第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社は、

「私達は 人々の健康に貢献します」

「私達は こころの笑顔を大切にします」

を理念に掲げております。そして、企業活動を通じて理念を実現するために、私達の誓い「T-SMILE」を掲げております。

私達の誓い「T-SMILE」

・Truthful:

誠実で、正直であり続けます。公正な心を持って適正を貫き、人々から喜ばれ、信頼される存在になります。

・Speed:

意思決定、実行、情報共有などを迅速に行います。先見性を持って、変化に俊敏に対応します。

・Mission:

世界中で地域社会の人々の健康に役立つという強い使命感と、その実現への情熱を持ち続けます。

・Idea:

発想力と想像力を駆使して、前例にとらわれない変革にチャレンジします。常に能動的に行動します。

・Linkage:

人や情報と幅広く結びつき、協力します。認め合える相手と切磋琢磨し、お互いを高めます。

・Excellence:

最善の品質を求め、サイエンスを大切にしながら、時代にあった最適の技術でそれをかなえます。

 

当社は、優れた製品とサービスを創造することによって、人々の健康に貢献します。そして私達の企業活動を通して、患者さん、医療関係者の皆様、地域社会をはじめとするすべての方々にこころから喜ばれ、求められる企業を目指していきます。ジェネリック医薬品事業をコア事業として、新たな健康関連事業へ展開していきます。

 

(2) 経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

国内ジェネリック医薬品業界では、2017年に閣議決定された「2020年9月までにジェネリック医薬品の使用割合を80%以上」という目標に向け、生産体制の拡充と安定供給に努めた結果、2023年10-12月期の数量シェアは82.7%(日本ジェネリック製薬協会調べ)となりました。

一方、2020年の閣議決定により、従来は2年に1度であった薬価改定が2021年度以降は毎年行われることとなり、医薬品業界にとって極めて厳しい状況となっております。

さらに、2020年に発覚したジェネリック医薬品企業における品質問題を起因とした一連の供給不安により、ジェネリック医薬品に対する信頼感は低下し、国内ジェネリック医薬品業界の置かれた環境は厳しさを増しております。

このような状況の中、2023年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太方針2023)」にも、「医療上の必要性を踏まえた後発医薬品をはじめとする医薬品の安定供給確保、後発医薬品の産業構造の見直し」の強化を図るという記載がなされました。また、2023年7月から「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」で産業のあるべき姿やその実現に向けた産業政策について幅広い議論が行われています。

さらに、各会議体での議論を踏まえ、2024年度薬価改定において、後発品を中心とした医薬品の安定供給確保のために、企業の安定供給体制を評価する企業指標と評価結果の薬価改定への活用が一部試行的に導入されました。

以上のような状況の中、業界環境が大きく変化していますが、当社は信頼性のさらなる向上を行いつつ、当社グループの役員と社員が共通認識を持って、いつの時代でも、どの地域でも、その地域に住んでいる人々に必要とされる会社、必要とされる製品・サービスを提供することができる会社であることを目指します。

当社は、コア事業としての国内のジェネリック医薬品事業において社会インフラであるとの認識のもと、これまで以上に信頼される企業になるための取り組みとして、安定供給体制や品質保証体制並びに製造管理や品質管理の強化・幅広い品揃え・製品総合力No.1の製品づくり等によりジェネリック医薬品事業の進化に尽力します。また、これまでに培った知見や技術の活用だけでなく、新たな技術の獲得やまったく新しい知見や技術との融合を図り、技術イノベーションと製品価値の創出を行うことを通して、健康関連事業においても貢献し必要とされる企業となるために尽力していきます。

そのために、当社は以下の3つの方針に沿って、各課題に取り組んでまいります。

 

方針1. 国内ジェネリック医薬品事業の新たなステージに向けた進化

「ジェネリック医薬品への信頼を取り戻すための、品質確保・安定供給確保の徹底と適切な情報発信」「総合ジェネリック医薬品メーカーとして、より信頼され、必要とされる存在となる」ことを課題として認識し、当社がこれまでに注力してきた取り組みである安定供給体制の向上のための「原薬調達」「生産能力向上」「販売体制の最適化」を継続していくことに加え、有事に備えた生産対応・品質保証体制の強化・幅広い品揃え・製品総合力No.1の製品づくり・適切な情報公開に取り組みます。特に、昨今では医薬品における品質や安定供給に関する問題が生じている中で、ジェネリック医薬品メーカーとしての安定供給責任を果たすために、また今後のシェア拡大に対応すべく山形工場への設備投資を行ってまいりました。サプライチェーンマネジメントの視点を重視し、リスクに応じた取り組みを通して安定供給体制の維持・強化を図ってまいります。これらの取り組みは厚生労働省における「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」や「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」が示す方向性にも沿うものであると認識しています。

 

方針2. 新規市場・新規事業の基盤確立とグループシナジーの実現

「世界中の人々の健康に貢献するため、高品質で付加価値のあるジェネリック医薬品を届ける」ことを課題として認識し、Towa Pharma International Holdings, S.L.(以下、「Towa INT」という。)を中心として「欧州・米国での新製品投入を通じた事業の持続的成長」「海外の顕在的及び潜在的ニーズにも応える東和品質の製品開発とその展開」「未進出地域への事業拡大に向けた市場探索」等に取り組みます。Towa INTを中心に据えつつ、日米欧3極から世界中の患者に高品質で付加価値のあるジェネリック医薬品を提供できるグローバル事業基盤を確立していきます。一方、国際的なニトロソアミン問題は海外事業にも少なからず影響を及ぼしています。当社ではこの医薬品における世界的な問題に対する研究に取り組み、早急に対策を講じてまいります。

また、「健康長寿社会に対応した医療・介護の実現や、医療から未病のケア・予防へシフトする社会に貢献する」ことを課題として認識し、当社の「人々の健康に貢献する」という理念に沿って、新たな技術の獲得及びまったく新しい知見や技術との融合を図りつつ、新しい医療体制に対応した健康に関連する新規事業の創出に取り組みます。また、ソフトカプセルを中心とした健康食品CDMOを主事業とする三生医薬株式会社(以下、「三生医薬」という。)について、これまで培ってきた高い製剤技術力や広範な顧客基盤、健康食品関連のノウハウを活用することにより、当社の目指す健康関連事業の多角的な展開が実現され、当社のさらなる持続的な企業価値向上につながると考えております。なお、三生医薬が保有するソフトカプセルの製造キャパシティを増強するための投資の一環として、本年2024年1月5日に株式会社カマタの全株式を取得し、完全子会社といたしました。カマタが当社グループに加わることで、三生医薬による品質・サービスレベルの向上とソフトカプセルを中心とした健康食品の安定供給を図ってまいります。

 

方針3. 持続的成長を支えるサステナビリティ経営の強化と基盤の整備

「常に最高の東和品質の製品を提供し、持続的に成長することで社会に貢献する」ことを課題として認識し、これまでも取り組んできた「原薬技術」「製剤化技術」「生産技術」における技術イノベーションの創出に継続して取り組んでいきます。また、既存薬の新たな薬効を発見し、別の治療薬として開発する「ドラッグ・リポジショニング」等のように新たな製品価値の創出にも取り組んでいきます。

加えて、「DX推進による業務改善・変革の先に、事業成長と働きがいのある環境づくりを実現する」ことを課題として認識し、今期はコア事業の安定供給や信頼性保証に寄与する重点テーマを優先して取り組んでいきます。

さらに、「社員一人ひとりにとって働きがいのある会社として、会社と社員が共に成長することで、永続的に存続する企業であり続ける」ことを課題として認識し、事業戦略の実現に必要な人材獲得・育成、人材研修センターの新設等による社員の成長意欲と働きがいの最大化、社会の変化に対応して新たな付加価値を創造できる多様性の推進に取り組んでいきます。社員が成長することで会社の企業基盤が強化され、変化に対応した成長が可能になると考えています。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

ジェネリック医薬品の数量シェアが80%にまで達した今、これまで以上に安定供給に努め、製品の品質を一層高めていくということが社会的責任であると考え、当社は、製造管理と品質管理を徹底してまいりました。これと並行して、新たな事業や地域を通じて、理想とする地域社会創生のための基盤構築へ貢献し、また必要な健康増進サービスを必要とする人へ提供し、健康寿命の延伸への貢献も目指しております。今後も、事業基盤を強化すること、地球環境に配慮すること、人的資本である社員一人ひとりを大切にすること、技術革新に挑み続け製品価値の向上を図ること、これらを基本方針としてサステナビリティ経営へ取り組んでまいります。

このような方針の下、今後の大きな環境変化、業界変革に対し、当社グループの総力を統合しながら長期展望を描くために、当社グループの理念である「私達は 人々の健康に貢献します 私達は こころの笑顔を大切にします」の実現に向けて、それぞれの事業や会社のあるべき姿、将来ビジョンを定め、それぞれの会社が共通認識のもと自律組織となって新たな社会課題を理解し、グループ総力で解決する必要があります。

これを実現するためのグループガバナンスの体制として、代表取締役社長 吉田逸郎が議長を務める経営戦略会議を原則として週1回開催し、経営課題に関する重要案件を審議し、基本戦略や経営目標を明確にしています。そして、代表取締役社長 吉田逸郎が議長を務める経営モニタリング会議を原則として月1回開催し、売上や利益数値の実績、重要案件や中期経営計画の進捗状況をモニタリングし、目標達成に向けた経営を実践しています。また、取締役会からリスクに関して諮問を受けたリスクマネジメント委員会(最高責任者 代表取締役社長 吉田逸郎)が各部門・関係会社と連携して情報収集、分析を実施し、想定されるリスク(気候変動関連の機会を含む)やそれらにかかる取り組みについて検討を行っています。取締役会はリスクマネジメント委員会から検討状況について年2回報告を受け、方針の決定と監督を実施しています。

 

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(2)リスク管理

当社グループのリスクマネジメントは、最高責任者の代表取締役社長の下、リスクマネジメント委員会を設置する体制としております。リスクマネジメント委員会は、当社グループを取り巻くリスクに迅速かつ的確に対応し、リスクの未然防止、又はリスク発生時の利害関係者の利益喪失及び企業経営への影響の最小化を図りつつ、機会の洗い出しを行っています。

また、「リスクマネジメント基本規程」を制定し、平時のリスクマネジメント体制、リスクマネジメントの運用、リスク認知時の報告、緊急事態発生時の体制等を規定しております。当社グループの各部門と役員及び社員全員は、当基本規程に従い、全社的リスク管理を徹底しております。

 

気候変動

(1)ガバナンス

・組織体制とプロセス

気候変動関連問題については、リスクマネジメント委員会の分科会としてTCFD分科会を設置し、対応しています。取締役会は、リスクマネジメント委員会に諮問し、当該方針の決定、監督を実施しています。

リスクマネジメント委員会はTCFD分科会が実施する取り組み状況を審議するとともに年2回、取り組み状況を取締役会へ報告しています。

TCFD分科会は、各部門・関係会社と連携して情報収集、分析を実施し、想定される気候変動に関するリスク・機会の洗い出し、特定と評価、その評価の見直しを実施しています。また、実行計画・対処策等を策定、定期的に実行状況を点検、フォローし、取り組み状況は経営戦略会議へ適宜報告しています。さらに、重要事項についてはリスクマネジメント委員会メンバーに、都度、報告しています。

各部門・関係会社は、TCFD分科会と連携して策定した各種施策を実行し、気候変動にかかるデータを提供しています。

経営戦略会議は、TCFD分科会より適宜報告を受け、必要に応じて指示、承認を実施します。

監査等委員会及び内部監査室は、これらの取り組みを監査します。

 

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(2)戦略

・シナリオ分析の前提

当社グループの医療用医薬品の製造販売事業等を対象として、2030年時点の世界を想定してシナリオ分析を実施しました。シナリオ分析では、IPCC、IEA(*)等の各種レポートを参照し、1.5℃、2℃、4℃の3つのシナリオを設定しました。 1.5℃シナリオでは脱炭素社会の実現に向けて炭素税をはじめとした各種規制が導入され、様々なステークホルダーから気候変動対応への要求が高まる一方で、社会やライフスタイルの変化に伴う新たなニーズの発生が考えられます。4℃シナリオでは温暖化の進行によって極端な大雨等の災害リスク、熱中症等の健康リスクが高まると想定される一方で、気候変動へ適応するための新たなニーズも生まれると考えられます。

 

・シナリオ分析の結果

各シナリオに基づくリスクと機会の抽出を行い、それぞれの発生可能性と影響度に応じて事業に与える重要度を評価し、対応策の検討を行いました。その結果、対象事業における気候変動に伴う重大な事業リスクは確認されませんでした。1.5℃シナリオ、4℃シナリオで想定されるリスクと機会は以下の通りです。

 

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対象範囲:東和薬品株式会社、ジェイドルフ製薬株式会社、大地化成株式会社、グリーンカプス株式会社

Towa Pharma International Holdings, S.L.、三生医薬株式会社

対象期間:2021年度~2030年度

 

(*)IPCC:気候変動に関する政府間パネル/Intergovernmental Panel on Climate Change

IEA:国際エネルギー機関/International Energy Agency

 

(3)リスク管理

気候変動に関連するリスクと機会の管理のため、TCFD分科会は、リスクと機会の評価の見直しを毎年実施しています。

リスクと機会のそれぞれを発生可能性、影響度、対応策の有無などで評価し、重要度を決定しています。

また、バリューチェーン*に細分化して、評価、対応策を検討しています。

リスクと機会の評価にあたっては、必要に応じて関連する事業部門にインタビューを実施しています。

重要度が高いものについてはリスクマネジメント委員会にて検討し、必要に応じてリスクマネジメント委員会を通じて、取締役会に報告しています。

また、TCFD分科会では、気候変動に対するリスクと機会への対応策を立案し、設定した指標により対応策の進捗を管理しています。

 

*バリューチェーン:事業を機能別に分類したものであり、当社では「研究・開発、購買・調達、製造、物流、営業・マーケティング、管理全般」に分類

(4)指標と目標

当社グループでは気候変動に関連するリスク・機会を管理するための指標として、温室効果ガス排出量を算出し、中長期の削減目標を設定しています。Scope1,2では、2030年度に2021年度比30%削減、2050年度にカーボンニュートラルを目指します。

 

Scope1,2排出量(CO2排出量(t-CO2))

 

2021年度

2023年度

Scope1

30,098

27,994

Scope2

43,180

55,280

73,278

83,274

集計範囲:東和薬品株式会社、ジェイドルフ製薬株式会社、大地化成株式会社、グリーンカプス株式会社、Towa Pharma International Holdings, S.L.、三生医薬株式会社等としております。

集計期間:2023年3月期から3月決算に決算期変更した三生医薬株式会社及びTowa Pharma International Holdings, S.L.を含め、2021年4月~2022年3月、2023年4月~2024年3月としております。

 

当社の気候変動における指標と目標の詳細については、ウェブサイトをご参照ください。

https://www.towayakuhin.co.jp/sustainability/environment/environment02.php

 

人的資本

(1)ガバナンス

人事戦略に関しては、取締役会における経営視点での方針の議論を経て、人事本部が各部門・関係会社と連携して情報収集、分析を実施し、具体的な課題や施策(主要ポジションの任免、人員に関する計画等)に関する検討を行っています。それを経営戦略会議で審議し決裁しています。これらの活動は人事本部長を責任者とし、国内外グループ各社の責任者と連携をとりながら進めています。

 

(2)戦略

(人材育成方針)

当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は以下のとおりです。

当社グループの理念である「私達は 人々の健康に貢献します 私達は こころの笑顔を大切にします」の実現に向けて、中期経営計画において、「事業戦略の実現に必要な人材獲得・育成の推進」、「やりがいをもって成長できる環境の整備」、「社会の変化に柔軟に対応し、新たな付加価値を創造」することを人材戦略の目標に掲げています。この目標を達成するためには、個人の成長やキャリアを充実させることが重要であり、人事本部では管理職ポスト要件の整備、業務スキル要件の可視化、全社員を対象とした主体的なキャリア形成支援等を行っております。具体的には現場の社員一人ひとりの育成とキャリア開発を担当するキャリア開発部(キャリア形成支援担当者)を人事本部の下に設置しています。2024年4月には、やりがいを持って仕事に取り組み、社員のさらなる成長と活躍をサポートするため社長直下の組織として「人材研修センター」を新設しました。

 

〇キャリア形成支援

人材戦略のひとつの要素である、社員の「キャリア形成支援」に取り組み、社員の継続的な自己成長と能力を最大に発揮できる機会の創出を通じ、活き活きと働ける組織づくりを実現することで、すべての社員が働きがいのある組織・会社となることを目指しています。具体的には、当社では社内アンケートをもとに、個々と人事担当者の面談の実施及び管理職に対するキャリア形成研修を実施し、自律的なキャリア形成の支援に取り組んでいます。また、新任管理職・新卒4年目に対してキャリア形成研修を毎年実施しています。

キャリア開発部は上記のキャリア形成支援のための取り組みについて積極的に議論するとともに、経営モニタリング会議に検討結果を報告しています。

 

(社内環境整備)

社員が成長することで企業基盤が強化され、変化に対応した成長が可能となることから、当社では企業基盤の強化に向けた環境整備に取り組んでいます。具体的には、働き方の多様性を高め、その能力を最大限発揮できる環境を整備するという方針のもと、育児休業の延長や子育て世代・介護支援休暇の設置、在宅勤務の導入といった多様な働き方を支援できる環境を整備しております。あわせて、社員自らが意見を提案しその実現に向けて取り組むことを目的として設置された「社員活躍推進委員会」において、働き方の向上に繋がる仕組みを設けております。また、社員は会社にとって重要な投資資源・財産として捉え、成長に向けて働きかけるための人材育成の取り組みを強化して、社員一人ひとりが創造的な仕事をするための時間確保ができるよう、適正人員数の確保にも努めています。

 

〇女性活躍推進、多様性の推進

2009年7月「女性社員が子育てをしつつイキイキと仕事に取り組むために、会社の支援策はどうあるべきか」をテーマとして「女性活躍推進プロジェクト」がスタートしました。経営層との意見交換を積極的に実施し、以下の取り組みを実現しました。

・育児休業期間の延長(対象となる子が3歳になるまで)

・早期復帰支援を目的として「早期復帰祝金」を支給

・子育て応援ガイドブック「Happy Lovely Baby」の作成・啓発

・子育て支援等を目的として「ファミリーサポート休暇」を設置

・2010年に「くるみん」マークを取得

・管理職候補となりうる女性社員を増やすために各部門で計画的に育成を行っていく

・部門長に女性の積極活用を呼びかけ

さらに女性の活躍を推進するため、2011年4月に「女性活躍推進委員会」を発足しましたが、その後、2018年1月に女性活躍推進に加えて、すべての社員の事情に応じた課題の解消・支援の施策を実施するため「社員活躍推進委員会」と名称を変更して活動範囲をさらに拡大し、社員の働き方の多様性を推進するための取り組みを積極的に行っています。最近の傾向としては、男性社員の育児休業の取得が増加しております。また、2018年には仕事と家庭の両立を支援するための施策である「育児短時間勤務」について、対象となる子が小学6年生まで取得できるよう適用範囲を拡大し、利用者数は年々増加しています。

また、社員の多様性を進めるために中途採用を積極的に行うとともに、外国籍の人材も採用しております。

これらの施策を実施するとともに階層別に行動指針に関する研修を実施し、人権に関するe-learningを実施する等の啓蒙活動も合わせて行っています。

これらの取り組みもあり、2022年度には「大阪市女性活躍リーディングカンパニー」において三つ星に認定されました。

 

〇健康経営の推進

当社グループでは、社員が当社グループの一員であることに誇りを持ち、自身のキャリア開発や能力発揮を通して組織に貢献できる人材となるよう取り組むとともに、職場の労働環境を整備し、社員のモチベーション向上や働きやすさの向上を目指しています。

そのため、人材戦略の一環として取り組んでいる健康経営においては、国内グループ会社の安全衛生担当者が出席し、健康経営推進について協議・情報共有する「全社安全衛生管理委員会 事務局会議」を毎月開催し、また、年2回は代表取締役社長を最高責任者とする「全社安全衛生管理委員会」を開催しています。具体的な施策としては「禁煙の取り組み」について、国内グループ会社全体で「社員の喫煙率ゼロ」を推進し、休憩時間も含めた就業時間中の完全禁煙を実施しています。ストレスチェックについては、毎年実施し、保健師による高ストレス者のフォローや、組織分析結果の活用、外部相談窓口サービスを実施しています。当社においては、全社員を対象にした身体機能測定等を行う社内イベント「TOWA健康チャレンジ」を恒例行事として毎年開催するなど、社員が自身の健康について考え、生活習慣改善のきっかけとなるような取り組みをおこなっています。

このような取り組みの結果、2024年3月11日、経済産業省と日本健康会議が共同で選定する「健康経営優良法人2024」 に認定されました。当認定制度は2017年度より実施されており、当社は大規模法人部門で7年連続の認定となりました。当社は健康に貢献する企業として今後も健康経営体制を推進し、社員と家族の健康促進に向けた取り組みを進めてまいります。

 

(3)リスク管理

人事に関連するリスクと機会の管理のため、人事部及び人事企画部は毎年、リスクと機会の評価を行い、対応策を決定しています。また、リスクと機会の評価にあたっては、必要に応じて関連する部門にインタビューを実施しています。

 

(4)指標と目標

上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに具体的な取り組みが行われているものの、当社グループに属する全ての会社では行われてはいないため、当社グループにおける指標と目標の記載は困難であり、当社グループにおける主要な事業を営む提出会社の指標と目標を記載しております。

指標

目標

実績

人事担当者との面談の実施率

100%2022年10月~2024年2月末

95.9%(2022年6月~2024年2月末)

女性管理職比率

13%の達成

14.8%(2024年3月時点)

有給休暇取得率

65%の達成

70.8%(2023年度)

 

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの取り扱う製品・商品は主として医療用医薬品であり、その中のジェネリック医薬品が中心です。ジェネリック医薬品は新薬の有効性と安全性が一定期間にわたって確認された後に上市され、有効成分が同一でかつ効能・効果、用法・用量が同等の医薬品です。そのために当社グループには医薬品製造販売業としてのリスクに加えジェネリック医薬品メーカーとしての特有のリスクなどがあります。

 当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び不測の事態に対する体制整備に最大限の努力をいたします。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 ①医薬品医療機器等法等による規制

 当社グループは医薬品医療機器等法及び関連法規等により医薬品の製造・販売について規制を受けており、各種許認可、免許の取得を必要とします。その主な内容は以下のとおりです。

許可・免許

所管官庁等

許可・免許に関する内容

有効期限

医薬品製造販売業許可

都道府県知事

医薬品医療機器等法第12条

主たる事務所5年ごと更新

医薬品製造業許可

都道府県知事

医薬品医療機器等法第13条

各事業所5年ごと更新

向精神薬製造製剤業者免許

厚生労働大臣

麻薬及び向精神薬取締法第50条

各事業所5年ごと更新

医薬品販売業許可

都道府県知事

医薬品医療機器等法第24条

各事業所6年ごと更新

麻薬輸入業者免許

厚生労働大臣

麻薬及び向精神薬取締法第3条

各事業所最長3年

麻薬製剤業者免許

厚生労働大臣

麻薬及び向精神薬取締法第3条

各事業所最長3年

麻薬元卸売業者免許

地方厚生局長

麻薬及び向精神薬取締法第3条

各事業所最長3年

麻薬卸売業者免許

都道府県知事

麻薬及び向精神薬取締法第3条

各事業所最長3年

毒物劇物輸入業登録

都道府県知事

毒物及び劇物取締法第4条

各事業所5年ごと更新

毒物劇物一般販売業登録

都道府県知事

毒物及び劇物取締法第4条

各事業所6年ごと更新

 上記規制に関する違反が生じた場合、所管官庁等から行政処分が行われ、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは上記規制に関するリスクに対応するために、関連法規等の情報収集に努め、法令に従った対応を実施しております。また、全社的なコンプライアンス推進計画の策定、体制の整備を行っております。

 

 ②特許期間及び再審査期間

 新薬の有効成分は通常、特許権により保護されており、その特許期間は出願日から20年間(更に5年を限度とする期間延長が可能)となっています。ジェネリック医薬品は特許期間の満了後に製造販売承認されるため、この期間が延長されることがあれば、当社グループの新製品(追補品)の発売に影響を及ぼします。

 また、新薬については、一定期間後にその医薬品の有効性・安全性等を再確認する再審査制度があり、その再審査期間は原則として新薬の製造販売承認日から8年間となっています。ジェネリック医薬品はこの期間の経過後に製造販売承認申請しますが、新薬の効能追加等により再審査期間が再度設定された場合には、新薬と効能・効果、用法・用量が異なることがあるため、当社グループの新製品の発売に影響を及ぼします。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは特許情報及び再審査期間情報の収集に努め、関連部門との連携を行っております。これにより、新薬の特許期間満了後に速やかに効能追加等の一部変更承認を得る、または再審査期間満了後に一部変更承認申請を行うことで、効能不一致の解消に努めております。

 

 ③医薬品医療機器等法に基づく再評価及び規制強化

 医薬品の再評価とは、すでに承認された医薬品について、現時点における学問的水準から品質、有効性及び安全性を見直す制度です。薬効再評価で有用性が認められないと製品の回収を行い、当該製品の廃棄を行います。また、品質再評価で新薬と同等でないと評価された場合は、その後の製造販売を中止することがあります。この他にも、国際的に変異原性物質の規制が強化される中、基準を満たさない等の問題が発見された場合には、当該製品の回収や廃棄、販売中止のリスクが生じます。

 こうした事態が生じれば当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは科学的技術の進歩の情報を収集し、医薬品の適正な評価や分析法の確立を行っております。

 

 ④副作用

 ジェネリック医薬品については新薬で長年の使用実績があり、安全性が確認され、再審査の後に発売されるため、予期せぬ重篤な副作用が発生するリスクは小さいですが、もしこうしたことが生じれば当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは、各国の規制に基づき、副作用の発生情報を含む医薬品に関する情報を収集し、評価・検討してその結果に基づく必要な措置を決定、実施しております。

 

 ⑤薬価制度及び医療費抑制政策

 当社グループの主要製品、商品であります医療用医薬品を販売するためには、厚生労働大臣が定める薬価基準への収載が必要です。薬価収載された医療用医薬品は原則として2年に1回、市場実勢価格の調査を行い、公定価格である薬価に市場実勢価格等を反映させます。その際、多くの品目で薬価が引き下げられています。また、2021年度以降は薬価制度の抜本改革により、中間年においても薬価改定が行われ、毎年薬価改定となりました。増大する医療費の抑制を目的として医療保険制度の見直しや、薬価制度の更なる大幅な変更、医療費抑制政策の強化が行われると、当社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは製品の価値に見合った適正価格での販売に努めるとともに、近年追補製品のシェア拡大を推進して収益性の改善を図っております。また、原材料等の調達コストの削減や生産効率化による原価低減活動を行っております。

 

 ⑥特許訴訟

 当社グループが発売するジェネリック医薬品には、発売後も原薬の結晶形、製剤、用途等に関する特許権が存続していることがあり、特許権所有者から特許訴訟を提起される場合があります。そうした場合には、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは特許情報の収集に努め、技術部門と開発部門など関連部門間の連携強化を行っております。これにより、他社が有する特許を回避した製剤の開発を行っております。

 

 ⑦競合状況によるリスク

 ジェネリック医薬品の競争市場は、先発医薬品からの切り替えが多くの構成割合を占め、その販促会社数による影響を大きく受けます。また、近年ではオーソライズド・ジェネリックの投入等の諸施策を講じる企業も多く、これらの動向次第で当社グループが計画していた売上収益との乖離が想定されます。この他にも、競合他社の供給状況は当社グループ製品への需要に影響を及ぼすため、安定供給上のリスクとなる可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは、設備投資による生産能力の向上や製造所のバックアップ体制の整備に加えて需要量と在庫水準の日々のモニタリングによって、生産面・販売面からの安定供給に努めると共に、透明性のある情報開示による信頼確保にも努めております。

 

 ⑧デリバティブの時価評価

 当社グループは半製品や原材料の一部を海外メーカーから外貨建てで輸入しております。円安でコストが上昇してもわが国の薬価制度のもとではそれを販売価格に転嫁することは極めて困難です。

 こうした円安によるコストアップのリスクを回避し、長期的に安定供給していくために、当社は長期のデリバティブ取引を行っています。決算時にはこれを時価評価しますが、前期末に比べて円高、また日米の長期金利差が拡大すれば評価損が出る構造になっていますので、為替レート、日米の金利動向によっては評価損が生じる可能性があります。また、逆の場合には評価益が生じる可能性があります。

 当社では、将来における外貨建て輸入取引量を見積り、その範囲内で長期のデリバティブ取引を行っております。これにより、デリバティブ取引が投機的にならないように留意しております。

 

 ⑨災害等による生産の停滞、遅延

 当社グループは大阪府、岡山県、山形県、滋賀県、沖縄県、兵庫県、静岡県、千葉県及びスペイン・カタルーニャ州に生産拠点を配置しておりますが、自然災害や技術上・規制上の問題の発生により、生産拠点の操業が停止し、製品の安定供給に影響を及ぼす可能性があります。また、自然災害等の要因により原材料仕入先からの仕入れが停止し、その代替が困難である場合には、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは、国内外における工場間のバックアップ体制の整備、配送拠点の増設、原薬の複数購買の推進に努めております。また、当社グループ内に原薬製造工場を保有し、原薬面からの安定供給に努めております。

 

 ⑩グローバルリスク

 2020年1月31日にPensa Investments, S.L.(本社:スペイン・カタルーニャ州、現商号:Towa INT)の買収手続が完了しました。Towa INTの買収はグローバル体制の確立と当社の付加価値製剤の欧州・米国市場への提供に寄与するものと考えておりますが、Towa INTの経営環境や事業の変化、各国の制度・規制の影響、当社とTowa INTの統合作業の進捗遅延、デューデリジェンスにおいて判明しなかった事象等に起因して、同社買収において期待されていた効果が得られない場合、当社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは、当社とTowa INTの統合作業を通じたグローバル経営体制の強化に努めております。

 

 ⑪企業買収等のリスク

 当社では、2021年3月24日に株式会社プロトセラを子会社化し、2022年3月7日に三生医薬株式会社の全株式を取得して買収手続が完了しました。当社は、「優れた製品とサービスを創造することによって、人々の健康に貢献する」という理念のもと、「第6期 中期経営計画2024-2026 PROACTIVEⅢ」において、3つの基本方針(方針1.国内ジェネリック医薬品事業の新たなステージに向けた進化、方針2.新規市場・新規事業の基盤確立とグループシナジーの実現、方針3.持続的成長を支えるサステナビリティ経営の強化と基盤の整備)を掲げており、ジェネリック医薬品事業をコア事業として、健康に貢献するあらゆる健康関連事業の展開を目指し、健康維持・増進のための製品、サービスのさらなるラインナップ増加に取り組んでおります。両社の買収はこの方針に沿ったものであり、様々なシナジー創出に取り組んでおりますが、経営環境や事業の変化、統合作業の進捗遅延、デューデリジェンスにおいて判明しなかった事象等に起因して、同社買収において期待されていた効果が得られない場合、当社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは、当社と各子会社との統合作業を通じた事業計画の立案とシナジー効果の創出、派遣役員を含めた経営体制の強化に努めております。

 

 ⑫ITセキュリティ及び情報管理に関するリスク

 当社グループは、事業活動を通じてセンシティブな個人情報を含む大量の機密情報を保有しております。こういった機密情報については、サイバーアタックや内部不正による情報漏洩のリスクを無視することはできず、また個人情報保護のための法令制定や個人情報に関する権利意識の高まりも相まって、情報管理はより一層その重要性を増しております。仮に重要な機密情報が流出した場合には、法的な損害や信頼の失墜を招く可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは、情報セキュリティ意識を高めるための社内教育を継続的に実施しつつ、当社グループ会社のTスクエアソリューションズ株式会社とも連携しつつセキュリティ強化に努めております。

 

 ⑬その他

 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類感染症へ移行し、当社グループにおける同感染症の影響は軽微となりました。一方、新たなウイルス感染症のパンデミックリスクは引き続き当社グループの販売や生産に影響を与える可能性があります。また、ロシア・ウクライナ情勢の変化が世界経済に影響を及ぼすことで、エネルギー価格や原材料価格の高騰を引き起こし、当社グループの経営に影響を与える可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

「第2 事業の状況」の「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「(2)経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に述べているように、業界環境が大きく変化していますが、当社グループにおいては、「人々の健康に貢献し、こころの笑顔を大切にする」ことを企業理念として、2021年5月に発表した「第5期 中期経営計画2021-2023 PROACTIVEⅡ」に基づき、国内外でのジェネリック医薬品事業をコア事業としつつ、「健康長寿社会」に対応した医療・介護の実現や、医療から未病のケア・予防へシフトする社会に貢献する健康関連事業の展開を目指し、各種課題に取り組んでまいりました。

国内セグメントにおいては、安定供給を確保するための増産体制の構築に取り組んでおり、当連結会計年度から当社3工場の年間生産能力が140億錠となりました。さらに、2023年11月に山形工場 第三固形製剤棟の建設工事が完了し、2024年4月より稼働を開始しております。2024年度以降、3工場の年間生産能力175億錠の実現に向けて取り組んでまいります。

製造管理及び品質管理面では、医薬品の製造管理及び品質管理の基準であるGMP省令やその他関連する法令遵守はもちろんのこと、国際的基準であるPIC/S GMPやICHガイドラインも積極的に取り入れ、独自の制度・教育訓練により、医薬品の適切な品質と安全性の確保に取り組んでおります。また、安定供給体制の維持・強化のため、原薬の複数購買化や製造所の監査等を推進し、グループ全体として原薬製造から製剤製造、物流、販売に至るまで、ガバナンスの強化とコンプライアンスの徹底に向けた取り組みを継続して行っております。

販売面では、2023年6月に新製品2成分5品目、2023年12月に新製品2成分4品目の販売を開始し、当社のジェネリック医薬品の製品数は339成分781品目(2024年3月末時点)となりました。なお、2024年6月追補収載予定の新製品は3成分7品目となります。

健康関連事業の展開においては、「健康長寿社会に対応した医療・介護の実現や、医療から未病のケア・予防へシフトする社会に貢献する」ことを課題として認識し、当社の「人々の健康に貢献する」という理念に沿って、新規事業の創出に取り組んでおります。地域包括ケアシステム等の新しい医療体制への対応や、「健康寿命の延伸」の実現に向け未病対策や健康維持に関連する様々な新規事業の創出に注力し、健康関連事業の多角的な展開を実現してまいります。

海外セグメントにおいては、海外市場での拡大と成長に向け、Towa INTを通じて、欧州及び米国市場でのジェネリック医薬品事業を展開しております。Towa INTが持つ欧州複数国及び米国での販売網と、欧州にある欧米等の基準に準拠した製造拠点を活用し、日米欧の3極から世界中の患者に高品質で付加価値のあるジェネリック医薬品を提供できるグローバル事業基盤を確立していきます。

 このような活動の結果、当連結会計年度における当社グループの業績につきましては、売上高227,934百万円、売上原価146,551百万円、売上総利益81,383百万円、販売費及び一般管理費63,735百万円、営業利益17,647百万円、経常利益24,477百万円、親会社株主に帰属する当期純利益16,173百万円となりました。

 なお、当社は、2023年2月13日開催の取締役会において、連結決算における連結子会社9社の決算日を12月末日から3月末日に変更することを決定いたしました。これにより、当該連結子会社9社の当連結会計年度が2023年4月1日~2024年3月31日であるのに対し、前連結会計年度は2022年1月1日~2023年3月31日であるため、対前期増減率は記載しておりません。

 セグメント別の業績は、国内セグメントが、売上高178,715百万円、セグメント利益21,889百万円となりました。海外セグメントは、売上高49,324百万円、セグメント利益11百万円となりました。これら報告セグメントのセグメント利益につきましては、のれん償却前の数値となっております。

(資産)

当連結会計年度末における総資産は、430,653百万円となり、前連結会計年度末比59,305百万円の増加となりました。その主な要因は、建設仮勘定の増加24,762百万円、受取手形及び売掛金の増加16,121百万円、棚卸資産の増加8,145百万円等があったことによるものです。

(負債)

負債につきましては、274,759百万円となり、同40,306百万円増加しました。その主な要因は、長期借入金の増加38,810百万円等があったことによるものです。

(純資産)

純資産につきましては、155,893百万円となり、同18,998百万円増加しました。その主な要因は、利益剰余金の増加13,219百万円、為替換算調整勘定の増加5,691百万円等があったことによるものです。

その結果、当連結会計年度末の自己資本比率は36.2%となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に対して5,393百万円増加し、29,650百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは8,212百万円の収入(前連結会計年度比5,668百万円増)となりました。主な要因は、売上債権の増加15,523百万円(同13,931百万円増)や仕入債務の減少10,509百万円(前連結会計年度は仕入債務の増加6,554百万円)、棚卸資産の増加6,288百万円(前連結会計年度比12,208百万円減)等があったものの、税金等調整前当期純利益24,459百万円(同19,853百万円増)や減価償却費13,659百万円(同602百万円減)、のれん償却額4,229百万円(同918百万円減)等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、40,394百万円の支出(前連結会計年度比10,109百万円増)となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出37,851百万円(同9,119百万円増)等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、35,407百万円の収入(前連結会計年度比17,926百万円増)となりました。主な要因は、長期借入金の返済による支出7,607百万円(同510百万円減)や配当金の支払額2,952百万円(同148百万円減)等があったものの、長期借入れによる収入46,935百万円(同31,895百万円減)等によるものであります。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

薬効

セグメントの名称

国内

海外

合計

金額(百万円)

前期比(%)

金額(百万円)

前期比(%)

金額(百万円)

前期比(%)

循環器官用薬

48,572

102.2

736

70.8

49,308

101.5

中枢神経系用薬

30,341

95.2

11,434

99.3

41,775

96.3

消化器官用薬

24,142

114.8

14,626

109.2

38,768

112.6

血液・体液用薬

17,132

106.9

17,132

106.8

その他の代謝性医薬品

15,408

98.2

31

58.6

15,439

98.1

抗生物質製剤

4,594

107.6

4,594

106.3

化学療法剤

2,499

133.2

13

85.6

2,513

132.8

腫瘍用薬

3,776

94.3

3,776

94.3

アレルギー用薬

23,763

154.3

318

117.6

24,082

153.7

その他

37,280

94.2

181

148.8

37,462

94.4

合計

207,510

105.2

27,343

103.3

234,853

105.0

 (注)1.上記金額は売価換算で表示しております。

2.前期比について、前連結会計年度は、連結子会社9社の決算期変更の経過期間となり、当該連結子会社は15ヵ月(2022年1月1日~2023年3月31日)を連結対象期間とした変則決算となっております。

 

b.商品仕入実績

 当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

薬効

セグメントの名称

国内

海外

合計

金額(百万円)

前期比(%)

金額(百万円)

前期比(%)

金額(百万円)

前期比(%)

循環器官用薬

102

190.0

4,129

145.3

4,231

146.1

中枢神経系用薬

34

110.2

6,040

78.7

6,075

78.8

消化器官用薬

1,004

112.0

281

54.8

1,285

91.2

血液・体液用薬

1,313

88.3

852

58.1

2,166

73.3

その他の代謝性医薬品

272

150.9

272

150.9

抗生物質製剤

1,008

110.6

1,008

110.6

化学療法剤

204

117.6

204

117.6

腫瘍用薬

213

39.4

1,513

68.5

1,727

62.8

アレルギー用薬

444

91.9

444

91.9

その他

314

137.4

1,034

100.4

1,348

107.1

合計

2,983

92.0

15,782

90.2

18,765

90.5

 (注)1.上記金額は実際仕入額で表示しております。

2.前期比について、前連結会計年度は、連結子会社9社の決算期変更の経過期間となり、当該連結子会社は15ヵ月(2022年1月1日~2023年3月31日)を連結対象期間とした変則決算となっております。

 

c.受注実績

 当社グループは、主として見込み生産を行っているため、記載を省略しております。

 

d.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

薬効

セグメントの名称

国内

海外

合計

金額(百万円)

前期比(%)

金額(百万円)

前期比(%)

金額(百万円)

前期比(%)

循環器官用薬

41,739

121.5

5,345

88.2

47,084

116.5

中枢神経系用薬

25,058

111.0

18,953

90.0

44,012

100.8

消化器官用薬

19,584

122.7

13,764

100.8

33,349

112.6

血液・体液用薬

14,903

121.4

1,579

78.2

16,483

115.3

その他の代謝性医薬品

13,156

106.2

321

127.0

13,477

106.6

抗生物質製剤

8,620

253.8

1,269

80.7

9,889

199.0

化学療法剤

1,935

145.2

271

240.5

2,207

152.7

腫瘍用薬

3,442

119.5

4,334

94.9

7,776

104.4

アレルギー用薬

18,258

135.3

712

90.9

18,970

132.8

その他

32,017

86.8

2,665

82.6

34,683

86.5

合計

178,715

114.9

49,218

92.3

227,934

109.1

 (注)1.上記金額は実際仕入額で表示しております。

2.前期比について、前連結会計年度は、連結子会社9社の決算期変更の経過期間となり、当該連結子会社は15ヵ月(2022年1月1日~2023年3月31日)を連結対象期間とした変則決算となっております。

 

    主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

㈱スズケン

23,424

11.2

30,365

13.3

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。

 この連結財務諸表の作成にあたって、見積りが必要な事項について、会計基準等の範囲内で合理的な会計上の見積りを行っております。重要な会計方針及び見積りの詳細等につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」をご参照ください。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度における当社グループの経営成績等は、売上高227,934百万円、営業利益17,647百万円、経常利益はデリバティブ評価益5,550百万円が発生したことで24,477百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は16,173百万円となりました。当社において、近年追補品を中心に販売数量が増加したこと、販売費及び一般管理費が減少したことにより、好調な結果となりました。

なお、当社は、2023年2月13日開催の取締役会において、連結決算における連結子会社9社の決算日を12月末日から3月末日に変更することを決定いたしました。これにより、当該連結子会社9社の当連結会計年度が2023年4月1日~2024年3月31日であるのに対し、前連結会計年度は2022年1月1日~2023年3月31日であるため、対前期増減率は記載しておりません。

セグメント別の業績は、国内セグメントが、売上高178,715百万円、セグメント利益21,889百万円となりました。海外セグメントは、売上高49,324百万円、セグメント利益11百万円となりました。これら報告セグメントのセグメント利益につきましては、のれん償却前の数値となっております。

次期の見通しにつきましては、毎年行われる薬価改定に加え、品質確保や医薬品の安定供給に関する問題も重なり、国内ジェネリック医薬品業界は厳しい環境下で変革を求められる時期となっております。また、地政学的リスクに伴う物価上昇、原材料高騰等、先行き不透明な状況が続くものと想定しております。

このような状況のもとではありますが、当社グループは生命関連企業として、品質管理及び医薬品の安定供給に努め、社会情勢を見極めながら、各事業に取り組んでまいります。コア事業であるジェネリック医薬品事業では、国内ジェネリック医薬品の数量シェア拡大に向けた設備投資を実施しており、2023年11月に山形工場 第三固形製剤棟の建設工事が完了し、2026年度には175億錠の年間生産能力を実現する計画としております。また、さらなる安定供給体制の維持・強化を目的として、製造設備の自動化・無人化及びスケールアップを行い、生産効率の向上に取り組んでまいります。加えて、製剤技術・製造技術のイノベーションを行い、製品価値の創出に繋げることで、安心・安全で付加価値のある「東和品質」の製品を提供することにも取り組んでまいります。このような各種取り組みにより、今後も総合ジェネリック医薬品メーカーとして、より信頼され、必要とされる存在を目指して事業を進めてまいります。

海外事業では、Towa INTが持つ欧州及び米国での販売網を中心にさらなる事業地域の拡大を目指してまいります。また、Towa INTの開発から製造、販売までの各部門との人材・技術交流及び情報共有を通じて、多角的なシナジー効果の発揮に向けた取り組みを進めてまいります。

新規事業では、地域包括ケアシステム等の新しい医療体制に対応すべく、「ヘルスケアパスポート」を地域医療・健康情報連携システムの基盤として普及させ、介護支援・予防・治療の観点から地域社会に必要とされる企業を目指します。その取り組みの一環として、2022年3月に完全子会社化した三生医薬株式会社が持つ高い技術力や広範な顧客基盤、健康食品関連のノウハウと当社の製剤技術・製造技術等が融合することで、健康関連事業の多角的な展開を実現してまいります。

次期の当社グループは、組織強化、グループガバナンス強化、人材育成に重点を置き、当社と各子会社の役割を明確にし、ジェネリック医薬品事業を中心に据えつつ、新たな事業領域である健康分野にも注力することで、「人々の健康に貢献できる企業」となるべく取り組んでまいります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

  当社グループは付加価値のある良質で経済的なジェネリック医薬品を医療の場に提供し、人々の健康と医療費の軽減に貢献するべく研究開発の努力を続けております。

  当連結会計年度においては、2023年6月には新規薬価基準追補収載品目として持続性AT1レセプターブロッカー、定量噴霧式アレルギー性鼻炎治療剤、計2成分5品目、2023年12月に抗インフルエンザウイルス剤、レボカルニチン製剤、計2成分4品目を上市しております。

  また、2024年6月にはパーキンソン病治療薬・レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズム治療薬(レボドパ賦活剤)、キャンディン系抗真菌剤、経口用セフェム系抗生物質製剤、計3成分7品目が新製品として薬価追補収載されました。

  引き続き次の上市予定品目の製造販売承認申請にむけて、医療機関や患者さんのニーズに応える付加価値製品の開発を目指した研究開発活動を行っております。

  なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は、13,242百万円です。