当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)経営の基本方針
当社は、「独創 公正 夢と情熱」を経営綱領のモットーとして掲げ、糖質科学の知見を活かした、独創的な医薬品等を継続して創製し、患者の方々に提供することを通じて、世界の人々の健康で心豊かな生活に貢献することを基本方針としています。これにより、医療を含む社会の持続的な発展に寄与するとともに、当社の持続的成長及び中長期的な企業価値向上を目指してまいります。また、製薬企業としての社会的使命及び責任を深く自覚し、高い倫理観のもと法令等の遵守を徹底するほか、コーポレート・ガバナンスの充実を図り、株主をはじめとするステークホルダーの皆さまとの信頼関係の強化に努めてまいります。
(2)目標とする経営指標
中期経営計画(2023年3月期~2026年3月期)の最終年度である2026年3月期の数値目標は、以下のとおりです。
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2022年3月期実績 |
2026年3月期目標 |
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売上高 |
348億円 |
400億円 |
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営業利益 |
44億円 |
70億円 |
<前提条件>
① 腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603の米国上市
② 国内関節機能改善剤の収益拡大
③ 海外医薬品及びLAL事業の拡大
④ 研究開発費は対売上高比率(ロイヤリティー除く)25%目途
⑤ 為替レート:対米ドル135円
(3)経営環境及び中長期的な経営戦略と対処すべき課題
≪経営環境≫
医薬品産業を取り巻く経営環境は、国内薬価制度の抜本改革をはじめとした医療費抑制策の進展や、治療選択肢の多様化等に伴う企業間競争の激化に加え、新薬開発の難易度が高まるなか研究開発コストが増大するなど、極めて厳しい状況が継続しています。当社が持続的に成長軌道を描くためには、このように環境変化が激しい時代への柔軟な対応が必要となります。また、社会の持続的発展と企業価値向上に向け、サステナビリティ推進をはじめとした社会的責任を果たすことの重要性が高まり、それらへの対応が急務となっています。
≪直近の市場環境≫
当社の主力製品である関節機能改善剤の国内市場は、高齢者人口が増加傾向にあるものの、外用薬や内服薬の処方拡大により数量ベースでは横ばいで推移しており、金額ベースでは薬価引き下げの影響を受けて縮小傾向にあります。そのような状況の中、国内市場における当社製品の需要は、競合品の販売終了等により、引き続き高まる傾向にあります。
海外の主力市場の一つである米国市場については、トランプ政権による関税や薬価引き下げ政策の影響が不透明な状況となっています。今後、販売提携先とも連携をとりながら動向を注視していきます。
また、中国市場については高齢化により伸びていくと想定しており、当社製品の需要も増加傾向にあります。
≪中期経営計画(2023年3月期~2026年3月期)の概要≫
Ⅰ. 目指すべき姿
当社は、本中期経営計画期間である2023年3月期からの4ヵ年を「成長を実現する期間」として定めています。前中期経営計画期間に強化した基盤をもとに、各重点施策を推し進めることで、持続的に成長軌道を描くための実力を養い、最終年度には過去最高の業績達成を目指します。
Ⅱ. 重点施策
当社が持続的に成長軌道を描くための実力を養うべく、次の5つの重点施策に取り組みます。
① 腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603の製品価値最大化
腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603の米国における承認取得及び上市を実現するために、カナダに設立したセイカガク ノース アメリカ コーポレーションを最大限に活用し迅速かつ確実な承認申請、審査対応を行います。また、販売提携先との密な連携のもと販売準備を進め、医療現場への早期浸透による製品価値の最大化を図ります。
② 独自の創薬技術を活かした研究開発の加速
当社が保有するGAG*に関する基盤技術を応用展開することで、既存領域における新規開発テーマや新規疾患領域を含む革新的な研究テーマの創出に注力し、アンメットメディカルニーズを中心とした患者の方々が真に必要とする新薬の創製を目指します。また、これらの成功確度を高め、早期進捗を図るために各種アライアンスを推進します。同時に既存パイプラインを着実に進展させ、腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603の米国における承認取得及び上市、ドライアイ治療剤SI-614の米国第Ⅲ相臨床試験の終了、癒着防止材SI-449の国内承認取得及び米国での臨床試験開始を目指します。
*GAG:グリコサミノグリカン。複合糖質の構成成分のひとつ(ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸等)。
③ 関節機能改善剤の事業価値維持・向上
主力である国内関節機能改善剤市場において当社製品のプレゼンスを強化し、経営を支える基盤製品としての事業性の維持・向上に努めます。国内医薬品は薬価引き下げの影響を大きく受けることから、原価構造の改善が不可欠であり、安定供給継続のためにも製品資材の仕様変更や製造工程の効率化等をさらに進めてまいります。また、関節機能改善剤ジョイクルの安全性情報等の収集及び提供を継続するとともに、臨床研究の結果をもとに適切な処方への貢献を目指してまいります。
④ グローバル生産体制の構築
海外子会社ダルトン ケミカル ラボラトリーズ インク(カナダ、トロント)と当社高萩工場(日本、茨城県)の2拠点化を図ることで、適切かつ効率的な製造体制のもと安定供給のさらなる強化を図ります。
⑤ 遺伝子組換え技術によるLAL事業の拡大
海外子会社アソシエーツ オブ ケープ コッド インクとの連携のもと、遺伝子組換えエンドトキシン測定用試薬パイロスマート ネクストジェンを活用し信頼できる科学的データの蓄積や遺伝子組換え技術を活かした新たな診断薬の開発促進に取り組むとともに、関連企業との協働による測定機器やソフトウエアの開発・改良などを行うことで、新たな価値の創造を目指します。
また、上記の5つの重点施策を実行するうえで、社員エンゲージメントの向上や組織強化・人材育成は経営の基盤となる重要な要素となります。事業の中核である人材の育成や、成長を促進する環境を醸成するための投資を積極化させ、持続的な成長を実現するための基盤強化・改善を図っていきます。
Ⅲ.サステナビリティ
当社は、社会の持続的発展と企業価値向上に向けて、優先的に取り組むべき重要課題として6つのマテリアリティを特定しています。中期経営計画の重点施策のベースとなるこれらのマテリアリティに注力し、医療関連事業の発展に加え、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みを強化するとともに、サプライチェーンやステークホルダーの皆さまとの十分なコミュニケーションによる、社会的課題の解決を目指します。
≪中期経営計画の進捗状況(2025年3月期)≫
米国で承認申請を行っていたSI-6603について、2025年3月に米国食品医薬品局(FDA)より審査完了報告通知を受領し、承認は得られませんでした。今後、SI-6603については、本通知受領から1年以内の再申請を目指すものの、中期経営計画期間中での上市は難しく、数値目標(売上高400億円、営業利益70億円)の達成は困難な状況となりました。
その他、当社が今後持続的に成長軌道を描くために取り組んでいる重点施策については、概ね計画通りに進捗しました。引き続き、各施策に鋭意取り組んでまいります。
2025年3月期までの主な進捗状況は以下のとおりです。
① 腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603の製品価値最大化
・米国第Ⅲ相追加臨床試験の主要評価項目において、統計学的に有意な改善結果を示すトップライン結果を取得(2023年5月)
・FDAへ行った生物製剤承認申請が受理される(2024年5月)
・FDAによる審査行程のひとつである公聴会で本剤のリスク&ベネフィットについて議論され、承認への支持を多数得る(2025年1月)
・FDAより審査完了報告通知を受領。有効性及び安全性を含む臨床試験結果等に関連した懸念は表明されなかったものの、製造施設及び原薬・製剤の管理について追加の指摘事項が示される(2025年3月)
② 独自の創薬技術を活かした研究開発の加速
・癒着防止材SI-449国内ピボタル試験の主要評価項目及び副次評価項目において、統計学的に有意な改善効果を示す結果を取得(2023年7月)
・日本において変形性関節症治療剤Gel-Oneの第Ⅲ相臨床試験(膝・股関節)を開始(2025年2月)
③ 関節機能改善剤の事業価値維持・向上
・関節機能改善剤アルツの安定供給維持に向けた増産体制構築の推進
・原価構造改善を目的とした製品資材の仕様変更への対応
・関節機能改善剤ジョイクルの安全性情報等の収集及び提供の体制維持
④ グローバル生産体制の構築
・海外子会社ダルトン ケミカル ラボラトリーズ インクでの製造体制構築の推進
⑤ 遺伝子組換え技術によるLAL事業の拡大
・遺伝子組換えエンドトキシン測定用試薬パイロスマート ネクストジェンに関する科学データの蓄積を継続するとともに、海外子会社アソシエーツ オブ ケープ コッド インク(ACC社)と共著で論文化
・グルカン測定体外診断用医薬品について、販売国拡大及び病院市場の新規開拓
・ACC社の創業50周年を節目に、次の50年を見据え、遺伝子組換え技術を用いたソリューション企業としてのブランド・アイデンティティを一新
また、これらの重点施策に加え、サステナビリティに関する取り組みについても重要な課題として認識しており、2021年に策定したサステナビリティ基本方針及び6つのマテリアリティを基軸とした実効的な施策の立案・実施や、子会社への適用範囲拡大等を行ってまいりました。
2025年3月期には、マテリアリティの取り組みを支え、当社の目指す姿を実現するための組織再編を行いました。2024年10月には、人材戦略に関わる課題への対応をより強化し人的資本経営を推進するため、「HR戦略部」を新設しました。同部は、自律型人材の育成、人事諸制度の変革、社員エンゲージメントの向上及びサクセッションプランなど、事業展開を見据えた環境・制度・仕組みの整備を担います。
また、2025年2月には、高萩工場で使用している電力の一部に再生可能エネルギーを活用するため、太陽光発電設備を導入しました。
加えて、サステナビリティへの取り組みに関して外部評価機関より以下の評価を受け、当社ウェブサイトへ公表しております。
・EcoVadis評価:ブロンズメダル
・CDP(気候変動分野):Bスコア
・改正省エネ法に基づく事業者クラス分け評価:Sクラス
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)サステナビリティ課題全般への対応
当社グループは、「独創 公正 夢と情熱」を経営綱領のモットーに掲げ、「学問尊重の理念のもとに、糖質科学を基盤として有用で安全な製品を創造し、広く世界に供給して人類の福祉に貢献する」ことを経営信条として、社会とともに持続的に発展することを目指します。
その取り組みにあたっては、生命関連企業としての社会的使命及び責任を深く自覚した高い企業倫理のもと、多様なステークホルダーからの期待に応えることに加え、公正で誠実な関係構築を意識した行動を実践します。
これらを踏まえ、独創的な研究開発活動から生み出された真に有用で高品質な製品を安定的に提供することを通じて、世界で存在価値のある企業として成長するとともに、地球と社会の持続可能な発展に取り組み、世界の人々の健康で心豊かな生活に貢献してまいります。
Ⅰ.ガバナンス
主にサステナビリティに関する課題を取り扱うために、サステナビリティ推進委員会を設置し、同委員会においては気候変動課題における活動方針、推進施策等の審議や、進捗状況の検証と評価等を原則年2回実施します。また、リスク管理委員会で評価した全社リスクのうち、気候変動関連に係るリスクや機会については、サステナビリティ推進委員会でも討議し、取締役会に報告されるとともに、取締役会はその進捗状況をモニタリングし、監督しています。なお、「サステナビリティ推進委員会」及び「リスク管理委員会」の責任者は代表取締役社長が務めています。
Ⅱ.戦略
当社は、社会の持続的な発展と企業価値向上に向けて、優先的に取り組むべき重要課題について、当社が考える重要度と多様なステークホルダーを含む社会からの期待の両面から評価し、取締役会の決議に基づき6つのマテリアリティを特定しています。
<生化学工業のマテリアリティ>
① 真に有用な医薬品等の創製
② 品質を確保した医薬品等の安定供給
③ 医療アクセスの拡大と質の高い医療情報の適切な提供
④ 倫理的で公正な事業活動とコーポレート・ガバナンスの強化
⑤ 多様な人材の活躍推進と育成
⑥ 環境に配慮した企業活動の推進
中期経営計画(2023年3月期~2026年3月期)の重点施策のベースとなるこれらのマテリアリティに引き続き注力し、医療関連事業の発展に加え、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みを強化するとともに、サプライチェーンやステークホルダーの皆さまとの十分なコミュニケーションによる、社会的課題の解決を目指します。
Ⅲ.リスク管理
当社は、「経営リスク管理規定」に基づき、各部門がリスク・機会に対応する取り組みを実施しています。サステナビリティ推進委員会とリスク管理委員会で情報を共有しながら、事業リスクを統合・管理し、重要リスクについては定期的に取締役会に報告します。
Ⅳ.指標及び目標
当社は、2023年3月開催の取締役会にて、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する重要評価指標と目標の設定を決議いたしました。なお、以下の指標と目標は提出会社におけるものです。
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環境(E) |
二酸化炭素排出量 ・2030年までに46%削減(Scope1&2、2017年度比) ・2050年までにカーボンニュートラルを目指す ・Scope3の算定 |
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社会(S) |
女性社員採用比率 ・毎年50%を目安 女性社員管理職比率 ・2026年3月末までに25%以上を目指す キャリア社員採用比率 ・毎年50%を目安 キャリア研修の開催件数 ・年間15件以上 |
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ガバナンス(G) |
コーポレートガバナンス・コードの適切な対応 全取締役・監査役による取締役会実効性評価及び社外役員会での検証の実施 ・年1回の評価及び検証 |
(2)気候変動への対応
当社は、気候変動への対応を重要な経営課題のひとつと捉え、その対策に取り組むとともに、TCFDの推奨項目及びリスク/機会の対応状況について、2022年6月より開示しています。
Ⅰ.ガバナンス
気候変動に関するガバナンスは、「
Ⅱ.戦略
気候関連のリスク・機会の重要性評価に向け、以下のスキームにより、「移行リスク」「物理的リスク」「機会」の区分でシナリオ特定と評価を実施しました。気候変動に関する政府間パネルIPCCと国際エネルギー機関IEAが提示するシナリオに加え、社内外の情報を精査し、気候関連のリスク/機会がもたらすビジネス・戦略・財務への潜在的な影響度を評価しました。
(a)シナリオ分析スキーム
Step1:気候変動基礎情報の収集と分析
↓
Step2:気候変動シナリオの仮説設定
↓
Step3:各シナリオにおけるリスク/機会分析
↓
Step4:財務インパクトの定性的な評価
(b)中長期的なシナリオに基づくリスク/機会分析
<移行リスク>
|
機会/リスク |
内容 |
財務影響度 1.5℃ / 4℃ |
期間 |
対応/レジリエンス |
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政策・法規制 |
炭素税の導入等の規制強化によるコストの上昇 |
中 / 中 |
中~長期 |
省エネ、再エネの導入・拡大等を推進し、炭素税負担額の低減及び原料使用量の削減等の取り組みによるコスト低減 |
|
市場 |
環境配慮型原料の導入等によるコストの上昇 |
中 / 中 |
中~長期 |
省エネ、再エネの導入・拡大等を推進し、炭素税負担額の低減及び原料使用量の削減等の取り組みによるコスト低減 |
|
評判 |
サステナビリティの開示不足等による投資家離れや人材獲得機会の低下(レピュテーションリスク) |
中 / 小 |
短~中期 |
サステナビリティの積極的な情報開示による、企業価値向上及び投資・人材獲得機会の増加を企図 |
<物理的リスク>
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機会/リスク |
内容 |
財務影響度 1.5℃ / 4℃ |
期間 |
対応/レジリエンス |
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急性 |
異常気象の甚大化による生産設備等の被災リスクや復旧・予防措置コストの上昇及びサプライチェーンの寸断による一時的な操業停止 |
中 / 大 |
中~長期 |
BCPの継続的見直しと事前対応強化及びサプライチェーン全体の影響評価・対応強化による被害最小化 |
|
慢性 |
気候変動に起因する感染症拡大に伴う医療ひっ迫による通院患者減少 |
中 / 中 |
長期 |
通院負担の少ない長期作用薬の研究開発の促進 |
|
慢性 |
気候変動による生態系への影響による天然資源原料の減少、或いは品質の低下 |
小 / 中 |
中~長期 |
代替原料の研究促進及び生物由来原料から発酵等の組換え原料への移行 |
<機会>
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機会/リスク |
内容 |
財務影響度 1.5℃ / 4℃ |
期間 |
対応/レジリエンス |
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エネルギー・資源の効率性 |
生産設備の効率化 |
小 / 小 |
中~長期 |
省エネ、再エネの導入・拡大等の推進によるコスト低減 |
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製品/サービス/市場 |
気候変動に起因する感染症の拡大 |
中 / 中 |
長期 |
感染症診断領域等の研究開発の促進 |
Ⅲ.リスク管理
気候関連に関するリスクは、「
Ⅳ.指標及び目標
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環境(E) |
二酸化炭素排出量 ・2030年までに46%削減(Scope1&2、2017年度比) ・2050年までにカーボンニュートラルを目指す ・Scope3の算定 |
※ CO2排出量の実績は、当社ウェブサイト等に掲載し適宜更新しています。
(3)人的資本
Ⅰ.戦略
当社では、人材を重要な企業資産のひとつであると捉え、新しい価値を創造できる有用な人材の育成に取り組むとともに、多様な社員の活躍が当社の持続的な成長の原動力となるよう、以下の方針のもと、全ての社員が能力を十分に発揮できる環境・制度・仕組みの整備を進めていきます。
<具体的な取り組み>
(a)人材育成方針
当社は、社員が成長できるフィールドを提供するとともに、各種研修による体系的教育や、日々の業務を通じた職場教育、ジョブローテーション等を組み合わせることにより、次にあげる人材の育成・開発を図ります。
① 経営綱領のモットーである「独創・公正・夢と情熱」を理解・実践し、責任感を持って自らの役割を果たしながら自己成長ができる社員
② スキルアップやキャリアを積み、情熱と誇りを持って自ら業務にあたり成果を生み出す「自律型社員」
③ 品質・コスト・納期のバランスを考慮し、常に生産性向上を意識して仕事に取り組む社員
④ 国内外の状況変化に素早く感応し、仕事を革新する社員
⑤ 自己の職域拡大に努力し、場面においてリーダーシップ、メンバーシップを発揮する社員
⑥ 国際人としての常識と教養を持った社員
(b)社内環境整備方針
社員エンゲージメントの向上や組織強化・人材育成により持続的な成長を実現するための経営基盤強化を図りま
す。
・社員一人一人の中長期的なウェルビーイングの追求を目的に、人事諸制度の見直しや処遇改善を継続的に行います。
・多様性を念頭に置いた計画的な採用活動を実施し、その多様性が事業活動に十分寄与する配置を図ります。
・「自律型社員」を育成するため、体系的な教育カリキュラムを充実し、ジョブローテーションも考慮した計画的な教育研修、キャリア形成支援を実施します。
・働き方改革や、ワークライフバランスの向上施策を推進します。
・社員の心身の健康を適切に管理・促進するため、メンタルヘルスケア施策や健康促進活動を充実していきます。
・また、人的資本経営における取り組みの一環として、2023年度から従業員のエンゲージメントサーベイを実施しておりますが、2024年度においては、全社の総合満足度は、判定B+、評点3.52(5段階評価)となりました(昨年度は判定B、評点3.41点)。今後も定期的に実施し、諸施策の検討・実施に活用してまいります。
Ⅱ.指標及び目標
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社会(S) |
指標 |
目標 |
2025年3月期実績 |
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毎年 |
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毎年 |
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年間 |
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有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
これらの想定されるリスク発生の可能性を認識したうえで、リスク発生の回避や軽減及び発生した場合の対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、以下の記載事項及び本書中の本項以外の記載内容も併せて慎重に検討したうえで行われる必要があると考えています。また、以下の記載は当社株式への投資に関連するリスクの全てを網羅するものではありません。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)法的規制、制度・行政について
当社グループの製品の多くは人々の生命と健康に関わるものであることから、日本及び海外各国の規制当局による医薬品等の品質、有効性及び安全性を確保するため等の法的規制を受けています。これらの関連法規の改正や、薬価基準の改定を含む医療制度及び行政施策の動向等によっては、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。法的規制の改正等に起因するリスクについては、その動向を常にモニターすることにより改正内容を早期に把握し、的確に対応していく方針です。しかしながら、その改正の内容や時期等は当社グループが決定できるものではなく、その影響度を事前に見積もることは困難であると認識しています。
(2)新製品開発について
当社の事業の中核をなす医療用医薬品の開発には、基礎研究から製造承認に至るまで、有効性及び安全性確認のための各種試験が必要であり、長期間にわたり多額の研究開発費を負担しても発売に至らないリスクがあります。このような場合、過去に計上された研究開発費に見合う収益が回収できない可能性があります。当社としては、複数の開発パイプラインを推進することにより、リスクの分散に努めています。しかしながら、これにより全てのリスクが回避されるわけではなく、このような新製品開発の不確実性が業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(3)特定販売先への依存について
主力製品である医療用医薬品・医療機器は販売提携先と独占販売契約を締結し、販売先を限定しています。状況の変化によりこれらの販売提携先との取引内容に変更があった場合、その内容によっては、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、当該リスクが顕在化した場合の影響度を見積もることは困難であると認識しています。
(4)副作用に関するリスクについて
医療用医薬品・医療機器は、臨床試験段階から市販後に至るまで、予期せぬ副作用が発現するリスクがあります。当該リスクが顕在化した場合、開発品においては臨床試験の遅れや開発中止等に至る可能性があります。また、既承認品においても、予期せぬ副作用等で発売中止、製品回収等の事態に発展し、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクに備え、日頃より安全監視活動を継続して有害事象の収集と分析を進め、予期せぬ副作用が発現した場合は、迅速に回収等の措置を講じる方針です。しかしながら、顕在化した副作用の程度等に応じた影響を受ける可能性があり、その影響度を定量的に見積もることは困難であると認識しています。なお、関節機能改善剤ジョイクルについては、投与後にショック、アナフィラキシーの発現が複数報告されたことから、医療関係者向けに安全性速報を発出し、有害事象の収集と分析を進め、安全監視活動を強化しています。今後、予期せぬ副作用や副作用の重篤化が確認された場合には、更なる対策強化等の措置を講じることがあります。その場合、ジョイクルの販売収益が低下する可能性があります。
(5)特定仕入先への依存について
医療用医薬品・医療機器の製造には様々な規制があり、原材料の中には規制当局の承認が必要とされるものもあるため、原材料の仕入先を限定し、往訪監査を行い、品質の確保と安定供給体制の確立に努めています。原材料の一部は単一の供給源に依存しているため、調達が困難になるような状況変化が生じたときは、製品の製造に支障をきたすリスクがあります。原材料及び製品在庫を適切に保有することにより、業績への影響を最小限に留める対策を講じていますが、当該リスクが顕在化した場合には、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。顕在化した場合の影響度は、該当製品や代替品調達の可否、調達に要する時間等により大きく異なることから、その影響度を事前に見積もることは困難であると認識しています。
(6)動物由来成分の原料について
当社グループの製品の多くは、ニワトリ、サメ、カブトガニといった動物に由来する成分を原料としています。そのため、原料とする動物由来成分の使用が制限された場合や調達が困難になった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、可能な限り調達先を分散させることに加え、当該原料及び製品在庫を適切に保有することで業績への影響を最小限に留める対策を講じています。また、発酵原料を用いた製品や、遺伝子組換え体を用いた製品の上市や開発も進め、リスクの最小化に努めています。しかしながら、これらにより全てのリスクが回避されるわけではなく、実際に顕在化した場合には一定程度の影響を受けることは不可避であると認識しています。また、2022年11月に開催されたワシントン条約国際会議にて、当社が原料としているサメの一種が規制対象となり、輸出時に許可証が必要となることが決定しました。日本政府は当規制対象種について「留保」の姿勢を表明しており、国内における取引では当規制は適用されません。一方、海外輸出においては同許可証が必要となりましたが、サプライヤーと協働で対応を進めており、現時点では既存顧客との取引に影響はありません。ただし、今後当条約の対象生物が拡大した場合は影響を受ける可能性があります。
(7)為替相場の変動について
当連結会計年度における海外売上高比率は62.0%(ロイヤリティー除く)であり、その取引通貨の多くは米ドル等の外貨で行われているため、急激な為替相場の変動は業績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社では海外で実施する臨床試験等の研究開発費の支払いに売上の外貨を充当することや為替予約を行うことにより、為替相場の変動リスクの軽減を図っていますが、これらにより全てのリスクを回避することは困難であると認識しています。また、連結財務諸表作成時に海外連結子会社の現地通貨建財務諸表を円換算していることから、為替相場の動向によっては、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8)保有有価証券等の価格変動について
将来の研究開発や設備投資に充当するために、手元資金を有価証券で運用しています。投資対象の分散などリスクの軽減を図っていますが、有価証券等の価格変動等によっては、業績に影響を及ぼす可能性があります。金融市場や金融政策の動向等に起因する外部リスクに関しては、当社独自のリスク軽減対策により軽減・排除することが難しいことから、顕在化した場合にはその時期、規模に応じて影響を受けるものと考えており、顕在化の影響を定量的に見積もることは困難であると認識しています。
(9)知的財産権について
製品や事業の優位性を確保するために特許権、その他知的財産権の取得に向けた様々な出願をしていますが、特許権等が取得できなかった場合や、特許権等が取得できたとしてもその有効性や排他性が否定された場合、特許権等の期間が満了した場合等には、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、第三者の知的財産権の侵害を未然に防止するために調査をし、その可能性を最小化していますが、知的財産権の侵害の問題を完全に回避することは困難であり、第三者との間で知的財産権に関する紛争が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、現段階において、将来的な顕在化の影響を定量的に見積もることは困難であると認識しています。
(10)情報セキュリティについて
当社グループは、社内外の個人情報を含む多くの機密情報を保有しています。情報システム強化のための適切な投資を実施するほか、情報セキュリティ意識を高めるための社内教育やメール訓練等を実施していますが、システム障害や外部からのサイバー攻撃、従業員や第三者の過失等の様々な要因により、システムの停止、情報の改ざん、漏洩等が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(11)大規模災害等の発生について
地震、台風等の自然災害や火災等の事故、感染症のまん延などにより、当社グループの事業所等が大規模な被害を受け、事業活動が停滞し、または製品供給に支障が生じた場合や、災害により損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生した場合には、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループとしては、各種災害リスクに対応するためのマニュアルの整備等を含め事前の対策を講じていますが、当該リスクは当社グループのみのリスク管理施策では回避できるものではなく、顕在化した場合の規模や期間等に応じた影響を受ける可能性があり、その影響度を定量的に見積もることは困難であると認識しています。
(12)気候変動について
気候変動に伴う気象災害が頻発・激甚化した場合には、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。さらに、平均気温の上昇による将来的な炭素税等の導入により、原材料コストが増加し、業績に影響を及ぼす可能性があります。当社としては、気候変動リスクの特定とその対応策に加え、その影響度について、気候変動関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:TCFD)に基づき評価し、その情報を開示しています。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①経営成績
当期における、連結売上高は39,374百万円(前期比8.7%増)、経常利益は1,933百万円(同14.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,214百万円(同44.5%減)となりました。経営成績に重要な影響を与えた要因は、以下のとおりであります。
1)売上高
当期の売上高は、国内医薬品及び海外医薬品の減少があったものの、ロイヤリティーやLAL事業の増加により、39,374百万円(同8.7%増)となりました。
セグメント別の売上状況は次のとおりです。
医薬品事業の売上高は27,513百万円(同6.1%増)となりました。
・国内医薬品(11,919百万円、同1.5%減)
・海外医薬品(9,804百万円、同2.5%減)
・医薬品原体・医薬品受託製造(3,192百万円、同3.5%増)
LAL事業の売上高は11,860百万円(同15.5%増)となりました。
2)販売費及び一般管理費
当期の販売費及び一般管理費は17,819百万円(同8.4%増)となりました。これは主に人件費等の増加によるものです。当期における研究開発費は7,643百万円(同2.1%増)、対売上高比率(ロイヤリティー除く)は20.8%となりました。
3)営業外損益
当期の営業外収益は891百万円(同31.7%減)、営業外費用は291百万円(同535.7%増)となりました。これは主に円高の影響により、為替差益から為替差損に転じたことによるものです。
4)特別損益
当期の特別損益は発生しておりません。
②財政状態
総資産は、前期末に比べ2,077百万円増加の83,872百万円となりました。
負債は、前期末に比べ1,172百万円増加の10,685百万円となりました。
純資産は、前期末に比べ904百万円増加の73,187百万円となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に比べ378百万円減少し、18,322百万円となりました。
当期における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは4,429百万円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは3,540百万円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは1,571百万円の支出となりました。
④生産、受注及び販売の実績
1)生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
医薬品 |
26,285 |
1.3 |
|
LAL |
11,812 |
29.0 |
|
合計 |
38,097 |
8.5 |
(注)金額は販売価格によっております。
2)商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
医薬品 |
1 |
- |
|
LAL |
937 |
27.5 |
|
合計 |
939 |
27.4 |
(注)金額は仕入価格によっております。
3)受注状況
当社グループは、主に販売計画に基づいて生産しております。
受注生産を一部行っておりますが、受注高及び受注残高の金額に重要性はありません。
4)販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
医薬品 |
27,513 |
6.1 |
|
LAL |
11,860 |
15.5 |
|
合計 |
39,374 |
8.7 |
(注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
科研製薬株式会社 |
9,642 |
26.6 |
9,479 |
24.1 |
|
ジンマー バイオメット ホールディングス インク |
4,951 |
13.7 |
4,497 |
11.4 |
(2)経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当社グループに関する財政状態及び経営成績の分析・検討内容は原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。
また、重要な影響を及ぼす可能性のある事項については、「3.事業等のリスク」に記載しております。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となります。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況」の連結財務諸表の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」及び「重要な会計上の見積り」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)経営成績
当期の売上高は、国内医薬品及び海外医薬品の減少があったものの、ロイヤリティーやLAL事業の増加により、前期と比べ8.7%増の39,374百万円となりました。
営業利益は、増収により207.8%増の1,333百万円、経常利益は為替差損の計上により増益幅が縮小し14.3%増の1,933百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、税金費用の増加により44.5%減の1,214百万円となりました。
セグメント別の売上概況
<医薬品事業>
当社は医薬品の販売部門を持たず、それぞれの製品領域で強みを持つ国内外の企業と提携し、販売を委託することで、経営資源を研究開発や製造へ集中するビジネスモデルを展開しています。
このような事業環境を踏まえ、当社から販売提携先への売上概況のほか、販売提携先から医療機関への販売状況を「医療機関納入本数」または「現地販売本数」として記載しています。
・国内医薬品(11,919百万円、前期比1.5%減)
主に関節機能改善剤アルツ及び眼科手術補助剤オペガン類の減少により、国内医薬品は前期比で1.5%の減収となりました。
アルツについては、競合品からの切り替えが進み、医療機関納入本数は前期比で増加しました。また、当社工場の増産体制整備に向けた設備メンテナンスが完了し、前期比で出荷数量は増加となりました。一方で、単価減の影響により、売上高は前期比で減少しました。
オペガン類については、高齢化による緩やかな市場の成長等に伴い、医療機関納入本数は増加しましたが、単価減の影響により、当社売上高は減少しました。
また、腰椎椎間板ヘルニア治療剤ヘルニコアは出荷タイミングにより当社売上高は前期比で減少、内視鏡用粘膜下注入材ムコアップは保険償還価格引き下げの影響により当社売上高は前期比で減少しました。
関節機能改善剤ジョイクルは、出荷タイミングにより当社売上高は前期比で増加しました。本剤は2021年6月1日に安全性速報(ブルーレター)を発出しており、引き続き販売提携先である小野薬品工業株式会社と連携のうえ、副作用報告等の情報収集や安全性に関する情報提供を行っています。
・海外医薬品(9,804百万円、同2.5%減)
米国向け関節機能改善剤スパルツFX等の増加があったものの、米国向け関節機能改善剤ジェル・ワン及び中国向け関節機能改善剤アルツの減少により、海外医薬品は前期比で2.5%の減収となりました。
米国向けジェル・ワンについて、現地販売本数は減少となりました。また、当社売上高は製品の出荷タイミングが一部来期に後ろ倒しとなったことにより、前期比で減少しました。
米国向けスパルツFXについて、現地販売本数は前期並みとなりましたが、販売提携先の在庫調整により、当社売上高は増加しました。
中国向けアルツについて、現地販売本数は減少となりました。また、当社売上高は第4四半期での資材変更に伴い出荷数量が減少したことにより、前期比で減少しました。
・医薬品原体・医薬品受託製造(3,192百万円、同3.5%増)
医薬品原体は減少したものの、海外子会社ダルトン ケミカル ラボラトリーズ インクの医薬品受託製造の増加により、前期比で3.5%の増収となりました。
これらに加え、ロイヤリティー(2,598百万円、同271.6%増)の増加により、医薬品事業の売上高は27,513百万円(同6.1%増)となりました。
<LAL事業>
売上高は11,860百万円(同15.5%増)となりました。海外子会社アソシエーツ オブ ケープ コッド インクにおけるグルカン測定体外診断用医薬品及び遺伝子組換えエンドトキシン測定用試薬パイロスマート ネクストジェンの販売増に加え、円安の影響や国内販売も好調であったことにより、前期比で増収となりました。
2)財政状態
当期末における総資産は、前期末に比べ2,077百万円増加の83,872百万円となりました。これは主に有形固定資産の増加によるものです。
負債は、前期末に比べ1,172百万円増加の10,685百万円となりました。これは主に未払金の増加によるものです。
純資産は、前期末に比べ904百万円増加の73,187百万円となりました。これは主に為替換算調整勘定の増加によるものです。
3)キャッシュ・フロー
当期末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に比べ378百万円減少し、18,322百万円となりました。
当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動の結果得られた資金は4,429百万円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益1,933百万円、減価償却費1,802百万円及び、売上債権の減少額1,131百万円等によるものであります。前期比では3,915百万円収入が増加しております。
投資活動の結果使用した資金は3,540百万円となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出4,389百万円等によるものであります。前期比では3,668百万円支出が減少しております。
財務活動の結果使用した資金は1,571百万円となりました。これは主に、配当金の支払額1,527百万円等によるものであります。前期比では109百万円支出が増加しております。
4)資本の財源及び資金の流動性
・資本の財源
円滑な事業活動に必要な資金の調達について、当社グループは、今後の成長戦略への資金需要や変化の激しい事業環境における経営の安定性確保など、様々な要因を総合的に勘案し決定しています。新薬開発はリスクの高いビジネスであるため、強固な財務体質維持の必要性から一定の財務基盤を確保しており、主として、営業キャッシュ・フローで得た資金を財源に、新薬開発を中心とした研究開発や高い品質の製品を安定的に供給するための製造設備などへの投資を行っています。
・資金の流動性
成長戦略への投資や株主の皆さまへの継続した利益還元に対する適切な資金の配分に加え、新薬開発には承認を取得するまでに長期間にわたる多額の研究開発投資が必要なことから、将来の事業に対する待機資金としての性格も鑑みて、現預金残高を維持しています。さらに、主要取引銀行とコミットメントライン契約及び当座貸越契約を締結することなどにより、十分な資金の流動性を確保しています。
(1)販売提携等に関する契約
|
相手先 |
契約締結年月日 |
契約内容及び期間等 |
|
科研製薬株式会社 |
1993年3月27日 |
関節機能改善剤アルツディスポの国内独占販売権 契約期間:契約締結日から1年間、以後1年ごとに更新 |
|
参天製薬株式会社 |
1995年5月9日 |
眼科手術補助剤ヒアルロン酸Na眼粘弾剤(旧名称:オペガンハイ)の国内独占販売権 契約期間:契約締結日から2016年3月31日まで、以後1年ごとに更新 |
|
参天製薬株式会社 |
1997年9月9日 |
眼科手術補助剤オペガンの国内独占販売権 契約期間:契約締結日から2016年3月31日まで、以後1年ごとに更新 |
|
科研製薬株式会社 |
2012年12月25日 |
腰椎椎間板ヘルニア治療剤ヘルニコア(SI-6603)の国内独占販売権 契約期間:契約締結日から製造販売承認取得日(2018年3月23日)の10年後の応当日、以後1年ごとに更新 |
|
参天製薬株式会社 |
2014年9月30日 |
眼科手術補助剤シェルガンの国内独占販売権 契約期間:契約締結日から2022年3月31日まで、以後1年ごとに更新 |
|
ボストン・サイエンティ フィック ジャパン株式会社 |
2016年4月1日 |
内視鏡用粘膜下注入材ムコアップの国内独占販売権 契約期間:契約締結日から2023年3月31日まで、以後1年ごとに更新 |
|
フェリング インターナショナル センター エス アー(スイス) |
2016年8月29日 |
腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603の日本を除く全世界を対象とした独占開発・販売権 契約期間:契約締結日から対象特許満了日または製品発売日より起算して15年後の応当日のいずれか遅い日まで、以後3年ごとに更新 |
|
ジンマー バイオメット ホールディングス インク (米国) |
2016年11月8日 |
関節機能改善剤ヴィスコ・スリーの米国における独占販売権 契約期間:契約締結日から10年間、以後5年間の更新可能なオプ |
|
小野薬品工業株式会社 |
2017年8月31日 |
関節機能改善剤ジョイクルの国内共同開発・独占販売権 契約期間:契約締結日から製品発売日の10年後の応当日、以後 2年ごとに更新 |
|
バイオヴェンタス インク(米国) |
2018年2月13日 |
関節機能改善剤スパルツFXの米国における独占販売権 契約期間:2018年5月4日(発効日)から10年間 |
|
ジンマー バイオメット ホールディングス インク (米国) |
2021年8月31日 |
関節機能改善剤ジェル・ワンの米国における独占販売権 契約期間:2022年1月25日(発効日)から10年間 |
|
クンミン ベーカー ノートン ファーマシューティカル セールス コーポレーション リミテッド(中国) |
2025年1月1日 |
関節機能改善剤アルツディスポの中国独占販売権 契約期間:契約締結日から2029年12月31日まで |
(注)前連結会計年度まで記載していましたエーザイ株式会社との変形性関節症治療剤SI-613の中国における共同開発・独占販売契約及び変形性関節症治療剤SI-613の韓国における独占販売権契約につきましては、SI-613の開発中止に伴い解約したため、削除しました。
(2)株式取得に関する契約
該当事項はありません。
当社グループは、世界の人々の健康で心豊かな生活に貢献するために、専門分野とする糖質科学に特化して、独創的な医薬品等の創製を目指しています。
当社が保有する糖質科学に関する基盤技術を応用展開し、既存領域における新規開発テーマや新規疾患領域を含む革新的な研究テーマの創出に注力するとともに、各種アライアンスを推進することで、今後の事業成長の鍵を握る新薬の早期かつ継続的な上市の実現を図っていきます。
当期における研究開発費の総額は、
研究開発活動の主な進捗状況は、以下のとおりです。
・SI-6603(腰椎椎間板ヘルニア治療剤、開発地域:米国)
2025年3月に米国食品医薬品局(FDA)より審査完了報告通知を受領し、承認は得られませんでした。FDAからは、本剤の有効性及び安全性を含む臨床試験結果等に関連した懸念は表明されず、追加の臨床試験も求められませんでしたが、主として製造施設及び原薬・製剤の管理について追加の指摘事項がありました。今後、早期の承認取得に向けて指摘事項の対応を行い、本通知の受領から1年以内の再申請を目指してまいります。
本剤は、コンドリアーゼを有効成分とし、椎間板内に直接注射する治療剤です。全身麻酔の必要がなく、手術療法と比較して身体的侵襲が小さいという特徴を有しています。1回の投与で腰椎椎間板ヘルニアの症状改善効果が期待できることから、米国において新たな治療選択肢の提供を目指します。
・Gel-One(変形性関節症治療剤<膝・股関節>、開発地域:日本)
当社独自の架橋技術を用いて創製した架橋ヒアルロン酸を有効成分とする関節注射剤です。膝関節腔内投与後、関節局所に長く残留することが確認されており、1回の投与で長期の疼痛抑制効果が期待されます。海外では2012年以降、「Gel-OneⓇ」(米国)や「HyLinkⓇ」(台湾、イタリア)として販売しています。
2025年2月より変形性膝関節症及び変形性股関節症を対象疾患とし、それぞれ第Ⅲ相臨床試験を開始しました。
・SI-722(間質性膀胱炎治療剤、開発地域:米国)
第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験において取得したデータをもとに、今後の開発方針について検討を行っています。
SI-722は、当社独自のグリコサミノグリカン修飾技術やドラッグデリバリーシステムを活用してコンドロイチン硫酸にステロイドを結合させた新規の化合物です。膀胱内に注入した同剤が抗炎症作用を有するステロイドを徐放することで、持続的に頻尿や膀胱痛等の症状改善作用を発揮すると考えられます。
・SI-449(癒着防止材、開発地域:日本)
2020年5月より実施している消化器外科領域におけるピボタル試験において、2023年7月に主要評価項目である術後癒着の有無及び副次評価項目である癒着の程度・範囲において、統計学的に有意な癒着防止効果を示す結果を取得しました。また、安全性についても、顕在化した問題は認められませんでした。
なお、適用範囲の拡大を目的とした婦人科領域におけるパイロット試験において、安全性と操作性に大きな問題は認められませんでした。現在、販売提携先の選定及び商用生産設備の構築を行っており、2026年3月期第3四半期~第4四半期での承認申請に向けた準備を進めています。
SI-449は、当社独自のグリコサミノグリカン架橋技術を用いて創製したコンドロイチン硫酸架橋体を主成分とする粉末状の医療機器です。水分を吸収し膨潤する特性を有しており、撒布後に手術創部と周辺組織の間でバリアとなることで、外科手術における術後癒着の防止効果が期待されます。本テーマは国内のみならず、グローバル展開を視野に入れて開発を進めていきます。
・SI-614(ドライアイ治療剤、開発地域:米国)
2022年5月より実施している第Ⅲ相臨床試験における主要評価項目において、統計学的に有意な改善効果が認められなかったことから、本テーマの開発を中止することとしました。
・SI-613(変形性関節症治療剤、開発地域:米国、中国、韓国)
・SI-613-ETP(腱・靭帯付着部症治療剤、開発地域:日本)
<SI-613>
米国、中国、韓国の開発については、国内ジョイクルのショック、アナフィラキシー発現に関する原因究明の進捗を鑑み、中止することとしました。
<SI-613-ETP>
腱・靭帯付着部症を対象とした国内の後期第Ⅱ相臨床試験において主要有効性評価が未達であったことや、ジョイクルのショック、アナフィラキシーの発現に関する原因究明の進捗を鑑み、本テーマの開発を中止することとしました。