文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「優れた医薬品を通じて、人々の健やかな生活に貢献する」、「富士製薬工業の成長はわたしたちの成長に正比例する」ことを経営理念としております。今後も引き続きこの経営理念の下に、良質な医薬品の開発・製造・販売を通じて、顧客、仕入先、株主、従業員、地域・社会の各ステークホルダーに対する責任を果たしつつ、さらに貢献と成長の好循環を発展させてまいりたいと考えております。
中期経営計画の成長戦略としては、中期視点で3つ、長期視点で1つを進めて参ります。
これらの4つの成長戦略を支える3つの施策として、人財の強化、組織機能の高度化、デジタルの推進を推進してまいります。
女性領域とは婦人科疾患以外にもメンタルヘルス、心臓血管関連、母体の健康など様々なカテゴリーに分けられておりますが、いずれも将来的に市場が拡大する見通しとなっており、婦人科疾患に絞ってもグローバルでは現時点でも2兆円を超える市場となっております。
日本国内では、月経随伴症状と更年期障害による経済損失は2.5兆円と言われ、その背景には先進諸国と比較して疾患認知の遅れ、低い産婦人科受診率、低いホルモン剤治療率などがあり、国内市場拡大の余地は、まだ十分あると考えております。
このように拡大余地が大きな国内女性医療市場に向けて、2024年12月から発売を始めたアリッサ配合錠を中心に、エフメノカプセル、経口避妊薬などが貢献する見通しです。
国内の月経困難症の患者様に対しては、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP製剤)が約80%使用されています。このLEP製剤の増加傾向は今後も続くと見込んでおり、既存のLEP製剤にないメリットを有するアリッサ配合錠を、より多くの患者様に届けられるよう、国内最大規模である当社女性医療専任МR90名が情報提供活動に取り組んで参ります。また、よりメディカル視点での医師とのコミュニケーションを実現するためメディカルアフェアーズ部、メディカルサイエンスリエゾンを設置するとともに、日本の医師90%以上が会員となっている共同開発先のエムスリー社の情報提供プラットフォーム、サービスを活用しながら、女性医療での貢献拡大に努めてまいります。
世界のバイオ医薬品市場は医薬品市場全体の40%に到達しており、日本においても医療経済的観点から、低分子のジェネリック医薬品が数量ベース80%を達成しております。
このような背景から、昨年国内におけるバイオシミラー普及について、過去のジェネリック医薬品と同様に、厚労省から2029年に向けた具体的な数値目標が出され、今後、バイオシミラーの普及はこれまで以上に急速に進んでいくと考えられます。当社ではバイオシミラーのラインナップを既に上市済みの3製剤に加え、中期経営計画期間中に6製剤まで増やしていくことを予定しております。
CMOに製剤開発を加えたグローバルのCDMO市場は今後も年平均成長率で7.2%拡大していくと想定されています。当社グループでも、既に製剤開発を加えたCDMO事業を手掛けております。
当社が製造所を保有しているタイ、日本という生産拠点は、地政学的リスクも比較的低く、欧米の大企業をはじめ多くの新規受託案件の検討がなされております。
タイ、日本で製造できる剤型は多岐に及び、OLICと富山工場が連携することで様々な顧客ニーズにお応えできるものと考えております。
当社は、これまでにも新薬の自社開発を3製品手掛けてきておりますが、既に海外で承認済みの製品の国内未承認薬、既に医薬品となることが見通せている成分の国内開発が中心でした。
今後は、早期の開発フェーズにあるもののシーズ探索と目利き、そしてこれを医薬品として開発していくことを計画しています。
女性医療領域でのシーズ探索を中心として、創薬エコシステムに入り込むためにコーポレートベンチャーキャピタルの設置や、女性医療分野の新規成分の研究が盛んに行われている北米やヨーロッパにリサーチハブを設置することも含め、医薬品に限らず、医療デバイスによる価値提供にもアンテナを張って新規開発パイプラインの構築に努めてまいります。
これらの4つの成長戦略を支える3つの施策として、人財の強化、組織機能の高度化、デジタルの推進をそれぞれ進めてまいります。
ひとつ目の人財の強化は、女性医療に注力する企業として、女性が働きやすい環境整備を積極的に進め、女性の健康課題解決に対する福利厚生を、さらに充実させていき、女性管理職比率を現在の20%から大きく引き上げる取り組みを進めて参ります。また、当社の真面目で仲間を想う組織の源泉となっている徳目のさらなる浸透に注力していきます
ふたつ目の組織機能の高度化については、シーズ探索など研究開発基盤の強化、現在社会問題となっている安定供給を堅持するためのサプライチェーンの維持、効率的な生産体制の強化を進めて参ります。また上市した医薬品の価値を最大化するためのライフサイクルマネジメントの推進基盤についても強化してまいります
最後は、デジタル活用が必須となっている現代において、後れをとることの無いよう、デジタル専門組織体制を整備し、全社を挙げてデジタル人財の育成と風土改革、デジタル基盤の構築とデータの更なる利活用を推進してまいります。
中期経営計画の最終年度である2029年9月期は、売上高800億円、営業利益100億円を目指します。
営業利益率は、収益性の高い女性医療領域の新薬と既存製品やバイオシミラーの貢献などにより、2024年9月期の8.4%から大きく改善させて12.5%を目指します。
収益性改善に伴い、EBITDARは109億円から230億円と倍増させ、営業利益ベースの一株あたり純利益は 240円、ROEは10%を目標としております。(EPS、ROEはいずれも現在発行済みの新株予約権が全て行使された後の数値)
当社では2035年の長期ビジョンとして「女性医療で新たな価値を創出し続け、誰もがwell-beingを実感できる社会へ貢献する」を定めました。
人生のうち、女性は男性よりも25%多い時間を不健康で過ごしていると世界経済フォーラム2024で公表されており、経済産業省からは月経随伴症に伴う経済損失額は約6,000億円、更年期症状による経済損失額は約1兆9,000億円であるといわれ、女性の健康課題の解決は大きな社会問題であると考えております。
そのなかで、当社は創業以来50年以上にわたって一人でも多くの女性を笑顔にするために、女性医療に取り組んできており、女性医療領域はわたしたちの貢献と成長の象徴であると捉え、今後、ウィメンズヘルスにおける医療格差がなくなり、女性が男性と同様に健康な生活を送れる世の中を目指し、富士製薬工業グループ全体でそんな未来の創造に貢献する責任があると考えております。
まずは、日本そしてタイの子会社を中心としたASEAN諸国において、当社グループの貢献の範囲が広がっていくことを重要な戦略と位置付けております。
2 【サステナビリティに関する考え方及び取組み】
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
サステナビリティ基本方針
当社は経営理念として、『優れた医薬品を通じて、人々の健やかな生活に貢献する』、『富士製薬工業の成長は、私たちの成長に正比例する』を掲げ、経営理念の実践を通じて、世の中の役に立つこと、またそのためにたゆみなく成長していくことが、当社のサステナビリティ活動の基本であると考えています。
社会的責任を果たすと同時に、地球環境の保護や経済などの社会の持続可能性に配慮した事業活動を行い、人々の生活向上をはじめとするさまざまな社会的課題の解決に貢献してまいります。
(ガバナンス)
事業活動を通じて環境・社会・経済に与える影響を考慮し、 持続可能な社会を実現するための課題解決に取り組むべく、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」および専任部署である「サステナビリティ推進課」を設置し、全社を挙げて取り組みを進めております。
「サステナビリティ委員会」は各部門の部長を中心に構成され、本委員会は年4回開催し、サステナビリティに対する取り組みの進捗状況の確認、意見収集を行っております。 取締役会にて年1回報告され、重要な事項については、取締役会にて審議、議論を行います。

(リスク管理)
当社では、事業活動にマイナス影響を及ぼす可能性のある事象を事前に識別・分析・評価し、対応を適切に行うことにより内部統制の目的を達成するため、「全社リスク管理規程」を定めております。本規程に基づき、各部門の部長を中心に構成された「リスク管理委員会」においてリスク評価を実施し、気候変動、人権などサステナビリティ関連のリスクを含む全社的なリスクマネジメント体制の整備、問題点の把握に当たっております。リスク評価は客観的な評価項目に基づいて行っており、評価の結果ある程度リスクが大きいと判断された事象については「リスク対応計画」を作成し、関連する部署は、当該リスク対応計画に沿って対応をすることとしております。これらの活動は、年1回以上取締役会に報告され、活動改善に向けた議論を行っております。
(1)マテリアリティ
すべての社員が、当社の社会的な役割を認識し、社会課題の解決と企業価値の向上に積極的に取り組み、経営理念である「優れた医薬品を通じて、人々の健やかな生活に貢献する」「富士製薬工業の成長は、わたしたちの成長に正比例する」を着実に実践するために、持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現に向けてビジネスモデルを持続させる上で対処すべき重要課題であるマテリアリティを特定しております。

当社は、気候変動・環境への対応を経営上の重要課題と認識しています。その諸課題については、TCFD推進事務局がリスク管理委員会、サステナビリティ委員会および環境委員会と連携し、各委員会の分掌にしたがって、気候変動関連リスクと機会、業務執行への影響について協議し、代表取締役社長に報告します。取締役会は原則として気候変動に関するリスク管理の状況と対応について代表取締役社長より報告を受け、全社的な経営に係る施策について決議し、監督をします。
代表取締役社長は、気候変動・環境への対応の諸課題の審議や決定に関し、最終的な責任を負っています。
当社では、TCFD提言に基づき、気候変動関連のリスク・機会の把握を目的にシナリオ分析を開始しました。シナリオ分析では、国際エネルギー機関(IEA)等の科学的根拠等に基づき1.5℃シナリオと4℃シナリオを定義し、2030年時点で事業に影響を及ぼす可能性がある気候関連のリスクと機会の重要性を評価しました。これらのリスクと機会について、今後社内での議論を深め、適時適切に開示してまいります。
詳細につきましては、当社HP 4.環境 TCFD提言への賛同/富士製薬工業株式会社 (fujipharma.jp)をご参照ください。
関連リスク機会の評価指標として、温室効果ガス排出量の算定を行なっております。2021年度からはScope1にあたる「燃料の使用(CO₂)」と、Scope2にあたる「他人から供給された電気の使用(CO₂)」を、2022年度はScope3にあたる「その他の間接排出量(CO₂)」を算定対象としています。具体的な内容につきましては、統合報告書「TCFDに基づく開示:④指標と目標」をご参照ください。
2030年までに富山工場の電力使用量の50%を再生可能エネルギーへ切り替え、2050年のカーボンニュートラルを目指し、継続的な温室効果ガス排出量の把握、富山工場の省エネや太陽光発電システムの導入等による削減施策に取り組んでまいります。
(3)人的資本
① 戦略
当社社員は、創業当初から経営理念に掲げている「会社の成長は、社員の成長に正比例する」の実践として、経営が与える成長機会の場を通じて、社員が様々な挑戦を続けることで各々が自己成長に努めてまいりました。これが当社の人的資本経営の根源であり、結果として、社員一人ひとりの成長と企業価値の向上が連動しているものと考えております。
また、当社は、社員の成長とはスキルだけではなく人間的な成長も必要だと捉え、当社の社員には、人事制度にも取り入れている「徳目」の実践を通じて、一人ひとりの人間的な魅力を高めていくことを期待しております。この人間的な成長については、国籍やジェンダー、個々の特長など様々な違う部分にとらわれないすべての人に共通する考え方であり、多様性を認め、社員一人ひとりが失敗を恐れず挑戦できる環境を整備し、経営理念や徳目の実践を通じて、社員一人ひとりが自発的に成長し、より質の高い仕事に取り組むことで社会への更なる貢献を高めていくことが重要であると考えております。貢献と成長を軸に、当社の価値の最大化に取り組んでまいります。

② 指標及び目標
当社は、女性医療に注力する企業として、女性が働きやすい環境を積極的に整備し、女性の健康課題解決に対する福利厚生を更に充実させること、女性管理職比率を現在の20%から更に大きく引き上げる取り組みを進めて参ります。
2024年9月期までに、不妊治療に対して特別休暇を付与する制度を導入するとともに、低用量ピル、更年期障害治療薬の費用補助、婦人科検診項目の拡大、大腸内視鏡検査費用の補助など実施しております。今後も女性が働きやすい会社のモデルになるような会社を目指して参ります。
well-being な状態の職場は、創造性、生産性、売上の向上に大きく影響するものであります。さらに社員個人のパーパスと会社の方向性を一致させることが、社員のエンゲージメントを高めるとともに、創造的な仕事の源であると考えております。
2024年9月期には、代表取締役会長を中心に全社的にタウンホールミーティングを開催しました。今後も経営者が社員の声を直接聞く機会を設け、経営層の経験、想いなどを共有することで、組織と社員の信頼関係を高め、組織風土改革に努めてまいります。また心理的安全性を高めていき、健全な議論を重ねて新たな価値を創造しやすくするために「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」の4つの因子について、毎年調査を実施しております。2024年9月期は、いずれの指標も前年の数値を上回っております。
また、なぜ当社で働くことを選択し、どう現在を過ごし、将来、さらなる貢献と成長をどう体現していくのか、ときどきの現状を把握するため、エンゲージメント調査を継続して実施しております。以下のような項目の調査を、継続して調査し、エンゲージメント向上につながるよう努め、中期経営計画最終年度である2029年9月期には、これらの肯定回答率70%以上、離職率3%以下を目指してまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは医薬品医療機器等法及び関連法規の厳格な規制を受けており、各事業活動の遂行に際して以下のとおり許認可等を受けております。これらの許認可等を受けるための関連法規及び諸条件の遵守に努めており、現時点におきましては当該許認可等が取り消しとなる事由は発生しておりません。しかし、法令違反等によりその許認可等が取り消された場合等には、規制の対象となる製商品の回収、または製造並びに販売を中止することを求められる可能性等があり、これらにより当社グループの事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、医薬品医療機器等法及び関連法規等に基づく許可等を受けて医療用医薬品の製造・販売を行っております。今後の関連法規改正等により当社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
臨床試験で期待した結果が得られないあるいは行政当局の指摘による開発計画見直しなど当社グループの研究開発での問題のみならず、共同開発先・提携先・委託先等社外関係者で生じた問題により、新規開発品その他の研究開発が計画どおりに進行せずに、計画変更に伴う費用の高騰、あるいは開発期間の延長、開発が中止・中断となる場合があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。対策の一つとして社外との契約においては契約条項に問題発生時の対応策を盛り込むなどリスク被害の最小化に努めています。
当社グループは採算性を考慮して適正な価格で販売するよう努めておりますが、一部品目については、多数のメーカーの競合により著しく市場価格が低下、あるいは、国内新薬メーカーの市場シェア確保のための諸施策により、当社グループが計画する予算を達成できない可能性があります。対策として、原材料調達コストの低減、製造方法の見直しによるコスト削減等、集積性を確保するための施策を部門横断で実施しております。
当社グループは原材料を国内外より調達しており、重要製品の原材料についてはサプライチェーンの複数化を順次進めておりますが、原材料価格の高騰により製品原価に影響を及ぼす場合や、原材料の需給バランスの変動、国内外の規制または原材料メーカーによる品質問題の発生等により、原材料の入手が長期的に困難になり製品を製造・販売することができなくなる場合があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
市販後の予期せぬ副作用の発生、製品に不純物が混入する等の事故、原材料や製法の変更に伴う品質変化、行政当局の規制変更等により、製品の回収又は製造あるいは販売中止を余儀なくされる可能性があります。その場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として品質管理のための「品質マネジメント・レビュー」を導入したほか、予期し得る品質の問題の発生の可能性については信頼性保証部門に設置した専門部署がこれを監視・確認しております。
技術的・規制上の問題、又は水害、火災、地震その他の人災もしくは自然災害により、製品を製造する製造施設・倉庫等において操業停止又は混乱が発生した場合、当該製品の供給が停止し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として社内にリスク管理委員会を設置し、被災時の供給代替計画並びに供給の復旧手順について策定を行っております。
医療用医薬品は、健康保険法の規定に基づき厚生労働大臣の定める薬価基準により薬剤費算定の基礎となる収載価格が定められております。厚生労働省では医療保険の償還価格である薬価基準価格と市場実勢価格との乖離を縮小するため、薬価調査に基づき定期的に収載価格の見直しを行っており、2021年4月以来、毎年薬価改定が実施されるなど医療用医薬品業界における事業環境はますます厳しくなっております。なお、当社製商品につきましては、医薬品の安定供給問題や急激な原材料の高騰などによる不採算品再算定により、全体でプラス1.2%の引き上げとなりました。
後発医薬品の承認時に新薬メーカーより製法特許等の侵害を理由に訴訟が提起される可能性があります。また、製造販売後も製造物責任関連、環境関連、労務関連、その他に関する訴訟が提起される可能性があります。これらの訴訟の結果により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として特許関連については知財部門が、法規関連は法務部門がそれぞれ事前の訴訟リスクのチェックを行い、リスクが顕在化する可能性の低減に努めております。
当社は、各種情報システムを使用しているため、システム障害やコンピューターウイルス、サイバー攻撃等により、業務が阻害される可能性があります。また、個人情報を含め多くの機密情報を保有していますが、これらが社外に漏えいした場合、損害賠償、行政処分、社会的信用の失墜等により、当社の経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。対策として当社全社員を対象とした定期的な情報セキュリティ教育を行っております。
当社では今後の業務拡大に伴う適切な人財確保が必要であると考えております。一方で人財の確保が困難となる場合や、人財の育成が順調に進まない場合、当社の業績及び財務状況等に影響を与える可能性があります。
当社では、創業以来人財を大切にする企業文化を育んでまいりました。この企業文化を軸に、人財の確保や育成に注力しております。
当社ではデジタル化を進めておりますが、対応の遅れ若しくは競合対比で高コストとなり、情報セキュリティ対策が遅れた場合、事業に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、中期経営計画においてデジタル化を進めるべく、営業本部、富山工場・研究開発センター、本社コーポレート機能の3分野において、具体的な取組みを進めております。
当社は契約に基づく独占販売権及び、独占販売権に係る前払金を計上しており、のれんと同様に定期的に減損の兆候の有無について評価が必要となります。減損が生じていると判断される場合には、減損損失の計上により、当社グループの業績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、契約に基づく独占販売権を「販売権」に計上しており、営業本部を当該事業所管部署とし、定期的な報告をもとに協議する機会を設け、販売計画の評価や検証を行っております。
当社では、契約に基づく独占販売権の前払金を「長期前渡金」に計上しております。長期前渡金の計上に際しては、必要に応じて外部専門家による適切な評価を行っており、計上後は毎期、適切に評価を実施しております。
また、事業開発部を当該事業所管部署とし、定期的な報告をもとに協議する機会を設け、開発の進捗状況や販売計画の評価、検証を行っております。
提携先への投資について、上場株式及びデリバティブ債権については基準価格の下落等により、投資有価証券評価損およびデリバティブ評価損を計上し、当社グループの業績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、デリバティブ債権などの計上に際し、必要に応じて外部専門家による適切な評価を行っており、計上後は毎期、適切に評価を実施しております。
当連結会計年度における我が国経済は、不安定な世界情勢が続き原材料価格が高騰するなか円安傾向が続きました。
医療用医薬品業界におきましては、社会保障費の増加に伴う薬価抑制は続き、2021年4月以来、毎年薬価改定が実施されるなどその事業環境はますます厳しくなっております。なお、当社製商品につきましては、医薬品の安定供給問題や急激な原材料の高騰などによる不採算品再算定により、全体でプラス1.2%の引き上げとなりました。
当社グループにおいては、2030年ビジョンとして掲げた「世界の女性のwell-beingの向上に貢献している」「薬の富山からGlobal Marketに進出している」「世界一幸せな会社と社会貢献が一体化している」の3点を実現するための中期経営計画が2024年9月期が最終年度となりました。天然型黄体ホルモン製剤「エフメノカプセル100mg」などの女性医療領域製品の販売に注力するとともに、バイオシミラー事業におきましても、2024年5月にウステキヌマブBS 皮下注45mg「F」を上市、2024年9月に1製品の承認申請をおこなうなど、事業拡大に向け歩みを進めております。加えて2024年9月には本邦で初めて天然型エストロゲンのエステトロール(E4)を含有するドロスピレノンとの配合剤である月経困難症治療剤アリッサ® 配合錠の承認を取得し、販売に向けて準備をしております。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は、46,138百万円(前年同期比12.8%増)となりました。利益面につきましては、女性医療領域の製剤の売上が順調に推移したことや、OLIC社の受託売上が伸長したことなどにより、営業利益は3,880百万円(同0.6%増)となり、営業外収益として前年に引き続きデリバティブ評価益及び為替差益などを計上した一方で、支払利息の増加などにより経常利益は4,445百万円(同1.6%減)、投資有価証券売却による特別利益により親会社株主に帰属する当期純利益は6,146百万円(同78.9%増)となりました。
なお、当社グループは、医薬品事業の単一セグメントであるため、セグメント情報は記載しておりません。
(資産)
当連結会計年度末の総資産額は90,000百万円となり、前期末と比べ4,667百万円の増加となりました。
資産の部においては、流動資産は、棚卸資産が減少した一方で、現金及び預金や受取手形が増加したことにより42,468百万円となり、前期末と比べ3,354百万円の増加となりました。固定資産は、リース資産等の有形固定資産や販売権等の無形固定資産の増加などにより47,531百万円となり、前期末と比べ1,313百万円の増加となりました。
(負債)
負債の部においては、流動負債は、支払手形及び買掛金が減少した一方で、短期借入金や1年内返済予定の長期借入金が増加したこと等により35,797百万円となり、前期末と比べ6,026百万円の増加となりました。固定負債はリース債務が増加した一方で、長期借入金が減少したこと等により8,639百万円となり、前期末と比べ5,744百万円の減少となりました。
(純資産)
純資産の部においては、利益剰余金の増加等により45,563百万円となり、前期末と比べ4,385百万円の増加となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に比べ2,260百万円増加し、4,585百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税金等調整前当期純利益8,276百万円に、減価償却費3,343百万円、棚卸資産の減少額1,522百万円などがあった一方、売上債権の増加額1,997百万円、投資有価証券売却益3,118百万円があったこと等により、営業活動による収入は4,151百万円(前年同期比2,234百万円の収入増)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資有価証券の売却による収入5,356百万円があった一方、有形固定資産の取得による支出2,778百万円、長期前渡金による支出1,605百万円などがあったことにより、投資活動による支出は1,658百万円(前年同期比3,582百万円の支出減)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
短期借入金の純増4,000百万円及びセール・アンド・リースバックによる収入3,070百万円があった一方で、長期借入金の返済による支出4,610百万円、リース債務の返済による支出1,379百万円、配当金の支払額972百万円などがあったことにより財務活動による支出は435百万円(前年同期は1,915百万円の収入)となりました。
(参考) キャッシュ・フロー関連指標
・自己資本比率:自己資本/総資産
・時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
・キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
・インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/支払利息
(注) 1.いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
3.有利子負債は、連結貸借対照表上に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
4.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書上に計上されている「営業活動によるキャッシュ・フロー」、支払利息は、連結損益計算書に記載されている「支払利息」を用いております。
5.マイナスの場合は「―」を記載しております。
当連結会計年度における生産実績は、次のとおりであります。
(注) 1.当社グループは、医薬品事業の単一セグメントであり、セグメント情報を記載していないため、薬効分類別生産実績を記載しております。
2.金額は販売価格で表示しております。
当連結会計年度における商品仕入実績は、次のとおりであります。
(注) 1.当社グループは、医薬品事業の単一セグメントであり、セグメント情報を記載していないため、薬効分類別商品仕入実績を記載しております。
2.金額は仕入価格で表示しております。
当連結会計年度における受注実績は、次のとおりであります。
(注) 1.当社グループは、医薬品事業の単一セグメントであり、セグメント情報を記載しておりません。
2.金額は販売価格で表示しております。
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。
(注) 1.当社グループは、医薬品事業の単一セグメントであり、セグメント情報を記載していないため、薬効分類別販売実績を記載しております。
2.金額は販売価格で表示しております。
3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は,次のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定
を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記情報(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
医薬品事業は医薬品関連法規等の規制を受けており、医療制度改革、後発品の使用促進及び薬価改定等の医療費適正化策の動向、及び主力品の市場における競争状況が経営成績に継続的に影響を及ぼす要因として認識しております。また、経営成績に大きな影響を与える要因となる可能性があるリスクについては、3[事業等のリスク]に記載のとおりであります。
当連結会計年度は、こうした諸要因の影響も計画に織り込み、事業に取り組みました。その結果、「(1)① 経営成績の状況」に記載のとおりの経営成績となったと認識しております。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は上記「(1)③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
財務政策につきましては、当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、必要に応じて内部資金の活用及び金融機関からの借入金により資金調達を行っております。
主な資金需要につきましては、運転資金として、医薬品に係る製造原価、研究開発費を含む販売費及び一般管理費等があります。また、設備資金として、医薬品に係る研究開発及び生産のための設備投資等があります。
当社グループは、医療現場の要望に応えるべく、より付加価値の高い製品の開発を推進しております。
研究開発本部では、東京本社を主要拠点とする開発企画部、臨床開発部と富山研究開発センターを主要拠点とする研究部の3部門体制をとり、医薬品の研究及び開発に取り組んでおります。富山研究開発センターは、注射剤の試作設備、分析設備、固形製剤試作棟を有しており、様々な医薬成分の医薬品開発を進めております。
研究開発分野につきましては、女性医療、急性期医療で使用される新薬、バイオシミラー、ジェネリックなどの医療用医薬品を中心に開発しております。
当連結会計年度には、ジェネリック医薬品として、筋弛緩回復剤1成分3剤の承認を取得しております。
新薬開発では、アリッサ® 配合錠(エステトロール/ドロスピレノン、開発コード:FSN-013)は「月経困難症」の適応にて2024年9月26日に承認取得いたしました。
バイオシミラーについては、Alvotech社と6剤で共同開発中、このうち1剤について2024年9月に承認申請しております。
今後も新薬、バイオシミラー、付加価値のある後発品などの新製品の早期開発及び上市を目指して参ります。
なお、当連結会計年度の研究開発費総額は
主要開発品の状況(2024年9月30日現在)