第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

 

(1)経営方針・経営戦略等

 

■経営の基本方針

当社グループは、「常に人々の健康を守るために必要な最もよい薬を提供する」ことを基本方針としております。そのためには、益々よい薬を創り、かつ製造するとともに、多くの方々に知らせ使っていただくことが必要であります。このことを成し遂げるために、シオノギのあらゆる人々が日々技術を向上させることが、すべてのステークホルダー(顧客、株主、取引先、社会、従業員など)の利益の拡大につながるものと考えております。

 

■2030年に成し遂げたいビジョン

当社グループは、「新たなプラットフォームでヘルスケアの未来を創り出す」ことをビジョンとして掲げ、事業の変革を進めております。医薬品ビジネスには、主力製品の特許切れという事業のサステイナビリティに関わる課題が常に存在します。また、社会保障費に対する懸念の高まりや医療ニーズの高度化、多様化が進む中で懸命にこれに対処し、人々の健康と持続可能な社会の実現に貢献し続けることが製薬会社としての社会的使命であると認識しております。したがって、従来の医療用医薬品を中心に提供する「創薬型製薬企業」から、ヘルスケアサービスを提供する「HaaS(Healthcare as a Service)企業」へと自らを変革し、社会に対して新たな価値を提供し続けていくことで、患者さまや社会の抱える困り事をより包括的に解決したいと考えております。そのためには、創造力と専門性をベースとした創薬型製薬企業としての強みをさらに進化させ、ヘルスケア領域の新たなプラットフォーム構築に向けて、異なる強みを持つ他社・他産業から選ばれる「協創の核」とならねばなりません。

当社グループは、変化を恐れず、多様性を受容し、既成概念を超えて自らを「Transform」することで、新たなビジョンの実現に取り組んでまいります。

 

■経営環境及び経営戦略

医薬品産業を取り巻く外部環境は、世界人口の増加と高中所得国における少子高齢化の進行、地球規模で起こる気候変動等の環境変化と、それに伴う疾病構造やヘルスケアに求められるニーズの変化、デジタルトランスフォーメーションの加速、人々の価値観の多様化等、急速に変化しております。また、医療保険財政のひっ迫に伴い、先進諸国で薬剤費抑制の圧力が強まる中、我が国においては医療用医薬品について2021年度より毎年薬価改定が実施されるなど、経営を取り巻く環境は厳しさを増しております。さらに、2019年の末より急激に拡大した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のパンデミックは、これらの環境変化に加えて、創薬の研究開発の進め方やグローバル展開の考え方など、大きな変革をもたらしています。一方で、ロシアによるウクライナ侵攻や、それに関連した各国の今後の対応によっては、諸外国におけるビジネス展開や医薬品の原材料の調達・供給が停滞する可能性といったカントリーリスクが懸念されています。このような中で企業が社会の要請に応え、持続的に成長していくためには、ステークホルダーとの対話の中から世の中の変化に対する予見力を高め、ビジネスにおけるリスクを低減し、強みを活かして新たな事業機会を継続的に創出していかねばなりません。

当社グループは、前中期経営計画「Shionogi Growth Strategy 2020(SGS2020)」で積み残した課題である「新製品売上」並びに「海外事業の成長」、それに伴う「生産性の向上」を早期に克服し、2028年ごろに訪れるHIV製品の特許切れによる影響(パテントクリフ)を乗り越え、新たに発生するビジネスリスクに柔軟に対応しながら、更なる成長を達成するための戦略として、2020年度を起点とする中期経営計画「Shionogi Transformation Strategy 2030(STS2030)」を策定いたしました。

STS2030の最初の5ヵ年の計画であるSTS Phase 1では、グループ一丸でビジネスの変革を強力に推し進め、「トータルヘルスケア企業として持続的な成長へのTransformationを具現化する」ことをテーマに、新たな価値創造に向けた「R&D戦略」及び「トップライン(売上)戦略」と、価値創造を実現するための「経営基盤戦略」を進めております。

 

(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

「(1)経営方針・経営戦略等」に記載したとおり、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題としては、「新製品売上」並びに「海外事業の成長」、それに伴う「生産性の向上」が挙げられます。当社グループは特定の薬剤クラスの中では最も優れた薬を創るcapabilityを有していると考えております。ただし、その優位性をもって、国内を含むグローバル市場の中で効率的に販売を拡大するには至っておりません。上記に挙げた3つの課題は、創薬から販売に至るビジネスのフローにおいてすべてつながっている課題であり、その克服如何が次の10年の成長確度を大きく左右するものだと認識しております。

こうした課題を克服し、2030年におけるビジョンを達成するための戦略として、前述のSTS2030を策定しており、STS Phase 1で定めた3つの戦略(「R&D戦略」、「トップライン(売上)戦略」及び「経営基盤戦略」)に則り事業活動を推進しております。

 

■R&D戦略

R&Dにおける疾患戦略として、感染症、精神・神経疾患をコア疾患として経営資源を集中する一方で、がんなどの社会的ニーズの大きい疾患に対する挑戦を継続し、アライアンスの活用も含めて創製・獲得したパイプラインの潜在的価値に応じて柔軟かつ大胆に注力プロジェクトの優先度を変更しております。現在、世界的な脅威となっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対し、60年以上にわたり積み上げてきた感染症領域における強みを発揮し、治療薬並びに予防ワクチンの研究開発を最優先で進めております。

また、注力しているパイプライン* に関しては、いずれもより良い治療法の開発が強く望まれている疾患を対象としており、現状の疾患治療に対する捉え方(パラダイム)を変え得るものです。これらの革新的なパイプラインの研究開発を促進し、引き続きHIV製品のパテントクリフへの対応を強化してまいります。

 

*:注力するパイプライン(注力プロジェクト)

 

領域

プロジェクト

詳細

感染症

S-217622

COVID-19治療薬

S-268019

COVID-19ワクチン

経鼻ワクチン

COVID-19、インフルエンザ

S-540956

感染症、がん

精神・神経

S-600918

(シボピキサント)

難治性慢性咳嗽

S-812217

(zuranolone)

うつ病・うつ状態

新たな

成長領域

S-531011

固形がん

S-005151

(レダセムチドトリフルオロ酢酸塩)

①栄養障害型表皮水疱症

②急性期脳梗塞

③変形性膝関節症

④慢性肝疾患

⑤心筋症

 

■トップライン戦略

「最適な疾患戦略を地域に応じたパートナリングを通して実現する」ことを掲げ、当社グループの重点疾患である感染症、精神・神経疾患をベースに、日本・米国・欧州・中国を強化地域として取り組んでおります。STS2030では、各疾患に対して、従来の強みである治療薬を軸に、未病・ケア、予防、診断といった多様なアプローチで疾患全体をケアし、「HaaS企業」としての新たなポジションを開拓します。この疾患戦略を統括・推進するヘルスケア戦略本部を中心に、人々の健康に必要な製品や情報をより多くの方に届ける仕組みを構築し、各地域のビジネス強化につなげていく取り組みが進行中です。これらの戦略を加速するために、2020年11月に中国平安保険(集団)股份有限公司(以下「平安グループ」という)との資本業務提携に関する基本合意書に則り、中国並びにアジア事業の起点となる2つの合弁会社を上海及び香港に設立いたしました。引き続き、塩野義製薬の保有する疾患洞察力及び研究開発のノウハウと、平安グループのIT・ビッグデータ収集やAIによる解析のノウハウを掛け合わせ、ヘルスケアの未来を創造してまいります。

 

■経営基盤戦略

STS Phase 1において、Transformationの具現化を早期に実現する上では、ダイナミックな経営基盤の改革が必要不可欠であり、その根幹を担うのは「変革の仕組み」と「人材の成長」となります。変革の仕組みとしては、意思決定システムの刷新やデータ活用の環境整備を始めとした意思決定の高度化、及び社内外の連携を促進する業務プロセスの改革に取り組んでおります。また、新たな人材像(Shionogi Way)として、「一人ひとりが他者を惹きつける尖った強みを持ち、新しいことにチャレンジを続ける人」を掲げ、成長・変革の源泉となる人材を育成・強化する施策を展開しております。

 

当社グループは、経営理念である基本方針「常に人々の健康を守るために必要な最もよい薬を提供する」ことをグローバルで実現するため、創薬型製薬企業としての強みを磨き、ヘルスケア領域の新たなプラットフォームを構築することで、持続的な成長を目指します。そして、世界中の患者さまやそのご家族、医療関係者の方々等、あらゆるステークホルダーの皆さまに信頼されるグローバル企業を目指し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

STS Phase 1で達成すべき経営指標として、8つの経営指標を設定いたしました。

成長性を測る指標として、売上収益、コア営業利益、コア営業利益率、ロイヤリティー収入を除く海外売上高比率、自社創薬比率の5つを設定しております。2024年度に向けて各事業年度の売上目標を達成し、HIV製品のパテントクリフを乗り越える上で必要十分なR&D投資を行いながら、コア営業利益率30%以上を堅持することを目指しております。また、市場が大きい海外での売上収益を高めるための投資効果を測る指標として海外売上高比率を設定しております。さらに、ヘルスケア領域の新たなプラットフォーム構築に向けて、異なる強みを持つ他社・他産業から選ばれる条件として、自社創薬比率を高水準で維持することを目指します。

株主還元を測る指標としては、事業成長と財務施策の観点から基本的1株当たり当期利益(EPS)、親会社所有者帰属持分配当率(DOE)、親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)の3つを設定しております。

 

業績評価指標(KPI)

2022年度
目標

2024年度
目標

2030年度
目標

成長性

売上収益

4,000億円

5,000億円

6,000億円

コア営業利益*

1,200億円

1,500億円

2,000億円

コア営業利益率

30%以上

30%以上

海外売上高比率**

25%以上

50%以上

自社創薬比率

60%以上

60%以上

株主
還元

EPS

370円以上

480円以上

DOE

4%以上

4%以上

ROE

13%以上

15%以上

(注)1.STS Phase 1(2020年度~2024年度)、STS Phase 2(2025年度~)

2.数値はIFRSベースとなります。

 

*:営業利益から非経常的な項目(減損損失、有形固定資産売却益等)を調整した利益となります。

**:ロイヤリティー収入を除きます。

 

2【事業等のリスク】

当社グループ(当社及び連結子会社)は、サステイナビリティの観点から事業機会の創出とリスクの回避並びに低減など、ビジネスリスクの適切な対応(マネジメント)を行うとともに、グループ全体のリスクを統括する全社リスクマネジメント(Enterprise Risk Management 以下「ERM」という)体制を経営戦略・経営基盤の重要な仕組みとし、その推進を図っております。当社グループが意思決定と業務執行に係るリスクを認識し、主体的に管理し対応策を講じることを基本とし、特に経営に影響を及ぼすような重要なリスクやその対応方針については経営会議及び取締役会にて審議・決定し、対応方針に基づき、主管組織が関連組織と協働し対策を実施しております。

さらに、当社グループは、事業活動を通じて健康・医療のニーズに応えるとともに、経済、社会、環境等の様々な課題を解決することで、当社グループの持続的な成長と社会の持続可能性への貢献を目指すサステイナビリティ活動を推進しております。

 

「リスクマネジメント体制」

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役割

①取締役会

ERM推進活動の計画と進捗、成果の監督及び助言等を行う

[開催:年2回定期、必要に応じて臨時開催]

②代表取締役社長 及び

 経営会議

代表取締役社長をチェアとする経営会議にて、以下に示す当社グループのERMに関する重要事項について協議し、代表取締役社長が承認する

・経営に影響を及ぼす重要なリスクの特定とその対応方針

・ERMに必要な経営資源の配分

・ERM推進活動の年次計画と進捗、成果のレビューなど

[経営会議におけるERMの議論:年2回定期、必要に応じて適宜期中にも実施]

③全社リスク管理責任者

・経営支援本部長を全社リスク管理責任者として、当社グループのリスク管理を統括し、ERM体制の推進・運用の責任を担う

④全社リスク管理機能

・サステイナビリティ推進部、総務部、経営企画部で構成される全社リスク管理機能にて、当社グループのリスク情報を一元管理し、ERM推進活動計画を立案、経営会議で特定された重要なリスクへの対応状況等のモニタリングを行い、その活動とモニタリング結果を取締役会及び経営会議に報告する。また、取締役会及び経営会議からのフィードバックに基づき、活動課題の改善を行う

⑤執行役員

 グループ会社 社長

・執行役員及びグループ会社社長は、各事業部門及びグループ各社において、意思決定と業務執行におけるリスクのマネジメントを実施する

・リスクの抽出、特定、分析、評価、対策立案、対策推進、実施評価、改善実施と全社リスク管理機能へ報告する

 

以下では、当社グループの業績及び経営に重要な影響を及ぼす可能性のある重要なリスクを記載しており、それぞれのリスクに対し、記載の取り組みによりその低減に努めております。

なお、文中の将来に関する事項及びリスクは、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

(1)制度・行政に関するリスク

医薬品事業は、各国の政策により様々な規制を受けております。医療保険財政のひっ迫に伴い、先進諸国で薬剤費抑制の圧力が強まる中、新型コロナウイルス感染症(以下「COVID-19」という)に対する多額の財政出動はこの圧力をさらに強める可能性があります。我が国においては、高齢化の更なる進展に伴う医療費の増加を見越した医療保険制度の改革が進められており、医療用医薬品については2021年度より毎年薬価改定が実施されるなど、これら行政施策の動向が業績に影響を与える可能性があります。また、医薬品の開発、製造などに関連する国内外の規制の厳格化により、追加的な費用の発生や製品が規制に適合しなくなる等の事態が、業績に影響を与える可能性があります。 さらに、COVID-19に対処するために様々な規制や制度が追加等されておりますが、今後COVID-19パンデミックの状況等によりそれらが変更され、業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、革新的な医薬品等を社会が許容できる価格で提供し、社会保障の維持に貢献することを重視する一方で、創出したイノベーションの価値を示す科学的根拠となるエビデンスの構築に努めるとともに、国内外の業界団体活動を通じてイノベーションの価値を訴求する取り組みを推進しております。また、薬価制度を含む医療保険制度改革や医薬品及びワクチン等の研究開発、製造、販売等に関する政策動向について常に最新の情報を入手し、その変化に迅速かつ適切に対処するよう努めております。

 

(2)副作用等に関するリスク

医薬品は、世界各国の所管官庁の厳しい審査を受けて承認・販売されておりますが、市販後に予期せぬ副作用等の発生により販売中止、製品回収などの事態に発展し、業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、副作用情報を入手した場合、医薬品情報担当者に限らず全社員が適切に報告するシステムを構築し、毎年全社員への教育を実施しております。収集した情報を迅速に評価・分析し必要な安全対策を実施することで、予期せぬ副作用等の拡大や被害を最小限に抑えるよう努力しております。なお、副作用等に基づく医療被害補償に関しては、保険に加入しておりますが、それに伴うレピュテーションの低下などに起因する売上減少に関しては予想できておりません。

 

(3)研究開発に関するリスク

医薬品の研究開発には、多大な経営資源の投入と時間を必要とします。また、医薬品が実際に上市され、売上を計上するまでには様々な不確実性が存在します。さらに、世界的なCOVID-19パンデミックを解決するべく、ワクチン、治療薬の研究開発が異次元のスピードで進められ、業界内において医薬品の研究開発のスピードが劇的に速まっており、その対応如何では企業価値を毀損することもリスクとして想定しなければなりません。

当社グループでは、長年にわたり蓄積した疾患領域の強み、低分子創薬の基盤を活かし、効率的な創薬研究を展開することで、グローバルでもトップレベルの研究開発生産性を維持・向上させてまいりました。COVID-19パンデミック下において、過去に類を見ないスピードでワクチン・治療薬の研究開発が進められ、海外他社に先行を許しましたが、当社グループにおいても研究基盤と創薬のノウハウを活かし、アカデミア・外部機関と連携し、当社グループの強みを融合させるとともに、優先度を考慮した大幅なリソースシフトとスピーディな意思決定を行うことで研究開発の加速を実現させております。また、得られた知見をCOVID-19以外の研究開発全体に拡大することによって、更なる研究開発生産性の改善に結びつけてまいります。一方で、創薬成功確率の更なる向上に向けては、経営資源の適正な配分、低分子以外の創薬モダリティ、すなわち中分子医薬や抗体医薬のような新しい創薬技術の強化が必要となります。そのため、COVID-19関連(治療薬、ワクチン等)はもとより、当社グループが注力する創薬プログラムや開発化合物を明確にし、経営資源を集中的に投下するとともに、多様なベンチャーやアカデミア等とのアライアンスを活用しつつ、ペプチド医薬、ワクチン、細胞医療(再生医療)といった技術の獲得に注力しております。また、多額の費用を要する臨床開発におけるリスク低減に向けて、データと経験に基づく試験計画のデザイン、試験結果に基づく厳格な見極めを適宜行い、適切な開発可否判断により開発の生産性を高めております。さらに、化合物の導入や導出により研究開発の加速や価値最大化を図り、各国政府等の公的機関からの補助金を活用するなど、不確実性に対する様々なリスク低減に取り組んでおります。

 

(4)特定製品への依存に関するリスク

インチュニブの製品売上収益及び、テビケイ、トリーメク等のHIV製品のロイヤリティー収入が、売上収益合計の約57%(2022年3月期現在)を占めております。これらの品目において、知的財産権(特許権)の満了及びそれに伴う後発品の発売、薬価改定や競合品の出現、その他予期せぬ事情により売上減少や販売中止となった場合には、業績に影響を与える可能性があります。

これら医薬品事業において必然又は予期せぬ形で起こり得るリスクに対して、薬価制度や競合状況等の最新情報をもとに、次なる製品群の市場投入や契約の見直し等の打ち手を検討し、その影響の低減に努めております。また、薬価制度の大幅な見直し等、事業の継続性に大きな影響を与える議論がなされる際は、(1)に記載のとおり、イノベーション創出の重要性とその価値を訴求すべく、業界団体で連携して意見の表明等を行っております。さらに、上記の事業リスクを孕む従来の医薬品中心の事業から、ワクチン事業やデジタルなどの最新技術を駆使した新たな概念の医薬品などを含む、ヘルスケアサービス全般を提供できる企業へと事業の変革を進め、リスクの低減に努めてまいります。

 

(5)他社とのパートナーシップに関するリスク

医薬品の研究、開発、製造、販売等において、共同研究、共同開発、化合物や技術の導出入、共同販売等、様々な形で他社との提携を行っております。何らかの事情により提携先との契約が変更・解消され、これら企業との提携に遅延又は停滞等が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、提携に際し多方面からの分析・評価を行ったうえで、提携可否を判断しております。また、契約締結においては、発生しうるリスクを想定し、これを低減するための協議と合意形成に努め、その内容を契約書に定めております。さらに、提携中も提携先との間で様々な機能・階層を通じた強固なガバナンス体制を構築し、提携におけるリスクの把握と解決策の協議を密に行い、必要な打ち手を講じることで、業績への影響を最小化するよう努めております。

 

(6)サプライチェーンに関するリスク

当社グループは、医薬品を安定的に供給することを使命としておりますが、紛争、自然災害、パンデミック及びESGに関わる課題など様々な要因によりサプライチェーンに混乱が生じた場合に、医薬品の安定供給に支障をきたし患者様の健康に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、優先して供給すべきBCP(事業継続計画)品目を設定して定期的に見直すとともに、製品の保有在庫量について独自の基準を設定し、余剰在庫確保等の対応により原材料や製品の供給混乱リスクに備えております。また、地政学リスクの高い原材料は複数国のサプライヤーを選定して購入することにより安定供給を果たしております。さらに、セフェム系抗生剤等、原材料の購入先が限られる品目については、原薬の国内製造の体制構築を進めており、将来のサプライチェーンリスクの低減に努めております。

加えて、「シオノギグループ調達ポリシー」及び「シオノギグループビジネスパートナーに求める行動規範」に則り、サプライヤーを含むビジネスパートナーにも、当社グループの行動憲章に基づく活動を依頼しており、当社グループを含めたサプライチェーン全体でリスクの低減に努めております。

 

(7)品質に関するリスク

当社グループは、厳格な製造・品質管理のもと製品の製造及び委託製造を行っておりますが、製造プロセスにおける不備等の要因により重大な品質問題が発生した場合には、製品回収、行政処分、社会的信用性の低下等により、業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、シオノギグループ品質ポリシーを2015年に制定し、海外グループ会社を含め、法規制を遵守しグローバルな基準と要件を満たす品質保証体制を維持し、製品の品質を担保することに取り組んでおります。その一環として「Shionogi Global Quality Week」を開催し、グループ会社を含めた全社員に対して「品質」の重要性の浸透を図っております。また、製造所でのQuality Cultureの醸成を進めるためのアンケート実施と、その結果を受けたキャラバン活動も行っております。

当社グループ製品のグローバルな製造においては、医薬品等の製造管理及び品質管理の基準(GMP)や医薬品規制調和国際会議(ICH)ガイドライン等の薬事関連法規に準拠しており、厚生労働省、米国食品医薬品局(FDA)や欧州医薬品庁(EMA)等の所管当局の査察を受け、許可をいただいております。予期せぬ重大な品質問題が発生した場合は、速やかに評価し、製品品質向上及び顧客満足提供のための最善の意思決定を行うように努めております。

 

(8)ITセキュリティ・情報管理に関するリスク

当社グループでは、社内外の各種ITシステムを利用し、かつ個人情報を含む多くの機密情報を保有しております。従業員及びアウトソーシング企業等の不注意又は故意による行為、あるいは悪意をもった第三者によるサイバー攻撃やウイルスの感染等によるシステムの停止及び個人情報漏洩等のセキュリティ上の問題が発生した場合、事業活動、経営成績及び財政状態、信用に重大な影響を及ぼし、更には損害賠償請求等の法的な損害や、事後対応に係る費用等が発生する可能性があります。

本リスクを低減するために、情報管理を統括する責任者として情報の保全及び情報セキュリティの確保に関する方針を定めるCIO(Chief Information Officer)、データ及び文書類の利用並びに管理を統制する責任者としてCDO(Chief Data Officer)、IT運営の責任者としてグローバルITヘッドをそれぞれ任命し、法規制やガイドラインを踏まえた情報管理に関する規程等を整備し、従業員へ情報管理の重要性を周知徹底しております。また、個人情報に関しては、「シオノギグループプライバシーポリシー」を策定し、個人情報の重要性に対する認識及び個人情報の保護に関する法令を遵守する必要性を従業員に周知しております。

 加えて、サイバー攻撃や大規模災害等の危機事象が発生した際の事業継続をより確実に遂行するためのIT-BCP(事業継続計画)体制構築のプロジェクトを推進し、ITインフラの整備、情報セキュリティ基盤の強化・運用の改善を図るとともに、台湾拠点におけるサイバー攻撃の実例から、再発防止及び未然防止に向けた対策として、海外拠点を含め全社で実施したセキュリティアセスメントの結果に基づく当社グループ全体でのネットワーク体制の抜本的見直し等の対策を行っております。

 

(9)人材確保・育成に関するリスク

当社グループでは、経営ビジョンの実現に必要な多様な人材の確保・育成に努めております。雇用情勢の変化やESG経営への要請の高まり等の環境変化に加え、ポストコロナ時代を見据えた働き方の変化により、労働に対する価値観や必要となる専門性も変わりつつあります。そのような中では、環境変化を好機と捉え社会課題の解決を加速させる人材、HaaS(Healthcare as a Service)企業として持続的な成長を目指している当社グループのトランスフォーメーションを具現化できる人材、全社視点で論理的に考えグループの高効率経営を支える人材などが求められますが、それら人材を十分に確保・育成できない場合は、組織運営が実現できず、中長期的には当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

社会に新たな価値を生み出し企業価値を高めるために、何よりも大切な資本は従業員であると当社グループは考えております。STS2030の達成に向けて、新たに定めた人材像「Shionogi Way:一人ひとりが他者を惹きつける尖った強みを持ち、新しいことにチャレンジを続ける人」を実現するために、自ら成長していく機会をつかむための環境整備や自己投資支援の充実、育成を支えるマネジャーへの重点トレーニングに加え、STS2030で目指すHaaS企業の実現に資する人材育成プログラムの一つであるIT/デジタル技術活用による業務変革/価値創造トレーニングなど、種々の施策を実行することで人材育成の強化を図っております。さらに、経営トップ自らが開催する社長塾や、経営幹部候補者のグループ会社役員への登用による会社経営の実践を通じて、将来の経営幹部育成にも取り組んでおります。また、従業員個々のスキルアップと柔軟な働き方を推進していくため、所定労働時間を155時間から140時間に変更し、15時間裁量給と選択週休制度(週休3日)の導入に加え、一部の副業を認めました。これらの取り組みにより、多様な経験を持った従業員の確保につなげたいと考えております。

 

(10)環境・安全に関するリスク

医薬品の研究、開発、製造の過程等で使用・生成する物質には、人体や生態系に影響を及ぼすものがあります。事業活動を行う過程において環境汚染やそれに伴う被害等が顕在化した場合、施設の一時閉鎖や対策・復旧費用の発生、法的責任を負うこと等により、当社の信用又は業績に影響を与える可能性があります。2021年1月に発生しましたシオノギファーマ(株)金ケ崎工場における溶剤ジクロロメタンの漏出に関しては、土壌からの回収とともに敷地内での分布状況の把握、移動阻止による拡散防止に努めており、現時点においても工場敷地外への漏洩は確認されておりません。敷地外への漏洩のリスクに対し、今後も継続して監視活動を行い、適切な対応を実施いたします。環境・安全衛生に関するリスクを低減するために、当社グループ統括管理体制及び管理規程を設定し、法令遵守はもとより、より厳しい管理基準・目標を策定し、対応策の策定・実行とそれらの適切性の確認を行っております。加えて、サプライヤーにも同様の対応を依頼しており、当社グループを含めたサプライチェーン全体でリスクの低減に努めております。

さらに、製薬企業として革新的な医薬品を創出し社会課題の解決に努めるだけでなく、国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)に代表されるグローバルなフレームワークに沿った取り組みを進めることは、地球の持続的可能性のためにも重要であると考えております。具体的には、環境マテリアリティ(重要課題)として特定した「薬剤耐性(Antimicrobial Resistance:AMR)」や気候変動、プラスチック廃棄物対策などに長期目標を設定し、サステイナビリティ課題に取り組んでおります。特に気候変動においては、温室効果ガスの削減目標を設定し、「パリ協定の水準に科学的に整合する温室効果ガス排出削減目標(Science Based Targets:以下「SBT」という)」の認証を取得いたしました。2030年のSBT達成を目標に、電力の再生可能エネルギーへの完全転換を進めております。さらに、今年度は「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:TCFD)」提言に賛同し、気候変動がもたらすリスク・機会が経営にどのような影響を与えるかについて、シナリオ分析、財務影響試算や対応策検討を通じて、当社グループのレジリエンスを高める活動を進めており、結果は適宜開示して参ります。

 

(11)自然災害やパンデミックに関するリスク

突発的に発生する大地震や気候変動に伴う暴風雨、洪水等の自然災害、不慮の事故、パンデミックの発生等による事業所の閉鎖、又は工場の操業停止に伴って、市場への製品供給に支障をきたした場合、業績に重大な影響を与える可能性があります。また、研究所や臨床試験実施施設等が被害を被った際には、創薬研究又は臨床開発の進展に影響が生じる可能性があります。 さらに、安全性情報の提供や収集にも影響する可能性があります。

そのため、経営層が重要な業務を明確にしたうえで、自然災害及びパンデミックに対応するBCP(事業継続計画)を組織単位で策定しており、継続的な訓練の実施や定期的な計画の見直しを行うことにより、有事への備えを強化しております。また、当社グループ工場のみならず、重要なサプライヤーについても、自然災害の影響や、その他環境・安全に対する状況等について、EHS(環境・安全衛生)監査等を通じて確認しており、必要に応じて改善要求をしております。

 

(12)知的財産に関するリスク

当社グループの製品は、知的財産権(特許権等)により保護されて利益を生み出しますが、種々の知的財産が充分に保護できない恐れや第三者の知的財産権を侵害する可能性があります。

そのため、保有する知的財産の価値を毀損することのないよう、知的財産権を適切に管理する体制を整え、第三者からの権利侵害にも継続的に注意を払っております。また、事業活動にあたっては、侵害予防調査の実施や、導出入活動における知財デューデリジェンスの実施など、侵害予防のための体制を整え、第三者の知的財産権を侵害することのないように注意を払っております。これらを通じて、知的財産に関するリスク低減に努めております。

 

(13)訴訟に関するリスク

事業活動に関連して、医薬品の副作用、製造物責任、労務問題、公正取引等に関して訴訟を提起される可能性があり、その動向によって、当社グループの信用又は業績に影響を与える可能性があります。

本リスクを低減するために必要な社内体制を構築するとともに、適宜、弁護士や弁理士などの専門家と協議のうえ、適切な対応をとっております。現在、係争中の主な訴訟に関しては、「第5 経理の状況  1 連結財務諸表等 (2)その他 ②重要な訴訟」に記載しております。

 

(14)金融市場及び為替動向に関するリスク

予測の範囲を超える金融市場や為替市場の変動があった場合には、年金資産の運用への影響、退職給付債務の増加や海外提携先からのロイヤリティー収入への影響等、業績、財産に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、年金資産を複数の運用商品に分散投資することで、年金資産の収益悪化により退職給付債務が増加するリスクの低減に努めております。また、外貨建取引及び外貨建金銭債権債務の為替変動リスクや金利変動リスクに対して、デリバティブ取引を活用して対応しております。

 

(15)コンプライアンスに関するリスク

当社グループの事業活動を遂行するにあたって、薬事規制や製造物責任等の様々な法規制の適用を受けるだけでなく、人々の健康や生命に直結する医薬品産業として、社会から極めて高い倫理観に基づく行動が求められます。そのため、法令違反だけでなく、社会の要請に反するような行動は、当社グループに対するステークホルダーからの信頼の失墜や低下を招き、結果として業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、コンプライアンスの遵守を常に最優先事項として認識し、シオノギグループ行動憲章において倫理的で責任ある行動を約束するとともに、当社グループが実現したいVisionの達成に不可欠な価値観であるValuesの一つにコンプライアンスの徹底を定めております。

シオノギグループコンプライアンスポリシーを制定し、コンプライアンス委員会、内部通報窓口(社内、社外)を設置するとともに、四半期ごとの社長メッセージの中で必ずコンプライアンスについて言及し、従業員のコンプライアンス意識の強化を図っております。コンプライアンス委員会は、代表取締役社長をコンプライアンス委員長として年4回開催し、コンプライアンス上の課題を協議し、必要な教育(ハラスメント・情報漏洩・贈収賄防止など)や取り組みを実施しております。

 

(16)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大

COVID-19の感染拡大に伴い事業活動が制限された場合、原材料の調達などのサプライチェーンの停止・停滞により、医薬品の安定供給に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 また、研究・臨床試験の遅延やMRによる情報提供等事業活動の制限を受けることにより、新薬承認申請や発売、市場浸透、医薬品の安全性情報や適正使用情報の収集・提供に重大な影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクを低減するために、感染拡大防止に向けた出社率抑制や生産・研究部門における社内検査体制の構築による濃厚接触者の早期発見など、政府・行政の要請に応えつつ、生産性を維持・向上するために必要な新しい働き方の整備に取り組んでおります。また、コロナ禍における情報提供活動は、政府・行政の発出するガイドラインに基づき、情報提供の仕組みや内容を変更して対応しております。加えて、感染拡大による緊急時においても事業を継続し製薬企業として社会的責任を果たすため、BCP(事業継続計画)を活用し、自社医薬品の安定供給を最優先とした対応を進めております。

COVID-19の拡大による影響と当社の取り組みの詳細については、第2 事業の状況「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、及び「5 研究開発活動」をご参照ください。

 

 上記以外にも、事業活動に関連した様々なリスクがあり、ここに記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

経営者の視点による当社グループ(当社及び連結子会社)の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

また、当社グループの事業は、医療用医薬品の研究開発、仕入、製造、販売並びにこれらの付随業務を事業内容とする単一セグメントであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

①経営成績等

a.財政状態

当連結会計年度末の資産合計は1兆1,506億1百万円で、前連結会計年度末に比べて1,516億8百万円増加しました。

非流動資産は4,913億96百万円で、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産の増加、ワクチン製造設備の建設に伴う有形固定資産の増加等により前連結会計年度末に比べて486億41百万円増加となりました。流動資産は6,592億5百万円で、営業債権、3ヶ月超の定期預金及び債券(流動資産のその他の金融資産に含みます)の増減等の結果、前連結会計年度末に比べて1,029億67百万円増加しました。

資本については9,932億85百万円となり、当期利益の計上と配当金の支払、また、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産の純変動額と在外営業活動体の外貨換算差額が増加した結果、前連結会計年度末に比べて1,287億34百万円増加しました。

負債については1,573億16百万円で、前連結会計年度末に比べて228億74百万円増加しました。

非流動負債は329億20百万円で、前連結会計年度末に比べて13億41百万円減少しました。流動負債は1,243億96百万円で、前連結会計年度末に比べて242億15百万円増加しました。

 

b.経営成績

当連結会計年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)の経営成績は、以下のとおりであります。

(単位:百万円)

 

当連結会計年度

前連結会計年度

増減

増減率(%)

売上収益

335,138

297,177

37,960

12.8

営業利益

110,312

117,438

△7,126

△6.1

コア営業利益

110,570

93,963

16,607

17.7

税引前利益

126,268

143,018

△16,750

△11.7

親会社の所有者に帰属する当期利益

114,185

111,858

2,326

2.1

※会社の経常的な収益性を示す利益指標として「コア営業利益」を設定し、これを当社独自の業績管理指標として採用しております。「コア営業利益」は、営業利益から非経常的な項目(減損損失、有形固定資産売却益等)を調整した利益となります。

 

売上収益は、3,351億円(前期比12.8%増)となりました。国内医療用医薬品の売上収益は、サインバルタの後発品参入の影響を受け、891億円(前期比5.9%減)となりました。一方、海外子会社及び輸出の売上収益は、セフィデロコルの米欧での売上の伸長により、344億円(前期比39.5%増)となりました。さらに、HIVフランチャイズに関するロイヤリティー収入の増加により、ロイヤリティー収入は、1,813億円(前期比25.3%増)となりました。

営業利益は、COVID-19関連プロジェクトへの積極投資により研究開発投資が増加したことで、1,103億円(前期比6.1%減)となりました。また、特殊要因を除くコア営業利益は1,106億円(前期比17.7%増)でした。

税引前利益は1,263億円(前期比11.7%減)となりました。

親会社の所有者に帰属する当期利益は、税引前利益は減少したものの、大阪国税局からの更正処分に対する取消請求訴訟の勝訴に関する還付金を受領した結果、1,142億円(前期比2.1%増)となりました。

2021年度はCOVID-19関連プロジェクトへの研究開発費が大幅に増加しながらも、業績予想を達成することができました。2022年度は、積み残した課題に取り組み、自らの力で利益を生み出すことができる企業体質への変革を一層強化していきます。

 

 

・国内医療用医薬品

サインバルタの後発品参入による売上減少により、国内の医療用医薬品の売上収益は891億円(前期比5.9%減)となりました。インフルエンザに関しましては、昨シーズン同様に極めて小規模な流行にとどまりましたが、ラピアクタの政府備蓄による売上収益を計上したため、インフルエンザ関連製品群の売上収益は31億円(前期比28億円増)となりました。また、インフルエンザ関連製品群を含む感染症薬に関しましては、118億円(前期比20.8%増)となりました。インチュニブとビバンセに関しましては、売上収益がそれぞれ164億円(前期比25.4%増)、8億円(前期比190.7%増)と伸長しました。

コロナ禍において、MRの医療機関への訪問規制が続いておりましたが、医療従事者に各製品の情報を適切に届けるために、デジタル環境下における情報提供体制を整備し面会機会の確保に注力しました。また、1人当たりの生産性の向上を目指し、意思決定がデータに基づいて行われる組織を実現するための営業IT基盤の構築を進めました。

 

・海外子会社及び輸出

海外子会社及び輸出の売上収益は、344億円(前期比39.5%増)となりました。米国での売上収益は、セフィデロコル※1が好調に推移したことに加え、FORTAMETの販売権等の移管に関する一時金を受領した結果、138億円(前期比84.5%増)となりました。セフィデロコルの売上収益は62億円(前期比268.7%増)となりました。欧州での売上収益は、セフィデロコルが好調に推移したことで、50億円(前期比153.7%増)となりました。また、2021年度にイタリアでの販売を新たに開始しました。引き続きセフィデロコルの販売国とサブスクリプション型償還モデル※2の採用国の拡大を通して、欧米事業の成長を進めてまいります。中国では、中国政府による医療費抑制施策の中で既存のジェネリック事業の売上収益は減少しましたが、為替変動の影響により売上収益は102億円(前期比1.1%増)となりました。

 

※1 米国の販売名:Fetroja、欧州の販売名:Fetcroja

※2 抗菌薬の処方量と切り離し、国が開発企業に対して固定報酬を支払う代わりに、必要なときに抗菌薬を受け取ることができるサブスクリプション型の償還モデル

 

・ロイヤリティー収入及びヴィーブ社からの配当金収入

英国ヴィーブヘルスケア社(以下「ヴィーブ社」という)に導出したHIVフランチャイズの売上が伸長したことで一時金を除く同社からのロイヤリティー収入は対前年で増加しました。また、ヴィーブ社の米国ギリアド・サイエンシズ社(以下「Gilead社」という)に対する特許侵害訴訟が、2021年度中に和解に至ったことから、ヴィーブ社は12.5億米ドルの一時金と、今後の米国におけるBiktarvyの売上高(参考:2020年60.9億米ドル)及び将来の製品売上高のbictegravir部分の金額に対して、3%のロイヤリティーを受領することになりました。当社はヴィーブ社が受領した一時金の一部を売上収益として認識しました。また、ヴィーブ社との協議の結果、当社が将来受領予定のロイヤリティー相当分を当連結会計年度の売上収益として認識しました。 以上の結果、ヴィーブ社からのロイヤリティー収入は1,740億円(前期比41.0%増)となりました。

スイスロシュ社からのロイヤリティー収入に関しては昨シーズンに引き続きグローバルでのインフルエンザの流行が極めて小規模にとどまったため2021年度は0.4億円となりました。

また、英国アストラゼネカ社からのクレストールのロイヤリティーは、契約に基づき2020年度第4四半期より受領額が減少したことから、12億円(前期比93.1%減)となりました。

以上のように2021年度のロイヤリティー、マイルストン及び配当金収入全体としては、HIVフランチャイズに関するロイヤリティー収入が増加したことから、1,942億円(前期比15.6%増)となりました。

 

 

・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しましたとおり、当社グループは、2020年6月に新中期経営計画「Shionogi Transformation Strategy 2030(STS2030)」を策定しております。

成長性を測る指標として、売上収益、コア営業利益、コア営業利益率、ロイヤリティー収入を除く海外売上高比率、自社創薬比率の5つを設定しており、また株主還元を測る指標として、事業成長と財務施策の観点から基本的1株当たり当期利益(EPS)、親会社所有者帰属持分配当率(DOE)、親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)の3つを設定しております。

STS2030の2年目である当連結会計年度においてこれらの指標に対する結果は、以下のとおりとなりました。

 

業績評価指標(KPI)

2021年度

実績

2022年度

目標

2024年度

目標

2030年度

目標

成長性

売上収益

3,351億円

4,000億円

5,000億円

6,000億円

コア営業利益*

1,106億円

1,200億円

1,500億円

2,000億円

コア営業利益率

33.0%

30%以上

30%以上

海外売上高比率**

22.3%

25%以上

50%以上

自社創薬比率

73%

60%以上

60%以上

株主
還元

EPS

378.75円

370円以上

480円以上

DOE

3.8%

4%以上

4%以上

ROE

12.5%

13%以上

15%以上

 *:営業利益から非経常的な項目(減損損失、有形固定資産売却益等)を調整した利益となります。

**:ロイヤリティー収入を除きます。

 

2022年度はCOVID-19関連プロジェクトによる成長の実現と、収益の再投資による中長期的な成長に向けた取り組みに注力するとともに、国内及び海外事業の強化を図り、引き続き、STS2030で掲げたこれらの指標の達成に向けて取り組みを進めてまいります。

 

c.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、大阪国税局からの更正処分に対する取消請求訴訟の勝訴に関する還付金受領の一方、税引前利益の減少及び営業債権の増加により、前連結会計年度に比べて69億70百万円少ない1,020億68百万円の収入となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の増減、余資運用に係る有価証券の取得等により、前連結会計年度に比べて909億42百万円多い962億4百万円の支出となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に自己株式の取得、第三者割当による自己株式の処分及び平安グループとの子会社設立に伴う株式発行収入があったため、前連結会計年度に比べて72億76百万円少ない366億15百万円の支出となりました。

これらを合わせた当連結会計年度の現金及び現金同等物の増減額は217億52百万円の減少となり、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、2,544億20百万円となりました。

 

〔キャッシュ・フロー指標のトレンド〕

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

親会社所有者
帰属持分比率

87.6%

84.7%

84.8%

時価ベースの親会社所有者帰属持分比率

184.9%

179.6%

197.3%

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

0.1

0.1

0.1

インタレスト・カバレッジ・レシオ

378.1

425.6

1,161.1

(注)親会社所有者帰属持分比率:親会社の所有者に帰属する持分/資産合計

時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/資産合計

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

1.指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

2.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

3.キャッシュ・フローは営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。

4.有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を払っている全ての負債を対象としております。

②生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

医薬品事業

93,484

0.9

(注)金額は、正味販売見込価格により算出したものであります。

 

b.商品仕入実績

当連結会計年度における商品仕入実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

医薬品事業

12,573

△3.8

(注)金額は、実際仕入額によっております。

 

c.受注状況

当社グループは、主として販売計画に基づいて生産計画をたてて生産しております。

当社及び一部の連結子会社で受注生産を行っておりますが、受注高及び受注残高の金額に重要性はありません。

 

d.販売実績

当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

医薬品事業

335,138

12.8

(注)1.販売金額は、外部顧客に対する売上収益を表示しております。

2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

ViiV Healthcare Ltd.

123,361

41.5

176,990

52.8

 

(2)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しております。重要な会計方針及び見積りの詳細等につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4) 重要な会計上の判断、見積り及び仮定」をご参照ください。

 

4【経営上の重要な契約等】

1.当社の当連結会計年度における経営上の重要な契約等は次のとおりです。

(1) 技術導入等

相手先

国名

技術の内容

地域

対価の支払

契約期間

MUNDIPHARMA B.V.

オランダ

硫酸モルヒネ徐放錠に関する技術及び商標使用許諾

日本

一定料率のロイヤリティー

1986.7~

MUNDIPHARMA B.V.

オランダ

塩酸オキシコドンに関する技術及び商標使用許諾

日本

契約金

一定料率のロイヤリティー

一時金

1992.12~2025.6

SANOFI AVENTIS

フランス

降圧剤イルベサルタンに関する技術及び商標使用許諾

日本

契約金

原薬購入

1996.3~

製品の承認取得日から15年又は特許権存続期間のどちらか長い方

以降5年毎の自動更新

MARNAC, INC.

/KDL, INC.

アメリカ

日本

抗線維化剤ピルフェニドンに関する技術

日本

韓国

台湾

契約金

1996.11~

バイエル薬品株式会社

日本

抗アレルギー剤ロラタジンの共同開発・販売権及び商標使用許諾

日本

製品購入

1999.1~

以降3年毎の自動更新

BIOCRYST PHARMACEUTICALS, INC.

アメリカ

抗インフルエンザウイルス剤ペラミビルに関する技術

日本

台湾

契約金

一定料率のロイヤリティー

2007.2~

製品の発売から10年又は特許権存続期間のどちらか長い方

オンコセラピー・サイエンス株式会社

日本

癌ペプチドワクチンに関する技術

全世界

契約金

一定料率のロイヤリティー

2009.2~

製品の最初の承認取得日から15年

以降2年毎の自動更新

STALLERGENES SA

フランス

イエダニによるアレルギー性鼻炎に対する減感作治療剤

日本

台湾

契約金

マイルストン

製品購入

2010.9~

製品の発売から15年

以降3年毎の自動更新

Takeda Pharmaceuticals International AG

スイス

ADHD(注意欠陥・多動性障害)治療剤

日本

契約金

製品購入

一定料率のロイヤリティー

2011.11~

製品の発売から10年又は特許の存続期間のどちらか長い方

MUNDIPHARMA B.V.

オランダ

塩酸オキシコドン乱用防止製剤及び塩酸オキシコドン/ナロキソン配合剤に関する技術及び商標使用許諾

日本

契約金

マイルストン

一定料率のロイヤリティー

2013.11~

各製品の発売から10年

以降5年毎の自動更新

ペプチドリーム株式会社

日本

創薬開発プラットフォームシステムに関するライセンス及び共同研究

全世界

技術移管費、共同研究費等

マイルストン

一定料率のロイヤリティー

2017.6~

ロイヤリティー支払義務消滅まで

Hsiri

Therapeutics,Inc.

アメリカ

抗酸菌症治療薬の開発候補品

全世界

契約金

マイルストン

一定料率のロイヤリティー

2018.5~

ロイヤリティー支払義務消滅まで

Sage

Therapeutics,Inc.

アメリカ

新規抗うつ薬 SAGE-217

日本

台湾

韓国

契約金

マイルストン

一定料率のロイヤリティー

2018.6~

ロイヤリティー支払義務消滅まで

 

(2) 技術導出等

相手先

国名

技術の内容

地域

対価の受取

契約期間

AstraZeneca UK Limited

イギリス

高コレステロール血症治療薬の開発、製造及び販売権

全世界

契約金

一定料率のロイヤリティー

1998.4~

2023年末まで

ViiV Healthcare Ltd.

イギリス

HIVインテグレース阻害薬ドルテグラビル及び関連製品の開発、製造及び販売権

全世界

一定料率のロイヤリティー

2012.10.26~

MedImmune,LLC

アメリカ

急性冠症候群治療薬の研究、開発、製造及び販売権

全世界

契約金

マイルストン

一定料率のロイヤリティー

2014.9.29~

製品の発売から10年、

データ保護期間又は特許権存続期間のどちらか長い方

Hoffmann-La Roche Inc./F. Hoffmann-La Roche Ltd

スイス

アメリカ

S-033188(インフルエンザ感染症治療薬)の開発、製造及び販売権

全世界

(日本及び

台湾を

除く)

契約金

マイルストン

一定料率のロイヤリティー

2016.2~

最初の上市から12年又は、医療用医薬品品質情報集に記載される製品をカバーする最後の特許権存続期間のどちらか長い方

ViiV Healthcare Ltd.

イギリス

S-365598(第3世代インテグラーゼ阻害薬)の開発、製造及び販売権

全世界

契約金

マイルストン

一定料率のロイヤリティー

2021.9~

 

(3) 共同開発及び共同販売

相手先

国名

技術の内容

地域

契約期間

IPR Pharmaceuticals, Inc.

プエルトリコ

高コレステロール血症治療薬の販売権

日本

2002.4~

製品の発売から10年又は特許権存続期間のどちらか長い方

大日本住友製薬株式会社

日本

降圧剤イルベサルタン/アムロジピンベシル酸塩配合錠の共同販売権

日本

2012.6~

製品の発売から10年

以降1年毎の自動更新

ヴィーブヘルスケア株式会社

日本

HIVインテグラーゼ阻害薬ドルテグラビル及びその合剤を含む抗HIV薬の共同販促権

日本

2016.4~2022.3

(注)2022年4月1日付で、2022.4~2025.3間の共同販促契約を更新しております。

 

ELI LILLY AND COMPANY

/日本イーライリリー株式会社

 

アメリカ

日本

デュロキセチン塩酸塩の共同開発・共同販促権

日本

2015.4~

製品が販売されている期間

ムンディファーマ株式会社

日本

殺菌消毒薬イソジンの販売権及び共同販促権

(医療用医薬品)

日本

2015.12~

製品の発売から5年

以降2年毎の自動更新

Eddingpharm

中国

ルストロンボパグの販売権

中国

2019.3.29~

製品の発売から15年

以降3年毎の自動更新(合計24年を超えない)

 

(4) 出資契約

相手先

国名

内容

締結日

株式会社島津製作所

日本

合弁会社の設立

2022.1.6

なお、本契約に伴って2022年1月20日付で株式会社 AdvanSentinelを設立し、持分法適用会社としております。

 

(5) その他

相手先

国名

内容

締結日

株式会社日立製作所

株式会社日立医薬情報ソリューションズ

シオノギデジタルサイエンス株式会社

日本

IT業務に関する中長期的かつ戦略的パートナーシップに向けた基本合意(業務提携)

2021.10.1

なお、本業務提携に伴ってシオノギデジタルサイエンス株式会社を解散し、清算を結了しました。

 

2.連結子会社の当連結会計年度における経営上の重要な契約等は次のとおりです。

(1) 技術導出等

会社名

相手先

国名

技術の内容

地域

対価の支払

契約期間

シオノギINC.

DUCHESNAY INC.

カナダ

膣萎縮症治療薬オスペミフェンの開発・製造及び販売権

アメリカ

カナダ

契約金

一定金額及び年間売上に応じた追加支払

2017.3.10~

支払義務満了まで

(2) 共同販売

会社名

相手先

国名

技術の内容

地域

契約期間

シオノギヘルスケア株式会社

ムンディファーマ株式会社

日本

殺菌消毒薬イソジンの販売権及び共同販促権 (日本)

殺菌消毒薬イソジンの販売権及び販促権(中国向け越境EC)

(OTC)

日本

中国向け越境EC

2015.10~

製品の発売から5年

以降2年毎の自動更新

 

(3) 出資契約

会社名

相手先

国名

内容

締結日

シオノギファーマ株式会社

千代田化工建設株式会社

大成建設株式会社

藤本化学製品株式会社

株式会社竹中工務店

長瀬産業株式会社

日本

合弁会社の設立

2021.11.24

なお、本契約に伴って2021年11月25日付でPharmira株式会社を設立し、連結子会社としております。
また、2022年2月4日付の出資契約の締結により横河電機株式会社の参画が決定し、2022年4月1日より事業を開始しております

 

5【研究開発活動】

2021年度も研究開発への積極的な投資を行うとともに、COVID-19による環境変化に柔軟に対処することで、注力プロジェクトをほぼ予定どおり進捗させました。

 

(1)研究

COVID-19治療薬候補であるS-880008については、臨床試験入りを目指して今期は非臨床試験を進めました。本化合物はペプチドリーム社の技術を活用し創薬したペプチドであり、単日投与で、速やかなウイルス排除による症状改善効果が期待できます。また、COVID-19治療薬に関しては、S-217622の後続化合物の創薬に向けプロジェクトを進展させました。

ワクチン事業への取り組みについては、次世代のCOVID-19ワクチンとして、粘膜免疫を誘導する経鼻ワクチンの開発に向けた取り組みを進展させました。また、インフルエンザの経鼻ワクチンであるS-872600の非臨床試験を進展させました。

S-540956は核酸アジュバントであり、がん領域及びHIV感染症の機能的根治での適応を目指しています。2021年度は臨床試験入りを目指して非臨床試験を進展させました。

S-531011はがんを標的とする抗体で、現在のがん治療では満たされない患者さまのニーズに応えることを目指しています。2021年度は非臨床試験を完了し、第Ⅰb/Ⅱ相臨床試験を開始しました。

S-365598は長時間作用型(3ヵ月以上に1回投与)の抗HIV薬となることが期待される第3世代のインテグラーゼ阻害薬です。2021年度は非臨床試験を進め、ヴィーブ社に導出しました。

 

(2)開発

S-812217(zuranolone)については、米国Sage社から導入したうつ病・うつ状態治療薬候補であり、大うつ病を対象とした国内第Ⅱ相臨床試験で良好な結果が確認でき、2021年度は国内第Ⅲ相臨床試験を開始しました。

シボピキサント(S-600918)については、難治性慢性咳嗽(せき)を対象としたグローバル第Ⅱb相臨床試験が進展し全被験者の観察が完了し、良好な安全性と複数の副次評価項目において効果の傾向を確認することができました。

S-005151(レダセムチドトリフルオロ酢酸塩)については、ステムリム社から導入した再生誘導医薬ペプチドであり、その作用機序から幅広い疾患への適応が期待されます。2021年度は急性期脳梗塞を対象とした国内第Ⅱ相臨床試験が完了し、第Ⅲ相臨床試験開始のための準備を進めました。また、変形性膝関節症、慢性肝疾患に対する医師主導治験(第Ⅱ相)が進展しました。

BPN14770(zatolmilast)については、子会社のTetra社から導入した認知機能改善薬候補であり、2021年度は脆弱X症候群を対象とした米国での第Ⅱb/Ⅲ相臨床試験を開始しました。また、アルツハイマー型認知症を対象とした国内第Ⅱ相臨床試験を開始しましたが、安全性の懸念が発生したため、試験を中止しました。なお、開発については今後も継続します。

S-637880については、神経障害性腰痛を適応症として開発を進めており、国内第Ⅱ相臨床試験を実施中でしたが、安全性の懸念が発生したため、神経障害性腰痛を適応とした開発を中止しました。

 

こうした活動の結果、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は72,996百万円となりました。

 

(3)COVID-19に対する研究開発の取り組み

パンデミックの早期終息に向け、感染症を重点疾患領域に掲げる製薬企業として、公的機関やアカデミア、パートナー企業と連携し、検知(流行予測)から予防、診断、治療そして重症化抑制とCOVID-19のトータルケアの観点で幅広い医療ソリューションの研究開発とサービスの提供に取り組んでいます。

 

開発品(2022年5月11日現在)

領域

開発No.

(一般名)

[製品名]

作用機序

 (剤型)

適応症

ステージ

起源

開発

感染症

S-649266

(セフィデロコルトシル酸塩硫酸塩水和物)

[米国:Fetroja®]

[欧州:Fetcroja®]

細胞壁合成阻害(注射)

他の治療がない又は限定される腎盂腎炎を含む複雑性尿路感染症、院内肺炎 (米国)

治療が限定される好気性グラム陰性菌による感染症 (欧州)

カルバペネム系抗菌薬に耐性が考えられるグラム陰性菌による各種感染症(日本)

グローバル:フェーズⅢ (小児)

日本:申請 (2022年3月)

自社

自社

S-033188

(バロキサビル マルボキシル)

[日本:ゾフルーザ®]

キャップエンドヌクレアーゼ阻害(経口・顆粒)

インフルエンザウイルス感染症

日本:申請 (体重20kg 未満)(2018年8月)

自社

自社/Roche

(スイス)

S-268019

 

ワクチン(筋注)

新型コロナウイルス感染症の予防

日本:フェーズⅢ

グローバル:フェーズⅢ

自社

自社

S-268019

ワクチン(筋注)

新型コロナウイルス感染症の予防(青少年)

日本:フェーズⅡ/Ⅲ

自社

自社

S-217622

(エンシトレルビル フマル酸)

3CLプロテアーゼ阻害剤(経口)

新型コロナウイルス感染症の治療

日本:申請(2022年2月)、フェーズⅡ/Ⅲ

グローバル:フェーズⅢ

自社

自社

疼痛・神経

S-297995

(ナルデメジントシル酸塩)

[日本:スインプロイク®]

[米国:Symproic®]

[欧州:Rizmoic®]

末梢性オピオイド受容体アンタゴニスト

(経口・散剤)

オピオイド誘発性便秘症 (小児)

欧州:フェーズⅠ/Ⅱ

自社

自社

S-120083

未公表(経口)

炎症性疼痛

日本:フェーズⅠ

米国:フェーズⅡ

自社/Purdue

(米国)

自社/Purdue

S-010887

 

未公表(経口)

神経障害性疼痛

日本:フェーズⅠ

自社

自社

S-117957

未公表(経口)

不眠症

米国:フェーズⅠ

自社/Purdue

(米国)

自社/Purdue

S-600918

(シボピキサント)

P2X3受容体アンタゴニスト(経口)

神経障害性疼痛

日本:フェーズⅠ

自社

自社

S-600918

(シボピキサント)

P2X3受容体アンタゴニスト(経口)

難治性・原因不明慢性咳嗽

グローバル:フェーズⅡ

自社

自社

S-812217

(zuranolone)

GABAA受容体ポジティブアロステリックモジュレータ(経口)

うつ病・うつ状態

日本:フェーズⅢ

Sage(米国)

自社/Sage

SDT-001

 

中枢作用に基づく、治療用デジタルアプリ

ADHD患者の不注意症状 (小児)

日本:フェーズⅢ

Akili(米国)

自社/Akili

BPN14770

(zatolmilast)

PDE4Dネガティブアロステリックモジュレータ

(経口)

脆弱X症候群

米国:フェーズⅡ/Ⅲ

Tetra(米国)

自社/Tetra

BPN14770

(zatolmilast)

PDE4Dネガティブアロステリックモジュレータ

(経口)

アルツハイマー型認知症

米国:フェーズⅡ

日本:フェーズⅡ

Tetra(米国)

自社/Tetra

代謝疾患

S-237648

ニューロペプチド Y Y5受容体アンタゴニスト(経口)

肥満症

日本:フェーズⅡ

自社

自社

ADR-001

ヒト他家脂肪組織由来の間葉系幹細胞

(注射)

非代償性肝硬変

日本:フェーズⅠ/Ⅱ

ロート

(日本)

自社/ロート

S-723595

アセチルCoAカルボキシラーゼ2阻害(経口)

非アルコール性脂肪肝炎

日本:フェーズⅠ

自社

自社

S-309309

モノアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ2阻害剤(経口)

肥満症

米国:フェーズⅠ

自社

自社

 

 

領域

開発No.

(一般名)

[製品名]

作用機序

 (剤型)

適応症

ステージ

起源

開発

フロンティア

S-588410

がんペプチドワクチン

(注射)

食道がん

日本:フェーズⅢ

オンコセラピー・サイエンス (日本)

自社

S-588410

がんペプチドワクチン

(注射)

膀胱がん

日欧:フェーズⅡ

オンコセラピー・サイエンス (日本)

自社

S-488210

がんペプチドワクチン

(注射)

頭頸部がん

欧州:フェーズⅠ/Ⅱ

オンコセラピー・サイエンス (日本)

自社

S-588210

がんペプチドワクチン

(注射)

固形がん

英国:フェーズⅠ

オンコセラピー・サイエンス (日本)

自社

S-222611

(epertinib)

HER2/EGFRデュアル阻害薬(経口)

悪性腫瘍

欧州:フェーズⅠ/Ⅱ

自社

自社

S-770108

 

抗線維化作用(吸入)

特発性肺線維症

日本:フェーズⅠ

自社

自社

SR-0379

肉芽形成促進作用

(外用)

皮膚潰瘍 (褥瘡、糖尿病性潰瘍)

日本:フェーズⅢ

ファンぺップ (日本)

自社/ファンペップ

S-005151

(レダセムチドトリフルオロ酢酸塩)

間葉系幹細胞を末梢血に動員(注射)

脳梗塞

日本:フェーズⅡ

ステムリム (日本)

自社

S-005151

(レダセムチドトリフルオロ酢酸塩)

間葉系幹細胞を末梢血に動員(注射)

表皮水疱症

日本:フェーズⅡ

ステムリム (日本)

自社

S-531011

CCR8特異的モノクローナル抗体(注射)

固形がん

日本・米国:フェーズⅠb/Ⅱ

自社

自社

 

<導出品>

 

 

 

 

 

 

開発No.

(一般名)

[製品名]

作用機序

 (剤型)

適応症

ステージ

起源

開発

S/GSK1265744 LAP*1

(cabotegravir)

インテグラーゼ阻害

(注射)

HIV感染症(治療及び予防)

(CAB*2 LAP、予防適応)

グローバル:フェーズⅢ

Shionogi-ViiV Healthcare

予防:ViiV、HPTN、NIAID、Gilead (米国)

S-0373

非ペプチド型TRHミメティック(経口)

脊髄小脳変性症

日本:申請 (2021年12月)

自社

キッセイ薬品 (日本)

S-033188

(バロキサビルマルボキシル)

[米国:XofluzaTM]

キャップエンドヌクレアーゼ阻害(経口)

インフルエンザウイルス感染症

米国:申請 (小児、1歳以上)(2020年3月)

グローバル:フェーズⅢ (小児、1歳未満)

グローバル:フェーズⅢ (伝播抑制)

自社

自社/Roche

(スイス)

S-555739

(asapiprant)

プロスタグランジンD2 DP1受容体拮抗(経口)

COVID-19の重症化抑制

米国:フェーズⅡ

自社

BioAge (米国)

*1 Long acting parenteral formulation、*2 Cabotegravir