第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

   文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

  (1) 会社の経営の基本方針

当社グループは「医薬品を中核としたトータルヘルスケアで人々の健康で豊かな生活に貢献する」ことを経営理念とし、国内外において存在価値のある企業グループとして発展することを目指しております。

  (2) 中長期的な会社の経営戦略

(1)の経営理念の下、当社はグループの経営課題としてかねてより以下の3つのミッションを掲げております。すなわち、
ⅰ)ジェネリック医薬品市場におけるプレゼンスを確立する
ⅱ)アルカリ化療法に関する臨床研究の成果を最大限に活用する
ⅲ)自社開発創薬により社会に貢献する
さらに、将来にわたる当社グループの成長持続のためには、国内のみならず海外での事業拡大が不可欠と考えており、2015年度からは
ⅳ)海外の事業基盤確立
を「3つのミッションプラス1」として加え、これらの達成を経営戦略の中心に据え、日々事業に取り組んでいます。

  (3) 当社グループをめぐる業界や市場の動向等の経営環境

2019年度末から続く新型コロナウイルス感染症の拡大は世界中の社会・経済活動に深刻な影響を及ぼしており、さらに、その影響が長期化することが懸念されておりますが、医薬品業界においても新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う患者さんの受診抑制や医療機関への情報提供活動の抑制などの影響に加え、2019年10月および2020年4月の2度にわたり行われた薬価改定に続き、2021年4月には毎年の薬価改定がスタートするなど厳しい事業環境が続いています。また、昨今ではジェネリック医薬品の信頼性にかかわる品質問題が他社において発生していますが、当社グループは引き続き「信頼できるジェネリック医薬品」の普及に貢献するべく、ジェネリック医薬品の高品質維持と安定供給確保に注力するとともに、生産性および効率性の向上に資する施策を推し進めております。

  (4) 会社の対処すべき課題

 ① ジェネリック医薬品

  1) 販売

国内ジェネリック医薬品市場はオーソライズドジェネリックの台頭による競争の激化、さらには価格帯集約化などの度重なる薬価制度改革の影響で、事業環境が著しく変化してきました。当社グループはこれまでも開発や製造など、サプライチェーン全般にわたってさまざまな取り組みを行ってきましたが、その最終段階として、いかなる環境においても持続的な成長を実現する事業構造への転換を図るために、2020年7月にグループ医薬営業を中心とした構造改革を実施しました。まず組織再編として、日本ケミファと日本薬品工業の医薬営業体制を一元化し、これを統括する「グループ医薬営業本部」を設置しました。そしてそれに伴い、営業人員規模の適正化と国内拠点の統廃合を推し進め、徹底的なリソースの効率化を図っています。

現在は設置されたグループ医薬営業本部のもとで、従来の卸ルートに加えて、販社ルートや大手調剤チェーン、グループ病院との一部直接取引など、ジェネリック医薬品の多様な販路に対応し、グループ全体で売上を伸ばす販売戦略に取り組んでいます。

  2) 品質保証

当社グループでは安全でより良い医薬品の品質を確保するため、品質保証部門が中心となり、省令に従って定期的に製造業者等への監査、すなわち製造施設設備・製造記録及び試験記録等の確認を通し、医薬品の製造管理及び品質管理が適正に実施されていることを、原則的に3年に1回の頻度で確認しています。あわせて、重大な製品クレーム等が発生した場合には臨時に監査を行い、迅速かつ適切な措置を講じ再発防止に努めています。さらに、医療関係者の皆さまに安心して当社製品をご使用いただけるように、原薬製造所の国名の情報開示や、原薬の安定的な調達のために原薬を複数の製造所から購入するマルチソース化にも積極的に取り組んでいます。

また、当社グループの製造部門を担う日本薬品工業では、日本ケミファの品質保証部門と相互に協力しながら情報を共有し、品質向上に向けた取り組みを協同して行うことで、随時、製造所から情報が共有され、医薬品の品質を適時的確に判断するための連携体制を十分に取っています。

同社の工場ではGMP(Good Manufacturing Practice 適正製造規範)3原則に従い、「人為的な誤りを最小限にすること」、「医薬品の汚染及び品質低下を防止すること」、「高い品質を保証するシステムを設計すること」を遵守した製造管理及び品質管理を行っており、一例として、コンピュータによる生産管理システムの導入、バーコードシステムによる原材料管理、すべての製品データを振り返るための年間照査、承認事項を遵守することの重要性に対する教育訓練の実施、不適事項が発生した場合に対するCAPA(Corrective Action, Preventive Action 是正処置及び予防処置)管理を含めた再発防止策の徹底などが挙げられます。また、いずれの製造所も規制当局による査察を定期的に受けており、適合の結果を得ています。

  3) 生産体制

Nippon Chemiphar Vietnam Co., Ltd.(以下「NC-VN社」という)のベトナム工場が2018年11月に商業生産を開始して以降、製造量の多い、あるいはコストメリットの出しやすい品目を中心に国内工場から同工場への製造移管を進めており、将来的にはグループ製品の3割程度を生産できる体制とし、グループの製造能力拡大と生産コスト引き下げを実現していきます。また、国内製造拠点についてはその高い技術力を生かし、新製品や受託品の製造を担うマザー工場としての活用を拡大してまいります。

  4) 開発

ジェネリック医薬品の研究開発につきましては、市場競争の激化を踏まえ、他社競争優位性のある品目の開発や、国内外企業との共同開発にも積極的に取り組み、医療関係者、患者さんのニーズを反映した特長を有する製品や、付加価値のある製品の開発と市場への投入を目指してまいります。

また開発の組織体制については、製剤・分析における新たな技術への挑戦を行う「製剤技術開発部」と、海外企業との連携強化と共同開発を推進する「海外技術開発部」の二部制に組織再編し、開発ターゲット品目の確実な市場投入と、スピーディーに開発を推進する取り組みにチャレンジしています。

② アルカリ化療法剤

当社グループがウラリットで培ってきたアルカリ化療法剤については、さまざまな方面で展開が進んでいます。

まず、創薬ベンチャーであるDelta-Fly Pharma株式会社とライセンス契約を締結した抗がん剤DFP-17729は、がん細胞周辺の微小環境改善作用を有し、酸性に傾いているがん細胞周囲の微小環境をアルカリ化することによる難治性がんの画期的治療効果が期待されています。末期の膵臓がん患者を対象とするフェーズⅠ/Ⅱ試験を2020年11月にスタートし、その後、フェーズⅠ部分での安全性が確認されたことから、2021年4月には試験施設を追加したうえでフェーズⅡ部分へと移行いたしました。試験の対象となる膵臓がんは早期発見が難しく、特に末期では満足できる治療剤がない状況にあるため、一日も早い新薬の開発が期待されています。

また、当社グループが協力を行いながら東北大学で進められている、アルカリ化療法剤と慢性腎臓病(以下「CKD」という)との関連を解明する臨床研究「CKOARA Study」は、初期的なデータ解析を終えて手ごたえを得たことから、AIやリアルワールドデータ(以下「RWD」という)を活用し追加の解析を行っており、それらの成果につきましては近いうちに学会で発表が行われ、論文化されるものと見込んでいます。さらにこの研究で集められたデータを応用し、クエン酸塩の機能性表示食品としての開発を進めているところです。

③ 新薬開発

  1) パイプライン

新薬の研究開発については、領域を絞り込み、その領域の第一人者との共同研究を推進することを基本方針としています。そのうえで探索研究に重点を置き、得られた成果を早期段階で導出することで、開発上のリスクを軽減しつつ効率的に開発を進めていきます。この方針のもと、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下「AMED」という)の「CiCLE事業」に採用されている、オピオイドデルタ受容体作動薬「NC-2800」(抗うつ、抗不安薬)については、間もなくフェーズⅠ試験をスタートする予定であり、あわせて早期導出に向けた活動も進めていきます。

また、P2X4受容体拮抗薬「NC-2600」については、これまでの神経障害性疼痛に加え、慢性咳嗽などの適応症にフォーカスした導出活動を開始しており、ファーストインクラスの化合物としての可能性を深掘りしながら、早期の導出を目指します。

さらに、「NC-2500」(キサンチンオキシドレダクターゼ阻害薬)と「NC-2700」(URAT1阻害薬)についても、そのユニークな特性を国内外の企業へアピールしながら導出活動を行っており、共同開発なども含め、さまざまな可能性を検討しています。

  2) 新技術を活用した新薬・臨床開発

当社グループは進歩が著しいAIなど新技術を活用した手法を導入することで、有望な創薬テーマの創出や開発プロセスの迅速化、業務の効率化などにつなげたいと考え、現在、デジタル技術に強みを持つベンチャー企業2社への出資や業務提携を行っています。

AI創薬ベンチャーである株式会社MOLCUREとは、創薬プロセスの初期段階における化合物の探索と最適化のプロセスを効率化することを目指しています。同社との協業により当社グループとして初めてAIを用いた創薬に着手し、新たな創薬プロセスを導入することができました。

デジタル医療を推進するサスメド株式会社とは、特定の開発候補テーマに関して、同社のAIシステムとRWDを用いた多面的な分析を行い、効率的な治験デザインを構築するチャレンジを行っています。加えて、2021年2月には同社のブロックチェーン技術を使った臨床試験の効率化について、具体的な検討を開始したことを発表しました。

④ Plus1 海外展開

  1) 海外販売

2020年に中国で権威ある高血圧関連学会が定めたガイドラインにおいて、「カルバン錠」が標準的な治療製剤の選択肢として収載されたことを活用し、今後は主要都市での販促活動を本格化していきます。さらに同国での申請が受理され審査が始まっている品目や、現地でBE試験(biological equivalence study生物学的同等性試験)を予定している品目もあり、引き続き中国での実績を着実に積み上げてまいります。

一方、ベトナムではNC-VN社が同国で販売申請中の品目について、複数の現地卸より取り扱いの希望が寄せられており、現地販売チャネルの開拓を進めてまいります。

また、臨床検査薬事業においては、アレルギー市場の大きな中国でオリトンの承認品目の拡大が見込まれており、2021年度中に追加承認を経て、同地で本格的なプロモーションを開始したいと考えています。さらにドロップスクリーンについても海外での展開を具体的に検討していきます。

  2) 開発

現在、日本向け製品の製造を行っているNC-VN社は、将来的には同社を足掛かりにベトナム国内や周辺国での販売を行うことも視野に入れています。また今後、海外で本格的に自社製品を販売するために、2019年4月に創設された当社「海外技術開発部」と協同し、ASEAN市場に向けた用量規格の製剤を開発しており、できるだけ早期に申請を行いたいと考えています。

 

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

(薬価制度・医療保険制度変更に関するリスク)

  薬価については、これまでの概ね2年に1回の改定が行なわれてきましたが、2021年度以降は中間年における改定が行われることが決まっており毎年の改定が予定されていることから、これまで以上のスピードで多数の品目の薬価が引き下げられる事が予想されます。また、増大する医療費の抑制を目的として医療保険制度の見直しも行われており、この見直しの内容によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(医薬品の研究開発に関するリスク)

  研究開発が計画どおり進行せず、新製品の発売が遅れる可能性があります。また、臨床試験で新薬の候補品が期待どおりの効果を得られなかった場合や、安全性が危惧される結果となった場合、開発期間の延長、開発の中断あるいは中止する場合があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(原材料・商品の仕入に関するリスク)

  仕入先会社及び製造国において、規制上の問題、又は火災、地震その他の災害及び輸送途中の事故等により、原材料及び商品の仕入が不可能となった場合、製品の製造及び供給が停止し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(製造の遅滞又は休止に関するリスク)

  技術的もしくは規制上の問題、又は火災、地震その他の災害により、製品を製造する製造施設において操業停止又は混乱が発生した場合、当該製品の供給が停止し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(ジェネリック医薬品の競争に関するリスク)

  当社グループは薬価改定による価格引き下げで販売している製品が不採算とならないよう、適正利潤を含めた販売に努めておりますが、市場における価格選好性の高まりにより、当社製品も思わぬ価格の低下を強いられることがあります。さらに近年ではオーソライズドジェネリックの浸透により、ジェネリック医薬品市場のシェアに大きな変化がおきており、その動向次第では当社グループが計画していた売上高を確保できず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(医薬品の品質に関するリスク)

 適正な製造管理及び品質管理の確保について、全ての製造業者とGQP取決めを締結し、グループ工場をはじめ、原薬や製剤の製造業者に対する定期的な監査実施や、承認書と製造実態の整合性に係る点検を毎年実施しており、また、省令に規定された「三役会議」(総括製造販売責任者、品質保証責任者、安全管理責任者)の定期的な開催をはじめ、品質保証部門と安全管理部門の緊密な連携により健康被害の防止に努めております。しかしながら、当社グループ工場や製造委受託先等における品質や安全性に関する問題等の発生により、製造の中止、製品の回収、あるいは販売の中止を余儀なくされる可能性があります。その場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(医薬品の副作用に関するリスク)

 当社グループが主に取り扱うジェネリック医薬品については、先発品で長年の使用実績があり、安全性が確認され、再審査後に販売されるため、予期せぬ副作用が多発するリスクは小さいですが、このようなことが生じれば、製造の中止、製品の回収、あるいは販売の中止を余儀なくされる可能性があります。その場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(海外に関するリスク)

  当社グループはベトナムに工場を所有しておりますが、海外事業の拡大と推進には多額の先行投資が必要となります。各国の規制・制度変更や外交関係の悪化、天災などにより、それらの投資回収が遅れたり、予期せぬ費用が発生して、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(法規制等に関するリスク)

  当社グループの事業は、主に薬事関連規制等に服しており、それら規制に基づく製品の回収や製造あるいは販売中止等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(訴訟等に関するリスク)

  当社グループが継続して事業活動を行う過程において、製造物責任、環境、労務、その他の事項に関する訴訟を提起される可能性があります。また、当社グループは新薬に加え、ジェネリック医薬品を販売していることから、先発医薬品メーカーから特許訴訟を提起される可能性があります。

法令違反に関するリスク

  当社グループでは、法令等の遵守及びコンプライアンスの徹底を図っており、このために「日本ケミファグループ法令等遵守行動基準」や「法令等遵守の推進に関する規程」を制定し、全役職員を対象としたコンプライアンス教育や研修の実施や、内部通報制度及び内部監査の強化などの対策を講じております。しかしながら、法令違反等が発生した場合には、行政処分等による当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、損害賠償義務等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

新型コロナウイルス感染拡大に関するリスク

  新型コロナウイルス感染拡大に伴う影響について、MRの病院への訪問が著しく制限されているなか、WEBやEメールを活用するなどして、医療機関の要望に沿う形で情報提供活動を展開し、その影響を最小限にすべく取り組んでいます。また、感染症拡大防止および予防のため、工場を除く従業員の勤務形態を原則在宅勤務とし、出張禁止やWEB会議の利用など様々な対応を行うことで、全ての医療関係者および従業員の安全を確保しつつ、ベトナム工場を含めた製造ラインの稼働を維持し医薬品の安定供給に支障が出ることが無いように努めております。これに加えて、資金面でも十分な手当てがされており、現時点では事業活動に与える影響は軽微であるものと判断しております。しかしながら、当連結会計年度末現在において事態収束の目途がたっておらず、事態の収束の長期化に伴う受診抑制によるマーケット変動など、今後の状況によっては研究開発、生産供給体制、営業活動等の事業活動に支障が生じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

上記の他、金融市況・為替変動によるリスク、コンプライアンスを含むコーポレート・ガバナンス関連リスク、ITシステムトラブルによるリスクなど、様々なリスクが存在しており、ここに記載されたものが当社グループの全てのリスクではありません。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績などの状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

  (1) 経営成績

当期におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により大きなダメージを受けた1年となりました。1回目の緊急事態宣言が解除された2020年6月以降には、段階的な経済活動の再開や政府による公共事業と個人消費押し上げ施策により、緩やかに持ち直す場面があったものの、12月に入り再び感染が拡大し、2021年1月には大都市圏を対象とする緊急事態宣言が再発出され、個人消費を中心に回復基調が停滞する結果となりました。

医薬品業界につきましても、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う患者さんの受診抑制や、医療機関への情報提供活動の抑制などの影響があったことに加え、2019年10月および2020年4月の2度にわたり行われた薬価改定や、オーソライズドジェネリックの台頭に伴うジェネリック医薬品市場の競争激化など厳しい事業環境が続いています。

このような環境下で、当社グループは引き続き「信頼できるジェネリック医薬品」の普及に貢献するべく、ジェネリック医薬品の高品質維持と安定供給確保に注力するとともに、生産性および効率性の向上に資する施策を推し進めてきました。

また、ジェネリック医薬品事業と並行して取り組んでいる、「アルカリ化療法」や「自社開発創薬」に関しても、他社とのアライアンスによる革新的な創薬テーマへのチャレンジや、国内外企業への導出活動を本格化しています。当社グループはまだ十分な治療薬がない病気に苦しむ患者さんのために、画期的新薬の開発に取り組んでいます。

 

セグメントの経営成績は次のとおりです。

① 医薬品事業

        1) 医療用医薬品

         (a) ジェネリック医薬品

ジェネリック医薬品市場については、前述した2回の薬価改定や新型コロナウイルスの影響に加え、オーソライズドジェネリックの台頭とそれに対抗するための各社の競争激化も相まって、厳しい事業環境が続きました。

当社グループにおきましては医療機関の訪問規制への対応として、インサイドセールスやリモート面談などを駆使した情報提供活動に取り組む中で、2020年6月にアルツハイマー型認知症治療剤の「メマンチン塩酸塩OD錠『ケミファ』」など5成分9品目、12月には疼痛治療剤「プレガバリンOD錠『ケミファ』」など3成分8品目のジェネリック医薬品を発売しました。既存品については薬価改定の影響が大きかったものの、ラベプラゾールなど一部の製品については製剤特徴を訴求した情報提供が奏功し、薬価改定の影響をカバーすることができました。

         (b) 主力品・新薬

2020 年7月に導入したマクロライド系抗生物質製剤「クラリシッド」については、当下期以降、当社グループの売り上げに寄与する状況となっています。同製品は競合品が多い中でも長期にわたりブランド力を維持しており、これを手掛かりとした医療機関へのアプローチにより、ジェネリック医薬品事業とのシナジーを創出していきます。

また、主力品であるアルカリ化療法剤「ウラリット-U配合散・同配合錠」(以下、ウラリット)につきましては、ジェネリック医薬品への置換えが進んでいるものの、子会社である日本薬品工業株式会社が販売する同剤のジェネリック医薬品「クエンメット配合散・同配合錠」と合わせて当社グループで製造・販売できる状況を活かし、痛風ならびに高尿酸血症における酸性尿改善の重要性に関する普及活動を強化してきました。

 

以上の結果、ジェネリック医薬品の売上高は前期比3.4%の減収、ウラリットをはじめとする主力品・新薬の売上高は31.4%の増収となり、医療用医薬品全体では1.7%の減収となりました。

なお、医療用医薬品の売上高比率を薬効別にみますと、循環器官用薬及び呼吸器官用薬30.1%、消化器官用薬15.4%、ウラリットなどの代謝性医薬品15.1%、神経系及び感覚器官用薬12.0%、病原生物用薬6.5%、腫瘍用薬2.9%、その他の医薬品17.8%となっています。

 

        2) 臨床検査薬

2020年2月に富士フイルム和光純薬株式会社と国内で共同販売を開始しました、アレルギースクリーニング検査キット「ドロップスクリーン 特異的IgE 測定キット ST-1」(以下、「ドロップスクリーン」)と、その測定装置である「ドロップスクリーンA-1」(製造販売元:上田日本無線株式会社)について、当期は新型コロナウイルス感染症の影響により営業活動の遅れが生じましたが、アレルギー科を標榜しているクリニックのみならず、幅広い施設から導入のためのデモや見積もりの依頼を受けており、導入された医療機関からも大変高い評価をいただいています。

また、自社開発のアレルギー検査薬「オリトンIgE『ケミファ』」(以下、オリトン)につきましては、2019年10月に60品目のうち、7品目について中国の監督当局である国家薬品監督管理局(NMPA)から製造認可を取得し、その後、さらに7品目の製造認可が下りたことから、当期に中国で試行的に商業販売を開始しました。今後も順次、承認品目を増やし、来期には本格的販売活動を開始できる見通しです。

以上により、医薬品事業全体の売上高は30,423百万円(前期比0.7%減)、営業利益は546百万円(前期比63.3%増)となりました。

 

② その他

「その他」の事業については、子会社の株式会社化合物安全性研究所が展開するCRO(Contract Research Organization 医薬品開発業務受託機関)市場は、医療機器、再生医療等製品、アカデミアの市場規模が緩やかに拡大しているとともに、医薬品開発におけるアウトソーシングの流れがあいまって堅調に推移しています。しかしながら、当期は新型コロナウイルス感染症の影響により、顧客の研究開発スケジュールに一時的な遅延が発生しております。

こうした状況下、同社の非臨床事業は、医療機器およびデータギャップ補完に伴う農薬の受注が堅調に推移しましたが、前年度に受注した複数の案件において開発スケジュールに遅れが生じたことで、減収減益となりました。一方、臨床事業については、ジェネリック医薬品の治験の引き合いが堅調に推移したとともに、非臨床から臨床まで包括して受注した医薬品、および再生医療等製品の開発が臨床段階へと進んだことにより、増収増益となりました。

ヘルスケア事業及び不動産賃貸事業も含めた「その他」の事業全体の売上高は1,117百万円(前期比0.5%減)となり、営業利益は17百万円(前期比40.8%減)となりました。

 

以上の結果、各セグメントを通算した業績は当期の連結売上高が31,541百万円(前期比0.7%減)、連結営業利益が564百万円(前期比54.8%増)、連結経常利益が582百万円(前期比89.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が495百万円(前期比13.4%増)となりました。

 

売上高については、2019年10月と2020年4月に行われた2回の薬価改定の影響に加え、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う患者さんの受診抑制の影響が上半期に大きく影響しましたが、下期に入り、昨年6月追補品や同7月に導入した長期収載品の売上寄与に加え、昨年末に発生した他社の品質問題に伴う代替需要などにより、下期半期では前年同期間比増収となっており、通期では売上高は微減となりました。
利益面では、薬価改定による原価率上昇の影響があるものの、グループ構造改革による人員体制の適正化や支店営業所の統廃合、さらなる経費使用の厳格化によるコスト改善に努めたことに加え、コロナ禍における販売活動費用の減少などにより、営業利益以下各利益で増益の結果となりました。
 

 (2) キャッシュ・フローの状況

当期における連結ベースの現金及び現金同等物は、営業活動により1,503百万円増加いたしました。また投資活動においては1,024百万円の減少、財務活動においては29百万円の増加となりました。

この結果、当期末の現金及び現金同等物(以下、資金)は10,505百万円(前期末比5.1%増)となりました。

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

当期において、営業活動による資金は主に売上債権の増加及びたな卸資産の増加があったものの、税金等調整前当期純利益の計上により、1,503百万円の増加(前期は1,394百万円の増加)となりました。

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

当期において、投資活動による資金は主に無形固定資産の取得により、1,024百万円の減少(前期は326百万円の増加)となりました。

 

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

当期において、財務活動による資金は主に配当金の支払があった一方で、長期借入金の増加により、29百万円の増加(前期は961百万円の減少)となりました。

 

 (3) 財政状態

流動資産は前期末に比べて3.9%増加し、30,446百万円となりました。これは、主に現金及び預金並びに売上債権の増加によるものです。

固定資産は前期末に比べ0.8%増加し、16,676百万円となりました。これは、主に減価償却と投資有価証券の売却による減少の一方、マクロライド系抗生物質製剤「クラリシッド」の販売権取得による増加によるものです。

この結果、総資産は前期末に比べて2.8%増加し、47,124百万円となりました。

流動負債は前期末に比べて2.6%増加し、14,102百万円となりました。これは、主に仕入債務の増加によるものです。

固定負債は前期末に比べて1.9%増加し、15,006百万円となりました。これは、主に長期借入金の増加によるものです。

この結果、負債合計は前期末に比べて2.2%増加し、29,109百万円となりました。

純資産合計は前期末に比べて3.6%増加し、18,014百万円となりました。これは、主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上によるものです。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されています。連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況をもとに、種々の見積りと仮定を行っていますが、それらは連結財務諸表、偶発債務に影響を及ぼします。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりです。

① 繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しています。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しています。

将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積に影響を与える要因が発生した場合は、回収可能性の見直しを行い繰延税金資産の金額の修正を行うため、当期純損益額が変動する可能性があります。

② 退職給付債務及び退職給付費用

退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等に基づいて計算しています。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い長期債利回りを参考に決定し、また、年金資産の長期期待運用収益率は、過去の運用実績及び将来見通し等を基礎として設定しています。割引率及び長期期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。

③ 固定資産の減損

当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、収益性が著しく低下した資産または資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。

固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。

 

なお、2019年度末から続く新型コロナウイルス感染症の拡大は世界中の社会・経済活動に深刻な影響を及ぼしており、さらに、その影響が長期化されることが懸念されております。当社グループにおいては、営業活動においてMRの病院への訪問が制限されているなか、WEBやEメールを活用するなどして、医療機関の要望に沿う形で情報提供活動を展開し、その影響を最小限にすべく取り組んでおり、また研究開発、生産活動については概ね計画どおり活動を継続しており、現時点において新型コロナウイルス感染症の拡大が当社グループの事業活動に及ぼす影響については限定的であると認識しております。

 

 (5) 生産、受注及び販売の状況

  ① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

医薬品事業

8,294

5.8

その他

合計

8,294

5.8

 

(注) 1 金額は、製造原価によっております。

2 上記金額には、消費税等は含まれておりません。

 

  ② 受注状況

当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画を立て、これにより生産をしております。

受注生産は一部の子会社で行っておりますが、受注残高の金額に重要性はないため、記載を省略しております。

 

  ③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

医薬品事業

30,423

△0.7

その他

1,117

△0.5

合計

31,541

△0.7

 

(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

アルフレッサ㈱

7,161

22.6

6,643

21.1

㈱メディセオ

5,947

18.7

6,139

19.5

 

3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。

 

4 【経営上の重要な契約等】

特記すべき事項はありません。

 

 

5 【研究開発活動】

新薬の研究開発については、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「CiCLE事業」に採用されている、オピオイドデルタ受容体作動薬「NC-2800」(抗うつ、抗不安薬)が、間もなくフェーズⅠ試験をスタートする予定でおり、あわせて早期導出に向けた活動も進めていきます。P2X4受容体拮抗薬「NC-2600」については、これまでの神経障害性疼痛に加え、慢性咳嗽などの適応症にフォーカスした導出活動を開始しており、ファースト・イン・クラスの化合物としての可能性を深掘りしながら、早期の導出を目指します。

また、進歩が著しいAIなど新技術を活用した手法を導入することで、有望な創薬テーマの創出や開発プロセスの迅速化、業務の効率化などにつなげたいと考え、現在、デジタル技術に強みを持つベンチャー企業2社への出資や業務提携を行っています。

さらに、当社グループがウラリットで培ってきたアルカリ化療法剤については、さまざまな方面で展開が進んでいます。

まず、創薬ベンチャーであるDelta-Fly Pharma株式会社とライセンス契約を締結した抗がん剤DFP-17729は、がん細胞周辺の微小環境改善作用を有し、酸性に傾いているがん細胞周囲の微小環境をアルカリ化することによる難治性がんの画期的治療効果が期待されております。末期の膵臓がん患者を対象とするフェーズⅠ/Ⅱ試験を2020年11月にスタートし、その後、フェーズⅠ部分での安全性が確認されたことから、2021年4月には試験施設を追加したうえでフェーズⅡ部分へと移行いたしました。試験の対象となる膵臓がんは早期発見が難しく、特に末期では満足できる治療剤がない状況にあるため、一日も早い新薬の開発が期待されます。

また、当社グループが協力を行いながら東北大学で進められている、アルカリ化療法剤と慢性腎臓病との関連を解明する臨床研究「CKOARA Study」は、初期的なデータ解析を終えて手ごたえを得たことから、AIやリアルワールドデータを活用し追加の解析を行っており、それらの成果につきましては近いうちに学会で発表が行われ、論文化されるものと見込んでいます。さらにこの研究で集められたデータを応用し、クエン酸塩の機能性表示食品としての開発を進めているところです。

なお、医薬品事業における研究開発費の総額は1,998百万円であります。

 

  (注) 「その他」の事業では、研究開発活動を行っていないため記載しておりません。