当中間連結会計期間において、新たに発生した事業等のリスクはありません。
また、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについて、重要な変更はありません。
文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において判断したものです。
(1)財政状態及び経営成績の状況
①財政状態
当中間連結会計期間末の資産は、3,891億円となりました。ジクアスLX点眼液3%出荷再開に伴う原料等の棚卸資産の増加などがあった一方、営業債権流動化等運転資金の圧縮に取り組んだことに加えて、現金の減少などにより前連結会計年度末と比べ201億円減少しました。
資本は、2,736億円となりました。利益剰余金及びその他の資本の構成要素の増加などがあった一方、自己株式の取得による資本圧縮効果などにより前連結会計年度末と比べ116億円減少しました。
負債は、1,155億円となりました。金融負債の増加などがあった一方、営業債務及びその他の債務の減少及びその他の流動負債の減少などにより前連結会計年度末と比べ86億円減少しました。
以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末と比べ0.7ポイント増加し、70.6%となりました。
なお、SantenグループではROE(親会社所有者帰属持分利益率)を最重要指標に、キャッシュ・フローの最大化と資本コストの低減の両面から株主価値最大化に取り組んでいます。キャッシュの源泉としては営業活動から得られるインフローを基本としつつ、キャッシュ・コンバージョン・サイクル管理により運転資本の効率を高めることでキャッシュ創出力の最大化に取り組みます。その一環として、営業債権の流動化を実施しており、ROIC(投下資本収益率)の改善に取り組んでいます。
②経営成績
(単位:億円)
|
|
前中間連結会計期間 |
当中間連結会計期間 |
対前年同期増減率 |
|
売上収益 |
1,464 |
1,379 |
△5.8% |
|
コ ア 営 業 利 益※1 |
297 |
223 |
△25.0% |
|
営業利益 |
239 |
179 |
△25.0% |
|
中間利益 |
187 |
139 |
△25.9% |
|
親会社の所有者に帰属する 中間利益 |
188 |
139 |
△25.7% |
|
E B I T D A※2 |
343 |
271 |
△21.0% |
当中間連結会計期間の業績は売上、各段階利益共に減収減益となりましたが、2025年5月13日に公表した通期業績予想に対しては計画どおり、着実な進捗となりました。
[売上収益]
薬価改定や流通在庫水準調整の影響を受けたものの、新製品や主力製品拡大に注力し、前年同期と比べ5.8%減少し、1,379億円となりました。
◇日本
1%台後半の薬価改定、主力品の市場拡大再算定や前期末のアレジオン類好調の反動はあったものの、2025年4月に販売を開始したリジュセアミニ点眼液0.025%、2025年5月に販売を開始したアイリーア8mg硝子体内注射用キット114.3mg/mL、アレジオン眼瞼クリーム0.5%等の主力製品の拡大に注力しましたが、2024年10月から導入された後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養制度の影響等もあり、前年同期と比べ12.1%減少し、698億円となりました。そのうち、一般用医薬品(中国、アジア除く)の売上収益は前年同期と比べ12.3%増加し、60億円となりました。
◇中国
主に流通在庫水準調整の影響により、円換算ベースで前年同期と比べ10.5%減少し(為替影響を除いた成長率は△6.1%)、146億円となりました。なお、当期より香港を「アジア」から「中国」に変更しており、対前年同期増減率の算定においてもこの変更を反映しています。
◇アジア(中国除く)
韓国や東南アジア地域で緑内障やドライアイ製品が堅調に推移し、円換算ベースで前年同期と比べ4.6%増加し(為替影響を除いた成長率は+9.1%)、149億円となりました。
◇EMEA※3
緑内障とドライアイのリーダーシップポジション確立に注力した結果、円換算ベースで前年同期と比べ6.0%増加し(為替影響を除いた成長率は+4.5%)、377億円となりました。
[コア営業利益]
売上総利益は、前年同期と比べ6.9%減少し、772億円となりました。
販売費及び一般管理費は、前年同期と比べ0.7%増加し(為替影響を除いた対前年同期増減率は+1.3%)、425億円となりました。
研究開発費は、前年同期と比べ13.0%増加し(為替影響を除いた対前年同期増減率は+14.5%)、124億円となりました。
以上により、コアベースの営業利益は、前年同期と比べ25.0%減少し(為替影響を除いた対前年同期増減率は△23.7%)、223億円となりました。
[営業利益]
製品に係る無形資産償却費は、前年同期と比べ1.3%減少し(為替影響を除いた対前年同期増減率は△0.9%)、44億円となりました。これは主に、2014年にMerck & Co., Inc.(米国)から譲り受けた眼科製品、2019年より欧州で販売を開始した「プリザーフロ マイクロシャント」、2015年より欧州で販売を開始した「Ikervis(アイケルビス)」及び、2023年より欧州で、2024年よりアジアで販売を開始した「Rocklatan / Roclanda(ロクラタン/ロクランダ)」に関する無形資産の償却によるものです。
その他の収益は、4億円となりました。
その他の費用は、4億円となりました。
これらにより、IFRS(フル)ベースの営業利益は前年同期と比べ25.0%減少し(為替影響を除いた対前年同期増減率は△23.5%)、179億円となりました。
[中間利益]
金融収益は、9億円となりました。
金融費用は、12億円となりました。
法人所得税費用は、前年同期から14億円減少し、38億円となりました。これは主に、上述のIFRS(フル)ベースの営業利益の減少に伴う税引前中間利益の減少によるものです。
これらにより、中間利益は前年同期と比べ25.9%減少し、139億円となりました。
[親会社の所有者に帰属する中間利益]
親会社の所有者に帰属する中間利益は前年同期と比べ25.7%減少し、139億円となりました。売上収益に対するその比率は、10.1%となりました。
※1 Santenグループでは2015年3月期のIFRS適用を機に、IFRSによる業績(「IFRS(フル)ベース」)から一部の収益及び費用を控除した「コアベース」での財務情報を事業活動自体の収益性を示す指標として開示しています。IFRS(フル)ベースによる業績から以下の収益及び費用を控除し、コアベースの業績を算出しています。
・製品に係る無形資産償却費
・その他の収益
・その他の費用
・企業買収に係る費用
※2 EBITDA=〔営業利益〕-〔その他の収益〕+〔その他の費用〕+〔減価償却費〕で算出しています。
※3 欧州、中東及びアフリカです。
③キャッシュ・フローの状況
当中間連結会計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、136億円の収入(前年同期は283億円の収入)となりました。中間利益139億円、減価償却費及び償却費92億円、営業債権及びその他の債権の減少102億円、棚卸資産の増加61億円、並びに営業債務及びその他の債務の減少87億円などによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、96億円の支出(前年同期は45億円の支出)となりました。有形固定資産の取得による支出34億円及び無形資産の取得による支出60億円などによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、360億円の支出(前年同期は322億円の支出)となりました。自己株式の取得による支出278億円及び配当金の支払額65億円などによるものです。
以上の結果、現金及び現金同等物の中間連結会計期間末残高は、前連結会計年度末と比べ294億円減少し、636億円となりました。
(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当中間連結会計期間において、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりです。
中期経営計画(2025~2029年度)及び目標とする経営指標
Santenグループは2025~2029年度までの5年間を対象とした新たな中期経営計画を策定し、2025年5月に公表しました。
1.2035年までに目指す姿と実現に向けた事業の在り方
Santenグループは、2023年度に発表しました前中期経営計画(~2025年度)について構造改革などの施策を着実に遂行し、2025年度の数値目標を前倒しで達成しました。この度、Santenグループは、長期視点での戦略の展開と収益基盤のさらなる強化を通じた新たな成長軌道への転換を実現すべく、2035年までに目指す姿、及び2029年度までの中期経営計画(2025~2029年度)を策定しました。眼科領域に特化したグローバルカンパニーとして、高い確度での製品開発と確実な収益の確保で堅実なグローバル成長を追求し、製品価値の最大化による最適な眼科医療の提供と眼科医療や患者さんのニーズの深い理解に基づく眼科医療のイノベーションを軸として事業活動を展開します。
<Santenグループのビジネスモデル>
2.成長戦略
2029年度までの5年間において、これまで培ってきた強みを活かして、「Santenグループのビジネスモデル」の展開を全地域でさらに強化します。眼科市場をリードする企業としての信望を集め、持続的な成長基盤を確立するため、6つのイニシアチブを推進します。
<持続的な成長基盤確立に向けた6つのイニシアチブ>
■短中期売上成長
1.海外地域(EMEA・アジア・中国)におけるリーダーポジションの確立:
日本を含む全地域で市場成長率を上回る収益拡大により、プレゼンスを強化します。日本事業のリーダーポジションを堅持しながら、海外事業の力強い成長により、2029年度の海外事業売上比率は58%を目指します。
2.近視・眼瞼下垂疾患の市場創造と海外展開:
新領域となる近視・眼瞼下垂におけるRx市場を創出し、医師や医療機関が積極的に治療提供する環境を地域に即して整備します。近視は、「近視進行抑制点眼治療市場」を確立することで、小児の近視患者さんに対して、近視の進行自体を抑制し、近視による日常生活への負担や将来の目の不安を軽減すること、眼瞼下垂は、点眼薬で治療できる疾患として認知向上と新たな治療概念の普及を促進し、非侵襲的な「眼瞼下垂点眼治療市場」の確立を追求します。
■中長期売上成長
3.Rxポートフォリオ・パイプラインの強化:
本中期経営計画期間中の売上へ寄与する現行パイプラインの承認取得早期化やLCM(ライフサイクルマネジメント)を継続推進します。加えて、2030年度以降の持続的な成長につながるRxポートフォリオ・パイプラインの拡充に向け、事業開発のターゲット選定と機能・プロセスを強化すると共に、新たな点眼薬製剤技術の開発や新規モダリティにも挑戦します。
■事業基盤の継続強化
4.安定供給・サプライチェーンの整備:
新製品の需要増加を見越し、自社生産キャパシティ拡大と生産ネットワーク見直しにより、安定かつ柔軟な供給体制を強化します。
5.コストの持続的適正化:
多角的な原価最適化施策の推進、及び業務プロセス改革によるSG&Aの最適化を徹底します。
6.人材・組織とデジタル・ITの強化:
基本理念やビジョンを体現し成長に寄与する人材を最重要のアセットと位置付け、能力向上と人材を活かすことができる生産性の高い組織づくりを推進します。中長期での持続的な成長を見据え、デジタルの効果的活用、また全社のIT・セキュリティ基盤の強化により、事業の生産性と安定性を向上します。
3.2029年度における連結数値目標
■KPI
|
売上収益 |
4,000億円 |
|
コア営業利益 |
800億円 (EBITDA:900億円)1 |
|
ROE |
14%以上 |
|
EPS成長率 |
2桁成長2 (EPS:160円以上) |
|
株主還元 |
・38円/年を配当下限とし、配当性向40%を目安に増配 ・株価と余資の状況を勘案し、機動的に自社株買いを実施3 ・ROE、EPSの更なる上昇を企図 |
1 参考値
2 2024年度実績-2029年度目標CAGR
3 必要運転資金を450億円と定義し、一定期間留保された余資金を原資に実施
4.資本配分・株主還元
事業から創出されるキャッシュに加え、運転資金圧縮やグループ内の資金活用、資金需要に合わせた調達の活用により投資余力を最大化し、将来に向けた成長投資として、生産能力拡大に向けた設備増強とイノベーションを生み出す研究開発・事業開発へ優先的に資源を投下します。株主還元については、現在の年間38円の配当を下限値として、累進配当を継続することで利益成長に伴う増配により直接還元を行うとともに、機動的な自社株買いを通じた資本水準の最適化をはかり、ひいては、ROE、EPSの向上を企図します。
5.サステナビリティ
Santenグループは、社会への貢献と持続的な成長を実現するため、最重要マテリアリティ4つを含む以下の13のマテリアリティを強力に推進します。具体的な取り組みなどについては、今後、ウェブサイトなどを通じて開示していく予定です。
<社会と事業の持続的成長>
・目の健康に貢献する製品とサービスの創出*
・製品の品質保証と安定供給*
・製品の浸透と市場創造*
<事業基盤の強化>
・Santenで働く価値向上と人・組織の能力強化*
・高い倫理観を持った事業運営
・情報開示の透明性
・DE&I(ダイバーシティ・エクイティ & インクルージョン)の推進
・人権の尊重
・持続可能な調達
・情報セキュリティの確保
・デジタル・トランスフォーメーションの推進
・気候変動対策
・環境負荷低減
*最重要マテリアリティ
(3)研究開発活動
<緑内障・高眼圧症領域>
プロスタグランジンF₂α誘導体及びβ遮断剤の配合剤STN1011101(DE-111A、一般名:タフルプロスト/チモロールマレイン酸塩)は、中国で2025年8月に発売しました。
EP2受容体作動薬STN1011702(一般名:オミデネパグ イソプロピル)は、中国で2024年11月から第Ⅲ相試験を実施しています。
FP/EP3受容体作動薬STN1012600(DE-126、一般名:セペタプロスト)は、米国で2021年12月に追加の第Ⅱ相試験を終了しました。日本では2025年10月に発売しました。欧州では第Ⅱ相試験(探索的試験)を終了しました。
プロスタグランジンF₂α誘導体の乳化点眼剤STN1013001(DE-130A、一般名:ラタノプロスト)は、アジアで2024年11月に販売承認を申請しました。欧州ではスペインなどで2024年8月に発売しました。
ROCK阻害剤STN1013900(AR-13324、一般名:ネタルスジルメシル酸塩)は、日本でROCK/NET阻害剤として2025年7月に製造販売承認を申請しました。欧州では販売承認を取得しており、スウェーデンなどで2023年2月以降販売しています。アジアでは順次販売承認を取得しており、韓国で2024年11月に発売しました。
ROCK阻害剤及びプロスタグランジンF₂α誘導体の配合剤STN1014000(PG-324、一般名:ネタルスジルメシル酸塩/ラタノプロスト)は、欧州で販売承認を取得しており、ドイツなどで2023年1月以降販売しています。アジアでは順次販売承認を取得しており、シンガポールで2025年3月に発売しました。
ROCK阻害剤及びプロスタグランジンF₂α誘導体の配合剤STN1014003(一般名:ネタルスジルメシル酸塩/ラタノプロスト)は、日本で2025年2月に第Ⅲ相試験を開始しました。
<角結膜疾患(ドライアイを含む)領域>
春季カタルを対象とするSTN1007603(DE-076C、一般名:シクロスポリン)は、既に承認・販売されている欧州、アジアに続き、中国で2022年4月に販売承認を取得しました。
ドライアイを対象とするSTN1014100(一般名:オロダテロール塩酸塩)は、日本で2025年5月に後期第Ⅱ相試験を開始しました。
フックス角膜内皮ジストロフィを対象としてアクチュアライズ株式会社と共同開発契約を締結しているSTN1010904*(一般名:シロリムス)は、米国、フランス、インドで2022年5月から前期第Ⅱ相試験を実施しています。(*開発コード(STN1010904)は、第Ⅱ相試験終了時に当社が独占的実施権を獲得した後に附番予定のコードです。)
マイボーム腺機能不全を対象とするSTN1010905(一般名:シロリムス)は、日本で2024年6月から追加の前期第Ⅱ相試験を実施しています。
アレルギー性結膜炎を対象とする眼瞼クリーム製剤STN1011402(一般名:エピナスチン塩酸塩)は、日本で2024年5月に発売しました。
アレルギー性結膜炎を対象とする1日2回点眼の高用量製剤STN1011403(一般名:エピナスチン塩酸塩)は、中国で2025年3月に販売承認を申請しました。
<屈折異常領域>
小児における近視を対象とするSTN1012700(DE-127、一般名:アトロピン硫酸塩)は、日本で2025年4月に発売しました。中国では2022年6月から第Ⅱ/Ⅲ相試験を実施しています。アジアでは2025年7月に販売承認を申請しました。
小児における近視を対象とするSTN1012701(SYD-101、一般名:アトロピン硫酸塩)は、欧州ではドイツで2025年7月に発売しました。
<網膜疾患領域>
糖尿病黄斑浮腫を対象とするSTN1014300(RC28-E、一般名:eflimrufusp alfa)は、導入元であるRemeGen Co., Ltd.(中国)により中国で2025年9月に販売承認を申請しました。
滲出型加齢黄斑変性を対象とするSTN1014301(RC28-E、一般名:eflimrufusp alfa)は、導入元であるRemeGen Co., Ltd.(中国)により中国で第Ⅲ相試験が実施されています。
<その他の領域>
眼瞼下垂を対象とするSTN1013800(一般名:オキシメタゾリン塩酸塩)は、日本で2024年12月に製造販売承認を申請しました。欧州では2024年12月に第Ⅲ相試験を開始しました。中国では2024年10月から第Ⅲ相試験を実施しています。
※開発コードの附番方法変更に伴い、新開発コード(STNXXXXXXX)及び既存開発コード(DE-XXX)を併記しています。なお、AR-13324及びPG-324はAlcon Inc.(スイス)、SYD-101はSydnexis Inc.(米国)、RC28-EはRemeGen Co., Ltd.(中国)での開発コードです。
当中間連結会計期間のコアベースの研究開発費の総額は、124億円です。なお、IFRS(フル)ベースの研究開発費の総額については、コアベースからの調整はありません。
当中間連結会計期間において、新たに締結した重要な契約は以下のとおりです。
・RemeGen社と抗VEGF/FGF二重標的融合タンパク質であるRC28-E硝子体内注射剤についてライセンス契約を締結
Santenグループは、中国現地法人を通じて革新的な医薬品の研究開発と商業化に取り組む中国のバイオ医薬品企業である榮昌生物製藥(煙台)股份有限公司(中国、以下、RemeGen社)と、同社開発のRC28-E硝子体内注射剤についてライセンス契約を締結しました。この契約締結により、RemeGen社から中国本土、台湾、香港、マカオ、韓国、タイ、ベトナム、シンガポール、フィリピン、インドネシア、マレーシアを対象地域として、RC28-Eを開発、製造、販売する独占権を取得します。