文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、社是を『先見的独創と研究』と定めています。また、企業理念『絶えず先見的特色ある製品を開発し、医療の世界に積極的に参加し、もって人類の健康・福祉に貢献する』は普遍的な使命です。潜在的な医療・健康ニーズを捉えて、患者や顧客の皆様にとって価値あるものを創造し、提供していくことが存在意義であると考えています。
医薬品関連事業、バイオマテリアル事業、及びヘルスケア事業の3つの事業活動を通じて「ニーズを満たす特色ある製品の創出」「適正な品質の製品の安定供給」「製品価値の最大化」を行い、それによって、「患者さんとそのご家族のQOL向上」や「女性の様々なライフステージのサポート」、ひいては「人類の健康・福祉への貢献」といった製薬企業としての価値の提供に取り組みます。
また、サステナビリティに関する基本方針を定めており、「人類の健康・福祉に貢献」という製薬企業としての価値の提供に取り組むことで、社会から必要とされる企業として持続的に成長を続け、SDGsの達成にもつながる持続可能な社会の実現に貢献していきます。
(2) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、長期ビジョンを『医療・健康ニーズに応えることで、グローバルにも存在価値を認められる特色ある生命・健康関連企業グループとして成長する』と定めています。2022年5月、今後ますます厳しくなることが予想される事業環境を乗り越えて持続的に成長するため、長期ビジョンを具体化し、当社グループが目指す「2031年のありたい姿」を策定しました。

「ありたい姿」の実現に向けて、2022年度からスタートした「22-24中期経営計画」は「土台作りの3年間」と位置づけ、イノベーション創出と生産性向上をテーマとして取り組みました。この期間に得られた成果や把握した課題を踏まえ、2025年度からの3年間に取り組む「25-27中期経営計画」を策定しました。25-27中期経営計画期間は「成長戦略加速の3年間」と位置づけ、更なる成長を目指します。
(3) 目標とする経営指標
25-27中期経営計画の最終年度にあたる2027年度の経営目標数値を、以下のとおり掲げております。
2027年度 経営目標数値(連結)
売上高 120,000 百万円
営業利益 12,000 百万円
EBITDA+研究開発費 26,500 百万円
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
22-24中期経営計画の最終年度にあたる当連結会計年度は、以下のとおり推移いたしました。
「新薬を中心とした重点領域における収益の最大化」については、主力事業である医薬品関連事業において、安定供給と適正品質維持の徹底を継続するとともに、新薬等に一層注力しました。「トレプロスト吸入液」については間質性肺疾患に伴う肺高血圧症に対する効能・効果追加の承認を取得しました。トシリズマブのバイオ後続品「RGB-19」の製造販売承認申請を行いました。米国ユナイテッド・セラピューティクス社から肺高血圧症治療剤「MD-712(「TYVASO DPI」)を導入し、臨床第Ⅱ/Ⅲ相試験を開始しました。月経困難症治療剤「MD-352」の臨床第Ⅱ/Ⅲ相試験を開始しました。ヘルスケア事業において、「コラージュリペア バクチセラムDR」を発売しました。
「「ありたい姿」を実現するための成長投資の継続」については、バイオマテリアル事業において、神経再生誘導材「ReFeel」は米国において510(k)許可を取得し、臨床データの収集を目的とした販売を開始しました。新たな創薬モダリティへの取り組みとして、創薬研究では、核酸医薬に集中的に取り組み、再生医療等製品の分野では、乳歯歯髄幹細胞SHED、高純度間葉系幹細胞REC、及び臍帯由来細胞「HLC-001」の3つの細胞のプロジェクトを推進しました。また、中国、韓国、ASEAN地域及び台湾で「エパデール」の販売に関する契約を締結し、展開国を拡大しました。
「イノベーション創出と生産性向上に向けた企業体制の強化」については、中期経営計画期間中に運用を開始したインフラ等を最大限に活用し、イノベーション創出と生産性向上に取り組みました。
25-27中期経営計画では、以下の3つの重点テーマに取り組みます。成長事業からの利益貢献は2028年度以降に期待されるため、25-27中期経営計画期間中はコア事業によって成長を支えます。
①コア事業の収益力強化
・医薬事業
主要新薬5品目*1の製品価値を最大化し、導入を通じてパイプラインを拡充することで収益力を強化します。また、フラッグシップ医薬品*2の更なる価値拡大とバイオシミラーの拡充に努め、売上高を伸長させます。
*1 ユリス、オンボー、コレチメント、グーフィス、トレプロスト
*2 高純度EPA製剤、ジエノゲスト製剤
・ヘルスケア事業
コラージュフルフルとコラージュリペアの2大ブランドを確立し、ラインナップの拡充や販売網の最適化を通じて収益力を強化します。
②成長事業の継続投資
・バイオマテリアル事業
早期上市により収益を確保すると同時に、事業基盤の整備と生産性の向上に取り組みます。
・核酸医薬
医療的価値の高いsiRNA医薬を連続的に創製する能力を有する「siRNA医薬のリーディングカンパニー」を目指します。
・細胞医薬
早期事業化を目指し、細胞ごとに再生医療に関する知見や技術を有する企業と提携し、研究開発や製造体制の確立を進めます。
・グローバル展開
海外事業室を中心とした組織横断的な連携の強化と、エパデール、ジエノゲスト製剤及びバイオマテリアル事業を中心とした海外展開の進展を図ります。
③成長を支える経営基盤の強化
・財務戦略
利益水準向上と将来への投資を両立させ、ROEやPBRの向上を目指します。キャッシュアロケーションについては、対象期間(3年間)の累計で、医薬事業、バイオマテリアル事業及びヘルスケア事業の合計の研究開発費は360億円、医薬品の生産設備及び研究設備の合理化や省力化に関する設備投資は50~100億円を計画しています。
・人財・インフラの効率的活用
組織風土変革、人財マネジメント体制強化、多様な人財の活躍促進を図ります。また、経営基盤を支えるインフラの整備にも取り組みます。
・適正な品質の製品の安定供給
製品の品質管理を適切に推進するとともに、製造力の強化にも取り組みます。
当社グループは、サステナビリティを巡る課題への対応を重要な経営課題として認識し、サステナビリティに関する基本方針を策定して、取り組みを進めております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(基本方針)
持田製薬グループは、「絶えず先見的特色ある製品を開発し、医療の世界に積極的に参加し、もって人類の健康・福祉に貢献する」との企業理念に基づき、医療・健康ニーズに応えることで、グローバルにも存在価値を認められる特色ある生命・健康関連企業グループとして成長することを目指します。
持続的な企業価値の向上の観点から、持田製薬グループ行動憲章に則り、適正な企業統治のもと、「人類の健康・福祉に貢献」という製薬企業としての価値の提供に取り組むとともに、地球環境への影響に配慮しつつ、持続可能な社会の実現への貢献に努めます。
(1) 全般
当社グループのサステナビリティに関連した重要事項や取り組みにつきまして、「サステナビリティ委員会」(代表取締役の諮問機関、委員長:企画管理担当役員)において、半期に一度(又は必要に応じ随時)報告・審議されています。また、これらの活動は、年1回以上取締役会に報告され、活動改善に向けた議論を行います。
当社グループに適用されるリスク管理規程を制定するとともに、サステナビリティ関連のリスクを含む当社グループの事業経営全般に係る主要なリスクを管理する「リスク管理委員会」(年2回開催、委員長:企画管理担当役員)を設置し、各主要なリスクの責任部門・会社において策定した当該リスクが顕在化しないための予防策や顕在化した場合の対応策等について審議・監督しています。これらの活動は、年1回以上取締役会に報告され、活動改善に向けた議論を行います。
(2) マテリアリティ
当社グループは、持続的な企業価値向上に向けて、当社グループが優先的に対応すべき重要な事項をマテリアリティ(重要課題)として特定しました。
① マテリアリティの特定プロセス
2022年に各種原則やガイドラインを参照し、以下のプロセスでマテリアリティの特定し、取り組みを進めてきました。2025年5月には経営計画との整合性を高めるようにマテリアリティを見直すと共に、具体的なKPIを設定致しました。今後も社会の変化に柔軟に対応しながら適宜マテリアリティの見直しを図っていく考えです。
・課題抽出
各種原則やガイドライン(SDGs、GRIインデックス、ISO26000等)を踏まえ、課題候補を広く抽出
・課題候補の整理
抽出した課題について、「社会にとっての重要性」と「当社グループにとっての重要性」の2軸でマッピングし、重要性の高い項目を絞り込み

・マテリアリティの特定
整理した内容を取締役会やサステナビリティ委員会をはじめとする社内での議論を経て、当社グループのマテリアリティとして特定
② 当社グループのマテリアリティ
・事業に関わるマテリアリティ
(関連するSDGs)
・経営基盤を支えるマテリアリティ
(注) 1.当社グループの売上・利益に相応の影響を与えるもの、又は、社外への開示が必要と考えられるもの
(関連するSDGs)
(3) 気候変動
当社グループは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に沿った開示を行うべく、気候変動に関連するリスクと機会の評価や管理を進めています。
① 戦略
気候変動が当社事業に及ぼす影響について、1.5℃シナリオ及び4℃シナリオを用いて、気候変動に関するリスクと機会を特定しました。脱炭素社会に向かう1.5℃シナリオは気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によるSSP1-1.9を、温暖化が進む4℃シナリオはSSP5-8.5を参考にしました。
特定したリスクと機会は財務的な影響度と発生頻度を考慮して分析を行い、対応策の評価を実施しました。
・リスク
・機会
(注) 1.時 期:「短期」0~1年、「中期」1~5年、「長期」5~30年
2.影響度:「小」~100億円、「中」100億円~200億円、「大」200億円~
② 指標及び目標
2050年カーボンニュートラルに向けて、2030年度に2013年度比でCO2排出量46%削減(削減対象:研究所・工場・オフィス・営業車両)という目標を設定しています。
(単位:t-CO2)
GHGプロトコル区分によるCO2排出量(スコープ1,2,3)については、弊社ウェブサイトの
(4) サステナブル調達
当社グループでは、取引先企業を含めたサプライチェーン全体で企業の社会的責任を果たすことを目的として定めた「サステナブル調達方針」に基づき、取引先企業に取り組みを期待する事項として「サステナブル調達ガイドライン」を定めています。
当社グループは重要なパートナーであるサプライヤー各社のサステナビリティに関する取り組み状況を確認するため、アンケートを実施しました。
・アンケート概要(2024年度)
・結果
アンケートの回収率は約9割でした。環境、コーポレートガバナンス及び公正な企業活動については、体制構築等の取り組み状況にばらつきが認められました。
・今後の方針
各設問への回答の集計結果を回答いただいた取引先にフィードバックし、自社の相対的なレベルを確認いただくことで改善を促します。課題に対して協働で取り組むことで、サプライヤー各社とともにサステナブル調達を推進してまいります。
(5) 人的資本・多様性
当社グループでは、企業の価値創造を支える大きな原動力は「人財」であると考えており、社員一人一人が能力を最大限発揮し、企業として成長できることが何より重要と考えています。企業競争力を高めていくには、激しい環境変化の中でも活躍できる人財の獲得・育成だけでなく、中高年齢者や女性を含む多様な人財の活躍が必要です。全ての社員が独創・自立の精神で活躍することを目指し、チャレンジする風土の醸成や、社員が成長・能力発揮できる環境の整備を行っています。各方針と主な取り組みは以下のとおりです。
(人財育成)
当社グループでは人財育成を重要課題と捉え、階層別・職種別の教育を行い、社員の能力開発やリーダーの育成に取り組んでいます。階層別の研修では、一般社員においては、新入社員研修、中堅社員研修を通じて業務知識やスキルの向上を推進し、パフォーマンス向上のための能力開発を支援します。さらに、リーダーや管理職候補者の研修を通じて、イノベーション創出に寄与する人財の発掘・育成を行います。管理者研修においては、基礎力向上に加え、戦略的なビジョンの共有やリーダーシップスキルの更なる向上を図ります。
職種別の研修においては部門別に計画された研修プログラムにより専門的な知識を学び、より高度な業務が行えるスキルを身につけます。また、会社の中核を担う人財の育成を目的とした国内研修・海外留学制度を導入しています。毎年公募を行い、選抜された社員が国内のビジネススクールに留学し、学位を取得しています。さらに、自立した社員の育成やチャレンジする風土の醸成などを目的として、資格取得や教育プログラム参加を支援する自己啓発支援制度も運用しています。これらの教育や研修を通して、人財の能力やスキルの底上げを図り、グループの成長・強化につなげています。
(人財マネジメント体制強化)
人財の活躍・活性化に向けて、人財マネジメント体制の強化を進めています。そのベースとなる人事制度を改定し、2023年4月から運用を開始しています。新しい制度では、役割や貢献度に応じた処遇反映の仕組みや多様な人財の活躍を促進する仕組みを取り入れました。各ポジションの役割を明確化して再整理し、早期登用も可能としています。さらに、専門性を有する高年齢者の処遇も見直しました。また、グローバル展開に向けて、必要な人財の確保にも取り組んでいます。
(多様な人財の活躍)
女性活躍の推進
当社グループでは、女性の採用・育成や管理職登用率の向上に取り組むとともに、女性特有の様々なライフステージをサポートする制度の整備や、女性社員を中心とした女性健康支援ワーキンググループによる課題解決などに取り組んでいます。持田製薬の女性管理職比率については、女性活躍推進法に基づく行動計画の目標を12%以上(2021~2025年度)と定めています。女性管理職ロールモデルの提示や管理職候補者のキャリアプランの作成、女性社員向けキャリア研修・セミナーの実施など、女性がいっそう活躍する企業を目指して、育成や意識改革に取り組んでいます。
キャリア採用推進
当社グループが必要とする技術・知識・経験などのキャリアを有する人財や、事業の拡大、グローバル展開、戦略遂行のために必要な高度専門人財を採用し、企業価値の向上につなげています。特に次世代の柱の一つとして取り組んでいるバイオマテリアル事業については、専門人財を積極的に採用しています。キャリア採用比率は年々増加しており、多くのキャリア採用社員が様々な部署で活躍しています。
障がい者活躍推進
障がい者の雇用拡大に努めています。2024年6月1日時点の持田製薬の障がい者雇用率は2.5%(法定雇用率2.5%)で、皆さんが様々な部署で活躍しています。
高年齢者の雇用
定年を60歳とし、定年後は原則として希望者全員を65歳まで再雇用する制度を導入しています。2013年度にはよりモチベーション高く働くことができるよう処遇を改定し、2020年度にはパートタイム・有期雇用労働法の施行に対応して処遇を改定するなど、高年齢者がさらにモチベーション高く働けるように制度を整備しています。なお、当社グループでは、55歳の従業員を対象に、今後の職業人生や資産管理など、将来設計を見直す機会としてライフプランセミナーを実施し、多様な働き方を支援しています。
(社内環境整備)
働きやすい職場づくり
当社グループでは、ワークライフバランスと多様で柔軟な働き方の実現に向けて継続的に取り組んでいます。働き方改革関連法への対応(時間外労働の上限設定、管理監督者等の健康管理時間の把握など)や、フレックスタイム制の利用促進・適用範囲の外勤者への拡大、裁量労働制の研究所での運用、テレワークの利用範囲拡大とコミュニケーションツールの整備・充実、時間単位の有給休暇取得制度導入など、社員が高いモチベーションで効率的な働き方ができる環境を整えてきました。
従業員エンゲージメント
当社グループの全従業員に対して、従業員エンゲージメントなどを把握するための従業員調査を毎年実施しています。調査結果は全社員に公開するとともに、課題解決、モラールアップに向けた施策を検討・実施しています。また、仕事や職場に対する意見や要望の収集、悩みや問題について相談に応じるヒアリングを行うなど、よりいっそう働きがいのある会社・職場を目指した取り組みを進めています。
育児・介護
仕事と育児、介護が両立できる職場環境の実現に向けた取り組みを進めています。これまでに育児休業期間の延長、育児休業の一部有給化、法令を上回る介護休業制度の導入、短時間労働勤務制度の導入、妊産婦通院休暇の設定、積立有給休暇の介護・看護による利用の拡大、育児短時間勤務者へのフレックスタイム制勤務の拡大、テレワークの運用、マタニティーハラスメント防止対策としての育児休業規定の改定などを行い、育児・介護支援を推進しています。また、育児休業取得率の目標値を女性90%以上、男性30%以上(2021~2025年度)と定めています。育児関連制度の周知や理解促進のための研修の実施、男性社員の育児関連制度の利用促進への取り組みなど、育児休業取得を推進しています。なお、持田製薬、持田ヘルスケア、及び持田製薬工場の職場における子育て支援の取り組みが、「次世代育成支援対策推進法」に基づく一定の基準を満たすものであるとの認定を厚生労働大臣より受け、次世代認定マーク(愛称「くるみん」)を取得しています。
労働安全衛生
安心して働ける職場を目指して、当社グループ全体の安全衛生を管理・推進する体制を構築し、各事業場の安全衛生委員会などの開催とあわせて、労働災害防止と職場環境の安全衛生確保に取り組んでいます。また厚生労働省の「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」に基づき、セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフなどによるケア、事業場外資源によるケアの4つの観点から、従業員をサポートする体制及び制度の充実を図っています。
管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の賃金の差異についての実績は、
また、当社の管理職に占める女性労働者の割合につきましては、2026年3月までに12%以上にする目標を掲げております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、当社グループは、当社グループに適用されるリスク管理規程を制定すると共に、各部門長及び子会社社長等を委員とするリスク管理委員会を設置し、当社グループの事業及び経営に相当程度の悪影響(損失)を与え得るリスク(主要リスク)の認識と評価、対応策を全社レベルで検討・把握し、リスク管理に係る方針や主要な施策等を協議し、主要リスクが顕在化した場合の必要な事業継続、損失の極小化等を基本方針とする等、主要リスクの管理体制を整備しております。
(特に重要なリスク)
(1) 研究開発に関するリスク
医薬品等の研究開発には多額の資金及び長期間を要しますが、その過程で当初期待した有効性が証明できなかったり、予期せぬ副作用が発現した等の理由により、開発が中断・遅延する可能性があります。これにより、開発のやり直し、追加試験等の発生、また将来の売上機会の喪失等により、当初期待していた収益を下回る可能性があります。
当社グループは、必要な試験・調査・評価等及び適切な製造・品質管理を実施する等、当該リスクの低減に努めております。
(2) 製造・仕入れに関するリスク
当社グループは製品の品質について、関連法規に基づく規制のもと、サプライチェーンへの要請を含め品質保証等万全を期しておりますが、当社グループの工場において製造上の瑕疵による品質問題等が発生した場合や、特定の取引先に供給を依存している商品及び原材料等について、調達管理部門を設置し調達管理を実施しているものの、何らかの要因によりその供給が遅延又は停止した場合、商製品回収、出荷遅延・停止や欠品、これらによる許認可の取り消し、業務停止その他の行政処分、売上減少等により、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(3) 業務提携に関するリスク
当社グループは各部門において、共同研究・開発・販売、製品の導出入等、他社との業務提携を行っており、今後何らかの事情により、これらの提携が解消される可能性があり、その場合には将来の売上見込・機会の喪失等により、当初予想・期待した収益を下回る可能性があります。
当社グループは、提携先との関係維持及び当該リスクを低減する契約の締結に努める等、当該リスクの低減に努めております。
(4) 法規制、制度改革に関するリスク
医薬品の研究開発・製造・販売等に関しては医薬品関連法規等の規制(医療制度改革、後発品使用の促進及び薬価基準の引き下げ等の医療費適正化推進策を含む)を受けており、規制の厳格化等により経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、当該規制に適合しない場合、製品の回収、許認可の取り消し、業務停止その他の行政処分又は損害賠償請求を受けると共に、信用失墜による売上減少を招く可能性があり、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、規制を遵守する体制を整備すると共に、規制の改正の方向を早期に捉え改正に備え収益の維持に努める等、当該リスクの低減に努めております。
(5) 副作用に関するリスク
当社グループは医薬品の品質・安全性について、医薬品関連法規に基づく厳格な規制のもと、臨床試験の信頼性の保証や製品の品質保証等万全を期すと共に、副作用被害の賠償に関する保険に加入する等、当該リスクの低減に努めておりますが、予期せぬ副作用の発生による製品の回収、製造販売の中止、訴訟対応や損害賠償、信用失墜による売上減少等が発生する可能性があり、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(6) 事業継続に関するリスク
大規模な自然災害その他の災害・事故等により、当社グループの工場、研究所、支店、事業所等の各拠点が深刻な影響・被害(情報システムの停止・障害を含む)を受け、また感染症の蔓延等により事業活動の停滞や工場の操業停止等に陥り、欠品等が生じた場合、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの各拠点では、地震等の災害・事故の発生に備え、市場への製品安定供給を含む事業継続計画の策定等の各種対策を推進する等、当該リスクの低減に努めております。
なお、新型コロナウイルス感染症等のパンデミックに対しては、従業員及び事業関係者への感染防止、製品の安定供給体制の維持を中心に取り組んでまいります。
(重要なリスク)
(1) 製品売上構成上のリスク
当社グループの中核事業である医薬品において、一部主力製品の売上が高い比率を占めております。このため、薬価制度や競合状況等の最新情報も踏まえて当該製品の価値向上に努めておりますが、競合品・後発品の発売・伸長による売上の減少の他、予期せぬ副作用、製品瑕疵、安定供給への障害等によりこれらの製品が販売中止や製品回収に至った場合は信用失墜による売上減少を含め、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(2) 他社競合その他販売に関するリスク
他社製品(後発品を含む)との競合等は売上・収益を減少させる原因となり、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの販売先は、特定の卸売業者に集中しており、これらの卸売業者に貸し倒れが発生し債権回収不能となった場合、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、製品価値の維持・向上及び適切な与信管理に努める等、当該リスクの低減に努めております。
(3) 知的財産権に関するリスク
当社グループの事業活動が第三者の知的財産権に抵触する場合、訴訟対応・損害賠償・実施料の支払い等による収益の低下、ひいては事業の中止に繋がり、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、保有する知的財産権を適切に管理し、第三者の知的財産権を侵害しないよう必要な調査を行う等、当該リスクの低減に努めております。
(4) 情報管理に関するリスク
当社グループが保有する機密情報、個人情報等がシステムへの不正侵入、システム障害その他の理由により社外に流出した場合、訴訟対応や損害賠償、信用失墜による売上減少、将来の売上機会の喪失等により経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、情報保護のための安全管理措置(組織的・人的・物理的・技術的措置)を講じ、情報セキュリティ面の充実を図る等、当該リスクの低減に努めております。
(5) 環境問題に関するリスク
医薬品等の研究、製造の過程等で使用される化学物質の中には、人の健康や生態系に悪影響を与えるものも含まれ、これら物質が土壌汚染、大気汚染等、環境に深刻な影響を与えた場合、汚染発生の原因解明・周辺地域対応や、信用失墜による売上減少等により経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、関連法規を遵守し必要な調査・監視を行う等、当該リスクの低減に努めております。
また、気候変動に係るリスクが当社の事業活動や収益等に与える影響について分析を行い、開示を進めてまいります。
(6) 金融市況及び為替変動に関するリスク
金融市況の悪化により、当社グループが保有する有価証券の評価損や売却損が生じ、また金利動向によっては退職給付債務の増加等が生じる可能性があり、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、商品・原料の輸入等の外貨建取引において、外国為替変動が経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、一部の外貨建債権債務の為替予約等のヘッジ取引を行うと共に、急激な為替変動リスクの契
約による一部転嫁等に努める等、当該リスクの低減に努めております。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。また、上記以外にもさまざまなリスクがあり、ここに記載されたものが当社グループの全てのリスクではありません。
当連結会計年度の国内経済は緩やかな回復が続いた一方、不安定な国際情勢や、為替変動、物価上昇もあり、先行き不透明な状況で推移しました。医薬品業界は、医療費抑制政策が継続的に推し進められる中、毎年薬価改定が実施されるなど、引き続き厳しい環境下にあります。
当社グループ(当社及び連結子会社、以下同じ)は、医療・健康ニーズに応え、グローバルにも存在価値を認められる特色ある生命・健康関連企業グループとして成長するために、研究・開発から製造・販売までのグループ総合力を結集し、持続的成長に向けて選択と集中を進め、更なる環境変化に対応すべく収益構造の再構築を進めました。当期を含む22-24中期経営計画期間中は、「新薬を中心とした重点領域における収益の最大化」「将来の競争力に結びつく事業活動への投資」「イノベーション創出と生産性向上に向けた企業体制の強化」を重点課題として取り組みました。
当連結会計年度における医薬品関連事業は、重点領域の「循環器、産婦人科、精神科、消化器」にリソースを集中し、主力製品を中心とした情報提供活動を積極的に展開いたしました。また、ヘルスケア事業は、皮膚科医・産婦人科医や看護師等の高い支持を基盤としたマーケティングの推進に努め、市場開拓を図りました。
当連結会計年度の売上高は105,159百万円で前期比2.2%の増収となりました。
利益面につきましては、医薬品関連事業の売上高増加に伴う売上総利益の増加と、研究開発費の減少を主な要因として販売費及び一般管理費が減少したことにより、営業利益は8,126百万円で前期比40.1%の増益となりました。経常利益は8,067百万円で前期比33.6%の増益、親会社株主に帰属する当期純利益は5,685百万円で前期比25.0%の増益となりました。
各事業部門の業績は次のとおりであります。
1.医薬品関連事業
医薬品関連事業は薬価改定及び2024年10月に導入された長期収載品の選定療養の影響を受けたものの、主に新薬が伸長し、売上高は97,989百万円で前期比1.6%の増収となりました。新薬の売上高は、潰瘍性大腸炎治療剤「リアルダ」、慢性便秘症治療剤「グーフィス」「モビコール」、痛風・高尿酸血症治療剤「ユリス」、肺動脈性肺高血圧症・間質性肺疾患に伴う肺高血圧症治療剤「トレプロスト」及び潰瘍性大腸炎・クローン病治療剤「オンボー」が伸長しました。潰瘍性大腸炎治療剤「コレチメント」も寄与しました。長期収載品及び後発品の売上高は前期を下回りました。ロイヤリティ収入は前期に比べて増加しました。
2.ヘルスケア事業
ヘルスケア事業の売上高は7,169百万円で前期比11.5%の増収となりました。抗真菌成分配合シャンプー・石鹸をはじめとする「コラージュフルフルシリーズ」、及び基礎化粧品「コラージュリペアシリーズ」の売上高が伸長しました。
当連結会計年度末における流動資産は119,669百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,007百万円増加しました。これは主に、有価証券が減少したものの、現金及び預金、商品及び製品が増加したことによるものです。固定資産は40,452百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,685百万円減少しました。これは主に、投資有価証券及び投資その他の資産のその他に含まれる長期前払費用が減少したことによるものです。
この結果、総資産は、160,121百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,321百万円増加しました。
当連結会計年度末における流動負債は24,902百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,170百万円減少しました。これは主に、流動負債のその他に含まれる未払消費税等が増加したものの、支払手形及び買掛金が減少したことによるものです。固定負債は4,523百万円となり、前連結会計年度末に比べ235百万円減少しました。
この結果、負債合計は、29,426百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,406百万円減少しました。
当連結会計年度末における純資産合計は130,694百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,727百万円増加しました。これは主に、配当金の支払いによる利益剰余金の減少があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益による利益剰余金の増加があったことによるものです。
この結果、自己資本比率は81.6%と前期比1.0ポイント増加しました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ23,860百万円増加し、当連結会計年度末には48,151百万円となりました。
主な内容は以下のとおりであります。
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は9,354百万円(前期は7,480百万円の減少)となりました。これは主に、仕入債務の減少3,522百万円があったものの、税金等調整前当期純利益が8,052百万円及び売上債権の減少3,220百万円があったことによるものであります。
当連結会計年度における投資活動による資金の増加は17,355百万円(前期は74百万円の増加)となりました。これは主に、有形及び無形固定資産の取得による支出2,160百万円があったものの、定期預金の払戻による収入14,700百万円及び有価証券の売却による収入10,500百万円があったことによるものであります。
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は2,865百万円(前期は6,393百万円の減少)となりました。これは主に、配当金の支払2,835百万円があったことによるものであります。
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績を事業部門ごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は正味販売価格によっております。
b.商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績を事業部門ごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は実際仕入額によっております。
c.受注状況
当社グループは主として見込生産を行っているため、記載を省略しております。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績を事業部門ごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、必要と思われる見積りは、その時点で最も合理的と考えられる基準に基づいて実施しておりますが、見積り等の不確実性があるため実際の結果は異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表〔注記事項〕(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
中核とする医薬事業は医薬品関連法規等の規制を受けており、医療制度改革、後発品の使用促進及び薬価改定等の医療費適正化策の動向、及び主力品の市場における競争状況が経営成績に継続的に影響を及ぼす要因として認識しております。また、経営成績に大きな影響を与える要因となる可能性があるリスクについては、3[事業等のリスク]に記載のとおりであります。
当連結会計年度は、こうした諸要因のインパクトも計画に織り込み、事業に取り組みました。その結果、医薬品関連事業は、新薬の売上高が伸長、長期収載品の売上高が低下、後発品の売上高が低下しました。また、ヘルスケア事業も主要製品が伸長したことにより、(1)① 経営成績の状況に記載のとおりの経営成績となったと認識しております。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの主な資金需要は、運転資金、研究開発や企業提携等への資金及び設備資金であり、これらの必要資金は、主に利益の計上により生み出される自己資金により賄っております。また、当社グループでは、安定した資金調達手段を確保し、機動的に資金調達を行うため特定融資枠契約(コミットメントライン契約)を締結しております。
(1)技術導入契約
(注) 2024年4月1日付で、キッズウェル・バイオ㈱から㈱S-Quatreへの新設分割による事業承継に伴う契約上の地位が承継されたため、相手先の名称を変更しております。
(2)技術導出契約
(3)販売契約等(導入)
(4)販売契約等(導出)
なお、当連結会計年度において終了した重要な契約は以下の通りであります。
当社グループは社是「先見的独創と研究」を実践し、国内外企業との研究開発提携も積極的に推進しながら医療用医薬品を中心に研究開発活動を展開しております。
当連結会計年度の研究開発費は、
研究開発の状況につきましては、研究面では、オープンイノベーションの推進、及び外部リソースを活用した創薬により細胞・核酸・遺伝子などの新たなモダリティを取り込み、創薬パイプラインの充実を図っております。再生医療等製品の分野においては、間葉系幹細胞を用いたプロジェクトに優先的に取り組んでおり、乳歯歯髄幹細胞SHED、高純度間葉系幹細胞REC、臍帯由来細胞「HLC-001」による治療法の開発を進めております。核酸医薬については、高度な専門性を有する人財や、創薬技術の獲得を積極的に進め、競争優位性のある創薬研究を推進しております。また、当社が創製し、千寿製薬株式会社がドライアイ治療薬として開発を進めているTRPV1拮抗薬については、同社が日本において製造販売承認申請を2025年1月に行いました。
臨床開発面では、「トレプロスト吸入液」の間質性肺疾患に伴う肺高血圧症に対する効能・効果追加の製造販売承認を2024年9月に取得しました。「リアルダ」の小児適応の用法・用量追加の承認申請を2024年7月に行いました。関節リウマチの治療剤であるトシリズマブのバイオ後続品「RGB-19」の製造販売承認申請を2025年3月に行いました。月経困難症治療剤「MD-352」の臨床第Ⅱ/Ⅲ相試験を2024年10月に開始しました。米国ユナイテッド・セラピューティクス社から導入した肺高血圧症治療剤「MD-712」(「TYVASO DPI」)の臨床第Ⅱ/Ⅲ相試験を2024年12月に開始しました。「ユリス」の小児適応は、臨床第Ⅲ相段階にあります。中国において住友制葯(蘇州)と提携して開発を進めている高純度EPA製剤「MND-21」の新薬承認申請が2024年7月に受理されました。また、日本イーライリリー株式会社が開発し、当社が販売している「オンボー」は、同社がクローン病に対する効能・効果追加の製造販売承認を2025年3月に取得しました。
アライアンスに関しては、2024年8月にMeiji Seika ファルマ株式会社とASEAN地域及び台湾における「エパデール」の販売に関する契約を締結しました。2024年10月に米国ユナイテッド・セラピューティクス社と肺高血圧症治療剤「TYVASO DPI」の国内における販売権に関する契約を締結しました。2024年12月に韓国のKuhnil Pharm. Co., Ltd.と韓国における「エパデール」の販売に関する契約を締結しました。2025年3月に株式会社S-Quatreと乳歯歯髄幹細胞SHEDの小児脳性麻痺及び外傷性脳損傷を対象とする共同事業化契約を締結しました。
次世代の柱の一つと位置付けるバイオマテリアル事業において、軟骨修復材「dMD-001」は製造販売承認申請中です。海綿体神経損傷治療材「dMD-002」は検証的治験を2024年12月に開始しました。癒着防止材「dMD-003」は検証的治験段階にあります。神経再生誘導材「ReFeel」は米国において510(k)許可を2024年6月に取得し、臨床データの収集を目的とした販売を開始しました。
これらの医薬品関連事業の当連結会計年度の研究開発費は11,520百万円であります。
ヘルスケア事業の研究開発費は156百万円であります。