSP-7888は、2021年5月に、日本において膠芽腫を対象とした国際共同フェーズ3試験を開始しました。
(注)1 レルゴリクスの子宮筋腫の適応症について、米国では2021年5月に承認を取得しました(製品名「マイフェンブリー」)。また、欧州では2021年5月に欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品評価委員会 (CHMP)から承認勧告を受領しました(製品名「ライエクオ」)。
2 PXL008(イメグリミン塩酸塩)については、日本で2021年6月に承認を取得しました(製品名「ツイミーグ」)。