第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

以下の基本方針に沿って、施策の具体化やグループ業績目標を実現していくために課題解決に取り組んでまいります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

百年を超える歴史を持つ当社グループ(以下、当社という)は、業祖 森下博が掲げた「済世利民」の信念を受け継ぎ、1893年の創業来、人々の健康や豊かな社会の実現を目指しております。

コンシューマー事業においては、安心・安全は当然ながら、特長を持ち、「健康寿命の延伸」に貢献できる、お客さまに寄り添った製品やサービスを、グローバルに提供し続けます。

一方、ソリューション事業においては、「市場創造型の受託企業」として、更なる技術革新による価値提供への挑戦を継続してまいります。

企業を取り巻く経営環境は厳しくなるなか、当社としては上記のコンシューマー事業とソリューション事業の両事業をベースとして、「変革」を目指し、新たな分野にも積極的に事業展開を図ってまいります。

 

(2)目標とする経営指標

当社は、まず中長期的な成長の観点から経常利益率を捉え、さらに安定成長の観点から自己資本比率を重要な経営指標としてその改善に努めております。

経営方針に沿って市場ニーズを的確に把握し高付加価値の新製品開発とコストダウンに努力するとともに営業力強化等により収益力を高め、結果として自己資本比率の向上を目指してまいります。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、社是および創業130周年を機に策定したパーパス「思いやりの心で、オモロい技術と製品で、一人に寄り添い、この星すべてに想いを巡らせ、次の健やかさと豊かさを、丹念に紡いでゆく」のもと、モノづくりの原点である「仁丹」から発展した「球体技術」や「素材研究」を基盤に、ステークホルダーの皆様にご支持いただける製品・サービスの提供、また、シームレスカプセル受託事業及び機能性原料の販売を展開しております。これらの事業を通じて、健やかで豊かな社会の実現に貢献するとともに、安定的かつ強固な収益基盤の構築を目指しております。

なかでもコンシューマー事業は、社会課題に対応した製品の提供を通じて、当社グループの企業ブランド価値を高めるうえで、重要な事業領域と位置づけております。同事業で培った技術や知見は、ソリューション事業における受託開発や原料販売において差別化の要素として活用されており、両事業の間で相互にシナジーを創出しています。

今後も、コンシューマー事業とソリューション事業を両輪としてバランスよく成長させることにより、社会課題の解決に寄与しながら、当社グループの企業価値と存在感のさらなる向上を図ってまいります。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① コンシューマー事業における持続的成長に向けた取り組み

当社は、コンシューマー事業を「健やかさ・豊かさへの貢献」というマテリアリティ(重要課題)の具現化に資する事業と位置づけ、現在は「おなかの健康」と「おくちの健康」の2領域を重点テーマとして取り組んでおります。

「おなかの健康」では、当社の主力製品「ビフィーナ®」が一定の市場シェアを維持しているものの、近年の乳酸菌ブームに伴って差別性が弱まりつつあります。そこで、当社独自のカプセル製剤技術を活用した「タンサ脂肪酸」など「腸テク」シリーズ3品を2025年4月に発売いたしました。イメージキャラクターに宮﨑あおいさんを起用し、総合型マーケティングにより、新ブランドの認知およびカプセル製剤技術への信頼度醸成を図ってまいります。

また、「おくちの健康」は、当社が大正時代より取り組んできた領域であり、人々の健康に貢献する重要な分野です。改めて本分野への注力を強め、企業の社会的価値を高めてまいります。

 これらの取り組みにより、当社はコンシューマー事業の持続的成長を続けてまいります。

 

② ソリューション事業の拡大と収益基盤の強化

当事業においては、引き続きシームレスカプセルの受託製造の拡大に注力しており、今後は製造ラインの増設を含む戦略的投資を実施し、生産能力の強化と需要拡大への対応体制を整備してまいります。また、可食分野に加え、非可食分野への市場展開も視野に入れ、技術革新を推進してまいります。

機能性原料の販売においては、新規顧客の開拓に加え、エビデンスの強化を目的とした研究開発を引き続き推進してまいります。

これらの取り組みにより、今後もソリューション事業を当社の収益を支える柱としてさらに育成するとともに、同事業で得た技術や知見を自社製品の開発にも還元してまいります。

 

③ 森下“仁財”の活躍推進

当社は、事業課題の解決に向けた基盤として、従業員のスキルアップ、モチベーションおよびエンゲージメントの向上が重要であると認識しております。こうした考えに基づき、2023年度に実施したワーク・エンゲージメント調査の結果を踏まえ、若手従業員に対しては、部門横断的なコミュニケーションの活性化を目的としたプログラムを導入し、組織全体における連携強化を目指します。また、シニア層に対しては、リスキリング支援を通じた活躍機会の創出に取り組み、年齢にかかわらず多様な人材が能力を発揮できる職場環境の構築を進めてまいります。

なお、これらの施策の有効性については、今後も定期的なワーク・エンゲージメント調査を通じて検証と改善を継続してまいります。

 

④ 持続可能な成長に向けた環境配慮の取り組み

当社は、「地球環境への配慮」を企業の基本的責務であるとともに、持続可能な成長に向けたマテリアリティの一つと位置付け、重点的に取り組んでおります。

環境マネジメントの一環として、2001年に滋賀工場および大阪工場において環境マネジメントシステムの国際規格「ISO14001」を取得し、現在も認証を継続しております。

 また、水資源の保全に向けた節水ノズルへの切り替えや、CO₂排出量の削減にも取り組んでおり、2030年度までに2013年度比で46%の削減を目標に、排熱回収ヒートポンプの設備などの導入や再生可能エネルギーへの置き換えなどを段階的に推進しております。

今後も省エネルギー施策の継続に加え、再生可能エネルギーの自社活用(創エネルギー)による脱炭素の取り組みも強化してまいります。

 

⑤ 製品の品質向上に関する取り組みについて

当社は、製品の品質保証に対する社会的要請の高まりを受け、安全・安心な製品を安定的に供給する責任を一層重く認識しております。

こうした認識のもと、グループ会社であるMJ滋賀では2025年1月に健康食品GMP認証を取得し、すでに認証を取得している滋賀工場および大阪工場とあわせて、製造拠点全体における品質・衛生管理体制の強化を推進しています。

なお、当期事業年度に発生した「販売名:仁丹パックシートH」の自主回収については、当社として厳粛に受け止めており、再発防止に向けて品質管理体制の見直しを進めております。具体的には、製品開発フローの見直しおよび確認プロセスの強化を実施いたしました。合わせて、全社教育プログラムに品質に関する考え方も組み込むなど、運用面・組織面の両側面から体制の再構築を図ってまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、企業としての社会的責任を果たしながら、持続可能な社会の実現と企業の持続的な成長の両立を図ることを目指しています。この方針のもと、創業130周年を契機に策定したパーパスを基盤として、中長期的な視点から取り組むべきマテリアリティ(重要課題)を特定しました。今後は、サステナビリティ推進委員会のもと、持続可能な企業経営に着手していきます。特に、人的資本への取り組みを重要課題の一つと捉え、様々な経験やバックグラウンドを持つ人々が集い、活き活きと働ける環境を構築し、イノベーティブな企業文化を創出すべく、取り組んでまいります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)ガバナンス

サステナビリティ関連のリスク及び機会に関するガバナンス体制については、サステナビリティ推進委員会が推進力となり、5つのマテリアリティを特定、KGI及びKPIの設定に取り組んでおります。その議論の経過については経営委員会及び取締役会に報告しております。

また、人権、リスク管理、情報セキュリティなど関連する事項に応じて、代表取締役社長を委員長とする「コンプライアンス委員会」・「リスク管理委員会」・「IT推進委員会」による管理体制のもと、サステナビリティ経営を推進しております。

(2)戦略

①人材育成方針

労働人口の減少・高齢化、コミュニケーション不足による品質低下や事業継続危機といったリスクを想定し、法令遵守、人権教育、情報セキュリティについての研修を全社員に展開しております。

また多様な価値観の取り込みを積極的に展開すべく、「森下“仁財”の活躍推進」を重要課題の一つに掲げ、「人財育成」を進めております。

能力開発に関しては、リーダーシップ領域における施策(360度評価、管理者研修)や、次世代リーダーの育成(社内研修「仁丹大学」など)を実施し、リーダーシップ開発に重点をおいた取り組みを展開しております。

職務上必要なスキルトレーニングに関しては、階層別研修を実施し、必要とされるスキルに応じた教育訓練を実施しております。森下“仁財”の活躍推進のため、入社、間もない時期からCSR活動などに取り組むことで、企業と社会との関わりを体感し、企業の社会的責任について理解を深める機会を提供しています。

また、人事担当者による定期的な個別面談を実施し、「人財育成」におけるコミュニケーションの充実をはかっております。新卒採用者で入社3年目までの従業員を対象としたメンター・メンティー制度、中途入社者対象の定期的な面談等、フォローアップ体制を設けています。今後も多種多様な人財育成の取り組みをおこなってまいります。

 

<社内研修体系図>

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② 事業戦略の浸透

当社グループは、創業130周年を契機として、当社の存在意義を明確にし、不確実性の高い現代社会において柔軟に変化しながらも、未来に向けて持続的な成長を遂げていくための「ぶれない軸」となるパーパスを策定いたしました。このパーパスは、当社グループのあらゆる事業活動の根幹をなすものであり、意思決定や行動の基準となるとともに、全社員が共有すべき価値観として位置づけております。企業としての一貫性と社会との持続的な信頼関係の構築を図るうえで、パーパスの理解と浸透は極めて重要な要素であると認識しています。

こうした考えのもと、当社グループでは、パーパスへの理解と浸透を図ることを目的に、各拠点でのタウンホールミーティングや社内研修、グループディスカッションの実施、社内報を通じた情報発信など、さまざまな施策に取り組んでおります。これにより、従業員一人ひとりの意識と行動のベクトルを揃え、組織全体としての一体感を醸成することで、企業価値のさらなる向上につなげてまいります。

 

③ 社内環境整備方針

(a)健康経営の推進

当社グループは、ヘルスケア企業の先駆けとして世界の人々へ製品を提供するだけでなく、大正15年(1926年)には健康保険組合を設立するなど、当時より従業員やその家族の健康へも目を向けた保健事業を行ってまいりました。現在に至るまで、企業の成長は従業員一人ひとりが健康で活き活きと仕事に取り組み、従業員の家族も含めて、充実した健康な人生が実現によって成立すると考え、従業員及び家族の健康を重要な経営課題とし、グループ一丸となって、健康増進・疾病予防に取り組んでおります。代表取締役社長を最高責任者とし、外部から招聘した産業保健スタッフと共に、健康経営推進体制を構築し、健康経営を推進しています。また、全社的な環境整備に取り組み、労働災害の削減はもとより、安全で快適な職場環境の形成に努めます。

 

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(b)多様性の促進

創業時より「家族主義」を掲げ、「従業員は家族と同様である」との理念をもっていました。大正時代には女性従業員の積極的な雇用や工場内に学校を設け教科書を支給し教育の機会を提供、従業員とその家族を招待して社内行事を開催しました。約40年前には、「消費者の声に耳を傾け意見を商品に落とし込むには積極的に女性の発想や着想を活用するべきだ」という考えに基づき、女性13名で結成された商品開発チーム「ウーマンラボ」が発足。環境清涼剤「暮らしのデオドライザーシリーズ」(1984年発売)等の製品が誕生しています。

当社グループでは、従業員の子育てと仕事の両立を図るため、時短勤務、在宅勤務、看護休暇、育児中の所定外労働時間の制限や免除といった様々な制度を用意し、時代の変化や社会の現状、そして従業員のニーズに柔軟に対応してきました。子育て支援以外には、介護休暇や介護休業制度、介護のための時短勤務と時間外労働の制限といった介護との両立を図る制度も拡充しています。また、過去の失効した有給を積み立て、長期療養時に活用できる「失効年休制度」も独自に設けております。各々が置かれている状況や労働環境に合う制度を整備することによって、従業員のキャリアプランを維持し一人ひとりのワークライフバランスにつなげていきます。

こうした背景のもと、互いを認め合い「個」の良さを引き出すことのできる、環境、風土、各種制度が整っている当社グループは、引き続き、ダイバーシティを強力に推進し、新たな価値の創出を目指します。

(3)リスク管理

サステナビリティに関するリスクについては、サステナビリティ推進委員会及びリスク管理委員会によって協議し、取り組み方針の検討を行っております。その検討・協議内容については、経営委員会での承認、適宜、取締役会への報告を実施しております。

(4)指標及び目標

当社グループでは、サステナビリティ推進の一つとして、育児短時間勤務制度の適用期間を、2025年4月より法定を上回る中学校就学の始期に達するまでといたしました。この制度が産休育休後の復職率の高さに寄与していると考え、今後も本制度を維持し、現在の復職率100%を堅持する事を目標といたします。そして、今後も引き続き従業員一人ひとりが健全で活き活きと仕事に取り組めるよう努めるとともに、ISO30414に準じた管理指標の選定及び目標の策定をすすめてまいります。

なお、「女性管理職比率」、「男性の育児休業取得率」、「男女間賃金差異」については、「第一部 企業情報」の「企業の概況」内「5.従業員の状況」を参照ください。

また、地球環境への配慮としては、2030年度までに2013年度比で46%の削減を目標に、排熱回収ヒートポンプの設備などの導入や再生可能エネルギーへの置き換えなどを段階的に推進しております。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月20日)現在において当社グループが判断したものであります。

(1)医薬品医療機器等法などの法的規制について

当社グループは医薬品・医薬部外品・健康食品等の健康関連商品の製造販売を主な事業としており、製商品の多くが「医薬品医療機器等法」の規制を受けております。また、製商品によっては「JAS法」「食品衛生法」や「保健機能食品制度」などの規制を受けております。

さらには、通信販売などを公正に行い消費者の保護を目的とする「特定商取引に関する法律」や不当な景品・表示による顧客の誘引防止を目的とする「不当景品類及び不当表示防止法」などの規制を受けております。

このため行政の動向によっては、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また当社グループは「コンプライアンス・マニュアル」を制定し、法令遵守を徹底しておりますが、万一これらに抵触することがあった場合も業績に影響を与える可能性があります。

 

(2)個人情報について

当社グループは、健康関連商品の通信販売及びインターネット販売事業を行っており、多くの個人情報を保有しております。当社グループは、「個人情報保護規程」を制定し厳格な個人情報の管理の徹底を図っておりますが、何らかの原因により個人情報が流失した場合、社会的信用の失墜、訴訟提起による損害賠償等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(3)ソリューション事業について

ソリューション事業は、可食品及び非可食分野における国内海外大手メーカー等からの大口受託が多く、受託先の需要動向により受託高が大きく増減する傾向があり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

なお、当社グループはリスクの分散を図るため、国内外において受託先の拡大を図る一方、産業用途を含む幅広い分野に対応可能なカプセル製剤技術の開発を推進しております。

 

(4)新製品開発と競争激化について

当社グループが製造販売している健康関連商品は、異業種を含む大手企業の進出や様々な新興企業の業界参入など競争は年々激化しております。

当社グループは、新製品の研究開発により市場の要請に合った製商品の開発に努めておりますが、市場の動向や需要の変化等を十分に予測し魅力ある製商品を開発できず他社との差別化の対応が不十分な場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(5)棚卸資産について

当社グループ保有の棚卸資産の評価方法は、「第5(経理の状況) 1(連結財務諸表等) (1)(連結財務諸表) (注記事項)(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおり、総平均法による原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)を採用しております。当該棚卸資産について今後、製品のライフサイクルの短縮による非流動化や陳腐化、価格競争の激化により市場価値が大幅に下落した場合は、当該棚卸資産を評価減または廃棄処理することが予想され、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)知的財産権について

当社グループでは、特許権や商標権等の知的財産権の確保を重要な事項として認識しており、当社グループ独自の技術・ノウハウの保護や第三者の知的財産権を侵害しないように注意を払っています。

ただし、当社グループにおいて知的財産権に関する問題が発生した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(7)社会情勢の変化について

当社グループは、仕入及び販売活動の一部を海外において実施しております。当社が事業展開を行う各国において、今後、予期しない法律または規制・税制の変更、政治または社会経済状況の変化、伝染病や大規模災害等の発生、テロ・戦争等の政情不安等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における当グループを取り巻く経営環境は、異業種を含む大手企業の新規参入など更なる競合激化は続いており、依然として厳しいものとなっております。さらに、地政学的リスクの高まりによる、原材料価格や燃料価格の高騰、それを受けて物価の上昇が、今後も継続すると予想されます。また、それらが個人消費に影響をおよぼすなど、依然として不確実性の高い状況が想定されるため、今後も市場動向を注視してまいります。

この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

a.財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ712百万円増加し、17,896百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ704百万円増加し、5,743百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ7百万円増加し、12,152百万円となりました。

 

b.経営成績

当連結会計年度の経営成績は、売上高12,766百万円(前年同期比2.9%増)、営業利益804百万円(前年同期比12.3%増)、経常利益870百万円(前年同期比6.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益547百万円(前年同期比21.5%減)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。

コンシューマー事業

コンシューマー事業では、主力製品である「ビフィーナ®」のインバウンド需要が増加した一方、プロモーション戦略の最適化期間中における新規顧客獲得数の減少、およびパックシートの自主回収により減収となりました。また、大型新ブランド「腸テク」シリーズの2025年4月発売に向けたプロモーション準備に伴い、一時的に減益となりました。

しかし、当社は創業時より「毒滅」「仁丹」など社会課題に対応した製品の提供を通じて企業ブランド価値の向上に努めてきたことから、今後もこの姿勢を大切にし、コンシューマー事業を重要な領域として位置付けてまいります。

2025年2月には、当社のモノづくりの原点といえる「仁丹」シリーズが発売120周年を迎えました。これを契機に、アニバーサリー施策を通じて既存顧客との関係性を深めるとともに、新たな顧客層との接点拡大や、多様なステークホルダーとのエンゲージメント強化に取り組んでおります。さらに、「腸テク」シリーズを軸としたマーケティング戦略の推進と自社製品のグローバル展開を加速させることで、持続的な成長と収益性の改善を目指してまいります。

当セグメントにおきましては、売上高は、4,787百万円(前年同期比12.2%減)、セグメント損失58百万円(前年同期は、セグメント利益182百万円)となりました。

 

ソリューション事業

ソリューション事業では、自社製品の開発過程で生まれたシームレスカプセル製剤技術による受託製造および機能性原料販売が引き続き堅調に推移しております。特に、ローズヒップ(機能性原料)、ジェネリック医薬品、フレーバーカプセルの販売が前年同期を上回り、売上、利益面ともに増加しました。

自社製品開発を起点とする技術基盤がソリューション事業の差別化を支える一方、当事業で培われた技術や知見は、今後の製品開発にも活用される見込みであり、コンシューマー事業の発展にも寄与すると考えております。

今後は受託事業・機能性原料販売の強化に加え、パートナー企業やアカデミアとの共同研究を通じて、社会課題の解決にも取り組んでまいります。

当セグメントにおきましては、売上高は、7,971百万円(前年同期比14.8%増)、セグメント利益は、855百万円(前年同期比63.2%増)となりました。

 

その他

当セグメントにおきましては、売上高は、7百万円と前年同期と比べ1百万円の減収となりました。

損益面では、セグメント利益は、7百万円と前年同期と比べ1百万円の減益となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、1,940百万円と前連結会計年度末と比べ848百万円(77.7%)の増加となりました。

当連結会計年度に係る区分ごとのキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による資金の増加は669百万円(前連結会計年度は196百万円の増加)となりました。その主な要因は、税金等調整前当期純利益772百万円、減価償却費578百万円、売上債権の増加196百万円などによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金の減少は701百万円(前連結会計年度は1,152百万円の減少)となりました。その主な要因は、有形固定資産の取得による支出600百万円、無形固定資産の取得による支出79百万円などによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金の増加は880百万円(前連結会計年度は362百万円の減少)となりました。その主な要因は、長期借入れによる収入1,250百万円、配当金の支払額204百万円によるものであります。

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

コンシューマー事業

3,829

△22.8

ソリューション事業

6,066

11.9

合計

9,896

△4.7

(注)金額は、販売価格によっております。

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

コンシューマー事業

115

△51.5

47

△35.2

ソリューション事業

5,984

8.6

1,263

27.3

合計

6,099

6.2

1,310

23.0

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

コンシューマー事業

4,787

△12.2

ソリューション事業

7,971

14.8

その他

7

△16.2

合計

12,766

2.9

(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

日本フィルター工業株式会社

2,585

20.8

 

相手先

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

日本フィルター工業株式会社

2,133

16.7

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

当社グループの連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度末における資産、負債の報告金額及び収益、費用の報告金額に影響を与える見積り、判断及び仮定を使用することが必要となります。当社グループの経営陣は連結財務諸表作成の基礎となる見積り、判断及び仮定を過去の経験や状況に応じ合理的と判断される入手可能な情報により継続的に検証し、意思決定を行っております。しかしながら、これらの見積り及び仮定は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。

なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

1)財政状態

(資産合計)

当連結会計年度末における流動資産は8,187百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,134百万円増加いたしました。これは主に原材料及び貯蔵品が40百万円減少しましたが、現金及び預金が848百万円、受取手形が167百万円、商品及び製品が101百万円それぞれ増加したことなどによるものであります。固定資産は9,708百万円となり、前連結会計年度末に比べ422百万円減少いたしました。これは主に、投資有価証券の時価の減少などにより531百万円減少したことなどによるものであります。この結果、総資産は、17,896百万円となり、前連結会計年度末に比べ712百万円増加いたしました。

(負債合計)

当連結会計年度末における流動負債は2,836百万円となり、前連結会計年度末に比べ389百万円減少いたしました。これは主に未払法人税等が205百万円、設備関係支払手形が89百万円、1年内返済予定の長期借入金が69百万円それぞれ減少したことなどによるものであります。固定負債は2,907百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,093百万円増加いたしました。これは主に長期借入金が1,155百万円増加したことによるものであります。この結果、負債合計は、5,743百万円となり、前連結会計年度末に比べ704百万円増加いたしました。

(純資産合計)

当連結会計年度末における純資産合計は12,152百万円となり、前連結会計年度末に比べ7百万円増加いたしました。これは主に利益剰余金が342百万円増加しましたが、その他有価証券評価差額金が346百万円減少したことなどによるものであります。この結果、自己資本比率は67.9%(前連結会計年度末は70.7%)となりました。

2)経営成績

(売上高)

売上高は、「ビフィーナ®」や、フレーバーカプセルの受託の販売が前年同期と比べ増収となり、前連結会計年度に比べ2.9%増の12,766百万円となりました。そのうち、国内売上は9,931百万円、海外売上高は2,835百万円となりました。

 

(売上原価、販売費及び一般管理費)

売上原価は、前連結会計年度に比べ6.0%増の6,793百万円となりました。

販売費及び一般管理費は、「仁丹」のリブランディングを目的とした戦略的プロモーション活動等に努めたこともあり、前連結会計年度に比べ2.1%減の5,169百万円となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ21.5%減の547百万円となりました。

 

3)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの経営に影響を与える大きな要因としては、主に異業種を含む大手企業の新規参入など、市場の競合激化などであります。

これらについて、当社グループとしては、「伝統と技術と人材力を価値にする」をビジョンとして、引き続き積極的な営業活動を展開するとともに、通販ECサイトの拡充、当社独自の機能性原料販売の拡大施策、アジア・ASEAN地域を中心とした海外事業の拡大などに取り組んでまいります。

 

c.資本の財源及び資金の流動性

1)キャッシュ・フロー

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

2)財務政策

当社グループは健康関連商品の製造販売事業を行うための設備投資計画に照らして、必要な資金を主に銀行借入により調達しております。一時的な余資は安全性の高い金融資産で運用しております。

 

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループ(以下、当社という)は、創業以来、人々の健康と豊かな暮らしに貢献することを目指し、様々な製品開発に取り組んでまいりました。特に、モノづくりの原点である「仁丹」から発展した「球体技術」や「素材研究」は、現在、自社製品開発だけでなく、シームレスカプセル受託事業や機能性原料販売などソリューション事業にも大きく貢献しております。

(1)コンシューマー事業

当社は、基幹技術である「シームレスカプセル製剤技術」を活用し、腸溶性カプセル等、特定部位での成分放出を可能とする製剤設計に取り組んでおります。この技術を活かし、生きたビフィズス菌を腸まで届けることを目的とした「ビフィーナ®」シリーズを開発し、30年以上にわたり販売を継続してまいりました。

近年、腸内環境の個人差に対応した製品開発の需要が高まる中、当社では新しいシームレスカプセルの研究を進めてまいりました。その成果として、2025年4月には、短鎖脂肪酸を腸まで届けることを可能とした新製品「タンサ脂肪酸」を含む「腸テク」シリーズ3品を発売いたしました。

従来、短鎖脂肪酸は、主に腸内環境を整える食事や食物繊維、プロバイオティクスの摂取により腸内での産生を促すアプローチが主流でありましたが、本製品は短鎖脂肪酸を直接腸に届けることを可能としたものであり、当社のシームレスカプセル製剤技術により実現された画期的な取り組みといえます。現在、腸に届いた短鎖脂肪酸の効果・効能についての研究を継続的に行っており、今後の応用展開が期待されます。

腸内環境へのアプローチが健康や豊かさの向上に寄与する重要な要素であることが、国内のみならず国際的な認識として広がっている中、当社は、「健康の基本はおなかから」というテーマのもと、シームレスカプセル製剤技術を活用し、短鎖脂肪酸のみに限らず、その他の有用成分にも着目し、腸内環境へのアプローチと健康への寄与を念頭に、研究を進めてまいります。

当連結会計年度におけるコンシューマー事業に関する研究開発費の金額は211百万円であります。

 

(2)ソリューション事業

当社の基幹技術であるシームレスカプセル製剤技術は、受託事業でも大きく貢献しております。粉末、液体、微生物など多様な内容物を包含できるだけでなく、粒子サイズや重量のばらつきを制御したり、有効成分の均一な含有を実現しました。また、特定部位での成分放出を可能とする製剤設計は、食品分野だけでなく、医薬品分野におけるドラッグデリバリーシステム(DDS)としての応用も見込まれます。産業用途においては他の製剤に配合し、特定の状況下で成分を放出することで付加価値を高める製剤の研究開発を進めています。今後も、可食、非可食と分野を問わず、顧客ニーズに対応することを目指し、継続してオープンイノベーションを推進し、ソリューションの提案を続けてまいります。

また、機能性原料については、ローズヒップエキス、サラシアエキス等の独自原料が、機能性表示食品制度に適合した高付加価値原料として採用され、これまでに累計136品目が受理されており、当連結会計年度の売上にも大きく寄与しております。

機能性原料のエビデンス取得に関しましては、当分野の差別化戦略において、今後ますます重要になってくると考えており、お客様により確実な商品をお届けするためにも、積極的に取り組んでおります。エビデンスの取得に際しては、研究を加速するため多くの大学や企業との共同研究等を行っており、大阪大学、神戸大学、筑波大学、岐阜大学、千葉大学、慶應義塾大学、立命館大学、近畿大学、摂南大学、新潟薬科大学、川崎医療福祉大学、京都府立医科大学等と取り組んでおります。

当連結会計年度におけるソリューション事業に関する研究開発費の金額は896百万円であります。

 

結果として、当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は1,108百万円であります。