当社グループにおける経営方針、経営環境及び優先的に対処すべき課題等は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結会社)が判断したものであります。
(1) 第一三共の価値創造プロセスとESG経営
当社グループでは、ESG経営を「ESGの要素を経営戦略に反映させることで、財務的価値と非財務的価値の双方を高める、長期目線に立った経営」と定義し、実践しております。
社会からの多様な要請に応えるため、社内外の様々な経営資源を価値創造プロセスに投入し、「サイエンス&テクノロジー」を競争優位の最大の源泉として、各ステークホルダーや社会への価値を提供しております。この価値創造プロセスを循環させることで、企業と社会の持続的成長を両立させることができると考えております。
中長期的な企業価値へ影響を及ぼす重要度と、様々なステークホルダーを含む社会からの期待の両面から、8つの重要課題をマテリアリティとして特定し、事業に関わるマテリアリティと事業基盤に関わるマテリアリティに整理しております。
第一三共の価値創造プロセス
(2) 2030年ビジョン
ESG経営のもと、新たに「サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバルヘルスケアカンパニー」となることを2030年ビジョンとして掲げました。
パーパス(存在意義)である「世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する」の実現に向けて、当社グループに期待される社会課題の解決(革新的医薬品の創出、SDGsへの取組等)を目指し、われわれの強みである“サイエンス&テクノロジー”に基づき、イノベーティブなソリューション提供に挑戦し続けます。
(3) 第5期中期経営計画(2021年度-2025年度)
ESG経営を実践しつつ、2025年度目標「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」を達成し、2030年ビジョン実現に向けた成長ステージに移行することを目指した計画として、第5期中期経営計画を策定し、4つの戦略の柱を設定いたしました。
① 4つの戦略の柱
(ⅰ) 3ADC最大化の実現
第5期中期経営計画においては、エンハーツ、Dato-DXd、HER3-DXdの3ADC(注1)の最大化の実現が最重要課題となります。
エンハーツについては、アストラゼネカとの戦略的提携を通じた市場浸透と新適応の取得を加速していきます。また、HER2を標的とする競合品に対する優位性を確立するとともに、乳がん治療におけるHER2低発現コンセプトの定着を目指しております。
Dato-DXdについては、アストラゼネカとの戦略的提携を通じて、より早いタイミングでの承認取得とその後の適応追加を目指しております。また、効果的な上市計画を策定・実行するとともに、TROP2を標的とする競合品に対する優位性を確立して参ります。
HER3-DXdについては、自社開発による最速での上市を目指しております。また、効果的な上市計画を策定・実行した上で、がん治療ターゲットとしてのHER3を確立して参ります。
以上の取組に加え、注意すべき副作用の一つである間質性肺疾患(ILD)のモニタリングとリスク分析を通じた適正使用を促進するとともに、製品ポテンシャルに合わせて効率的かつ段階的に要員と供給キャパシティを拡大して参ります。
<2021年度-2024年度の主な進捗>
エンハーツについては、着実な市場浸透、上市国・地域の拡大とHER2陽性乳がんの2次治療、化学療法既治療のHER2低発現乳がん等の新適応の取得により、当初計画を上回るペースで売上収益が拡大いたしました。加えて、化学療法未治療のホルモン受容体陽性かつHER2低発現又はHER2超低発現乳がんの適応を取得する等、更なる新適応の取得や適応がん種の拡大に向けた臨床試験も進捗いたしました。Dato-DXd(製品名:ダトロウェイ)については、内分泌療法及び化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性乳がんの適応を取得し、上市いたしました。加えて、前治療歴(EGFR標的療法を含む)のある非小細胞肺がんの承認申請が受理される等、新適応の取得に向けた開発が進展いたしました。HER3-DXdについては、I-DXd(抗B7-H3 ADC)及びDS-6000(抗CDH6 ADC)とともに、良好な臨床試験データが蓄積し、製品価値極大化を計画するステージに移行いたしました。加えて、ADCの開発競争が一層激化していることを受け、DXd ADCフランチャイズ極大化のためのキャパシティ、リソース、ケイパビリティ増強の必要性が高まってきたことから、より早く、より多くの患者さんにお届けするために、当該3製品について米国メルクとの戦略的提携契約を締結し、同社と共同開発・販促することを決定いたしました。さらに、米国メルクが開発中のMK-6070(DS3280:DLL3を標的とした三重特異性のT細胞エンゲ―ジャー)を上述の戦略的提携に追加し、同社との共同開発を開始いたしました。今後も、効果的な開発投資により、製品価値最大化の実現に向けた取組を着実に進めて参ります。
(注)1.ADC:
Antibody Drug Conjugateの略、抗体薬物複合体。抗体医薬と薬物(低分子医薬)を適切なリンカーを介して結合させた医薬品で、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体医薬を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつ、がん細胞への攻撃力を高めた薬剤。
(ⅱ) 既存事業・製品の利益成長
持続的な成長に向けた投資を継続していくために、がん事業のみならず、既存事業・製品における利益成長も重要な課題であります。
リクシアナについては、収益性の高い、安定した利益を生み出す製品であることから、当該製品より得た収益を、3ADC及び3ADCに次ぐ成長ドライバーへの投資の源泉とすべく、売上収益の更なる拡大に取り組んで参ります。
タリージェ、Nilemdo等の新製品については、適応追加等を通じた、早期拡大を目指しております。リクシアナに加え、これら新製品の早期拡大により、がん以外の新薬事業においても持続的な成長を目指しております。
各国・各地域においては、新薬を軸とした収益構造へのトランスフォーメーションを強化することで、持続的な利益成長を支える事業構造へと転換を図って参ります。
アメリカン・リージェントについては、インジェクタファー、ジェネリック注射剤を中心とした利益成長を目指しております。第一三共ヘルスケア株式会社については、店舗販売や通販事業を中心とした利益成長を目指しております。
<2021年度-2024年度の主な進捗>
リクシアナは、用法及び用量の追加等により製品価値が向上、順調に売上収益が拡大いたしました。さらに、各国・各地域においてタリージェ、ヴェノファー、Nilemdo/Nustendi等も着実に成長を遂げました。加えて、エムガルティ、フルミスト等の新製品の上市や、各国・各地域における独占販売期間満了後の製品譲渡及び日本のジェネリック医薬品事業を取り扱う第一三共エスファ株式会社の株式譲渡等が進展し、新薬を軸とした事業構造へのトランスフォーメーションが進みました。今後も、収益性の高い製品の売上を拡大することで、持続的な利益成長を支える事業構造へと転換を図って参ります。
(ⅲ) 更なる成長の柱の見極めと構築
持続的成長を図るため、3ADCに次ぐ成長ドライバーを見極めるとともに、マルチモダリティ研究戦略によりポストDXd ADCモダリティを選定することも重要な課題であります。
3ADCに次ぐ成長ドライバーについて、DXd ADCファミリー、第二世代・新コンセプトADC、改変型抗体等の領域から見極めて参ります。
様々なモダリティ技術の中から、持続的成長のためのポストDXd ADCモダリティを選定して参ります。LNP-mRNAについては、新型コロナウイルス感染症以外でのワクチンにも活用して、ワクチン事業の成長につなげて参ります。
<2021年度-2024年度の主な進捗>
I-DXd、DS-6000については、良好な臨床試験データが蓄積し、製品ポテンシャルが一層高まったことから、3ADCに次ぐ成長ドライバーと位置づけ、将来の更なる成長に向けて、エンハーツ、Dato-DXd、HER3-DXdとともに、両製品の開発を加速しております。I-DXdについては小細胞肺がん、DS-6000については卵巣がんを対象とした臨床試験が進展するとともに、両製品について多様ながん腫における探索的試験を開始いたしました。当社の6番目のDXd ADCである DS-3939(抗TA-MUC1 ADC)については、固形がんを対象とした臨床試験を実施しております。mPBD(注2)ADCであるDS-9606(抗CLDN6 ADC)について、固形がんを対象とした臨床試験における良好な初期データを獲得するとともに、COVID-19に対するmRNAワクチンの承認を取得し、供給する等、ポストDXd ADCモダリティ選定も進展いたしました。今後も、当社独自のADC技術等を用いた更なる成長の柱の見極めと構築を進めて参ります。
(注)2.mPBD:
modified pyrrolobenzodiazepine
(ⅳ) ステークホルダーとの価値共創
長期視点でESG経営を進めていく上で、患者さん、株主、社会・環境、従業員といったステークホルダーとの価値共創も重要な課題であります。
3ADCによる様々ながん種への展開や、希少疾患の比重が高まる中、医薬品開発のみならずバリューチェーン全体で、患者さんを中心としたマインド(Patient Centric Mindset)による取組を強化し、患者さんへの貢献を果たして参ります。
持続的な企業価値の向上を図るため、バランスのとれた成長投資と株主還元を実現して参ります。
脱炭素社会、サーキュラーエコノミー、自然共生社会といった、社会・環境課題に対し、研究開発から営業に至るバリューチェーン全体で、環境負荷の低減に向けた様々な取組にチャレンジし、社会・環境へ貢献して参ります。
平時における自社生産拠点からの季節性インフルエンザワクチン等の安定供給に加え、COVID-19及び将来の新興・再興感染症ワクチンにも応用可能な技術の確立、将来のパンデミック時のワクチン供給体制の整備を通じて、社会へ貢献して参ります。
グループ共通の核となる行動様式(Core Behavior)を定め、グループ全体で実践していくことで、独自の企業文化「One DS Culture」の醸成を図り、グローバル組織と人材における強みをさらに強化して参ります。
<2021年度-2024年度の主な進捗>
COVID-19に対するmRNAワクチンであるダイチロナ筋注(1価:オミクロン株 JN.1)の日本における供給等、パンデミックリスクへの対応が進捗いたしました。また、事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーにすることを目指す国際的イニシアチブである「RE100(注3)」に加盟するとともに、日本の自社拠点における使用電力の再生可能エネルギー化等、環境課題に対する取組が進展いたしました。One DS Cultureの醸成に向けて、経営層と全従業員によるワークショップ等を通じた当社グループ共通の核となる行動様式であるCore Behaviorへの理解を深め、体現する取組を促進しております。引き続き、ステークホルダーとの価値創造プロセスの強化に向けた諸施策を実践して参ります。
(注)3.RE100:
国際環境NGOであるThe Climate Groupと企業に気候変動対策に関して情報開示を促しているCDPによって運営される、企業の再生可能エネルギー100%を推進する国際的イニシアチブ
② 戦略の実行を支える基盤
4つの戦略の柱の実行を支える基盤を強化するため、DX推進によるデータ駆動型経営を実現するとともに、先進デジタル技術による変革を進めて参ります。加えて、新たなグローバルマネジメント体制により迅速な意思決定を実現して参ります。
<2021年度-2024年度の主な進捗>
社内外のエンハーツの統合データ分析が可能な分析基盤をグローバルで運用開始いたしました。オンコロジービジネスユニットを新設し、がん領域における治療体系や市場環境の急速な変化に対し、ビジネスとサイエンスの両面から迅速に対応いたしました。今後も、業容の変化と拡大にあわせてデータ駆動型経営を加速するとともに、グローバルマネジメント体制を強化して参ります。
③ 株主還元方針
利益成長に応じた増配や機動的な自己株式取得を実施することで、株主還元の更なる充実を図って参ります。
KPIとして、株主資本を基準とする株主資本配当率(DOE)を採用し、安定的な株主還元を行う方針とし、2025年度のDOEは株主資本コストを上回る8%以上を目標に掲げ、株主価値の最大化を目指しております。
<2021年度-2024年度の主な進捗>
エンハーツの成長による利益成長や米国メルクとの戦略的提携の契約時一時金の受領等を受けて、2022年度から2024年度にかけて、3年連続の増配を決定いたしました。
・1株当たり年間配当金の推移
2021年度:27円、2022年度:30円、2023年度:50円、2024年度(予想):60円
株主還元の更なる充実と資本効率の向上等を図るため、2024年度に2回にわたる自己株式取得を決定・実施いたしました。
・取得自己株式
2024年4月~2025年1月 取得株数:約3,871万株、取得総額:約2,000億円
2025年3月~2025年4月 取得株数:約1,397万株、取得総額: 約500億円
引き続き、利益成長に応じた増配や機動的な自己株式取得により、株主還元の更なる充実を図って参ります。
④ 計数目標
第5期中期経営計画における2025年度の計数目標として、売上収益1兆6,000億円(うち、がん領域において6,000億円以上)、研究開発費控除前コア営業利益率40%以上、ROE16%以上、DOE8%以上を目指しております。なお、2025年度の為替レートの前提は1USD=105円、1EUR=120円であります。
当社グループ(当社及び連結会社)は、企業行動憲章に基づき、事業と一体となってサステナビリティ課題へ取り組むとともに、持続的な成長に向けた重要課題(マテリアリティ)を特定し、ESG経営を推進しております。当社グループを取り巻く環境変化や社会要請・期待を踏まえ、毎年、マテリアリティの改善を図るとともに、環境・安全衛生やコンプライアンス等の課題に特化した各委員会を通じてグループ全体での取組を推進しております。
なお、本項における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する考え方
① ガバナンス
当社グループでは、CEOの指示に基づき、Head of Global Corporate Strategyが、サステナビリティ課題のうち、人権、Environment, Health and Safety(以下 EHS)、サステナビリティ情報開示、社会貢献に関するグローバル推進体制を構築・運営し、各組織・各地域における施策を全社戦略に統合させております。これらの課題に特化した、Head of Global Corporate Strategyを委員長とするサステナビリティコミッティ(原則年2回以上開催)を設置し、経営会議の諮問機関として、全社戦略・方針について審議するとともに、年度・半期毎の計画・実績をモニタリングしております。サステナビリティコミッティにおいて審議・報告された全社戦略・方針、ならびに重要課題(マテリアリティ)は、経営会議において審議・報告されます。
なお、サステナビリティ課題のうち、当社グループ全体の企業倫理・コンプライアンス推進活動については、グローバル エシックス&コンプライアンス コミッティ(原則年1回以上開催)において審議・報告のうえ、取締役会に報告されます。
サステナビリティコミッティは、2024年度は1月と3月に開催され、EHSでは2025年度の計画やネットゼロ移行計画の策定状況、サステナビリティ情報開示ではSSBJ(注1)・CSRD(注2)新基準への対応計画、人権では人権アセスメント結果について議論し、その後EHS及びサステナビリティ情報開示について経営会議へ報告いたしました。
(注)1.サステナビリティ基準委員会(Sustainability Standards Board of Japan)
2.企業サステナビリティ報告指令(Corporate Sustainability Reporting Directive)
② 戦略
当社グループでは、当社グループの中長期的な企業価値に影響を及ぼす重要度と、当社グループのさまざまなステークホルダーを含む社会からの期待の両面から、中長期的取り組み課題を抽出し、取締役会メンバーによる複数回の議論を経て、2020年3月、持続的な成長に向けて取り組むべきマテリアリティを特定いたしました。そして、第5期中期経営計画と連動したマテリアリティ毎の長期目標、取り組み指標「KPI」を設定し、2021年4月に公表しております。
③ リスク管理
第一三共グループでは、組織の目的・目標の達成を阻害する可能性を有し、かつ事前に想定し得る要因をリスクとして特定し、企業活動に潜在するリスクへの適切な対応(保有、低減、回避、移転)を行うとともに、リスクが顕在化した際の人・社会・企業への損失を最小限に留めるべく、リスクマネジメントを推進しております。このリスクマネジメントには、気候変動、人権、環境、サプライチェーンなどのサステナビリティに関連するリスクも包括的に含まれております。
④ 指標及び目標
各マテリアリティの長期目標、実現に向けた課題、KPI指標、2025年度の目標値、2024年度実績はコーポレートウェブサイトに示しております。
《コーポレートウェブサイト 関連ページ》
株主・投資家の皆さま- IRライブラリ- 第一三共株式会社 (daiichisankyo.co.jp)
(2025年7月公表予定)
毎年、KPI目標への取組の情報開示を通じ、ステークホルダーとの建設的な対話から得られた意見や考察、またESG評価結果等から、新たな課題を抽出し、取締役会・経営会議での議論・承認を経て、マテリアリティの特定・進化・KPI設定を行っております。
《コーポレートウェブサイト 関連ページ》
マテリアリティとSDGsへの貢献 - 第一三共株式会社 (daiichisankyo.co.jp)
(2)人的資本への取組
当社グループは、「人」を最重要な「資産」であると位置づけております。パーパスの実現に向け、最重要資本である人的資本の拡充を推進し、持続的な価値創造の原動力としております。
① ガバナンス
経営と一体となった人材マネジメントを運営・推進するため、CHRO(Chief Human Resource Officer)をトップとするグローバルでの人事組織体制を構築・運用しております。経営会議にCHROが参画し、経営・ビジネス上の進捗や課題を直接的に把握した上で、グローバルでの戦略・施策立案を行っております。また、四半期ごとにGHRLTM(Global Human Resource Leadership Team Meeting)を実施し、戦略・施策の遂行状況をモニタリングしております。
② 戦略・施策
経営戦略と連動した人材戦略の実行に向け、人的資本を「Power of individual:成長し続ける個人の強み」「Power in numbers:強化領域への継続的人材供給」「Power of synergy:人や組織のシナジーを創出する環境・仕組み」の3つの要素から捉え、各要素をモニタリングしながら、施策の効果検証や人的資本配分・拡充のさらなる高度化に取り組んでおります。また、人材戦略の意思決定におけるグローバル共通の上位概念・指針として「ピープルフィロソフィー」を制定しております。
(注)S&T:サイエンス&テクノロジー
DX:デジタルトランスフォーメーション
I&D:インクルージョン&ダイバーシティー
Power of individual × Power in numbers
経営戦略の実現に向け、競争優位の源泉であるサイエンス&テクノロジー(S&T)の強化を軸に、グローバル全体で人材獲得を強化しております(2024年度は主として日本で267名、米国で609名、欧州で329名のキャリア人材獲得)。主な研究機能がある日本では、新卒採用における博士人材獲得にも継続的に取り組んでおります(2022年度18名、2023年度21名、2024年度31名)。また、事業環境の変化に伴うスキルニーズの変化に的確に対応すべく、国内では、バイオ、グローバルビジネス並びにDXを強化領域とし、独自の育成プログラムと組み合わせて当該領域への人員再配置を実行しております。さらに、グローバル共通のラーニングプラットフォームとしてLinkedInラーニングツールを導入し、当社グループのパーパス・ミッションや、グローバルで協働するために必要な行動・スキルに関するコンテンツを展開しております。グローバルでの協業を牽引・推進し、各国間の人材シナジーを創出するべく、海外グループ会社への出向プログラムも充実させており、2024年度末時点で、国内から米国へ140名、欧州へ58名、アジア中南米へ26名の社員が出向しております。海外グループ会社から国内にも21名の社員が出向しており、双方向での人材交流並びにグローバル人材の育成につなげております。
加えて、当社グループの持続的成長に極めて重要となるグローバル経営マネジメント・リーダーシップの育成を目的に、2024年度にDS Academyを創設し、2025年5月までに日本・ドイツ・米国の各拠点にて3回のパイロットセッションを実施いたしました。国内では、2024年度に自律的なキャリア形成を目的に、英語力向上意識醸成プログラム並びに各種DXスキル育成プログラムを企画実行し、それぞれ2,036名並びに1,239名の社員が受講いたしました。並行して、より実践的な英語でのコミュニケーションリテラシー向上を目的に、グローバルスキル研修を企画実行し、340名の社員が受講を完了いたしました。
Power of synergy
・One DS Cultureの浸透
当社グループでは、社員一人ひとりがグローバルな視野をもって考え、行動し、より広く患者さんや社会へ貢献するための基盤となる企業文化「One DS Culture」の醸成に取り組んでおります。その実現に向けて、社員の行動の指針・原則として3つのCore Values、社員が実践すべき行動様式として3つのCore Behaviorsを策定しております。毎年度、各組織からカルチャーアンバサダーを任命し、Core Values/Core Behaviorsの実践を通じたCulture浸透を加速しております。この浸透度合いを確認・検証する目的で、グローバル全体でエンゲージメントサーベイ(One DS Voice)を実施し、当社グループの強みや課題を特定のうえ、改善策を実行しております。なお、2024年度におけるエンゲージメントサーベイ回答率は87%、15項目においてスコアの上昇がみられました(総合値は76、対グローバルベンチマーク(製薬企業を含むグローバル企業約1,000社)+2)。また、グローバル全体でOne DS Cultureを醸成し、当社グループのパーパス・ミッションを共に実現するため、COO・CHROが国内外の各拠点を訪問し、社員とのダイレクトなコミュニケーションを行いました(2023年度から2024年まで計21社、約17,500名の社員を対象に実施)。
・インクルージョン&ダイバーシティー
当社グループでは、国籍・人種・性別・年齢などの属性面に加え、考え方・価値観・ライフスタイルなども異なる多様な社員が共存し、そのすべての社員が自分らしく、最大限に実力を発揮することが、グローバルでの事業拡大やイノベーション創出に繋がると考えております。Core Behaviorsの1つに「Be Inclusive & Embrace Diversity」を定めるとともに、2022年3月の国際女性デーには「Global I&D Statement」を策定し、社内外に当社のI&Dに対する姿勢や考え方を明示いたしました。
国内においても、「2025年度末までに女性管理職15%以上」という数値目標を設定し、各組織長との対話会や、全社アンケートの実施・分析などを通じた各種施策を実行し、2025年4月に1年前倒しで目標を達成いたしました。これらの活動が評価され、Forbes JAPAN主催の「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2024」を受賞、また経済産業省と東京証券取引所が選定する「令和6年度Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業」にも選定されました。
社内の女性活躍推進の活動として、2016年度に、女性マネジメント職によるネットワーキング活動(Shining Women’s Advancement Network; SWAN)を開始し、経営陣がオーナーとなって、経営陣とSWANメンバーとの交流や、女性マネジメント職同士の経験や悩みの共有機会などを作るなど、次世代女性リーダー育成支援にもつなげております。さらに、Healthcare Businesswomen’s Association(HBA)に海外グループ会社とともに加盟し、より広い視野でグローバルでのI&D連携を加速するとともに、グローバル全体で活躍した女性社員を称え、表彰する機会としてもこのHBAを活用しております。
LGBTQ+の社員にとっても働きがいのある職場環境の醸成を目的に、国内では支援制度の導入や外部相談窓口の設置などを行っております。また、LGBTQ+当事者のための匿名コミュニティとして「レインボーチャット」を開設し、価値観が近い社員同士が気兼ねなく悩みを相談し合える環境を提供しております。さらに、海外グループ会社では、グローバルリーダーからのビデオメッセージ発信や、各種セミナーの実施などを通じて、すべての社員の帰属意識(Belonging)向上につなげております。これらの活動が評価され、LGBTQ+などのセクシュアルマイノリティに関する取組の評価指標「PRIDE 指標 2024」において、4年連続で最高位の「ゴールド」を受賞いたしました。
仕事とライフイベントとの両立支援においては、男女ともに育児参加できる職場環境の整備と風土醸成を目指しており、より高い水準で取組を実施している証として、2019年にプラチナくるみんの認定を取得いたしました。また、男性育休取得率100%を目標に掲げ、上司との面談機会、プレママ・プレパパセミナーや育休復職者フォーラムの開催、事業所内保育所の設置、ベビーシッターサービスの利用補助など、多様な支援を行っております。介護支援においても、介護によって離職することなく、安心して働き続けられる環境づくりを進めております。介護のための休業制度に加え、毎年、介護セミナーならびに個別相談会を開催し、介護に対するリテラシーの向上に努めております。これらの施策は、後述するワークライフバランス推進にも寄与しております。
(ご参考)
・インクルージョン&ダイバーシティーに関する当社ホームページ
https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/our_workplace/inclusion-diversity/
・令和6年度「Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業」に選定
https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/performance-reports/news/detail/index_7242.html

・健康経営・ワークライフバランス推進
(i)社員の健康と安全
「健康宣言・安全宣言」を社内外に発信するとともに、必要な投資を積極的に行い、社員の健康・安全の保持・増進に取り組んでおります。
<健康宣言・安全宣言> 「当社グループの企業理念及びビジョンの実現に向けて会社と従業員が共に成長を遂げるためには、従業員の心と体の健康・安全が不可欠であり、当社グループは、全ての従業員が安全に就業し、健康を保持・増進するための環境づくりに積極的に取り組むことをここに宣言します。」
社員の健康と安全については、経営会議にてグローバル全体での健康・労働安全に関する方針・目標・施策を定めて推進しております。国内グループ会社においては、最高健康経営責任者である社長をトップとした健康経営推進体制にて、会社と労働組合で合意した安全衛生管理の中期方針に基づいた安全衛生施策を推進しております。具体的には、経営課題に対応した施策と期待成果を「健康・労働安全戦略マップ」として策定し、「社員一人ひとりの生産性向上」と「安全で快適な職場形成」の2つを解決すべき経営課題と定めて、国内での重点領域を生活習慣病・がん・メンタルヘルス・運動機能の4領域として、安全衛生施策を推進しております。各施策の効果については、高ストレス者率や喫煙率などの評価指標を設定し、評価に基づきさらなる改善を図っております。これまでの積極的かつ継続的な活動が評価され、経済産業省が実施する「健康経営度調査」において、5年連続で「健康経営優良法人~ホワイト500~」の認定を受けております(第一三共単体としては8年連続)。
(ご参考)第一三共グループの「健康経営推進体制」、「健康・労働安全戦略マップ」、「評価指数」等については、以下を参照
https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/our_workplace/employee_health/
(ご参考)「健康経営優良法人ホワイト500」に認定
https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/performance-reports/news/detail/index_7234.html

(ⅱ)ワークライフバランスの推進
国内グループでは、仕事と生活の好循環を生み出すための「ワークライフサイクル(WLC)」というコンセプトを提唱しております。このWLCの実現に向け、時間や場所に縛られない柔軟な働き方の推進(多様な労働時間制度・テレワーク制度など)や仕事とライフ(育児・介護・治療など)の両立支援、キャリア形成支援(キャリア支援休職・副業など)に加え、カフェテリアプランによる社員個々人のニーズに応じた両立支援(育児・介護・医療・自己研鑽など)や各種セミナーの実施などに取り組んでおります。また、当社グループのグローバル化の進展に伴い、国・地域を跨いだコミュニケーションや会議の機会が増えていることを踏まえ、グローバルでの働き方に関する課題解決を図る「Global Work Style」プロジェクトを2021年度に開始いたしました。グローバル会議に参加する際の指針となる「Global Meeting Guideline」や国・地域を跨る共通施策「Global Meeting Measures」を、それぞれCEOメッセージとともにグローバル展開しております。組織独自で設定・運用している「No meeting day」や「De-stressor week」の推進支援も行っております。
(ご参考)ワークライフバランスに関する当社ホームページ
https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/our_workplace/worklife-cycle/
・グローバル共通の人事基盤構築
パーパス実現に向けたグローバル全体での連携強化・シナジー創出を目的に、グローバル共通の人事制度(評価、等級、報酬制度)並びに人事情報システムの構築・導入を進めております。2024年度より日本・米国・欧州にて先行して評価制度を導入いたしました。国内で実施した評価制度に関するサーベイでは、制度に対する肯定的回答比率が81%であり、導入初年度において制度が適切に理解・運用されていることを確認いたしました。2025年度以降も段階的に等級・報酬制度及び人事情報システムをグローバルで導入し人事基盤を整備していきます。また、日本国内において、第一三共グループ共通の報酬ポリシーに基づき、中長期的な企業価値向上に対する動機付けとインセンティブ付与等を主たる目的として、一部幹部社員を対象に自社株式を用いたLTI(長期インセンティブ)制度を導入いたしました。
③ リスク管理
当社グループが事業活動を推進し事業目標を達成する上では、各職務に必要な高度な専門性と高い業務遂行能力を持った人材を採用・育成・確保する必要がありますが、採用市場の競争激化などにより、これらの人材を十分に確保できない場合には、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。
その対応策として、事業目標を達成する上で必要となる人材の要件を明確に定義し、計画的な採用活動を強化するとともに、社内教育プログラムを始めとする多様なアプローチを活用して人材の育成・確保を図っております。また、先述の通り、グローバルでの人材活用を最大化するため、グローバル共通の人事制度並びに人事情報システムの構築・導入を進めております。さらに、「One DS Culture」の醸成やInclusion & Diversity (I&D)を推進しながら、グローバル共通のエンゲージメントサーベイによる分析・改善施策を実施しております。
④ 指標及び目標
先述の「事業基盤マテリアリティ」の「競争力の優位性を生み出す多様な人材の活躍推進」として、以下のKPIを設定し、経営会議や取締役会にてモニタリングしております。
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※部所長或いはそれと同等以上の役職にある女性社員 |
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企業風土・職場環境に関するエンゲージメントサーベイ肯定的回答率 |
2025年度目標:80%以上もしくは2021年度比10%向上 |
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育成・成長機会に関するエンゲージメントサーベイを通じた肯定的回答率 |
2025年度目標:80%以上もしくは2021年度比10%向上 |
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社員一人あたりの教育投資額 |
実績値の公表 |
(ご参考)ESGデータ(2025年9月公表予定)
https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/performance-reports/esg-data/
(3) 気候変動への取組(TCFD(注)に基づく開示)
当社グループでは、地球温暖化や異常気象などの気候変動を、人々の生活やビジネスに影響する重要な課題と認識しております。このため、様々な環境問題に対して責任ある企業活動を遂行するために、第一三共グループ企業行動憲章及び第一三共グループEHSポリシーに基づき、環境経営を推進しております。 また、2019年5月にTCFD提言への賛同を表明し、2020年にはガバナンスやシナリオ分析結果など、TCFDの開示枠組みに沿った情報開示を行いました。さらに2021年10月に改訂されたTCFD提言に対応した情報開示を進めると共に、グローバルな課題である気候変動に積極的に応えていくため、気候変動に関するガバナンスや事業戦略の更なる強化を目指します。
(注)Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース
① ガバナンス
企業の持続可能な発展を目指し、環境、社会、ガバナンス(ESG)に関する戦略や方針を策定し、実施するため、Head of Global Corporate Strategy を委員長とし、各ユニット/コーポレート機能長などを委員として構成する「サステナビリティコミッティ」を設置しております。
サステナビリティコミッティでは、サステナビリティ課題のうち、人権、EHS、サステナビリティ情報開示、社会貢献について戦略や方針を議論しております。EHSについては年2回EHSマネジメントに関する方針や目標設定、活動の審議・報告を実施しております。そのうえで経営会議にて審議・報告され、重要事項は取締役会に報告されます。
2024年度はネットゼロ移行計画策定及びScope3削減に向けたビジネスパートナーエンゲージメントの推進などについて、サステナビリティコミッティで審議・報告いたしました。
② 戦略
地球への環境負荷が増大する中、持続可能な社会が実現されなければ、企業活動を行っていくことはできません。特に、生命関連製品である医薬品は、気象災害の激甚化に伴うサプライチェーンの寸断や医薬品供給能力の低下は大きな事業リスクであり、社会リスクでもあります。したがって、当社事業の環境負荷低減・脱炭素化を推し進めていくと同時に、ビジネスパートナーとの協働によりサプライチェーン全体の脱炭素化も推進し、カーボンニュートラルの達成と物理的影響を緩和することが重要であると考えております。
一方で、CO2排出量は事業からの直接排出量(Scope1、Scope2)は少なく、サプライチェーンからの排出量(Scope3)が多いことが特徴です。このような認識に基づき、気候変動に伴う当社ビジネスへの影響を把握し、当社のレジリエンス(強靭性)を明確にするため、シナリオ分析を実施いたしました。
(ⅰ)シナリオ分析の方法
シナリオ分析においては、2021年度に部門横断のタスクチームを立ち上げ、関係部門に対し、シナリオ分析の概要及びIEA(国際エネルギー機関)・IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が公表するネットゼロシナリオなどに関する勉強会を実施し、2030年以降の事業リスク及び機会について検討を行いました。IEA・IPCCのシナリオを用い、「移行」及び「物理」双方について、バリューチェーン全体のリスク・機会を洗い出し、洗い出されたリスク・機会については、2022年度のEHS経営委員会(現・サステナビリティコミッティ)で審議・承認されました。具体的には「調達」「直接操業」「製品・サービス需要」の観点からリスク・機会を洗い出し、6つに分類いたしました。IEA・IPCCの脱炭素化シナリオ(1.5℃)と、脱炭素化が達成されないシナリオ(4℃)を選択したのは、移行リスク・物理的リスクの両方において、その極端なケースを想定し、予め備えることが重要であると判断したためです。それぞれについて、「発生頻度」「事業影響・財務影響」「投資家の関心有無」の観点から2030年と2050年までを対象に総合的なリスク・機会の評価を実施し、事業への潜在的影響及びレジリエンスを整理いたしました。
(ⅱ)シナリオ分析の結果と第一三共のレジリエンス
1.5℃シナリオ(移行が進んだ世界)
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環境の変化 |
リスク・機会 |
当社グループへの潜在的影響 |
影響度 (注)1 |
当社グループのレジリエンス |
事業リスク (注)2 |
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脱炭素関連の政策・法規制強化 |
炭素税導入 |
2030年時点の炭素税が130$/t-CO2に上昇した場合の影響は限定的。 |
小 |
財務的インパクトは限定的であり、1.5℃目標に引き上げた気候変動対策を推進することでさらに軽微なものにしていく。 |
低 |
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再エネ導入に伴う炭素税負担回避 |
将来的な炭素税導入・上昇の対策として、再エネ調達による排出量削減が重要。 |
小 |
再生可能エネルギーを積極的に活用することにより、2030年時点の年間の炭素税負担を回避。 国内外事業所の電力は、2030年度までに100%再生可能エネルギー由来に転換する。 |
機会 |
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再エネ設備導入コスト増 |
エネルギー源は電気・ガスが中心。地域によっては既に再エネ電力を調達。 既存の電力をすべて再エネにした場合の影響は限定的。 |
小 |
再エネ・省エネ設備の追加費用は低下傾向であり、対策の推進によりコスト削減に繋げる。 |
低/機会 |
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エネルギーコスト等増加 |
エネルギー事業会社の脱炭素対策が実施されるが、対策自体の導入・運用コストが増加すると将来的なエネルギー調達コスト増を予想。 |
小 |
化石燃料由来のエネルギーコストの上昇が予想されるが、現時点では影響は限定的。 |
低 |
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調達コストへの価格転嫁 |
ビジネスパートナーが自らの炭素税負担を価格転嫁することで調達コストが上昇する可能性があり、供給網全体での排出量削減が重要。 |
中 |
ビジネスパートナーとの協働により、Scope3の削減を進め、炭素税負担の回避に繋げることで調達コストの上昇を抑える。 |
低/機会 |
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企業評価に対する脱炭素への取組の影響増大 |
企業価値の増大 |
脱炭素への取組がESG投資家から評価され、株価上昇など企業価値向上。 |
大 |
脱炭素社会に向けた取り組み、TCFD提言への積極的な対応、株主・投資家の期待に応える情報開示を行うことで評価向上に繋げる。 |
機会 |
4℃シナリオ(物理的影響が大きくなる世界)
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環境の変化 |
リスク・機会 |
当社グループへの潜在的影響 |
影響度 |
当社グループのレジリエンス |
事業リスク |
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気象災害(大雨・洪水・台風)の発生頻度増、規模拡大 |
サプライチェーン寸断 |
安定供給に支障をきたすリスクの高まり。 生産・出荷不能により、工場停止や売上減などのリスク。 |
大 |
在庫管理を強化し、災害時でも安定供給に努める 複数社からの購買を実施、複数社から購買できていない原料については今後検討していく。 |
中 |
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自社拠点の一時操業停止 |
重要な研究・製造拠点が浸水した場合。 製造拠点の一部は河川に近くとも浸水の可能性は低いが、交通寸断などにより一時操業停止。 |
大 |
事業継続計画(BCP)の観点から拠点の水災リスク評価を実施し、強靭化を進めている。 緊急事態訓練における洪水対応・減災対策を強化し、水災マニュアルの整備・実証を担保してレジリエンスを高める。 |
低 |
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異常気象(浸水)による不良在庫化 |
物流拠点などの浸水に伴い、操業停止に加えて製品在庫も被害を受ける可能性。 |
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気温上昇 |
気候変動に伴う疾患増加等 |
悪性黒色腫、循環器、呼吸器疾患、各種熱帯病などに対する関連医薬品の需要拡大と社会からの要請・期待の高まり。 疾病構造の変化に伴う既存製品の需要減少の可能性。 |
大 |
需要拡大に応える生産ラインの確保、在庫管理強化に努める。 疾病構造の変化やパンデミックも含め、アンメットメディカルニーズ・社会要請の高い疾患に対する研究開発を外部リソースとの連携も合わせ検討する。 |
中/機会 |
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空調設備のコスト増 |
本社、研究開発、製造拠点ともに屋内作業が基本であり、気温上昇に伴い空調コスト増が予想されるが影響は限定的。 |
軽微 |
コスト増は吸収可能な範囲であり、財務影響は軽微であるが、引き続きエネルギー効率改善に努める。 |
低 |
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保険料/BCPコストの増加 |
気温上昇に伴う風水害の激甚化により、現在でも火災保険料が上昇傾向にある。ただし、将来的な保険料の上昇見通しは限定的。 |
軽微 |
日本では4℃上昇時、洪水発生頻度が4倍上昇すると予想されているが、その結果、保険料が数倍に上昇したとしても財務影響は軽微である。 |
低 |
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環境の変化 |
リスク・機会 |
当社グループへの潜在的影響 |
影響度 |
当社グループのレジリエンス |
事業リスク |
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水不足 |
自社拠点の一時操業停止 |
最も取水リスクの高い工場である中国とブラジルでの操業停止の可能性。 その他地域で想定を超える短期的な渇水の可能性。 |
中 |
雨水タンク設置・リサイクル水活用などの渇水対策を推進する。 長期に渡り渇水となった場合、薬事規制の動向をみつつ、他拠点活用・製造委託などの緊急時供給対応を検討する。 |
中 |
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生物多様性の喪失 |
天然化合物由来製品の生産性低下 |
生物多様性の喪失により原料が入手できず生産が止まった場合の損失を予想。 |
中 |
数年分の原料在庫は確保されており、リスクが顕在化する前に迅速な対応を実施する。 |
低 |
(注)1.影響度は、軽微(1億円未満)、小(1億円~50億円)、中(50億円~100億円)、大(100億円~300億円)を基準に評価
2.事業リスクは影響度と発生頻度を考慮し総合的に評価
事業活動に対する直接的な移行リスクは限定的であると認識しておりますが、サプライチェーンについては、今後、炭素税や移行対策などのコスト上昇がリスクとして考えられます。また、物理的リスクについては、気象災害などの激甚化による安定供給に懸念があります。このような分析結果に基づき、移行リスクについてはこれまでの省エネ対策の推進に加え、再生可能エネルギーの活用や脱炭素技術の導入、ビジネスパートナーとの協働による炭素税などの負担回避を通じたコスト低減を機会として創出して参ります。また、物理的リスクについては、水害対策を含めたBCPの深化、サプライチェーンの安定性を高める予防策の実施、多様性の確保、支援策の確保、代替策の確保等の対策を実施することで、当社グループにおける毀損を回避し、持続的な企業価値向上を目指していきます。 シナリオ分析で評価・特定された重要なリスク対策については、サステナビリティコミッティ及び経営会議においてグループ全体の進捗管理を行って参ります。
③ リスク管理
気候変動や水に関するリスクなど、事業活動の変更を余儀なくされる可能性のあるリスクを把握し、当社グループのリスクマネジメントシステムの一環としてリスク対応策を実施しております。サステナビリティコミッティは、気候変動による影響が当社ビジネスにどのようなリスクと機会をもたらすのか、その財務的なインパクトを評価・管理し、レジリエンスを高める重要な役割を果たしており、重大リスクの懸念がある場合は経営会議に報告、さらに取締役会に報告し、総合的リスク管理に統合されます。加えて、長期的なカーボンニュートラルへの移行を目指し、中期及び短期での目標・実施計画を審議・決定しております。
<リスク>
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1.5℃シナリオ IEA SDS(WEO2021), IEA NZE 2050 |
炭素税導入、再エネ設備導入コスト増、不十分な開示によるレピュテーショナルリスク発生 |
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4℃シナリオ IPCC RCP8.5 |
サプライチェーン寸断、自社拠点の一時操業停止、気温上昇に伴う空調コスト増、取水リスクによる操業困難化、天然化合物由来製品の生産性低下 |
<機会>
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1.5℃シナリオ |
SBT(注)達成に向けた各種施策によるコスト削減や負担回避・投資家からの評価向上 |
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4℃シナリオ |
気候変動に伴い増加する疾患への貢献 |
(注)Science Based Target:パリ協定の水準に整合した、企業が設定する温室効果ガス排出削減目標のこと
④ 指標及び目標
バリューチェーンごとに事業への潜在的影響及び気候関連のリスク・機会を評価・管理するため、第5期中期経営計画におけるKPI及び環境に関する目標を定めております。第5期中期経営計画の進捗を踏まえ、2021年度に気候変動に関わるKPIの見直しを行った結果、Scope1及びScope2については1.5℃の世界に対応した目標水準へ引き上げを行うとともに、2022年度には、Scope3についてもサプライヤーエンゲージメント目標として、サプライヤーに要請するCO2排出量削減目標の設定を「1.5℃水準」へと更新し、2023年6月に、SBTイニシアチブより「1.5℃目標」の認証を取得いたしました。
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CO2排出量(Scope1+Scope2) |
2025年目標:2015年度比42%減、2030年目標:2015年度比63%減 |
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CO2排出量(Scope3、Cat.1) |
2025年目標:2020年度比売上高原単位15%減 |
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ビジネスパートナー・エンゲージメント(Scope3、Cat.1) |
2025年目標:ビジネスパートナーの70%以上が1.5℃水準の目標を設定 |
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再生可能電力利用率 |
2025年目標:60%以上、2030年目標:100% |
CO2排出量 単位:t-CO2
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2022年度 |
2023年度(注)1 |
2024年度(注)2 |
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Scope1 |
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Scope2 |
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(注)1.2023年度の算出値は第三者保証を受けた数値に更新
2.2024年度の算出値は暫定(第三者保証を2025年8月取得・9月公表予定)
算定方法
Scope1:日本の二酸化炭素及びエネルギーの換算係数は、地球温暖化対策の推進に関する法律の数値を使用。日本以外の国々については、排出源地域の当局等の基準あるいはGHGプロトコルに基づく。
Scope2:電力購入の契約に基づく排出係数を用いて算定(マーケット基準)
(ご参考)ESGデータ(2025年9月公表予定)
https://www.daiichisankyo.co.jp/sustainability/performance-reports/esg-data/
当社グループでは、組織の目的・目標の達成を阻害する可能性を有し、かつ事前に想定し得る要因をリスクとして特定し、企業活動に潜在するリスクへの適切な対応(保有、低減、回避、移転)を行うとともに、リスクが顕在化した際の人・社会・企業への影響を最小限に留めるべく、リスクマネジメントを推進しております。具体的には、潜在するリスクへの適切な対応を定めるリスクマネジメント体制を構築するとともに、事業に影響を与えかねない災害等が万が一起こった場合においても事業の継続を可能とするためのBCPや、想定以上のリスクが顕在化した際の損失を最小とするクライシスマネジメント体制を整えております。
(1) リスクマネジメント
当社グループのリスクマネジメントの推進にあたっては、ヘッド オブ グローバル コンプライアンス・リスクマネジメントが当社グループ全体のリスクマネジメントを統括し、事業計画策定・実行の年次サイクルに合わせたリスクマネジメント体制を運営しております。
各ユニット及び機能長はリスクオーナーとして、組織の目的・目標の達成に向け、リスクの抽出、リスクアセスメントの実施、対応策の策定・実行、組織内でのリスクマネジメントに関わる情報提供・教育・啓発等自律的にリスクマネジメントを推進しております。また、ユニット長及び機能長のリスクマネジメント活動の実務を補佐する役割として、ユニット及び機能内でリスクコーディネーターを選任します。リスクコーディネーターは、自組織のリスクマネジメント活動を推進し、グローバル コンプライアンス・リスクマネジメントや他のユニット及び機能のリスクコーディネーターと連携してリスクマネジメントを実施します。
リスクマネジメント事務局では、各ユニットから抽出されたリスクについて、影響度と発生可能性の観点からリスクアセスメントを確認・調整し、企業経営に重大な影響が想定されると評価したリスク項目を、毎年、経営会議及び取締役会において重大リスクとして特定いたします。なおリスクに関する経営会議の広範な意思決定を補完するため、当社グループのリスクについて集中的な議論を行う会議体として「リスクマネジメントコミッティ(以下「RMC」という。)」を2025年度より設立しました。(下図「当社グループにおけるリスクレベル分類の概念図」「リスクマネジメント体制図」参照)。さらに特定した重大リスクごとにリスクオーナーが任命され、関係組織と連携の上、リスク対応策を実行しております。その進捗状況は、年2回のリスクモニタリングを通じて確認され、必要に応じた是正・改善がなされます。重大リスク顕在化の予兆が確認された際は、速やかにCEO及びヘッド オブ グローバル コンプライアンス・リスクマネジメントに情報が報告され、適切な対応を図る体制としております。
(2) 事業継続計画(BCP)
当社グループのBCPは、事業継続へ影響を及ぼす様々な脅威に対処するべくオールハザード型BCPとして整備し、有事においても社会からの要請に応えるために医薬品等の安定供給及び品質確保を可能とする体制、並びに研究開発の継続性を確保できる体制を構築しています。当社グループでは、クライシスの多様化とビジネスのグローバル化に対応するべく、脅威が顕在化した際により適切に対応できるよう継続的な改善を図っています。また、優先して供給する品目については、製薬企業としての社会的責任の大きな製品や、事業継続のために重要な製品等について速やかな供給の実現を目指し、定期的に見直しを行っています。
当社グループでは、新型インフルエンザウイルスの世界的な大流行(パンデミック)に備え、従業員及びその家族の安全を確保し、医薬品の供給を継続することを目的とした「新型インフルエンザ等対策行動計画」を2009年より策定しております。また、当社は、新型インフルエンザ等対策特別措置法において指定公共機関に指定されており、国や地方の行政機関が行う対策に協力する責務があります。医薬品の供給継続により、医療体制の維持に貢献することで、社会的責任を果たして参ります。
(3) クライシスマネジメント
当社グループのグローバルクライシスマネジメントポリシーでは、企業活動に潜在するリスクのうち、顕在化し緊急な対応が必要な事象、発生可能性が極めて高くなった事象を総称して「クライシス」と定義しており、その発生による損失の最小化を図ることを目的に、クライシスマネジメントに関わる基本的事項を定めております。基本方針として、「クライシス発生時は、『第一三共グループの社員及び関係者の生命や地域社会の安全を確保する』『生命関連企業の一員としての責任を全うする』ことを基本に、迅速かつ確実にクライシスマネジメントを展開し、人・社会・企業への影響を最小限に止め、事業の継続や早期復旧を図るべく努力する」ことを定めております。
当社グループでは、クライシスの種類(災害・事故、事件<テロを含む>・不祥事・法令違反、情報管理に関する問題、製品に関する問題)やクライシスの影響度合いに応じて、機動的な対応を可能とする体制を構築しております(下図「クライシス発生時の初期対応」参照)。報告基準や報告ルートを明確に定め、クライシスマネジメント責任者(CEO又はCEOが指名した者)、クライシス初期対応責任者(ヘッド オブ グローバル リスクマネジメント)を設置し、グローバルに影響が大きく、全社対応の必要性があるクライシスについては、ヘッド オブ グローバル コンプライアンス・リスクマネジメントとも当該情報を共有し、迅速かつ的確な初期対応により、事態の拡大防止と早期収束に努めて参ります。また、クライシス収束後は、事後分析により、再発の防止や対応の改善を図って参ります。
(4) 重大リスクとして認識している事項
重大リスク(Material risk;全社レベルで管理するリスク)はRMCにおいて議論され、経営会議にて承認されます。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、次のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結会社)が判断したものであり、既知若しくは未知のリスク、不確実性又はその他の要因により、実際の結果とは乖離する可能性があります。
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① 研究開発・他社とのアライアンス等に関するリスク |
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・リスク 新薬候補品の研究開発には、多額の費用と長い年月が必要ですが、その間に期待された有用性が確認できず研究開発を中止する可能性があります。また、臨床試験で良好な結果が得られても承認審査基準の変更等により承認が得られなくなる可能性があります。さらに、第三者との研究開発に係る提携に関して契約の条件変更・終了等が起こった場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。加えて開発計画の変更により、設備投資が過剰となり投資額を回収できない、あるいは過剰在庫が発生し廃棄費用が生じる可能性があります。 当社は、重点領域であるがん領域において、特にエンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン T-DXd/DS-8201)とダトロウェイ(一般名:ダトポタマブ デルクステカン Dato-DXd/DS-1062)をフラグシップアセットと位置付け、開発の拡大・加速化に取り組んでおり、それぞれ2019年3月、2020年7月にアストラゼネカ社と戦略的提携を開始いたしました。さらにパトリツマブ デルクステカン(HER3-DXd/U3-1402)、イフィナタマブ デルクステカン(I-DXd/DS-7300)、及びDS-6000(R-DXd)について2023年10月に、MK-6070(DS3280)について2024年8月に米国メルク社と戦略提携を開始しました。当該品目について、研究開発・承認申請・上市の遅延、期待した有効性・安全性が得られない、需要に応じた製造体制の構築遅延、あるいは販売計画からの進捗遅延等が生じた場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
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・対応 当社ではアストラゼネカ社及び米国メルク社との戦略的提携を統合的にガバナンスする仕組みとして各種の共同委員会を設置し、ビジョンと戦略の策定、提携事業の損益管理、設備投資面や開発面及び営業面での投資判断、業績と主要マイルストーン管理、グローバルな上市準備等を推進しております。また、当局との継続的なコミュニケーションを通じた薬事リスクの管理・低減にも努めております。 |
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② 医薬品の品質問題や副作用に関するリスク |
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・リスク 医薬品は医薬品医療機器等法を含む国内外の法規制等の下で製造販売されておりますが、品質問題や、予期せぬ副作用発現の問題が発生した場合は、当社グループの医薬品の売上が減少するとともに、製品回収や販売中止、健康被害に関する賠償責任等に係る多額の費用が発生する等、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
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・対応 品質について、安全で高品質の製品を患者さんにお届けし、安心して使用いただくために、GMP(Good Manufacturing Practice: 医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準)及びGDP(Good Distribution Practice: 輸送・保管における医薬品の品質を確保することを目的とした基準)に適合する管理体制を強化し、原材料の調達から保管、医薬品の製造に加え、流通段階も含め一貫した品質保証に取り組んでいます。また、グループ会社の事業所及びビジネスパートナーに対して定期的に監査を行い、適切な品質マネジメント体制の維持・向上及びリスク低減に努めています。 安全性について当社グループでは、国内外の安全管理情報(副作用情報等)を収集し、客観的に評価・検討・分析した結果を医療現場へ情報提供することで医薬品の適正使用を推進しております。さらに、全従業員を対象とした安全管理情報についての研修を毎年実施し、安全管理を徹底することで、患者さんの安全性リスクの最小化に努めております。 |
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③ 海外における事業展開に関するリスク |
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・リスク 当社グループは、医薬品の開発、製造、販売等の分野で、海外においても積極的に事業を展開しており、このような海外事業においては、当該地域における政治不安や経済情勢の悪化等の地政学的な要因、当該地域の法規制や行政指導等に抵触するリスク、現地の労使関係等に関するリスクが存在します。また、米国政権下での輸入関税の変更や各国対抗措置等の急激な政策変更がコストを上昇させ、当社の収益性や競争力に悪影響を与える可能性があります。これらのリスクが顕在化した場合には、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
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・対応 当社グループでは、海外子会社に対してリスク管理に関連する窓口担当者を任命しており、定期的に情報収集・情報交換を実施しております。また、各地で問題が発生した場合には、この窓口担当者をハブとする現地子会社との連携により、迅速な課題解決を行っております。米国における輸入関税のリスクに対しては、適時の情報収集により事業への影響可能性の把握に努めるとともに、日米欧等の業界団体等を通じた政府への要望も検討してまいります。また、米国での現地生産の強化の可能性についても検討いたします。 |
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④ 製造・仕入れに関するリスク |
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・リスク 地震、水害、暴風雨等の自然災害、火災、原子力発電所の事故、長時間の停電等社会インフラの障害、戦争、テロ等の発生により、当社グループの工場、研究所、事業所等の施設の損壊又は事業活動の停滞等が発生した場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。 また、製品の一部は当社グループの工場において独自の技術により製造しており、製品及び原材料の一部は、特定の取引先にその供給を依存しております。また、製造委託先の品質リスク(例えば製造委託先等における品質上の問題発生により製品/治験薬を製造できないリスク)も存在します。このため、何らかの理由により製造活動や仕入れが遅延又は停止した場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
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・対応 当社グループのBCPは、事業継続へ影響を及ぼす様々な脅威に対処するべくオールハザード型BCPとして整備し、有事においても医療体制維持のための医薬品安定供給と品質確保を可能とする体制を整備しております。 当社グループは、行政の防災計画改定や社会的要請の変化に対応して、優先供給品目に関わる業務・組織体制を見直す等、脅威が顕在化した際により適切に対応できるよう継続的なBCPの改善を図っております。また、優先供給品目については、製薬企業としての社会的責任の大きな製品や、事業継続のために重要な製品等の速やかな供給を実現するべく、定期的に見直しを行っております。 特に医薬品の安定供給においては、生産・物流拠点の分散や主要原材料の複数購買の実施といったバックアップ体制を構築するとともに、自家発電装置の設置等、電力供給が停止した際の影響を最小限に抑える施策等にも取り組んでおります。また、主要システムの二重化等、IT基盤の強化も行っております。 |
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⑤ 環境、安全に関するリスク |
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・リスク 医薬品の研究、製造の過程等で使われる化学物質の中には、人の健康や生態系に悪影響を与える物質も含まれております。当社グループでは化学物質を用いた実験、製造、保管管理等に万全を期しておりますが、万一、社内外の人への暴露、土壌汚染、大気汚染、水質汚濁等、深刻な問題が発生した場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動に伴う気象災害や温暖化、生物多様性の喪失等により、医薬品のサプライチェーン寸断、製造コスト上昇等のリスクが顕在化した場合、医薬品の安定供給、経営成績、財政状態等に悪影響を与える可能性があります。 |
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・対応 当社グループでは、人体への影響、土壌汚染、大気汚染、水質汚濁等を防ぐため、化学物質の保管や取扱い方法を厳格に定め、グループの各工場・研究所において法規制より厳しい自主管理基準値を設定し、モニタリングによる適正管理を実施しております。また、国内外の工場で労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格であるISO45001の取得を進めており、2024年度は国内全ての工場と中国及びブラジルの工場で認証を取得いたしました。土壌汚染対策については、関連法規制に基づく調査義務が発生した場合の的確な対応はもとより、事業所閉鎖・用途の変更等において法的な調査義務がない場合でも、法令に準拠した方法で調査を実施しております。万が一、汚染が判明した場合には、行政に報告するとともに、近隣の方々に対しても、適切に情報を開示し、汚染状況に応じた適切な対応(拡散防止、浄化対策等)を行います。既に浄化対策等を終了した事業所では、継続的にモニタリングを行い、分析結果を行政、近隣の方々に報告しております。 気候変動に伴うリスクについては、シナリオ分析に基づき対策を実施しております。計画規模の洪水で浸水が想定される日本国内の研究所及び生産施設のある事業場については、事業場ごとのリスクアセスメントと水災マニュアルの作成を完了し、諸対策を進めております。その他の気候変動対策についてはサステナビリティ情報に記載したTCFD提言に基づく情報開示をご参照ください。また、パリ協定にも賛同し、2022年度に1.5℃目標に整合した野心的な目標に改め、温室効果ガス削減に取り組んでおります。気候変動を含む環境パフォーマンスデータについては、投資判断にも影響する重要指標と捉え、データの信頼性を高めるために第三者保証を取得しております。 生物多様性の喪失に関するリスクについては、TNFD提言に基づいて当社の主力製品を対象に、サプライチェーンにおける自然関連リスクの概略評価を行い、重要課題の抽出や地域性分析を実施し、当社ウェブサイトに公開いたしました。重要課題に対する当社グループの取り組み例を示し、追加的な目標設定や対策実施については、ギャップ分析や関係者とのコミュニケーションを行いながら、今後検討を進める予定です。 |
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⑥ 知的財産権に関するリスク |
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・リスク 当社グループの事業活動が他者の特許権その他の知的財産権に抵触するとして第三者から指摘を受けた場合には、事業の断念や係争の可能性があります。一方、第三者が当社グループの知的財産権を侵害する場合には、その保護のため訴訟提起等をすることがあります。それらの動向は経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼすことがあります。ADCに代表されるバイオ医薬品や新規モダリティ医薬品のパイプラインの増大や、ジェネリック医薬品市場の拡大を背景に、訴訟提起等を含め、当社グループの知的財産権に関するリスクが一層増大する可能性があります。 |
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・対応 当社グループでは、知的財産の創造と保護によってその価値の最大化とリスクの最小化を図っております。また、知的財産係争が発生したときには、社内外の関係者と協力し、事業への影響を最小限にとどめるよう対応しております。 2020年10月、Seagen Inc.は、エンハーツを含む当社ADCがSeagen Inc.の保有する米国特許を侵害するとして特許侵害訴訟をテキサス州東部地区連邦地方裁判所に提起しました。2022年7月、同裁判所はエンハーツが当該特許を侵害していること、Seagen Inc.に42百万米ドルの損害が発生したこと、及び当該特許の故意侵害を認定しましたが、損害賠償額は増額しないとする判決を下しました。2023年10月、同裁判所は、上記判決を不服とする当社の申立(post-trial motions)を棄却し、当該判決で決定された42百万ドルの損害賠償額に加え、2022年4月1日からSeagen Inc.の米国特許が満了する2024年11月4日までのエンハーツの米国売上に対する8%のロイヤリティーの支払を命じる一審判決を下しました。2023年11月、当社は、一審判決に対し米国連邦巡回区控訴裁判所に控訴を提起いたしました。なお、仮にSeagen Inc.に当該米国特許の侵害に係る賠償金を支払うこととなった場合には、アストラゼネカ社と締結したエンハーツの共同開発及び販売提携に関する契約に基づき、これをアストラゼネカ社と折半して負担いたします。 一方で、2020年12月、当社らは、Seagen Inc.の当該米国特許が無効であるとして、米国特許商標庁に当該米国特許の有効性を審査する特許付与後レビュー(Post Grant Review)の請求を行っていましたが、2024年1月、米国特許商標庁は、当該米国特許が無効であるとの決定を下しました。2024年5月、Seagen Inc.は米国特許商標庁の決定に対して米国連邦巡回区控訴裁判所に控訴を提起しました。 2024年7月、米国連邦巡回区控訴裁判所は、特許侵害訴訟の控訴審とPGRの控訴審を関連する訴訟として同一の裁判官合議体が審理することを決定しました。 |
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⑦ 訴訟に関するリスク |
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・リスク 当社グループの事業活動に関連して、医薬品の副作用、製造物責任、労務問題及び公正取引に関する問題等に関し、訴訟を提起される可能性があり、その動向によっては、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
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・対応 当社グループでは、法令、契約、紛争防止・紛争解決等の観点からリーガルリスクの最小化とビジネス機会の最大化に努めております。 |
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⑧ 法規制、医療費抑制策等の行政動向に関するリスク |
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・リスク 国内医療用医薬品は、薬事行政の下、種々の規制を受けております。薬価基準の改定をはじめとして、医療制度や健康保険に関する行政施策の動向によっては、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、海外においても同様に、医薬品として各種の規制を受けており、行政施策の動向による悪影響を受ける可能性があります。例えば、米国におけるインフレ抑制法(Inflation Reduction Act、以下「IRA」という。)の改正・拡大及びIRAとは異なる薬価抑制政策の導入(最恵国待遇価格の適用等)は、ADC製品を含む米国における販売に重大な影響を与える可能性があります。 |
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・対応 当社では、薬価制度改革並びに流通改善ガイドラインを踏まえた仕切価格・割戻改定を実施しております。また、適切な販売条件を設定・実行し、新薬創出加算品、重点品を中心に売上を拡大するよう努めております。なお、薬価の毎年改定を含めた薬価制度改革の他、海外を含めた行政動向を継続的に注視しており、即時に対応策を検討する体制としております。米国における最恵国待遇薬価の導入リスクに対しては、適時の情報収集により事業への影響可能性の把握に努めるとともに、日米欧等の業界団体等を通じた政府への要望も検討してまいります。 |
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⑨ 法令違反等に関するリスク |
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・リスク 当社グループは、グループ企業行動憲章及びグループ個人行動規範のもとに、コンプライアンス行動基準等を制定しているほか、グローバル エシックス&コンプライアンス コミッティやホットラインの設置等、コンプライアンス体制を構築し、販売情報提供活動ガイドライン等、事業活動に関連する法規制が遵守されるよう徹底しておりますが、役員及び従業員の個人的な不正行為等を含め重大な法令違反が発生した場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
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・対応 当社グループでは、毎年、CEOのコンプライアンスメッセージを全社に発信し、コンプライアンス風土醸成を図るとともに、ヘッド オブ グローバル コンプライアンス・リスクマネジメントがチーフ・コンプライアンス・オフィサーとして、事業活動のモニタリングを実施しております。また、役員や従業員だけでなく取引先等も利用可能なグループ共通のグローバル・ホットラインの適切な運営を通じて、コンプライアンス違反の未然防止や、早期発見に努めております。違反行為が発見された場合には、迅速かつ厳正に是正措置を行うとともに必要に応じて教育・啓発等の再発防止の対応を講じる体制のもと、健全な企業文化の醸成を推進しております。 |
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⑩ 金融市況及び為替変動に関するリスク |
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・リスク 株式市況の低迷等により保有する株式等の売却損や評価損が生じ、金利動向により退職給付債務の増加等が生じる可能性があります。また、為替相場の変動により、不利な影響を受ける可能性があります。当社グループはグローバルに事業を展開し、生産・販売・輸出入を行っておりますので、為替相場の変動は経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
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・対応 当社では政策保有株式の削減、年金基金資産配分の期中見直しの実行及び為替ヘッジ取引により、損失額を減少させるよう努めております。 また、退職給付に関するリスクの整理と運用状況のモニタリング及び雇用関連法制動向の把握や、不動産市場のモニタリングを実施する等により、リスク低減に向けた方針を早期から準備対応しております。 |
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⑪ 情報セキュリティに関するリスク |
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・リスク 当社グループは、業務上、各種ITシステムを利用しており、また、個人情報を含む多くの機密情報を保有しております。マルウェアの感染、サイバー攻撃他によるコンピュータシステムの休止等、及び機密情報の漏洩事象が発生した場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
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・対応 当社グループでは、CDXO(Chief Digital Transformation Officer)がグループ全体の情報・サイバーセキュリティ対策の推進を担い、新たなデジタル技術、法規制やガイドラインを取り込んだ情報管理・セキュリティに関するポリシー・ルールを整備しております。 情報・サイバーセキュリティに関する規程等を整備して従業員へ情報管理の重要性を周知徹底するとともに、ITシステムへのサイバー攻撃等への対策強化として、防御機能、侵害の検知機能と対処機能等のセキュリティシステムの整備を実施していることに加え、クラウドサービス利用への対応やセキュリティ基盤の強化、運用の改善を図っております。また、工場・製造設備・システム(OTシステム)へのセキュリティ対策も重要な課題ととらえ、OTシステムの標準セキュリティ対策と管理体制を設計し、各設備への導入を順次実施しています。 個人情報に関しては、定期的な管理台帳更新状況の把握・委託先の安全管理措置評価等により、保有個人データ、特定個人情報等の適正な管理状況をモニタリングするとともに、内部監査結果に基づく適切な指導及び従業員研修による周知・徹底を図っております。 |
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⑫ 人材に関するリスク |
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・リスク 当社グループが事業活動を推進し事業目標を達成する上では、各職務に必要な高度な専門性と高い業務遂行能力を持った人材を育成・採用・確保する必要がありますが、採用市場の競争激化などによりこれらの人材を十分に確保できない場合には、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
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・対応 当社グループでは、事業目標を達成する上で必要となる人材の要件を明確に定義し、計画的な採用活動を強化するとともに、社内教育プログラムを始めとする多様なアプローチを活用して人材の育成・確保を図っております。また、グローバルでの人材活用を最大化するため、グローバル共通の人事制度並びに人事情報システムの構築・導入を進めています。さらに、「One DS Culture」の醸成やInclusion & Diversity (I&D)を推進しながら、グローバル共通のエンゲージメントサーベイによる分析・改善施策を実施しております。 |
(5) エマージング・リスク
エマージング・リスク(新しいリスクで、自社に対して今後複数年にわたる影響が起こりうる可能性があり、初期的な検討は開始しているが全容は把握できていないもの。)のモニタリングも行っています。RMCや経営会議での議論を反映して特定のエマージング・リスクから重大リスクやユニットレベルのリスクに評価が変更になる場合もあります。エマージング・リスクとして、以下のリスクのモニタリングを行っております。
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AIの利活用に関するリスク |
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・リスク 世界的にAI技術の研究開発及びデジタルトランスフォーメーション(以下、「DX」という。)が急速に進展する中、特に創薬研究や開発プロセスにおいてAI、とりわけ生成AIの利活用が不可欠になりつつあります。これらAIの技術革新への対応が遅れた場合、研究開発における優位性の喪失や競争力の低下を招き、当社グループの経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。 また、AI技術の利用に関する法規制は国際的に強化される傾向にあります。特にEUにおける「EU AI規制法」等の新たな規制への対応が不十分な場合、制裁金や事業活動の制限等が課される可能性があります。また、AIガバナンス体制の不備により患者さんの健康や生命に悪影響を及ぼす事象が発生する可能性があります。さらに、その結果として当社グループの社会的信用の低下や損害賠償支払等により、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。 |
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・対応 これらの様々なリスクシナリオに対して、当社グループはAIによる技術革新を通じた研究開発の加速と全社的なAI利活用に基づくDXの推進を目指した体制の構築を継続しています。また、AI関連規制等の準拠に加えてAIガバナンス体制の構築(グローバルAIガバナンスポリシーの策定、リスク分類に応じたAI開発・運用に関するグローバルガイドラインの整備等)を進めています。 |
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月20日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 業績等の概要
当社グループの当連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)の連結業績は、次のとおりであります。
<連結業績(コアベース)>
(単位:億円)
|
|
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
増減 |
|
|
売上収益 |
16,017 |
18,863 |
2,846 17.8% |
|
|
売上原価 |
(注) |
4,148 |
4,157 |
10 0.2% |
|
販売費及び一般管理費 |
(注) |
6,273 |
7,248 |
975 15.5% |
|
研究開発費 |
(注) |
3,643 |
4,329 |
685 18.8% |
|
コア営業利益 |
(注) |
1,953 |
3,128 |
1,176 60.2% |
|
一過性の収益 |
(注) |
273 |
222 |
△51 △18.7% |
|
一過性の費用 |
(注) |
109 |
31 |
△79 △71.9% |
|
営業利益 |
2,116 |
3,319 |
1,203 56.9% |
|
|
税引前利益 |
2,372 |
3,556 |
1,184 49.9% |
|
|
親会社の所有者に帰属する 当期利益 |
2,007 |
2,958 |
950 47.3% |
|
|
当期包括利益合計額 |
3,084 |
2,898 |
△186 △6.0% |
|
(注)当社グループは、経常的な収益性を示す指標として、営業利益から一過性の収益・費用を除外したコア営業利益を開示しております。一過性の収益・費用には、固定資産売却損益、事業再編に伴う損益(開発品や上市製品の売却損益を除く)、有形固定資産及び無形資産並びにのれんに係る減損損失、損害賠償や和解等に伴う損益の他、非経常的かつ多額の損益が含まれます。
本表では、売上原価、販売費及び一般管理費、研究開発費について、一過性の収益・費用を除く実績を示しております。
<主要通貨の日本円への換算レート(期中平均レート)>
|
|
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
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米ドル/円 |
144.62 |
152.57 |
|
ユーロ/円 |
156.79 |
163.74 |
売上収益
売上収益は、前連結会計年度比2,846億円(17.8%)増収の1兆8,863億円となりました。グローバル主力品エンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン:T-DXd/DS-8201)、リクシアナ(一般名:エドキサバン)等の伸長及び円安の進行による為替の増収影響等により、増収となりました。売上収益に係る為替の増収影響は513億円でありました。
コア営業利益
コア営業利益は、前連結会計年度比1,176億円(60.2%)増益の3,128億円となりました。売上原価は、売上収益が増加したものの、製品構成の変化に伴う原価率改善等により、10億円(0.2%)増加の4,157億円に留まりました。販売費及び一般管理費は、エンハーツに係るアストラゼネカとのプロフィット・シェアの増加による費用増等により、975億円(15.5%)増加の7,248億円となりました。研究開発費は、5DXd ADCs(トラスツズマブ デルクステカン、ダトポタマブ デルクステカン:Dato-DXd/DS-1062、パトリツマブ デルクステカン:HER3-DXd/U3-1402、イフィナタマブ デルクステカン:I-DXd/DS-7300、DS-6000)への研究開発投資の増加等により、前連結会計年度比685億円(18.8%)増加の4,329億円となりました。コア営業利益に係る為替の増益影響は8億円でありました。
営業利益
営業利益は、前連結会計年度比1,203億円(56.9%)増益の3,319億円となりました。
税引前利益
税引前利益は、前連結会計年度比1,184億円(49.9%)増益の3,556億円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度比950億円(47.3%)増益の2,958億円となりました。
当期包括利益合計額
当期包括利益合計額は、海外子会社の純資産に係る為替換算差額が減少したこと等により、前連結会計年度比186億円(6.0%)減益の2,898億円となりました。
<連結業績(IFRSベース)>
(単位:億円)
|
|
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
増減 |
|
売上収益 |
16,017 |
18,863 |
2,846 17.8% |
|
売上原価 |
4,153 |
4,158 |
5 0.1% |
|
販売費及び一般管理費 |
6,370 |
7,312 |
942 14.8% |
|
研究開発費 |
3,652 |
4,360 |
708 19.4% |
|
その他の収益 |
275 |
287 |
13 4.6% |
|
その他の費用 |
1 |
1 |
0 21.7% |
|
営業利益 |
2,116 |
3,319 |
1,203 56.9% |
|
税引前利益 |
2,372 |
3,556 |
1,184 49.9% |
|
親会社の所有者に帰属する 当期利益 |
2,007 |
2,958 |
950 47.3% |
|
当期包括利益合計額 |
3,084 |
2,898 |
△186 △6.0% |
<グローバル主力品売上収益>
(単位:億円)
|
一般名 (主な製品名) |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
増減 |
|
トラスツズマブ デルクステカン (エンハーツ) 抗悪性腫瘍剤 (抗 HER2 抗体薬物複合体) |
4,492 |
6,514 |
2,022 45.0% |
|
エドキサバン (リクシアナ) 抗凝固剤 |
2,877 |
3,440 |
562 19.5% |
エンハーツは、既上市国での市場浸透及び上市国の拡大により、前連結会計年度比2,022億円(45.0%)増収の6,514億円となりました。エドキサバンは、日本、欧州等で売上が伸長し、前連結会計年度比562億円(19.5%)増収の3,440億円となりました。当社は、第5期中期経営計画でエンハーツを始めとした「3ADC最大化の実現」及び「既存事業・製品の利益成長」を戦略目標として定めております。第5期中期経営計画の内容につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
当社グループのユニット別売上収益状況は次のとおりであります。
① ジャパンビジネスユニット(JBU)
ジャパンビジネスユニットの売上収益には、イノベーティブ医薬品事業及びワクチン事業の製品売上収益が含まれております。
当ユニットの売上収益は、リクシアナ、タリージェ、エンハーツ等が伸長したものの、第一三共エスファ株式会社の連結除外に伴い、2024年4月以降、ジェネリック事業の製品売上収益が含まれなくなったことから、前連結会計年度比420億円(8.1%)減収の4,769億円となりました。
当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。
・2024年6月、抗悪性腫瘍剤エザルミアの再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)の承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。
・2024年7月、不眠症治療剤ベルソムラのMSD株式会社から当社への販売移管を決定いたしました。
・2024年9月、COVID-19 mRNAワクチン ダイチロナ筋注(オミクロン株JN.1対応)を発売いたしました。
・2024年10月、経鼻弱毒生インフルエンザワクチン フルミスト点鼻液を発売いたしました。
・2025年2月、抗凝固剤リクシアナの慢性血栓塞栓性肺高血圧症の承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。
・2025年3月、抗悪性腫瘍剤ダトロウェイ(適応:化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の乳がん)を発売いたしました。
<ジャパンビジネスユニット主力品売上収益>
(単位:億円)
|
製品名 |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
増減 |
|
リクシアナ 抗凝固剤 |
1,156 |
1,330 |
175 15.1% |
|
タリージェ 疼痛治療剤 |
457 |
556 |
100 21.8% |
|
プラリア 骨粗鬆症治療剤・関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制剤 |
428 |
422 |
△6 △1.3% |
|
ビムパット 抗てんかん剤 |
257 |
304 |
46 18.0% |
|
エンハーツ 抗悪性腫瘍剤 (抗 HER2 抗体薬物複合体) |
239 |
310 |
71 29.7% |
|
ランマーク がん骨転移による骨病変治療剤 |
204 |
201 |
△3 △1.3% |
|
エフィエント 抗血小板剤 |
256 |
315 |
59 22.9% |
|
カナリア 2型糖尿病治療剤 |
159 |
156 |
△3 △2.0% |
|
ロキソニン 消炎鎮痛剤 |
155 |
123 |
△32 △20.6% |
|
イナビル 抗インフルエンザウイルス薬 |
159 |
199 |
40 25.3% |
|
ミネブロ 高血圧症治療剤 |
83 |
96 |
14 16.6% |
|
ベルソムラ 不眠症治療薬 |
- |
99 |
99 - |
|
エムガルティ 片頭痛発作の発症抑制薬 |
76 |
107 |
31 40.9% |
② 第一三共ヘルスケアユニット(DSHCU)
第一三共ヘルスケアユニットの売上収益は、マイティア、ロキソニン等の伸長により、前連結会計年度比107億円(14.1%)増収の867億円となりました。
③ オンコロジービジネスユニット(OBU)
オンコロジービジネスユニットの売上収益には、第一三共Inc.(米国)及び第一三共ヨーロッパGmbHのがん製品売上収益が含まれております。
当ユニットの売上収益は、欧米におけるエンハーツの伸長により、前連結会計年度比1,292億円(38.6%)増収の4,638億円、現地通貨ベースでは、726百万米ドル(31.4%)増収の3,040百万米ドルとなりました。
当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。
・2024年4月、エンハーツのHER2陽性の複数の固形がんを対象とした米国における承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。
・2025年1月、米国における抗悪性腫瘍剤ダトロウェイ(適応:内分泌療法及び化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性(IHC 0, IHC 1+ 又は IHC 2+/ISH-)の乳がん)を発売いたしました。
・2025年1月、エンハーツの化学療法未治療のHER2低発現又はHER2超低発現の乳がんを対象とした米国における承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。
・2025年3月、エンハーツの化学療法未治療のHER2低発現又はHER2超低発現の乳がんを対象とした欧州における承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。
<オンコロジービジネスユニット主力品売上収益>
(単位:億円)
|
製品名 |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
増減 |
|
|
エンハーツ 抗悪性腫瘍剤 (抗 HER2 抗体薬物複合体) |
3,274 |
4,516 |
1,242 37.9% |
|
|
|
エンハーツ(米) |
2,255 |
3,020 |
765 33.9% |
|
エンハーツ(欧) |
1,019 |
1,496 |
477 46.8% |
|
|
TURALIO 抗腫瘍剤 |
53 |
66 |
13 23.9% |
|
④ アメリカンリージェントユニット(ARU)
アメリカンリージェントユニットの売上収益は、ジェネリック注射剤等の増収により、前連結会計年度比138億円(6.8%)増収の2,172億円、現地通貨ベースでは、17百万米ドル(1.2%)増収の1,424百万米ドルとなりました。
<アメリカンリージェントユニット主力品売上収益>
(単位:億円)
|
製品名 |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
増減 |
|
インジェクタファー 鉄欠乏性貧血治療剤 |
501 |
534 |
33 6.6% |
|
ヴェノファー 鉄欠乏性貧血治療剤 |
609 |
620 |
11 1.8% |
⑤ EUスペシャルティビジネスユニット(EUSBU)
EUスペシャルティビジネスユニットの売上収益には、がん製品を除く第一三共ヨーロッパGmbHの製品売上収益が含まれております。
当ユニットの売上収益は、リクシアナ、Nilemdo/Nustendiの伸長により、前連結会計年度比482億円(25.5%)増収の2,374億円、現地通貨ベースでは243百万ユーロ(20.2%)増収の1,450百万ユーロとなりました。
当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。
・2024年5月、Nilemdo/Nustendiの心血管疾患の抑制の承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。
<EUスペシャルティビジネスユニット主力品売上収益>
(単位:億円)
|
製品名 |
前連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
増減 |
|
リクシアナ 抗凝固剤 |
1,462 |
1,790 |
328 22.4% |
|
Nilemdo / Nustendi 高コレステロール血症治療剤 |
184 |
369 |
185 100.1% |
|
オルメサルタン 高血圧症治療剤 |
196 |
183 |
△13 △6.7% |
⑥ ASCAビジネスユニット(ASCABU)
ASCA(注)ビジネスユニットの売上収益には、海外ライセンシーへの売上収益等が含まれております。
当ユニットの売上収益は、ブラジルにおけるエンハーツの伸長等により、前連結会計年度比272億円(14.8%)増収の2,112億円となりました。
(注)Asia, South & Central Americaの略。
当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。
・2024年8月、エンハーツのHER2陽性胃がんを対象とした中国における承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。
・2024年10月、エンハーツのHER2遺伝子変異を有する非小細胞肺がんを対象とした中国における承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。
ユニット別売上収益構成比は次のとおりであります。
(2) 生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
医薬品事業 |
859,923 |
102.8 |
|
合計 |
859,923 |
102.8 |
(注)金額は正味販売価格によっております。
② 受注実績
当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画を策定し、これにより生産を行っております。受注生産は一部の連結子会社で行っておりますが、受注残高の金額に重要性はないため、記載を省略しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
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医薬品事業 |
1,886,256 |
117.8 |
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合計 |
1,886,256 |
117.8 |
(注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
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相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
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金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
アルフレッサ ホールディングス 株式会社及びそのグループ会社 |
199,732 |
12.5 |
221,814 |
11.8 |
|
センコラ社 |
162,713 |
10.2 |
207,389 |
11.0 |
|
マッケソン社 |
173,348 |
10.8 |
203,461 |
10.8 |
(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① 財務戦略の基本的な考え方
当社グループは、ESG経営のもと、新たに「サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバルヘルスケアカンパニー」となることを2030年ビジョンとして掲げております。2025年ビジョンである「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」を実現し、2030年ビジョン達成に向けた持続的な成長ステージへの移行を可能とするべく、2021年に第5期中期経営計画(2021~2025年度)を策定いたしました。その後4年間の計画進捗により、2025年度経営目標を達成すると見込んでおります。具体的には、売上収益2兆円(第5期中計策定時プラス4,000億円)、がん領域売上収入9,000億円以上(同プラス3,000億円)、研究開発費控除前コア営業利益(注)率40%(同変更なし)、ROE16%以上(同変更なし)、株主資本配当率(DOE)8.5%(同プラス0.5ポイント)を見込んでおります。また、期間中のキャッシュ・アロケーションについても、成長投資と株主還元の双方をバランス良く実施するという基本方針は変更しておりません。
成長投資については、DXd-ADC開発を優先する形で第5期中期経営計画である5年間で総額1兆8,500億円規模の研究開発投資(同プラス3,500億円)、また、ADCの供給体制強化を中心とした同じく8,000億円規模の設備投資(同プラス3,000億円)を見込んでおります。
株主還元については、2024年度はエンハーツ等を中心に業績が好調に推移していることから、年間配当を1株当たり10円増配の60円とし、さらに2025年度については年間配当を1株当たり18円増配の78円とする計画としております。これにより、2025年度のDOEは8.5%以上の達成を見込んでおります。また、株主還元の強化・充実を図るため、以下のとおり、自己株式の取得を実施いたしました。
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取得期間 |
取得総額 |
取得株数 |
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2024年4月決議 |
2024年4月26日~2025年1月9日 |
2,000億円 |
3,871万株 |
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2025年2月決議 |
2025年3月3日~2025年4月8日 |
500億円 |
1,397万株 |
なお、2025年度においても、株価水準を踏まえた機動的な自己株式取得を可能とするため、新たな自己株式取得枠(取得総額2,000億円または取得株数8,000万株を上限)を設定しております。今後も利益成長に応じた増配、あるいは機動的な自己株式取得を実施することで、引き続き株主価値の最大化を目指します。
(注)固定資産売却、事業再編、減損、訴訟等に関連する特殊要因を除く
② 資金調達の方法及び状況
当社グループは、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を資金調達の基本的な考えとしており、手元資金及び外部資金を有効に活用しております。当社グループは、戦略的投資もしくは資金調達にあたって外部借入への依存度合いを測る目的から、手元流動性残高(現預金及び短期投資債券等)から有利子負債を控除した、ネット・キャッシュを重視しております。
手元資金としては、事業展開に伴う資金需要に対する機動的な対応のため、十分な現金及び現金同等物を保有しております。適正な現金及び現金同等物の保有額は、月商の3ヶ月程度を考えており、これを超える部分については企業価値向上に資する事業戦略投資の資金として確保しております。これらは金融情勢などを勘案しつつ、安全性並びに流動性の極めて高い短期金融商品で運用しております。
外部からの資金調達については、直接金融又は間接金融の多様な手段の中から、その時々の市場環境を考慮した上で当社にとって有利なものを機動的に選択しております。直接金融としては、国内社債発行登録枠として3,000億円及びコマーシャル・ペーパー発行枠として1,500億円を有しております。2016年には超低金利の環境を活かし、国内ヘルスケアセクターでは初となる償還年限が20年、30年の超長期無担保社債を発行し、1,000億円の長期低コスト資金を確保いたしました。間接金融としては、当社は前期に全ての金融機関借入を完済している一方で、取引先金融機関とは引き続き良好な取引関係を維持しております。また、複数の銀行との間で当座貸越契約を設定し、緊急時の流動性担保の手段も確保しております。
なお、円滑な外部資金調達を行うため、当社は株式会社格付投資情報センター(R&I)と、ムーディーズ・ジャパン株式会社(Moody's)の2社から格付を取得しております。
当連結会計年度末時点での当社の長期及び短期の信用格付けは次のとおりであります。
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格付会社 |
長期格付け |
短期格付け |
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格付投資情報センター(R&I) |
AA/安定的 |
a-1+ |
|
ムーディーズ・ジャパン(Moody's) |
A2/安定的 |
- |
なお、連結子会社は、原則として銀行などの外部からの資金調達を行わず、親会社もしくは現地法人などの資金調達拠点を通じたキャッシュ・マネジメント・サービスやグループ・ファイナンスの活用により、資金調達の集約と資金効率化、流動性の確保を図っております。
③ 財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析
(ⅰ)財政状態
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末から50億円減少し、3兆4,561億円となりました。営業債権及びその他の債権が1,649億円、有形固定資産が768億円、並びに棚卸資産が768億円それぞれ増加した一方で、その他の金融資産(流動)が4,962億円減少いたしました。
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末から602億円増加し、1兆8,327億円となりました。その他の非流動負債が359億円減少した一方で、契約負債(流動負債及び非流動負債)が814億円、並びに営業債務及びその他の債務が228億円増加いたしました。
当連結会計年度末における資本合計は、前連結会計年度末から652億円減少し、1兆6,234億円となりました。当期利益の計上による増加があった一方で、配当金の支払及び自己株式の取得(5,117万株、2,461億円)による減少等により減少いたしました。
以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は47.0%となり、前連結会計年度末より1.8%減少いたしました。
第5期中計期間中は、成長投資と株主還元へのキャッシュ・アロケーションをバランスよく行う方針であります。具体的には、キャッシュ・アロケーションの原資の一定部分を成長投資(研究開発投資、設備投資)と株主還元にアロケーションした上で、残る部分については、研究開発パイプラインの進捗を踏まえ、さらなる成長の柱の構築に向けた研究開発投資と株主還元に、バランスを考慮しながら機動的に配分いたします。
(ⅱ)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、73億円減少の6,398億円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、538億円の収入(前連結会計年度は5,993億円の収入)となりました。税引前利益3,556億円、減価償却費及び償却費686億円等の非資金項目の他、パトリツマブ デルクステカン(HER3-DXd/U3-1402)の戦略的提携の契約一時金の収入があった一方で、運転資金の減少等がありました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、3,342億円の収入(前連結会計年度は2,826億円の支出)となりました。設備投資や無形資産の取得による支出があった一方で、投資の売却・償還や定期預金の払戻による収入等がありました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払、並びに自己株式の取得等により、3,778億円の支出(前連結会計年度は1,236億円の支出)となりました。
(4) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、2025年度における計数目標として、売上収益1兆6,000億円(うち、がん領域において6,000億円以上)、研究開発費控除前コア営業利益率40%以上、ROE16%以上、株主資本配当率(DOE)8%以上を目指しております。
当連結会計年度においては、売上収益1兆8,863億円、研究開発費控除前コア営業利益率39.5%、ROE17.9%、DOE6.9%となりました。また、エンハーツの当初計画を上回る売上拡大等により、2025年4月時点において、以下の通りの達成を見込んでおります。
なお、目標達成に向けた主な取り組み課題と実績については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づいて作成しております。連結財務諸表の作成にあたり行った重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4 重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。
(1) 第一三共エスファ㈱の株式譲渡
当社は、2023年5月16日開催の取締役会において、当社の子会社である第一三共エスファ㈱の全株式をクオールホールディングス㈱に譲渡することを決議し、同日付で株式譲渡契約を締結しております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 12.売却目的で保有する資産及び直接関連する負債」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 33.キャッシュ・フロー情報 (2) 子会社の売却による収入」をご参照ください。
(2) 第一三共プロファーマ㈱及び第一三共ケミカルファーマ㈱の吸収合併
当社は、2024年11月29日開催の取締役会において、当社の子会社である第一三共プロファーマ㈱及び第一三共ケミカルファーマ㈱を吸収合併することを決議し、同日付でそれぞれ合併契約を締結いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」をご参照ください。
(3) 技術導入
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契約会社名 |
相手先 |
国名 |
技術内容 |
対価 |
契約期間 |
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第一三共㈱ (当社) |
Amgen Inc. |
アメリカ |
抗RANKL抗体「デノスマブ」に関する技術 |
契約一時金 マイルストーン 一定料率の実施料 |
自 2007年7月 至 2027年6月 |
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第一三共㈱ (当社) |
Amgen Inc. |
アメリカ |
バイオ後続品に関する技術 |
マイルストーン |
自 2016年7月 至 製品ごとに商業化の終了日 |
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第一三共㈱ (当社) |
MedImmune, LLC |
アメリカ |
鼻腔噴霧インフルエンザ弱毒生ワクチン「フルミスト」に関する技術 |
契約一時金 マイルストーン |
自 2015年9月 至 上市後5年 |
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第一三共㈱ (当社) |
Ultragenyx Pharmaceutical Inc. |
アメリカ |
AAVベクターを用いた遺伝子治療薬製造技術 |
契約一時金 マイルストーン 一定料率の実施料 |
自 2020年3月 至 実施料支払期間満了日まで |
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第一三共㈱ (当社) |
Alteogen Inc. |
韓国 |
Trastuzumab deruxtecan皮下注製剤の開発・商業化のための遺伝子組換ヒアルロニダーゼに関する技術 |
契約一時金 マイルストーン 一定料率の実施料 |
自 2024年11月 至 最後の実施料支払が完了する迄 |
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アメリカン・リージェントInc. (連結子会社) |
Vifor (International) Ltd. |
スイス |
貧血治療剤「ヴェノファー」及び「インジェクタファー」に関する技術 |
製品購入価格 |
自 1997年12月 至 2040年12月 |
(4) 販売契約等(導入)
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契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約の内容 |
対価 |
契約期間 |
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第一三共㈱ (当社) |
UCB Biopharma Sprl |
ベルギー |
同社のてんかん治療薬「ビムパット」の日本国内における独占販売及び共同販促 |
契約一時金 マイルストーン |
自 2014年11月 至 上市後10年 |
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第一三共㈱ (当社) |
田辺三菱製薬㈱ |
日本 |
同社の2型糖尿病治療用配合剤「カナリア」の日本国内における独占販売及び共同販促 |
マイルストーン 製品育成費用 |
自 2017年3月 至 上市後10年 (以後1年ごとの自動更新) |
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第一三共㈱ (当社) |
日本イーライリリー㈱、 Eli Lilly and Company |
日本 アメリカ |
同社の片頭痛発作の発症抑制薬「エムガルティ」の日本国内における独占販売及び共同販促 |
契約一時金 製品購入価格 |
自 2020年10月 至 2031年3月 (以後後発品の上市か合意解約されるまで1年ごとの自動更新) |
|
第一三共㈱ (当社) |
日本イーライリリー㈱、 Eli Lilly and Company |
日本 アメリカ |
同社の片頭痛治療剤「レイボー」の日本国内における独占販売及び共同販促 |
製品購入価格 |
自 2021年8月 至 2031年3月 (以後後発品の上市か合意解約されるまで1年ごとの自動更新) |
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第一三共㈱ (当社) |
Esperion Therapeutics, Inc. |
アメリカ |
高コレステロール血症治療剤「ベムペド酸」の韓国、ブラジル、台湾、香港、マカオ、タイ、ベトナム、ミャンマー及びカンボジアにおける独占販売 |
契約一時金 マイルストーン 一定料率の実施料 |
自 2021年4月 至 対象特許の満了日、データ保護期間の満了日又は上市後12年のうちいずれか遅く到来する日 |
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第一三共㈱ (当社) |
MSD International Business GmbH |
スイス |
同社の不眠症治療薬「ベルソムラ」の日本国内における独占販売 |
契約一時金 製品購入価格 マイルストーン |
自 2024年3月 至 製品の移管日から8年又は対象特許満了日のうちいずれか遅く到来する日 |
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第一三共ヨーロッパGmbH (連結子会社) |
Esperion Therapeutics, Inc. |
アメリカ |
高コレステロール血症治療剤「ベムペド酸」の欧州における独占販売 |
契約一時金 マイルストーン 一定料率の実施料 |
自 2019年1月 至 対象特許の満了日又は上市後12年のうちいずれか遅く到来する日 |
(5) 販売契約等(導出)
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契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約の内容 |
対価 |
契約期間 |
|
第一三共㈱ (当社) |
AstraZeneca UK Limited |
イギリス |
抗がん剤「エンハーツ」の全世界での共同開発及び販売提携 |
契約一時金 マイルストーン 一定料率の実施料 日本を除く全世界における利益と開発・販売等費用の折半 |
自 2019年3月 至 国ごとに販売を中止するまで |
|
第一三共㈱ (当社) |
AstraZeneca UK Limited |
イギリス |
抗がん剤「ダトロウェイ」の全世界での共同開発及び販売提携 |
契約一時金 マイルストーン 一定料率の実施料 日本を除く全世界における利益と開発・販売等費用の折半 |
自 2020年7月 至 国ごとに販売を中止するまで |
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第一三共㈱ (当社) |
Merck & Co., Inc. |
アメリカ |
抗がん剤「HER3-DXd」「I-DXd」「DS-6000」及び「MK-6070」の全世界での共同開発及び販売提携(注) |
契約一時金 マイルストーン 一定料率の実施料 日本を除く全世界における利益と販売費等費用の折半、開発費の一部の負担 |
自 2023年10月 至 全ての開発及び販売を恒久的に中止するまで |
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アメリカン・リージェントInc. (連結子会社) |
Fresenius USA Manufacturing, Inc. |
アメリカ |
貧血治療剤「ヴェノファー」の米国内における販売 |
契約一時金 一定料率の実施料 |
自 2008年11月 至 2028年12月 |
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第一三共ノーザンヨーロッパGmbH (連結子会社) |
Organon Trade LLC |
アメリカ |
抗凝固剤「リクシアナ(エドキサバン)」の欧州一部地域における独占販売 |
契約一時金 製品供給代金 |
自 2016年2月 至 2026年2月又は対象特許の満了日のうちいずれか遅く到来する日 |
(注)「HER3-DXd」「I-DXd」「DS-6000」を対象とした原契約に、Merck & Co., Inc.が開発中の「MK-6070」を
追加しております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 38.共同開発及び共同販促」に記載のとおりであります。
(6) 業務委託契約
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契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約の内容 |
対価 |
契約期間 |
|
第一三共㈱ (当社) |
㈱日立製作所 |
日本 |
IT業務の同社への委託 |
業務委託費 |
自 2024年4月 至 2026年3月 |
(7) その他
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契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約の内容 |
対価 |
契約期間 |
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第一三共㈱ (当社) |
Glycotope GmbH |
ドイツ |
DS-3939の抗TA-MUC1抗体の知的財産権買い取り |
知的財産権の買取対価 |
自 2024年12月 至 Glycotopeが対価全額を受領し、かつ、特許移転に係る所定のプロセスが完了する迄(但し、発効日から9ヶ月を超えない) |
当社グループは、5つのDXd ADCの製品価値最大化を目指してリソースを集中投入するとともに、持続的成長の実現に向けてSOC(注1)を変革する製品群(Next Wave)の創薬を目指す「5DXd ADCs and Next Wave」戦略のもと、グローバル臨床開発の加速化にも注力して研究開発に取り組んでおります。
中長期的には、がんに加え、当社のサイエンス&テクノロジーの優位性を活かして様々な疾患に対する治療薬創製を目指し、新規モダリティ(注2)の技術研究等を通じた創薬力の強化に取り組んでおります。
(注)1.Standard of Careの略。現在の医学では最善とされ、広く用いられている治療法。
2.モダリティとは低分子薬、抗体医薬、ADC、核酸医薬、遺伝子治療等の治療手段のこと。
当連結会計年度の研究開発費(IFRSベース)は、
(1) 5DXd ADCs
当連結会計年度における5DXd ADCsの臨床開発の状況は次のとおりであります。
トラスツズマブ デルクステカン及びダトポタマブ デルクステカンは、アストラゼネカと共同開発しております。また、パトリツマブ デルクステカン、イフィナタマブ デルクステカン(DS-7300)、DS-6000については、Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA(以下「米国メルク」)と共同開発しております。
① トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd/DS-8201:抗HER2 ADC、製品名:エンハーツ)
当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。
・2024年4月、HER2陽性(IHC3+)固形がん2次治療以降を対象とした米国における承認を取得いたしました
・2024年4月、ホルモン受容体陽性かつHER2低発現の化学療法未治療の乳がんを対象としたフェーズ3試験(試験名:DESTINY-Breast06)の結果概要を発表いたしました
・2024年6月、米国臨床腫瘍学会(ASCO)においてDESTINY-Breast06試験の主要解析データを発表いたしました
・2024年6月、ASCOにおいてHER2陽性乳がんを対象とした単剤療法及び併用療法を評価するフェーズ1b/2試験(試験名:DESTINY-Breast07)のうち、1次治療における単剤療法及びペルツズマブとの併用コホートの最新データを発表いたしました
・2024年8月、HER2陽性の胃又は胃食道接合部腺がんの3次治療以降を対象とした中国における承認を取得いたしました
・2024年8月、化学療法未治療のホルモン受容体陽性かつHER2低発現又はHER2超低発現の乳がんを対象とした欧州における承認申請の受理及び米国食品医薬品局(FDA)からの画期的治療薬指定(注3)を獲得いたしました
・2024年9月、世界肺がん学会(WCLC)においてHER2陽性の非扁平上皮非小細胞肺がんを対象としたフェーズ1b試験(試験名:DESTINY-Lung03)のうち、2次治療以降を対象とした単剤療法コホートの初のデータを発表いたしました
・2024年9月、ESMOにおいて脳転移を伴う又は伴わないHER2陽性乳がんを対象としたフェーズ3b/4試験(試験名:DESTINY-Breast12)のデータを発表いたしました
・2024年10月、化学療法未治療のHER2低発現又はHER2超低発現の乳がんを対象とした米国における承認申請の受理及び優先審査(注4)の指定獲得並びに日本における承認申請が受理されました
・2024年10月、全身治療歴のあるHER2遺伝子変異を有する非小細胞肺がんを対象とした中国における承認を取得いたしました
・2025年1月、化学療法未治療のホルモン受容体陽性かつ、HER2低発現又はHER2超低発現の乳がんを対象とした米国における承認を取得いたしました
・2025年2月、化学療法未治療のホルモン受容体陽性かつ、HER2低発現又はHER2超低発現の乳がんを対象とした欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品委員会(CHMP)による承認の勧告を受領いたしました
・2025年3月、HER2陽性胃がんの2次治療を対象としたフェーズ3試験(試験名:DESTINY-Gastric04)の中間解析において主要評価項目を達成いたしました
・2025年3月、HER2陽性胃がんの1次治療を対象としたフルオロピリミジン及びペムブロリズマブとの3剤併用療法のフェーズ3試験(試験名:DESTINY-Gastric05)を開始いたしました
・2025年3月、化学療法未治療のホルモン受容体陽性かつ、HER2低発現又はHER2超低発現の乳がんを対象とした欧州における承認を取得いたしました
(注)3.重篤な疾患を対象に、既存の治療薬よりも高い治療効果を示す可能性のある薬剤の開発と審査を促進し、患者により早く新薬を届けるために定められた制度。
4.米国において、治療上重要な進歩をもたらす薬剤や、現在適切な治療法がない疾患への治療法を提供する薬剤に対して指定され、通常審査期間(10ヶ月目標)に比べ審査期間の短縮(6ヶ月目標)が見込まれます。
② ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd/DS-1062:抗TROP2 ADC、製品名:ダトロウェイ)
当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。
・2024年4月、ホルモン受容体陽性かつHER2低発現又は陰性の乳がんの2次治療以降を対象とした米国における承認申請が受理されました
・2024年5月、非小細胞肺がんの2次治療以降を対象としたフェーズ3試験(試験名:TROPION-Lung01)における全生存期間(OS)に関する主要解析結果概要を発表いたしました
・2024年5月、非扁平上皮非小細胞肺がんの1次治療を対象としたRilvegostomig(AZD2936)との併用療法のフェーズ3試験(試験名:TROPION-Lung10)を開始いたしました
・2024年5月、EGFR変異を有する非小細胞肺がんの1次治療を対象としたオシメルチニブとの併用療法のフェーズ3試験(試験名:TROPION-Lung14)を開始いたしました
・2024年6月、ASCOにおいて非小細胞肺がんを対象とした免疫チェックポイント阻害剤との併用療法のフェーズ1b試験(試験名:TROPION-Lung02)のうち、1次治療を対象としたサブグループ解析の最新データを発表いたしました
・2024年9月、WCLCにおいて非小細胞肺がんの2次治療以降を対象としたフェーズ3試験(試験名:TROPION-Lung01)のOSの最終解析結果、及び同試験におけるTROP2-QCS(注5)バイオマーカーに基づく無増悪生存期間(PFS)解析データを発表いたしました
・2024年9月、WCLCにおいて非小細胞肺がんの術前・術後薬物療法を対象としたフェーズ2試験(試験名:NeoCOAST-2)のデータを発表いたしました
・2024年9月、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)において複数の固形がんを対象としたフェーズ2試験(試験名:TROPION-PanTumor03)のうち、子宮内膜がん及び卵巣がんに関する初のデータを発表いたしました
・2024年9月、ホルモン受容体陽性かつHER2低発現又は陰性の乳がんの2次治療以降を対象としたフェーズ3試験(試験名:TROPION-Breast01)におけるOSの最終解析結果概要を発表いたしました
・2024年10月、オシメルチニブによる前治療歴のあるEGFR変異を有する非扁平上皮非小細胞肺がんを対象として単剤療法及びオシメルチニブとの併用療法を評価するフェーズ3試験(試験名:TROPION-Lung15)を開始いたしました
・2024年11月、米国においてEGFR変異を有する、前治療歴(EGFR標的療法を含む)のある非小細胞肺がんを対象として承認申請し、非扁平上皮非小細胞肺がんに係る2次/3次治療を対象とした承認申請を自主的に取り下げいたしました
・2024年12月、欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia)においてEGFR変異を有する非小細胞肺がんを対象とした臨床試験プール解析結果を発表いたしました
・2024年12月、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤とプラチナ製剤ベースの化学療法との併用療法による治療中又は治療後に病勢進行したEGFR変異を有する非小細胞肺がんを対象としたFDAからの画期的治療薬指定を獲得いたしました
・2024年12月、EMAにおける非扁平上皮非小細胞肺がんに係る2次/3次治療を対象とした承認申請を自主的に取り下げいたしました
・2024年12月、化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性の乳がんを対象とした日本における承認を取得いたしました
・2025年1月、EGFR変異を有する前治療歴(EGFR標的療法を含む)のある非小細胞肺がんを対象とした米国における承認申請が受理されました
・2025年1月、内分泌療法及び化学療法歴のあるホルモン受容体陽性かつHER2陰性(IHC 0, IHC 1+ 又は IHC 2+/ISH-)の乳がんを対象とした米国における承認を取得いたしました
・2025年1月、早期非小細胞肺がんを対象とした術後補助療法におけるrilvegostomigとの併用療法のフェーズ3試験(試験名:TROPION-Lung12)を開始いたしました
・2025年1月、ホルモン受容体陽性かつHER2陰性(IHC 0, IHC 1+ 又は IHC2+/ISH-)の乳がんの2次/3次治療を対象としたEMAのCHMPによる承認の勧告を受領いたしました
(注)5.患者の組織サンプルのデジタル画像を解析し、画像内の全てのがん細胞の表面及び内部に発現するTROP2のような標的タンパク質を正確に定量化するアストラゼネカが開発した新しい計算病理学的プラットフォーム
③ パトリツマブ デルクステカン(HER3-DXd/U3-1402:抗HER3 ADC)
当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。
・2024年6月、EGFR変異を有する非小細胞肺がんの3次治療を対象としたフェーズ2試験(試験名:HERTHENA-Lung01)に基づく米国における承認申請について、米国食品医薬品局(FDA)からの審査完了報告通知を受領いたしました
・2024年9月、EGFR変異を有する非小細胞肺がんの2次治療を対象としたフェーズ3試験(試験名:HERTHENA-Lung02)において主要評価項目を達成いたしました
④ イフィナタマブ デルクステカン(I-DXd/DS-7300:抗B7-H3 ADC)
当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。
・2024年5月、固形がんの2次治療以降を対象としたフェーズ2試験(試験名:IDeate-PanTumor02)を開始いたしました
・2024年8月、進展型小細胞肺がんの2次治療を対象としたフェーズ3試験(試験名:IDeate-Lung02)を開始いたしました
・2024年9月、WCLCにおいて進展型小細胞肺がんの2次治療以降を対象としたフェーズ2試験(試験名:IDeate-Lung01)の中間解析データを発表いたしました
・2024年12月、小細胞肺がんを対象とした厚生労働省からの希少疾病用医薬品(注6)の指定獲得
(注)6.日本国内における患者数が5万人未満であり、医療上特にその必要性が高いもの等の条件に合致するものとして、開発の支援・促進を目的として指定される制度
⑤ DS-6000(抗CDH63 ADC)
当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。
・2024年4月、プラチナ抵抗性卵巣がんを対象としたフェーズ2/3試験(試験名:REJOICE-Ovarian01)を開始いたしました
・2025年2月、卵巣がんを対象としたEMAからの希少疾病用医薬品(注7)の指定を獲得いたしました
・2025年3月、白金系抗悪性腫瘍剤抵抗性の卵巣がんを対象とした厚生労働省からの希少疾病用医薬品の指定を獲得いたしました
(注)7.生命を脅かす又は慢性衰弱的な疾病の治療、予防又は診断を目的とし、EU内での対象患者数1万人当たり5人以下の条件等に合致するものとして助成金交付等の優遇措置を受けることができる制度
(2) Next Wave
当連結会計年度におけるNext Waveの臨床開発の主な進捗は次のとおりであります。
・2024年4月、DS-5670(COVID-19 mRNAワクチン、日本製品名:ダイチロナ)の5歳から11歳を対象とした日本における承認申請が受理されました
・2024年6月、DS-5670の12歳以上を対象とした2024年度の厚生労働省選定株対応ワクチンとして日本における一部変更承認申請が受理されました
・2024年6月、開発中の2つのmRNAワクチン(パンデミック時のインフルエンザmRNAワクチン、季節性インフルエンザと新型コロナの混合mRNAワクチン)について、厚生労働省の「ワクチン大規模臨床試験等事業」に採択されました
・2024年6月、バレメトスタット(DS-3201:EZH1/2阻害剤、日本製品名:エザルミア)の再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)を対象とした日本における承認を取得いたしました
・2024年6月、ミロガバリン(DS-5565:α2δリガンド、製品名:タリージェ)の糖尿病性末梢神経障害性疼痛を対象とした中国における承認を取得いたしました
・2024年8月、米国メルクが開発中のMK-6070(DS3280:DLL3を標的とした三重特異性のT細胞エンゲージャー)を同社とのDXd ADC3製品の戦略的提携契約に追加し、共同開発を開始いたしました
・2024年9月、ESMOにおいてDS-9606(二つ目の当社独自のADC技術プラットフォームから創製されたピロロベンゾジアゼピン(PBD)をペイロードとする抗CLDN6 ADC)の進行性固形がんを対象としたフェーズ1試験の用量漸増パートにおける初のデータを発表いたしました
・2024年12月、キザルチニブ(AC220:FLT3阻害剤、製品名:ヴァンフリタ)のFLT3-ITD変異陰性の急性骨髄性白血病における1次治療を対象としたフェーズ3試験(試験名:QuANTUM-Wild)を開始いたしました
・2025年1月、キザルチニブのFLT3-ITD変異陽性の急性骨髄性白血病の1次治療を対象とした中国における承認申請が受理されました
・2025年2月、エドキサバン(FXa阻害剤、日本製品名:リクシアナ)の慢性血栓塞栓性肺高血圧症における血栓・塞栓形成の抑制を対象とした日本における承認を取得いたしました
・2025年3月、DS-5670の5歳から11歳を対象とした日本における承認を取得いたしました