2005年10月に大日本製薬株式会社と住友製薬株式会社が合併し、大日本住友製薬株式会社として発足してから16年半の間に、当社は、事業のグローバル化を実現するとともに、新たな研究領域への参入、大型買収、提携など数々の挑戦を行い、会社の姿が合併当時から大きく変容しました。そして、2022年4月1日、新たな事業ステージに向けて変化し、さらに発展し続けることを目指し、商号を大日本住友製薬株式会社から「住友ファーマ株式会社」に変更しました。
当社は、以下の変わらぬ企業理念と経営理念のもと、事業活動を進めてまいります。
企業理念
人々の健康で豊かな生活のために、研究開発を基盤とした新たな価値の創造により、広く社会に貢献する
経営理念
■ 顧客視点の経営と革新的な研究を旨とし、これからの医療と健やかな生活に貢献する
■ たゆまぬ事業の発展を通して企業価値を持続的に拡大し、株主の信頼に応える
■ 社員が自らの可能性と創造性を伸ばし、その能力を発揮することができる機会を提供していく
■ 企業市民として社会からの信用・信頼を堅持し、よりよい地球環境の実現に貢献する
当社は、企業理念の実践を「CSR経営」と定義し、事業活動を通してSDGs(持続可能な開発目標)の達成にも貢献していきます。
中期経営計画2022
高齢化社会の進展や医療財政のさらなるひっ迫が想定されるなか、製薬業界は、デジタル技術を活用した創薬や治療方法の創出、予防医療の普及など「変革の時」を迎えています。かかる環境において、当社は、企業理念のもと、ヘルスケア領域での課題解決に貢献するため、新たなビジョン「もっと、ずっと、健やかに。最先端の技術と英知で、未来を切り拓く企業」と、2018年度を起点とした2022年度までの5か年の「中期経営計画2022」を2019年4月に発表しました。
「中期経営計画2022」では、ポスト・ラツーダ、すなわち、2023年2月20日以降に米国において非定型抗精神病薬「ラツーダ」の後発医薬品の市場参入が可能となる事業環境を見据えつつ、「変革の時」に対応するため、「成長エンジンの確立」と「柔軟で効率的な組織基盤づくり」により、事業基盤の再構築に取り組むことを基本方針としています。
この基本方針に則り、2019年12月からロイバント・サイエンシズ・リミテッド(以下「ロイバント社」)との戦略的提携を開始するとともに、新設子会社であるスミトバント・バイオファーマ・リミテッド(以下「スミトバント社」)の傘下に5社の子会社を迎えました。この戦略的提携では、米国における「ラツーダ」の独占販売期間終了後の持続的成長に向けて、大型化を期待するレルゴリクスおよびビベグロンを含む多数のパイプラインならびに当社のデジタル革新を加速するヘルスケアテクノロジープラットフォームであるDrugOMEおよびDigital Innovationとそれらに関わる人材を獲得しました。他方で、ポスト・ラツーダの成長ドライバーとして期待していたナパブカシンの開発を2021年3月に中止したことなどを踏まえて、「中期経営計画2022」で掲げた2022年度の経営目標について、2021年5月に次のとおり修正しました。
2022年度の経営目標
※1 ROIC=(コア営業利益-法人所得税)/(資本合計+有利子負債)
※2 ROE=親会社の所有者に帰属する当期利益/親会社の所有者に帰属する持分
当社グループは、改めて設定したこの経営目標を達成すべく、米国では進行性前立腺がん治療剤「オルゴビクス」、子宮筋腫治療剤「マイフェンブリー」、過活動膀胱治療剤「ジェムテサ」、日本では「ラツーダ」、2型糖尿病治療剤「ツイミーグ」などの新製品の拡大に注力していますが、新型コロナウイルス感染症の影響などにより、設定時の想定より市場浸透に時間を要している品目もあり、2022年度の業績見通しは、売上収益5,500億円、コア営業利益300億円と経営目標を下回る見込みです。しかしながら、これら新製品の伸長が米国における「ラツーダ」の独占販売期間終了後の収益確保の源泉であり、引き続き最大限注力してまいります。また、グループ全体での事業運営の効率化により基盤強化を進めるとともに、後期開発品への投資を中心に研究開発を進めることを通じて持続的に成長し、2020年代の後半にROE10%以上となることを目指してまいります。
2022年度活動方針
新型コロナウイルス感染症の世界的流行および欧州における地政学的リスクの高まりにより、当社グループが事業を展開する各国・地域において、情報提供活動の制限や臨床試験の遅延が生じるなど、事業活動への様々な影響が続いています。当社グループは、患者さんに確実に医薬品をお届けするため、原材料の確保から製品の製造および販売に至る各段階の活動が停滞しないよう細心の注意を払い、医薬品の安定供給に努めてまいります。また、医療関係者、取引先、従業員等の安全を最優先に事業活動を進めるとともに、オンラインコミュニケーションツールの活用など、テレワークにより対面での意思疎通ができないことを補う取組を推進してまいります。
2022年度は、「中期経営計画2022」の最終年度であるとともに、2023年度から2027年度までの次期中期経営計画(以下「次期中計」)を策定していくなど、当社の将来を方向付ける大変重要な年度です。
当社グループでは、次のとおり事業活動を進めてまいります。
①CSR経営
当社グループは、CSR経営を実践していくための重要課題をマテリアリティとして特定しています。マテリアリティでは、革新的な医薬品と医療ソリューションの創出、サイエンス発展への貢献などの持続的成長のために重要な独自性の高い「価値創造につながるマテリアリティ」と、コーポレートガバナンス、コンプライアンスなどの事業活動継続のために不可欠である「事業継続の基盤となるマテリアリティ」に分類し、各項目について、目標およびKPIを設定して取り組んでいます。今後も様々なステークホルダーからのご意見を踏まえ、当社の企業理念に整合する適切な目標となるよう継続的な見直しを行い、また、これを実践することを通じて、企業価値の向上に取り組んでまいります。

②研究開発活動
当社グループは、「グローバル・スペシャライズド・プレーヤー」を2033年の目指す姿として掲げています。精神神経領域、がん領域および再生・細胞医薬分野の重点3領域でグローバルリーダーになることを目指し、引き続き、積極的に研究開発に取り組むとともに、価値にフォーカスしたベストインクラス(既存薬に対して明確な優位性を持つ新薬)の医薬品の開発や、感染症領域の研究開発にも取り組んでまいります。また、医薬品以外のヘルスケア領域でのソリューションを提供することを目的として、フロンティア事業にも取り組んでまいります。また、独自のインシリコ創薬システムなどAIを用いた創薬、DrugOMEなどのデジタル技術の積極的な活用および日米各グループ会社の連携強化を通じたシナジー効果の発揮により、研究開発の生産性向上にも取り組んでまいります。

(ア)精神神経領域
先端技術を取り入れながら築いた自社独自の創薬技術プラットフォームを基盤に、競争力のある創薬研究を推進しています。精神疾患領域(統合失調症、うつ、神経疾患周辺症状など)においては、神経回路病態に基づく創薬によりアンメット・メディカル・ニーズを満たす画期性のある治療薬の創出を目指し、神経疾患領域(認知症、パーキンソン病、希少疾患など)においては、分子病態メカニズムに基づく創薬により神経変性疾患の根治療法薬等の創出を目指しています。また、製品や開発品の臨床データから得られた知見をトランスレーショナル研究に活用し、ゲノム情報、脳波、イメージング画像などのビッグデータから適切な創薬ターゲットやバイオマーカーを選定することで、研究開発の成功確度の向上を図ってまいります。
また、原則としてテーマを発案した研究者がリーダーとして初期臨床開発段階までプロジェクトを進める新しい研究プロジェクト制を2017年度から導入していますが、2021年度は2品目の臨床移行、多くの開発候補品の前臨床移行を達成するなどの成果を得ており、今後も研究プロジェクト制による研究開発を推進してまいります。
開発段階では、日米が一体となったグローバル臨床開発体制のもと、戦略的な開発計画を策定し、効率的に臨床開発を推進して、早期の承認取得を目指しています。
この方針に則り、大塚製薬株式会社(以下「大塚製薬」)との共同開発および販売に関するライセンス契約の対象となった4品目について、同社との協働により開発を加速してまいります。このうち、後期開発品であるulotaront(開発コード:SEP-363856)については、米国での統合失調症を対象としたフェーズ3試験ならびに日本および中国での統合失調症を対象としたフェーズ2/3試験を着実に推進するとともに、2つの追加適応症候補について、開発計画を策定のうえ、臨床試験の開始を目指してまいります。同じく後期開発品であるSEP-4199については、2021年に米国および日本で開始した双極Ⅰ型障害うつを対象としたフェーズ3試験を推進してまいります。
(イ)がん領域
当社グループは、これまでの研究開発活動を通じて、様々な知見を得るとともに、創薬力を強化し、特長を有する複数の開発パイプラインを創出してまいりました。これらを生かし、引き続きアンメット・メディカル・ニーズの高いがん領域の研究開発に注力してまいります。
創薬においては、自社が有する新規技術を用いたモダリティ展開やアカデミアとの共同研究などの取組を通じて競争力を高め、革新的な新薬の創出を目指してまいります。
開発段階では、初期臨床評価中の複数の開発パイプラインについて、短期・小規模の試験でデータを慎重に評価することなどにより、最適な対象がん種および製品価値を見極め、成功確度の向上と早期の承認取得を目指してまいります。
(ウ)再生・細胞医薬分野
オープンイノベーションを基軸に、高度な工業化・生産技術と最先端のサイエンスを追求する当社独自の成長モデルにより早期事業化を目指し、複数の研究開発プロジェクトを推進してまいります。神経領域および眼疾患領域に関するプロジェクトを着実に推進するとともに、立体臓器の再生を含む次世代の再生医療の取組も視野に入れ、グローバル(日本、米国およびアジア)での展開を目指し、まずは日本および米国を中心に次期中計の期間での収益貢献を目指してまいります。
パーキンソン病を対象として京都大学にて医師主導治験実施中の「非自己iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞」について、治験予定の全7例の細胞移植が完了しました。当社グループは、京都大学と連携して実用化を進め、米国においても治験の開始に向けて取り組んでまいります。また、「他家iPS細胞由来網膜色素上皮」(開発コード:HLCR011)について、加齢黄斑変性等を対象として、2022年度中の企業治験開始を目指し、網膜色素変性、脊髄損傷および腎不全の研究開発プロジェクトについても提携先とともに積極的に推進してまいります。さらには、米国での事業展開に向けて、新たな再生・細胞医薬製造施設を米国内に設置すべく、準備を進めてまいります。
(エ)感染症領域
薬剤耐性菌感染症治療薬、マラリアワクチンおよびユニバーサルインフルエンザワクチンの共同研究を推進するなど、グローバルヘルスやパンデミックへの備えに貢献するため、引き続き研究開発に積極的に取り組み、次期中計の期間中の実用化を目指してまいります。
開発段階では、北里研究所との共同研究により創製されたKSP-1007について、2022年1月に米国で開始した複雑性尿路感染症および複雑性腹腔内感染症を対象としたフェーズ1試験を進めてまいります。また、中国において、細菌性市中肺炎を対象として2021年10月に申請したlefamulinについて、承認取得に向けた活動を推進してまいります。
(オ)その他の領域
米国における「ラツーダ」の独占販売期間終了後の当社グループの成長に向けて、価値にフォーカスしたベストインクラスの医薬品の開発などを推進してまいります。米国において、rodatristat ethylの肺動脈性肺高血圧症(PAH)を対象としたフェーズ2試験、「ジェムテサ」の前立腺肥大症を伴う過活動膀胱を対象としたフェーズ3試験などを着実に進めてまいります。
(カ)フロンティア事業
自社医薬事業とシナジーが見込める領域として、メンタルレジリエンス(精神神経疾患の兆候を早期に把握することによる悪化の未然防止)およびアクティブエイジング(高齢者の健康の意識レベルからの改善および維持・向上)にフォーカスし、核となる技術(情報系、工学系等)やネットワーク(アライアンス、ベンチャー投資等)などの事業基盤により、次期中計の期間中に成長エンジンとして確立することを目指しています。
手指麻痺用ニューロリハビリ機器、認知症周辺症状用機器、メンタルヘルスVRコンテンツなどについて、提携先との連携のもと、2022年度からの本格的な事業開始に向けて活動を強化してまいります。
③各セグメントにおける事業活動
(ア)日本セグメント
薬価改定などの薬剤費抑制策により厳しさを増す市場環境に対応すべく、より一層の効率的な事業運営を推進してまいります。精神神経領域では、「ラツーダ」および非定型抗精神病薬「ロナセンテープ」の販売拡大に努めてまいります。糖尿病領域では、2021年9月に上市した「ツイミーグ」の市場浸透に努めるとともに、2型糖尿病治療剤「トルリシティ」、「エクア」および「エクメット」の販売拡大に努めてまいります。
(イ)北米セグメント
ポスト・ラツーダを見据えた成長路線の確立を目指し、サノビオン・ファーマシューティカルズ・インク(以下「サノビオン社」)およびスミトバントグループにおいて事業活動を進めてまいります。サノビオン社では、当社グループの現在の収益の柱である「ラツーダ」の最大化、また、パーキンソン病に伴うオフ症状治療剤「キンモビ」の販売拡大に注力してまいります。スミトバントグループにおいては、マイオバント・サイエンシズ・リミテッド(以下「マイオバント社」)では、「オルゴビクス」および2021年6月に上市した「マイフェンブリー」について、ファイザー・インク(以下「ファイザー社」)とのコ・プロモーションにより速やかな市場浸透および販売拡大に注力してまいります。ユーロバント・サイエンシズ・リミテッド(以下「ユーロバント社」)では、2021年4月に上市した「ジェムテサ」の販売拡大に努めてまいります。エンジバント・セラピューティクス・リミテッドでは、2021年10月に小児先天性無胸腺症を適応症として承認を取得し、2022年3月に販売を開始した再生医療製品「リサイミック」について、治療を望むすべての患者さんに早期に提供できるよう努めてまいります。また、マイオバント社およびユーロバント社の販売にサノビオン社が有するコマーシャル機能を有効活用するなど、北米での販売活動の効率化に努めてまいります。
(ウ)中国セグメントおよび東南アジア
当社グループは、中国を第3の柱として基盤強化に取り組むとともに、アジアを成長市場として捉えて足場固めを推進してまいります。中国セグメントでは、2022年度は、薬剤費抑制策の影響が見込まれるものの、引き続き、カルバペネム系抗生物質製剤「メロペン」、「ラツーダ」などの販売に注力してまいります。
東南アジアでは、自社パイプラインに適した国での事業拡大を進めるとともに、提携企業との連携による「メロペン」および「ラツーダ」の販売拡大に努めてまいります。
④柔軟で効率的な組織基盤の構築
当社グループは、「変革の時」に対応し、「ちゃんとやりきる力」を強化するため、「粘り強く精緻に物事を進める文化」を維持しつつ、環境変化を好機と捉えて潮流を読み、自ら変革して柔軟に動く文化の醸成および人材の育成を推進してまいります。
また、事業環境の変化に対応していくため、基盤強化を進めるとともに、Digital Innovationの利用拡大などデジタル革新を推進してまいります。
株主還元
当社は、株主への還元について、安定的な配当に加えて、業績向上に連動した増配を行うことを基本方針としており、「中期経営計画2022」で掲げているとおり、2018年度から2022年度までの5年間における平均の配当性向20%以上を目指してまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)に重要な影響を及ぼす可能性のある主なリスクには以下のようなものがあります。当社は、これらのリスクが発生する可能性を認識した上で、発生の防止または最小化に努めるとともに、発生した場合の的確な対応に努めていく方針です。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。また、すべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見できない又は重要と見なされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。
(1) 新製品の研究開発に関わるリスク
当社グループは、独創性の高い国際的に通用する有用な新製品の開発に取り組んでおります。しかしながら、新薬開発の難度が高まる中、開発が必ずしも計画どおりに進み承認・発売に至るとは限らず、有効性や安全性の観点から開発が遅延し、または開発を中止しなければならない事態も起こり得ます。大型化を期待している研究開発品目においてそのような事態が発生した場合には、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは研究開発リスクも踏まえつつ、精神神経領域、がん領域および再生・細胞医薬分野を重点3領域として研究開発に注力し、当該領域におけるパイプラインの充実化を進めております。また、グローバルで運営する開発体制とすることにより、戦略的な開発計画を策定し、効率的な臨床開発を推進しております。当社では、開発ステージの移行時期にあわせて計画修正の是非等を確認する会議体などを通じて適宜研究開発方針を見直し、適切にポートフォリオを管理しております。
(2) 連結売上収益における比率の高い特定製品に関するリスク
当社グループの収益の柱である、「ラツーダ」(ルラシドン塩酸塩)の当連結会計年度の北米での売上収益は、当社連結売上収益の36%を占めております。「ラツーダ」の有力な競合品の出現(これには先発医薬品メーカーによる競合品の上市のほか、後発医薬品メーカーによる「ラツーダ」の競合品の発売が含まれますが、これらに限りません。)または原材料調達を含むサプライチェーンへの影響その他の予期せぬ事情等により、売上収益が減少した場合には、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、「中期経営計画2022」のもと、成長エンジンの確立に取り組んでおります。精神神経領域、がん領域および再生・細胞医薬分野の重点3領域を中心とする研究開発への注力に加え、戦略的投資によって早期の収益に貢献することが期待できる後期開発品目の獲得を含むパイプラインの充実化を図っております。また、自社医薬事業とのシナジーが見込める領域を中心に、社会に新しい価値を提供するヘルスケアソリューションの事業化に向けたフロンティア事業の立ち上げにも取り組んでおります。地域戦略においては、主力市場である日本および北米に加え、中国を第3の柱として事業基盤の強化に取り組んでおります。
(3) 知的財産権に関わるリスク
当社グループは研究開発において種々の知的財産権を保有しておりますが、当社グループの技術を十分な範囲で権利化できない場合、競合他社が当社グループの知的財産権を回避した場合、または当社が厳格に管理しているノウハウなどの営業秘密が予期せぬ事態により外部に流出した場合には、競争上の優位性を確保できない可能性があります。また、当社グループの事業は多くの知的財産権によって保護されていますが、保有する知的財産権が第三者に侵害された場合のほか、知的財産権の有効性や帰属を巡る係争が発生した場合には、競争上の優位性を十分に保持できない可能性があります。これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。他方、当社グループは、事業活動に必要な知的財産権について適法に使用する権限を有していると認識しておりますが、当該認識の範囲外で第三者の知的財産権を侵害する可能性があります。
当社グループでは、主となる物質特許のみならず、用途、製法、製剤などの関連特許を含めたパテントポートフォリオを構築し、製品および開発品の総合的な保護を図っております。また、再生・細胞医薬分野の事業化を推進するため、同分野における当社グループの技術を権利化するにあたっての課題を検討し、権利化のための方策を講じております。
(4) 医療制度改革について
国内においては、急速に進展する少子高齢化等により国家財政が悪化する中、先発医薬品の価格抑制や後発医薬品の使用促進などの医療費抑制策が図られ、さらなる医療制度改革の論議が続けられております。また、医療用医薬品の最大市場である米国においても、連邦・州政府および世論を通じたブランド薬の薬価引き下げ圧力が年々高まっており、薬価抑制を企図した制度改革が決定・導入される可能性があります。さらに、中国においても政府による医薬品の集中購買制度の拡大をはじめとした国民医療費抑制を企図する制度変更が推進されています。これら各国の医療制度改革の方向性によっては当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、医薬品会社として各国制度を遵守し、制度に従って適切に対応を行います。
(5) 副作用に関わるリスク
医薬品は開発段階において充分に安全性の試験を実施し、世界各国の所轄官庁の厳しい審査を受けて承認されておりますが、市販後に新たな副作用が見つかることも少なくありません。当社グループが販売する医薬品について市販後に予期せぬ副作用が発生した場合は、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、国内外で収集された安全性情報をデータベースで一元管理して評価し、医薬品の安全性確保および適正使用のために必要な対策を立案し、タイムリーな安全対策の実施につなげております。このような活動は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」や「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する省令」を遵守した医薬品安全性監視活動として実践しております。
(6) 品質に関わるリスク
当社グループは、厳格な品質管理のもと製品の製造および委託製造を行っておりますが、重大な品質問題が発生した場合には、製品回収、行政処分、社会的信用の毀損等により、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社製品のグローバルな製造及び流通については、医薬品等の製造管理及び品質管理の基準(GMP)や医薬品規制調和国際会議(ICH)ガイドライン等の薬事関連法規に準拠しており、厚生労働省、米国食品医薬品局(FDA)などの所管当局の厳しい査察を受け、許可を得ております。また、これら製造所に対しては当社グループにて定期的な監査を行い、重大な品質問題や法令違反がないことを確認しております。さらにグローバル品の製造所に対しては海外提携企業からの監査も受けており、グローバルレベルの厳しい品質基準もクリアする高い設備設計水準や品質保証体制を整えております。
(7) 主要な事業活動の前提となる事項について
当社グループの主な事業は医療用医薬品事業であり、国内においては、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」等の薬事に関する法令に基づき、その研究開発および製造販売等を行うにあたり、「第一種医薬品製造販売業」、「第二種医薬品製造販売業」(いずれも有効期間5年)等の許可等を取得しております。また、海外においても医療用医薬品事業を行うにあたっては、当該国の薬事関連法規等の規制を受け、必要に応じて許可等を取得しております。これらの許可等については、各法令で定める手続きを適切に実施しなければ効力を失います。また各法令に違反した場合、許可等の取消し、または期間を定めてその業務の全部もしくは一部の停止等を命ぜられることがある旨が定められております。当社グループは、現時点において、許可等の取消し等の事由となる事実はないものと認識しておりますが、将来、当該許可等の取消し等を命ぜられた場合には、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、コンプライアンスの推進を全ての事業活動の土台と位置付け、法令および企業倫理の遵守に努めております。当社では、「コンプライアンス行動基準」を制定し、事業活動における具体的な行動の規範としております。また、当社および国内外におけるグループ会社のコンプライアンスに関する事項を統括するコンプライアンス担当執行役員を設置しております。コンプライアンス担当執行役員は、当社のコンプライアンス委員会に加えて、国内グループ会社コンプライアンス委員会および海外グループ会社コンプライアンス委員会の委員長を務めるとともに、各委員会の活動状況を取締役会に報告しております。
(8) 訴訟に関わるリスク
当社グループの事業活動に関連して、医薬品の副作用、製造物責任、公正取引等に関連し、訴訟を提起される可能性があります。これらの訴訟およびその他の訴訟には性質上不確実性があり、その動向によっては、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(9) サプライチェーンマネジメントに関するリスク
当社グループの工場や原材料調達先、外部製造委託先などのサプライヤーが、品質や技術上の問題、火災、地震、その他の災害、感染症拡大等により閉鎖または操業停止となり、製品の供給が遅滞もしくは休止した場合、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社では、事業継続計画(BCP)の策定、製品在庫の適正化、原材料調達先の複数化、サプライヤーとの連携強化など、医薬品の安定供給体制を整備し、リスクの低減を図っています。
(10) 非金融資産の減損損失リスク
当社グループは、持続的成長のために、企業買収や開発品の導入等を行っておりますが、これに伴い、のれんや仕掛研究開発等の無形資産を計上しております。開発の中止や当初想定した利益の実現が見込めない等、期待する将来利益の低下により、買収および導入等から見込まれる回収可能価額が、のれんや無形資産の帳簿価額を下回ると想定される場合、減損損失が発生し、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、定期的にこれらのれんや無形資産の減損テストを通じて評価額を把握し、適切に処理しております。
(11) 金融資産に関わるリスク
当社グループは、他社株式等の金融資産を保有しております。これら保有する金融資産の市場価額または公正価値が帳簿価額を下回った場合、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社は、企業提携、重要な取引先との取引関係の構築・維持その他事業上の必要性のある場合を除き、新たに他社の株式を保有しないこととしております。また、定期的にこれらの金融資産の評価額変動の把握および必要な処理を行っております。
(12) 金融市況および為替変動による影響について
金利動向によっては借入金等の支払利息が増加するほか、金融市況の悪化によっては退職給付制度債務が増加するなど、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、為替相場の変動によっては、外貨建て金融資産および連結子会社業績等の円換算において、重要な影響を受ける可能性があります。当社グループでは、為替リスクを回避する目的で必要に応じて為替予約を行っております。
(13) 親会社との取引について
当社と親会社である住友化学株式会社との間で、研究所および工場の土地賃借、これらの事業所等で使用する用役や主に原薬を製造する際に使用する原料の購入契約を締結しております。当該契約等は、一般的な市場価格を参考に双方協議のうえ合理的に価格が決定され、当事者からの申し出がない限り1年ごとに自動更新されるものであります。このほか、親会社から出向者の受入を行っており、また、資金効率向上等の観点から親会社への短期貸付を実施しております。今後も当該取引等を継続していく方針でありますが、同社との契約・取引内容等に変化が生じた場合には、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社が親会社と行う重要な取引等については、当社の企業価値の向上の観点からその公正性および合理性を確保するために、独立社外取締役が出席する取締役会において承認を得ることとするなど、重要性に応じて適切に監督しております。
(14) 海外事業展開、大規模災害・感染症等に関するリスク
当社グループは、北米、中国を中心にグローバルな事業活動を展開しておりますが、各国の規制・制度変更や外交関係の悪化、政情不安、紛争等のリスクが内在しており、このようなリスクに直面した場合、当社グループの事業計画が達成できず、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、大規模災害や感染症の大流行に直面した場合、当社グループの事業計画が達成できず、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社では、事業活動に影響を及ぼすリスクに対応するため「リスクマネジメント規則」を制定し、社長がリスクマネジメントを統括することを明確にするとともに、リスクごとにマネジメントを推進する体制を整備しております。大規模災害発生・感染症の大流行に際しては、直ちに対策本部を設置して全社的な対応体制を構築するとともに、医薬品企業の使命として製品供給を第一に考え、生産・供給体制を整備いたします。
(15) 情報管理に関するリスク
当社グループは、各種情報システムを使用しているため、システムの障害やコンピューターウィルス等により、業務が阻害される可能性があります。また、個人情報を含め多くの機密情報を保有していますが、これらが社外に漏洩した場合には、損害賠償、行政処分、社会的信用の毀損等により、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社では記録・情報の取扱いおよびITセキュリティに関する社内ルールを制定し、継続的に社員教育を実施し、適切な運用に努めております。サイバーセキュリティ事象に対しては、全社的な対応体制(CSIRT:Computer Security Incident Response Team)を設置し、迅速かつ適切な対応が実施できるようにしています。
(16) 環境保全に関するリスク
当社グループは、研究開発および製品製造のために種々の化学物質を使用しており、重大な環境問題が発生した場合には、操業停止、行政処分、社会的信用の毀損等により、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、将来の環境関連法規制等の強化、環境負荷低減の追加的な義務等による環境保全に関連する費用が増加した場合、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。さらには、地球規模の課題である気候変動およびそれに関連する水リスクに関して、大型台風や集中豪雨等の自然災害の増加が国内外事業所および調達先での操業に影響した場合や炭素税導入などの規制強化によって原材料・用役コストが増加した場合にも、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、種々の環境関連法規制等を遵守して事業活動を行っており、国内工場および蘇州工場(中国)では環境マネジメントシステムに関する国際規格であるISO14001認証を取得しております。また、グリーン製品開発、グリーン設備設計およびグリーン物流ガイドラインを運用し、製品のライフサイクルを通じた環境保全の取組を継続しております。
当社は、2021年11月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD;Task Force on Climate-related Financial Disclosures)への賛同を表明し、気候変動に関するリスクと機会について、TCFD提言に沿った取り組みを進め、情報開示を行いました。今後もステークホルダーとの対話を推進し、気候変動への備えをより確かなものとしていきます。
なお、上記以外にもさまざまなリスクがあり、ここに記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
また、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。
連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」に記載しております。
連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの財政状態又は経営成績等に重要な影響を及ぼす会計上の見積りおよび判断は、以下のとおりであります。
・のれん及び無形資産
のれん及び無形資産の減損テストにおける使用価値は、将来キャッシュ・フローの見積額を資金生成単位ごとに設定した加重平均資本コスト等を基礎とした割引率を用い、現在価値に割り引いて算定しております。将来キャッシュ・フローの見積りには、対象となる無形資産に関する開発品の上市時期、研究開発活動の成功確率、製品及び開発品の収益予測等の計画等、多くの前提条件が含まれておりますが、これらの前提条件や割引率は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があります。
・引当金
引当金は、期末日における将来の債務の決済時期及び決済に必要と予想されるキャッシュ・フロー等に関する最善の見積りに基づいて算定しております。特に、米国で販売している製品に適用される売上割戻引当金の見積りに用いられる将来の販売数量や割戻率等は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があります。
・条件付対価の公正価値
企業結合により生じた条件付対価は、特定の開発品の開発進捗や販売後の売上収益に応じて支払う対価等であり、その公正価値は、それらが達成される可能性や時間的価値を考慮して算定しております。特定の開発品の開発進捗や将来の売上収益の予測等及び割引率等は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があります。
・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行に伴い、日本を含む各国・地域において情報提供活動の制限や臨床試験の遅延など、当社グループの事業活動に様々な影響が生じております。
当社グループは、製品の安定供給に努めるとともに、患者さん、関係者および従業員の安全を最優先に事業活動を進めてまいりますが、今後もこの状況が続けば、事業活動がさらなる影響を受ける可能性があり、その場合は、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
(2) 経営成績
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が続くなか、ワクチン接種の進展により経済活動制限措置が緩和されたことを受け、全体として持ち直しの傾向が見られましたが、世界的なサプライチェーンの混乱やエネルギー価格の上昇などにより回復ペースは鈍化し、ウクライナ情勢その他の地政学的リスクの高まりにより不確実性が増しています。わが国経済についても、新型コロナウイルス感染症の影響により一進一退の状況で推移し、依然として先行きは不透明な状況が続いています。
医薬品業界においては、先発医薬品の価格抑制や後発医薬品の使用促進、新薬開発の難易度の高まりおよび研究開発費の高騰に加え、予防・複合型ソリューションの普及、異業種の参入などにより、事業の予見性がさらに低下しています。
このような状況のもと、当社グループは、事業環境の変化を踏まえ、2021年5月に、2018年度を起点とする5か年の「中期経営計画2022」の経営目標の見直しを行い、新たな目標のもと事業活動を進めてまいりました。当連結会計年度においても、新型コロナウイルス感染症によるさまざまな影響が当社グループの事業活動に生じましたが、従業員の感染防止を徹底しつつ、従来どおりの事業活動を継続させ、医薬品の安定供給の責任を果たすことを最優先に取り組みました。また、リモートワークの推進など、生産性向上に向けた取組にも引き続き注力しました。
日本においては、注力領域である精神神経領域および糖尿病領域における製品価値の最大化に注力しました。精神神経領域では、前連結会計年度に上市した「ラツーダ」の市場浸透を図り、糖尿病領域では、「トルリシティ」、「エクア」および「エクメット」の販売拡大を図るとともに、当連結会計年度に販売を開始した「ツイミーグ」の早期の市場浸透を図るべく、情報提供活動に注力しました。
北米においては、サノビオン社が、グローバル戦略品である「ラツーダ」の一層の売上拡大に引き続き取り組むとともに、大塚製薬と当社を含む3社間で2021年9月に締結した共同開発および販売に関するライセンス契約のもと、精神神経領域における新薬候補化合物の開発を推進しました。
スミトバント社においては、その子会社であるマイオバント社が、米国において、前連結会計年度に販売を開始した「オルゴビクス」および当連結会計年度に販売を開始した「マイフェンブリー」について、ファイザー社とのコ・プロモーションのもと、早期の市場浸透に注力しました。同じくスミトバント社の子会社であるユーロバント社が、「ジェムテサ」の販売を当連結会計年度に米国で開始しました。
中国においては、住友制葯(蘇州)有限公司が、前連結会計年度の新型コロナウイルス感染症の影響による低迷から回復した「メロペン」に加え、「ラツーダ」等の売上拡大に向けた販売活動に取り組みました。
(業績管理指標として「コア営業利益」を採用)
当社グループでは、IFRSの適用にあたり、会社の経常的な収益性を示す利益指標として、「コア営業利益」を設定し、これを当社独自の業績管理指標として採用しています。
「コア営業利益」は、営業利益から当社グループが定める非経常的な要因による損益(以下「非経常項目」)を除外したものとなります。非経常項目として除かれる主なものは、減損損失、事業構造改善費用、企業買収に係る条件付対価公正価値の変動額などです。
当連結会計年度の当社グループの連結業績は、以下のとおりです。
(単位:億円)
■ 売上収益は、5,600億円(前連結会計年度比8.5%増)となりました。
精神神経領域における大塚製薬との共同開発・販売提携に伴う契約一時金を計上したことや、マイオバント社およびユーロバント社の新製品の寄与により、北米セグメントが増収となったことに加え、中国セグメントでも伸長したことにより、増収となりました。
■ コア営業利益は、585億円(前連結会計年度比15.9%減)となりました。
増収により売上総利益は増加しましたが、マイオバント社およびユーロバント社における販売活動の本格化や、無形資産の償却費の増加等により、販売費及び一般管理費が大きく増加したことから、コア営業利益は減益となりました。
■ 営業利益は、602億円(前連結会計年度比15.4%減)となりました。
条件付対価公正価値の減少による費用の戻入がありましたが、営業利益も減益となりました。
■ 税引前当期利益は、830億円(前連結会計年度比6.6%増)となりました。
当連結会計年度末の円安による為替差益の計上により、金融収益から金融費用を差し引いた金融損益が大幅な増益となったことから、税引前当期利益は増益となりました。
■ 当期利益は、406億円(前連結会計年度比10.2%増)となりました。
税引前当期利益が増益となったことにより、当連結会計年度利益も増益となりました。
■ 親会社の所有者に帰属する当期利益は、564億円(前連結会計年度比0.3%増)となりました。
当期利益から、非支配持分に帰属する損失を控除した親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度と比べて微増となりました。
なお、親会社の所有者に帰属する当期利益の売上収益に対する比率は10.1%となりました。
(セグメント業績指標として「コアセグメント利益」を採用)
セグメント別の業績では、各セグメントの経常的な収益性を示す利益指標として、「コアセグメント利益」を設定し、当社独自のセグメント業績指標として採用しています。
「コアセグメント利益」は、「コア営業利益」から、グローバルに管理しているため各セグメントに配分できない研究開発費、事業譲渡損益などを除外したセグメント別の利益となります。
セグメント別の経営成績は次のとおりです。
<日本>
■ 売上収益は、1,499億円(前連結会計年度比1.7%減)となりました。
前連結会計年度に販売を開始した「ラツーダ」は順調に売上を伸ばしましたが、薬価改定の影響や長期収載品の売上の減少などにより、減収となりました。
■ コアセグメント利益は、196億円(前連結会計年度比19.2%減)となりました。
売上総利益の減少に加え、当連結会計年度に販売を開始した「ツイミーグ」の販売関連費用などにより販売費及び一般管理費が増加し、減益となりました。
<北米>
■ 売上収益は、3,198億円(前連結会計年度比13.6%増)となりました。
大塚製薬との共同開発および販売に関するライセンス契約に伴う一時金の計上に加え、「オルゴビクス」、「マイフェンブリー」および「ジェムテサ」の売上や、前連結会計年度にファイザー社との間で締結した共同開発および共同販売に関する契約から生じる収益認識などの増収が、「ラツーダ」や独占販売期間が終了した慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療剤「ブロバナ」などの減収の影響を上回り、増収となりました。
■ コアセグメント利益は、1,054億円(前連結会計年度比9.8%減)となりました。
増収により売上総利益は増加しましたが、マイオバント社およびユーロバント社における販売活動の本格化や、無形資産の償却費の増加等により販売費及び一般管理費が増加したため、減益となりました。
<中国>
■ 売上収益は、383億円(前連結会計年度比37.6%増)となりました。
「メロペン」の売上増加の影響が大きく、増収となりました。
■ コアセグメント利益は、196億円(前連結会計年度比48.0%増)となりました。
増収による売上総利益の増加により、増益となりました。
<海外その他>
■ 売上収益は、122億円(前連結会計年度比29.3%減)となりました。
輸出を中心とした売上の減少により、減収となりました。
■ コアセグメント利益は、33億円(前連結会計年度比62.6%減)となりました。
減収による影響が大きく、減益となりました。
上記報告セグメントのほか、当社グループは、食品素材・食品添加物および化学製品材料、動物用医薬品などの販売を行っており、これらの売上収益は399億円(前連結会計年度比8.0%増)、コアセグメント利益は35億円(前連結会計年度比2.3%減)となりました。
(3) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は販売価格により換算したものであります。
2 セグメント間取引については相殺消去しております。
② 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は仕入価格によっております。
③ 受注状況
当社グループの生産は見込生産で、受注生産は行っておりません。
④ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
(4) 財政状態
資産については、非流動資産では、有価証券の評価の変動等によるその他の金融資産の減少等により、前連結会計年度末に比べ398億円減少しました。
流動資産は、営業債権及びその他の債権や現金及び現金同等物の増加等により、前連結会計年度末に比べ397億円増加しました。
これらの結果、資産合計は前連結会計年度末とほぼ同額の1兆3,080億円となりました。
負債については、引当金の増加がありましたが、営業債務及びその他の債務や未払法人所得税が減少した結果、前連結会計年度末に比べ255億円減少し、6,344億円となりました。なお、社債及び借入金は合計で2,690億円となり、前連結会計年度に比べ48億円減少しました。
親会社の所有者に帰属する持分は、利益剰余金やその他の資本の構成要素が増加したことにより、前連結会計年度末に比べ273億円増加し、6,079億円となりました。また、非支配持分は、前連結会計年度末に比べ19億円減少しました。
これらの結果、資本合計は前連結会計年度末に比べ254億円増加し、6,736億円となりました。
なお、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は46.5%となりました。
(5) キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、312億円の収入となりました。税引前当期利益は増加しましたが、営業債務及びその他の債務、その他の金融負債の減少や前受収益の減少等により、前連結会計年度に比べ1,044億円収入が減少しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資の取得による支出や固定資産の取得による支出が、投資有価証券の売却による収入を上回ったことなどにより、183億円の支出となりました。なお、前連結会計年度は、旧茨木工場の売却に伴うキャッシュの増加要因があったため、前連結会計年度に比べ272億円収入が減少しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、214億円の支出となりました。前連結会計年度には、長期借入金への借り換えや社債の発行による資金調達に伴い短期借入金の返済を実施したことや、当連結会計年度は非支配持分からの子会社持分取得による支出が減少したことにより、前連結会計年度に比べ358億円支出が減少しました。
上記の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は2,030億円となり、前連結会計年度末に比べ93億円増加しました。
当社グループの資本の財源および資金の流動性は、以下のとおりです。
当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、銀行借入などにより、必要資金を調達し、買収で取得した開発品への先行投資などを行っております。
当社グループの財務活動の方針は、自己資金に加えて、必要に応じて借入によるレバレッジの活用などにより必要資金を確保することであります。
現金及び現金同等物に短期貸付金等を加えた運用資金は2,349億円であり、流動比率(流動資産/流動負債)は179.4%であります。
(1) 技術導入
(2) 技術導出
(注) 当連結会計年度において、エーザイ㈱よりマーキュリーファーマグループ社に事業譲渡されております。
(3) 販売契約等
以下の契約については、契約終了の合意もしくは契約期間満了に伴い、当連結会計年度において終了しました。
技術導入
当社グループは、精神神経領域、がん領域および再生・細胞医薬分野を研究重点領域として、自社研究に加え、技術導入、ベンチャー企業やアカデミアとの共同研究など、あらゆる方法で最先端の技術を取り入れて、研究開発活動に取り組んでおり、優れた医薬品の継続的な創製を目指しています。また、感染症領域にも取り組み、グローバルヘルスへの貢献を目指しています。さらに、医薬品以外のヘルスケア領域において、社会課題の解決のための新たなソリューションを提供することを目的として、フロンティア事業の本格的な事業開始に向けた準備を進めています。
当連結会計年度における主な開発の進捗状況は、次のとおりです。
(1)精神神経領域
① ulotaront(開発コード:SEP-363856)
統合失調症を対象とした米国でのフェーズ3試験および日本・中国でのフェーズ2/3試験を推進しました。
② SEP-4199
米国および日本において、双極Ⅰ型障害うつを対象としたフェーズ3試験を開始しました。
③ 新たに2品目のフェーズ1試験を開始しました。
(2)がん領域
① DSP-7888(一般名:アデグラモチド酢酸塩/ネラチモチドトリフルオロ酢酸塩)
米国および日本において、再発または進行性膠芽腫を対象としたフェーズ3試験を実施していましたが、中間解析の結果を受け、最終解析で主要評価項目を達成する可能性が低いと判断し、本試験を中止しました。
② 新たに1品目のフェーズ1試験を開始しました。
(3)再生・細胞医薬分野
① 「リサイミック」(開発コード:RVT-802)
米国において、小児先天性無胸腺症を適応症とした承認を2021年10月に取得しました。
② 他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞
京都大学において実施されているパーキンソン病を対象とした医師主導治験の全7例の移植が完了しました。
③ 他家iPS細胞由来網膜シート
神戸市立神戸アイセンター病院において、当社が製造した網膜シートを用いた網膜色素変性全2例に対する臨床研究が実施されており、移植から1年後も生着していることが確認されました。
(4)感染症領域
① lefamulin
中国において、2021年10月に細菌性市中肺炎を対象とした承認申請を行いました。
② 薬剤耐性菌感染症治療薬
北里研究所との共同研究を通じてカルバペネム耐性菌感染症治療薬を目指して創製された KSP-1007のフェーズ1試験を米国で開始しました。なお、本共同研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)に係る研究開発課題として採択されており、AMEDからの委託研究開発費を活用しています。
③ マラリアワクチン
愛媛大学、European Vaccine Initiative(EVI)およびInstituto de Biologia Experimental e Tecnológica(iBET)とのマラリア発病阻止ワクチンの共同研究ならびに愛媛大学および米国PATHとのマラリア伝搬阻止ワクチンおよびマラリア感染阻止ワクチンの共同研究を推進しました。なお、これら3つのプロジェクトについては、それぞれグローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)の助成案件に選定されています。
④ ユニバーサルインフルエンザワクチン
医薬基盤・健康・栄養研究所との共同研究では前臨床研究を推進しました。なお、本共同研究は、AMEDのCiCLEに係る研究開発課題として採択されており、AMEDからの委託研究開発費を活用しています。
(5)その他の領域
① レルゴリクス配合剤
米国において、子宮筋腫に伴う過多月経を適応症とした承認を2021年5月に取得しました(製品名「マイフェンブリー」)。さらに、2021年7月に子宮内膜症に伴う中等度から重度の痛みを対象とする適応追加申請を行い、同年9月に受理されました。
欧州において、中等度から重度の子宮筋腫を適応症とした承認を2021年7月に取得しました(製品名「ライエクオ」)。
② 「ツイミーグ」(一般名:イメグリミン塩酸塩)
日本において、2型糖尿病を適応症とした承認を2021年6月に取得しました。
(6)フロンティア事業
① 2021年10月に、BehaVR, Inc.(ビヘイビア社)との間で、社交不安障害、全般不安障害および大うつ病性障害を対象としたVRコンテンツの共同開発および販売提携契約を締結しました。
② 日本において、株式会社Save Medicalと共同開発を実施していた2型糖尿病管理指導用モバイルアプリケーション(開発コード:SMC-01)について、フェーズ3試験の結果、主要評価項目が未達となり、開発を中止しました。
③ 手指麻痺用ニューロリハビリ機器、認知症周辺症状用機器、メンタルヘルスVRコンテンツ等の既存テーマの研究開発を提携先と協力して推進しました。
このような研究開発活動の結果、当連結会計年度の研究開発費の総額は949億円(前連結会計年度比28.5%減)となりました。なお、当該金額は当連結会計年度に計上した減損損失等9億円を含んでいることから、これを除いたコアベースの研究開発費は940億円(前期比3.2%減)となりました。また、当社グループは、研究開発費をグローバルに管理しているため、セグメントに配分していません。
当社グループにおける開発状況は以下のとおりであります。