当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は、
1.社会に対し、食を通じて健康と豊かな食生活を提供する
2.コンプライアンス精神に基づいた事業活動を行い、社会的責任を果たす
3.フレキシビリティのある、かつ創造力に溢れた企業として発展する
4.事業活動の視点・範囲を海外にも向け[世界の理研ビタミン]としてのブランドを高める
5.人間尊重の思想に基づき魅力ある職場をつくる
の経営理念のもと、創業以来一貫して「天然物の有効利用」を事業展開の根幹に据え、独自の技術力・開発力を通じて食品・食品用改良剤・化成品用改良剤・ビタミンの各分野において多彩な製品を創り出し、日本のみならず世界各地にお届けしてまいりました。
当社グループを取り巻く事業環境は、米国の政権交代に伴う政策転換、欧州や中東の地政学リスク、金融資本市場の変動、物価上昇などによる各国経済状況の先行き不透明感が強まっている状況です。このような状況において、これらの変化に対応していくことが重要であり、当社グループ各社とのさらなる連携のもと、的確かつ機動的な意思決定を行うことが強く要請されていると認識しております。
加えて、社会の信頼に応える公正で透明性の高いコンプライアンス体制、企業グループ全体での健全な事業運営を推進する上でのガバナンス体制のより一層の向上が求められております。
食品業界におきましては、国内市場では原材料価格や人件費をはじめ各種コストの上昇により価格転嫁が進んでいます。物価上昇で消費者の節約志向がますます強まっていく中、原材料価格、人件費、物流費等が今後も上昇していくことが想定され厳しい環境が続くものと予測されます。このような激しい事業環境の変化に対し、顧客のニーズに合った製品・サービスを機動的かつ的確に提供していくことが重要と認識しております。また、サステナビリティの観点からフードロス(食品ロス)問題への取組みも重要であると認識しています。成長が見込める海外市場においても、米国の政権交代に伴う政策転換、物価上昇等により各国経済の減速も予測されます。
このような事業環境下、当社グループは成長ドライバーと位置付けるアジア・北米市場への取組みを強化してまいります。アジア市場におけるさらなる営業体制の強化のために、新たな販売子会社(RIKEVITA(THAILAND)CO., LTD.(タイ)およびRIKEVITA VIET NAM CO., LTD.(ベトナム))を設立しました。また、製造子会社である天津理研維他食品有限公司(中国)やGUYMON EXTRACTS INC.(米国)の生産能力増強による生産体制の強化を進め、事業の展開を加速してまいります。
当社グループでは、従前より3年間を対象とする中期経営計画を策定しております。本年4月より2028年3月までの3年間を対象とする新中期経営計画を策定しました。
新中期経営計画の概要は以下のとおりであります。
(1)中長期ビジョンと新中期経営計画の位置づけ
当社グループは、2030年度をゴールとする中長期ビジョン「持続可能な社会をスペシャリティな製品とサービスで支え、成長する会社になる」を掲げていますが、今回、中長期ビジョンのゴール年度を変更し、10年後の2034年度に営業利益135億円、海外売上高比率35%、ROE10~12%という定量目標を定めました。この目標達成に向け、新中期経営計画では前中計の2.5倍となる250億円の設備投資を行います。国内では老朽化や人手不足に対応し生産性向上と省人化のための投資に注力します。また、海外ではスペシャリティ製品の生産拡大に向けた投資に加え、生産・販売・開発・管理部門が国内外の垣根を取り払い、海外事業成長に向けた新体制構築に取り組みます。
あわせて、バランスシートや株価を意識する経営にシフトし、株式市場との対話を進めることで、中長期的な企業価値向上を目指します。
(2)経営目標・キャッシュアロケーション
①経営目標
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2025年3月期実績 |
2028年3月期目標 |
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成長性 |
売上高 |
955億円 |
1,100億円 |
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収益性 |
営業利益 |
87億円 |
100億円 |
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EBITDA* |
119億円 |
142億円 |
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効率性 |
ROE |
12.1% |
10%以上 |
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株主還元 |
配当性向 |
30.3% |
40%以上 |
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財務規律 |
自己資本比率 |
70.1% |
60~65% |
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ガバナンス |
政策保有株式純資産比率 |
19.0% |
10%未満 |
為替前提:150円/$
*EBITDA:営業利益+減価償却費
②キャッシュアロケーション
・営業キャッシュ・フロー、政策保有株式縮減による売却益と現預金を活用し、積極的な投資と株主還元を実行
・インオーガニックも含めた戦略投資は必要に応じて負債を活用
(3)事業戦略
①事業環境認識
②国内食品事業
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2025年3月期実績 |
2028年3月期目標 |
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売上高 |
648億円 |
719億円 |
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営業利益 |
66億円 |
75億円 |
・加工食品市場全体より少し高い伸び率を目指す
・生産性向上・省人化のための設備投資
・家庭用食品:市場創造型商品の開発・育成、既存商品群の活性化
・業務用食品:中食・即食市場、人手不足に起因して拡大する新市場への提案強化
・加工食品用原料等:調達不安定な原料の代替機能、生産効率向上、フードロス削減につながる提案強化、健康関連市場への提案強化
③国内化成品その他事業
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2025年3月期実績 |
2028年3月期目標 |
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売上高 |
79億円 |
97億円 |
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営業利益 |
8億円 |
9億円 |
・得意分野に絞り込んだ国内市場の深掘り
・海外展開する日系企業への提案強化
④海外事業
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2025年3月期実績 |
2028年3月期目標 |
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売上高 |
241億円 |
300億円 |
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営業利益 |
11億円* |
16億円 |
* セグメントの利益調整額の計算方法を変更(2025年3月期実績は遡及適用した数値)
・スペシャリティ品の市場拡大局面に備え、スピード感を重視した先行投資を行う
・基幹工場であるRIKEVITA(MALAYSIA)SDN.BHD.に投資額を重点配分
・国内部門を巻き込み、新体制を構築
・中国で生産ラインを再編し、新工場の早期稼働率拡大に注力
(4)非財務戦略
・社会課題の解決につながる中長期的な研究開発
・人財方針にもとづく人事制度の構築
・グループ・ガバナンス強化
米国の政権交代に伴う政策転換、金融資本市場の変動、人件費や物流費等の各種コストアップなど先行き不透明な事業環境においても、中長期ビジョン「持続可能な社会をスペシャリティな製品とサービスで支え、成長する会社になる」の実現に向け、新中期経営計画初年度の取組みを推進してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する考え方
当社グループは中長期ビジョン「持続可能な社会をスペシャリティな製品とサービスで支え、成長する会社になる」の実現に向け、経営戦略とサステナビリティ課題への取組みとの一体化を目指しています。
(2)ガバナンス
当社グループでは、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、サステナビリティ課題への取組みを進めています。サステナビリティ委員会では、テーマごとに「TCFD」「GHG削減」「ダイバーシティ」「人権」「サステナブルテーマ推進」の部会を設けて議論し、取締役会に適時報告しています。取締役会では委員会の活動内容や施策の進捗などを監督し、必要な場合は委員会への指示などを行っています。
(3)リスク管理
当社グループは業務執行に係るリスクの評価、予防および発生時の対処のためにリスク管理委員会を設定しています。サステナビリティに関連するリスクについても、リスク管理委員会を中心とする全社的なリスク管理体制に統合されています。
(4)気候変動への対応(TCFD提言に基づく情報開示)
①気候変動に関する考え方
当社グループは農産物や水産物を主要な原材料として使用しており、気候変動への対応を重要な経営課題と認識しています。この認識に基づき、当社は2022年4月にTCFD提言への賛同を表明しました。気候変動に伴うリスク・機会の分析と対応策の検討はサステナビリティ委員会の下部組織であるTCFD部会が行い、適切な開示に努めています。
②戦略
当社グループは植物油脂や海藻など、さまざまな天然物を原料として、製品を製造・販売しています。植物油脂関連原料のほとんどは海外から輸入されたものを商社や油脂メーカーから購入し、当社の工場で乳化剤などの製品に加工して、お客さまにお届けしています。また、海藻関連製品の原料の多くを占める養殖わかめは、養殖期間中の天候や、海水の温度および栄養状態によって生産量が大きく変動します。このため、気候変動は事業の継続性という観点からも、重要な経営リスクであると認識しています。2022年度に当社事業のうち、植物油脂を主要原料とし国内外で生産する「改良剤」、および海藻・ドレッシング・スープなど国内で生産する「食品」についてシナリオ分析を進めました。シナリオ分析にあたっては、パリ協定の目標である1.5℃/2℃シナリオと、温暖化が進行する4℃シナリオを中心に財務影響度を評価しました。その結果、移行・物理的リスクの両面で原料調達に及ぼす影響と、物理的リスクが生産拠点に及ぼす影響が大きいことがわかりました。2023年度から対応策の検討を進めており、中長期の事業戦略に反映していきます。
[各シナリオにおける主要なリスクと機会]
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想定リスク/機会 |
変動要因 |
事業への影響 |
2030年度の 財務影響度* |
既存の取り組み |
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1.5℃ /2℃ |
4℃ |
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移行リスク / 機会 |
政策・法規制 |
炭素税の導入 |
全般的なコストの上昇 |
小 |
小 |
・省エネ活動の徹底 ・再エネの導入 ・バイオマス燃料の活用 |
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技術 |
脱炭素設備・生産方法への置き換え |
生産体制の脱炭素化に向けた大規模な設備導入による設備投資費用の増加 |
中 |
小 |
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市場 |
バイオマス燃料の需要拡大 |
植物油調達コストの上昇、代替商品開発コストの発生 |
中 |
小 |
・調達地域の複数確保 ・代替商品の研究開発 |
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持続可能性を重視した顧客の購買行動 |
パーム油などの認証品調達コストの上昇 |
小 |
小 |
・徐々に増加する顧客ニーズへの対応 |
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評判 |
エシカル消費の拡大 |
持続性に配慮した製品に対応できなかった場合の売上高減少 |
小 |
小 |
・市場ニーズの変化に対応した商品開発 ・多角的な経営を行うことによるリスク分散 ・各事業分野で高付加価値製品の開発・拡販による差別化 |
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<機会> 植物由来化成品用改良剤の需要増加(環境対応プラ・化粧品) |
小 |
小 |
・環境対応製品の提案強化 |
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物理的リスク / 機会 |
気温/海水温の上昇 |
原材料の生産量減少 |
調達コストの上昇、調達先切替コストの発生、代替商品開発コストの発生 |
中 |
大 |
・複数の安全かつ安定的な供給先確保 ・長期見通しに基づく原料切替 ・計画的な在庫確保 ・顧客とのリスク情報共有 |
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<機会> 気候変動に対応した種苗供給による海藻の安定調達 |
小 |
小 |
・わかめの良い種づくりと、良い種の安定供給 ・わかめ以外の海藻への研究範囲拡大 |
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水調達リスク |
生産拠点の水ストレス悪化 |
原材料調達先の操業停止、生産拠点の操業停止による売上高減少 |
小 |
小 |
・調査継続 |
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異常気象の激甚化 |
洪水・豪雨の頻度上昇 |
サプライチェーンの寸断、生産拠点の操業停止による売上高減少 |
小 |
中 |
・事業継続計画(BCP)の見直し ・安否確認システムの導入 ・従業員に対する訓練・マニュアル配布による啓発 ・設備の耐震補強 |
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生産拠点の固定資産への被害発生による既存資産の減損および新規資産取得に伴う再投資 |
小 |
小 |
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*財務影響度 大:売上高比率10%以上、金額100億円以上、経常利益比率30%以上、金額30億円以上
中:売上高比率5%以上10%未満、金額50億円以上100億円未満、経常利益比率15%以上30%未満、
金額15億円以上30億円未満
小:売上高比率5%未満、金額50億円未満、経常利益比率15%未満、金額15億円未満
※2025年度目標値(売上高1,000億円、経常利益90億円)をベースに算出
③指標と目標
当社グループは2030年度までにグループのGHG排出量(Scope1・2)を2018年度対比で40%削減、2050年度に実質排出ゼロにするカーボンニュートラルを目指しています。2023年度からはScope3の算定にも着手しています。排出量の多いカテゴリについて算定を進めるとともに、GHG排出量削減目標の再設定を検討していきます。
(5)人的資本への対応
以下の人的資本に関する記載は、当社に限定した内容です。グループ全体の人的資本への対応については課題と捉えており、取組みを進めます。
①人財方針
当社は経営理念の一つとして「人間尊重の思想に基づき魅力ある職場をつくる」ことを掲げています。バイタリティに溢れた企業として、社員一人ひとりの創意工夫を尊重する考え方に基づき、2025年1月に「人財方針」を定めました。
[人財方針]
・個性を尊重し、高めあうこと
・主体的に考え、行動すること
個性にはダイバーシティ(多様性)と経験・知識・スキルがあり、生まれ持ったものだけでなく、入社後の様々な経験を通じて伸ばすことができます。この個性の伸長は、当社の永続的な発展に欠かせません。当社では、個性を持つ人々が集まり、対話し、協働することで企業価値が高まると考えています。当社では、この個性を人財の「スペシャリティ」と呼びます。
また、変化が激しく予測困難な時代には、知的好奇心を強く持ち、新しい物事に前向きに挑戦する姿勢が求められます。指示待ちにならずに自ら率先して責任感を持って問題に取り組むことで、人財の成長が促進されます。
人財方針は当社の中長期ビジョンを達成するために非常に重要です。人財方針を指針として取り組むことで、人財の「スペシャリティ」向上や、組織の活性化に繋がり、永続的に成長できる企業風土が醸成されることを期待しています。
[人財方針体系図]
②人財育成
当社では、個性は生まれ持ったものだけでなく、入社後の様々な経験を通じて伸ばすことができると考えています。そのため、当社では経験や知識・スキルを広げるための人財育成に力を入れています。
(ア)「人財最適化検討会」による人財配置と育成プラン(ジョブローテーション)
経営戦略に対する人財戦略・人財育成のため人事担当役員をトップに各部門幹部と人事部で「人財最適化検討会」を開催しています。
入社後さまざまな経験を積むことで、個性を伸ばし豊かな発想力・幅広い視点を培えるよう、計画的な採用や戦略的なジョブローテーション(部署間/部門間/拠点経験/海外経験)について、定期的に議論し『経験値の高い人財育成・後継者育成』を図っています。
社員自身も年に一度、自らのキャリアの棚卸しと今後のキャリアプランについて「自己申告」を行い、この意見も人財配置に生かしています。
(イ)経験値の高い人財育成・後継者育成
○グローバル人財の育成
当社では海外事業を成長ドライバーと位置づけており、海外事業または関連事業の従事者、およびその候補者を成長に不可欠な「グローバル人財」と定義しています。
2024年度末時点でのグローバル人財比率は13.0%であり、2030年度までにこれを20%に引き上げることを目標としています。
早期に海外体験をすることで興味を引き出し、視野が広がることを目的として、入社1年目の社員を対象とした「海外フレッシュ研修」を実施しています。さらに、年齢制限を設けずに社員全員を対象とした「グローバル人財育成制度」を導入しています。
また、英語に限らず、多言語の通信教育や語学学校の通学費用を補助しています。海外赴任が決定した際には、赴任先に応じたプログラムを赴任前研修で実施しています。
○教育訓練の強化と自己啓発支援制度
当社の人財育成の主軸は「職場内研修(OJT)」と「自己啓発」です。さらに、人事部が主催する年次・等級・役職別の経営幹部研修・階層別研修を通じて、各階層に適したマインドや一般教養、スキルの獲得を支援しています。
特に、自己啓発においては「主体的に考え、行動すること」の方針に基づき、知的好奇心を持って主体的に学ぶことを支援する「自己啓発支援制度」を設けています。この制度を通じて得た学びが現場で実践され、長期的な成果につながることを期待しています。
[自己啓発支援制度]
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特別公開講座 |
・公募型で自主的にチャレンジできる当社で最もハイレベルな自己啓発支援制度。 ・中長期にわたる外部ビジネススクールに参加し、高度なビジネス知識を身につけるとともに、社外の方々と情報を共有することで、レベルアップを目指します。 ・マネジメント系講座と専門分野系講座の選択肢があります。 |
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会社奨励資格 |
・会社で奨励されている100以上の資格に合格すると、受験料が全額補助されます。 ・これらの資格は、所属部門に関係なく全て補助対象です。 |
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通信教育講座 |
・約150の自己啓発コースから、自分の業務に関連するスキルアッププログラムを選んで受講できます。 ・受講料は最高50,000円まで補助されます。 |
③働きがい(社内環境整備)
当社では、個性を持つ人々が集まり、対話し協働することで企業価値が高まると考え、そのための環境整備に取り組んでいます。
(ア)ダイバーシティ&インクルージョン
当社では2015年度から「ダイバーシティ推進」を掲げ、企業価値向上に向けて多様な人財の採用・育成を進め、誰もが働きやすい環境を整備しています。また、多様な経験や考えを持つ従業員が互いに意見を言い合える、心理的安全性の高い職場づくりに取り組んでいます。これによりイノベーションを促進し、新たな価値を創造する企業を目指しています。
2024年度は、経営幹部を対象に「心理的安全性」をテーマとした研修を実施し、全社への展開を図りました。
サステナビリティ委員会では「ダイバーシティ部会」を設置し、ダイバーシティ&インクルージョンの推進といった課題について定期的に議論を行っています。また、グループ全体でコンプライアンス意識の向上に努め、不当な差別や各種ハラスメントを根絶し、お互いのプライバシーを尊重する職場作りを行っています。
[ダイバーシティスローガン]
○女性活躍の取り組み
当社が中長期ビジョンを実現し持続的な成長を行うためには、多様な視点のもとに意見を言い合える風土づくりが重要であり、女性社員においては組織運営の参画等、より一層の活躍が必要と認識しています。このため、女性活躍の推進をダイバーシティ課題の重要事項と認識し、ダイバーシティ部会で議論する重点テーマに位置付けています。
これらの状況を踏まえ、女性がより責任のある立場で活躍することを目指し、一般事業主行動計画(2024~2026年度)において下記4項目の目標値を定め、教育研修や制度の改善を図ることとしています。
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2024年度 実績 |
目標 |
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なお、2024年度の男女の賃金の差異は正規雇用労働者で73.4%と、2023年度の69.0%(2022年度66.9%)と比較して改善されました。引き続き女性活躍の推進を行うことで、更なる改善が図られるものと考えています。
また、女性活躍においては、「仕事と家庭の両立支援」ならびに「男性の家庭への参画」を推奨しています。
特に「男性の育児参画」に重点を置き、男女ともに両立支援制度を取得しやすくするためのガイドブック作成や研修会を通じて育児休業取得を推進した結果、2025年3月末時点の厚生労働省の算定方法による男性の育児休業等(育児目的休暇を含む)取得率は96.2%となり、目標である100%には到達しなかったものの高い数値となりました。
法改正に伴い分割取得など育休の取得方法の多様化が進んできたことから、各個人で自分らしいキャリアの実現を推奨し、平均取得日数の目標値を「1カ月以上」に定めました。
管理職に制度への理解を促し、雇用形態や性別を問わず、従業員誰もが育児休業を取得できるよう利用を一層奨励するとともに、環境整備に努めています。
○仕事と家庭の主な両立支援制度
当社では1994年から、全従業員が仕事と家庭を両立できるよう、育児・介護などの両立支援制度を設けています。現在は、ダイバーシティ推進の一環として、多様なライフイベントに左右されず、『だれもが“働きやすく×働きがいのある”職場環境で全員活躍』を目指しています。
仕事と家庭の両立支援制度は、育児・介護休業、育児・介護短時間勤務、育児・介護フレックスタイムのほか、全社員を対象に、在宅勤務、カムバック制度等の多様な働き方を選択可能にし、ワークライフバランスを推進しています。
(イ)健康経営の推進
当社は2018年度に「健康経営」を導入しました。代表取締役社長をトップに、人事部と総務部が推進部門となり、健康保険組合と共同で取り組んでいます。
従業員とその家族の日頃の健康を保持・増進することで活発な職場環境を維持・推進し、仕事の活性化を図ることを目的として、アブセンティーズム(心身の不調による欠勤)やプレゼンティーズム(健康状態による生産性低下)、ワークエンゲージメント(仕事に対する積極的な姿勢)の改善に取り組んでいます。
健康施策の具体例としては、食への取組みとして自社商品である「わかめ」の社員食堂での提供や、禁煙への取組み、ストレスチェック実施後の管理者教育の強化などを行っています。
健康経営の継続的な取組が評価され、2025年3月には経済産業省と日本健康会議が共同で主催する「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」に4年連続で認定、その中で上位500位に与えられる「ホワイト500」にも2年連続で認定されました。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)市況変動のリスクについて
当社グループは国内外で事業を展開しておりますが、中でも食品事業は消費動向や販売先の業界の需要動向の影響を受けやすい傾向にあります。特に国内食品事業においては、人口減少、少子高齢化による市場縮小が進み、競合他社による新商品の投入や販売促進活動によりますます競争が激しくなっております。今後、更に市場の縮小が深刻になった場合や、経済状況及び業界の需要動向に想定外の変動があった場合には当社グループの業績と財政状態に悪影響を与える可能性があります。
これに対し当社グループでは、食品事業において市場ニーズの変化に対応した商品開発に注力するだけでなく、コア技術の水平展開を基盤として改良剤事業、ヘルスケア事業、化成品その他事業、海外事業といった多角的な経営を行うことでリスクの分散を図り、かつそれぞれの事業分野において高付加価値製品の開発・拡販により差別化を図ることに継続して努めております。
(2)安全性のリスクについて
食品をはじめとする当社が事業を営む業界においては、これまでも鳥インフルエンザ・口蹄疫・ノロウイルス等の感染症や放射能汚染等さまざまな事案が発生しております。品質については万全を期しておりますが、当社グループの取組みの範囲を超える事態の発生により、製品・商品の回収や多額の製造物賠償責任が生じた場合には、当社グループの業績と財政状態に悪影響を与える可能性があります。
これに対し当社グループでは、世界的に認められた品質管理システム(ISO、HACCP、FSSC等)に従って各種製品を製造するとともに、原材料から製品及び仕入商品について自主検査体制やトレーサビリティシステムを構築するなど、品質保証体制の強化に努めております。
(3)原材料の調達リスクについて
当社グループで使用する天然物を中心とする原材料は国内外から幅広く調達しておりますが、市況の急激な変動、原産地における天候、需給バランス、社会情勢などの変化や、自然災害の発生により、安定的な価格や品質及び十分な調達量を確保出来なくなった場合には、当社グループの業績と財政状態に悪影響を与える可能性があります。
これに対し当社グループでは、安全かつ安定的な供給先を複数確保することに努め、特定の調達先への集中を回避すると共に、計画的な在庫確保を行うことでリスクの低減を図っております。
(4)為替変動のリスクについて
当社グループは全世界で事業展開しているため、外国為替相場の変動により当社及び連結子会社が外国通貨で販売する製品及び調達する原材料に、取引リスクという形で影響を与える可能性があります。
これに対し当社グループでは、為替予約取引等によりリスクの低減を図っておりますが、急激な為替変動が生じた場合は当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、連結財務諸表作成のために在外子会社の財務諸表を円貨に換算しているため、換算リスクという形で為替変動の影響を受けます。
(5)知的財産権のリスクについて
第三者が当社の知的財産権を侵害した場合、或いは当社が意図せずして第三者の知的財産権を侵害した場合には、当社ブランド価値の低下、訴訟費用や賠償費用の発生等により当社グループの業績と財政状態に悪影響を与える可能性があります。
これに対し当社グループでは、法務部及び関連部門が連携して当社商品に関連する知的財産権の取得及びノウハウ化等を行い、当社商品の保護に努めています。また、第三者による当社の知的財産権の侵害予防、侵害者への警告等を行うとともに、第三者の知的財産権を尊重した商品開発及び営業活動を推進しております。
(6)情報、管理システムのリスクについて
大規模災害(自然災害含む)、機器障害、情報システムへの不正なアクセスや予測不能なウイルスの侵入、その他不測の事態の発生により、情報システムが一定期間使用できなくなった場合には、当社グループの業績と財政状態に悪影響を与える可能性があります。
通常時はもとより、上記のような有事が発生した場合に備えて、当社グループでは、開発・生産・販売・物流等の情報システムについて適切な管理体制をとり運営するとともに、重要な情報の紛失、誤用、改ざん等を防止するため、情報システムを含め、情報管理に対して適切なセキュリティ対策を実施するよう努めております。
(7)自然災害等のリスクについて
当社グループは、国内外に複数の製造拠点を有しておりますが、当該地域において大規模な地震や風水害等の自然災害の発生により製造設備に重大な被害を受けた場合や、新型インフルエンザ等の生命・健康に重大な影響を及ぼす感染性疾病が流行拡大して人員確保が困難になった場合には、操業停止に伴う製造能力の低下と売上高の減少、設備修復費用の発生などにより、当社グループの業績と財政状態に悪影響を与える可能性があります。
当社グループでは、大規模地震及び新型インフルエンザ等に対応する事業継続計画(BCP)を策定して有事に備えると共に、リスク管理委員会の活動を通して安否確認システムの導入や設備の耐震補強、必要物資の備蓄強化、従業員に対する訓練やマニュアル配布による啓発等を行うなど社内体制を整備し、リスクの低減を図っております。
(8)法的規制のリスクについて
当社グループは、事業を運営する上で、食品衛生法、JAS法、薬事法、環境リサイクル関連法規等、さまざまな法的規制の適用を受けております。また、日本のみならず、事業を展開する各国の関係法令、規制等の適用も受けております。これらの法令、規制等が変更された場合、又は予期し得ない法的規制等が新たに導入された場合、当社グループの業績と財政状態に悪影響を与える可能性があります。
これに対し当社グループでは、各担当部門がコンプライアンスの遵守及び強化を第一義に、情報収集力の強化と法規制対応に注力しています。
(9)海外事業におけるリスクについて
当社グループは、日本国内のみならず、世界各地においても事業を展開しており、これまで挙げたリスクは海外事業についても同様に存在すると捉えております。
特に現在は米中両国間の貿易摩擦や新型感染症の流行等に起因する世界経済の減速について注視する必要があると共に、グローバルに事業を展開していく上では、言語、地理的要因、法制・税制度を含む各種規制、自主規制機関を含む当局による監督、経済的・政治的不安、食習慣、宗教の違い等のさまざまな潜在的リスク、特定の国や地域又はグローバルにおいて競争力を有する競合他社との競争が熾烈化するリスク、更には外国政府及び国際機関により関係する諸規制が突然変更されるリスクや、カントリーリスクを含む信用リスクについても常に注視していく必要があり、これらリスクが顕在化した場合は当社グループの海外事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
これらリスクは完全に回避できない可能性もありますが、当社グループでは、当該リスクが顕在化する前に適切な対応が図れるよう情報収集に努め、リスク管理意識を高めると共に、社内規程に基づいた活動やリスクヘッジ対応を進め、有事においては構築済みの危機管理体制の中で迅速かつ的確に対応してまいります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績の概況
当社グループは、中長期ビジョン「持続可能な社会をスペシャリティな製品とサービスで支え、成長する会社になる」を掲げています。2022年4月より2025年3月までの3年間を対象とした中期経営計画において、①経営基盤(ガバナンス)の強化、②アジア・北米での展開を加速、③国内の深掘りと新領域への挑戦、④サステナブル経営の推進を基本方針として、持続的な企業価値の向上に取り組みました。
当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日)における当社グループの事業環境は、日本国内において旅行や外食およびインバウンド消費の伸びが継続した一方で、物価上昇によって消費者マインドの低下がみられました。海外の景気はおおむね堅調であったものの、金融資本市場の変動やアメリカの通商政策による影響など、不確実性の高い状況が続きました。
このような中、当連結会計年度の売上高は、国内食品事業、国内化成品その他事業、海外事業のいずれも前期実績を上回り、955億82百万円(前期比40億98百万円、4.5%増)となりました。
また、利益面では営業利益が87億24百万円(前期比6億46百万円、6.9%減)、経常利益が94億17百万円(前期比8億78百万円、8.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は93億88百万円(前期比6億32百万円、7.2%増)となりました。
セグメント毎の経営成績の概況
〔国内食品事業〕
『家庭用食品』は、前期比で増収となりました。
海藻商品は「わかめスープ」の販売数量が減少したものの、「ふえるわかめちゃん®」は2024年8月の価格改定の効果もあり販売金額が前期を上回りました。「ふりかけるザクザクわかめ®」シリーズは下期に米価格高騰の影響を受けたものの年間では伸長し、前期比で増収となりました。
ドレッシングは「インドカレー屋さんの謎ドレッシング®」、2024年8月発売の「洋食屋さんのただただおいしいドレッシング」が実績に貢献しましたが、主力の「リケンのノンオイル」シリーズの販売金額が減少し、前期比で若干の減収となりました。
食塩無添加のだしの素「素材力だし®」は、最大の提供価値である食塩無添加を強調したテレビCMを実施するなどのコミュニケーション施策に注力した結果、販売数量、販売金額とも前期を上回りました。
また、2024年8月に発売した時短・簡便のニーズに対応したスープカテゴリーの新商品「割るだけスープ」シリーズも実績に寄与しました。
『業務用食品』は、前期比で増収となりました。
品目整理を進めた一部の商品群や海藻類、ドレッシングの実績が減少しましたが、外食産業での新規提案品の採用などにより、調味料類を中心に販売が伸長しました。また、コスト上昇に対応した価格改定が増収に寄与しました。なお、事業の見直しにより、2025年2月末に自社運営の通販事業「リケンダイレクト」を終了しました。
『加工食品用原料等』は、前期比で増収となりました。
フードロス問題への対応など多様化する顧客ニーズに合わせた食品用改良剤の提案強化により、販売数量は堅調に推移しました。また、機能性食品用原料の販売が伸長しました。
利益面では、増収による売上総利益の増加があったものの、広告宣伝費や人件費、物流費などの増加により前期比で減益となりました。
〔国内化成品その他事業〕
『化成品(改良剤)』では、化学工業用分野(プラスチック・食品用包材・農業用フィルム・ゴム製品・化粧品など)において、顧客ニーズをとらえたソリューションビジネスを展開しています。一部の業界での需要回復により販売数量が増加し、前期比で増収増益となりました。
『その他』の事業では、飼料用油脂の販売が減少し、前期比で減収となりました。
〔海外事業〕
海外事業では、主に食品用改良剤、化成品用改良剤を世界各地に販売しています。販売数量を意識した販売戦略を実行したことにより、東南アジア、ヨーロッパ、中国で販売数量が伸長しました。さらに為替の影響もあり、前期比で増収となりました。なお、北米で2024年春にアプリケーションセンターを設立したほか、2025年にはタイとベトナムで新たな販売子会社を設立しました。
利益面では、販売数量を意識した販売戦略を進めたことや、人件費や物流費が増加したことにより、減益となりました。
中期経営計画との比較分析
当社グループは2022年4月より2025年3月までの3年間を対象として中期経営計画を策定しており、当連結会計年度は最終年度にあたります。
中期経営計画最終年度の目標は、売上高940億円、営業利益80億円、経常利益82億円、親会社株主に帰属する当期純利益65億円としておりましたが、当連結会計年度の実績は売上高および各段階利益で目標を上回りました。
売上高について、国内食品事業では家庭用食品は一部既存品が苦戦も「素材力だし®」が好調に推移し新商品も実績に貢献しました。業務用食品では価格改定の浸透に加え外食ユーザー向け販売が伸長しました。加工食品用原料等では価格改定や食品用改良剤の提案強化に加え、機能性食品用原料の販売が好調に推移しました。その結果、国内食品事業は、目標を上回る実績となりました。一方、国内化成品その他事業では、価格改定の浸透も需要回復が一部の関連業界に留まり、目標を下回る実績となりました。各国経済状況の先行き不透明感が強まっている海外事業では、為替変動に伴う増収効果も、原材料価格が中計開始時期より落ち着いたことによる価格対応もあり、目標を下回る実績となりました。その結果、連結全体では、955億82百万円と目標を上回りました。
営業利益は、原材料価格および人件費をはじめ各種コストの上昇に対応した価格改定および費用の効率的使用を推進した結果、連結全体で87億24百万円と目標を上回りました。
また、親会社株主に帰属する当期純利益は93億88百万円と目標値を大幅に上回りましたが、中計目標の一つである政策保有株式の連結純資産比率20%未満の達成に向け投資有価証券を売却し、売却益41億12百万円を計上したことによるものです。
なお、2025年4月より2028年3月までの3年間を対象とした新中期経営計画の最終年度である第92期の目標数値は、売上高1,100億円、営業利益100億円、経常利益105億円、親会社株主に帰属する当期純利益92億円としております。
目標とする経営指標との比較分析
当社グループは、持続的成長と資本効率向上の尺度として自己資本利益率(ROE)の向上を追求しております。中期経営計画最終年度である当連結会計年度はROE8.0%以上を目指し取組みを推進しました。
当連結会計年度のROEは12.1%と目標を上回りました。営業利益が目標を上回ったこと、多額の投資有価証券売却益を計上したこと等が寄与し、親会社株主に帰属する当期純利益が目標を大幅に上回ったことによるものです。
なお、新中期経営計画最終年度の目標ROEは10%以上を目指してまいります。
(2)財政状態の概況
当連結会計年度末の総資産は1,129億99百万円となり、前連結会計年度末に比べ57億76百万円減少しました。主な増加は、建設仮勘定19億96百万円、棚卸資産10億29百万円であり、主な減少は、投資有価証券64億41百万円、受取手形及び売掛金11億51百万円、現金及び預金10億85百万円であります。
負債は337億99百万円となり、前連結会計年度末に比べ83億33百万円減少しました。主な増加は、長期借入金24億26百万円であり、主な減少は、短期借入金85億65百万円、支払手形及び買掛金17億12百万円、繰延税金負債8億18百万円であります。
純資産は792億円となり、前連結会計年度末に比べ25億56百万円増加しました。主な要因は、利益剰余金が親会社株主に帰属する当期純利益の計上で93億88百万円増加し、剰余金の配当で27億79百万円減少したことによるものであります。また、自己株式の消却により、資本剰余金が4百万円、利益剰余金が71億25百万円、自己株式が71億30百万円それぞれ減少しております。
(3)キャッシュ・フローの概況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は188億35百万円となり、前連結会計年度末に比べ13億6百万円減少しました。
営業活動によるキャッシュ・フローは78億92百万円の収入となりました。主な増加は、税金等調整前当期純利益127億6百万円、減価償却費32億4百万円、売上債権の減少額14億82百万円であり、主な減少は、投資有価証券売却益40億55百万円、法人税等の支払額21億13百万円、仕入債務の減少額19億82百万円であります。
投資活動におけるキャッシュ・フローは3億53百万円の収入となりました。主な増加は、投資有価証券の売却による収入49億90百万円であり、主な減少は、有形固定資産の取得による支出46億78百万円であります。
営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは82億45百万円の純収入となっております。
財務活動によるキャッシュ・フローは99億65百万円の支出となりました。主な増加は、長期借入れによる収入50億円であり、主な減少は、長期借入金の返済による支出71億38百万円、短期借入金の純減少額40億円、配当金の支払額27億76百万円、自己株式の取得による支出11億33百万円であります。
当社グループの資金需要は、製品の製造販売に関わる原材料費やエネルギー費、営業費用などの運転資金、設備投資資金及び研究開発などであります。資金調達は主としてフリー・キャッシュ・フロー及び銀行借入により十分な資金を確保しております。これらに加えて、国内金融機関と借入枠60億円の貸出コミットメントライン契約を締結することにより財務の安定性及び流動性を補完しております。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(5)生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
国内食品事業 |
62,111 |
101.9 |
|
国内化成品その他事業 |
6,682 |
104.3 |
|
海外事業 |
22,951 |
110.5 |
|
合計 |
91,745 |
104.1 |
(注)金額は生産者販売価格で算出しており、セグメント間取引については相殺消去しております。
b.受注実績
当社グループは一部の製品について受注生産を行っておりますがウエイトも小さく、大部分の製品は販売計画に基づく生産計画に従った見込生産を主体としております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
国内食品事業 |
64,821 |
102.6 |
|
国内化成品その他事業 |
7,959 |
102.7 |
|
海外事業 |
22,801 |
110.8 |
|
合計 |
95,582 |
104.5 |
(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。
2.セグメントの各事業内容は次のとおりであります。
国内食品事業 …………… 一般家庭向け加工食品、業務用市場向け加工食品、食品業界向け加工食品用原料・食品用改良剤・ビタミンなどの製造、販売
国内化成品その他事業 … 化成品用改良剤、飼料用添加物などの製造、販売
海外事業 ………………… 食品用改良剤、化成品用改良剤、エキス・調味料類などの製造、販売
3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
該当事項はありません。
研究開発活動は、当社の本社開発部門が中心となり、当社の各工場に設置されている研究部門及び連結子会社の研究部門と密接な連携のもとに、当社の得意分野における基礎研究及び応用研究、新市場創出に繋がる新商品開発を行っています。
当連結会計年度の研究開発費の総額は、
セグメントごとの研究開発活動は、次のとおりです。
(国内食品事業)
「持続可能な社会をスペシャリティな製品とサービスで支え、成長する会社になる」事を中長期ビジョンとして掲げており、生活様式の変化、行動の変化、価値観の変化、また年代別、世代別のライフスタイルを調査、考察し「消費者を起点とした未充足のニーズを捉え、新規性のある商品開発」をおこなう事で、人々の健康と栄養に寄与し、社会に貢献出来る商品開発を進めております。
家庭用食品部門では、お湯でも水でもすぐ溶ける液体濃縮スープの「割るだけスープ」3種類を発売し、日経トレンディ2025ヒット予測食品部門で★2つを獲得し、日本食糧新聞社「第43回ヒット大賞」一般加工食品部門で「優秀ヒット賞」を受賞いたしました。
また、ドレッシングでは独自製法で製造した洋食屋店のサラダにかかっているようなドレッシングを目指して開発した「洋食屋さんのただただおいしいドレッシング」を発売し、2024年8月発売から2025年3月までに出荷本数が100万本を達成し、日経トレンディ2025年上半期ヒット賞を受賞いたしました。
2025年3月に発売した液体調味料「パッとジュッと®」2品は、調味料が入ったパウチに鶏肉を入れて下味冷凍し、凍ったまま調理しても肉汁が流出しない特許技術を使った商品でシリーズ累計出荷数10万袋を突破し、日経トレンディ2025下半期ブレイク優秀賞を受賞いたしました。
引き続き、これまで培った技術をさらに磨き、多様化するお客様の食生活に独自性のある新たな価値をお届けできる商品開発をおこなって参ります。
業務用食品部門は、外食市場、中食・惣菜市場が大きく伸長している中で、人手不足によるオペレーション改善を目的とした商品開発をおこなっており、お肉も野菜も食べられるワンプレートメニューの簡単調味料「ガパオライスの素」と「タコライスの素」を発売し、産業給食を中心に好評を得ております。
また海藻では、沖縄勝連産もずくを使用した「冷凍もずくキムチ」を発売し、もずくの新たな価値の創出とメニューの幅を広げる事で販路拡大を図って参ります。
今後も原料・資材の高騰、物流費及び人件費の上昇に伴う物価上昇が続くことが予想されますが、インバウンド需要効果もあり外食需要の回復がより一層見込まれ、業務用市場においては更に伸長すると考えております。
2025年度は国民の5人に1人が後期高齢者(75歳以上)という超高齢化社会を迎えました。今後更にマーケティング力と創造力を駆使した新たな新市場の開拓と、自社シーズを有効活用した独自性のある商品開発をお客様の健康と笑顔に寄与できることをテーマに開発をおこなって参ります。
○海藻養殖の生産安定化に向けて
2017年7月、当社の国内子会社である理研食品㈱は、宮城県名取市にわかめ加工と種苗の生産・研究拠点として「ゆりあげファクトリー」を開設しました。
近年のわかめ養殖産業を取り巻く課題として、①気候変動による生産量低下、②生産者の方々の高齢化、③寒冷期の過酷な労働条件などが挙げられます。特に、水温が不安定な年は、海上での養殖初期段階で「芽落ち」と呼ばれる生長不良が起こり、わかめ生産量低下の原因のひとつとなっています。
こうした環境下、「わかめの苗」ともいえる種苗を養殖水槽を用いて、高生長種苗、早生(わせ)・晩生(おくて)種苗など優良系統の選抜技術を開発・実用化するとともに、環境変動に対応したわかめ養殖の安定生産、労働の軽減化及び年に複数回の養殖による生産量の増加など生産性向上を目指した研究を行っています。
選抜した優良系統種苗を活用し、岩手県大船渡市の水産会社(㈲マルカツ水産)とJF綾里漁協と連携し、新たな手法でのわかめ養殖活動に取り組んでいます。この取組みは、生産性向上と共に、担い手不足による空き漁場の活用にも繋がっています。
これまでのわかめの研究成果を応用し、他海藻類の基礎研究と事業化に向けた技術開発にも取り組んでいます。
海藻の養殖技術研究を活用し、2021年10月に岩手県陸前高田市に「陸前高田ベース」を開設し、「スジアオノリ」の陸上養殖生産を開始しました。また新たに「ヒトエグサ」の種苗生産技術も開発・研究し、生産実証試験など、海藻類の安定供給に貢献していきます。
さらに、海藻類の持つ二酸化炭素固定能力を測定する研究(ブルーカーボンの研究)を行うことで、海藻産業の付加価値向上と新産業創出への活用を目指しています。
当社の「ときめき海藻屋」というブランドを通じて海藻の魅力を発信し、わかめ・海藻の需要創出や産地の課題に対して、研究開発の視点から多面的に提案を行い、海藻養殖産業全体の活性化に貢献していきます。
*「ゆりあげファクトリー」は、東日本大震災において甚大な被害を受けた閖上地区の復興と地域水産業の活性化を目的とした名取市の水産業共同利用施設復興整備事業でもあります。
健康機能食品への取組みでは、天然系色素の機能性開発及び海藻由来の機能性開発や応用研究を推進しました。サプリメント用途だけでなく、飲食品用途にも使用可能な製剤開発も進めています。
食品用改良剤事業部門では、千葉工場内にあるアプリケーション&イノベーションセンター(A&Iセンター)と京都工場内にある天然色素関係の開発拠点で、それぞれ基礎研究から応用研究、市場調査、提案活動などを実施しています。食品用改良剤の対象食品は、パン、麺、豆腐、和菓子、洋菓子、飲料、製菓、加工油脂、冷凍食品、惣菜、畜肉加工品、米飯など多岐にわたっています。
A&Iセンターには加工食品メーカーの生産機に近いテスト機を多く設置しており、精度が高い食品用改良剤を開発することができる拠点となっています。加工食品に対して食品用改良剤の効果の検証に加え、その作用機序の解明にも取り組んでいます。加工食品メーカーへの新商品の提案や加工食品メーカーが抱える課題に対する問題の解決を通じて、顧客の製品に新たな価値を提案しています。
2024年度はシンガポールや中国上海、米国の海外アプリケーションセンターとの連携を推進し、また顧客来訪などの人的交流による情報交換や対面でのソリューション提案を積極的に行いました。原材料価格が高騰する中で、食品用改良剤が持つフードロスや品質を保持する期間の延長、生産効率の向上などサステナブルな視点でのソリューションの提案を行っています。
ビタミン関係では、当社のキーマテリアルである天然ビタミンEを中心に、その生産技術の向上のほか、食品の保存性に寄与する酸化防止剤としての機能開発や新たな市場の開拓に挑戦しています。また、昨今の健康意識の高まりを背景に、ビタミンの栄養強化向けの技術開発を行い、加工食品メーカーへの提案を進めています。
天然色素関係では、天然物である色素原料の安定調達や生産技術の向上、及び海外市場を視野に入れた新たな色素製剤の開発や、色調面や風味面で優位性がある色素製剤の用途拡大を進めています。
マイクロカプセルでは、医薬・食品用途への応用検討を推進しました。その中で、食品メーカーへの香料の固形製剤化技術の提案を強化し、用途拡大を進めています。
当事業に係る研究開発費は、
(国内化成品その他事業)
化成品用改良剤では、ユーザーニーズに対応して、プラスチック、ゴム、化粧品、トイレタリー、塗料、インキなどの化学品業界への改良剤の新規商材開発、機能開発及び応用研究を行っています。
安全性の高い化成品用改良剤の開発、新規機能を有するプラスチック改良剤の研究開発に加え、環境問題を考慮し持続可能な社会に対応したバイオベースマテリアルの応用研究に取り組んでいます。
当事業に係る研究開発費は、
(海外事業)
海外市場における研究開発活動は、食品用改良剤と化成品用改良剤についての展開を行っています。
RIKEVITA(SINGAPORE)PTE LTD内に設置されたアプリケーションセンターでは、パン、ケーキ、麺、冷菓、飲料、加工油脂、畜肉加工品や惣菜などの実験設備を備え、東南アジア等の海外市場の地域特性やユーザーニーズに対応した新規製剤開発とアプリケーションの提案、及び取引先に対する技術サービス活動を行っています。
理研維他精化食品工業(上海)有限公司内に設置されたアプリケーションセンターは上海中心部に立地し、顧客ニーズに対応したソリューションを提供できる体制を整備しています。パン、ケーキ、和菓子、麺、冷凍食品、惣菜などの実験設備を備え、理研ビタミングループで長年培った知見、経験を生かし、中国国内顧客向けの製品の改良、工程改善、コストリダクション、新製品の開発などに貢献し、加工食品分野の情報発信基地となっています。中国市場のニーズを踏まえ、機能と価格のバランスを最適化した食品用改良剤を開発・提案する事で、新たな顧客の獲得を進めています。また上海からの出張だけではカバーできない中国内陸部の顧客に対しては、パンなどの試作設備も備える成都事務所と連携して対応しています。
RIKEN VITAMIN USA, INC.(カリフォルニア州トーランス)では、新たにアプリケーションセンターが設立され稼働を開始しました。同センターは主にベーカリー分野の設備を備えており、当社改良剤を使用した試作品を現地で作ることが可能となりました。顧客とのコミュニケーションを深める事で、ベーカリー分野の顧客の課題抽出とソリューション提案を行います。
海外市場に対しては、上記3つの開発拠点が連携してフードロスの低減や品質の向上、多様化する加工食品の課題解決を進めます。また、食品用改良剤のマザー開発拠点となる日本のA&Iセンターと連携することで、海外市場に密着した顧客視点での研究開発活動を推進します。
化成品用改良剤においては理研維他精化食品工業(上海)有限公司内に化成品アプリケーションセンターを設置し、中国市場の地域特性に対応した製品開発、応用開発及び取引先への技術サービスを行っています。
これら海外アプリケーションセンターと国内の関連研究開発部門との連携をさらに強化し、人的交流、情報の共有化を進め、日本国内の知見、経験を取り込み、海外ユーザーのみならず日本国内ユーザーの海外展開への情報サービス提供活動を展開し、海外の食品用改良剤及び化成品用改良剤の研究機能の充実と強化に向けて積極的に取り組んでいます。
当事業に係る研究開発費は、