文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「経営理念」、「経営ビジョン」、「モットー」からなる “EIKEN WAY”を制定し、グループ全体で“EIKEN WAY”を実践することにより持続的な企業価値の向上を図り、取引先の繁栄と株主並びに社会への貢献を果たしてまいります。
□経営理念 :ヘルスケアを通じて人々の健康を守ります。
□経営ビジョン:EIKENグループは、人々の健康を守るため、検査のパイオニアとしてお客様に信頼される製品・サービスを提供し、企業価値の向上を図ります。
□モットー :品質で信頼され、技術で発展する“EIKEN”
(2) 経営戦略等
当社グループは、事業を取り巻く環境変化に対応するとともに、サステナビリティ経営の視点を取り込むため、2030年をゴールとして、「EIKEN ROAD MAP 2030」を策定いたしました。
2030年の当社グループが目指す姿に向かっていくためのスローガンとして、
「Beyond the Field ~ Team × Challenge ~」を掲げ、従業員一人ひとりがそれぞれの能力を高め自らが活躍できる領域を広げていくこと、その高めた個の力を、領域を超えて結集しチームでチャレンジすることで新しい可能性を生み出すこと、そして、現在の事業領域から一歩踏み出し、医療のプロセスにイノベーションを起こし、検査の未来を創っていくことを目指してまいります。
「EIKEN ROAD MAP 2030」では、現在の事業領域を中核事業としつつ、注力事業分野として「がんの予防・治療への貢献」、「感染症撲滅・感染制御への貢献」、「ヘルスケアに役立つ製品・サービスの提供」の3つを設定しております。
「がん」の分野ではより治療に直結する領域に、「感染症」の分野ではより簡易な検査技術の確立に注力いたします。また、「ヘルスケア」の分野ではQOL(生活の質)の向上を目指し、遠隔診療や在宅での検査に対応できる製品・サービスを拡大してまいります。
<中長期を見据えたビジョン>
■がんの予防・治療への貢献
当社グループは、これまで検診事業(予防と早期発見)に注力し、特に大腸がんではスクリーニングプログラムをグローバルに構築し、早期発見により死亡率減少と医療費抑制に貢献してまいりました。一方で、がんの治療には高額の医療費を必要とすることから適切な治療の選択が重要です。がんの予防・早期発見だけではなく、このような医療課題に対しても対応すべく、治療薬の選択や治療効果の判定まで網羅した検査システムを開発し提供することによって、がんによる死亡率の更なる減少を目指してまいります。
■感染症撲滅・感染制御への貢献
脅威となる感染症への対策として製品ラインアップを拡充し、グローバルでの結核やマラリアなど遺伝子検査システムを展開してまいります。また、より簡易で誰でもどこでも使える迅速で精確な感染症診断システムを開発することで、医療アクセスの向上に寄与してまいります。
■ヘルスケアに役立つ製品・サービスの提供
健康寿命の延伸に向けて、遠隔診療や在宅での検査の領域を広げて、モバイルヘルスへ発展させていきます。最終的には本人が意識しなくても健康状態を知らせてくれる暮らしに寄り添ったモニタリングシステムの開発を目指してまいります。

<中期経営計画>
2025年4月から始まる新中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)では、「Challenges to Innovation」をスローガンに掲げ、収益基盤の強化に向けた抜本的な変革を進めてまいります。
事業戦略では、海外市場の開拓・拡大、製品ポートフォリオの再構築、新製品の開発を基本方針とし、持続的な成長を目指します。海外市場においては、当社の成長を牽引する便潜血検査用試薬の新規採用国の増加に加え、各国における大腸がん検診の受診対象年齢の拡大により、検査需要は今後も大幅な拡大が見込まれます。これに対応すべく、積極的な海外展開を通じてその需要を確実に取り込んでまいります。また、国連及びWHOの方針により顕微鏡検査から遺伝子検査への移行が進む結核診断では、当社のLAMP法の特長を活かした結核検査システム(TB-LAMP)をインド及びアフリカ諸国で展開し、採用の拡大を図ります。これにより、途上国における結核検査へのアクセスを向上させ、感染症の撲滅に貢献してまいります。製品ポートフォリオの再構築では、主力製品群、収益製品群及び育成製品群へ集中的に投資するとともに、低収益製品群を中心に、①適正な製品価格への見直し、②製品剤型数の整理・集約、③市場環境や需要動向を踏まえた経営資源の再配分を進め、収益力の向上を図ります。さらに、新製品開発では、便潜血検査試薬市場の拡大を目指し、便潜血測定装置の後継機の開発を進めます。加えて、国内市場での競争力強化に向けて、ラテックス試薬の新規項目の開発を推進するとともに、次世代シーケンサーを活用した多遺伝子変異検索システム(MINtS)の肺がん項目の拡充にも取り組んでまいります。これらの事業戦略を支える基盤として、需要予測の精度向上や生産拠点の統合など、生産・供給体制の整備、効率性向上にも積極的に取り組んでまいります。
財務・資本戦略としては、ROICを導入することで収益力と資本効率性を数値化したうえで、その達成に向けた具体的なアクションプランを策定し、企業価値の向上を目指します。また、成長を見据えたキャッシュアロケーションを設定し、内部留保の積極的な活用により成長分野への戦略投資を推進するほか、安定的かつ継続的な株主還元の強化にも取り組みます。
さらに、新たな視点や機動力の向上を目的に執行体制を一新し、製品開発及びグローバル浸透策を加速させるとともに、サステナビリティ戦略の推進を通じたガバナンスの強化を図ってまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、中期経営計画において2028年3月期を最終年度として、売上高46,900百万円(海外向け売上高15,100百万円)、営業利益5,900百万円(営業利益率12.6%)、ROIC 8.1%、ROE 9.3%を達成することを目指しております。

(4) 経営環境
今後の見通しにつきましては、ウクライナ情勢や中東地域をはじめとする地政学リスクの継続、資源・原材料価格の高止まり、米国における保護主義的な通商政策の強まりなどにより、依然として不確実性の高い状況が続くことが見込まれます。
当社グループは、事業を取り巻く環境変化に対応するとともに、経営構想「EIKEN ROAD MAP 2030」の下、現在の事業領域を中核事業としつつ、「がんの予防・治療への貢献」、「感染症撲滅・感染制御への貢献」、「ヘルスケアに役立つ製品・サービスの提供」の3つを注力事業分野として重点施策を展開してまいります。「がん」の分野ではより治療に直結する領域に、「感染症」の分野ではより簡易な検査技術の確立に注力いたします。また、「ヘルスケア」の分野では遠隔健診や在宅での検査に対応できる製品・サービスを拡大してまいります。2025年4月から始まる新中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)では、海外市場の開拓・拡大、製品ポートフォリオの再構築、新製品の開発を基本方針として、重点施策を展開してまいります。
また、当社グループは、持続可能な社会の実現に向けて、優先的に取り組むべき11のマテリアリティ(重要課題)を特定し、具体的な行動計画に展開しています。各マテリアリティについて、達成度を評価するための指標(KPI)を設けて進捗状況をモニタリングしながら取組を進めております。世界の人々の健康を守る企業として「医療」の課題、そして「環境」・「社会」・「ガバナンス」の課題にも積極的に取り組み、社会課題の解決を通じて、さらなる企業価値の向上と持続可能な社会の実現につなげてまいります。
次期の業績見通しにつきましては、海外での便潜血検査用試薬及び結核菌群検出試薬キットの売上増加により、売上高42,200百万円(前期比4.1%増)を見込んでおります。うち、海外向け売上高は12,050百万円(同12.5%増)と売上比率で28.6%を見込んでおります。利益面では、営業利益3,250百万円(同8.3%増)、経常利益3,100百万円(同3.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益3,770百万円(同69.2%増)を予想しております。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、当連結会計年度において、「EIKEN ROAD MAP 2030」及び中期経営計画(2023年3月期~2025年3月期)に基づき、以下の重点課題に取り組んでまいりました。
①がんの予防・治療への貢献
2024年9月及び11月には、『遺伝子解析プログラム MINtS Analyzer』及び『MINtS 肺癌マルチ CDx ライブラリー調製試薬キット』の製造販売承認を取得し、同年12月に保険適用となりました。これにより、非小細胞肺癌コンパニオン診断を目的としたEGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、BRAF遺伝子変異(V600E)の検出及び抗悪性腫瘍薬の適応判定の補助に使用が可能となりました。今後もコンパニオン診断システムの普及に向けた取組を強化してまいります。
また、便潜血検査用試薬に関し、採便容器に使用する緩衝液を改良し、ヘモグロビンの安定性及び抗体との反応性を向上させることに成功しました。この改良緩衝液はすでに市場へ展開しており、高温環境下における郵送検診の実施を可能としました。今後も郵送検診の普及を通じて、大腸がん検診の受診率向上を促進してまいります。
②感染症撲滅・感染制御への貢献
LAMP法を用いた結核検査システム(TB-LAMP)は、2023年にナイジェリア連邦共和国において巡回健診による積極的結核患者スクリーニングプログラムとして大規模に採用されました。この取組は2024年度も継続・拡大され、現地における結核撲滅に向けた貢献を果たしています。また、マラリアやNTDs(顧みられない熱帯病)への対応にも注力し、感染症撲滅にむけた活動を継続してまいります。
③ヘルスケアに役立つ製品・サービスの提供
2023年には、便中カルプロテクチン測定試薬に「クローン病の病態把握の補助」を目的とした使用(臨床的意義)について薬事承認を取得しました。これにより、非侵襲的な便検査によりクローン病の病態を把握できる新たな選択肢として注目され、2024年度も国内の医療機関への導入が進みました。また、海外では、欧米を中心に便中カルプロテクチン検査の活用が広がっており、今後も海外市場における展開を積極的に推進してまいります。
新中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)では、海外市場の開拓・拡大、製品ポートフォリオの再構築、新製品の開発を基本方針とした経営を推進し、持続的な成長と着実な収益性の向上を目指してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、事業を取り巻く環境変化に対応するとともに、サステナビリティ経営の視点を取り込むため、2030年をゴールとして「EIKEN ROAD MAP 2030」を策定しました。経営理念、経営ビジョン、モットーを基本とした“EIKEN WAY”に基づき事業活動を展開し、ESG(環境・社会・ガバナンス)の取組を強化して社会課題の解決に貢献することにより持続可能な社会の実現と企業価値の持続的向上を目指します。
当社グループは、「ヘルスケアを通じて人々の健康を守ります。」の経営理念のもと、事業活動を通じてさまざまな社会課題の解決に努めてまいります。より積極的にグループ全体でサステナビリティの推進を図るため、代表執行役社長を委員長、各機能・事業グループの担当執行役で構成される「サステナビリティ委員会」を設置しています。「サステナビリティ委員会」は、原則年2回開催し、サステナビリティに関する重要事項の審議・報告を行っています。「サステナビリティ委員会」の審議事項は、内容の重要度等を鑑み、必要に応じて「経営会議」へ付議されます。また、「サステナビリティ委員会」の内容は、取締役会にて報告され、監督される体制となっています。 なお、「サステナビリティ委員会」で設定された中長期目標および年度目標は、関連委員会、各事業部門にて具体的な施策として展開されます。なお、実績の一部は執行役の業績連動報酬に反映されます。

(2)戦略
当社グループは、優先的に取り組むべき11のマテリアリティを特定し、E「環境」、S「社会」、G「ガバナンス」のほか、世界の人々の健康を守る企業として「医療」のカテゴリを設け、4カテゴリで表しました。これらマテリアリティの社内浸透を図ることに加え、マテリアリティを事業戦略へ統合し、課題ごとの目標やKPIを策定することによりグループ一丸で取組を強化するとともに、取組を通じてSDGsの達成にも貢献します。

(3)リスク管理
当社グループは、「栄研グループ・リスクマネジメント方針」に基づき、「栄研グループ・リスク管理規程」を制定し、事業活動に関するリスクに対して、執行役を委員とする「リスク管理・コンプライアンス委員会」および「サステナビリティ委員会」が定期的に実施するリスクアセスメントにより、リスクの抽出・分析・評価を実施し、「外部の課題」、「内部の課題」としてまとめ、リスクの低減と発生の未然防止に取り組んでいます。
重大リスクやグループ全体に係るリスクに関しては、「リスク管理・コンプライアンス委員会」においてリスク管理活動を統括し、リスクの低減と発生の未然防止に取り組んでいます。また、業務に係るリスクに関しては、各事業所に「リスク管理・コンプライアンス推進委員会」を設置し、事業所及び部門単位で対応しています。リスク管理活動に関する取組は取締役会へ報告され、リスク管理の実効性を監督しています。
(4)指標及び目標
当社グループの上記「(2)戦略」において記載したマテリアリティは、当社においては関連する指標データ管理とともに、具体的な取組が行われているものの、連結グループに属するすべての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標のうち、環境に関連するマテリアリティ以外は連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
※1 主要取引先(販売先:70%、仕入先:90%)を対象
※2 出荷ベース(環境配慮型包装資材を使用した製品コード数/出荷製品コード数)
※3 出荷ベース(バイオマスプラスチック等の環境配慮型資材を使用した製品コード数/出荷製品コード数)
※4 課長以上の役職者に占める女性の割合
※5 育児を目的とした当社独自の休暇制度を利用した者の数を含む
※6 所定内労働時間+所定外労働時間-年次有給休暇およびその他の休暇取得分
※7 「EIKEN GLOBAL PROGRAM」の受講率、各年度の受講者数÷各年度の在籍者数
※8 個人情報保護委員会への報告
<人的資本経営の取組>
当社グループは、「ヘルスケアを通じて人々の健康を守ります。」という経営理念のもと、世界の人々の健康・生命を守る製品・サービスの提供を通じて社会に貢献するために最も大切な財産は従業員と考え、人材を「人財」と表現します。
当社グループは、代表執行役社長を委員長、各機能・事業グループの担当執行役で構成される「人事委員会」にて、人財戦略に関する方針、組織の新設・改編をはじめとする機構改革、主要ポジションの任免、要員・人件費の計画、人事施策の新設・改廃を行っています。人事委員会の決定事項は取締役会にて報告され、監督される体制となっています。
当社グループの中期経営計画における人財戦略は、以下のとおりです。
当社グループの未来は従業員が創り、従業員の可能性を広げることが会社の成長と社会への貢献に繋がるものと考えています。本方針のもと、当社グループは、「人を活かした活力ある企業」を目指し、あらゆる多様性を尊重し、多様性を受け入れ合える組織風土を育むとともに、従業員の安全と健康に十分配慮し、従業員が付加価値の高い業務に集中できる環境を整え、全ての従業員が活躍を実感し、新たなイノベーションを創出する人財を育成します。
■人事制度
当社では、2023年度より役割・専門性をより重視した賃金制度、従業員のチャレンジ志向を高める評価制度へ移行しており、従業員のやりがい・働きがいを追求しています。
従来と同様に、オフィス勤務と在宅勤務を組み合わせたハイブリッドな働き方、ライフスタイルに合わせたコアタイムなしのスーパーフレックスタイムを推進するだけでなく、営業職を対象とした転勤免除制度の導入により、従業員のワークライフバランスを支援し、長期的なエンゲージメントの促進、ならびに労働生産性の向上につなげてまいります。
■人財確保
当社では社員の5%にあたる人財を毎年採用しています。
・新卒採用
学生の経験や専門性などのバックグラウンドを踏まえた、職種別採用を継続します。また、若年層向けのキャリアデザインワークショップの開催や、本人の希望および職務適性を踏まえた入社後の職種間異動の推進により、多様なキャリアを実現することで、組織として新たなイノベーションを創出できる人財を育成します。
・キャリア採用
従来の手法に加え、リファラル採用やカムバック採用などの新たな採用パイプラインを活用し、「EIKEN ROAD MAP 2030」の実現に向けた事業戦略の推進に必要な専門人財の採用・登用をさらに強化します。
また、人財確保にあたり、新しく栄研化学の一員となった人財が当社の風土や文化に溶け込み、早期にチームの一員として能力を発揮するためには、職場でのサポートや環境の整備が重要なテーマの一つと考え、オンボーディングの強化を進めてまいります。
■人財マネジメント
女性活躍の推進をはじめ、多様な人財がお互いに尊重し合い活躍できる風土醸成を目指し、アンコンシャスバイアスを理解するためのアンケート、従業員に対するキャリア意識の醸成と支援(ワークスタイルの改革、成長機会の提供など)、リーダー層・上級職層に向けて多様な部下を育成するための施策へ継続的に取り組みます。また、従業員の能力、経験、パーソナリティを見える化したHRデータベースを整備し、幹部候補人財のモニタリングや適財適所の人財配置、重要ポジションのサクセッションプランの策定に活用します。
■人財育成
事業環境が大きく変化する中、社会へ貢献する企業として在り続けるために、当社は能力開発ビジョン(目指す人財像)および人財要件モデルを設定し、新入社員からグローバルに活躍するリーダーになるまでをサポートする人財育成システムを設けています。また、従業員の自発的・自律的な学びをより促すため、次世代経営層の育成および中堅~上級職層の学び直しの観点から、「いつでも」、「どこでも」学ぶことができる研修プログラムを提供し、人的資本への投資を充実させることで、会社の成長に繋げてまいります。
(3)リスク管理
当社グループの事業活動において、多様な人財がそれぞれの専門性やバックグラウンドを活かし、最大限能力を発揮できる環境を作ることが重要であり、人財の流動化が進む中、人財の確保が計画通りに進まなくなること、従業員の離職により組織力が低下することが最大のリスクと考えています。従業員一人ひとりへの先行投資により成長を促進し、誰もが活躍できる環境を整備することでリスク低減に努めています。
(4)指標及び目標
当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した中期経営計画における人財戦略について、当社においては関連する指標データ管理とともに、具体的な取組が行われているものの、連結グループに属するすべての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
<気候変動への取組とTCFDへの対応>
当社グループは、社会の持続可能性にとって、気候変動への対応が特に重要な課題であると認識しています。気候変動の原因となるCO2を含む温室効果ガス排出量削減のため、環境マネジメント体制における省エネルギー活動として、これまでも中長期の削減目標を設定し、その達成に向けた活動を推進してきました。昨今の激甚化・頻発化する気象災害、パリ協定等の地球温暖化に対する世界潮流の変化を踏まえ、当社グループは2050年のカーボンニュートラルを目指してその取組を強化します。2024年には削減目標に関して国際的NGOであるSBTi(Science Based Targets initiative)からの認定を受けています。
2015年に金融安定理事会(FSB)により設置された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は、財務に影響のある気候関連情報の開示を推奨する最終報告を2017年6月に提言しました。TCFDは気候変動がもたらすリスクと機会に関して、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4つの要素による情報開示を推奨しています。当社グループは、2023年2月にTCFDの提言に賛同を表明しました。
当社グループは、気候変動に対する取組を経営の重要課題の一つであると認識し、代表執行役社長を委員長、執行役を委員とするサステナビリティ委員会において目標と行動計画を策定し、進捗管理を実施しています。サステナビリティ委員会で審議された気候変動に対する取組は、取締役会にて提案・報告され、監督されています。 なお、実績の一部は執行役の業績連動報酬に反映されます。環境マネジメントシステムとしては、経営管理統括部門の執行役を委員長とする環境管理委員会にて継続的な改善に取り組んでいます。
当社グループでは、気候変動が経済や社会にもたらす影響を重要な経営課題と捉え、TCFD提言のフレームワークに基づき、気候変動がもたらす「リスク」と「機会」を幅広く検討し、特に重要であると考えられるリスクと機会を特定しています。また、それぞれのリスクと機会が当社グループに与える財務影響を、気候変動への対応や規制が進むことが想定される2℃未満シナリオと、災害の甚大化や感染症の拡大がより深刻となる4℃シナリオに分けてシナリオ分析を実施しました。検討に必要な情報の取得にあたってはIEA(International Energy Agency)WEO 2022 Net Zero by 2050 やIEA ETP2020等を参照しました。
各シナリオ下における事業環境の認識と、それらが及ぼす事業影響の概要は以下のとおりです。
気候変動による当社グループへの影響
※想定時期の定義 短期:3年未満 中期:3年以上、10年未満 長期:10年以上
※財務影響の定義 小:1億円未満 中:1億円以上、25億円未満 大:25億円以上
当社グループは、環境マネジメントシステムの中で、事業活動が環境に与える影響を、順守義務の観点も含め毎年評価しています。また、リスクマネジメントの中で、包括的なリスクアセスメントを年1回実施しています。TCFDの提言を踏まえ、リスク管理・コンプライアンス委員会、サステナビリティ委員会およびその下部組織である環境管理委員会で気候変動がもたらすリスクと機会のアセスメントを実施し、特定したリスクおよび機会に対してリスクの低減および事業機会の創出に取り組みます。
当社グループは、2050年のカーボンニュートラルを目指し、CO2排出量(スコープ1+2)を2030年に56%削減(2021年度比)する目標を設定しております。また、スコープ3は2020年度より算定しており、2030年度に25%削減(2022年度比)する目標を設定しました。
※SBT(Science Based Targets)に基づく数値目標
スコープ1:自社での燃料使用や生産プロセスからの直接排出
スコープ2:自社が購入した電気や熱の使用による間接排出
スコープ3:スコープ1、2以外の間接排出(原料調達、製品輸送・使用・廃棄、社員の通勤・出張等)
当社グループは、臨床検査薬の製造・販売を主たる事業として、経営構想「EIKEN ROAD MAP 2030」に基づき、グローバルに事業活動を展開しています。事業活動において存在する様々なリスクに対応するため、当社グループではグループのリスク管理を体系的に定める「栄研グループ・リスク管理規程」を制定するとともに、全執行役を委員とする「リスク管理・コンプライアンス委員会」を設置することにより、リスクマネジメント活動を統括しています。リスクマネジメントに関する取組が取締役会へ報告され、取締役会がその実効性を監督しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、以下のようなものがあります。
なお、これらのほかにも現在及び将来において、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性のある様々なリスクが存在しており、ここに記載されたリスクは当社グループのすべてのリスクではありません。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)海外事業展開に係るもの
「EIKEN ROAD MAP 2030」の達成のためには、グローバル展開の推進が必要となります。しかし、国・地域ごとの経済・景気の変化、パンデミックの発生や地政学的リスク等により、主力製品である便潜血検査用試薬に関して大腸がん検診のスクリーニングプログラムの遅延または実施の中断や中止などがあった場合や新製品の薬事承認の遅延があった場合、また、米国で販売する検査用試薬や医療機器に高い関税が課せられた場合には、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
このようなリスクを踏まえ、当社グループでは海外営業部門が、販売代理店等を通じて各国の経済動向及びリスク情報の迅速な収集・共有に努め、適時適切に対応してまいります。
(2)新製品・新技術・新規事業に係るもの
「EIKEN ROAD MAP 2030」の達成のためには、新製品・新技術・新規事業の展開も必要となります。当社グループは、医療ニーズ及び中長期的なビジョンに基づき新製品・新技術の企画・開発の強化及び新規事業の創出を図っております。しかし、研究開発の不確実性(遅延・中断や中止)により研究開発投資の回収が困難になった場合若しくはそれによる事業化機会の逸失または刻々と変化する市場動向との不整合等により十分な成果に結びつかなかった場合や新規事業の計画の遅延や中断があった場合には、中長期的な事業計画が影響を受け、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
このようなリスクを踏まえ、当社グループでは「EIKEN ROAD MAP 2030」及び中期経営計画において、事業環境の変化に応じた事業戦略を策定し、新製品・新技術の戦略的推進を図り、また、投資回収の基準を設定し、経営会議、取締役会等で進捗を評価・管理しております。
(3)医療制度・薬事規制等に係るもの
当社グループは、国・地域ごとの薬事規制等に従い製品を販売しておりますが、各国の医療制度改革の動向により医療費抑制や薬事規制が強化された場合、また、検査用試薬や医療機器への環境規制が強化された場合には、製品価格や製品の使用方法のほか、薬事申請や入札条件等が影響を受け、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
このようなリスクを踏まえ、当社グループでは薬事部門が各国の医療制度や薬事規制の動向の迅速な把握に努め、適時適切に対応してまいります。
(4)製品品質に係るもの
当社グループは、品質マネジメントシステム(ISO13485認証、MDSAP認証)に基づく品質管理体制のもと製品の品質保証に取り組んでおります。しかし、万一製品に品質問題が発生し製品の供給維持ができなくなった場合には、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
このようなリスクを踏まえ、当社グループでは生産技術力の強化による品質の安定化と品質マネジメントシステムの適切な運用及び市場における製品の品質評価の調査・分析により品質のモニタリングと品質保証の強化に取り組んでおります。
(5)製品の安定供給に係るもの
当社グループまたはサプライヤーの工場・設備が、大規模な地震、風水害等の自然災害や火災等の重大な事故により甚大な被害を被った場合やパンデミックの発生または地政学的リスク等により、長期間の操業停止となった場合には、製品の供給維持ができなくなり、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
このようなリスクを踏まえ、当社グループでは製品の安全在庫の確保とともに、重要な原材料の在庫量確保や複数社購買などによるリスク回避に努めるほか、事業継続計画(BCP)を策定し、供給維持が図れるよう対応能力の継続的向上に取り組んでおります。なお、当社は、内閣官房国土強靭化推進室が進める国土強靭化貢献団体認証(レジリエンス認証)を取得しております。
(6)ITシステムに係るもの
当社グループは、業務効率化のため各種ITシステムを導入し、ビジネスプロセスの改善に取り組んでおります。そのため、災害等によるシステム障害、サイバー攻撃やコンピュータウイルス感染による業務の阻害や社外への情報流出等が発生し長期間の対応が必要となった場合には、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
このようなリスクを踏まえ、当社グループでは適切な情報セキュリティ対策を構築するとともに、標的型攻撃メール対応やITリテラシー向上を目的とした教育訓練を定期的に実施しております。
(7)原材料価格・輸送コストの高騰等に係るもの
当社グループの製品に使用する原材料の価格は、国・地域ごとの経済情勢の変化、パンデミックの発生や地政学的リスク等に伴う市場価格、燃料費、為替等の変化によって変動します。当該価格がこれらの原因等により高騰した場合や製品の輸送コストが高騰した場合には、当該製品の原価が上昇し、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
このようなリスクを踏まえ、当社グループでは主要な原材料の複数社購買、原材料の市場動向等の情報収集、適正在庫の確保等の対応策や継続的な生産効率化による製造原価の低減を実施しております。
(8)棚卸資産の評価
当社グループは、2025年3月期連結貸借対照表において棚卸資産として8,500百万円を計上しており、総資産に対する比率は13.6%となっております。急激な需給バランスの悪化等により製商品市況が著しく下落した場合には、棚卸資産の評価減により、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
このようなリスクを踏まえ、当社グループでは、在庫品の状況を注視し、安全在庫を念頭においた適正な在庫管理を行うなど、過剰在庫等が発生するリスクの軽減を図ってまいります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における国内外の経済は、依然として資源価格の高騰や地政学的リスク、主要国の金融政策等の影響を受け、不安定な状況のまま推移しました。
臨床検査薬業界においては医療費抑制策と円安や原油高による物流及び原材料調達などのコスト上昇の継続により経営環境は一層厳しさを増しております。各企業には一層のコスト競争力の強化と、戦略的な海外市場への展開が求められております。
このような経営環境の下、当社グループは経営構想「EIKEN ROAD MAP 2030」に基づき策定された中期経営計画に沿って、「がんの予防・治療への貢献」、「感染症撲滅・感染制御への貢献」、「ヘルスケアに役立つ製品・サービスの提供」の3つの注力事業分野を中心に重点施策を展開し、グループ全体で持続的な成長と着実な収益性の向上に努めております。
また、世界の人々の健康を守る企業として「医療」の課題、そして「環境」・「社会」・「ガバナンス」の課題にも積極的に取り組み、さらなる企業価値の向上と持続可能な社会の実現を目指しております。
当連結会計年度の売上高は、国内においては前年並みの水準で推移し、一方、海外の販売が堅調に推移したことにより、40,539百万円(前期比1.2%増)となりました。なお、当社の業績予想に対しては0.8%増になりました。全体としては、国内外ともに安定した売上を維持する結果となりました。
製品ごとの売上高では、微生物検査用試薬は、迅速診断キットが売上を伸ばし、4,501百万円(同4.4%増)となりました。尿検査用試薬は、国内外で堅調に推移し、4,620百万円(同5.0%増)となりました。免疫血清検査用試薬は、海外向けの便潜血検査用試薬の売上が増加し、また、東ソー株式会社から導入・販売している製品が堅調に推移し、22,540百万円(同3.8%増)となりました。生化学検査用試薬は573百万円(同0.4%減)、器具・食品環境関連培地は1,960百万円(同0.1%減)となりました。その他(医療機器・遺伝子関連等)につきましては、医療機器の売上と新型コロナウイルス検出試薬の売上及びLAMP法の特許料収入が大幅に減少し、6,342百万円(同10.5%減)となりました。なお、海外向け売上高は、尿検査用試薬および便潜血検査用試薬の売上が伸び、10,710百万円(同5.9%増)となりました。
利益面では、高利益品目である新型コロナウイルス検出試薬の売上及びLAMP法の特許料収入の減少など売上構成の変化により、営業利益は2,999百万円(同11.2%減)、経常利益は3,198百万円(同10.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,228百万円(同15.4%減)となりました。
当連結会計年度末の財政状態は以下のとおりであります。
前連結会計年度末に比べ総資産は720百万円増加、負債は3,093百万円増加、純資産は2,373百万円減少いたしました。
増減の主なものとして、資産の部では、自己株式の取得等により現金及び預金が6,434百万円減少、受取手形、売掛金及び契約資産が750百万円減少しております。野木新生産棟建設費用の支払に伴う建設仮勘定計上等により有形固定資産が5,116百万円増加しております。また、関係会社株式が900百万円増加、長期預金が1,100百万円増加しております。負債の部では、電子記録債務が478百万円増加、未払法人税等が401百万円増加しております。純資産の部では、親会社株主に帰属する当期純利益の計上があったものの、配当金の支払や自己株式の取得等により株主資本が2,170百万円減少しております。
これらの結果、自己資本比率は前連結会計年度末の74.0%から69.3%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ3,326百万円減少し、当連結会計年度末には7,640百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金は、6,033百万円の収入(前連結会計年度は3,806百万円の収入)となりました。これは主に、売上債権の減少により740百万円の収入、棚卸資産の増加により403百万円の支出、仕入債務の増加により1,081百万円の収入及び税金等調整前当期純利益が2,991百万円あったことによります。
なお、減価償却費は2,554百万円発生しております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金は、4,499百万円の支出(前連結会計年度は2,216百万円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が5,214百万円、関係会社株式の取得による支出が900百万円、定期預金の預入による支出が3,467百万円及び定期預金の払戻による収入が5,470百万円あったことによります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金は、4,857百万円の支出(前連結会計年度は6,694百万円の支出)となりました。これは主に、自己株式の取得による支出が2,675百万円、配当金の支払額が1,799百万円あったことによります。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループは、検査薬事業のみの単一セグメントであるため、生産、受注及び販売の実績については製品の種類別区分ごとに記載しております。
当連結会計年度における生産実績を製品の種類別区分ごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、売価換算値で表示しております。
(イ)商品仕入実績
当連結会計年度における商品仕入実績を製品の種類別区分ごとに示すと、次のとおりであります。
(ウ)受注実績
当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
(エ)販売実績
当連結会計年度における販売実績を製品の種類別区分ごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、将来のリスク、不確実性及び仮定を伴う予測情報を含んでおります。「3 事業等のリスク」などに記載された事項及びその他の要因により、当社グループの実際の業績は、これらの予測情報から予測された内容とは大幅に異なる可能性があります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
当社経営陣は、連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発資産・負債の開示、並びに報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行わなければなりません。経営陣は、貸倒債権、退職金、投資、偶発事象や訴訟等に関する見積り及び判断に対して、継続して評価を行っております。経営陣は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行い、その結果は、他の方法では判定しにくい資産・負債の簿価及び収入・費用の報告数字についての判断の基礎となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成において使用される当社の重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
(ア)貸倒引当金
当社グループは、顧客の支払不能時に発生する損失の見積額について、貸倒引当金を計上しております。顧客の財務状態が悪化し、その支払能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。
(イ)退職給付費用
当社においては従業員退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、将来の給与水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率及び年金資産の収益率などが含まれます。当社の年金制度においては、割引率は日本の国債の市場利回りを参考値として、在籍従業員の平均残存勤務期間内の一定の年数で算出しております。期待収益率は、年金資産が投資されている資産の種類毎の期待収益率の加重平均に基づいて計算しております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。また、割引率の低下及び年金資産運用での損失は、当社グループの退職給付費用に対して悪影響を及ぼす可能性があります。
(ウ)投資の減損
当社グループは、取引関係維持のために、特定の顧客の株式を保有しております。これらの株式には価格変動性が高い公開会社の株式と、株価の決定が困難である非公開会社の株式が含まれます。また、関係会社に対して出資を行っております。当社グループは投資価値が著しく下落し、回復の見込みがないと判断した場合、投資の減損を計上しております。将来の市況悪化または投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失または簿価の回収不能が発生した場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。
(エ)棚卸資産の評価
「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り) 」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、以下のとおりであります。
当連結会計年度の売上高は、国内においては前年並みの水準で推移し、一方、海外の販売が堅調に推移したことにより、40,539百万円(前期比1.2%増)となりました。
売上原価は24,027百万円、売上原価率は59.3%となり、前連結会計年度に比べ1.0ポイント上昇いたしました。
売上総利益は前連結会計年度に比べ210百万円減少し、16,512百万円となりました。販売費及び一般管理費については前連結会計年度に比べ167百万円増加し、13,512百万円となりました。
営業利益は前連結会計年度に比べ377百万円減少し、2,999百万円となりました。売上高営業利益率は7.4%となり前連結会計年度に比べ1.0ポイント低下いたしました。
営業外収益は235百万円を計上し、前連結会計年度に比べ49百万円減少いたしました。
営業外費用は36百万円を計上し、前連結会計年度に比べ57百万円減少いたしました。
経常利益は営業外損益で199百万円を計上し、3,198百万円となり、前連結会計年度に比べ369百万円減少いたしました。経常利益率は前連結会計年度に比べ1.0ポイント低下し、7.9%となりました。
特別利益は49百万円を計上し、前連結会計年度に比べ48百万円増加いたしました。特別損失は256百万円を計上し、前連結会計年度に比べ190百万円増加いたしました。
税金等調整前当期純利益は特別損益で207百万円の純損失を計上し、2,991百万円となりました。税金等調整前当期純利益に対する法人税、住民税及び事業税の負担率は前連結会計年度24.8%に対して当連結会計年度が25.5%となり、0.7ポイント上昇いたしました。
親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ406百万円減少し、2,228百万円となり、当期純利益率としては1.1ポイント低下し5.5%となりました。
当社グループは、経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等として、2025年3月期に売上高43,100百万円、営業利益5,660百万円、ROE9.5%の達成を目指しておりましたが、売上高40,539百万円、営業利益2,999百万円、ROE5.0%となり目標値に対して未達となりました。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については以下のとおりであります。
(ア)キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(イ)財務政策
当社グループの財務政策における基本方針は、資本効率の向上による財務体質の強化であり、継続的に実行しております。
資金の調達及び運用については、当社グループとして一体となり実行しており当社の信用力を最大限に活用しております。運転資金及び設備投資については、基本的に手持資金(利益等の内部留保資金)にて調達しております。なお、運転資金の効率的な調達を行うため金融機関との間で、総額8,600百万円の当座貸越契約及び貸出コミットメント契約を締結しております。余剰資金の運用については、安全性・流動性の高い金融商品にて実行しております。当社グループの高いキャッシュポジションに対して、今後の効率的・戦略的な資金運用を検討しております。
当社グループは、その健全な財務状態、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出す能力、売掛債権信託(債権流動化)及び貸出コミットメント契約により、当社グループの成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能と考えておりますが、設備投資等の長期資金需要に関しては金融機関からの長期借入、社債またはその組み合わせによる調達方法も実施しております。
また、当社は、財務体質の強化と積極的な事業展開による持続的な企業価値の向上を経営目標に掲げるとともに、株主の皆様に対する継続的な利益還元を経営上の最重要施策の一つとして位置付け、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。上記方針を踏まえ、株主の皆様に対する利益還元の強化を目的として、「総還元性向50%以上」を目指します。
診療報酬改定のたびに保険点数が引き下げられる一方で、物価高騰による原材料費の増大、人件費の上昇、「2024年物流問題」、燃料費高騰による物流費の増大等によって製品の製造・販売コストが上昇するという非常に厳しい事業環境の中、『ヘルスケアを通じて人々の健康を守ります。』という経営理念の下で、既存の大型製品群の強化充実並びに研究開発力の向上による製品開発を推進してまいりました。
尿試験紙関連では、「USシリーズ」のコンパクトモデルとして、小型で持ち運びが可能な尿自動分析装置『US-1300』(US-1200の後継機)を2024年11月に、「USシリーズ」のフラッグシップモデルとして、全自動尿分析装置『US-3600』(US-3500の後継機)を2024年12月に発売いたしました。US-1300は国内の中小病院、外来検査室、専門開業医や集団健診、出張健診の現場での尿検査をサポートし、US-3600は国内の大中規模病院、検査センター、集団検尿実施施設でのスムーズな検査運用に貢献します。薬剤感受性測定試薬については、薬剤耐性(AMR)対策への貢献として、セフィデロコルのフローズンプレートとラスフロキサシンのフローズンプレートを2024年4月に発売いたしました。
また、遺伝子製品関連については、『遺伝子解析プログラム MINtS Analyzer』および『MINtS 肺癌マルチ CDx ライブラリー調製試薬キット』の製造販売承認を、それぞれ2024年9月、2024年11月に取得し、2024年12月に保険収載されました。これを受けて、登録衛生検査所「栄研化学クリニカルラボラトリー」にて、当該製品による肺癌を対象としたコンパニオン診断検査の受託を2024年12月より開始いたしました。本事業は、独自のがん遺伝子検査の推進を目的としており、経営計画「EIKEN ROAD MAP 2030」の注力分野の一つである「がん」ビジネスの展開に資するものです。
さらに、「がん及び感染症領域における革新的な臨床検査技術の開発」を目的として、東京科学大学との包括連携協定を2024年9月30日付で締結いたしました。この連携協定により、同大学のバイオリソースを活用した臨床検査技術の開発を通じて、当社も革新的な医療提供の実現に寄与することを目指すとともに、実臨床と強く連携した同大学の高い研究力により、革新的な検査技術の開発を担う人財の育成が推進されることにも期待しています。
大塚製薬株式会社とは業務提携契約に基づき、両社が補完できる領域を中心に共同開発を引き続き検討中であります。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は