当社は、「人々の健康で豊かな生活のために、研究開発を基盤とした新たな価値の創造により、広く社会に貢献する」を企業理念として掲げ、事業活動を進めています。
少子高齢化社会の進展、パンデミックなどの社会課題を背景に、精神神経領域およびがん領域の医療ニーズは拡大していくことが予想されます。また、医療ニーズはますます高度化しており、多様なモダリティを駆使し、デジタルとリアルが融合した生活と人々の価値観に寄り添うヘルスケア課題の解決が社会から期待されています。
かかる環境において、当社グループは、変わりゆくヘルスケア課題の解決に貢献するため、2019年4月に策定したビジョン「もっと、ずっと、健やかに。最先端の技術と英知で、未来を切り拓く企業」に基づき、精神神経領域およびがん領域を重点疾患領域とし、医薬品、再生・細胞医薬等による多様なアプローチで人々の健康で豊かな生活に貢献してまいります。また、その他領域においても、保有アセットを生かし、確かな価値を患者さんに届けてまいります。これにより、2033年に「グローバル・スペシャライズド・プレーヤー(GSP)」の地位を確立することを目指します。
当社は、このビジョンのもと、2023年度を起点とする5か年の「中期経営計画2027」を2023年4月に策定しましたが、当社グループが目標として掲げる、「グローバル・スペシャライズド・プレーヤー(GSP)」の地位確立の方針に変更はないものの、当社グループが直面する経営環境を受け、「中期経営計画2027」については取り下げることとしました。そして、改めて「グローバル・スペシャライズド・プレイヤー(GSP)」の地位確立に向かい全社一丸となって取り組むべく、2025年5月に、2027年度までの活動計画である「Reboot 2027 ~力強い住友ファーマへの再始動~」を発表しました。
なお、当社は、グループ一体経営を推進するため、米国グループ会社の再編を契機に、2023年7月1日付けで理念体系を再構成し、理念、バリューおよび行動宣言をグループ全体で共有するフィロソフィとして、グループ内への浸透を進めています。
併せて、当社の理念の実践により、持続可能な社会実現に貢献し持続的な企業価値向上につなげることを「サステナビリティ経営」と定義しています。
理念(当社の存在意義、社会に対する約束・使命)
人々の健康で豊かな生活のために、研究開発を基盤とした新たな価値の創造により、広く社会に貢献する
バリュー(全役員・従業員が共有すべき価値観)
Patient First
Always with Integrity
One Diverse Team
行動宣言(日々の業務において守るべき行動規範)
1."Innovation today, healthier tomorrows" の実現に取り組みます
2.誠実な企業活動を行います
3.積極的な情報開示と適正な情報管理を行います
4.自らの能力を高め、協働します
5.人権を尊重します
6.地球環境問題に積極的に取り組みます
7.社会との調和を図ります
活動方針
当社は、2023年度において多額の損失を計上し、厳しい経営状況に陥りました。この状況に対し、2024年度は、大幅な人員削減を含むグループをあげた抜本的構造改革を断行しました。事業面では、再生・細胞医薬事業の再編を行うことで住友化学、RACTHERAおよびS-RACMOとの連携体制を構築したことに加え、選択と集中の一環として、アジア事業およびフロンティア事業を再編しました。これらの取組の結果、必達目標として掲げたコア営業利益および最終損益の黒字化を達成しました。また、既存借入金のリファイナンスを行うことで財務環境の安定化を図りました。しかしながら、2024年度の業績には一過性の収益が含まれており、実態としては依然厳しい経営状況が続いています。当社は今後、大規模な構造改革後の新しい組織体制のもと、効率的な組織運営を行い、研究開発の成功確度向上に取り組んでまいります。これにより、研究開発型ファーマとしての「価値創造サイクル」を循環させることで「力強い会社」へと再始動し、改めてグローバル・スペシャライズド・プレイヤー(GSP)の地位確立を目指してまいります。
価値創造サイクル(「Reboot2027」より)

(注)当社は、特定の領域・技術において「価値創造サイクル」を力強く循環させ、継続的にイノベーションを創出・社会実装します。これにより、人々の健康で豊かな生活に貢献しグローバルに「住友ファーマ」ブランドを確立することでGSPの地位確立を目指します。
当社グループは、再成長への道筋を定めるうえで、2025年度を研究開発型ファーマとしての真価を示す年と位置付け、以下の方針に従って事業を運営してまいります。
① 売上収益の拡大
北米においては、引き続き進行性前立腺がん治療剤「オルゴビクス」、子宮筋腫・子宮内膜症治療剤「マイフェンブリー」および過活動膀胱治療剤「ジェムテサ」(以下「基幹3製品」)の早期価値最大化に最注力してまいります。「オルゴビクス」については、強い成長トレンドを維持し、本剤の進行性前立腺がん治療におけるアンドロゲン除去療法の標準治療薬としての位置付け獲得を目指します。また、薬剤給付制度の変更により2025年1月から患者自己負担額の上限が引き下げられたことを周知徹底するなどのプロモーション活動を行うことで、さらなるシェアの拡大に努めてまいります。「マイフェンブリー」については、2024年12月末をもってPfizer Inc.(以下「Pfizer社」)との共同開発・共同販売を終了しましたが、引き続きプロモーション活動に注力し、子宮内膜症におけるシェア拡大を推進するとともに患者さんおよび医療関係者への認知度向上を通じて、経口GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)市場の拡大および同市場内での製品シェア拡大に注力してまいります。「ジェムテサ」については、競合品に対するジェネリック参入による販売量の減少が見込まれますが、2024年度に前立腺肥大症を伴う過活動膀胱に対する適応追加承認を取得したことを契機とし、さらなる販売拡大に取り組んでまいります。
日本においては、2025年度に2型糖尿病治療剤「エクメット」の独占販売期間が終了する一方、2025年2月からヤンセンファーマ株式会社(以下「ヤンセンファーマ」)との持効性抗精神病剤「ゼプリオン」および「ゼプリオンTRI」の販売提携を開始しました。非定型抗精神病薬「ラツーダ」および2型糖尿病治療剤「ツイミーグ」とともに注力製品の価値最大化を図ってまいります。
②将来の成長シーズの確保
2025年度も徹底的なコスト管理を継続し、がん領域のenzomenibおよびnuvisertibに資源を集中させるとともに、他社との提携機会を追求することにより、両剤の開発を最優先で推進し早期の承認取得と価値最大化を目指します。enzomenibについては、急性骨髄性白血病の単剤療法の承認申請に向けたフェーズ2試験および併用療法のフェーズ1/2試験を引き続き推進してまいります。nuvisertibについては、骨髄線維症を対象とした単剤療法および併用療法のフェーズ1/2試験を引き続き推進いたします。なお、「Reboot 2027」の期間において、enzomenibは日本および米国での承認取得・上市を目指し、nuvisertibは両国での承認申請を目指します。
精神神経領域では、RACTHERAと連携し、世界初のiPS細胞由来製品の実用化とゲームチェンジャーとなる治療の実現に向け、日本においては他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞のパーキンソン病を適応症とした条件および期限付き承認取得を目指し、米国においてもフェーズ1/2試験を着実に推進してまいります。また、他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞については、網膜色素上皮裂孔を対象とした日本でのフェーズ1/2試験を、他家iPS細胞由来網膜シートについては、網膜色素変性治療に関する米国でのフェーズ1/2試験を着実に推進してまいります。特長ある低分子の初期臨床開発品目群については、2030年代のグループ収益を支える優先品目を選抜し、次のフェーズへの移行に向けた取組を推進してまいります。
その他領域では、ユニバーサルインフルエンザワクチンについて、ベルギーでのフェーズ1試験の中間解析を実施し、KSP-1007については、アジア地域への展開を見据えた日本および中国でのフェーズ1試験を継続し、開発を着実に推進してまいります。なお、ユニバーサルインフルエンザワクチンおよびKSP-1007の研究開発は、日本医療研究開発機構(AMED)からの委託研究開発費を活用しています。
当社グループは、今後も全社一丸となって事業活動を推進し、患者さん、ご家族および介護者の皆さんへも貢献できる新しい価値を一日も早く提供するために、スピード感をもって取り組んでまいります。
当社は、業績に裏付けられた成果を適切に配分することを重視しており、安定的な配当に加えて、業績向上に連動した増配を行うことを配当の基本方針としています。
当連結会計年度の業績は、基幹3製品の伸長に加え、北米および日本における事業構造改善等によるコスト削減効果の発現もあり、コア営業損益は432億円、親会社の所有者に帰属する当期損益は236億円と大きく改善しました。しかしながら、前連結会計年度末に発生したシンジケートローン契約に付されている財務制限条項への抵触については、当連結会計年度末に実施したリファイナンスにより解消したものの、当連結会計年度末の有利子負債残高は3,054億円と財務面では依然として厳しい状況が続いており、2025年3月期の期末配当については、期初の予想のとおり無配といたします。
また、2026年3月期はコア営業利益560億円を見込みますが、当面は財務体質の改善を優先する必要があることから、2026年3月期の配当についても、誠に遺憾ながら無配の予想とさせていただきます。
株主の皆様に深くお詫び申しあげますとともに、早期の業績回復および財務体質改善に努めてまいりますので、何卒ご理解のうえ、引き続きご支援を賜りますようお願い申しあげます。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは、サステナビリティ経営を「人々の健康で豊かな生活のために、研究開発を基盤とした新たな価値の創造により、広く社会に貢献する」という理念の実践により、持続可能な社会の実現に貢献し、持続的な企業価値向上につなげることと定義しています。当社の取締役会は、当社の理念実践に向けて迅速・果断な意思決定を行います。意思決定には、サステナビリティを含む当社グループの事業戦略や目標も含まれています。意思決定された事項の実行に際しては、経営幹部に適切に権限委譲を進め、健全なリスクテイクを支援するとともに、実効的な経営の監督を行います。サステナビリティ経営を推進するにあたっては、代表取締役社長の意思決定のための諮問機関である経営会議にて、サステナビリティ経営推進のために取り組む重要課題である「マテリアルイシュー」を審議し、取締役会で承認しています。また、環境、人権、従業員の健康等のサステナビリティを巡る課題については、それらの課題への取組状況が定期的に取締役会へ報告され、持続可能な社会の実現および中長期的な企業価値の向上の観点から、積極的な議論が行われています。
当社のガバナンス体制のさらなる詳細については、
当社グループは、持続可能な社会の実現への貢献と、持続的な企業価値向上の両立を実現するため、多様かつ変容する社会からの期待・要請に対して当社グループの持つ資本(強み)を活用し、当社グループだからこそできる価値創出を行っていきます。そのために取り組む重要課題を「マテリアルイシュー」として特定しています。様々な施策を遂行するとともに、社会状況の変化等を踏まえ、定期的に必要に応じて見直しを行っています。
<マテリアルイシュー最終化のステップとマテリアルイシューマップ>
マテリアルイシューマップ

当社グループとしての基本的な考え方を定めた「SMP Group Risk Management Policy」を制定し、当社グループのリスクマネジメント推進体制を当社が中心となり構築しています。この推進体制では、サステナビリティに関するリスクを含めたリスクごとの特性に応じて、グループ横断的に取り組むリスク(グループ横断リスク)とグループ各社が自らの責任において取り組むリスク(業務活動リスク(※1))に分類しています。それぞれのリスクについて、当社がグループ各社から報告を受けることによって、グループ全体のリスクマネジメントを当社が把握し、必要に応じて、指導・助言等の対応を行っています。
当社では、事業活動に影響を及ぼすリスクに対応するため「リスクマネジメント規則」を制定し、代表取締役社長がリスクマネジメントを統括することを明確にするとともに、リスクごとにリスクマネジメントを推進する体制を整備しています。各推進体制の運用状況については、定期的に取締役会に報告しています。
具体的な取組の一つとして、年度ごとに国内外のグループ会社を含めた全部門にリスクアセスメントを実施し、その結果を踏まえた対策の策定・実施・評価を行い、全社各部門が課題解決に向け計画的に取り組んでいます。
※1 地震、台風・豪雨、伝染病・感染症などの災害や、調達・生産・在庫管理、人材管理などグループ各社が自らの責任において取り組む業務活動上のリスク

(注)CSIRT(Computer Security Incident Response Team):サイバー攻撃による不正侵入の未然防止策の検討を行うとともに、侵入を検知した場合に迅速に対応するための体制。
当社グループが持続可能な社会の実現への貢献と持続的な企業価値向上の両立を実現するためには、マテリアルイシューで設定した目標の達成に向け、KPI等で進捗状況を確認し、軌道修正を行い、PDCAを回していくことが重要です。各マテリアルイシューの目標とKPIについては、毎年度、経営会議において進捗状況の確認や見直しが行われ、審議等を行っています。取締役会においてはその進捗状況を監督し、サステナビリティ経営の実効性向上に向けた取組を進めています。
それぞれのマテリアルイシューの目標およびKPIについては、次のリンク先をご覧ください。
当社は、社会および環境パフォーマンス指標について、情報の信頼性を高めるため、KPMGあずさサステナビリティ株式会社より、国際監査・保証基準審議会の国際保証業務基準(ISAE)3000「過去財務情報の監査又はレビュー以外の保証業務」及びISAE3410「温室効果ガス情報に対する保証業務」に準拠した第三者保証(限定的保証)を受け、同社より、2024年7月30日付ですべての重要な点において、会社の定める規準に従って算定され、表示されていないと認められる事項は発見されなかったとの結論を受領しています。2024年度も継続して保証を受けています。
第三者保証を受けた社会パフォーマンス指標および環境パフォーマンス指標については、次のリンク先で開示す
上記のとおり、当社グループでは「社会からの期待」と「企業価値向上への影響度」の観点から「革新的な医薬品と医療ソリューションの創出」をはじめとするマテリアルイシューを特定していますが、当社グループがこれらのマテリアルイシューに取り組み、持続可能な社会実現への貢献と当社グループの持続的な企業価値向上の両立を目指すにあたって重要なサステナビリティ項目となる「人的資本と多様性」、「環境への取組」についての考え方および取組は、以下のとおりです。
当社は人材の多様性の確保を含む人材育成や社内環境整備の方針について、取締役(社外取締役および非業務執行取締役を除く。)と執行役員が参加する人材戦略会議にて議論を行っています。各方針は、以下のとおりです。
(人材育成方針)
当社は、個人の成長と事業の成長は車の両輪であるとの考え方の下、経営戦略と連動した人材戦略により、個人と事業の成長を実現し、社会に対して継続的に価値を提供することを目指しています。
そのため当社では、「住友ファーマが求める社員像」(※2)を設定し、各種研修やジョブローテーションなどを通じて、社員の成長をサポートしています。各種研修に関しては、専門性に加え、経営の知識を兼ね備えた人材も積極的に育成しています。
今後は、グローバルで一体となって目標を達成するために、当社グループ(日本、北米など)全体における人材ポートフォリオの構築およびより効果的・効率的な採用・育成・配置を行っていきます。
※2 住友ファーマが求める社員像

当社の主な取り組みについて
(ア)選抜型研修の実施
未来のリーダーや経営者を育成するため、選抜型教育研修プログラムSMP Academyを2016年7月に設立しました。若手から中堅、管理職の各層において、向上心があり潜在的能力の高い社員を選抜し、2016年度以降で644人が受講しました。約1年にわたる研修プログラムにおいては、外部講師に加えて経営陣自らも講師を務めることにより、高い視点から事業全体を俯瞰し、新たな価値を創造する構想力を養成しています。引き続き、当社グループ全体における人材ポートフォリオを意識し、選抜型研修を順次実施していく予定です。
(イ)グローバル人材の育成
当社では、海外子会社や海外アカデミア・研究機関に人材を派遣するなど、経験を通じたグローバル人材の育成に取り組んでいます。
さらにグローバル人材を増やすために、グローバルで通用するリーダーシップや異文化コミュニケーション力、マネジメント力の強化を図っていきます。
また、グローバルコミュニケーションの土台となる英語力については、語学学校通学補助や全社員を対象としたe-learning等を導入し、スピーキング力やライティング力についても底上げを行う予定です。
(ウ)新たな価値創造とオペレーション改革をDXで実践する人材の育成
当社は、2021年8月から新たな価値創造とオペレーション改革をDXで実践する人材を育成するため、DX研修をスタートしました。全社員向け、管理職向けのe-learningをはじめ、さらにハイレベルなデータサイエンスの実践知識習得を目指すコースを設定し、各種のデータやデジタルツールを積極的に活用し、さまざまな課題を解決できるデジタル人材の早期育成を目指しています。育成数の目標は、シチズン・データサイエンティスト(※3)を2024年度までに100人、シチズン・デベロッパー(※4)を2027年度までに150人としています。2024年度までの実績として、114名のシチズン・データサイエンティストと76名のシチズン・デベロッパーが誕生しました。
※3 データ利活用による価値創出の起点となる人材
※4 デジタルツールを用いて職場での業務効率化を自律推進できる人材
(エ)タレントマネジメントによる戦略的人員配置と採用
当社は、タレントマネジメントシステムを導入・運用し、人材(タレント)が、どのようなスキルや能力を持っているのかを一元的に把握・管理しています。将来の事業を見据え、求められる能力を特定し、タレントマネジメントシステムのデータを利用することで、計画的な人材育成と最適な人材配置を行い、経営目標を達成します。
また、蓄積した情報を基にピープルアナリティクスを実践し、人事領域における施策の意思決定を加速化し、社員の成長を促す因子やエンゲージメントに寄与する因子の探索を行っています。
今後は、解析したデータを活用することで社員の持つ才能をスピーディに開花させ成長を加速し、組織成果を最大化する人事施策の実現を目指した取組を進めていきます。
(オ)研究プロジェクト制導入による人材育成
当社は、革新的新薬の創出を加速するために研究プロジェクト制を導入しています。これは研究テーマを発案した熱意ある研究者を研究プロジェクトリーダーとして任命し、研究プロジェクトリーダーがチームメンバーとともに研究の前期から後期まで一貫して研究プロジェクトを中心的に推進するというものです。研究プロジェクトリーダーには年齢や経験を問わず、予算執行や人事評価の権限を与え、裁量権を持って研究プロジェクトをマネジメントすることで成果創出、人材育成に繋げています。これまでに研究プロジェクト制のもとで創出された10剤の臨床移行を達成し、現在も15以上の研究プロジェクトが進行中です。2017年10月以降、43人の研究プロジェクトリーダーを輩出しています。
(社内環境整備方針)
当社では、社員一人ひとりが持てる能力を十分に発揮することが理念の実現に不可欠であると捉えています。そのため、性別や国籍などの属性にとらわれることなく、能力を発揮したいと望むすべての人に活躍の機会を提供していくことが重要と考え、多様な人材の活躍を推進し、多様な働き方を選択できる制度を整えています。
当社での主な取り組みについて
(ア)挑戦する風土づくり
当社では、社員の主体性に基づいた仕事への挑戦を促すため、自己申告制度と公募による異動を導入しています。自己申告制度では、自己申告書に基づき、上司は部下一人ひとりとキャリア面談を実施し、社員の個別の状況やキャリア志向を把握することにより、長期的な育成計画を立案し、能力の向上を図っています。また、公募による異動については、自らの希望が公募で叶うことにより仕事への高いモチベーションの維持や意欲ある社員の異動による組織の活性化などの成果があがっています。
(イ)多様な人材の活躍の推進
(女性活躍推進)
当社では、性別に関わらず活躍できる環境の整備を推進しています。女性のキャリアアップのための研修等を実施するとともに、女性の就労継続や育児休業からの早期復職を目的に育児短時間制度や認可外保育所利用補助、MR地域選択制度などを導入し、仕事と育児の両立支援をサポートしています。また、「女性は育児、男性は仕事」といった無意識の固定観念や無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)を解消し、性別に関わらず仕事と育児を両立させ、互いに助け合う風土を醸成することを目的に男性の育児休業の取得や男性の育児への参画を推進しています。育児休業の10日間有給化や男性社員に向けた育児休業説明会を開催するなどの取組を実施し、2024年度の男性の育児休業取得率は100.0%と2022年度以降、継続的に100%を達成しています。
また、2027年度までに女性管理職比率を20%以上(2025年4月1日時点:女性管理職比率15.0%)にすることを目標とし、女性リーダーの育成にも注力してまいります。将来的には、社員構成に占める男女割合と管理職に占める男女割合が同程度になることを一つの目標として考えています。
(性の多様性に関連する理解促進)
当社は、性的指向、性自認に関する差別的言動を行わないことをコンプライアンス行動基準に明記し、LGBTQなどの性の多様性に関連する理解促進に取り組んでいます。全社員を対象とした研修やセミナーを開催するとともに、多様なセクシュアリティに関する相談窓口の設置や2020年4月からは社宅や慶弔などの各種制度で同性パートナーを配偶者と同等に扱う同性パートナーシップ制度を導入しています。
(障がい者の活躍推進)
当社では、障がいの特性に配慮しつつ、個人の能力を活かす人員配置を行うことを基本としており、様々な部門で障がいのある社員が活躍しています。また、精神障がい者の自立を支援するために設立した特例子会社「ココワーク」では、葉物野菜の太陽光型水耕栽培に取り組んでいます。
(治療と仕事の両立支援制度を整備)
当社では、社員が病気やけがなどで就業が困難な際には病気休職制度を利用し、安心して治療に専念できるよう支援してまいりました。一方で、医療の進歩や在宅勤務制度の充実等により、病気やけがとうまく付き合いながら治療と仕事を両立させていくことが可能なケースも増えてきました。そこで2024年4月から、病気やけがと向き合いながらも意欲・能力がある社員が適切な治療を受けながらいきいきと働き続けられたり、不妊治療などにおいて治療の機会を逃したり、治療の必要性を理由として働くことを諦めたりすることがないように、治療と仕事の両立を支援するための制度を整備いたしました。また、治療と仕事の両立に関する相談窓口を設置し、個別の悩みについてもサポートしています。
導入制度 事例;
治療と仕事の両立支援制度
・通院休暇:病気やけが、不妊の治療計画にそって、あらかじめ計画された入院や検査、治療に伴う副作用に対応するために5日/月(50日/年を上限)まで10分単位で取得可能な休暇制度を導入しました。
・短時間勤務・業務量軽減措置:病気やけがの治療状況や体調に合わせて、1日につき2時間を限度とした労働時間短縮、または業務量を10%または20%軽減できる制度を導入しました。
・在宅勤務制度の柔軟な対応:病気や治療等により、出社は難しくても在宅勤務であれば働くことができる場合に、在宅勤務の上限日数(12日/月)を超える在宅勤務を一時的に認める制度を導入しました。
(ウ)健康経営
当社が理念を達成するためには、社員一人ひとりが心身ともに健康で、いきいきと仕事に取り組める職場づくりが大切です。また、社員自らが、自身とその家族の健康維持・増進に努めることで、仕事と仕事以外の生活の充実を図ることが重要であると考えています。
当社は、2017年10月に健康宣言“Health Innovation”を策定し、2021年から健康経営施策の内容と取組状況およびその成果を掲載した「健康白書」を毎年作成し、2022年から公表しています。当社は、すべての社員とその家族の健康で豊かな生活の実現に組織一丸となって取り組んでおり、2025年3月には9年連続となる「健康経営優良法人2025(大規模法人部門(ホワイト500))」の認定を受けています。
詳細は、次のリンク先をご覧ください。
「ア.戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いています。当該指標に関する目標と実績は、次のとおりです。
人的資本と多様性に関する目標及びKPI
※5 住友ファーマ単体としてのKPI目標
当社は、2021年11月にTCFD提言への賛同を表明し(※6)、気候変動に関するリスクと機会について、TCFD提言に沿った取組を進め、2022年4月に情報開示を行いました。情報開示以降、継続的に取組の深化を図り、気候変動への備えを確かなものとすべく、開示情報に基づくステークホルダーとの対話を推進しています。今後もステークホルダーとの対話を大切にし、様々な視点から気候変動によるリスクと機会を見つめなおし、「緩和」と「適応」の両面から考えることで、より一層のリスク低減を図るとともに、的確に機会を捉えていきます。当社のマテリアルイシューの一つである「環境への取組の推進」には、気候変動対応の推進も含みます。当社は気候変動が当社事業に与える財務インパクトを意識し、リスク・機会への対応を経営戦略に反映します。
※6 次のリンク先をご覧ください。
上記、「1.サステナビリティ全般」に記載した内容に加え、GHG(温室効果ガス)排出量削減のような当社グループまたは部門横断的な取組が必要な気候変動に関連する課題については、環境管理体制(※7)のもと、環境安全委員会において議論を行い、中長期環境目標(※8)に落とし込んでいます。また、GHG排出量削減に資する設備投資(カーボンニュートラル投資)等を計画的に実施しています。環境管理体制における気候変動への取組は、サステナビリティに関する取組の一つとして取締役会に報告され(年1回以上)、必要な場合、専門家から助言を受ける機会を設けます。
※7 次のリンク先をご覧ください。
※8 次のリンク先をご覧ください。
図1 気候変動リスク/機会の「ガバナンス」体制図

当社は、気候変動によるリスクと機会について一次評価として影響度(※9)と可能性(※10)の2つの側面から評価し、その組み合わせによって、重要度のランクをⅠからⅤの5段階に分類しています(図2)。その際、「影響度」については対策の進捗度合いを考慮して評価しています。一次評価によってランクが「Ⅲ」以上となったリスクと機会については、1.5℃シナリオ(※11)および4℃シナリオ(※11)を参考に作成した当社の評価用シナリオ(1.5℃および4℃)(※12)を用いて、より詳細な二次評価を行い、二次評価によって特定された重要なリスクと機会については、できるだけ具体的な内容を想定して財務インパクトを推定し、対策を推進しています。
※9 影響度は、経済的影響、人身への影響、風評信用等、事業への影響のいずれかの観点で評価。
※10 可能性は、1年(短期)、3年(中期)、10年(長期)を時間軸として発生頻度で評価。
※11 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)AR6<RCP1.9およびRCP8.5>、
IEA(International Energy Agency) World Energy Outlook 2024<NZEおよびSTEPS>、
環境省等による各種予測値および周辺情報
※12 1.5℃シナリオは、「サステナビリティが重視され、脱化石燃料化に向けた法規制や技術開発が進んだ世界」を、4℃シナリオは、「利便性や効率性が重視され、水害などの気候関連リスクがより高まった世界」を想定。
図2 リスクマップ

表 <気候変動によるリスクと機会>
※13 災害規模および影響を受ける品目により異なる。
※14 IEAによる2030年の先進国炭素価格仮定値140USD/t-CO2(以下「炭素価格仮定値」)を採用し、2023年度のCO2排出量約54,000t(連結ベースのScope1+2の排出量)(*1)に乗じて算出。なお、為替レートを150円/USDと仮定。
*1 集計対象は、次のリンク先をご覧ください。
(「低炭素社会構築への貢献」)
※15 炭素価格仮定値を採用し、2023年度のScope3カテゴリ1「購入した製品・サービス」およびカテゴリ4「輸送、配送(上流)」のCO2排出量約306,000t(*2)に乗じて算出。
*2 集計対象は、次のリンク先をご覧ください。
https://www.sumitomo-pharma.co.jp/sustainability/environment/global_warming.html
(「低炭素社会構築への貢献」)
※16 間接的な寄与についての試算が困難なため、定性的に記載。
(ア)気候変動リスクと機会を識別、評価するプロセスおよび総合的リスク管理への統合
当社は、気候変動によるリスクと機会を識別・評価するプロセスをリスクマネジメント推進体制に統合しています。リスクマネジメント推進体制では、年度ごとに国内外のグループ会社を含めた全部門にリスクアセスメントを実施、その結果を集約して重要なリスクを特定しています。気候変動についても、このアセスメントでリスクと機会の抽出および評価を行い、中長期的に当社に影響を与え得るリスクの一つと捉えています。
(イ)気候変動リスクと機会を管理するプロセス
気候変動リスクと機会については、リスクマネジメント推進体制と環境管理体制が連携して対策を立案、年度計画を立てて取り組み、進捗を毎年評価しています。例えば、物理的リスク「急性」に該当する自然災害(台風・豪雨・洪水)についてはリスクマネジメント推進体制が中心となってBCP(事業継続計画)の策定などを推進し、移行リスク「政策・法規制」に該当する炭素税の導入に備えたGHG排出量削減については環境管理体制が中心となって中長期環境目標を立案、目標管理を行っています。
当社は、個々のリスクと機会について、上記の表<気候変動によるリスクと機会>に示したとおり、「緩和」と「適応」の両面から考え、適切に対策を講じています。移行リスク「政策・法規制」に該当する炭素税のリスクについては「緩和」の面から、定量目標を設定してGHG排出量の削減に取り組んでいます。Scope1+2については2022年度に目標を引き上げ、「2030年度までにGHG排出量(Scope1+2)を、2020年度比で42%削減する」としました(※17)。また、当社のGHG排出量の約90%を占めるScope3についても「2030年度までにGHG排出量(Scope3カテゴリ1(購入した製品・サービス))を、2020年度比で25%削減する」目標を設定しました(※17)。これらのGHG排出削減目標はSBTi(Science Based Targets initiative)の認定を受けており、パリ協定の求める水準と整合する科学的根拠に基づく目標です。
一方、物理的リスク「急性」に該当する自然災害(台風・豪雨・洪水)については「適応」の側面から、BCPの策定(※19)、製品在庫の適正化、調達先の複数化を推進し、一部は完了しています。また、BCPについては年1回の訓練を通じて課題抽出・改善を行って、実効性を高める取組を実施しています。機会については、中長期目標に沿った水使用量の削減(※20)に継続して取り組むとともに、当社でも研究開発を行っている感染症領域への気候変動による影響を引き続き注視していきます。
※17 GHG削減目標の進捗およびScope3排出量については、次のリンク先をご覧ください。
(「低炭素社会構築への貢献」)
※18 販売する製品の構成が大きく変化したため増加(算出方法:二次データに基づく)。
※19 BCPの策定等については、次のリンク先をご覧ください。
(「リスクマネジメント」)
※20 水使用量削減目標の進捗については、次のリンク先をご覧ください。
(「省資源の取組」)
図3 GHG削減のロードマップ

当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)に重要な影響を及ぼす可能性のある主なリスクには以下のようなものがあります。当社は、これらのリスクが発生する可能性を認識した上で、発生の防止または最小化に努めるとともに、発生した場合には的確な対応に努めていく方針です。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。また、すべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見できない又は重要と見なされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。
当社グループは、独創性の高い国際的に通用する有用な新製品の開発に取り組んでいます。しかしながら、新薬開発の難度が高まる中、開発が必ずしも計画どおりに進み承認・発売に至るとは限らず、有効性や安全性の観点から開発が遅延し、または開発を中止しなければならない事態も起こり得ます。大型化を期待している研究開発品目においてそのような事態が発生した場合には、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは研究開発リスクも踏まえつつ、医薬品および再生医療等製品の研究開発に注力し、精神神経領域、がん領域およびその他領域(感染症領域等)における選択と集中を進めています。また、戦略的な計画の策定、効率的な研究開発をグローバルで連携して推進しています。当社では、開発ステージの移行時期にあわせて計画修正の是非等を確認する会議体などを通じて適宜研究開発方針を見直し、適切にポートフォリオを管理しています。
当社グループの収益の柱である、オルゴビクスおよびジェムテサ(以下「当該製品」)の当連結会計年度の北米での売上収益は、当社連結売上収益の37%を占めています。当該製品の有力な競合品の出現(これには先発医薬品メーカーによる競合品の上市のほか、後発医薬品メーカーによる当該製品の競合品の発売が含まれますが、これらに限りません。)または原材料調達を含むサプライチェーンへの影響その他の予期せぬ事情等により、売上収益が減少した場合には、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは研究開発において種々の知的財産権を保有していますが、当社グループの技術を十分な範囲で権利化できない場合、競合他社が当社グループの知的財産権を回避した場合、または当社が厳格に管理しているノウハウなどの営業秘密が予期せぬ事態により外部に流出した場合には、競争上の優位性を確保できない可能性があります。また、当社グループの事業は多くの知的財産権によって保護されていますが、保有する知的財産権が第三者に侵害された場合のほか、知的財産権の有効性や帰属を巡る係争が発生した場合には、競争上の優位性を十分に保持できない可能性があります。これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。他方、当社グループは、事業活動に必要な知的財産権について適法に使用する権限を有していると認識していますが、当該認識の範囲外で第三者の知的財産権を侵害する可能性があります。
当社グループでは、主となる物質特許のみならず、用途、製法、製剤などの関連特許を含めたパテントポートフォリオを構築し、製品および開発品の総合的な保護を図っています。
国内においては、少子高齢化の急速な進展等により国家財政が悪化する中、先発医薬品の価格抑制や長期収載品の選定療養の導入、毎年の薬価改定などの薬剤費抑制策が図られ、あわせて医療制度改革の論議も続けられています。また、米国においては、インフレーションが進む中でブランド薬の適正な価格の維持、負担について議論が進められています。さらに、中国においては国家医療保険償還医薬品リスト収載による価格引き下げや集中購買制度による安価な後発医薬品の使用が推進されています。医薬品市場は各国の政策による様々な規制を受けており、これら各国の薬価・医療制度改革の方向性によっては当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
医薬品は開発段階において試験を実施し、世界各国の所轄官庁の厳しい審査を受けて承認されていますが、市販後に新たな副作用が見つかることも少なくありません。当社グループが販売する医薬品について市販後に予期せぬ副作用が発生した場合は、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、国内外で収集された安全性情報をデータベースで一元管理して評価し、医薬品の安全性確保および適正使用のために必要な対策を立案し、タイムリーな安全対策の実施につなげています。このような活動は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」や「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する省令」を遵守した医薬品安全性監視活動として実践しています。
当社グループは、自社もしくは委託先の製造所において、厳格な品質保証の下で製品の製造を行っていますが、重大な品質問題が発生した場合には、製品回収、行政処分、社会的信用の毀損等により、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社製品のグローバルな製造および流通については、関係各国の薬事法、医薬品等の製造管理及び品質管理の基準(GMP)等の薬事関連法規や、医薬品規制調和国際会議(ICH)ガイドライン等に準拠するとともに、厚生労働省所管の独立行政法人である独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)、米国食品医薬品局(FDA)等の所管当局の厳しい査察を受け、許可を得ています。また、これら製造所に対しては当社グループにて定期的な品質監査を行い、重大な品質問題や法令違反がないことを確認しています。さらにグローバル品の製造所に対しては、海外提携企業からの品質監査も受けており、グローバルレベルの厳しい品質基準もクリアする、高い品質保証体制や構造設備基準を整えています。
当社グループの主な事業は医療用医薬品事業であり、国内においては、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」等の薬事に関する法令に基づき、その研究開発および製造販売等を行うにあたり、「第一種医薬品製造販売業」、「第二種医薬品製造販売業」(いずれも有効期間5年)等の許可等を取得しています。また、海外においても医療用医薬品事業を行うにあたっては、当該国の薬事関連法規等の規制を受け、必要に応じて許可等を取得しています。これらの許可等については、各法令で定める手続きを適切に実施しなければ効力を失います。また各法令に違反した場合、許可等の取消し、または期間を定めてその業務の全部もしくは一部の停止等を命ぜられることがある旨が定められています。当社グループは、現時点において、許可等の取消し等の事由となる事実はないものと認識していますが、将来、当該許可等の取消し等を命ぜられた場合には、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、コンプライアンスの推進を全ての事業活動の土台と位置付け、「行動宣言」において誠実な企業活動を行うことを宣言し、法令および企業倫理の遵守に努めています。当社では、「コンプライアンス行動基準」を制定し、事業活動における具体的な行動の規範としています。また、当社および国内外におけるグループ会社のコンプライアンスに関する事項を統括するコンプライアンス担当執行役員を設置しています。コンプライアンス担当執行役員は、当社のコンプライアンス委員会に加えて、国内グループ会社コンプライアンス委員会および海外グループ会社コンプライアンス委員会の委員長を務めるとともに、各委員会の活動状況を取締役会に報告しています。
当社グループの事業活動に関連して、医薬品の副作用、製造物責任、公正取引等に関連し、訴訟を提起される可能性があります。これらの訴訟およびその他の訴訟には性質上不確実性があり、その動向によっては、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの工場や原材料調達先、外部製造委託先などのサプライヤーが、品質や技術上の問題、火災、地震、その他の災害、サイバー攻撃、感染症拡大等により閉鎖または操業停止となり、製品の供給が遅滞もしくは休止した場合、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、予測を超える急激な需要変動が生じた場合、製品の安定供給に支障をきたす可能性があります。当社では、事業継続計画(BCP)の定期的な見直しおよび教育訓練の実施、製品在庫の適正化、原材料調達先の複数化、サプライヤーとの連携強化、製品別リスクアセスメントの推進など、医薬品の安定供給体制を整備し、サプライチェーン全体でリスクの低減を図っています。また、サプライヤーにも「住友ファーマ ビジネスパートナーのためのサステナブル行動指針」の遵守をお願いすることで、当社グループと同様のサステナビリティへの取組を求めています。
当社グループは、持続的成長のために、企業買収や開発品の導入等を行っていますが、これに伴い、のれんおよび特許権や仕掛研究開発等の無形資産を計上しています。前連結会計年度において、北米事業の事業予想を見直したことにより、「マイフェンブリー」に係る特許権(無形資産)の一部およびのれんの一部について、それぞれ1,335億円および359億円を減損したことに加え、一部の開発品目の開発を中止したことにより、当該開発品に係る仕掛研究開発(無形資産)について106億円を減損するなど、総額1,809億円の減損損失を計上し、当連結会計年度においては、「ツイミーグ」に係る特許権(無形資産)42億円を減損するなど、総額55億円の減損損失を計上しました。今後も、開発の中止や当初想定した利益の実現が見込めないこと等による期待する将来利益の低下、金利動向による割引率の上昇等により、買収および導入等から見込まれる回収可能価額が、のれんや無形資産の帳簿価額を下回ると想定される場合、減損損失が発生し、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、定期的にこれらののれんや無形資産の減損テストを通じて評価額を把握し、適切に処理しています。
当社グループは、他社株式等の金融資産を保有しています。これら保有する金融資産の市場価額または公正価値が帳簿価額を下回った場合、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社は、企業提携、重要な取引先との取引関係の構築・維持その他事業上の必要性のある場合を除き、新たに他社の株式を保有しないこととしています。また、定期的にこれらの金融資産の評価額変動の把握および必要な処理を行っています。
金利や株価などの金融市況の変動によっては、借入金等の支払利息が増加するほか、確定給付制度債務の増加や制度資産の減少など、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、為替相場の変動によっては、外貨建て金融資産および連結子会社業績等の円換算において、重要な影響を受ける可能性があります。
当社は、過去の企業買収などに関連して、金融機関からの借り入れや社債などにより資金を調達しています。これらの債務の中には、財務制限条項が付されているものもあり、当該財務制限条項に抵触した場合には、期限の利益の喪失等により当社の財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、将来、当社の財務状況の悪化や親会社による債務保証の終了などによる信用格付けの引き下げや、世界的な経済状況の変化により、資金調達が計画どおりに実施できない場合、支払利息の増加や、当社が希望する条件で資金調達することが困難になり、当社グループの経営成績や財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社と親会社である住友化学との間で、研究所および工場の土地賃借、これらの事業所等で使用する用役や主に原薬を製造する際に使用する原料の購入契約を締結しています。当該契約等は、一般的な市場価格を参考に双方協議のうえ合理的に価格が決定され、当事者からの申し出がない限り1年ごとに自動更新されるものです。また、当社グループの金融機関からの借入金等について、親会社による債務保証を受けています。このほか、親会社から出向者の受入を行っています。今後も当該取引等を継続していく方針ですが、親会社との契約・取引内容等に変化が生じた場合には、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社が親会社と行う重要な取引等については、当社の企業価値の向上の観点からその公正性および合理性を確保するために、グループ会社間取引利益相反監督委員会への諮問を経て取締役会において承認を得ることとするなど、重要性に応じて適切に監督しています。
当社グループは、北米、中国、東南アジアを中心にグローバルな事業活動を展開していますが、各国の規制・制度変更や外交関係の悪化、政情不安、紛争等のリスクが内在しており、このようなリスクに直面した場合、当社グループの事業計画が達成できず、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、大規模災害や感染症の大流行に直面した場合、当社グループの事業計画が達成できず、経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社では、事業活動に影響を及ぼすリスクに対応するため「リスクマネジメント規則」を制定し、社長がリスクマネジメントを統括することを明確にするとともに、リスクごとにマネジメントを推進する体制を整備しています。大規模災害発生・感染症の大流行に際しては、直ちに対策本部を設置して全社的な対応体制を構築するとともに、医薬品企業の使命として製品供給を第一に考え、生産・供給体制を整備いたします。
当社グループは、各種情報システムを使用しているため、システムの障害やコンピューターウィルス等により、業務が阻害される可能性があります。また、個人情報を含め多くの機密情報を保有していますが、これらが社外に漏洩した場合には、損害賠償、行政処分、社会的信用の毀損等により、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。さらに、サイバー攻撃により、当社グループまたはビジネスパートナーのシステムやネットワークに障害が発生し、または当社グループの機密情報が漏洩した場合は、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、記録・情報の取扱いおよびITセキュリティに関するルールを定め、継続的に社員教育を実施し、適切な運用に努めています。また、サイバー攻撃への対策として、Computer Security Incident Response Team(CSIRT)を設置し、外部からの不正アクセスを常時監視するとともに、有事の際に迅速かつ適切に対処する体制を整備しています。
当社グループは、研究開発および製品製造のために種々の化学物質を使用しており、重大な環境問題が発生した場合には、操業停止、行政処分、社会的信用の毀損等により、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、将来の環境関連法規制等の強化、環境負荷低減の追加的な義務等による環境保全に関連する費用が増加した場合、当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。更には、地球規模の課題である気候変動およびそれに関連する水リスクに関して、大型台風や集中豪雨等の自然災害の増加が国内外事業所および調達先での操業に影響した場合や炭素税導入などの規制強化によって原材料・用役コストが増加した場合にも、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
気候変動に関するリスクと機会については、TCFD(Task Force on Climate Related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に沿った取り組みを進め情報開示を行っています。今後もステークホルダーとの対話を大切にし、様々な視点から気候変動によるリスクと機会を見つめなおし、「緩和」と「適応」の両面から考えることで、より一層のリスク低減を図るとともに、的確に機会をとらえていきます。
当社グループは、前連結会計年度において、多額の親会社の所有者に帰属する当期損失を計上し、シンジケートローン契約に付されている財務制限条項への抵触による期限の利益の喪失事由に該当しました。
この状況に対し、基幹3製品をはじめとした既存製品の事業拡大を図るとともに、グループ全体での抜本的構造改革を断行することにより、当連結会計年度において親会社の所有者に帰属する当期利益を計上しました。
また、当該シンジケートローン契約については、新たなシンジケートローン契約の締結により財務制限条項への抵触を解消するとともに、当面の安定的な資金を確保しました。
以上により、当連結会計年度末において継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような状況は解消したものと判断しています。
なお、上記以外にもさまざまなリスクがあり、ここに記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
また、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。
当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準(以下「IFRS」)に準拠して作成しています。
連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記3.重要性がある会計方針」に記載しています。
連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的であると考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っていますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの財政状態又は経営成績に重要な影響を及ぼす会計上の見積りおよび判断は、以下のとおりです。
・のれん及び無形資産
のれん及び無形資産の減損テストにおける処分コスト控除後の公正価値は、将来キャッシュ・フローの見積額を資金生成単位ごとに設定した加重平均資本コスト等を割引率として用いて現在価値に割り引いて算定しています。
上市後の無形資産の将来キャッシュ・フローの見積りには、対象となる製品の販売価格、関連する疾患領域における患者数及び当該製品のシェア等に基づく製品の収益予測及び固定費の予測等の多くの前提条件が含まれています。また、のれんを含む資金生成単位の将来キャッシュ・フローの見積りは、上述の前提条件に加え、開発品に係る研究開発活動の成功確率等を勘案した開発品の収益予測等の前提条件が含まれています。これらの前提条件や割引率は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があり、翌連結会計年度の連結財務諸表において、のれん及び無形資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。
・引当金
引当金は、期末日における将来の債務の決済時期及び決済に必要と予想されるキャッシュ・フロー等に関する最善の見積りに基づいて算定しています。特に、米国で販売している製品に適用される売上割戻引当金の見積りに用いられる将来の販売数量や割戻率等は、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があり、翌連結会計年度の連結財務諸表において、引当金の金額に重要な影響を与える可能性があります。
・繰延税金資産の回収可能性
繰延税金資産は、将来減算一時差異等を利用できる将来課税所得が生じる可能性が高い範囲内で認識しています。当該回収可能性の判断は、当社グループの事業計画に基づいて見積もった将来の各事業年度の課税所得を前提としています。当該将来の課税所得の見積りは、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があり、翌連結会計年度の連結財務諸表において、繰延税金資産の金額に重要な影響を生じさせる可能性があります。
・条件付対価契約に関する金融資産、および条件付対価契約に関する金融負債
子会社売却に伴い生じた条件付対価契約に関する金融資産および企業結合の結果生じる条件付対価契約に関する金融負債の公正価値は、特定の開発品の開発進捗に応じて発生する開発マイルストンや販売後の売上収益に応じて発生する販売マイルストンを考慮して、それらが達成される可能性や貨幣の時間的価値を考慮して算定しています。これらの見積りは、将来発生する事象によっては影響を受ける可能性があり、翌連結会計年度の連結財務諸表において、条件付対価契約に関する金融資産および金融負債の金額に重要な影響を与える可能性があります。
当連結会計年度の世界経済は、中国など一部の地域で足踏みが見られましたが、米国では個人消費の増加を背景に景気は堅調に推移し、総じて持ち直しが見られました。一方、地政学リスクや金融市場の不確実性の高まり、米国の関税措置の動向などによる先行きの不透明感が継続しました。わが国経済については、緩やかな回復基調を維持しつつも、内需の弱さが懸念される状況が続きました。
医薬品業界では、医療費抑制の取組と並行してデジタル技術の活用や薬価制度改革などによる事業環境の改善は見られたものの、新薬開発の難化、研究開発費の高騰などを背景に事業の選択と集中が進みました。
当社グループは、ピーク時の売上が2,000億円を超えていた「ラツーダ」の米国での独占販売期間が2023年に終了したことによる売上収益の減少と、北米における基幹3製品の売上収益の伸びが想定を下回ったことにより、前連結会計年度に多額の損失を計上し非常に厳しい状況に置かれています。
このような状況のもと、当社グループは、基幹3製品をはじめとした既存製品の事業拡大を図るとともにグループ全体で抜本的構造改革を断行することによって、早期の業績回復と再成長を目指して事業活動を進めてまいりました。
日本においては、精神神経領域では、パーキンソン病治療剤「トレリーフ」の独占販売期間が2024年6月に終了しましたが、「ラツーダ」および非定型抗精神病薬「ロナセンテープ」を中心に情報提供活動に注力しました。また、ヤンセンファーマと「ゼプリオン」および「ゼプリオンTRI」の販売提携を行い、2025年2月より共同プロモーション活動を開始しました。糖尿病領域では、「ツイミーグ」、2型糖尿病治療剤「エクア」(2024年12月に独占販売期間終了)および「エクメット」の販売に引き続き注力しました。
北米においては、基幹3製品および小児先天性無胸腺症向け培養ヒト胸腺組織「リサイミック」の販売拡大に注力しました。また、「マイフェンブリー」については、2024年12月にPfizer社との共同開発・共同販売を終了し、自社単独による事業に移行しました。
アジアにおいては、主力製品であるカルバペネム系抗生物質製剤「メロペン」の販売に引き続き注力しました。
抜本的構造改革については、前連結会計年度に北米グループ会社の再編を実施したことに続き、国内事業における黒字体質確立に向けて、当社従業員を対象とした早期退職者の募集を行いました。
また、再生・細胞医薬事業において、同事業の推進および研究開発を担うRACTHERAならびに製法開発や製造を受託するS-RACMOの2社について、当社が保有する株式の一部を親会社である住友化学に譲渡しました。住友化学グループにおけるシナジーを最大化することにより、同事業の早期育成およびグローバル展開の加速に努めてまいります。
これらに加え、2024年5月にフロンティア事業を新設子会社であるFrontAct株式会社に承継させ、2025年3月に同社の全株式をサワイグループホールディングス株式会社に譲渡するための契約を締結しました。
これらの事業活動により業績改善に取り組むとともに、既存の借入金について、Roivant Sciences Ltd.(以下「Roivant社」)株式の売却資金を返済に充当したうえで、新たなシンジケートローン契約締結によるリファイナンスを行い、財務基盤の強化を図りました。
なお、注力領域に経営資源を集中し、当社の持続的な成長につなげることを目指して、当社の子会社である住友制葯投資(中国)有限公司およびSumitomo Pharma Asia Pacific Pte. Ltd.ならびにそれらの子会社を通じて運営するアジア事業を丸紅グローバルファーマ株式会社に譲渡する旨の契約を2025年4月に締結しました。
(業績管理指標として「コア営業利益」を採用)
当社グループでは、IFRSの適用にあたり、会社の収益性を示す利益指標として、「コア営業利益」を設定し、これを当社独自の業績管理指標として採用しています。
「コア営業利益」は、営業利益から一部の項目を除外したものとなります。除外する主なものは、減損損失、事業構造改善費用、条件付対価公正価値の変動額等です。
当連結会計年度の当社グループの連結業績は、以下のとおりです。
(単位:億円)
■ 売上収益は、3,988億円(前連結会計年度比26.8%増)となりました。
北米において基幹3製品の売上が拡大したことに加え、「マイフェンブリー」の自社単独による事業への移行に伴い、契約一時金等に係る繰延収益について売上収益として一括計上したことや期中の平均為替レートが円安となったことによる為替換算の影響等により増収となりました。
■ コア営業損益は、432億円の利益(前連結会計年度は1,330億円の損失)となりました。
売上収益の増加に加え、北米グループ会社の再編等による事業構造改善効果の発現や研究開発投資の選択と集中による削減等、グループをあげて合理化を進めたことにより、販売費及び一般管理費ならびに研究開発費が大きく減少しました。また、RACTHERAの株式の一部を譲渡したこと等に伴う収益を計上したことから、コア営業損益は大幅に改善し、黒字化を達成しました。
■ 営業損益は、288億円の利益(前連結会計年度は3,549億円の損失)となりました。
コア営業損益の改善に加え、減損損失や事業構造改善費用が減少したこと等により、営業損益は大幅に改善しました。
■ 税引前当期損益は、176億円の利益(前連結会計年度は3,231億円の損失)となりました。
為替が円高に振れたため為替差損を計上したこと等により金融収益と金融費用をあわせた金融損益は減益となりましたが、営業損益が大きく改善したことから、税引前当期損益は大幅に改善しました。
■ 当期損益は、236億円の利益(前連結会計年度は3,149億円の損失)となりました。
税引前当期損益が改善したことにより、当期損益は大幅に改善しました。
■ 親会社の所有者に帰属する当期損益は、236億円の利益(前連結会計年度は3,150億円の損失)となりました。
非支配持分に帰属する利益を控除した親会社の所有者に帰属する当期損益は大幅に改善し、黒字化を達成しました。
(セグメント業績指標として「コアセグメント利益」を採用)
セグメント別の業績では、各セグメントの経常的な収益性を示す利益指標として、「コアセグメント利益」を設定し、当社独自のセグメント業績指標として採用しています。
「コアセグメント利益」は、「コア営業利益」から、グローバルに管理しているため各セグメントに配分できない研究開発費、事業譲渡損益などを除外したセグメント別の利益となります。
セグメント別の経営成績は次のとおりです。
<日本>
■ 売上収益は、998億円(前連結会計年度比12.9%減)となりました。
「ツイミーグ」や「ラツーダ」、オーソライズド・ジェネリック品などの売上が伸長しましたが、「トレリーフ」および「エクア」の独占販売期間が終了したこと等による売上減少に加え、薬価改定の影響により、減収となりました。
■ コアセグメント損益は、114億円の利益(前連結会計年度比14.6%減)となりました。
コスト削減により販売費及び一般管理費は減少しましたが、減収による売上総利益の減少の影響が大きく、減益となりました。
<北米>
■ 売上収益は、2,518億円(前連結会計年度比58.3%増)となりました。
基幹3製品および抗てんかん剤「アプティオム」の売上が伸長したことに加え、「マイフェンブリー」の自社単独による事業への移行に伴い、契約一時金等に係る繰延収益について売上収益として一括計上したことや為替換算の影響により、増収となりました。
■ コアセグメント損益は、426億円の利益(前連結会計年度は802億円の損失)となりました。
増収による売上総利益の増加に加え、北米グループ会社の再編等に伴う事業構造改善効果等による販売費及び一般管理費の減少が大きく寄与し、コアセグメント利益となりました。
<アジア>
■ 売上収益は、472億円(前連結会計年度比15.5%増)となりました。
中国において、「メロペン」の売上が増加したこと等により、増収となりました。
■ コアセグメント損益は、239億円の利益(前連結会計年度比30.0%増)となりました。
増収による売上総利益の増加により、増益となりました。
(3) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 金額は販売価格により換算したものです。
2 セグメント間取引については相殺消去しています。
② 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 金額は仕入価格によっています。
③ 受注状況
当社グループの生産は見込生産で、受注生産は行っていません。
④ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しています。
2 当連結会計年度において、北米セグメントにおける販売実績が著しく増加しました。これは、基幹3製品および「アプティオム」の売上が伸長したことに加え、「マイフェンブリー」の自社単独による事業への移行に伴い、契約一時金等に係る繰延収益について売上収益として一括計上したことや為替換算の影響によるものです。
3 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりです。
(注)前連結会計年度においてAmerisourceBergen Corporationから社名変更されました。
(4) 財政状態
資産については、前連結会計年度末に比べ1,649億円減少し、7,426億円となりました。
非流動資産では、Roivant社株式等の当社が保有する投資有価証券の売却によりその他の金融資産が大きく減少したため、前連結会計年度末に比べ1,485億円減少しました。
流動資産では、売却目的で保有する資産が増加しましたが、棚卸資産や未収法人所得税等が減少し、前連結会計年度末に比べ164億円減少しました。
負債については、投資有価証券売却資金を返済に充当し、借入金が減少しました。また、「マイフェンブリー」の自社単独による事業への移行に伴い、契約一時金等に係る繰延収益を一括計上したことなどにより、その他の負債が減少しました。この結果、前連結会計年度末に比べ1,782億円減少し、5,731億円となりました。なお、社債及び借入金は合計で3,054億円となり、前連結会計年度末に比べ1,135億円減少しました。
資本合計は、投資有価証券の売却等により、その他の資本の構成要素が減少しましたが、利益剰余金が増加した結果、前連結会計年度末に比べ133億円増加し、1,695億円となりました。
なお、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は22.8%となりました。
また、アジア事業およびフロンティア事業を譲渡する契約を締結したことに伴い、関連する資産については売却目的で保有する資産、負債については売却目的で保有する資産に直接関連する負債、資本については売却目的で保有する資産に関連するその他の包括利益にそれぞれ分類しています。
(5) キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、減損損失などの非資金損益項目を除いた当期損益が大幅に改善したことに加え、事業構造改善に伴う支出が減少したこと、法人所得税が前連結会計年度において支払となったのに対し当連結会計年度においては還付となったこと等により、前連結会計年度に比べ2,584億円改善し、165億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、Roivant社株式等の投資有価証券の売却により、前連結会計年度に比べ667億円収入が増加し、998億円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度は多額の借入がありましたが、当連結会計年度は借入返済となったこと等により、前連結会計年度に比べ1,867億円収入が減少し、1,088億円の支出となりました。
上記のキャッシュ・フローに、現金及び現金同等物に係る換算差額および売却目的で保有する資産への振替に伴う増減額を加味した結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は231億円となり、前連結会計年度末に比べ59億円減少しました。
(1) 技術導入
(注)当連結会計年度において、Poxel社からPristine社にライセンス契約が譲渡されています。
以下の契約については、契約終了の合意に伴い終了しました。
(2) 技術導出
(3) 販売契約等
(注)2024年12月をもって、Pfizer社との婦人科領域におけるレルゴリクスの共同開発および共同販売に関する契約を、契約終了の合意に伴い終了しました。
(4) 借入契約
Myovant Sciences Ltd.の完全子会社化の対価及びRoivant社との戦略的提携に伴う借入契約について、新たに、財務上の特約が付された金銭消費貸借契約を締結いたしました。また、これらの借入契約は、当社親会社である住友化学による債務保証を受けています。詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 22. 社債及び借入金」に記載しています。
(5) 再生・細胞医薬事業の会社分割および子会社の株式譲渡に関する契約
当社の再生・細胞医薬事業を分割し、当社の完全子会社であるRACTHERAに承継させ、吸収分割の効力発生後にRACTHERAの株式の66.6%を住友化学に譲渡する契約を締結し、2025年2月1日に株式譲渡の手続きを完了しました。
(6) アジア事業の会社分割(簡易吸収分割)ならびに丸紅グローバルファーマ株式会社との株式譲渡契約および株主間契約締結
当社は、2025年4月1日において、丸紅株式会社の完全子会社である丸紅グローバルファーマ株式会社との間で、当社の完全子会社である住友制葯投資(中国)有限公司およびSumitomo Pharma Asia Pacific Pte. Ltd.ならびにそれらの子会社によるアジア事業を、当社が新設する完全子会社に吸収分割の方法により承継させた上で、同社の発行済株式のうち60%を丸紅グローバルファーマ株式会社に譲渡する契約を締結しました。
詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 34. 後発事象」に記載しています。
次世代の成長の種を確保し、継続的な研究開発を進めると同時に、研究開発費用を圧縮するため、開発プログラムの選択と集中を行い、上市が近いがん領域の2品目および再生・細胞医薬に注力しました。また、遂行能力の向上を目指し、2024年12月にリサーチディビジョン、開発本部および技術研究本部を統合してR&D本部を発足させました。
当連結会計年度における主な開発の進捗状況は、次のとおりです。
(1) 精神神経領域
① 他家iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞(開発コード:CT1-DAP001/DSP-1083)
日本において、京都大学医学部附属病院が非凍結細胞(CT1-DAP001)を用いて実施した医師主導治験のデータを基に、2025年度のパーキンソン病を適応症とした承認申請に向けた準備を進めました。
米国において、カリフォルニア大学サンディエゴ校が非凍結細胞(CT1-DAP001)を用いたパーキンソン病治療に関するフェーズ1/2試験(医師主導治験)を推進しました。
また、米国において、凍結細胞(DSP-1083)を用いたパーキンソン病治療に関するフェーズ1/2試験(企業治験)を推進しました。
② 他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞(開発コード:HLCR011)
日本において、網膜色素上皮裂孔を対象としたフェーズ1/2試験を推進しました。
③ 他家iPS細胞由来網膜シート(立体網膜)(開発コード:DSP-3077)
米国において、網膜色素変性治療に関するフェーズ1/2試験を開始しました。
(2) がん領域
① enzomenib(開発コード:DSP-5336)
米国および日本において、急性白血病を対象としたフェーズ1/2試験を推進しました。
② nuvisertib(開発コード:TP-3654)
米国および日本において、骨髄線維症を対象としたフェーズ1/2試験を推進しました。
③ SMP-3124
米国および日本において、固形がんを対象としたフェーズ1/2試験を開始しました。
(3) その他領域
①「オブジェムサ」(一般名:ビベグロン)
欧州において、提携先が過活動膀胱を適応症とした承認を2024年6月に取得しました。
②「ジェムテサ」(一般名:ビベグロン)
米国において、前立腺肥大症を伴う過活動膀胱に対する適応追加承認を2024年12月に取得しました。
中国において、過活動膀胱を対象としたフェーズ3試験を実施していましたが、期待した結果が得られなかったため、当社における開発を中止しました。
③ ユニバーサルインフルエンザワクチン(開発コード: fH1/DSP-0546LP)
ベルギーにおいて、当社が開発したTLR7アジュバント(免疫強化剤)を添加して作製した新規のユニバーサルインフルエンザワクチンのフェーズ1試験を開始しました。
このような研究開発活動の結果、当連結会計年度の研究開発費の総額は、
当社グループにおける開発状況は、以下のとおりです。