文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当グループが判断したものです。
当グループは「輪と和を通じて、より大きく社会に貢献する」を経営理念とし、「株主、社員、地域、歴史・文化、環境」重視を基本方針とする経営を推進しています。グループの中核をなす医薬品事業は「世界の人びとの健康に貢献できる独創的な医薬品を開発し提供する創薬研究開発型企業を目指す」を経営ビジョンとし、「患者さんのために」という観点から医薬品の研究開発、品質の高い医薬品製造、適正使用のための医薬情報活動、効率的な業務とトータルマーケティング体制の構築に向けて積極的に取り組んでいます。また、グループ各社は医薬品事業を補佐するとともに、その技術を活かし、国内外で事業活動を展開しています。
国際情勢の緊張の高まりと複雑化により、マクロ経済は先行き不透明な状況にあります。わが国においては、コストプッシュ型の物価上昇、人手不足、不安定な内需拡大により景気は停滞から脱せず、さらに少子高齢化の進展により人口が減少し、社会構造は大きく変化しつつあります。このような状況下で、社会保障制度の持続性確保が喫緊の課題とされ、医療費の伸びを抑制するために、毎年の薬価改定をはじめとする薬剤費抑制策が推し進められており、製薬産業を取り巻く環境は厳しさを増しています。
製薬企業には、医薬品の安定的な供給、ドラッグラグ・ロスの解消、希少疾病・難病治療薬の創出、高度化する医療ニーズへの取り組みが求められています。さらに、上場企業に対して、東京証券取引所はPBRやROEを指標として、株価や資本コストを意識した経営の実現に向けた対応を要請するとともに、金融庁は、投資家が適正に投資判断を行うことができるよう、財務情報を補完する非財務情報としてサステナビリティに関する取り組みを開示することを求めています。
当社は、2025年4月より新たな中期5ヶ年経営計画「Beyond 80」をスタートさせました。Beyond 80は、経営環境が激変する中で、経営理念の実現に向けて、創薬研究開発型企業として持続的成長を遂げることを志向し、まず10年後(2034年度)の目指す姿として、以下を定めました。
・ 創製品を継続的に上市し、医薬品事業を拡大している。
・ 創薬を中心に、研究開発パイプラインを拡充している。
・ 新たな海外収益基盤を構築している。
・ 環境経営を推進し、脱炭素・循環型社会の実現に貢献している。
・ これらを遂行し、ROE10%以上、10年平均成長率(CAGR)は売上高5%以上、研究開発費控除前営業利益10%以上を実現している。
その上で、当社はBeyond 80の5年間を成長投資期と位置付け、PBR1倍超、ROE8%以上に向上させることを株主の皆さまにコミットし、以下の5つの課題に対処してまいります。
① 研究開発パイプラインの拡充
当社の強みである低分子創薬にフォーカスし、AIなどの技術革新を取り入れ、創薬研究を推進します。また、開発テーマの戦略的かつ効率的な推進と成長戦略に合致したライセンスインにより、将来の持続的成長の原動力たる研究開発パイプラインを拡充します。
② 国内事業の拡大
既存主力製品の売上最大化、開発後期ステージにある新薬の事業化を推進するとともに、製造・供給機能、及び情報収集提供機能を強化し、国内医薬品事業を成長させます。また、ヘルスケア食品事業においては、市場ニーズを捉えた新製品の開発・上市を加速させ、収益力を強化します。
③ 海外収益の拡大
海外パートナー企業と協力し、リンザゴリクス(一般名)の発売国の拡大と市場深耕を推進するとともに、新たな創製品のライセンスアウトを実現し、海外収益基盤を強化、拡大します。
④ サステナビリティ活動の推進
脱炭素・循環型社会の実現に向けて環境経営を強化するとともに、人的資本の充実、事業継続マネジメントを推進します。
⑤ 経営基盤の強化
DXを推進し、業務の効率化並びに高度化を図ります。また、コーポレート・ガバナンスのさらなる強化に取り組むとともに、ステークホルダーとの良好な関係を維持・構築します。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりです。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社が想定したものです。
これまで当グループでは、グループ各社が、それぞれの経営環境に応じたサステナビリティ活動を行ってきました。当連結会計年度からは、これまで以上の相乗効果を生み出して企業価値をさらに向上させるために、グループ全体で統一した目標を掲げて活動を体系的に統合し、グループとしての取り組みを強化していくこととしました。その初年度として、キッセイグループ環境基本方針とCO2排出量削減目標を設定し、グループ全体での活動を開始しています。
(1)サステナビリティ基本方針
キッセイ薬品は、「純良医薬品を通じて社会に貢献する」「会社構成員を通じて社会に奉仕する」という経営理念のもとに、事業活動を通じて、世界の人びとの健康に貢献するとともに地球環境や社会課題の解決を目指し、企業価値向上と持続可能な社会の同時実現に取り組みます。
・イノベーションの創出を通じて、革新的な製品(医薬品、食品)を開発・提供することにより、世界の人びとの 健康と医療の向上に貢献します。
・環境問題は人類共通の課題であることを認識し、気候変動対策をはじめ、自主的、積極的な地球環境保全活動に取り組みます。
・事業活動に関わるすべての人びとの人権を尊重するとともに、従業員の多様性、人格、個性を尊重した働きがいのある職場づくりに取り組みます。
・コーポレート・ガバナンスを強化・充実し、倫理性、透明性、公平性の高い企業活動により、ステークホルダーとの良好な関係を保ち、持続的な企業価値の向上に取り組みます。
当社は、経営理念の実現に向けて、社内外の環境変化や自社の現状と課題を踏まえ、当社が優先的に取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定しています。
当社は、持続的な社会の実現に向けて、2021年度に「事業との関連性」と「ステークホルダーへの影響度」の二軸から15のマテリアリティを特定しました。2022年度以降はマテリアリティごとにKPIを設定し、これに基づく取り組みの推進と進捗を管理してきました。
一方で、当社を取り巻く環境は大きく変化しており、事業活動を通じた社会価値の創造と、ESGなど社会からの期待・要請への対応をさらに強化していく必要があります。そこで、中期経営計画「Beyond 80」(2025年度~2029年度)の策定にあわせて、マテリアリティの見直しを行い、2025年5月に再特定しました。
マテリアリティの見直しの具体的なプロセスは以下のとおりです。
<Step1 サステナビリティ課題のリストアップ>
SDGs、SASBスタンダード、GRIスタンダードなどの国際的ガイドライン及び、ステークホルダーとの建設的対話を参考に、当社が抱えるサステナビリティ課題をリストアップしました。
<Step2 重要度評価>
リストアップしたサステナビリティ課題を、社内アンケート調査等を通じて「当社の企業価値に影響を及ぼす重要度」と「社会からの期待」の2軸で評価し、その結果をマッピングして優先順位付けを行いました。
<Step3 マテリアリティの特定>
サステナビリティ推進委員会にて新たなマテリアリティ案を策定し、取締役会での議論を経て、新たに取り組むべき8つのマテリアリティを2025年5月に再特定しました。

<8つのマテリアリティ>
1. 独創的な製品の創製・開発
2. 高品質な医薬品の安定供給
3. 患者さん中心の医療への貢献
4. 医療アクセスの向上
5. 経営戦略を実現する創造性のある人材の育成
6. ガバナンスの強化
7. 環境経営の推進
8. 地域社会との共存共栄
なお、2024年度の活動実績については、
https://www.kissei.co.jp/sustainability/materiality/
当社のサステナビリティ活動は、サステナビリティ推進委員会が中心となって全社に展開しています。当委員会は、サステナビリティ関連課題に精通する取締役を委員長とし、取締役会の諮問機関としてコーポレート・ガバナンス体制に組み込まれ、取締役会との連携を密にして活動しています。
サステナビリティ推進委員会では、マテリアリティの特定はもとより、気候変動をはじめとした環境問題、人権尊重、人的資本の拡充など、経営基盤に関連するサステナビリティ活動における方針・諸施策を立案するとともに、関係部門との連携のもと、これを推進しています。その活動内容は、半期に1回以上の頻度で取締役会及び監査役会に付議・報告され、取締役会が管理、監督しています。
なお、当社のコーポレート・ガバナンス体制については、「
当社は、取締役会の諮問機関として、リスク管理委員会及びコンプライアンス委員会を設置し、全社的なリスク管理の基本方針及び管理体制を「リスク管理規程」に定めるとともに、リスク管理委員会が、当社並びに連結子会社において発生し得るリスクの発生防止に係る管理体制を整備し、その進捗状況を監視しています。また、コンプライアンス委員会では、コンプライアンス推進の適正化を図るとともに、コンプライアンス・プログラムの実践に取り組んでいます。
サステナビリティ関連リスクについても重要な経営リスクの一つとして捉えており、サステナビリティ推進委員会で特定したリスクについては、年に1回以上の頻度で事業活動に及ぼす影響度の見直しを行い、影響度に応じて費用対効果と緊急度を勘案し、優先順位をつけて対応策を講じています。その管理状況については、サステナビリティ推進委員会より取締役会及び監査役会に付議・報告するとともに、リスク管理委員会へ報告し、全社の総合的リスクマネジメントにつなげています。
(4)人的資本に関する取組
「キッセイグループは、輪と和を通じて、より大きく社会に貢献する」というグループ経営理念のもと、「キッセイグループ行動憲章」において、従業員の多様性、人格、個性を尊重し、その資質の向上に努めるとともに、安全で働きやすい労働環境を確保することを当グループの行動原則としています。
なお、人的資本に関する戦略並びに指標及び目標については、グループ各社において関連するデータの管理とともに具体的な取り組みを実施していますが、その内容は各社の業態や人事諸制度の違いなどから、必ずしも同一ではないため、提出会社の取り組みについて記載しています。
イ.求める人材像及び人材育成方針
経営理念にあるとおり、当社の存在意義は純良医薬品・会社構成員を通じた社会に対する貢献と奉仕にあります。新薬開発の高度化、開発リスクが高まる中で、中長期的に継続して独創的な医薬品を開発し上市するには、経営環境の変化に的確かつ迅速に対応し、より高度な専門性を持ち独自性と卓越性を有した自律的かつプロフェッショナルな人材を獲得、育成していく必要があります。このような考えのもと、当社では新卒採用及びキャリア採用を積極的に展開し、特に研究職については、基礎研究から非臨床研究までをカバーし、最先端技術と柔軟なアプローチで革新的な低分子医薬品の創製と多彩なモダリティの導入品開発に取り組むことができる人材の獲得に取り組んでいます。そして、人材育成については「自律型人材の育成」を人材育成のメインビジョンとして掲げ、経営戦略を実現する創造性のある人材の育成に取り組んでいます。
<人材獲得方針(求める人材像)>
・経営理念や「研究開発なくして製薬企業にあらず」という信念に共感し、強い仲間意識を持って共同の目標に取り組む意欲的な人材。
・「患者さんのために」という誠実な意志を持ち、チームとして一体感をもって働ける人材。
・「創薬・育薬への熱意」と「自分らしさ」の溢れる人材。
<人材育成方針>
・会社は、社員の成長と会社の発展の同時実現を目指す教育・学習環境を提供する。
・会社は、管理者らによる実効性の高い指導・育成を支援し、計画的な次世代育成を促進する。
・会社は、社員の自己啓発を奨励し、自発的な能力・キャリア開発を支援する。

ロ.社内環境整備方針
自律型人材を育成していく環境整備として、当社は2021年度に「職場環境の充実」を経営基盤に関するマテリアリティの一つとして特定し、「働きがいのある職場づくり」に取り組んでいます。働きがいのある職場では、社員一人ひとりが「仕事へのやりがい、使命感」、「仕事の達成感」あるいは「仕事を通じた自己の成長」を実感しているものと考え、社員のエンゲージメントを重視し、定期的に測定しています。その分析結果をもとに、新たな人事施策の検討・実施につなげるとともに、2025年度に再特定したマテリアリティ「経営戦略を実現する創造性のある人材の育成」に対しても、経営戦略と連動させた取り組みを人材育成の基軸として進めてまいります。
(複線型人事制度の運用)
現在の経営環境は予見性に乏しく、常に変化の渦中にあります。このような中で当社が持続的な成長を遂げるためには、「年齢や年数」にとらわれることなく早期から存分に能力を発揮し、社員同士がお互いに強く刺激し合うことによって生まれる高次の一体感を醸成させること、そして、これまでの仕事観や価値観の転換を促し、他人や標準モデルとの比較ではなく、自らが起こすべき行動や果たすべき役割に対して、より健全な緊張感の宿る企業文化へと進化させていくことが重要であると考えます。このような考えのもと、次の3つをコンセプトとする多様性と将来性を重視した複線型人事制度を運用しています。
・果たしている役割の適正な処遇反映
果たしている役割(行動の発揮と担当職務)に焦点を当てた「役割資格制度」を運用し、発揮されている行動のレベルを問う「行動評価」、担当職務の大きさやその遂行実績を問う「職務評価」等の結果を処遇に反映しています。
・スペシャリストの活躍機会の強化
複雑、高度化する事業環境において、一層の活躍が期待される高度専門人材をより適正に処遇することで、社員の貢献意欲に応えるとともに、多様なキャリア開発を支援することを目的として、管理職については、主に組織や人のマネジメントを担うライン管理職以外に、高度専門性を駆使して経営課題に取り組むことに主眼をおくプロフェッショナル管理職を設けることにより、キャリアパスを複線化しています。
・チャレンジ意欲の奨励
資格制度において、上位等級への昇格判定に必要な期間として設けていた標準滞留年数を廃止し、昇格制度に「昇格志願」のステップを組み入れることにより、成長意欲の高い人材の早期昇格を推進しています。
(教育制度及び能力開発支援制度の運用)
人事制度と連動する形で、階層別研修を拡充しマネジメント層の強化を図っているほか、独創的な医薬品の開発に必要なイノベーションを創出するために、DX人材育成施策を実施しています。また、社員のより能動的な学習やリスキリングを促すために、eラーニングの拡充を通じて時間や場所の制約を受けない学習環境を整備し、ビジネス・IT知識、英会話などの継続的学習を奨励し、自発的な免許・資格取得に対して支援を行っています。
主な階層別教育及びその他の教育
能力開発支援制度
(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンとジェンダー平等の推進)
様々な考え方や価値観を持った社員が相互に認め合い、刺激し合うことが企業にとってダイナミズムと創造性をもたらすとの認識のもと、「キッセイ薬品行動憲章」において「従業員の多様性、人格、個性を尊重し、倫理観の高揚と資質の向上に努めること」を行動規範の一つとして掲げ、全ての取締役及び社員がその実践を基本としています。
具体的には、「プラチナくるみん」の認定維持を通じた次世代育成支援や、女性活躍推進法に基づく女性社員が活躍できる基盤整備、65歳までの継続雇用制度の運用、障がい者がそれぞれの能力を発揮しながら業務に従事できる環境の提供などに取り組んでいます。
(健康経営の推進)
当社の経営理念の実現と行動憲章の実践のためには、まず社員一人ひとりが、心とからだの両面において健康でなければならないという考え方から、「キッセイ薬品健康宣言」を制定しています。そして、キッセイ健康保険組合と緊密に連携を取りながら、社員及びその家族の健康保持、増進に努めるとともに、社員一人ひとりが、「生きがい」や「働きがい」を感じながら、その能力を十分に発揮できる、健康的で活力のある職場風土づくりに取り組んでいます。
また、2025年3月に「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」の認定を取得し、2020年以降6年連続の取得となりました。
②指標と目標
イ.人材の獲得(2024年度実績)
※正規雇用労働者
ロ.働きがいのある職場づくりと社員のエンゲージメントレベル
自律型人材を育成する、働きがいのある職場づくりを推進するために、当社では社員のエンゲージメントを重視し、「人事に関する意識調査」としてエンゲージメントレベルや人事諸制度への満足度を定期的に測定しています。社員が自分の会社や仕事についてどう思い、人事諸制度をどのように捉え、何を重要視しているかなどを把握し、人事施策の検証、効果的な推進に活用しています。
この調査は、総合満足度と5つのカテゴリー(エンゲージメント、職務満足、目標管理制度、処遇・キャリア、人事制度・ワークシチュエーション)で構成された調査で、各設問について「満足度」と各設問が会社生活においてどの程度重要であるかを「重要度」として測定しています。そして、満足度と重要度の二つの指標からポートフォリオ分析を行い、「重点維持項目」「維持項目」「重点改善項目」「改善項目」を特定しています。中期経営計画「PEGASUS」(2020年度~2024年度)中に実施した調査の結果(2022年)は下表のとおりです。
中期経営計画「Beyond 80」(2025年度~2029年度)期間中に実施予定の調査では、人事制度や教育制度の運用を通じて、エンゲージメント・職務満足に関する設問の平均点を3.30ポイント以上にすることを目標としています。
人事に関する意識調査結果
※満足度評価尺度:「大いにそう思う(4点)」「ある程度そう思う(3点)」「あまりそう思わない(2点)」
「全くそう思わない(1点)」
ハ.教育制度及び能力開発支援制度に関する2024年度実績
※管理職の一段階下位の職層
ニ.ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン指標における2024年度目標と実績及び2025年度目標
その他指標における2023年度実績と2024年度実績
ホ.健康経営指標における2024年度目標と実績及び2025年度目標
※年次有給休暇の取得促進を目的として、年3日を誕生日などの記念日に計画的に取得する制度
(5)気候変動に関する取組(気候関連財務情報開示タスクフォース提言に基づく情報開示)
当グループでは、地球温暖化や気候変動の激甚化への対応を、持続可能な社会の実現と自社の持続的成長における重要課題と認識し、脱炭素と省エネルギーによる事業環境の改善など、事業活動と一体となった環境経営を目指しています。
<キッセイグループ環境基本方針>
・基本理念
「キッセイグループは輪と和を通じて、より大きく社会に貢献する」のグループ経営理念のもと、企業の社会的責任において積極的に地球環境保全に努めるとともに、豊かで住み良い社会の実現に貢献します。
・基本方針
1. 我々は地球環境問題を真摯に受止め、一連の企業活動が環境にさまざまな影響を与えるものであることを認識した上で、バリューチェーン全体における環境への負荷低減を推進します。
2. 地球環境保全の取り組みのため、事業活動の環境と自然への影響を評価分析し、2050年CO2排出量ネットゼロに向けた中長期目標を定めて継続的改善を図ります。
3. 省エネルギー、省資源、廃棄物削減を含めた資源循環、再生可能エネルギーの導入、生物多様性の保全、適切な水資源の利用と排出を積極的に推進します。
4. 社員一人ひとりが、関連する環境法規、協定、その他の要求事項について厳守するとともに、環境教育を通じて環境に対する意識の高揚と倫理観の向上を図り、積極的に環境汚染の未然防止のための活動を推進します。
①ガバナンス
当グループはより実効性の高い環境保全活動を行うため、当社のサステナビリティ推進委員長を議長とし、連結子会社の環境保全オフィサーをメンバーとする「グループ環境保全オフィサー会議」を設置し、グループ全体の脱炭素をはじめとした環境保全活動を推進するとともに、活動実績の管理を行っています。
その活動の方針や進捗状況は、当社のサステナビリティ推進委員会が管理、監督するとともに、同委員会より、半期に1回以上の頻度で取締役会及び監査役会に付議・報告され、取締役会が管理、監督しています。
②戦略
気候変動が及ぼす当グループ事業への影響については、グループの中核を担う医薬品事業において主要事業所が受ける影響を対象とし、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial
Disclosures:「TCFD」)の枠組みで、1.5℃シナリオ※1及び4℃シナリオ※2を想定し、リスクと機会を特定しました。特定したリスクと機会については、財務的な影響度と発生可能性の大きさから分析、評価を行い、事業戦略に与える影響度から優先順位に応じて、対応策を検討しました。
※1 1.5℃シナリオはIEA NZEシナリオ等を参考に想定
※2 4℃シナリオはIPCC RCP8.5シナリオ等を参考に想定
<シナリオ分析の結果>
移行リスク(1.5℃シナリオ)
※3 炭素価格:IEA WEO 2024(Net Zero Emissions by 2050 Scenario)の2030年先進国炭素税の設定を使用
*影響度:大(年間5億円以上)、中(年間1億円以上~5億円未満)、小(年間1億円未満)を基準として評価
*事業リスクは影響度と発生頻度、対応順等を考慮し総合的に評価
物理的リスク(4℃シナリオ)
※4 水リスクについては、AQUEDUCT Water Risk Atlasを使用し、リスクを判定
*影響度:大(年間5億円以上)、中(年間1億円以上~5億円未満)、小(年間1億円未満)を基準として評価
*事業リスクは影響度と発生頻度、対応順等を考慮し総合的に評価
機会
*影響度:大(年間5億円以上)、中(年間1億円以上~5億円未満)、小(年間1億円未満)を基準として評価
1.5℃シナリオによる脱炭素化への移行リスクとしては、将来の脱炭素関連の政策・法規制の強化によるコストの増加や、気候変動への取り組み不足によるステークホルダーからの評価低下があげられました。脱炭素化が達成されず平均気温が4℃上昇するとした4℃シナリオにおいては、物理的リスクのうち、急性リスクとしては台風や豪雨等での水害による影響が、また慢性リスクとしては、気温上昇による空調コストの増加や水資源確保のためのコスト増加等の可能性を認識しています。一方で、高効率設備導入によるエネルギー調達コストの削減や気候変動に対する積極的な取り組みや適切な情報開示による企業価値の向上等を「機会」として捉え、今後も脱炭素化とレジリエンスの強化を推進し、持続的な企業価値の向上を図ります。
なお、これらのシナリオ分析・評価の結果、事業戦略に重大な影響を及ぼす恐れのあるリスクは特定されませんでした。
2050年カーボンニュートラルに向けて、当グループにおける中期的な目標として以下を設定し、活動を推進しています。
・2030年度 CO2排出量目標(Scope1+2):2020年度比42%削減
・2050年度 CO2排出量目標(Scope1+2):実質ゼロ
当グループの2024年度CO2排出量は11,098トン(Scope1:10,386トン、Scope2:712トン)であり、2020年度比37%の削減となりました。このうちScope2においては、2022年度より再生可能エネルギーを順次導入し、2024年度には当グループの全電力使用量における再生可能エネルギー利用率は約80%に達し、2020年度比で年間7,072トンのCO2排出量削減となりました。今後は、Scope1のCO2排出量の削減に注力します。
再生可能エネルギーの導入事業所は以下のとおりです。
(注)上記各事業所については、「
当グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性のある主なリスクには以下のようなものがあります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当グループが判断したものです。
なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当グループの経営成績等の状況に与える影響については、合理的に予見することが困難であるため記載していません。当社は、リスク管理の基本方針及び管理体制を「リスク管理規程」において定めるとともに、取締役会の諮問機関であるリスク管理委員会のもと、当グループにおいて発生し得るリスクの発生防止に係る管理体制を整備し、その進捗状況を監視しています。
(1) 医薬品の研究開発に係るリスク
新薬の研究開発から承認・発売までは多額な費用と長い期間を要します。当社は創薬研究から非臨床試験、臨床試験、承認申請、承認取得まで、想定されるスケジュールと定期的な見直しによって中長期的な業績を試算していますが、有用な化合物を順調に発見できるとは限らず、また開発中の新薬あるいは効能追加等について、予測しているとおりの有用性を証明できるかどうか、いつ承認を得ることができるかを確実に予測することはできません。
また、海外における開発・販売等の権利を許諾した化合物あるいは製品については、導出先企業の経営状況やポートフォリオの変化、また許諾地域での開発、薬務規制等への対応に関して、想定通りに進捗しない可能性があります。
(2) 医薬品行政の動向によるリスク
日本国内においては、人口の少子高齢化に対応した社会保険制度の再構築が進められ、医療においては国民皆保険制度を維持するため、毎年の薬価改定を始めとした薬価制度改革などの薬剤費抑制策が実施されています。今後、更なる医療保険制度の改定を含む医療・薬務行政の抜本的な改革や規制の厳格化があった場合は、業績あるいは財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 他社医薬品との競合によるリスク
販売しています医薬品と同種の適応をもつ他社医薬品との競合に加え、先発医薬品の特許満了後に発売される同成分の後発医薬品との価格的な競合に直面します。これらの競合は既存製品の売上に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(4) 医薬品副作用発現によるリスク
医薬品には、開発段階では発見できなかった未知の副作用が発現する可能性があります。予期せぬ副作用や重篤な有害事象が発現した場合には、その使用方法が制限されたり、場合によっては販売中止になる可能性もあります。
(5) 医薬品の品質に関するリスク
最新の法令、規則及びガイドライン等を遵守して製造管理・品質管理体制を構築していますが、品質上の問題の発生により製品回収等を行うことになった場合は、業績あるいは財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 知的財産に関するリスク
当グループが知的財産権を適切に保護できない場合には、他の第三者が当グループの技術等を使用して、当グループの市場における競争優位性を阻害する可能性があります。一方、当グループの事業が他の第三者が所有する知的財産権に抵触した場合は、係争やそれに伴う損害賠償、当該事業の中止につながる可能性があります。
(7) 訴訟に関するリスク
現在、当グループの経営に影響を与えるような訴訟は提起されていませんが、当グループが国内外で継続して事業活動を行う過程において、特許関連、製造物責任、環境関連、労務関連、公正取引等に関し訴訟を提起される可能性があります。
(8) 情報セキュリティ及び情報管理に関するリスク
当グループが使用する各種情報システムに対するサイバー攻撃等により業務が阻害される可能性があります。また、当グループが保有する個人情報や機密情報の保護・管理については、社内規程の制定、社員への教育・訓練等を通じて、情報流出の防止に細心の注意を払っていますが、予期せぬ事態により情報の流出・漏洩が発生する可能性があります。これらが顕在化した場合には、当グループの社会的信用の低下等により、業績あるいは財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9) サプライチェーンに関するリスク
地震、台風等に起因する火災、水害等の事故や、新型インフルエンザ等によるパンデミックの発生、さらには地域紛争の勃発などにより、当グループの事業所及び取引先が直接あるいは間接的に多大な被害を受けた場合、サプライチェーンが寸断されることにより、事業活動が縮小又は停滞し、活動再開までに時間的、金額的損失が発生することで、業績あるいは財政状態に重大な影響を与える可能性があります。
新たな感染症等の発生によるパンデミックに対しては、「リスク管理規程」並びにその他社内規程等に基づき、従業員及び関係者の安全確保と製品の安定供給を重視した対策を実施しています。
(10) 保有資産に関するリスク
当グループは、保有する事業用資産及び投資有価証券等について、四半期毎にグループ会計方針に従って評価を行っています。事業用資産については、将来における投資額の回収が見込めない状況になった場合には、減損損失を計上する可能性があります。また、投資有価証券等については、市場価格のあるものは相場価格の変動により、市場価格のない非上場株式等については当該会社の純資産、将来の事業計画等を総合的に勘案し、減損損失を計上する可能性があります。
(11) 環境保全に関するリスク
医薬品の研究や製造の過程で使用される化学物質等の中には、環境に影響を与える物質も含まれています。各事業所においては厳格な管理を実施し環境保全に努めていますが、これらが周辺の環境汚染の原因と判断された場合、事業所に対する法的な措置が講じられたり、環境の回復や改善のための費用等の発生により、業績あるいは財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当グループは、経営理念に基づき、グループ行動憲章において「環境問題の重要性を認識し、自主的、積極的にその保全に取り組みます。」と定めています。具体的には、当社及びグループ会社におけるISO14001環境マネジメントシステムの推進、100%再生可能エネルギー電力の利用等によるCO2排出量削減、長野県内の再生可能エネルギー電源の拡充を目的とする「信州Green電源拡大プロジェクト」への参画などを行っています。
環境保全と関連する気候変動リスクに対する取り組みについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しているほか、当社ウェブサイト及び統合報告書等で情報開示を行っています。
なお、上記以外にも様々なリスクがあり、ここに記載されたものが当グループのすべてのリスクではありません。
当連結会計年度における当グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、緩やかに回復の動きが見られる一方で、不安定な世界情勢に加え円安基調の継続や物価高騰の影響などにより、先行き不透明な状況で推移しました。
医薬品業界においては、2024年4月に薬価改定が実施され、ドラッグラグ・ロスの解消やイノベーションの評価・促進に重きを置いた制度改革に加え、不採算品再算定の対象品目の増加といった薬価の下支えなどが行われたものの、2025年4月には前回に続いて薬価の中間年改定が実施されるなど、薬剤費全体の伸びは依然として抑制傾向にあり、引き続き厳しい経営環境のもとに推移しています。また、情報サービス業界、建設・施設メンテナンス業界、物品販売業界においては、ICT需要や設備投資意欲に継続して堅調さが窺えるものの、足元の景気は個人消費を中心に力強さに欠け、依然として厳しい競争環境下にありました。
このような状況下、当連結会計年度の業績は以下のとおりとなりました。
・売上高の状況
医薬品事業の売上高は、75,299百万円(前連結会計年度比18.9%増)となりました。過活動膀胱治療薬「ベオーバ錠」に加え、中期経営計画「PEGASUS」期間中に新発売した4製品(顕微鏡的多発血管炎・多発血管炎性肉芽腫症治療薬「タブネオスカプセル」、透析患者におけるそう痒症治療薬「コルスバ静注透析用シリンジ」、慢性特発性血小板減少性紫斑病治療薬「タバリス錠」、潰瘍性大腸炎治療薬「カログラ錠」)の売上の伸長、さらには海外ライセンス収入なども増加し、増収となりました。なお、「ミニリンメルト」及び「デスモプレシン製剤」については、2025年3月31日をもってフェリング・ファーマ株式会社との販売提携を終了しました。
また、当社が創製しセラメックス社(英国)に技術導出したリンザゴリクス(一般名)は、子宮筋腫を適応症として、同社より2024年9月、ドイツにて「Yselty(イセルティ)」の製品名で新発売され、その後順次、欧州各国他において発売及び発売に向けた準備が進められています。さらに、本剤は2024年11月に子宮内膜症の追加適応症を取得しました。これらに伴い、同社との契約に基づき海外ライセンス収入を計上しています。
情報サービス事業の売上高は8,735百万円(前連結会計年度比4.0%増)、建設・施設メンテナンス事業の売上高は3,435百万円(前連結会計年度比13.7%増)、物品販売事業の売上高は860百万円(前連結会計年度比6.3%増)となりました。
・利益の状況
利益面では、研究開発費を主として販売費及び一般管理費が増加したものの、増収及び売上原価率の改善により、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益は、増益となりました。なお、特別利益として投資有価証券売却益を計上しています。また、「ミニリンメルト」及び「デスモプレシン製剤」については、フェリング・ファーマ株式会社との販売提携が終了したことに伴い、長期前払費用の取崩し(販売権の減損損失)を特別損失として計上しています。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりです。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分に基づいて記載しています。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しています。
2.金額は、販売価格によっています。
当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しています。
2.金額は、仕入価格によっています。
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しています。
2.医薬品事業及び物品販売業については、販売計画に基づく生産計画により生産しています。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1.国内販売提携先供給額、コ・プロモーションフィーの合計額
2.ライセンスアウトに係る契約金、マイルストン収入、ランニングロイヤルティ及び医薬品輸出の合計額
3.セグメント間取引については、相殺消去しています。
4.医薬品事業における主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
(2)財政状態
・資産の状況
当連結会計年度末の総資産は244,059百万円となり、前連結会計年度末に比べ16,869百万円減少しました。流動資産は、棚卸資産が減少しましたが、現金及び預金、売掛金が増加したことなどにより、2,428百万円増加し106,980百万円となりました。固定資産は、建設仮勘定などの有形固定資産が増加した一方で、投資有価証券の減少などにより、19,297百万円減少し137,079百万円となりました。
・負債の状況
当連結会計年度末の負債は33,933百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,860百万円減少しました。流動負債は、「その他」に含まれる未払金が増加しましたが、未払法人税等や契約負債が減少したことなどにより、1,084百万円減少し16,578百万円となりました。固定負債は繰延税金負債の減少などにより4,775百万円減少し、17,354百万円となりました。
・純資産の状況
当連結会計年度末の純資産は210,126百万円となり、前連結会計年度末に比べ11,009百万円減少しました。利益剰余金が増加した一方で、その他有価証券評価差額金などが減少したほか、自己株式の取得と消却を行いました。
この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の84.3%から85.6%となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より2,271百万円増加し、当連結会計年度末では48,158百万円(前連結会計年度末比5.0%増)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、売上債権及び契約資産の増加や仕入債務の減少などの資金の減少要因の一方で、棚卸資産の減少やその他流動負債の増加などが資金の増加要因となり、当連結会計年度において6,521百万円の収入となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は、投資有価証券売却による収入の増加などの一方で、主として製造設備建設に伴う有形固定資産の取得や長期前払費用の取得による支出の増加などにより、前連結会計年度末に比べ3,738百万円減の4,952百万円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、自己株式の取得や配当金の支払いなどにより、前連結会計年度末に比べ681百万円支出減の9,325百万円となりました。
当グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積りを行っていますが、見積り特有の不確実性があることから、実際の結果と異なる可能性があります。
なお、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計方針のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しています。
(注)当社とバイオジェニュイン社(中国)との子宮筋腫及び子宮内膜症治療薬リンザゴリクスの中国における開発権
及び販売権を許諾するライセンス契約は、終結しました。
(2) 技術導入契約
(注)1.当社がMSDインターナショナル社(スイス)より許諾されたマリゼブ錠の日本国内における販売権に関する契約は、当社が同剤の製造販売承認を承継したことに伴い終結しました。また、これにより、同社とのマリゼブ錠の日本国内における資産購入に関する契約は、重要性が低下したため、記載を省略しています。
2.当社とフェリング・ファーマ㈱とのミニリンメルト及びデスモプレシン製剤の日本国内における販売権
に関する契約は、2025年3月をもって同社との販売提携を終了したことに伴い終結しました。
(4) 取引契約関係
当グループの中核である医薬品事業では、経営ビジョンとして標榜する「世界の人びとの健康に貢献できる独創的な医薬品を開発し提供する創薬研究開発型企業」の実現化に向けて、研究開発におけるコア領域を定め、積極的に研究開発投資を行うことにより、新薬創出と開発の加速化を図っています。また、グローバル市場への進出と拡大を目指し、創製品の技術導出及び導入品のサブライセンスによる国際展開を推進しています。
医薬品事業における当連結会計年度の研究開発の状況は次のとおりです。
当社の創製品であるリンザゴリクス(一般名、開発番号:KLH-2109)は、2025年2月に国内において子宮筋腫を適応症とする承認申請を行うとともに、2025年3月には子宮内膜症の効能追加取得に向けた国内第Ⅲ相臨床試験を開始しました。また、脊髄小脳変性症治療薬ロバチレリン(一般名、開発番号:KPS-0373)についても、2025年3月より国内追加第Ⅲ相臨床試験を開始しています。2024年9月には、ライジェルファーマシューティカルズ社(米国)との間で、急性骨髄性白血病治療薬オルタシデニブ(一般名)の日本・韓国・台湾における独占的な開発権及び販売権の取得に関する契約を締結しました。
リンザゴリクスの海外開発状況については、2024年6月に、JWファーマシューティカル社(韓国)に韓国における独占的な開発権及び販売権を許諾しました。なお、バイオジェニュイン社(中国)との間で締結した中国他における開発権及び販売権を許諾するライセンス契約は終結しました。
当社がライジェルファーマシューティカルズ社(米国)から技術導入した慢性特発性血小板減少性紫斑病治療薬ホスタマチニブ(一般名、国内販売名:タバリス錠)については、2025年1月に台田薬品股份有限公司(台湾)との間で、台湾における開発権及び販売権を許諾するサブライセンス契約を締結しました。また、本剤の韓国におけるサブライセンス先であるJWファーマシューティカル社(韓国)は、2025年1月に同適応症にて販売承認を取得し、発売に向けた準備を進めています。
なお、当社が創製した潰瘍性大腸炎治療薬KSP-0243(開発番号)は、前期第Ⅱ相臨床試験において主要評価項目を達成できなかったことから開発を中止しました。
当社は2025年4月に、ライフサイエンス領域における世界有数のエコシステムの中心である米国マサチューセッツ州ボストンエリアに、米国子会社KISSEI AMERICA,INC.(本社:ニュージャージー州フォートリー)の新オフィス「Boston Open Innovation Office」を開設しました。本オフィスを拠点として、先進的な研究技術へのアクセスを高めオープンイノベーションを促進し、革新的医薬品の創出基盤を強化しています。
当社は、創薬研究開発型企業として持続的成長を図るため、低分子にフォーカスした創薬研究体制を一層強化し、創薬テーマをスピーディーかつ継続的に臨床開発ステージに進めること及び、領域戦略に合致したライセンス活動により製品ポートフォリオの拡充を図っています。なお、研究開発費の総額は
情報サービス事業では、医療・介護等の社会課題解決に向けたシステム開発をはじめ、各分野向けパッケージソフトの開発、次世代技術の取り込みを推進しており、研究開発費の総額は
当連結会計年度の研究開発費の総額は