文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループは「医薬品を中核としたトータルヘルスケアで人々の健康で豊かな生活に貢献する」ことを経営理念とし、国内外において存在価値のある企業グループとして発展することを目指しております。
(1)の経営理念の下、2000年以降掲げてきた成長戦略「3つのミッション」について、それぞれのミッションをさらに発展させるべく、「ジェネリック医薬品」、「臨床検査薬」、「新薬開発」という「3つの事業ドメイン」の構成とし、それらの事業ドメインを積極的に海外へ展開してまいります。
国内の医薬品業界においては、2023年4月に2度目となる薬価の中間年改定が実施され、薬剤費ベースで約3,100億円の削減が行われました。また、ジェネリック医薬品については安定供給の確保に向けた議論が進み、2024年度の薬価制度改革では、不採算品再算定の特例適用や安定供給体制が薬価に反映される新たな評価制度が導入されることとなりました。
このような環境下で、当社グループは引き続き「信頼できるジェネリック医薬品」の普及に貢献するべく、ジェネリック医薬品の品質向上と安定供給に注力するとともに、生産性及び効率性の向上に資する施策を推し進めてきました。
また、ジェネリック医薬品事業と並行して取り組んでいる、「アルカリ化療法剤」や「新薬開発」に関しては、他社とのアライアンスを活用した革新的な創薬テーマへのチャレンジや、国内外企業への導出活動に努めています。当社グループは、まだ十分な治療薬がない病気に苦しむ患者さんのために、画期的新薬の開発に取り組んでいます。
当社グループは2000年以降掲げてきた成長戦略「3つのミッションプラス1」について、それぞれのミッションが事業として立ち上がるフェーズとなり、「ジェネリック医薬品」、「臨床検査薬」、「新薬開発」という「3つの事業ドメイン」を構成するに至っており、それらの成果を「プラス1」として引き続き「海外に展開」してまいります。
当社グループは品質を第一に、製造人員の増強や勤務体系の見直しによる体制の整備や設備投資の実施などにより増産に努めている一方、販売面ではグループ全体の営業活動を一元管理する「グループ医薬営業本部」のもと、多様な販路へ効率的に営業活動を行うため、B to B対応の強化やSFA(Sales Force Automation:営業支援システム)を活用したMR活動におけるPDCAサイクルの最適化や高速化、AIを使った顧客管理・MR活動計画の立案などに取り組んでまいります。
臨床検査薬の主力品であるアレルギースクリーニング機器・試薬「ドロップスクリーン」は、わずか1滴の血液で、41項目のアレルゲンを、30分という短時間で測定することができ、これまで検査センターに外注していたアレルギー検査を院内で測定することを可能にした製品であり、導入された医療機関からは高い評価をいただいています。2023年度は当期の目標である国内累計設置台数1,000台を突破、2025年度には累計設置台数2,000台を目指してまいります。今後も販売体制の拡充や製品の改良、製造コストの低減など、さらなる顧客満足度の向上や収益性の改善に努めていきます。また、ドロップスクリーンは、海外からも注目されており、引き続き製品開発、各国法規制対応、パートナー選定など、海外での発売に向けて取り組んでまいります。
(イ)アルカリ化療法剤
当社グループがウラリットでその技術とノウハウを培ってきたアルカリ化療法剤については、がん領域、CKD(慢性腎臓病)領域などで開発を進めており、加えて、健康食品への展開も図っています。
そのうち、がん領域については、抗がん剤開発に特化した創薬系バイオベンチャー企業であるDelta-Fly Pharma株式会社(以下、DFP社)とライセンス契約を締結している抗がん剤候補化合物「DFP-17729」が、本剤と他の抗がん剤の併用群、ならびに他の抗がん剤単独群との比較によるフェーズⅡ試験を2022年度中に終了し、現在次のフェーズに向けた準備が進められています。またCKD領域については、当社グループが協力を行いながら東北大学で進められていた臨床研究「CKOALA Study」において、CKDに対するウラリットの有用性が示唆されており、現在は試験で得た結果について責任医師による論文化が進められています。
アルカリ化療法剤の新領域での展開は、ウラリット発売以来の歴史で培った当社ならではの独自のテーマであり、この画期的なテーマで医療と社会への貢献を果たしてまいります。
(ロ)自社開発創薬
自社での新薬開発については、有望化合物の探索研究に重点を置き、得られた成果を早期段階で導出することで、開発上のリスクを軽減しつつ効率的に開発を進めていきます。また、パイプラインの拡充やAIなどの新技術を活用した研究開発を進めるため、各分野において最先端の研究を行っている企業・研究機関とのアライアンスにも積極的に取り組んでいます。
「NC-2600」(P2X4受容体拮抗薬)は神経障害性疼痛に加え、新たに複数の疾患への適応可能性が期待されています。そのうち慢性咳嗽に対しては、新規の作用機序を有する薬剤として開発を進め早期の導出を目指しています。
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「CiCLE事業」に採択されている、抗うつ・抗不安薬NC-2800(オピオイドδ受容体作動薬)は、2023年度にフェーズⅠが終了し、今後はフェーズⅡa実施に向けて準備を進めていきます。また、フェーズⅡbに移行する時点で、全世界をテリトリーとした開発・販売権を得られるオプション権を住友ファーマ株式会社に対して付与しており、オプション権を行使してライセンス契約に至った場合には、開発の進展に伴うマイルストーン及びロイヤリティ収入が期待できると考えています。
DFP社と日本国内における独占的販売権を取得するライセンス契約を締結している「DFP-14323」(抗がん剤候補化合物)については、DFP社が実施したフェーズⅡ試験において、DFP-14323と標準用量の半量のアファチニブを併用した場合の無増悪生存期間が、アファチニブやオシメルチニブの単剤にて報告されている期間より長いという結果がでました。この結果を基にDFP社は独立法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)と相談を重ねてまいりましたが、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者(ステージⅢ/Ⅳ)を対象に、DFP-14323とアファチニブ半量の併用群とアファチニブ単独群とのフェーズⅢ比較試験(優越性検証)を開始しました。
海外での展開状況は、2024年4月時点で中国など4ヵ国において8品目の承認を取得し販売を行っており、2026年度までに5ヵ国14品目の展開を目指しています。
ベトナムでは、Nippon Chemiphar Vietnam Co., Ltd.が2022年9月に承認を取得したレバミピドが、品質を評価されベトナム入札制度下で一番高い薬価での販売が認められる“Group1”を取得していることから、その優位性を活かし、現地卸を通じて病院・薬局チェーン等にマーケティングを行っています。
また中東・アフリカ等においては、2022年3月に世界銀行グループの国際金融公社(IFC)とのアドバイザリー契約を締結し、これまでIFCの助言とネットワークを活用し、中東・アフリカ地区の現地調査を進めてまいりました。現在は進出を図る対象国およびパートナーを絞り込み、現地で販売する具体的な複数品目について交渉を進めています。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、持続可能な社会の実現に向け、グループの「サステナビリティ基本方針」を定めるとともに、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」を設置し、サステナビリティ推進活動を行っております。
1. サステナビリティ基本方針
日本ケミファグループは「医薬品を中核としたトータルヘルスケアで人々の健康で豊かな生活に貢献する」という経営理念のもと、グループの掲げるミッションを達成することで企業価値の向上を目指すとともに、事業活動を通じサステナブルな社会の実現への役割を果たしていきます。
2. 委員会設置の背景と目的
サステナブルな社会の実現に向けた企業や個人の取り組みは喫緊の課題であり、当社グループとして国連の定めた「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標:SDGs)」や気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が公表した TCFD 提言の中から、グループの事業活動を通じ、環境・社会・経済的課題に関する取り組みを着実に推進するために当委員会を設置しました。
3. 委員会の構成
取締役会をレポーティングラインとし、代表取締役社長が委員長を務めます。また、委員は委員長が指名することとし、社長室、経営企画部、広報室、総務部、人事部、管理部の役職員で構成します。
4. 委員会の役割
委員会は主に以下の活動を行うこととし、その活動内容について定期的に取締役会に報告します。
・サステナビリティに関する目標、指標、施策等の企画・立案・提言
・サステナビリティに関する施策の実施状況や目標の達成状況についてのモニタリング
・サステナビリティに関する見識を深め活動の浸透を図るための教育・啓発・周知
・委員会での協議内容、検討事項及び活動内容等の取締役会への報告・付議提案
・その他、取締役会が必要と認めた事項
人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下の通りであります。
当社グループが各事業分野において競争力を強化しイノベーションを生むことができる体制を作り出すためには、「人材の確保」が最も重要だと考えております。優秀人材の採用、採用した人材の強化(教育)、社員のエンゲージメント・リテンションなど、継続したキャリア形成のサポートが必要と考えます。具体的には次のとおり取り組みを行っております。
当社グループにおいて、全社的なリスク管理は、リスク管理委員会において行っておりますが、サステナビリティに係るリスクの識別・優先的に対応すべきリスクの絞り込みについて、サステナビリティ推進委員会の中でより詳細な検討を行い、共有しております。優先的に対応すべきリスクの絞り込みについては、当社グループに与える財務的影響、当社グループの活動が環境・社会に与える影響、発生可能性を踏まえ行われます。
また、サステナビリティ推進委員会においては、当社グループの「サステナビリティ基本方針」のもと、サステナブルな社会の実現に向け、国連の定めた「Sustainable Development Goals」や気候変動関連財務開示タスクフォース(TCFD)が公表した「TCFD提言」の中から、グループの事業活動に関係する環境・社会・経済的課題について取組を推進することを目的としております。
人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標
当社グループでは、上記「戦略」において記載した多様な働き方の受容を含む人材育成の方針及び社内環境整備に関する方針について、指標のデータ管理と共に具体的な取り組みが行われている当社及び日本薬品工業㈱の実績を以下に記載しております。
①提出会社
②日本薬品工業㈱
※管理職に占める女性労働者の割合、及び年次有給休暇取得率の目標については、一般事業主行動計画として定め労働局に提出しております。
※男性の育児休業取得率については、短期間であっても子の誕生から2年以内に全対象者が取得するように社内ルールとして取得を義務化しているため取得率は原則100%となりますが、年度に区切って算出する場合は100%を下回る場合、上回る場合があります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(薬価制度・医療保険制度変更に関するリスク)
薬価については、2年に一度の診療報酬改定の際に行われた薬価改定が、2021年度以降は通常改定の中間年にも実施されることとなり、これまで以上のスピードで取扱い品目の薬価が引き下げられています。また、増大する医療費の抑制を目的として医療保険制度の見直しも行われており、その内容によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がありますので、薬価制度改革及び医療保険制度の動向を注視し、経営戦略に反映したいと考えております。
(医薬品の研究開発に関するリスク)
当社グループの新薬の研究開発は探索研究に重点を置き、早期段階の導出や、他社とのアライアンス、外部組織からの支援等により、開発リスクの軽減を図っております。しかしながら、臨床試験で新薬の候補品が期待どおりの効果を得られなかったり、安全性が危惧される結果となった場合など、研究開発が計画どおり進行しない場合には、開発期間の延長、開発の中断あるいは中止する場合があります。また、臨床試験が計画どおりの結果となった場合でも、その後の導出交渉において導出条件交渉が長引いたり、条件がまとまらないことにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクに対しては臨床試験結果をより確実に予想するバイオマーカーの導入や、ターゲットエンゲージメントの取得などを早期から実施するとともに、導出候補先のニーズを的確に情報収集する等のリスク回避を試みています。
当社グループでは、ジェネリック医薬品についても積極的に開発投資を行い、研究開発活動を進めております。ジェネリック医薬品の研究開発活動は、開発品目の上市予定時期の数年前から開始されます。この開発期間においては、各段階のリスクを最小限にする取り組みを種々行っているところですが、必ずしも期待通りに上市を果たし収益獲得に結びつかない可能性があります。その場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(体外診断用医薬品の研究開発に関するリスク)
体外診断用医薬品の開発において、他測定法のデータとの相関性や保存安定性などが得られない結果となった場合など、開発が計画通り進行しない場合には、開発期間の延長、開発の中断あるいは中止する場合があります。これらのリスクを最小限にする取り組みを種々行っているところですが、必ずしも期待通りに上市を果たせない可能性があります。
(原材料・商品の仕入に関するリスク)
仕入先会社及び製造国において、規制上の問題、製造上のトラブル、又は火災、地震その他の災害及び輸送途中の事故等により、原材料及び商品の仕入に支障が生じた場合、当社グループの関係部門と密接な連携を図り対策を講じますが、仕入が停止し代替品の調達が困難な場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクに対応するために、当社グループでは常に市場の動向を把握し、重要な原材料・商品については適切な在庫管理を行い、また原薬については複数ソースから調達するなど、サプライチェーンリスクの管理・対応に努めております。
(製造の遅滞又は休止に関するリスク)
当社グループは有事の際のBCP対応として、製品の安定供給や災害対応に関する規定等に従った対応を図っております。また、当社グループは国内2工場、海外1工場を有しており、各工場における製造機器の共通化を進めると共に、各製品を複数の工場で製造できる体制(バックアップ体制)を整えるなどのリスク分散を図っております。しかしながら、設備の故障、技術的もしくは規制上の問題、又は火災、地震その他の災害により、製品の製造が停止又は遅延した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(ジェネリック医薬品の競争に関するリスク)
当社グループは毎年の薬価引き下げによって、利益確保が難しくなっている中で、販売している製品が不採算とならないよう、適正利潤を含めた販売に努めております。また、他社競合品の市場価格が当社製品を含めて、翌年の薬価に反映されるケースや、納入している医療機関・保険薬局との競争により、当社製品も思わぬ価格の低下を強いられることがあります。さらに近年ではオーソライズドジェネリックの浸透により、ジェネリック医薬品市場のシェアに大きな変化が起きており、その動向次第では当社グループが計画していた売上高を確保することが困難となり、それにより安定供給を見据えて製造した製品の在庫が過多となる可能性があります。その場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(体外診断用医薬品の競争に関するリスク)
診断薬市場は競争が激しく、技術革新のスピードも速いため、競合他社の新製品が市場に投入されることで、当社グループの体外診断用医薬品が市場での競争力を失うリスクも存在します。その場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(医薬品の品質に関するリスク)
医薬品等の品質管理の基準(GQP省令)遵守については、全ての製造業者とGQP省令に基づき取決めを締結し、グループ会社の製造所をはじめ、原薬や製剤の製造業者の製造管理及び品質管理の基準(GMP省令)遵守の確保に努めています。また、それら製造所に対する定期的な監査の実施や、承認書と製造実態の整合性に係る点検を毎年実施することにより、より高度にGMP遵守を推進しています。一方、GQP省令に規定された三役(総括製造販売責任者、品質保証責任者、安全管理責任者)の定期的会議を開催し、品質保証部門と安全管理部門の緊密な連携により健康被害の防止の強化に努めております。しかしながら、原材料調達先、当社グループ製造所や製造委受託先等の製造プロセスにおける不備により最終製品の品質に問題が生じた場合や関連法令が遵守されない場合には、製造の中止、製品の回収、あるいは販売の中止が生じ、製品供給の不安定化により、患者さんへ適切な医療が提供できなくなる可能性があります。このような場合には、社会的信頼リスクが生じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(医薬品の副作用に関するリスク)
製造販売後安全管理について、医薬品等の製造販売後安全管理の基準(GVP省令)及び医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準(GPSP省令)に則り安全確保措置を適正に遂行できるよう努めております。当社グループが主に取り扱うジェネリック医薬品は、先発品で長年の使用実績があり安全性が確認されているため予期せぬ副作用が多発するリスクは小さいですが可能性はゼロではなく、また先発医薬品、体外診断用医薬品、医薬部外品においては予期せぬ副作用または健康被害が発生するリスクがあります。このようなことが生じれば、製造の中止、製品の回収、あるいは販売の中止を余儀なくされ、患者さんへ適切な医療が提供できなくなる可能性があります。その場合には、社会的信頼リスクが生じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(海外に関するリスク)
当社グループは、医薬品の輸出、開発、製造、販売等で海外においても積極的に事業を展開しておりますが、当該国の政治不安や経済情勢などの悪化、法規制や行政指導等への抵触、現地の労使関係等に関するリスク等が存在します。これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、現地子会社や提携企業と定期的に情報収集・情報交換を実施し、問題が発生した場合には連携して迅速な問題解決を行うことにより、リスクの軽減に努めております。
(「医薬品医療機器等法」等に関するリスク)
当社グループは、「医薬品医療機器等法」等関連法規の規制を受けており、事業所所在地の各都道府県の許可・登録・免許及び届出を必要としております。当社グループは、十分な法令遵守体制をとっておりますが、医薬品製造販売業の許可等に法令違反があった場合には、監督官庁から業務停止、許可等の取り消し等が行われ、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(訴訟等に関するリスク)
当社グループが継続して事業活動を行う過程において、製造物責任、環境、労務、その他の事項に関する訴訟を提起される可能性があります。また、当社グループは新薬に加え、ジェネリック医薬品、体外診断用医薬品を販売しておりますが、先発医薬品、体外診断用医薬品等の特許等については徹底した調査を行った上で販売しているものの、先発医薬品、体外診断用医薬品メーカーから特許訴訟を提起される可能性があり、そのような場合には当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
(法令違反に関するリスク)
法令違反等が発生した場合には、行政処分等による当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、損害賠償義務等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、法令等の遵守及びコンプライアンスの徹底を図っており、このために「日本ケミファグループ法令等遵守行動基準」や「法令等遵守の推進に関する規程」を制定し、全役職員を対象としたコンプライアンス教育や研修の実施や、内部通報制度及び内部監査の強化などの対策を講じております。
(感染症に関するリスク)
新型コロナウイルス感染症をはじめ、新興・再興の感染症の地域的な流行や世界的なパンデミックにより、当社グループの本社・工場・研究所等でのクラスター発生による閉鎖または事業活動の停止、原材料調達先であるサプライヤーの操業停止や物流への影響が発生する可能性があります。また、医療機関に混乱が生じた場合には、製品の安定供給や安全性情報の収集に支障が発生したり、医療従事者への製品の情報提供や臨床試験の進行が遅延したりする可能性があり、そのような場合には当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、行動指針を策定して感染症拡大防止および予防を徹底し、製造ラインの稼働を維持し医薬品の安定供給に支障が出ることが無いように取り組んでおります。
上記の他、金融市況・為替変動・原材料価格高騰によるリスク、コンプライアンスを含むコーポレート・ガバナンス関連リスク、システムトラブルによるリスク、情報漏洩によるリスクなど、様々なリスクが存在しており、ここに記載されたものが当社グループの全てのリスクではありません。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績などの状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当期の事業環境につきましては、国内経済は、物価上昇により個人消費が一時足踏みしたものの実質賃金の改善期待などにより緩やかに持ち直していることに加えて、堅調な企業収益が設備投資の支えとなり、景気は総じて緩やかな回復傾向が続いた一方で、地政学的緊張の高まりや米国新政権の関税政策など国際情勢面で依然として不確実性の高い状況が続いた一年でした。
国内の医薬品業界においては、2024年4月の薬価改定により薬価ベースで4.67%の引き下げが行われ、同年10月からは、医療保険財政の改善を図ることを目的とした長期収載品の選定療養制度が開始されました。
そのような状況の中、当社グループにおいては、薬価改定の影響があったものの、拡販に注力しているジェネリック医薬品や近年発売品の寄与、また臨床検査薬ではアレルギースクリーニング機器・試薬「ドロップスクリーン」の医療機関での採用が引き続き順調に進んだことが売上増収に貢献しました。
セグメントの経営成績は次のとおりです。
① 医薬品事業
ジェネリック医薬品市場においては、他社品質問題を起因とした供給不足に対応すべく、各社が増産対応に尽力する中で、当社グループにおいても、品質を第一に安定供給強化のための取り組みを継続しており、2024年8月には子会社の日本薬品工業株式会社(以下、「NPI社」)において、つくば工場3号棟2階の新設備実装工事を完了しました。
販売面においては、2024年6月に中枢神経系用薬「ゾニサミドOD錠25mg・50mg TRE『ケミファ』」、12月に血液・体液用薬「リバーロキサバンOD 錠10mg・15mg 『TCK』」、2成分4品目を発売しました。以上に加えて、利益品目の拡販に注力したことや10月からの長期収載品の保険給付の見直しが行われ、一部に選定療養の仕組みが導入されたことにより、ジェネリック医薬品への切り替えがさらに進み、売上増収となりました。
主力品・新薬の売上高については、薬価改定の影響等により売上高は前期を下回る結果となりました。
「ドロップスクリーン」は、1滴の血液で41項目のアレルゲンを30分で測定可能であり、検査センターへのアウトソーシングが主流であったアレルギー検査の医療現場での実施を実現し、新しい市場を創出しています。社内外の連携を軸とした営業施策の推進も奏功し、国内での設置台数は1,400台超となりました。また、当期は例年以上に花粉飛散量が増加したこともあり、売上高は引き続き増収基調のもと推移しました。
以上により、医薬品事業全体の売上高は31,386百万円(前期比6.0%増)、営業利益は506百万円(前期は営業損失600百万円)となりました。
② その他
「その他」の事業については、受託試験事業(CRO)を行う子会社の株式会社化合物安全性研究所において、医療機器の生物学的安全性試験が医療機器メーカーやアカデミアからの引き合いで伸長したことに加え、人材強化を進めてきた臨床事業では医師主導治験の受注が倍増しました。
以上により、ヘルスケア事業及び不動産賃貸事業も含めた「その他」の事業については、売上高が1,184百万円(前期比4.2%増)、営業利益が99百万円(前期比6.7%減)となりました。
これらの結果、当期の各セグメントを通算した連結の業績は、売上高が32,570百万円(前期比5.9%増)、営業利益は606百万円(前期は営業損失494百万円)、経常利益は443百万円(前期は経常損失219百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、294百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失180百万円)となりました。
当期における連結ベースの現金及び現金同等物は、営業活動により265百万円減少いたしました。また投資活動においては1,655百万円の減少、財務活動においては305百万円の減少となりました。
この結果、当期末の現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は7,021百万円(前期末比23.7%減)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当期において、営業活動による資金は、主に税金等調整前当期純利益の計上があった一方、仕入債務の減少及びその他の流動負債の減少などにより、265百万円の減少(前期は296百万円の増加)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当期において、投資活動による資金は、主に有形固定資産の取得による支出などにより、1,655百万円の減少(前期は3,139百万円の減少)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当期において、財務活動による資金は主に配当金の支払などにより、305百万円の減少(前期は1,447百万円の増加)となりました。
流動資産は前期末に比べて1,769百万円減少し、30,066百万円となりました。これは、売上債権が増加した一方、主に現金及び預金の減少によるものです。
固定資産は前期末に比べ2,072百万円増加し、19,785百万円となりました。これは、主に建物及び構築物並びにリース資産の増加によるものです。
この結果、総資産は前期末に比べて302百万円増加し、49,851百万円となりました。
流動負債は前期末に比べて1,524百万円減少し、12,261百万円となりました。これは、主に仕入債務の減少によるものです。
固定負債は前期末に比べて1,121百万円増加し、18,422百万円となりました。これは、主にリース債務の増加によるものです。
この結果、負債合計は前期末に比べて403百万円減少し、30,684百万円となりました。
純資産合計は前期末に比べて706百万円増加し、19,167百万円となりました。これは、主に為替換算調整勘定の増加及び親会社株主に帰属する当期純利益の計上等によるものです。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されています。連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況をもとに、種々の見積りと仮定を行っていますが、それらは連結財務諸表に影響を及ぼします。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりです。
① 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しています。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しています。
将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積に影響を与える要因が発生した場合は、回収可能性の見直しを行い繰延税金資産の金額の修正を行うため、当期純損益金額が変動する可能性があります。
② 退職給付債務及び退職給付費用
退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等に基づいて計算しています。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い長期債利回りを参考に決定し、また、年金資産の長期期待運用収益率は、過去の運用実績及び将来見通し等を基礎として設定しています。割引率及び長期期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。
③ 固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、収益性が著しく低下した資産または資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。
固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、製造原価によっております。
当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画を立て、これにより生産をしております。
受注生産は一部の子会社で行っておりますが、受注残高の金額に重要性はないため、記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
特記すべき事項はありません。
痛風・高尿酸血症治療薬として1988年に発売したウラリットで培ってきた当社独自のアルカリ化療法のノウハウを活用し、異なる疾患領域でも医療と社会への貢献を果たすため、社外のビジネスパートナーと連携しながら、がん領域、慢性腎臓病領域、健康食品領域の3つの分野で展開を進めています。
そのうち、がん領域においては、抗がん剤開発に特化した創薬系バイオベンチャー企業であるDelta-Fly Pharma株式会社(以下、「DFP社」)とライセンス契約を締結している「DFP-17729」は、がん細胞周辺の微小環境改善作用を有し、酸性に傾いているがん細胞周囲の微小環境をアルカリ化することで、難治性がんの治療効果が期待されています。膵臓がん患者を対象としたフェーズⅡ/Ⅲ試験が2025年3月に開始されました。
慢性腎臓病(以下、CKD領域)においては、当社グループが協力を行い、東北大学で進められていた、アルカリ化療法剤のCKDに対する効果を検討する臨床研究「CKOALA Study」においてウラリットの有用性が示唆され、得られた結果が2024年6月にClinical and Experimental Nephrology のWeb 版に掲載されました。また、2024年7月からは名古屋大学において、CKDにおける代謝性アシドーシスのアルカリ化療法による腎保護効果について医師主導臨床研究が開始され、症例登録が進められています。
健康食品領域においては、これまで得られたデータを応用し、健康食品や保健機能食品などへの展開も進めています。UHA味覚糖株式会社と共同開発した尿酸値を下げる機能性表示食品「サガルーノ」は、2024年9月から同社ECサイト及びAmazon、楽天市場で販売されています。
アルカリ化療法剤の新領域での展開は、ウラリット発売以来の歴史で培った当社ならではの独自のテーマであり、この画期的なテーマで医療と社会への貢献を果たしてまいります。
自社での新薬開発については、有望化合物の探索研究に重点を置き、得られた成果を早期段階で導出することで、開発上のリスクを軽減しつつ効率的に開発を進めていきます。また、パイプラインの拡充やAIなどの新技術を活用した研究開発を進めるため、各分野において最先端の研究を行っている企業・研究機関とのアライアンスにも積極的に取り組んでいます。
NC-2600(P2X4受容体拮抗薬)はNC-2600は神経障害性疼痛に加え慢性咳嗽を新たな対象疾患とし、導出活動を行っています。また、2024年7月には炎症性腸疾患に、2024年11月には子宮内膜症に対する可能性が期待できる論文が、それぞれピサ大学(イタリア)と鳥取大学から発表されました。
NC-2800(オピオイドδ受容体作動薬)は、うつ・不安をターゲットとして国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下、「AMED」)の「CiCLE事業」に採択され、この支援を受けて開発が進められています。住友ファーマ株式会社と共同研究開発契約及びオプション契約を締結しており、現在は同社がCiCLE事業の研究開発に分担機関として参画しています。2024年10月にAMEDから、フェーズⅠ試験の結果を含むマイルストーンの達成状況を踏まえてプログラムの継続承認を得ており、現在はフェーズⅡa試験の実施準備が進行中です。
DFP社と日本国内における独占的販売権を取得するライセンス契約を締結している「DFP-14323」(抗がん剤候補化合物)については、DFP社と日本国内における独占的販売権を取得するライセンス契約を締結しています。本剤は、DFP社で開発が進められており、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん患者(ステージⅢ/Ⅳ)を対象とした、優越性検証を目的とするフェーズⅢ比較試験において、国内の約30施設で症例登録が進行中です。
なお、医薬品事業における研究開発費の総額は
(注) 「その他」の事業では、研究開発活動を行っていないため記載しておりません。