第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

(1)企業理念

JCRは「医薬品を通して人々の健康に貢献する」を企業理念としております。

 

コアバリュー(価値観)

 信頼:私たちは、法令遵守はもとより、高い倫理観をもって行動することにより、全てのステークホルダーから信頼される会社を築きます。

 自信:私たちは、世界へ通用する医薬品提供を目標に、独自の視点で研究・開発を進め、自信をもって品質の高い製品と情報を提供します。

 信念:私たちは、基本理念のもと、“自ら考え、自ら行動する”を信念として、更なる企業成長を目指します。

 

基本経営方針

以下に提唱する経営方針は3つのコア・バリューをもとに、より具体的に企業のあり方を示したものです。

 

1.顧客満足を念頭に置いた経営

 顧客に対し、常に高品質の製品、正確な情報及びきめ細かなサービスを提供し、顧客満足を高めます。

2.法令・社内規則を遵守する社会的良識に基づいた経営

 円滑に企業活動を行うために、コーポレート・ガバナンスに基づくコンプライアンスを推進し、内部統制システムの確立を図ります。その為の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(「医薬品医療機器等法」)、会社法、独占禁止法などの関係法令及び、業界内の規約・ガイドライン等を遵守します。

3.世界に通用する医薬品開発を目指した経営

 希少疾病分野での研究を基盤に、未来への更なる発展を目指して、世界に通用する治療薬の研究・開発に、独自の視点も盛り込みながら、積極的に取組みます。

4.職場環境への配慮を忘れない経営

 製薬企業として信頼性の高い商品提供のために、各事業所の安全かつ働きやすい環境づくりを徹底します。

5.自ら考え、自ら行動する人材を育成する経営

 「自ら考え、自ら行動する」ため、部署間の連携を基盤に、明確な目的意識と責任感を持つ仕事のプロの育成を目指します。

6.経営効率を高め、JCRファーマの長所を最大限にのばせる経営

 競争の激しい医薬品市場でビジネスを展開する為、市場を見極める視点を忘れずに経営の基本となる「人・物・経費」の効率化を図ります。 また、社内連携をより強化することで、JCRファーマだからこそ取り組める個性ある事業を展開していきます。

 

(2)経営戦略等

 当社は、2020年5月に3カ年中期経営計画「変革」(REVOLUTION into the Future)を策定、公表いたしました。本計画において、本格的なグローバル化に向けて、事業活動の質的・量的な「変革」だけでなく、当社の価値の源泉である「チームJCR」の社員一人ひとりが変わることで、中長期ビジョン「Toward 2030」の実現を目指すことを掲げております。

 中期経営計画の中間年である2021年度には、ハンター症候群に対する世界初の血液脳関門通過型酵素補充療法治療薬であるイズカーゴ®を世界に先駆けて日本で発売(2021年5月)し、欧米およびブラジルにおける臨床第3相試験を開始いたしました。イズカーゴ®については特定地域における独占的な共同開発およびライセンス契約を武田薬品工業株式会社と締結し(2021年9月)、さらに、当社独自技術である「J-Brain Cargo®」を活用した遺伝子治療の共同研究について、武田薬品工業株式会社と契約を締結いたしました(2022年3月)。

 当社にとって、J-Brain Cargo®を用いたイズカーゴ®の上市と、新たなモダリティとなる遺伝子治療の進展は、大変重要なマイルストーンの達成と考えております。今後も、革新的な創薬基盤技術を創出し、自社創製医薬品を提供することで、新しい価値を創造し続け、希少疾病にとどまらず、世界中の人々の健康と笑顔に貢献してまいります。

 また、現段階では具体的なリスクとして顕在化していないものの、新型コロナウイルスの感染拡大や国際紛争による政治的混乱等によるサプライチェーンへの影響が製品の安定供給を損なうリスクの他、エネルギーコストの増大が持続的成長に影響を与えるリスクを引き続き注視してまいります。

 アストラゼネカ社の新型コロナウイルスに対するワクチンの原液製造においては、バイオ医薬品製造技術を有する企業としての社会的責任を果たし感染収束に向けた一助となるべく取り組みを進め、予定された数量に相当する原薬の製造を完了いたしました。

 

(3)環境認識および対処すべき課題

 世界の製薬業界においては、治療薬の研究開発や製造を行うだけでなく、予防・診断・予後の管理まで範囲を拡大し、トータルヘルスケアサービスを提供する製薬企業が増えてきております。また、高齢化社会の進展から社会保障費用が増大し、各国の医療制度は財政的な健全化が求められております。一方で、遺伝子治療やがん免疫療法などの画期的な医薬品のイノベーションは加速しております。このような新薬の価値を適切に評価し、価格へ反映するValue Based Health Care(VBHC)の取り組みが加速しており、研究開発型の製薬企業においては高付加価値の医薬品を創製することが求められております。そのためにアカデミアとの共同研究や製薬企業間の技術提携が活発化され、競争環境の変化はますます激しくなってきております。

 当社においては、独創的な研究開発により創製された医薬品を世界中の患者さんに届けること、さらに、革新的な創薬基盤技術を創出し続け希少疾病領域以外の様々な疾患にも貢献することを使命と考えております。今後も持続的、安定的に成長を続けるため、引き続き「変革」を推し進めるため、以下の課題に対処してまいります。

 

最重要経営課題「品質保証体制の質・量的拡充」

 中期経営計画「変革」では、希少疾病領域におけるライソゾーム病治療薬の研究開発を着実に進捗させるほか、グローバルにおける当社の重要性がさらに高まることを見据え、「品質保証体制の質・量的拡充」を最重要経営課題といたしました。近年、医薬品に対する信頼を損ねる事例が相次ぎ、安定供給と品質に対する製薬企業の姿勢が改めて厳しく問われております。迅速かつ安定的に高品質の製品を臨床現場に提供することは製薬企業の最も重要な責務であり、企業の存立を左右する重大な課題と認識しております。

 当社では、高品質で有用な医薬品・医療機器を社会に提供するため、国内および海外のGMP(Good Manufacturing Practice:医薬品の製造管理および品質管理規則)に沿って、原材料の納入から生産、製品の出荷まで科学的に品質を保証する体制を整えており、さらにその水準を高める努力を続けております。さらに業界の不祥事が相次いだことを受け、当社内での不祥事を防止するため、新たな教育プログラムを開始し、これまで以上に社員全体へのコンプライアンス教育を強化しております。

 製品の品質・安全性においては、法律に則った三役連携体制を、営業本部、生産本部から独立した信頼性保証本部に設けており、製品の品質・安全性を科学的に評価する体制としております。また、昨年、品質試験部門を生産本部から分離し、試験法の開発部門と統合する組織変更を行いました。これにより、研究初期の試験法の検討から商業生産時の出荷時の試験まで一連で実施可能な品質管理体制のもと、実務的に無駄のない効率的な運営を目指してまいります。

 今後数年間のうちに、J-Brain Cargo®技術を適用した複数の開発品目がグローバル臨床試験入りを予定しており、グローバル化を見据えたサプライチェーンの構築にも積極的に取り組んでまいります。当社の独自技術であるJ-Brain Cargo®は、未だ治療法のない中枢神経症状を呈する疾患に対する初めての治療法となる可能性があります。そのような認識のもと、未だ満たされない医療ニーズに研究開発で応える製薬企業として、迅速かつ安定的に高品質な製品を提供する責務の重大性を認識し、これまで以上に品質保証体制の質・量的拡充に努めてまいります。

 

「既存製品の持続的成長のための取り組み」

 当社が開発しているライソゾーム病における一連の治療薬においては、今後数年以内に複数品目がグローバル試験入りし、2025年以降にグローバルで上市することを見込んでおります。積極的な研究開発の順調な進捗に伴い研究開発費の増大が予想されるため、既存製品の収益の持続的成長は、引き続き重要な経営課題であると認識しております。特に当社売上高の多くを占めるヒト成長ホルモン製剤「グロウジェクト®」の売上高の維持および成長を図り、2021年5月に販売を開始した「イズカーゴ®」の市場浸透の加速や、開発品目におけるグローバルでのアライアンスを実現することで、強固な収益基盤づくりをすることが極めて重要と認識しております。

 成長ホルモン製剤を販売する各社による適応追加や疾患啓発、さらに長期作用型ヒト成長ホルモン製剤の開発等の活動により、現在においても成長ホルモン製剤市場は拡大を続けております。一方、成長ホルモン製剤は主に小児の成長障害に使用されておりますが、日本国内における少子化により近い将来、市場全体の成長が減少に転じることを予測しております。

 当社の注入器は在宅自己注射製剤として国内で唯一の電子制御による電動デバイスであり、その特長を活かし日本国内におけるシェア拡大を続けてまいりました。今後もさらに患者さんや医療従事者のニーズに応えられるように、専用注入器やそれと連携するスマートフォンアプリケーションソフトウェアの開発、患者さんに寄り添った使い勝手の良い製剤や長期作用型製剤の開発を通じて、治療満足度のさらなる向上を目指してまいります。このような活動の他、効果的・効率的な情報提供活動をさらに推し進めることで、想定される市場規模の減少、薬価改定の影響を吸収し、売上高の維持、成長を図ってまいります。

 その他の品目についても、事業環境の変化に応じて適切に対応することにより、売上高の維持、成長を図ってまいります。

 

「基礎研究の拡充」

 製薬業界において新たな基盤技術が医薬品として実現するには、基礎研究を含め10年を超える歳月を要します。当社の最重要課題であるライソゾーム病における一連の治療薬の開発は、研究開発が順調に進捗すれば今後10年程度で概ね完了するものと予測しております。そのため、ライソゾーム病治療薬開発の後を見据えた新たな基盤技術と革新的な医薬品の創出を目的とした基礎研究への取り組みを加速させております。

 2021年度には、当社の独自技術であるJ-Brain Cargo®を適応した初めての開発品目であるイズカーゴ®を実臨床の現場に届けることができました。このJ-Brain Cargo®技術は脳や様々な組織へ薬物を送達することができる技術であり、ライソゾーム病だけでなく様々な疾患に応用が考えられております。この技術を適応した複数の開発品目より得られた知見から、核酸やタンパク質等、送り届けたい物質の特性に応じてJ-Brain Cargo®を最適化することで、効率的に脳やそれ以外の目的組織へ送達できることがわかってまいりました。J-Brain Cargo®プラットフォームテクノロジーを多様なモダリティに適用することで、様々な疾患に応用ができる可能性が高まってまいりました。

 今後、当社の成長と新たな機会創出のため、医薬品候補品の活用や技術相補的なシナジー効果を目的とした他社との協業を進めてまいります。引き続き当社の強みである基礎研究を進め、他社に導出しうる新たな基盤技術を創出し、安定的な収益の柱を確立してまいります。

 

「生産・研究への積極的な設備投資の検討・着手」

 当社は現在、製造販売中の6製品に加えて、今後、10以上のライソゾーム病治療薬をグローバルに製造販売する計画となっております。安定供給のためには、現在の国内4製造所では能力が不足する見込みとなっております。そのため、令和2年度ワクチン生産体制等緊急整備事業(厚生労働省)に基づいて神戸市西区に建設中のワクチン原薬製造所を、ワクチンを製造しない時期に他品目を製造できるよう設計しております。本製造所は2023年後半より商業製造を開始できる予定となっております。これに加えて、隣接する事業用地を購入済みであり、ここにさらに原薬あるいは製剤製造所を建設する予定となっております。

 必要な設備投資については、中長期的な予測の元、事業環境を注視しながら積極的に進めてまいります。

 

「エビデンス構築を含む製品戦略の立案」

 ライソゾーム病治療に取り組んでいる世界中の臨床現場に有用な情報を提供することは、ライソゾーム病領域において治療薬を開発する製薬企業の重要な責務であり、また、当社の事業価値向上につながることから、エビデンス構築を含む製品戦略の立案を重要課題として進めてまいります。

 例えば、J-Brain Cargo®を利用したライソゾーム病治療薬では、未だ満たされていない医療ニーズである中枢神経症状の改善による予後改善が期待されます。しかしながら、短期間の治験では長期的なモニタリングが必要な予後に関するデータを取得することは困難です。このようなデータは臨床現場にとっても極めて重要であるため、2021年5月に世界に先駆け日本で販売を開始したイズカーゴ®において、積極的かつ戦略的な情報収集活動を行い、実臨床での使用経験や長期的な有効性・安全性のデータを、日本から世界に提供できるように取り組んでまいります。

 ライソゾーム病には中枢神経症状のみが主症状であるために、診断が困難な疾患が存在いたします。また、中枢神経症状は通常不可逆的であり、一度発症すると回復することが困難となります。このような疾患においても当社のライソゾーム病治療薬は有効である可能性があることから、早期発見、早期治療の活動も当社にとって重要な責務と認識しております。

 

「業務および組織構造改革」

 当社はグローバルで存在感のある研究開発型企業を目指し、創業50周年を迎える2025年には、あらゆる面で大きな変化を遂げていなければなりません。一方で、当社の価値の源泉は当社の企業文化に共感する「チームJCR」一人ひとりであると確信しており、これは本格的なグローバル時代においても変わることなく「モノづくり」「研究」における新たな価値創造の源泉であり続けます。

 2021年度末において当社グループの社員数は810名に達し、前中期経営計画初年度である2015年度に比して約300名増加いたしました。さらに、研究開発の順調な進捗やグローバル展開に伴い、より一層人員規模や業務が拡大することとなります。

 一方、当社では、「チームJCR」の企業文化の維持発展には、本格的なグローバル化において多様性に富む人材確保に取り組みつつ、顔の見える範囲に規模を抑えることが重要と考えております。グローバル化の加速や急激な業容拡大期にあっても、一定規模の人員で業務を行えるよう付加価値の高い業務への注力、業務プロセスの電子化の推進による効率化、必要な組織構造改革を進めてまいります。さらに、グローバルで活躍できる人財や当社を引率できる次世代育成など、「チームJCR」一人ひとりのさらなる成長のための人財育成を進めてまいります。

 

2【事業等のリスク】

当社グループの戦略・事業その他を遂行する上でのリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を以下に記載いたします。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)新型コロナウイルス感染症のパンデミックに係るリスク

新型コロナウイルス感染症が世界的に猛威を振るう中、各国において治療薬及びワクチンの研究開発が進められております。複数の治療薬やワクチンが早期に承認され流通することによって、感染拡大前の日常に戻る兆しが見えつつあります。しかしながら、ウイルスの新規変異株の出現もあり、一度感染抑制に成功したとされる国においても再度感染拡大が認められるなど、世界的に予断を許さない状況が続いております。

当社グループにおいては、本事象による当社グループ事業への影響について注意深く精査しております。2020年3月中旬より、当社グループ従業員に対して可能な限り在宅勤務とすること、マスク着用、手洗いやうがいの徹底、検温といった予防策や、2週間に1度の抗原検査、ワクチン職域接種の実施、社内新型コロナウイルス対策チームからの定期的な情報発信による感染予防に関する注意喚起を講じております。幸い、研究開発、生産を含むすべての事業活動は正常に稼働しており、新型コロナウイルス感染症を原因とする社内業務の停滞や遅延は発生しておりません。今後も、研究、生産活動に影響を及ぼす可能性を重視し、予防策を徹底してまいります。

研究開発の進捗における新型コロナウイルス感染症の影響については、進行中または準備中の臨床試験を含め、本文書作成時点までにおいて遅延等のリスクの顕在化はありません。しかしながら、グローバルでの臨床試験を複数行っており、海外薬事当局での諸手続き等への影響も懸念されますので、引き続き状況を注視してまいります。

製品や原材料、製造用資材について、新型コロナウイルス感染症が調達先の製造活動に悪影響を及ぼすことで、入手困難となるリスクがあります。当社では、常に資材在庫を適切にコントロールし、必要時には薬事的な対応を行う体制を整えることで、有事においても医薬品の供給不安を最小限に抑える体制を整備しており、本文書作成時点において顕在化しているリスクはありません。

今後、新型コロナウイルス感染症の拡大によって当社グループの事業活動に影響が及ぶ可能性があります。社会情勢が大きく変化するなか、中長期的に安定した経営を行うために、機動的かつ安定的な資金調達手段を確保する必要があります。そのため、運転資金を確保することを目的として、2020年4月および5月にバックアップラインとして各金融機関との間で、既存の当座借越枠に加え、コミットメントライン契約を締結しております。

 

(2)コンプライアンスに関するリスク

医薬品産業等は、医薬品等の有効性及び安全性を担保するために様々な法規制を受けます。さらに、法規制の範囲に限らず製薬企業が高い倫理観を以て事業活動にあたることが重要です。当社グループでは、社内規範と企業倫理に沿った経営並びに法令遵守のためコンプライアンス委員会を設置し、コンプライアンス行動基準の制定と従業員へのハンドブックの配布および研修を通じてコンプライアンス周知・啓発を行っております。加えて、薬機法に基づく法令遵守ガイドラインが施行されており、当社はその体制として法令遵守担当取締役を含む責任役員を選任したほか社内研修等を実施しております。

しかしながら、社会規範あるいは企業倫理に反する行為が認められ社会的信用が失墜することにより、結果的に当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を受ける可能性があります。

 

(3)特定製品への依存のリスク

当社グループの販売品目のうち、ヒト成長ホルモン製剤の売上高が総売上高に占める割合は、当連結会計年度において25.3%になります。ヒト成長ホルモンは主に小児成長障害に使用される医薬品であることから、日本国内における少子化の影響を受けます。市場統計によれば、ヒト成長ホルモン市場は各社の新たな適応追加や疾患啓発活動の結果、これまでのところ拡大を続けてきましたが、将来的には減少に転じる可能性が高いと認識しております。また、ヒト成長ホルモン市場における競合品として持続性製剤の参入もあり、当社品シェアへの影響も想定されます。したがって、これらの不確定要因が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、本製剤の大部分は当社グループとPHC株式会社で共同開発した専用注入器グロウジェクター®Lを使用しなければ、自己注射することができません。グロウジェクター®L はPHC株式会社が製造し、同社とはリスク管理も含めた契約を締結しており、繰り返し使用できる機器(耐用年数3年)であることから、同社の生産に支障が生じた場合であっても、業績への影響は低いと認識しております。ただし、長期にわたり支障を生じた場合は、新規患者の獲得や機器の更新が滞り、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、J-Brain Cargo®(血液脳関門通過技術)を用いた新薬「イズカーゴ®点滴静注用10mg」を2021年5月に発売し、当連結会計年度において計画を上回る売上となりました。当製品については、他社とのアライアンスを実現することで海外における上市を計画しております。さらに、イズカーゴ®に引き続き、J-Brain Cargo®技術を基盤とした複数の研究開発を着実に進捗させ、ヒト成長ホルモン製剤への依存状態から脱却することを目指しております。

(4)安定供給・設備投資に関するリスク

当社グループでは、国民皆保険制度の下、全国の患者さんに平等かつ安定的に医薬品を供給する責務があると認識しております。そのため、供給不安のリスク対策として、製造に必要な資材および原料の確保状況を定期的に確認し、それらの供給元の事業状況を把握しつつ、可能な限りダブルソース化を図っております。また、GLPやGMP等のガイドラインを遵守するなど、品質保証体制を徹底しております。しかしながら、当社グループの製造施設等や原材料供給元において、技術的もしくは法規制上の問題、大規模災害による影響、国際紛争による政治的混乱等が発生することにより、製品の安定供給に支障が発生する可能性があります。特に、昨今の新型コロナウイルス感染症やロシア・ウクライナ情勢の状況によって、世界的に天然資源、建材、電子部品等の供給不足の影響がある中、今後、新規施設建設計画や研究・生産機器等の発注納期について、影響を受ける可能性は否定できません。その動向によっては、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(5)法規制に関するリスク

当社グループの事業は、関連法規の厳格な規制を受けており、各事業活動の遂行に際して種々の許認可等を受けております。これらの許認可等を受けるための諸条件および関連法令の遵守に継続的に努めており、現時点においては当該許認可等が取り消しとなる事由は発生しておりません。しかしながら、法令違反等によりその許認可等が取り消しとなる場合等には、規制の対象となる製商品の回収、または製造および販売を中止することを求められる場合もあり、これらにより当社グループの事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)薬価制度に関するリスク

また、当社グループが取り扱う医療用医薬品の薬価は、医療制度が国民皆保険を前提としていることから、健康保険法の規定に基づき、厚生労働大臣の定める薬価基準収載価格とされております。薬価基準の改定頻度が高まることや、競合品との競争激化など、薬価改定による売上低下のリスクが存在します。当社は、製品固有の価格リスクを継続的に評価し、製品価値に見合った仕切価の設定を行うなど、対応を行っております。

 

(7)研究開発に係るリスク

当社グループは、希少疾病領域での積極的な研究開発活動に取り組んでいますが、医薬品は所轄官庁の定めた有効性と安全性に関する厳格な審査により承認されてはじめて上市することが可能となります。したがって、研究開発の途上において、当該開発品の有効性もしくは安全性が承認に必要とされる基準を満たさない懸念があることが判明し、研究開発の中止もしくは遅延を要する場合は、研究開発費の回収や期待される収益の確保が困難もしくは遅延するリスクがあります。そのような場合は当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの売上高は、主に医薬品・医療機器・再生医療等製品の製造販売のほか、開発投資や技術ライセンスに基づく契約金収入により構成されております。また、これら契約金収入は営業利益等の各利益に大きな影響を及ぼすことがあります。したがって、パイプラインの研究開発に中止・遅延を要する事象が発生した場合、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)グローバル展開に向けた活動のリスク

当社グループでは、J-Brain Cargo®という技術基盤を活用し、希少疾病を適応とした革新的医薬品を提供することで、グローバルスペシャリティファーマを目指しております。その先駆けとして、2021年度にはイズカーゴ®のグローバル展開活動として他のグローバル企業との業務提携を完了し、海外における迅速な上市に向けた臨床試験および当局との交渉を実施中です。グローバル業務提携においては、両社間で適切なガバナンス体制を構築し、適時的に合意・意思決定を行うこととしております。

しかしながら、各国固有の法規制・特許・医療制度等において事業展開のリスクが異なります。両社間の契約上規定のない事案あるいは想定外の事態が発生することで、事業の進捗や、提携先の企業から得られるロイヤリティの見込時期もしくは有無に変動が生じるリスクがあり、この規模によっては業績への影響を受ける可能性があります。

 

(9)競合品に係るリスク

当社グループの製品およびパイプラインには、いずれも競合となりうる他社の開発品目が存在します。これら競合品目の開発が進捗し、発売された場合、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)人的リソースに係るリスク

近年の売上高の増加と研究開発の進捗に伴い研究開発部門、生産部門を中心に人的リソースを拡充しております。今後も複数のパイプラインのグローバル臨床試験、上市を見込んでいることから、引き続き人的リソースの拡大傾向が継続するものと認識しております。近年では、グローバル経験のある人材の確保に取り組み、さらにグローバルに活躍できる人材の教育計画を立案するなど、将来のJCRを牽引する人材を育む取り組みを進めております。しかしながら、人材の採用が困難になる場合あるいは離職率が上昇する場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)副作用の発現リスク

現在のパイプラインには人体にとっては未知の物質に相当する融合たんぱく質であるものが含まれています。新規医薬品では未知の副作用の発生は常にリスクとして認識すべきものと考えられます。また、一般的に、人体は未知の物質に対して抗原抗体反応により体内より排除する機構を持っていることから、これらの薬物が抗原抗体反応を惹起することにより好ましくない副作用の発現リスクが存在します。現在までの臨床試験において、特段留意が必要なリスクは顕在化しておりませんが、今後、長期に投与した際に看過できない副作用が発現した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)知的財産権の侵害リスク

当社グループの血液脳関門通過技術については、競争力のある形で知的財産権の確保に努めております。近年では、米国ArmaGen社を買収することで、米国等におけるJ-Brain Cargo®(血液脳関門通過技術)に関する知的財産権を取得したため、現段階において当該技術に関して他社の知的財産権を侵害するリスクは低いものと判断しております。しかしながら、血液脳関門通過技術を有した他社製品が開発されている状況にあり、将来において知的財産権を巡る訴訟が起こる場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)訴訟に関するリスク

当社グループは製造物責任(PL)関連、独占禁止法関連、環境関連やその他に関して訴訟を提起される可能性があります。これらの訴訟に対応すべく、損害保険への加入等のリスク対策を講じておりますが、訴訟が発生した場合、当社グループの業績および財政状態に重要な影響を与える可能性があります。

 

(14)自然災害に関するリスク

当社グループの製品に係る原薬、製剤工場は神戸市西区に集中しております。

地震、風水害には強い立地条件ではあるものの、大規模停電、想定を超える事象が発生した場合は一定期間操業できなくなることで当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)筆頭株主との関係

当社グループは、筆頭株主である株式会社メディパルホールディングスとの間で、複数のパイプラインに関する開発投資契約を締結しており、今後、両社が出資し米国に設立した合弁会社を通じて各種医薬品候補物質の臨床開発を行うほか、より広範囲な業務提携を行うことについて合意しております。当社グループは、同社との戦略的提携関係を維持し、両社の更なる企業価値の向上に努める所存でありますが、何らかの理由により同社との戦略的提携に変更があった場合、当社グループの業績および財政状態に重要な影響を与える可能性があります。

 

(16)金融市況の影響について

株式市況、為替相場および金利の動向によっては、保有する有価証券等の時価の下落、原材料等の輸入価格上昇、退職給付債務および支払利息の増加等、当社グループの業績および財政状態に重要な影響を受ける可能性があります。

 

上記のほか、環境保全上の問題の発生、製品を取り巻く環境の変化、ライセンスまたは提携の解消、システム障害および情報流出等、様々なリスクがあり、ここに記載されたものが当社グループの全てのリスクではありません。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 当期の経営成績

売上高は510億82百万円(前期比69.8%増)となりました。

遺伝子組換え天然型ヒト成長ホルモン製剤「グロウジェクト®」は、販売数量は増加しましたが、2021年4月の薬価改定の影響を受けました。同じく薬価改定があった腎性貧血治療薬は減収幅が大きかったものの、2021年5月に薬価収載された「イズカーゴ®点滴静注用10mg」が大きく寄与したことなどにより、主力製品の売上合計は前期を上回りました。

また、アストラゼネカ株式会社の新型コロナウイルスに対するワクチンの原液の国内製造を受託したこと、契約金収入が前期より増加したことなどにより、売上高合計で前期に比べて大幅な増収となりました。

利益面におきましては、売上高増収に伴う売上総利益の増加(前期比82.4%増)の一方で、販売費及び一般管理費が前期比47.7%増となったことにより、営業利益は199億33百万円(前期比141.1%増)、経常利益は205億12百万円(前期比141.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は145億7百万円(前期比110.5%増)となり、いずれも増益、過去最高を記録しました。

積極的な研究活動および臨床試験の進捗に応じた開発活動の結果、研究開発費は33.9%増加し71億75百万円(前期比18億15百万円増)となりました。

なお、2021年9月に武田薬品工業株式会社とハンター症候群に対する次世代治療薬JR-141の特定地域における共同開発と事業化に向けた契約を締結いたしました。今回の契約により、当社グループはグローバルスペシャリティファーマとしてさらなる一歩を踏み出しました。

 

 

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

増減

金額(百万円)

金額(百万円)

売上高

30,085

51,082

69.8

営業利益

8,269

19,933

141.1

経常利益

8,488

20,512

141.6

親会社株主に帰属する当期純利益

6,892

14,507

110.5

営業利益の増減要因は以下の通りです。

・主力製品の寄与による売上高の増加       20,996百万円

・売上原価の増加                △2,648百万円

・売上高増加に伴う販売費・一般管理費の増加   △4,868百万円

・研究開発費の増加               △1,815百万円

 

 

② 主要な売上

 

 

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

増減

金額(百万円)

金額(百万円)

ヒト成長ホルモン製剤

 グロウジェクト®

13,256

12,945

△2.3

ムコ多糖症Ⅱ型治療剤

 イズカーゴ®点滴静注用

3,003

腎性貧血治療薬

 エポエチンアルファBS注「JCR」

 ダルベポエチンアルファBS注「JCR」

7,087

3,278

3,809

5,875

2,876

2,998

△17.1

△12.2

△21.3

再生医療等製品

 テムセル®HS注

2,441

3,497

43.2

ファブリー病治療薬

 アガルシダーゼベータBS点滴静注「JCR」

 

470

 

711

 

51.3

契約金収入

6,406

10,571

65.0

AZD1222原液

404

14,375

3,458.3

(注)1 契約金収入は共同開発および事業化に向けた契約が締結されたこと等に由来します。

2 医薬品売上高は前連結会計年度23,263百万円、当連結会計年度26,032百万円であります。

 

③ 研究開発の状況

[ライソゾーム病治療薬]

・当社では現在、17種類を超えるライソゾーム病治療薬について独自の血液脳関門通過技術「J-Brain Cargo®」を適用した新薬の研究開発に重点的に取り組んでおります。

 

・血液脳関門通過型ハンター症候群治療酵素製剤パビナフスプ アルファ(開発番号:JR-141)については、2021年5月に日本での販売を開始いたしました(製品名「イズカーゴ®点滴静注用10mg」)。また、ブラジル連邦共和国では2020年12月にブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)に製造販売承認申請を行いました。その他の地域では、2021年2月に米国食品医薬品局(FDA)よりFast Track(※1)の指定を、2021年10月には欧州医薬品庁(EMA)よりPRIME(※2)の指定をそれぞれ受けております。2022年2月にはグローバル臨床第3相試験において最初の被験者への投薬が開始されております。

 

・血液脳関門通過型ムコ多糖症Ⅰ型治療酵素製剤(開発番号:JR-171)については、現在、日本・ブラジル・米国において臨床第1/2相試験を実施しており、2022年3月までに計画した全例の登録を完了しております。なお、2021年2月にFDAより、2021年3月に欧州委員会(EC)よりオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の指定を受けております。また、2021年9月にFDAよりFast Trackの指定を受けており、米国における臨床開発の迅速化、優先審査や早期承認が期待されます。

 

・血液脳関門通過型ムコ多糖症ⅢA型治療酵素製剤(開発番号:JR-441)については、2022年1月にECよりオーファンドラッグの指定を受けており、欧州(EU)領域における開発促進のための様々なインセンティブを受けることができます。現在、2023年上半期のグローバル臨床試験開始に向けた取り組みを進めております。

 

・その他のJ-Brain Cargo®を適用したライソゾーム病治療薬(ポンペ病治療薬(開発番号:JR-162)、スライ症候群治療薬(開発番号:JR-443)、サンフィリッポ症候群B型治療薬(開発番号:JR-446))についても、研究開発を順次行うとともにグローバル展開を推進してまいります。また、新たに2022年3月にGM2ガングリオシドーシス治療薬(開発番号:JR-479)について、開発に着手することを決定いたしました。

 

・また、上記の他、2022年3月に武田薬品工業株式会社と、複数のライソゾーム病についてJ-Brain Cargo®技術を用いた遺伝子治療に関する共同研究開発契約を締結いたしました。これは、J-Brain Cargo®技術そのものを様々なモダリティに応用可能であることを示す第一歩となるものです。

[再生医療等製品]

・「テムセル®HS注」の新たな適応拡大として新生児低酸素性虚血性脳症(開発番号:JR-031HIE)に対する臨床第1/2相試験を実施しております。

 

・帝人株式会社との共同開発であった他家(同種)歯髄由来幹細胞(DPC)を用いた急性期脳梗塞を適応症とする再生医療等製品(開発番号:JTR-161/JR-161)については、2022年4月に共同開発を終結することで合意いたしました。

 

[ヒト成長ホルモン製剤]

・「グロウジェクト®」の効能追加としてSHOX異常症(開発番号:JR-401X)に対する臨床第3相試験を実施しております。

 

・遺伝子組換え持続型成長ホルモン製剤(開発番号:JR-142)の臨床第2相試験を実施しております。

 

※1 FDA Fast Track制度

重篤な疾患を治療するために、アンメットメディカルニーズを満たす治療薬の開発を促進し、審査を迅速化することを目的とした制度。ファストトラック制度に指定された医薬品は、開発計画についてFDAと頻繁にミーティングを行うほか、関連する基準を満たす場合に優先審査および早期承認の対象となる。

※2 EMA PRIME (PRIority MEdicines)

アンメットメディカルニーズを対象とした医薬品の開発支援を強化するために開始したスキーム。PRIMEによって早期かつ積極的な支援を受けることで医薬品の申請を迅速に行うことが可能となり、また迅速審査の対象になる可能性がある

 

④ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ44億72百万円増加して307億33百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況および主な要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は、92億89百万円(前連結会計年度比10億52百万円の収入減)となりました。これは主に、売上債権の増加額74億2百万円、法人税等の支払額25億17百万円があった一方で、税金等調整前当期純利益の計上額194億4百万円があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、32億50百万円(前連結会計年度比40百万円の支出減)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出113億33百万円があった一方で、助成金の受取額81億67百万円があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、21億79百万円(前連結会計年度比104億83百万円の支出増)となりました。これは主に、配当金の支払額21億69百万円があったことによるものであります。

 

 

⑤ 生産、受注及び販売の実績

(1)生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

生産高(百万円)

前年同期比(%)

医薬品事業

44,923

162.4

合計

44,923

162.4

(注) 金額は販売価格により表示しております。

 

(2)受注実績

 当社グループは見込生産によっており、受注生産は行っておりません。

 

(3)販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

販売高(百万円)

前年同期比(%)

医薬品事業

51,082

169.8

合計

51,082

169.8

(注) 主な相手先別の販売実績およびそれぞれの総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

株式会社メディセオ

6,549

21.8

7,922

15.5

キッセイ薬品工業株式会社

7,087

23.6

5,969

11.7

 

⑥ 経営成績への影響

新型コロナウイルス感染症の影響につきましては、当連結会計年度につきましては影響を受けておりません。

また、本報告書作成時点においては、パイプラインの臨床試験の遅延等は発生しておらず、製品や原材料、製造用資材についても当面の生産に必要な在庫は確保しており、大きな影響はないと判断しております。

なお、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりましては、棚卸資産、有価証券、特許権、貸倒引当金、退職給付に係る負債および繰延税金資産などについて、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」および「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」に記載のとおり、資産・負債および収益・費用の数値に影響を与える見積りおよび判断を行っております。従いまして、実際の結果は、見積りの不確実性により異なる場合があります。

 新型コロナウイルス感染症の影響につきましては、収束まではある程度の期間を要すると想定しておりますが、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載のとおり、当社グループの業績への影響は軽微であると判断しております。従いまして、当連結会計年度における会計上の見積りへの影響はありません。また、本報告書提出日現在において、翌連結会計年度におきましても同様であると判断しております。

 

② 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

・財政状態

 当連結会計年度末における資産合計は971億34百万円(前連結会計年度末比233億49百万円増)、負債合計は460億45百万円(前連結会計年度末比108億17百万円増)、純資産合計は510億89百万円(前連結会計年度末比125億31百万円増)となりました。

 流動資産は、現金及び預金および受取手形、売掛金及び契約資産が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ136億42百万円増加して621億88百万円となりました。固定資産につきましては、有形固定資産が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ97億7百万円増加して349億46百万円となりました。

 流動負債は、未払法人税等および圧縮未決算特別勘定が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ130億25百万円増加して420億54百万円となりました。固定負債は、長期借入金が減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べ22億8百万円減少して39億90百万円となりました。

 純資産につきましては、配当金の支払があった一方で親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより、前連結会計年度末に比べ125億31百万円増加して510億89百万円となりました。

 これらの結果、当連結会計年度末における自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ0.5ポイント上昇して51.8%となりました。

 現時点では当社グループにおいて、新型コロナウイルス感染症の影響は受けておりませんが、今後の世界情勢の見通しが立たない中、当社グループがグローバルで持続的な成長を行うために、機動的かつ安定的に資金調達手段を確保する必要があり、各金融機関との間で、バックアップラインとして運転資金を確保する事を目的として、総額155億円のコミットメントライン契約を締結しております。

 

・経営成績

売上高は前連結会計年度に比べ209億96百万円(69.8%)増加して510億82百万円となりました。

主力製品であるヒト成長ホルモン製剤「グロウジェクト®」につきましては、数量ベースでは前期比で4.7%増加しましたが、2021年4月の薬価改定により販売単価は引き下げとなった影響を受け、前期比3億11百万円(2.3%)の減収となりました。2023年3月期は数量ベースでの増加により、2022年4月の薬価改定の影響を吸収して増収となることを見込んでおります。

2021年5月に薬価収載された「イズカーゴ®点滴静注用10mg」につきましては、販売開始以降、順調に市場への浸透が進んでおり、当初見込みを上回る売上高を計上しました。2023年3月期も増収を見込んでおります。

腎性貧血治療薬につきましては、短期型腎性貧血治療薬「エポエチンアルファBS注JCR」・持続型腎性貧血治療薬「ダルベポエチンアルファBS注JCR」の売上高はいずれも減少し、腎性貧血治療薬合計では58億75百万円(前期比12億12百万円・17.1%減)となりました。2023年3月期も減収を見込んでおります。

 

再生医療等製品「テムセル®HS注」につきましては、需要に合わせた供給体制の増強を実施し、安定在庫を確保できるようになったため、当連結会計年度の売上高は前期比10億55百万円(43.2%)の増収となりました。2023年3月期も引き続き増収を見込んでおります。

国産初のライソゾーム病治療薬であるファブリー病治療薬「アガルシダーゼベータBS点滴静注JCR」につきましては、販売開始以降、徐々に市場への浸透が進んでおり、当連結会計年度は前期比で増収となっております。また、2022年4月より住友ファーマ株式会社に販売業務を移管することで販売体制をより一層強化し、2023年3月期も引き続き増収を見込んでおります。

また、2020年12月より、アストラゼネカ株式会社から新型コロナウイルスワクチン(AZD1222)原液の国内製造を受託し、当連結会計年度における売上高は143億75百万円となりました。なお、当該事業については製造を既に終了しております。

契約金収入につきましては、新たなライセンス契約の締結などに伴い、前期比41億65百万円(65.0%)の増収となりました。2023年3月期も新たな契約締結を計画しており、さらに増収となる見込みです。

一方で、研究開発費につきましては71億75百万円と前期比18億15百万円(33.9%)の増加となりました。研究開発費は2020年に公表しました3ヵ年中期経営計画「変革」のガイダンスで対売上高比率20%を目安に投資を行うと示しておりますが、効率的な研究開発を行った結果、当連結会計年度における対売上高比率は14.0%となりました。2023年3月期につきましては、2021年5月に薬価収載された「イズカーゴ®点滴静注用10mg」に続く、J-Brain Cargo®を適用した一連のライソゾーム病治療薬について、将来の成長に向けて積極的にグローバルで開発を行う計画であり、90億円(当期比25.4%増・対売上高比20%)の研究開発費を見込んでおります。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析

「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ④キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

b.当社グループの資本の財源および資金の流動性

・資金需要の主な内容

当社グループにおきましては、原材料等の仕入れ、研究開発費、人件費および販売費などの運転資金、ならびに生産および研究開発を目的とする設備投資に主たる資金需要が生じます。

なお、研究開発費につきましては、対売上高比率20%を目安に投資を行っております。

また、株主還元についても、経営上の重要な施策の一つとして位置づけております。剰余金の配当等につきましては、将来の利益の源泉となる新薬開発や経営体質強化のための内部留保を確保しつつ、業績およびキャッシュ・フローの状況を勘案しながら継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針としており、ご期待に応える株主還元と財務の健全性のバランスを重視し、配当性向につきましては30%を目安としております。

・資金調達

これらの資金需要に対しましては、営業活動によるキャッシュ・フローからの充当を基本とし、不足する場合は金融機関からの借入金による調達を実施しております。

当連結会計年度末時点の現金及び現金同等物残高は307億33百万円となっており、事業遂行に必要な資金を十分確保しております。

なお、現時点では当社グループにおいて、新型コロナウイルス感染症の影響は受けておりませんが、今後の世界情勢の見通しが立たない中、当社グループがグローバルで持続的な成長を行うために、機動的かつ安定的に資金調達手段を確保する必要があり、各金融機関との間でバックアップラインとして運転資金を確保する事を目的として、当連結会計年度に総額155億円のコミットメントライン契約を締結しております。

 

4【経営上の重要な契約等】

(1)技術等導入契約

契約会社名

相手先の名称

契約内容

対価の支払

契約期限

当社

Mesoblast社

移植片対宿主病、表皮水庖症、新生児低酸素性虚血性脳症適応症における骨髄由来ヒト間葉系幹細胞(MSC)の国内独占開発、製造および販売

マイルストーンおよびロイヤルティ

製品発売から15年または適応拡大承認から10年間のいずれか遅い日まで

 

(2)技術等導出契約

契約会社名

相手先の名称

契約内容

対価の受取

契約期限

当社

帝人㈱

他家(同種)歯髄由来幹細胞を用いた急性期脳梗塞を適応症とする再生医療等製品の共同開発および実施許諾

マイルストーンおよびロイヤルティ

実施許諾について特定の期間を定めず

当社

大日本住友製薬㈱

中枢神経系疾患治療薬創製に関する血液脳関門通過技術のライセンス契約

契約金・マイルストーンおよびロイヤルティ

特許期間満了またはロイヤルティの支払終了のいずれか遅い日まで

※大日本住友製薬株式会社は、2022年4月1日付で、住友ファーマ株式会社に商号変更しております。

 

以下について、当連結会計年度において共同開発契約および共同研究開発契約ならびにライセンス契約を締結いたしました。

契約会社名

相手先の名称

契約内容

対価の受取

契約期限

当社

武田薬品工業㈱

次世代組換え融合タンパク質JR-141(INN: pabinafusp alfa)の特定地域における独占的な共同開発およびライセンス契約

契約金・マイルストーンおよびロイヤルティ

ロイヤルティの支払終了まで

「J-Brain Cargo」を適用した遺伝子治療に関する共同研究開発および独占的なライセンス契約

契約金・マイルストーンおよびロイヤルティ

ロイヤルティの支払終了まで

 

(3)取引契約等

契約会社名

相手先の名称

契約内容

対価の支払

契約期限

当社

Ferring社

遺伝子組換えヒト成長ホルモン原体の独占輸入権および同製剤の国内独占販売権

2023年10月まで(以降5年毎の更新)

当社

キッセイ薬品工業㈱

腎性貧血治療薬「エポエチンアルファBS注JCR」および持続型赤血球造血刺激因子製剤ダルベポエチンアルファ(一般名)のバイオ後続品の国内独占販売権

2024年3月まで(以降1年毎自動更新)

当社

㈱メディパルホールディングス

㈱メディパルホールディングスによる研究開発費の一部負担および当社によるロイヤルティの支払

ロイヤルティ

ロイヤルティの支払終了まで

米国合弁会社を通じた各種医薬品候補物質の臨床開発の実施

特定期間を定めず

 

 以下について、当連結会計年度において国内独占販売契約を締結いたしました。

契約会社名

相手先の名称

契約内容

対価の支払

契約期限

当社

大日本住友製薬㈱

ファブリー病治療薬「アガルシダーゼベータBS点滴静注JCR」の国内独占販売権

2032年3月まで(以降1年毎自動更新)

※大日本住友製薬株式会社は、2022年4月1日付で、住友ファーマ株式会社に商号変更しております。

5【研究開発活動】

 当社グループにおきましては、医薬品事業において、長年にわたり培ってきたバイオ技術および細胞培養技術を基礎として、小児領域を中心とした難病や希少疾病の分野における革新的な医薬品、再生医療等製品の研究開発に取り組んでおります。

 当連結会計年度における研究開発費の総額は7,175百万円(前連結会計年度5,360百万円)、対売上高比14.0%(前年実績17.8%)となりました。

 

 なお、2022年6月1日現在の医薬品の研究開発状況は下記のとおりであります。

開発番号

(一般名)(製品名)

適応症等

開発段階

備考

JR-141

(血液脳関門通過型遺伝子組換え

イズロン酸-2-スルファターゼ)

(イズカーゴ®点滴静注用10mg)

ムコ多糖症Ⅱ型

(ハンター症候群)

ブラジル:

製造販売承認申請

酵素補充療法

J-Brain Cargo®採用

グローバル:

臨床第3相試験

JR-171

ムコ多糖症Ⅰ型

(ハーラー症候群等)

グローバル:

臨床第1/2相試験

酵素補充療法

J-Brain Cargo®採用

J-MIG System®採用

(血液脳関門通過型遺伝子組換え

α-L-イズロニダーゼ)

JR-162

ポンペ病

前臨床

酵素補充療法

J-Brain Cargo®採用

(J-Brain Cargo®適用遺伝子組換え

酸性α-グルコシダーゼ)

JR-441

ムコ多糖症ⅢA型

(サンフィリッポ

症候群A型)

前臨床

酵素補充療法

J-Brain Cargo®採用

(血液脳関門通過型遺伝子組換え

へパランN-スルファターゼ)

JR-443

ムコ多糖症Ⅶ型

(スライ症候群)

前臨床

酵素補充療法

J-Brain Cargo®採用

(血液脳関門通過型遺伝子組換え

β-グルクロニダーゼ)

JR-446

ムコ多糖症ⅢB型

(サンフィリッポ症候群B型)

前臨床

酵素補充療法

J-Brain Cargo®採用

(血液脳関門通過型遺伝子組換え

α-N-アセチルグルコサミニダーゼ)

JR-479

GM2ガングリオシドーシス

(テイ・サックス病、サンドホフ病)

前臨床

酵素補充療法

J-Brain Cargo®採用

(血液脳関門通過型遺伝子組換え

 β‐ヘキソサミニダーゼA)

JR-401X

SHOX異常症における低身長症

臨床第3相試験

グロウジェクト®適応拡大

(遺伝子組換えソマトロピン)

JR-142

小児成長ホルモン分泌不全性低身長症

臨床第2相試験

J-MIG System®採用

(遺伝子組換え持続型成長ホルモン)

JR-031HIE

新生児低酸素性虚血性脳症

臨床第1/2相試験

テムセル®HS注適応拡大

再生医療等製品

(ヒト間葉系幹細胞)