第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社は、

「私達は 人々の健康に貢献します」

「私達は こころの笑顔を大切にします」

を理念に掲げております。そして、企業活動を通じて理念を実現するために、私達の誓い「T-SMILE」を掲げております。

私達の誓い「T-SMILE」

・Truthful:

誠実で、正直であり続けます。公正な心を持って適正を貫き、人々から喜ばれ、信頼される存在になります。

・Speed:

意思決定、実行、情報共有などを迅速に行います。先見性を持って、変化に俊敏に対応します。

・Mission:

世界中で地域社会の人々の健康に役立つという強い使命感と、その実現への情熱を持ち続けます。

・Idea:

発想力と想像力を駆使して、前例にとらわれない変革にチャレンジします。常に能動的に行動します。

・Linkage:

人や情報と幅広く結びつき、協力します。認め合える相手と切磋琢磨し、お互いを高めます。

・Excellence:

最善の品質を求め、サイエンスを大切にしながら、時代にあった最適の技術でそれをかなえます。

 

当社は、優れた製品とサービスを創造することによって、人々の健康に貢献します。そして私達の企業活動を通して、患者さん、医療関係者の皆様、地域社会をはじめとするすべての方々にこころから喜ばれ、求められる企業を目指していきます。ジェネリック医薬品事業をコア事業として、新たな健康関連事業へ展開していきます。

 

(2) 経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

国内ジェネリック医薬品業界では、2024年3月の社会保障審議会医療保険部会において、「医薬品の安定的な供給を基本としつつ、後発医薬品の数量シェアを2029年度末までにすべての都道府県で80%以上」とする主目標とともに、新たに「後発医薬品の金額シェアを2029年度末までに65%以上」とするという副次目標が掲げられました。さらに、2024年10月からは後発医薬品のある先発医薬品の一部において追加で自己負担が発生する「長期収載品の選定療養」の導入が開始されました。その結果、2024年10-12月期の数量シェアは88.6%(日本ジェネリック製薬協会調べ)となりました。

一方、2021年度以降は薬価改定が毎年行われており、医薬品業界にとって極めて厳しい状況となっております。さらに、2020年に発覚した複数のジェネリック医薬品企業における品質問題を起因とした一連の供給不安によりジェネリック医薬品に対する信頼感は低下し、ジェネリック医薬品業界の置かれた環境は厳しさを増しております。

このような状況の中、2024年5月に厚生労働省から公表された「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会 報告書」において、「5年程度の集中改革期間を設定して、製造管理・品質管理体制の確保および安定供給能力の確保、持続可能な産業構造の実現を目指す」ことが示されました。また、2024年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2024(骨太方針2024)」では、「足下の医薬品の供給不安解消に取り組むとともに、医薬品の安定的な供給を基本としつつ、後発医薬品業界の理想的な姿を見据え、業界再編も視野に入れた構造改革を促進し、安定供給に係る法的枠組みを整備する」という記載がなされました。

これらの方針を踏まえ、2025年度薬価改定では、国民負担軽減の観点はもとより、創薬イノベーションの推進や医薬品の安定供給の確保の要請にきめ細かく対応する観点から、品目ごとの性格に応じて改定の対象範囲が設定され、後発品は平均乖離率(5.2%)の1.0倍を超える品目が対象になりました。また、2000年以降で初めてとなる最低薬価の引き上げが行われたほか、医療上の必要性が特に高い品目に対して臨時的に不採算品再算定も実施されました。さらに、企業の安定供給体制を評価する企業指標において、検討されていたすべての評価指標で企業評価が実施され、2026年度薬価改定以降には各企業の評価が公表される予定となっています。

以上のような状況の中、当社グループは、品質向上を最優先課題と位置付け、グループ役員及び社員が一丸となって、どの時代においても、どの地域においても、その地域に居住する人々に必要とされる企業であり続けることを目指しております。また、これまでに蓄積した知見や技術に加え、新技術の導入及び最新知見との融合を推進することで、技術革新と製品価値の向上を図り、人々の健康に貢献してまいります。

当社グループは2024年6月に、第6期中期経営計画2024-2026「PROACTIVE Ⅲ」を策定しました。この中期経営計画においては、以下の3つのグループ基本方針に基づき、各種施策を推進してまいります。

 

方針1. 国内ジェネリック医薬品事業の新たなステージに向けた進化

国内ジェネリック医薬品市場においては、複数企業における品質問題を背景に、医薬品全体で供給不安が続いております。このような市場環境の中、当社は「ジェネリック医薬品の供給は、人々の健康を支える社会基盤である」との認識のもと、以下の取り組みを実施しております。

1. 安定供給体制の整備

2026年度までに年間生産能力175億錠体制の構築を目指しております。新設した山形工場の第三固形製剤棟は2024年4月に稼働を開始しており、順次製造設備を導入することで、生産規模の拡大を図っております。また、設備の自動化及び省人化を推進し、効率的かつ安定的な供給体制の構築に取り組んでおります。

2. サプライチェーンマネジメントの高度化

2025年2月に医薬品供給プロセスの効率化に向けた取り組みを開始しました。この取り組みにより、製造・販売・在庫の状況、製造設備の稼動状況など、供給に関わる判断に必要な情報を可視化することで、供給に関する意思決定の迅速化及び省人化を実現し、安定供給の強化を図ります。

3. 信頼性保証の維持と強化

信頼性保証の強化の取り組みとして、2024年1月から既存のMES(製造実行管理システム)やLIMS(試験情報管理システム)に加えて、品質マネジメントシステム(以下「MCシステム」という。)を採用しました。2025年2月からは、MCシステムの「品質イベント管理」及び「文書管理」を開発段階まで拡大運用することで、製造管理・品質管理のさらなる向上を図っています。

4. 持続可能な産業構造への対応

当社は、政府の「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」の報告書を踏まえ、ジェネリック医薬品の品目統合や少量多品目生産の適正化など、持続可能な産業構造の実現に向けて、目的を共有できる企業との連携を模索し、社会の要請に応えるべく努力を続けています。

 

方針2. 新規市場・新規事業の基盤確立とグループシナジーの実現

1. 海外医薬品事業における基盤整備

海外医薬品事業においては、「世界中の人々の健康に貢献する」というミッションのもと、Towa Pharma International Holdings, S.L. (以下「Towa INT」という。)を中心に、日米欧3極体制を構築しております。第7期中期経営計画以降には、55か国以上への市場拡大を目指し、欧州及び米国市場での新製品投入を通じて収益基盤の強化を図ります。

2. ニトロソアミン類混入リスクへの対応

当社は、世界的に問題視されている医薬品中のニトロソアミン類混入リスクへの対応を進めております。2024年12月には「ニトロソアミン類混入リスク評価の新規アプローチ」に関する研究成果を米国化学会の学術誌に発表しております。この発表内容は、製造工程におけるリスク低減策の新たな手法として注目されています。今後も、これらの取り組みを通じて、安全で安心な医薬品の提供を目指してまいります。

3. 健康関連事業の推進

健康関連事業では、健康長寿社会の実現を見据えた医療・介護体制の構築や、未病ケア及び予防活動へのシフトを推進しております。

・スマートシティ構想への参画

2024年10月より、大阪府門真市と共同でスマートシティ推進事業を開始しました。このプロジェクトでは、市民の健康課題解決を目的として、医療情報データをクラウドに一元化し、スマートフォンアプリを通じて市民に提供する仕組みを構築しております。これにより、セルフメディケーションの促進及び健康寿命の延伸に貢献してまいります。

・三生医薬株式会社との連携強化

三生医薬株式会社(以下「三生医薬」という。)の健康食品CDMO(受託開発製造)事業における高い製剤技術力と、当社の製剤技術を融合することで、研究開発の促進及び新たなイノベーション創出を目指しております。

・新医薬品の承認取得

2025年3月には日本初の持続放出性アルツハイマー型認知症治療用貼付剤「リバルエン®LAパッチ25.92mg/51.84mg」の製造販売承認を取得しました。この製品は、従来の毎日投薬に比べて服薬頻度を週2回に低減することで、患者及び介護者の負担軽減が期待されております。これにより、認知症ケアの質の向上及び生活の質(QOL)の向上に寄与してまいります。

 

方針3. 持続的成長を支えるサステナビリティ経営の強化と基盤の整備

持続的な成長により社会に貢献することを目指し、以下の取り組みを推進しています。

1.環境負荷の低減(グリーンケミストリー)

原薬製造における環境負荷を最小化するため、次世代の製法として連続フロー精密合成技術の研究開発を進めております。この技術は、自然環境への負荷を低減するだけでなく、製造現場で働く人々にも配慮した安全性の高い製剤開発を可能にします。当社は、これらの取り組みを通じて、安全で安心な製品の提供に努めてまいります。

2.ドラッグ・リポジショニング

既存薬から新たな薬効を発見し、別の治療薬として開発する「ドラッグ・リポジショニング」に取り組んでいます。このアプローチにより、安全性が確立された既存薬を活用し、新たな製品価値の創出を目指しています。

3.働きがいのある職場環境の整備

当社は、事業の持続可能性を支える人材開発の基盤構築を、経営の重要課題と位置づけています。社員一人ひとりが自身の仕事の価値や会社への貢献を実感し、働きがいを感じられる職場環境を整えるため、各種人事制度の改革を進めるとともに、*人材研修センターを設立し社員のキャリア形成を支援しています。また、新たな付加価値を創造できる多様な人材の獲得にも注力しています。当社は、社員の価値創造を最大化するために、人と組織文化に対する取り組みを継続して進めてまいります。

*人材研修センター(2024年4月新設)組織横断的に支援する役割を担い、社員のスキル向上を支援する教育コンテンツやトレーニングプログラムを提供しています。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

ジェネリック医薬品の数量シェアが80%にまで達した今、これまで以上に安定供給に努め、製品の品質を一層高めていくということが社会的責任であると考え、当社は、製造管理と品質管理を徹底してまいりました。これと並行して、新たな事業や地域を通じて、理想とする地域社会創生のための基盤構築へ貢献し、また必要な健康増進サービスを必要とする人へ提供し、健康寿命の延伸への貢献も目指しております。今後も、事業基盤を強化すること、地球環境に配慮すること、人的資本である社員一人ひとりを大切にすること、技術革新に挑み続け製品価値の向上を図ること、これらを基本方針としてサステナビリティ経営へ取り組んでまいります。

このような方針の下、今後の大きな環境変化、業界変革に対し、当社グループの総力を統合しながら長期展望を描くために、当社グループの理念である「私達は 人々の健康に貢献します 私達は こころの笑顔を大切にします」の実現に向けて、それぞれの事業や会社のあるべき姿、将来ビジョンを定め、それぞれの会社が共通認識のもと自律組織となって新たな社会課題を理解し、グループ総力で解決する必要があります。

これを実現するためのグループガバナンスの体制として、代表取締役社長 吉田逸郎が議長を務める経営戦略会議を原則として週1回開催し、経営課題に関する重要案件を審議し、基本戦略や経営目標を明確にしています。そして、代表取締役社長 吉田逸郎が議長を務める経営モニタリング会議を原則として月1回開催し、売上や利益数値の実績、重要案件や中期経営計画の進捗状況をモニタリングし、目標達成に向けた経営を実践しています。また、取締役会からリスクに関して諮問を受けたリスクマネジメント委員会(最高責任者 代表取締役社長 吉田逸郎)が各部門・関係会社と連携して情報収集、分析を実施し、想定されるリスク(気候変動関連の機会を含む)やそれらにかかる取り組みについて検討を行っています。取締役会はリスクマネジメント委員会から検討状況について年2回報告を受け、方針の決定と監督を実施しています。

 

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(2)リスク管理

当社グループのリスクマネジメントは、最高責任者の代表取締役社長の下、リスクマネジメント委員会を設置する体制としております。リスクマネジメント委員会は、当社グループを取り巻くリスクに迅速かつ的確に対応し、リスクの未然防止、又はリスク発生時の利害関係者の利益喪失及び企業経営への影響の最小化を図りつつ、機会の洗い出しを行っています。

また、「リスクマネジメント基本規程」を制定し、平時のリスクマネジメント体制、リスクマネジメントの運用、リスク認知時の報告、緊急事態発生時の体制等を規定しております。当社グループの各部門と役員及び社員全員は、当基本規程に従い、全社的リスク管理を徹底しております。

 

気候変動

(1)ガバナンス

・組織体制とプロセス

気候変動関連問題については、リスクマネジメント委員会の分科会としてTCFD分科会を設置し、対応しています。取締役会は、リスクマネジメント委員会に諮問し、当該方針の決定、監督を実施しています。

リスクマネジメント委員会はTCFD分科会が実施する取り組み状況を審議するとともに年2回、取り組み状況を取締役会へ報告しています。

TCFD分科会は、各部門・関係会社と連携して情報収集、分析を実施し、想定される気候変動に関するリスク・機会の洗い出し、特定と評価、その評価の見直しを実施しています。また、実行計画・対処策等を策定、定期的に実行状況を点検、フォローし、取り組み状況は経営戦略会議へ適宜報告しています。さらに、重要事項についてはリスクマネジメント委員会メンバーに、都度、報告しています。

各部門・関係会社は、TCFD分科会と連携して策定した各種施策を実行し、気候変動にかかるデータを提供しています。

経営戦略会議は、TCFD分科会より適宜報告を受け、必要に応じて指示、承認を実施します。

監査等委員会及び内部監査室は、これらの取り組みを監査します。

 

(2)戦略

・シナリオ分析の前提

当社グループの医療用医薬品の製造販売事業等を対象として、2030年時点の世界を想定してシナリオ分析を実施しました。シナリオ分析では、IPCC、IEA(*)等の各種レポートを参照し、1.5℃、2℃、4℃の3つのシナリオを設定しました。 1.5℃シナリオでは脱炭素社会の実現に向けて炭素税をはじめとした各種規制が導入され、様々なステークホルダーから気候変動対応への要求が高まる一方で、社会やライフスタイルの変化に伴う新たなニーズの発生が考えられます。4℃シナリオでは温暖化の進行によって極端な大雨等の災害リスク、熱中症等の健康リスクが高まると想定される一方で、気候変動へ適応するための新たなニーズも生まれると考えられます。

 

・シナリオ分析の結果

各シナリオに基づくリスクと機会の抽出を行い、それぞれの発生可能性と影響度に応じて事業に与える重要度を評価し、対応策の検討を行いました。その結果、対象事業における気候変動に伴う重大な事業リスクは確認されませんでした。1.5℃シナリオ、4℃シナリオで想定されるリスクと機会は以下の通りです。

 

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対象範囲:東和薬品株式会社、ジェイドルフ製薬株式会社、大地化成株式会社、グリーンカプス製薬株式会社

Towa Pharma International Holdings, S.L.、三生医薬株式会社

対象期間:2021年度~2030年度

 

(*)IPCC:気候変動に関する政府間パネル/Intergovernmental Panel on Climate Change

IEA:国際エネルギー機関/International Energy Agency

 

(3)リスク管理

気候変動に関連するリスクと機会の管理のため、TCFD分科会は、リスクと機会の評価の見直しを毎年実施しています。

リスクと機会のそれぞれを発生可能性、影響度、対応策の有無などで評価し、重要度を決定しています。

また、バリューチェーン*に細分化して、評価、対応策を検討しています。

リスクと機会の評価にあたっては、必要に応じて関連する事業部門にインタビューを実施しています。

重要度が高いものについてはリスクマネジメント委員会にて検討し、必要に応じてリスクマネジメント委員会を通じて、取締役会に報告しています。

また、TCFD分科会では、気候変動に対するリスクと機会への対応策を立案し、設定した指標により対応策の進捗を管理しています。

 

*バリューチェーン:事業を機能別に分類したものであり、当社では「研究・開発、購買・調達、製造、物流、営業・マーケティング、管理全般」に分類

(4)指標と目標

当社グループでは気候変動に関連するリスク・機会を管理するための指標として、温室効果ガス排出量を算出し、中長期の削減目標を設定しています。Scope1,2では、2030年度に2021年度比30%削減、2050年度にカーボンニュートラルを目指します。当社グループでは、開示内容の信頼性確保の観点から、今後温室効果ガス排出量の第三者保証取得を予定しております。本年度の排出量実績の数値につきましては、第三者保証の取得後、以下のウェブサイトに掲載を予定しております。

https://www.towayakuhin.co.jp/sustainability/environment/environment02.php

 

人的資本

(1)ガバナンス

人事戦略に関しては、取締役会における経営視点での方針の議論を経て、人事本部が各部門・関係会社と連携して情報収集、分析を実施し、具体的な課題や施策(主要ポジションの任免、人員に関する計画等)に関する検討を行っています。それを経営戦略会議で審議し決裁しています。これらの活動は人事本部長を責任者とし、国内外グループ各社の責任者と連携をとりながら進めています。

(2)戦略

(人材育成方針)

当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は以下のとおりです。

当社グループの理念である「私達は 人々の健康に貢献します 私達は こころの笑顔を大切にします」の実現に向けて、中期経営計画において、「事業戦略の実現に必要な人材獲得・育成の推進」、「やりがいをもって成長できる環境の整備」、「社会の変化に柔軟に対応し、新たな付加価値を創造」することを人材戦略の目標に掲げています。この目標を達成するためには、個人の成長やキャリアを充実させることが重要であり、人事本部では管理職ポスト要件の整備、業務スキル要件の可視化、全社員を対象とした主体的なキャリア形成支援等を行っております。具体的には現場の社員一人ひとりの育成とキャリア開発を担当するキャリア開発部(キャリア形成支援担当者)を人事本部の下に設置しています。2024年4月には、やりがいを持って仕事に取り組み、社員のさらなる成長と活躍をサポートするため社長直下の組織として「人材研修センター」を新設しました。

 

〇キャリア形成支援

当社は人材戦略の一環として、社員一人ひとりのキャリア形成支援に取り組んでいます。社員の継続的な自己成長と能力発揮の機会を創出することで、活力ある職場環境を実現し、全社員が働きがいを感じられる組織づくりを目指しています。具体的には、社内アンケート結果をもとに、社員と人事担当者との面談の実施や、管理職を対象としたキャリア形成研修を行い、自律的なキャリア形成の支援を推進しています。また、新任管理職及び新卒4年目社員向けに、毎年キャリア形成研修を実施しています。

さらに、2025年より50代社員を対象に「当社で長く生き生きと働き、会社に貢献する50代のキャリア形成」を目的とした施策を開始し、個々のスキルや経験を改めて見つめ直す機会を設けることで、キャリア形成の促進に努めてまいります。加えて、社員が自身のキャリアビジョンを描く参考資料として、社内における多様なキャリアパスを可視化した「キャリアマップ」を公開しています。

これらの取り組みについては、キャリア開発部を中心に積極的に議論を行い、経営モニタリング会議へ報告し、社員の成長と組織の持続的発展を図っております。

 

(社内環境整備)

社員が成長することで企業基盤が強化され、変化に対応した成長が可能となることから、当社では企業基盤の強化に向けた環境整備に取り組んでいます。具体的には、働き方の多様性を高め、その能力を最大限発揮できる環境を整備するという方針のもと、育児休業の延長や子育て世代・介護支援休暇の設置、在宅勤務の導入といった多様な働き方を支援できる環境を整備しております。あわせて、社員自らが意見を提案しその実現に向けて取り組むことを目的として設置された「社員活躍推進委員会」において、働き方の向上に繋がる仕組みを設けております。また、社員は会社にとって重要な投資資源・財産として捉え、成長に向けて働きかけるための人材育成の取り組みを強化して、社員一人ひとりが創造的な仕事をするための時間確保ができるよう、適正人員数の確保にも努めています。

 

〇女性活躍推進、多様性の推進

2009年7月「女性社員が子育てをしつつイキイキと仕事に取り組むために、会社の支援策はどうあるべきか」をテーマとして「女性活躍推進プロジェクト」がスタートしました。経営層との意見交換を積極的に実施し、以下の取り組みを実現しました。

・育児休業期間の延長(対象となる子が3歳になるまで)

・早期復帰支援を目的として「早期復帰祝金」を支給

・子育て応援ガイドブック「Happy Lovely Baby」の作成・啓発

・子育て支援等を目的として「ファミリーサポート休暇」を設置

・2010年に「くるみん」マークを取得

・管理職候補となりうる女性社員を増やすために各部門で計画的に育成を行っていく

・部門長に女性の積極活用を呼びかけ

さらに女性の活躍を推進するため、2011年4月に「女性活躍推進委員会」を発足しましたが、その後、2018年1月に女性活躍推進に加えて、すべての社員の事情に応じた課題の解消・支援の施策を実施するため「社員活躍推進委員会」と名称を変更して活動範囲をさらに拡大し、社員の働き方の多様性を推進するための取り組みを積極的に行っています。最近の傾向としては、男性社員の育児休業の取得が増加しております。また、2018年には仕事と家庭の両立を支援するための施策である「育児短時間勤務」について、対象となる子が小学6年生まで取得できるよう適用範囲を拡大し、利用者数は年々増加しています。

また、社員の多様性を進めるために中途採用を積極的に行うとともに、外国籍の人材も採用しております。

これらの施策を実施するとともに階層別に行動指針に関する研修を実施し、人権に関するe-learningを実施する等の啓蒙活動も合わせて行っています。

これらの取り組みもあり、2022年度には「大阪市女性活躍リーディングカンパニー」において三つ星に認定されました。

 

〇健康経営の推進

当社グループでは、社員が当社グループの一員であることに誇りを持ち、自身のキャリア開発や能力発揮を通して組織に貢献できる人材となるよう取り組むとともに、職場の労働環境を整備し、社員のモチベーション向上や働きやすさの向上を目指しています。

そのため、人材戦略の一環として取り組んでいる健康経営においては、国内グループ会社の安全衛生担当者が出席し、健康経営推進について協議・情報共有する「全社安全衛生管理委員会 事務局会議」を毎月開催し、また、年2回は代表取締役社長を最高責任者とする「全社安全衛生管理委員会」を開催しています。重点取り組みとして、社員が自身の健康について考え、生活習慣改善のきっかけとすることを目的に、全社員を対象にした身体機能測定等を行う社内イベント「TOWA健康チャレンジ」を毎年開催し、また、健康リテラシー向上のため各種健康教育を実施しています。その他にも、国内グループ会社全体での休憩時間も含めた就業時間中の完全禁煙に向けた取り組み、女性特有のがんや妊娠・出産、更年期等のライフステージによる健康課題に関する教育の実施、生活習慣病等の高リスク者に対する重症化予防のための保健師からのフォロー等を行っています。

このような取り組みの結果、2025年3月10日、経済産業省と日本健康会議が共同で選定する「健康経営優良法人2025(大規模法人部門・ホワイト500)」に認定されました。当認定制度は2017年度より実施されており、健康経営優良法人としては8年、ホワイト500は5回目の認定となりました。当社は健康に貢献する企業として今後も健康経営体制を推進し、社員と家族の健康促進に向けた取り組みを進めてまいります。

 

(3)リスク管理

人事に関連するリスクと機会の管理のため、人事部及び人事企画部は毎年、リスクと機会の評価を行い、対応策を決定しています。また、リスクと機会の評価にあたっては、必要に応じて関連する部門にインタビューを実施しています。

 

(4)指標と目標

上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに具体的な取り組みが行われているものの、当社グループに属する全ての会社では行われてはいないため、当社グループにおける指標と目標の記載は困難であり、当社グループにおける主要な事業を営む提出会社の指標と目標を記載しております。

指標

目標

実績

人事担当者との面談の実施率

100%(2024年4月~2025年3月末)

100.0%(2024年4月~2025年3月末)

女性管理職比率

13%の達成

15.3%(2025年3月時点)

有給休暇取得率

65%の達成

73.4%(2024年度)

 

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの取り扱う製品・商品は主として医療用医薬品であり、その中のジェネリック医薬品が中心です。ジェネリック医薬品は新薬の有効性と安全性が一定期間にわたって確認された後に上市され、有効成分が同一でかつ効能・効果、用法・用量が同等の医薬品です。そのために当社グループには医薬品製造販売業としてのリスクに加えジェネリック医薬品メーカーとしての特有のリスクなどがあります。

 これらのリスク発生の可能性を認識した上で、リスクに迅速且つ的確に対応することが、当社グループの存続・発展に不可欠であると考えております。当社グループでは、リスクの未然防止、並びに、リスク発生時の利害関係者の利益喪失及び企業経営への影響度の最小化を図ることを基本方針として、リスクマネジメント委員会の下で重要リスクの特定と対策の進捗管理を実施しております。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 ①医療制度及び薬事規制等

 当社グループの主要製品、商品である医療用医薬品を販売するためには、厚生労働大臣が定める薬価基準への収載が必要です。薬価収載された医療用医薬品は原則として2年に1回、市場実勢価格の調査を行い、公定価格である薬価に市場実勢価格等を反映させます。その際、多くの品目で薬価が引き下げられています。また、2021年度以降は薬価制度の抜本改革により、中間年においても薬価改定が行われ、毎年薬価改定となりました。増大する医療費の抑制を目的として医療保険制度の見直しや、薬価制度の更なる大幅な変更、医療費抑制政策の強化が行われると、当社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

 また、当社グループの事業は医薬品医療機器等法及び関連法規等により規制を受けております。各種許認可、免許の取得を必要とするため、上記規制に関する違反が生じた場合、所管官庁等から行政処分が行われ、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があり、この他にも、国際的に変異原性物質の規制が強化される中、基準を満たさない等の問題が発見された場合には、当該製品の回収や廃棄、販売中止のリスクが生じます。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは医療制度や関連法規等の情報収集に努め、法令及び社会や行政の期待に沿った対応を実施しております。製品の価値に見合った適正価格での販売に努めるとともに、近年追補製品のシェア拡大を推進して収益性の改善を図る一方、全社的なコンプライアンス推進計画の策定、体制の整備を行っております。

 

 ②特許及び再審査

 当社グループのコア事業であるジェネリック医薬品事業は、その性質上、先発企業等の特許権に大いに影響を受けます。新薬の有効成分は通常、特許権により保護されており、その特許期間は出願日から20年間(更に5年を限度とする期間延長が可能)となっています。ジェネリック医薬品は特許期間の満了後に製造販売承認されるため、この期間が延長されることがあれば、当社グループの新製品(追補品)の発売に影響を及ぼします。

 また、新薬については、一定期間後にその医薬品の有効性・安全性等を再確認する再審査制度があり、その再審査期間は原則として新薬の製造販売承認日から8年間となっています。ジェネリック医薬品はこの期間の経過後に製造販売承認申請しますが、新薬の効能追加等により再審査期間が再度設定された場合には、新薬と効能・効果、用法・用量が異なることがあるため、当社グループの新製品の発売に影響を及ぼします。

 その他にも、当社グループが発売するジェネリック医薬品には、発売後も原薬の結晶形、製剤、用途等に関する特許権が存続していることがあります。このような特許権に関しては、正確にこれを理解して回避することができれば、競争優位性を得る機会となる一方、特許権所有者から特許訴訟を提起されるリスクもあり、そうした場合には、当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 上記のようなリスクに対応するために、当社グループでは特許情報及び再審査期間情報の収集に努め、技術部門と開発部門など関連部門間の連携強化を行っております。これにより、新薬の特許期間満了後に速やかに効能追加等の一部変更承認を得る、または再審査期間満了後に一部変更承認申請を行うことで、効能不一致の解消に努めるとともに、他社が有する特許を回避した製剤の開発を行っております。

 

 ③競合状況によるリスク

 ジェネリック医薬品の競争市場は、先発医薬品からの切り替えが多くの構成割合を占め、その販促会社数による影響を大きく受けます。また、近年ではオーソライズド・ジェネリックの投入等の諸施策を講じる企業も多く、これらの動向次第で当社グループが計画していた売上収益との乖離が想定されます。この他にも、競合他社の供給状況は当社グループ製品への需要に影響を及ぼすため、他社の供給不安や販売中止等は市場シェア獲得の機会となる一方で、当社製品の安定供給上のリスクとなる可能性もあります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは、設備投資による生産能力の向上や製造所のバックアップ体制を整備しております。また、2025年度からは、需要量と在庫水準の日々のモニタリングによって生産面・販売面からの安定供給に努めるための専門組織を新設して機能強化を図るとともに、透明性のある情報開示による信頼確保にも努めております。

 

 ④生産の停滞、遅延

 当社グループは大阪府、岡山県、山形県、滋賀県、沖縄県、兵庫県、静岡県、千葉県及びスペイン・カタルーニャ州に生産拠点を配置しておりますが、自然災害や技術上・規制上の問題の発生により、生産拠点の操業が停止し、製品の安定供給に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループでは山形工場の第三固形製剤棟のフル稼働により国内需要に応えることを前提とした事業計画を策定しているため、生産の停滞や遅延が生じた場合には、市場獲得の機会を大きく損ない当該事業計画にも影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは、国内外における工場間のバックアップ体制の整備、配送拠点の増設、原薬の複数購買の推進に努めております。また、国内市場における需要の増加に対応すべく、2021年より山形工場への更なる設備投資を進めてきた一方で、これらがスムーズに稼働し会社利益に貢献できるよう、組織機能の強化と人材配置・人材育成に努めております。

 

 ⑤原薬及び材料の調達

 当社グループは原薬及び材料を国内外より調達しており、昨今の原材料価格の高騰により、製品原価に影響を及ぼす場合や、原材料の需給バランスの変動、国内外の規制または原材料メーカーによる供給停止等により、原材料の入手が長期的に困難となるリスクがあります。また、円安でコストが上昇してもわが国の薬価制度のもとではそれを販売価格に転嫁することは極めて困難であり、このような調達リスクや為替リスクは、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクに対応するため、サプライチェーンマネジメントの強化策として、原薬及び材料について、サプライヤーの複数化を積極的に推進しております。また、重要製品の原薬については、当社グループの大地化成株式会社において原薬の自製化も進めております。この他にも、円安によるコストアップのリスクを回避し、長期的な安定供給を担保するために、当社は長期のデリバティブ取引を行っています。決算時にはこれを時価評価しますが、前期末に比べて円高、また日米の長期金利差が拡大すれば評価損が出る構造になっていますので、為替レート、日米の金利動向によっては評価損が生じる可能性があります。また、逆の場合には評価益が生じる可能性があります。なお、当社では、将来における外貨建て輸入取引量を見積り、その範囲内で長期のデリバティブ取引を行っております。これにより、デリバティブ取引が投機的にならないように留意しております。

 

 ⑥人材の確保と人材育成

 当社グループは、事業活動における適切な人材の確保と育成を重要な経営課題と認識しております。適切な人材を十分に確保し、育成することができなければ、事業の持続的な成長と競争力の維持が困難となり、経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクに対応するため、当社は、多様な背景を持つ人材の積極的な採用や育成、そして柔軟な働き方を支える職場環境の整備により、多様な人材が最大限能力を発揮できる組織づくりの推進に努めています。社内資格制度の導入や人材研修センターの設立など、成長事業の収益拡大と基盤事業の競争力強化の源泉となる人材育成を進めています。一方では、少子高齢化の進展による労働力人口減少といった課題にも対応するため、全工場のスマートファクトリー化を掲げ、自動化や省人化についても積極的な取り組みを推進しております。

 

 ⑦ITセキュリティ及び情報管理に関するリスク

 当社グループは、事業活動を通じてセンシティブな個人情報を含む大量の機密情報を保有しております。こういった機密情報については、サイバーアタックや内部不正による情報漏洩のリスクを無視することはできず、また個人情報保護のための法令制定や個人情報に関する権利意識の高まりも相まって、情報管理はより一層その重要性を増しております。仮に重要な機密情報が流出した場合には、法的な損害だけに止まらず、グループ会社全体の社会的な信頼の失墜を招く可能性があります。

 このようなリスクに対応するために、当社グループでは、情報セキュリティ意識を高めるための社内教育を継続的に実施しつつ、当社グループ会社のTスクエアソリューションズ株式会社とも連携しつつセキュリティ強化に努めております。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当社グループにおいては、「人々の健康に貢献し、こころの笑顔を大切にする」ことを企業理念として、2024年6月に発表した「第6期 中期経営計画2024-2026 PROACTIVEⅢ」に基づき、国内でのジェネリック医薬品事業をコア事業としつつ、新規市場及び新規事業における基盤の確立と各子会社とのグループシナジーの実現を目指し、各種課題に取り組んでまいりました。

国内ジェネリック医薬品事業においては、当社としての安定供給責任を果たすため、増産に向けた新規設備の導入と増員に取り組んでおります。2023年11月に山形工場 第三固形製剤棟及び第二無菌製剤棟の建設工事が完了し、2024年4月から第三固形製剤棟で製造した製品の出荷を開始しました。3工場の年間生産能力について、2024年3月末の140億錠から2026年度に175億錠への増加を実現すべく取り組んでおります。

製造管理及び品質管理面では、医薬品の製造管理及び品質管理の基準であるGMP省令やその他関連する法令遵守はもちろんのこと、国際的基準であるPIC/S GMPやICHガイドラインも積極的に取り入れ、独自の制度・教育訓練により、医薬品の適切な品質と安全性の確保に取り組んでおります。また、従前より導入しているMES(製造実行管理システム)及びLIMS(医薬品の品質試験を統括管理するシステム)に加え、QMS(品質マネジメントシステム)を導入し、製造管理・品質管理のさらなる向上に取り組んでいきます。さらに、安定供給体制の維持・強化のため、原薬の複数購買化や製造所の監査等を推進し、グループ全体として原薬製造から製剤製造、物流、販売に至るまで、ガバナンスの強化とコンプライアンスの徹底に向けた取り組みを継続して行っております。

販売面では、2024年6月に新製品3成分7品目、2024年12月に新製品6成分10品目の販売を開始し、当社のジェネリック医薬品の製品数は326成分759品目(2024年12月時点)となりました。また、2025年3月27日に新医薬品として日本初の持続放出性リバスチグミン経皮吸収型製剤-週2回製剤-「リバルエン®LA パッチ25.92mg/51.84mg」の製造販売承認を取得いたしました。なお、2025年6月追補収載予定の新製品は1成分2品目となります。

健康関連事業の展開においては、地域包括ケアシステム等の新しい医療体制に対応するため、「ヘルスケアパスポート」を中心に位置付け、治療・予防・介護支援の観点から各子会社間及び既存事業とのシナジーを形成し、健康維持・増進のための製品やサービスを増加させることで、健康関連事業の多角的な展開を実現してまいります。

海外セグメントにおいては、海外医薬品事業の強化と拡大に向け、Towa INTを通じて、欧州及び米国市場でのジェネリック医薬品事業を展開しております。将来の成長に向けて必要な研究開発・設備への投資を強化しつつ、既存ビジネスの維持・強化及び市場・地域の更なる拡大によって売上高とセグメント利益の確保を目指してまいります。また、グループシナジーの1つの成果として、Towa INTのマルトレージャス工場にて日本国内向けエソメプラゾールカプセルの製造を開始しました。今後も、開発・製造技術においてグループシナジーを形成できるよう、各部門との交流・情報共有を行ってまいります。Towa INTが持つ欧州複数国及び米国での販売網と、欧州にある欧米等の基準に準拠した製造拠点を活用し、日米欧の3極から世界中の患者に高品質で付加価値のあるジェネリック医薬品を提供できるグローバル事業基盤の確立に向けて取り組んでまいります。

 このような活動の結果、当連結会計年度における当社グループの業績につきましては、売上高259,594百万円(前期比13.9%増)、売上原価164,865百万円(同12.5%増)、売上総利益94,729百万円(同16.4%増)、販売費及び一般管理費71,486百万円(同12.2%増)、営業利益23,242百万円(同31.7%増)、経常利益26,152百万円(同6.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益18,986百万円(同17.4%増)となりました。

 セグメント別の業績は、国内セグメントが、売上高206,103百万円(前期比15.3%増)、セグメント利益27,216百万円(同24.3%増)となりました。海外セグメントは、売上高53,865百万円(同9.2%増)、セグメント利益449百万円となりました。これら報告セグメントのセグメント利益につきましては、のれん償却前の数値となっております。

 

(資産)

当連結会計年度末における総資産は、470,823百万円となり、前連結会計年度末比40,170百万円の増加となりました。その主な要因は、現金及び預金の増加15,820百万円、有形固定資産の増加14,780百万円、棚卸資産の増加7,214百万円等があったことによるものです。

(負債)

負債につきましては、299,198百万円となり、同24,438百万円増加しました。その主な要因は、1年内返済予定を含む長期借入金の増加13,856百万円、リース債務の増加12,232百万円等があったことによるものです。

(純資産)

純資産につきましては、171,625百万円となり、同15,731百万円増加しました。その主な要因は、利益剰余金の増加16,049百万円等があったことによるものです。

その結果、当連結会計年度末の自己資本比率は36.5%となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に対して15,809百万円増加し、45,460百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは23,401百万円の収入(前連結会計年度比15,188百万円増)となりました。主な要因は、法人税等の支払額10,889百万円(同9,129百万円増)や棚卸資産の増加7,204百万円(同916百万円増)等があったものの、税金等調整前当期純利益26,330百万円(同1,870百万円増)や減価償却費15,677百万円(同2,017百万円増)等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、31,287百万円の支出(前連結会計年度比9,106百万円減)となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出28,736百万円(同9,114百万円減)等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、21,567百万円の収入(前連結会計年度比13,840百万円減)となりました。主な要因は、長期借入金の返済による支出12,482百万円(同4,874百万円増)等があったものの、長期借入れによる収入26,365百万円(同20,570百万円減)やセール・アンド・リースバックによる収入10,014百万円(同10,014百万円増)等によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

薬効

セグメントの名称

国内

海外

合計

金額(百万円)

前期比(%)

金額(百万円)

前期比(%)

金額(百万円)

前期比(%)

循環器官用薬

51,497

106.0

707

96.1

52,204

105.9

中枢神経系用薬

31,562

104.0

11,674

102.1

43,236

103.5

消化器官用薬

21,940

90.9

14,204

97.1

36,145

93.2

血液・体液用薬

18,053

105.4

916

18,970

110.7

その他の代謝性医薬品

17,927

116.4

26

83.3

17,954

116.3

抗生物質製剤

6,718

146.2

6,718

146.2

化学療法剤

2,959

118.4

10

77.4

2,969

118.2

腫瘍用薬

5,112

135.4

5,112

135.4

アレルギー用薬

28,220

118.8

302

94.9

28,523

118.4

その他

44,418

119.1

172

94.7

44,590

119.0

合計

228,410

110.1

28,015

102.5

256,425

109.2

 (注)上記金額は売価換算で表示しております。

 

b.商品仕入実績

 当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

薬効

セグメントの名称

国内

海外

合計

金額(百万円)

前期比(%)

金額(百万円)

前期比(%)

金額(百万円)

前期比(%)

循環器官用薬

123

120.8

3,592

87.0

3,716

87.8

中枢神経系用薬

18

52.4

4,766

78.9

4,785

78.8

消化器官用薬

37

3.7

360

128.1

397

30.9

血液・体液用薬

560

42.7

647

75.9

1,207

55.7

その他の代謝性医薬品

181

66.6

181

66.6

抗生物質製剤

984

97.6

984

97.6

化学療法剤

0

121

59.4

122

59.6

腫瘍用薬

142

67.1

1,144

75.6

1,287

74.6

アレルギー用薬

0

403

90.7

404

90.9

その他

1,497

476.5

1,156

111.8

2,653

196.8

合計

2,381

79.8

13,358

84.6

15,739

83.9

 (注)上記金額は実際仕入額で表示しております。

 

c.受注実績

 当社グループは、主として見込み生産を行っているため、記載を省略しております。

d.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

薬効

セグメントの名称

国内

海外

合計

金額(百万円)

前期比(%)

金額(百万円)

前期比(%)

金額(百万円)

前期比(%)

循環器官用薬

48,248

115.6

6,336

118.5

54,584

115.9

中枢神経系用薬

29,028

115.8

21,215

111.9

50,244

114.2

消化器官用薬

21,034

107.4

14,399

104.6

35,434

106.3

血液・体液用薬

17,476

117.3

2,236

141.6

19,713

119.6

その他の代謝性医薬品

15,706

119.4

302

94.0

16,008

118.8

抗生物質製剤

4,709

54.6

1,355

106.7

6,064

61.3

化学療法剤

2,457

127.0

317

116.6

2,774

125.7

腫瘍用薬

4,078

118.5

3,535

81.6

7,614

97.9

アレルギー用薬

22,689

124.3

773

108.5

23,462

123.7

その他

40,674

127.0

3,019

113.3

43,694

126.0

合計

206,103

115.3

53,490

108.7

259,594

113.9

 

    主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

㈱スズケン

30,365

13.3

37,574

14.5

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。

 この連結財務諸表の作成にあたって、見積りが必要な事項について、会計基準等の範囲内で合理的な会計上の見積りを行っております。重要な会計方針及び見積りの詳細等につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」をご参照ください。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度における当社グループの経営成績等は、売上高259,594百万円(前期比13.9%増)、営業利益23,242百万円(同31.7%増)、経常利益26,152百万円(同6.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益18,986百万円(同17.4%増)となりました。東和薬品において製品への需要が高く販売数量が増加したこと、三生医薬とTowa INTにおいても業績が伸びたことにより、増収増益となりました。

国内セグメントの業績につきましては、東和薬品において引き続き製品への需要が高く販売数量が増加したこと、三生医薬において連結子会社化した株式会社カマタの影響とセールスミックスの改善によって売上原価率が低下したことにより、売上高206,103百万円(前期比15.3%増)、セグメント利益27,216百万円(同24.3%増)となりました。

海外セグメントの業績につきましては、為替レートが円安に動いたこと及び欧州がBtoBとBtoCともに好調であったことにより、売上高53,865百万円(前期比9.2%増)となりました。セグメント利益につきましては、研究開発費等の販管費は増加したものの、増収とセールスミックスの改善によって売上原価率が低下したことにより、セグメント利益449百万円となりました。

なお、これら報告セグメントのセグメント利益につきましては、のれん償却前の数値となっております。

次期の見通しにつきましては、毎年行われる薬価改定に加え、品質確保や医薬品の安定供給に関する問題も重なり、国内ジェネリック医薬品業界は厳しい環境下で変革を求められる時期となっております。また、地政学的リスクに伴う物価上昇、原材料高騰等、先行き不透明な状況が続くものと想定しております。

このような状況のもとではありますが、当社グループは2024年6月に発表した「第6期 中期経営計画2024-2026 PROACTIVEⅢ」に基づき、コア事業である国内ジェネリック医薬品事業の新たなステージに向けた進化、新規市場及び新規事業における基盤の確立と各子会社とのグループシナジーの実現を目指し、各事業に取り組んでまいります。

 

③資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの資本の財源及び資金の流動性について、主な資金需要は、製品製造のための原材料購入費用及び製造費用、研究開発費を含む販売費及び一般管理費、生産能力増強のための製造設備への投資費用等であります。

これらの資金需要につきましては、主に自己資金及び金融機関からの借入による資金調達にて対応しております。

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

  当社グループは付加価値のある良質で経済的なジェネリック医薬品を医療の場に提供し、人々の健康と医療費の軽減に貢献するべく研究開発の努力を続けております。

  当連結会計年度においては、2024年6月には新規薬価基準追補収載品目としてパーキンソン病治療薬・レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズム治療薬(レボドパ賦活剤)、キャンディン系抗真菌剤、経口用セフェム系抗生物質製剤、計3成分7品目、2024年12月には筋弛緩回復剤、選択的DPP-4阻害薬(2型糖尿病)、選択的直接作用型第Ⅹa因子阻害剤、経皮吸収型鎮痛・抗炎症剤、5-HT1B/1D受容体作動型片頭痛治療剤、代謝拮抗性抗悪性腫瘍剤、抗造血器悪性腫瘍剤、計7成分11品目を上市しております。

 また、2025年5月には日本初の週2回貼付のアルツハイマー型認知症治療用貼付剤の1成分2品目、2025年6月には選択的DPP-4阻害薬/ビグアナイド系薬配合剤(2型糖尿病治療薬)の1成分2品目が新製品として薬価収載されました。

  引き続き次の上市予定品目の製造販売承認申請にむけて、医療機関や患者さんのニーズに応える付加価値製品の開発を目指した研究開発活動を行っております。

  なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は、16,212百万円です。内訳としましては、国内セグメント:12,875百万円、海外セグメント:3,337百万円となっております。