文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、基本理念に基づき「Global Innovator for Crop & Life 食とくらしのグローバルイノベーター」をビジョンに掲げ、世界中の人々の安全で安定的な食の確保とくらしを守ることを使命とし、新たな価値の創造により持続可能な社会の実現に貢献していきます。
高い安全性と環境への配慮を兼ね備えた優れた化学農薬や非化学農薬を創出することで、安全で安定的な食の確保に貢献します。さらに、これまで培ってきた技術や知見を活かし、人々のくらしを豊かにする新たな製品や価値の創出に取り組み、人類と地球が共生できる社会の実現を目指します。
当社グループの中核事業である農薬事業を取り巻く環境は、世界的な人口増加や新興国の経済発展などを背景とした食料需要の拡大から、グローバルな農薬市場は拡大傾向にあります。一方で、国内では農業従事者の高齢化や後継者不足の深刻化、物流2024年問題などの社会課題に加え、みどりの食料システム戦略等による化学農薬肥料低減目標により、農薬市場は成熟段階にあるものと考えられます。また、創薬難度の高まりと農薬登録要件の増加、ジェネリック農薬との価格競争に加え、地政学リスクの高まりや原料・エネルギー価格の高騰による生産・調達コストの増加など、事業環境は一層厳しさを増しております。
このような事業環境下、ビジョン「Global Innovator for Crop & Life 食とくらしのグローバルイノベーター」を掲げ、当社グループは中期経営計画「Growing Global for Sustainability(GGS)」の2年目となる当連結会計年度(2026年3月期)においては、国内でのコルテバ・アグリサイエンス日本株式会社(以下、「コルテバ社」)製品の拡販やBASFジャパン株式会社(以下、「BASF社」)の果樹分野向け製品の日本国内での販売権取得、Nichino America, Inc.およびNichino Europe Co., Ltd.における過去最高売上高の更新、また自社で開発を進めておりました新規有効成分シベンゾキサスルフィルの日本および韓国における登録申請完了などの成果を上げました。これにより、売上高は1,118億円と過去最高を更新しました。一方で、原材料高騰による収益性低下圧力や、Nichino India Pvt. Ltd.の再建、Sipcam Nichino Brasil S.A.の収益構造改革といった課題が浮き彫りとなりました。
当社グループは、中期経営計画GGSの最終年度(2027年3月期)において、引き続きサステナビリティ経営の推進を成長戦略とし、以下の施策を着実に推進します。
[ビジョン]
「Global Innovator for Crop & Life 食とくらしのグローバルイノベーター」
・カーボンニュートラルの実現
・環境調和型製品・技術の継続的な創出
・サステナブルな社会の実現に貢献
[中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)]
呼称 「Growing Global for Sustainability(GGS)」
数値計画
(注) 本資料に記載されている計画値および業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報および合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
基本方針・基本戦略
当社は、当社グループの社会における存在意義について改めて検証し、NICHINO グループ理念体系を改定するとともに、基本理念とバリュー、ビジョンについて見直しを行いました。新たにビジョンを「Global Innovator for Crop & Life 食とくらしのグローバルイノベーター」と設定し、中期経営計画では、サステナビリティ経営の推進を成長戦略として、社会全体と当社グループの持続可能性の両立を実現することを目標として事業活動と社会活動を推進します。

具体的には、以下に掲げる施策を着実に推進します。
・重点品目・新規事業の拡大
ベンズピリモキサン、ピリフルキナゾン、ピラフルフェンエチル、フルベンジアミド、トルフェンピラドを主要重点品目と定め、エリア戦略に基づき拡販に努めます。また、生物農薬や作物保護資材の収益拡大、選択と集中、リソースの最大活用を図ります。販売計画の確実な進捗を図るとともに、国内農薬登録における再評価制度への対応を進めます。
・原価低減
原体製造の内製化を進め原価低減を図るとともに精緻な生産計画による安定供給体制を確立させます。
・エリア戦略に基づいた市場拡大
市場規模拡大が期待できるアジア太平洋、中南米を中心に拡販します。さらに今後成長が期待できる中東・アフリカ市場については事業基盤の整備を進めます。また、高単価かつ世界中で栽培されるSpecialty Crop(果樹・野菜)を中心に主要重点品目の登録、拡販を進めます。
・化学合成
パイプライン化合物(医・動物薬含む)の研究開発を加速します。また、研究開発リソースの選択と集中、グローバル開発・マーケティング戦略の強化、精緻化を進めます。
・バイオリソース活用
欧州の研究体制を強化し、生物農薬や作物保護資材のポートフォリオ拡大に向けた取り組みを加速させます。また、バイオベース原料を用いた有用化合物の製造に取り組みます。
・デジタル技術の活用
他のスマート農業ソリューションとの連携を活かした展開および海外展開の組織化を進めます。また、スマート工場プロジェクトの確実な立ち上げを実施します。
・新たなビジネスモデルの取り込み・創出
外部価値の取り込みも含め、新規事業の育成、創出に積極的に取り組みます。
・資本収益性の向上
ROE指標の向上を継続し、資本収益性を高めます。
・キャッシュフローの改善
主に在庫削減による改善を図ります。グローバル(連結・単体)での在庫適正化指標を設定し、計画管理を徹底します。
・固定費適正化(生産性向上)
管理経費や人件費など効率的な業務遂行により生産性を高め適正化を図ります。また、研究開発リソースの選択と集中や厳格な投資判断により適正化に努めます。
・気候変動対応
2050年ネットゼロに向けたロードマップの再構築や、Scope3算定の精緻化およびグループ会社支援を進めます。また、GHG排出削減に向けた設備投資と、環境データ管理を実施します。
・生物多様性への配慮
継続的なイノベーションにより「環境調和型製品*」のポートフォリオ拡大に努めます。
*人畜安全性や環境安全性が相対的に高い当社製品
・人的資本経営の推進
女性管理職育成に向けた組織・マネジメント基盤の強化、定年・再雇用制度の見直し検討、採用力強化に取り組みます。また、新健康管理システムの導入・展開や、業績考課とサステナビリティ業務目標の紐づけ強化を図ります。
・ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの推進
当社グループの成長には、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの推進が必須であるという考えのもと、採用、育成・研修、人財活用、健康経営、職場環境について各指標を定め取り組みます。
・コンプライアンス・リスクマネジメントの強化
安全基盤強化・安全文化醸成に向けたグループ施策を推進します。また、価値創造プロセスの明確化と重点テーマ選定、DX推進、グローバルITセキュリティポリシーの策定・展開、中小受託取引適正化法への確実な対応と社内研修を実施します。
・グループ各社に対する監査の強化
グループガバナンス強化に向けた体制の整備と運用、グループ規程の海外展開を進めます。また、監理室と協働した監査体制の強化や立会監査を実施します。
配当方針
累進配当を基本とし、配当性向40%を目安に配当を行います。
当社グループは、サステナビリティ経営の推進を成長戦略とし、継続的なイノベーションの創出を通じて事業戦略をさらに深化します。同時に、カーボンニュートラルの実現に向けた環境経営の高度化、人的資本経営の推進による企業価値の向上に取り組み、サステナブルな社会の実現に貢献します。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
中期経営計画GGSにおいてCSR経営(企業の社会的責任の発揮)からサステナビリティ経営(社会全体の持続可能性の追求)へ移行することに伴い、従来のCSR基本方針をサステナビリティ基本方針へ改定しました(2024年3月)。これにより、社会全体の持続性をこれまで以上に意識したサステナビリティ経営に取り組むことを明確に宣言しました。

サステナビリティ経営への移行に伴い、2024年に関連体制を再整備しました。従来の「CSR会議」の機能を「執行役員会」に統合し、経営計画と連動した迅速な意思決定を実現しました。また、実務を担ってきた「CSR-WG」を「サステナビリティ委員会」へ改称し、関連する3委員会の統括機能を継承して組織横断的な活動を強化しています。さらに、事務局を経営企画本部内の「サステナビリティ推進部」へと改組し、全社視点での効率的な活動を可能にしました。これにより、財務・非財務両面の価値向上を機動的に推進しています。
サステナビリティに関する方針の立案や重点課題の対応策を組織横断的に審議するため、サステナビリティ委員会を2026年3月期に12回開催しました。本委員会で協議された気候変動や自然資本に関するリスク評価および対応状況などの重要事項は、執行役員会を経て取締役会へ報告され、適切な監督を受けています。

① ガバナンス及びリスク管理
当社グループは、サステナビリティ経営の推進に向け、取締役社長を議長とする「執行役員会」にて、気候変動や自然資本を含むサステナビリティに関する重点課題を審議し、取締役会へ報告しています。また、その傘下にある「サステナビリティ委員会」において、基本方針の立案や対応策の推進・管理を行っています。
リスク管理については、「リスクマネジメント委員会」を中心に全社的なリスクの把握と低減策を講じており、気候変動や自然関連リスクも事業リスクとして統合的に評価・管理しています。
② 戦略
当社グループは、「技術革新による食とくらしへの貢献」をサステナビリティ基本方針とし、事業活動を通じた持続可能な社会の実現を目指しています。ISO26000の中核主題等に基づき、「環境経営の高度化」「人権経営の拡充」をはじめとする7つの優先課題(マテリアリティ)を特定し、これらに基づく事業活動を推進しています。

③ 指標と目標

TCFD提言に基づき、2℃未満および4℃シナリオを用いたシナリオ分析を実施しています。
主なリスクとして、カーボンプライシングの導入によるコスト増加等の「移行リスク」や、異常気象による農地面積の減少等の「物理的リスク」を特定しています。一方で、気候変動に伴う病害虫の増加等による農薬需要の拡大や、環境調和型製品の需要増加を「機会」と捉え、総合的な作物保護の観点から農業生産性の向上に貢献していきます。
※気候変動および自然資本に関するガバナンス体制とリスク管理のプロセスについては、前述の「(2)①ガバナンス及びリスク管理」に記載のとおり統合的に管理しています。
主要なリスクや機会
当社グループでは、「2030年のありたい姿」の実現に影響を及ぼす、気候変動に関連するリスクや機会について、2℃未満シナリオや4℃シナリオを参照し、シナリオ分析を行っております。主要なリスクや機会は、以下の通りです。
●リスク ●機会
影響度 極大:50億円超 大:5~50億円 中:0.5~5億円 小:0.5億円未満 (影響度の判断基準は売上高を基本とする)
当社グループは、低炭素社会への取り組みとしてCO2排出量を前年比で削減、2030年にグループ全体(この項において「日本農薬及び製造拠点を有する国内外の連結子会社」を指します。)において2020年比23%削減(Scope1+2)、2050年にインドを除くグループ全体でカーボンニュートラル、2070年にグループ全体でカーボンニュートラルを目指すという目標を立てて活動を継続しています。2026年3月期におけるGHG排出量は、全体として前年度比で約5%の削減となりました。これは、国内外製造拠点における省エネルギー施策や再生可能エネルギー電力の活用を推進した効果によるものであり、特にNichino India Pvt. Ltd.が削減に寄与しました。また、国内外の非製造連結子会社を新たに算定範囲に加えた上での実績となっています。
TNFD提言が推奨する「LEAPアプローチ」を用いて、事業活動における自然資本への依存と影響を評価しています。特定したリスクと機会の優先順位付けは、「自社への影響度(財務影響額や発生可能性)」と「ステークホルダーへの関心度」の2軸から総合的に評価しました。さらに、TCFDに基づく気候変動シナリオ(2℃未満・4℃)との関連性を考慮しつつ、TNFDが推奨する「秩序ある移行シナリオ」と「対応遅延シナリオ」を用いて、戦略のレジリエンスを検証しています。
(注)TNFDにおける自社への影響度・時間軸の評価基準
・財務影響度:「大」10億円以上、「中」3千万円~10億円程度、「小」3千万円以下
・発生可能性:「大」1年に1回以上、「中」3年に1回程度、「小」10年に1回以下
・時間軸(発現までの期間):「短期」現中期経営計画期間中(~2027年3月期)、「中期」2030年まで、
「長期」2050年まで
※上記に加え、ステークホルダーへの影響度(大・中・小)も加味し、総合スコアで優先順位を決定しています。
① LEAPアプローチに基づく評価
TNFDが推奨するLEAPアプローチに基づき、自然関連リスクと機会を特定しました。
*1 ENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure):自然資本への依存度・影響度を産業別に評価するUNEP-WCMCのツール。
*2 WWF Water Risk Filter(WRF)/ WWF Biodiversity Risk Filter(BRF):WWFの水関連リスク・生物多様性リスクを地域特性に基づき評価するツール。
*3 IBAT(Integrated Biodiversity Assessment Tool:統合生物多様性評価ツール):保護地域や重要生息地を地図で可視化し、生物多様性への影響を評価するツール。
② リスク・機会評価結果
特定されたリスク(直接操業・下流)および機会について、それぞれの具体的な内容についてシナリオ分析による評価を行いました。また、多様な対応策を整理して戦略項目(番号ア~ウ:後述)として大きく統合しました。
リスク:直接操業(国内製造拠点) 大:優先度高、中:優先度中、小:優先度低
リスク:下流(農業現場)
機会
③ 対応策と中期経営計画との連動(指標・目標)
TNFDの評価プロセスを通じて特定された自然関連のリスク低減および機会創出に向けた対応策は、当社の中期経営計画「Growing Global for Sustainability (GGS)」の基本戦略と連動させ、事業活動に統合しています。具体的には、人や動物、環境への安全性が相対的に高い「環境調和型製品」の研究開発・普及拡大(2027年3月期売上目標393億円)や、スマート農業ソリューションの提供を通じ、事業の持続的成長とネイチャーポジティブ(自然再興)の実現に貢献してまいります。
ア 戦略01:環境調和型製品の普及拡大(製品ポートフォリオ拡充)
IPM(総合防除)、作物保護ソリューション推進、生物農薬・バイオスティミュラント製品の提供、気候変動適応製品の研究開発、普及販売、外来生物対応
イ 戦略02:スマート農業対応製品・サービスの提供
スマート農業プラットフォーム「レイミーのAI病害虫雑草診断」の機能拡充・グローバル展開「AcroSeeker」、AIデジタル技術を活用した農業ソリューション提供(AI病害虫発生予測等)、精密農業・節水農業に対応した製品の研究開発、水資源制約地域向け製品の市場開拓
ウ 戦略03: 資源効率化・GHG削減による競争力向上
生産効率化・省エネルギー施策の推進、再生可能エネルギーの導入拡大(太陽光発電など)、バイオマスインクを使用した資材包装への切り替え推進、製品規格変更によるプラスチック使用量削減、再生プラスチック等のグリーン購入推進、GHG排出量削減目標の達成に向けた施策継続(Scope 1・2・3)、現地生産によるサプライチェーン最適化(輸送由来CO2削減)、GHG排出削減のための製造技術の研究開発への取組
なお、当社グループ全体視点での達成すべき主な指標と数値目標は以下の通りです。
組織固有の指標・目標(実績)
① 女性活躍推進への対応
当社は女性活躍推進のための行動計画を策定し、女性活躍を積極的に推進しております。
2011年4月の女性管理職比率は2.0%でしたが、女性従業員に対する管理職としての育成や意識付けを行うとともに、男性管理職の女性活躍推進への意識改革を推進した結果、2026年3月には10.6%に向上しております。また、管理職候補となる係長相当職の女性比率は2026年3月現在31.4%に達し、早期に管理職登用するだけでなく部長職や課長職への女性従業員の登用も進めております。加えて、2024年6月には女性1名を執行役員に内部登用しており、引き続き女性管理職比率をさらに高めると共に、経営者としての育成を進めてまいります。具体的な数値目標として、女性管理職比率を2027年3月13%、2031年3月22%に設定しております。さらに、この数値目標を達成するため管理職昇格候補者の母集団としての、採用者における女性比率はこれまでの30%から50%へ目標を引き上げることにいたしました。
② 外国人の登用
ビジョン「Global Innovator for Crop & Life 食とくらしのグローバルイノベーター」実現に向けた対応を進めております。その中で、2011年と2021年に外国籍の海外グループ会社社長を当社執行役員に登用しました。引き続き、海外グループ会社を成長させるとともに、執行役員としての資質を備えた人財を育成してまいります。加えて、外国人の役員への内部昇格に向け、管理職登用や、積極採用を進めてまいります。また、当社では、外国人留学生の採用だけでなく、2025年12月にはインド人学生の研究職インターンシップを実施、2026年10月入社が内定するなど、外国人採用に積極的に取り組んでおります。
③ キャリア採用者の活用
イノベーションは多様性から生み出されるとの考え方のもと、当社は他社で経験を培った人財を積極的に採用しております。当社従業員のうち、キャリア採用者がおよそ1/3を占めており、管理職に占めるキャリア採用者の割合も同程度の比率となっております。引き続き、経営者、特定分野のスペシャリスト、事業拡大のための新領域の専門家、DX人財などのキャリア採用を進めてまいります。また、キャリア採用手法の多様化を目的に、従業員の紹介や自ら当社へ入社を希望する方が事前にキャリアと希望職種を登録できるキャリアエントリー制度、さらにやむを得ない事情で退職した、または他企業で経験を積んだ元社員が再度入社するジョブリターン制度を2024年4月より導入し、これまで3名の採用実績が出ております。新たな価値観を取り入れ社内を活性化させてまいります。
④ 中核人財の多様性確保に関する指標・目標の対象範囲
当社グループは、中期経営計画Growing Global for Sustainability(GGS)において、当社の2030年のありたい姿を策定し、従業員の多様な価値観を、イノベーションの創出や経営の意思決定に活かすための人事施策に落とし込み推進しておりますが、必ずしも連結グループに属する全ての会社において関連する指標のデータ管理が行われていないことから、本項では、日本農薬単体の指標・目標を開示しております。
当社は、グループ全体のリスク管理の基本方針とその管理体制を「日本農薬およびNICHINO グループリスクマネジメント規程」において定め、部門を統括する常勤取締役及び執行役員から構成されるリスクマネジメント委員会を設置し、リスクの把握、リスクの顕在化予防、顕在化したリスクの影響を最小限に留めるリスク発生対処等を行なっています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅したものではありません。
1 経済状況等
当社グループは国内のみならず海外にも輸出し、また販売拠点を有しており、輸出、販売している殆どが農薬製品、農薬用原体であります。このため国内外の政治・経済情勢および農業情勢、市場動向、天候、病害虫の発生状況、公的規制などによって、直接的、間接的な影響を受けます。
2 原材料の調達について
当社グループの事業で用いる農薬原体、原料、副原料等の一部については、コストダウンを推進した結果、特定の地域や購入先に集中する傾向にあり、年間購入総額における中国依存度は高い水準にあります。当社グループでは原材料の調達先の複数化を進めることによりリスクを低減するよう取り組んでいますが、相手国での法規制の強化や購入先の操業事故等により調達に制約を受けた場合は当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
3 原材料の価格変動について
当社グループの事業で用いる農薬原料、副原料等の購入価格は、国内、国外の市況、為替相場の変動および原油、ナフサ価格動向などの影響を受けます。業績に及ぼす影響は、購入価格の引下げ、販売価格への転嫁、為替リスクヘッジなどにより極力回避していますが、予期せぬ事態の場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。
4 為替の変動について
当社グループの事業には、農薬原体を含む原材料の輸入、製品の輸出とインド、ブラジル、米国などにおける生産、販売が含まれており、外貨建てとしては米ドル、インドルピー、ブラジルレアルが主なものであります。これらの外貨建ての項目は、連結財務諸表の作成のため円換算されていますが、換算時の為替レートにより元の現地通貨における価値が変わらなかったとしても円換算後の価格が影響を受ける可能性があります。
5 新製品の開発
新製品の開発には、多大な技術的、財務的、人的資源と長い時間を要します。この間の市場環境の変化、技術水準の進捗、規制動向の変化などにより開発の成否、将来の成長と収益性に影響を受ける可能性があります。
6 災害・事故について
当社グループでは安全で安定的な食の確保と豊かな緑と環境を守ることを使命として、国際標準に基づく品質、環境管理システムにて操業、運営しています。しかしながら、大規模地震や台風などの自然災害による生産設備への被害、工場における事故などのトラブルにより工場停止、原料などの供給不足、品質異常などの不測の事態が発生する可能性があります。これらのリスク回避として、厳格な原材料の受け入れ検査、製品の品質チェック、定期的な設備点検などを実施していますが、自然災害、事故などによる影響を完全に排除する保証はなく、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
7 法的規制
当社グループの事業は、国内外での販売、輸出において農薬取締法、通商関連法、独占禁止法、製造物責任法等様々な法規制、政府規制を受けています。当社グループでは、コンプライアンス委員会活動を通じてコンプライアンス強化に努め、適切に対応すべく取り組んでいますが、今後、法的規制を遵守できなかった場合や、規制の強化によっては当社グループの社会的評価や業績に影響を及ぼす恐れがあります。特に近年、農薬に関する法規制が世界的に強化されており、農薬原体等の新規登録の遅延、中止、既存登録の抹消の処分を受けた場合、当社グループの事業展開に支障をきたすとともに業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
8 企業買収・事業投資について
当社グループは、戦略的施策の一環として、グローバルベースで企業買収・事業投資を実施しています。実施に際しては、対象企業や事業について詳細なデューデリジェンスを行い、リスク回避に努めていますが、将来の不確実な経済条件及び経営環境の変化により期待する成果が得られないと判断された場合には、関係会社株式の評価損やのれんの減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
9 訴訟に関わるリスクについて
当社グループは、国内及び海外事業に関連して、取引先や第三者との間で、訴訟その他法定手続きが発生するリスクがあります。重要な訴訟等が提起された場合、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(業績等の概要)
当連結会計年度における世界経済は、米国では通商政策の動向を背景に先行きの不透明感があったものの、景気の緩やかな拡大が続きました。欧州では、ユーロ圏を中心に景気の持ち直しが見られ、英国においても、緩やかながら景気が回復しました。中国では、不動産市場の停滞が続き、景気は緩やかな減速基調となりました。また、わが国では、雇用・所得環境の改善を背景に回復基調を維持しましたが、中東情勢の緊迫化に伴う原材料価格やエネルギー価格の動向など、外部環境の不確実性については引き続き留意が必要な状況となりました。
農業を取り巻く環境は、世界的な人口増加や新興国における経済発展などを背景とした農産物需要の拡大から、農業生産は引き続き堅調に推移しました。一方、世界の農薬市場は、昨年度に引き続き農家の経済状況が依然として厳しく、農薬価格も低水準が続いたものの、多くの地域で天候条件が回復し、作付面積の拡大に伴い農薬の使用機会が増加したことから、現地通貨ベースでは改善が見られました。
当社グループの主な販売地域に目を転じますと、国内では、気温の高い状態が続いたことにより、カメムシなどの害虫の発生が増加したことに加え、米価高騰による水稲作付面積の増加の影響などから、農薬需要は堅調に推移しました。
北米では、作物別に作付面積の増減がみられたものの、高温・乾燥条件による病害虫の多発などから、農薬需要は堅調に推移しました。中南米では、大豆を始め作付面積が拡大し農薬需要は増加しましたが、ジェネリック農薬など一部品目の価格下落の影響などから、農薬価格は弱含みで推移しました。欧州では、一部地域における天候不順の影響により、農薬需要は弱含みで推移しました。また、アジアでは、インドにおいて一部地域での豪雨の影響により、農薬の散布機会が減少したほか、病害虫の発生が全体として低調に推移したことから、農薬価格および農薬需要は弱含みで推移しました。
このような状況下、当社グループは中期経営計画「Growing Global for Sustainability(GGS)」に取り組み、事業戦略の深化、環境経営の高度化および人的資本経営の推進を行い、社会全体と当社グループの持続可能性の両立を目指しました。
当連結会計年度における主な取り組みとしては、自社で開発を進めておりました新規有効成分シベンゾキサスルフィルについて、日本および韓国における登録申請を完了しました。また、持続的なグループ成長のための事業と収益の拡大を目指し、BASF社の果樹分野向け製品において、日本国内での独占販売を開始しました。さらに、国立研究開発法人理化学研究所環境資源科学研究センターとのオープンイノベーションによる特許出願や、農研機構発ベンチャーである株式会社農研植物病院への出資を通じ、新たな収益源の創出に向けた取り組みを推進しました。
当連結会計年度における当社グループの売上高は、中核事業である農薬事業で、日本国内、北米や欧州での販売が増加したことなどにより、1,118億22百万円(前期比118億55百万円増、同11.9%増)となりました。利益面では、売上高の増加に加え当社の海外向け販売のうち利益率の高い北米や欧州を中心に販売が増加したことにより、営業利益は108億78百万円(前期比23億1百万円増、同26.8%増)となりました。さらに、米国子会社で農薬登録に係るデータ使用に伴う補償金収入が発生したこと、ならびに欧州の関係会社の業績好調により持分法による投資利益が増加したことなどから、経常利益は105億27百万円(前期比34億40百万円増、同48.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は72億28百万円(前期比48億72百万円増、同206.8%増)となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりです。
農薬事業の売上高は1,054億55百万円(前期比108億83百万円増、同11.5%増)、セグメント利益(営業利益)は106億66百万円(前期比19億35百万円増、同22.2%増)となりました。
農薬以外の化学品事業の売上高は41億73百万円(前期比6億52百万円増、同18.5%増)、セグメント利益(営業利益)は7億69百万円(前期比2億93百万円増、同61.7%増)となりました。
その他の売上高は21億93百万円(前期比3億19百万円増、同17.0%増)、セグメント利益(営業利益)は4億29百万円(前期比1億12百万円増、同35.3%増)となりました。
(2) 財政状態の状況
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度に比べ、27億46百万円増の1,549億62百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ、49億23百万円減の678億69百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末と比べ、76億69百万円増の870億93百万円となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末に比べ33億76百万円減少し、当連結会計年度末は188億43百万円となりました。
営業活動による資金の増加は、45億26百万円となりました。これは仕入債務の減少額35億31百万円による資金の減少、法人税等の支払額28億94百万円があったものの、税金等調整前当期純利益を94億68百万円計上したことが主な要因であります。
投資活動による資金の減少は、18億51百万円となりました。これは有形固定資産の取得による支出12億37百万円、無形固定資産の取得による支出4億38百万円があったことが主な要因であります。
財務活動による資金の減少は、77億80百万円となりました。これは長期借入金の返済による支出59億19百万円、短期借入金の純減額23億24百万円があったことが主な要因であります。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 金額は、製品製造原価によっています。
当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 金額は、仕入価格によっています。
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しています。
2 販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10以上の販売先はありません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容)
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 当連結会計年度の経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容
当社グループの中核事業である農薬事業を取り巻く環境は、世界的な人口増加や新興国の経済発展などを背景とした食料需要の拡大から、グローバルな農薬市場は拡大傾向にあります。一方で、国内では農業従事者の高齢化や後継者不足の深刻化、物流2024年問題などの社会課題に加え、みどりの食料システム戦略等による化学農薬肥料低減目標により、農薬市場は成熟段階にあるものと考えられます。また、創薬難度の高まりと農薬登録要件の増加、ジェネリック農薬との価格競争に加え、地政学リスクの高まりや原料・エネルギー価格の高騰による生産・調達コストの増加など、事業環境は一層厳しさを増しております。
このような状況下、当社グループは中期経営計画「Growing Global for Sustainability(GGS)」に取り組み、事業戦略の深化、環境経営の高度化および人的資本経営を推進し、社会全体と当社グループの持続可能性の両立を目指しました。当連結会計年度における当社グループの売上高は1,118億22百万円(前期比118億55百万円増、同11.9%増)となりました。利益面では、営業利益は108億78百万円(前期比23億1百万円増、同26.8%増)、経常利益は105億27百万円(前期比34億40百万円増、同48.6%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益は72億28百万円(前期比48億72百万円増、同206.8%増)となりました。
なお、セグメント別の業績は以下のとおりです。
国内農薬販売では、米価高騰による生産意欲の高まりから水稲栽培面積が増加し、主力自社開発品目をはじめとした水稲向け製品の販売が好調に推移しました。加えて、コルテバ社の製品の拡販やBASF社の果樹分野向け製品の日本国内での販売開始により、国内販売全体の売上高は前年同期を上回りました。
海外農薬販売では、北米において、主力分野の果樹に加え、ナッツ類における当社製品の技術普及活動が奏功し、販売シェアが拡大しました。なかでも当社製品の主要市場である米国カリフォルニア州では、2026年2月下旬から3月にかけて気温が大きく上昇した影響により、果樹等の生育が早まるとともに害虫の発生が増加しました。これにより、殺虫剤ブプロフェジンおよび殺虫剤フェンピロキシメートの販売が伸長しました。加えて、カナダの同業者向け販売において除草剤ピラフルフェンエチルが好調に推移し、Nichino America, Inc.は過去最高の売上高となりました。中南米では、ブラジルにおいて流通在庫の適正化を推進しましたが、農産物相場の低迷やジェネリックの攻勢により農薬価格が低下したことに加え、低温多雨による病害虫の少発生により、Sipcam Nichino Brasil S.A.の売上高が前年同期比で減少しました。欧州では、バイエル社向けフルベンジアミド原体販売が増加しました。また、前述のとおり欧州の農薬需要は弱含みで推移したものの、果樹・野菜向けの当社製品の技術普及活動が奏功し、Nichino Europe Co., Ltd.においても、果樹やばれいしょ向けの除草剤ピラフルフェンエチルなどの販売が好調に推移したことに加え、Interagro (UK) Ltd.の経営を統合し英国・アイルランドでの直販を本格化したことにより、過去最高の売上高となりました。
アジアでは、西アジアにおいて多雨による散布機会逸失により販売が伸び悩んだものの、Nichino India Pvt. Ltd.においては同業者向け販売が増加したことから前年同期比で売上高が増加しました。これらにより、海外販売全体の売上高は前年同期を上回りました。
以上の結果、農薬事業の売上高は1,054億55百万円(前期比108億83百万円増、同11.5%増)、セグメント利益(営業利益)は、106億66百万円(前期比19億35百万円増、同22.2%増)となりました。
化学品事業では、シロアリ薬剤分野の販売が堅調に推移しました。医薬品事業では、国内の爪白癬向けなどで外用抗真菌剤ルリコナゾールの販売が堅調に推移しました。
以上の結果、農薬以外の化学品事業の売上高は41億73百万円(前期比6億52百万円増、同18.5%増)、セグメント利益(営業利益)は7億69百万円(前期比2億93百万円増、同61.7%増)となりました。
緑化造園工事事業では、造園工事の受注が好調に推移し売上高が増加しました。
分析事業では、食品分野等の受注が伸長した結果、売上高が増加しました。
以上の結果、その他の売上高は21億93百万円(前期比3億19百万円増、同17.0%増)、セグメント利益(営業利益)は4億29百万円(前期比1億12百万円増、同35.3%増)となりました。
(2) 目標とする経営指標の達成状況等
当社グループは、ビジョン「Global Innovator for Crop & Life 食とくらしのグローバルイノベーター」を掲げ、世界中の人々の安全で安定的な食の確保とくらしを守ることを使命とし、新たな価値の創造により持続可能な社会の実現に貢献していきます。
事業活動と社会活動の両立を推進することで、新たな価値の創造による安全性の高い、環境に配慮した優れた化学農薬や非化学農薬を創出し、安全で安定的な食の確保に貢献するとともに、これまで培われた技術を、人々のくらしを豊かにする新製品の創出へと価値を創造し、人類と地球が共生できる社会の実現を目指します。
当社グループは、サステナビリティ経営を推進し、新たな価値の創造を持続的に可能とする企業グループを目指し、業績の向上に努め、公正で活力のある事業活動を通じて社会的責任を果たし、社会に貢献することを目指します。
当社グループの将来のありたい姿では、収益性の強化を重視し、2030年度に営業利益率10%以上、売上高1,650億円超、ROE10%以上を目指しております。その先にはビジョンに掲げた「食とくらしのグローバルイノベーター」として売上高3,000億円超の、サステナブルな社会の実現に貢献するグローバルカンパニーとなることを目標としております。
2025年3月期を初年度とする中期経営計画「Growing Global for Sustainability(GGS)」においては、最終年度となる2027年3月期の計画数値として売上高1,200億円、営業利益108億円を設定し、サステナビリティ経営の推進を成長戦略とし、社会全体と当社グループの持続可能性の両立を実現することを目標に事業活動を推進してまいります。
2年目となる当連結会計年度においては、自社で開発を進めておりました新規有効成分シベンゾキサスルフィルについて、日本および韓国における登録申請を完了しました。また、持続的なグループ成長のための事業と収益の拡大を目指し、BASF社の果樹分野向け製品において、日本国内での独占販売を開始しました。さらに、国立研究開発法人理化学研究所環境資源科学研究センターとのオープンイノベーションによる特許出願や、農研機構発ベンチャーである株式会社農研植物病院への出資を通じ、新たな収益源の創出に向けた取り組みを推進しました。加えて環境経営の高度化や人権経営の推進が順調に進捗するなど、サステナビリティ経営の強化に一定の成果を上げることができました。また、株式会社ADEKAとの資本業務提携によるシナジーを早期に創出し発揮するべく活動を推進してきました。
当連結会計年度においては、期初の計画値として売上高1,075億円および営業利益80億円を設定し、業績向上に努めてまいりました。前述の中核事業である農薬事業で、日本国内、北米や欧州での販売が増加したことなどにより、過去最高の売上高を計上しました。売上高の増加及び当社の海外向け販売に関し利益率の高い北米や欧州を中心に売上が増加したことにより、営業利益は期初の計画数値を上回りました。
(3) 財政状態の状況
①事業全体の状況
当連結会計年度末の総資産は、棚卸資産が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ、27億46百万円増の1,549億62百万円となりました。
負債につきましては、短期借入金及び長期借入金が減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べ、49億23百万円減の678億69百万円となりました。
純資産につきましては、前連結会計年度末と比べ、76億69百万円増の870億93百万円となりました。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末と比べ、4.1%増の54.9%になりました。
②セグメント情報に記載された区分ごとの状況
当連結会計年度末のセグメント資産は、前期末に比べ82億5百万円増加し、1,443億40百万円となりました。
当連結会計年度末のセグメント資産は、前期末に比べ81億54百万円増加し、1,395億13百万円となりました。
当連結会計年度末のセグメント資産は、前期末に比べ1億64百万円増加し、28億64百万円となりました。
当連結会計年度末のセグメント資産は、前期末に比べ1億13百万円減少し、19億62百万円となりました。
③キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(業績等の概要) (3) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
④資本の財源および資金の流動性
当社グループの資金需要のうち主なものは、新剤開発・登録等にかかる研究開発費や開発途中の剤の生産設備の設置及び既存剤の生産効率化にかかる設備投資であり、これらを主に自己資金並びに金融機関からの借入金により調達しています。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は188億43百万円であり、十分な手元流動性を確保しています。
⑤重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。重要な会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
(1) 資本業務提携契約
当社は、2026年3月31日現在において、親会社から兼務役員1名の派遣を受けております。
当社は、親会社との間で資本業務提携契約を締結しております。
契約の概要
① 目的
当社および親会社は、当社の自主独立経営の維持を原則としつつ、互いに協力して、両社間の資本業務提携により、当社の農薬事業をはじめとするライフサイエンス事業に係る戦略的計画および活動を実行・推進することにより、両社の企業価値を最大化させることを目的とする。
② 上場維持・社名維持
親会社および当社は、当社の東証一部上場を維持することおよび当社の社名として日本農薬株式会社を維持することを基本方針とする。
③ 役員指名権
親会社は、当社の代表取締役(ただし、親会社が指名した取締役は除く。)と協議の上、16に親会社の議決権保有割合を乗じて得た数(ただし、8を上限とする。また、当該数に1未満の端数が生じる場合には、端数を切り捨てる。)の当社の取締役(監査等委員である取締役であるか、それ以外の取締役であるかを問わず、それぞれについて指名する人数の比率も問わない。うち1名は代表取締役とする。また、親会社が8名の取締役を指名する場合には、そのうち1名は独立社外取締役とする。)を指名する権利を有するものとする。なお、当社における監査等委員である取締役以外の取締役の員数は11名以内、監査等委員である取締役の員数は5名以内とする。ただし、親会社の事前の書面による承諾を得た場合はこの限りではない。
④ 新株引受権
当社は、親会社の事前の書面による承諾を得た場合を除き、株式等(当社の株式、新株予約権、オプション権、株式引受権その他の当社の株式を取得できる権利をいう。)の発行、処分または付与を行わないものとし、当該発行等が行われる場合、親会社は、当該発行等が行われる直前の時点における公開買付者の議決権保有割合を維持するために必要な数量の株式等を、当該発行等に係る株式等の払込金額または行使価格と同一の価格において引き受ける権利を有する。
⑤ 業務提携の内容
公開買付者及び当社は、本資本業務提携契約等の目的を達成するため、以下の内容の業務提携を行うものとし、その具体的内容は、両社間の協議により決定するものとする。
(ⅰ)研究開発領域の相互補完による開発スピードの向上
(a)ライフサイエンス分野の強化
(b)化合物データベースの活用
(ⅱ)生産技術・プロセス化学の相互活用による生産性の向上
(ⅲ)グローバル・ネットワークの相互活用による販売チャネルの拡大
(ⅳ)合成反応、分散技術、分析技術等の技術提供による高機能化合物の開発
(ⅴ)多分野の知見を有する研究員の交流
⑥ 本資本業務提携契約の終了
本資本業務提携契約は、両当事者が本契約の終了を書面で合意した場合等、一定の事由が生じた場合、終了する。
また、当社は、親会社との間で、親会社におけるグループ会社管理と当社における意思決定独立性確保の調和を図る観点から、当社の取締役会にて決議すべき事項のうち、親会社グループ全体の経営や業績に重大な影響を与える重要案件に関する親会社との事前相談の実施および事前説明・協議会の開催について合意しております。
意思決定に至る過程
本資本業務提携に基づく協業により、親会社及び当社のライフサイエンス事業の発展が可能となります。従って、本資本業務提携契約を締結することが、両社の更なる企業価値向上を図るうえで最善の方策であり、株主共同の利益に資するとの判断に至りました。
当該合意が提出会社の企業統治に及ぼす影響
本資本業務提携により、親会社は役員派遣や議決権保有を通じて経営に一定の影響力を有することとなります。一方で、当社の上場維持及び自主独立経営の尊重が合意されており、既存の経営体制も基本的に維持される予定であることから、支配関係の下においても一定の独立性が確保された企業統治体制が維持されると判断しております。
(2) 売買基本契約
当社グループは「研究開発型企業」として、技術革新をすすめ、安全性の高い環境に配慮した新製品の開発を行っています。
当社グループにおける研究開発費の総額は、
セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりです。
(1) 農薬事業
・新規開発品目
新規汎用性殺虫剤シベンゾキサスルフィルは、一般社団法人日本植物防疫協会が実施する新農薬実用化試験において、様々な作物及び処理方法で幅広い害虫種に対して優れた防除効果を示し、利便性に優れた害虫防除剤であることが確認されました。これら試験結果により、野菜分野ではフォートレッドVフロアブル、果樹・茶分野ではフォートレッドFフロアブル、芝分野ではコアダルフロアブルとして2025年11月に国内農薬登録申請を完了しました。今後は農薬登録取得後のビジネス開始に向けて各種準備を進めてまいります。また、本剤はグローバル市場でも開発検討中であり、2025年11月に韓国でも登録申請を完了しており、インドなどの市場性の見込まれる国や地域でも開発検討を進めております。さらにこれに続く新規パイプライン候補として2剤を開発検討中です。
水稲用殺虫剤ベンズピリモキサンは、日本ではオーケストラフロアブルに加えて混合剤(オーケストラロムダンモンカットエアー、オーケストラスタークルエアー、オーケストラロムダンモンカット粉剤DL)の販売を開始し、これら製品ラインアップにより本分野の市場シェア拡大および水稲本田散布剤(アプロード後継剤)としてのブランド確立を進めております。また、水稲の農薬市場が大きいインドでは、既に販売を開始したOrchestra剤に加え、速効性に優れるピメトロジンとの混合剤Orchestra Duetの普及販売を進めており、今後も本剤ビジネスの最大化を目指した混合剤の開発を継続してまいります。他の国においてもベトナム(2023年12月登録)に加え、水稲栽培の盛んなアジア広域において市場ニーズに合わせて単剤および混合剤の開発を進めてまいります。
汎用性園芸殺菌剤ピラジフルミドは、国内では無人航空機散布やセルトレイ処理など幅広い処理法での適用拡大(登録内容の拡大)を進め、市場拡大を目的とした混合剤の開発も継続しております。さらに2025年からは新たな省力化技術として常温煙霧での適用拡大に向けた検討も開始しております。また、カナダ、ペルー、ウクライナ、ベトナム、コロンビア、パキスタンでは販売開始に向けた準備を進めており、エジプト(2025年10月登録)、メキシコ(2025年12月登録)、サウジアラビア(2025年12月登録)では新規に登録を取得しました。米国、エジプト、シリア、パキスタン、ブラジル、コロンビア、チュニジアでは登録申請中であり、チリでは殺菌剤との混合剤の登録を取得(2025年10月登録)し、インドでも混合剤を開発中です。今後もさらなるビジネス拡大を目指し、その他の地域でも開発の可能性を検討してまいります。
・国内製品
2022年度から開発を開始した園芸用殺虫混合剤は「フェニックスマストフロアブル」として、園芸用殺菌混合剤は「パレードプラスフロアブル」として、2025年3月に登録を取得し、フェニックスマストフロアブルは2026年2月に上市しました。パレードプラスフロアブルについても2026年中の上市に向けて準備を進めております。本製品の開発により自社原体ビジネスの最大化および最長化を図るとともに国内製品ポートフォリオの充実や当社市場シェアの拡大を図ります。また、コルテバ社とは、同社の新規製品の導入や、それら有効成分を含む混合剤の開発について検討しております。また、2024年より新農薬実用化試験に供試している新規微生物殺虫剤は、登録申請に必要な有効事例を集積しており、登録申請に向けて各種検討を進めております。本製品は難防除害虫であるアザミウマ類に高い効果を示す製品であり、市場ニーズに沿った製品となる様に開発を進めてまいります。
既存剤では、ドローン散布も可能な無人ヘリ航空機散布やセルトレイ処理など省力防除技術に関する適用拡大を積極的に進めており、フェニックス顆粒水和剤、アクセルフロアブル、コルト顆粒水和剤、パレード20および15フロアブルなどの適用拡大を行いました。また、モンカットプラスフロアブルでは小麦の雪腐小粒菌核病・紅色雪腐病を対象に2025年6月に登録を取得しました。本病害に対しては有効な製品が少ないことから、北海道を中心に市場シェアの維持・拡大を図ります。
・海外製品
殺虫剤フルベンジアミドはさらなるビジネス拡大を目指しており、市場の大きなブラジルをはじめ、フィリピン、エクアドル、ザンビアでも販売を開始しました。また、コロンビア(2025年7月登録)、アルジェリア(2025年12月登録)、ニカラグア(2025年12月登録)、パキスタン(2025年12月登録)では販売開始に向けて準備中であり、アルジェリアでは登録申請中、インドでは防除対象害虫の拡大を目的として作用の異なる殺虫剤との混合剤を開発中であり、順次、販売国の拡大や新製品の開発を進めてまいります。
殺虫剤トルフェンピラドは、新たにチュニジア、アルジェリア、エクアドルで販売を開始しました。ホンジュラス(2024年6月登録)、エルサルバドル(2024年6月登録)でも販売開始に向けて準備中であり、インドでは殺虫剤との混合剤を開発中です。
殺虫剤ピリフルキナゾンは新たにチュニジア、リビア、イスラエル、ベトナムで販売を開始しました。また、チリ(2024年8月登録)、モロッコ(2025年12月登録)でも登録を取得し、販売開始を目指して準備中です。ニュージーランド、台湾では登録審査中であり、混合剤の開発と合わせて今後も登録国や販売地域拡大に向けた取り組みを進めます。
殺ダニ剤ピフルブミドはタイに加えてベトナムでも販売を開始しました。また、アルジェリア、エジプト、モロッコで登録申請中であり、その他の国においても開発の可能性を見極めるための評価を継続しています。
殺菌剤イソプロチオランは水稲いもち剤として普及販売していますが、中南米でも新規開発や上市に向けた準備を進めており、フィリピン等と合わせてバナナ分野での登録取得と上市に向けた準備を進めています。また、その他に殺虫剤ブプロフェジン、殺虫・殺ダニ剤フェンピロキシメート、殺菌剤フルトラニル、除草剤ピラフルフェンエチル、除草剤オルトスルファムロンについてもグローバルでの登録維持や登録拡大検討を進めており、ビジネスの維持・拡大を図っています。
生物農薬・作物保護資材に関しては、グローバルで複数資材の開発を検討しており、欧州でナメクジ・カタツムリ防除剤 Vitrolの販売開始に向けて準備中です。バイオスティミュラントにおいてはブラジル、インド、日本で複数製品の販売を開始しております。さらに欧州においても販売開始に向けて準備中であり、ビジネス拡大に向けた検討を着実に進めてまいります。
(2) 農薬以外の化学品事業
当社がこれまで培ってきた創農薬技術を活用し、医薬・動物薬分野において他社との共同研究を含む複数の有望プロジェクトを既に自走させており、当社ライフサイエンス分野の柱の一つとすることを目標に研究を進めております。特に株式会社ADEKAとの共同研究では、動物薬分野を中心にシナジーを追求してまいります。
(3) その他
当社の研究ノウハウや独自技術が活用できるビジネス領域につき検討を重ね、新たに事業化を目指す研究テーマとして香料・化粧品分野に着目しています。それらの技術確立からビジネスモデル構築までに想定される課題を整理し、他社との連携やオープンイノベーション活用により、事業化に向けプロジェクトを推進していきます。
当社は、引き続き研究開発型企業として、法令およびその精神遵守のもと、技術革新により安全で環境に調和した新製品を市場に提供することで、顧客ニーズに応えるとともに、安定的な農産物生産を通してサステナブルな社会の実現に貢献してまいります。また、中期経営計画GGSに基づき、ビジネスのグローバル展開を加速し、各国の農薬登録規制に対応した新規有効成分や農業生産の効率化に貢献する新規技術を継続的に創出していくとともに、将来の市場環境変化を見据えた事業領域の拡大に挑戦してまいります。