文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループは「医薬品を中核としたトータルヘルスケアで人々の健康で豊かな生活に貢献する」ことを経営理念とし、国内外において存在価値のある企業グループとして発展することを目指しております。
(1)の経営理念の下、当社はグループの経営課題としてかねてより以下の3つのミッションを掲げております。すなわち、
ⅰ)ジェネリック医薬品市場におけるプレゼンスを確立する
ⅱ)アルカリ化療法に関する臨床研究の成果を最大限に活用する
ⅲ)自社開発創薬により社会に貢献する
さらに、将来にわたる当社グループの成長持続のためには、国内のみならず海外での事業拡大が不可欠と考えており、2015年度からは
ⅳ)海外の事業基盤確立
を「3つのミッションプラス1」として加え、これらの達成を経営戦略の中心に据え、日々事業に取り組んでいます。
2019年度末から続く新型コロナウイルス感染症の拡大は世界中の社会・経済活動に深刻な影響を及ぼし、その影響が長期化しております。医薬品業界においては、2021年4月に初めて通常改定の中間年に薬価改定が実施されたことに加え、新型コロナウイルス感染症の再拡大に伴う患者さんの受診抑制が通期にわたり影響しました。また、ジェネリック医薬品については、他社品質問題等に端を発した市場全体の供給不足に対応するため、各社による増産対応や設備投資などを通じた安定供給確保のための努力が続きました。
このような環境下で、当社グループは引き続き「信頼できるジェネリック医薬品」の普及に貢献すべく、ジェネリック医薬品の高品質維持と安定供給確保に注力するとともに、生産性および効率性の向上に資する施策を推し進めております。
国内ジェネリック医薬品市場はオーソライズドジェネリックの台頭による競争の激化や、2021年から始まった薬価の中間年改定などの影響で、依然として厳しい事業環境が続いています。当社グループはこの状況に対処していくため、2020年7月のグループ構造改革で新たに設置した「グループ医薬営業本部」のもと、従来の卸ルートに加えて、調剤薬局チェーンやグループ病院などの多様な販路に対応しながら効率的に営業活動を行うことで、グループ全体で利益を伸ばす販売戦略が徐々に浸透し、実績へと結びついてきています。
また、ポストコロナの新しいワークスタイルへの対応や生産性向上のため、2021年度からSFA(Sales Force Automation:営業支援システム)を本格的に導入しており、今後はMR活動におけるPDCAサイクルの一層の最適化や高速化を図っていきます。
当社グループでは安全でより良い医薬品の品質を確保するため、品質保証部門が中心となり、省令に従って定期的に製造業者等への監査、すなわち製造施設設備・製造記録及び試験記録等の確認をとおして、医薬品の製造管理及び品質管理が適正に実施されていることを、原則的に3年に1回の頻度で確認しています。併せて、重大な製品クレーム等が発生した場合には臨時に監査を行い、迅速かつ適切な措置を講じ再発防止に努めています。また、当社グループが製造販売するジェネリック医薬品の原薬製造国や製剤製造会社名、安定供給体制等に関する情報をホームページ上で公開することにより、医療関係者のご要望に応えるとともに透明性の高い製造管理体制を構築しています。
2022年4月には当社グループの品質保証にかかる業務を統括する「グループ品質保証統括部」を新設し、グループ共通の品質課題の検討や解決、統一した管理基準・管理手法の提案や運用等を行い、全体の品質保証レベルを引き上げることにより、さらなる製品の品質向上を目指していきます。
3) 安定供給
当社グループではかねてより生産設備及び人員の増強に加え、製品の安定供給において重要な原薬の確保について、複数の製造所から購入するマルチソース化に努めることで安定供給に向けた取り組みを進めてまいりました。
しかしながら、他社ジェネリック医薬品の品質問題等を起因とした国内市場における供給不足については、当社としても既存取引先に影響の出ない範囲での在庫調整や、工場における残業・休日出勤による増産対応を行ってきましたが、全てのご要望にお応えすることはできませんでした。このような状況を踏まえ、2021年度中より工場人員と生産設備を増強するためのさらなる投資を続けており、品質保証レベルの向上を伴う増産体制の整備は当社グループにとって喫緊の課題となっています。
また、当社グループの生産量拡大とコスト削減を実現する、Nippon Chemiphar Vietnam Co., Ltd.(以下、NC-VN社)のベトナム工場では、コストメリットの出しやすい品目を中心に国内工場からの移管が順調に進んでおり、将来的にはグループ製品の3割程度を生産できる体制を目指しています。
当社グループがウラリットで培ってきたアルカリ化療法剤については、さまざまな方面で展開が進んでいます。
まず、創薬ベンチャーであるDelta-Fly Pharma株式会社(以下、DFP社)とライセンス契約を締結した抗がん剤「DFP-17729」は、がん細胞周辺の微小環境改善作用を有し、酸性に傾いているがん細胞周囲の微小環境をアルカリ化することによる難治性がんの画期的治療効果が期待されています。DFP社は2021年4月にDFP-17729と他の抗がん剤の併用群、並びに他の抗がん剤単独群との比較試験であるフェーズⅡをスタートしており、2022年度中には、本剤の有用性を検証し、その結果次第で、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ承認申請を行うことが可能か、あるいはフェーズⅢの準備に取り掛かるかの判断を行う予定です。試験の対象となる膵臓がんは早期発見が難しく、特に末期では満足できる治療剤がない状況にあるため、一日も早い新薬の開発が期待されています。
また、当社グループが協力を行いながら東北大学で進められている、アルカリ化療法剤と慢性腎臓病(以下、CKD)との関連を解明する臨床研究「CKOALA Study」は、初期的なデータ解析を終えて手ごたえを得たことから、AI(Artificial Intelligence:人工知能)やRWD(Real World Data:リアルワールドデータ)を活用した追加の解析を行っています。研究結果についてはいずれ学会で発表が行われ、論文化されるものと見込んでおり、当社といたしましてはそれらの成果を踏まえ適応拡大に向けた検討を進めていきます。さらにこの研究で集められたデータを応用し、クエン酸塩の機能性表示食品としての開発を進めているところで、現在は1品目が消費者庁に受理されています。
1) パイプライン
新薬の研究開発については、領域を絞り込み、その領域の第一人者との共同研究を推進することを基本方針としています。その上で探索研究に重点を置き、得られた成果を早期段階で導出することで、開発上のリスクを軽減しつつ効率的に開発を進めていきます。また、パイプラインの拡充やAIなどの新技術を活用した研究開発を進めるため、他社とのアライアンス戦略も取り入れています。
この方針のもと、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「CiCLE事業」に採用されている、オピオイドデルタ受容体作動薬「NC-2800」(抗うつ、抗不安薬)については、2021年6月に住友ファーマ株式会社(旧大日本住友製薬株式会社以下、住友ファーマ)と共同研究開発契約及びオプション契約を締結し、同社がCiCLE事業の研究開発に分担機関として参画しました。
NC-2800の開発ステージは2021年7月にフェーズIへと移行していますが、当社は住友ファーマに対し、CiCLE事業終了後のフェーズⅡbに移行する時点で全世界をテリトリーとした開発・販売権に関するライセンス契約を締結できるオプション権を付与しており、今後の開発の進展に応じたオプション料、マイルストーン及びロイヤリティ収入が期待できると考えています。
P2X4受容体拮抗薬「NC-2600」については、これまでの神経障害性疼痛に加え、複数の適応症にフォーカスした開発を展開しています。そのうち慢性咳嗽治療薬としては、既存薬にはない新しい機序を有する可能性が示されており、さらに開発を進め早期の導出を目指してまいります。また、「NC-2500」(キサンチンオキシドレダクターゼ阻害薬)と「NC-2700」(URAT1阻害薬)についても、そのユニークな特性を国内外の企業へアピールしながら導出活動を行っており、共同開発なども含め、さまざまな可能性を検討しています。
さらに2022年3月にはDFP社が非小細胞肺がん(上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性、ステージⅢ/Ⅳ)の患者を対象に開発中の「DFP-14323」について、日本国内における独占的販売権を取得するライセンス契約を締結しました。本剤は、がん免疫担当細胞の表面に存在するアミノペプチダーゼNと結合してがん患者の免疫応答を強め、標準的な抗がん剤と併用しても副作用を増強することなく効果を高めることから、高齢者や末期のがん患者の治療剤として期待されています。
DFP社は本剤による既存の抗がん剤との併用で非小細胞肺がん(EGFR 遺伝子変異陽性、ステージⅢ/Ⅳ)の患者を対象に実施したフェーズⅡ試験で良好な成績を得ており、同社がPMDAと相談の上で開発を進めながら、非小細胞肺がん(EGFR 遺伝子変異のあるステージⅢ/Ⅳ)の患者の治療に係る適応で製造販売承認を申請する予定であり、当社は承認が得られ次第、日本において本剤の販売を行うことができます。
2) 新技術を活用した創薬・臨床開発
当社グループは進歩が著しいAIなど新技術を活用した手法を導入することで、有望な創薬テーマの創出や開発プロセスの迅速化、業務の効率化などにつなげたいと考え、現在、デジタル技術に強みを持つベンチャー企業2社への出資や業務提携を行っています。
AI創薬ベンチャーである株式会社MOLCUREとは、創薬プロセスの初期段階における化合物の探索と最適化のプロセスを効率化することを目指しています。同社との協業により当社グループとして初めてAIを用いた創薬に着手し、現在はペプチド医薬品の素となるリードペプチドの創成と最適化について開発を進めています。
デジタル医療を推進するサスメド株式会社とは、特定の開発候補テーマに関して、同社のAIシステムとRWDを用いた多面的な分析を行い、効率的な治験デザインを構築するチャレンジを行っています。現在は将来の共同開発も視野に入れ、アルカリ化療法剤によるCKD進展抑制の検討において、サスメドのAIとCKOALA研究データ及びRWDを用いた分析を進めているほか、同社の臨床開発システムを用いた臨床試験効率化の検討も行っています。
中国では、新型コロナウイルスの感染拡大を機にオンライン診療が急速に普及しており、当社のカルバン錠についても、2021年末よりインターネット病院での処方が開始されています。また本年度中にジェネリック医薬品1品目の承認取得が期待されており、さらに、現地でBE試験(biological equivalence study:生物学的同等性試験)を予定している品目もあるなど、引き続き中国での実績を着実に積み上げてまいります。
ベトナムでは、NC-VN社による現地での製品販売に向けた準備が整いつつあります。2022年度中には日本で販売しているものとは用量規格の異なる製品を、初めてベトナム当局へ申請する見通しです。現地開発・現地製造の強みを活かし、市場のニーズに合った製品を開発することで新規市場に挑戦していきます。
加えて、2022年3月には世界銀行グループの国際金融公社(IFC)との間で、ASEAN市場拡大のサポートとともに中東・アフリカの市場調査を支援していただくアドバイザリー契約を締結しました。世界最大の国際開発機関である同公社の助言・ネットワーク・資金を活用し、ASEANのその先に広がる市場への進出を検討していきます。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(薬価制度・医療保険制度変更に関するリスク)
薬価については、2021年4月に初めて通常改定の中間年に薬価改定が実施され毎年改定となったことから、これまで以上のスピードで多数の品目の薬価が引き下げられる事が予想されます。また、増大する医療費の抑制を目的として医療保険制度の見直しも行われており、その内容によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がありますので、薬価制度改革及び医療保険制度の動向を注視し、経営戦略に反映したいと考えております。
(医薬品の研究開発に関するリスク)
当社グループの新薬の研究開発は探索研究に重点をおき、早期段階の導出や、他社とのアライアンス、外部組織からの支援等により、開発リスクの軽減を図っております。しかしながら、臨床試験で新薬の候補品が期待どおりの効果を得られなかったり、安全性が危惧される結果となった場合など、研究開発が計画どおり進行しない場合には、開発期間の延長、開発の中断あるいは中止する場合があります。また、臨床試験が計画どおりの結果となった場合でも、その後の導出交渉において導出条件交渉が長引いたり、条件がまとまらないことにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これらは臨床試験結果をより確実に予想するバイオマーカーの導入や、ターゲットエンゲージメントの取得などを早期から実施するとともに、導出候補先のニーズを的確に情報収集する等のリスク回避を試みています。
当社グループでは、ジェネリック医薬品についても積極的に開発投資を行い、研究開発活動を進めております。ジェネリック医薬品の研究開発活動は、製造販売承認を取得し開発品目を上市する時期から数年間遡って開始されます。この開発期間においては、各段階のリスクを最小限にする取り組みを種々行っているところですが、必ずしも期待通りに上市を果たし収益獲得に結びつかない可能性があります。その場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(原材料・商品の仕入に関するリスク)
仕入先会社及び製造国において、規制上の問題、又は火災、地震その他の災害及び輸送途中の事故等により、原材料及び商品の仕入が不可能と判断した場合、当社グループ内関係部門と密接な連携を図り対策を講じていきますが、その仕入が停止しその代替が困難である場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクに対応するために、当社グループでは常に市場の動向を把握し、重要な原材料については複数のソース購買など、サプライチェーンのリスク管理・対応に努めております。
(製造の遅滞又は休止に関するリスク)
当社グループは有事の際のBCP対応として、製品の安定供給に関する規定、災害対応に関する規定等に従った対応を図っております。また、当社グループは国内2工場、海外1工場を有しており、各工場における製造機器の共通化を進めると共に、各製品を複数の工場で製造できる体制(バックアップ体制)を整えるなどのリスク分散を図っております。しかしながら、技術的もしくは規制上の問題、又は火災、地震その他の災害により、製品を製造する製造施設において操業停止又は混乱が発生した場合、当該製品の供給が停止し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(ジェネリック医薬品の競争に関するリスク)
当社グループは薬価改定による価格引き下げで販売している製品が不採算とならないよう、適正利潤を含めた販売に努めておりますが、市場における価格選好性の高まりにより、当社製品も思わぬ価格の低下を強いられることがあります。さらに近年ではオーソライズドジェネリックの浸透により、ジェネリック医薬品市場のシェアに大きな変化がおきており、その動向次第では当社グループが計画していた売上高を確保できず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(医薬品の品質に関するリスク)
適正な製造管理及び品質管理の確保について、全ての製造業者とGQP取決めを締結し、グループ工場をはじめ、原薬や製剤の製造業者に対する定期的な監査実施や、承認書と製造実態の整合性に係る点検を毎年実施しており、また、省令に規定された「三役会議」(総括製造販売責任者、品質保証責任者、安全管理責任者)の定期的な開催をはじめ、品質保証部門と安全管理部門の緊密な連携により健康被害の防止に努めております。しかしながら、当社グループ工場や製造委受託先等における品質や安全性に関する問題等の発生により、製造の中止、製品の回収、あるいは販売の中止を余儀なくされる可能性があります。その場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(医薬品の副作用に関するリスク)
当社グループが主に取り扱うジェネリック医薬品については、先発品で長年の使用実績があり、安全性が確認され、再審査後に販売されるため、予期せぬ副作用が多発するリスクは小さいですが、このようなことが生じれば、製造の中止、製品の回収、あるいは販売の中止を余儀なくされる可能性があります。その場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(海外に関するリスク)
当社グループは、医薬品の輸出、開発、製造、販売等で海外においても積極的に事業を展開しておりますが、当該国の政治不安や経済情勢などの悪化、法規制や行政指導等への抵触、現地の労使関係等に関するリスク等が存在します。これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、現地子会社や提携企業と定期的に情報収集・情報交換を実施し、問題が発生した場合には連携して迅速な問題解決を行うことにより、リスクの軽減に努めております。
(「医薬品医療機器等法」等に関するリスク)
当社グループは、「医薬品医療機器等法」等関連法規の規制を受けており、事業所所在地の各都道府県の許可・登録・免許及び届出を必要としております。当社グループは、十分な法令遵守体制をとっておりますが、医薬品製造販売業の許可等に法令違反があった場合には、監督官庁から業務停止、許可等の取り消し等が行われ、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(訴訟等に関するリスク)
当社グループが継続して事業活動を行う過程において、製造物責任、環境、労務、その他の事項に関する訴訟を提起される可能性があります。また、当社グループは新薬に加え、ジェネリック医薬品を販売しておりますが、先発医薬品等の特許等については徹底した調査を行った上で販売しているものの、先発医薬品メーカーから特許訴訟を提起される可能性があり、そのような場合には当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
(法令違反に関するリスク)
当社グループでは、法令等の遵守及びコンプライアンスの徹底を図っており、このために「日本ケミファグループ法令等遵守行動基準」や「法令等遵守の推進に関する規程」を制定し、全役職員を対象としたコンプライアンス教育や研修の実施や、内部通報制度及び内部監査の強化などの対策を講じております。しかしながら、法令違反等が発生した場合には、行政処分等による当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、損害賠償義務等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(新型コロナウイルス感染拡大に関するリスク)
新型コロナウイルス感染拡大に伴う影響について、MRの病院への訪問が制限されているなか、WEBやEメールを活用するなどして、医療機関の要望に沿う形で情報提供活動を展開し、その影響を最小限にすべく取り組んでいます。また、「NCグループ新型コロナウイルス感染予防に向けた行動指針(2021年1月7日付)」に沿い、感染症拡大防止および予防のため、在宅勤務の推奨、工場への訪問に関する事前許可や、WEB会議の利用など様々な対応を行うことで、全ての医療関係者および従業員の安全を確保しつつ、ベトナム工場を含めた製造ラインの稼働を維持し医薬品の安定供給に支障が出ることが無いように努めております。これに加えて、資金面でも十分な手当てがされており、現時点では事業活動に与える影響は軽微であるものと判断しております。しかしながら、事態の収束の長期化に伴う受診抑制によるマーケット変動など、今後の状況によっては研究開発、生産供給体制、営業活動等の事業活動に支障が生じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
上記の他、金融市況・為替変動によるリスク、コンプライアンスを含むコーポレート・ガバナンス関連リスク、ITシステムトラブルによるリスク、情報漏洩によるリスクなど、様々なリスクが存在しており、ここに記載されたものが当社グループの全てのリスクではありません。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績などの状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当期におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が残るなか、ワクチン接種が進んだことで個人消費や企業収益などは緩やかながらも回復に向けた動きが見られましたが、昨年末からのオミクロン株の流行により個人消費など一部に陰りがみられています。かかる状況下、昨年から生じている企業間物価の上昇に加えて、米国を中心とした金融引き締めや、ロシアのウクライナ侵攻を契機とした原材料や燃料価格の高騰などにより、再び先行きの不透明感が高まっています。
医薬品業界につきましては、2021年4月に初めて通常改定の中間年に薬価改定が実施されたことに加え、新型コロナウイルス感染症の再拡大による患者さんの受診抑制が通期にわたり影響しました。また、ジェネリック医薬品については、他社品質問題等に端を発した市場全体の供給不足に対応するため、各社による増産対応や設備投資などを通じた安定供給確保のための努力が続きました。
このような環境下で、当社グループは引き続き「信頼できるジェネリック医薬品」の普及に貢献するべく、ジェネリック医薬品の高品質維持と安定供給確保に注力するとともに、生産性及び効率性の向上に資する施策を推し進めてきました。
また、ジェネリック医薬品事業と並行して取り組んでいる、「アルカリ化療法剤」や「自社開発創薬」に関しては、他社とのアライアンスを活用した革新的な創薬テーマへのチャレンジや、国内外企業への導出活動を本格化しています。当社グループは、まだ十分な治療薬がない病気に苦しむ患者さんのために、画期的新薬の開発に取り組んでいます。
セグメントの経営成績は次のとおりです。
① 医薬品事業
ジェネリック医薬品については、中間年の薬価改定や新型コロナウイルス感染症による受診抑制等の影響の一方で、前期発売した製品の通期売上寄与に加え、他社品質問題等を起因とした代替需要への対応に継続して取り組んできました。
また、当期においては、2021年6月に不眠症治療薬である「エスゾピクロン錠1mg・2mg・3mg『ケミファ』」(以下、エスゾピクロン)、7月にはうつ病・疼痛治療薬の「デュロキセチン錠20mg・30mg『ケミファ』」の2成分5品目を発売し、中でもエスゾピクロンについては、安定供給の観点から、自社開発・自社グループ製造品であることが評価されており、市場における高いシェアを維持しています。
営業活動では2020年7月のグループ構造改革で新たに設置した「グループ医薬営業本部」のもと、従来の卸ルートに加えて、調剤薬局チェーンやグループ病院などの多様な販路に対応しながら効率的に営業活動を行う販売戦略が徐々に浸透し、実績へと結びついてきています。
2020年7月に導入した長期収載品「クラリシッド」は、当期において通期にわたり当社グループの売上に寄与しています。同製品は競合品が多い中でも長年ブランド力を維持しており、同製品を手掛かりとした医療機関へのアプローチにより、ジェネリック医薬品事業とのシナジーを創出しています。
また、主力品であるアルカリ化療法剤「ウラリット-U配合散・同配合錠」(以下、ウラリット)につきましては、ジェネリック医薬品への置き換えが進んでいるものの、子会社である日本薬品工業株式会社が販売する同剤のジェネリック医薬品「クエンメット配合散・同配合錠」と合わせて当社グループで製造・販売できる状況を活かし、痛風ならびに高尿酸血症における酸性尿改善の重要性に関する啓発活動を強化してきました。
以上の結果、輸出・導出なども含めたジェネリック医薬品の売上高は、26,283百万円(前期は25,532百万円)、ウラリットをはじめとする主力品・新薬の売上高は1,754百万円(前期は1,790百万円)となり、医療用医薬品全体の売上高は、28,037百万円(前期は27,322百万円)となりました。
なお、医療用医薬品の売上高比率を薬効別にみますと、循環器官用薬及び呼吸器官用薬27.7%、消化器官用薬15.8%、ウラリットなどの代謝性医薬品14.9%、神経系及び感覚器官用薬13.0%、病原生物用薬6.2%、腫瘍用薬2.3%、その他の医薬品20.1%となっています。
これまでのアレルギー検査の概念を覆す、画期的なアレルギースクリーニング検査キット「ドロップスクリーン 特異的IgE 測定キット ST-1」(以下、「ドロップスクリーン」)と、その測定装置である「ドロップスクリーンA-1」(製造販売元:上田日本無線株式会社)については、その新規性がマスコミでもたびたび取り上げられる中、導入された医療機関からは大変高い評価をいただいています。当期は、発売後に販売拡大のボトルネックとなっていた試薬の量産体制整備を鋭意進めるとともに、国内での普及活動にさらに精力的に取り組みました。
また、自社開発のアレルギー検査薬「オリトンIgE『ケミファ』」については、2020年度まで中国における測定試薬ラインナップの製造認可が順調に拡大していましたが、2021年6月に中国の監督当局である国家薬品監督管理局(NMPA)による大幅な条例変更があり、追加品目の申請・認可取得に遅れが発生している状況となっています。
以上により、医薬品事業全体の売上高は31,501百万円(前期は30,423百万円)、営業利益は729百万円(前期は546百万円)となりました。
② その他
「その他」の事業については、受託試験事業を行う子会社の株式会社化合物安全性研究所において、非臨床事業における農薬・化学物質に関する非臨床試験の受託が増加したことや、アカデミア及び再生医療等製品を含む創薬ベンチャーからの受注取り込みがあった一方で、「収益認識に関する会計基準」等の適用による影響がありました。
ヘルスケア事業及び不動産賃貸事業も含めた「その他」の事業全体の売上高は1,004百万円(前期は1,117 百万円)、営業利益は96百万円(前期は17百万円)となりました。
以上の結果、当期の各セグメントを通算した業績は、当期の連結売上高が32,506百万円(前期は31,541百万円)、連結営業利益が825百万円(前期は564百万円)、連結経常利益が1,022百万円(前期は582百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益が700百万円(前期は495百万円)となりました。
なお、当社グループは当連結会計年度の期首から「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。この結果、前連結会計年度と収益の会計処理が異なることから、当期における経営成績に関する説明は、対前期の増減額及び増減率(%)を記載せず説明しております。なお、収益認識会計基準等の適用の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。
当期における連結ベースの現金及び現金同等物は、営業活動により1,801百万円増加いたしました。また、投資活動においては35百万円の増加、財務活動においては793百万円の減少となりました。この結果、当期末の現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は11,645百万円(前期末比 10.8%増)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当期において、営業活動による資金は主に売上債権及び契約資産の増加並びに棚卸資産の増加があったものの、税金等調整前当期純利益の計上及び仕入債務の増加などにより、1,801百万円の増加(前期は1,503百万円の増加)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当期において、投資活動による資金は主に有形固定資産の取得による支出があった一方、主に有形固定資産の売却による収入などにより、35百万円の増加(前期は1,024百万円の減少)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当期において、財務活動による資金は主に配当金の支払および長期借入金の減少により、793百万円の減少(前期は29百万円の増加)となりました。
流動資産は前期末に比べて3,048百万円増加し、33,495百万円となりました。これは、主に現金及び預金、売上債権および棚卸資産の増加によるものです。
固定資産は前期末に比べ718百万円減少し、15,957百万円となりました。これは、主に減価償却費の計上、及び賃貸用不動産の売却によるものです。この結果、総資産は前期末に比べて2,329百万円増加し、49,453百万円となりました。
流動負債は前期末に比べて2,647百万円増加し、16,750百万円となりました。これは、主に仕入債務の増加によるものです。
固定負債は前期末に比べて804百万円減少し、14,202百万円となりました。これは、主に長期借入金の減少によるものです。
この結果、負債合計は前期末に比べて1,843百万円増加し、30,952百万円となりました。
純資産合計は前期末に比べて486百万円増加し、18,501百万円となりました。これは、主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上によるものです。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されています。連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況をもとに、種々の見積りと仮定を行っていますが、それらは連結財務諸表に影響を及ぼします。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりです。
① 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しています。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しています。
将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積に影響を与える要因が発生した場合は、回収可能性の見直しを行い繰延税金資産の金額の修正を行うため、当期純損益金額が変動する可能性があります。
② 退職給付債務及び退職給付費用
退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等に基づいて計算しています。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い長期債利回りを参考に決定し、また、年金資産の長期期待運用収益率は、過去の運用実績及び将来見通し等を基礎として設定しています。割引率及び長期期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。
③ 固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、収益性が著しく低下した資産または資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。
固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
なお、2019年度末から続く新型コロナウイルス感染症の拡大は世界中の社会・経済活動に深刻な影響を及ぼしており、その影響が長期化しております。当社グループにおいては、営業活動においてMRの病院への訪問が制限されているなか、WEBやEメールを活用するなどして、医療機関の要望に沿う形で情報提供活動を展開し、その影響を最小限にすべく取り組んでおり、また研究開発、生産活動については概ね計画どおり活動を継続しており、現時点において新型コロナウイルス感染症の拡大が当社グループの事業活動に及ぼす影響については限定的であると認識しております。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、製造原価によっております。
当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画を立て、これにより生産をしております。
受注生産は一部の子会社で行っておりますが、受注残高の金額に重要性はないため、記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当連結会計年度に係る販売高については、当該会計基準等を適用した後の数値となっており、前年同期比(%)は記載しておりません。
3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
特記すべき事項はありません。
新薬の研究開発については、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「CiCLE事業」に採用されている、オピオイドデルタ受容体作動薬「NC-2800」(抗うつ、抗不安薬)については、2021年6月に住友ファーマ株式会社(旧 大日本住友製薬株式会社)と共同研究開発契約及びオプション契約を締結し、同社がCiCLE事業の研究開発に分担機関として参画しました。P2X4受容体拮抗薬「NC-2600」については、これまでの神経障害性疼痛に加え、複数の適応症にフォーカスした開発を展開しています。そのうち慢性咳嗽治療薬としては、既存薬にはない新しい機序を有する可能性が示されており、さらに開発を進め早期の導出を目指していきます。
また、進歩が著しいAIなど新技術を活用した手法を導入することで、有望な創薬テーマの創出や開発プロセスの迅速化、業務の効率化などにつなげたいと考え、現在、デジタル技術に強みを持つベンチャー企業2社への出資や業務提携を行っています。
さらに、当社グループがウラリットで培ってきたアルカリ化療法剤については、さまざまな方面で展開が進んでいます。
まず、創薬ベンチャーであるDelta-Fly Pharma株式会社(以下、DFP社)とライセンス契約を締結した抗がん剤「DFP-17729」は、がん細胞周辺の微小環境改善作用を有し、酸性に傾いているがん細胞周囲の微小環境をアルカリ化することによる難治性がんの画期的治療効果が期待されています。DFP社は2021年4月にDFP-17729と他の抗がん剤の併用群、並びに他の抗がん剤単独群との比較試験であるフェーズⅡをスタートしており、2022年度中には、本剤の有用性を検証し、その結果次第で、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ承認申請を行うことが可能か、あるいはフェーズⅢの準備に取り掛かるかの判断を行う予定です。試験の対象となる膵臓がんは早期発見が難しく、特に末期では満足できる治療剤がない状況にあるため、一日も早い新薬の開発が期待されています。
また、当社グループが協力を行いながら東北大学で進められている、アルカリ化療法剤と慢性腎臓病との関連を解明する臨床研究「CKOALA Study」は、初期的なデータ解析を終えて手ごたえを得たことから、AIリアルワールドデータを活用した追加の解析を行っています。研究結果についてはいずれ学会で発表が行われ、論文化されるものと見込んでおり、当社といたしましてはそれらの成果を踏まえ適応拡大に向けた検討を進めていきます。さらにこの研究で集められたデータを応用し、クエン酸塩の機能性表示食品としての開発を進めているところで、現在は1品目が消費者庁に受理されています。
なお、医薬品事業における研究開発費の総額は
(注) 「その他」の事業では、研究開発活動を行っていないため記載しておりません。