第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

 当中間連結会計期間において、当半期報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項の発生又は前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」についての重要な変更はありません。

 なお、重要事象等は存在しておりません。

 

2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において判断したものであります。

(1)経営成績の状況

①当期の経営成績

売上高は166億57百万円(前年同期比31.4%減)となりました。

遺伝子組換え天然型ヒト成長ホルモン製剤「グロウジェクト®」は、2024年4月に薬価改定があったものの販売数量が大きく増加したことにより増収となり、「イズカーゴ®点滴静注用10mg」も好調に推移しましたが、腎性貧血治療薬の減収等により、製品売上高は前年同期とほぼ同水準となりました。その一方で、契約金収入および受託製造売上が減少したことなどにより、前年同期に比べて減収となりました。

また、積極的な研究開発活動の結果、研究開発費は18.8%増加し65億76百万円(前年同期比10億40百万円増)となりました。

これらの結果、7億39百万円の営業損失(前年同期は68億98百万円の営業利益)、16億21百万円の経常損失(前年同期は71億26百万円の経常利益)、6億91百万円の親会社株主に帰属する中間純損失(前年同期は52億53百万円の親会社株主に帰属する中間純利益)を計上しております。

 

 

前中間連結会計期間

(自 2023年4月1日

至 2023年9月30日)

当中間連結会計期間

(自 2024年4月1日

至 2024年9月30日)

増減

金額(百万円)

金額(百万円)

売上高

24,272

16,657

△31.4

営業利益又は営業損失(△)

6,898

△739

経常利益又は経常損失(△)

7,126

△1,621

親会社株主に帰属する中間純利益又は

親会社株主に帰属する中間純損失(△)

5,253

△691

 

②主な売上

 

前中間連結会計期間

(自 2023年4月1日

至 2023年9月30日)

当中間連結会計期間

(自 2024年4月1日

至 2024年9月30日)

増減

金額(百万円)

金額(百万円)

ヒト成長ホルモン製剤

 グロウジェクト®

8,746

9,401

7.5

ムコ多糖症Ⅱ型治療剤

 イズカーゴ®点滴静注用

2,556

2,845

11.3

腎性貧血治療薬

 エポエチンアルファBS注「JCR」

 ダルベポエチンアルファBS注「JCR」

2,674

1,046

1,628

1,764

962

801

△34.0

△8.0

△50.8

再生医療等製品

 テムセル®HS注

1,901

1,521

△20.0

ファブリー病治療薬

 アガルシダーゼベータBS点滴静注「JCR」

590

714

21.0

製品計

16,470

16,246

△1.4

契約金収入

7,112

15

△99.8

 

 

③研究開発の状況

[ライソゾーム病治療薬]

・当社では現在、17種類を超えるライソゾーム病治療薬について、独自の血液脳関門通過技術「J-Brain Cargo®」を適用した新薬の研究開発に重点的に取り組んでおります。

 

・血液脳関門通過型ハンター症候群治療酵素製剤pabinafusp alfa(開発番号:JR-141)については、現在、グローバル臨床第3相試験が進行中であります。また、いわゆる軽症型の患者さんを対象としたCohort Bについて、目標としていた20例の症例登録が完了し、より重症な患者さんを対象としたCohort A においても、60%以上の症例登録が完了いたしました。

 

・血液脳関門通過型ムコ多糖症Ⅰ型治療酵素製剤lepunafusp alfa(開発番号:JR-171)については、現在、日本・ブラジル・米国での13週間の臨床第1/2相試験を完了し、その継続試験を実施しております。また、当該品目については、自社開発ではなくライセンスアウトにより開発を進める方針であり、パートナー候補との導出交渉を進めております。

 

・血液脳関門通過型ムコ多糖症ⅢA型治療酵素製剤(開発番号:JR-441)については、ドイツにて臨床第1/2相試験が進行中であります。また、2024年上半期に、予定していた12名の症例登録を完了いたしました。また、日本国内においては2024年10月に臨床第1相試験での治験薬投与が開始されました。なお、2022年1月に欧州委員会(EC)より、2023年12月に米国食品医薬品局(FDA)よりオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の指定を受けております。

 

・血液脳関門通過型ムコ多糖症ⅢB型治療酵素製剤(開発番号:JR-446)については、2023年9月に株式会社メディパルホールディングスと、海外における事業化についての実施許諾契約および日本における共同開発・商業化契約を締結いたしました。また、2024年5月に提出した治験計画届が医薬品医療機器総合機構に受理され、現在、臨床第1/2相試験の開始に向けた準備を進めております。

 

・その他のJ-Brain Cargo®を適用したライソゾーム病治療薬であるフコシドーシス治療薬(開発番号:JR-471)については、2022年10月に締結した実施許諾契約に基づき、株式会社メディパルホールディングスに対し、日本を除く全世界における研究・開発、製造および販売などの事業化に関する再実施許諾権付の独占的実施権を許諾いたしました。現在、臨床試験開始に向けた必要な研究等を進めております。

 

[基盤技術の創出]

・JCR独自の血液脳関門通過技術「J-Brain Cargo®」の様々なモダリティへの応用可能性を広げる研究の他、J-Brain Cargo®技術に続く新たな基盤技術の創出に注力しております。その成果のひとつとして、J-Brain Cargo®技術を適用した新しい遺伝子治療技術について、2024年5月に公表を行いました。こちらは、アデノ随伴ウイルスにJ-Brain Cargo®を修飾することで、肝臓への取り込みを低減して脳へと効率的にベクターを送達できる遺伝子治療技術であり、新たなプラットフォーム技術として開発を進めております。

 

[再生医療等製品]

・「テムセル®HS注」の新たな適応拡大として新生児低酸素性虚血性脳症(開発番号:JR-031HIE)に対する開発を進めてきましたが、臨床第1/2相試験において期待していた有効性を示すことができなかったことを踏まえ、当開発の中止を決定いたしました。

 

[ヒト成長ホルモン製剤]

・長時間作用型遺伝子組換えヒト成長ホルモン製剤(開発番号:JR-142)の臨床第2相試験の継続試験を実施中であります。また、2024年7月に臨床第3相試験の治験計画届が医薬品医療機器総合機構に受理され、現在、試験開始に向けた準備を進めております。

 

 

(2)財政状態の分析

当中間連結会計期間末における資産合計は1,046億22百万円(前連結会計年度末比23億96百万円増)、負債合計は475億72百万円(前連結会計年度末比18億22百万円増)、純資産合計は570億49百万円(前連結会計年度末比5億73百万円増)となりました。

流動資産は、棚卸資産が増加した一方で、現金及び預金および売掛金及び契約資産が減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べ12億74百万円減少して563億7百万円となりました。固定資産については、新製剤工場建設に伴う建設仮勘定等の有形固定資産および投資有価証券が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ36億70百万円増加して483億14百万円となりました。

流動負債は、未払法人税等および未払消費税等が減少した一方で、短期借入金が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ39億98百万円増加して341億33百万円となりました。固定負債は、長期借入金が減少したことなどにより21億76百万円減少して134億38百万円となりました。

純資産につきましては、親会社株主に帰属する中間純損失の計上、配当金の支払および新株予約権が減少した一方で、自己株式の減少およびその他有価証券評価差額金が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ5億73百万円増加して570億49百万円となりました。

これらの結果、当中間連結会計期間末における自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ0.1ポイント低下して54.1%となりました。

当社グループがグローバルで持続的な成長を行うため、機動的かつ安定的に資金調達手段を確保する必要があり、各金融機関との間で、バックアップラインとして運転資金を確保する事を目的として、総額495億円のコミットメントライン契約を締結しております。

なお、このうち265億円については、新製剤工場の建設に関する資金調達のために締結したものであります。この新製剤工場の建設は、経済産業省「ワクチン生産体制強化のためのバイオ医薬品製造拠点等整備事業」に採択されており、同事業における補助金を用いて当該建設を行いますが、当コミットメントライン契約につきましては、補助金受領までの必要資金に充当することを目的としたものであります。

 

(3)キャッシュ・フローの状況の分析

当中間連結会計期間における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ4億84百万円減少して182億71百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況および主な要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果使用した資金は、11億9百万円(前年同期比46億30百万円の支出増)となりました。これは主に、売上債権の減少額25億79百万円、減価償却費の計上額16億67百万円があった一方で、税金等調整前中間純損失の計上額5億56百万円、棚卸資産の増加額18億30百万円、未払消費税等の減少額18億18百万円、法人税等の支払額14億51百万円があったことなどによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、29億62百万円(前年同期比16億74百万円の支出増)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出29億92百万円があったことなどによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は、38億52百万円(前年同期比46億13百万円の収入増)となりました。これは主に、配当金の支払額12億48百万円があった一方で、短期借入金の純増額51億12百万円があったことなどによるものであります。

 

(4)経営方針・経営戦略等

当中間連結会計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略について重要な変更はありません。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当中間連結会計期間において、当社グループの優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題に重要な変更および新たに生じた課題はありません。

 

(6)研究開発活動

当中間連結会計期間の研究開発費の総額は65億76百万円(前年同期実績55億35百万円)であります。

なお、当中間連結会計期間における当社グループの研究開発活動の状況は、(1)経営成績の状況に記載のとおりであります。

 

遺伝子組換え医薬品

開発番号

(物質名)

開発段階

適応症等

備考

JR-141

(血液脳関門通過型遺伝子組換え

 イズロン酸-2-スルファターゼ)

グローバル:

臨床

第3相試験

ムコ多糖症Ⅱ型

(ハンター症候群)

酵素補充療法

「J-Brain Cargo®」採用

JR-171

(血液脳関門通過型遺伝子組換え

 α-L-イズロニダーゼ)

グローバル:

臨床

第1/2

相試験

ムコ多糖症Ⅰ型

(ハーラー症候群等)

酵素補充療法

「J-Brain Cargo®」採用

「J-MIG System®」採用

JR-162

(J-Brain Cargo®適用遺伝子組換え酸性

 α-グルコシダーゼ)

前臨床

ポンぺ病

酵素補充療法

「J-Brain Cargo®」採用

JR-441

(血液脳関門通過型遺伝子組換え

 へパランN-スルファターゼ)

グローバル:

臨床

第1/2

相試験

ムコ多糖症ⅢA型

(サンフィリッポ症候群A型)

酵素補充療法

「J-Brain Cargo®」採用

JR-443

(血液脳関門通過型遺伝子組換え

 β-グルクロニダーゼ)

前臨床

ムコ多糖症Ⅶ型

(スライ症候群)

酵素補充療法

「J-Brain Cargo®」採用

JR-446

(血液脳関門通過型遺伝子組換え

 α-N-アセチルグルコサミニダーゼ)

前臨床

ムコ多糖症ⅢB型

(サンフィリッポ症候群B型)

酵素補充療法

「J-Brain Cargo®」採用

JR-479

(血液脳関門通過型遺伝子組換え

 β-ヘキソサミニダーゼA)

前臨床

GM2ガングリオシドーシス

(テイ・サックス病、サンドホフ病)

酵素補充療法

「J-Brain Cargo®」採用

JR-471

(血液脳関門通過型遺伝子組換え

 α-L-フコシダーゼ)

前臨床

フコシドーシス

酵素補充療法

「J-Brain Cargo®」採用

JR-142

(遺伝子組換え持続型ヒト成長ホルモン)

臨床

第2相試験

小児成長ホルモン分泌不全性低身長症

「J-MIG System®」採用

 

 

(7)従業員の状況

当中間連結会計期間において、連結会社または提出会社の従業員数の著しい増減はありません。

 

(8)生産、受注及び販売の実績

当中間連結会計期間において、生産、受注および販売実績の著しい変動はありません。

 

(9)主要な設備

当中間連結会計期間において、主要な設備の著しい変動および新たに確定した重要な設備の新設、除却等はありません。

 

3【経営上の重要な契約等】

武田薬品工業株式会社との次世代組換え融合たんぱく質JR-141(INN: pabinafusp alfa)の特定地域における独占的な共同開発およびライセンス契約は、2024年6月に終了いたしましたが、同剤の臨床開発については、引き続き当社グループで米国、中南米、欧州においてグローバル第3相臨床を実施してまいります。